説明

静電荷像現像用トナー

【課題】特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、帯電立ち上がり特性および帯電安定性などの帯電特性に優れた静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】静電荷像現像用トナーは、外添剤が含有されてなる静電荷像現像用トナーにおいて、前記外添剤は、ゾル−ゲル法により得られたシリカ材が疎水化処理剤により疎水化処理された、体積平均一次粒径が60〜150nmである大径シリカ微粒子を含み、前記大径シリカ微粒子は、平均炭素量が3.0質量%を超え5.0質量%以下のものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による画像形成方法に用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成方法に用いられる静電荷像現像用トナーにおいては、当該静電荷像現像用トナーに対する流動性付与、帯電性向上および転写・クリーニング性向上などを目的として種々の外添剤が用いられている。このような外添剤としては、例えばシリカ微粒子などが挙げられるが、例えばアルコキシシラン化合物などの加水分解、縮重合反応(ゾル−ゲル法)により得られるシリカ微粒子は、燃焼法などにより得られるヒュームドシリカ微粒子に比べて、略球状の形状を有すると共に粒度分布がシャープなものとなることから、広く用いられている。
【0003】
従来、ゾル−ゲル法によるシリカ微粒子の製造方法においては、加水分解を十分に行うことにより、当該シリカ微粒子におけるアルコキシ基量が少ないものが得られるが、静電荷像現像用トナーの外添剤として用いられるシリカ微粒子は、高い疎水性のものであることが必要であり、そのためにゾル−ゲル法によるシリカ微粒子に不可避的に残留するアルコキシ基を疎水性基に変更するために疎水化処理剤による疎水化処理が必須とされている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、従来のシリカ微粒子を外添剤として含有する静電荷像現像用トナーは、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下において、帯電立ち上がり特性や帯電安定性などの帯電特性が十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−3726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、帯電立ち上がり特性および帯電安定性などの帯電特性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電荷像現像用トナーは、外添剤が含有されてなる静電荷像現像用トナーにおいて、
前記外添剤は、ゾル−ゲル法により得られたシリカ材が疎水化処理剤により疎水化処理された、体積平均一次粒径が60〜150nmである大径シリカ微粒子を含み、
前記大径シリカ微粒子は、平均炭素量が3.0質量%を超え5.0質量%以下のものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、前記大径シリカ微粒子が、疎水化度が40〜80のものであることが好ましい。
【0009】
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、前記外添剤が、個数平均一次粒径が5〜45nmである小径外添剤微粒子を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明静電荷像現像用トナーによれば、ゾル−ゲル法により得られたシリカ材が疎水化処理された、特定範囲の粒径を有する大径シリカ微粒子が外添剤として含有され、当該大径シリカ微粒子が、平均炭素量が特定範囲のものであることにより、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、優れた帯電立ち上がり特性および帯電安定性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成方法に用いられる画像形成装置の構成を示す概略図である。
【図2】実施例におけるトナー帯電量の測定に用いられる装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
〔静電荷像現像用トナー〕
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子に、少なくともゾル−ゲル法により得られたシリカ材が疎水化処理剤により疎水化処理された、体積平均一次粒径が60〜150nmである大径シリカ微粒子が外部添加されたものである。
本発明のトナーを構成するトナー粒子には、必要に応じて離型剤や荷電制御剤などの内添剤が含有されていてもよい。
【0014】
〔外添剤〕
(大径シリカ微粒子)
本発明のトナーに用いられる大径シリカ微粒子は、ゾル−ゲル法により得られたシリカ材が疎水化処理剤により疎水化処理された、体積平均一次粒径(D50)が60〜150nmのものである。
【0015】
大径シリカ微粒子は、体積平均一次粒径(D50)が60〜150nmのものとされ、好ましくは70〜130nmのものである。
【0016】
大径シリカ微粒子の体積平均一次粒径(D50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(堀場製作所社製)により測定されるものである。
具体的には、メタノールにシリカ試料を質量比で1:0.005となるように添加し、超音波照射器により当該試料を分散させて試料分散液を調製し、この試料分散液をレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(堀場製作所社製)を用いて測定する。
また、電子顕微鏡「JSM−7500F」(日本電子社製)を用いてシリカ試料の個数平均一次粒径を測定し、当該個数平均一次粒径と上記体積平均一次粒径(D50)とを比較して、これらが一致していることを確認し、その上で、大径シリカ微粒子の凝集が生じていないことを確認する方法により、当該体積平均一次粒径(D50)が一次粒子のものであると判断される。
【0017】
なお、シリカ試料の個数平均一次粒径は、例えば以下のようにして測定することができる。
(1)電子顕微鏡「JSM−7500F」(日本電子社製)を用いて倍率3万倍のトナーの写真撮影を行い、この写真画像をスキャナにて取り込む。
(2)画像処理解析装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」にて、写真画像上のトナー粒子表面に存在するシリカ試料粒子について2値化処理し、100個について水平フェレ径を算出し、算出した値を個数基準による平均一次粒径とする。ここで、水平フェレ径とは、写真画像上のシリカ試料粒子を2本の垂直線ではさんだときに得られる2本の垂直線間の距離のことを意味するものである
また、上記のように、トナー粒子表面に存在するシリカ試料粒子の個数平均一次粒径を測定する方法の他に、シリカ試料粒子を直接走査型電子顕微鏡で写真撮影し、その写真画像から同様の手順で個数平均一次粒径を算出することもできる。
【0018】
大径シリカ微粒子においては、体積平均一次粒径(D50)の標準偏差が、「大径シリカ微粒子の体積平均一次粒径(D50)×0.22」以下であることが好ましい。この標準偏差は、大径シリカ微粒子の分散度を示す指標である。
大径シリカ微粒子の標準偏差が上記範囲であることにより、当該大径シリカ微粒子が単分散の状態のものとされ、これにより、トナー粒子の表面に均一に分散、付着した状態が得られてトナー粒子に安定したスペーサー効果が得られる。
【0019】
大径シリカ微粒子における体積平均一次粒径(D50)の標準偏差は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(堀場製作所社製)により測定され、上述した体積平均一次粒径(D50)の測定と共に求められるものである。
【0020】
大径シリカ微粒子は、下記式(1)により示される球形化度が0.6以上のものであることが好ましく、より好ましくは0.8以上のものである。
式(1):球形化度=(対象試料と同体積を有する球の表面積)/(対象試料の表面積)
〔上記式(1)において、「対象試料と同体積を有する球の表面積」は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置「LA−750」(堀場製作所社製)を用いて測定される体積平均一次粒径(D50)から算術計算により求められるものであり、「対象試料の表面積」は、粉体比表面積装置「SS−100」(島津製作所社製)を用いて求められるBET比表面積である。〕
【0021】
大径シリカ微粒子の球形化度が上記範囲であることにより、当該大径シリカ微粒子が単分散の状態のものとされ、これにより、トナー粒子の表面に均一に分散、付着した状態が得られてトナー粒子に安定したスペーサー効果が得られる。
【0022】
大径シリカ微粒子は、平均炭素量が3.0質量%を超え5.0質量%以下のものとされ、好ましくは3.0質量%を超え4.0質量%以下のものである。
この平均炭素量は、疎水化処理剤による疎水化処理の程度と考えられることから、大径シリカ微粒子の平均炭素量が上記範囲となるように、シリカ材が疎水化処理されることにより、得られるトナーは、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、優れた帯電立ち上がり特性および帯電安定性を有するものとなる。
大径シリカ微粒子の平均炭素量が過小である場合においては、得られるトナーが、特に高温高湿環境下において、優れた帯電立ち上がり特性や帯電安定性を有するものとならず、その結果、トナー飛散や画像カブリが発生するおそれがある。
一方、大径シリカ微粒子の平均炭素量が過大である場合においては、得られるトナーが、特に低温低湿環境下において、優れた帯電立ち上がり特性を有するものとならず、その結果、トナー飛散や感光体汚染が発生するおそれがある。
【0023】
大径シリカ微粒子の平均炭素量は、固体中炭素分析装置「EMIA−110」(堀場製作所社製)を用いて燃焼法により測定されるものである。
具体的には、シリカ試料0.1gを磁性ボートに精秤し、約1200℃にて燃焼し、CO2 量から炭素数を換算し求める。
【0024】
大径シリカ微粒子は、アルコキシ基量が3.0〜5.0質量%のものであることが好ましく、より好ましくは3.0〜4.0質量%のものである。
大径シリカ微粒子のアルコキシ基量が上記範囲内であることにより、得られるトナーが、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、より優れた帯電立ち上がり特性および帯電安定性を有する。
【0025】
大径シリカ微粒子のアルコキシ基量は、密閉式アルカリトラッキングヘッドスペースGC法により測定されるものである。
具体的には、以下(1)〜(4)の工程を経て測定されるものである。
(1)容積20mlのバイアル瓶に、0.2gに秤量されたシリカ試料を投入する。
(2)1N−アミルアルコールカリ溶液1.0gを添加し、緩やかに撹拌する。
(3)ヘッドスペースサンプラー内で80℃において30分間加熱する。
(4)ヘッドスペースのガスを一定量サンプリングして下記条件によりガスクロマトグラフィー(GC)測定をする。
−ガスクロマトグラフィー(GC)条件−
・カラム:シリコーンコートキャピラリーカラム
・キャリア:Heキャリア
・検出器:FID検出器
・GC部温度:50℃から280℃(昇温速度:10℃/分)
・INJECTION部温度:250℃
メタノールを一定量試料に加える標準添加法により同様に前処理して作成しておいた検量線を用いて定量する。
【0026】
大径シリカ微粒子は、疎水化度が40〜80のものであることが好ましく、より好ましくは50〜70のものである。
大径シリカ微粒子の疎水化度が上記範囲内であることにより、得られるトナーが、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、より優れた帯電立ち上がり特性および帯電安定性を有するものとなる。
大径シリカ微粒子の疎水化度が過小である場合においては、得られるトナーが、特に高温高湿環境下において、帯電電荷の保持性能が低下することにより帯電量が低減し、その結果、トナー飛散などが発生するおそれがある。
一方、大径シリカ微粒子の疎水化度が過大である場合においては、得られるトナーが、特に低温低湿環境下において、トナーの飽和帯電量に至るまでの立ち上がり性能が悪化することにより、現像器中において現像剤の混合条件の異なるトナー粒子間で帯電量分布がブロードとなるために、トナー飛散などが発生するおそれがある。
【0027】
大径シリカ微粒子の疎水化度は、メタノール滴定法により測定されるものである。
具体的には、容積200mlのビーカー中に蒸留水50mlを入れた後、0.2gに秤量されたシリカ試料を添加し、先端が液体中に浸漬されているビュレットからメタノールを滴下し、ゆっくり撹拌した状態で試料の全体が濡れて全部が沈降するまでに必要とされるメタノールの量をa(ml)として、下記式(2)により求める。
式(2):疎水化度={a/(a+50)}×100
【0028】
大径シリカ微粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.1〜3.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.0質量部である。
【0029】
(大径シリカ微粒子の製造方法)
本発明のトナーに用いられる大径シリカ微粒子の製造方法は、ゾル−ゲル法により得られたシリカ材を、疎水化処理剤により疎水化処理する方法により得ることができる。
ここに、ゾル−ゲル法は、例えば、アルコキシシラン化合物やフェノキシシラン化合物などの加水分解、縮重合反応による方法であり、いわゆるStoeber法である。
【0030】
大径シリカ微粒子の製造方法について、以下具体的に説明する。
まず、例えばアルコキシシラン化合物などを水および有機溶媒の存在下において、触媒を加えて加温しながら滴下、撹拌してシリカゾル懸濁液を得る。そして、このシリカゾル混濁液を遠心分離し、湿潤シリカゲル、有機溶媒および水に分離する。この湿潤シリカゲルに溶剤を加えて再度シリカゾルの状態にして、疎水化処理剤を添加して疎水化処理を行う。または、シリカゾルを乾燥した後、疎水化処理剤を添加して疎水化処理を行ってもよい。その後、有機溶媒を除去することにより、本発明に係る大径シリカ微粒子が得られる。また、このようにして得られた大径シリカ微粒子に対して再度疎水化処理を行うこともできる。
また、疎水化処理剤を添加する方法としては、気相中で浮遊されるシリカ材に対して疎水化処理剤または疎水化処理剤を含む溶液を噴霧するスプレードライ法などによる乾式法、疎水化処理剤を含む溶液中にシリカ材を浸漬する湿式法、あるいは疎水化処理剤とシリカ材とを混合機により混合する混合法などが挙げられる。
【0031】
大径シリカ微粒子の平均炭素量を制御する方法としては、例えば、有機溶媒の除去量を調整する方法、疎水化処理剤の添加量を調整する方法、300〜600℃の温度で加熱処理を実施し、その温度条件を調整することによりシリカ微粒子表面近傍および微粒子内部のシラノール基を熱縮合させてシラノール基を調整した上で再度、疎水化処理を行う方法などが挙げられる。
【0032】
疎水化処理剤としては、例えば、シラン化合物、シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩などを用いることができる。
【0033】
疎水化処理剤として用いられるシラン化合物は、水溶性のものを用いることができる。このようなシラン化合物としては、下記一般式(1)に示す化合物を用いることができる。
【0034】
一般式(1): RSiX4 −a
〔一般式(1)において、aは0〜3の整数を示し、Rは水素原子、アルキル基およびアルケニル基などの有機基を示し、Xは塩素原子、メトキシ基およびエトキシ基などの加水分解性基を示す。〕
【0035】
上記一般式(1)に示す化合物としては、例えば、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤などが挙げられる。具体的には、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O−(ビストリメチルシリル)アセトアミド、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレア、tert−ブチルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
本発明に用いられる疎水化処理剤は、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランなどが好ましい。
【0037】
疎水化処理剤としてのシリコーンオイルとしては、例えば、オルガノシロキサンオリゴマー、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、デトラメチルシクロテトラシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどの環状化合物、直鎖状または分岐状のオルガノシロキサンなどが挙げられる。また、側鎖または、片末端、両末端、側鎖片末端および側鎖両末端などに変性基を導入した反応性の高い少なくとも末端を変性したシリコーンオイルを用いてよい。変性基としては、アルコキシ基、カルボキシル基、カルビノール基、高級脂肪酸変性、フェノール基、エポキシ基、メタクリル基、アミノ基などが挙げられる。また例えば、アミノ/アルコキシ変性などの2種以上の変性基を有するシリコーンオイルを用いることもできる。
また、ジメチルシリコーンオイルとこれらの変性シリコーンオイル、さらには他の疎水化処理剤とを併用することもできる。併用する疎水化処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、各種シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸金属塩、そのエステル化物、ロジン酸などが挙げられる。
【0038】
シリコーンオイルの動粘度は、シリカ材表面に均一に付着させやすいことから、5cm2 /s以下であることが好ましく、より好ましくは3cm2 /s以下であり、特に好ましくは2cm2 /s以下である。
【0039】
本発明のトナーには、大径シリカ微粒子と共に他の外添剤が含有されていてもよい。
併用可能な他の外添剤としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化ハフニウム、炭化バナジウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、炭化タングステン、炭化クロム、炭化モリブデン、炭化カルシウム、ダイヤモンドカーボンラクタムなどの各種炭化物、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化ジルコニウムなどの各種窒化物、ホウ化ジルコニウムなどのホウ化物、酸化鉄、酸化クロム、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、気相法によるシリカやシリカ/チタニア・アルミナなどからなる複合酸化物、コロイダルシリカなどの各種酸化物、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウムなどの各種酸化物、二硫化モリブデンなどの硫化物、フッ化マグネシウム、フッ化炭素などのフッ化物、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの各種金属石鹸、滑石、ベントナイトなどの各種非磁性無機物などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
また、これらの他の外添剤は、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーン系オイル、シリコンワニスなどの従来から使用されている疎水化処理剤、さらにはフッ素系シランカップリング剤またはフッ素系シリコーンオイル、さらにアミノ基/第4級アンモニウム塩含有カップリング剤、変性シリコーンオイルなどの処理剤で公知の方法により表面処理されていることが好ましい。また、乳化重合法、ソープフリー乳化重合法、非水分散重合法などの湿式重合法、気相法などにより造粒した、スチレン系、(メタ)アクリル系、ベンゾグアナミン、メラミン、テフロン(登録商標)、シリコーン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの各種有機微粒子を用いることができる。
【0041】
(小径外添剤微粒子)
本発明のトナーにおいては、トナー耐久時の帯電性や流動性の安定化の観点から、大径シリカ微粒子と、上記のような他の外添剤とを併用することが好ましく、特に、個数平均一次粒径が5〜45nm、より好ましくは7〜35nmである小径外添剤微粒子を併用することが好ましい。このような小径外添剤微粒子としては、特にシリカ、チタニア(ルチル型、アナターゼ型、アモルファス型)、メタチタン酸、アルミナ、シリカ/チタニア/アルミナ系の複合酸化物の微粒子が好適である。また、小径外添剤微粒子は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
小径外添剤微粒子の個数平均一次粒径は、以下のようにして測定されるものである。
(1)透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を平均粒径に応じた倍率により写真撮影を行い、この写真画像をスキャナにて取り込む。
(2)画像処理解析装置「LUZEX AP(ニレコ社製)」にて、写真画像上のトナー粒子表面に存在する小径外添剤微粒子について2値化処理し、100個について水平フェレ径を算出し、算出した値を個数基準による平均一次粒径とする。ここで、水平フェレ径とは、写真画像上の小径外添剤微粒子を2本の垂直線ではさんだときに得られる2本の垂直線間の距離のことを意味するものである
また、上記のように、トナー粒子表面に存在する小径外添剤微粒子の個数平均一次粒径を測定する方法の他に、小径外添剤微粒子を直接走査型電子顕微鏡で写真撮影し、その写真画像から同様の手順で個数平均一次粒径を算出することもできる。
【0043】
小径外添剤微粒子は、BET比表面積が400〜50m2 /gのものであることが好ましい。
なお、BET比表面積とは、ガス吸着法により算出される粒子の比表面積のことをいい、このガス吸着法による粒子の比表面積の算出方法は、窒素ガスのように吸着占有面積が分かっているガス分子を粒子に吸着させ、その吸着量から粒子の比表面積を算出するものである。BET比表面積は、固体表面に直接吸着したガス分子の量(単分子層吸着量)を正確に算出することができる。BET比表面積は、下記式(3)に示すBETの式と呼ばれる数式を用いて算出することができる。下記式(3)に示すように、BETの式は一定温度で吸着平衡状態にある時の吸着平衡圧Pとその圧力における吸着量Vの関係を示すもので以下のように表される。
式(3):P/V(Po−P)=(1/VmC)+((C−1)/VmC)(P/Po)
〔上記式(1)中、「Po」は飽和蒸気圧を示し、「Vm」は単分子層吸着量(気体分子が固体表面で単分子層を形成したときの吸着量)を示し、「C(>0)」は吸着熱などに関するパラメータを示す。〕
具体的には、上記式(3)より単分子吸着量Vmを算出し、これにガス分子1個の占める断面積を掛けることにより、粒子の表面積を求めることができる。本発明で使用される外添剤のBET比表面積は、自動比表面積測定装置「GEMINI 2360」(島津・マイクロメリティックス社製)を用い、下記の測定法により算出した値である。
先ず、チタン酸化合物2gをストレートサンプルセルに充填し、前処理として窒素ガス(純度99.999%)にて2時間セル内を置換する。置換後、測定装置本体にて前処理した複合酸化物に窒素ガス(純度99.999%)を吸脱着させて、多点法(7点法)により算出する。
【0044】
以上のような他の外添剤の含有量は、トナー粒子100質量部に対して0.1〜5.0質量部、好ましくは0.4〜4.0質量部である。
他の外添剤の含有量が過小である場合においては、所望の帯電特性や流動特性が確保できないおそれがある。一方、他の外添剤の含有量が過大である場合においては、外添剤がトナー粒子表面上で保持しきれなくなり、トナー粒子表面から遊離し、帯電不良などの副作用を引き起こすおそれがある。なお、外添剤の含有量は、大径シリカ微粒子と他の外添剤との合計量が上記範囲内とすることが好ましい。
また、本発明のトナーにおいて、大径シリカ微粒子と小径外添剤微粒子との質量比(大径シリカ微粒子/小径外添剤微粒子)は、3.0/0.3〜0.3/3.0であることが好ましい。
【0045】
〔結着樹脂〕
本発明のトナーが粉砕法などにより製造される場合においては、トナー粒子を構成する結着樹脂として、例えば、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルホン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の樹脂が挙げられる。
【0046】
また、本発明のトナーが懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法などにより製造される場合においては、トナー粒子を構成する結着樹脂を得るための重合性単量体として、例えば、スチレン、スチレン誘導体、メタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸エステル誘導体、アクリル酸またはメタクリル酸誘導体などのビニル系モノマーが挙げられる。これらのビニル系モノマーは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、重合性単量体として、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などのイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。さらに、重合性単量体として、多官能性ビニル系モノマーを用いて架橋構造の結着樹脂を用いることもできる。
【0047】
結着樹脂のガラス転移点は、40〜60℃であること好ましい。
この結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計「DSC−7」(パーキンエルマー社製)により測定されるものである。
具体的には、樹脂試料4.5mgを小数点以下2桁まで精秤し、アルミニウム製パンに封入して、サンプルホルダーにセットする。リファレンスは、空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃、昇温速度10℃/min、降温速度10℃/minにて、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを基に解析を行う。ガラス転移点は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線との交点の値とする。
【0048】
〔着色剤〕
本発明に係るトナー粒子を構成する着色剤としては、例えば、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などが挙げられる。
カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。
磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性体金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金(例えば、マンガン−銅−アルミニウムおよびマンガン−銅−錫などのホイスラー合金、二酸化クロムなど)などが挙げられる。
【0049】
染料としては、例えば、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60などが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
これらの着色剤は、必要に応じて単独でまたは2種以上を組みわせて用いることができる。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜20質量部である。
【0052】
〔離型剤〕
本発明に係るトナー粒子に内添剤として離型剤が含有される場合においては、離型剤としては公知のワックスを用いることができ、例えば、低分子量ポリエチレンワックス、低分子量ポリプロピレンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスなどの炭化水素系ワックス、カルナウバワックス、ペンタエリスリトールベヘン酸エステル、ベヘン酸ベヘニル、クエン酸ベヘニルなどのエステルワックスなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して2〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは3〜18質量部である。
【0054】
離型剤の融点は、通常40〜160℃とされ、好ましくは50〜120℃であり、より好ましくは60〜95℃である。
離型剤の融点が上記範囲内であることにより、トナーの耐熱保存性が確保されると共に、低温で定着を行う場合であってもコールドオフセット現象の発生を抑制し、安定した画像形成を行うことができる。
この離型剤の融点は、DSC示差走査熱量計により測定されるものである。
【0055】
〔荷電制御剤〕
本発明に係るトナー粒子に内添剤として荷電制御剤が含有される場合においては、荷電制御剤としては、公知のもので、かつ、水系媒体中に分散されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩またはその金属錯体、カリックスアレーン化合物などが挙げられる。
【0056】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜3.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1.0質量部である。
【0057】
〔トナーの製造方法〕
本発明のトナーの製造方法は、特に限定されないが、例えば、混練、粉砕、分級工程を経て製造するいわゆる粉砕法や、重合性単量体を重合させながら形状や粒径を制御して粒子形成を行ういわゆる重合法などが挙げられる。このような重合法による製造方法としては、例えば、乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法、乳化重合凝集法などが挙げられる。これらのなかでも、形状や粒径の揃ったトナー粒子が得られることから、乳化重合法により作成した結着樹脂の粒子を凝集、会合させる工程を経る乳化重合凝集法が好ましい。
【0058】
本発明のトナーの製造方法として、乳化重合凝集法を用いる場合の一例を以下に示す。
工程(A):水系媒体中に着色剤の粒子(以下、「着色剤粒子」ともいう。)が分散されてなる分散液を調製する工程。
工程(B):水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂の粒子(以下、「結着樹脂粒子」ともいう。)が分散されてなる分散液を調製する工程。
工程(C):着色剤粒子の分散液と結着樹脂粒子の分散液とを混合し凝集分散液を調製し、当該凝集分散液中において着色剤粒子および結着樹脂粒子を凝集、会合、融着させてトナー粒子を形成する工程。
工程(D):トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程。
工程(E):トナー粒子を乾燥する工程。
工程(F):トナー粒子に少なくとも大径シリカ微粒子を含む外添剤を添加する工程。
【0059】
なお、水系媒体とは、水50〜100質量%と、水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0060】
(工程(A):着色剤粒子分散液調製工程)
この工程(A)において、着色剤粒子の分散液は、着色剤を水系媒体中に分散処理することにより調製することができる。この分散処理においては、着色剤粒子が分散液中に均一に分散されることから、水系媒体中の界面活性剤の濃度を臨界ミセル濃度以上の状態で行うことが好ましい。また、分散処理において用いられる分散機としては、公知のものを用いることができる。
また、この工程(A)において用いられる界面活性剤としては、公知のものを用いることができる。
【0061】
着色剤粒子の粒径は、体積基準のメディアン径(D50)で10〜200nmであることが好ましい。
この着色剤粒子の体積基準のメディアン径(D50)は、「MICROTRAC UPA−150」(日機装社製)により測定されるものである。
【0062】
(工程(B):結着樹脂粒子分散液調製工程)
この工程(B)において、結着樹脂粒子は、乳化重合法により製造され、この乳化重合法においては、結着樹脂を形成するべき重合性単量体を水系媒体中に分散させて乳化粒子(油滴)を形成した後、重合開始剤を投入して重合性単量体を重合させることにより形成される。
【0063】
工程(B)において用いられる重合開始剤は、水溶性の重合開始剤であれば特に限定されるものではない。重合開始剤としては、例えば、過硫酸塩(過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなど)、アゾ系化合物(4,4’−アゾビス4−シアノ吉草酸およびその塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩など)、パーオキシド化合物などが挙げられる。
【0064】
工程(B)においては、結着樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、2−クロロエタノール、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタンおよびスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0065】
結着樹脂粒子の粒径は、体積基準のメディアン径(D50)で10〜300nmであることが好ましい。
この結着樹脂粒子の体積基準のメディアン径(D50)は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)により測定されるものである。
【0066】
(工程(C):凝集・会合・融着工程)
この工程(C)においては、凝集分散液に臨界凝集濃度以上の量の凝集剤を加え、塩析させると共に、撹拌し、結着樹脂のガラス転移点以上の温度で加熱し、融着させて粒子を形成し、徐々に粒径を成長させて目的の粒径となったところで成長を停止し、さらに加熱、撹拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御する。
【0067】
工程(C)において用いられる凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属の塩から選択されるものが好ましく、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの1価の金属の塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの2価の金属の塩;鉄、アルミニウムなどの3価の金属の塩などが挙げられる。具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、凝集速度の観点から、2価の金属の塩を用いることが好ましい。
【0068】
工程(C)においては、凝集剤を添加した後に放置する時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短時間にすることが好ましい。すなわち、凝集剤を添加した後、凝集分散液の加熱をできるだけ速やかに開始し、結着樹脂のガラス転移点以上の温度とすることが好ましい。この理由は明確ではないが、放置時間の経過により粒子の凝集状態が変動して、得られるトナー粒子の粒度分布がブロードとなるおそれや、トナー粒子の表面が平滑面とならないおそれがあるからである。
放置時間は、通常30分間以内とされ、好ましくは10分間以内とされる。
【0069】
また、工程(C)においては、加熱により速やかに昇温させることが好ましく、昇温速度は1℃/min以上とすることが好ましい。昇温速度の上限は特に限定されないが、急速な融着の進行による粗大なトナー粒子の発生を抑制する観点から、15℃/min以下とすることが好ましい。さらに、凝集分散液がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該凝集分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが好ましい。これにより、粒子成長と融着とを効率的に進行させることができ、得られるトナー粒子が高い耐久性を有するものとなる。
【0070】
(工程(D):洗浄工程)
この工程(D)においては、得られたトナー粒子の分散液を冷却し、この冷却されたトナー粒子の分散液からトナー粒子を固液分離してトナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離の方法としては、例えば、遠心分離法、ヌッチェなどを用いる減圧濾過法、フィルタープレスなどを用いる濾過法などが挙げられる。
【0071】
(工程(E):乾燥工程)
この工程(E)においては、乾燥処理が施される。乾燥処理で用いられる乾燥機としては、例えば、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられる。
【0072】
(工程(F):外添剤添加工程)
この工程(F)においては、乾燥済みのトナー粒子に少なくとも大径シリカ微粒子を含む外添剤を粉体で添加して混合する乾式法により添加される。混合装置としては、例えば、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置が挙げられる。
【0073】
大径シリカ微粒子の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.1〜3.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.3〜2.0質量部である。
【0074】
乳化重合凝集法によりトナーを製造する場合においては、乳化重合法によって得られる結着樹脂粒子は、組成の異なる樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成の結着樹脂粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
【0075】
また、乳化重合凝集法によってはコア−シェル構造を有するトナーを得ることもでき、具体的には、コア粒子用の樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、会合、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0076】
以上のようにして得られたトナーは、その粒径が、体積基準のメディアン径(D50)で2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは4〜7μmである。
【0077】
このトナーの体積基準のメディアン径(D50)は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にデータ処理用のコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
具体的には、試料0.02gを、界面活性剤溶液20ml(例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散処理を1分間行い、分散液を調製し、この分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径を体積基準のメディアン径(D50)とする。
【0078】
また、本発明のトナーにおいては、トナーの体積基準のメディアン径(D50)の粒度分布における変動係数(CV値)が30%以下のものが好ましく、より好ましくは25%以下のものである。
トナーの変動係数(CV値)が上記範囲であることにより、トナーの大きさが揃った状態となって微細なドット画像や細線をより高精度で再現することが可能となり、また、定着工程において、トナーに均等に定着圧力が付与され、定着に寄与しないトナーの量を低減させることができる。
【0079】
この体積基準のメディアン径(D50)の粒度分布における変動係数(CV値)は、下記式(4)により算出されるものである。このCV値が小さくなるほど粒度分布がシャープであることを示し、従ってトナーの大きさが揃っていることを意味する。
式(4):CV値(%)=粒度分布における標準偏差/粒度分布におけるメディアン径(D50)×100
【0080】
さらに、本発明のトナーの平均円形度は、0.930〜1.000であることが好ましく、より好ましくは0.950〜0.995である。
【0081】
このトナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)により測定されるものである。
具体的には、試料(トナー)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させた後、「FPIA−2100」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3,000〜10,000個の適正濃度で撮影を行い、個々の粒子について下記式(5)に従って円形度を算出し、各粒子の円形度を加算し、全粒子数で除することにより算出する。
式(5):平均円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子役影像の周囲長)
【0082】
〔現像剤〕
本発明のトナーにおいては、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
本発明のトナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛などの合金、フェライトおよびマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆した樹脂コート型キャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散したバインダー型キャリアなどを用いることもできる。樹脂コート型キャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0083】
キャリアの体積平均粒径は、15〜100μmであることが好ましく、より好ましくは25〜50μmである。
このキャリアの体積平均粒径は、湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定されるものである。
【0084】
〔画像形成方法〕
本発明のトナーは、一般的な電子写真方式による画像形成方法に用いることできる。
以下、図1に示す画像形成装置を用いた電子写真方式による画像形成方法について、以下、具体的に説明する。
【0085】
図1は、本発明に係る画像形成方法に用いられる画像形成装置の構成を示す概略図である。
この画像形成装置は、タンデム方式のカラー画像形成装置であって、垂直方向に縦列配置された4組の画像形成部10Y,10M,10C,10Kと、転写部としての無端ベルト状の中間転写体ユニット7と、画像支持体Pを搬送する無端ベルト状の給紙搬送手段21と、定着手段としての熱ロール式の定着装置24とを有する。この画像形成装置の本体Aの上面部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0086】
図4において、1Y,1M,1C,1Kは静電潜像担持体である感光体、2Y,2M,2C,2Kは当該感光体1Y,1M,1C,1Kの表面に一様な電位を与える帯電手段、3Y,3M,3C,3Kは一様に帯電された感光体1Y,1M,1C,1K上に画像データに基づいて露光を行うことにより静電潜像を形成する露光手段、4Y,4M,4C,4Kはトナーを感光体1Y,1M,1C,1K上に搬送して前記静電潜像を顕像化する現像手段、5Y,5M,5C,5Kは一次転写手段としての一次転写ローラ、70は中間転写体、5Aは一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kにより中間転写体70上に転写されたトナー像を画像支持体Pに転写する二次転写手段としての二次転写ローラ、6Y,6M,6C,6Kは一次転写後に感光体1Y,1M,1C,1K上に残留した残留トナーを回収するクリーニング手段を示す。
【0087】
各感光体に形成される異なる色のトナー像の1つとして、イエロー色の画像を形成する画像形成部10Yは、ドラム状の感光体1Y、この感光体1Yの周囲に配置された帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、一次転写手段としての一次転写ローラ5Yおよびクリーニング手段6Yを有する。また、別の異なる色のトナー像の1つとして、マゼンタ色の画像を形成する画像形成部10Mは、ドラム状の感光体1M、この感光体1Mの周囲に配置された帯電手段2M、露光手段3M、現像手段4M、一次転写手段としての一次転写ローラ5Mおよびクリーニング手段6Mを有する。また、さらに別の異なる色のトナー像の1つとして、シアン色の画像を形成する画像形成部10Cは、ドラム状の感光体1C、この感光体1Cの周囲に配置された帯電手段2C、露光手段3C、現像手段4C、一次転写手段としての一次転写ローラ5Cおよびクリーニング手段6Cを有する。また、さらに他の異なる色のトナー像の1つとして、黒色画像を形成する画像形成部10Kは、ドラム状の感光体1K、この感光体1Kの周囲に配置された帯電手段2K、露光手段3K、現像手段4K、一次転写手段としての一次転写ローラ5Kおよびクリーニング手段6Kを有する。
【0088】
中間転写体ユニット7は、複数のローラ71,72,73,74,76により巻回され、回動可能に支持された無端ベルト状の中間転写体70と、一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kと、クリーニング装置6Aとを有する。
【0089】
このような画像形成装置においては、画像形成部10Y,10M,10C,10Kにおいて、感光体1Y,1M,1C,1K上に、帯電手段2Y,2M,2C,2Kにより帯電、露光手段3Y,3M,3C,3Kにより露光、現像手段4Y,4M,4C,4Kにより現像を経て各色のトナー像が形成され、一次転写ローラ5Y,5M,5C,5Kにより中間転写体70上に各色のトナー像が順次重ね合わされて転写される。そして、給紙カセット20内に収容された画像支持体Pが、給紙搬送手段21により給紙され、複数の中間ローラ22A,22B,22C,22D、レジストローラ23を経て、二次転写ローラ5Aに搬送されると共に、当該画像支持体P上に中間転写体70上に転写されたカラートナー像が一括して転写される。その後、画像支持体P上に転写されたカラートナー像が定着装置24において加圧および加熱により定着され、カラートナー像が定着された画像支持体Pが排紙ローラ25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。トナー像を中間転写体70に転写させた後の感光体1Y,1M,1C,1Kは、クリーニング手段6Y,6M,6C,6Kにより転写時に感光体に残されたトナーを清掃、感光体表面に脂肪酸金属塩を供給、供給された脂肪酸金属塩を延展して感光体表面に脂肪酸金属塩の膜を形成した後に、次の画像形成に供される。
一方、二次転写ローラ5Aにより画像支持体P上にカラートナー像を転写した後、画像支持体Pを曲率分離した中間転写体70は、クリーニング装置6Aにより残留トナーが除去される。
【0090】
本発明のトナーによれば、ゾル−ゲル法により得られたシリカ材が疎水化処理された、特定範囲の粒径を有する大径シリカ微粒子が外添剤として含有され、当該大径シリカ微粒子が、平均炭素量が特定範囲のものであることにより、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、優れた帯電立ち上がり特性および帯電安定性が得られる。
【実施例】
【0091】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0092】
〔大径シリカ微粒子の製造例1〕
撹拌装置、滴下ロート、温度計を備えた容量3リットルの反応器にメタノール623.7質量部、28%アンモニア水49.8質量部、水41.1質量部を添加し、35℃に調整した後、撹拌しながらテトラメトキシシラン1163.7質量部および5.4%アンモニア水418.1質量部を同時に滴下し始め、前者は6時間、後者は4時間かけて滴下した後、さらに0.5時間攪拌を続けて加水分解を行い、シリカゾル混濁液を調製した。次いで、ガラス製反応器にエステルアダプターと冷却管を取り付け60〜70℃に加熱し、さらにメタノール水1200質量部を留去し、水性混濁液を得た。この水性混濁液に室温でメチルトリメトキシシラン11.6質量部(テトラメトキシシランに対してモル比で0.01相当量)を0.5時間かけて滴下し、12時間攪拌し疎水化処理を行った。この系にメチルイソブチルケトン1400質量部を添加した後、80℃に加熱しメタノール水を7時間かめて留去した。そして、室温にてヘキサメチルジシラザン360質量部を添加し、120℃に加熱し4時間反応させてトリメチルシリル化した。その後、有機溶媒を減圧下で留去して大径シリカ微粒子〔1〕を得た。
この大径シリカ微粒子〔1〕の体積平均一次粒径(D50)、標準偏差、平均炭素量、球形化度、アルコキシ基量および疎水化度について上述した方法により測定した結果を表1に示す。以下同様とする。
【0093】
〔大径シリカ微粒子の製造例2〕
大径シリカ微粒子の製造例1において、テトラメトキシシラン1163.7質量部を1455質量部に、ヘキサメチルジシラザン360質量部を450質量部に変更したことの他は同様にして大径シリカ微粒子〔2〕を得た。
【0094】
〔大径シリカ微粒子の製造例3〕
大径シリカ微粒子の製造例1において、テトラメトキシシラン1163.7質量部を870質量部に、ヘキサメチルジシラザン360質量部を550質量部に変更したことの他は同様にして大径シリカ微粒子〔3〕を得た。
【0095】
〔大径シリカ微粒子の製造例4〕
大径シリカ微粒子の製造例1において、ヘキサメチルジシラザン360質量部を480質量部に変更したことの他は同様にして大径シリカ微粒子〔4〕を得た。
【0096】
〔大径シリカ微粒子の製造例5〕
大径シリカ微粒子の製造例1において、テトラメトキシシラン1163.7質量部を870質量部に、ヘキサメチルジシラザン360質量部を190質量部に変更したことの他は同様にして大径シリカ微粒子〔5〕を得た。
【0097】
〔大径シリカ微粒子の製造例6〕
大径シリカ微粒子の製造例1において、テトラメトキシシラン1163.7質量部を6時間滴下することに代えて、テトラメトキシシラン2327.4質量部を10時間滴下し、また、ヘキサメチルジシラザン360質量部を100質量部に変更したことの他は同様にして大径シリカ微粒子〔6〕を得た。
【0098】
【表1】

【0099】
〔トナーの製造例1〕
(結着樹脂粒子分散液調製工程)
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部とイオン交換水3000質量部を添加し、窒素気流下230rpmの撹拌速度において撹拌しながら、内温を80℃に昇温した。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加して、液温を80℃に調整した。
次に、下記に示す化合物よりなる重合性単量体混合液を反応容器に1時間かけて滴下した後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子〔1H〕の分散液(以下、「樹脂粒子分散液〔1H〕」という。)を調製した。
スチレン 80質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 16質量部
【0100】
(2)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた界面活性剤溶液を添加した。反応容器を98℃に加熱した後、樹脂粒子分散液〔1H〕260質量部(固形分換算)と、下記に示す化合物よりなる重合性単量体混合液とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEAMIX」(エム・テクニック社製)を用いて1時間混合、分散することにより、乳化粒子(油滴)が分散されてなる分散液を調製した。
スチレン 45質量部
n−ブチルアクリレート 20質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5質量部
ワックス「HNP−11」(日本精蝋社製) 67質量部
次に、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、82℃にて1時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子〔1HM〕の分散液(以下、「樹脂粒子分散液〔1HM〕という。」を調製した。
【0101】
(3)第3段重合
樹脂粒子分散液〔1HM〕に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、82℃にて下記に示す化合物よりなる重合性単量体溶液を1時間かけて滴下した。滴下した後、2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合を行い、28℃まで冷却して結着樹脂粒子〔1〕が分散されてなる結着樹脂粒子分散液〔1〕を調製した。この結着樹脂粒子〔1〕の体積基準のメディアン径(D50)は150nm、ガラス転移点は45℃であった。
スチレン 35質量部
n−ブチルアクリレート 130質量部
メタクリル酸 33質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
【0102】
(着色剤粒子分散液調製工程)
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)420質量部を徐々に添加し、次いで、循環経路を有する機械式分散機「CLEAMIX」(エム・テクニック社製)を用いて分散することにより、着色剤粒子〔1〕が分散されてなる着色剤粒子分散液〔1〕を調製した。この着色剤粒子〔1〕の体積基準のメディアン径(D50)は80nmであった。
【0103】
(凝集・会合・融着工程)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、下記材料を添加し、これに、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水120質量部に溶解させた界面活性剤溶液を添加して液温を30℃に調整した。
結着樹脂粒子分散液〔1〕 300質量部(固形分換算)
イオン交換水 1400質量部
着色剤粒子分散液〔1〕 120質量部(固形分換算)
次に、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整し、塩化マグネシウム・6水和物35質量部をイオン交換水35質量部に溶解させた30℃の凝集剤溶液を撹拌状態にある反応系中に10分間かけて添加した。そして、3分間経過した後、昇温を開始し、60分間かけて90℃まで昇温し、90℃に保持した状態で凝集を進行させた。この状態で「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて粒子の粒径を測定し、体積基準のメディアン径(D50)で6.5μmとなったときに、塩化ナトリウム150質量部をイオン交換水600質量部に溶解させた水溶液を添加して粒子成長を停止させた。
その後、液温を98℃にして撹拌を継続し、フロー式粒子像分析装置「FPIA−2100」(Sysmex社製)を用いて平均円形度が0.965となるまで融着を進行させた。そして、液温を30℃まで冷却し、塩酸を添加してpHを2に調整して、撹拌を停止し、トナー粒子〔1〕を作製した。
【0104】
(洗浄、乾燥工程)
トナー粒子〔1〕をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械社製)により固液分離し、トナー粒子〔1〕のウェットケーキを形成し、これを前記バスケット型遠心分離機により濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥した。
このトナー粒子〔1〕の体積基準のメディアン径(D50)は6.1μm、平均円形度は0.970であった。
【0105】
(外添剤添加工程)
洗浄、乾燥されたトナー粒子〔1〕100質量部に、下記外添剤を添加し、ヘンシェルミキサー「FM10B」(三井三池化工機社製)を用い、撹拌羽根周速を40m/秒、処理温度30℃、処理時間20分間として外添処理を行った。その後、目開き90μmのふるいを用いて粗大粒子を除去してトナー〔1〕を得た。
大径シリカ微粒子〔1〕 1.5質量部
HMDS処理気相法シリカ微粒子(個数平均一次粒径:20nm)「H1303」(クラリアント社製) 1.0質量部
アナターゼ型酸化チタン微粒子(個数平均一次粒径:30nm)「STT−30S」(チタン工業社製) 0.5質量部
なお、トナー〔1〕について、外添剤の添加によっては、その粒径および平均円形度は変化しなかった。
【0106】
〔トナーの製造例2〜6〕
トナーの製造例1において、外添剤添加工程において添加される大径シリカ微粒子〔1〕1.5質量部を各々大径シリカ微粒子〔2〕〜〔6〕に変更したことの他は同様にしてトナー〔2〕〜〔6〕を得た。
【0107】
〔キャリアの製造例1〕
(芯材粒子)
マンガン含有量がMnO換算で21.0モル%、マグネシウム含有量がMgO換算で3.3モル%、ストロンチウム含有量がSrO換算で0.7モル%、鉄含有量がFe2 3 換算で75.0モル%となる体積平均粒径50μmのフェライト系磁性粒子よりなる芯材粒子〔1〕を用意した。
なお、体積平均粒径は湿式分散器を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定される体積基準の平均粒径である。
【0108】
(被覆樹脂粒子の作製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を備えた反応容器に、アニオン性界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム1.7質量部を加えたイオン交換水3000質量部用意し、この界面活性剤溶液を、窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。その後、前記界面活性剤溶液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させてなる開始剤溶液を添加し、液温を80℃にして、下記単量体混合溶液を2時間かけて滴下した。
そして、80℃の下で2時間かけて加熱、撹拌処理することにより重合を行い、被覆樹脂粒子分散液を作製した。
シクロヘキシルメタクリレート 400質量部
メチルメタクリレート 400質量部
作製した被覆樹脂粒子分散液をスプレードライヤーにて乾燥させ、被覆樹脂粒子〔1〕を得た。
【0109】
(樹脂層の被覆)
芯材粒子〔1〕3000質量部、被覆樹脂粒子〔1〕120質量部を水平回転翼型混合機に投入し、水平回転翼の周速が4m/秒となる条件で、22℃で15分間混合撹拌した後、120℃に加熱し40分間撹拌して、体積平均粒径52μmの樹脂コート型キャリア〔1〕を作製した。
【0110】
〔実施例1〜4、比較例1,2〕
トナー〔1〕〜〔6〕の各々に、樹脂コート型キャリア〔1〕をトナー濃度が7%となるようにボールミルを用いて30分間混合し、現像剤〔1〕〜〔6〕を作製した。
この現像剤〔1〕〜〔6〕を画像形成装置「bizhub PRO C650」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に装填し、低温低湿環境下(温度10℃、相対湿度15%)および高温高湿環境下(温度30℃、相対湿度80%)において、下記評価を行った。なお、各環境において、初期評価を行った後、カバレッジ3%の画像を10万枚連続印字した後、さらにカバレッジ10%の画像を5万枚連続印字した。
【0111】
(1)トナー飛散
連続印字後において、画像形成装置内のフィルター汚れについて下記評価基準に従って評価した。
A:画像形成装置内のフィルター汚れがほとんどない。
B:画像形成装置内のフィルター汚れが認められるが、実用上問題ない。
C:画像形成装置内のフィルター汚れが酷く、装置内汚れが発生している。
【0112】
(2)ハーフ画像粒状性
初期および連続印字後において、全面ハーフトーン画像を出力し、得られたハーフトーン画像のハーフトーンのきめについて下記評価基準に従って評価した。
A:きめ細かく均一なハーフトーン画像を再現しており、初期と連続印字後とも遜色ない。
B:部分的に濃度ムラが認められるが、実用的に使用可能なレベルである。
C:初期と比較して濃度ムラあるいは大きな濃度変化が発生しており、画像上実用に値しない。
【0113】
(3)画像カブリ
初期および連続印字後において、白紙通紙し、通紙した白紙の画像カブリについて下記評価基準に従って評価した。
A:白紙画像においてカブリが認められず、初期と連続印字後とも遜色ない。
B:部分的にカブリが認められるが、肉眼では実用的に使用可能なレベルである。
C:肉眼でカブリが観察され、画像上実用に値しない。
【0114】
(4)感光体フィルミング
連続印字後において、画像形成装置内の感光体上におけるフィルミング発生の有無、および、フィルミング発生による画像欠陥の有無について目視により観察し、下記評価基準により評価した。
A:フィルミングの発生なし。
B:部分的なフィルミングの発生が認められるが、画像ノイズとしては発生しておらず、実用的に使用可能なレベルである。
C:フィルミングが全面に発生しており、画像上も実用に値しない。
【0115】
(5)トナー帯電性
低温低湿環境下および高温高湿環境下のそれぞれの連続印字終了後において、連続印字終了後の現像剤を用いて現像剤のトナー濃度を5%に調整した後、当該現像剤を取り出してトナー濃度が8%となるようにトナーを追加し、ロールミルを用いて5分間混合し、トナー帯電量を測定した。なお、このトナー帯電量は、図2に示す装置を用いて測定した。
具体的には、計量した現像剤を導電性スリーブ31の表面全体に均一になるように載せると共に、この導電性スリーブ31内に設けられたマグネットロール32の回転数を1000rpmにセットし、そして、バイアス電源33よりバイアス電圧をトナーの帯電電位と逆の極性に2kV印加し、導電性スリーブ31を15秒間回転させ、この導電性スリーブ31を停止させた時点での円筒電極34における電位Vmを読みとると共に、円筒電極34に付着したトナーの質量を精密天秤で秤量して、トナーの帯電量を求めた。
低温低湿環境下および高温高湿環境下におけるトナー帯電量の差を下記の評価基準に従って評価した。
A:10(−μC/g)以下
B:10(−μC/g)を超えて20(−μC/g)以下
C:20(−μC/g)を超える
【0116】
【表2】

【0117】
以上の結果により、本発明に係る実施例1〜4においては、外添剤として用いた大径シリカ微粒子が、特定範囲の粒径を有し、かつ、平均炭素量が特定範囲のものであることにより、得られるトナーは、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、トナー飛散の発生が抑制され、また、優れた粒状性を有する共に画像カブリなどのない高画質の画像を形成することができることが確認された。
このような効果が奏される理由は、以下のように考えられる。
本発明に係る大径シリカ微粒子は、従来のシリカ微粒子に比べて平均炭素量が多いものであり、このことは、疎水化処理に供されるシリカ材におけるアルコキシ基量が多く、このアルコキシ基に結合した疎水化処理剤の量が多いことを意味する。従って、得られた大径シリカ微粒子は適正な疎水化処理が施されたものとなり、このような大径シリカ微粒子をトナーの外添剤とすることにより、特に低温低湿環境下および高温高湿環境下においても、優れた帯電特性を有するものとなり、その結果、トナー飛散の発生が抑制され、また、高画質の画像を形成することができたと考えられる。
【符号の説明】
【0118】
1Y,1M,1C,1K 感光体
2Y,2M,2C,2K 帯電手段
3Y,3M,3C,3K 露光手段
4Y,4M,4C,4K 現像手段
5A 二次転写ローラ
5Y,5M,5C,5K 一次転写ローラ
6A クリーニング装置
6Y,6M,6C,6K クリーニング手段
7 中間転写体ユニット
10Y、10M、10C、10K 画像形成部
20 給紙カセット
21 給紙搬送手段
22A,22B,22C,22D 中間ローラ
23 レジストローラ
24 定着装置
25 排紙ローラ
26 排紙トレイ
31 導電性スリーブ
32 マグネットロール
33 バイアス電源
34 円筒電極
70 中間転写体
71,72,73,74,76 ローラ
A 本体
SC 原稿画像読み取り装置
P 画像支持体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外添剤が含有されてなる静電荷像現像用トナーにおいて、
前記外添剤は、ゾル−ゲル法により得られたシリカ材が疎水化処理剤により疎水化処理された、体積平均一次粒径が60〜150nmである大径シリカ微粒子を含み、
前記大径シリカ微粒子は、平均炭素量が3.0質量%を超え5.0質量%以下のものであることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記大径シリカ微粒子が、疎水化度が40〜80のものであることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記外添剤が、個数平均一次粒径が5〜45nmである小径外添剤微粒子を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。


【図1】
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【図2】
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