説明

非イオン性界面活性剤ベシクルの癌細胞への特異標的・攻撃機能

【課題】 ベシクル内に抗癌剤などの薬物を内包させたり、ベシクル表面上に目的細胞に対する標的物質を固定化せずに、ベシクルそれ自身で目的細胞への特異標的機能、ベシクルの内包物の細胞への導入、およびその細胞の殺傷機能を付与することにある。
【解決手段】 本発明は、非イオン性界面活性剤Span80より調製した、相転移温度が非常に低く(−40℃近傍)、かつ膜流動性の高い、Span80ベシクルが、癌細胞に対して強い膜融合機能、癌細胞殺傷機能を有することを示し、さらにそれらの機能を利用することにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非イオン性界面活性剤ベシクルが癌細胞のみに融合して癌細胞を殺傷する機能を明らかにしようとする技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達システム(DDS)において、癌細胞などを特異的に殺傷させる目的で、抗癌剤などの薬物をマイクロカプセル(ベシクル)に内包させ、その薬物を目的細胞部位にのみ送達させて癌細胞を特異的に殺傷させる方法がある。従来の方法では、そのベシクル自身では目的細胞に対する上記の標的・攻撃機能が無いために、ベシクル表面上に目的細胞へ選択的に結合する物質を固定化し、さらには目的細胞を殺傷させるための抗癌剤などをベシクルに内包させることが必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2003−001097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、癌治療などのDDSキャリアとして多く用いられるリポソームなどでは、リポソーム表面上に目的癌細胞に対する標的物質を固定化し、さらにそのリポソーム内に抗癌剤などの薬物を内包させることにより、はじめて癌細胞特異標的機能や、癌細胞殺傷機能を付与することができる。このようにリポソームそれ自身では、癌細胞特異標的機能や癌細胞殺傷機能は有しておらず、目的細胞へのリポソーム内包物の導入効率にも問題がある。副作用を軽減させたり、ベシクル内包物を膜融合により効率よく目的細胞に導入できるベシクルを、簡便に調製する技術を開発するためにも、ベシクルに何も固定化しない上記のような機能を有するベシクルの開発が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、非イオン性界面活性剤Span80より調製した、相転移温度が非常に低く(−40℃近傍)、かつ膜流動性の高い、Span80ベシクルが、癌細胞に対して強い膜融合機能、癌細胞殺傷機能を有することを示し、さらにそれらの機能を利用することにある。
【発明の効果】
【0006】
この非イオン性界面活性剤Span80ベシクルを人体に投与すると、このベシクルは癌細胞にのみ特異的に結合して正常細胞には結合しない。したがって、抗癌剤を使用することなく、その癌細胞のみを殺傷することができ、抗癌剤を使用しなくても癌治療ができる。これまでのマウス実験でも、そのSpan80ベシクルの体内毒性は無く、さらにこのベシクルの構成成分であるSpan80は、既に薬物安定化剤としての投与例もあり安全であり、今後のヒト癌治療への使用が期待出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
[表1] 細胞生存率を測定する時に、細胞に加えるサンプル(ベシクルはリポソーム懸濁液)の組成を示す。
【図1】 癌細胞、正常細胞に対して、リポソームおよびSpan80ベシクルをそれぞれ添加した時のそれらの細胞生存率を示す
【図2】 フローサイトメトリーの二重染色法により測定したドットプロットからColon26細胞のアポトーシス誘導が明らかになった。
【図3】 蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer;FRET)を利用した膜融合を評価する原理図
【図4】 癌細胞、正常細胞に対して、リポソームおよびSpan80ベシクルをそれぞれ添加した時のそれらの膜融合の変化を、蛍光共鳴エネルギー移動法により測定した結果:図3−1はSpan80ベシクル、図3−2はPOPCリポソームの場合を示す。
【図5】 Span80ベシクルとColon26の融合を示す、位相差・蛍光顕微鏡写真。
【符号の説明】
【0008】
1.使用した癌細胞
OST:ヒト骨肉腫細胞
Hela:ヒト子宮頸癌細胞
Colo201:ヒト大腸癌細胞
Colon26:マウス結腸腺癌細胞
2.使用した正常細胞
Fibroblast:ヒト正常繊維芽細胞(皮膚由来)
ECV304:ヒト正常血管内皮細胞
MC3T3−E1:マウス由来の骨芽細胞
3.使用したベシクル: 非イオン性界面活性剤Span80ベシクル
4.使用したリポソーム: POPCリポソーム
POPC(1−palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine,Mw=760.1,20mg/ml chloroform,from Avanti Polar Lipids)
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、0.2mol%のRhodamine−PE、及び0.2mol%のNBD−PEの二種の蛍光物質を内包させた、非イオン性界面活性剤Span80ベシクル、およびPOPCリポソーム(POPC:1−palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine,Mw=760.1,Avanti Polar Lipids,Alabaster,AL)をそれぞれ調製する。一方数種の癌細胞、正常細胞を培養する。これらの癌細胞、および正常細胞に、上記のベシクルおよびリポソームを所定量混合する。
この時、それらのベシクルやリポソームが細胞と融合した時にのみ、蛍光が低下する

を内包させた非イオン性界面活性Span80からなるベシクル、およびCalcein AM内包のPOPCリポソームを調製する。それらのベシクルやリポソームが生細胞と融合すると、Calcein AMが細胞内に導入され、エステラーゼにより加水分解されてCalceinに変換され蛍光を発するようになる。この方法により、細胞との融合を蛍光顕微鏡で

特異的に融合することを確認した。つぎに、上記のベシクルとリポソームの濃度をそれぞれ変化させ、数種の癌細胞、正常細胞に添加して、それらの細胞の生存率に及ぼす影響を調べた。その結果、Span80ベシクルが、癌細胞のみを殺傷する機能を有していることを発見した。さらに、二種の蛍光物質Annexin V−PEと7AADによるフローサイトメーターを使用した二重染色法により、前述のSpan80ベシクルの癌細胞特異的殺傷機能がアポトーシスによるもであることを明らかにした。
【実施例】
【0010】
【実施例1】
Span80ベシクルの調製は次ぎのように行った。本研究ではベシクルの調製にはマイクロホモジナイザーの撹拌による二段階乳化法によって行った。Span80 132mg、レシチン(市販の大豆レシチンを精製)12mg、コレステロール6mgを3mlのヘキサンで溶解し、ベシクル内水相となる水溶液300μl(PBSやESA溶液など)をそのヘキサン中に添加しながら、マイクロホモジナイザーを用いて15000rpmで3分間撹拌する(一次乳化)。その一時乳化液をエバポレーションしてヘキサンを除去して、クリーム状のエマルションにする。このエマルションに、親水性の界面活性剤のTween80 48mgを溶解させたPBS溶液3ml添加して3000rpmで1分間撹拌する(二次乳化)。その二次乳化したベシクル溶液を、超遠心器にかけ遠心管上部に集まった油玉を除去した後、そのベシクル溶液を透析チューブで透析した。
【0011】
【実施例2】
以下のような方法でNBD−PEとRho−PEがそれぞれ0.2mol%含むPOPC

たPOPCを3ml、クロロホルムに溶解したNBD−PEを60μl、そしてクロロホルムに

この溶液をロータリーエバポレーターに移し、相転移温度以上の湯浴中(28℃)で回転させながらロータリーエバポレーターで400mbar、300mbar、200mbar、150mbar、100mbar、50mbar、50mbar以下となるように減圧してナスフラスコ内のクロロホルムを除去し、底に脂質薄膜を作成した。150mbar以下の減圧操作は特にゆっくり行

らはずして、直ちにナスフラスコを真空乾燥機に接続し、真空ポンプで二晩真空状態

と、内水となるPBS0.3mlを同時にナスフラスコに加え、そのナスフラスコに1分間目盛り2でホモミキサー処理を行い、フラスコ内の薄膜がすべて剥離して、水相中に

窒素につけて凍結させた後、再び容器ごと水(室温の水道水)につけて懸濁液を溶かした。この凍結融解操作(凍結3分、融解7分)を5回繰り返した。
【実施例3】
用いた癌細胞はマウス結腸腺癌細胞Colon26、ヒト大腸癌細胞Colo201、ヒト子宮頸癌細胞Hela。ヒト正常繊維芽細胞(皮膚由来)Fibroblast、ヒト不死化正常血管内皮細胞ECV304のそれぞれ2種類を用いた。
【実施例4】
癌細胞(OST・Colo201・Hela)・正常細胞(Fibroblast・ECV304)の入ったシャーレを必要量準備する。シャーレの上清を取り除き、トリプシンでピペッティングにより回収する。遠心分離にかけ、上清をアスピレ−ターで吸引し、DMEM培地で懸濁して、血球計算板で細胞数を数える。各wellに細胞数が2×10(cells//ml)になるように細胞密度を調整し、12穴シャーレに細胞を撒く。シャーレに細胞を接着させるためにインキュベーターに入れて16時間培養する。培地をアスピレーターで取り除き(接着していない細胞を除き、接着している細胞のみで測定を行うことができる)、それに種々の濃度のサンプル(Span80ベシクルやリポソーム懸濁液)を表1に示したような割合で添加する。(ControlはPBSを添加した。)48時間後、ベシクルおよびリポソーム(濁度0.295)をそれぞれ添加した各濃度(ベシクルおよびリポソームの)の細胞数を血球計算板で数える。この際に4%トリパンブルー/PBSで15分間インキュベートして死細胞を染色し、総細胞数と死細胞数を数える。
細胞生存率(Viability)=(総細胞数−死細胞数)/総細胞数となる。
【0012】
図1に示すように、種々の癌細胞と正常細胞に対して、それぞれリポソームとSpan80ベシクルを添加して、その生存率を調べた。その結果、Span80ベシクルの添加量に相関して、癌細胞が死滅していくことが明らかになった。一方正常細胞には対してはそのような死滅現象はほとんど見られなかった。またPOPCリポソーム添加の場合についても、癌細胞、正常細胞ともにそのような死滅現象は見られなかった。結局Span80ベシクルのみが、癌細胞に対して殺傷機能を有していると言える。
【実施例5】
二重染色法のフローサイトメトリーは次ぎのように行った。例えば、Colon26細胞の入ったシャーレを必要量準備(培養)した。シャーレの上清(培地、血清)を取り除き、0.02% EDTA−PBSでピペッティングにより回収した。遠心分離にかけ、上清をアスピレーターで吸引し、DMEM培地で懸濁して血球計算板で細胞数を数え、細胞数が2×10cells/wellになるように細胞濃度を調製し、12well plateに細胞をプレーティングした。細胞を接着されるために20時間インキュベートした。その後、接着していない細胞を除き、接着している細胞のみで測定をするため、培地を交換した。この時使用したものは5% FBS−DMEMである。Span80ベシクル懸濁液(濁度0.246)を100μl加えて12、24、48時間培養した。各時間経過後、細胞を0.02% EDTA−PBSで回収、遠心(1000rpm,5min)し、1×Annexin V−PE Binding Buffer溶液100μlに懸濁させた。

V−PE Binding Bufferを400μl加えた。Flowcytometer(FACSCalibur)を用いて測定し、WinMDI(free soft)を用いてアポトーシスの程度を解析した。図2に示すようなドットプロットが得られ、Span80ベシクルの添加によりColon26細胞にアポトーシスが発現し、それによってColon26細胞が殺傷されたことが解る。このような現象はOST、ERM5−1、Hela細胞など多くの癌細胞で見られた。
【0013】
また、カチオニックペプチド脂質(CPL)をSpan80ベシクル膜に添加するに連れて、この癌細胞へのアポトーシス誘導機能は減少し、CPLにアポトーシス抑制機能があることが判明した。
【実施例6】
ベシクルあるいはリポソームと生細胞間の膜融合に関しては、以下のような原理の下に行った。ベシクルが融合する際には、まずベシクルの膜を構成する脂質分子の混合が起こり(hemifusion)、その後内水相の混合が起こると完全な融合となる(fusion)。そこで、ベシクルの融合を評価する方法として膜構成脂質の混合、内水相の混合の二つの観点から評価する必要がある。本実験では膜構成脂質の混合を測定した。
膜構成脂質の混合の評価方法としてよく用いられるのが、蛍光共鳴エネルギー移動(Fluorescence Resonance Energy Transfer;FRET)を利用した方法である。FRETは色素二分子の電子励起状態間の相互作用によって生じ、その効率は両分子間距離の6乗に反比例する。FRETが起きるには、供与体分子と受容体分子が近接していること(10〜100Å以内)、受容体分子の吸収スペクトルと供与体分子の蛍光スペクトルが重なっていることが要求され、蛍光物質Rhodamine、NBDを用いたFRETによる分析法が用いられている。本実験ではベシクル膜及びリポソーム膜に、0.2mol%のRhodamine−PE、及び0.2mol%のNBD−PEを含有させた。
膜構成脂質の混合の程度は、蛍光性脂質Rho−PE、NBD−PEによる蛍光共鳴エネルギー移動を利用して評価した。ベシクルと細胞及びリポソームと細胞の混合は、蛍光物質内包ベシクル及び蛍光物質内包リポソームと、任意の細胞数に調製した細胞懸濁液をそれぞれ等量ずつ加えた。波長472nmにより励起した時の524、572nmの蛍光強度FNBD、FRhoを測定した。エネルギー移動効率をETとおいた。
ET=FRho/FNBD
【0014】
ここでET(Energy Transfer efficiency)とはFRho/FNBDのことであり、FNBDは励起波長:蛍光波長が(472:524)nm、FRhoは励起波長:蛍光波長が(472:572)nmの時の蛍光強度である。ET(t)とはRho−PEとNBD−PEを各0.2mol%含むベシクルと細胞を混合後、基本的に、0,30,60,120,180分のETである。図3に上記の原理を模式化して説明する。0.2mol%の蛍光物質を内包したベシクル及びリポソームと、細胞懸濁液を等量ずつ混合し融合させる。融合初期ではベシクル上及びリポソーム上の試薬同士の距離が近いため、エネルギー移動がよく起こり、NBDの値は小さく、Rhodamineの値は大きくなる。また融合が進み粒径が大きくなることで、試薬同士の距離が離れ、エネルギー移動が生じにくくなり、NBDの値は大きく、Rhodamineの値は小さくなる。この変化を融合の進行として測定した。図4に示すように、Span80ベシクルを添加した場合にのみ(図3−1(a))、蛍光強度が低下している。このことから、Span80ベシクルは癌細胞にのみ膜融合することが明らかになった。
【実施例7】
蛍光試薬内包ベシクルおよびリポソーム内には、蛍光試薬の量がそれぞれ0.2mol%のRhodamine−PE、及び0.2mol%のNBD−PEを含ませた。0.2mol%、0.1mol%になるように仕込み量を調整した。以下のように調製した。調製の際には逐次アルミホイルをかぶせて蛍光試薬が消光するのを防ぐ。調製後はアルミホイルを巻いた試験管に入れ保存した。
【実施例8】
細胞調製・サンプル調製法_滅菌PBS中に細胞が10cellsになるように調製し、細胞懸濁液を作成した。用いた細胞は、癌細胞では、マウス結腸腺癌細胞株Colon26、ヒト大腸癌細胞株Colo201、ヒト子宮頸癌細胞株Hela、正常細胞ではマウス骨芽細胞株MC3T3−E1、ヒト線維芽細胞(皮膚由来)、ヒト血管内皮細胞ECV304のそれぞれ3種類

述のように調製した蛍光試薬内包ベシクル及び蛍光試薬内包リポソームをそれぞれ150

基本的に0,30,60,120,180分で蛍光分光光度計を用いて測定した。
【実施例9】
Calcein AMは、元々親水性のCalceinの4つのCOOH基をAMエステル基で修飾することで、疎水性の高い、脂溶性非荷電分子にしたものである。脂溶性非荷電物質のCalceinAMは、生細胞の細胞膜の選択的透過性によって取り込まれ、細胞内のエステラーゼによって加水分解されて、AMエステル基がカルボキシル基なって、親水性のCalceinに戻る機構で蛍光を発し、細胞外に漏出することなくする生細胞を染色する事ができる。また、CalceinAMを無水DMSOで溶解し、1×Calcein AM DW Bufferに溶解する事で、2μM CalceinAM Working solutionを調製したが、これは大過剰の蒸留水にCalcein AMが溶解しているので、親水性に限りなく近く、これによりSpan80ベシクルに内包することができた。
【0015】

マルションの調製:ベシクルの主成分となる66mgのSpan80にn−ヘキサン3mlを加え、ホモミキサー(15000rpm)で30秒間撹拌した。その後、CalceinAM Cell Viability Assay Kit(TREVIGEN,Inc.コードNo.4892−010−K)を用いて調製した33.3μMの

移し、恒温槽中約30℃で、ロータリーエバポレーターで減圧し、n−ヘキサンを除去した。

に、24mgのTween 80を溶解したPBS溶液(外水)3mlを添加し、ホモミキサー(3500rpm)で撹拌した。この二段階乳化法により調製されたベシクルは、その構成成分によっては多くが凝集している場合があるため、以下の手順でベシクルの再分散を行った。(a)調製したベシクルを、マグネチックスターラーを用いて気泡が出なくなるまで(約3時間)撹拌し、その後、冷蔵庫内で撹拌しながら一昼夜放置した。(b)その懸濁液を遠心分離し,一昼夜透析を行い、内水層から漏出したCalcein溶液を除去した。
【実施例10】
CalceinAM内包のSpan80ベシクルと細胞間の融合に関する位相差・蛍光顕微鏡観察の観察は以下のように行った。マウス結腸腺癌細胞株Colon26、ヒト子宮頸癌細胞株Hela、ヒト正常線維芽細胞(皮膚由来)、ヒト正常血管内皮細胞株ECV304を回収し、培地に含まれているフェノールレッドのバックグラウンドを除去するため、またFBSに含まれているエステラーゼを除去するために、脱気した滅菌PBSに懸濁した。それに細胞懸濁液に対して20%の量を添加し、インキュベーター内で放置して、1〜3時間経過後に採取して、位相差・蛍光顕微鏡にて観察を行った。
図5に、CalceinAM内包のSpan80ベシクルと Colon26細胞の内水相どうしの融合が生じ(図5−a)、ベシクル内のCalceinAMがColon26細胞内に導入されて、加水分解されたCalceinが蛍光を発している様子を示す蛍光顕微鏡写真を示す。このような様子は、Hela細胞などでも観察された。こうして、Span80ベシクルが癌細胞と融合する様子が位相差・蛍光顕微鏡でも観察された。
【表1】

例えば、ベシクル(あるいはリポソーム)のサンプルを100μlに対しては、培地800μl、血清μlをそれぞれ添加して、合計で1mlとした。以下サンプル量が50、25、12.5、62.5の場合も同様に合計で1mlとした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非イオン性界面活性剤Span80ベシクルが癌細胞に対してのみ特異的に膜融合を起こすこと。
【請求項2】
Span80ベシクルは、正常細胞に対して膜融合は起こさないこと。
【請求項3】
Span80ベシクルは、癌細胞にのみCaspase3経由のアポトーシス誘導機能を有すること。
【請求項4】
Span80ベシクルは、抗癌剤の代わりとして使用できること。
【請求項5】
カチオニックペプチド脂質(CPL)を、界面活性剤Span80ベシクル膜に添加していくにつれて、請求項3で述べたアポトーシス機能を抑制すること。
【請求項6】
Span80ベシクル内に遺伝子や抗癌剤などの生理活性物質を内包させ、目的癌細胞へその生理活性物質を導入するベクターとして、Span80ベシクルを使用する場合、その導入は請求項1で述べたSpan80ベシクルと癌細胞の膜融合により生じること。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−(1)】
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【図4−(2)】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−195757(P2010−195757A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66970(P2009−66970)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(503356668)
【Fターム(参考)】