説明

非侵襲血液成分測定方法及び非侵襲血液成分測定装置

【課題】血管の断面形状が変形してしまった場合であっても、測定誤差を生ずることなく正確な測定結果を算出しうる非侵襲血液成分測定方法を提供する。
【解決手段】生体表面の血管に光を照射して照明された血管を撮像する工程、撮像された画像について血管を横切って分布する輝度分布に基づいて濃度プロファイルを抽出する工程、濃度プロファイルのピーク値と血管径に対応するピーク幅とを用いて血液成分濃度を演算する工程、及び、濃度プロファイルの形状的特徴に基づいて血液成分濃度を補正する工程を備える。特に、濃度プロファイルの形状的特徴として濃度プロファイルの尖度及びピークにおける所定高さの分布幅を求め、これらに基づいて血管の楕円率からなる血管断面形状指標を算出して血液成分濃度を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、生体から採血することなく経皮的に被測定対象の血液成分を測定する非侵襲血液成分測定方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検者に採血を行うことなく非侵襲的にヘモグロビン濃度を測定する方法及び装置が提案されている。例えば下記特許文献1(国際特許公開WO97/24066号公報)には「非侵襲血液検査装置」として、血管を含む生体組織を光源で照明してその透過光像を撮像し、撮像された画像について血管を横切って分布する画像濃度分布を画像の濃度プロファイルとして抽出し、抽出した濃度プロファイルから血管に対応する部分をベースラインで切り取り、切り取ったプロファイルに基づいて血液成分を測定するようにした装置が開示されている。
【0003】
ここで、切り取ったプロファイルのピーク高さは血液が存在する部分と存在しない部分との比として、ピーク半値幅は血管の幅であるとして演算処理が行われる。すなわち血管断面が真円であるならば、撮像方向の血管径とこれと直交する方向の血管径は等しくなる。したがって画像中の血管径に対応する分布幅を照射光が血液中を移動した距離と置換し、近似的にBeerの法則が成り立っているとして演算処理を行えばヘモグロビン濃度を算出することが可能である。
【特許文献1】国際特許公開WO97/24066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら血管断面は常に真円であるとは限らず、種々の要因によって変形することがある。すなわち充分な血液が流れている場合には血管が膨張して断面は円形になるが、充分に血液が流れていない場合には血流の圧力が弱まり血管が収縮するため、血管断面は真円でなく楕円になる。例えば外的温度が低い場合や、測定する際の手首の曲げ具合、あるいは末梢血管に障害がある場合などは血流量が不十分になりやすく、血管が収縮して血管断面が変形してしまう。
【0005】
上記特許文献1に開示された発明は、上記のとおり血管断面が真円であることを前提としてヘモグロビン濃度を測定するものであるから、血管断面が変形してしまうと正確な測定ができず、実測値との間に測定誤差が生じてしまう虞があった。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、被検生体から得られた濃度プロファイルの形状的特徴に基づいてヘモグロビン濃度を補正することにより、血管の断面形状が何らかの要因によって変形してしまった場合であっても、測定誤差を生ずることなく正確な測定結果を算出しうる非侵襲血液成分測定方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の局面による非侵襲血液成分測定方法は、
生体表面の血管に光を照射して照明された血管を撮像する工程、
撮像された画像について血管を横切って分布する輝度分布に基づいて濃度プロファイルを作成する工程、
濃度プロファイルのピーク値と血管径に対応する分布幅とを用いて血液成分濃度を演算する工程、及び、
濃度プロファイルの形状的特徴に基づいて血液成分濃度を補正する工程、を備える。
【0008】
特に、前記濃度プロファイルの形状的特徴として、濃度プロファイルの尖度及びピークにおける所定高さの分布幅を用いるよう構成されていることが好ましい。
【0009】
また、本発明の第二の局面による非侵襲血液成分測定装置は、生体表面の血管を照明する光源部と、前記生体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像して得られた画像について血管を横切って分布する輝度分布に基づいて濃度プロファイルを作成して濃度プロファイルのピーク値と血管径に対応する分布幅とを用いて血液成分濃度を演算し、さらに濃度プロファイルの形状的特徴に基づいて血液成分濃度を補正する解析部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る非侵襲血液成分測定方法及び装置によれば、血管の形状がなんらかの要因によって変形してしまった場合であっても、高精度かつ安定的に血液成分の測定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の非侵襲血液成分測定装置の実施の形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る非侵襲血液成分測定装置1の概略構成を示す図である。この非侵襲血液成分測定装置1は、腕時計型の血液成分分析装置であり、装置本体3と保持具4とを備えている。装置本体3は、保持具4によって人間の手首に装着される。なお、装置本体3は保持具4によって手首の周方向に位置調整可能に装着される。装置本体3の側面には、使用者が非侵襲血液成分測定装置1を操作するための電源/実行キー38とメニューキー39とが設けられている。また、手首よりも心臓に近い使用者の腕部には、加圧帯2(カフ)が装着される。加圧帯2は、使用者の腕を所定の圧力で加圧して、手首周辺の血流を阻害し、手首の血管(静脈)を膨張させる。このように加圧帯2で手首を加圧した状態で測定を行うことにより、血管の撮像が容易になる。
【0012】
図2は、非侵襲血液成分測定装置1の構成を示す断面説明図である。装置本体3は、外側ケース35と、外側ケース35の裏側に配置された裏蓋37と、裏蓋37の下部に取り付けられた係合部材41とを備えている。また、外側ケース35の中央には、後述する計測ユニット5を収容するために円筒状のユニット保持部35aが形成されている。一方、裏蓋37及び係合部材41の中央には、ユニット保持部35aを受け入れるための空間部が形成されている。このユニット保持部35aの外壁の中間部からは、一対の突出部35c、35dが水平方向に延びている。この突出部35cと裏蓋37との間及び突出部35dと裏蓋37との間は、それぞれ圧縮スプリング37a、37bによって接続されている。これら圧縮スプリング37a、37bにより、外側ケース35は、裏蓋37に向かって付勢される。また、係合部材41の側面には、凹状に窪んだ係合部41aが形成されており、後述する支持台42の内方突出部42aに係合可能になっている。
【0013】
前記保持具4は、支持台42とリストバンド43とで構成されている。支持台42は上面形状が長方形であり、その中央部には、装置本体3の係合部材41を嵌着するための円形の開口部が形成されている。この開口部の端縁には、係合部材41が軸AZの周りに回動可能に係合される係合部42aが設けられている。支持台42には、伸縮自在なゴム製のリストバンド43が取り付けられている。なお、外側ケース35及び裏蓋37は、光を透過させない材料で作製されている。
【0014】
ユニット保持部35aには、測定ユニット5が支持されている。この測定ユニット5は、光源部51と、撮像部52と、制御部53と、表示部54とで構成されており、光源部51、撮像部52及び表示部54と制御部53とは、相互に電気信号のやり取りが可能なように配線コード、フラットケーブル(図示せず)等で接続されている。
【0015】
次に、光源部51について説明する。図3は、光源部51の構成を示す平面図である。光源部51は、円板状の保持板51aと、この保持板51aに保持された4つの発光ダイオードR1、R2、L1、L2とから構成されている。保持板51aの中央には、撮像部52へ入射する光を通過させる為の円形の開口部51bが設けられており、この開口部51bの周囲に沿って、前述した発光ダイオードが配置されている。
【0016】
図4は、保持板51aに設けられた4つの発光ダイオードの位置関係を示す図である。発光ダイオードR1、R2、L1、L2は、開口部51bの中心を通り互いに直交する第1軸AYと第2軸AXにそれぞれ対称に配置されている。非侵襲血液成分測定装置1が手首に装着された状態において、手首表面の撮像領域CRは、撮像部52により撮像され、表示部54に表示される領域である。発光ダイオードL1及びL2(第2光源部)側の指標線62aと、発光ダイオードR1及びR2(第1光源部)側の指標線62bとの間の領域62cが、撮像部52による撮像に適した領域、即ち撮像の際に血管を位置させる領域である。なお、指標線62a及び62bは、制御部53により、表示部54に表示される。血液成分の分析を行う際には、手首の任意の血管が、前記領域62c内に位置するように装置本体3の装着位置を調整する。そして、血管は、発光ダイオードR1、R2、L1、L2によって、両側から近赤外光(中心波長=805nm)で照明される。
【0017】
次に、撮像部52の構成について説明する。図2に示されるように、撮像部52は、反射光の焦点を絞るためのレンズ52aと、レンズ52aを固定する鏡筒52bと、画像を撮像するCCDカメラ52cとで構成されており、撮像領域CRの画像を撮像することが可能である。レンズ52a及び鏡筒52bは、内部が黒色の円筒形の遮光筒52dに挿入されている。CCDカメラ52cは、結像した画像を撮像し画像信号として制御部53に送信する。
【0018】
制御部53の構成について説明する。制御部53は、CCDカメラ52cの上部に設けられている。図5は、測定ユニット5の構成を示すブロック図である。制御部53は、CPU53aと、メインメモリ53bと、フラッシュメモリカードリーダ53cと、光源部入出力インタフェース53dと、フレームメモリ53eと、画像入力インタフェース53fと、入力インタフェース53gと、通信インタフェース53hと、画像出力インタフェース53iとを備えている。CPU53aと、メインメモリ53b、フラッシュメモリカードリーダ53c、光源部入出力インタフェース53d、フレームメモリ53e、画像入力インタフェース53f、入力インタフェース53g、通信インタフェース53h、及び画像出力インタフェース53iとは、相互にデータ伝送が可能であるようにデータ伝送線を介して接続されている。この構成により、CPU53aは、メインメモリ53b、フラッシュメモリカードリーダ53c、及びフレームメモリ53eに対するデータの読み出し、書込み、並びに、光源部入出力インタフェース53d、画像入力インタフェース53f、入力インタフェース53g、画像出力インタフェース53i、及び通信インタフェース53hに対するデータの送受信が可能となる。
【0019】
CPU53aは、メインメモリ53bにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなコンピュータプログラムをCPU53aが実行することにより、本装置が非侵襲血液成分測定装置として機能する。
メインメモリ53bは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。メインメモリ53bは、フラッシュメモリカード53jに記憶されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU53aの作業領域として利用される。
【0020】
フラッシュメモリカードリーダ53cは、フラッシュメモリカード53jに記憶されたデータの読み出しに使用される。フラッシュメモリカード53jは、フラッシュメモリ(図示せず)を有しており、外部から電力を供給されなくても、データを保持することができるようになっている。また、フラッシュメモリカード53jには、CPU53aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記憶されている。
【0021】
また、フラッシュメモリカード53jには、例えばTRON仕様準拠のオペレーティングシステムがインストールされている。なお、オペレーティングシステムは、これに限定されるものではなく、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインターフェース環境を提供するオペレーティングシステムであってもよい。以下の説明においては、本実施の形態に係るコンピュータプログラムはこれらオペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0022】
光源部入出力インタフェース53dは、D/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェースから構成されている。光源部入出力インタフェース53dは、光源部51に設けられた4つの発光ダイオードR1、R2、L1、L2と夫々電気信号線によって電気的に接続されており、かかる発光ダイオードの動作制御を行うことが可能である。かかる光源部入出力インタフェース53dは、後述するようなコンピュータプログラムに基づいて、発光ダイオードR1、R2、L1、L2に与える電流を制御する。
【0023】
フレームメモリ53eは、SRAM又はDRAM等によって夫々構成されている。フレームメモリ53eは、後述する画像入力インタフェース53fが画像処理を実行するときに、データの格納用に利用される。
画像入力インタフェース53fは、A/D変換器を含むビデオデジタイズ回路(図示せず)を備えている。画像入力インタフェース53fは、CCDカメラ52cに電気信号線によって電気的に接続されており、当該CCDカメラ52cから、画像信号が入力されるようになっている。CCDカメラ52cから入力された画像信号は、画像入力インタフェース53fでA/D変換される。このようにデジタル変換された画像データは、フレームメモリ53eに格納されるようになっている。
【0024】
入力インタフェース53gは、A/D変換器からなるアナログインタフェースから構成されている。入力インタフェース53gには、電源/実行キー38とメニューキー39が電気的に接続されている。この構成により、使用者は、メニューキー39を使用することにより、装置の動作項目の選択を行い、電源/実行キー38を使用することにより、装置の電源のON/OFF及びメニューキー39により選択を行った動作を装置に実行させることが可能である。
【0025】
通信インタフェース53hは、例えばUSB、IEEE1394、RS232C等のシリアルインタフェース、又は、SCSI等のパラレルインタフェースから構成されている。制御部53は、当該通信インタフェース53hにより、所定の通信プロトコルを使用して、モバイルコンピュータ・携帯電話等の外部接続機器との間でデータの送受信が可能である。これにより、制御部53は、かかる通信インタフェース53hを介して、測定結果データを当該外部接続機器へ送信する。
【0026】
画像出力インタフェース53iは、表示部54に電気的に接続されており、CPU53aから与えられた画像データに基づいた映像信号を表示部54に出力するようになっている。
【0027】
次に、表示部54について説明する。図2に示すように、表示部54は、測定ユニット5の上部に設けられており、外側ケース35に支持されている。この表示部54は、液晶ディスプレイで構成されており、画像出力インタフェース53iから入力された映像信号に従って画面表示を行う。この画面表示は、非侵襲血液成分測定装置1の状態に応じて切り替えられ、例えば、スタンバイ状態、血管位置合わせ時、測定終了状態に対応した画面が表示部54に表示される。
【0028】
図6は、非侵襲血液成分測定装置1がスタンバイ状態にある場合に表示される画面の一例を示す図である。非侵襲血液成分測定装置1がスタンバイ状態にある場合、表示部54の画面中央には、日付・時刻が表示される。また、表示部54の画面右下は、メニュー表示領域54aとなっており、電源/実行キー38を押した場合の非侵襲血液成分測定装置1の動作が表示され、スタンバイ状態にある場合には「測定」と表示される。
【0029】
図7は、血管位置合わせ時に表示される画面の一例を示す図である。本実施の形態に係る非侵襲血液成分測定装置1では、撮像部52による撮像に適した領域を示す指標が表示部54に表示されるとともに、血管画像が撮像に適した領域内に位置しているか否かを判定できるように構成されている。血管の位置合わせを行う場合には、撮像画像とともに、後述するようにして形成される血管パターン61と、指標線62a、62bとが表示される。
【0030】
血管パターン61が領域62c(図4参照)内に位置していない場合には、指標線62a及び指標線62bは赤色で表示され、血管パターン61が領域62c内に位置する場合には、指標線62a及び指標線62bは青色で表示される。これにより、血管パターン61が領域62c内に位置するか否かを使用者が容易に把握することができる。
使用者はかかる表示に応じて、血管パターン61が領域62c内に収まるよう装置本体3を移動させ、あるいは回動させることにより位置調整を行う。
このような血管位置合わせ時には、メニュー表示領域54aには、「続行」と表示され、血管パターン61が領域62c内に位置した場合、指標線62a、62bとが青色で表示され、電源/実行キー38が有効となり、使用者がこれを押すと測定が続行される。
【0031】
図8は、非侵襲血液成分測定装置1による測定が終了した場合の画面の一例を示す図である。血液成分であるヘモグロビン濃度の測定結果は、「15.6g/dl」と、使用者に見易いようにデジタル表示で表示部54に表示される。このとき、メニュー表示領域54aには、「確認」と表示される。
【0032】
次に、非侵襲血液成分測定装置1の測定動作について説明する。図9は、非侵襲血液成分測定装置1による測定動作を示すフローチャートである。まず使用者の腕部に加圧帯2、手首に非侵襲血液成分測定装置1が装着される(図1参照)。このとき使用者の腕は、加圧帯2によって所定の圧力で加圧されて、手首周辺の血流が阻害され、手首の血管が膨張する。次に、使用者が、非侵襲血液成分測定装置1に設けられた電源/実行キー38を押して、非侵襲血液成分測定装置1の電源を入れると、ソフトウェアの初期化が行われるとともに各部の動作チェックがおこなわれ(ステップS1)、装置はスタンバイ状態となり、表示部54にスタンバイ状態のスタンバイ画面(図6参照)が表示される(ステップS2)。
【0033】
スタンバイ状態の画面が表示部54に表示されているときに、使用者によって電源/実行キー38が押されると(ステップS3でYes)、図7に示される位置決め画面が表示部54に表示される(ステップS4)。このとき、CPU53aは、光源部51に設けられた発光ダイオードR1、R2、L1、L2を夫々所定の光量で点灯させ、撮像領域CR(図4参照)を照明し、照明された撮像領域CRを撮像する(ステップS5)。
【0034】
図10は、撮像領域CRを含む長方形の領域を0≦x≦640、0≦y≦480の範囲でx、yの2次元の座標に座標分割した図である。CPU53aは撮像領域CRの画像を含む長方形の領域Aの最も左上の画素の座標を(0、0)として、領域Aをx、yの2次元の座標に座標分割し、座標分割した点の中から(240、60)、(400、60)、(240、420)、(400、420)の4点を選択し、この4点で囲んだ領域Bの平均輝度を求める(ステップS6)。なお、この平均輝度を求める領域Bの点は、これに限定されることはなく、他の座標でもよいことは言うまでもない。また、領域Bは、四角形以外の多角形、又は円であってもよい。
【0035】
次に、CPU53aは、領域Bの輝度が目標範囲内であるか否かを判定する(ステップS7)。領域Bの輝度が目標範囲外である場合は、光源部入出力インタフェース53dを用いて、発光ダイオードR1、R2、L1、L2に流れる電流量を調整し、これらの光量調整を行い(ステップS8)、処理をステップS1に戻す。領域Bの輝度が目標範囲内であった場合には(ステップS7でYes)、CPU53aは、後述する輝度プロファイルの算出対象のy座標値を初期値(40)に設定する(ステップS9)。そして設定されたy座標値(40)におけるx座標の端から端までの画素の輝度を求める。
【0036】
図11は所定のy座標におけるx方向の画素の輝度プロファイル(輝度プロファイルPF)の一例を示す図である。上記の処理により輝度が求められると、所定のy座標におけるx方向の画素の輝度プロファイル(輝度プロファイルPF)が求められる(ステップS10)。さらに、CPU53aは、設定したy座標値が終値(440)であるかを判定する(ステップS11)。y座標値が終値(440)でない場合(ステップS11でNo)、CPU53aは、y座標値を所定値(20)だけインクリメントし(ステップS12)、ステップS10に処理を戻す。y座標値が終値(440)である場合(ステップS11でYes)、CPU53aは、抽出された各輝度プロファイルの中で、最も輝度が低い点(以下、「輝度最下点」とする)を抽出し、フレームメモリ53eに記憶する(ステップS13)。
【0037】
図12は、血管の位置を求める方法を示す説明図である。血管の位置を求めるために、CPU53aは、撮像領域CRの画像の中心付近の輝度最下点(a1,b1)と、この輝度最下点(a1,b1)の縦方向に隣り合った輝度最下点(a2,b2)及び(a3,b3)とをそれぞれ連結する。次に、CPU53aは、輝度最下点(a2,b2)と縦方向に隣り合った点とを連結し、また、輝度最下点(a3,b3)と縦方向に隣り合った点とを連結する。CPU53aは、この動作を画像の全領域において繰り返し、血管を線分列として抽出し、血管パターン61を形成する(ステップS14)。CPU53aは、撮像した撮像領域CRの画像を表示部54に表示し(図7参照)、さらに、ステップS5によって形成された血管パターン61と、フラッシュメモリカード53jに記憶された指標線62a及び指標線62b(図4参照)を表示する(ステップS15)。そして、CPU53aは、血管パターン61が領域62c(図4参照)に位置しているか否かを判定する(ステップS16)。血管パターン61が領域62c内に位置していない場合には(ステップS16でNo)、使用者が装置本体3を動かすべき方向を指示し(ステップS17)、処理をステップS1に戻す。
【0038】
血管パターン61が領域62c内に位置する場合は(ステップS16でYes)、CPU53aは、電源/実行キー38を有効化して、測定を続行可能とする。このとき、CPU53aは、電源/実行キー38が有効化されたことを、音を鳴らして使用者に知らせる(ステップS18)。次に、CPU53aは、電源/実行キー38からの入力を待機する(ステップS19)。使用者により、電源/実行キー38が押され、測定続行が指示されると(ステップS19でYes)、CPU53aは、ヘモグロビンの濃度測定を行い(ステップS20)、測定結果を図8に示されるように表示部54に表示する(ステップS21)。
【0039】
図13は、図9に示されるフローチャートのステップS20で実行されるヘモグロビン濃度の計測処理の詳細を示すフローチャートである。CPU53aは電源/実行キー38が操作されると、光源部入出力インタフェース53dを制御し、血管を挟んで両側に配設された光源のうち、一方の光源である発光ダイオードR1、R2(第1光源部)によって血管を含む生体を適切な光量で照明し(ステップS101)、これを撮像部52で撮像する(ステップS102)。さらに、CPU53aは、領域Bの平均輝度が100を超えているか否かを判定し(ステップS103)、輝度が100を超えない場合は、光源部入出力インタフェース53dを用いて、発光ダイオードR1、R2に流れる電流量を調整し、これらの光量調整を行い(ステップS104)、処理をステップS102に戻す。
【0040】
なお、ここでいう輝度の値は、本実施の形態においては、使用されている画像入力インタフェース53fが有する8ビットのA/D変換器のデジタル変換値(0〜255まで変化する)のことである。これは、画像の輝度とCCDカメラ52cから入力された画像信号の大きさとは、比例関係にあるため、画像信号のA/D変換値(0〜255)を輝度の値としたためである。
【0041】
領域Bの平均輝度が100を超える場合は(ステップS103でYes)、CPU53aは、ステップS102によって得られた画像について輝度プロファイルPF1及び入射光量に依存しない濃度プロファイルNP1を得る(ステップS105)。さらに、CPU53aは、光源部入出力インタフェース53dを制御し、血管を挟んで両側に配設された光源のうち、他方の光源である発光ダイオードL1、L2(第2光源部)によって、血管を含む生体を適切な光量で照明し(ステップS106)、これを撮像部52で撮像する(ステップS107)。さらに、CPU53aは、領域Bの平均輝度が100を超えているか否かを判定し(ステップS108)、輝度が100を超えない場合は、光源部入出力インタフェース53dを用いて、発光ダイオードL1、L2に流れる電流量を増加させ、これらの光量調整を行い(ステップS109)、ステップS107に処理を戻す。
【0042】
領域Bの平均輝度が100を超える場合は(ステップS108でYes)、CPU53aはステップS107によって得られた画像についてステップS105と同様の処理を行い、輝度プロファイルPF2及び入射光量に依存しない濃度プロファイルNP2を得る(ステップS110)。
【0043】
図15は、位置Xに対する輝度Bの分布を示す図であり、ステップS105により輝度プロファイルPF1、ステップS110により輝度プロファイルPF2が形成される。図16は、位置Xに対する濃度Dの分布を示す図であり、ステップS105により濃度プロファイルNP1、ステップS110により濃度プロファイルNP2が形成される。
【0044】
CPU53aは、ステップS105により得られた濃度プロファイルNP1からピーク高さh1及び重心座標cg1と、ステップS110により得られた濃度プロファイルNP2からピーク高さh2及び重心座標gc2とをそれぞれ導出し、これらを用いて、次の算出式(1)により血管深さ指標Sを算出する。さらに、CPU53aは、この算出結果をフレームメモリ53eに記憶する(ステップS111)。
S=(cg2−cg1)/{(h1+h2)/2}……(1)
また、CPU53aは、ステップS105により得られた輝度プロファイルPF1、ステップS110により得られた輝度プロファイルPF2に基づいて、血管の左右の光源(発光ダイオードR1、R2、及び発光ダイオードL1、L2)の光量比及び光量を算出し(ステップS112)、得られた結果に基づいて両光源の光量調整を行う(ステップS113)。
【0045】
ついで、CPU53aは光源部入出力インタフェース53dを制御し、光量調整された発光ダイオードR1、R2、L1、L2によって撮像領域CR(図4参照)を照明し、これを撮像部52で撮像する(ステップS114)。次に、CPU53aは図10に示される領域Bの平均輝度を求め、求めた領域Bの平均輝度が150を超えるか否かを判定する(ステップS115)。輝度が150を超えない場合は、エラー表示を行う(ステップS116)。
【0046】
領域Bの平均輝度が150を超える場合は(ステップS115でYes)、CPU53aが、撮像領域CR(図4参照)中の軸AXに対する、第1輝度分布を示す輝度プロファイル(位置Xに対する輝度Bの分布)PF(図11)を作成し、高速フーリエ変換等の手法を用いてノイズ成分を減少させる。さらに、CPU53aは、この輝度プロファイルPFをベースラインBLで規格化する。当該ベースラインBLは、血管による吸収部分の輝度プロファイルの形状を基に求める。このようにすることにより、入射光量に依存しない濃度プロファイル(位置Xに対する濃度Dの分布)NPを得ることができる(ステップS117)。
【0047】
図14は、位置Xに対する濃度Dの分布を示す図であり、図に示されるような濃度プロファイルNPが作成される。次にCPU53aは、作成された濃度プロファイルNPに基づいてピーク高さh及び血管径に対応する分布幅として半値幅wを算出する。半値幅wとは、濃度プロファイルNPのピーク高さの50%における分布幅である。ここで得たhは計測対象の血管(血液)により吸収された光強度と組織部分を通過してきた光強度の比を表し、wは撮像方向に直交する方向の血管径に相当する長さを表す。さらに、CPU53aは、次の算出式(2)により無補正ヘモグロビン濃度Dを算出し、結果をフレームメモリ53eに記憶する。(ステップS118)。
D=h/w……(2)
ただし、nは、散乱による半値幅の広がりの非線形を表す定数である。光散乱のない場合
は、n=1、散乱のある場合はn>1である。
【0048】
次に、CPU53aはステップS101において得られた生体画像中の血管周辺組織像に基づいて、当該周辺組織中に含まれる血液量を表す組織血液量指標Mを算出する。具体的には、生体画像中の血管像から所定の距離(例えば、2.5mm)にある当該生体画像中の血管周辺組織像に、前記血管像に沿って分布する第2輝度分布を抽出する。生体画像には、目的とする血管だけでなく当該血管の周辺の組織も撮像されている。そして組織中の血液量に比例して光が減衰することから、当該周辺組織の光の減衰率を算出することで、周辺組織中の血液量を推定することができる。CPU53aはかかる算出結果をフレームメモリ53eに記憶する(ステップS119)。
【0049】
さらに、CPU53aはステップS117で得られた山状の濃度プロファイルNPを解析し(ステップS120)、濃度プロファイルNPの形状的特徴から被測定血管の断面形状を表す血管断面形状指標Nを算出する(ステップS121)。以下この処理について詳述する。
【0050】
まずステップS117において得られた濃度プロファイルNPに対して切り出し高さHを設定して、切り出し範囲における濃度プロファイルNPを確率変数の分布密度関数とみなし、その関数における尖度kと、切り出し高さHにおける分布幅wkを算出する。図17は切り出し高さHにおける分布幅wkの算出処理を説明するための模式図である。切り出し高さHは、図に示すとおりピーク高さhに対して何%より上の範囲を対象とするかを規定するものである。尖度kは切り出さし高さHより上に分布する濃度プロファイルNPから求められ、分布幅wkは切り出された範囲における濃度プロファイルNPの分布幅から求められる。なおH=0.01%であることが好ましい。
【0051】
以上において求められた尖度k及び分布幅wkの値を次式(3)に代入し、血管断面の楕円率からなる血管断面形状指標Nを求める。
N={(k+α)/wkβ}/(π・w)……(3)
なおα、βはそれぞれ実験的に決定される定数であり、πは円周率である。定数α、βが決定されれば、尖度k、分布幅wk及び半値幅wは濃度プロファイルNPを解析することで求められるので、上式(3)により血管断面形状指標Nが算出される。上式(3)の導出原理については後述する。
【0052】
CPU53aは、ステップS111で算出した血管深さ指標Sに基づいて補正計数fsを、ステップS119で算出した組織血液量指標Mに基づいて補正係数fmを導出し、さらにステップS121において求められた血管断面形状指標Nに基づいて補正係数fnを導出する。これらの補正係数を用いて、次の算出式(4)からなる補正ヘモグロビン濃度Dを算出する(ステップS122)。
=D×fs×fm×fn……(4)
CPU53aはステップS122での算出結果をフレームメモリ53eに記憶し(ステップS123)、表示部54が測定結果を図8に示すように表示して(ステップS124)、処理が終了する。
【0053】
なお本実施の形態においては、血管深さ指標S、組織血液量指標M及び血管断面形状指標Nを順次算出し、すべての補正指標が算出された時点で補正係数を求めて、無補正ヘモグロビン濃度Dを補正する構成としたが、本発明の構成はこれに限らず種々の変更が可能である。例えば、血管深さ指標Sが算出された時点で補正を行い、さらに組織血液量指標Nが算出された時点で補正を行うというように、段階的にヘモグロビン濃度Dを補正する構成であってもよい。
【0054】
ここで、上式(3)が導出される原理について説明する。まず、上記において算出された尖度k及び分布幅wkとの関係に基づいて、以下に示す方法により血管の断面積Saを推定する。
【0055】
図18は、断面積の異なる3種類の血管に基づいて抽出された濃度プロファイルNPに対し、切り出し高さHを0.01%として、血管断面の扁平度合いを段階的に変化させたときの濃度プロファイルNPの尖度kと、切り出し高さHにおける分布幅wkとの関係をプロットしたグラフである。縦軸が尖度k、横軸が分布幅wkを示しており、同一断面積に関するデータは同一の記号で表示している。
同図から、血管断面の扁平度合いを変化させたとしても、断面積が変化しない限り尖度k及び分布幅wkは一定の相関曲線を描いて変化していることが分かる。これはすなわち、尖度kと切り出し高さHにおける分布幅wkが求められれば、これらを指標として被測定対象の血管の断面積Saを推定することが可能であることを意味している。
【0056】
以上の点に着目し、本実施形態においては、あらかじめ尖度kと切り出し高さHにおける分布幅wkとに基づいて血管の断面積Saを算出しうる次式(5)からなる近似式を求めた。
Sa=(k+α)/wkβ……(5)
なおα、βはそれぞれ実験的に決定される定数である。
【0057】
また別の観点から、血管の断面形状が楕円であるとしたときの楕円の面積Saは次式(6)によって求められる。撮像方向(図2における軸AZ方向)の血管径をa、撮像方向に直交する方向(図2において平面視でAZ軸と直交する方向)の血管径をbとすると
Sa=π・a・b……(6)
が成り立つ。
すると、上式(5)及び(6)より、
π・a・b=(k+α)/wkβ……(7)
が成り立つ。
ここで、血管断面形状指標Nは血管断面の形状を表す指標であるから、血管が円又は楕円であるとしたとき血管の断面形状を最もよく表す指標としては楕円率、すなわち血管の長径と短径の比が適している。上式(7)のうち、a、bはそれぞれ血管断面の長径と短径に対応するから、左辺がa/bとなるよう式(7)を解くと、
a/b={(k+α)/wkβ}/(π・b)……(8)
となる。
さらに、上式(8)のうちbは撮像方向に直交する方向の血管径であるから、濃度プロファイルNPの半値幅wに置き換えることが可能である。したがって、
N=a/b={(k+α)/wkβ}/(π・w)……(9)
が成り立つ。以上より楕円率からなる血管断面形状指標Nの算出式が導き出される。
【0058】
図19は、複数の被検者のヘモグロビン濃度について、血球計数装置などから得られた実測値と本発明の実施の形態にかかる非侵襲血液成分測定装置1による算出値とをプロットしたグラフである。同図に示されるとおり、実測値と非侵襲血液成分測定装置1による算出値とが傾き1の直線によって囲まれた領域の近傍に存在しており、実測値と算出値とが乖離していないので、非侵襲血液成分測定装置1がヘモグロビン濃度を高精度で計測できていることがわかる。
【0059】
さらに図20は、複数の被検者のヘモグロビン濃度について、手首の曲げ具合を3通り(内向き、水平、反り)に変化させて本発明にかかる非侵襲血液成分測定装置1により算出したヘモグロビン濃度と、血球計数装置などから得られた実測値との誤差を測定した結果を示す図である。斜線の棒グラフが本発明に係る非侵襲血液成分測定装置によって測定した結果を、白抜きの棒グラフが従来の装置によって測定した結果を示している。同図からも明らかように、手首の曲げ具合を如何に変化させても実測値との誤差は1g/dl以内に抑えられており、且つ手首の曲げ具合が異なる場合であっても測定値のバラつきのない測定結果が得られていることが分かる。したがって本発明によれば外的要因によって血管の膨張状態が変化した場合であっても高精度かつ安定的なヘモグロビン測定を行うことが可能である。
【0060】
以上において説明したとおり、本実施の形態においては、ステップS121において濃度プロファイルNPから尖度k及び分布幅wkを算出し、上式(3)によって血管断面形状指標Nを求め、これに基づいてステップS122において補正係数fnを算出して無補正ヘモグロビン濃度Dを補正する構成について説明したが、これに限らず、他のヘモグロビン濃度の算出方法を適用することもできる。
【0061】
例えば、無補正ヘモグロビン濃度Dの算出式(2)におけるwは、本来は光路長を示す値が用いられるところ濃度プロファイルNPの半値幅wによって代用しているものであるから、wを光路長を示す値に置き換えれば、血管断面形状指標Nを求めて無補正ヘモグロビン濃度Dを補正するという工程を経ることなく正確なヘモグロビン濃度を算出することができる。
【0062】
ここで光路長とは光が血管を透過する距離であるから、撮像方向の血管径aに等しい。したがって上式(2)は次式(10)に置き換えることができる。
D=h/a……(10)
また、上式(9)をaについて解くと、
a={(k+α)/wkβ}/(π・w)……(11)
となる。上式(11)によって濃度プロファイルの形状的特徴から撮像方向の血管径aを求める式が実現される。
そこで上式(10)、(11)より
D=h/[{(k+α)/wkβ}/(π・w)]……(12)
が成り立つ。
【0063】
上式(12)によれば、濃度プロファイルからは直接定量化することが困難な撮像方向の血管径を反映したヘモグロビン濃度測定が可能となる。
【0064】
そこで上記実施の形態の変更例として、ステップS118におけるヘモグロビン濃度の算出式として上式(12)を用いることにより、撮像方向の血管径を用いた無補正ヘモグロビン濃度Dの算出を行うことが可能である。この場合はステップS121における血管断面形状指標Nを求める工程を経る必要がなく、アルゴリズムの構成を簡単にすることができる。
【0065】
なお、上式(12)によってヘモグロビン濃度を測定した場合であっても、上記において説明した方法により血管深さ指標S及び組織血液量指標Mに基づいてヘモグロビン濃度Dを補正することで、さらに高精度な測定結果を算出することができる。
【0066】
また、さらに別の観点から考えれば、以下に示すような方法によってもヘモグロビン濃度を算出することが可能である。上式(10)からも明らかなとおり、ヘモグロビン濃度Dは濃度プロファイルNPのピーク高さhと血管径aの比から求められる。ここで、濃度プロファイルのピーク高さhは対象血管に入射した光が最も長い距離を移動する部分、すなわち血管径aの長さを反映しているように、濃度分布上の位置Xにおける濃度プロファイルNPの高さhは、これに対応する距離の光路長aを反映している。
つまり濃度プロファイルNPは、血管のある点に入射した光が血管内で吸光され、血管外へ放射されるときの濃度プロファイルが分布幅全域に亘って存在し、それらを積分したものであると考えることができ、濃度プロファイルNPの位置Xにおける濃度プロファイルNPの高さhの総和は、光が血管内を透過する光路長aの総和を反映している。濃度プロファイルNPの高さの総和は濃度プロファイルNPの面積に等しく、光路長の総和は血管の断面積に等しいから、上式(10)は次式(13)に置き換えることができる。
D=A/Sa……(13)
なお、Aは濃度プロファイルの面積である。血管の断面積Saは、濃度プロファイルに基づいて尖度k及び分布幅wkが算出されれば上式(5)によって求めることができる。したがって濃度プロファイルの面積Aを求めることができれば、上式(13)によってヘモグロビン濃度Dを算出することができる。
【0067】
そこで上記実施の形態のさらなる変更例として、ステップS118におけるヘモグロビン濃度の算出式として上式(13)を用いることにより無補正ヘモグロビン濃度Dの算出を行うことも可能である。この場合もステップS121における血管断面形状指標Nを求める工程を経る必要がなく、アルゴリズムの構成を簡単にすることができる。
【0068】
また、上式(13)によって無補正ヘモグロビン濃度を算出した場合であっても、上記において説明した方法により血管深さ指標S及び組織血液量指標Mに基づいて無補正ヘモグロビン濃度Dを補正することで、さらに高精度な測定結果を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の非侵襲血液成分測定装置の一実施の形態の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示される非侵襲血液成分測定装置の断面説明図である。
【図3】光源部の構成を示す平面図である。
【図4】保持板に設けられた発光ダイオードの位置関係を示す図である。
【図5】測定ユニットの構成を示すブロック図である。
【図6】非侵襲血液成分測定装置がスタンバイ状態にある場合の画面の一例を示す図である。
【図7】非侵襲血液成分測定装置が血管位置合わせ時に表示される画面の一例を示す図である。
【図8】非侵襲血液成分測定装置による測定が終了した場合の画面の一例を示す図である。
【図9】非侵襲血液成分測定装置による測定動作を示すフローチャートである。
【図10】撮像領域CRを含む長方形の領域を0≦x≦640、0≦y≦480の範囲でx、yの2次元の座標に座標分割した図である。
【図11】所定のy座標におけるx方向の画素の輝度プロファイル(輝度プロファイルPF)の一例を示す図である。
【図12】血管の位置を求める方法を示す説明図である。
【図13】図9に示すフローチャートのステップS11で実行されるヘモグロビン濃度の計測処理の詳細を示すフローチャートである。
【図14】位置Xに対する濃度Dの分布を示す図である。
【図15】位置Xに対する輝度Bの分布を示す図である。
【図16】位置Xに対する濃度Dの分布を示す図である。
【図17】切り出し高さHにおける分布幅wkの算出処理を説明するための模式図である。
【図18】血管断面の扁平度合いを段階的に変化させたときの濃度プロファイルの尖度と分布幅との関係をプロットしたグラフである。
【図19】複数の被検者のヘモグロビン濃度について、血球計数装置などから得られた実測値と本発明の実施の形態にかかる非侵襲血液成分測定装置による算出値とをプロットしたグラフである。
【図20】複数の被検者のヘモグロビン濃度について、手首の曲げ具合を変化させて本発明の実施の形態にかかる非侵襲血液成分測定装置により算出したヘモグロビン濃度と、血球計数装置などから得られた実測値との誤差を測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 非侵襲血液成分測定装置
2 加圧帯
3 装置本体
35 外側ケース
35a ユニット保持部
35c、
35d 突出部
37 裏蓋
37a、
37b 圧縮スプリング
37c 開口部
38 電源/実行キー
39 メニューキー
4 保持具
41 係合部材
41a 係合部
42 支持台
42a 内方突出部
43 リストバンド
5 測定ユニット
51 光源部
51a 保持板
51b 開口部
AZ 軸
AY 第1軸
AX 第2軸
52 撮像部
52a レンズ
52b 鏡筒
52c CCDカメラ
52d 遮光筒
53 制御部
53a CPU
53b メインメモリ
53c フラッシュメモリカードリーダ
53d 光源部入出力インタフェース
53e フレームメモリ
53f 画像入力インタフェース
53g 入力インタフェース
53h 通信インタフェース
53i 画像出力インタフェース
53j フラッシュメモリカード
54 表示部
54a メニュー表示領域
61 血管パターン
62a、
62b 指標線
63c 領域
R1、R2、
L1、L2発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面の血管に光を照射して照明された血管を撮像する工程、
撮像された画像について血管を横切って分布する輝度分布に基づいて濃度プロファイルを作成する工程、
濃度プロファイルのピーク値と血管径に対応する分布幅とを用いて血液成分濃度を演算する工程、及び、
濃度プロファイルの形状的特徴に基づいて血液成分濃度を補正する工程、を備えることを特徴とする非侵襲血液成分測定方法。
【請求項2】
前記濃度プロファイルの形状的特徴が、濃度プロファイルの尖度及びピークにおける所定高さの分布幅であることを特徴とする請求項1に記載の非侵襲血液成分測定方法。
【請求項3】
前記血液成分濃度補正工程は、濃度プロファイルの形状的特徴と撮像された画像中の血管周辺組織像とに基づいて血液成分濃度の補正を実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の非侵襲血液成分測定方法。
【請求項4】
前記血液成分濃度補正工程は、濃度プロファイルの形状的特徴と濃度プロファイルに基づいて推定された血管深さとに基づいて血液成分濃度の補正を実行することを特徴とする請求項1〜3のうち何れか1項に記載の非侵襲血液成分測定方法。
【請求項5】
生体表面の血管に光を照射して照明された血管を撮像する工程、
撮像された画像について血管を横切って分布する輝度分布に基づいて濃度プロファイルを作成する工程、及び、
濃度プロファイルのピーク値と濃度プロファイルの形状的特徴に基づいて求められる撮像方向の血管径とを用いて血液成分濃度を演算する工程、を備えることを特徴とする非侵襲血液成分測定方法。
【請求項6】
前記濃度プロファイルの形状的特徴が、濃度プロファイルの尖度及びピークにおける所定高さの分布幅であることを特徴とする請求項5に記載の非侵襲血液成分測定方法。
【請求項7】
さらに撮像された画像中の血管周辺組織像に基づいて血液成分濃度を補正する工程を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の非侵襲血液成分測定方法。
【請求項8】
さらに濃度プロファイルに基づいて推定された血管深さに基づいて血液成分濃度を補正する工程を備えることを特徴とする請求項5〜7のうち何れか1項に記載の非侵襲血液成分測定方法。
【請求項9】
生体表面の血管を照明する光源部と、前記生体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像して得られた画像について血管を横切って分布する輝度分布に基づいて濃度プロファイルを作成して濃度プロファイルのピーク値と血管径に対応する分布幅とを用いて血液成分濃度を演算し、さらに濃度プロファイルの形状的特徴に基づいて血液成分濃度を補正する解析部とを備えたことを特徴とする非侵襲血液成分測定装置。
【請求項10】
前記濃度プロファイルの形状的特徴が、濃度プロファイルの尖度及びピークにおける所定高さの分布幅であることを特徴とする請求項9に記載の非侵襲血液成分測定装置。
【請求項11】
前記解析部はさらに、撮像された画像中の血管周辺組織像に基づいて血液成分濃度を補正することを特徴とする請求項9又は10に記載の非侵襲血液成分測定装置。
【請求項12】
前記解析部はさらに、濃度プロファイルに基づいて血管深さを推定し、推定された血管深さに応じて血液成分濃度を補正することを特徴とする請求項9〜11のうち何れか1項に記載の非侵襲血液成分測定装置。
【請求項13】
生体表面の血管の照明する光源部と、前記生体を撮像する撮像部と、前記撮像部が撮像して得られた画像について血管を横切って分布する輝度分布に基づいて濃度プロファイルを作成して濃度プロファイルのピーク値と濃度プロファイルの形状的特徴に基づいて求められる撮像方向の血管径とを用いて血液成分濃度を演算する解析部と、を備えたことを特徴とする非侵襲血液成分測定装置。
【請求項14】
前記濃度プロファイルの形状的特徴が、濃度プロファイルの尖度及びピークにおける所定高さの分布幅であることを特徴とする請求項13に記載の非侵襲血液成分測定装置。
【請求項15】
前記解析部はさらに、撮像された画像中の血管周辺組織像に基づいて血液成分濃度を補正することを特徴とする請求項13又は14に記載の非侵襲血液成分測定装置。
【請求項16】
前記解析部はさらに、濃度プロファイルに基づいて推定された血管深さに基づいて血液成分濃度を補正することを特徴とする請求項13〜15のうち何れか1項に記載の非侵襲血液成分測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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