説明

非ゼラチン化デンプンを含む咀嚼可能な軟カプセル

薬物または食物のカプセル化に適した咀嚼可能な軟カプセルフィルム、およびそのようなフィルムからカプセルを製造する方法。このようなカプセルは、口腔における速い破裂、良好な食感および咀嚼可能性、ならびにシェル組成物の迅速な溶解を実際に示す。特に、化工デンプンは、1つには少なくとも加工処理温度により実質的に非ゼラチン化されており、水和を促進するための保水剤として作用することができる。さらに、ゼラチンは、当技術分野で以前に経験したよりも薄い壁厚で製造することができる丈夫なカプセルをもたらすブルームの強度に選択される。したがって、このように薄いカプセルは、同じ大きさの伝統的なカプセルよりも重量が少なく、より厚い咀嚼可能なカプセルよりも速く溶解する。このカプセルは、ロータリーダイ方法により、咀嚼可能な軟カプセルに対して一般的に知られているものよりも速い速度で製造され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相当量の非ゼラチン化デンプンを含む軟ゼラチンカプセル、およびそれを配合するための方法に関し、特に、可食の咀嚼可能な軟カプセルの製造を含めた、商業生産に十分な構造および安定性の両者を有する軟ゼラチンカプセルを製造する組成物および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬理学的に活性のある物質を投与するための通常の経路には、錠剤、丸剤、およびカプセル剤のようなよく知られている形態を含む複数の経口用投与形態がある。このような投与形態は、一般的にかなり便利であり、貯蔵上および輸送上安定であり、使用者によく知られている。しかし、これらには問題がないわけではなく、これらの問題は重大であることが多い。殆どの者には、これらの経口用投与形態のいずれも、補足の水なしに飲み込むことは大変難しい。このテンポの早い世の中では、経口用の薬物とともに補足の水を摂取しなければならないことは不便または面倒であることが多い。このような困難は、例えば小児および高齢者など、飲み込む上で困難のある者にとってはさらに大きくなる。パーキンソン症候群または他の神経学的病状など、ある種の医学的状態により、補足の水があっても経口用投与形態を飲み込むのが困難となる。
【0003】
さらに、経口用投与形態をそのまま飲み込むことは、投与形態の胃腸管での溶解、および薬物の吸収が関与する変数の複雑系に影響を与える。
【0004】
したがって、経口用薬物および有効成分のいわゆる胃に到達する前の吸収、すなわち胃の前の消化管の部分からの有効成分の吸収にかなりの関心が寄せられている。「胃に到達する前の吸収」には、したがって、頬側、舌下、口咽頭、および食道の吸収が含まれる。このような胃に到達する前の吸収により吸収された薬物は、全身性の循環系に直接入り、そのために肝臓における初回通過代謝を避ける。したがって、この方法で吸収される物質のバイオアベイラビリティも、上昇することがある。これは、このような物質は所望の薬効は依然として生じながら投与量を減少させることができ、また投与量をこのように減少させることにより望ましくない副作用を相応に減少させることができることを意味している。Duggerへの米国特許第6110486号に記されているように、現在の研究では、特に、頬粘膜を介した吸収は、錠剤、丸剤、またはカプセル剤の形態の薬物に利用できない、しばしば正当に評価されない経口投与の経路を表す。溶解可能な薬物のための投与経路として働くことができる、直腸または膣の粘膜などの非経口粘膜性の吸収部位も存在する。
【0005】
さらに、広範な食品、および口臭除去剤などの口腔衛生製品は明らかに経口的に施される。ゼラチンを含む組成物は、このような材料を運ぶために広く使われている。ゼラチンは、通常このような製剤で利用されており、皮、腱、靭帯、および骨など、動物のコラーゲン組織、または温水魚類および冷水魚類の様々なコラーゲン性の部分を部分的に加水分解することにより得られるタンパク質と定義されている。特に口臭除去剤を施すために、薄いゼラチン片が使用されているが、これらは薄片が運ぶことができる有効成分の量に限定されている。口内で破けることができ、咀嚼により少なくとも部分的に溶解するゼラチンカプセルに多くの研究がつぎこまれている。当技術分野では様々な組成のゼラチンカプセルが広く知られているが、一般的には、ゼラチン、可塑剤または可塑剤類、および水の様々な混合物が混合される。
【0006】
ゼラチンカプセルの製剤には、あるテンションすなわち、その投与、安定性、および貯蔵が常に存在しており、カプセルを施す際にゼラチン含有量が比較的高く可塑剤および最終水分含量が比較的低いと取扱い上の特徴は一般的に促進されるが、咀嚼可能性、食感、およびその結果として顧客の容認性は、ゼラチン含有量が低くなり可塑剤および最終水分含量が高くなるほど、一般的に助長される。一般的に「硬」ゼラチンカプセルと命名される、そのまま飲み込むようにデザインされたカプセル、または口中で破けその後飲み込まれるようにデザインされたソフトゲルカプセルでは、このテンションは比較的小さい。しかし、口中で破け咀嚼により完全にまたは殆ど完全に溶解するようにデザインされたカプセル、すなわち所謂「咀嚼可能な軟」ゼラチンカプセルでは、このテンションを解くのは難しい。このような真の「咀嚼可能な軟」カプセルは、心地よい咀嚼経験、および口腔内での短時間における完全または殆ど完全な溶解の両者により、特に特徴付けられる、一種の軟ゼラチンカプセルである。このようなカプセルは、ロータリーダイカプセル化の間の過剰な粘着性、およびカプセル化後処理の間の他のカプセルへの製品の粘着など、特有の製造上の問題点によっても特徴付けられる。最終水分含量が高いゼラチンカプセルは、通常、貯蔵性能が劣り、バルク包装で相互に粘着し、貯蔵中に溶解または漏出することが多い。
【0007】
Borkanらへの米国特許第4935243号は、水分を約30%未満含み、好ましくは約20〜26%含む咀嚼可能なゼラチンカプセル組成物を開示しており、水素添加したデンプン加水分解物の使用を目的としており、これは予測よりも低い最終水分含量を可能にした。Ebertらへの米国特許第4532126号は、37%程度に高い水分含量で形成される軟ゼラチンカプセルの例を開示しているが、これらのカプセルは、次いで所望の咀嚼上の特徴を得るために、いくつかの非開示の最終水分含量まで引き続き乾燥すると明記されている。
【0008】
Miskelらへの米国特許第3851051号は、最初のカプセルシェルの水分含量が28.3と36.6%の間である軟ゼラチンカプセルの数々の実施形態を開示しているが、次いで、水分含量が15〜20%である内部のゲル格子組成物と平衡になるまでカプセルを乾燥することをさらに開示している。Overholtへの米国特許第6258380号では、最初に水分が30重量%程度である湿性塊からカプセルを製造するが、次いで水分6%〜8%まで引き続き乾燥する。
【0009】
水分含量の効果に加えて、カプセルの咀嚼可能性は、カプセル化方法で用いられるゼラチンのブルームの強度および融点により影響を受ける可能性がある。一般的に、ブルームの強度がより低く、融点のより低いゼラチンには、好ましい感覚受容性の特質がある。
【0010】
Makinoへの共同所有の米国通常特許出願第10/456450号は、ゾル-ゲル転移温度が低い、すなわち比較的融点の低い魚類ゼラチンを用いて、高度の水和を達成した。しかし、このような製剤は、高温度または高湿度で貯蔵する場合に問題となる可能性がある。例えば、35℃を超える貯蔵温度で安定な、魚類ゼラチンのカプセルを配合することは大変難しい。このように融点の低いゼラチンで製造したカプセルは、貯蔵中に粘着性になる傾向があり、破裂し、または融解し、内容物を放出することさえあり得る。一方、哺乳動物のゼラチンの中には、融解温度が60℃を超えるものもあり、より高い貯蔵温度でさらにより安定である傾向があるが、しばしば感覚受容性特質がより劣る傾向があることが知られている。本発明の背後にある研究は、ブルームの強度が低く、融点が低く、かつ/または水分含量が高い魚類ゼラチンにみられる優れた感覚受容性を維持しつつ、ブルームの強度がより高く哺乳動物起源のゼラチンを少なくとも部分的に探究することにより、熱安定性を増加させるという目標を遂行するようにデザインされた。
【0011】
要するに、当技術分野では、最終水分含量の高いカプセルに見られるのと同様の感覚受容性特性を有する、すなわちカプセルが包装され販売可能になる時点で水分含量が高いカプセルである、商業上許容できる、咀嚼可能なゼラチンカプセルの製剤のための材料および方法が必要とされていた。これは、そのような製剤での正常範囲内であるカプセルの水分レベルを維持しつつ、ゼラチン、可塑剤、およびデンプン成分を操作することにより達成するべきである。さらに、これらのカプセルの水分含量は過剰に高いわけではないが、合理的に予測される貯蔵時間および貯蔵条件下で安定性を示さなければならない。
【特許文献1】米国特許第6110486号
【特許文献2】米国特許第4935243号
【特許文献3】米国特許第4532126号
【特許文献4】米国特許第3851051号
【特許文献5】米国特許第6258380号
【特許文献6】米国通常特許出願第10/456450号
【特許文献7】米国特許第6340473号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、その最も全般的な構成においては、様々な新しい可能性で現況技術を進歩させ、新しい新規な方法で従来の材料および方法の欠点の多くを克服するものである。本発明は、その最も全般的な意味においては、数々の一般的に効果的な組成物および方法のいずれにおいて従来技術の欠点および限界を克服するものである。本発明は、そのような可能性を実証し、従来の組成物および方法の欠点の多くを新しい新規な方法で克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、感覚受容性特性が改良された、すなわち、使用者にとって感覚的な印象が改良され、水分含量が高く、咀嚼可能な軟ゼラチンカプセルを提供する。そのカプセルおよび配合方法は、数ある中で、起源、ブルームの強度、ならびにゼラチンおよびゼラチンの混合物の融点の操作、保水剤として実質的に非ゼラチン化されたデンプンの使用、カプセル化方法で使用するための予想よりも薄いゼラチンフィルムの製造、最終水分含量を高くするための部分的のみの乾燥、ならびに抗粘着、およびおそらくは活性のある表面処理剤でのカプセルの粉付けを含む多元的な取組みにより達成する。以下に詳しく述べるように、このような表面処理剤は、デンプンなどの複数の乾燥した物質を含み、または種々のロウ、液体、およびポリオールの適用を含むことがある。表面処理剤は、不活性であり、粘着性に対抗するためのみにデザインされてもよく、カプセル化のいくつかの局面を増強し、補足し、または改善するために作用してもよく、あるいはカプセルに対する望ましい着香料として単に作用してもよい。この多元的な取組みおよび例示的な実施例を、以下に詳しく述べる。
【0014】
カプセルフィルムから形成されるカプセルシェルを含む、可食の咀嚼可能な軟ゼラチンカプセルをここに開示し、このカプセルフィルムは、約29重量%のゼラチン、約11重量%のヒドロキシプロピル化デンプン、約33重量/重量%のグリセリン、および約27重量%の水を含む湿性塊を有する。
【0015】
カプセルフィルムから形成されるカプセルシェルを含む、包装準備のできた完成したゼラチンカプセルをここにさらに開示し、完成したカプセルシェルは、ゼラチンの約20から55重量%の少なくとも1つのゼラチン、約19〜40重量%の可塑剤、および約5〜35重量%の少なくとも1つの化工デンプンを含む最終組成物を有する。
【0016】
さらに、可食の化合物のためのベースゼラチンを選択するステップと、温度制御された混合ユニットにベースゼラチンを配置するステップと、所定量の精製水を混合ユニットに加えてゲル塊を生成するステップと、このゲル塊を65℃を超えない温度に維持するステップと、所定量の少なくとも1つの所定のデンプンと所定量の少なくとも1つの可塑剤を、別々の容器中で混合してスラリーを生成するステップと、スラリーをゲル塊に移してカプセル化製剤を生成するステップと、この製剤を約65℃未満の温度に維持するステップと、真空を適用して製剤を脱気するステップと、この製剤を温度制御された容器に移し、その温度を約65℃未満に維持するステップと、前記製剤を加工処理のためにロータリーダイカプセル化機に移すステップとを含むカプセルを形成するための、可食の化合物を製造するための方法をここに開示する。
【0017】
第1の所定の速度で、第1の所定の厚さを有する連続する第1のゼラチンリボンを、周囲の温度未満に冷却した第1の所定の温度の第1のキャスティングドラムにキャストするステップと、第2の所定の速度で、第2の所定の厚さを有する連続する第2のゼラチンリボンを、周囲の温度未満に冷却した第2の所定の温度の第2のキャスティングドラムにキャストするステップと、第1のゼラチンリボンと第2のゼラチンリボンとを結合させてゲルポケットを形成し、充填材料をゲルポケット中に注入して、新たに形成されたゼラチンカプセルを製造するステップと、新たに形成されたカプセルを加工処理して表面の粘着性を低下させるステップとを含む、ロータリーダイカプセル化方法をさらにここに開示する。
【0018】
本発明に有用な可塑剤は、従来技術でよく知られたものであり、ソルビトール、グリセリン、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどが含まれる。
【0019】
より好ましい一実施形態では、ゼラチンはカプセルの20〜40重量%、より好ましくは7〜30重量%を含む。本発明のさらなる一実施形態では、ゼラチンは、ウシゼラチン、または魚類およびウシのゼラチンの混合物、または複数の魚類ゼラチンの組合せであってよい。
【0020】
本発明に有用な打ち粉は、カプセルが共に粘着するのを防ぐための、キャンデー業界で周知の、あらゆる菓子製造材料またはデンプン材料であってよい。打ち粉は、デンプン、最も好ましくはタピオカデンプンであってよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の、水分含量の高い、咀嚼可能なゼラチンカプセルにより、当技術分野において著しい進歩が可能となっている。この機構の好ましい実施形態は、以前は利用不可能であったが好ましく望ましい性能を実証している新しい新規の要素の組合せによりこれを達成する。
【0022】
以下に述べる詳細な説明は、本発明の現在好ましい実施形態の説明のみを意図したもので、本発明が構築され、または利用されることがある唯一の形態を表すことを意図するものではない。この説明は、列挙された実施形態と関連して本発明を実行するデザイン、機能、手段、および方法を述べている。しかし、本発明の精神および範囲内に包含されることが、また、意図される様々な実施形態により、同様または同等の機能および特徴が達成されることがあることを理解すべきである。
【0023】
論じたように、咀嚼可能な軟カプセルを製造する際に感覚受容性を改善する重要な方法は、完成製品にできるだけ高い割合の水分を維持することであった。この目的を達成するのは難しいことが証明されている。ゼラチンカプセルの水分含量が増加すると、ますます壊れやすく、粘着性で不安定になる。したがって、本発明は、カプセルの感覚受容性特性およびその安定性を最大にするために、カプセル化方法のカプセルの材料も製造方法も変更する多元的な取組みを組み合わせているものである。
【0024】
カプセル製剤の変更
ゼラチンの起源、ブルームの強度、および融点
ゼラチン含量は少なくとも20と55重量%の間で、可塑剤、デンプン、および水など、組成物における他の材料のレベルを変化させることにより、様々な特徴のゼラチンカプセルを製造できることが見出されている。例えば、可塑剤は、少なくとも19〜40重量%、デンプンは少なくとも5〜35重量%の含有量で利用することができる。しかし、ゼラチンは天然由来の生物学的物質であり、均一ではなく、また、ゼラチンの起源、ブルームの強度、および融点などの因子は、その感覚受容性および性能の特徴において、ゼラチンから形成されるカプセルに大きな影響を与えることも見出されている。したがって、これら魚類ゼラチンのカプセルの感覚受容性特性を維持する改良されたゼラチンカプセルを配合することを目標にして、以下に詳しく述べる基本的なカプセルフィルム製剤における他の変数とともに、ブルームの強度が様々で、それ故に本来融点のより高い魚類ゼラチン、哺乳動物のゼラチン、および魚類ゼラチンと哺乳動物のゼラチンとの組合せで実験を行った。
【0025】
保水剤としての実質的に非ゼラチン化されたデンプンの使用
Tannerらへの米国特許第6340473号('473)は、軟ゼラチンカプセルの製造において、補助剤としてカラギーナンと共に化工デンプンの使用を教示している。カラギーナンと、少なくとも1.5:1、好ましくは1.5:1から4:1の好ましい範囲の比では、化工デンプンはカラギーナンと相互作用をして、カプセル化ステップの間に可逆的に引き伸ばすことができるフィルムを生成することが見出されており、さらに、温度制御されたキャスティング表面から除去するのに十分な構造、弾力性、および強度を有するフィルムに形成することができる。デンプンは、当技術分野では、保水剤として作用できることがよく知られているので、様々なゼラチンの組合せの可塑性および感覚受容性特性を改良するための補助剤として、比較的少量の化工デンプンを利用して実験を行った。加工処理の間常に、溶解したカプセルフィルムとカプセルは、化工デンプンのゲル化温度である65℃より低く保たれ、そのためデンプンはマトリックス形成剤としてではなく保水剤として作用する。このプロセスでは、本発明の温度は65℃より低く、相当量のデンプンは粒状形態のままである。このような粒状のデンプンは、崩壊剤としてさらに作用することができ、非ゼラチン化デンプンは水和の間膨張することができるので、この膨張はカプセルフィルムの破れを増加させるために作用することができる。
【0026】
図1に見られるように、本発明による代表的サンプルの偏光顕微鏡写真は、結晶デンプン粒により表された特定の複屈折パターンによる、ゼラチンフィルムマトリックスにおける非ゼラチン化デンプンの、典型的な「マルタクロス」の外観を示している。図2に見られるようにヨウ化カリウムで染色してデンプン粒を黒色に染色した代表的サンプルの光学顕微鏡写真は、ゼラチンフィルムマトリックス中に比較的厚く散乱しているデンプン粒を示している。非ゼラチン化デンプンの量を非公式に評価すると、製剤における全デンプンの50%に近い、またはそれを超えることさえあることを示している。
【0027】
ゼラチンフィルムの薄層化
当技術分野では、より薄いフィルムは口腔で比較的容易に水和することができるため、ゼラチンフィルムが薄いほど、所与のブルームの強度のゼラチンでは、より厚いフィルムよりも、経口での溶解が速いことが知られている。また、ゼラチンのブルームの強度が増すほど、そのようなゼラチンからキャストされるリボンの強度も増す。したがって、ブルームのより高いゼラチンを使用することによりゼラチン強度が増したので、より薄いゼラチンフィルムをキャストして同時に実験を行った。これは、1つには、水、または12℃より低い範囲の温度、好ましくは8℃から10℃までの範囲に冷却した空気のいずれかを用いてキャスティングドラムを冷却することによって行った。驚くべきことに、保水剤として実質的に非ゼラチン化したデンプンの使用と組み合わせてより強いゼラチンを使用すると、以下に詳しく述べるように、より薄いリボン厚でも比較的丈夫なフィルムが生成され、また、いくつかの実施形態では、ロータリーダイカプセル化機が、他の咀嚼可能な軟カプセル製剤にみられる約2.0RPMという伝統的な限界を優に超える3.5RPMまでの速度で運転できる。さらに、本発明により形成されるカプセルは、1つには、シール面積対カプセル壁厚の比が比較的高いことによりもたらされる、大変丈夫なシールを有することが見出された。例えば、カプセルシール面積が0.010インチに及ぶということは、全壁厚0.020の厚さのカプセルの半分であるが、全壁厚0.030の厚さのカプセルの3分の1にすぎないことを意味している。
【0028】
比較的高い最終水分含量までの部分的乾燥
軟ゼラチンカプセルは、伝統的に、業界標準の6%〜10%の最終水分含量まで乾燥する。ゼラチンカプセルは、このレベルを優に超える水分含量で伝統的に製造され、次いで、例えば、Overholtへの米国特許第6258380号のように乾燥するが、この場合、カプセルは最初30重量%程度の水分であり、引き続き水分6〜8%まで乾燥する。しかし、水分含量が著しく高いカプセルの食感および咀嚼可能性は改良されたことを実験は示していた。このように水分含量の高いカプセルは粘着性で、共に容易に凝集する傾向があることが注目された。本発明による代表的なサンプルを試験したところ、最終的な最終水分含量は約9.5%〜11.5%であることが示された。実験は、これらのカプセルを湿度の低い雰囲気中で伝統的な形態の乾燥に曝すよりも、本明細書に記載した大体の最終水分含量までカプセルを軽く回転乾燥機で乾燥し、次いで、以下に詳しく述べる様々な表面処理を施して水分含量の高いカプセル化の構造上の効果を改善することに向けられた。
【0029】
これらの表面処理は、カプセルの水分含量を低下させる必要なしにカプセルの表面粘着性を低下させる、打ち粉の形態の効果的な抗粘着コーティングを含むことができる。このような表面処理は、デンプンなど、複数の乾燥した物質を含んでもよく、または種々のワックスや液体の適用を含んでもよい。表面処理剤は、不活性で、粘着性に対抗するためのみにデザインされてもよく、カプセル化のいくつかの局面を増強し、補足し、もしくは改善するように作用してもよく、またはカプセルに望ましい着香料として単に作用してもよい。これらの投与形態の部分として運ぶことができる物質の数およびタイプを増加させることができる、有効成分を有するコーティングまたは打ち粉の使用にも注目は向けられている。
【0030】
表面処理
回転乾燥プロセスの後、カプセルは艶出しパンまたは自動並列粉付けシステムのいずれかに移され、そこで製品は、典型的にはバレイショまたはトウモロコシのデンプンであるが、タピオカデンプン、小麦粉、ワキシーコーンスターチパウダー、および部分的アルファ化デンプン粉もまた効果的である、デンプンの層でコーティングされる。次いで、カプセルの相互の粘着性を最小にするデンプンの一様なコーティングを生成するために、カプセルを回転乾燥機にかける。物質は、また、先に詳述した静電気のコーティングプロセスにより施してもよく、乾燥打ち粉の代わりに用いられるワックス、液体、ポリオール、または他の物質を含んでもよい。
【0031】
回転乾燥後、カプセルを振動性のふるい上に移し、そこで振動させて過剰のコーティング物質を除去する。次いで製品を金属探知機を通過させて製品の汚染の機会を最小にし、次いでバルク包装する。デンプンがないとカプセルには著しい粘着性があるが、0.5%のレベルのデンプンによりカプセルの粘着を防止する上でよい結果が得られる。
【0032】
驚くべきことに、ある種の充填物を含む、例えば4号丸型カプセルなど、ある種の比較的小型のカプセルは、表面処理を施す前にいかなる乾燥も必要としないことがあることが見出された。このような場合には、このようなカプセルを製造から表面処理に、次いで包装に直接移動することにより、加工処理の時間および費用を大幅に節約することができ、したがって伝統的な乾燥ステップをなくすことができる。
【0033】
(実施例)
実験1
【0034】
【表1】

【0035】
通常よりも水分含量の高いゼラチンカプセルに向けた実験を、中程度のブルームの強度(200ブルーム)を示す魚類ゼラチンで行った。後の実験では、比較的高いブルームの強度(275ブルーム)のゼラチンも優れた結果を与えることが見出された。対象のゼラチンを、プロセス温度を維持するために混合ユニットで混合した。比例量の精製水をユニットに移し、55℃に加熱した。真空下で、比例量の必要とされる魚類ゼラチンを、加熱した精製水に移した。塊を55℃に維持し、澄明な溶液が得られるまで、約30分混合した。別の容器に、必要とされる量のデンプンまたはデンプン類(例示によるもので限定するものではないが、ヒドロキシプロピル化デンプンが良好に働くことが見出された)を、必要とされる量の可塑剤(グリセリン)に加え、可塑剤/グリセリンのスラリーを混合し、このスラリーを魚類のゲルに移した。他の好適な可塑剤には、それだけには限定されないが、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ショ糖、マンニトール、コーンシロップ、フルクトース、セルロース、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、1,2-プロピレングリコール、グリセロールのモノ、ジ、またはトリ酢酸エステル、および天然ゴムが含まれる。得られた塊を絶えず撹拌し、製品の温度が55℃に達するまで加熱した。真空を適用して塊を脱気し、塊を適するジャケット付き容器に移し、製品の温度を50℃と55℃の間に維持した。ブレンダーを使用して、任意選択の色素、着香料、および甘味料を加えた。
【0036】
ロータリーダイカプセル化機を用いて、スプレッダーボックス(spreader boxes)を38℃から45℃に維持し、キャスティングドラムを8℃と12℃の間に冷却し、注入ウェッジを28℃から35℃の温度に維持して、ゼラチン塊を製造した。ロータリーダイカプセル化機は最高2.5RPMの様々な機械速度で運転し、自動レベリングガイドバーを用いてリボン厚を0.025〜0.028インチに維持した。この製剤は、より高速またはリボン厚がより薄いキャスティングドラムから剥離する際に良好に機能しなかったことが見出された。形成されたカプセルは、回転乾燥機で乾燥して、水分活性を38%〜45%(Aw 0.38〜0.45)の間に低下させた。乾燥機中の時間は、カプセルサイズおよびシェル重量にしたがって変動し、4号丸型カプセルでは10〜12分程度、16号オーバル型カプセルでは最高12〜15分であった。回転乾燥機の乾燥プロセスの後、カプセルを艶出しパンまたは自動並列粉付けシステムのいずれかの中に移し、そこで製品は、デンプンの層、典型的にはバレイショまたはトウモロコシデンプンであるが、タピオカデンプン、小麦粉、ワキシーコーンスターチパウダー、および部分的アルファ化デンプン粉もまた効果的である、デンプンの層でコーティングされる。特に、微細グレードのタピオカデンプンでは優れた結果が得られた。次いで、相互のカプセルの粘着を防止するデンプンの一様なコーティングを生成するために、カプセルを回転乾燥機にかける。上記に例示した粉付け材料の他に、粉付け材料は有効成分を組み入れることができる。このような有効物質は、薬用カプセルの場合には、カプセルの薬用充填物のいくつかの局面を、増強し、補足し、または改善するためのような薬物を含んでもよい。非薬用カプセルの場合、例えば、例示によるものでそれだけには限定されないが、着香料および口腔清涼剤を含む。さらに、当技術分野ではよく知られているように、ある種の香料化合物は、例えば、カプセルシェルのゼラチン鎖の架橋を増加させるなど、カプセル自体の構造に影響を及ぼす傾向があり、そのような香料は、この架橋効果を最小にし、それによって製品の安定性を上昇させる傾向があることが知られている香料または他の群から選択してもよい。
【0037】
カプセルは、製品2〜4kgあたり約5グラムのデンプンで粉付けする。粉付けプロセスを自動化するために、機械の粉付けレベルをカプセルサイズに関して予め決定されたパラメータにより調節して、自動並列粉付けシステムを使用してもよい。カプセルを振動篩上に移し、そこで振動させて過剰のコーティング材料を除去する。製品を、次いで、製品の汚染の機会を最小にするために金属探知機を通過させ、次いでバルク包装する。
【0038】
【表2】

【0039】
製品デザインの形状に関するカプセル外観、破裂時間、崩壊、平衡、相対湿度、および水分活性の初期の測定を行った。形状を視覚的に評価し、カプセルが最初に製造された形態および質感を保っていた場合はカプセルは適合していると判断した。カプセルの崩壊および破裂時間は、欧州薬局方第4版に規定されている試験法にしたがって評価した。破裂時間は、カプセルシールが開き、肉眼で見える量の液体内容物がシェルから出るのが見えるのに要する時間と定義される。崩壊時間は、ゼラチンカプセルシェル全体が水媒体中で溶解するのに要する時間と定義される。
【0040】
Rotronic(スイス、Rotronic AGより入手可能)水分活性計を用いて、最終相対湿度(ERH)および水分活性を測定した。カプセルを、様々な温度および相対湿度で、密封したアンバージャーに安定させて置き、同様の試験パラメータにしたがって、定期的に試験した。
【0041】
【表3】

【0042】
【表4】

【0043】
【表5】

【0044】
【表6】

【0045】
【表7】

【0046】
【表8】

【0047】
【表9】

【0048】
【表10】

【0049】
ゼラチンカプセルは、速い破裂および迅速な溶解など、良好な感覚受容性特質を予測する傾向にある、優れた試験特質を示した。8週間にわたる安定性試験プログラムで、破裂時間および崩壊時間の初期の値を上回るわずかな延長がみられた。平衡相対湿度および水分活性により測定した水和の安定性は、試験を行ったサンプルすべてにわたり比較的一定であった。試験を行った最高温度および最高相対湿度の条件では、カプセルの維持に困難があった。35℃、60%RHの貯蔵条件下では、カプセルは共に凝集する傾向があり、いくつかの製剤では溶解する傾向もあった。溶解とは言えない重度の凝集でも商業上不利益であり、カプセルは最も厳しい貯蔵条件に耐えることが望ましいので、カプセルを、実験1でみられた望ましい感覚受容性特性を失わずにそのように厳しい貯蔵条件に対して強化しようとしてさらなる実験を行った。
【0050】
実験2
ゼラチンの組成を変更し、しかし他の点では実験1の製剤の割合を維持するために実験を行った。したがって、ゼラチンが溶解物の29重量/重量%を含む組成物を、275ブルームの強度の魚類ゼラチン(バッチTB087〜89)、150ブルームの石灰化牛皮ゼラチン(バッチTB090〜92)、および275ブルームの強度の魚類ゼラチン(全組成物の8%)と150ブルームの石灰化牛皮ゼラチン(全組成物の21%)との組合せを利用して試験した。カプセルは、以下の製剤によるペパーミント(構造(structured))オイルおよびペーストを含む、様々な充填物を利用して配合した。
【0051】
【表11】

【0052】
【表12】

【0053】
プロセス温度を維持するために、対象のゼラチンまたはゼラチン類を混合ユニットで混合した。比例量の精製水をユニットに移し、55℃に加熱した。真空下で、比例量の必要とされる魚類ゼラチンまたはゼラチン類を加熱した精製水に移した。この塊を55℃に維持し、澄明な溶液が得られるまで、約30分混合した。別の容器で、必要とされる量のデンプンまたはデンプン類を、必要とされる量の可塑剤(グリセリン)に加え、可塑剤/グリセリンのスラリーを混合し、このスラリーをゼラチン混合物に移した。得られた塊を絶えず撹拌し、製品の温度が55℃に達するまで加熱した。真空を適用して塊を脱気し、この塊を適切なジャケット付き容器中に移し、製品の温度を50℃と55℃の間に維持した。ブレンダーを使用して、任意選択の着色、香料、および甘味料を加えた。
【0054】
ロータリーダイカプセル化機を用いて、スプレッダーボックスを38℃から45℃に維持し、キャスティングドラムを8℃と12℃の間に冷却し、注入ウェッジを28℃から35℃の温度に維持して、ゼラチン塊を製造した。ロータリーダイカプセル化機は、最高3.5RPMの様々な機械速度で運転され、自動レベリングガイドバーを用いてリボン厚を0.015インチ程度の薄さに維持した。形成されたカプセルを回転乾燥機で乾燥させて、水分活性を38%〜45%(Aw0.38〜0.45)の間に低下させた。乾燥機中の時間は、カプセルサイズおよびシェル塊にしたがって変動し、4号丸型カプセルでは10〜12分程度、16号オーバル型カプセルでは最高12〜15分であった。回転乾燥機の乾燥プロセスの後、カプセルを艶出しパンまたは自動並列粉付けシステムのいずれかの中に移し、そこで製品は、典型的にはバレイショまたはトウモロコシのデンプンであるが、タピオカデンプン、小麦粉、ワキシーコーンスターチパウダー、および部分的アルファ化デンプン粉もまた効果的である、デンプンの層でコーティングされる。特に、微細グレードのタピオカデンプンでは優れた結果が得られた。次いで、カプセルの相互の粘着を防止するデンプンの一様なコーティングを生成するために、カプセルを回転乾燥機にかける。上記に例示した粉付け材料の他に、粉付け材料は有効成分を組み入れることができる。このような有効成分は、薬用カプセルの場合には、カプセルの薬用充填物のいくつかの局面を、増強し、補足し、または改善するような薬物を含んでもよい。非薬用カプセルの場合は、例えば、例示によるものでそれだけには限定されない、着香料および口腔清涼剤を含む。さらに、当技術分野ではよく知られているように、ある種の香料化合物は、例えば、カプセルシェルのゼラチン鎖の架橋を増加させるなど、カプセル自体の構造に影響を及ぼす傾向があり、そのような香料は、この架橋効果を最小にし、それによって製品の安定性を増加する傾向があることが知られている香料または他の群から選択してもよい。
【0055】
カプセルは、製品2〜4kgあたり約5グラムのデンプンで粉付けする。粉付けプロセスを自動化するために、機械の粉付けレベルをカプセルサイズに関して予め決定されたパラメータにより調節して、自動並列粉付けシステムを使用してもよい。カプセルを振動篩上に移し、そこで振動させて過剰のコーティング材料を除去する。製品を、次いで、製品の汚染の機会を最小にするために金属探知機を通過させ、次いでバルク包装する。
【0056】
製品デザインの形状に関するカプセル外観、破裂時間、崩壊、平衡、相対湿度、および水分活性の初期の測定を行った。カプセルを、様々な温度および相対湿度で、密封したアンバージャーに安定させて置き、同様の試験パラメータにしたがって、定期的に試験した。
【0057】
【表13】

【0058】
【表14】

【0059】
【表15】

【0060】
【表16】

【0061】
【表17】

【0062】
【表18】

【0063】
実験2の結果および評価
ゼラチンカプセルは、速い破裂および迅速な溶解など、実験1で調製したカプセルでみられたものと同様の良好な感覚受容性特質を予測する傾向がある、優れた試験特質を示した。4週間にわたる安定性試験プログラムのいくつかの実施形態では、破裂時間および崩壊時間の初期値を上回るわずかな延長がみられた。平衡相対湿度および水分活性により測定した水和は、試験を行ったサンプルすべてにわたり時間と共に増加する傾向があった。試験を行った最高温度および最高相対湿度の条件では、カプセルの維持に困難があった。魚類由来のゼラチンのみを含むカプセルの失敗も一部あって、ウシおよび魚類/ウシ組合せの試験を行うことになった。実験1と比べて、この局面に改善があった。実験1の結果を上回る改善では、ほとんどの実施形態は35℃、60%RHの貯蔵条件に耐えることができ、40℃、75%RHの貯蔵条件に耐えたものもあった。特に、ロットTB091(4号丸型ウシゼラチンとペパーミントオイル充填物)およびTB095(2号丸型魚類およびウシの組合せとペパーミントオイル充填物)は、この最高の試験温度/RHで、許容できる試験パラメータを保持した。
【0064】
興味深いことに、ブルームの強度がより高くても、カプセルの性能特徴における多大な差に関連がなく、デンプン、この場合は実質的に非ゼラチン化されたデンプンの効果は、これまで考えられていた効果よりも大きいことを示唆していた。
【0065】
最初は、実験2でブルームの強度のより高いゼラチンを使用することは、ロータリーダイカプセル化方法で用いられる伝統的なリボンよりもキャスティングリボンが著しく薄い可能性を示唆していた。上記に記したように、実験2ではロータリーダイカプセル化機は最高3.5RPMの様々な機械速度で運転され、自動レベリングガイドバーを用いてリボン厚を0.015インチ程度に低く維持した。
【0066】
これは必然的により高いシェル対充填比をもたらすことが予想された。すなわち、カプセル壁が薄くなるほど充填材料が多くなるので、より少ないゲル化カプセル壁材料が各経口投与量に含まれる。表19にみられるように、測定によりこれが確認された。
【0067】
【表19】

【0068】
このようにシェル対充填比が大きくなるほど、各経口投与量に関連したゼラチンの重量は少なくなり、その結果、標準の咀嚼可能のシェルに比べて口腔でカプセルがより速くより容易に破けるようになる。味覚二重盲検法で、感覚受容性の味覚審査員にサンプルを提供する。カプセルはすべて、ラベルなしで、同じペパーミント化合物で充填される。本発明の薄型フィルム技術により、および伝統的な厚さのリボンを用いて標準のカプセル化方法により生成された様々なカプセルサイズを、無作為の方法で試験した。味見者は、薄型フィルムカプセルの感覚受容性特性は概ね改善されている、すなわち、口ざわりは良くなり、溶解しやすさは増強され、口でのゼラチン塊の感触は少なくなったと報告している。
【0069】
製剤にかなりの相違はあるが、味覚審査員は、Makinoへの共同所有の米国通常特許出願第10/456450号の方法により製造されたものに比べて、本発明のカプセルについて好意的に報告している。Makinoのカプセルに関しては、Makinoのカプセルでは軟化する間に0.7%膨張したのに比べて、本発明のカプセルは軟化する間に26.8%の膨張を示すことが観察されたが、これは感覚受容性特性が優れていることを一部説明することができる。さらに、Makinoによるカプセルの軟化範囲が44〜77℃であるのに比べて、本カプセルは34〜139℃の範囲にわたり軟化を示した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の方法および材料により、咀嚼に際し破裂が容易で食感が良好であるなど、良好な感覚受容性特性を有し、ならびに予め決定された貯蔵時間および貯蔵条件下で満足のいく安定性を与えるゼラチンカプセルを形成することが可能になっている。ブルームの強度が通常より高いゼラチンを、実質的に非ゼラチン化したデンプンと組み合わせて利用することにより、伝統的なロータリーダイカプセル化方法を用いて、カプセルが、以前に用いられていたものよりもかなり薄いリボンから製造できるようになっている。このようなカプセルは、柔軟で咀嚼可能であり、シェル対充填の重量比が著しく低く、各経口投与量に関連したカプセル材料の量はより少なくなっている。カプセルは、広範囲の薬物および食物が、口腔で心地よく効果的に投与されることを可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】偏光顕微鏡写真として見た、本発明による一連の代表的サンプルであり、非ゼラチン化デンプン粒の「マルタクロス」を示す図である。
【図2a】光学顕微鏡写真としてみた、本発明による一連の代表的サンプルであり、デンプン粒がヨウ化カリウムで黒色に染色されていることを示す図である。
【図2b】光学顕微鏡写真としてみた、本発明による一連の代表的サンプルであり、デンプン粒がヨウ化カリウムで黒色に染色されていることを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルフィルムから形成されたカプセルシェルを含み、前記カプセルフィルムが、
約29重量%のゼラチン、
約11重量%のヒドロキシプロピル化デンプン、
約33重量/重量%のグリセロール、および
約27重量%の水
を含む湿性塊を有する、可食の咀嚼可能な軟ゼラチンカプセル。
【請求項2】
カプセルフィルムから形成されたカプセルシェルを含み、完成したカプセルシェルが、
約20から55重量%のゼラチンの少なくとも1つのゼラチン、
約19〜40重量%の可塑剤、および
約5〜35重量%の少なくとも1つの化工デンプン
を含む最終組成物を有する、包装準備のできた完成したゼラチンカプセル。
【請求項3】
可塑剤が少なくともグリセリンをさらに含む、請求項1に記載のカプセル。
【請求項4】
可塑剤が少なくともソルビトールをさらに含む、請求項1に記載のカプセル。
【請求項5】
可塑剤が、ポリエチレングリコール、ショ糖、マンニトール、コーンシロップ、フルクトース、セルロース、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、1,2-プロピレングリコール、グリセロールのモノ、ジ、またはトリ酢酸エステル、および天然ゴムからなる群から選択される、請求項2に記載のカプセル。
【請求項6】
前記少なくとも1つのゼラチンがカプセルの約25〜40重量%を含む、請求項2に記載のカプセル。
【請求項7】
前記少なくとも1つの化工デンプンがカプセルの7〜30重量%を含む、請求項2に記載のカプセル。
【請求項8】
前記少なくとも1つのゼラチンが約275ブルームのゼラチンである、請求項2に記載のカプセル。
【請求項9】
前記少なくとも1つのゼラチンがウシゼラチンである、請求項2に記載のカプセル。
【請求項10】
前記少なくとも1つのゼラチンが魚類およびウシのゼラチンの組合せである、請求項2に記載のカプセル。
【請求項11】
前記少なくとも1つのゼラチンが複数の魚類ゼラチンの組合せである、請求項2に記載のカプセル。
【請求項12】
魚類ゼラチン約5〜95重量%、およびウシゼラチン約5〜95重量%を有する、請求項10に記載のカプセル。
【請求項13】
ゼラチンの組合せが、魚類ゼラチン約25〜35重量%、およびウシゼラチン約65〜75重量%をさらに含む、請求項10に記載のカプセル。
【請求項14】
魚類ゼラチン約28重量%、およびウシゼラチン約72重量%を有する、請求項10に記載のカプセル。
【請求項15】
カプセルが、0.030インチを超えない厚さを有するカプセルフィルムから形成される、請求項2に記載のカプセル。
【請求項16】
カプセルが、約0.025インチ未満の厚さを有するカプセルフィルムから形成される、請求項2に記載のカプセル。
【請求項17】
カプセルが、約0.020インチ未満の厚さを有するカプセルフィルムから形成される、請求項2に記載のカプセルフィルム。
【請求項18】
カプセルが、約0.015インチ未満の厚さを有するカプセルフィルムから形成される、請求項2に記載のカプセルフィルム。
【請求項19】
a.可食の化合物のためのベースゼラチンを選択するステップと、
b.温度制御された混合ユニットにベースゼラチンを配置するステップと、
c.所定量の精製水を混合ユニットに加えてゲル塊を生成するステップと、
d.前記ゲル塊を65℃を超えない温度に維持するステップと、
e.所定量の少なくとも1つの所定のデンプンと、所定量の少なくとも1つの可塑剤を別々の容器中で混合してスラリーを生成するステップと、
f.スラリーをゲル塊に移して、カプセル化製剤を生成するステップと、
g.前記製剤を約65℃未満の温度に維持するステップと、
h.真空を適用して製剤を脱気するステップと、
i.前記製剤を温度制御された容器に移し、その温度を約65℃未満に維持するステップと、
j.前記製剤を加工処理するためにロータリーダイカプセル化機に移すステップと
を含む、カプセルを形成するための可食の化合物を製造するための方法。
【請求項20】
a.第1の所定の速度で、第1の所定の厚さを有する連続する第1のゼラチンリボンを、周囲の温度未満に冷却した第1の所定の温度の第1のキャスティングドラムにキャストするステップと、
b.第2の所定の速度で、第2の所定の厚さを有する連続する第2のゼラチンリボンを、周囲の温度未満に冷却された第2の所定の温度の第2のキャスティングドラムにキャストするステップと、
c.第1のゼラチンリボンと第2のゼラチンリボンとを結合させてゲルポケットを形成し、充填材料をゲルポケット中に注入して、新たに形成されたゼラチンカプセルを製造するステップと、
d.新たに形成されたカプセルを加工処理して表面の粘着性を低下させるステップと
を含む、ロータリーダイゼラチンカプセル化方法。
【請求項21】
所定の第1および第2のキャスティング速度が、2.0と2.5RPMに等しいまたはその間である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
所定の第1および第2のキャスティング速度が、2.5と3.0RPMに等しいまたはその間である、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
所定の第1および第2のキャスティング速度が、3.0と3.3RPMに等しいまたはその間である、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
所定の第1および第2のキャスティング速度が、3.3と3.5RPMに等しいまたはその間である、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
所定の第1および第2のキャスティング速度が、3.5と4.5RPMに等しいまたはその間である、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
第1および第2の所定の厚さが約0.030インチ未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
第1および第2の所定の厚さが約0.025インチ未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
第1および第2の所定の厚さが約0.020インチ未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
第1および第2の所定の厚さが約0.015インチ未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項30】
第1および第2の所定の温度が約12℃未満である、請求項20に記載の方法。
【請求項31】
第1および第2の所定の温度が8℃と10℃の間である、請求項20に記載の方法。
【請求項32】
周囲の温度未満の第1および第2の所定の温度へのキャスティングドラムの冷却が、ドラムの水冷却により実現される、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
周囲の温度未満の第1および第2の所定の温度へのキャスティングドラムの冷却が、ドラムの空気冷却により実現される、請求項20に記載の方法。
【請求項34】
新たに形成されたカプセルを加工処理するステップが、カプセルを乾燥するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項35】
新たに形成されたカプセルを加工処理するステップが、カプセルに表面処理を施すステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項36】
表面処理が、カプセルの充填のいくつかの局面を増強し、補足し、または改善するように選択された少なくとも1つの物質をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
表面処理が、少なくとも1つの着香料をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記着香料が、カプセル中のゼラチンの架橋に最小の影響を有するように選択された、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記表面処理が打ち粉である、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
前記打ち粉が少なくとも1つのデンプンである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つのデンプンがタピオカデンプンをさらに含む、請求項40に記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【公表番号】特表2007−514793(P2007−514793A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−545777(P2006−545777)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2004/041665
【国際公開番号】WO2005/058242
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(501477831)アール.ピー. シェーラー テクノロジーズ インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】