説明

非ステロイド非イオン化親水性薬物の送達系

本発明は、500ダルトンを下回る分子量を有し、および28%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー中に少なくとも0.1重量%の溶解度を有する固体非ステロイド非イオン化親水性薬物を含んでいる徐放性製剤であって、外皮を有する膣装置であり、この装置が、熱可塑性ポリマーで製造される内部区画を含み、このポリマーが、薬物を含有している製剤に関する。このポリマーは、好ましくはエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、500ダルトンを下回る分子量を有する固体非ステロイド非イオン化親水性薬物を含んでいる徐放性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
500ダルトンを下回る分子量を有する固体非ステロイド非イオン化親水性薬物は、毎日の錠剤摂取のための投薬計画を有する多くの治療分野において広く用いられている。毎日摂取しなければならない錠剤の処方に基づくこのような投薬計画の場合、錠剤は忘れられ、この治療での患者の順守は望ましいものとは言えないことがごく一般的である。従って、薬物の患者に優しい徐放性製剤への強い必要性が存在する。一般に、入手可能な多くの徐放性製剤が存在し、これらの大部分は、この製剤の埋め込みまたは注射に基づいている。代替法は、経皮送達用パッチである。注射製剤の一例として、長時間作用リスペリドン(Risperdal Consta(登録商標))がある。Risperdal Consta(登録商標)は、注射部位の痛みの発生を伴う筋肉内投与のための、リスペリドンおよび生物分解性コポリマーを含んでいる微小球の水性縣濁液である。当初遅延段階を伴う実質的なS字状放出プロフィールを有する微小球の調製方法が、US6,596,316に記載されている。Risperdal Consta(登録商標)の典型的な出発用量は、2週間毎に25mgである。個人の応答に応じて、用量は2週間毎に最大50mgに増加させることができる。現在、Risperdal Consta(登録商標)は、12.5mg、25mg、37.5mgおよび50mg注射の強度において入手し得る。この製品は、経口製剤よりも小さい血漿薬物変動しか引き起こさない。これらの微小球からのリスペリドンの有意な放出は、1回目の注射の3週間後に開始され、このようにして経口抗精神病薬の投与が、この期間中に必要である。定常状態血漿濃度には、4回目の注射後に到達する。長時間作用リスペリドンの効果は、注射後少なくとも2週間持続し、この時間は、リスペリドンを含んでいる微小球の分解のために必要とされる。明らかに、これらの患者の投薬治療は、副作用の場合、2週間のこの期間中に中断することはできない。排出は、最後の注射の7から8週間後に完了する(Harrison,T.S.およびGoa,K.L.著、「Long−acting risperidone:review of its use in schizophrenia」、CNS Drugs(2004年)、18巻:113−132ページ)。
【0003】
US2003/0153983は、埋め込み可能な医療装置であって、装置上での、およびこの装置の環境中での微生物成長への抵抗性、およびこの装置への微生物付着への抵抗性を与える装置について記載している。US4,469,671において、生物不溶性生体適合性ポリウレタンおよびアクロシン阻害剤、例えばアルキルもしくはアルケニルスルフェートの塩を含んでいる、膣内使用のための避妊具が記載されている。癌の治療のための薬理学的に活性な化合物または医薬的に許容される付加塩を含んでいるエラストマー膣リングが、US5,558,877に記載されている。抗菌剤の膣内送達系のエラストマーマトリックス型が、WO02/076426に記載されている。US4,016,251は、薬物を含有し、および拡散による薬物の通過に対して透過性のあるエチレン−酢酸ビニルの造形体からなる薬物送達装置を開示している。
【0004】
精神治療薬物治療のようないくつかの分野において、徐放のための膣送達系を考察することは非常にまれである(WO03/055424)。むしろこの投与経路は、もっぱら女性の治療を目的とするホルモン避妊計画またはホルモン補充療法にとって許容し得るように見える。一般に膣送達装置は、例えばUS4,292,965、WO97/02015、WO2004/103336およびEP0876815に例示されているような、避妊用途のための疎水性ステロイド薬物の送達のための婦人科学の分野において周知である。避妊膣リングは、オランダ国のOrganonによってNuvaring(登録商標)という商標で販売されている。このようなリングは、高力価ステロイドの投与を目的として設計されており、これについての0.01から0.5mg/日程度の薬物送達率は通常、有利な治療効果を得るのに十分である。しかしながら、500ダルトンを下回る分子量を有する固体非ステロイド非イオン化親水性薬物については、局所的に送達されるべき治療的有効量ははるかに高く、通常、一日0.1から60mg程度の範囲にある。女性の使用者のために独自に意図されているわけではない薬物の女性の使用のみのために薬物製剤を製造することは珍しいが、それにも関わらず、膣送達装置の形態でこれらの親水性薬物のための徐放性製剤を提供することは、非常に有利である。一例として、ミルタザピンは、女性においてより頻繁に発生する治療的適応症のために用いられ、従って女性のためにのみ用いることができる徐放性製剤は依然として、当分野への重要な貢献である。例えば鬱病の治療のためのもう1つの薬物であるフルオキセチンHClは、膣送達系の形態における徐放性製剤への使用のために提案されてきた(WO03/055424)。記載されている装置は、薬物製剤を受け取るために表面中に1以上の通路、即ち薬物製剤を受け取るためにリング中に成形されたポケットを含む、またはより高い用量送達のために中空トロイドポリジメチルシロキサン管を含んでいる。WO2005/004837は、分散された活性剤を含有するタンクおよびこのタンクを不連続に取り囲んでいるシースを有する装置について記載している。WO0170154は、オキシブチニン組成物を含んでいる、リング中に配置された孔を有するシロキサンエラストマー膣リング装置であって、これらの孔が、リングの表面からリングの中に通っている装置を開示している。非ステロイド薬物については、ポリシロキサンポリマーの選択は、これらの高い薬物溶解度、およびポリシロキサンポリマーの周知の高い透過性に関する(A.D.Woolfson,R.K.Malcolm,R.J.Gallagher著、「Journal of Controlled Release」91巻(2003年)465−476ページ)。これに加えて、ポリシロキサン中の同じ型の分子の拡散係数は典型的には、ポリ酢酸ビニルコポリマー(ポリ−EVA)に見られる拡散係数よりも100から200倍高い(「Treatise on controlled drug delivery;fundamentals,optimization,applications」、A.Kydonieus編集,Marcel Dekker Inc.New York、1992年。「Typical diffusion coefficient for steroids」、66−67ページ)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,596,316号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0153983号明細書
【特許文献3】米国特許第4,469,671号
【特許文献4】米国特許第5,558,877号
【特許文献5】国際公開第02/076426号パンフレット
【特許文献6】米国特許第4,016,251号
【特許文献7】国際公開第03/055424号パンフレット
【特許文献8】米国特許第4,292,965号
【特許文献9】国際公開第97/02015号パンフレット
【特許文献10】国際公開第2004/103336号パンフレット
【特許文献11】欧州特許第0876815号
【特許文献12】国際公開第2005/004837号パンフレット
【特許文献13】国際公開第0170154号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Harrison,T.S.およびGoa,K.L.著、「Long−acting risperidone:review of its use in schizophrenia」、CNS Drugs(2004年)、18巻:113−132ページ
【非特許文献2】A.D.Woolfson,R.K.Malcolm,R.J.Gallagher著、「Journal of Controlled Release」91巻(2003年)465−476ページ
【非特許文献3】「Treatise on controlled drug delivery;fundamentals,optimization,applications」、A.Kydonieus編集,Marcel Dekker Inc.New York、1992年。「Typical diffusion coefficient for steroids」、66−67ページ
【発明の概要】
【0007】
予期せぬことに、膣送達系の形態にある徐放性製剤が、500ダルトンを下回る分子量を有し、薬物の高い放出率の点で優れた薬物送達特徴を有し、当初のバースト放出をほとんど欠いており、実質的に一定の放出率を、高い薬物原料効率および1週間から1ヶ月までの使用時間と組み合わせて有する非ステロイド非イオン化親水性薬物であって、先行技術において教示されているようなポリシロキサンの使用を避けることによって、本発明による送達系における最適な機械的性質、特に柔軟性を有する薬物のために調製されることが今や発見された。
【0008】
本発明は、500ダルトンを下回る分子量を有し、および28%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー中の少なくとも0.1重量%の溶解度、外皮、および内部区画を有する固体非ステロイド非イオン化親水性薬物を含んでいる膣装置であって、この内部区画が熱可塑性ポリマーで製造され、このポリマーが薬物を含有している装置を提供する。この内部区画は、管類のような中空構造を含有していない。溶解度は、Laarhoven,J.A.H vanら著、(2002年)、International Journal of Pharmaceutics 232巻、165ページに記載されているように測定される。好ましくは外皮は実質的に、内部区画全体を覆う連続カバーである。内部区画が、親水性薬物5から80重量%を含有する時、良好な結果を得ることができる。好ましくは内部区画は、固体親水性薬物を含有しないコアを含んでいる。好ましくは内部区画、および/または外皮、および/またはコア、またはこれらの3つすべては、エチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造される。より具体的な実施形態において、6から40%の範囲内の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーが用いられる。
【0009】
本発明の有利な特徴は、この装置が、押出し技術を用いて容易に製造することができ、リングの形態で製造されるならば、小さい断面直径を考慮して柔軟性があるということである。これに加えて、本発明による徐放性製剤は、高用量の放出に対して本来安全な設計を有する。内部区画中のコアの適用によって、この系は、改良された放出効率を可能にする。コアの適用はまた、放出動力学に有意に影響を与えることなく、快適性(異物感)および保持に対して関連があるこの系の機械的性質を調節することも可能にする。
【0010】
本発明による徐放性製剤は、注射による投与と比較して、非侵襲性投与、水性媒質へのこの製剤の暴露の時に直ちに薬物放出を与えること、膣からのこの系の除去後、薬物送達の即座の中断という利点を有し、このことは、不十分な治療効果または治療中の重大な副作用に関連した理由で、開業医が治療を中断または変更する動機を有する場合に特に有利である。
【0011】
固体形態の親水性薬物の存在は、放出の間、この薬物の十分および連続的供給を与え、固体形態は、製造の間この装置の外側での薬物の結晶化を防ぐ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による3層の(コアを含んでいる)膣送達系の横断面図である。
【図2】約7.5mg/日の2から14日目の平均放出での3層リングのミルタザピンのインビトロ放出曲線を示している(バッチ16、10、7および13)。
【図3】約15mg/日の2から14日目の平均放出での3層リングのミルタザピンのインビトロ放出曲線を示している(バッチ11、18および6)。
【図4】2つの開いた「リング末端」を有するロッドに切断されたリングと比較した、本発明による膣リングのミルタザピンの放出率を示している(バッチ2)。
【図5】実質的に一定の放出を有する、本発明による膣リングのミルタザピンの放出率を示している(バッチ11および20)。
【図6】外皮材料の様々な酢酸ビニル含量での、含有されている膣リングのリスペリドンのインビトロ放出率を示している(バッチ3、9および10)。括弧内の数字は、コポリマーの重量%酢酸ビニルを指す。
【図7】外皮厚さ50μm(バッチ3)および200μm(バッチ1)、および外皮材料としてEVA28を有する膣リングのリスペリドンのインビトロ放出率を示している。
【図8】中間層中にリスペリドン40%(バッチ7)および60%(バッチ3)を含有する膣リングのインビトロ放出率を示している。
【図9】内部区画が、薬物20重量%(バッチA1)、50重量%(バッチC1)、60重量%(バッチD3)および70重量%(バッチE1)を含んでいる(341μmの中間層厚さ)3層リングのミルタザピンのインビトロ放出率(IVR)を示している。
【図10】内部区画が、薬物40重量%(バッチB4)、60重量%(バッチD4)および70重量%(バッチE2)を含んでいる(682μmの中間層厚さ)3層リングのミルタザピンのインビトロ放出率(IVR)を示している。
【図11】内部区画が、薬物60重量%を含み、外皮材料がEVA28(バッチD3)およびEVA15(バッチD7)である3層リングのミルタザピンのインビトロ放出率(IVR)を示している。
【図12】それぞれ9μmおよび4μmの断面直径を有するシリコーンリングおよびEVAリングの側面図を示している。
【図13】54μmの外径を有する、ミルタザピンシリコーンリングおよびミルタザピンEVAリングの上からの図面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語の説明
明確化のために、および/または本発明のより具体的な実施形態を規定するために、「親水性」薬物という用語は、C.F.Lerkら著、J.Pharm.Sci.(1977年)、66巻:1480ページに記載されているように決定された場合、90度未満、または60度未満、または50度未満、または40度未満、または30度未満、または20度未満の接触角を有する薬物としてさらに特定することができる。非イオン化薬物とは、遊離塩基形態の薬物を意味する。薬物の塩は、本発明による徐放性製剤による送達には適切でない。
【0014】
膣装置とは、女性の膣中への挿入のための薬物送達系を意味する。この系は好ましくはリングの形態を有し、従ってこの送達系は、2つの末端が互いに接合されている細長い形状を有する。このリングは、1以上のループを含んでいてもよく、これらのループは様々な形状、例えば卵形、楕円形、トロイダル、三角形、正方形、六角形、八角形などを有してもよい。または、本発明によるこの系は螺旋形状であり、これは、1超のループ、および互いに接合されていない2つの末端を有する繊維螺旋の形状を意味する。
【0015】
連続外皮とは、この外皮が区画を含有している薬物を連続的に取り囲んでおり、外皮中に薬物の放出のために明確に備えられた部分を欠いていることを意味する。このようにして、膣組織と薬物区画との間の直接接触は、局部刺激を避けるために最小限にされる。この外皮は、偶発的な開口部のみが存在することがあり、例えば螺旋形状系の末端、または製造の間のせん断による、またはリング末端の不完全な閉鎖による開口部のみが存在し得るが、このような開口部は、外皮を通る薬物の通過を容易にするために外皮中に意図的に導入されたわけではないという意味で、実質的に連続している。外皮材料がいくつかの溶解薬物を含み得るということは、除外されない。
【0016】
この装置の内部区画は、患者へ送達されることになる薬物を含有し、外皮により覆われている区画である。従って膣組織と内部区画との間に直接接触は存在しない。外皮は、膣組織を内部区画中の濃縮薬物からの望ましくない局部的作用から保護するバリヤーである。内部区画は、熱可塑性ポリマーによって形成されている。
【0017】
コアは、内部区画中の内部構造であり、内部区画中の薬物含有空間を減少させるのに役立つ。コアは固体薬物を含有しない。しかしながら、コア材料がいくらかの溶解薬物を含み得ることは除外されない。薬物が、生産プロセスの間に内部区画の中に負荷される時、いくらかの薬物がコア中に入ることもある。コアは、いずれかの適切な材料、例えば金属、ポリマーまたは内部区画用に用いられているポリマーと同じ材料から製造されてもよい。コアはまた、この装置の強度または柔軟性に寄与することがあり、放出効率の増加にも寄与し得る。別の文脈において、内部区画はまた、コアが装置中に存在する時に中間層とも呼ばれる。
【0018】
本発明は、1週間から1もしくは2ヶ月までの使用期間中に、0.1から60mg/日の範囲内の薬物の送達率を提供する。
【0019】
この発明による系における徐放に適した薬物は、次のものからなる群から選択された薬物である。即ちビタミンK類似体、例えばフェンプロクモン;冠状動脈の治療用の薬物、例えばニコランジル;亜硝酸塩および硝酸塩、例えばイソソルバイド−5−モノニトラートおよびニトログリセリン;抗凝固剤、例えばアセノクマロールおよびジピラミドール;不整脈治療剤、例えばフレカイニド;抗高血圧剤、例えばモキソニジンおよびミノキシジル;利尿剤、例えばトリアムテレンおよびヒドロクロルチアジド;β遮断薬、例えばアテノロール;カルシウム拮抗薬、例えばイスラジピン;ACE−遮断薬、例えばトランドラプリル;抗トリコモナス剤、例えばチニダゾール;抗真菌薬、例えばクロトリマゾール、ミコナゾール、ソリフェナシンおよびジノプロストン;抗炎症剤、例えばテノキシカム;抗菌剤、例えばメトロニダゾールおよびニトロフラントイン;失禁薬、例えばオキシブチニン;局所麻酔薬、例えばレボブピバカイン、リドカインおよびブピバカイン;麻薬性鎮痛薬、例えばピリトラミド、フェンタニル、デクストロモラミダム、ブプレノルフィンおよびトラマドール;非麻薬性/解熱薬、例えばナプロキセン、イブプロフェンおよびメタミゾール;片頭痛薬、例えばフルナリジン;抗パーキンソン薬、例えばビペリデンおよびトリヘキシフェニジル;抗精神病薬、例えばアリピプラゾール、リスペリドン、セルチンドール、オランザピン、ケチアピン、ベンペリドール、ハロペリドール、フルスピリレン、ブロムペリドール、チオチキセン、ペリシアジン、ピモジド、ピポチアジンおよびペンフルリドール;抗うつ剤、例えばパロキセチン、ドキセピンおよびミルタザピン;全身抗ヒスタミン薬、例えばロラチジン、デスロラチジン、ステミゾール、キサトミドおよびテルフェナジン;抗喘息薬、例えばサルブタモール;抗ウイルス薬、例えば化学名N−[4−クロロ−3−(3メチル−2−ブテニルオキシ)フェニル]−2−メチル−3−フラノ−カルボチアミドを有するUC781およびTMC120;腫瘍薬、例えばシスプラチンである。
【0020】
ビタミンK拮抗薬、例えばフェンプロクモンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。冠状動脈の治療のための薬物、例えばニコランジルを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。亜硝酸塩もしくは硝酸塩、例えばイソソルバイド−5−モノニトラートおよびニトログリセリンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗凝固剤、例えばアセノクマロールおよびジピラミドールを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗不整脈剤、例えばフレカイニドを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。
【0021】
抗高血圧薬、例えばモキソニジンおよびミノキシジルを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。利尿剤、例えばトリアムテレンおよびヒドロクロルチアジドを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。β遮断薬、例えばアテノロールを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。カルシウム拮抗薬、例えばイスラジピンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。ACE−遮断薬、例えばトランドラプリルを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗トリコモナス剤、例えばチニダゾールを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。
【0022】
抗真菌薬、例えばクロトリマゾール、ミコナゾール、ソリフェナシンおよびジノプロストンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗炎症剤、例えばテノキシカムを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗菌剤、例えばメトロニダゾールおよびニトロフラントインを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。失禁に対する薬物、例えばトルテロジンおよび特にオキシブチニンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。局所麻酔薬、例えばレボブピバカイン、リドカインおよびブピバカインを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。麻薬性鎮痛薬、例えばピリトラミド、フェンタニル、デクストロモラミダム、ブプレノルフィンおよびトラマドールを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。非麻薬性/解熱薬、例えばナプロキセン、イブプロフェンおよびメタミゾールを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。片頭痛薬、例えばフルナリジンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗パーキンソン薬、例えばビペリデンおよびトリヘキシフェニジルを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗精神病薬、例えばアリピプラゾール、リスペリドン、セルチンドール、オランザピン、ケチアピン、ベンペリドール、ハロペリドール、フルスピリレン、ブロムペリドール、チオチキセン、ペリシアジン、ピモジド、ピポチアジンおよびペンフルリドールを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗うつ剤、例えばドキセピン、ミルタザピンおよび特にパロキセチンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。全身抗ヒスタミン薬、例えばロラチジン、デスロラチジン、ステミゾール、キサトミドおよびテルフェナジンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。抗喘息薬、例えばサルブタモールを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。
【0023】
抗ウイルス薬、例えば化学名N−[4−クロロ−3−(3メチル−2−ブテニルオキシ)フェニル]−2−メチル−3−フラノ−カルボチアミドを有するUC781、TMC120(ダピビリン)およびテノビルを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。腫瘍薬、例えばシスプラチンを含んでいる、上記のような送達系を提供することが、本発明の1つの具体的な実施形態である。
【0024】
本発明の特徴は、次の説明およびこれの使用によって理解され、影響され得る。即ちフィックの拡散の法則が、化合物の放出を支配している。膣リングは、円筒形タンク/膜設計であり、これの放出率は、下の方程式によって説明され得る。従って適切なリングは、放出率に影響を与えるパラメーターの適切な選択によって作ることができる。
【0025】
円筒形タンク/膜設計の放出率は、次のとおりである。
【0026】
【数1】

L=円筒の長さ
=外皮ポリマー中の化合物の拡散係数
p/s=外皮と内部区画との間の化合物の分配係数
ΔC=外皮の近くの内部区画とシンクとの間の溶解薬物の濃度差
=全体の半径、即ち外皮を含む断面直径
=内部区画の半径(即ちr/r=1)、またはコア+内部区画の半径(即ちr、コアを含んでいるリング)。
【0027】
この方程式は、この方程式の右手側の項が一定である、即ち時間の関数でない時にゼロ次放出が得られることを示している。
【0028】
図2および図3において、7.5から25mg/日のミルタザピンの放出率、および図6から図8において、0.4から約4から5mg/日のリスペリドンの放出率は、実質的に連続的に内部区画を覆っている外皮を有する本発明による装置を用いて得られることが示されている。
【0029】
外見上、1つの薬物例および具体的実施形態として、内部区画のエチレン−酢酸ビニル(EVA)中のミルタザピンおよびリスペリドンの溶解度は、これらの薬物についてのΔCが、急速な放出動力学を提供するのに十分なほど高いようなものである。薬物の高い放出率を有するほぼ定常状態における実質的に一定のΔCの維持、即ち低いバリヤー特性を有する比較的薄い外皮の存在下においてこの装置からの実質的に一定の薬物送達の維持における限定要因は、内部区画と外皮との間の界面への溶解薬物の供給である。供給(または供給率と呼ばれる。)は、ポリマー中への薬物の溶解率を含む要因によって決定された複合塊体輸送プロセスの結果であり、これ自体は、ポリマー中への薬物の溶解度、およびポリマーへ暴露された薬物の表面積によって決定される。後者は、粒子サイズ、形状および薬物含量によって決定される。同様に、ポリマーを通る薬物の拡散率は、溶解および放出率にとって重要な要因である。内部区画中にミルタザピンもしくはリスペリドン約40から80重量%を有する装置は、急速な放出率を提供するのみならず、5から約40%を含んでいる装置と比較した時、これに加えて、有意により線形もしくは実質的に一定の放出動力学を提供することが発見された。
【0030】
40重量%を上回るポリマー中の薬物含量の場合、薬物粒子は、内部区画のポリマー中で互いに近くにあってもよいと考えられる。ポリマー中の分散された固体粒子によって形成された構造は、薬物含量に応じており、これに加えて粒子サイズおよび形状に応じる。薬物放出の間、内部区画の特性自体は、薬物粒子の遅い溶解によってやがて変化し、外見上は、薬物溶解および輸送率を促進し、その結果、実質的に一定の高い放出率を生じる。おそらくは、ポリマー中に空隙を残す、徐々に溶解する粒子による、ポリマー中への改良された拡散経路の形成、およびこれらの空隙を水で満たす、内部区画中への外皮を通る水性液体の同時流は、高いレベルの薬物含量での実質的に一定の放出の獲得における重要な要因である。
【0031】
本発明の送達装置において、薬物はすべてのポリマー層中に存在する。この系の製造プロセス中の薬物が、内部区画中に負荷される時、薬物は、生産プロセスの間、および/またはこの系の貯蔵の間、平衡濃度まで1または複数の他のポリマー層へ拡散する。
【0032】
コアを含んでいるリングの概念と一致して、コアを伴わないリングについては、拡散距離の延長もまたできるだけ小さく保たれるべきであり、活性化合物もまた、本質的にゼロ次放出動力学を得るために固体形態で存在すべきである。内部区画の断面直径を比較的小さく保つことによって、コアを伴わないリングの場合の拡散距離の延長を比較的小さく保つことができる。このような小さい直径はまた、内部区画の比較的小さい容積を結果として生じ、従って意図された使用期間の間放出を持続させるのに必要とされる活性化合物の量が、高濃度において内部区画中に負荷される。
【0033】
コアを伴わないリングの内部区画中の活性化合物の高濃度はまた、大きい直径のリングにおいても得ることができるが、このことは、活性化合物の大過剰の使用を必要とする。即ち意図された使用期間にわたって放出を持続させるのに必要とされるよりもはるかに多く必要とされ、従ってこれは、低い放出効率とともに、経済的および環境的にあまり魅力的でない用量を結果として生じる。
【0034】
コアを伴わないリングの小さい内部区画容積と同様に、コアを含んでいるリングの小さい内部区画容積は、加工処理の間、比較的小さいポリマー容積中に活性化合物を濃縮する目的に役立つ。
【0035】
本発明による膣送達系は、1週間から1ヶ月までの使用期間の間、0.1から60mg/日の範囲内の薬物の放出率を提供し得る。好ましくはこの率は、0.5から20mg/日、最も好ましくは2から20mg/日の範囲内にある。
【0036】
本発明による薬物送達系の製造に用いることができる熱可塑性ポリマーは原則として、製薬用途に適したいずれの押出し可能な熱可塑性ポリマー材料であってもよく、例えばエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマー、低密度ポリエチレン、ポリウレタンおよびスチレン−ブタジエンコポリマーであってもよい。好ましい実施形態において、エチレン−酢酸ビニルコポリマーが、この優れた機械的および物理的性質によって用いられる。EVAコポリマーは、コア、中間区画(内部区画)ならびに外皮のために用いられてもよく、あらゆる商業的に入手可能なエチレン−酢酸ビニルコポリマー、例えば商品名Elvax、Evatane、Lupolen、Movriton、Ultrathene、AtevaおよびVestyparとして入手可能な製品であってよい。これらのエチレン−酢酸ビニルコポリマーは、このコポリマー中に存在する酢酸ビニルの量に関して異なるグレードで入手可能である。例えばEVA28は、28%の酢酸ビニル含量を有するコポリマーである。
【0037】
1つの実施形態において、少なくとも外皮は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造される。さらなる実施形態において、コア、内部区画および外皮、または内部区画および外皮(コアを伴わないリングにおいて)は、エチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造されており、これらのコポリマーは各々、同一または異なるグレードのものであってもよい。
【0038】
別の実施形態において、内部区画は、同じグレードのエチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造されている。しかしながら、内部区画のために異なるポリマーグレードを選択することによって、リングの柔軟性の微調整が可能である。外皮の厚さおよび外皮の酢酸ビニル含量は、活性成分の放出率に影響を与える。外皮が厚くなればなるほど、および外皮の酢酸ビニル含量が高くなればなるほど、活性成分の放出率は高くなる。
【0039】
1つの実施形態において、6%から40%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーが用いられる。別の実施形態において、6%から33%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーが用いられる。さらなる実施形態において、6%から28%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーが用いられる。さらに別の実施形態において、9%から28%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーが用いられる。さらなる実施形態において、コアはEVA28またはEVA33で製造される。別の実施形態において、外皮は、6%から28%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーで製造される。さらに別の実施形態において、外皮は、9%から28%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマー、例えばEVA9、EVA15、EVA18、EVA28またはEVA33で製造される。用いられるEVAコポリマーの酢酸ビニル含量が低ければ低いほど、これで製造される膣リングの剛性が高くなることは当分野で公知である。さらにはより大きい断面直径もまた、より高い剛性、即ちより低い柔軟性を結果として生じる。
【0040】
本発明の膣リングは、公知押出し方法、例えば同時押出しおよびブレンド押出しによって製造することができる。薬物を含んでいる内部区画用の材料を得るために、薬物がEVAコポリマーと混合される。混合プロセスにおける主要工程は、ブレンド押出しである。その後、薬物/EVAコポリマー混合物は、コアおよび外皮材料とともに3層(コアを含んでいる)繊維として同時押出しされる。または薬物/EVAコポリマー混合物は、外皮材料とともに2層繊維(コアを伴わないリング)に同時押出しされる。この工程後、薬物は、EVAコポリマー中に一部溶解される。コポリマー中の薬物の溶解度は、用いられるEVAコポリマーの酢酸ビニル含量によって決定される。溶解されないいずれの薬物材料も、内部区画中の固相として存在する。この固相は、薬物の溶解相と平衡状態にあり、このようにして、速度制御外皮層に近い、溶解活性物質の一定濃度を与える。このようにして得られた3層または2層繊維は、所望の長さの部品に切断され、各部品は、当業者に公知の適切な任意の方法でリング形状の装置に集成される。次いでこれらのリングは、場合により滅菌または消毒された後、例えば適切なサシェに包装される。
【0041】
押出しの当業者であれば、当分野において公知の方法および手順、およびこの出願において示された説明および実施例に基づいて、薬物を含有する3層もしくは2層繊維の製造のために、最適な加工処理条件を見つける上で、例えば押出し温度、押出し速度およびエアギャップの決定において何の問題もない。ミルタザピン/EVAコポリマー混合物のブレンド押出しに適した温度は、80℃から110℃の範囲内にあり、例えば約100℃である。3層もしくは2層繊維の同時押出しに適した温度は、80℃から110℃、例えば90℃から110℃の範囲内にある。リスペリドン/EVAコポリマー混合物のブレンド押出しに適した温度は、80℃から140℃の範囲内にあり、例えば約90℃である。3層もしくは2層繊維の同時押出しに適した温度は、80℃から140℃の範囲内にある。
【0042】
薬物/EVAコポリマー混合物の押出しに好ましい温度は、この薬物の融点を下回る、即ちミルタザピンについては120℃を下回る、リスペリドンについては170℃を下回る温度である。押出しの間の薬物の融解は、この薬物の遅延結晶化のような現象に導くことがある。本発明による徐放性製剤の製造において、固体非ステロイド非イオン化親水性薬物の結晶質形態が好ましい。
【0043】
このようにして、例えば薬物0.1から60mg/日の範囲内で放出する薬物の一定放出率を有する膣リングを製造することができる。
【0044】
本発明による膣リングは、あらゆる実際的サイズで製造することができる。1つの実施形態においてこのリングは、約50から60mm、別の実施形態において約52から56mmの外径を有する。さらなる実施形態において、断面直径は、約2.0から6.0mm、なおさらなる実施形態において約2.5から5.0mm、別の実施形態において約3.0から4.5mmであり、さらに別の実施形態においてこれは約4.0mmである。
【0045】
1つの実施形態において、内部区画中に含有された薬物の量は、5から80重量%、別の実施形態において10から70重量%、さらに別の実施形態において30から70重量%、さらなる実施形態において40から65重量%、なお別の実施形態において55から65重量%である。
【0046】
別の実施形態において、外皮は、9%から28%の酢酸ビニル含量を有するEVAコポリマーで製造されており、薬物含有内部区画中に含有されている薬物の量は、40から65重量%である。さらに別の実施形態において、外皮は15から33%の酢酸ビニル含量、30から200μmの範囲内の厚さを有するEVAコポリマーから製造されており、内部区画のコポリマーは酢酸ビニル28から33重量%を含有し、薬物含有内部区画中に含有されている薬物の量は、30から65重量%である。
【0047】
1つの実施形態において、本発明による薬物送達系は、円筒内部区画およびこの内部区画を覆っている外皮とからなる円筒繊維である。特別な実施形態において、このような円筒繊維の断面直径は、約2.5から6mm、具体的な実施形態において約3.0から5.5mm、別の実施形態において約3.5から4.5mm、さらに別の実施形態において4.0から5.0mmである。1つの実施形態において、この繊維の表面積は、800mm超であり、別の実施形態において1,000mm超であり、さらなる実施形態において1,700から2,200mm程度である。有意により大きい表面積が可能であるが、ただし、膣使用のために意図された薬物送達系の設計(物理的寸法)が、患者にとっての不都合を防ぐという条件がある。
【0048】
1つの実施形態において、前記外皮は20から200μm、別の実施形態において20から100μmの範囲内の厚さを有する。なおさらなる実施形態において、前記外皮は20から70μmの範囲内の厚さを有する。なおさらなる実施形態においても、内部区画のコポリマーは、酢酸ビニル18から33重量%を含有する。さらなる実施形態においても、内部区画のコポリマーは、酢酸ビニル28から33重量%を含有する。なおさらなる実施形態においても、内部区画のコポリマーは、酢酸ビニル33重量%を含んでいる。
【0049】
本発明は、薬物が中間層に入っている本発明の3層薬物送達系の製造方法であって、
(i)薬物含有均質ポリマー中間層粒質物を生成する工程;
(ii)ポリマーコア粒質物および中間層粒質物を、ポリマー外皮粒質物とともに同時押出しして、3層薬物送達系を形成する工程、
(iii)この繊維をリールに収集し、本発明による徐放性製剤を形成する工程
を含む方法を提供する。
【0050】
薬物含有均質ポリマー中間層粒質物の生成は、
a.ポリマーを粉砕する工程;
b.粉砕されたポリマーと、中間層中に負荷されることになるリスペリドンとを乾燥粉末混合する工程;
c.結果として生じた粉末混合物をブレンド押出しする工程;
d.結果として生じた、薬物含有ポリマーストランドを顆粒に切断し、これによって中間層粒質物を得る工程;
e.この中間粒質物を潤滑剤で潤滑化する工程
を含む。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明は、次の実施例によって例証される。
【実施例1】
【0053】
ミルタザピンを含有する3層膣リングの調製
3層膣リングの調製は、いくつかの工程からなっていた。第一に、ミルタザピンおよびEVA33コポリマーを含有する内部区画粒質物は、前混合、ブレンド押出しおよびステアリン酸マグネシウムでの潤滑化によって、従来の方法で製造された。第二に、EVA28のコア材料が、供給されたままの材料を潤滑化することによって調製された。その後、内部区画粒質物、コア粒質物およびEVA28の薬物非含有外皮材料(表1:A11参照)が、3層繊維として同時押出しされた。この繊維は、下記のような特定長さの繊維へ切断され、この後、繊維末端がリングへ溶接された。
【0054】
内部区画材料は、所望量の成分(即ち60重量%ミルタザピンおよび40重量%EVA33)をステンレス鋼ドラムへ添加し、その後この粉末混合物が、Rhonradで47rpmで60分間ドラムを回転させることによって予め混合されて調製された。その後この粉末混合物は、Berstorff ZE25同時回転二軸スクリュー押出し機へ供給され、110℃の押出し温度でブレンド押出しされた。ブレンド押出しは、ミルタザピンがEVAコポリマー中に均質に分散されているストランドを結果として生じた。その後これらのストランドは、内部区画粒質物へ粒状化された。同時押出しの前、中間層粒質物は、0.1重量%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化され、ステンレス鋼ドラムにおいてRhonrad(バレル−フープ原理)で47rpmの固定回転速度で60分間均質化された。
【0055】
コア粒質物(EVA28)もまた、0.1重量%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化され、ステンレス鋼ドラムにおいてRhonrad(バレル−フープ原理)で47rpmの固定回転速度で60分間均質化された。
【0056】
同時押出し構成は、外皮材料を加工処理する15mm外皮押出し機、コア材料を加工処理する18mmコア押出し機およびブレンド押出し機によって送達される内部区画粒質物を加工処理する18mm内部区画押出し機からなっていた。メルト流は、紡糸口金において組み合わされ、その結果3層外皮−内部区画−コア繊維を生じた。3つのメルト流すべての容積流量は、一組の別々の紡糸ポンプによって制御された。約105から115℃の押出し温度、および1から2m/分の押出し率が用いられた。押出しは、約4mmの直径値、内部区画については約300μmの値、および約30μmの外皮厚さを有する3層繊維を生じる。繊維は、水浴中で室温に冷まされ、リールに巻き取られた。繊維は、半自動カッター(Metzner)を用いて、または手で157mmの繊維として切断され、その後繊維は、130℃でリングとして溶接された。
【0057】
【表2】

【0058】
外皮および内部区画について様々な材料および厚さを含有する3層リングが製造された(表1参照)。すべてのバッチは、EVA28コアを有していた。
【0059】
ミルタザピンを含有する、コアを含んでいるリングのインビトロ放出率
膣リングのインビトロ放出率プロフィールが、37℃で水中において2から4週間テストされた。バッチ7、10および16の結果が図2に、バッチ6、11および18の結果が図3に示されている。これらの図面中の結果は、外皮および内部区画についての材料、外皮および内部区画の厚さ、および薬物の濃度(重量%)を変えることによって(表1)、約7.5mg/日(図2)および15mg/日(図3)の2から14日目の平均放出率を得ることができることを明らかに示している。約25mg/日の実質的に一定の放出率が図5に示されており、ここでは、バッチ10および20での放出結果が比較されている。
【0060】
ミルタザピンを含有する、コアを含んでいるリングの定常状態放出率
【0061】
【表3】

【0062】
結論
図2および図3に示されているような膣リングのインビトロ放出率プロフィールは、最初の2から4日後の比較的高い率の後、放出は、14日までの期間一定の放出率で長期にわたった。当初の高い率は、使用中に所望の血漿レベルに迅速に達するための負荷用量と考えることができ、明らかに組成パラメーターに応じており、微調整することができる。約7.5mg/日(表2:7、10および16)および15mg/日(表2:6、11および18)の2から14日目の平均放出が得られた。
【0063】
約25mg/日の実質的に一定の放出率が図5に示されている。
【実施例2】
【0064】
用量大量放出(dumping)のリスクについてのテスト
37℃での水中インビトロ放出調査において、本発明による膣リングのミルタザピン放出率が、2つの開いた「リング末端」を有するロッドに切断されたリングと比較される。インビトロ結果が、図4に図示されている。放出率は有意に影響されたわけではないことが明らかに示されており、用量大量放出が発生しなかったことを示している。外見上、本発明による装置の設計は、ミルタザピンのような薬物を含んでいる高用量薬物送達系の用量大量放出問題を本質的に防ぐ。
【実施例3】
【0065】
リスペリドンを含有する3層膣リングの調製
3層膣リングの調製は、いくつかの工程からなっていた。第一に、リスペリドンおよびEVA33コポリマーを含有する内部区画粒質物は、前混合、ブレンド押出しおよびステアリン酸マグネシウムでの潤滑化によって、従来の方法で製造された。第二に、EVA28のコア材料が、供給されたままの材料を潤滑化することによって調製された。その後、内部区画粒質物、コア粒質物および外皮材料が、3層繊維として同時押出しされた。この繊維は、下記のような特定長さの繊維へ切断され、この後、繊維末端がリングへ溶接された。
【0066】
内部区画材料は、所望量の成分をステンレス鋼ドラムへ添加し、その後粉末混合物が、Rhonradで47rpmで60分間ドラムを回転させることによって予め混合されて調製された。その後この粉末混合物は、Berstorff ZE25同時回転二軸スクリュー押出し機へ供給され、80℃の押出し温度でブレンド押出しされた。ブレンド押出しは、リスペリドンがEVA33コポリマー中に均質に分散されているストランドを結果として生じた。その後これらのストランドは、内部区画粒質物へ粒状化された。同時押出しの前、中間層粒質物は、0.1重量%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化され、ステンレス鋼ドラムにおいてRhonrad(バレル−フープ原理)で47rpmの固定回転速度で60分間均質化された。
【0067】
コア粒質物EVA28もまた、0.1重量%ステアリン酸マグネシウムで潤滑化され、ステンレス鋼ドラムにおいてRhonrad(バレル−フープ原理)で47rpmの固定回転速度で60分間均質化された。
【0068】
同時押出し構成は、外皮材料を加工処理する15mm外皮押出し機、コア材料を加工処理する18mmコア押出し機、およびブレンド押出し機によって送達される内部区画粒質物を加工処理する18mm内部区画押出し機からなっていた。メルト流は、紡糸口金において組み合わされ、その結果3層外皮−内部区画−コア繊維を生じた。3つのメルト流すべての容積流量は、一組の別々の紡糸ポンプによって制御された。約90℃の押出し温度が用いられた。押出しは、約4mmの直径値を有する3層繊維を結果として生じた。繊維は、水浴中で室温に冷まされ、リールに巻き取られた。繊維は157mmの繊維として切断され、その後繊維は110℃でリングとして溶接された。
【0069】
外皮および内部区画について様々な材料および厚さを含有する3層リングが製造された(表3参照)。
【0070】
【表4】

【実施例4】
【0071】
リスペリドンを含有する3層膣リングのインビトロ放出
リスペリドンを含有する3層膣リングのインビトロ放出が、水中で(pH4.4において緩衝された。)、37℃で少なくとも24日間測定された。コアを含んでいる、生成されたリスペリドンリングの寸法は、表3に反映されている。
【0072】
3層膣リングの放出率は、薬物濃度、外皮厚さおよび材料を選択することによって調整することができる。これらのバッチについての平均放出率が、表4に示されている。
【0073】
【表5】

【0074】
外皮材料の酢酸ビニル含量の影響が、表6に示されている。放出率はまた、図7に示されているように、膣リングの外皮厚さによっても影響される。図8は、内部区画層中の薬物濃度の影響を示している。これらの図面は、当初バースト放出をほぼ欠いているリスペリドンの高い放出率および実質的に一定の放出率を得ることができることを示している。
【実施例5】
【0075】
ミルタザピン20から70重量%が負荷された3層リングのインビトロ放出(341μmの中間層厚さ)
【0076】
【表6】

【0077】
結論
ポリマー中の薬物負荷の効果が表9に示されている。放出率は、中間層においてミルタザピン50重量%および60重量%が負荷されたリングの場合、長い日数にわたってより一定であり、かなり大きい。
【0078】
ミルタザピン40から70重量%が負荷された3層リングのインビトロ放出(682μmの中間層厚さ)
【0079】
【表7】

【0080】
結論
682μmのより厚い中間層を用いた、ポリマー中の薬物負荷の効果が図10に示されている。放出率は、中間層においてミルタザピン60重量%が負荷されたリングの場合、長い日数にわたってより一定であり、かなり大きい。
【0081】
外皮材料EVA28(バッチD3)およびEVA15(バッチD7)を有するミルタザピン60重量%が負荷された3層リングのインビトロ放出
【0082】
【表8】

【0083】
結論
外皮材料についてEVA28と比較したEVA15の使用の効果が、図11に示されている。長期間にわたる、より一定であるが依然として高い放出率が、EVA15外皮材料でのリングについて観察される。
【実施例6】
【0084】
ミルタザピンEVAリングとミルタザピンシリコーンリングとの比較
寸法/外見
図12および図13において、シリコーンリングおよびEVAリングの典型例が示されている。外径は同一であるが、シリコーンリングの断面直径は、EVAリング(4mm)と比較して実質的により大きい(9mm)。
【0085】
リングの剛性
リングの剛性が、圧縮テストによって決定される。リングサンプルが、2つのホルダー間に弛緩状態で(約54mmの距離)配置される。2つのホルダーは、50mm/分の速度で、これらのホルダーが約21mmの距離を有するまで互いに対して動かされる。リングを圧縮する力が、様々な圧縮の時に記録される。
【0086】
表8は、EVAリングの2つの代表的バッチおよび4つの異なるシリコーンリングの結果を示している。
【0087】
【表9】

【0088】
結論
シリコーンリングは、EVAリングよりもはるかに剛性である。シリコーンリングを圧縮する力は、EVAリングと比較して約3から4倍高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
500ダルトンを下回る分子量を有し、および28%の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマー中に少なくとも0.1重量%の溶解度を有する固体非ステロイド非イオン化親水性薬物(薬物は、膣徐放性製剤を用いて一日60mg以下の量で治療的に有効である。)を含んでいる徐放性製剤であって、製剤が外皮を有する膣装置であり、ならびに装置が、熱可塑性ポリマーで製造される内部区画を含み、ポリマーが薬物を含有していることを特徴とする、製剤。
【請求項2】
ポリマーが、5から80重量%の薬物を含有していることを特徴とする、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
外皮が実質的に連続的であることを特徴とする、請求項1または2に記載の製剤。
【請求項4】
装置がリングであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
内部区画が、固体薬物を含有していないコアを含んでいることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
内部区画が、エチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の系。
【請求項7】
外皮が、エチレン−酢酸ビニルコポリマーで製造されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の系。
【請求項8】
6から40%の範囲内の酢酸ビニル含量を有するエチレン−酢酸ビニルコポリマーが用いられることを特徴とする、請求項6または7に記載の系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−510286(P2010−510286A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537627(P2009−537627)
【出願日】平成19年11月21日(2007.11.21)
【国際出願番号】PCT/EP2007/062626
【国際公開番号】WO2008/062008
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(398057282)ナームローゼ・フエンノートチヤツプ・オルガノン (93)
【Fターム(参考)】