説明

非カチオン性殺菌剤含有歯磨き顆粒の製造方法

【課題】非カチオン性殺菌剤を微細にかつ安定して含有しうる歯磨き顆粒の製造方法を提供する。
【解決手段】非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解し、これと、比表面積が50〜500m2/gの多孔質無機粉体を混合し非カチオン性殺菌剤含有粉末を得る工程1、水、水不溶性無機結合剤、水不溶性粉末材料及び工程1で得られた非カチオン性殺菌剤含有粉末を混合してスラリーを得る工程2、及び工程2で得られたスラリーを乾燥して顆粒を得る工程3、を有する歯磨き顆粒の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非カチオン性殺菌剤を配合した歯磨き顆粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬効成分を含有した歯磨き顆粒は、歯と歯の間や歯と歯肉の隙間に薬効成分を直接作用させるための剤型として有効である。そのような例として、特許文献1は、アズレン、ビタミンE、β−グリチルレチン酸、ジヒドロコレステロール、クロルヘキシジン、エピジヒドロコレステロール、イソプロピルメチルフェノール、トリクロロカルバニリド、ハロカルバン及びヒノキチオールからなる群より選ばれる口腔用薬効成分を配合した水不溶性の結合剤を造粒して得られる顆粒を配合した歯磨剤及びその製造方法を開示している。
【0003】
【特許文献1】特許2857789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記製造方法では、薬効成分が製造する顆粒に比べて比較的大きな粉末である場合には、薬効成分が、顆粒内において析出する等不均一になり、顆粒の価値が低下してしまうことがあった。
本発明の課題は、非カチオン性殺菌剤を微細にかつ安定して含有する歯磨き顆粒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(1)工程1:非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解し、これと、比表面積が50〜500m2/gの多孔質無機粉体を混合し非カチオン性殺菌剤含有粉末を得る工程、
工程2:水、水不溶性無機結合剤、水不溶性粉末材料及び工程1で得られた非カチオン性殺菌剤含有粉末を混合してスラリーを得る工程、及び
工程3:工程2で得られたスラリーを乾燥して顆粒を得る工程、
を有する歯磨き顆粒の製造方法、
【0006】
(2)請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる歯磨き顆粒、及び
(3)非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解した混合液と、比表面積が50〜500m2/gの多孔質無機粉体を混合する工程を有する、非カチオン性殺菌剤含有粉末の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、非カチオン性殺菌剤を微細にかつ安定して含有する歯磨き顆粒を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[歯磨き顆粒の製造方法]
本発明の歯磨き顆粒の製造方法は、非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解し、これと、比表面積が50〜500m2/gの多孔質無機粉体を混合し非カチオン性殺菌剤含有粉末を得る工程(工程1)、水、水不溶性無機結合剤、水不溶性粉末材料及び工程1で得られた非カチオン性殺菌剤含有粉末を混合してスラリーを得る工程(工程2)、及び工程2で得られたスラリーを乾燥して顆粒を得る工程(工程3)、を有する。
【0009】
工程1
工程1は、非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解し、これと、比表面積が50〜500m2/gの多孔質無機粉体を混合し非カチオン性殺菌剤含有粉末を得る工程である。
非カチオン性殺菌剤としては、例えば、ハロゲン化ジフェニルエーテル、ハロゲン化サリチルアニリド、ハロゲン化カルボアニリド、p-ヒドロキシ安息香酸エステル、フェノール系化合物が挙げられる。本発明の歯磨き顆粒においては、非カチオン性殺菌剤は、歯垢除去,口臭防止及び歯面着色物質除去に優れた効果を発揮すると共に、歯磨き剤などの口腔用組成物中の成分との相溶性に優れている観点から、ハロゲン化ジフェニルエーテルが好ましく、特にトリクロサンが好ましく用いられる。
非カチオン性殺菌剤の配合量は、非カチオン性殺菌剤結晶の成長を抑制する観点から、本発明の歯磨き顆粒に対して、0.005〜20質量%であることが好ましく、0.01〜10質量%であることがより好ましく、0.05〜5質量%であることが更に好ましい。
【0010】
炭素数1〜4のアルコールとしては、非カチオン性殺菌剤の溶かし易さの点から、エタノール又はイソプロピルアルコールが好ましく、エタノールがより好ましい。
炭素数1〜4のアルコールの配合量は非カチオン性殺菌剤が溶解する量であれば特に制限はないが、多孔質無機粉体に担持する観点から、本発明の歯磨き顆粒100重量部に対して0.01〜20質量部が好ましく、0.02〜10質量部がより好ましく、0.05〜5質量部が更に好ましい。
工程1においては、上記非カチオン性殺菌剤を上記炭素数1〜4のアルコールに混合、溶解させ、その配合量は、上記のような量であればよいが、具体的に混合する際には、非カチオン性殺菌剤を該非カチオン性殺菌剤と上記アルコールの総量に対し、好ましくは10〜70質量%、より好ましくは20〜60質量%含有する溶液として多孔質無機粉体と混合する。
【0011】
本発明においては、上記アルコール溶液と多孔質無機粉体を混合し、好ましくは、アルコール溶液中の非カチオン性殺菌剤を多孔質無機粉体に担持させるが、多孔質無機粉体としては、市販品として入手容易な点から、多孔質シリカ、多孔質ケイ酸カルシウム等が使用できる。本発明においては、上記観点から、多孔質シリカが好ましい。その比表面積は、非カチオン性殺菌剤を担持させる観点から、50〜500m2/gであることが好ましく、より好ましくは50〜400m2/gであり、更に好ましくは50〜350m2/gである。この比表面積は、BET法により測定された値である。多孔質無機粉体は、比表面積を確保する観点から、その平均粒径が0.05〜50μm、より好ましくは0.1〜30μmである。
上記多孔質無機粉体の配合量は、非カチオン性殺菌剤の配合量の観点から、本発明の歯磨き顆粒に対して、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%がより好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。配合量が0.01質量%以上であれば、非カチオン性殺菌剤の安定性(担持する能力)が良好であり、また20質量%以下であれば、上記効果に加え、粉立ち等がなくハンドリング性が良好となる。
【0012】
多孔質無機粉体、非カチオン性殺菌剤、及び炭素数1〜4のアルコールの各々の配合割合は、多孔質無機粉体100質量部に対し、それぞれ、非カチオン性殺菌剤結晶の成長を抑制する観点から、非カチオン性殺菌剤が0.1〜500質量部、多孔質無機粉体の担持のし易さから、炭素数1〜4のアルコールが0.1〜500質量部であることが好ましい。
工程1で得られる非カチオン性殺菌剤含有粉末は、その平均粒径が、所望の歯磨き剤顆粒を得る観点から、0.05〜50μmであることが好ましく、より好ましくは、0.1〜30μmである。
【0013】
非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解して、多孔質無機粉体と混合する場合は、固液混合力の観点から、転動あるいは混合攪拌機を用いてこれらの混合を行うことが好ましく、これらの撹拌機としては、例えば、ヘンシェルミキサー、ハイスピードミキサー、ナウターミキサーなどが挙げられる。攪拌速度としては、固液混合が十分になされる条件であれば特に制限はないが、例えば、周速で1〜30m/sであることが好ましい。その際の非カチオン性殺菌剤のアルコール溶液等の添加は、手投入、ノズル噴霧による添加等いずれの方法も挙げられ、特に制限はない。また、混合温度は通常の室温程度であればよく、一般に5〜40℃が好ましい。
【0014】
工程2
工程2は、水、水不溶性無機結合剤、水不溶性粉末材料及び工程1で得られた非カチオン性殺菌剤含有粉末を混合しスラリーを得る工程である。
工程2においては、水を配合する。水は上記水不溶性無機結合剤に含まれていることがあるが、本発明においては、スラリーの見掛け粘度を調整する観点から、別途、水を添加することが好ましい。
水の配合量は、生産性とスラリー及び乾燥の操作性の観点から、水不溶性無機結合剤中の水も含め、スラリー中における固形分濃度が、10〜90質量%になるように配合することが好ましく、更には30〜70質量%になるように配合することがより好ましい。
【0015】
水不溶性無機結合剤は、水不溶性粉末材料を結合し、所望の顆粒を得る等の目的で使用されるものである。よって、水不溶性無機結合剤としては水に分散した際の分散粒径が、2nm〜900nm、好ましくは、3nm〜700nm、更に好ましくは、4nm〜500nmであることが、効果発現の観点から好ましい。分散粒径は、カタログ値や透過型電子顕微鏡による観察、動的光散乱式粒径分布測定装置やレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により求めることができる。また、その種類は特に限定されないが、好適には、金属酸化物、金属水酸化物、ケイ酸化合物、粘土鉱物等から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。例えば、金属酸化物としては、アルミナゾル、酸化マグネシウム等が、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、水酸化マグネシウム等が、ケイ酸化合物としては、コロイダルシリカ、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム等が、粘土鉱物としては、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリン等が使用できる。その他、炭酸マグネシウムも使用することができ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、所望の顆粒を得る観点から、コロイダルシリカが好ましい。
水不溶性無機結合剤の配合量は上記観点に加え、口腔内の使用感の観点から、本発明の歯磨き顆粒に対し有効分として1〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。
【0016】
水不溶性粉末材料は、歯磨き剤として歯や口腔内の清掃力を高める等の目的で使用されるものである。よって、水不溶性粉末材料としては水に分散した際の分散粒径が、1μm〜100μm、好ましくは、2μm〜70μm、更に好ましくは、2μm〜50μmであることが、効果発現の観点から好ましい。分散粒径は、カタログ値や顕微鏡又はCCDカメラによる観察、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により求めることができる。また、その種類は特に限定されないが、好適には、無機アルカリ土類金属塩、ケイ酸化合物、セルロース類から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。例えば、無機アルカリ土類金属塩としては、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム等が、ケイ酸化合物としては、ゼオライト、複合アルミノケイ酸塩、シリカ等が、セルロース類としては、パルプ粉末、不溶性粉末セルロース、粉末α−セルロース、パルプ等、必要に応じて化学処理して不溶化したものが使用することができる。その他、ベンガラ、不溶性メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム等も使用することができ、これらは単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらのうち、製造コストと口腔内の清掃力の観点から、炭酸カルシウム又は炭酸カルシウムと上記粉末セルロースとの組み合わせが好ましい。
【0017】
水不溶性粉末材料の配合量は、歯磨き剤として歯や口腔内の清掃力を高める等の観点から、本発明の歯磨き顆粒に対し30〜95質量%が好ましく、50〜90質量%がより好ましい。
工程2においては、水、水不溶性無機結合剤、水不溶性粉末材料及び非カチオン性殺菌剤含有粉末に加えて、スラリー中への非カチオン性殺菌剤の溶出を抑制する観点から、さらに水溶性高分子を混合することが好ましい。
【0018】
水溶性高分子としては、上記観点及びスラリーの見掛け粘度を調整する観点から、ポリビニルアルコール(PVA)又はポリビニルピロリドン(PVP)が好ましい。
水溶性高分子の配合量は、非カチオン性殺菌剤結晶の成長を抑制する観点から、非カチオン性殺菌剤の100重量部に対し、0.1〜500質量部が好ましく、5〜200質量部がより好ましい。水溶性高分子の重量平均分子量としては、スラリーの見掛け粘度の調整のし易さから、1,000〜1,000,000であることが好ましく、より好ましくは5,000〜500,000である。
【0019】
工程2においては、上記各成分を混合しスラリーを形成する。各成分の配合順序については特に制限はないが、操作性の観点から、水、水不溶性無機結合剤、水不溶性粉末材料、非カチオン性殺菌剤含有粉末の順に添加することが好ましい。
水溶性高分子を配合する場合も、特に配合の順序に制限はないが、水溶性高分子を水に溶解した水溶液と非カチオン性殺菌剤含有粉末とを予め混合しておくことがスラリー中への非カチオン性殺菌剤の溶出を抑制する観点から好ましい。
【0020】
工程2においては、得られたスラリーのpHを調製することが好ましい。スラリー中への非カチオン性殺菌剤の溶出を抑制する観点から、pHは10以下が好ましく、9以下がより好ましい。また、スラリーの粘度が高くなることを抑制する観点から、pH5以上が好ましく、7以上がより好ましい。pH調製剤としては、食品添加物用の有機酸が好ましく、有機酸としては、非カチオン性殺菌剤結晶の成長を抑制するリンゴ酸、クエン酸が好ましい。
スラリーのpHを調整する場合には、pHを調整した後に非カチオン性殺菌剤含有粉末を配合するのがスラリー中への非カチオン性殺菌剤の溶出を抑制する観点から好ましい。
【0021】
工程2における各成分の混合は、公知の方法で行うことができ、バッチ式、連続式、セミバッチ式の何れであってもよい。その際、混合温度は通常の室温程度であればよく、5〜40℃が好ましい。混合時間は固形分がある程度均一になる時間であれば特に制限はないが、通常は、10〜300分、好ましくは15〜120分である。スラリーの粘度はスラリーを可能な粘度であれば特に制限はないが、通常は、常温(20℃)で5〜1,000mPa・s、好ましくは10〜400mPa・sである。上記粘度は、B型粘度計(測定時間1分、No.2ローター(500mPa・s以下の場合)、No.3ローター(500〜2000mPa・sの場合)、ローター回転数60r/min)により測定することができる。
スラリー中の固形分の平均粒径は、0.01〜100μmが好ましく、0.05〜50μmがより好ましく、0.1〜30μmが更に好ましい。
【0022】
工程3
工程3は、工程2で得られたスラリーを乾燥して顆粒を得る工程である。
乾燥は水分を除去できる乾燥装置であれば公知のものがいずれも使用でき、生産性の観点から、噴霧乾燥機、又は流動層乾燥機が好ましい。
得られた歯磨き顆粒の平均粒径は、口腔内の歯と歯の間や歯と歯肉の間の隙間に入りやすさという観点から、10〜500μmが好ましく、100〜400μmがより好ましく、100〜300μmが更に好ましい。
本発明は、通常、常温で比較的大きな粉末形状を有する非カチオン性殺菌剤を、平均粒径が10〜500μm程度の顆粒中に微細にかつ安定して含有させることができ、そのような場合に有効に適用することができる。
前記工程1の多孔質無機粉体、非カチオン性殺菌剤含有粉末及び上記顆粒の平均粒径は、JIS K 8801規定の標準篩を用いて5分間振動させた後、各篩目のサイズによる質量分布から測定する方法により得られる。
【0023】
[非カチオン性殺菌剤含有歯磨き顆粒]
本発明の非カチオン性殺菌剤含有歯磨き顆粒は、上記歯磨き顆粒の製造方法により得られるものであり、非カチオン性殺菌剤を微細にかつ安定して含有したものである。非カチオン性殺菌剤は、本発明の歯磨き顆粒中に、好ましくは結晶が存在しない安定した状態で存在し、少なくとも顆粒の粒径に比べ、好ましくは50μm以下、より好ましくは10〜50μmの微細かつ安定した結晶の状態で存在する。非カチオン性殺菌剤含有歯磨き顆粒の詳細については、前述のとおりである。
【0024】
[非カチオン性殺菌剤含有粉末の製造方法]
本発明の非カチオン性殺菌剤含有粉末の製造方法は、非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解し、これと、比表面積が50〜500m2/gの多孔質無機粉体を混合する工程を有するものである。
この工程は、前記歯磨き用顆粒の製造方法における工程1と同様であり、その詳細は前述の通りである。得られる非カチオン性殺菌剤含有粉末は、本発明の歯磨き顆粒の製造に好適に使用することができる。
【実施例】
【0025】
以下に実施例等により、本発明を更に具体的に説明する。以下の実施例等においては、各性状値は次の方法により測定、評価した。
[顆粒中のトリクロサンの大きさ]
乾燥後に得られる顆粒中のトリクロサンの大きさは、スラリー中のトリクロサン結晶の大きさにより決まるとの知見から、スラリー中のトリクロサン結晶の大きさをCCDカメラで観察し、その画面における全ての針状結晶の長径を測定し、その平均をトリクロサン結晶の大きさと見做し、スラリー調製後15分、60分、120分の各々の時点において、下記基準で評価した。結果を表1−1及び表1−2に示す。
評価基準
1:結晶は観察されない
2:10〜50μmの結晶が観察された
3:50μmより大きな結晶が観察された
とした。
【0026】
[顆粒の平均粒径]
JIS K 8801規定の標準篩を用いて5分間振動させた後、各篩目のサイズによる質量分布から測定した。
[スラリーの粘度]
B型粘度計を用いて、測定時間1分、No.2ローター、ローター回転数60r/minで測定した。
【0027】
実施例1
表1−1に示す配合割合でトリクロサン(商品名:イルガサンDP300、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)をエタノールに溶解し、これと多孔質シリカ(商品名:サイロページ720、富士シリシア化学(株)製、BET法による比表面積:300m2/g)とを表1−1に示す装置及び条件で混合しトリクロサン含有粉末を得た(工程1)。この粉末とコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスS、日産化学工業(株)製、固形分:30.5%、粒子径:8〜11nm(カタログ値))と炭酸カルシウム(商品名:トヨホワイト、東洋電化工業(株)製、粒子径:2〜5μm(CCDカメラによる観察))と粉末セルロース(商品名:KCフロックW−400G、日本製紙ケミカル(株)製、平均粒子径:約24μm(カタログ値))と水を表1−1に示す割合、装置及び条件で混合し、pH10.2のスラリーを得た(工程2)。得られたスラリーの粘度(20℃)は60.5mPa・sであった。なお、工程2における各成分の配合順序は、先ず、混合槽に水、次いでコロイダルシリカを投入し、次に炭酸カルシウムと粉末セルロースを添加した。次いで、工程1で得られた粉末を添加し、スラリーを調製した。
スラリー中のトリクロサンの結晶の大きさはスラリー調製後120分において評価2であった。スラリーを送風温度190℃で噴霧乾燥し、平均粒径212μmの顆粒を得た。
【0028】
実施例2
実施例1と同様にして表1−1に示す配合割合、装置及び条件で混合し、スラリーを得た。スラリーのpHをリンゴ酸にて8.0に調整した。得られたスラリーの粘度(20℃)は70mPa・sであった。なお、リンゴ酸を炭酸カルシウムの前に添加した以外は、実施例1と同様の添加順序でスラリーを調製した。
スラリー中のトリクロサンの結晶の大きさはスラリー調製後120分において評価2であった。実施例1と同様にしてスラリーを噴霧乾燥し、平均粒径219μmの顆粒を得た。
【0029】
実施例3及び4
実施例1と同様に表1−1に示す配合割合、装置及び条件でスラリーを得た。表1−1に示す割合でポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業(株)製)をスラリー中に混合した。得られたスラリーの粘度(20℃)は実施例3、4ともに50mPa・sであった。なお、各成分の配合順序は、先ず、混合槽に水、次いでポリビニルアルコールを投入し、溶解した事を確認した後、次に工程1で得られた粉末を添加した。次いで、コロイダルシリカを投入し、次に炭酸カルシウムと粉末セルロースを添加し、スラリーを調製した。
スラリー中のトリクロサンの結晶の大きさは、いずれもスラリー調製後120分において評価1であった。
実施例1と同様にしてスラリーを噴霧乾燥し、実施例4では平均粒径189μmの顆粒を、実施例5では平均粒径206μmの顆粒を得た。
【0030】
実施例5
実施例1と同様に表1−1に示す配合割合、装置及び条件でスラリーを得た。表1−1に示す割合でポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールEG−05、日本合成化学工業(株)製)をスラリー中に混合した。また、リンゴ酸によりスラリーのpHを8.0に調整した。得られたスラリーの粘度(20℃)は45mPa・sであった。なお、リンゴ酸を炭酸カルシウムの前に添加した以外は、実施例3と同様の添加順序でスラリーを調製した。
スラリー中のトリクロサンの結晶の大きさはスラリー調製後120分において評価1であった。実施例1と同様にしてスラリーを噴霧乾燥し、平均粒径189μmの顆粒を得た。
【0031】
実施例6〜8
実施例1と同様に表1−1又は1−2に示す配合割合、装置及び条件でスラリーを得た。表1−1又は1−2に示す割合でポリビニルピロリドン(商品名:PVP K−30、アイエスピー・ジャパン(株)製)をスラリー中に混合した。また、粉末セルロースは配合しなかった。得られたスラリーの粘度(20℃)は実施例6では80mPa・s、実施例7では65mPa・s、実施例8では82.5mPa・sであった。なお、各成分は、ポリビニルピロリドンを工程1で得られた粉末の前に添加した以外は、実施例3と同様の添加順序でスラリーを調製した。
スラリー中のトリクロサンの結晶の大きさは何れもスラリー調製後120分において評価1であった。
【0032】
実施例9
実施例1と同様に表1−2に示す配合割合、装置及び条件でスラリーを得た。多孔質無機粉体は多孔質シリカの代わりに多孔質ケイ酸カルシウム(商品名:フローライトR、(株)トクヤマ製、BET法による比表面積:110m2/g)を用いた。また、粉末セルロースは配合しなかった。得られたスラリーの粘度(20℃)は70mPa・sであった。なお、各成分は、実施例1と同様の添加順序でスラリーを調製した。
スラリー中のトリクロサンの結晶の大きさはスラリー調製後120分において評価2であった。
【0033】
比較例1
実施例1において、エタノールを用いずに、トリクロサンを溶融し、多孔質シリカと混合してトリクロサン含有粉末を得た。この粉末とコロイダルシリカと炭酸カルシウムと水を表1−2に示す割合、装置及び条件で混合し、スラリーを得た。得られたスラリーの粘度は65mPa・sであった。なお、各成分は、トリクロサンを溶融する以外は、実施例1と同様の添加順序でスラリーを調製した。
スラリー中のトリクロサンの結晶の大きさはスラリー調製後60分において評価3であった。
【0034】
比較例2
実施例1において、エタノールの代わりにトリグリセライド(ココナードMT、
花王(株)製)を用いて、トリクロサン含有粉末を得た。この粉末とコロイダルシリカと炭酸カルシウムと水を表1−2に示す割合、装置及び条件で混合したところ、脂浮きが発生した。得られたスラリーの粘度は62.5mPa・sであった。なお、エタノールの代わりにトリグリセライドに溶解した以外は、実施例1と同様の添加順序でスラリーを調製した。
【0035】
比較例3
実施例1において、多孔質無機粉体(多孔質シリカ)の代わりに比表面積が5m2/gの軽質炭酸カルシウムを用いて、トリクロサン含有粉末を得た。この粉末とコロイダルシリカと炭酸カルシウムと水を表1−2に示す割合、装置及び条件で混合し、スラリーを得た。得られたスラリーの粘度は57.5mPa・sであった。なお、各成分は、実施例1と同様の添加順序でスラリーを調製した。
スラリー中のトリクロサンの結晶の大きさはスラリー調製後15分において評価3であった。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の製造方法によれば、非カチオン性殺菌剤を微細にかつ安定して含有する粉末及び顆粒を製造することができることから、非カチオン性殺菌剤含有歯磨き顆粒の製造に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程1:非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解し、これと、比表面積が50〜500m2/gの多孔質無機粉体を混合し非カチオン性殺菌剤含有粉末を得る工程、
工程2:水、水不溶性無機結合剤、水不溶性粉末材料及び工程1で得られた非カチオン性殺菌剤含有粉末を混合してスラリーを得る工程、及び
工程3:工程2で得られたスラリーを乾燥して顆粒を得る工程、
を有する歯磨き顆粒の製造方法。
【請求項2】
前記工程2において、さらに水溶性高分子を混合する、請求項1記載の歯磨き顆粒の製造方法。
【請求項3】
多孔質無機粉体がシリカである、請求項1又は2に記載の歯磨き顆粒の製造方法。
【請求項4】
非カチオン性殺菌剤がトリクロサンである、請求項1〜3のいずれかに記載の歯磨き顆粒の製造方法。
【請求項5】
前記工程2で得られたスラリーのpHを5〜10に調整する、請求項1〜4のいずれかに記載の歯磨き顆粒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られる歯磨き顆粒。
【請求項7】
非カチオン性殺菌剤を炭素数1〜4のアルコールに溶解し、これと、比表面積が50〜500m2/gの多孔質無機粉体を混合する工程を有する、非カチオン性殺菌剤含有粉末の製造方法。
【請求項8】
非カチオン性殺菌剤がトリクロサンである、請求項7記載の非カチオン性殺菌剤含有粉末の製造方法。

【公開番号】特開2009−62305(P2009−62305A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−230388(P2007−230388)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】