説明

静電荷像現像用トナー

【課題】 離型剤が微小かつ均一に分散し、長期保存の後でも離型剤の分散状態が良好に維持されることにより長期保存の後でもオフセット画像を防止し紙送り不良等の機器トラブルを予防して良好な画像を現像することができる静電荷像現像用トナーを提供する。
【解決手段】 エステル系ワックスとカルナウバろうワックスとの混合物からなる離型剤、結着樹脂および着色剤を含有した静電荷像現像用トナー。前記エステル系ワックスの融点が70〜75℃であり、前記カルナウバろうワックスの融点が80〜86℃であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電記録、電子写真等(以下、「電子写真等」と記す。)において使用される静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真等において、オフセット画像や紙送り不良を防止する手段として、静電荷像現像用トナー(以下、「トナー」と記す場合がある。)に適量の離型剤を添加することが良く知られている。
近年、高画質化の要求から電子写真等の画像には豊かな光沢(グロス)表現が望まれている。この光沢表現性は、静電荷像現像用トナー中のワックス成分の分散に大きく影響される。さらにまた、近年は省エネルギーを目的として、トナーの定着温度を下げるべく、離型剤を多めに添加することも良く行われており、例えばトナー中に5〜10質量%程度もの離型剤が添加されてトナーに低エネルギー定着性を付与することがある。トナーに離型剤が添加される場合、トナー粒子の中で離型剤は微小かつ均一に分散することが必要であるが、溶融混練法によるトナーにおいては、結着樹脂、顔料、離型剤等からなる原材料の温度、粘度、時間を制御して、良好な離型剤の分散状態を達成することは困難であった。また、製造当初は問題がないトナーであっても、トナーを長期間保存した場合に結着樹脂との相溶性が低すぎるために離型剤がトナー中から分離し、排除されて外部へしみ出してしまうことでトナーの製造当初の流動性、熱特性、帯電性が変化してしまい、結果として画像の異常や装置の障害をもたらすことがある。すなわち、トナーにおいて良好な離型剤の分散状態を長期間維持することにも問題があった。
【0003】
混練粉砕法によるトナーの場合、トナー粒子中のワックスの分散状態は、溶融混練時のトナー樹脂中のワックス分散状態がほぼ反映される。
トナー樹脂中のワックスの分散が不均一であると、該樹脂を粉砕して粉状にしたトナー粒子において、ワックスの含有率及びその形状が不均一になりやすく、場合によってはワックスの全く入っていない粒子やワックス成分が大半を占める粒子を含む可能性もあるため、粒子ごとの熱特性のバラつきが大きくなりやすい。
このようなワックス分散が不均一なトナーを用いると、定着画像において前記光沢表現性が乏しくなるだけでなく、電子写真等の装置内部においてオフセット、熱ローラーへの巻きつき等の問題が単独もしくは複合的に起こる可能性がある。また、ワックス分散が不均一なトナーは、トナーからワックス成分が遊離して電子写真装置内部の感光体に付着する現象(ブラック・スポット)や現像スリーブなどに固着する現象(フィルミング)を生じやすいという別の問題も引き起こすことが知られている。
さらに、ワックス分散が不均一であることは前記トナーを構成する他の成分の含有率の不均一も同時に引き起こす。例えばトナー粒子中の帯電制御剤の含有率が不均一となることによるトナー粒子の帯電不良、これに伴うトナーの感光体への飛び散り、基材表面の地汚れ、及び帯電不良トナー回収量の増加という問題を引き起こす恐れがある。また、顔料など着色料の含有率が不均一となることによるトナー粒子の色調のばらつき、これに伴う画像の不鮮明を引き起こす恐れがある。
【0004】
トナー樹脂を構成する結着樹脂とワックスとはそれらの構成元素及び化学構造の違いにより相溶性が乏しく、トナー樹脂の混練過程で相分離してワックスの均一な分散が阻害されやすい。そこで、トナー樹脂中におけるワックスをより均一に分散するために、トナー樹脂中に分散助剤を同時添加する方法が提案されている。このような分散助剤としては、例えばスチレンポリマーにオレフィンをブロック共重合してなるもの等が公知である(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
しかしながら、ワックスの分散助剤を用いるトナー製法では、分散助剤を別途調達する必要があるためにコスト増の要因となる問題があり、さらに、高分子である分散助剤を添加することにより結着樹脂の熱特性が変動し、電子写真等の装置の定着機構に合わせてトナーの熱特性を設計する際の弊害となる恐れがあるため、分散助剤を用いずにワックス成分を均一に微分散させる方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−127718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トナー粒子において、離型剤が微小かつ均一に分散し、長期保存の後でも離型剤の分散状態が良好に維持されることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の技術的構成により、前記課題を解決できたものである。
本発明の静電荷像現像用トナーは、エステル系ワックスとカルナウバろうワックスとの混合物からなる離型剤、結着樹脂、着色剤および帯電制御剤を含有したことを特徴とする。
前記エステル系ワックスの融点が70〜75℃であり、前記カルナウバろうワックスの融点が80〜86℃であることが好ましい。
また、前記離型剤が0.1〜20質量%含有することが好ましい。
また、静電荷像現像用トナーは、溶融混練法によって製造されたことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、分散助剤を用いずにワックスを良好にトナー樹脂中に微分散させることで、原材料コストを抑え、画像の光沢性に優れ、十分な定着強度を得られる静電荷像現像用トナー製造方法及びその製造方法から得られた静電荷像現像用トナーを提供することができる。
また、ワックスを極めて良好に微分散させることができる本発明により、トナー製造工程においてはトナー樹脂の粉砕分級が容易となり、さらにトナー粒子中の各種成分の含有率のバラつきを少なくすることができる効果がある。またさらに本発明によれば、トナー使用時において、特にトナー中の帯電制御剤の含有率を均一化できることによりトナー粒子の帯電量分布が狭くなって飛び散りによる地汚れのない画像を実現でき、またトナー中の着色剤の含有率を均一化できることにより画像濃度が高い鮮明な画像を得るという別の効果をも奏するトナーを提供することができる。加えてトナーからワックス成分が遊離しにくいので、電子写真装置内部の感光体に付着する現象(ブラック・スポット)や現像スリーブなどに固着する現象(フィルミング)を防止するトナーを提供することができる。
さらに長期保存の後でもオフセット画像を防止し紙送り不良等の機器トラブルを予防して良好な画像を現像することができるトナーを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーは、エステル系ワックスとカルナウバろうワックスとの混合物からなる離型剤、結着樹脂および着色剤を含有したことを特徴とする。
上記離型剤におけるエステル系ワックスの融点は、印刷速度が中速(例えば毎分30枚)〜高速(例えば毎分60枚以上)のプリンタ等に対応できるトナーとするためには80℃以下の融点を持つことが好ましく、特に高速機対応のためには70〜75℃であることが好ましい。70℃未満ではトナーの保存性に問題が発生しやすい。また、カルナウバろうワックスの融点は印字速度が毎分30枚以下の低速機にも対応できることを考慮しすると80〜86℃であることが好ましい。
また、前記離型剤のトナー中の含有量は、0.1〜20質量%であることが好ましく、3〜14質量%であることがさらに好ましい。
0.1質量%未満の場合は前記オフセットの発生や巻きつきの問題が顕在化するおそれがあり、20質量%より多い場合は、離型剤がトナー粒子に入りきれずに離脱して、トナーの流動性を低下させたりプリンタの感光体や現像スリーブ等を汚染させるおそれがある。
このような離型剤としては、例えば日油株式会社製固体高純度エステル(商品名:ニッサンエレクトールWEP−9)が好適に使用できる。
【0011】
次に、その他のトナー原料について説明する。
(結着樹脂)
本発明に用いる結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレンなどのスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのモノオレフィン類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル、などのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸のエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルネン、ジシクロペンタジエンなどの二重結合を有する環状オレフィン類、などの単独重合体及び共重合体を例示することができる。
また、マレイン酸、フマル酸、フタル酸などのカルボン酸と、ビスフェノールA(EO/PO付加物を含む)、エチレングリコールなどのアルコールから生成されるポリエステル樹脂を例示することができる。
これらの中でも、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−ノルボルネンなどの環状オレフィン共重合樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
特に耐久性の観点からポリエステル樹脂が好ましく用いられる。
本発明の結着樹脂の量は、非磁性トナーの場合トナー100質量部に対して80〜95質量部であることが好ましい。
【0012】
(着色剤)
次に、着色剤について説明する。
イエロー着色剤の顔料系としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。
具体的には、C.I.PigmentYellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、73、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、122、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が好適に用いられる。
染料系としては、例えば、C.l.solventYellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperseYellow42.64.201.211が挙げられる。
【0013】
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が特に好ましい。
【0014】
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が特に好適に利用される。
【0015】
黒色着色剤としては、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック、グラファイト、ニグロシン、鉄黒、四三酸化鉄、酸化鉄マンガン、酸化鉄亜鉛、酸化鉄ニッケル等の磁性粒子等が利用できるほか、上記イエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用される。
【0016】
着色剤の添加量としては、結着樹脂100質量部に対して2〜20質量部、好ましくは2〜15質量部、さらにはトナー像の好適なOHPフィルムの透過性を考慮すると12質量部未満の範囲で使用されるのが好ましく、通常3〜9質量部であるのが最も好適である。
【0017】
(帯電制御剤)
また、本発明には必要に応じて帯電制御剤を添加することが出来る。
添加する場合、正荷電性帯電制御剤としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などがある。
負荷電性帯電制御剤としては、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレーン化合物、ホウ素錯体、高分子タイプ帯電制御剤などがある。
添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.05〜10質量部程度が好ましい。
【0018】
(外添剤)
本発明のトナーは、流動性付与の観点から、外添剤が表面に付着していることが好ましい。
外添剤としては無機または有機の各種外添剤を使用することができるが、特にトナーの流動性向上、凝集性抑制を図る為にシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、金属石鹸(ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛等)等の無機微粉末が好適である。
外添剤の混合量は、使用する外添剤及びトナー粒子の平均粒径、粒度分布などにより異なるが、所望するトナー流動性を得る量を適宜選択できる。一般的にはトナー粒子100質量部に対して0.05〜10質量部、更には0.1〜8質量部が好適である。
混合量が0.05質量部未満では流動性改善効果が少なく、高温での貯蔵安定性能が悪く、また混合量が10質量部より多いと一部遊離した外添剤により感光体にフィルミングを発生したり、現像槽内部に堆積して現像剤の帯電機能劣化等の障害を引き起こしたりして好ましくない。
また、外添剤は高湿環境下での安定性面より、無機微粉末の場合にはシランカップリングなどの処理剤で疎水化処理されたものがより好ましく、更に、帯電性を考慮する場合には負荷電性を付与する処理剤としてはジメチルジクロルシラン、モノオクチルトリクロルシラン、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイルなど、正荷電性を付与する処理剤としてはアミノシランなどを使用すればよい。
【0019】
この他、外添剤としてトナーの電気抵抗調整、研磨剤などの目的で、流動性改善用以外のマグネタイト、フェライト、導電性チタン、酸化アンチモン、酸化錫、酸化セリウム、ハイドロタルサイト類化合物、アクリルビーズ、シリコーンビーズ、ポリエチレンビーズなどの微粉末を適量混合してもよく、その混合量はトナー100質量部に対して0.005〜10質量部が好ましい。
【0020】
さらに、外添剤としてポリ4フッ化エチレン樹脂粉末、ポリフッ化ビニリデン樹脂粉末などの樹脂微粉末を付着してもよい。トナーに対してこれらの樹脂微粉末を添加する割合は、トナー100質量部対して、0.01〜8質量部の範囲から適宜選択でき、好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.1〜4質量部である。
【0021】
トナー粒子への前記外添剤の付着はドライブレンドによる混合を行うことが好ましく、混合装置の一例としては、ダブルコーン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等を挙げることができる。
【0022】
次に本発明の静電荷像現像用トナーを製造する好適な方法について説明する。
本発明の静電荷像現像用トナーは、溶融混練法によって製造されることが好ましい。
溶融混練法は、混練工程、冷却工程、粉砕分級工程を有する。
(混練工程)
混練工程では、結着樹脂、着色剤及び前記離型剤を含む原料を溶融混練して混練物を得る。原料成分として前記分散助剤、帯電制御剤などをそれぞれ添加しても添加しなくても良い。
混練工程にはバッチ式(例えば、加圧ニーダー、バンバリィミキサー等)または連続式の熱溶融混練機を用いるが、連続生産できる等の優位性から1軸または2軸の連続式押出機が好ましい。例えば、神戸製鋼所社製KTK型2軸押出機、東芝機械社製TEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製2軸押出機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出機、栗山製作所社製2軸押出機、ブス社製コ・ニーダー等が好ましい。なお、オープンロール型連続混練機も使用可能である。
【0023】
(冷却工程)
その後、冷却工程により混練物を冷却固化する。
【0024】
(粉砕分級工程)
そして、粉砕分級工程では冷却固化した混練物を粉砕分級して分級トナーを得る。
まず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕し、ジェットミル、カウンタージェットミル、高速ローター回転式ミル等で微粉砕し、段階的に所定トナー粒度まで粉砕する。
そして、慣性分級方式のエルボージェット、遠心力分級方式のミクロプレックス、DSセパレーター、乾式気流分級機等でトナーを分級し、体積平均粒子径3〜18μmの分級トナーを得る。
分級時に得られた粗粉は粉砕分級工程に戻し、微粉は混練工程に戻して再利用してもよい。
【0025】
次に、必要に応じて分級トナーに外添剤を付着させる外添工程を行う。
分級トナーと各種外添剤を所定量配合して、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の粉体にせん断力を与える高速攪拌機などで攪拌・混合する。
この際、外添機内部で発熱があり、凝集物を生成し易くなるので外添機の容器部周囲を水で冷却するなどの手段で温度調整をする方が好ましく、更には外添機容器内部の材料温度は樹脂のガラス転移温度より約10℃低めの管理温度以下が好適である。
【0026】
本発明のトナーは、上述の方法により得られ、体積平均粒径は3μm〜15μmが好ましく、さらに好ましくは5μm〜10μmである。体積平均粒径が3μm未満では、2μm未満の超微粉が多くなるので、カブリ、画像濃度低下、感光体での黒点やフィルミングの発生、現像スリーブや層厚規制ブレードでの融着の発生、等を引き起こす。一方15μmを超えると解像度が低下し、高画質画像が得られない。
なお、本願で体積平均粒径は、コールターカウンターTA−II型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで体積分布を測定することにより求める。
【0027】
また、本発明のトナーの円形度は0.80〜0.98であって、好ましくは0.90〜0.96である。円形度が0.80未満では流動性が劣るため帯電量が不足して画像濃度の低下をもたらし、0.98を超えると帯電量が過剰となりトナー消費量が増大する。
なお、円形度は、
円形度=π・(粒子像の面積と等しい円の直径)/(粒子像の周囲長)
で表されるもので、フロー式粒子像分析装置(Sysmex社製、商品名:FPIA−2000により求めるものである。
【0028】
得られたトナーは、一成分現像方式、二成分現像方式、その他の現像方式に使用できる。二成分現像方式にはキャリアと混合して使用する。
二成分現像方式でのキャリアとしては、例えば、ニッケル、コバルト、酸化鉄、フェライト、鉄、ガラスビーズなどが使用できる。これらのキャリアは単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。キャリアの平均粒子径は20〜150μmであるのが好ましい。また、キャリアの表面は、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂などの被覆剤で被覆されていていてもよい。
【0029】
本発明のトナーは、モノクロ用トナーであってもカラー用トナーであってもよいが、画像の光沢性改善が顕著に現れるカラー用トナー、特にフルカラー用トナーとして用いられることが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0031】
[実施例1]
下記配合物をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製、商品名:「ヘンシェルミキサー20L」)を使用し、5分間、2800rpmで均一に混合した後、二軸混練押出機(池貝社製、商品名:「PCM−30」)で回転数200rpm、吐出量3.0kg/hrの条件で溶融混練し、混練物を2本ロールで圧延して放置冷却した。
・結着樹脂;ポリエステル樹脂 100質量部
(三菱レイヨン社製、Mw25000、Mn5000、Tg(ショルダー)60℃)
・着色剤;シアン顔料 4.5質量部
(大日精化工業社製、商品名:「ピグメント15:4」)
・帯電制御剤;ホウ素錯体粒子 2.0質量部
(日本カーリット社製、商品名:「LR―147」)
・離型剤;
(日油株式会社製、商品名:ニッサンエレクトールWEP−9) 3.0質量部
【0032】
次いで冷却された混練物をハンマーミルで粗粉砕し、ジェットミル(ホソカワミクロン社製、商品名:「100AFG」)で微粉砕した。
そして、乾式気流分級機(ホソカワミクロン社製、商品名:「100ATP」)で分級して、体積平均粒径7.1μm、円形度0.892の分級トナーを得た。
【0033】
次に、前記分級トナー100質量部に対し、下記のシリカ及び酸化チタンからなる外添剤を加えて10Lヘンシェルミキサーで回転数2800rpmで5分混合して本発明のトナーを得た(外添工程)。
・シリカ 0.2質量部
(クラリアントジャパン社製、平均一次粒子径17.5nm、BET比表面積140m/g)
・酸化チタン 0.5質量
(アエロジル社製、一次粒子径10nm、BET比表面積65±10、処理剤オクチルシラン)
【0034】
その後、得られたトナー5.0質量部と、平均粒径30μmのフェライトキャリア(パウダーテック社製)95.0質量部とを混合し、シアン現像剤を得た。
【0035】
[実施例2]
実施例2では、離型剤の量を10質量部に変えた以外は実施例1と同様にして本発明のトナーを得た後、非磁性二成分現像剤を得た。
【0036】
[比較例1]
比較例1では、離型剤を次のカルナウバろうに変えた以外は実施例1と同様にして比較用の非磁性二成分現像剤を得た。
・離型剤;天然ワックス 7.0質量部
(加藤洋行社製、商品名:「カルナウバ2号粉末」)
【0037】
[比較例2]
比較例2では、離型剤を次のエステルワックスに変えた以外は実施例1と同様にして比較用の非磁性二成分現像剤を得た。
・離型剤;エステルワックス 7.0質量部
(日本油脂社製、商品名:「WEP−8」)
【0038】
実施例及び比較例のトナーについて、以下の比較、評価を行った。
<トナーの製造工程における評価>
(離型剤微分散)
混練工程が完了したトナー樹脂の塊の任意の場所を切断し、その断面を実体顕微鏡にて観察し、トナー樹脂中に分散された離型剤粒の大きさを観察し、離型剤粒断面が直径1μm以下であれば良好であると判断した。
○:良好、×:悪い(直径1μmを超えるワックス粒が観察された)
【0039】
(粉砕分級の収率)
粉砕分級工程において粉砕した粒子の全量に対する分級トナーの収量(粗粉、微粉を除いた量)から収率を算出し、70%以上であれば良好であると判断した。
○:良好、×:悪い
【0040】
<製造したトナー及びその画像に関する評価>
(トナー粒子の保存性)
実施例及び比較例のトナーを、温度40℃にて48時間保管した後の粒子の凝集状態を観察した。
○:変化なし
×:ケーキング
【0041】
(トナー粒子の帯電性)
実施例及び比較例の二成分現像剤を、それぞれ二成分現像方式の負極性トナー用複写機(シャープ社製 商品名:「SF2030」)の現像装置に入れ、A4サイズコピー用紙(上質紙)に印字率6%にて印字した。2000枚印字後と10万枚印字後の帯電量を測定し、その差を帯電性として評価した。
(2000枚印字後の帯電量)−(10万枚印字後の帯電量)
○:5.0μC/g未満
×:5.0μC/g以上
なお、帯電量はEpping社製、qmメーターにて測定した。
【0042】
(画像の光沢性)
上記10万枚印字後の定着画像において、ベタ印字部の光沢度(グロス)をハンディ光沢度計グロスメーターPG−3D(日本電色工業製)を用いて、光の入射角75°の条件で測定し、トナーの光沢度のレベルを以下の基準で判定した。
A:80以上 光沢度が高く良好。
B:60以上80未満 実用可能。
C:40以上60未満 実用限度。
D:40未満 光沢度が明らかに低く問題がある。
【0043】
(画像濃度)
上記10万枚印字後の画像濃度を測定し、評価した。
なお、画像濃度は反射濃度計(マクベス社製、商品名:RD−914)を使用して測定した。画像濃度1.3以上であれば実用上問題なく、1.3未満であれば実用上問題がある。
【0044】
(地汚れ)
上記現像条件におけるコピー用紙の地肌部の汚れについて、転写紙上の地肌部(非画像部)に付着しているトナーの個数を数え、1cm当たり付着個数(個/cm)に換算し、以下の基準で4段階に評価した。
A:0〜50(個/cm
B:51〜100
C:101〜200
D:200以上
【0045】
(定着強度)
その後、非オフセット領域を確認した後、記録紙上の定着像を消しゴム(ライオン事務機社製、砂字消し「LION 261−11」)を押圧荷重1.0kgfで2回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定し、以下の4段階の基準に従い評価した。ただし、オフセットが確認された場合は測定を行わなかった。
A:画像濃度残存率が95%以上。
B:画像濃度残存率が80%以上95%未満。
C:画像濃度残存率が70%以上80%未満。
D:画像濃度残存率が70%未満。
【0046】
(感光体汚染)
上記10万枚印字後のプリンタの感光体にブラック・スポット(トナー粒子から分離離脱した離型剤の付着)があるかどうかを観察した。
○:感光体汚染あり
×:感光体汚染なし。
【0047】
次に、実施例及び比較例の二成分現像剤を、前記二成分現像方式の複写機で、印字率20%、プリントスピード:24ページ/分として、A4サイズコピー用紙(上質紙)に低現像電位、低転写電位条件(現像電圧:−250V、一次転写電圧:800V)で50000枚までの耐刷試験を実施した。
そして、画像の発色性及びトナー消費量について評価した。
【0048】
(発色性)
発色性は目視で評価した。
○:良好、×:くすみ有
【0049】
(トナー消費量)
トナー消費量は、1000枚プリントするのに要したトナー量を測定した。
なお、トナー消費量は50g未満であれば実用上問題ない。
前記評価結果の結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1に示されるように、実施例1および実施例2は、離型剤微分散、粉砕分級の収率が良好で、保存性、帯電性、光沢性に優れ、画像濃度、地汚れ、定着強度、発色性、トナー消費量においても実用上問題なかった。これに対し、比較例1は、粉砕分級の収率が悪く、帯電性、光沢性、画像濃度、地汚れ、オフセット発生、発色性、トナー消費量において実用上問題があった。比較例2は、離型剤微分散及び粉砕分級の収率が悪く、地汚れ、オフセット発生、発色性、トナー消費量において実用上問題があった。
【0052】
以上のように、本発明によれば、分散助剤を用いずに離型剤を良好にトナー樹脂中に微分散させることで、原材料コストを抑え、画像の光沢性に優れ、十分な定着強度を得られるトナーを提供することができる。
また、ワックスを極めて良好に微分散させることができる本発明により、トナー製造工程においてはトナー樹脂の粉砕分級が容易となり、さらにトナー粒子中の各種成分の含有率のバラつきを少なくすることができる効果がある。またさらに本発明によれば、トナー使用時において、特にトナー中の帯電制御剤の含有率を均一化できることによりトナー粒子の帯電量分布が狭くなって飛び散りによる地汚れのない画像を実現でき、またトナー中の着色剤の含有率を均一化できることにより画像濃度が高い鮮明な画像を得るという別の効果をも奏するトナーを提供することができる。加えてトナーからワックス成分が遊離しにくいので、電子写真装置内部の感光体に付着する現象(ブラック・スポット)や現像スリーブなどに固着する現象(フィルミング)を防止するトナーを提供することができる。
さらに長期保存の後でもオフセット画像を防止し紙送り不良等の機器トラブルを予防して良好な画像を現像することができるトナーを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル系ワックスとカルナウバろうワックスとの混合物からなる離型剤、結着樹脂および着色剤を含有したことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記エステル系ワックスの融点が70〜75℃であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記カルナウバろうワックスの融点が80〜86℃であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記離型剤が0.1〜20質量%含有されることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
静電荷像現像用トナーが、溶融混練法によって製造されたことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。

【公開番号】特開2010−237586(P2010−237586A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87623(P2009−87623)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000153591)株式会社巴川製紙所 (457)
【Fターム(参考)】