説明

静電荷像現像用トナー及びそれを用いる画像形成方法

【課題】感光体のクリーニング性と長寿命化の両立を可能とする静電荷像現像用トナー、すなわち、各種画像欠陥の発生を防止し、カブリが低く、画像濃度が高い上に、感光体の膜厚の減耗量を著しく少なくできる静電荷像現像用トナー及びそれを用いた画像形成方法を提供する。
【解決手段】ベルト転写方式による画像形成方法に用いる静電荷像現像用トナーであって、当該静電荷像現像用トナーのトナー粒子の体積メディアン径(D50)が4.0〜9.0μmの範囲内であり、当該トナー粒子のうちD50×2/3μm以下の粒径のトナー粒子の含有率(体積基準)が10%以下であり、かつ脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体のクリーニング性と長寿命化の両立を可能とする静電荷像現像用トナー及びそれを用いる画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式を利用したプリンター/複合機は、従来のオフィス領域にとどまらず、プロダクションプリント市場で使用される機会が増えてきた。プロダクションプリント市場をターゲットとした場合、従来のオフィス領域よりもマシンの高速化、プリントコストの低下、ダウンタイムの低減(消耗品の長寿命化)などが求められている。
【0003】
マシンの高速化や消耗品の長寿命化には様々な課題があるが、その1つに感光体のクリーニング性と長寿命化の両立があげられる。クリーニング性の改善には、トナーに潤滑剤や研磨剤を添加することが、感光体の長寿命化には感光体の表面層に無機微粒子を含有させることが知られている(例えば特許文献1参照)。これらの技術は、クリーニング性の改善と感光体の長寿命化に有効ではあるが、更なる高速化に対して、両方を満足できるような十分な性能を得ることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−316203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、感光体のクリーニング性と長寿命化の両立を可能とする静電荷像現像用トナー、すなわち、各種画像欠陥の発生を防止し、カブリが低く、画像濃度が高い上に、感光体の膜厚の減耗量を著しく少なくできる静電荷像現像用トナー及びそれを用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記課題は、下記の手段により解決される。
【0007】
1.ベルト転写方式による画像形成方法に用いる静電荷像現像用トナーであって、当該静電荷像現像用トナーのトナー粒子の体積メディアン径(D50)が4.0〜9.0μmの範囲内であり、当該トナー粒子のうちD50×2/3μm以下の粒径のトナー粒子の含有率(体積基準)が10%以下であり、かつ脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0008】
2.感光体表面に形成された潜像を、静電荷像現像用トナーにより現像し、ベルト転写方式を用いて画像形成支持体上に転写した後に定着し画像を形成するとともに、感光体上に残留するトナーをブレードによりクリーニングする画像形成方法であって、当該感光体は表面層に無機微粒子を含有し、前記1に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記手段により、感光体のクリーニング性と長寿命化の両立を可能とする静電荷像現像用トナー、すなわち、各種画像欠陥の発生を防止し、カブリが低く、画像濃度が高い上に、感光体の膜厚の減耗量を著しく少なくできる静電荷像現像用トナー及びそれを用いた画像形成方法を提供することができる。
【0010】
本発明の効果発現の機構は必ずしも明確ではないが、トナーの小粒径成分を減らすことにより、クリーニング性の改善と感光体の長寿命化が両立できる。トナー粒子の小粒径成分は、クリーニングブレードからすり抜け易い。これを防止するには、クリーニングブレードの押圧力を高くする必要があるが、そうすると感光体の磨耗速度も速くなり、ライフが短くなってしまう。トナーに添加する潤滑剤を増やしても、一定量以上は効果がない。
【0011】
また、トナー粒子の小粒径成分を減らすことにより、粒度分布が均一になり、定着での熱エネルギーが均一に伝わり、トナーが均一に定着され、定着性が向上する。また、トナーの表面積が減少するので、添加するシリカやチタニアの量を減らすことができ、定着性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】画像形成の際の、クリーニングブレードの感光体への当接状態を示した図
【図2】加熱ローラと加圧ローラを有する定着装置の断面図
【図3】加熱ローラと加圧ローラを有する定着装置の他の実施形態の断面図
【図4】転写搬送ベルト及びクリーニング装置の近傍を示す部分図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、ベルト転写方式による画像形成方法に用いる静電荷像現像用トナーであって、当該静電荷像現像用トナーのトナー粒子の体積メディアン径(D50)が4.0〜9.0μmの範囲内であり、当該トナー粒子のうちD50×2/3μm以下の粒径のトナー粒子の含有率(体積基準)が10%以下であり、かつ脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする。この特徴は、請求項1及び請求項2に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0014】
なお、本発明の静電荷像現像用トナーは、感光体表面に形成された潜像を、当該トナーにより現像し、ベルト転写方式を用いて画像形成支持体上に転写した後に定着し画像を形成するとともに、感光体上に残留するトナーをブレードによりクリーニングする画像形成方法であって、当該感光体が表面層に無機微粒子を含有する態様の画像形成方法に好適に用いることができる。
【0015】
〔脂肪酸金属塩〕
本発明において、トナーに外添剤として添加される脂肪酸金属塩としては、特に限定されずに公知の種々のものを用いることができ、例えば、炭素数4〜60、好ましくは6〜40、より好ましくは10〜35の飽和又は不飽和の脂肪酸の金属塩を好適に使用することができる。
【0016】
脂肪酸金属塩の脂肪酸部分を得るための脂肪酸としては、具体的には、例えば酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びモンタン酸などの1価の飽和脂肪酸;アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸などの多価の飽和脂肪酸;クロトン酸及びオレイン酸などの1価の不飽和脂肪酸;マレイン酸及びシトラコン酸などの多価の不飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0017】
また、脂肪酸金属塩の金属塩部分を得るための金属としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、銅、ルビジウム、銀、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケルの塩及びその混合物などを挙げることができる。
【0018】
脂肪酸金属塩としては、上記のものを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明において用いられる上記各種脂肪酸金属塩のうち、特に好ましい脂肪酸金属塩は、炭素数10以上の飽和又は不飽和脂肪酸の金属塩である。たとえば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸インジウム、ステアリン酸ガリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、パルミチン酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム等が挙げられ、より好ましくはステアリン酸金属塩である。
【0020】
脂肪酸金属塩は、粒子形状のものであることが好ましく、その平均粒径が体積基準のメディアン径で1〜20μmのものであることが好ましく、より好ましくは3〜15μmである。
【0021】
脂肪酸金属塩の粒子が体積基準のメディアン径で上記の範囲の平均粒径のものであることにより、感光体の表面に極めて薄い脂肪酸金属塩の層を高い均一性で形成させることができ、これにより、クリーニングブレード、フッ素系樹脂粒子などによる感光体の表面の摩耗を抑制することができる。
【0022】
脂肪酸金属塩の粒子の体積基準のメディアン径(D50)は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、脂肪酸金属塩の粒子0.02gを、界面活性剤溶液20ml(脂肪酸金属塩の粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、脂肪酸金属塩の粒子の分散液を調製し、この分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメディアン径とされる。
【0023】
これらの脂肪酸金属塩の添加量は、トナー母体粒子に対して0.02〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.03〜3質量部である。
【0024】
脂肪酸金属塩の添加量がトナー母体粒子に対して上記の範囲にある場合は、感光体の表面に極めて薄い脂肪酸金属塩の層を高い均一性で形成させることができ、これにより、クリーニングブレード、フッ素系樹脂粒子などによる感光体の表面の摩耗を抑制することができる。
【0025】
(その他の外添剤)
本発明のトナーには、上記の脂肪酸金属塩の他に、流動性、帯電性などを改良するために、その他の外添剤を添加することができる。
【0026】
その他の外添剤としては、公知の外添剤を使用することができる。例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
【0028】
その他の外添剤の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部とされる。
【0029】
外添剤の添加方法としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を使用することができる。
【0030】
〔トナー母体粒子の製造方法〕
外添剤を添加する前の、トナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、その他の公知の方法などが挙げられ、特に、微粉の形成が抑制され、また、小粒径のものを容易に得ることができるため、乳化重合凝集法によって得られたトナー母体粒子を用いることが好ましい。
【0031】
トナー母体粒子が粉砕法、乳化分散法などによって製造される場合には、トナー母体粒子を構成する樹脂として、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
一方、トナー母体粒子が懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法などによって製造される場合には、トナー母体粒子を構成する樹脂を得るための重合性単量体として、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレンあるいはスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル誘導体;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸又はメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
また、重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基などの置換基を構成基として有するものであって、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0034】
さらに、重合性単量体として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの多官能性ビニル類を用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0035】
〔着色剤〕
トナー母体粒子が着色剤を含有するものとして構成される場合において、着色剤としては特に限定されず、公知の種々のものを用いることができる。
【0036】
着色剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.5〜20質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0037】
〔離型剤〕
トナー母体粒子が離型剤を含有するものとして構成される場合において、離型剤としては特に限定されず、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、又は酸化型のポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックスを用いることが好ましい。
【0038】
このようにトナー母体粒子が離型剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの定着性が向上される。
【0039】
離型剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.1〜30質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0040】
〔トナー粒子の粒径〕
トナー粒子の粒径は、体積基準のメディアン径(D50)で4.0〜9.0μmであることが好ましい。さらに、好ましくは、5.5〜7.5μmである。体積基準のメディアン径が4.0〜9.0μmであることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できて高画質の印画物が得られる。
【0041】
トナーの体積基準のメディアン径(D50)は「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメディアン径とされる。
【0042】
なお、トナー粒子のうちD50×2/3μm以下の粒径のトナー粒子の含有率(体積基準)も、上記装置を用いて同様に測定・算出することができる。
【0043】
〔現像剤〕
本発明のトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤でもよいが、好ましくは二成分現像剤である。
【0044】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、磁性一成分現像剤のどちらでも使用することができる。
【0045】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いる。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜70μmのものがよい。
【0046】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0047】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0048】
(画像形成装置)
本発明に係る画像形成方法は、特定の有機感光体よりなる感光体10(図1参照)及びクリーニングブレード19が備えられた画像形成装置によって、行うことができる。
【0049】
このような画像形成装置は、具体的には、例えば回転する感光体10を備え、この感光体10の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、分離手段及びクリーニングブレード19を有するクリーニング手段18がこの順に配設されており、さらに定着手段が設けられて構成されたものとすることができる。
【0050】
〔感光体〕
この例の画像形成方法に用いられる感光体10は、有機感光体であって、当該感光体10の表面層に、疎水化度が50以上、疎水化度分布値が25以下であり、かつ、数平均一次粒子径が3〜150nmである無機微粒子が含有されているものである。
【0051】
このような無機微粒子が含有された表面層を有する感光体10によれば、形成される可視画像において画像ボケの発生が抑止され、また形成される可視画像がドット画像であっても劣化が抑止されたものが得られ、高耐久で、鮮鋭性が良好な電子写真画像を形成することができる。
【0052】
なお、無機微粒子は、表面に存在するヒドロキシル基を封鎖して感光体の表面層に含有させることができる。
【0053】
ここに、「有機感光体」とは、電荷発生機能及び/又は電荷輸送機能を有する有機化合物が含有されて電荷発生機能及び/又は電荷輸送機能が発揮される構成の感光体をいい、公知の電荷発生機能を有する有機化合物(以下、「電荷発生物質」という。)及び電荷輸送機能を有する有機化合物(以下、「電荷輸送物質」という。)の少なくとも一方を有して構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とを共に有する高分子錯体を有して構成された感光体など公知の感光体を全て含有する。
【0054】
この感光体10の具体的な構成は、有機感光体として構成され、かつ、その表面層に上記の無機微粒子が含有されていれば特に制限されるものではなく、例えば、導電性支持体上に感光層として電荷発生層及び複数の電荷輸送層が順次積層され、当該複数の電荷輸送層のうち、最上層のものが表面層として無機微粒子を含有するものとされた構成とすることができる。
【0055】
ここに、「電荷発生層」とは、電荷発生物質が含有されて露光により電荷キャリアを発生させる機能を有する層をいい、「電荷輸送層」とは、電荷発生層において発生した電荷キャリアを、感光体10の表面に輸送する機能を有する層をいう。
【0056】
以下、このような感光体10について詳細に説明する。
【0057】
〔導電性支持体〕
このような感光体10に用いられる導電性支持体としては、例えばシート状、円筒状の形状を有するものとすることができ、製造される画像形成装置を小型のものにするためには、円筒状のものであることが好ましい。円筒状の導電性支持体は、回転することによりエンドレスに画像形成に必要な領域を供与することができる。
【0058】
導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケルなどよりなる金属ドラム;アルミニウム、酸化錫、酸化インジウムなどを蒸着したプラスチックドラム;導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムなどを使用することができる。
【0059】
このような導電性支持体としては、アルミニウムよりなる金属ドラムが最も好ましく挙げられる。このようなアルミニウムよりなる金属ドラムは、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウムなどの成分が混合したものよりなる金属ドラムであってもよい。
【0060】
〔中間層〕
このような感光体10においては、導電性支持体と電荷発生層との間に、中間層が設けられていることが好ましい。
【0061】
中間層は、例えば、N型半導性粒子がバインダー樹脂(以下、中間層に用いられるバインダー樹脂を「中間層バインダー樹脂」ともいう。)に分散されてなるものとされる。
【0062】
ここに、N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子である。従って、N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させてなる中間層は、導電性支持体からのホール注入を効率的にブロックすることができ、また、電荷発生層からの電子に対してはブロッキング性が抑制された性質を有する。
【0063】
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)などよりなるものが好ましく、特に酸化チタンよりなる粒子が特に好ましく用いられる。
【0064】
酸化チタンよりなる粒子としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形などの結晶形のものが挙げられ、これらの中でもルチル形の酸化チタン顔料又はアナターゼ形の酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷キャリアの整流性を高め、すなわち電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができるため、N型半導性粒子として最も好ましく用いることができる。
【0065】
N型半導性粒子は、数平均一次粒子径が3.0〜200nm、特に好ましくは5〜100nmの範囲であることが好ましい。
【0066】
N型半導性粒子の数平均一次粒子径は、10,000倍に拡大した電子顕微鏡写真を使用し、ランダムに選択したN型半導性粒子100個の水平方向のフェレ方向径を測定し、その算術平均値をいう。
【0067】
N型半導性粒子は、メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体によって表面処理されたものを用いることが好ましい。メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体は、その分子量が1,000〜20,000であるものを用いることにより、表面処理の効果、すなわち高い整流性を有するものとなって、得られる感光体10を用いて形成された可視画像が黒ポチの発生が防止されたものとなり、また、ドット画像を形成する場合にその再現性が良好なものとなる。
【0068】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体は、具体的には、−(HSi(CH)O)−の構造単位と、これ以外のシロキサン構造単位(以下、「他のシロキサン構造単位」ともいう。)とを有する共重合体であることが好ましい。他のシロキサン構造単位としては、ジメチルシロキサン構造単位、メチルエチルシロキサン構造単位、メチルフェニルシロキサン構造単位及びジエチルシロキサン構造単位などが好ましく挙げられ、特にジメチルシロキサン構造単位が好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の存在割合は、10〜99モル%とされ、好ましくは20〜90モル%である。
【0069】
この共重合体においては、メチルハイドロジェンシロキサン単位以外の単位が含まれていてもよい。
【0070】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれであってもよいが、特にランダム共重合体又はブロック共重合体であることが好ましい。
【0071】
中間層バインダー樹脂としては、N型半導性粒子が高い均一性で分散されることから、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特に、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
【0072】
中間層バインダー樹脂がポリアミド樹脂である場合、その分子量は数平均分子量で5,000〜80,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜60,000である。数平均分子量が5,000未満のポリアミド樹脂を用いた場合は、形成される中間層が膜厚の均一性の低いものとなる傾向がある。一方、数平均分子量が80,000より大きいポリアミド樹脂を用いた場合は、溶媒への溶解性が低いことにより、形成される中間層が、層中に凝集樹脂の発生したものとなりやすく、形成される可視画像に黒ポチが発生したり、ドット画像を形成した場合にこれが劣化したものとなるおそれがある。
【0073】
このようなポリアミド樹脂は、一般的なポリアミドの合成法で合成することができる。このようなポリアミド樹脂について、市販されているものとしては、例えば、「ベスタメルトX1010」、「ベスタメルトX4685」(以上、ダイセル・デグサ(株)製)などが挙げられる。
【0074】
中間層におけるN型半導体粒子の含有割合は、中間層バインダー樹脂100質量部に対して、100〜700質量部であることが好ましい。
【0075】
また、中間層の膜厚は、0.3〜10μmであることが好ましい。
【0076】
このような中間層は、例えば中間層塗布液を調製してこれを導電性支持体の表面に塗布・乾燥することにより、形成することができる。
【0077】
中間層塗布液は、例えばN型半導性粒子及び中間層バインダー樹脂を、適宜の液状媒体に溶解又は分散させることにより調製される。
【0078】
〔電荷発生層〕
この例の感光体10を構成する電荷発生層は、電荷発生物質を含有するものであって、例えばバインダー樹脂(以下、電荷発生層に用いられるバインダー樹脂を「発生層バインダー樹脂」ともいう。)に電荷発生物質が分散されてなる構成ものとすることができる。
【0079】
この電荷発生層に含有される電荷発生物質としては、オキシチタニルフタロシアニンなどのチタニルフタロシアニン付加体顔料を使用することができる。これらのチタニルフタロシアニン付加体顔料は、他のフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などと組み合わせて使用することができる。
【0080】
電荷発生物質の分散媒として発生層バインダー樹脂を用いる場合、発生層バインダー樹脂としては、公知の種々の樹脂を用いることができるが、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂などを好ましく挙げられる。
【0081】
発生層バインダー樹脂を用いた電荷発生層を有する感光体によれば、繰り返し使用に伴う残留電位の増加の程度を極めて抑制することができる。
【0082】
電荷発生層における電荷発生物質の含有割合は、発生層バインダー樹脂100質量部に対して、20〜600質量部であることが好ましい。
【0083】
また、電荷発生層の膜厚は、0.3〜2μmであることが好ましい。
【0084】
このような電荷発生層は、例えば電荷発生層塗布液を調製してこれを中間層の表面に塗布・乾燥することにより、形成することができる。
【0085】
電荷発生層塗布液は、例えば電荷発生物質及び発生層バインダー樹脂を、適宜の液状媒体に溶解又は分散させることにより調製される。
【0086】
〔電荷輸送層〕
この例の感光体10を構成する電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM)を含有するものであって、例えばバインダー樹脂(以下、電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂を「輸送層バインダー樹脂」ともいう。)に電荷輸送物質が分散されてなる構成ものとすることができる。
【0087】
この電荷輸送層における電荷輸送機能は、具体的には、電荷発生層及び電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検出することにより検証することができる。
【0088】
この電荷発生層に含有される電荷発生物質としては、公知の正孔輸送性(P型)のもの、例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることが好ましい。
【0089】
電荷輸送層には、電荷輸送物質及び輸送層バインダー樹脂の他に、必要に応じて、後述する無機微粒子や、酸化防止剤などの添加剤を含有させることができる。
【0090】
電荷輸送物質の分散媒として輸送層バインダー樹脂を用いる場合、輸送層バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられ、さらに、これらの絶縁性樹脂の他に、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどの高分子有機半導体が挙げられる。これらの中では、吸水率が小さく、電荷輸送物質の分散性が良好となり、さらに電子写真特性が良好であるポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0091】
また、表面層となる最上層の電荷輸送層にバインダー樹脂(以下、表面層に用いられるバインダー樹脂を「表面層バインダー樹脂」ともいう。)を用いる場合、表面層バインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂及びポリアリレート樹脂などが好ましい。これらポリカーボネート樹脂又はポリアリレート樹脂は、その分子量が10,000〜100,000であるものであることが好ましい。
【0092】
電荷輸送層における電荷輸送物質の含有割合は、輸送層バインダー樹脂100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましい。また、表面層となる最上層の電荷輸送層における電荷輸送物質の含有割合は、輸送層バインダー樹脂100質量部に対して、30〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜150質量部である。
【0093】
また、電荷輸送層の膜厚は、合計の膜厚が10〜40μmであることが好ましい。電荷輸送層の合計の膜厚が10μm未満である場合は形成される可視画像において画像ムラが発生しやすく、電荷輸送層の合計の膜厚が40μmを超える場合は残電上昇が起こりやすく、従って、形成される可視画像における鮮鋭性が劣化しやすい。
【0094】
また、表面層となる最上層の電荷輸送層の膜厚は、0.5〜10μmであることが好ましい。
【0095】
このような電荷輸送層は、例えば電荷輸送層塗布液を調製してこれを電荷発生層の表面に塗布・乾燥することにより、形成することができる。
【0096】
電荷輸送層塗布液は、例えば電荷輸送物質及び輸送層バインダー樹脂、表面層を形成させる場合にはさらに無機微粒子を、適宜の液状媒体に溶解又は分散させることにより調製される。
【0097】
〔無機微粒子〕
感光体10の表面層に含有される無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物(遷移金属酸化物も含む)よりなるものが好ましい。これらの中でも、シリカ、酸化チタン、アルミナよりなる微粒子が好ましく用いられる。
【0098】
〔数平均一次粒子径〕
本発明に係る無機微粒子は、粒子の凝集防止、画像ボケ防止等の観点から、その数平均一次粒子径が5〜100nmであることが好ましい。
【0099】
無機微粒子の数平均一次粒子径は、10,000倍に拡大した電子顕微鏡写真を使用しランダムに選択した無機微粉末100個のフェレ方向径を測定し、その算術平均値をいう。
【0100】
〔疎水化度及びその分布〕
無機微粒子の疎水化度は、55以上であることが好ましい。また、シリカや酸化チタンなどの表面にヒドロキシル基を多く有する無機微粒子は疎水化度を95以上にするためにはこれらヒドロキシル基を表面処理によりほぼ100%封鎖することが必要となるので、製造コストが高く、工業的に有利ではないため、製造コストと実用性の観点から、疎水化度は90以下がより好ましい。
【0101】
無機微粒子の疎水化度(メタノールウェッタビリティ)は、メタノールに対する濡れ性の尺度で示され、具体的には以下のように測定されるものである。
【0102】
すなわち、内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機微粒子0.2gを秤量して添加し、メタノールを、先端が液体中に浸漬されているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。この無機微粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とし、下記式(1)により疎水化度が算出される。
【0103】
式(1):疎水化度(メタノールウェッタビリティ)=(a/(a+50))×100
無機微粒子の疎水化度分布値は、25以下であることが好ましい。当該無機微粒子の疎水化度分布値は、以下の手順に従って測定されるものである。
(1)51本の遠沈管に、無機微粒子を0.2gずつ入れる。
(2)駒込ピペットを用いて、遠沈管にそれぞれ2vol%間隔で、0〜100vol%の濃度のメタノール溶液を各7ml入れ、密栓状態にする。
(3)ターブラーミキサーを用いて90rpmで30秒間分散させる。
(4)遠心分離器によって3500rpm、10分間遠心分離させる。
(5)沈降容積を測定し、全沈降容積(全部が沈降した容積)を100%としたときの各沈降容積(%)を算出する。
(6)算出した各沈降容積を基に、横軸メタノール濃度(vol%)、縦軸沈降容積(vol%)のグラフを作製し、当該グラフから沈降容積が100%のときのメタノール濃度(vol%)及び沈降容積が10%のときのメタノール濃度(vol%)を読み取り、[{沈降容積が100%のときのメタノール濃度(vol%)}−{沈降容積が10%のときのメタノール濃度(vol%)}]を算出することにより、測定される。
【0104】
なお、疎水化度分布値とは、[{沈降容積が100%のときのメタノール濃度(vol%)}−{沈降容積が10%のときのメタノール濃度(vol%)}]で表される値をいう。
【0105】
無機微粒子の疎水化度及び疎水化度分布値は、シリカ粒子などの無機微粒子母体粒子の表面を、トリメチルシリル化剤などを用いて表面処理することにより、調整することができる。トリメチルシリル化剤としては、特に、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるものを用いることが好ましい。
【0106】
なお、以下に示すトリメチルシリル化剤以外の多官能シリル化剤や高炭素数のトリアルキルシリル化剤を用いた場合には、得られる無機微粒子が、疎水化度が低いものとなったり、疎水化度分布値が大きなものとなりやすい。
【0107】
一般式(1):((CHSi)NR
〔一般式(1)中、Rは水素又は低級アルキル基である。〕
以上において、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜5のものが好ましく、炭素数1〜3のものがより好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0108】
一般式(2):(CHSiX
〔一般式(2)中、Xはハロゲン原子、−OH、−OR、又は−NR、から選ばれる基(ただし、Rは一般式(1)のRと同じである。)である。〕
以上において、ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、特に塩素原子が好ましい。
【0109】
上記一般式(1)で示されるトリメチルシリル化剤としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、N−メチル−ヘキサメチルジシラザン、N−エチル−ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチル−N−プロピルジシラザンなどを例示することができ、反応性の良さからヘキサメチルジシラザンを用いるのが特に好ましい。
【0110】
また、上記一般式(2)で示されるトリアルキルシリル化剤としては、トリメチルクロロシラン、トリメチルシラノール、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、プロポキシトリメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシランなどを例示することができ、反応性の良さからトリメチルシラノールを用いるのが特に好ましい。
【0111】
以上のトリアルキルシリル化剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0112】
表面処理の具体的な方法としては、無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤とを、水蒸気の存在下で反応させる方法が好ましい。この反応に際して、水蒸気の分圧は4〜20kPaとすることが好ましく、より好ましくは5〜15kPaである。
【0113】
無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応において、水蒸気の分圧が4kPaより高い場合は、得られる無機微粒子を、疎水化度を高いものとすることができず、また疎水化度の分布もブロードなものとなる。一方、水蒸気の分圧が20kPaより低い場合は、疎水化度の分布がブロードになると共に、その均一性が損なわれやすい。
【0114】
また、無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応は、短い反応時間でより疎水化度の高い無機微粒子を得ることができることから、トリメチルシリル化剤の気相の分圧を好ましくは50〜200kPa、より好ましくは80〜150kPaとなるような条件下で行うことが好ましい。
【0115】
さらに、無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応は、トリメチルシリル化剤と水蒸気とのみからなる雰囲気中において反応を実施してもよいが、通常は、これらを窒素、ヘリウムなどの不活性ガスにより希釈して反応に供する。この場合、反応雰囲気の全圧は、一般的に150〜500kPa、好適には150〜250kPaとされる。
【0116】
なお、無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応性をより高いものとする観点から、必要に応じてアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミンなどの塩基性ガス、特に好ましくはアンモニアを反応雰囲気中に共存させてもよい。このような塩基性ガスの分圧は、1〜100kPaとされることが好ましい。
【0117】
無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応における反応温度は、疎水化反応の反応性の良好さやトリメチルシリル化剤の分解の危険性を考慮して、例えば130〜300℃とすることが好ましく、より好ましくは150〜250℃である。一般には、上記範囲において反応温度が高いほど、得られる無機微粒子の疎水性が高くなる傾向がある。
【0118】
この表面層中には、無機微粒子の分散性を助けるためにバインダー樹脂が含有されている。このようなバインダー樹脂としては、ポリカーボネート及びポリアリレートなどが好ましい。これらポリカーボネート及びポリアリレートの分子量は、10,000〜100,000であることが好ましい。
【0119】
このような無機微粒子の添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましい。無機微粒子の添加量がバインダー樹脂100質量部に対して5質量部未満である場合は、表面層の摩耗が過度に生じ、擦り傷などが発生して形成されるハーフトーン画像が荒れたものとなりやすい。一方、無機微粒子の添加量がバインダー樹脂100質量部に対して50質量部を超える場合は、表面層が脆弱なものとなってクラックなどが発生しやすい。
【0120】
〔液状媒体〕
中間層、電荷発生層、電荷輸送層、表面層などの層形成に用いられる各層塗布液の液状媒体としては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができる。具体的には、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブなどが挙げられ、特に、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトンなどが好ましい。
【0121】
これらの液状媒体は、1種単独であるいは2種以上を混合した混合溶媒として用いることができる。
【0122】
また、これらの各層塗布液は、実際の塗布工程に供する前に、塗布液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルターなどのフィルターによって濾過することが好ましい。フィルターとしては、例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)などを、各層塗布液の特性に応じて選択し、これを用いて濾過することが好ましい。
【0123】
各層塗布液の塗布方法としては、例えばスライドホッパー型塗布装置を用いる方法が挙げられ、その他に、浸漬塗布法、スプレー塗布法などの塗布方法を採用することができる。この感光体10においては、表面層の形成には円形スライドホッパー型塗布装置を用いる方法を採用することが最も好ましい。
【0124】
スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法は、低沸点溶媒を用いた分散液を塗布液として用いる場合に最も適しており、円筒状の感光体を製造する場合は、特に、特開昭58−189061号公報などに開示されている円形スライドホッパー型塗布装置などを用いて各層塗布液を塗布することが好ましい。
【0125】
〔クリーニング手段〕
クリーニング手段18は、図1に示されるように、クリーニングブレード19を有しており、このクリーニングブレード19は、例えば、ウレタンゴムなどの弾性体よりなり、その基端部分19Aが支持部材17によって支持されると共に、先端部分19Bが感光体10の表面に当接されるよう設けられており、クリーニングブレード19の基端側から伸びる方向は、当接箇所における感光体10の回転による移動方向と反対方向である、いわゆるカウンター方向とされている。
【0126】
クリーニングブレード19の感光体10への当接荷重Pは、15〜30N/mであることが好ましい。クリーニングブレード19の感光体10への当接荷重Pが15N/m未満である場合は、クリーニング不良が発生しやすく、クリーニングブレード19の感光体10への当接荷重が30N/mより大きい場合は、クリーニングブレードによる感光体の表面を擦過する力が過度に強く、その結果、使用に従って感光体の表面層の減耗量が増加していくことなどに起因して、得られる可視画像に筋状の画像欠陥が発生しやすい。
【0127】
また、クリーニングブレード19の感光体10への当接角θは、5〜35°であることが好ましい。
【0128】
また、クリーニングブレード19の自由長Lは、図1に示すように、支持部材17に接触しない領域における基端部から、力を加えない変形前の状態におけるクリーニングブレードの先端部までの長さをいい、自由長Lは、3〜15mmであることが好ましい。
【0129】
また、クリーニングブレード19の厚さは、0.5〜10mmであることが好ましい。
【0130】
さらに、クリーニングブレード19の硬度は、65〜80であることが好ましい。
【0131】
クリーニングブレード19の感光体10への当接荷重Pは、クリーニングブレード19を感光体10に当接させたときの圧接力P’の法線方向ベクトル値である。また、当接角θは、感光体10の当接点における接線Xと変形前の状態におけるクリーニングブレード(図1において点線で示す。)とのなす角である。
【0132】
クリーニングブレード19の当接荷重Pは、バネ荷重である場合はバネ定数とバネの変異量から計算されるものである。また、重り荷重である場合は、荷重重さから計算されるものである。その他の荷重方法の場合は重量計等を用いて直接荷重が測定される。
【0133】
クリーニングブレード19を構成する弾性体の材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッソゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンゴムなどが一般に用いられており、これらの中でも、ウレタンゴムは他のゴムに比して摩耗特性が優れている点で特に好ましい。例えば、特開昭59−30574号公報に開示されたポリカプロラクトンエステルとポリイソシアネートとを反応させて硬化させて得られるウレタンゴムなどを用いることが好ましい。
【0134】
クリーニングブレード19の使用に伴う反転を抑制するために、これを構成する弾性体の材料の硬度及び反発弾性を共にコントロールすることが好ましい。具体的には、温度25±5℃における当該弾性体のJIS A 硬度を65〜80とすると共に、反発弾性を20%より大きく、かつ75%以下とするコントロールを行うことが好ましい。
【0135】
ここに、JIS A 硬度及び反発弾性は、JIS K 6301の加硫ゴム物理試験方法に基づいて測定されるものである。
【0136】
〔定着器の構成〕
本発明において、使用可能な定着装置の実施形態について説明する。
【0137】
図2は、本発明で使用可能な定着装置の一例である加熱ローラと加圧ローラを有するタイプの断面図である。図2に示す定着装置60aは、加熱ローラ71aと、これに当接する加圧ローラ72aとを有するものである。なお、図2中でTは転写材(転写紙)P上に形成されたトナー画像である。
【0138】
加熱ローラ71aは、被覆層82aが芯金81aの表面に形成され、芯金81a内には線状ヒータによりなる加熱部材75aが配置されている。加熱部材としては、たとえば、ハロゲンヒータ等が好適なものの一つである。
【0139】
芯金81aは、金属から構成され、その内径は10〜70mmとされる。芯金81aを構成する金属材料は特に限定されるものではないが、たとえば、鉄、アルミニウム、銅等の金属やこれらの合金を挙げることができる。芯金81aの厚さ(肉厚)は0.1〜15mmが好ましく、省エネ化の要請を伴う薄膜化と加熱ローラとしての強度確保とをバランスよく両立させる視点でその材質や厚さを設定することができる。たとえば、厚さ0.57mmの鉄製の芯金と同等の強度をアルミニウム製の芯金で実現するには、厚さを0.8mmにする必要がある。
【0140】
被覆層82aは、公知の弾性体で形成することが可能である。被覆層82aを構成する弾性体は、加熱ローラを構成する厚さ0.2mm以上0.4mm以下の弾性層とした時に反発弾性率が30%以上70%以下となるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、シリコーンゴム及びシリコーンスポンジゴムがその代表例の1つといえる。すなわち、シリコーンゴムは、厚さ0.2mm以上0.4mm以下の弾性層とした時に上記範囲の反発弾性率を有することができ、しかも、良好な耐熱性を発現することができる。
【0141】
また、シリコーンゴムは白金触媒による付加反応により単量体を重合させて形成されるものまであるが、副生成物を発生させずに重合体を形成することができるので、重合体中に不純物が含まれない分、寸法安定性に優れた弾性層の形成が可能である。
【0142】
また、被覆層82aは弾性体表面に公知のフッ素樹脂の層を形成させることも可能である。フッ素樹脂の具体例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFR)やテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルビルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。この様に、被覆層82a表面にフッ素樹脂の層を設けることにより、被覆層82a表面に紙粉等によるキズがつきにくくなるので、キズ部にトナーが付着して発生する画像汚れの問題を回避することができる。
【0143】
次に、加圧ローラ72aは、弾性体からなる被覆層84aが芯金83aの表面に形成されてなる。被覆層84aを構成する弾性体としては、特に限定されるものではなく、ポリウレタンやシリコーンゴム等の各種軟質ゴムやスポンジゴムが挙げられ、その中でも、前述したシリコーンゴムやシリコーンスポンジゴムが好ましい。被覆層84aの厚さは0.1〜30mmが好ましく、0.1〜20mmがより好ましい。
【0144】
また、本発明では加熱ローラ71の表面温度を90〜150℃に設定することが好ましく、90〜130℃がより好ましいものである。加熱ローラ71のニップ幅は8〜40mmが好ましく、11〜30mmがより好ましい。さらに、定着装置60aの定着線速は80〜640mm/secに設定することが好ましい。
【0145】
図3に示す定着装置60bは、図2に示す定着装置と同様、加熱ローラ71bと加圧ローラ72bを有し、加熱ローラ71bの内部には加熱部材としてのハロゲンランプ75bを有している。図3の定着装置60bは、加圧ローラ72bが柔らかなことから、加熱ローラ71bと加圧ローラ(以下、ソフトローラともいう)72bとの間にニップ部Nが形成され、ニップ部Nを介して転写材に熱と圧力が加わり、転写材P上のトナー画像を定着することができる。
【0146】
加圧ローラ72bは、鉄等で作製した厚さ5mm〜10mmの円筒状の芯金83bと、芯金83bの外周面にある程度の厚さと弾性を付与させた被覆層84bを有する。被覆層84bは、たとえば、厚さが3mm〜15mm、ゴム硬度が30〜50Hs(JIS、Aゴム硬度)の柔らかめの材質から構成される。
【0147】
被覆層84bを構成する弾性材料としては、加熱ローラ71bとの間に十分なニップを形成することができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、加熱ローラ71bの被覆層82bで説明したシリコーンゴムをはじめ、ポリウレタンゴム等の公知のゴム材料が挙げられる。また、スポンジゴムや発泡ゴム、フォームラバーと呼ばれる多孔質のゴム材料は、連続あるいは不連続の空隙を有することから、空隙の存在により加圧ローラの弾性が向上することによりニップ幅をより大きく確保することができる。さらに、多孔質のゴム材料で被覆層84bを形成することにより、空気のもつ断熱性を被覆層84bに作用させることができる様になるので、加圧ローラの熱容量を向上させてより効率のよい定着を実現させることが可能である。スポンジゴムをはじめとする多孔質のゴム材料としては、たとえば、シリコーンスポンジゴム、ネオプレンスポンジゴム、ウレタンフォーム、エチレンプロピレンスポンジゴム、ニトリルスポンジゴム等が挙げられる。
【0148】
図3の定着装置60bは、加圧ローラ72bが柔らかなことから、加熱ローラ71bとの間に形成される定着ニップを広く確保した状態でトナー画像を定着することができる。すなわち、広めの定着ニップを確保できることから、定着装置と転写材との間に広い接触面積が得られ、また、接触時間を長めに確保でき、さらには、定着時に提供される熱量を効率よく利用できる状態でトナー画像を定着することができる。特に、被覆層84bを多孔質ゴム等の連続あるいは不連続の気泡を有するもので作製した加圧ローラではその効果はより顕著に発現されることになる。
【0149】
〔ベルト転写方式〕
本発明の静電荷像現像用トナーは、ベルト転写方式による画像形成方法に用いることを特徴とする。当該画像形成方法において用いる転写搬送ベルトを図4に示す。
【0150】
図4は、転写搬送ベルト示す部分図である。
【0151】
転写搬送ベルト71は、駆動ローラ711及び従動ローラ712に張架されるとともに、駆動手段(不図示)により矢印B方向に駆動され、転写紙Pを載置搬送する。転写搬送ベルト71の張架に際し、必要に応じ転写搬送ベルト71に緊張を与える緊張手段、例えばテンションローラ等を設けてもよい。
【0152】
転写搬送ベルト71の内側にあって、感光体10に対向する位置には、転写紙Pを正に帯電させて転写紙Pに感光体10の表面上のトナーを転写させる転写部材72が配設されている。本実施の形態では、転写部材72として転写ローラを用いている。転写部材72は、正の電圧が印加され、転写紙Pに圧力を加えながら回転する。これにより、転写紙Pには、感光体10に形成されたトナー像が転写される。
【実施例】
【0153】
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0154】
《トナーの作製》
以下のようにしてトナーを作製した。
【0155】
(コア用ラテックスの作製)
まず、撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着した反応容器中に、純水3000質量部、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部を添加した後、75℃に昇温して、活性剤溶液を調製した。続いて、5%過硫酸カリウム水溶液60質量部を活性剤溶液に添加後、以下の化合物からなる混合液を活性剤溶液中に3時間かけて滴下し、さらに、窒素雰囲気下で1時間の重合反応を行い、「コアポリマー」を作製した。
【0156】
スチレン 560質量部
n−ブチルアクリレート 160質量部
メタクリル酸 85質量部
次に、反応溶液中に、純水1000質量部にポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部と「コアポリマー」180質量部を投入し、「界面活性剤溶液」(水系媒体)を調製した。
【0157】
次に、別途用意した反応容器に以下の化合物を投入して溶液を調製した。
【0158】
スチレン 168質量部
n−ブチルアクリレート 78質量部
メタクリル酸 26質量部
n−オクチルメルカプタン 4質量部
この溶液を70℃に昇温させた後、攪拌状態の下、脂肪酸エステル系化合物であるベヘン酸ベヘニル118質量部を少量ずつ添加することにより、「ワックス含有モノマー溶液」を作製した。
【0159】
前記界面活性剤溶液を窒素雰囲気下で攪拌状態の下、73℃に昇温後、上記ワックス含有モノマー溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX(エム・テクニック(株)製)」により、73℃にて10分間分散処理を行って乳化分散液を得た。前記乳化分散液を投入した反応容器に、攪拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着し、窒素雰囲気下で攪拌状態の下、温度を78℃に昇温させた。
【0160】
続いて、上記乳化分散液中に5%過硫酸カリウム水溶液80質量部を投入し、10分後にn−オクチルメルカプタン4質量部投入し、1時間かけて重合反応を行った{第一段(NP)重合}。
【0161】
さらに、この反応系を35分かけて80℃まで昇温させた後に、5%過硫酸カリウム水溶液125質量部を添加し、以下の化合物からなる混合溶液を1時間かけて滴下し、さらに85℃まで昇温させた後に重合反応を1時間30分かけて行った{第二段(SP)重合}。
【0162】
スチレン 270質量部
n−ブチルアクリレート 125質量部
メチルメタクリレート 43質量部
n−オクチルメルカプタン 7質量部
以上の手順に基づいて「コア用ラテックス」を作製した。
【0163】
(シェル用ラテックスの作製)
撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着した反応容器中に、純水3000質量部、ドデシル硫酸ナトリウム7質量部を添加した後、80℃に昇温して、活性剤溶液を調製した。続いて、5%過硫酸カリウム水溶液200質量部を活性剤溶液に添加後、以下の化合物からなる混合液を活性剤溶液中に3時間かけて滴下し、さらに、90℃に昇温した後に窒素雰囲気下で1時間の重合反応を行った。
【0164】
スチレン 500質量部
n−ブチルアクリレート 185質量部
メタクリル酸 175質量部
n−オクチルメルカプタン 14質量部
重合反応後、冷却処理を行い、「シェル用ラテックス」を作製した。
【0165】
(着色剤分散液の作製)
ドデシル硫酸ナトリウム10質量%の水溶液900質量部を攪拌しながら、着色剤「モーガルL」210質量部を徐々に添加し、次いで、攪拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤分散液を作製した。これを、「着色剤分散液」とする。この着色剤分散液中の着色剤粒子の平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、120nmであった。
【0166】
(トナー母体粒子1の作製)
(1)コア粒子1の作製
攪拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
「コア用ラテックス」 (固形分換算)475質量部
イオン交換水 900質量部
「着色剤分散液」 (固形分換算)50質量部
を投入して攪拌した。反応容器中の温度を30℃に調製した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
【0167】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物40質量部をイオン交換水40質量部に溶解した水溶液を、攪拌下、30℃にて10分間かけて反応系に添加し、3分間放置した後に昇温を開始して、この系を60分間かけて65℃まで昇温させて会合を開始した。この状態で「マルチサイザー3(ベックマンコールター社製)」にて会合粒子の粒径を測定し、粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)が所定の値になった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水200質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ「コア粒子1」を作製した。
【0168】
(2)コア・シェル粒子1の形成
次に、上記「コア粒子1」を作製した反応容器を80℃にして、そこへ「シェル用ラテックス」25質量部(固形分換算)を添加した。更に、塩化マグネシウム・6水和物8質量部をイオン交換水8質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、85℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり攪拌を継続した。この様にして「コア粒子1」表面に「シェル用ラテックス」を凝集・融着させ、その後、90℃で2時間熟成処理を行った。
【0169】
熟成処理後、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水200質量部に溶解した水溶液を添加し、8℃/分の冷却速度で30℃まで冷却してコア・シェル粒子からなる「トナー母体粒子1」の分散液を得た。
【0170】
(3)洗浄、及び、乾燥
「トナー母体粒子1」の分散液をバスケット型遠心分離機「MARKIII型式番号60×40(松本機械(株)製)」を用いて固液分離を行うことにより、「トナー母体粒子」のトナーケーキを形成した。そして、濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで前記バスケット型遠心分離機を用いて「トナー母体粒子1」の洗浄と固液分離を繰り返し行った。濾液が所定の電気伝導度になった後、乾燥装置「フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業社製)」を用いて、含水量が0.5質量%をなるまで乾燥処理を行うことにより「トナー母体粒子1」を作製した。
【0171】
(トナー母体粒子2〜10の作製)
上記「コア粒子1」及び「コア・シェル粒子1」の形成において、反応時間、反応容器中の温度、pH、攪拌回転数、塩化マグネシウム・6水和物の添加量等を適宜変化させることにより、トナー母体粒子2〜10を作製した。
【0172】
(トナー1の作製)
上記で作製した「トナー母体粒子1」100質量部に、外添剤として疎水性シリカ(数平均一次粒子径30nm)1.3質量部、疎水性チタニア(数平均一次粒子径20nm)0.6質量部、チタン酸カルシウム0.1質量部、ステアリン酸亜鉛(体積基準メディアン径10μm)0.15質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(三井三池化工社製)を用い、周速35m/secで25分間混合してトナー1を作製した。トナー1の体積基準におけるメディアン径(D50)は3.0μm、D50×2/3μm以下の含有率は8%であった。
【0173】
(トナー2〜12の作製)
トナー1の作製において、トナー母体粒子及びステアリン酸亜鉛の添加量を「表1」に記載の組合せに変更した以外は同様にしてトナー2〜12を作製した。トナー2〜12の体積基準におけるメディアン径(D50)及びD50×2/3μm以下の含有率はそれぞれ表1に示す値であった。
【0174】
【表1】

【0175】
(コートキャリアの作製)
フェライトコア粒子100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂微粒子を5質量部とを、攪拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間攪拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコア粒子の表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メディアン径60μmのキャリアを得た。
【0176】
キャリアの体積基準メディアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「へロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定した。
【0177】
(現像剤の調製)
上記キャリアにトナー1〜12をそれぞれトナー濃度が6質量%になるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社)に投入し、回転速度45rpmで30分間混合し「現像剤1〜12」を調整した。
【0178】
《感光体》
感光体1の作製
下記のように感光体1を作製した。
【0179】
(中間層)
洗浄済み円筒状アルミニウム基体(切削加工により十点表面粗さRz:0.81μmに加工した)上に、下記中間層塗布液を浸漬塗布法で塗布し、120℃30分で乾燥し、乾燥膜厚5μmの中間層を形成した。
【0180】
下記中間層分散液を同じ混合溶媒にて二倍に希釈し、一夜静置後に濾過(フィルター;日本ポール社製リジメッシュフィルター、公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)し、中間層塗布液を作製した。
【0181】
(中間層分散液の作製)
バインダー樹脂:ポリアミド樹脂「ベスタメルトX4685」(ダイセル・デグサ(株)製) 1部
ルチル形酸化チタン(一次粒径35nm;末端にヒドロキシル基を有するジメチルポリシロキサンで表面処理を行い、疎水化度を33に調製した酸化チタン顔料) 5.6部
エタノール/n−プロピルアルコール/THF(45/20/30質量比) 10部
上記成分を混合し、サンドミル分散機を用い、10時間、バッチ式にて分散して、中間層分散液を作製した。
【0182】
(電荷発生層:CGL)
電荷発生物質(CGM):オキシチタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線によるX線回折のスペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2℃)27.3°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシン顔料) 24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製) 12部
2−ブタノン/シクロヘキサン=4/1(v/v) 300部
上記組成物を混合し、サンドミルを用いて分散し、電荷発生層塗布液を調製した。この塗布液を前記中間層の上に浸漬塗布法で塗布し、25℃にて10分間乾燥させることにより乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0183】
(電荷輸送層1:CTL1)
電荷輸送物質:4,4′−ジメチル−4″−(α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン 225部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 6部
ジクロロメタン 2000部
シリコーンオイル(KF−54:信越化学社製) 1部
を混合し、溶解して電荷輸送層塗布液1を調製した。この塗布液を前記電荷発生層の上に浸漬塗布法で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚18.0μmの電荷輸送層1を形成した。
【0184】
(電荷輸送層2:CTL2)
無機粒子:シリカ粒子(ヘキサメチルシラザンで表面処理された平均一次粒径30nmのシリカ:疎水化度70、疎水化度分布値20) 60部
電荷輸送物質:4,4′−ジメチル−4″−(α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン 150部
ポリカーボネート(Z300:三菱ガス化学社製) 300部
酸化防止剤(Irganox1010:日本チバガイギー社製) 12部
THF:テトラヒドロフラン 2800部
シリコーンオイル(KF−54:信越化学社製) 4部
を混合し、分散・溶解して電荷輸送層塗布液2を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層1の上に円形スライドホッパ型塗布機で塗布し、110℃70分の乾燥を行い、乾燥膜厚2.0μmの電荷輸送層2を形成し、感光体1を作製した。
【0185】
〔評価方法〕
評価用の画像形成装置としては、高速の画像形成装置「bizhub PRO 1050e(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)」の感光体上に現像されたトナーの像支持体への転写方式をベルト転写方式に改造したものについて、以下の評価を実施した。
【0186】
上記感光体1と、現像剤1〜12を、順次現像装置に装填した。評価紙はJペーパー(秤量64g/m:コニカミノルタビジネスソリューションズ社製)を用い、常温常湿環境(20℃55%RH)下で、印字率が6%のオリジナル画像(文字画像、線画像がそれぞれ1/2等分にあるA4サイズの画像)を200万枚プリントした。初期、50万、100万、150万、200万枚プリント後に下記評価を行った。200万枚プリント後の結果を表2に示す。
【0187】
(感光体の膜厚減耗量)
実写テスト前後の感光層膜厚の変化量(減耗量)を評価した。感光層の膜厚はFischer社製EDDY560Cで測定し、下記の基準で評価した。減耗量は小さい方が良好であり、200万プリントで8.0μm未満であれば実用上問題ないと判断できる。
【0188】
(トナーフィルミング)
感光体上にトナーフィルミングの発生の有無を観察し、このトナーフィルミングと一致した画像ムラ(白筋や黒筋等)の発生の有無をベタ白画像又はベタ黒画像で下記の基準で評価した。
◎:感光体上にトナーフィルミングの発生がなく、トナーフィルミングによる画像ムラの発生が見られない(良好)
○:感光体上にトナーフィルミングの発生がわずかに見られるが、該トナーフィルミングに対応した画像ムラの発生が肉眼では見分けにくい(実用上問題なし)
×:感光体上にトナーフィルミングの発生が見られ、該トナーフィルミングに対応した画像ムラの発生が肉眼で判別できる(実用上問題あり)。
【0189】
(ブラックスポット)
周期性が感光体の周期と一致し、ブラックスポット(苺状のスポット画像)がA4サイズ当たり何個あるかで判定した。
◎:0.4mm以上のブラックスポットの発生頻度:0個/A4(良好)
○:0.4mm以上のブラックスポットの発生頻度:1個/A4以上、5個/A4以下が1枚以上発生(実用上問題なし)
×:0.4mm以上のブラックスポットの発生頻度:5個/A4以上が1枚以上発生(実用上問題あり)。
【0190】
(筋状の画像欠陥)
感光体上に筋の発生の有無を観察し、この筋と一致したハーフトーン画像の白筋や黒筋等の画像欠陥の発生の有無を下記の基準で評価した。
◎:感光体上に筋傷の発生がなく、ハーフトーン画像の白筋や黒筋等の画像欠陥の発生が見られない(良好)
○:感光体上の小さな筋傷の発生が見られるが、ハーフトーン画像の白筋や黒筋等の画像欠陥の発生が見られない(実用上問題なし)
×:感光体上に筋傷の発生が見られ、ハーフトーン画像にも白筋や黒筋等の画像欠陥の発生がある(実用上問題あり)。
【0191】
(カブリの評価)
200万プリント後に出力した白紙画像を、マクベス社製RD−918を使用して、プリントされていない評価紙の濃度を0.000としたときの相対濃度を反射濃度で測定した。0.010以下のカブリの発生は実用上問題にならないレベルと判断できる。
【0192】
(画像濃度)
200万プリント後に出力したベタ黒画像を、マクベス社製RD−918を使用し反射濃度で測定した。濃度が高い方が良好であり、濃度1.2以上であれば、実用上問題ないレベルと判断できる。
【0193】
以上の各種評価結果を表2にまとめて示す。
【0194】
【表2】

【0195】
表2に示した結果から明らかなように、本発明に係る実施例では、比較例に対して、感光体の膜厚の減耗量が著しく少ない。また、各種画像欠陥の発生が防止されている。その上、カブリが低く、画像濃度が高い。
【符号の説明】
【0196】
10 感光体
17 支持部材
18 クリーニング手段
19 クリーニングブレード
19A 基端部分
19B 先端部分
60a、60b 定着装置
71a、71b 加熱ローラ
72a、72b 加圧ローラ
82a、82b 被覆層(弾性層)
T トナー
71 転写搬送ベルト
711 駆動ローラ
712 従動ローラ
72 転写部材
73 転写搬送ベルト用クリーニング装置
P 転写紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト転写方式による画像形成方法に用いる静電荷像現像用トナーであって、当該静電荷像現像用トナーのトナー粒子の体積メディアン径(D50)が4.0〜9.0μmの範囲内であり、当該トナー粒子のうちD50×2/3μm以下の粒径のトナー粒子の含有率(体積基準)が10%以下であり、かつ脂肪酸金属塩を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
感光体表面に形成された潜像を、静電荷像現像用トナーにより現像し、ベルト転写方式を用いて画像形成支持体上に転写した後に定着し画像を形成するとともに、感光体上に残留するトナーをブレードによりクリーニングする画像形成方法であって、当該感光体は表面層に無機微粒子を含有し、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−197805(P2010−197805A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43764(P2009−43764)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】