説明

非ヌクレオチド部分を有するポリヌクレオチド試薬、ならびに合成および使用に関連する方法

【課題】核酸化学(すなわちDNA合成、ハイブリダイゼーションアッセイなど)、およびこれらと関連して用いられる試薬の提供。
【解決手段】一般的には核酸化学(すなわちDNA合成、ハイブリダイゼーションアッセイなど)、およびこれらと関連して用いられる試薬であって、非ヌクレオチド部位(修飾されたデオキシリボース部分を含む)をポリヌクレオチドに導入するための方法およびモノマー試薬、ならびにDNAハイブリダイゼーションアッセイにおいて、本発明のモノマー試薬および本発明のモノマー試薬から合成されたポリヌクレオチド試薬を用いる方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、一般的には核酸化学(すなわちDNA合成、ハイブリダイゼーションアッセイなど)、およびこれらと関連して用いられる試薬に関する。より詳細には、本発明は、非ヌクレオチド部位(修飾されたデオキシリボース部分を含む)をポリヌクレオチドに導入するための方法およびモノマー試薬に関する。さらに本発明は、DNAハイブリダイゼーションアッセイにおいて、本発明のモノマー試薬および本発明のモノマー試薬から合成されたポリヌクレオチド試薬を用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
核酸ハイブリダイゼーションアッセイは、通常、遺伝子研究、生体医学研究および臨床診断において使用される。基礎的な核酸ハイブリダイゼーションアッセイにおいて、一本鎖形態である目的の核酸を標識一本鎖核酸プローブにハイブリダイズし、そして得られる標識二重鎖を検出する。正確さを高め、外来物質からの検出されるべき二重鎖の分離を容易にし、および/または検出されるシグナルを増幅するために、この基礎的なスキームの変形が開発されている。
【0003】
同一人に譲渡された米国特許第5,430,136号(本明細書中で参考として援用される)には、選択的に切断可能な部位をオリゴヌクレオチド鎖に導入し、ハイブリダイゼーション終了後に検出可能な標識の放出を可能にする技術が記載されている。本明細書中で例示されるように、選択的に切断可能な部位は、多くの異なるタイプのハイブリダイゼーションアッセイ形式において有用である。例えば、アッセイの1つのタイプにおいて、ハイブリダイゼーションは標識プローブおよびサンプルDNAの固体支持二重鎖を生じ、このハイブリッド構造内に含まれる選択的に切断可能な部位は、固体支持体から標識を容易に分離させ得る。同一人に譲渡された米国特許第4,775,619号および第5,118,605号は、各々、そのようなアッセイにおける制限エンドヌクレアーゼで切断可能な部位の使用、および化学的に切断可能な部位(例えば、ジスルフィド結合、1,2-ジオールなど)の使用に関する。これらの切断可能な部位はオリゴヌクレオチド合成中に導入され得、そして制限部位の場合、制限エンドヌクレアーゼによって切断可能であり、化学的に切断可能な部位の場合、特定の化学試薬(例えば、チオール、過ヨウ素酸塩など)を用いて切断可能である。
【0004】
本発明はまた、1つには、選択的に切断可能な部位のポリヌクレオチドへの組み込みに関する。この場合の切断可能な部位は、デオキシリボース分子の1位に存在するリンカーアーム内部に含まれる。このような切断可能な部位を提供することに加え、本発明はまた、ポリヌクレオチド内に「非塩基性(abasic)部位」(すなわち、デオキシリボース環を含むが、その1位にはプリン塩基またはピリミジン塩基を有しないモノマーユニット)を創出することに関する。このような非塩基性部位は、以下詳細に説明されるように、幅広い種々の状況において有用である。例えば、非塩基性部位を用いて、分枝DNA(すなわち、3つのポリヌクレオチド鎖が1つのデオキシリボースユニットから発する多量体ポリヌクレオチド構造)を作出し得る。これらの分枝点は、大きな「多量体」DNA構造(これは次いで増幅アッセイに使用され得る)を提供することできわめて有用である。非塩基性部位はまた、他の方法、例えば、固体支持体に結合された(代表的には1位だが必ずしもそうではない)DNAの合成において、化学的DNA合成の方向を反転すること(すなわち、3'→5'から5'→3'へ、またはその逆)、および3重ヘリックス形成において使用され得る。
【0005】
従って、オリゴヌクレオチド鎖またはポリヌクレオチド鎖内に切断可能な部位を提供する有用性に加えて、本発明は、従来のヌクレオチド構造において存在するようなプリン塩基またピリミジン塩基よりもむしろ、モノマーデオキシリボースユニットの1位でのリンカーアームの存在から得られる多くの手順を可能にする。
【0006】
当該技術の概略
オリゴヌクレオチドの合成のための方法に一般的に関連する背景の参考資料には、β-シアノエチルホスフェート保護基の使用に基づく5'から3'への合成に関する参考資料(例えば、de Napoliら、Gazz Chim Ital 114:65(1984)、Rosenthalら、Tetrahedron Letters 24:1691(1983)、BelagajeおよびBrush、Nucleic Acids Research 10:6295(1977))が含まれ、液相での5'から3'への合成が記載されている参考資料には、HayatsuおよびKhorana、J American Chemical Society 89:3880(1957)、GaitおよびSheppard、Nucleic Acid Research 4:1135(1977)、CramerおよびKoster、Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 7:473(1968)、ならびにBlackburnら、Journal of the Chemical Society、Part C、2438(1967)が含まれる。
【0007】
上に引用した技術に加えて、MatteucciおよびCaruthers、J. American Chemical Society 103:3185〜3191(1981)には、オリゴヌクレオチドの調製におけるホスホクロリダイトの使用が記載されている。BeaucageおよびCaruthers、Tetrahedron Letters 22:1859〜1862(1981)、および米国特許第4,415,732号には、オリゴヌクレオチドの調製におけるホスホルアミダイトの使用が記載されている。Smith、ABL15-24(1983年12月)には、自動固相オリゴデオキシリボヌクレオチド合成が記載されている。本明細書中で引用される参考資料およびWarnerら、DNA 3:401-411(1984)(この開示は本明細書中で参考として援用される)もまた参照のこと。
【0008】
Urdeaらの米国特許第4,483,964号および第4,517,338号には、管状反応区域内で固相基質へ試薬を選択的に導入することによってポリヌクレオチドを合成する方法が記載されている。Hornらの米国特許第4,910,300号にもまた、延長する鎖に連続的にヌクレオチドモノマーを付加することによりオリゴヌクレオチドを合成する方法が記載されているが、これは標識N-4修飾シトシン残基を所定の離れた位置へ組み込むことを伴う。Hornらの米国特許第5,256,549号もまた重要であり、最終生成物を実質的に純粋形態で生産するような複合技術(すなわち、所望のオリゴヌクレオチドを実質的に同時に合成および「精製する」)を含む、オリゴヌクレオチドの調製方法を提供する。
【0009】
HornおよびUrdea、DNA 5(5):421〜425(1986)には、ビス(シアノエトキシ)-N,N-ジイソプロピル-アミノホスフィンを用いる固体支持されたDNAフラグメントのリン酸化が記載されている。HornおよびUrdea、Tetrahedron Letters 27:4705〜4708(1986)もまた、参照のこと。
【0010】
一般的なハイブリダイゼーション技術に関する参考資料は、以下を包含する: MeinkothおよびWahl、Anal. Biochemistry 138:267〜284(1984)は、ハイブリダイゼーション技術の優れた総説を提供する。Learyら、Proc. Natl. Acad. Sci.(USA) 80:4045〜4049(1983)には、特定のオリゴヌクレオチド配列の検出のためのアビジン-酵素複合体と組み合わせたビオチン化DNAの使用が記載されている。Rankiら、Gene 21:77〜85には、オリゴヌクレオチド配列の検出のための「サンドイッチ」ハイブリダイゼーションと称されるものが記載されている。PfeufferおよびHelmrich、J. Biol. Chem. 250:867〜876(1975)には、グアノシン-5'-O-(3-チオトリホスフェート)のSepharose 4Bへのカップリングが記載されている。Baumanら、J. Histochem. and Cytochem. 29:227〜237には、蛍光体でRNAの3'を標識することが記載されている。PCT出願 WO83/02277には、標識するために修飾リボヌクレオチドをDNAフラグメントに付加すること、およびそのようなDNAフラグメントの分析のための方法が記載されている。RenzおよびKurz、Nucl. Acids. Res. 12:3435〜3444には、オリゴヌクレオチドへの酵素の共有結合が記載されている。Wallace、DNA Recombinant Technology(Woo, S.編)CRC Press, Boca Raton, Floridaは、診断におけるプローブの使用の一般的背景を提供する。ChouおよびMerigan、N.Eng. J. of Med. 308:921〜925には、CMVの検出のための放射性同位体標識プローブの使用が記載されている。Inman、Methods in Enzymol. 34B, 24:77〜102(1974)には、ポリアクリルアミドへの結合の手順が記載され、他方、Parikhら、Methods in Enzymol. 34B, 24:77〜102(1974)には、アガロースとのカップリング反応が記載されている。Alwineら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 74:5350〜5354(1977)には、ハイブリダイゼーションのためのゲルから固体支持体へのオリゴヌクレオチドの移動の方法が記載されている。Chuら、Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 11:6513〜6529には、末端ヌクレオチド誘導体化の技術が記載されている。Hoら、Biochemistry 20:64〜67(1981)には、リン酸基を介して末端ヌクレオチドを誘導体化してエステルを形成することが記載されている。AshleyおよびMac Donald、Anal.Biochem 140:95〜103(1984)には、表面結合テンプレートからプローブを調製するための方法が報告されている。
【0011】
HorneおよびDervan、J.Am. Chem. Soc. 112:2435〜2437(1990)、ならびにFroehlerら、Biochemistry 31:1603〜1609(1992)は、オリゴヌクレオチドの3重ヘリックス形成に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明によって、以下が提供される:
(項目1)次の構造式を有する試薬であって、
【0013】
【化13】

【0014】
ここで:
は、水素、酸感受性で塩基安定性である保護基、およびアシルキャッピング基からなる群より選択され;
は、遊離のヒドロキシル基を含む分子種への該試薬の付加が可能であるよう選択されるリン誘導体であるか、または固体支持体への結合であり;
は、水素、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ハロゲノ、アミノ、アルキル、アリル、-OR6からなる群より選択され、ここでRが、アルキル、アリル、シリル、またはホスフェートであり;
は、水素または-(CH2)mOR7のいずれかであり、ここでRがアルキルまたは-(CO)R8であって、Rがアルキル、そしてmが0〜12の範囲の整数であり;
は、-A-Z-X(R9)nであり;
Aは、酸素、硫黄、またはメチレンであり;
Zは、O、S、N、SiおよびSeからなる群より選択される0〜6個のヘテロ原子ならびに-CO-、-COO-、-CONH-、-NHCO-、-S-S-、-SO2-、-CH(OH)-CH(OH)-、-CH(OR4)-CH(OR4)-、-O-PO(O-)-O-、-O-PO(R4)-、-O-PO(OR4)-O-、-O-PO(OR4)-R5-および-PO(OR4)-O-R5-からなる群より選択される0〜6個の結合を含み、ここでRが低級アルキル、およびRが低級アルキレンである、アリーレン、C6-C18のアラルキレンまたはC1-C12のアルキレンであって、そしてZがアラルキレンまたはアルキレンである場合は、0〜3個の不飽和結合を含有し;
Xは、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-S-および-Si≡からなる群より選択され;
は、水素、保護基、検出可能な標識、またはXが-Si≡でない場合、固体支持体であり;そして
Xが-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、または-S-である場合、nは1であり、そしてXが-Si≡である場合、nは3であり、
ただしRが固体支持体への結合を表す場合、Rは水素、保護基、または検出可能な標識である、試薬。
(項目2)Aが酸素である、項目1に記載の試薬。
(項目3)Rがトリチルである、項目2に記載の試薬。
(項目4)Rが標識である、項目2に記載の試薬。
(項目5)次の構造式を有する試薬であって、
【0015】
【化14】

【0016】
ここで:
は、水素および酸感受性で塩基安定性である保護基からなる群より選択され;
は、ホスホルアミダイト、ホスホトリエステル、ホスホジエステル、ホスファイト、H-ホスホネート、およびホスホロチオエートからなる群より選択され;
Aは、酸素、硫黄、またはメチレンであり;
Zは、1〜18個の炭素原子および0〜6個の酸素原子よりなるヒドロカルビルまたはオキシヒドロカルビルのスペーサー部分であり;
Xは、-NH-および-S-からなる群より選択され;そして
は保護基である、試薬。
(項目6)次の構造式を有するポリヌクレオチド試薬であって、
【0017】
【化15】

【0018】
ここで:
DNA1は、DNAの第1セグメントであり;
DNA2は、DNAの第2セグメントであり;
は、水素、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ハロゲノ、アミノ、アルキル、アリル、-OR6からなる群より選択され、ここでRがアルキル、アリル、シリルまたはホスフェートであり;
は、水素または-(CH2)mOR7のいずれかであり、ここでRがアルキルまたは-(CO)R8であって、Rがアルキル、そしてmが0〜12の範囲の整数であり;
は、-A-Z-X(R9)nであり;
Aは、酸素、硫黄、またはメチレンであり;
Zは、O、S、N、SiおよびSeからなる群より選択される0〜6個のヘテロ原子、ならびに-CO-、-COO-、-CONH-、-NHCO-、-S-S-、-SO2-、-CH(OH)-CH(OH)-、-CH(OR4)-CH(OR4)-、-O-PO(O-)-O-、-O-PO(R4)-、-O-PO(OR4)-O-、-O-PO(OR4)-R5-および-PO(OR4)-O-R5-からなる群より選択され、ここでRが低級アルキル、およびRが低級アルキレンである0〜6個の結合を含む、アリーレン、C6-C18のアラルキレンまたはC1-C12のアルキレンであって、そしてZがアラルキレンまたはアルキレンである場合は、0〜3個の不飽和結合を含有し;
Xは、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-S-および-Si≡からなる群より選択され;
は、水素、保護基、または検出可能な標識であり;そして
Xが-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、または-S-である場合、nは1であり、そしてXが-Si≡である場合、nは3である、ポリヌクレオチド試薬。
(項目7)次の構造式を有するポリヌクレオチド試薬であって、
【0019】
【化16】

【0020】
ここで:
DNA1は、DNAの第1セグメントであり;
DNA2は、DNAの第2セグメントであり;
は、水素、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ハロゲノ、アミノ、アルキル、アリル、-OR6からなる群より選択され、ここでRがアルキル、アリル、シリルまたはホスフェートであり;
は、水素または-(CH2)mOR7のいずれかであり、ここでRがアルキルまたは-(CO)R8であって、Rがアルキル、そしてmが0〜12の範囲の整数であり;
Aは、酸素、硫黄、またはメチレンであり;そして
Zは、O、S、N、SiおよびSeからなる群より選択される0〜6個のヘテロ原子、ならびに-CO-、-COO-、-CONH-、-NHCO-、-S-S-、-SO2-、-CH(OH)-CH(OH)-、-CH(OR4)-CH(OR4)-、-O-PO(O-)-O-、-O-PO(R4)-、-O-PO(OR4)-O-、-O-PO(OR4)-R5-および-PO(OR4)-O-R5-からなる群より選択され、ここでRが低級アルキル、およびRが低級アルキレンである0〜6個の結合を含む、アリーレン、C6-C18のアラルキレンまたはC1-C12のアルキレンであって、そしてZがアラルキレンまたはアルキレンである場合は、0〜3個の不飽和結合を含有する、ポリヌクレオチド試薬。
(項目8)次の構造式を有するポリヌクレオチド試薬であって、
【0021】
【化17】

【0022】
ここで:
DNA1は、DNAの第1セグメントであり;
DNA2は、DNAの第2セグメントであり;
は、水素、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ハロゲノ、アミノ、アルキル、アリル、-OR6からなる群より選択され、ここでRがアルキル、アリル、シリルまたはホスフェートであり;
は、水素または-(CH2)mOR7のいずれかであり、ここでRがアルキルまたは-(CO)R8であって、Rがアルキル、そしてmが0〜12の範囲の整数であり;
Aは、酸素、硫黄、またはメチレンであり;そして
Zは、O、S、N、SiおよびSeからなる群より選択される0〜6個のヘテロ原子、ならびに-CO-、-COO-、-CONH-、-NHCO-、-S-S-、-SO2-、-CH(OH)-CH(OH)-、-CH(OR4)-CH(OR4)-、-O-PO(O-)-O-、-O-PO(R4)-、-O-PO(OR4)-O-、-O-PO(OR4)-R5-および-PO(OR4)-O-R5-からなる群より選択され、ここでRが低級アルキル、およびRが低級アルキレンである0〜6個の結合を含む、アリーレン、C6-C18のアラルキレンまたはC1-C12のアルキレンであって、そしてZがアラルキレンまたはアルキレンである場合は、0〜3個の不飽和結合を含有する、ポリヌクレオチド試薬。
(項目9)次の構造式を有する分枝ポリヌクレオチド試薬であって、
【0023】
【化18】

【0024】
ここで:
DNA1は、DNAの第1セグメントであり;
DNA2は、DNAの第2セグメントであり;
DNA3は、DNAの第3セグメントであり;
は、水素、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ハロゲノ、アミノ、アルキル、アリル、-OR6からなる群より選択され、ここでRがアルキル、アリル、シリルまたはホスフェートであり;
は、水素または-(CH2)mOR7のいずれかであり、ここでRがアルキルまたは-(CO)R8であって、Rがアルキル、そしてmが0〜12の範囲の整数であり;
Aは、酸素、硫黄、またはメチレンであり;そして
Zは、O、S、N、SiおよびSeからなる群より選択される0〜6個のヘテロ原子、ならびに-CO-、-COO-、-CONH-、-NHCO-、-S-S-、-SO2-、-CH(OH)-CH(OH)-、-CH(OR4)-CH(OR4)-、-O-PO(O-)-O-、-O-PO(R4)-、-O-PO(OR4)-O-、-O-PO(OR4)-R5-および-PO(OR4)-O-R5-からなる群より選択され、ここでRが低級アルキル、およびRが低級アルキレンである0〜6個の結合を含む、アリーレン、C6-C18のアラルキレンまたはC1-C12のアルキレンであって、そしてZがアラルキレンまたはアルキレンである場合は、0〜3個の不飽和結合を含有する、ポリヌクレオチド試薬。
(項目10)ヌクレオチドモノマーを連続してカップリングすることでオリゴヌクレオチド鎖を延長する工程を含むポリヌクレオチド試薬を合成する方法において、該ヌクレオチドモノマーの一部を項目9の試薬で置換することにより、該ポリヌクレオチド試薬に非塩基性部位を導入する工程を含むことを改良点とする方法。
(項目11)分枝DNAを合成する方法であって、(a)ヌクレオチドモノマーを連続的にカップリングしてオリゴヌクレオチド鎖を伸長する工程;(b)工程(a)中において、ヌクレオチドモノマーの一部を1位にリンカーアームを有するモノマー試薬で置換することで、該鎖に分枝点を導入する工程;(c)該リンカーアームの末端にヌクレオチドモノマーを連続的に付加する工程を包含し、ここで工程(b)において使用される各モノマー試薬が項目1に記載の試薬を含有する、方法。
【0025】
本発明の1つの局面において、新規ポリヌクレオチド構造を与えるために有用なモノマー試薬が提供される。このモノマー試薬は構造式(I)を有する。
【0026】
【化1】

【0027】
ここで:
は、水素、酸感受性で塩基安定性である保護基、およびアシルキャッピング基からなる群より選択され;
は、遊離のヒドロキシル基を含む分子種への試薬の付加が可能であるよう選択されるリン誘導体であるか、または固体支持体への結合であり;
は、水素、ヒドロキシル、スルフヒドリル、ハロゲノ、アミノ、アルキル、アリル、-OR6からなる群より選択され、ここでRが、アルキル、アリル、シリル、またはホスフェートであり;
は、水素または-(CH2)mOR7のいずれかであり、ここでRはアルキルまたは-(CO)R8であって、Rはアルキル、そしてmは0〜12の範囲の整数であり;
は、-A-Z-X(R9)nであり;
Aは、酸素、硫黄、またはメチレンであり;
Zは、O、S、N、SiおよびSeからなる群より選択される0〜6個のヘテロ原子ならびに-CO-、-COO-、-CONH-、-NHCO-、-S-S-、-SO2-、-CH(OH)-CH(OH)-、-CH(OR4)-CH(OR4)-、-O-PO(O-)-O-、-O-PO(R4)-、-O-PO(OR4)-O-、-O-PO(OR4)-R5-および-PO(OR4)-O-R5-からなる群より選択される0〜6個の結合を含み、ここでRが低級アルキル、およびRが低級アルキレンである、アリーレン、C6-C18のアラルキレンまたはC1-C12のアルキレンであって、そしてZがアラルキレンまたはアルキレンである場合は、0〜3個の不飽和結合を含有し;
Xは、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-CO-、-S-および-Si≡からなる群より選択され;
は、水素、保護基、検出可能な標識、またはXが-Si≡でない場合、固体支持体であり;そして
Xが-NH-、-CONH、-NHCO-、-CO-、または-S-である場合、nは1であり、そしてXが-Si≡である場合、nは3である。
【0028】
別の局面において、構造式(II)、(III)または(IV)を有するポリヌクレオチド試薬が提供される。
【0029】
【化2】

【0030】
【化3】

【0031】
ここでDNA1はDNAの第1セグメントを表し、DNA2はDNAの第2セグメントを表し、そしてR、RおよびRは上記に定義されるのと同様である。本発明の関連する局面において、構造式(V)を有する分枝DNAが、提供される。
【0032】
【化4】

【0033】
ここで、DNA1、DNA2およびDNA3は、DNAの第1セグメント、第2セグメントおよび第3セグメントを表し、そしてR、R、A、およびZは上記に定義されるDNAである。
【0034】
本発明のさらなる他の局面において、非塩基性部位を含むポリヌクレオチドの合成のための方法および分枝DNAの調製のための方法が提供される。これらの方法は、上述のモノマー試薬をより大きなポリヌクレオチド構造へ組み込むことを伴う。
【0035】
サンプル中で目的のオリゴヌクレオチド配列の存在を検出する方法もまた提供される。この方法は、本明細書中に記載されるような非塩基性部位を含むポリヌクレオチドプローブと核酸サンプルをハイブリダイズすることを包含し、ここで非塩基性部位は上記で定義されるモノマー試薬から形成され、さらにここで、試薬は、Rに検出可能標識を含み、そしてリンカー部分-Z-内に切断可能な部位を含む。ハイブリダイゼーションの結果として切断可能な部位を介して標識が固体支持体に結合するように、サンプルまたはポリヌクレオチドプローブのいずれかが支持体に結合する。ハイブリダイゼーションの後、切断可能な部位を適切な試薬で切断して、検出可能な標識をR放出させ、そして支持体から遊離した標識を定量し、その存在および/またはサンプル量に相関させる。
【0036】
さらに、本発明の化合物を用いて合成されるプローブは、上記の構造(III)および(IV)に例示されるように、3'-3'結合を含み得る。3'-3'結合を含むオリゴデオキシヌクレオチドプローブは、3重ヘリックス形成に使用され得る。すなわち、そのようなプローブは、2重鎖DNAの反対の鎖に結合し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
発明の詳細な説明
定義および命名法:
本発明を詳細に開示および記載する前に、本発明は、特定のアッセイ形式、物質または試薬に限定されず、従って、当然、それらを変更し得ることが理解されるべきである。本明細書中で用いられる用語は、特定の実施態様を記載する目的であり、限定することを意図しないこともまた、理解されるべきである。
【0038】
本明細書および添付の請求の範囲において使用されるような、単数形「a」、「an」および「the」は、その文脈が明らかに他のことを示さない限り、複数の指示物を包含することに留意しなければならない。従って、例えば、「モノマー試薬」とはモノマー試薬の混合物を含み、「ポリヌクレオチドプローブ」とは、異なるプローブの混合物を含み得、「非塩基性部位」を含むポリヌクレオチドとは、2つ以上の非塩基性部位を含有するポリヌクレオチドを含む。
【0039】
本明細書において、および下記の請求の範囲において、言及される多くの用語は、以下の意味を有するよう定義される:
本明細書中で用いられる用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2-デオキシ-D-リボースを含む)、ポリリボヌクレオチド(D-リボースを含む)、プリン塩基またはピリミジン塩基のN-グリコシドである他の任意のタイプのポリヌクレオチド、および非ヌクレオチド骨格を含む他のポリマー(例えば、タンパク質核酸(protein nucleic acid)、およびAnti-Gene Development Group、Corvallis、OregonからNeugeneTMポリマーとして市販の配列特異的(sequence-specific)合成核酸ポリマー)の総称であり、ただしこれらのポリマーは、DNAおよびRNAに見られるように、塩基対を作り、および塩基スタッキングすることを可能とする核酸塩基(nucleobase)を構造中に含む。用語「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」の間では、長さにおいて区別することを意図せず、そしてこれらの用語は互換的に用いられる。これらの用語は、分子の1次構造だけを指示する。従って、これらの用語は、二本鎖および一本鎖DNA、ならびに二本鎖および一本鎖RNA、そしてDNA:RNAハイブリッドを含み、さらに公知の修飾型、例えば、当該分野で公知の標識、メチル化、「キャップ」、1つ以上の天然のヌクレオチドのアナログでの置換、ヌクレオチド内修飾(例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)、および電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)での修飾)、ペンダント部分(例えば、タンパク質(ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなどを含む)を含む修飾、挿入基(intercalator)(例えば、アクリジン、プソラレンなど)による修飾、キレーター(例えば、金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属(oxidative metal)など)を含む修飾、アルキレーター(alkylator)を含む修飾、修飾された結合を伴う修飾(例えば、αアノマー核酸など)、およびポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの非修飾型を含む。
【0040】
用語「ポリヌクレオチド分析物(analyte)」または「ポリヌクレオチドサンプル」は、標的ヌクレオチド配列を含む、一本鎖または二本鎖の核酸分子を示す。この分析物核酸は、種々の供給源(例えば、生物学的流体または固体、食物、環境物質など)由来であり、種々の手法(例えば、プロテイナーゼK/SDS、カオトロピック塩など)により、ハイブリダイゼーション分析のために調製され得る。用語「ポリヌクレオチド分析物」は、本明細書中で、用語「分析物」、「分析物核酸」、「標的」および「標的分子」と互換的に用いられる。本明細書中に記載される用語「標的領域」または「標的ヌクレオチド配列」は、標的分子内に含まれるプローブ結合領域を示す。用語「標的配列」は、プローブが配列と共に所望の条件下で安定なハイブリッドを形成する配列を示す。
【0041】
本明細書中で用いられる、用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオチド」は、既知のプリン塩基およびピリミジン塩基だけでなく、修飾された他のヘテロ環塩基を含有する部分を含む。このような修飾は、メチル化プリンまたはメチル化ピリミジン、アシル化プリンまたはアシル化ピリミジン、あるいは他のヘテロ環を含む。修飾されたヌクレオシドまたはヌクレオチドはまた、糖部分の修飾(例えば、1つ以上のヒドロキシル基を、ハロゲン、脂肪族基で置換し、またはエーテル、アミンとして官能基化するなど)を含む。
【0042】
本明細書中で用いられる用語「プローブ」は、標的分子中に存在する核酸配列に相補的な核酸配列を含有する、上記で定義されるようなポリヌクレオチドを含む構造を示す。プローブのポリヌクレオチド領域は、DNA、および/またはRNA、および/または合成ヌクレオチドアナログから構成され得る。
【0043】
用語「核酸多量体」または「増幅多量体」は、本明細書中で、同じ一本鎖オリゴヌクレオチドの繰り返しユニットまたは異なる一本鎖ポリヌクレオチドユニットの直鎖または分枝ポリマーを示すのに使用され、これらの各々は、標識プローブが結合し得る領域を含む(すなわち標識プローブ内に含まれる核酸配列に相補的な核酸配列を含む);このオリゴヌクレオチドユニットは、RNA、DNA、修飾されたヌクレオチドまたはこれらの複合体から構成される。少なくとも1つのユニットは、標的ポリヌクレオチドのセグメントに特異的に結合することを可能とする、配列、長さ、および組成物を有する;代表的には、そのようなユニットは、およそ15〜50ヌクレオチド、好ましくは、15〜30ヌクレオチドを含有し、そして約20%〜約80%の範囲のGC含量を有する。多量体におけるオリゴヌクレオチドユニットの総数は、通常、約3〜1000の範囲にあり、より代表的には約10〜100の幅であり、そして最も代表的には約50である。分枝多量体の1つのタイプにおいて、3つ以上のオリゴヌクレオチドユニットが、開始点から生じ、分枝構造を形成する。この開始点は、別のヌクレオチドユニットまたは多官能基分子であり、少なくとも3つのユニットが共有結合し得る。別のタイプにおいて、オリゴヌクレオチドユニット骨格は、1つ以上のペンダントオリゴヌクレオチドユニットが骨格中の分枝点に結合する。この後者のタイプの多量体は、「フォーク様」構造、「櫛様」構造または「フォーク様」構造および「櫛様」構造の複合であり、ここで「櫛様」多量体は、骨格から伸長される複数の側鎖を有する直鎖の骨格を含有するポリヌクレオチドである。代表的には、多量体中、少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは約5〜30の範囲の分枝点が存在する。しかし、いくつかの実施態様においては、それ以上であり得る。この多量体は、1つ以上の非ヌクレオチドセグメント(例えば、一般的な「ポリヌクレオチド」に関して前述のような、タンパク質核酸または配列特異的合成核酸ポリマー)、および二本鎖配列の1つ以上のセグメントを含有し得る。多量体合成および特定の多量体構造に関するさらなる情報は、同一人に譲渡されたUrdeaらの米国特許第5,124,246号に見出され得る。
【0044】
本明細書中で使用される「生物学的サンプル」は、個体から単離された組織または流体サンプルを言い、これらに限定されないが、例えば、血漿、血清、髄液、精液、リンパ液、皮膚の外切片(external section)、呼吸器の外切片、腸の外切片、および尿生殖器路(genitourinary tract) の外切片、涙、唾液、乳、血球、腫瘍、組織を包含し、そしてさらにインビトロでの細胞培養構成物のサンプル(これらに限定されないが、細胞培養培地中の細胞の増殖から生じる馴化培地、推定ウイルス感染細胞、組換え細胞、および細胞成分を含む)を含む。本発明の方法の好適な使用は、B型肝炎ウイルス(「HBV」)、C型肝炎ウイルス(「HCV」)、D型肝炎ウイルス(「HDV」)、ヒト免疫不全ウイルス(「HIV」)、およびウイルスのヘルペスファミリー(帯状ヘルペス(水疱瘡)、単純ヘルペスウイルスIおよびII、サイトメガロウイルス、Epstein-Barrウイルス、および最近単離されたヘルペスVIウイルスを含む)由来のようなウイルス性抗原の検出および/または定量においての使用である。
【0045】
本明細書中で用いられる「保護基」は、分子のセグメントが特定の化学反応を受けるのを妨げ、しかし反応の終結後には該分子から除去可能である種を意味する。対照的に、「キャッピング基」は、恒久的に分子のセグメントに結合し、セグメントのさらなるすべての化学的変形を防止する基である。
【0046】
上記のような「非塩基性部位」は、ポリヌクレオチド鎖内に含まれるが、プリン塩基またはピリミジン塩基を含まないモノマーユニットを意味する。この用語は、本明細書中において、「修飾デオキシリボース残基」と互換的に使用される。すなわち、本発明の方法と共に使用されるモノマーユニットはデオキシリボース環を含むが、1位にプリン塩基またはピリミジン塩基を有しない。
【0047】
本明細書中で用いられる用語「アルキル」は、1〜24個の炭素原子を含む分枝または非分枝飽和炭化水素基(メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなど)を示す。本明細書中で用いられる好適なアルキル基は、1〜12個の炭素原子を含有する。用語「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子を含むアルキル基を意図する。
【0048】
本明細書中で用いられる用語「アルキレン」は、1〜24個の炭素原子を含有する2官能性の飽和分枝炭化水素鎖または非分枝炭化水素鎖をいい、例えば、メチレン(-CH2-)、エチレン(-CH2-CH2-)、プロピレン(-CH2-CH2-CH2-)、2-メチル-プロピレン[-CH2-CH(CH3)-CH2-]、ヘキシレン[-(CH2)6-]などを含む。「低級アルキレン」は、1〜6個、より好ましくは1〜4個の炭素原子のアルキレン基を示す。
【0049】
本明細書中で用いられる用語「アリール」は、1〜5個の芳香環を含む芳香族種をいい、未置換の環または、-(CH2)x-NH2、-(CH2)x-COOH、-NO2、ハロゲン、および低級アルキルからなる群より代表的に選択される1つ以上の置換基で置換された環であり、ここでxは、上記に概説されるように、0〜6の範囲の整数である。用語「アラルキル」は、アルキル種およびアリール種の両方を含む部分を意図し、その部分のアルキルセグメント中に、代表的には約24個未満の炭素原子を含み、より代表的には約12個未満の炭素原子を含み、そして代表的には1〜5個の芳香環を含む。用語「アラルキル」は、通常、アリール置換アルキル基を示すのに使用される。用語「アラルキレン」は、同様の様式において、アルキレン種およびアリール種の両方を含む部分を示すのに使用され、代表的には、アルキレン部分に約24個未満の炭素原子およびアリール部分に1〜5個の芳香環を含み、そして代表的には、アリール置換アルキレンである。
【0050】
用語「アリーレン」は、2官能性芳香族部分をいい、「単環式アリーレン」はフェニレン基を示す。これらの基は、上記に概説されるように4個までの環置換基で置換され得る。
【0051】
「随意の」または「必要に応じて」は、後に記載される出来事または状況が起こることも起こらないこともあること意味し、この記載は、例えば、その出来事または状況が起こる場合、およびそれが起こらない場合を包含する。例えば、「必要に応じて置換されたアルキレン」という文節は、アルキレン部分が置換されることも置換されないこともあることを意味し、この記載は、未置換のアルキレンおよび置換基のあるアルキレンの両方を含む。
【0052】
本発明のモノマー試薬:
ポリヌクレオチド構造内に非塩基性部位を作るために用いられる本発明のモノマー化合物は、式(I)を有する。
【0053】
【化5】

【0054】
、R、R、A、Z、X、およびnは上記の定義の通りである。この試薬(I)は、デオキシリボース環からなり、その5位および3位に、それぞれ置換基RおよびRを有し、従来の化学的DNA合成技術を用いて、この試薬をポリヌクレオチド鎖に組み込むことが可能であることが理解され得る。1位の部分-A-Z-X(R9)nは、ヌクレオチド構造において、通常、存在するプリン塩基またはピリミジン塩基を置き換え、そしてRの定義により推定され得るように、無保護部分、保護部分、標識部分、または固体支持体に結合するリンカーであり得る。
【0055】
は、上記のように、塩基安定性で、酸感受性のブロッキング基である。そのようなブロッキング基は、オリゴヌクレオチド合成の当該分野では周知であり、非置換の、または置換されたアリール基もしくはアラルキル基を含み、ここでアリールは、例えば、フェニル、ナフチル、フラニル、ビフェニルなどであり、ここで置換基は、0〜3個、通常は0〜2個であり、そして任意の、中性または極性、電子供与性または電子求引性の、妨害せず安定な基を含む。そのような基の例として、ジメトキシトリチル(DMT)、モノメトキシトリチル(MMT)、トリチルおよびピクシルがある。本明細書中の使用のために特に好ましい部分は、DMTである。
【0056】
は、ヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド鎖の5'-ヒドロキシル基との試薬の縮合を促進するよう選択されるリン誘導体である。そのような基には、ホスホルアミダイト、ホスホトリエステル、ホスホジエステル、ホスファイト、H-ホスホネート、ホスホロチオエートなど(例えば、Urdeaらの欧州特許公報第0225807号、「液相核酸サンドイッチアッセイおよびこれに有用なポリヌクレオチドプローブ」を参照のこと。この開示は、本明細書中で参考として援用される)が含まれる。Rとして特に好ましい有用な基は、次の構造を有するホスホルアミダイトである:
【0057】
【化6】

【0058】
ここで、Yはメチルおよびβ-シアノエチルからなる群より選択され、そして「iPr」はイソプロピルを表す。最も好ましくは、Yはβ-シアノエチルである。
【0059】
あるいは、Rは、代表的にはカルボニル部分を介しての固体支持体への結合であり得る。すなわち、Rは、-(CO)-R10であり得、ここでR10は固体支持体を表す。
【0060】
上記のように、RおよびR置換基は概して、当該分野で周知の標準ホスホルアミダイト化学のプロトコルを使用してモノマー試薬(I)をDNAフラグメントに組み込み得るように選択され、例えば、先に引用した多くの参考資料中に記載されている。一般的に、モノマー試薬(I)をポリヌクレオチド鎖に組み込むために、R置換基は、試薬がヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド鎖の5'-ヒドロキシル基と、この位置(すなわち3位)で反応することを可能にするよう選択される。一方、R部分は、試薬がヌクレオシドまたはオリゴヌクレオチド鎖の3'-ヒドロキシル基と、この位置(すなわち5位)で反応することを可能にするよう選択される。
【0061】
構造式(I)に含まれる好適なモノマー試薬には、以下の例がある:
【0062】
【化7−1】

【0063】
【化7−2】

【0064】
【化7−3】

【0065】
【化8】

【0066】
非塩基性部位を含有するポリヌクレオチド試薬:
非塩基性部位を含む本発明のポリヌクレオチド試薬は、標準DNA合成化学を用い、ヌクレオチドモノマーの一部を非ヌクレオチド試薬(I)で置き換えて、調製される。一般的には、ポリヌクレオチド試薬を合成するために用いられるモノマーの約1〜100%を試薬(I)で置き換えるが、より好ましくは10〜50%のモノマー、そして最も好ましくは20〜40%のモノマーを置き換える。一般的には、約0〜10塩基を非ヌクレオチドモノマーユニット間に組み込む。特にR基が、大きく、かさ高い置換基である場合、ポリヌクレオチド鎖内で非ヌクレオチドモノマー(I)が離れていることが好ましい。このような場合、立体障害または不安定化を最小にするために、少なくとも約3塩基をモノマーユニット間に組み込むべきである。
【0067】
これらのポリヌクレオチド試薬は、一般的には、上記に示す構造式(II)、(III)または(IV)を有する。
【0068】
本発明のポリヌクレオチド試薬は、同一人に譲渡されたUrdeaらの米国特許第4,775,619号、Hornらの米国特許第4,868,105号、Urdeaの米国特許第5,118,605号、Urdeaらの米国特許第5,124,246号、Urdeaの米国特許第5,200,314号、ならびにPCT公開第89/03891号(発明者Urdeaら)およびPCT公開第92/22671号(発明者Hornら)に記載されているような、幅広い種々のハイブリダイゼーションアッセイにおいてプローブとして用いられ得る。さらに、構造(III)および(IV)に関して、3'-3'結合が提供され、三重ヘリックス形成において、このプローブの使用を可能とすることに留意すべきである。
【0069】
いくつかの場合において、試薬(I)のポリヌクレオチド鎖への組み込みの結果得られる非ヌクレオチドモノマーに存在するリンカーアームは、選択的に切断可能な部位を含む。切断可能な部位を含むプローブは、同一人に譲渡されたUrdeaらの米国特許第5,118,605号(題名「選択的に切断可能な部位を用いるポリヌクレオチドの決定」、この開示は本明細書中で参考として援用される)に記載されるハイブリダイゼーションアッセイにおいて特に有用である。切断可能な部位の性質は変化し得るが、代表的には、容易に利用できる化学試薬を用いて切断し得る結合を含む。ここで唯一の制約は、切断試薬がこの方法の残りの部分中で用いられる種々のプローブ、標識などに適合することのみである。一般的に、この切断可能な部位は、式中のR置換基内に含まれる部分「Z」中に存在する。好ましい切断可能な部位は、米国特許第5,118,605号において同定される部位である。本出願中で例示されるように、選択的に切断可能な部位は、例えば、次の結合タイプを含む:
【0070】
【化9】

【0071】
N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用して塩基切断可能アミド結合をこの試薬に導入し得、一方、エチレングリコールビス(スクシンイミジルスクシネート)を使用してヒドロキシルアミン感受性結合を作成し得、ビス[2-スクシンイミドオキシカルボニルオキシ)エチル]スルホン(BSOCOES)を使用して塩基感受性スルホン結合を作成し得、酒石酸ジスクシンイミジル(DST)を使用して過ヨウ素酸塩により切断可能な1,2-ジオールを導入し得、そしてジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)(DSP)を使用してチオール切断可能なジスルフィド結合を与え得る。所望の切断可能結合を生成するためにこれらの試薬を用いる方法は周知であり、有機合成化学の当業者には、容易に明らかとなる。
【0072】
前述の実施態様において、部分Rは検出可能標識を表し、スぺーサー部分Z内の結合の切断の結果、標識が放出される。このような場合のR位に存在し得る適切な標識は、例えば、放射性核種、蛍光体、化学発光体、色素、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、酵素サブユニット、金属イオンなどを含む。特定の標識の例としては、フルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド、フィコエリトリン、ウンベリフェロン、ルミノール、NADPH、a,b-ガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼなどが包含される。
【0073】
ハイブリダイゼーションアッセイにおけるプローブとして有用なポリヌクレオチド試薬はまた、「分枝点」のようなモノマー試薬(I)の使用により調製され得る。この場合において、構造式(V)を有する分枝点を含有するプローブが調製され得、ここでDNA1、DNA2、DNA3、R、R、およびRは上記の定義の通りである。
【0074】
【化10】

【0075】
このようなプローブは、例えば、同一人に譲渡されたUrdeaらの米国特許第5,124,246号(題名「核酸多量体およびこれを使用する増幅核酸ハイブリダイゼーションアッセイ」)、PCT公開第WO89/03891号、および第WO92/02526号に記載されている増幅アッセイにおいて使用され得る。後者の出願では、本発明の方法との組み合わせに好適な櫛形分枝多量体を記載しており、これは直鎖骨格およびペンダント側鎖から構成される。この骨格は分析物核酸または分析物に結合する核酸のための特異的なハイブリダイゼーション部位を提供するセグメントを含み、他方ペンダント側鎖は、標識プローブのための特異的なハイブリダイゼーション部位を提供するセグメントの反復を含む。
【0076】
本発明のさらなる別の実施態様において、モノマー試薬(I)により提供される「非塩基性」または修飾された部位を使用して、固体支持体上でのポリヌクレオチドの合成が可能となり得る。この場合、この試薬は、1位のリンカーアームを介して固体支持体と結合する(すなわちRが固体支持体を表す)。上述のように、固体支持体への結合はまた、3位のRであり得る。固体支持体の例には、シリカ、Porasil C、ポリスチレン、調節孔ガラス(controlled pore glass)(CPG)、ケイソウ土、ポリ(ジメチルアクリルアミド)、ポリ(アクリルモルホリド)、ポリ(テトラフルオロエチレン)にグラフトしたポリスチレン、セルロース、SephadexLH-20、およびFractosil 500が包含される。次いで、ヌクレオチドモノマーを、3'位および5'位に標準のDNA合成化学を使用して付加する。いくつかの場合、すなわち支持体結合標識プローブを生産するために、いくつかのヌクレオチドモノマーを標識モノマー(例えば、同一人に譲渡されたUrdeaらに米国特許第5,093,232号(題名「核酸プローブ」)に記載されるN標識シチジン誘導体)で置き換えることが所望され得る。このようなモノマーは構造式(VI)を有し、
【0077】
【化11】

【0078】
ここで
およびRは、上記で定義された通りであり;
11は、必要に応じての結合部分であって、存在する場合は、アミド、チオエーテルまたはジスルフィド結合またはこれらの組み合わせを含み;
12は、検出可能標識(例えば、-NH2、-COOH、または-SH)で誘導体化可能な活性基であり;
13は、水素、メチル、フルオロ、ブロモ、またはヨードであり;そして
14は、水素、ヒドロキシル、または保護されたヒドロキシル基のいずれかである。
【0079】
本発明のさらなる別の実施態様において、ポリヌクレオチドが合成され、モノマー試薬(I)を使用して合成の方向を変化させ得る(例えば、3'→5'から5'→3'へ、またはその逆)。これは、延長するオリゴヌクレオチド鎖の末端へモノマー試薬(I)を添加し、キャッピング基(代表的にはアシルキャッピング基)で3'または5'末端ヒドロキシル基のいずれかをキャップし、次いで、1リンカーアームを使用して、逆方向に合成し続けることによって成し遂げられる。隣接するモノマーユニットが3'-3'で結合するオリゴマーもまた、試薬(I)を用いて、Rでオリゴヌクレオチドを固体支持体に結合し、5'位で1本のオリゴマーを延長させ、5'末端でこの基を曝露してキャッピングし、ついで3'位で第2のオリゴマーを延長させることによって調製され得る。このような構造は、式(II)および(III)に例示されている。
【0080】
合成方法:
スキームIは構造式(I)を有するモノマー試薬の好適な合成方法を例示する:

スキームI
【0081】
【化12】

【0082】
スキームIにおいて、2-デオキシ-D-リボフラノースが、出発物質として用いられる。この分子の3つのヒドロキシル基を、「R-Cl」試薬または遊離のヒドロキシル基を保護するのに適切ないくつかの他の試薬(例えば塩化ベンゾイルまたは無水酢酸)を使用して保護し、糖の1位、3位、および5位に3個の-OR基を提供する。この生成物を単離し、次いで、1-OR基を酸触媒存在下で(R9)n-X-Z-AH部分と反応させることで置換し、その後、3位および5位を、塩基を用いて脱保護する。次いで、この5位を、R1-Cl(例えばジメトキシトリチルクロリド)と反応させることで選択的に保護し、その後、選択されたホスホルアミダイトと3位で反応させることにより、所望のリン誘導体を与える。
【0083】
実験項
本発明の実施は、他に指示がなければ、有機合成化学、生化学、分子生物学などの当該分野の技術の範囲内の従来の技術を用いる。そのような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook、FritschおよびManiatis、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版(1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J. Gait編,1984); Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J. Higgins編、1984);およびMethods in Enzymologyのシリーズ(Academic Press, Inc.)を参照のこと。本明細書中で前出および後出の両方のすべての特許、特許出願、および刊行物は、本明細書中で参考として援用される。
【0084】
本発明は好適な本発明の特定の実施態様と共に記載されるが、上記の説明および以下の実施例は例示を意図するものであり、本発明の範囲を限定するものではないことが理解される。他の局面、利点および本発明の範囲内の改変は、本発明の属する分野の当業者には明らかである。
【0085】
以下の実施例において、用いられる数字(例えば、量、温度など)に関して正確さを保証するよう努力しているが、いくつかの実験誤差および偏差は考慮されるべきである。他に指示がない場合、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはその付近である。
【実施例】
【0086】
実施例I
1,3,5-トリス-O-アシル-2-デオキシ-D-リボフラノースは、市販の2-デオキシ-D-リボフラノースを、ピリジン中で大過剰の無水酢酸または塩化ベンゾイルで処理することにより、容易に合成された。1,3,5-O-トリスアセチル-、およびトリスベンゾイル-2-デオキシ-D-リボフラノースの両方をエタノールから再結晶し得た。このアセチル誘導体は主にα異性体であり、そしてベンゾイル誘導体は1/1の比の2つの異性体を与えた。ピラノシド誘導体は形成されなかった(5%未満)。1,3,5-O-トリス(TBDMS)-2'-デオキシ-D-リボフラノシドを、t-ブチルジメチルシリルクロライド/イミダゾール/DMFとの反応によりデオキシリボースから合成した。
【0087】
アノマーアセタールは、酸触媒(例えばZnBr2)の存在下、アルコールで容易に交換され、3,5-O-ジアシル-または3,5-O-ジ-TBDMS-2'-デオキシ-リボフラノースのいずれかのアルコール誘導体が得られた。塩基(アシル基の場合、メタノール/1MK2CO3)またはフッ化物イオン(TBDMSの場合、THF中1Mフッ化テトラブチルアンモニウム)で3,5-O-保護基を除去し、置換された2'-デオキシ-リボフラノース誘導体を得た。
【0088】
種々の官能基を含むアルコールをこの方法で組み込んだ。代表的な例は、4-メチルオキシカルボニルベンジル、4-ニトロフェネチル、TFA-NH-アルキル(アリール)、およびN-(4ニトロベンジルオキシカルボニル)/FMOC-6-アミノヘキシルである。これらをすべて、対応するアルコールおよび1,3,5-トリ-O-アシル-2'-デオキシ-D-リボフラノースから、直接調製した。
【0089】
S-トリチル-11-メルカプト-1-ウンデシルの調製を、11-ブロモ-1-ウンデシル誘導体から成し遂げた。11-ブロモ-1-ウンデシル3,5-ジ-O-アセチル-2-デオキシ-D-リボフラノースの調製の後、塩基(1当量のNaOH水溶液)の存在下、トリチルメルカプタン(Tr-SH)との反応により、S-トリチル-11-メルカプトウンデシル2-デオキシ-D-リボフラノースを得た。あるいは、S-Tr-11-メルカプト-1-ウンデカノールを調製し、そしてアルコール成分として使用し得た。あるいは、ジスルファイトである-S-S-を含むアルコールを組み込むことが可能である。O-レブリニル-11-オキソ-ウンデシル誘導体を11-ブロモ誘導体を経て調製した。アセチル基の除去後、臭素をレブリン酸のCs塩で置換し、O-レブリニル-11-オキシ-ウンデシル2-デオキシ-D-リボフラノースを得た。あるいは、あらかじめ形成されたO-レブリニル-11-オキシ-1-ウンデカノールをアルコール成分として使用することもできた。
【0090】
適切なアルキル2-デオキシ-D-リボフラノシドアナログを、標準的な文献的手法を用いて、5-DMT誘導体に転換した。この2つのアノマー立体異性体は、シリカゲルクロマトグラフィで全く異なる移動度を有するDMT種を生じた。すべてのDMT中間体をシリカゲルクロマトグラフィで精製し、そして2つのアノマー立体異性体が容易に分離された。この種々のDMT中間体を、標準的な文献的手法を用いて、3-O-N,N-ジイソプロピルシアノエチル-ホスホルアミダイトに変換し、そしてそれらを、自動オリゴヌクレオチド合成中に通常のヌクレオシドシアノエチルホスホルアミダイトのように使用し得た。
【0091】
化学的に合成されたオリゴヌクレオチドからの保護基の除去は、標準の手法の最小限の変更だけを必要とした。
【0092】
4-メチルオキシカルボニルベンジル2-デオキシ-D-リボフラノース:メチルエステルの加水分解およびスクシネートの支持体への結合を、水酸化アンモニウムに曝露する前に、水/TEA/ジオキサン(1:1:10v/v;18時間)で行った。
【0093】
TFA/FMOC-NH-アルキルは、水酸化アンモニウムでの標準的な脱保護だけを要した。4-ニトロフェネチルおよびN-(4-ニトロベンジルオキシ-カルボニル)-6-アミノヘキシルの場合:ニトロ基のアニリノ基への還元を、0.1M亜ジチオン酸ナトリウム/1M TEAB/ジオキサンで5時間行い、洗浄し、次いで水酸化アンモニウムで脱保護して、それぞれ、遊離のアニリノおよびアミノ誘導化オリゴマーを得、これをPAGEにより精製した。
【0094】
支持体上のHPAA試薬での処理で、DNA合成は同じ支持体上で続けられ、分枝オリゴマーを生産し得る。側アームの長さを適切に選択すると、このモノマーは、クロスオーバー3重ヘリックス形成のための3'-3'で結合したオリゴデオキシヌクレオチドを作るのに有用である。例として、O-レブリニル-2-オキシエチル5-DMT-O-2-デオキシ-D-リボフラノシド 3'-O-succ-CPGがあり;第1の鎖を5'-DMTを使用して合成し、キャップ化して、レブリニル基を除去し、そして2-ヒドロキシエチル側鎖で合成を継続する。脱保護して、所望の5'-DNA1-3'3'-DNA2-5'オリゴマーを得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例に記載の化合物。

【公開番号】特開2006−68022(P2006−68022A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312035(P2005−312035)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【分割の表示】特願平8−508297の分割
【原出願日】平成7年8月24日(1995.8.24)
【出願人】(500095333)バイエル コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】