説明

静音性を有する射出成形機

【課題】プーリとタイミングベルトの接触部から発生する騒音を低減し、静音性に優れた射出成形機を提供すること。
【解決手段】駆動力の伝達部にプーリとタイミングベルトを使用し、駆動源たるモータ3をモータブラケット6に固定し、駆動プーリをモータシャフトに固定し、該駆動プーリの端部もしくは該モータシャフトの端部をベアリングで回転自在に支持し、該ベアリングの外輪をベアリングホルダ8bで支持した駆動装置1において、前記モータブラケット6と前記ベアリングホルダ8bの間に前記駆動プーリの周囲を覆うように壁状部材を設けた、あるいは、前記モータブラケット6に前記駆動プーリの周囲を覆うようにベアリングホルダ8bを設けたことを特徴とする射出成形機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関し、特に、プーリとタイミングベルトの接触部から発生する騒音を低減し、静音性に優れた射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
<射出成形機の駆動装置について>
射出成形機の駆動装置について図1,図2を用いて説明する。射出成形機は複数の駆動装置を備えている。図1,図2は複数の駆動装置のうちの1つの駆動装置であり、保持プレート2に取り付けられた図示しないトグルヘッドを駆動する駆動装置1を図示している。駆動源であるモータ3の駆動力は、駆動プーリ12、従動プーリ4やタイミングベルト5などを介してボールねじなどの機構部へ伝達される。モータ3はモータブラケット6に固定されている。
モータシャフト14(図2参照)の端部には、プーリナット9によって駆動プーリ12が固定されている。駆動プーリ12の両側部にはタイミングベルト5がはずれないようにプーリフランジ15が設けられている。タイミングベルト5に対してモータ3と反対側に位置する駆動プーリの端部11にはベアリング(軸受け)10の内輪が固定され、ベアリングホルダ8aにはベアリング10の外輪が固定され、駆動プーリ12はベアリング10によりベアリングホルダ8aに対して回転自在に支持されている。ベアリングホルダ8aは壁状部材7aにボルト(図示せず)によって固定されている。
【0003】
駆動力の伝達部に駆動プーリ12、従動プーリ4とタイミングベルト5を使用する利点として、駆動源となるモータ3を機構部の横に配置することができる。これにより、機械の全長が短縮されること、駆動側と従動側のプーリ12,4の減速比を任意に設定することができるので、駆動装置1の出力条件を決める際の自由度が高いことなどが挙げられる。
【0004】
しかしながら、駆動力の伝達部に駆動プーリ12、従動プーリ4とタイミングベルト5を使用する際、タイミングベルト5の張力により駆動プーリ12,従動プーリ4はタイミングベルト5との接線方向に引っ張られ、駆動プーリ12を固定したモータシャフト14は従動プーリ4側にたわむ。このようなモータシャフト14のたわみが大きいと、モータ3の構成部品で、モータシャフト14を支持するベアリング(図示せず)に過大な負荷がかかり、そのベアリングを破損する場合がある。
このようなことから、モータシャフト14のたわみを防止するため、駆動プーリの端部11もしくはモータシャフト14の端部をベアリング10で支持し、そのベアリング10の外輪をベアリングホルダ8aに固定する方法が採用される場合がある(図1,図2参照)。
また、射出成形機が型締め型開きの繰り返し動作を行う度に駆動プーリ12、従動プーリ4とタイミングベルト5が回転することで、駆動プーリ12および従動プーリ4とタイミングベルト5との接触部から騒音が発生し、機械の動作条件によっては周囲の作業者にとって耳障りな騒音レベルに達してしまう問題がある。
【0005】
<射出成形機の騒音について>
射出成形機から発生する騒音について説明する。駆動力の伝達部にプーリ4,12とタイミングベルト5を使用し、駆動プーリ12をモータシャフト14に固定した駆動装置1において、その駆動力はプーリ4,12とタイミングベルト5との摩擦、もしくは歯付きベルトであれば歯と歯の噛み合わせで伝達されるが、プーリ4,12とタイミングベルト5が接触する度に衝撃により騒音が生じ、また、接触部での空気の圧縮により空気振動が発生して騒音が生じる。
従動プーリ4の直径より駆動プーリ12の直径が小さい、つまり減速比を大きくする場合、プーリ4,12とタイミングベルト5との噛み合いの長さは駆動プーリ12側の方が短くなるので、その分単位長さあたりにかかる押し付け力、もしくは歯付ベルトであれば1歯あたりにかかる力が大きく、直径の小さい駆動プーリ12側の方の騒音が大きくなる。プーリ4,12とタイミングベルト5からの騒音は、それらの接触部から主に発生することから、騒音問題を解決する従来の手段として、駆動プーリ12と従動プーリ4を外部に露出しないように覆う方法がとられる。
通常の射出成形機の動作条件では、これらの騒音は数十〜数千Hzの領域の周波数分布となり、板金で静音化しにくい低音域〜中音域の周波数帯である約20〜約3000Hzの音が含まれる。
【0006】
一般的には、板金製の防音カバーで覆う方法、鋳物部材で覆う方法、樹脂材料を使った複合材の防音カバーで覆う方法がある。さらに、それらの内側に吸音材や遮音材や制振材などを貼り付け、二重構造のカバーにして防音性能を高める場合がある。
【0007】
高周波数帯の騒音は発生源を板金部材で覆うことである程度静音化できるが、中低音域の周波数帯の騒音は板金を透過しやすいため静音化しにくい。中低音域を含む全ての周波数帯の騒音を静音化するには、遮音効果の高い高剛性で単位面積当たりの質量の大きい部材を用いるとよい。特に、鋳鉄素材は内部に黒鉛粒を析出し、鋼と黒鉛粒の境界面で音が反射・減衰されるため、遮音効果のみならず、吸音効果もあり、騒音防止の効果が高い。あるいは、高剛性の圧延鋼などでも高い遮音効果が得られる。
射出成形機の防音技術に関する以下のような従来技術がある。
特許文献1には、駆動プーリと従動プーリの2つのプーリとタイミングベルトを外部に露出しないように防音カバーで覆うとき、射出成形機を構成する型締機構部、射出機構部、計量機構部、および突き出し機構部の4つの機構部に対して、少なくとも前者3つの機構部のプーリとタイミングベルトを防音カバーで同時に覆う技術が開示されている。
特許文献2には、計量機構部で使用されるプーリとタイミングベルトに対して、それらを内側と外側の鋳物部材で形成された中空の環状構造の内部に配置する技術が開示されている。
特許文献3には、鋳物部材の背面に駆動プーリおよび従動プーリが配置された構造において、鋳物部材がそれら2つのプーリとタイミングベルトの周囲を覆うように凹部を形成し、開口部に蓋をすることで、鋳物製の防音カバーを形成する技術が開示されている。
特許文献4には、モータなどの駆動源と駆動プーリを機台内部に収納する技術が開示されている。
特許文献5には、固定用のフランジ部を外縁部に有する防音カバーにおいて、その構造を二重構造とし、外側を硬質樹脂で形成し、内側を軟質樹脂もしくはゴムで形成して外側の部材と空隙を隔てて配置されるようにし、遮音効果を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−21338号公報
【特許文献2】特開2000−190361号公報
【特許文献3】特開2006−150597号公報
【特許文献4】特開2000−117792号公報
【特許文献5】特開平9−151788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記背景技術で説明した従来技術には下記の問題がある。
(問題点1)
低中音域の周波数の騒音は板金を透過しやすいため、板金製の防音カバーを用いる従来技術は低中音域の周波数の騒音に対して静音化の効果が小さい。また、従来は、駆動プーリと従動プーリをそれぞれ覆う場合は2つの防音カバーを必要として部品点数が増え、駆動側と従動側の2つのプーリを1つの防音カバーで覆う場合は、防音カバーが大きく重くなる。さらに、駆動源であるモータから発した熱がモータシャフトを通じて駆動プーリに伝熱し、防音カバーで駆動プーリが覆われているとその熱が放熱できず、防音カバー内温度が上昇してタイミングベルトの寿命を低下させる。
(問題点2)
駆動プーリと従動プーリを鋳物で覆う従来の技術は、遮音効果は大きいが、材料の重量が増加し、コスト高となってしまう。また、問題点1と同様に内部温度の上昇でタイミングベルトの寿命が低下する。
(問題点3)
機台内部に駆動源と駆動プーリを配置する従来の技術は、駆動装置の配置場所が限られるため設計上の制約が大きく保守作業もしにくい。
(問題点4)
樹脂製の複合材で防音カバーを作製する従来の技術は、単一の樹脂だけでは騒音が透過しやすく静音化の効果が小さいため、二重構造にするなど複合材が用いられ、コスト高となってしまう。
以上のように、板金製の防音カバーでは遮音効果が小さく、鋳物部材で覆う技術ではコストが増加し、機台内部に収納する技術は設計の自由度が低下し、また、樹脂製複合材の防音カバーではコスト高になる。
【0010】
そこで本発明の課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、プーリとタイミングベルトの接触部から発生する騒音を低減し、静音性に優れた射出成形機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に記載の発明は、駆動力の伝達部にプーリとタイミングベルトを使用し、駆動源たるモータをモータブラケットに固定し、駆動プーリをモータシャフトに固定し、該駆動プーリの端部もしくは該モータシャフトの端部をベアリングで回転自在に支持し、該ベアリングの外輪をベアリングホルダで支持した駆動装置において、前記モータブラケットと前記ベアリングホルダの間に前記駆動プーリの周囲を覆うように壁状部材を設けた、あるいは、前記モータブラケットに前記駆動プーリの周囲を覆うようにベアリングホルダを設けたことを特徴とする射出成形機である。
請求項2に記載の発明は、前記壁状部材は前記モータブラケットに一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機である。
請求項3に記載の発明は、前記ベアリングホルダは前記モータブラケットに一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機である。
請求項4に記載の発明は、外部に露出したタイミングベルトと従動プーリとを防音カバーで覆い、該防音カバーを前記モータブラケットに接続したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の射出成形機である。
請求項5に記載の発明は、前記ベアリングホルダの中央部に前記ベアリングの外径より小さい貫通穴を開けたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の射出成形機である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、プーリとタイミングベルトの接触部から発生する騒音を低減し、静音性に優れた射出成形機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】駆動プーリ端部をベアリングホルダを用いて支持した従来の構造を説明する図である。
【図2】図1に示す駆動プーリ支持部の図1のA−A断面図である。
【図3】モータブラケットとベアリングホルダの間に駆動プーリの周囲を覆うように壁状部材を設けた本発明の第1の実施形態を説明する図である。
【図4】図3に示す壁状部材がモータブラケットに一体的に形成された本発明の第2の実施形態を説明する図である。
【図5】駆動プーリ側をあらゆる周波数の騒音に対して高い遮音効果を兼ね備えた構造物で覆い、さらに従動プーリ側を防音カバーで覆う実施形態を説明する図である。
【図6】図5に示す駆動プーリ支持部の拡大図である。
【図7】図6に示す駆動プーリ支持部の図5のB−B断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態を説明する右斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態を説明する左斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態の駆動プーリ支持部の拡大図である。
【図11】本発明の実施形態の駆動プーリ支持部の図10のC−C断面図である。
【図12】本発明の実施形態の防音カバーで覆う場合の防音カバー接続部の拡大図である。
【図13】本発明の実施形態の防音カバーを突き当てる場合の防音カバー接続部の拡大図である。
【図14】本発明の実施形態の防音カバーを保持プレートに固定する場合の防音カバー固定方法を説明する図である。
【図15】本発明の実施形態のステーとアジャストカバーを使用する場合の防音カバー裏側の固定方法を説明する図である。
【図16】本発明の実施形態のステーとアジャストカバーを使用しない場合の防音カバー接続部裏側を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。なお、従来技術と同一または類似する構成は同じ符号を用いて説明する。
図3は、モータブラケットとベアリングホルダの間に駆動プーリの周囲を覆うように壁状部材を設けた本発明の第1の実施形態を説明する図である。駆動力の伝達部に駆動プーリ12(図7参照),従動プーリ4とタイミングベルト5を使用し、駆動源たるモータ3をモータブラケット6に固定し、駆動プーリ12の端部もしくはモータシャフト14(図7参照)の端部をベアリング10で回転自在に支持し、そのベアリング10の外輪をベアリングホルダ8bで支持した駆動装置1において、モータブラケット6、ベアリングホルダ8b、その間に配置する壁状部材7bは、それぞれ、モータ3、ベアリング10、モータシャフト14に掛かるモーメント荷重を支持するだけの強度と剛性が必要なため、それらには鋳物などの剛性の高い部材が使用され、あらゆる周波数の騒音に対して高い遮音効果を兼ね備える。壁状部材7bはモータブラケット6とベアリングホルダ8bの間に、タイミングベルト5を逃がすスリット70を配置しつつ駆動プーリ12(図7参照)を覆うように設けられる。なお、壁状部材7b,ベアリングホルダ8b以外については図1,図2に示される構成と同様である。
【0015】
従来技術の駆動装置1で使用しているモータブラケット6と壁状部材7aとベアリングホルダ8aの組み合わせ(図1,図2参照)を利用して、本発明の第1の実施形態の構成では、モータブラケット6と壁状部材7bとベアリングホルダ8bとの組み合わせにより騒音の比較的大きい駆動プーリ12側を覆うことで、従来技術に比較して部品点数を増やさず、かつ、コスト高にならずに駆動プーリ12からの騒音を低減できる。駆動プーリ12を覆う構造物は、あらゆる周波数の騒音に対して高い遮音効果を兼ね備えたものを用いることで、騒音防止の効果を高めることができる。
【0016】
また、モータブラケット6とベアリングホルダ8bとその間に配置する壁状部材7bとにより駆動プーリ12の近傍を覆うので、従来の防音カバーよりコンパクトな構造とすることができる。また、タイミングベルト5の張力によるモータシャフト14のたわみが防止されるため、駆動プーリ12の傾きが抑えられ、プーリフランジ15(図7参照)とタイミングベルト5側面の摩擦が殆んど生じなくなり、騒音がより低減される。
ベアリングホルダ8bを壁状部材7bの端面に取り外し可能であるようにベアリングホルダ固定用ボルト13(図7参照)で固定すれば、タイミングベルト5が取り外し可能となり、組み立ておよび保守のしやすい構造となる。この実施形態では、壁状部材7bをモータブラケット6と一体化して鋳物製とすることが望ましい。
【0017】
図4は、図3に示す壁状部材がモータブラケットに一体的に形成されている第2の実施形態を説明する図である。この第2の実施形態は、モータブラケット6と壁状部材7bとが一体的に形成された部材とすることによって部品点数の削減が可能である。あるいは、モータブラケット6とベアリングホルダ8bと壁状部材7bの3つの要素を一体的に形成された部材となしてもよい。このように、複数の要素を一体的に形成された部材とすることによって、部品点数の削減が可能である。
ベアリングホルダ8bを壁状部材7bの端面に取り外し可能であるようにベアリングホルダ固定用ボルト13で固定すれば、タイミングベルト5が駆動プーリ12から取り外し可能となり、組み立ておよび保守のしやすい構造となる。この実施形態では、壁状部材7bをモータブラケット6と一体化して鋳物製とすることが望ましい。
【0018】
図5は、駆動プーリ12側をあらゆる周波数の騒音に対して高い遮音効果を兼ね備えた構造物で覆い、さらに従動プーリ4側を防音カバーで覆う実施形態を説明する図である。図6は図5に示す駆動プーリ支持部の拡大図である。図7は図6に示す駆動プーリ支持部の断面図である。図7に示されるように、駆動プーリの端部11をベアリング10で支持し、そのベアリング10の外輪をベアリングホルダ8bで固定する。ベアリングホルダ8bを壁状部材7bの端面に取り外し可能であるようにベアリングホルダ固定用ボルト13で固定すれば、タイミングベルト5が取り外し可能となり、組み立ておよび保守のしやすい構造となる。この実施形態では、壁状部材7bをモータブラケット6と一体化して鋳物製とすることが望ましい。なお、壁状部材7bとベアリングホルダ8bを一体化し、モータブラケット6に固定する構造とすることができ、あるいは、モータブラケット6とベアリングホルダ8bと壁状部材7bを一体化した構造としてもよい。
【0019】
駆動プーリ12側をあらゆる周波数の騒音に対して高い遮音効果を兼ね備える構造物で覆い、さらに従動プーリ4側を防音カバー16で覆うことにより、従来の板金製の防音カバーのみで覆うより高い防音効果を得ることができる。このようにすることで、本発明の実施形態は、従来の駆動プーリ12とタイミングベルト5との全周囲を鋳物部材で覆う方法や樹脂製の複雑な形状の防音カバー16で覆う方法よりコストを抑えることができる。
【0020】
また、従来技術である駆動装置1で使用しているモータブラケット6とベアリングホルダ8aとその間に配置する壁状部材7aの組み合わせ構成を利用して、本発明の実施形態では、モータブラケット6とベアリングホルダ8bとその間に配置する壁状部材7bの組み合わせ構成により駆動プーリ12の近くを覆うので、従来の防音カバーよりコンパクトな構造とすることができ、従来の防音カバーの駆動プーリ12側の部分を省いた本発明の実施形態に用いる防音カバー16を用いることができる。
【0021】
モータ3から生じているモータシャフト14に伝わる熱や、駆動プーリ12とタイミングベルト5との摩擦熱は、防音カバー16内部の雰囲気温度を上昇させ、タイミングベルト5の寿命を低下させる原因となる。しかし、本発明の実施形態では、駆動プーリ12の端部もしくはモータシャフト14の端部からベアリング10を介してベアリングホルダ8bに伝導伝熱し外部に放熱されるため、駆動プーリ12周囲の雰囲気温度や防音カバー16内の雰囲気温度の上昇を抑えることができ、タイミングベルトの寿命の低下を抑えることができる。また、タイミングベルト5の張力によるモータシャフト14のたわみが防止されるため、駆動プーリ12の傾きが抑えられ、プーリフランジ15(図7参照)とタイミングベルト5側面の磨耗が生じにくくなり、騒音がより低減する。
【0022】
図8は、本発明の第3の実施形態を説明する右斜視図である。図9は本発明の第3の実施形態を説明する左斜視図である。
図10は、本発明の第4の実施形態の駆動プーリ支持部の拡大図である。図11は、本発明の第4の実施形態の駆動プーリ支持部の断面図である。
【0023】
プーリナット9(図10,図11参照)の全長が長く、駆動プーリの端部11から突き出る場合、ベアリングホルダ8cの中心部に貫通孔72を設けることにより、プーリナット9を逃がすことができる。これにより、ベアリングホルダ8cはベアリング10の外輪を固定できる程度の厚みを確保すればよく、ベアリングホルダ8cを薄くすることができる。
また、その貫通孔72から駆動プーリの端部11が露出するので、モータ3から発せられた熱を放熱しやすく、駆動プーリ12の周囲の雰囲気温度や防音カバー16内部の雰囲気温度の上昇をより抑えることができる。また、駆動プーリの端部11とプーリナット9が露出するので、目視による動作確認がしやすく、保守性に優れる。
【0024】
ベアリングホルダ8cに設けた貫通孔72は、駆動プーリの端部11とベアリング10とで塞がれるため、その貫通孔72から騒音が漏れない。ベアリングホルダ8cに設ける貫通孔72の形状は、円、楕円、長方形でも良く、円の直径、楕円の長軸、長方形の対角線長はベアリング10の外形より小さくし、騒音が漏れないようにする。
【0025】
壁状部材7bから露出したタイミングベルト5と従動プーリ4を覆うための防音カバー16を組み付ける際には、騒音が漏れないようにできるだけ隙間がないように防音カバー16とモータブラケット6を接続する(図12,図13参照)。その接続部は、図12のように防音カバー16で壁状部材7bとベアリングホルダ8cとを覆うようにし、隙間をパッキンで埋めるか、隙間が生じないようにねじ留めする方法がある。また、図13のように、防音カバー16を壁状部材7bとベアリングホルダ8cに突き当てるようにし、必要があればねじ留めする。突き当て部に隙間が生じるようであればパッキンなどで埋めるようにしてもよい。テンションボルト24によってタイミングベルト5のテンションを調整することができる。
【0026】
次に、防音カバーの固定方法について説明する。
防音カバー16の固定方法としては、図14,図15,図16に示す以下の方法がある。従動プーリ4(図3参照)のすぐ後ろ側に保持プレート2の背面がある場合は、図14のように防音カバー16の外縁部にフランジを設けてそのフランジ部25を保持プレート2にねじ留めする。
従動プーリ4の後ろ側と保持プレート2背面に距離がある場合、防音カバー16を表側と裏側に分け、表側は通常の防音カバー16とし、裏側は図15のようにステー17によって支持されたアッパーカバー18とアンダーカバー19を用いて、タイミングベルト5と従動プーリ4の後ろ側を覆って騒音が漏れないようにする。
【0027】
表側の防音カバー16はアッパーカバー18とアンダーカバー19にねじ留めして固定される。モータブラケット6の位置、つまり駆動プーリ12と従動プーリ4の軸間距離はタイミングベルト5の調整で機械によって若干異なるため、モータブラケット6と、アッパーカバー18とアンダーカバー19との間にアジャストカバー20を配置して調整代を設けておけば隙間を埋めることができる。
このとき、アジャストカバー20をモータブラケット6に隙間ができないようにねじ留めするか、隙間をパッキンで埋めてもよい。アジャストカバー20の固定用の孔を長孔にして長孔分だけスライドできるようにしておけば、駆動プーリ12と従動プーリ4の減速比などを変えて軸間距離が変更になる場合にも対応できる。なお、アッパーカバー18とアンダーカバー19を一体化することもできる。
【0028】
図16のようにアッパーカバー18とアンダーカバー19を支持するステー17の代わりに保持プレート2から伸ばした部材を使用してアッパーカバー18とアンダーカバー19を固定し、アッパーカバー18とアンダーカバー19をモータブラケット6にねじ留めしてもよい。図16の例では、保持プレート2から伸びた従動プーリ4を支える凸状部にアッパーカバー18とアンダーカバー19の一端がねじ留めされ、もう一端はモータブラケット6にねじ留めされている。
伝達部にプーリとタイミングベルトを使用した駆動装置を複数持つ射出成形機の場合は、以上説明したような本発明の静音化構造を複数の駆動装置に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 駆動装置
2 保持プレート
3 モータ
4 従動プーリ
5 タイミングベルト
6 モータブラケット
7a 従来の壁状部材
7b 本発明における壁状部材
8a 従来のベアリングホルダ
8b 本発明におけるベアリングホルダ
8c 本発明における貫通孔ありのベアリングホルダ
9 プーリナット
10 ベアリング
11 駆動プーリの端部
12 駆動プーリ
13 ベアリングホルダ固定用ボルト
14 モータシャフト
15 プーリフランジ
16 防音カバー
17 ステー
18 アッパーカバー
19 アンダーカバー
20 アジャストカバー
21 アジャストカバー用パッキン
22 防音カバー用パッキン
23 防音カバー用パッキン
24 テンションボルト
25 防音カバーのフランジ部
70 スリット
72 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力の伝達部にプーリとタイミングベルトを使用し、駆動源たるモータをモータブラケットに固定し、駆動プーリをモータシャフトに固定し、該駆動プーリの端部もしくは該モータシャフトの端部をベアリングで回転自在に支持し、該ベアリングの外輪をベアリングホルダで支持した駆動装置において、
前記モータブラケットと前記ベアリングホルダの間に前記駆動プーリの周囲を覆うように壁状部材を設けた、あるいは、前記モータブラケットに前記駆動プーリの周囲を覆うようにベアリングホルダを設けたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記壁状部材は前記モータブラケットに一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記ベアリングホルダは前記モータブラケットに一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
外部に露出したタイミングベルトと従動プーリとを防音カバーで覆い、該防音カバーを前記モータブラケットに接続したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1つに記載の射出成形機。
【請求項5】
前記ベアリングホルダの中央部に前記ベアリングの外径より小さい貫通穴を開けたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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