説明

静電荷像現像用マゼンタトナー、現像剤、画像形成方法および画像形成装置

【課題】 色再現性および耐光性が良好で、色ずれの発生および転写効率の低下を抑制することができる静電荷像現像用マゼンタトナー、現像剤、画像形成方法および画像形成装置を提供する。
【解決手段】 静電荷像現像用マゼンタトナーは、結着樹脂および着色剤を含む。着色剤は、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とを、8:2〜5:5の重量比率で含有する。静電荷像現像用マゼンタトナーの時定数は、1100m/sec以上1300m/sec以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用マゼンタトナー、現像剤、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置では、たとえば帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニングおよび除電の各工程を経ることにより画像が形成される。帯電工程で、回転駆動される感光体の表面を帯電装置によって均一に帯電し、露光工程で、帯電した感光体表面に露光装置によってレーザ光が照射され、感光体表面に静電潜像が形成される。次に現像工程で、感光体表面の静電潜像が現像装置によって現像剤を用いて現像されて感光体表面にトナー像が形成され、転写工程で、感光体表面のトナー像が転写装置によって転写材上に転写される。その後、定着工程で、定着装置で加熱されることによって、トナー像が転写材上に定着される。また、画像形成動作後に感光体表面上に残留した転写残留トナーは、クリーニング工程で、クリーニング装置により除去されて所定の回収部に回収され、除電工程で、クリーニング後の感光体表面における残留電荷が、次の画像形成に備えるために、除電装置により除電される。
【0003】
フルカラーの画像形成装置では、帯電、露光、転写、定着、クリーニングおよび除電の各工程を、イエロー、マゼンタおよびシアンの3色に応じて3回実施する。またはイエロー、マゼンタ、シアンの3色に黒を加えて4回実施する。現像工程においては、イエロー、マゼンタおよびシアンの3色、またはイエロー、マゼンタおよびシアンの3色に黒を加えた4色のトナーを使用する。
【0004】
このようなフルカラーの画像形成に使用されるトナーとしては、原稿に忠実な画像が得られるように、色再現性に優れるものが求められ、たとえば特許文献1〜4には、着色剤としてローダミン系化合物を含むマゼンタトナーが開示されている。
【0005】
また、特許文献5には、着色剤としてピグメントレッド48−1を含む電子写真用マゼンタトナーが開示されている。特許文献5に開示の電子写真用マゼンタトナーによれば、事務用文具などによって記録された赤色画像を高彩度で再現することができる。
【0006】
さらに、トナーには、色ずれおよび転写効率の低下を抑制できるものが求められ、たとえば特許文献6には、少なくとも、重合体微粒子、着色剤微粒子および離型剤微粒子からなる凝集粒子をトナー粒子とする乾式トナーであって、少なくとも、キナクリドン系着色剤と溶性アゾ系着色剤とを含有し、キナクリドン系着色剤と溶性アゾ系着色剤との総含有量が1〜20質量%で、含有量の質量比率が、キナクリドン系着色剤:溶性アゾ系着色剤=10:90〜50:50であり、かつフロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)で測定される個数基準の粒径頻度分布におけるトナーの円相当個数平均径が3〜7μmであり、円相当径が0.6〜2μmの範囲に存在するトナーの個数比率が1〜30個数%であるトナーが開示されている。
【0007】
転写に係るトナーの物性はファンデルワールス力に依存すると考えられ、特許文献6に開示のトナーのように、円相当個数平均径および円相当径0.6〜2μmの範囲に存在するトナーの個数比率が上記範囲であれば、感光体上の存在する転写残余のトナーの回収性が著しく改善されるので、転写残余のトナーの増加を抑制し、画像の輪郭部分、特に文字画像およびラインパターンの現像での再現性を良好にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−287239号公報
【特許文献2】特開2009−47814号公報
【特許文献3】特開2009−58745号公報
【特許文献4】特開2009−169407号公報
【特許文献5】特開昭63−173066号公報
【特許文献6】特開2004−333629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
フルカラーの画像形成装置の普及にともない、画像形成装置を用いて捺印のある書類を複写したり、捺印画像を含む画像データに応じた画像を形成することが増え、捺印画像の色再現性に対する要求が高まっている。捺印の色は、印鑑用の朱肉の色であり、高い明度を有する明るい朱色である。
【0010】
朱色は、通常、マゼンタトナーにイエロートナーを混ぜることで作られるが、マゼンタトナーにイエロートナーを混ぜて作った朱色は、混色によって色が濁るので明度が低く、朱肉の色を充分に再現できない。マゼンタトナー用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド57−1、C.I.ピグメントレッド122などが使用される。なお、マゼンタトナーに混ぜるイエロートナーの割合などは、画像処理技術にて決定される。
特許文献5に開示のマゼンタトナーは、朱肉の色を充分に再現することができない。
【0011】
これに対して、特許文献1〜4に開示のマゼンタトナーは、朱肉の色を充分に再現することができる。これは、ローダミン系化合物が蛍光顔料であるためである。ローダミン系化合物は、520nm近辺の光を吸収して波長560〜600nmの領域に蛍光ピーク波長を有する蛍光を発することが知られている。着色剤として蛍光顔料を用いる、容易に明度および彩度を上げることができ、明度の高い明るい朱色を出すことが可能となる。
【0012】
しかしながら、蛍光顔料は耐光性が劣るので、複写物および画像形成物に含まれる捺印画像が、比較的速い時間で退色するという問題がある。
【0013】
また、特許文献6に開示のトナーでは、色ずれの発生および転写効率の低下を充分に抑制することができない。
【0014】
本発明の目的は、色再現性および耐光性が良好で、色ずれの発生および転写効率の低下を抑制することができる静電荷像現像用マゼンタトナー、現像剤、画像形成方法および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、結着樹脂と、
C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とを8:2〜5:5の重量比率で含有する着色剤とを含み、
時定数が1100m/sec以上1300m/sec以下であることを特徴とする静電荷像現像用マゼンタトナーである。
【0016】
また本発明は、波長440nmの光の透過率が30%以上45%以下であることを特徴とする。
また本発明は、前記静電荷像現像用マゼンタトナーとキャリアとを含む現像剤である。
【0017】
また本発明は、帯電させた像担持体表面を露光して、像担持体表面に静電荷像を形成し、前記現像剤を用いて、像担持体表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成することを特徴とする画像形成方法である。
【0018】
また本発明は、像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電手段と、
帯電手段によって帯電された像担持体を露光して、像担持体表面に静電荷像を形成する露光手段と、
前記静電荷像の形成された像担持体に、前記現像剤中の静電荷像現像用マゼンタトナーを供給して前記静電荷像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、静電荷像現像用マゼンタトナーは、結着樹脂および着色剤を含む。着色剤は、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とを、8:2〜5:5の重量比率で含有し、静電荷像現像用マゼンタトナーの時定数は、1100m/sec以上1300m/sec以下である。
【0020】
着色剤が、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とを、8:2〜5:5の重量比率で含有することによって、蛍光顔料を使用せずに良好な耐光性を確保した上で、朱肉の色に対する色再現性が良好な静電荷像現像用マゼンタトナーとすることができる。
【0021】
静電荷像現像用マゼンタトナーの時定数が、1100m/sec以上1300m/sec以下であることによって、静電荷像現像用マゼンタトナーと、中間転写ベルトおよび定着前の記録媒体との静電付着力が適切な範囲となり、色ずれの発生および転写効率の低下が抑制され、高品位の画像を形成することができる。
【0022】
また本発明によれば、波長440nmの光の透過率が30%以上45%以下である。これによって、朱肉の色を安定して充分に再現することができる。
【0023】
また本発明によれば、現像剤は、本発明の静電荷像現像用マゼンタトナーとキャリアとを含む。本発明の静電荷像現像用マゼンタトナーは、色再現性および耐光性が良好で、かつ色ずれの発生および転写効率の低下を抑制することができるので、本発明の静電荷像現像用マゼンタトナーとキャリアとを含む現像剤は、朱肉の色を充分に再現した高品位の画像を形成することができる。
【0024】
また本発明によれば、画像形成方法は、帯電させた像担持体表面を露光して、像担持体表面に静電荷像を形成し、本発明の現像剤を用いて、像担持体表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成するので、朱肉の色を充分に再現した高品位の画像を形成することができる。
【0025】
また本発明によれば、画像形成装置は、像担持体と、像担持体を帯電させる帯電手段と、帯電手段によって帯電された像担持体を露光して、像担持体表面に静電荷像を形成する露光手段と、静電荷像の形成された像担持体に、本発明の現像剤中の静電荷像現像用マゼンタトナーを供給して静電荷像を現像する現像手段とを備えるので、朱肉の色を充分に再現した高品位の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施形態のマゼンタトナーを用いて形成された画像を示す図である。
【図2】色ずれおよび転写不良が発生した状態を示す図である。
【図3】本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を模式的に示す概略図である。
【図4】図3に示す画像形成装置100に備わる現像装置14を模式的に示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施の一形態である静電荷像現像用マゼンタトナー(以下、単に「マゼンタトナー」ともいう)は、少なくとも結着樹脂、マゼンタ着色剤および離型剤を含有するマゼンタトナー粒子よりなる。
【0028】
<結着樹脂>
結着樹脂としては、特に限定されるものではなく、カラートナー用の結着樹脂が使用され、たとえば、ポリエステル系樹脂、ポリスチレンおよびスチレン−アクリル酸エステル共重合樹脂などのスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン、ならびにエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0029】
結着樹脂としては、原料モノマー混合物に離型剤を混合し、重合反応させて得られる樹脂を用いてもよい。この場合、結着樹脂は、ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。結着樹脂にポリエステル樹脂を含むことによって、離型剤の分散状態制御性が向上し、一層優れた定着性を有するマゼンタトナーが得られる。さらに、マゼンタトナーに優れた耐久性と透明性とを付与することができる。結着樹脂は、1種を単独で使用することができ、または2種以上を併用することもできる。
【0030】
ポリエステル樹脂としては、とくに制限されるものではなく公知のものが使用される。たとえば、多塩基酸類と多価アルコール類との縮重合物が挙げられる。多塩基酸類とは、多塩基酸、および多塩基酸の誘導体たとえば多塩基酸の酸無水物またはエステル化物などのことである。多価アルコール類とは、ヒドロキシル基を2個以上含有する化合物のことであり、アルコール類およびフェノール類のいずれをも含む。
【0031】
多塩基酸類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものを使用できる。たとえば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸およびナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸およびアジピン酸などの脂肪族カルボン酸類が使用される。多塩基酸類は、1種を単独で使用してもよく、あるいは、2種以上を併用して使用してもよい。
【0032】
多価アルコール類としては、ポリエステル樹脂のモノマーとして常用されるものが使用される。たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールおよびグリセリンなどの脂肪族多価アルコール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールおよび水添ビスフェノールAなどの脂環式多価アルコール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物およびビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。
【0033】
「ビスフェノールA」とは、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンのことである。ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシエチレン−2,2−ビス4−ヒドロキシフェニルプロパンが挙げられる。ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物としては、たとえばポリオキシプロピレン−2,2−ビス4−ヒドロキシフェニルプロパンが挙げられる。多価アルコール類は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。
【0034】
ポリエステル樹脂は、縮重合反応によって合成することができる。たとえば、有機溶媒中または無溶媒下で、触媒の存在下に多塩基酸類と多価アルコール類とを重縮合反応、具体的には脱水縮合反応させることによって合成することができる。このとき、多塩基酸類の一部に、多塩基酸のメチルエステル化物を用い、脱メタノール重縮合反応を行なってもよい。多塩基酸類と多価アルコール類との重縮合反応は、生成するポリエステル樹脂の酸価および軟化点が、合成しようとするポリエステル樹脂における値となったところで終了させればよい。
【0035】
この重縮合反応において、多塩基酸類と多価アルコール類との配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、たとえば、得られるポリエステル樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られるポリエステル樹脂の酸価、軟化点、その他の物性値を調整することもできる。
【0036】
結着樹脂の酸価は、5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。結着樹脂の酸価が5mgKOH/g未満であると、結着樹脂の酸価が5mgKOH/g以上である場合と比較して、結着樹脂と離型剤との親和性が大きくなるので、定着の際に離型剤がマゼンタトナー表面に溶出しにくくなり、定着不良として高温オフセットが発生しやすくなる。結着樹脂の酸価が30mgKOH/gを超えると、結着樹脂の酸価が30mgKOH/g未満の場合より、マゼンタトナー表面に残存する官能基が多くなり、水分を吸収しやすくなるので、高湿条件下において、マゼンタトナーの帯電量が低下し、帯電安定性が損なわれるおそれがある。さらに、結着樹脂中における離型剤の分散性が低下しやすくなるので、マゼンタトナーの製造の際に混練が不充分である場合には、マゼンタトナー表面の離型剤の分散径が大きくなる可能性がある。
【0037】
結着樹脂の酸価が5mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることによって、マゼンタトナー中での離型剤の分散性を所望の範囲にする、具体的には、マゼンタトナー表面の離型剤の分散径を安定して300nm未満とすることができ、高湿条件下でのマゼンタトナーの帯電量の低下を抑えることができ、定着性が良好になるように結着樹脂と離型剤との親和性を制御することができる。
【0038】
したがって、帯電安定性をより一層良好にすることができ、かつより良好な定着性を有することができるので、長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像をより一層安定して形成することができる。結着樹脂の酸価は、結着樹脂の合成において、結着樹脂の原料モノマー混合物、たとえばポリエステル樹脂の場合には、多塩基酸類、多価アルコール類の配合比および反応率などの反応条件を適宜変更することによって、得られる結着樹脂の末端に結合するカルボキシル基の含有量、ひいては得られる結着樹脂の酸価を調整することができる。
【0039】
<マゼンタ着色剤>
マゼンタ着色剤は、特定の2種類のマゼンタ顔料を特定の割合で含む。
【0040】
特定の2種類のマゼンタ顔料とは、カラーインデックスによって分類されるC.I.ピグメントレッド48−3と、C.I.ピグメントレッド48−1の2つである。マゼンタ着色剤は、これら2種類のマゼンタ顔料を、C.I.ピグメントレッド48−3を主とし、C.I.ピグメントレッド48−1を副として含む。
【0041】
C.I.ピグメントレッド48−3は、透過特性として赤味が強く、また、紫色の透過率が高いといった特性がある。C.I.ピグメントレッド48−1は、紫色の透過率が低く、着色力が弱いといった特性がある。
【0042】
特定の割合(混合比)とは、マゼンタ着色剤の総重量を10とした場合、C.I.ピグメントレッド48−3:C.I.ピグメントレッド48−1が、8:2〜5:5の範囲である。
【0043】
C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とを、8:2〜5:5の重量比率で含有するマゼンタ着色剤を用いることによって、本実施形態のマゼンタトナーにイエロートナーを混色して、記録媒体上に形成した朱色の可視画像を、明度をL* 、赤−緑方向の色相をa* 、黄−青方向の色相をb* とするL* * * 系表色系(マンセル表色系)によって表す場合に、朱肉の色域である(L* ,a* ,b*)=(55,62,33)の色域の内に含ませることができる。または、明度をL* 、彩度をC* とする表色系(マンセル表色系)によって表す場合に、朱肉の色域である(L* ,C*)=(55,70)の色域の内に含ませることができる。そのため、明度L*の高い明るい朱色である朱肉の色を充分に再現することができるマゼンタトナーとすることができる。
【0044】
* * * 系表色系とは色を数値化して表すのに有用に用いられる手段であり、z軸方向のL* は明度を表し、x軸およびy軸のa* およびb* の両者で色相と彩度を表す。「明度」とは色の相対的な明るさをいい、「色相」とは赤、黄、緑、青、紫などの色合いをいい、「彩度」とは色の鮮やかさの度合いをいう。
【0045】
なお、イエロートナーは、用いるイエローの着色剤によらず明度が高いため、朱色の可視画像の色域は、マゼンタトナーの特性によって決定される。イエロートナーに含有させるイエローの着色剤としては、たとえばC.I.ピグメントイエロー74またはC.I.ピグメントイエロー185を使用できる。
【0046】
C.I.ピグメントレッド48−1の重量比率が2割未満であると、C.I.ピグメントレッド48−3の特性が強く出るので、朱肉の色の高い明度L* が出ず、朱肉の色を充分に再現することができない。C.I.ピグメントレッド48−3に対するC.I.ピグメントレッド48−1の割合が増すほど、記録媒体に形成した可視画像の明度L* が高くなるが、C.I.ピグメントレッド48−1の重量比率が5割を超えると、着色力が弱いC.I.ピグメントレッド48−1の特性によって、朱肉の色の彩度C*が出ず、朱肉の色を充分に再現することができない。
【0047】
なお、朱肉の色は、マゼンタトナーに蛍光顔料を含めることで容易に実現できるが、蛍光顔料を含むマゼンタトナーは、耐光性に劣るので、退色の問題がある。この退色の問題を解決するために、蛍光顔料を含むマゼンタトナーに耐光性を向上させるための物質を添加すると、マゼンタトナーの発色性などにまた新たな問題の出現が懸念される。また、耐光性の高い蛍光顔料の開発には多大なコストがかかる。
【0048】
マゼンタ着色剤は、マスターバッチとして、使用されることが好ましい。マスターバッチは、たとえば、合成樹脂の溶融物とマゼンタ着色剤とを混練することによって製造することができる。合成樹脂としては、結着樹脂と同種の樹脂または結着樹脂に対して良好な相溶性を有する樹脂が使用される。合成樹脂とマゼンタ着色剤との使用割合は特に制限されないが、好ましくは合成樹脂100重量部に対して30重量部以上100重量部以下である。マスターバッチは、たとえば粒径2〜3mm程度に造粒されて用いられる。
【0049】
マゼンタトナーにおけるマゼンタ着色剤の含有量は、特に制限されないが、好ましくは結着樹脂100重量部に対して4重量部以上15重量部以下である。マスターバッチを用いる場合、本実施形態のマゼンタトナーにおけるマゼンタ着色剤の含有量が前記範囲になるように、マスターバッチの使用量を調整することが好ましい。マゼンタ着色剤の含有量を前記範囲とすることによって、充分な画像濃度を有し、発色性が高く画像品位に優れる良好な画像を形成することができる。
【0050】
<離型剤>
離型剤としては、特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。たとえば、パラフィンワックスおよびその誘導体、ならびにマイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体などの石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックスおよびその誘導体、ポリオレフィンワックスおよびその誘導体、低分子ポリプロピレンワックスおよびその誘導体、ならびにポリオレフィン系重合体ワックスおよびその誘導体などの炭化水素系合成ワックス、カルナバワックスおよびその誘導体、エステル系ワックスなどが挙げられる。
【0051】
マゼンタトナーにおける離型剤の含有量は、マゼンタトナーの全重量に対して1.5重量%以上5重量%以下が良い。離型剤の含有量が1.5重量%未満では、中間転写ベルトに対するマゼンタトナーの離型性が低下し、定着オフセットが発生するおそれがある。離型剤の含有量が5重量%を超えると、定着性は良好であるものの現像装置内の撹拌熱によりマゼンタトナーが凝集し、良好な画像が得られないおそれがある。
【0052】
離型剤の酸価は、4mgKOH/g未満が好ましい。離型剤の酸価が4mgKOH/g以上であると、離型剤の酸価が4mgKOH/g未満である場合と比較して、離型剤と結着樹脂との親和性が高くなるので、定着の際に離型剤がマゼンタトナーから溶出しにくくなり、高温オフセットが発生しやすくなる。
【0053】
<帯電制御剤>
マゼンタトナーには、結着樹脂、マゼンタ着色剤および離型剤の他に、帯電制御剤などのトナー添加成分を含有することが好ましい。帯電制御剤を含有させることによって、マゼンタトナーに好ましい帯電性を付与することができる。帯電制御剤としては、正電荷制御用または負電荷制御用の帯電制御剤が使用される。
【0054】
正電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、ニグロシン染料、塩基性染料、四級アンモニウム塩、四級ホスホニウム塩、アミノピリン、ピリミジン化合物、多核ポリアミノ化合物、アミノシラン、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、グアニジン塩、およびアミジン塩などが挙げられる。負電荷制御用の帯電制御剤としては、たとえば、オイルブラックおよびスピロンブラックなどの油溶性染料、含金属アゾ化合物、アゾ錯体染料、ナフテン酸金属塩、サリチル酸およびその誘導体の金属錯体および金属塩(金属はクロム、亜鉛、ジルコニウムなど)、ホウ素化合物、脂肪酸石鹸、長鎖アルキルカルボン酸塩、ならびに樹脂酸石鹸などが挙げられる。帯電制御剤は1種を単独で使用することができ、あるいは2種以上を併用することができる。
【0055】
帯電制御剤の含有量は、好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上5重量部以下であり、より好ましくは結着樹脂100重量部に対して0.5重量部以上3重量部以下である。帯電制御剤の含有量が5重量部を超えると、マゼンタトナーから脱離した帯電制御剤によってキャリアが汚染され、マゼンタトナーを充分に帯電させることができずにトナー飛散が発生するおそれがある。帯電制御剤の含有量が0.5重量部未満であると、マゼンタトナーに充分な帯電特性が付与されない。
【0056】
このような本実施形態のマゼンタトナーは、時定数τが1100m/sec以上1300m/sec以下である。マゼンタトナーの時定数τは、マゼンタトナーの抵抗をRとし、マゼンタトナーの静電容量をCとするとき、その積RCと定義する。
【0057】
このように定義する理由を以下に記載する。
まず、マゼンタトナーは誘電体であるから、抵抗成分と静電容量(コンデンサ)成分とを併せ持つ。ここで、マゼンタトナーの抵抗をR(Ω)、マゼンタトナーの静電容量をC(F)とすると、マゼンタトナーに電圧を印加した状態を、R(Ω)の抵抗とC(F)の静電容量とを直列接続した回路にたとえることができる。この直列回路に直流電圧E(V)を印加し、直流電圧Eを印加した瞬間を時刻0、時刻tで回路に流れる電流をi(t)(A)、コンデンサに蓄えられる電気量をq(C、クーロン)とする。このとき直流電圧Eは、下記式(1)で表わされる。
E=R・i(t)+q/C …(1)
【0058】
ここで電流は電子の流れ、すなわち荷電量の時間変化の大きさであるから、i(t)=dq(t)/dtと表わされ、上記式(1)は下記式(2)のように書き換えられる。
E=[(R・dq(t)/dt)+q]/C …(2)
【0059】
上記(2)式を解くと、q(t)はtに関して下記式(3)で表わされる。
q(t)=CE(1−exp(−t/RC)) …(3)
【0060】
さらに、コンデンサ両端の電圧をecとすれば、q(t)=C・ec(t)であるから、下記式(4)が得られる。
ec(t)=E(1−exp(−t/τ)) …(4)
【0061】
上記式(4)において、RとCとの積RCが回路の時定数τである。したがって、マゼンタトナーの抵抗をRとし、マゼンタトナーの静電容量をCとするとき、その積RCがマゼンタトナーの時定数τと定義される。
【0062】
上記式(4)によれば、τが大きいほどec(t)がその最大値Eになるまでの時間が長くなる。時定数τはマゼンタトナーの抵抗値Rと静電容量(電荷量)Cとに比例するので、マゼンタトナーの抵抗またはマゼンタトナーの容量成分に誘起される電荷量が大きいほど、マゼンタトナーの放電に時間を要する。すなわち、マゼンタトナーの摩擦帯電の低下が遅くなる。
【0063】
マゼンタトナーの時定数τが1100m/sec以上1300m/sec以下であることによって、現像工程で帯電されたマゼンタトナーの帯電量が、転写工程が行われるまでに適度に低下し、高速機においても、マゼンタトナーと、中間転写ベルトおよび定着前の記録媒体との静電付着力が適切な範囲となるので、色ずれの発生および転写効率の低下を抑制でき、図1に示すような高品位の画像を形成することができる。図1は、本実施形態のマゼンタトナーを用いて形成された画像200を示す図である。また図2は、色ずれおよび転写不良が発生した状態の画像201を示す図である。図2において、参照符号aで囲まれた範囲が色ずれの発生箇所を示し、参照符号bで囲まれた範囲が転写不良の発生箇所を示す。図1および図2は、朱肉色で形成された画像200,201である。
【0064】
マゼンタトナーの時定数τが1100m/sec未満であると、現像工程でマゼンタトナーが充分に帯電されたとしても、転写工程を行うまでにマゼンタトナーの帯電量が低下しすぎるので、転写工程におけるマゼンタトナーの帯電量が不足し、図2に示すように、色ずれおよび転写効率の低下が発生する。マゼンタトナーの時定数τが1300m/secを超えると、現像工程から転写工程にかけてのマゼンタトナーの帯電量の低下が小さすぎるので、転写工程におけるマゼンタトナーの帯電量が大きくなりすぎ、図2に示すように、転写不良および転写効率の低下が発生する。
【0065】
マゼンタトナーの時定数τは、マゼンタトナーに含まれる各成分の種類、それらの含有量などを適宜選択することによって調整できる。トナーに含まれる各成分としては、たとえば、結着樹脂、マゼンタ着色剤、離型剤、帯電制御剤および有機無機添加剤などが挙げられる。
【0066】
マゼンタトナーは、波長440nmの光の透過率が30%以上45%以下であることが好ましい。マゼンタトナーにおける波長440nmの光の透過率が30%以上45%以下であることによって、明度L*の高い明るい朱色である朱肉の色を安定して充分に再現することができる。
【0067】
マゼンタトナーにおける波長440nmの光の透過率が45%よりも高くなると、画像処理にてイエロートナーの混合比を工夫しても、明度L*の高い明るい朱色である朱肉の色を充分に再現することができないおそれがある。
【0068】
前述のように、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とを、8:2〜5:5の重量比率とすることで、マゼンタトナーにおいて、波長440nmの光の透過率を30%以上45%以下とすることができる。
【0069】
マゼンタトナーの体積平均粒子径は、5.0μm以上7.0μm以下であることが好ましい。また、個数粒度分布における粒子径5.0μm以下のマゼンタトナー粒子の含有率が、全マゼンタトナー粒子の40個数%未満であることが好ましい。マゼンタトナーの粒径分布および個数分布がこの範囲を満足することによって、マゼンタトナーの飛散が抑えられ、高精細で高解像度の高画質画像を形成できる。マゼンタトナーの体積平均粒子径が5.0μm未満であると、流動性低下によるトナー飛散が発生するおそれがある。マゼンタトナーの体積平均粒子径が7.0μmを超えると、充分に高精細で高解像度化された画像が形成されない。個数粒度分布における粒子径5.0μm以下のマゼンタトナー粒子の含有率が、全マゼンタトナー粒子の40個数%以上であると、流動性低下によるトナー飛散および転写効率の悪化によるかぶりが生じるおそれがある。
【0070】
上記したマゼンタトナーの体積平均粒子径(D50V)および個数粒度分布における粒子径5.0μm以下のマゼンタトナー粒子の含有率(個数%)は、ベックマン・コールター株式会社製粒度分布測定装置「Multisizer3」によって測定される。測定条件を以下に示す。
アパーチャ径:100μm
測定粒子数:50000カウント
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン1.19(ベックマン・コールター株式会社製)
電解液:ISOTON−II(ベックマン・コールター株式会社製)
分散剤:アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム
【0071】
測定手順は、ビーカーに電解液50ml、試料であるトナー20mgおよび分散剤1mlを加え、超音波分散器にて3分間分散処理して測定用試料を調製し、測定装置「Multisizer3」により粒径の測定を行う。得られた測定結果から試料粒子の体積粒度分布および個数粒度分布を求め、体積粒度分布からマゼンタトナーの体積平均粒子径(D50V)を求める。また個数粒度分布から、粒子径5.0μm以下のマゼンタトナー粒子の含有率(個数%)を求める。
【0072】
<外添剤>
マゼンタトナー粒子は、そのままマゼンタトナーとして用いることもできるが、たとえば、マゼンタトナー粒子と、外添剤とを混合して、マゼンタトナー粒子に外添剤を外添させたものをマゼンタトナーとして用いてもよい。外添剤を外添させることによって、粉体流動性および摩擦帯電性を向上させ、耐熱性を持たせ、長期保存性およびクリーニング特性を改善し、感光体表面の磨耗を制御することなどができる。
【0073】
外添剤としては、たとえば、シリカ微粉末、酸化チタン微粉末およびアルミナ微粉末などが挙げられる。外添剤は、1種を単独で使用することができ、あるいは、2種以上を併用することができる。
【0074】
外添剤の含有量は、マゼンタトナーに必要な帯電量、外添剤を添加することによる感光体の摩耗に対する影響、マゼンタトナーの環境特性などを考慮して、マゼンタトナー粒子100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下が好ましく、2.0重量部以上4.0重量部未満がより好ましい。外添剤を2.0重量部以上4.0重量部未満含むことにより、流動性が良好で個々のマゼンタトナー粒子の帯電を適正に制御することができるので、定着性を損なうことなく、かぶりが発生しない、高画質な画像を形成することができる。
【0075】
外添剤の含有量が2.0重量部未満であると、マゼンタトナー(特に小粒径のマゼンタトナー粒子)に充分な流動性を付与することができないので、個々のマゼンタトナー粒子が充分に帯電されず非画像部でのかぶりが発生しやすくなる。外添剤の含有量が4.0重量部以上であると、外添剤同士が凝集しやすくなり、マゼンタトナー表面を効率よく覆うことができず流動性を向上させることができないので、個々のマゼンタトナー粒子が充分に帯電されず非画像部でのかぶりが発生しやすい。
【0076】
<マゼンタトナーの製造方法>
本実施形態のマゼンタトナーを構成するマゼンタトナー粒子は、粉砕法、懸濁重合法、乳化重合法、溶解懸濁法およびエステル伸張重合法などで作製される。
【0077】
以下に、マゼンタトナー粒子を、粉砕法にて製造するマゼンタトナーの製造方法の一例を記載する。
【0078】
少なくとも、結着樹脂、マゼンタ着色剤および離型剤を含む樹脂組成物を混合機で乾式混合(前混合)し、混練機で溶融混練する。その後、溶融混練物を、粉砕機および分級機を用いて、粉砕および分級し、マゼンタトナー粒子を作製する。次いで、マゼンタトナー粒子と外添剤とを乾式混合して所望のマゼンタトナーを得る。
【0079】
乾式混合に用いられる混合機としては、公知のものを使用でき、たとえば、ヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)、スーパーミキサ(商品名、株式会社カワタ製)およびメカノミル(商品名、岡田精工株式会社製)などのヘンシェルタイプの混合装置、オングミル(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)、ハイブリダイゼーションシステム(商品名、株式会社奈良機械製作所製)、ならびにコスモシステム(商品名、川崎重工業株式会社製)などが挙げられる。
【0080】
混練機としては、公知のものを使用でき、たとえば、二軸押出し機、三本ロールおよびラボブラストミルなどの一般的な混練機が使用され、より具体的には、TEM−100B(商品名、東芝機械株式会社製)、PCM−65/87、PCM−30(以上いずれも商品名、株式会社池貝製)などの1軸または2軸のエクストルーダ、ニーデックス(商品名、三井鉱山株式会社製)などのオープンロール方式の混練機が挙げられる。これらの中でも、オープンロール方式の混練機が好ましい。トナー原料混合物は、複数の混練機を用いて溶融混練されてもよい。
【0081】
溶融混練物の粉砕には、たとえば、超音速ジェット気流を利用して粉砕するジェット式粉砕機、高速で回転する回転子であるロータと固定子であるライナとの間に形成される空間に、粗粉砕物を導入して粉砕する衝撃式粉砕機などが用いられる。
【0082】
分級には、遠心力による分級または風力による分級によって過粉砕トナー粒子および粗大トナー粒子を除去することができる公知の分級機が使用される。たとえば、旋回式風力分級機(ロータリー式風力分級機)などが使用される。
【0083】
マゼンタトナー粒子には、球形化処理が施されても良い。機械的衝撃力による球形化処理に用いられる衝撃式球形化装置としては、市販されているものを使用することができ、たとえば、ファカルティ(商品名、ホソカワミクロン株式会社製)などが用いられる。熱風による球形化処理に用いられる熱風式球形化装置としては、市販されているものを使用することができる。たとえば、表面改質機メテオレインボー(商品名、日本ニューマチック工業株式会社製)などが用いられる。
【0084】
球形化処理は、マゼンタトナーの円形度が、0.950以上0.960以下となるように行われることが好ましい。
【0085】
マゼンタトナーは、前述のようにして得られたマゼンタトナー粒子をコア粒子とし、そのコア粒子の外周面を、マゼンタ着色剤を含まないシェル層で被覆するコア−シェル構造としてもよい。
【0086】
<現像剤>
上述のようにして製造された本実施形態のマゼンタトナーは、そのまま1成分現像剤として使用することができ、またキャリアと混合して2成分現像剤として使用することができる。本実施形態のマゼンタトナーを含むことで、明度の高い明るい朱色である朱肉の色を再現でき、耐光性にも優れた現像剤とすることができる。
【0087】
また、本実施形態のマゼンタトナーは、良好な定着性と良好な帯電安定性とを有し、長期間の使用にわたり特性の安定した現像剤とすることができるので、良好な現像性を維持することのできる現像剤とすることができる。
【0088】
現像剤は、本発明のマゼンタトナーとキャリアとからなる2成分現像剤であることが好ましい。本発明のマゼンタトナーは、保存安定性に優れるので、現像剤の流動性低下を抑え、帯電安定性および現像性の良好な2成分現像剤が得られる。このような2成分現像剤を用いることによって、トナー飛散がなく、長期間にわたって高精細で高解像度の高画質画像を安定して形成することができる。
【0089】
キャリアとしては、磁性を有する粒子が使用される。磁性を有する粒子としては、たとえば、鉄、フェライトおよびマグネタイトなどの金属、これらの金属とアルミニウムまたは鉛などの金属との合金などが挙げられる。これらの中でも、フェライトが好ましい。
【0090】
キャリアとしては、磁性を有する粒子に樹脂を被覆した樹脂被覆キャリア、または樹脂に磁性を有する粒子を分散させた樹脂分散型キャリアなどを用いてもよい。樹脂被覆キャリアに用いられる樹脂としては特に制限はないけれども、たとえば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレンアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、エステル系樹脂およびフッ素含有重合体系樹脂などが挙げられる。また樹脂分散型キャリアに用いられる樹脂としても特に制限されないけれども、たとえば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂およびフェノール樹脂などが挙げられる。
【0091】
キャリアの形状は、球形または扁平形状が好ましい。キャリアの体積平均粒子径は特に制限されないけれども、高画質化を考慮すると、10μm以上100μm以下が好ましく、30μm以上50μm以下がより好ましい。キャリアの体積平均粒子径が10μm未満であると、キャリアの体積平均粒子径が10μm以上である場合と比較して、キャリアと現像ローラとの間の磁力が弱くなるので、現像工程において、キャリアがトナーと一緒に現像されやすくなる。キャリアの体積平均粒子径が100μmを超えると、個々のマゼンタトナー粒子を充分に帯電させることができないおそれがある。
【0092】
キャリアの体積平均粒子径が10μm以上100μm以下であることによって、マゼンタトナーとキャリアとの接触機会を増やすことができるので、個々のマゼンタトナー粒子の帯電を制御し、充分なトナー帯電性を付与することができる。
【0093】
キャリアの体積平均粒子径は、レーザ回折、散乱式粒度分布測定装置マイクロトラック(商品名:マイクロトラックMT3000、日機装株式会社製)を用いて測定することができる。
【0094】
<画像形成装置>
図3は、本発明の実施の一形態である画像形成装置100の構成を模式的に示す概略図である。画像形成装置100は、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能を併せ持つ複合機であり、伝達される画像情報に応じて、記録媒体にフルカラーまたはモノクロの画像を形成する。すなわち、画像形成装置100においては、コピアモード(複写モード)、プリンタモードおよびFAXモードという3種の印刷モードを有しており、図示しない操作部からの操作入力、パーソナルコンピュータ、携帯端末装置、情報記録記憶媒体またはメモリ装置を用いた外部機器からの印刷ジョブの受信などに応じて、図示しない制御部によって、印刷モードが選択される。
【0095】
画像形成装置100は、像担持体である感光体ドラム11と、画像形成部2と、転写手段3と、定着手段4と、記録媒体供給手段5と、排出手段6とを含む。画像形成部2を構成する各部材および転写手段3に含まれる一部の部材は、カラー画像情報に含まれるブラック(b)、シアン(c)、マゼンタ(m)およびイエロー(y)の各色の画像情報に対応するために、それぞれ4つずつ設けられる。ここでは、各色に応じて4つずつ設けられる各部材は、各色を表すアルファベットを参照符号の末尾に付して区別し、総称する場合は参照符号のみで表す。
【0096】
画像形成部2は、帯電手段12と、露光ユニット13と、現像装置14と、クリーニングユニット15とを含む。帯電手段12および露光ユニット13は、潜像形成手段として機能する。帯電手段12、現像装置14およびクリーニングユニット15は、感光体ドラム11まわりに、この順序で配置される。帯電手段12は、現像装置14およびクリーニングユニット15よりも鉛直方向下方に配置される。
【0097】
感光体ドラム11は、図示しない回転駆動手段によって、軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その表面部に静電潜像が形成されるローラ状部材である。感光体ドラム11の回転駆動手段は、中央処理装置(Central Processing Unit;CPU)によって実現される制御手段で制御される。感光体ドラム11は、図示しない導電性基体と、導電性基体の表面に形成される図示しない感光層とを含んで構成される。
【0098】
帯電手段12は、感光体ドラム11を臨み、感光体ドラム11の長手方向に沿って感光体ドラム11表面から間隙を有して離隔するように配置され、感光体ドラム11表面を所定の極性および電位に帯電させる。帯電手段12には、帯電ブラシ型帯電器、チャージャ型帯電器、鋸歯型帯電器またはイオン発生装置などを使用できる。本実施の形態では、帯電手段12は感光体ドラム11表面から離隔するように設けられるけれども、それに限定されない。たとえば、帯電手段12として帯電ローラを用い、帯電ローラと感光体ドラムとが圧接するように帯電ローラを配置してもよく、帯電ブラシ、磁気ブラシなどの接触帯電方式の帯電器を用いてもよい。
【0099】
露光ユニット13は、露光ユニット13から出射される各色情報の光が、帯電手段12と現像装置14との間を通過して感光体ドラム11の表面に照射されるように配置される。露光ユニット13は、画像情報を該ユニット内でブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各色情報の光に分岐し、帯電手段12によって一様な電位に帯電された感光体ドラム11表面を各色情報の光で露光し、その表面に静電潜像を形成する。露光ユニット13には、たとえば、レーザ照射部および複数の反射ミラーを備えるレーザスキャニングユニットを使用できる。他にもLEDアレイ、または液晶シャッタと光源とを適宜組み合わせたユニットを用いてもよい。
【0100】
クリーニングユニット15は、現像装置14によって、感光体ドラム11表面に形成させたトナー像を記録媒体に転写した後に、感光体ドラム11の表面に残留するトナーを除去し、感光体ドラム11の表面を清浄化する。クリーニングユニット15には、たとえば、クリーニングブレードなどの板状部材が用いられる。本実施形態の画像形成装置においては、感光体ドラム11として、有機感光体ドラムが用いられ、有機感光体ドラムの表面は樹脂成分を主体とするものであるので、帯電装置によるコロナ放電によって発生するオゾンの化学的作用で有機感光体ドラムの表面の劣化が進行しやすい。ところが、劣化した表面部分はクリーニングユニット15よる擦過作用を受けて摩耗し、徐々にではあるが劣化した表面部分が確実に除去される。したがって、オゾンなどによる表面の劣化の問題が実際上解消され、長期間にわたって、帯電動作による帯電電位を安定に維持することができる。本実施の形態ではクリーニングユニット15を設けるけれども、それに限定されず、クリーニングユニット15を設けなくてもよい。
【0101】
画像形成部2によれば、帯電手段12によって均一な帯電状態にある感光体ドラム11の表面に、露光ユニット13から画像情報に応じた信号光を照射して静電潜像を形成し、これに現像装置14からトナーを供給してトナー像を形成し、このトナー像を中間転写ベルト25に転写した後に、感光体ドラム11表面に残留するトナーをクリーニングユニット15で除去する。この一連のトナー像形成動作が画像を形成するために繰り返し実行される。
【0102】
転写手段3は、感光体ドラム11の上方に配置され、中間転写ベルト25と、駆動ローラ26と、従動ローラ27と、ブラック、シアン、マゼンタおよびイエローの各色の画像情報にそれぞれ対応する4つの中間転写ローラ28と、転写ベルトクリーニングユニット29、転写ローラ30とを含む。中間転写ベルト25は、駆動ローラ26と従動ローラ27とに張架され、ループ状の移動経路を形成する無端ベルト状部材であり、矢符Bの方向に回転駆動する。駆動ローラ26は図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられ、その回転駆動によって、中間転写ベルト25を矢符B方向へ回転駆動させる。従動ローラ27は駆動ローラ26の回転駆動に従動回転可能に設けられ、中間転写ベルト25が弛まないように一定の張力を中間転写ベルト25に付与する。中間転写ローラ28は、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に圧接し、かつ図示しない駆動手段によってその軸線回りに回転駆動可能に設けられる。中間転写ローラ28は、前述のように転写バイアスを印加する図示しない電源が接続され、感光体ドラム11表面のトナー像を中間転写ベルト25に転写する機能を有する。
【0103】
中間転写ベルト25が、感光体ドラム11に接しながら感光体ドラム11を通過する際、中間転写ベルト25を介して感光体ドラム11に対向配置する中間転写ローラ28から、感光体ドラム11表面のトナーの帯電極性とは逆極性の転写バイアスが印加され、感光体ドラム11の表面に形成されたトナー像が中間転写ベルト25へ転写される。フルカラー画像の場合、各感光体ドラム11で形成される各色のトナー画像が、中間転写ベルト25に順次重ねて転写されることによって、フルカラートナー像が形成される。
【0104】
転写ベルトクリーニングユニット29は、中間転写ベルト25を介して従動ローラ27に対向し、中間転写ベルト25の外周面に接触するように設けられる。感光体ドラム11との接触によって中間転写ベルト25に付着するトナーは、記録媒体を汚染する原因となるので、転写ベルトクリーニングユニット29が中間転写ベルト25表面のトナーを除去し回収する。
【0105】
転写ローラ30は、中間転写ベルト25を介して駆動ローラ26に圧接し、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に設けられる。転写ローラ30と駆動ローラ26との圧接部、すなわち転写ニップ部において、中間転写ベルト25に担持され、搬送されるトナー像が、後述する記録媒体供給手段5から送給される記録媒体に転写される。トナー像を担持する記録媒体は、定着手段4に送給される。
【0106】
転写手段3によれば、感光体ドラム11と中間転写ローラ28との圧接部において感光体ドラム11から中間転写ベルト25に転写されるトナー像が、中間転写ベルト25の矢符B方向への回転駆動によって転写ニップ部に搬送され、そこで記録媒体に転写される。
【0107】
定着手段4は、転写手段3よりも記録媒体の搬送方向下流側に設けられ、定着ローラ31と加圧ローラ32とを含む。定着ローラ31は図示しない駆動手段によって回転駆動可能に設けられ、記録媒体に担持される未定着トナー像を、構成するトナーを加熱して溶融させることによって記録媒体に定着させる。定着ローラ31の内部には図示しない加熱手段が設けられる。加熱手段は、定着ローラ31表面が所定の温度(以後「加熱温度」ともいう)になるように定着ローラ31を加熱する。加熱手段には、たとえば、ヒータ、ハロゲンランプなどを使用できる。加熱手段は、後記する定着条件制御手段によって制御される。定着条件制御手段による加熱温度の制御については、後に詳述する。
【0108】
定着ローラ31表面近傍には図示しない温度検知センサが設けられ、温度検知センサは定着ローラ31の表面温度を検知する。温度検知センサによる検知結果は、後記する制御手段の記憶部に書き込まれる。加圧ローラ32は定着ローラ31に圧接するように設けられ、加圧ローラ32の回転駆動に従動回転可能に支持される。定着ローラ31からの熱によってトナーが溶融し、トナー像が記録媒体に定着する際に加圧ローラ32はトナーと記録媒体とを押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を補助する。定着ローラ31と加圧ローラ32との圧接部が定着ニップ部である。
【0109】
定着手段4によれば、転写手段3においてトナー像が転写された記録媒体が、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって挟持され、定着ニップ部を通過する際に、トナー像が加熱下に記録媒体に押圧されることによって、トナー像が記録媒体に定着され、画像が形成される。
【0110】
記録媒体供給手段5は、自動給紙トレイ35と、ピックアップローラ36と、搬送ローラ37と、レジストローラ38、手差給紙トレイ39を含む。自動給紙トレイ35は画像形成装置100の鉛直方向下部に設けられ、記録媒体を貯留する容器状部材である。記録媒体には、たとえば普通紙、カラーコピー用紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シート、葉書などがある。ピックアップローラ36は、自動給紙トレイ35に貯留される記録媒体を1枚ずつ取り出し、用紙搬送路S1に送給する。搬送ローラ37は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、記録媒体をレジストローラ38に向けて搬送する。レジストローラ38は互いに圧接するように設けられる一対のローラ部材であり、搬送ローラ37から送給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。手差給紙トレイ39は、手動動作によって記録媒体を画像形成装置100内に取り込む装置であり、手差給紙トレイ39から取り込まれる記録媒体は、搬送ローラ37によって用紙搬送路S2内を通過し、レジストローラ38に送給される。記録媒体供給手段5によれば、自動給紙トレイ35または手差給紙トレイ39から1枚ずつ供給される記録媒体を、中間転写ベルト25に担持されるトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、転写ニップ部に送給する。
【0111】
排出手段6は、搬送ローラ37と、排出ローラ40と、排出トレイ41とを含む。搬送ローラ37は、用紙搬送方向において定着ニップ部よりも下流側に設けられ、定着手段4によって画像が定着された記録媒体を排出ローラ40に向けて搬送する。排出ローラ40は、画像が定着された記録媒体を、画像形成装置100の鉛直方向上面に設けられる排出トレイ41に排出する。排出トレイ41は、画像が定着された記録媒体を貯留する。
【0112】
画像形成装置100は、図示しない制御手段を含む。制御手段は、たとえば、画像形成装置100の内部空間における上部に設けられ、記憶部と演算部と制御部とを含む。制御手段の記憶部には、画像形成装置100の上面に配置される図示しない操作パネルを介する各種設定値、画像形成装置100内部の各所に配置される図示しないセンサなどからの検知結果、および外部機器からの画像情報などが入力される。また、各種手段を実行するプログラムが書き込まれる。各種手段とは、たとえば、記録媒体判定手段、付着量制御手段、定着条件制御手段などである。記憶部には、この分野で常用されるものを使用でき、たとえば、リードオンリィメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)およびハードディスクドライブ(HDD)などが挙げられる。外部機器には、画像情報の形成または取得が可能であり、かつ画像形成装置100に電気的に接続可能な電気・電子機器を使用でき、たとえば、コンピュータ、デジタルカメラ、テレビ、ビデオレコーダ、DVDレコーダ、HD DVD、ブルーレイディスクレコーダ、ファクシミリ装置、携帯端末装置などが挙げられる。演算部は、記憶部に書き込まれる各種データ(画像形成命令、検知結果、画像情報など)および各種手段のプログラムを取り出し、各種判定を行う。制御部は、演算部の判定結果に応じて該当装置に制御信号を送付し、動作制御を行う。制御部および演算部は中央処理装置(CPU、Central Processing Unit)を備えるマイクロコン
ピュータ、マイクロプロセッサなどによって実現される処理回路を含む。制御手段は、前述の処理回路とともに主電源を含み、電源は制御手段だけでなく、画像形成装置100内部における各装置にも電力を供給する。
【0113】
図4は、図3に示す画像形成装置100に備わる現像装置14を模式的に示す概略図である。現像装置14は、現像槽20とトナーホッパ21とを含む。現像槽20は感光体ドラム11表面を臨むように配置され、感光体ドラム11の表面に形成される静電潜像にトナーを供給して現像し、可視像であるトナー像を形成する容器状部材である。現像槽20は、その内部空間にトナーを収容しかつ現像ローラ50、供給ローラ51、撹拌ローラ52などのローラ部材を収容して回転自在に支持する。また、ローラ状部材の代わりにスクリュー部材を収容してもよい。本実施形態の現像装置14は、トナーとして、前述の本発明の実施の一形態であるマゼンタトナーを現像槽20に収容する。
【0114】
現像槽20の感光体ドラム11を臨む側面には開口部53が形成され、この開口部53を介して感光体ドラム11に対向する位置に現像ローラ50が回転駆動可能に設けられる。現像ローラ50は、感光体ドラム11との圧接部または最近接部において感光体ドラム11表面の静電潜像にトナーを供給するローラ状部材である。トナーの供給に際しては、現像ローラ50表面にトナーの帯電電位とは逆極性の電位が現像バイアス電圧(以下、単に「現像バイアス」とする)として印加される。これによって、現像ローラ50表面のトナーが静電潜像に円滑に供給される。さらに、現像バイアス値を変更することによって、静電潜像に供給されるトナー量、すなわち静電潜像のトナー付着量を制御できる。
【0115】
供給ローラ51は現像ローラ50を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、現像ローラ50周辺にトナーを供給する。
【0116】
撹拌ローラ52は供給ローラ51を臨んで回転駆動可能に設けられるローラ状部材であり、トナーホッパ21から現像槽20内に新たに供給されるトナーを供給ローラ51周辺に送給する。トナーホッパ21は、その鉛直方向下部に設けられるトナー補給口54と、現像槽20の鉛直方向上部に設けられるトナー受入口55とが連通するように設けられ、現像槽20のトナー消費状況に応じてトナーを補給する。またトナーホッパ21を用いず、各色トナーカートリッジから直接トナーを補給するよう構成してもよい。
【0117】
以上のような画像形成装置100において、本発明の現像剤を用いて画像を形成することによって、画像形成装置100が高速機であっても、色再現性および耐光性が良好で、色ずれおよび転写効率の低下がない高品位の画像を安定して形成することができる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0119】
〔結着樹脂の分子量〕
結着樹脂の分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィ)測定によって求めた。
【0120】
〔結着樹脂のガラス転移点〕
結着樹脂のガラス転移点は、DSC(示差走査熱量計)測定によって求めた。
スルホン酸ナトリウム基当量は硫黄の定量によって求めた。
【0121】
〔結着樹脂の酸価〕
結着樹脂の酸価は、酸塩基滴定によって求めた。
【0122】
〔結着樹脂の還元粘度〕
結着樹脂の還元粘度は、結着樹脂0.01gをフェノール/テトラクロロエタン(重量比6:4)の混合溶媒250ccに溶解させ、オストワルト粘度計を用いて測定温度30℃で測定することによって求めた。
【0123】
〔マゼンタトナーの時定数τ(m/sec)〕
マゼンタトナーの時定数τは、マゼンタトナーの抵抗をRとし、マゼンタトナーの静電容量をCとするとき、その積RCとして定義される。マゼンタトナーの抵抗(R)およびマゼンタトナーの静電容量(C)は、誘電体損測定装置(商品名:TRS−10T型、安藤電機株式会社製)を用いて測定した。
【0124】
(実施例1)
まず、以下のようにしてポリエステル樹脂A(結着樹脂)を作製した。
【0125】
温度計および撹拌機を備えたオートクレーブに、ジメチルテレフタレート113重量部、ジメチルイソフタレート75重量部、エチレングリコール97重量部、プロピレングリコール50重量部および触媒としてテトラブトキシチタネート0.1重量部を加え、150℃以上230℃以下に加熱した状態で120分間撹拌させて反応させた。その後、250℃まで加熱し、反応系の圧力を1mmHg以上10mmHg以下まで減圧して、約1時間撹拌させてさらに反応させることによって、ポリエステル樹脂Aを得た。
【0126】
得られたポリエステル樹脂Aは、数平均分子量:3200、体積平均分子量:6200、ガラス転移点:63℃、酸価:2.2mgKOH/g、還元粘度:0.335であった。
【0127】
上記のように作製したポリエステル樹脂A 100重量部、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とを7:3の割合で6.8重量部、パラフィンワックス(離型剤、商品名:HNP10PD、日本精鑞株式会社製、酸価0mgKOH/g、融点75℃)5重量部、アルキルサリチル酸金属塩(帯電制御剤、商品名:BONTRON E−84、オリエント化学株式会社製)1重量部を、ヘンシェルミキサで10分間混合することによって、混合物を作製した。得られた混合物を、オープンロール型連続混練機(商品名:MOS320−1800、三井鉱山株式会社製)で溶融混練し、溶融混練物を作製した。
【0128】
溶融混練物をカッティングミル(商品名:VM−16、菱興産業株式会社製)で粗粉砕して粗粉砕物を作製した後、粗粉砕物をカウンタジェットミルで微粉砕した。微粉砕後、ロータリー式分級機で過粉砕トナーを分級除去することによって、体積平均粒子径が約6.7μmであるマゼンタトナー粒子を作製した。
【0129】
衝撃式球形化装置(商品名:ファカルティF−600型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いてマゼンタトナー粒子の球形化処理を行った。球形化したマゼンタトナー粒子100重量部、および外添剤として疎水性シリカ(商品名:R−974、日本アエロジル株式会社製)2.2重量部と疎水性チタン(商品名:T−805、日本アエロジル株式会社製)1.6重量部との合計3.8重量部をヘンシェルミキサ(商品名:FMミキサ、三井鉱山株式会社製)で混合することによってマゼンタトナー粒子に外添剤を外添し、実施例1のマゼンタトナーを作製した。マゼンタトナー粒子におけるマゼンタ着色剤の含有量は、6.0重量%であり、パラフィンワックスの含有量は、マゼンタトナー全重量に対して4.2重量%である。
【0130】
ここで、実施例1のマゼンタトナーにおいて、パラフィンワックスの含有量を1.70重量部(マゼンタトナー全重量に対する含有量は、1.49重量%)、2重量部(マゼンタトナー全重量に対する含有量は、1.75重量%)、3.5重量部(マゼンタトナー全重量に対する含有量は、3.03重量%)にそれぞれ変更した場合、いずれも良好な定着性が得られ、現像装置内でのマゼンタトナーの凝集も見られず、良好な画像が得られた。
【0131】
しかし、パラフィンワックスの含有量を1重量部(マゼンタトナー全重量に対する含有量は、0.89重量%)に変更すると、定着オフセットが発生し、パラフィンワックスの含有量を5.5重量部(マゼンタトナー全重量に対する含有量は、4.67重量%)に変更すると、定着性は良好であるが、現像装置内でマゼンタトナーの凝集が発生し、画像にトナー凝集物が認められる。これらのことから、離型剤の含有量は、マゼンタトナー全量に対して1.5重量%以上4.8重量%以下であれば良好であると言える。
【0132】
(実施例2)
マゼンタ着色剤の含有量を4.4重量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例2のマゼンタトナーを得た。マゼンタトナー粒子におけるマゼンタ着色剤の含有量は、4重量%である。
【0133】
なお、具体的には記載しないが、マゼンタ着色剤の含有量をさらに振って実験を繰り返した結果、結着樹脂に対するマゼンタ着色剤の添加量に再現性が左右されることはないことがわかった。
【0134】
(実施例3)
C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1との重量比率を、8:2に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例3のマゼンタトナーを得た。
【0135】
(実施例4)
C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1との重量比率を、5:5に変更したこと以外は実施例1と同様にして実施例4のマゼンタトナーを得た。
【0136】
(比較例1)
C.I.ピグメントレッド48−3の含有量を6.8重量部に変更し、C.I.ピグメントレッド48−1を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして比較例1のマゼンタトナーを得た。
【0137】
(比較例2)
C.I.ピグメントレッド48−3およびC.I.ピグメントレッド48−1の代わりに、C.I.ピグメントレッド57−1を7.3重量部添加したこと以外は実施例1と同様にして比較例2のマゼンタトナーを得た。
【0138】
(比較例3)
C.I.ピグメントレッド57−1の含有量を5.4重量に変更したこと以外は比較例2と同様にして比較例3のマゼンタトナーを得た。
【0139】
実施例および比較例のマゼンタトナーと、体積平均粒子径が45μmであるフェライトコアキャリアとをそれぞれ用いて、キャリアに対するマゼンタトナーの被覆率が60%となるようにV型混合器混合機(商品名:V−5、株会社特寿工作所製)で20分間混合した。これによって、実施例および比較例のマゼンタトナーをそれぞれ含む2成分現像剤を作製した。
【0140】
(評価)
実施例および比較例のマゼンタトナーを含む2成分現像剤を用いて以下の評価を行った。
【0141】
〔朱色の再現性〕
実施例および比較例のマゼンタトナーとイエロートナーとをそれぞれ組み合わせた場合に得られる色域を求め、色域に朱肉の朱色を含むかどうか以下のようにして判定した。なお、イエロートナーとしては、着色剤としてC.I.ピグメントイエロー74を使用したイエロートナーと、着色剤としてC.I.ピグメントイエロー185を使用したイエロートナーとを用いた。どちらのイエロートナーを用いても、同じ結果となった。
【0142】
朱色は、イエローとマゼンタとの掛け合わせにより得られる色なので、上記2色の掛け合わせのカラーパッチを出力した。主走査方向にマゼンタ、副走査方向にイエローの画像濃度を変化させたものを掛け合わせた。出力したプリントサンプルを、反射分光濃度計(X−Rite 939:エックスライト株式会社製)により測色(L* ,a* ,b*)した。パッチの各行、各列においてL* の変化に着目すれば連続的にL*が変化しているので一定の L*値ごとにデータを抽出した。目標のL*値がない場合は、最寄の2データにより補間演算して求めた。上記で求めた各データに対してC* 、Habを算出した。C* はa* ,b* 平面上での原点からの距離である(彩度として代用する)。Hab はa* ,b* 平面上でのa* , 軸(+)方向からの角度θ°である(色相として代用する)。このようにして、作成したマゼンタトナーとイエロートナーとの混色で得られる色域を求めた。
【0143】
また、再現したい朱肉のL* * *を、反射分光濃度計(X−Rite 939:エックスライト株式会社製)を使用して測定し、求めた色域内にこれを含むか否かで、朱色の再現性を評価した。朱肉の朱色のL* * * は(55,62,33)であり、実施例および比較例のマゼンタトナーをイエロートナーとそれぞれ組み合わせて得られる色域に、朱肉の朱色のL* * * (55,62,33)が含まれているかどうか確認した。色域に、朱肉の朱色のL* * * (55,62,33)を含んでいれば「○」とし、含んでいなければ「×」とした。
【0144】
〔転写不良、転写効率、色ずれ〕
実施例および比較例のマゼンタトナー70gと、磁性キャリア(体積平均粒子径50μm、シリコーン樹脂被覆キャリア、パウダーテック株式会社製)930gとをそれぞれV型混合機にて30分間撹拌混合し、1000gの2成分現像剤を調製した。この2成分現像剤を、市販のデジタルカラー複写機(商品名:MX−4500、シャープ株式会社製)の現像槽に充填し、レターサイズのテスト用文字面積率5%原稿の3万枚(ネコサレター紙)実写試験を行った。なお、実写試験中の感光体ドラムへのマゼンタトナー付着量を0.3〜0.4mg/cmに設定した。3000枚の実写毎に、実写された原稿を用いて転写不良、転写効率および色ずれを評価した。
【0145】
(転写不良)
3万枚の実写を通して転写不良が認められなければ「○」とし、3万枚の実写の途中で、転写不良が認められれば「×」とした。転写不良の一例は、図2に示されている。なお、転写不良の発生の有無は目視で判断した。
【0146】
(転写効率)
3万枚の実写を通して転写効率95%以上を維持できれば「○」とし、転写効率が一度でも95%未満であれば「×」とした。
転写効率は次のようにして求めた。べた画像転写後の感光体ドラム上の転写残トナーをマイラーテープによりテーピングしてはぎ取り、このマイラーテープを未使用の白色紙上に貼着してマクベス濃度値を測定し、測定値「C」とした。べた画像が転写され、未定着状態のトナー像が担持された白色紙上にマイラーテープを貼着してマクベス濃度値を測定し、測定値「E」とした。また、未使用の白色紙上にマイラーテープを貼着してマクベス濃度値を測定し、測定値「D」とした。下記式(5)を用いて転写効率を求めた。
転写効率(%)={(E−C)/(E−D)}×100…(5)
【0147】
(色ずれ)
3万枚の実写を通して色ずれが認められなければ「○」とし、3万枚の実写の途中で色ずれが認められれば「×」とした。色ずれの一例は、図2に示されている。なお、色ずれの発生の有無は目視で判断した。
【0148】
〔総合評価〕
上記評価結果を用いて総合評価を行った。
上記評価結果が全て「○」であれば総合評価結果を「○」とし、評価結果が1つでも「×」であれば総合評価結果を「×」とした。
【0149】
実施例および比較例のマゼンタトナーの作製で用いられたマゼンタ着色剤の種類、重量比率および含有量、マゼンタトナーの時定数、ならびに上記評価の評価結果および総合評価結果を表1に示す。なお、「C.I.ピグメントレッド」は「P.R.」と記載する。
【0150】
【表1】

【0151】
表1から明らかなように、C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とが、8:2〜5:5の重量比率で含まれる実施例1〜4は、充分な朱色の再現性を得ることができた。また、実施例1〜4のように、マゼンタトナーの時定数τが1,100(m/sec)以上1,300(m/sec)以下の範囲であれば、色ズレの発生および転写効率の低下のない高品位の朱肉画像が得られた。
【0152】
マゼンタトナーの時定数τが1,100(m/sec)未満である比較例1,2は、色ずれが発生し、転写効率が低下した。マゼンタトナーの時定数τが1,300(m/sec)を超える比較例3は、転写不良および転写効率の低下が発生した。比較例3おける、転写不良および転写効率の低下の発生は、中間転写ベルトに対するマゼンタトナーの静電付着力が大きくなり過ぎたためと考えられる。
【符号の説明】
【0153】
2 画像形成部
3 転写手段
4 定着手段
5 記録媒体供給手段
6 排出手段
11 感光体ドラム
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と、
C.I.ピグメントレッド48−3とC.I.ピグメントレッド48−1とを8:2〜5:5の重量比率で含有する着色剤とを含み、
時定数が1100m/sec以上1300m/sec以下であることを特徴とする静電荷像現像用マゼンタトナー。
【請求項2】
波長440nmの光の透過率が30%以上45%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用マゼンタトナー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の静電荷像現像用マゼンタトナーとキャリアとを含む現像剤。
【請求項4】
帯電させた像担持体表面を露光して、像担持体表面に静電荷像を形成し、請求項3に記載の現像剤を用いて、像担持体表面に形成された静電荷像を現像してトナー像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【請求項5】
像担持体と、
前記像担持体を帯電させる帯電手段と、
帯電手段によって帯電された像担持体を露光して、像担持体表面に静電荷像を形成する露光手段と、
前記静電荷像の形成された像担持体に、請求項3に記載の現像剤中の静電荷像現像用マゼンタトナーを供給して前記静電荷像を現像する現像手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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