非内因性polIプロモーターを使用した逆遺伝学
宿主細胞が由来するのと同じ分類学上の目の生物にとって内因性ではないpolIプロモーターを使用して、宿主細胞中で導入遺伝子の発現が促進される。一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の発現構築物を含む宿主細胞を提供し、その発現構築物からのRNA分子の発現は、宿主細胞の目にとって内因性ではないpolIプロモーターによって調節される。本発明は、(i)目的の導入遺伝子の発現が第1の生物由来のpolIプロモーターによって促進される発現構築物を調製するステップと、(ii)第1の生物と異なる分類学上の目由来である宿主細胞中にステップ(i)の発現構築物を導入するステップとを含む、宿主細胞中でRNAを発現させるプロセスをさらに提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2009年5月21日に出願された米国仮特許出願61/216,919からの優先権を主張し、上記米国仮特許出願の全容は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は逆遺伝学の分野にある。さらに、それは、様々なウイルスから保護するためのワクチンを製造することに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
逆遺伝学は、細胞培養中でのRNAウイルスの組換え発現および操作を可能にする。それは、(リアソータント(reassortant)を含む)組換えウイルスの迅速な産生および/またはその変異を可能とするため、ウイルス学およびワクチン製造における強力なツールである。その方法では、宿主細胞にウイルスゲノムをコードする1つまたは複数の発現構築物をトランスフェクトし、その細胞からウイルスを単離することを伴なう。例えば、特許文献1および2は、イヌpolIプロモーターを使用してイヌ細胞中でインフルエンザゲノムRNAを発現させる方法を記載している。他の出典は、ヒトpolIプロモーターを使用した、ヒト細胞中でのインフルエンザゲノムRNAの発現を報告している。
【0004】
従来技術の方法の1つの重大な欠点は、polIプロモーターが高度に種特異的であることである。例えば、ヒトpolIプロモーターは霊長目細胞中でのみ活性であり[非特許文献1]、同様にイヌ細胞中での発現ではイヌpolIプロモーターが必要となることが報告されている。したがって、内因性polIプロモーターが特徴付けられていない細胞系統中でウイルスを増殖させることが必要である場合、ウイルスをレスキュー(rescue)し増殖させる2つの異なる細胞型を使用することが必要であった。しかし、例えば競合培養選択圧を回避できる利点を有するので、複数の細胞系統の使用を回避することが望ましい。ワクチン産生のすべてのステップで単一の細胞系統を使用すると、規制認可も容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/002008号
【特許文献2】国際公開第2007/124327号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Koudstaal et al.Vaccine(2009)272588−2593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、逆遺伝学を実施する代替の方法を提供することが当技術分野において必要であり続けている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(好ましい実施形態の概要)
本発明者らは、現時点で驚くべきことに、宿主細胞が由来するのと同じ分類学上の目の生物にとって内因性ではないpolIプロモーターを使用して、宿主細胞中での導入遺伝子の発現を促進(drive)することが可能であることを発見した。
【0009】
一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の発現構築物を含む宿主細胞を提供し、その発現構築物(複数可)からのRNA分子の発現は、宿主細胞の目にとって内因性ではないpolIプロモーターによって調節される。これらの宿主細胞は、本発明の発現系で使用することができる。
【0010】
本発明は、(i)目的の導入遺伝子の発現が第1の生物由来のpolIプロモーターによって促進される発現構築物を調製するステップと、(ii)第1の生物と異なる分類学上の目由来である宿主細胞中にステップ(i)の発現構築物を導入するステップとを含む、宿主細胞中でRNAを発現させるプロセスをさらに提供する。
【0011】
さらなる実施形態では、本発明は、組換えウイルスを産生する方法を提供し、そのウイルスは、本発明の宿主細胞を使用して産生される。
【0012】
本発明は、(i)本発明の宿主細胞を使用して組換えウイルスを産生するステップと、(ii)培養宿主にステップ(i)で得られたウイルスを感染させるステップと、(iii)ウイルスを産生させるためにステップ(ii)の培養宿主を培養するステップと、(iv)ステップ(iii)で得られたウイルスを精製するステップとを含む、(例えばワクチンへと処方するための)ウイルスを調製する方法も提供する。ワクチンを調製する方法を提供するために、その方法は次いで(v)ウイルスをワクチンへと処方するさらなるステップを含むことができる。
【0013】
上記で論じたように導入される非内因性polIプロモーター(複数可)に加えて、宿主細胞は内因性polIプロモーターを含む。非内因性polIプロモーター(複数可)は、細胞中での非内因性RNA、詳細にはウイルスRNAの発現を促進する。したがって、本発明は、内因性rRNAの発現を調節する少なくとも1つの内因性polIプロモーター、およびウイルスRNAまたはその相補体の発現を調節する少なくとも1つの非内因性polIプロモーターを有する細胞を提供する。
【0014】
本発明は、タンパク質コードmRNAもウイルスRNAもコードするDNA発現構築物も提供し、(i)タンパク質コードmRNAについてのDNA中のコドン使用頻度はイヌ細胞について最適化され、(ii)ウイルスRNAは霊長目polIプロモーターの調節下にある。イヌ細胞は、理想的にはMDCK細胞であり、霊長目プロモーターは、理想的にはヒトpolIプロモーターである。タンパク質コードmRNAの発現は、イヌ細胞について最適化されたpolIIプロモーターの調節下にあってもよい。
【0015】
(発現構築物)
本発明者らは、驚くべきことに、細胞中で、その細胞と異なる分類学上の目に入る生物由来のpolIプロモーターを使用してRNA発現を促進することが可能であることを発見した。したがって、polIプロモーターは、その細胞が由来するのと同じ分類学上の目の生物にとって内因性ではない。「目」という用語は慣用的な分類学上の順位付けを指し、目の例は、霊長目、齧歯目、食肉目、有袋目、クジラ目などである。ヒトおよびチンパンジーは同じ分類学上の目に入る(霊長目)が、ヒトとイヌは異なる目に入る(霊長目に対して食肉目)。
【0016】
したがって、第1の態様では、本発明は、1つまたは複数の発現構築物を含む宿主細胞を提供し、その発現構築物(複数可)からのRNA分子の発現は、宿主細胞の目にとって内因性ではないpolIプロモーターによって促進される。
【0017】
一実施形態では、宿主細胞は非霊長目細胞であり、polIプロモーターは霊長目polIプロモーターである。特定の実施形態では、宿主細胞は非霊長目細胞であり、プロモーターはヒトプロモーターである。さらなる実施形態では、宿主細胞は非ヒト細胞であり、polIプロモーターはヒトpolIプロモーターである。代替の実施形態では、polIプロモーターは非イヌpolIプロモーターであり、宿主細胞はイヌ細胞である。好ましい実施形態では、宿主細胞はイヌ細胞であり、プロモーターは霊長目polIプロモーターである。さらなる好ましい実施形態では、polIプロモーターはヒトプロモーターであり、宿主細胞は(MDCK細胞などの)イヌ細胞である。この実施形態は、ヒトpolIプロモーターが十分に特徴付けられており、イヌ細胞がワクチンの産生にしばしば使用されるため、好ましい。
【0018】
宿主細胞中で使用される発現構築物は、一方向性発現構築物でもよく、または両方向性発現構築物でもよい。宿主細胞が、(同じ発現構築物にあろうと異なる発現構築物にあろうと)1を超える導入遺伝子を発現する場合、一方向性および/または両方向性発現を使用することが可能である。
【0019】
両方向性発現構築物は、同じ構築物から異なる方向(すなわち、5’から3’と3’から5’の両方)で発現を促進する少なくとも2つのプロモーターを含有する。プロモーターの少なくとも1つは、本明細書で論じられている非内因性polIプロモーターである。2つのプロモーターは、同じ二本鎖DNAの異なる鎖と作動可能に連結することができる。好ましくは、プロモーターの1つは非内因性polIプロモーターであり、その他のプロモーターの少なくとも1つはpolIIプロモーターである。polIプロモーターを使用してキャップのないcRNAを発現させることができ、一方でpolIIプロモーターを使用して、その後タンパク質に翻訳することができるmRNAを転写することができ、それによって同じ構築物からRNAおよびタンパク質の同時発現が可能となるため、これは有用である。polIIプロモーターは内因性でもよく、または非内因性でもよい。1を超える発現構築物が発現系内で使用される場合、プロモーターは、プロモーターの少なくとも1つが宿主細胞中で発現を促進できる非内因性polIプロモーターであるという条件で、内因性および非内因性プロモーターの混合物でもよい。
【0020】
発現構築物は、典型的にはRNA転写終結配列を含む。終結配列は内因性の終結配列でもよく、または宿主細胞にとって内因性ではない終結配列でもよい。適切な終結配列は当業者には明らかであり、その配列には、それだけに限らないが、RNAポリメラーゼI転写終結配列、RNAポリメラーゼII転写終結配列、およびリボザイムが含まれる。さらに、発現構築物は、特にその発現がpolIIプロモーターによって調節される遺伝子の末端に、mRNAの1つまたは複数のポリアデニル化シグナルを含有してもよい。
【0021】
発現系は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個または少なくとも12個の発現構築物を含有してもよい。
【0022】
発現構築物は、プラスミドまたは他のエピソーム性構築物などのベクターでよい。そのようなベクターは、典型的には少なくとも1つの細菌および/または真核生物の複製起点を含む。さらに、ベクターは、原核および/または真核細胞中での選択を可能とする選択可能マーカーを含んでもよい。そのような選択可能マーカーの例は、アンピシリンまたはカナマイシンなどの抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子である。ベクターは、DNA配列のクローニングを容易にする1つまたは複数のマルチクローニング部位をさらに含んでもよい。
【0023】
代替として、発現構築物は、直鎖発現構築物でもよい。そのような直鎖発現構築物は、典型的には増幅および/または選択配列を含有しない。しかし、そのような増幅および/または選択配列を含む直鎖構築物も本発明の範囲内にある。インフルエンザウイルスの発現にそのような直鎖発現構築物を使用する方法の例が参考文献4に記載されている。
【0024】
本発明の発現構築物は、当技術分野で公知である方法を使用して得ることができる。そのような方法は、例えば、参考文献5に記載されたものである。発現構築物が直鎖発現構築物である場合、単一の制限酵素部位を利用して、宿主細胞への導入前にそれを直鎖化することが可能である。あるいは、少なくとも2つの制限酵素部位を使用して、ベクターから発現構築物を切り出すことが可能である。さらに、核酸増幅技術を使用して(例えば、PCRによって)それを増幅することによって、直鎖発現構築物を得ることも可能である。
【0025】
当業者に公知である任意の技術を使用して、宿主細胞中に本発明の発現構築物を導入することができる。例えば、エレクトロポレーション、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム、マイクロインジェクション、または微粒子銃(microparticle−bombardment)を使用することによって、宿主細胞中に本発明の発現構築物を導入することができる。
【0026】
発現宿主がMDCK細胞系統などのイヌ細胞である場合、例えば、野生型イヌ遺伝子もしくはイヌウイルス由来のプロモーターを使用し、および/またはヒト細胞よりイヌ細胞に適したコドン使用頻度を有するようにすることで、イヌ発現についてタンパク質コード領域を最適化することができる。例えば、ヒト遺伝子はPheのコドンとしてUUCを少し好むが(54%)、イヌ細胞ではその優先性がより高い(59%)。同様に、ヒト細胞ではIleコドンについて多数派となる優先性は認められないが、イヌコドンの53%がIleにAUCを使用する。イヌパルボウイルス(ssDNAウイルス)などのイヌウイルスがコドンを最適化するための指針をもたらすこともでき、例えば、イヌパルボウイルス配列においてPheコドンの95%がUUUであり(対してイヌゲノムでは41%)、Ileコドンの68%がAUUであり(対して32%)、Valコドンの46%がGUUであり(対して14%)、Proコドンの72%がCCAであり(対して25%)、Tyrコドンの87%がUAUであり(対して40%)、Hisコドンの87%がCAUであり(対して39%)、Glnコドンの92%がCAAであり(対して25%)、Gluコドンの81%がGAAであり(対して40%)、Cysコドンの94%がUGUであり(対して42%)、Serコドンのわずか1%がUCUであり(対して24%)、CCCはPheに使用されず、UAGは終止コドンとして使用されない。したがって、タンパク質コード遺伝子を、イヌ細胞中での発現について自然にすでに最適化されている遺伝子のようにすることができ、それによって発現が容易となる。
【0027】
(逆遺伝学)
上記に記載の発現構築物および宿主細胞は、逆遺伝学技術により組換えウイルス株を産生するのに特に適している。その技術を、プラス鎖RNAウイルス[6、7]、マイナス鎖RNAウイルス[8,9]および二本鎖RNAウイルス[10]を含めた幅広いRNAウイルスの産生に使用することができる。したがって、さらなる態様では、本発明は、組換えウイルスを産生する方法を提供し、そのウイルスは、上記に記載の発現系を使用して産生される。
【0028】
公知の逆遺伝学系では、polIプロモーター、細菌RNAポリメラーゼプロモーター、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターなどから所望のウイルスRNA(vRNA)分子をコードするDNA分子を発現させることを伴なう。さらに、ウイルスが感染性ウイルスを形成するのに特定のタンパク質を必要とする場合、系はこれらのタンパク質をも提供し、例えば、その系は、ウイルスタンパク質をコードするDNA分子をさらに含み、その結果、両方の型のDNAを発現させると完全な感染性ウイルスが構築される。
【0029】
逆遺伝学がvRNAの発現に使用される場合、配列エレメントの互いに対する正確な間隔が、ポリメラーゼが複製を開始するのに極めて重要であることが当業者には明らかであろう。したがって、ウイルスRNAをコードするDNA分子をpolIプロモーターと終結配列との間に正しく位置付けることが重要であるが、この位置付けは、逆遺伝学系を用いて作業する者の能力の十分に範囲内にある。
【0030】
一般に、逆遺伝学は、その生活環の間にゲノムRNAの産生を必要とすることが知られている任意のウイルスの発現に適している。そのようなウイルスには、それだけに限らないが、下記に記載するものなどのプラス鎖およびマイナス鎖RNAウイルスが含まれる。好ましくは、ウイルスはオルトミクソウイルス、例えばインフルエンザウイルスである。本発明の方法は、分節型(segmented)ウイルスに加えて、非分節型ウイルスにさらに適している。
【0031】
ウイルスがプラス鎖RNAウイルスである場合、ウイルスゲノムを含む発現構築物を細胞にトランスフェクトすると十分であることが多い。例えば、ポリオウイルスゲノムを含有するプラスミドのトランスフェクションの結果、感染性ポリオウイルスが収集される[6、7]。アンチセンスウイルスRNAは通常非感染性であり、生活環を完了するのにRNAポリメラーゼを必要とするため、マイナス鎖RNAウイルスでの逆遺伝学はより難題を提示している。したがって、インサイチュータンパク質発現ではタンパク質または遺伝子としてのいずれかで、ウイルスポリメラーゼが供給されなければならない。
【0032】
ウイルスが感染性のためにタンパク質を必要とする場合、宿主細胞によって必要とされる発現構築物の総数を減らすので、両方向性発現構築物を使用することが一般に好ましい。したがって、本発明の方法は、遺伝子またはcDNAが上流のpolIIプロモーターと下流の非内因性polIプロモーターとの間に位置する少なくとも1つの両方向性発現構築物を利用することができる。polIIプロモーターから遺伝子またはcDNAが転写されると、タンパク質に翻訳することができる、キャップの付いたプラスセンスウイルスmRNAが産生されるが、非内因性polIプロモーターから転写されると、マイナスセンスvRNAが産生される。両方向性発現構築物は両方向性発現ベクターでよい。
【0033】
組換えウイルスを産生するために、細胞は、ビリオンを構築するのに必要なウイルスゲノムのすべての分節を発現しなければならない。本発明の発現構築物中にクローニングされたDNAは、好ましくは、ウイルスRNAおよびタンパク質の全部を提供し、ヘルパーウイルスを使用しない系が好ましいがヘルパーウイルスを使用してRNAおよびタンパク質の一部を提供することも可能である。ウイルスが非分節型ウイルスである場合、1を超える発現構築物を使用して非分節型ウイルスのウイルスゲノムを発現させることも本発明の範囲内にあるが、通常は本発明の方法で単一の発現構築物を利用することによってこれを実現することができる。ウイルスが分節型ウイルスである場合、通常は本発明の方法で1を超える発現構築物を使用してウイルスゲノムを発現させる。しかし、単一の発現構築物上でウイルスゲノムの1つまたは複数の分節を、またはすべての分節をも組み合わせることも想像される。
【0034】
本発明の方法は、リアソータントウイルス株の産生に特に適している。その技術は、プラスミドのインビトロ操作を使用して、ウイルス分節の組合せを得、ウイルス分節中のコードまたは非コード配列の操作を容易にし、変異を導入することなどができる。リアソータントウイルス株の産生での発現系の使用は、流行に対抗するのにワクチンの迅速な産生が必要である状況で特に有益なリアソータント種ウイルスを得るのに必要な時間を著しく低下させることができるので好ましい。したがって、本発明のこの態様の方法は、少なくとも2つの異なる野生型株からのまたはそれに由来するウイルス遺伝子を発現する1つまたは複数の発現構築物を使用することが好ましい。
【0035】
いくつかの実施形態では、宿主細胞中でアクセサリータンパク質の発現を導く発現構築物も含まれる。例えば、逆遺伝学系の一部として非ウイルス性セリンプロテアーゼ(例えばトリプシン)を発現させると有利となり得る。
【0036】
本発明の発現構築物をインフルエンザA型ウイルス分節の発現に使用するとき、ネガティブ選択マーカー(例えばccdB)および高度に保存されているインフルエンザA型ウイルス遺伝子末端[11]を含む発現構築物中にインフルエンザA型ウイルス分節を導入することによって、発現構築物を得ることが可能である。この利点は、制限部位が必要でなく、発現構築物上の遺伝子末端と相補的である末端を有するという条件で任意のインフルエンザA型ウイルス分節をクローニングできることである。
【0037】
(細胞)
目的のウイルスを産生することができる任意の真核または原核細胞を用いて、本発明を実施することができる。本発明は典型的には細胞系統を使用するが、例えば、代替として初代細胞を使用することができる。細胞は典型的には哺乳動物のものである。適切な哺乳動物細胞には、それだけに限らないが、ハムスター、ウシ、(ヒトおよびサルを含む)霊長目およびイヌ細胞が含まれる。腎臓細胞、線維芽細胞、網膜細胞、肺細胞など様々な細胞型を使用することができる。適切なハムスター細胞の例は、BHK21またはHKCCという名称を有する細胞系統である。適切なサル細胞は、例えば、Vero細胞系統のような腎臓細胞などのアフリカミドリザル細胞である[12〜14]。適切なイヌ細胞は、例えば、CLDKおよびMDCK細胞系統のような腎臓細胞である。
【0038】
さらなる適切な細胞には、それだけに限らないが、CHO;293T;BHK;MRC 5;PER.C6[15];FRhL2;WI−38などが含まれる。適切な細胞は、例えば、American Type Cell Culture(ATCC)コレクション[16]、Coriell Cell Repositories[17]またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から広く入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL 81、CCL 81.2、CRL 1586およびCRL−1587の下で様々な異なるVero細胞を供給し、カタログ番号CCL 34の下でMDCK細胞を供給する。PER.C6は、寄託番号96022940の下でECACCから入手可能である。
【0039】
本発明での使用に(特にインフルエンザウイルスの増殖に)好ましい細胞は、Madin Darbyイヌ腎臓に由来するMDCK細胞である[18〜20]。元々のMDCK細胞は、CCL 34としてATCCから入手可能である。これらの細胞または他のMDCK細胞の誘導体を使用することが好ましい。そのような誘導体は、例えば、懸濁培養中での増殖に適合させたMDCK細胞を開示する参考文献18に記載されたものである(DSM ACC 2219として寄託された「MDCK33016」または「33016−PF」;参考文献18も参照)。さらに、参考文献21は、無血清培地中で懸濁状態で増殖するMDCK由来細胞を開示する(FERM BP−7449として寄託された「B−702」)。いくつかの実施形態では、使用するMDCK細胞系統は腫瘍形成性でもよい。非腫瘍形成性MDCK細胞を使用することも想像される。例えば、参考文献22は、「MDCK−S」(ATCC PTA−6500)、「MDCK−SF101」(ATCC PTA−6501)、「MDCK−SF102」(ATCC PTA−6502)および「MDCK−SF103」(ATCC PTA−6503)を含めた非腫瘍形成性MDCK細胞を開示する。参考文献23は、「MDCK.5F1」細胞(ATCC CRL 12042)を含めた、感染に高い感受性を有するMDCK細胞を開示する。
【0040】
1を超える細胞型の混合物を使用して、本発明の方法を実施することが可能である。しかし、単一の細胞型、例えばモノクローナル細胞を用いて本発明の方法を実施することが好ましい。好ましくは、本発明の方法で使用する細胞は、単一の細胞系統由来である。さらに、ウイルスのレスキューおよびウイルスの任意のその後の増殖に同じ細胞系統を使用することができる。
【0041】
好ましくは、血清の不在下で細胞を培養して、汚染物の共通供給源を回避する。真核細胞培養用の様々な無血清培地が当業者に公知である(例えば、イスコフ培地、ウルトラCHO培地(BioWhittaker)、EX−CELL(JRH Biosciences))。さらに、無タンパク質培地を使用することができる(例えば、PF−CHO(JRH Biosciences))。そうでなければ、複製用の細胞を通例の血清含有培地(例えば、0.5%〜10%の胎仔ウシ血清を有するMEMまたはDMEM培地)で培養することもできる。
【0042】
細胞は付着培養でもよく、または懸濁状態でもよい。
【0043】
(適切な細胞系統のスクリーニング)
本発明に従って使用するのに適した細胞は広く入手可能である。さらに、当技術分野で一般に公知である技術を使用して、さらなる細胞をスクリーニングすることが可能である。適切な細胞のスクリーニングは、例えば、新たなpolIプロモーターが同定され、その新たなプロモーターによる発現を支援する細胞系統を見つけることが望ましい場合に必要となる可能性がある。同様に、新たな細胞が単離された場合、どのpolIプロモーターがその中で発現を促進できるかを確認することが必要となる可能性がある。
【0044】
細胞のスクリーニングに適した技術は当業者には明らかである。例えば、目的のpolIプロモーターの調節下でレポーター遺伝子をクローニングすることができ、スクリーニングする細胞系統に構築物をトランスフェクトすることができる。そのような実験では、レポーター遺伝子を含有するがプロモーター配列を欠く構築物をトランスフェクトした細胞を対照として使用することができる。したがって、試験試料(例えば、目的のpolIプロモーターの調節下で導入遺伝子を含有する細胞)中での遺伝子の発現が対照(例えば、試験試料と同じ導入遺伝子を含有するが、その導入遺伝子が導入遺伝子の発現を促進するプロモーターを含有しない細胞)中での発現より著しく高い場合、その細胞系統は、本発明によるそのプロモーターと共に使用するのに適している。導入遺伝子の発現は、例えば、導入遺伝子RNAを逆転写し、得られたcDNAをリアルタイムPCRに供することによって測定することができる。あるいは、polIプロモーターの調節下でアンチセンスの方向でレポーター遺伝子(例えば、GFP、YFP、lucなど)をクローニングすることも可能である。次いでウイルスポリメラーゼによってそのような構築物からの転写物をmRNAに転写し、その後タンパク質に翻訳することができる。したがって、レポーター遺伝子産物の存在によって、レポーター遺伝子を発現する任意の細胞を容易に同定することができる。
【0045】
polIプロモーターが発現を促進できる細胞が得られるように、正常なら外来polIが発現を促進しない細胞を適合させることがさらに可能である。これは、例えば、細胞を正常ならそれに適さない増殖条件に供することによって実現することができる。例えば、正常なら付着してしか増殖しない細胞系統を懸濁状態で人工的に保持することができ、これらの条件下で増殖し続ける細胞をさらに増殖させることができる。あるいは、通常なら懸濁状態で増殖する細胞を、例えば、高結合性プラスチック培養ベッセルを使用して、または培養物に血清を添加することによって付着培養することが可能である。同様に、正常ならその増殖に血清を必要とする細胞を無血清条件下で増殖させること、または逆に、無血清増殖に適合させた細胞を血清に曝露することが可能である。次いで、先に記載したように、選択された細胞をpolIプロモーターの活性についてアッセイすることができる。このようにして変化させることができるさらなる適切な増殖パラメーターは当業者には明白であり、そのパラメーターには、それだけに限らないが、温度、pH、pO2、血清濃度などが含まれる。さらに、細胞をUV放射などの物理的もしくは化学的処理に、または化学的変異原に供することができる。同様に、正常な培養条件下で単に継代された細胞の新たな特性についてスクリーニングすることが可能である。
【0046】
例えば、参考文献18は、MDCK細胞(通常は付着性)を無血清条件下における懸濁状態での増殖に適合させた方法を記載している。懸濁状態で増殖する細胞を培養するのに通常使用される条件下で、ローラーボトルに入れた無血清培地中で開始細胞を培養した。これらの選択的条件下で数回継代した後、無血清培地中で懸濁状態で増殖できるいくつかの細胞系統が得られた。1つの例は、33016細胞系統(DSM ACC 2219として寄託)である。本発明者らは、ヒトpolIプロモーターがこれらのMDCK細胞中でレポーター遺伝子の発現を促進できることを実証している。
【0047】
(RNAポリメラーゼIプロモーター)
ほとんどの逆遺伝学の方法は、ウイルスゲノムRNAの転写を促進するRNAポリメラーゼI(RNApolI)プロモーターを含む発現ベクターを使用する。polIプロモーターは、多くのウイルス、例えばインフルエンザの完全な感染性に必要である、修飾されていない5’および3’末端を有する転写物をもたらす。
【0048】
天然のpolIプロモーターは2つの部分からなり、2つの別々の領域:コアプロモーターおよび上流プロモーターエレメント(UPE)を有する。この一般的な構成はほとんどの種由来のpolIプロモーターに共通するが、プロモーターの実際の配列は広く様々である。コアプロモーターは転写開始点を取り囲み、約−45から+20にわたり、転写を開始するのに十分である。コアプロモーターは一般にGCリッチである。コアプロモーターは単独で転写を開始するのに十分であるが、プロモーターの効率は、UPEによって非常に増大する。UPEは、典型的には約−180から−107にわたり、やはりGCリッチである。開始前複合体を安定化することによって機能することができる遠位のエンハンサー様配列の存在によって、プロモーターの活性をさらに増強することができる。
【0049】
polIプロモーターの配列は、ヒト、イヌおよびニワトリを含めた様々な種で同定されている。本発明は、宿主細胞と同じ分類学上の目にある生物にとって内因性ではないpolIプロモーターを使用する。したがって、「内因性」および「非内因性」という用語は、宿主細胞および発現構築物中に存在するpolIプロモーターに関連して使用される。polIプロモーターにおける種間の配列の変動は、細胞中の任意の特定のpolIプロモーターが内因性であるかまたは非内因性であるかを判定することが簡単であることを意味する。したがって、本発明は、polIプロモーターと同じ分類学上の目に由来しない宿主細胞中でのRNA発現にヒト、イヌまたはニワトリpolIプロモーターを利用することができる(例えば、イヌ宿主細胞中での霊長目polIプロモーター)。インシリコのまたは実験的な配列比較を使用して、任意の特定のpolIプロモーターが由来する生物を確認することができ、例えば、図10は、<60%の配列同一性を有する、転写開始部位までのイヌpolプロモーターおよびヒトpolプロモーターのアラインメントを示す。
【0050】
本発明の発現構築物は、少なくとも1つのコアプロモーターを含み、好ましくは少なくとも1つのUPEも含み、1つまたは複数のエンハンサーエレメントも含んでもよい。転写を開始できるという条件で、天然のプロモーターの断片を使用することも可能である。例えば、図3は、完全長イヌpolIプロモーター(配列番号3)および導入遺伝子の発現を促進するのに十分である様々な断片の配列を示す(図4ならびに配列番号4および5も参照)。さらに、図2は、ヒトpolIプロモーター(配列番号1)および単独で宿主細胞中での導入遺伝子の発現に十分であるその断片の配列を示す(図5および配列番号2も参照)。
【0051】
本発明に従って使用することができるヒトpolIプロモーターは、配列番号1もしくは配列番号2の配列、またはその改変体を含んでよい。本発明に従ってイヌプロモーターが使用される場合、それは、配列番号3、配列番号4もしくは配列番号5の配列、またはその改変体を含んでよい。
【0052】
polIプロモーターは、プロモーターが目的の宿主細胞中で作動可能に連結したRNAのコードする配列の転写を開始および促進する能力を有するという条件で、(i)配列番号1〜5のいずれかと少なくともp%の配列同一性を有する配列、および/または(ii)配列番号1〜5のいずれかの断片を含んでよい。pの値は、75、80、85、90、95、96、97、98、99またはそれ以上でよい。断片はそれ自体で発現を促進するのに十分な長さのものでもよく(例えば配列番号4は配列番号3の断片である)、または断片は他の配列と結合していてもよく、この組合せが発現を促進する。そのようなpolIプロモーターが目的の宿主細胞中で発現を促進する能力は、例えば、プロモーターの調節下でアンチセンスレポーター遺伝子を用いる上記に記載のアッセイを使用して容易に評価することができる。
【0053】
(ウイルス調製)
さらなる態様では、本発明は、(i)本明細書に記載の組換えウイルスを産生するステップと、(ii)培養宿主にステップ(i)で得られたウイルスを感染させるステップと、(iii)ウイルスを産生させるためにステップ(iii)の宿主を培養するステップと、(iv)ステップ(iii)で得られたウイルスを精製するステップと、(任意選択で)(v)ウイルスをワクチンへと処方するステップとを含む、ワクチン製造用のウイルスを調製する方法を提供する。
【0054】
本発明のこの態様において細胞を培養宿主として使用する場合、使用する細胞系統およびウイルスに対し、細胞培養条件(例えば、温度、細胞密度、pH値など)が広い範囲の対象にわたって変化し、適用の必要条件にそれを適合させることができることが知られている。したがって、以下の情報は単にガイドラインを表すに過ぎない。
【0055】
上記で述べたように、好ましくは無血清または無タンパク質培地中で細胞を培養する。
【0056】
当業者に公知の方法に従って細胞を増加(multiplication)させることができる。例えば、遠心分離または濾過のような通常の支援方法を使用して、灌流系で細胞を培養することができる。さらに、感染前に流加(fed−batch)系で本発明に従って細胞を増加させることができる。本発明の場面において、培養系は流加系と称され、その系では最初に細胞をバッチ系で培養し、培地中の栄養素(または栄養素の一部)の減少は濃縮栄養素の管理補給によって補償される。感染前の細胞の増加の間に培地のpH値をpH6.6〜pH7.8の値、特にpH7.2〜pH7.3の値に調整すると有利となり得る。好ましくは、30〜40℃の温度で細胞の培養を行う。ステップ(iii)において、好ましくは30℃〜36℃、または32℃〜34℃、または33℃の温度で細胞を培養する。この温度範囲での感染細胞のインキュベーションの結果、ワクチンへと処方したときに効力が向上したウイルスが産生されることが示されているので[24]、これは、本発明の方法を使用してインフルエンザウイルスを産生する場合に特に好ましい。
【0057】
感染前の培養の間に酸素分圧を好ましくは25%〜95%の値に、特に35%〜60%の値に調整することができる。本発明の場面において述べる酸素分圧の値は、空気の飽和に基づいている。細胞の感染は、好ましくはバッチ系で細胞約8〜25×105個/mL、または好ましくは灌流系で細胞約5〜20×106個/mLの細胞密度で行う。10−8〜10、好ましくは0.0001〜0.5のウイルス用量(MOI値、「感染多重度」;感染時における細胞1個当たりのウイルス単位の数に対応する)で細胞に感染させることができる。
【0058】
付着培養中または懸濁状態の細胞でウイルスを増殖させることができる。マイクロキャリア培養を使用することができる。いくつかの実施形態では、こうして細胞を懸濁状態での増殖に適合させることができる。
【0059】
本発明による方法は、ウイルスまたはそれによって生じるタンパク質の収集および単離も含む。ウイルスまたはタンパク質の単離の間に、分離、濾過または限外濾過のような標準的な方法によって培地から細胞を分離する。次いで、勾配遠心分離、濾過、沈殿、クロマトグラフィーなどのような、当業者に十分に公知である方法に従って、ウイルスまたはタンパク質を濃縮し、その後精製する。本発明によれば、精製の間またはその後にウイルスを不活性化することも好ましい。ウイルス不活性化は、例えば、精製プロセス内の任意の時点でβ−プロピオラクトンまたはホルムアルデヒドによって行うことができる。
【0060】
ステップ(i)において単離されたウイルスを、ステップ(ii)において卵で増殖させることもできる。ワクチン用にインフルエンザウイルスを増殖させる現在の標準的な方法は孵化SPF鶏卵を使用し、ウイルスは卵内容物(尿膜腔液)から精製される。卵を介してウイルスを継代し、その後細胞培養でそれを増殖させることも可能である。
【0061】
(ウイルス)
細胞中で逆遺伝学によって発現させることができる任意のウイルスを用いて、本発明の方法を実施することができる。そのようなウイルスは、分節型ウイルスでもよく、または非分節型ウイルスでもよい。さらに、ウイルスはプラス鎖RNAウイルスでもよく、またはマイナス鎖ウイルスでもよい。さらなる実施形態では、ウイルスは二本鎖RNAウイルスでもあり得る。
【0062】
ウイルスがマイナス鎖RNAウイルスである場合、ウイルスは、パラミクソウイルス科、ニューモウイルス科、ラブドウイルス科、フィロウイルス科、ボルナウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブンヤウイルス科、またはアレナウイルス科からなる群より選択される科のものでよい。さらに、ウイルスは、パラミクソウイルス、オルトミクソウイルス、レスピロウイルス、モルビリウイルス、ルブラウイルス、ヘニパウイルス(Henipaviras)、アブラウイルス、ニューモウイルス、メタニューモウイルス、ベシクロウイルス、リッサウイルス、エフェメロウイルス、サイトラブドウイルス、ヌクレオラブドウイルス、ノビラブドウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ボルナウイルス、インフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型、インフルエンザウイルスC型、トゴトウイルス、イサウイルス、オルトブンヤウイルス、ハンタウイルス、ナイロウイルス、フレボウイルス、トスポウイルス、アレナウイルス、オフィオウイルス、テヌイウイルス、またはデルタウイルスからなる群より選択される属のウイルスでよい。特定の実施形態では、マイナス鎖RNAウイルスは、センダイウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヘンドラウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、ヒトRSウイルス、トリニューモウイルス、水疱性口内炎インディアナウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ一日熱ウイルス、レタス壊死性黄変病ウイルス、ポテト黄萎病ウイルス、伝染性造血器壊死症ウイルス、ビクトリア湖マールブルグウイルス、ザイールエボラウイルス、ボルナ病ウイルス、インフルエンザウイルス、トゴトウイルス、伝染性サケ貧血ウイルス、ブンヤムウェラウイルス、ハンターンウイルス、ジュグベウイルス、リフトバレー熱ウイルス、トマト黄化壊疽ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、カンキツソローシスウイルス、イネ縞葉枯ウイルス、およびデルタ型肝炎ウイルスからなる群より選択される。好ましい実施形態では、ウイルスはインフルエンザウイルスである(下記を参照)。
【0063】
ウイルスがプラス鎖RNAウイルスである場合、ウイルスは、アルテリウイルス科、コロナウイルス科、ピコルナウイルス科およびロニウイルス科からなる群より選択される科のものでよい。さらに、ウイルスは、アルテリウイルス(Arterivirius)、コロナウイルス、エンテロウイルス、トロウイルス、オカウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、カルジオウイルス、アフトウイルス、パレコウイルス、エルボウイルス、コブウイルスおよびテシオウイルスからなる群より選択される属のウイルスでよい。特定の実施形態では、ウイルスは、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、ポリオウイルス、ヒトエンテロウイルスA型(HEV−A)、ヒトエンテロウイルスB型(HEV−B)、ヒトエンテロウイルスC型、ヒトエンテロウイルスD型、肝炎A型ならびにヒトライノウイルスAおよびB型からなる群より選択される。
【0064】
ウイルスが二本鎖RNAウイルスである場合、ウイルスは、ビルナウイルス科、シストウイルス科、ハイポウイルス科、パーティティウイルス科、レオウイルス科およびトティウイルス科からなる群より選択される科のものでよい。さらに、ウイルスは、アクアビルナウイルス、アビビルナウイルス、エントモビルナウイルス、シストウイルス、パーティティウイルス、アルファクリプトウイルス、ベータクリプトウイルス、アクアレオウイルス、コルチウイルス、サイポウイルス、フィジウイルス、イドノレオウイルス、マイコレオウイルス、オルビウイルス、オルトレオウイルス、オリザウイルス、フィトレオウイルス、ロタウイルスおよびシードルナウイルスからなる群より選択される属のウイルスでよい。
【0065】
本発明は、迅速な変異を起こすウイルス、および組換えの手法がウイルスのより迅速な単離を可能にし、次いでそれをさらに増殖させて適切なワクチンを得ることができる場合に特に適している。したがって、好ましい実施形態では、ウイルスはインフルエンザである。
【0066】
(インフルエンザウイルス)
インフルエンザウイルス、特にインフルエンザA型ウイルスおよびインフルエンザB型ウイルスは、このウイルスの逆遺伝学が十分に特徴付けられているため、本発明の方法での使用に特に適している。インフルエンザウイルスは、分節型マイナス鎖RNAウイルスである。インフルエンザAおよびB型ウイルスは分節を8個有するが、インフルエンザC型ウイルスは7個有する。上記ウイルスは、複製および転写を開始するのに少なくとも4個のウイルスタンパク質(PB1、PB2、PAおよび核タンパク質)を必要とする。
【0067】
インフルエンザAおよびB型ウイルスの逆遺伝学は、4個の必要なタンパク質および8個すべてのゲノム分節を発現する12個のプラスミドを用いて実施することができる。しかし、構築物の数を減らすために、単一のプラスミドに(ウイルスRNA合成用の)複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8個すべてのインフルエンザvRNA分節をコードする配列)を、別のプラスミドにRNAポリメラーゼIIプロモーターを有する複数のタンパク質コード領域(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8個のインフルエンザmRNA転写物をコードする配列)を含めることができる[25]。同じプラスミドに、polIプロモーターの調節下にある1つまたは複数のインフルエンザvRNA分節および別のプロモーター、詳細にはpolIIプロモーターの調節下にある1つまたは複数のインフルエンザタンパク質コード領域を含めることも可能である。上記に記載のように、これは、好ましくは、両方向性プラスミドを使用することによってなされる。参考文献25の方法の好ましい態様は、(a)単一のプラスミドにあるPB1、PB2およびPAのmRNAをコードする領域、ならびに(b)単一のプラスミドにある8個すべてのvRNAをコードする分節を伴う。1つのプラスミドにノイラミニダーゼ(NA)および赤血球凝集素(HA)分節を、別のプラスミドに6個の他の分節を含めると、新たに現れるインフルエンザウイルス株は通常NAおよび/またはHA分節中に変異を有するため、特に好ましい。したがって、この実施形態では、HAおよびNA配列を含むベクターだけを置換することが必要である。
【0068】
インフルエンザA型ウイルスの好ましい発現系は、複数の異なる野生型株に由来するゲノム分節をコードする。その系は、PR/8/34株(A/プエルトリコ/8/34)由来の1個または複数(例えば、1、2、3、4、5または6個)のゲノム分節をコードしてもよいが、通常これ/これらはPR/8/34HA分節を含まず、通常PR/8/34NA分節を含まない。したがって、その系は、PR/8/34由来の分節NP、M、NS、PA、PB1および/またはPB2の少なくとも1つ(場合により6個すべて)をコードしてもよい。
【0069】
インフルエンザA型ウイルスの他の有用な発現系は、AA/6/60インフルエンザウイルス(A/アナーバー/6/60)由来の1個または複数(例えば、1、2、3、4、5または6個)のゲノム分節をコードしてもよいが、通常これ/これらはAA/6/60HA分節を含まず、通常AA/6/60NA分節を含まない。したがって、その系は、AA/6/60由来の分節NP、M、NS、PA、PB1および/またはPB2の少なくとも1つ(場合により6個すべて)をコードしてもよい。
【0070】
その系は、A/カリフォルニア/4/09株由来の1個または複数のゲノム分節、例えばHA分節および/またはNA分節をコードしてもよい。したがって、例えば、HA遺伝子分節は、配列番号7より配列番号6に密接に関連する(すなわち、同じアルゴリズムおよびパラメーターを使用して配列番号7より配列番号6と比較したときに高度の配列同一性を有する)H1赤血球凝集素をコードしてもよい。配列番号6および7は80%同一である。同様に、NA遺伝子は、配列番号9より配列番号8に密接に関連するN1ノイラミニダーゼをコードしてもよい。配列番号8および9は82%同一である。
【0071】
インフルエンザB型ウイルスの発現系は、複数の異なる野生型株に由来するゲノム分節をコードしてもよい。その系は、AA/1/66インフルエンザウイルス(B/アナーバー/1/66)由来の1個または複数(例えば、1、2、3、4、5または6個)のゲノム分節をコードしてもよいが、通常これ/これらはAA/1/66HA分節を含まず、通常AA/1/66NA分節を含まない。したがって、その系は、AA/1/66由来の分節NP、M、NS、PA、PB1および/またはPB2の少なくとも1つをコードしてもよい。
【0072】
A/PR/8/34、AA/6/60、AA/1/66、A/チリ/1/83およびA/カリフォルニア/04/09株由来のウイルス分節および配列は広く入手可能である。それらの配列、例えばGI:89779337、GI:89779334、GI:89779332、GI:89779320、GI:89779327、GI:89779325、GI:89779322、GI:89779329は、公的データベースで入手可能である。
【0073】
インフルエンザウイルスの逆遺伝学系は、宿主細胞中でアクセサリータンパク質の発現を導く発現構築物を含んでよい。例えば、非ウイルス性セリンプロテアーゼ(例えばトリプシン)を発現させると有利となり得る。
【0074】
(ワクチン)
本発明の第3の態様の方法は、ワクチンを産生する方法に従って産生されたウイルスを利用する。
【0075】
(特にインフルエンザウイルスの)ワクチンは一般に生ウイルスまたは不活性化ウイルスに基づいている。不活性化ワクチンは、全ビリオン、「スプリット」ビリオン、または精製表面抗原に基づき得る。抗原は、ビロソームの形態で提示することもできる。これらの型のワクチンのいずれかを製造するのに本発明を使用することができる。
【0076】
不活性化ウイルスを使用する場合、ワクチンは、(インフルエンザでは赤血球凝集素を含み、通常はノイラミニダーゼも含む)全ビリオン、スプリットビリオン、または精製表面抗原を含んでよい。ウイルスを不活性化する化学的手段には、有効量の1つまたは複数の以下の作用物質:洗浄剤、ホルムアルデヒド、β−プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、バイナリーエチルアミン、アセチルエチレンイミン、またはその組合せでの処理が含まれる。例えばUV光またはガンマ線照射など、ウイルス不活性化の非化学的方法が当技術分野で公知である。
【0077】
ウイルス含有流体、例えば尿膜腔液または細胞培養上清から、様々な方法によってビリオンを収集することができる。例えば、精製プロセスは、ビリオンを破壊する洗浄剤を含む直線的スクロース勾配溶液を使用したゾーン遠心分離を伴うことがある。次いで、任意選択の希釈後に、ダイアフィルトレーションによって抗原を精製することができる。
【0078】
スプリットビリオンは、「Tween−エーテル」スプリット化プロセスを含めて、精製ビリオンを洗浄剤(例えば、エチルエーテル、ポリソルベート80、デオキシコレート、トリ−N−ブチルホスフェート、TritonX−100、TritonN101、臭化セチルトリメチルアンモニウム、TergitolNP9など)で処理してサブビリオン調製物を作製することによって得られる。例えば、インフルエンザウイルスをスプリット化する方法は当技術分野で周知であり、例えば参考文献26〜31等を参照されたい。典型的には、ウイルスのスプリット化は、感染性であれまたは非感染性であれ全ウイルスを破壊濃度のスプリット化剤で破壊または断片化することによって実施される。破壊の結果、ウイルスタンパク質が完全にまたは部分的に可溶化され、ウイルスの完全性が変化する。好ましいスプリット化剤は、非イオン性およびイオン性(例えば陽イオン性)界面活性剤、例えばアルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N−ジアルキル−グルカミド、Hecameg、アルキルフェノキシ−ポリエトキシエタノール、NP9、第四級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、トリ−N−ブチルホスフェート、Cetavlon、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミン、およびDOT−MA、オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、TritonX−100またはTritonN101などのTriton界面活性剤)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどである。1つの有用なスプリット化手順は、デオキシコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドの連続的な効果を使用し、最初のビリオン精製の間に(例えばスクロース密度勾配溶液中で)スプリット化を行うことができる。したがって、スプリット化プロセスは、(非ビリオン物質を除去する)ビリオン含有物質の清澄化、(例えばCaHPO4吸着などの吸着法を使用する)収集されたビリオンの濃縮、非ビリオン物質からの全ビリオンの分離、(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなどのスプリット化剤を含有するスクロース勾配を使用した)密度勾配遠心分離ステップにおけるスプリット化剤を使用したビリオンのスプリット化、次いで所望されない物質を除去する濾過(例えば限外濾過)を伴い得る。有用なことに、リン酸ナトリウム緩衝等張性塩化ナトリウム溶液中でスプリットビリオンを再懸濁することができる。スプリットインフルエンザワクチンの例は、BEGRIVACTM、FLUARIXTM、FLUZONETMおよびFLUSHIELDTM製品である。
【0079】
本発明の方法を使用して、生ワクチンを産生することもできる。そのようなワクチンは通常、ビリオン含有流体からビリオンを精製することによって調製される。例えば、その流体を遠心分離によって清澄化し、(例えば、スクロース、リン酸カリウム、およびグルタミン酸ナトリウムを含有する)緩衝液を用いて安定化することができる。様々な形態のインフルエンザウイルスワクチンが現在入手可能である(例えば、参考文献32の第17および18章を参照)。生ウイルスワクチンには、MedImmuneのFLUMISTTM製品(三価の生ウイルスワクチン)が含まれる。
【0080】
精製インフルエンザウイルス表面抗原ワクチンは表面抗原の赤血球凝集素を、また典型的にはノイラミニダーゼも含む。精製形態でこれらのタンパク質を調製するプロセスは当技術分野で周知である。FLUVIRINTM、AGRIPPALTMおよびINFLUVACTM製品はインフルエンザサブユニットワクチンである。
【0081】
別の形態の不活性化抗原はビロソーム[33](核酸を含まないウイルス様のリポソーム粒子)である。ビロソームは、洗浄剤でウイルスを可溶化し、その後ヌクレオキャプシドを除去し、ウイルス糖タンパク質を含有する膜を再構成することによって調製することができる。ビロソームを調製する代替の方法では、ウイルス膜糖タンパク質を過剰量のリン脂質に添加して、その膜中にウイルスタンパク質を有するリポソームを得ることを含む。
【0082】
ウイルスは弱毒化されていてもよい。ウイルスは温度感受性でもよい。ウイルスは寒冷に適合していてもよい。これら3つの特徴は、抗原として生ウイルスを使用するときに特に有用である。
【0083】
HAは現在の不活性化インフルエンザワクチンにおける主要な免疫原であり、ワクチン用量は、典型的にはSRIDによって測定されるHAレベルを参照することによって標準化される。既存のワクチンは、典型的には1株当たり約15μgのHAを含有するが、例えば、小児に、または世界的流行の状況で、またはアジュバントを使用するときには低い用量を使用することができる。高用量(例えば3×または9×の用量[34、35])と同様に、2分の1(すなわち、1株当たりHA7.5μg)、4分の1や8分の1などの分数用量が使用されている。したがって、ワクチンは、1つのインフルエンザ株当たり0.1〜150μg、好ましくは0.1〜50μg、例えば0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μgなどのHAを含んでよい。特定の用量は、例えば、1株当たり約45、約30、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約3.75、約1.9、約1.5などを含む。
【0084】
生ワクチンでは、HA含量ではなく中央組織培養感染量(TCID50)によって投与量を測定し、1株当たり106〜108(好ましくは106.5〜107.5)のTCID50が典型的である。
【0085】
本発明と共に使用されるインフルエンザ株は、野生型ウイルスで認められる天然のHAを有してもよく、または改変されたHAを有してもよい。例えば、HAを改変して、トリの種においてウイルスを高度に病原性にする決定基(例えば、HA1/HA2切断部位の周りにある超塩基性領域)を除去することが知られている。逆遺伝学の使用は、そのような改変を容易にする。
【0086】
ワクチンで使用するインフルエンザウイルス株は季節によって変化する。世界的流行間期では、ワクチンは、典型的には2つのインフルエンザA型株(H1N1およびH3N2)および1つのインフルエンザB型株を含み、三価のワクチンが典型的である。本発明は、H2、H5、H7またはH9サブタイプ株など、世界的流行ウイルス株(すなわち、ワクチンレシピエントおよび一般のヒト集団が免疫学的にナイーブである、詳細にはインフルエンザA型ウイルスの株)を使用することもでき、世界的流行株のインフルエンザワクチンは一価でもよく、または世界的流行株によって補充される通常の三価のワクチンに基づいていてもよい。しかし、季節およびワクチンに含まれる抗原の性質に応じて、本発明はHAサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16の1つまたは複数に対して保護することができる。本発明は、インフルエンザA型ウイルスのNAサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8またはN9の1つまたは複数に対して保護することができる。
【0087】
世界的流行間期株に対する免疫化に適しているのと同様に、本発明の組成物は、世界的流行株または潜在的に世界的流行性のある株に対する免疫化に特に有用である。世界的流行の発生を引き起こす潜在性をもたらすインフルエンザ株の特徴は:(a)現在循環しているヒト株中の赤血球凝集素と比較して新たな赤血球凝集素、すなわち10年にわたってヒト集団において明らかとなっていないもの(例えば、H2)、またはヒト集団において以前に全く見られていないもの(例えば、トリ集団においてのみ一般に見つかっているH5、H6またはH9)を含有し、その結果、ヒト集団がその株の赤血球凝集素に対して免疫学的にナイーブであること;(b)ヒト集団において水平に伝染する能力があること;(c)ヒトに対して病原性があることである。H5赤血球凝集素型のウイルスは、H5N1株など、世界的流行性インフルエンザに対する免疫化に好ましい。他の考えられる株には、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1およびH7N7、ならびに任意の他の潜在的に世界的流行性のある新興の株が含まれる。本発明は、非ヒト動物集団からヒトへと広がることができるか、または広がっている潜在的な世界的流行ウイルス株、例えばブタ起源のH1N1インフルエンザ株に対して保護するのに特に適している。次いで本発明はヒトならびに非ヒト動物へのワクチン接種に適している。
【0088】
有用なことにその抗原を組成物中に含めることができる他の株は、耐性の世界的流行株を含めて[37]、抗ウイルス療法に耐性である(例えば、オセルタミビル[36]および/またはザナミビルに耐性である)株である。
【0089】
本発明の組成物は、インフルエンザA型ウイルスおよび/またはインフルエンザB型ウイルスを含めた1つまたは複数の(例えば1、2、3、4つまたはそれ以上の)インフルエンザウイルス株由来の抗原(複数可)を含んでよい。ワクチンがインフルエンザの1を超える株を含む場合、典型的には異なる株を別々に増殖させ、ウイルスを収集し抗原を調製した後に混合する。したがって、本発明のプロセスは、1を超えるインフルエンザ株由来の抗原を混合するステップを含んでよい。2つのインフルエンザA型ウイルス株および1つのインフルエンザB型ウイルス株由来の抗原を含む三価のワクチンが典型的である。2つのインフルエンザA型ウイルス株および2つのインフルエンザB型ウイルス株、または3つのインフルエンザA型ウイルス株および1つのインフルエンザB型ウイルス株由来の抗原を含む四価のワクチンも有用である[38]。
【0090】
(医薬組成物)
本発明に従って製造されるワクチン組成物は薬学的に許容される。それは通常、抗原に加えて構成成分を含み、例えば典型的には1つまたは複数の薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含む。下記に記載するように、アジュバントを含めることもできる。そのような構成成分の完全な論述は、参考文献39において入手可能である。
【0091】
ワクチン組成物は一般に水性の形態となる。しかし、一部のワクチンは、乾燥形態、例えば注射可能な固体またはパッチ上の乾燥もしくは重合調製物の形態であり得る。
【0092】
ワクチン組成物は、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの保存剤を含んでよい。しかし、好ましくは、ワクチンは水銀物質を実質的に含まない(すなわち5μg/ml未満)、例えばチオメルサールを含まないべきである[30、40]。水銀を全く含有しないワクチンがより好ましい。水銀化合物の代替物として、コハク酸α−トコフェロールを含めることができる[30]。保存剤を含まないワクチンが特に好ましい。
【0093】
張性を調節するために、ナトリウム塩などの生理的な塩を含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、それは1〜20mg/mlで存在してもよい。存在してもよい他の塩には、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム無水物、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが含まれる。
【0094】
ワクチン組成物は一般に、200mOsm/kg〜400mOsm/kg、好ましくは240〜360mOsm/kgの重量オスモル濃度を有し、より好ましくは290〜310mOsm/kgの範囲に入る。重量オスモル濃度はワクチン接種によって引き起こされる痛みに影響を有さないことが以前に報告されているが[41]、それにも関わらずこの範囲で重量オスモル濃度を維持することが好ましい。
【0095】
ワクチン組成物は1つまたは複数の緩衝剤を含んでよい。典型的な緩衝剤には、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、(特に水酸化アルミニウムアジュバントを有する)ヒスチジン緩衝剤、またはクエン酸緩衝剤が含まれる。緩衝剤は、典型的には5〜20mMの範囲で含める。
【0096】
ワクチン組成物のpHは一般に5.0〜8.1、より典型的には6.0〜8.0、例えば6.5〜7.5、または7.0〜7.8である。したがって、本発明のプロセスは、パッケージング前にバルクワクチンのpHを調整するステップを含んでよい。
【0097】
ワクチン組成物は好ましくは無菌である。ワクチン組成物は好ましくは非発熱性であり、例えば用量当たり<1EU(エンドトキシン単位、標準的な尺度)、好ましくは用量当たり<0.1EUを含有する。ワクチン組成物は好ましくはグルテンを含まない。
【0098】
本発明のワクチン組成物は、特にスプリットまたは表面抗原ワクチン用に、洗浄剤、例えば(「Tween」として公知である)ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、オクトキシノール(オクトキシノール−9(TritonX−100)またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノールなど)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)、またはデオキシコール酸ナトリウムを含んでよい。洗浄剤は微量でのみ存在できる。したがって、ワクチンは、オクトキシノール−10およびポリソルベート80をそれぞれ1mg/ml未満で含み得る。微量の他の残りの構成成分は抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。
【0099】
ワクチン組成物は、単回免疫化用の物質を含んでもよく、または複数回免疫化用の物質を含んでもよい(すなわち「複数用量」キット)。複数用量で準備する際には保存剤を含めることが好ましい。複数用量組成物で保存剤を含めることの代替法として(またはそれに加えて)、物質を取り出すための無菌的アダプターを有する容器に組成物を入れることができる。
【0100】
インフルエンザワクチンは、典型的には約0.5mlの投与容積で投与するが、半分の用量(すなわち約0.25ml)を小児に投与してもよい。
【0101】
組成物およびキットは好ましくは2℃〜8℃で貯蔵する。それらは凍結すべきでない。それらは理想的には直接光を避けるべきである。
【0102】
(宿主細胞DNA)
細胞系統でウイルスを単離および/または増殖させている場合、DNAのあらゆる腫瘍形成活性を最小限にするために、最終的なワクチン中に残存する細胞系統DNAの量を最小限にすることが標準的には実施される。
【0103】
したがって、本発明に従って調製されたワクチン組成物は、好ましくは、用量当たり10ng未満(好ましくは1ng未満、より好ましくは100pg未満)の残存する宿主細胞DNAを含有するが、微量の宿主細胞DNAが存在してもよい。
【0104】
任意の残存する宿主細胞DNAの平均の長さは、500bp未満、例えば400bp未満、300bp未満、200bp未満、100bp未満などであることが好ましい。
【0105】
ワクチン調製の間に、標準的な精製手順、例えばクロマトグラフィーなどを使用して、汚染DNAを除去することができる。残存する宿主細胞DNAの除去は、ヌクレアーゼ処理によって、例えばDNアーゼを使用することによって増強することができる。宿主細胞DNAの汚染を低減する便利な方法は、参考文献42および43で開示され、2ステップの処理を伴い、最初にウイルス増殖の間に使用できるDNアーゼ(例えばBenzonase)を、次いでビリオン破壊の間に使用できる陽イオン性洗浄剤(例えばCTAB)を使用することを伴なう。β−プロピオラクトンなどのアルキル化剤での処理は、宿主細胞DNAの除去に使用することもでき、有利にはビリオンの不活性化に使用することもできる[44]。
【0106】
(アジュバント)
本発明の組成物は、有利には、組成物を受容した被験体中で惹起される(体液性および/または細胞性)免疫応答を増強するように機能することができるアジュバントを含んでよい。好ましいアジュバントは水中油型エマルジョンを含む。種々のそのようなアジュバントが公知であり、それらは典型的には少なくとも1つの油および少なくとも1つの界面活性剤を含み、油(複数可)および界面活性剤(複数可)は生分解性(代謝可能)であり生体適合性である。エマルジョン中の油滴は一般に直径5μm未満であり、理想的にはサブミクロンの直径を有し、この小さいサイズは、安定なエマルジョンを提供するマイクロフルイダイザーを用いて実現される。フィルター滅菌に供することができるため、220nm未満のサイズを有する液滴が好ましい。
【0107】
エマルジョンは、動物(魚など)または植物供給源由来のものなどの油を含み得る。植物油の供給源には、堅果、種子および穀物が含まれる。最も一般的に入手可能であるラッカセイ油、ダイズ油、ヤシ油、およびオリーブ油が堅果油を例示する。例えばホホバ豆から得られるホホバ油を使用することができる。種子油には、ベニバナ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ油などが含まれる。穀物の群では、トウモロコシ油が最も容易に入手可能であるが、コムギ、オートムギ、ライムギ、イネ、テフ、ライコムギなど他の穀物類の油を使用することもできる。種子油では天然に存在しないが、グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素脂肪酸エステルを、堅果および種子油から開始する適当な物質の加水分解、分離およびエステル化によって調製することができる。哺乳動物の乳由来の脂肪および油は代謝可能であり、したがって本発明の実施に使用することができる。動物供給源から純粋な油を得るのに必要な分離、精製、鹸化および他の手段の手順は当技術分野で周知である。ほとんどの魚は、容易に収集することができる代謝可能な油を含有する。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨蝋などのクジラ油が、本明細書で使用することができるいくつかの魚油を例示する。5炭素イソプレン単位でいくつかの分岐鎖油が生化学的に合成され、それは一般にテルペノイドと称される。サメ肝油は、スクアレンとして公知である分岐不飽和テルペノイド2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンを含有し、それが本明細書で特に好ましい。スクアレンの飽和類似体であるスクアランも好ましい油である。スクアレンおよびスクアランを含めた魚油は、商業的供給源から容易に入手可能であり、または当技術分野で公知である方法によって得ることができる。別の好ましい油はα−トコフェロールである(下記を参照)。
【0108】
油の混合物を使用することができる。
【0109】
界面活性剤は、その「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16のHLBを有する。それだけに限らないが、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenと称される)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;直鎖EO/POブロックコポリマーなど、DOWFAXTMの商品名で販売されているエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー;反復するエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が様々となり得、オクトキシノール−9(TritonX−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深いオクトキシノール;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);ホスファチジルコリン(レシチン)などのリン脂質;TergitolTMNPシリーズなどのノニルフェノールエトキシレート;トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30)など、ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから誘導されるポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知);ならびにトリオレイン酸ソルビタン(Span85)やモノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタンエステル(一般的にSPANとして公知)を含めた界面活性剤と共に本発明を使用することができる。非イオン性界面活性剤が好ましい。エマルジョン中に含めるのに好ましい界面活性剤は、Tween80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、Span85(トリオレイン酸ソルビタン)、レシチンおよびTritonX−100である。
【0110】
界面活性剤の混合物、例えば、Tween80/Span85混合物を使用することができる。モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80)などのポリオキシエチレンソルビタンエステルおよびt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX−100)などのオクトキシノールの組合せも適切である。別の有用な組合せは、ラウレス9、プラス、ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含む。
【0111】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween80など)では0.01〜1%、詳細には約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(TritonX−100、またはTritonシリーズ中の他の洗浄剤など)では0.001〜0.1%、詳細には0.005〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(ラウレス9など)では0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%、詳細には0.1〜1%または約0.5%である。
【0112】
ワクチンがスプリットウイルスを含有する場合、水相中に遊離界面活性剤を含有することが好ましい。遊離界面活性剤が抗原に対して「スプリット化効果」を発揮することができ、それによって非スプリットビリオンおよび/またはその他の形で存在し得るビリオン凝集物が破壊されるので、これは有利である。これはスプリットウイルスワクチンの安全性を向上させることができる[45]。
【0113】
好ましいエマルジョンは、<lμm、例えば≦750nm、≦500nm、≦400nm、≦300nm、≦250nm、≦220nm、≦200nmの、またはそれより小さい平均液滴サイズを有する。これらの液滴サイズは、好都合なことに、マイクロフルイダイゼーションなどの技術によって実現することができる。
【0114】
本発明で有用な特定の水中油型エマルジョンアジュバントには、それだけに限らないが、以下のものが含まれる。
【0115】
・スクアレン、Tween80、およびSpan85のサブミクロンエマルジョン。そのエマルジョンの組成は容積で約5%がスクアレン、約0.5%がポリソルベート80、約0.5%がSpan85であり得る。重量でいうと、これらの比は4.3%がスクアレン、0.5%がポリソルベート80、0.48%がSpan85となる。このアジュバントは、「MF59」として公知であり[46〜48]、参考文献49の第10章および参考文献50の第12章でより詳細に記載されている。MF59エマルジョンは、有利には、クエン酸イオン、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝剤を含む。
【0116】
・スクアレン、DL−α−トコフェロール、およびポリソルベート80(Tween80)のエマルジョン。そのエマルジョンは、リン酸緩衝食塩水を含んでよい。それは、Span85(例えば1%)および/またはレシチンも含んでもよい。これらのエマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロールおよび0.3〜3%のTween80を有してもよく、より安定なエマルジョンを提供するのでスクアレン:トコフェロールの重量比は好ましくは≦1である。スクアレンおよびTween80は、約5:2の容積比、または約11:5の重量比で存在してもよい。1つのそのようなエマルジョンは、PBS中にTween80を溶解して2%溶液を得、次いでこの溶液90mlを(DL−α−トコフェロール5gおよびスクアレン5ml)の混合物と混合し、次いでその混合物をマイクロフルイダイズすることによって作製することができる。得られたエマルジョンは、例えば、平均直径が100〜250nm、好ましくは約180nmであるサブミクロンの油滴を有してもよい。そのエマルジョンは、3−脱−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3d−MPL)も含んでもよい。この型の別の有用なエマルジョンは、ヒト用量当たり0.5〜10mgのスクアレン、0.5〜11mgのトコフェロール、および0.1〜4mgのポリソルベート80を含み得る[51]。
【0117】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton洗浄剤(例えば、TritonX−100)のエマルジョン。そのエマルジョンは、3d−MPLも含んでもよい(下記を参照)。そのエマルジョンは、リン酸緩衝液を含有してもよい。
【0118】
・ポリソルベート(例えばポリソルベート80)、Triton洗浄剤(例えばTritonX−100)およびトコフェロール(例えばコハク酸α−トコフェロール)を含むエマルジョン。そのエマルジョンは、約75:11:10の質量比でこれら3つの構成成分を含んでよく(例えば750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTritonX−100および100μg/mlのコハク酸α−トコフェロール)、これらの濃度は抗原からのこれらの構成成分の任意の寄与を含むべきである。そのエマルジョンは、スクアレンも含んでもよい。そのエマルジョンは、3d−MPLも含んでもよい(下記を参照)。その水相は、リン酸緩衝液を含有してもよい。
【0119】
・スクアレン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTML121」)のエマルジョン。そのエマルジョンは、リン酸緩衝食塩水、pH7.4中で処方することができる。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント中でスレオニル−MDPと共に使用されている[52](0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアレン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。それは、「AF」アジュバントに見られるように、Thr−MDPを伴わずに使用することもできる[53](5%のスクアレン、1.25%のPluronicL121および0.2%のポリソルベート80)。マイクロフルイダイゼーションが好ましい。
【0120】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えばポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、モノオレイン酸ソルビタンまたは「Span80」などのソルビタンエステルまたはマンニドエステル)を含むエマルジョン。そのエマルジョンは好ましくは熱可逆性であり、かつ/またはサイズが200nm未満の油滴を(容積で)少なくとも90%有する[54]。そのエマルジョンは、アルジトール、凍結保護剤(例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロースなどの糖)、および/またはアルキルポリグリコシドのうち1つまたは複数も含んでもよい。そのエマルジョンはTLR4アゴニストを含んでよい[55]。そのようなエマルジョンを凍結乾燥することができる。
【0121】
・スクアレン、ポロキサマー105およびAbil−Care[56]のエマルジョン。アジュバント添加ワクチン中のこれらの構成成分の終濃度(重量)は、5%スクアレン、4%ポロキサマー105(プルロニックポリオール)および2%Abil−Care85(ビス−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16ジメチコン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)である。
【0122】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性界面活性剤を有するエマルジョン。参考文献57に記載されているように、好ましいリン脂質構成成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの液滴サイズが有利である。
【0123】
・代謝不可能な油(軽油など)および少なくとも1つの界面活性剤(レシチン、Tween80またはSpan80など)のサブミクロン水中油型エマルジョン。QuilAサポニン、コレステロール、サポニン親油性結合体(グルクロン酸のカルボキシル基を介してデスアシルサポニンに脂肪族アミンを付加することによって作製される、参考文献58に記載のGPI−0100など)、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(dimethyidioctadecylammonium bromide)および/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンなどの添加物を含めることができる。
【0124】
・サポニン(例えばQuilAまたはQS21)およびステロール(例えばコレステロール)がらせん状ミセルとして会合しているエマルジョン[59]。
【0125】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシ化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシ化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[60]。
【0126】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシ化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシ化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[60]。
【0127】
いくつかの実施形態では、エマルジョンは送達時にその場で抗原と混合することができ、したがってアジュバントおよび抗原はパッケージングまたは分配されたワクチンにおいて別々に維持され、使用時に最終的な処方物にする準備ができていてもよい。他の実施形態では、製造の間にエマルジョンを抗原と混合し、したがって液体アジュバント添加形態で組成物をパッケージングする。抗原は一般に水性の形態にあり、その結果ワクチンは2つの液体を混合することによって最終的に調製される。混合する2つの液体の容積比は(例えば5:1と1:5との間で)様々となり得るが、一般に約1:1である。特定のエマルジョンの上記の記載において構成成分の濃度が示されている場合、これらの濃度は典型的には無希釈の組成物についてのものであり、したがって抗原溶液と混合した後の濃度は低下する。
【0128】
(ワクチン組成物のパッケージング)
本発明の組成物(またはキット構成成分)に適した容器には、バイアル、シリンジ、(例えば、ディスポーザブルシリンジ)、鼻スプレーなどが含まれる。これらの容器は無菌であるべきである。
【0129】
組成物/構成成分がバイアルの中にある場合、バイアルは、好ましくは、ガラスまたはプラスチック物質でできている。バイアルは、好ましくは、それに組成物を添加する前に滅菌する。ラテックス感受性の患者に伴う問題を回避するために、好ましくはラテックスを含まないストッパーでバイアルを密封し、すべてのパッケージング物質においてラテックスが存在しないことが好ましい。バイアルは単回用量のワクチンを含んでもよく、または1を超える用量(「複数用量」バイアル)、例えば10用量を含んでもよい。好ましいバイアルは、無色のガラスでできている。
【0130】
バイアルは、キャップ中に充填済(pre−filled)シリンジを挿入することができるように適合させたキャップ(例えば、ルアーロック)を有することができ、(例えば、その中の凍結乾燥物質を再構成するために)シリンジの内容物をバイアルに放出することができ、そして、バイアルの内容物をシリンジに戻すことができる。バイアルからシリンジを取り出した後、次いで針を取り付けることができ、組成物を患者に投与することができる。キャップは好ましくはシールまたはカバーの内部にあり、その結果、キャップに到達できる前には、シールまたはカバーを取り外さなければならない。バイアルは、特に複数用量バイアル用に、その内容物の無菌的取り出しを可能にするキャップを有してもよい。
【0131】
構成成分がシリンジにパッケージングされている場合、シリンジは、それに取り付けられた針を有してもよい。針が取り付けられていない場合、組み立てて使用するための別々の針をシリンジと共に供給することができる。そのような針は、鞘に入っていてもよい。安全針が好ましい。1インチ23ゲージ、1インチ25ゲージおよび5/8インチ25ゲージの針が典型的である。記録の維持が容易となるように、ロット番号、インフルエンザの流行期および内容物の使用期限が印刷され得る剥離式のラベルを付けてシリンジを提供することができる。シリンジ中のプランジャーは、好ましくは、吸引の間にプランジャーが誤って取り出されることを防止するストッパーを有する。シリンジは、ラテックスゴムキャップおよび/またはプランジャーを有してもよい。ディスポーザブルシリンジは、単回用量のワクチンを含有する。シリンジは一般に、針を取り付ける前に先端を密封する先端キャップを有し、その先端キャップは好ましくはブチルゴムでできている。シリンジおよび針が別々にパッケージングされている場合、針は、好ましくはブチルゴム遮蔽を装着している。好ましいシリンジは、商品名「Tip−Lok」TMで販売されているものである。
【0132】
例えば小児への送達を容易にするために、容器に半分の用量の容積を示す印をつけてもよい。例えば、0.5ml用量を含有するシリンジは、0.25mlの容積を示す印を有してもよい。
【0133】
ガラス容器(例えばシリンジまたはバイアル)が使用される場合、ソーダ石灰ガラスではなくホウケイ酸ガラスでできている容器を使用することが好ましい。
【0134】
キットまたは組成物は、ワクチンの詳細、例えば投与の指示、ワクチン内の抗原の詳細などを含むリーフレットと共に(例えば、同じ箱の中に)パッケージングすることができる。その指示は、例えばワクチン接種後のアナフィラキシー反応の場合に備えて、アドレナリンの溶液を容易に入手できるようにしておくなどの警告も含有してもよい。
【0135】
(処置の方法、およびワクチンの投与)
本発明は、本発明に従って製造されたワクチンを提供する。これらのワクチン組成物は、ヒトまたはブタなどの非ヒト動物被験体への投与に適しており、本発明は、本発明の組成物を被験体に投与するステップを含む、被験体中で免疫応答を起こす方法を提供する。本発明は、医薬として使用するための本発明の組成物も提供し、被験体中で免疫応答を起こす医薬を製造するための、本発明の組成物の使用も提供する。
【0136】
これらの方法および使用により起こった免疫応答は一般に抗体応答、好ましくは保護的抗体応答を含む。インフルエンザウイルスワクチン接種後の抗体応答、中和能力および保護を評価する方法は当技術分野で周知である。ヒトでの研究では、ヒトインフルエンザウイルスの赤血球凝集素に対する抗体価が保護と相関する(血清試料の赤血球凝集阻止反応力価が約30〜40であると、同種のウイルスによる感染からおよそ50%保護される)ことが示されている[61]。抗体応答は、典型的には、赤血球凝集阻止反応法、マイクロ中和法、一元放射免疫拡散法(SRID)、および/または一元放射溶血反応法(SRH)によって測定される。これらのアッセイ技術は当技術分野で周知である。
【0137】
本発明の組成物は様々な方法で投与することができる。最も好ましい免疫化経路は、(例えば腕または脚への)筋肉内注射によるものであるが、他の利用可能な経路には、皮下注射、鼻内[62〜64]、経口[65]、皮内[66、67]、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)[68]などが含まれる。
【0138】
本発明に従って調製されるワクチンを使用して、小児も成人も処置することができる。インフルエンザワクチンは、6カ月齢から、小児および成人の免疫化での使用について現在推奨されている。したがって、ヒト被験体は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または少なくとも55歳でよい。ワクチンを受けることが好ましい被験体は、高齢者(例えば≧50歳、≧60歳、好ましくは≧65歳)、幼年者(例えば≦5歳)、入院している被験体、医療従事者、軍人および軍関係者、妊娠している女性、慢性疾患の免疫不全被験体、ワクチンを受ける前7日以内に抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルまたはザナミビル化合物;下記を参照)を服用した被験体、卵アレルギーの人々および外国旅行をしている人々である。しかし、ワクチンはこれらの群にだけ適しているわけではなく、より一般に集団で使用することができる。世界的流行株では、すべての年齢群への投与が好ましい。
【0139】
本発明の好ましい組成物は、効力についてのCPMP基準の1つ、2つまたは3つを満たす。成人(18〜60歳)では、これらの基準は、(1)≧70%のセロプロテクション、(2)≧40%のセロコンバージョン、および/または(3)≧2.5倍のGMT増大である。高齢者(>60歳)では、これらの基準は、(1)≧60%のセロプロテクション、(2)≧30%のセロコンバージョン、および/または(3)≧2倍のGMT増大である。これらの基準は、少なくとも50人の患者での非盲検試験に基づいている。
【0140】
処置は、単回投与スケジュールによるものでもよく、または複数回投与スケジュールによるものでもよい。初回免疫化スケジュールおよび/または追加免疫化スケジュールで複数回投与を使用することができる。複数回投与スケジュールでは、例えば非経口での初回および粘膜での追加、粘膜での初回および非経口での追加など、同じかまたは異なる経路によって様々な投与を行うことができる。1を超える投与(典型的には2回の投与)を施すことは、免疫学的にナイーブな患者で、例えばこれまでインフルエンザワクチンを受けたことのない人々に、または(世界的流行の発生でのように)新たなHAサブタイプに対するワクチン接種に特に有用である。典型的には、少なくとも1週間間隔で(例えば約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)複数回投与を行う。
【0141】
本発明によって産生されるワクチンは、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、医療専門家またはワクチン接種センターへの同じ医療相談または訪問の間に)、例えば麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合型H.influenzae b型ワクチン、不活性化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌結合型ワクチン(4価のA−C−W135−Yワクチンなど)、RSウイルスワクチン、肺炎球菌結合型ワクチンなどと実質的に同時に患者に投与することができる。肺炎球菌ワクチンおよび/または髄膜炎菌ワクチンと実質的に同時の投与は、高齢患者で特に有用である。
【0142】
同様に、本発明のワクチンは、抗ウイルス化合物、詳細にはインフルエンザウイルスに対して活性のある抗ウイルス化合物(例えばオセルタミビルおよび/またはザナミビル)と実質的に同時に(例えば、同じ医療相談または医療専門家への訪問の間に)患者に投与することができる。これらの抗ウイルス薬には、そのエステル(例えばエチルエステル)およびその塩(例えばリン酸塩)を含めた、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸または5−(アセチルアミノ)−4−[(アミノイミノメチル)−アミノ]−2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノン−2−エノン酸などのノイラミニダーゼインヒビターが含まれる。好ましい抗ウイルス薬は、リン酸オセルタミビル(TAMIFLUTM)としても公知である、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸,エチルエステル,リン酸塩(1:1)である。
【0143】
(全般)
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、もっぱらXのみからなるものでもよく、または追加の何か、例えばX+Yを含んでもよい。
【0144】
「実質的に」という語は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないこともある。必要な場合、「実質的に」という語は、本発明の定義から省略することができる。
【0145】
数値xに関連して「約」という用語は任意選択のものであり、例えば、x±10%を意味する。
【0146】
別段に述べられない限り、2つ以上の構成成分を混合するステップを含むプロセスは、混合する任意の特定の順序を必要としない。したがって、任意の順序で構成成分を混合することができる。3つの構成成分が存在する場合、2つの構成成分を互いに組み合わせ、次いでその組合せを第3の構成成分と組み合わせることなどができる。
【0147】
細胞の培養で動物(特にウシ)物質を使用する場合、それは、伝染性海綿状脳症(TSE)を含まない、詳細にはウシ海綿状脳症(BSE)を含まない供給源から得るべきである。全体的に、動物由来物質が総じて存在しない状態で細胞を培養することが好ましい。
【0148】
組成物の一部として化合物を身体に投与する場合、その化合物は、代わりに適切なプロドラッグに置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、ルシフェラーゼレポーターを用いたpolIプロモーター活性のアッセイに使用した発現構築物を図示する。
【図2】図2は、完全長(FL)ヒトpolIプロモーター配列(配列番号1)を示す。完全長配列内のpHW2000ヒトpolIプロモーター配列(配列番号2;「ショート」ヒトpolIプロモーター)が下線を引いたフォントで示されている。矢印は転写開始部位を指し示す。
【図3】図3は、完全長(FL)イヌpolIプロモーター配列(NW_878945;配列番号3)を示す。完全長プロモーター配列内のSHORTプロモーター配列が下線を引いた大文字フォント(配列番号5)で示され、完全長プロモーター配列内のMIDプロモーター配列が下線を引いた大文字フォントおよび太い小文字フォント(配列番号4)で示されている。
【図4】図4は、MDCK細胞中でのイヌpolIプロモーター活性を示す。無地の灰色のカラムはFLイヌpolIプロモーターを用いた結果を示し、斜線付きのカラムはMIDイヌプロモーターを用いた結果を示し、斑点付きのカラムはSHORTイヌpolIプロモーターを用いた結果を示す。「A」はLUCおよびウイルスポリメラーゼを指し示し、「B」はLUCおよび感染(MOI=0.05)を指し示し、「C」はLUCを指し示し、「D」はDNA無しである。y軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図5】図5は、MDCK33016細胞中でのヒトpolIプロモーター活性を示す。無地の灰色のカラムはヒトpolIプロモーターを用いた結果を示し、斜線付きのカラムはFLイヌpolIプロモーターを用いた結果を示し、斑点付きのカラムはMIDイヌpolIプロモーターを用いた結果を示し、垂直線付き(vertically hatched)のカラムはSHORTイヌpolIプロモーターを用いた結果を示す。「A」はLUCおよびウイルスポリメラーゼを指し示し、「B」はLUCおよび感染(MOI=0.05)を指し示し、「C」はLUCを指し示す。y軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図6】図6は、MDCK細胞の33016細胞中でのFLおよびSHORTヒトpolIプロモーターならびに完全長イヌpolIプロモーターの活性の比較を示す。無地の灰色のカラムは完全長ヒトプロモーターを用いた結果を示し、斜線カラムは完全長イヌプロモーターを用いた結果を示し、斑点付きのカラムはショートヒトpolIプロモーターを用いた結果を示す。AはLUC+ポリメラーゼを指し示し、BはLUC+感染を指し示し、CはLUCのみを指し示す。y軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図7】図7は、MDCK33016細胞(図7A)およびMDCK ATCC細胞(図7B)中でのヒトpolIプロモーター(斑点付きのカラム)およびイヌpolIプロモーター(斜線付きのカラム)の活性を示す。AはLUC+ポリメラーゼを指し示し、BはLUC+感染を指し示し、CはLUCのみを指し示す。y軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図8】図8は、ウイルスレスキュー後の細胞溶解物中のMおよびNPタンパク質のウェスタンブロット分析を示す。
【図9】図9は、逆遺伝学構築物を感染させた細胞の上清を使用したフォーカス形成アッセイの結果を示す。
【図10】図10は、ヒトおよびイヌpolIプロモーターのDNA配列(それぞれ配列番号1および3)のアラインメントを示す。
【図11】図11Aは、MDCK ATCC、MDCK33016−PFおよび293T細胞中でのヒトpolI(hPolI)プロモーターまたはイヌpolIプロモーター(cPolI)の調節下のレポーター導入遺伝子の発現レベルを示す。黒色カラムは293T細胞を用いた結果を表し、白色カラムはMDCK33016−PFを用いた結果を示し、斜線付きのカラムはMDCK ATCC細胞を用いた結果を表す;図11Bは、ヒトおよびイヌ細胞中でのトランスフェクション効率を比較している。どちらのグラフでもy軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図12】図12は、TMPRSS2ヘルパープラスミドの存在下(白色カラム)および不在下(黒色カラム)、ならびにフィーダー細胞を添加した状態(黒色カラム)および添加していない状態(白色カラム)(12B)における、MDCK ATCC、MDCK33016−PFおよび293T細胞中でのヒトpolIプロモーターに基づく逆遺伝学によるA/プエルトリコ/8/34インフルエンザ株のレスキューを示す。y軸はウイルス力価(ffu/mL)を表す。
【図13】図13は、MDCK33016−PF細胞中での、ヒトまたはイヌpolIで促進される逆遺伝学によるA/プエルトリコ/8/34インフルエンザ株のレスキューを比較している。黒色カラムはTMPRSS2ヘルパープラスミドの不在下での結果を示し、白色バーはTMPRSS2ヘルパープラスミドの存在下での結果を示す。y軸はウイルス力価(ffu/mL)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0150】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1は、完全長(FL)ヒトpolIプロモーター配列である。
配列番号2は、pHW2000ヒトPolIプロモーター配列である。
配列番号3は、完全長(FL)イヌpolIプロモーター配列である。
配列番号4は、MIDイヌpolIプロモーター配列である。
配列番号5は、SHORTイヌpolIプロモーター配列である。
配列番号6は、A/カリフォルニア/04/09由来のHA配列である。
配列番号7は、A/チリ/1/1983由来のHA配列である。
配列番号8は、A/カリフォルニア/04/09由来のNA配列である。
配列番号9は、A/チリ/1/1983由来のNA配列である。
【0151】
(発明を実施するための様式)
(ヒトpolIプロモーターはヒトならびにイヌ細胞中で活性である)
非内因性宿主細胞中でのpolIプロモーターの活性を評価するために、ヒトpolIプロモーターの487bp断片またはイヌpolIプロモーターの様々な断片の調節下で(図3に示されている)、アンチセンスの方向でルシフェラーゼ(luc)RNAの発現を可能とする発現構築物をMDCK細胞にトランスフェクトした。発現したRNAをウイルスポリメラーゼによりmRNAに転写し、その後lucタンパク質に翻訳することができる。したがって、ルシフェラーゼ活性についてアッセイを行うことにより、導入遺伝子を発現している細胞を容易に同定することができる。このアッセイが働くには、ウイルスポリメラーゼを提供することが必要である。これは、細胞にウイルスポリメラーゼをコードする発現構築物を共トランスフェクト(co−transfect)するか、あるいはトランスフェクトした細胞にヘルパーウイルスを感染させることによって実現することができる。このアッセイは図1に図示されている。
【0152】
図11Aは、ヒトpolIプロモーターが、MDCK ATCC細胞中で、またMDCK33016−PF細胞中でもイヌpolIプロモーターと同じ効率で導入遺伝子の発現を促進できることを示す。MDCK ATCC細胞中でヒトpolIプロモーターを用いた導入遺伝子の発現レベルは、ヒト293T細胞中で観察されるものよりさらに高い。試験した細胞型のトランスフェクション効率が同等であることを確認するために、CMVプロモーターの調節下にあるルシフェラーゼ遺伝子を含有する構築物をそれらにトランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性のレベルを測定した。その結果は図11Bに示され、それから、試験した細胞のトランスフェクション効率が同等であることが確認される。
【0153】
図4は、イヌpolIプロモーターの試験した断片がすべて、MDCK細胞中でluc導入遺伝子の発現を促進できることを示す。さらに、図5は、完全長ヒトpolIプロモーターがMDCK細胞中で導入遺伝子の発現を促進でき、イヌpolIプロモーターよりさらに効率がよいことを実証している。
【0154】
導入遺伝子の発現の促進に必要なヒトpolIプロモーターの領域をさらに規定するために、図2に示されているヒトpolIプロモーターの断片(「ショート」polI)を用いて実験を反復した。完全長polIプロモーターがより活性であるが、完全長ならびにショートヒトpolIプロモーターがMDCK細胞中で活性であることが分かった(図6)。
【0155】
ヒトpolIプロモーターの活性が特定の細胞系統に制限されるかどうかを判定するために、ヒトおよびイヌpolIプロモーター配列を含有する構築物をATCCのMDCKおよびMDCK33016細胞[18]にさらにトランスフェクトした。図7に示されているように、ヒトpolIプロモーターは、どちらの細胞型でも導入遺伝子の発現を促進することができたが、その発現は、MDCK33016細胞でより効率がよかった。ヒトpolIプロモーターを使用した、MDCK細胞からのインフルエンザウイルスのレスキュー。
【0156】
ヒトpolIプロモーターを使用したインフルエンザウイルスレスキューの効率をMDCKおよび293T細胞で比較した。インフルエンザウイルスゲノムをpHW2000発現ベクター中にクローニングした[69]。このベクターは、MDCK細胞中で活性であることが示されたヒトpolIプロモーターの断片を含有する(図5を参照)。詳細には、以下のベクターを使用した:pHW−WSN PA(0.534μg/μl);pHW−WSN PB1(0.432μg/μl);pHW−WSN PB2(0.357μg/μl);pHW−WSN NP(0.284μg/μl);pHW−WSN NS(0.217μg/μl);pHW−WSN M(0.232μg/μl);pHW−WSN HA(0.169μg/μl);pHW−WSN NA(0.280μg/μl)およびpcDNA−TMPRSS(0.775μg/μl;セリンプロテアーゼをコードする)。タンパク質コード遺伝子は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって調節されていた。
【0157】
ウイルスレスキューでは、10%FCSを入れたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)2mlを入れた6ウェルディッシュ中の1ウェル当たり細胞5×106個の密度に293T細胞を播いた。培地2mlを入れた6ウェルディッシュ中の1ウェル当たり細胞0.3×106個にMDCK細胞を入れた(plate)。細胞を37℃で1晩インキュベートし、50〜80%のコンフルエンシーに達したときにトランスフェクトした。
【0158】
293TおよびMDCK細胞は、FuGENE6トランスフェクション試薬(Rocheカタログ番号11988387001)およびリポフェクタミンLTXプラス試薬(Invitrogenカタログ番号15338−100)をそれぞれ使用してトランスフェクトした。以下のプロトコールに従って細胞に各ベクター1μgをトランスフェクトした。FuGENE6では、試薬(DNA1μg当たりFuGENE3μl)を無血清培地73μl(抗生物質を含まない)で希釈し、穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。その後、希釈したFuGENEにそれぞれDNAを添加し、穏やかに混合し、室温で少なくとも15分間インキュベートした。増殖培地を除去せずにDNA/FuGENE複合体を293T細胞に滴下して加え、細胞を37℃で24時間インキュベートした。
【0159】
リポフェクタミンを用いたトランスフェクションでは、試薬(25μl)を無血清培地500μlで希釈し、室温で5分間インキュベートした。DNAを添加し、その混合物を室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞から増殖培地を除去した後に無血清培地500μlをトランスフェクション試薬に滴下して加えた。その後細胞を37℃で24時間インキュベートした。トランスフェクションから24時間後に培地を交換した。
【0160】
感染から2日後、1000rpmで5分間の遠心分離によって細胞から上清を収集した。上清中に収集されたウイルスをフォーカス形成アッセイに使用した。さらに、感染した細胞を溶解させ、それをウェスタンブロット分析に使用した。
【0161】
(ウェスタンブロット分析)
標準的なプロトコールに従って、293TおよびMDCK細胞を溶解しそれをウェスタンブロット分析に供した。MおよびNPタンパク質に対する抗体を使用して、膜上のこれらのタンパク質を検出した。S6に対する抗体をローディング対照として使用した。「WSN」とラベルを付けたレーンに、レスキューされたウイルス由来のタンパク質をロードした。「M」および「NP」のラベルを付けたレーンは、対照として組換えMおよびNPタンパク質を含有する。これらの組換えタンパク質は異なる遺伝子から発現したので、ゲル中でわずかにゆっくりと移動する。
【0162】
分析の結果は図8に示され、ヒトpolIプロモーターの調節下にある発現構築物が293TならびにMDCK細胞中でのウイルスレスキューを可能とすることが明らかである。
【0163】
(フォーカス形成アッセイ)
10%FCSを入れたDMEM500μlの入った48ウェルプレート中の1ウェル当たり細胞6.25×104個の密度に、感染していないMDCK細胞を入れた。次の日に、細胞に100〜150μlの容積のウイルスを37℃で2時間感染させた。それによって細胞は様々な希釈のウイルスに感染した。感染から2時間後、培地を吸引し10%FCSを入れたDMEM500μlを各ウェルに添加した。細胞を37℃で次の日までインキュベートした。
【0164】
感染から24時間後、培地を吸引し細胞をPBSで1回洗浄した。PBS中80%の氷冷アセトン500μlを各ウェルに添加し、その後4℃で30分間インキュベーションを行った。アセトン混合物を吸引し、細胞をPBST(PBS+0.1%Tween)で1回洗浄した。PBS中2%のBSA500μlを各ウェルに添加し、その後室温(RT)で30分間インキュベーションを行った。ブロッキング緩衝液中1:6000希釈の抗NPを500μl添加し、その後RTで2時間インキュベーションを行った。抗体溶液を吸引し、細胞をPBSTで2回洗浄した。500μlのブロッキング緩衝液中1:2000の希釈で二次抗体(ヤギ抗マウス)を添加し、プレートをRTで2時間インキュベートした。抗体溶液を吸引し、細胞をPBSTで3回洗浄した。KPL True Blue 500μlを各ウェルに添加し10分間インキュベートした。True−Blueを吸引し、dH2Oで1回洗浄することによって反応を停止した。水を吸引し、細胞を乾燥させた。
【0165】
アッセイの結果は図9に示され、それから、293TならびにMDCK細胞から感染性ウイルスが得られたことがはっきりと実証される。
【0166】
参考文献70に記載されているように、ヒトpolI逆遺伝学系を使用したA/プエルトリコ/8/34インフルエンザ株のウイルスレスキューもMDCK ATCC、MDCK33016−PFおよび293T細胞で試験した。セリンプロテアーゼをコードするヘルパープラスミドTMPRSS2の存在下および不在下でウイルスがレスキューされる実験を行った。さらに、ウイルスレスキューから24時間後にフィーダー細胞を添加して、および添加せずにウイルスレスキューを行った。その結果は図12に示され、それから、ヒトpolIプロモーターを使用して様々な条件下で効率的なウイルスレスキューをMDCK細胞で実現できることが実証される。
【0167】
ヒトpolIプロモーターを使用したMDCK33016−PFでのウイルスレスキューの効率がイヌpolIプロモーターを使用したレスキューと同等であるかどうかを比較するため、参考文献70に記載されているように、細胞にヒトpolI RG系またはイヌpolI RG系をトランスフェクトした。TMPRSSヘルパープラスミドの存在下および不在下で実験を行った。その結果(図13)は、ヒトpolI系を使用したときイヌpolI系と同等の効率でA/プエルトリコ/8/34株がレスキューされたことを実証している。
【0168】
本発明がほんの一例として記載されており、本発明の範囲および精神の中にとどまりつつ改変をなすことができることが理解される。
【0169】
(参考文献)
【0170】
【数1】
【0171】
【数2】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2009年5月21日に出願された米国仮特許出願61/216,919からの優先権を主張し、上記米国仮特許出願の全容は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明は逆遺伝学の分野にある。さらに、それは、様々なウイルスから保護するためのワクチンを製造することに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
逆遺伝学は、細胞培養中でのRNAウイルスの組換え発現および操作を可能にする。それは、(リアソータント(reassortant)を含む)組換えウイルスの迅速な産生および/またはその変異を可能とするため、ウイルス学およびワクチン製造における強力なツールである。その方法では、宿主細胞にウイルスゲノムをコードする1つまたは複数の発現構築物をトランスフェクトし、その細胞からウイルスを単離することを伴なう。例えば、特許文献1および2は、イヌpolIプロモーターを使用してイヌ細胞中でインフルエンザゲノムRNAを発現させる方法を記載している。他の出典は、ヒトpolIプロモーターを使用した、ヒト細胞中でのインフルエンザゲノムRNAの発現を報告している。
【0004】
従来技術の方法の1つの重大な欠点は、polIプロモーターが高度に種特異的であることである。例えば、ヒトpolIプロモーターは霊長目細胞中でのみ活性であり[非特許文献1]、同様にイヌ細胞中での発現ではイヌpolIプロモーターが必要となることが報告されている。したがって、内因性polIプロモーターが特徴付けられていない細胞系統中でウイルスを増殖させることが必要である場合、ウイルスをレスキュー(rescue)し増殖させる2つの異なる細胞型を使用することが必要であった。しかし、例えば競合培養選択圧を回避できる利点を有するので、複数の細胞系統の使用を回避することが望ましい。ワクチン産生のすべてのステップで単一の細胞系統を使用すると、規制認可も容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/002008号
【特許文献2】国際公開第2007/124327号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Koudstaal et al.Vaccine(2009)272588−2593
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、逆遺伝学を実施する代替の方法を提供することが当技術分野において必要であり続けている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(好ましい実施形態の概要)
本発明者らは、現時点で驚くべきことに、宿主細胞が由来するのと同じ分類学上の目の生物にとって内因性ではないpolIプロモーターを使用して、宿主細胞中での導入遺伝子の発現を促進(drive)することが可能であることを発見した。
【0009】
一実施形態では、本発明は、1つまたは複数の発現構築物を含む宿主細胞を提供し、その発現構築物(複数可)からのRNA分子の発現は、宿主細胞の目にとって内因性ではないpolIプロモーターによって調節される。これらの宿主細胞は、本発明の発現系で使用することができる。
【0010】
本発明は、(i)目的の導入遺伝子の発現が第1の生物由来のpolIプロモーターによって促進される発現構築物を調製するステップと、(ii)第1の生物と異なる分類学上の目由来である宿主細胞中にステップ(i)の発現構築物を導入するステップとを含む、宿主細胞中でRNAを発現させるプロセスをさらに提供する。
【0011】
さらなる実施形態では、本発明は、組換えウイルスを産生する方法を提供し、そのウイルスは、本発明の宿主細胞を使用して産生される。
【0012】
本発明は、(i)本発明の宿主細胞を使用して組換えウイルスを産生するステップと、(ii)培養宿主にステップ(i)で得られたウイルスを感染させるステップと、(iii)ウイルスを産生させるためにステップ(ii)の培養宿主を培養するステップと、(iv)ステップ(iii)で得られたウイルスを精製するステップとを含む、(例えばワクチンへと処方するための)ウイルスを調製する方法も提供する。ワクチンを調製する方法を提供するために、その方法は次いで(v)ウイルスをワクチンへと処方するさらなるステップを含むことができる。
【0013】
上記で論じたように導入される非内因性polIプロモーター(複数可)に加えて、宿主細胞は内因性polIプロモーターを含む。非内因性polIプロモーター(複数可)は、細胞中での非内因性RNA、詳細にはウイルスRNAの発現を促進する。したがって、本発明は、内因性rRNAの発現を調節する少なくとも1つの内因性polIプロモーター、およびウイルスRNAまたはその相補体の発現を調節する少なくとも1つの非内因性polIプロモーターを有する細胞を提供する。
【0014】
本発明は、タンパク質コードmRNAもウイルスRNAもコードするDNA発現構築物も提供し、(i)タンパク質コードmRNAについてのDNA中のコドン使用頻度はイヌ細胞について最適化され、(ii)ウイルスRNAは霊長目polIプロモーターの調節下にある。イヌ細胞は、理想的にはMDCK細胞であり、霊長目プロモーターは、理想的にはヒトpolIプロモーターである。タンパク質コードmRNAの発現は、イヌ細胞について最適化されたpolIIプロモーターの調節下にあってもよい。
【0015】
(発現構築物)
本発明者らは、驚くべきことに、細胞中で、その細胞と異なる分類学上の目に入る生物由来のpolIプロモーターを使用してRNA発現を促進することが可能であることを発見した。したがって、polIプロモーターは、その細胞が由来するのと同じ分類学上の目の生物にとって内因性ではない。「目」という用語は慣用的な分類学上の順位付けを指し、目の例は、霊長目、齧歯目、食肉目、有袋目、クジラ目などである。ヒトおよびチンパンジーは同じ分類学上の目に入る(霊長目)が、ヒトとイヌは異なる目に入る(霊長目に対して食肉目)。
【0016】
したがって、第1の態様では、本発明は、1つまたは複数の発現構築物を含む宿主細胞を提供し、その発現構築物(複数可)からのRNA分子の発現は、宿主細胞の目にとって内因性ではないpolIプロモーターによって促進される。
【0017】
一実施形態では、宿主細胞は非霊長目細胞であり、polIプロモーターは霊長目polIプロモーターである。特定の実施形態では、宿主細胞は非霊長目細胞であり、プロモーターはヒトプロモーターである。さらなる実施形態では、宿主細胞は非ヒト細胞であり、polIプロモーターはヒトpolIプロモーターである。代替の実施形態では、polIプロモーターは非イヌpolIプロモーターであり、宿主細胞はイヌ細胞である。好ましい実施形態では、宿主細胞はイヌ細胞であり、プロモーターは霊長目polIプロモーターである。さらなる好ましい実施形態では、polIプロモーターはヒトプロモーターであり、宿主細胞は(MDCK細胞などの)イヌ細胞である。この実施形態は、ヒトpolIプロモーターが十分に特徴付けられており、イヌ細胞がワクチンの産生にしばしば使用されるため、好ましい。
【0018】
宿主細胞中で使用される発現構築物は、一方向性発現構築物でもよく、または両方向性発現構築物でもよい。宿主細胞が、(同じ発現構築物にあろうと異なる発現構築物にあろうと)1を超える導入遺伝子を発現する場合、一方向性および/または両方向性発現を使用することが可能である。
【0019】
両方向性発現構築物は、同じ構築物から異なる方向(すなわち、5’から3’と3’から5’の両方)で発現を促進する少なくとも2つのプロモーターを含有する。プロモーターの少なくとも1つは、本明細書で論じられている非内因性polIプロモーターである。2つのプロモーターは、同じ二本鎖DNAの異なる鎖と作動可能に連結することができる。好ましくは、プロモーターの1つは非内因性polIプロモーターであり、その他のプロモーターの少なくとも1つはpolIIプロモーターである。polIプロモーターを使用してキャップのないcRNAを発現させることができ、一方でpolIIプロモーターを使用して、その後タンパク質に翻訳することができるmRNAを転写することができ、それによって同じ構築物からRNAおよびタンパク質の同時発現が可能となるため、これは有用である。polIIプロモーターは内因性でもよく、または非内因性でもよい。1を超える発現構築物が発現系内で使用される場合、プロモーターは、プロモーターの少なくとも1つが宿主細胞中で発現を促進できる非内因性polIプロモーターであるという条件で、内因性および非内因性プロモーターの混合物でもよい。
【0020】
発現構築物は、典型的にはRNA転写終結配列を含む。終結配列は内因性の終結配列でもよく、または宿主細胞にとって内因性ではない終結配列でもよい。適切な終結配列は当業者には明らかであり、その配列には、それだけに限らないが、RNAポリメラーゼI転写終結配列、RNAポリメラーゼII転写終結配列、およびリボザイムが含まれる。さらに、発現構築物は、特にその発現がpolIIプロモーターによって調節される遺伝子の末端に、mRNAの1つまたは複数のポリアデニル化シグナルを含有してもよい。
【0021】
発現系は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個または少なくとも12個の発現構築物を含有してもよい。
【0022】
発現構築物は、プラスミドまたは他のエピソーム性構築物などのベクターでよい。そのようなベクターは、典型的には少なくとも1つの細菌および/または真核生物の複製起点を含む。さらに、ベクターは、原核および/または真核細胞中での選択を可能とする選択可能マーカーを含んでもよい。そのような選択可能マーカーの例は、アンピシリンまたはカナマイシンなどの抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子である。ベクターは、DNA配列のクローニングを容易にする1つまたは複数のマルチクローニング部位をさらに含んでもよい。
【0023】
代替として、発現構築物は、直鎖発現構築物でもよい。そのような直鎖発現構築物は、典型的には増幅および/または選択配列を含有しない。しかし、そのような増幅および/または選択配列を含む直鎖構築物も本発明の範囲内にある。インフルエンザウイルスの発現にそのような直鎖発現構築物を使用する方法の例が参考文献4に記載されている。
【0024】
本発明の発現構築物は、当技術分野で公知である方法を使用して得ることができる。そのような方法は、例えば、参考文献5に記載されたものである。発現構築物が直鎖発現構築物である場合、単一の制限酵素部位を利用して、宿主細胞への導入前にそれを直鎖化することが可能である。あるいは、少なくとも2つの制限酵素部位を使用して、ベクターから発現構築物を切り出すことが可能である。さらに、核酸増幅技術を使用して(例えば、PCRによって)それを増幅することによって、直鎖発現構築物を得ることも可能である。
【0025】
当業者に公知である任意の技術を使用して、宿主細胞中に本発明の発現構築物を導入することができる。例えば、エレクトロポレーション、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿、リポソーム、マイクロインジェクション、または微粒子銃(microparticle−bombardment)を使用することによって、宿主細胞中に本発明の発現構築物を導入することができる。
【0026】
発現宿主がMDCK細胞系統などのイヌ細胞である場合、例えば、野生型イヌ遺伝子もしくはイヌウイルス由来のプロモーターを使用し、および/またはヒト細胞よりイヌ細胞に適したコドン使用頻度を有するようにすることで、イヌ発現についてタンパク質コード領域を最適化することができる。例えば、ヒト遺伝子はPheのコドンとしてUUCを少し好むが(54%)、イヌ細胞ではその優先性がより高い(59%)。同様に、ヒト細胞ではIleコドンについて多数派となる優先性は認められないが、イヌコドンの53%がIleにAUCを使用する。イヌパルボウイルス(ssDNAウイルス)などのイヌウイルスがコドンを最適化するための指針をもたらすこともでき、例えば、イヌパルボウイルス配列においてPheコドンの95%がUUUであり(対してイヌゲノムでは41%)、Ileコドンの68%がAUUであり(対して32%)、Valコドンの46%がGUUであり(対して14%)、Proコドンの72%がCCAであり(対して25%)、Tyrコドンの87%がUAUであり(対して40%)、Hisコドンの87%がCAUであり(対して39%)、Glnコドンの92%がCAAであり(対して25%)、Gluコドンの81%がGAAであり(対して40%)、Cysコドンの94%がUGUであり(対して42%)、Serコドンのわずか1%がUCUであり(対して24%)、CCCはPheに使用されず、UAGは終止コドンとして使用されない。したがって、タンパク質コード遺伝子を、イヌ細胞中での発現について自然にすでに最適化されている遺伝子のようにすることができ、それによって発現が容易となる。
【0027】
(逆遺伝学)
上記に記載の発現構築物および宿主細胞は、逆遺伝学技術により組換えウイルス株を産生するのに特に適している。その技術を、プラス鎖RNAウイルス[6、7]、マイナス鎖RNAウイルス[8,9]および二本鎖RNAウイルス[10]を含めた幅広いRNAウイルスの産生に使用することができる。したがって、さらなる態様では、本発明は、組換えウイルスを産生する方法を提供し、そのウイルスは、上記に記載の発現系を使用して産生される。
【0028】
公知の逆遺伝学系では、polIプロモーター、細菌RNAポリメラーゼプロモーター、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターなどから所望のウイルスRNA(vRNA)分子をコードするDNA分子を発現させることを伴なう。さらに、ウイルスが感染性ウイルスを形成するのに特定のタンパク質を必要とする場合、系はこれらのタンパク質をも提供し、例えば、その系は、ウイルスタンパク質をコードするDNA分子をさらに含み、その結果、両方の型のDNAを発現させると完全な感染性ウイルスが構築される。
【0029】
逆遺伝学がvRNAの発現に使用される場合、配列エレメントの互いに対する正確な間隔が、ポリメラーゼが複製を開始するのに極めて重要であることが当業者には明らかであろう。したがって、ウイルスRNAをコードするDNA分子をpolIプロモーターと終結配列との間に正しく位置付けることが重要であるが、この位置付けは、逆遺伝学系を用いて作業する者の能力の十分に範囲内にある。
【0030】
一般に、逆遺伝学は、その生活環の間にゲノムRNAの産生を必要とすることが知られている任意のウイルスの発現に適している。そのようなウイルスには、それだけに限らないが、下記に記載するものなどのプラス鎖およびマイナス鎖RNAウイルスが含まれる。好ましくは、ウイルスはオルトミクソウイルス、例えばインフルエンザウイルスである。本発明の方法は、分節型(segmented)ウイルスに加えて、非分節型ウイルスにさらに適している。
【0031】
ウイルスがプラス鎖RNAウイルスである場合、ウイルスゲノムを含む発現構築物を細胞にトランスフェクトすると十分であることが多い。例えば、ポリオウイルスゲノムを含有するプラスミドのトランスフェクションの結果、感染性ポリオウイルスが収集される[6、7]。アンチセンスウイルスRNAは通常非感染性であり、生活環を完了するのにRNAポリメラーゼを必要とするため、マイナス鎖RNAウイルスでの逆遺伝学はより難題を提示している。したがって、インサイチュータンパク質発現ではタンパク質または遺伝子としてのいずれかで、ウイルスポリメラーゼが供給されなければならない。
【0032】
ウイルスが感染性のためにタンパク質を必要とする場合、宿主細胞によって必要とされる発現構築物の総数を減らすので、両方向性発現構築物を使用することが一般に好ましい。したがって、本発明の方法は、遺伝子またはcDNAが上流のpolIIプロモーターと下流の非内因性polIプロモーターとの間に位置する少なくとも1つの両方向性発現構築物を利用することができる。polIIプロモーターから遺伝子またはcDNAが転写されると、タンパク質に翻訳することができる、キャップの付いたプラスセンスウイルスmRNAが産生されるが、非内因性polIプロモーターから転写されると、マイナスセンスvRNAが産生される。両方向性発現構築物は両方向性発現ベクターでよい。
【0033】
組換えウイルスを産生するために、細胞は、ビリオンを構築するのに必要なウイルスゲノムのすべての分節を発現しなければならない。本発明の発現構築物中にクローニングされたDNAは、好ましくは、ウイルスRNAおよびタンパク質の全部を提供し、ヘルパーウイルスを使用しない系が好ましいがヘルパーウイルスを使用してRNAおよびタンパク質の一部を提供することも可能である。ウイルスが非分節型ウイルスである場合、1を超える発現構築物を使用して非分節型ウイルスのウイルスゲノムを発現させることも本発明の範囲内にあるが、通常は本発明の方法で単一の発現構築物を利用することによってこれを実現することができる。ウイルスが分節型ウイルスである場合、通常は本発明の方法で1を超える発現構築物を使用してウイルスゲノムを発現させる。しかし、単一の発現構築物上でウイルスゲノムの1つまたは複数の分節を、またはすべての分節をも組み合わせることも想像される。
【0034】
本発明の方法は、リアソータントウイルス株の産生に特に適している。その技術は、プラスミドのインビトロ操作を使用して、ウイルス分節の組合せを得、ウイルス分節中のコードまたは非コード配列の操作を容易にし、変異を導入することなどができる。リアソータントウイルス株の産生での発現系の使用は、流行に対抗するのにワクチンの迅速な産生が必要である状況で特に有益なリアソータント種ウイルスを得るのに必要な時間を著しく低下させることができるので好ましい。したがって、本発明のこの態様の方法は、少なくとも2つの異なる野生型株からのまたはそれに由来するウイルス遺伝子を発現する1つまたは複数の発現構築物を使用することが好ましい。
【0035】
いくつかの実施形態では、宿主細胞中でアクセサリータンパク質の発現を導く発現構築物も含まれる。例えば、逆遺伝学系の一部として非ウイルス性セリンプロテアーゼ(例えばトリプシン)を発現させると有利となり得る。
【0036】
本発明の発現構築物をインフルエンザA型ウイルス分節の発現に使用するとき、ネガティブ選択マーカー(例えばccdB)および高度に保存されているインフルエンザA型ウイルス遺伝子末端[11]を含む発現構築物中にインフルエンザA型ウイルス分節を導入することによって、発現構築物を得ることが可能である。この利点は、制限部位が必要でなく、発現構築物上の遺伝子末端と相補的である末端を有するという条件で任意のインフルエンザA型ウイルス分節をクローニングできることである。
【0037】
(細胞)
目的のウイルスを産生することができる任意の真核または原核細胞を用いて、本発明を実施することができる。本発明は典型的には細胞系統を使用するが、例えば、代替として初代細胞を使用することができる。細胞は典型的には哺乳動物のものである。適切な哺乳動物細胞には、それだけに限らないが、ハムスター、ウシ、(ヒトおよびサルを含む)霊長目およびイヌ細胞が含まれる。腎臓細胞、線維芽細胞、網膜細胞、肺細胞など様々な細胞型を使用することができる。適切なハムスター細胞の例は、BHK21またはHKCCという名称を有する細胞系統である。適切なサル細胞は、例えば、Vero細胞系統のような腎臓細胞などのアフリカミドリザル細胞である[12〜14]。適切なイヌ細胞は、例えば、CLDKおよびMDCK細胞系統のような腎臓細胞である。
【0038】
さらなる適切な細胞には、それだけに限らないが、CHO;293T;BHK;MRC 5;PER.C6[15];FRhL2;WI−38などが含まれる。適切な細胞は、例えば、American Type Cell Culture(ATCC)コレクション[16]、Coriell Cell Repositories[17]またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から広く入手可能である。例えば、ATCCは、カタログ番号CCL 81、CCL 81.2、CRL 1586およびCRL−1587の下で様々な異なるVero細胞を供給し、カタログ番号CCL 34の下でMDCK細胞を供給する。PER.C6は、寄託番号96022940の下でECACCから入手可能である。
【0039】
本発明での使用に(特にインフルエンザウイルスの増殖に)好ましい細胞は、Madin Darbyイヌ腎臓に由来するMDCK細胞である[18〜20]。元々のMDCK細胞は、CCL 34としてATCCから入手可能である。これらの細胞または他のMDCK細胞の誘導体を使用することが好ましい。そのような誘導体は、例えば、懸濁培養中での増殖に適合させたMDCK細胞を開示する参考文献18に記載されたものである(DSM ACC 2219として寄託された「MDCK33016」または「33016−PF」;参考文献18も参照)。さらに、参考文献21は、無血清培地中で懸濁状態で増殖するMDCK由来細胞を開示する(FERM BP−7449として寄託された「B−702」)。いくつかの実施形態では、使用するMDCK細胞系統は腫瘍形成性でもよい。非腫瘍形成性MDCK細胞を使用することも想像される。例えば、参考文献22は、「MDCK−S」(ATCC PTA−6500)、「MDCK−SF101」(ATCC PTA−6501)、「MDCK−SF102」(ATCC PTA−6502)および「MDCK−SF103」(ATCC PTA−6503)を含めた非腫瘍形成性MDCK細胞を開示する。参考文献23は、「MDCK.5F1」細胞(ATCC CRL 12042)を含めた、感染に高い感受性を有するMDCK細胞を開示する。
【0040】
1を超える細胞型の混合物を使用して、本発明の方法を実施することが可能である。しかし、単一の細胞型、例えばモノクローナル細胞を用いて本発明の方法を実施することが好ましい。好ましくは、本発明の方法で使用する細胞は、単一の細胞系統由来である。さらに、ウイルスのレスキューおよびウイルスの任意のその後の増殖に同じ細胞系統を使用することができる。
【0041】
好ましくは、血清の不在下で細胞を培養して、汚染物の共通供給源を回避する。真核細胞培養用の様々な無血清培地が当業者に公知である(例えば、イスコフ培地、ウルトラCHO培地(BioWhittaker)、EX−CELL(JRH Biosciences))。さらに、無タンパク質培地を使用することができる(例えば、PF−CHO(JRH Biosciences))。そうでなければ、複製用の細胞を通例の血清含有培地(例えば、0.5%〜10%の胎仔ウシ血清を有するMEMまたはDMEM培地)で培養することもできる。
【0042】
細胞は付着培養でもよく、または懸濁状態でもよい。
【0043】
(適切な細胞系統のスクリーニング)
本発明に従って使用するのに適した細胞は広く入手可能である。さらに、当技術分野で一般に公知である技術を使用して、さらなる細胞をスクリーニングすることが可能である。適切な細胞のスクリーニングは、例えば、新たなpolIプロモーターが同定され、その新たなプロモーターによる発現を支援する細胞系統を見つけることが望ましい場合に必要となる可能性がある。同様に、新たな細胞が単離された場合、どのpolIプロモーターがその中で発現を促進できるかを確認することが必要となる可能性がある。
【0044】
細胞のスクリーニングに適した技術は当業者には明らかである。例えば、目的のpolIプロモーターの調節下でレポーター遺伝子をクローニングすることができ、スクリーニングする細胞系統に構築物をトランスフェクトすることができる。そのような実験では、レポーター遺伝子を含有するがプロモーター配列を欠く構築物をトランスフェクトした細胞を対照として使用することができる。したがって、試験試料(例えば、目的のpolIプロモーターの調節下で導入遺伝子を含有する細胞)中での遺伝子の発現が対照(例えば、試験試料と同じ導入遺伝子を含有するが、その導入遺伝子が導入遺伝子の発現を促進するプロモーターを含有しない細胞)中での発現より著しく高い場合、その細胞系統は、本発明によるそのプロモーターと共に使用するのに適している。導入遺伝子の発現は、例えば、導入遺伝子RNAを逆転写し、得られたcDNAをリアルタイムPCRに供することによって測定することができる。あるいは、polIプロモーターの調節下でアンチセンスの方向でレポーター遺伝子(例えば、GFP、YFP、lucなど)をクローニングすることも可能である。次いでウイルスポリメラーゼによってそのような構築物からの転写物をmRNAに転写し、その後タンパク質に翻訳することができる。したがって、レポーター遺伝子産物の存在によって、レポーター遺伝子を発現する任意の細胞を容易に同定することができる。
【0045】
polIプロモーターが発現を促進できる細胞が得られるように、正常なら外来polIが発現を促進しない細胞を適合させることがさらに可能である。これは、例えば、細胞を正常ならそれに適さない増殖条件に供することによって実現することができる。例えば、正常なら付着してしか増殖しない細胞系統を懸濁状態で人工的に保持することができ、これらの条件下で増殖し続ける細胞をさらに増殖させることができる。あるいは、通常なら懸濁状態で増殖する細胞を、例えば、高結合性プラスチック培養ベッセルを使用して、または培養物に血清を添加することによって付着培養することが可能である。同様に、正常ならその増殖に血清を必要とする細胞を無血清条件下で増殖させること、または逆に、無血清増殖に適合させた細胞を血清に曝露することが可能である。次いで、先に記載したように、選択された細胞をpolIプロモーターの活性についてアッセイすることができる。このようにして変化させることができるさらなる適切な増殖パラメーターは当業者には明白であり、そのパラメーターには、それだけに限らないが、温度、pH、pO2、血清濃度などが含まれる。さらに、細胞をUV放射などの物理的もしくは化学的処理に、または化学的変異原に供することができる。同様に、正常な培養条件下で単に継代された細胞の新たな特性についてスクリーニングすることが可能である。
【0046】
例えば、参考文献18は、MDCK細胞(通常は付着性)を無血清条件下における懸濁状態での増殖に適合させた方法を記載している。懸濁状態で増殖する細胞を培養するのに通常使用される条件下で、ローラーボトルに入れた無血清培地中で開始細胞を培養した。これらの選択的条件下で数回継代した後、無血清培地中で懸濁状態で増殖できるいくつかの細胞系統が得られた。1つの例は、33016細胞系統(DSM ACC 2219として寄託)である。本発明者らは、ヒトpolIプロモーターがこれらのMDCK細胞中でレポーター遺伝子の発現を促進できることを実証している。
【0047】
(RNAポリメラーゼIプロモーター)
ほとんどの逆遺伝学の方法は、ウイルスゲノムRNAの転写を促進するRNAポリメラーゼI(RNApolI)プロモーターを含む発現ベクターを使用する。polIプロモーターは、多くのウイルス、例えばインフルエンザの完全な感染性に必要である、修飾されていない5’および3’末端を有する転写物をもたらす。
【0048】
天然のpolIプロモーターは2つの部分からなり、2つの別々の領域:コアプロモーターおよび上流プロモーターエレメント(UPE)を有する。この一般的な構成はほとんどの種由来のpolIプロモーターに共通するが、プロモーターの実際の配列は広く様々である。コアプロモーターは転写開始点を取り囲み、約−45から+20にわたり、転写を開始するのに十分である。コアプロモーターは一般にGCリッチである。コアプロモーターは単独で転写を開始するのに十分であるが、プロモーターの効率は、UPEによって非常に増大する。UPEは、典型的には約−180から−107にわたり、やはりGCリッチである。開始前複合体を安定化することによって機能することができる遠位のエンハンサー様配列の存在によって、プロモーターの活性をさらに増強することができる。
【0049】
polIプロモーターの配列は、ヒト、イヌおよびニワトリを含めた様々な種で同定されている。本発明は、宿主細胞と同じ分類学上の目にある生物にとって内因性ではないpolIプロモーターを使用する。したがって、「内因性」および「非内因性」という用語は、宿主細胞および発現構築物中に存在するpolIプロモーターに関連して使用される。polIプロモーターにおける種間の配列の変動は、細胞中の任意の特定のpolIプロモーターが内因性であるかまたは非内因性であるかを判定することが簡単であることを意味する。したがって、本発明は、polIプロモーターと同じ分類学上の目に由来しない宿主細胞中でのRNA発現にヒト、イヌまたはニワトリpolIプロモーターを利用することができる(例えば、イヌ宿主細胞中での霊長目polIプロモーター)。インシリコのまたは実験的な配列比較を使用して、任意の特定のpolIプロモーターが由来する生物を確認することができ、例えば、図10は、<60%の配列同一性を有する、転写開始部位までのイヌpolプロモーターおよびヒトpolプロモーターのアラインメントを示す。
【0050】
本発明の発現構築物は、少なくとも1つのコアプロモーターを含み、好ましくは少なくとも1つのUPEも含み、1つまたは複数のエンハンサーエレメントも含んでもよい。転写を開始できるという条件で、天然のプロモーターの断片を使用することも可能である。例えば、図3は、完全長イヌpolIプロモーター(配列番号3)および導入遺伝子の発現を促進するのに十分である様々な断片の配列を示す(図4ならびに配列番号4および5も参照)。さらに、図2は、ヒトpolIプロモーター(配列番号1)および単独で宿主細胞中での導入遺伝子の発現に十分であるその断片の配列を示す(図5および配列番号2も参照)。
【0051】
本発明に従って使用することができるヒトpolIプロモーターは、配列番号1もしくは配列番号2の配列、またはその改変体を含んでよい。本発明に従ってイヌプロモーターが使用される場合、それは、配列番号3、配列番号4もしくは配列番号5の配列、またはその改変体を含んでよい。
【0052】
polIプロモーターは、プロモーターが目的の宿主細胞中で作動可能に連結したRNAのコードする配列の転写を開始および促進する能力を有するという条件で、(i)配列番号1〜5のいずれかと少なくともp%の配列同一性を有する配列、および/または(ii)配列番号1〜5のいずれかの断片を含んでよい。pの値は、75、80、85、90、95、96、97、98、99またはそれ以上でよい。断片はそれ自体で発現を促進するのに十分な長さのものでもよく(例えば配列番号4は配列番号3の断片である)、または断片は他の配列と結合していてもよく、この組合せが発現を促進する。そのようなpolIプロモーターが目的の宿主細胞中で発現を促進する能力は、例えば、プロモーターの調節下でアンチセンスレポーター遺伝子を用いる上記に記載のアッセイを使用して容易に評価することができる。
【0053】
(ウイルス調製)
さらなる態様では、本発明は、(i)本明細書に記載の組換えウイルスを産生するステップと、(ii)培養宿主にステップ(i)で得られたウイルスを感染させるステップと、(iii)ウイルスを産生させるためにステップ(iii)の宿主を培養するステップと、(iv)ステップ(iii)で得られたウイルスを精製するステップと、(任意選択で)(v)ウイルスをワクチンへと処方するステップとを含む、ワクチン製造用のウイルスを調製する方法を提供する。
【0054】
本発明のこの態様において細胞を培養宿主として使用する場合、使用する細胞系統およびウイルスに対し、細胞培養条件(例えば、温度、細胞密度、pH値など)が広い範囲の対象にわたって変化し、適用の必要条件にそれを適合させることができることが知られている。したがって、以下の情報は単にガイドラインを表すに過ぎない。
【0055】
上記で述べたように、好ましくは無血清または無タンパク質培地中で細胞を培養する。
【0056】
当業者に公知の方法に従って細胞を増加(multiplication)させることができる。例えば、遠心分離または濾過のような通常の支援方法を使用して、灌流系で細胞を培養することができる。さらに、感染前に流加(fed−batch)系で本発明に従って細胞を増加させることができる。本発明の場面において、培養系は流加系と称され、その系では最初に細胞をバッチ系で培養し、培地中の栄養素(または栄養素の一部)の減少は濃縮栄養素の管理補給によって補償される。感染前の細胞の増加の間に培地のpH値をpH6.6〜pH7.8の値、特にpH7.2〜pH7.3の値に調整すると有利となり得る。好ましくは、30〜40℃の温度で細胞の培養を行う。ステップ(iii)において、好ましくは30℃〜36℃、または32℃〜34℃、または33℃の温度で細胞を培養する。この温度範囲での感染細胞のインキュベーションの結果、ワクチンへと処方したときに効力が向上したウイルスが産生されることが示されているので[24]、これは、本発明の方法を使用してインフルエンザウイルスを産生する場合に特に好ましい。
【0057】
感染前の培養の間に酸素分圧を好ましくは25%〜95%の値に、特に35%〜60%の値に調整することができる。本発明の場面において述べる酸素分圧の値は、空気の飽和に基づいている。細胞の感染は、好ましくはバッチ系で細胞約8〜25×105個/mL、または好ましくは灌流系で細胞約5〜20×106個/mLの細胞密度で行う。10−8〜10、好ましくは0.0001〜0.5のウイルス用量(MOI値、「感染多重度」;感染時における細胞1個当たりのウイルス単位の数に対応する)で細胞に感染させることができる。
【0058】
付着培養中または懸濁状態の細胞でウイルスを増殖させることができる。マイクロキャリア培養を使用することができる。いくつかの実施形態では、こうして細胞を懸濁状態での増殖に適合させることができる。
【0059】
本発明による方法は、ウイルスまたはそれによって生じるタンパク質の収集および単離も含む。ウイルスまたはタンパク質の単離の間に、分離、濾過または限外濾過のような標準的な方法によって培地から細胞を分離する。次いで、勾配遠心分離、濾過、沈殿、クロマトグラフィーなどのような、当業者に十分に公知である方法に従って、ウイルスまたはタンパク質を濃縮し、その後精製する。本発明によれば、精製の間またはその後にウイルスを不活性化することも好ましい。ウイルス不活性化は、例えば、精製プロセス内の任意の時点でβ−プロピオラクトンまたはホルムアルデヒドによって行うことができる。
【0060】
ステップ(i)において単離されたウイルスを、ステップ(ii)において卵で増殖させることもできる。ワクチン用にインフルエンザウイルスを増殖させる現在の標準的な方法は孵化SPF鶏卵を使用し、ウイルスは卵内容物(尿膜腔液)から精製される。卵を介してウイルスを継代し、その後細胞培養でそれを増殖させることも可能である。
【0061】
(ウイルス)
細胞中で逆遺伝学によって発現させることができる任意のウイルスを用いて、本発明の方法を実施することができる。そのようなウイルスは、分節型ウイルスでもよく、または非分節型ウイルスでもよい。さらに、ウイルスはプラス鎖RNAウイルスでもよく、またはマイナス鎖ウイルスでもよい。さらなる実施形態では、ウイルスは二本鎖RNAウイルスでもあり得る。
【0062】
ウイルスがマイナス鎖RNAウイルスである場合、ウイルスは、パラミクソウイルス科、ニューモウイルス科、ラブドウイルス科、フィロウイルス科、ボルナウイルス科、オルトミクソウイルス科、ブンヤウイルス科、またはアレナウイルス科からなる群より選択される科のものでよい。さらに、ウイルスは、パラミクソウイルス、オルトミクソウイルス、レスピロウイルス、モルビリウイルス、ルブラウイルス、ヘニパウイルス(Henipaviras)、アブラウイルス、ニューモウイルス、メタニューモウイルス、ベシクロウイルス、リッサウイルス、エフェメロウイルス、サイトラブドウイルス、ヌクレオラブドウイルス、ノビラブドウイルス、マールブルグウイルス、エボラウイルス、ボルナウイルス、インフルエンザウイルスA型、インフルエンザウイルスB型、インフルエンザウイルスC型、トゴトウイルス、イサウイルス、オルトブンヤウイルス、ハンタウイルス、ナイロウイルス、フレボウイルス、トスポウイルス、アレナウイルス、オフィオウイルス、テヌイウイルス、またはデルタウイルスからなる群より選択される属のウイルスでよい。特定の実施形態では、マイナス鎖RNAウイルスは、センダイウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヘンドラウイルス、ニューキャッスル病ウイルス、ヒトRSウイルス、トリニューモウイルス、水疱性口内炎インディアナウイルス、狂犬病ウイルス、ウシ一日熱ウイルス、レタス壊死性黄変病ウイルス、ポテト黄萎病ウイルス、伝染性造血器壊死症ウイルス、ビクトリア湖マールブルグウイルス、ザイールエボラウイルス、ボルナ病ウイルス、インフルエンザウイルス、トゴトウイルス、伝染性サケ貧血ウイルス、ブンヤムウェラウイルス、ハンターンウイルス、ジュグベウイルス、リフトバレー熱ウイルス、トマト黄化壊疽ウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、カンキツソローシスウイルス、イネ縞葉枯ウイルス、およびデルタ型肝炎ウイルスからなる群より選択される。好ましい実施形態では、ウイルスはインフルエンザウイルスである(下記を参照)。
【0063】
ウイルスがプラス鎖RNAウイルスである場合、ウイルスは、アルテリウイルス科、コロナウイルス科、ピコルナウイルス科およびロニウイルス科からなる群より選択される科のものでよい。さらに、ウイルスは、アルテリウイルス(Arterivirius)、コロナウイルス、エンテロウイルス、トロウイルス、オカウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、カルジオウイルス、アフトウイルス、パレコウイルス、エルボウイルス、コブウイルスおよびテシオウイルスからなる群より選択される属のウイルスでよい。特定の実施形態では、ウイルスは、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルス、ポリオウイルス、ヒトエンテロウイルスA型(HEV−A)、ヒトエンテロウイルスB型(HEV−B)、ヒトエンテロウイルスC型、ヒトエンテロウイルスD型、肝炎A型ならびにヒトライノウイルスAおよびB型からなる群より選択される。
【0064】
ウイルスが二本鎖RNAウイルスである場合、ウイルスは、ビルナウイルス科、シストウイルス科、ハイポウイルス科、パーティティウイルス科、レオウイルス科およびトティウイルス科からなる群より選択される科のものでよい。さらに、ウイルスは、アクアビルナウイルス、アビビルナウイルス、エントモビルナウイルス、シストウイルス、パーティティウイルス、アルファクリプトウイルス、ベータクリプトウイルス、アクアレオウイルス、コルチウイルス、サイポウイルス、フィジウイルス、イドノレオウイルス、マイコレオウイルス、オルビウイルス、オルトレオウイルス、オリザウイルス、フィトレオウイルス、ロタウイルスおよびシードルナウイルスからなる群より選択される属のウイルスでよい。
【0065】
本発明は、迅速な変異を起こすウイルス、および組換えの手法がウイルスのより迅速な単離を可能にし、次いでそれをさらに増殖させて適切なワクチンを得ることができる場合に特に適している。したがって、好ましい実施形態では、ウイルスはインフルエンザである。
【0066】
(インフルエンザウイルス)
インフルエンザウイルス、特にインフルエンザA型ウイルスおよびインフルエンザB型ウイルスは、このウイルスの逆遺伝学が十分に特徴付けられているため、本発明の方法での使用に特に適している。インフルエンザウイルスは、分節型マイナス鎖RNAウイルスである。インフルエンザAおよびB型ウイルスは分節を8個有するが、インフルエンザC型ウイルスは7個有する。上記ウイルスは、複製および転写を開始するのに少なくとも4個のウイルスタンパク質(PB1、PB2、PAおよび核タンパク質)を必要とする。
【0067】
インフルエンザAおよびB型ウイルスの逆遺伝学は、4個の必要なタンパク質および8個すべてのゲノム分節を発現する12個のプラスミドを用いて実施することができる。しかし、構築物の数を減らすために、単一のプラスミドに(ウイルスRNA合成用の)複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8個すべてのインフルエンザvRNA分節をコードする配列)を、別のプラスミドにRNAポリメラーゼIIプロモーターを有する複数のタンパク質コード領域(例えば、1、2、3、4、5、6、7または8個のインフルエンザmRNA転写物をコードする配列)を含めることができる[25]。同じプラスミドに、polIプロモーターの調節下にある1つまたは複数のインフルエンザvRNA分節および別のプロモーター、詳細にはpolIIプロモーターの調節下にある1つまたは複数のインフルエンザタンパク質コード領域を含めることも可能である。上記に記載のように、これは、好ましくは、両方向性プラスミドを使用することによってなされる。参考文献25の方法の好ましい態様は、(a)単一のプラスミドにあるPB1、PB2およびPAのmRNAをコードする領域、ならびに(b)単一のプラスミドにある8個すべてのvRNAをコードする分節を伴う。1つのプラスミドにノイラミニダーゼ(NA)および赤血球凝集素(HA)分節を、別のプラスミドに6個の他の分節を含めると、新たに現れるインフルエンザウイルス株は通常NAおよび/またはHA分節中に変異を有するため、特に好ましい。したがって、この実施形態では、HAおよびNA配列を含むベクターだけを置換することが必要である。
【0068】
インフルエンザA型ウイルスの好ましい発現系は、複数の異なる野生型株に由来するゲノム分節をコードする。その系は、PR/8/34株(A/プエルトリコ/8/34)由来の1個または複数(例えば、1、2、3、4、5または6個)のゲノム分節をコードしてもよいが、通常これ/これらはPR/8/34HA分節を含まず、通常PR/8/34NA分節を含まない。したがって、その系は、PR/8/34由来の分節NP、M、NS、PA、PB1および/またはPB2の少なくとも1つ(場合により6個すべて)をコードしてもよい。
【0069】
インフルエンザA型ウイルスの他の有用な発現系は、AA/6/60インフルエンザウイルス(A/アナーバー/6/60)由来の1個または複数(例えば、1、2、3、4、5または6個)のゲノム分節をコードしてもよいが、通常これ/これらはAA/6/60HA分節を含まず、通常AA/6/60NA分節を含まない。したがって、その系は、AA/6/60由来の分節NP、M、NS、PA、PB1および/またはPB2の少なくとも1つ(場合により6個すべて)をコードしてもよい。
【0070】
その系は、A/カリフォルニア/4/09株由来の1個または複数のゲノム分節、例えばHA分節および/またはNA分節をコードしてもよい。したがって、例えば、HA遺伝子分節は、配列番号7より配列番号6に密接に関連する(すなわち、同じアルゴリズムおよびパラメーターを使用して配列番号7より配列番号6と比較したときに高度の配列同一性を有する)H1赤血球凝集素をコードしてもよい。配列番号6および7は80%同一である。同様に、NA遺伝子は、配列番号9より配列番号8に密接に関連するN1ノイラミニダーゼをコードしてもよい。配列番号8および9は82%同一である。
【0071】
インフルエンザB型ウイルスの発現系は、複数の異なる野生型株に由来するゲノム分節をコードしてもよい。その系は、AA/1/66インフルエンザウイルス(B/アナーバー/1/66)由来の1個または複数(例えば、1、2、3、4、5または6個)のゲノム分節をコードしてもよいが、通常これ/これらはAA/1/66HA分節を含まず、通常AA/1/66NA分節を含まない。したがって、その系は、AA/1/66由来の分節NP、M、NS、PA、PB1および/またはPB2の少なくとも1つをコードしてもよい。
【0072】
A/PR/8/34、AA/6/60、AA/1/66、A/チリ/1/83およびA/カリフォルニア/04/09株由来のウイルス分節および配列は広く入手可能である。それらの配列、例えばGI:89779337、GI:89779334、GI:89779332、GI:89779320、GI:89779327、GI:89779325、GI:89779322、GI:89779329は、公的データベースで入手可能である。
【0073】
インフルエンザウイルスの逆遺伝学系は、宿主細胞中でアクセサリータンパク質の発現を導く発現構築物を含んでよい。例えば、非ウイルス性セリンプロテアーゼ(例えばトリプシン)を発現させると有利となり得る。
【0074】
(ワクチン)
本発明の第3の態様の方法は、ワクチンを産生する方法に従って産生されたウイルスを利用する。
【0075】
(特にインフルエンザウイルスの)ワクチンは一般に生ウイルスまたは不活性化ウイルスに基づいている。不活性化ワクチンは、全ビリオン、「スプリット」ビリオン、または精製表面抗原に基づき得る。抗原は、ビロソームの形態で提示することもできる。これらの型のワクチンのいずれかを製造するのに本発明を使用することができる。
【0076】
不活性化ウイルスを使用する場合、ワクチンは、(インフルエンザでは赤血球凝集素を含み、通常はノイラミニダーゼも含む)全ビリオン、スプリットビリオン、または精製表面抗原を含んでよい。ウイルスを不活性化する化学的手段には、有効量の1つまたは複数の以下の作用物質:洗浄剤、ホルムアルデヒド、β−プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、バイナリーエチルアミン、アセチルエチレンイミン、またはその組合せでの処理が含まれる。例えばUV光またはガンマ線照射など、ウイルス不活性化の非化学的方法が当技術分野で公知である。
【0077】
ウイルス含有流体、例えば尿膜腔液または細胞培養上清から、様々な方法によってビリオンを収集することができる。例えば、精製プロセスは、ビリオンを破壊する洗浄剤を含む直線的スクロース勾配溶液を使用したゾーン遠心分離を伴うことがある。次いで、任意選択の希釈後に、ダイアフィルトレーションによって抗原を精製することができる。
【0078】
スプリットビリオンは、「Tween−エーテル」スプリット化プロセスを含めて、精製ビリオンを洗浄剤(例えば、エチルエーテル、ポリソルベート80、デオキシコレート、トリ−N−ブチルホスフェート、TritonX−100、TritonN101、臭化セチルトリメチルアンモニウム、TergitolNP9など)で処理してサブビリオン調製物を作製することによって得られる。例えば、インフルエンザウイルスをスプリット化する方法は当技術分野で周知であり、例えば参考文献26〜31等を参照されたい。典型的には、ウイルスのスプリット化は、感染性であれまたは非感染性であれ全ウイルスを破壊濃度のスプリット化剤で破壊または断片化することによって実施される。破壊の結果、ウイルスタンパク質が完全にまたは部分的に可溶化され、ウイルスの完全性が変化する。好ましいスプリット化剤は、非イオン性およびイオン性(例えば陽イオン性)界面活性剤、例えばアルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N−ジアルキル−グルカミド、Hecameg、アルキルフェノキシ−ポリエトキシエタノール、NP9、第四級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(臭化セチルトリメチルアンモニウム)、トリ−N−ブチルホスフェート、Cetavlon、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミン、およびDOT−MA、オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、TritonX−100またはTritonN101などのTriton界面活性剤)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステルなどである。1つの有用なスプリット化手順は、デオキシコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドの連続的な効果を使用し、最初のビリオン精製の間に(例えばスクロース密度勾配溶液中で)スプリット化を行うことができる。したがって、スプリット化プロセスは、(非ビリオン物質を除去する)ビリオン含有物質の清澄化、(例えばCaHPO4吸着などの吸着法を使用する)収集されたビリオンの濃縮、非ビリオン物質からの全ビリオンの分離、(例えば、デオキシコール酸ナトリウムなどのスプリット化剤を含有するスクロース勾配を使用した)密度勾配遠心分離ステップにおけるスプリット化剤を使用したビリオンのスプリット化、次いで所望されない物質を除去する濾過(例えば限外濾過)を伴い得る。有用なことに、リン酸ナトリウム緩衝等張性塩化ナトリウム溶液中でスプリットビリオンを再懸濁することができる。スプリットインフルエンザワクチンの例は、BEGRIVACTM、FLUARIXTM、FLUZONETMおよびFLUSHIELDTM製品である。
【0079】
本発明の方法を使用して、生ワクチンを産生することもできる。そのようなワクチンは通常、ビリオン含有流体からビリオンを精製することによって調製される。例えば、その流体を遠心分離によって清澄化し、(例えば、スクロース、リン酸カリウム、およびグルタミン酸ナトリウムを含有する)緩衝液を用いて安定化することができる。様々な形態のインフルエンザウイルスワクチンが現在入手可能である(例えば、参考文献32の第17および18章を参照)。生ウイルスワクチンには、MedImmuneのFLUMISTTM製品(三価の生ウイルスワクチン)が含まれる。
【0080】
精製インフルエンザウイルス表面抗原ワクチンは表面抗原の赤血球凝集素を、また典型的にはノイラミニダーゼも含む。精製形態でこれらのタンパク質を調製するプロセスは当技術分野で周知である。FLUVIRINTM、AGRIPPALTMおよびINFLUVACTM製品はインフルエンザサブユニットワクチンである。
【0081】
別の形態の不活性化抗原はビロソーム[33](核酸を含まないウイルス様のリポソーム粒子)である。ビロソームは、洗浄剤でウイルスを可溶化し、その後ヌクレオキャプシドを除去し、ウイルス糖タンパク質を含有する膜を再構成することによって調製することができる。ビロソームを調製する代替の方法では、ウイルス膜糖タンパク質を過剰量のリン脂質に添加して、その膜中にウイルスタンパク質を有するリポソームを得ることを含む。
【0082】
ウイルスは弱毒化されていてもよい。ウイルスは温度感受性でもよい。ウイルスは寒冷に適合していてもよい。これら3つの特徴は、抗原として生ウイルスを使用するときに特に有用である。
【0083】
HAは現在の不活性化インフルエンザワクチンにおける主要な免疫原であり、ワクチン用量は、典型的にはSRIDによって測定されるHAレベルを参照することによって標準化される。既存のワクチンは、典型的には1株当たり約15μgのHAを含有するが、例えば、小児に、または世界的流行の状況で、またはアジュバントを使用するときには低い用量を使用することができる。高用量(例えば3×または9×の用量[34、35])と同様に、2分の1(すなわち、1株当たりHA7.5μg)、4分の1や8分の1などの分数用量が使用されている。したがって、ワクチンは、1つのインフルエンザ株当たり0.1〜150μg、好ましくは0.1〜50μg、例えば0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μgなどのHAを含んでよい。特定の用量は、例えば、1株当たり約45、約30、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約3.75、約1.9、約1.5などを含む。
【0084】
生ワクチンでは、HA含量ではなく中央組織培養感染量(TCID50)によって投与量を測定し、1株当たり106〜108(好ましくは106.5〜107.5)のTCID50が典型的である。
【0085】
本発明と共に使用されるインフルエンザ株は、野生型ウイルスで認められる天然のHAを有してもよく、または改変されたHAを有してもよい。例えば、HAを改変して、トリの種においてウイルスを高度に病原性にする決定基(例えば、HA1/HA2切断部位の周りにある超塩基性領域)を除去することが知られている。逆遺伝学の使用は、そのような改変を容易にする。
【0086】
ワクチンで使用するインフルエンザウイルス株は季節によって変化する。世界的流行間期では、ワクチンは、典型的には2つのインフルエンザA型株(H1N1およびH3N2)および1つのインフルエンザB型株を含み、三価のワクチンが典型的である。本発明は、H2、H5、H7またはH9サブタイプ株など、世界的流行ウイルス株(すなわち、ワクチンレシピエントおよび一般のヒト集団が免疫学的にナイーブである、詳細にはインフルエンザA型ウイルスの株)を使用することもでき、世界的流行株のインフルエンザワクチンは一価でもよく、または世界的流行株によって補充される通常の三価のワクチンに基づいていてもよい。しかし、季節およびワクチンに含まれる抗原の性質に応じて、本発明はHAサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15またはH16の1つまたは複数に対して保護することができる。本発明は、インフルエンザA型ウイルスのNAサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8またはN9の1つまたは複数に対して保護することができる。
【0087】
世界的流行間期株に対する免疫化に適しているのと同様に、本発明の組成物は、世界的流行株または潜在的に世界的流行性のある株に対する免疫化に特に有用である。世界的流行の発生を引き起こす潜在性をもたらすインフルエンザ株の特徴は:(a)現在循環しているヒト株中の赤血球凝集素と比較して新たな赤血球凝集素、すなわち10年にわたってヒト集団において明らかとなっていないもの(例えば、H2)、またはヒト集団において以前に全く見られていないもの(例えば、トリ集団においてのみ一般に見つかっているH5、H6またはH9)を含有し、その結果、ヒト集団がその株の赤血球凝集素に対して免疫学的にナイーブであること;(b)ヒト集団において水平に伝染する能力があること;(c)ヒトに対して病原性があることである。H5赤血球凝集素型のウイルスは、H5N1株など、世界的流行性インフルエンザに対する免疫化に好ましい。他の考えられる株には、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1およびH7N7、ならびに任意の他の潜在的に世界的流行性のある新興の株が含まれる。本発明は、非ヒト動物集団からヒトへと広がることができるか、または広がっている潜在的な世界的流行ウイルス株、例えばブタ起源のH1N1インフルエンザ株に対して保護するのに特に適している。次いで本発明はヒトならびに非ヒト動物へのワクチン接種に適している。
【0088】
有用なことにその抗原を組成物中に含めることができる他の株は、耐性の世界的流行株を含めて[37]、抗ウイルス療法に耐性である(例えば、オセルタミビル[36]および/またはザナミビルに耐性である)株である。
【0089】
本発明の組成物は、インフルエンザA型ウイルスおよび/またはインフルエンザB型ウイルスを含めた1つまたは複数の(例えば1、2、3、4つまたはそれ以上の)インフルエンザウイルス株由来の抗原(複数可)を含んでよい。ワクチンがインフルエンザの1を超える株を含む場合、典型的には異なる株を別々に増殖させ、ウイルスを収集し抗原を調製した後に混合する。したがって、本発明のプロセスは、1を超えるインフルエンザ株由来の抗原を混合するステップを含んでよい。2つのインフルエンザA型ウイルス株および1つのインフルエンザB型ウイルス株由来の抗原を含む三価のワクチンが典型的である。2つのインフルエンザA型ウイルス株および2つのインフルエンザB型ウイルス株、または3つのインフルエンザA型ウイルス株および1つのインフルエンザB型ウイルス株由来の抗原を含む四価のワクチンも有用である[38]。
【0090】
(医薬組成物)
本発明に従って製造されるワクチン組成物は薬学的に許容される。それは通常、抗原に加えて構成成分を含み、例えば典型的には1つまたは複数の薬学的キャリアおよび/または賦形剤を含む。下記に記載するように、アジュバントを含めることもできる。そのような構成成分の完全な論述は、参考文献39において入手可能である。
【0091】
ワクチン組成物は一般に水性の形態となる。しかし、一部のワクチンは、乾燥形態、例えば注射可能な固体またはパッチ上の乾燥もしくは重合調製物の形態であり得る。
【0092】
ワクチン組成物は、チオメルサールまたは2−フェノキシエタノールなどの保存剤を含んでよい。しかし、好ましくは、ワクチンは水銀物質を実質的に含まない(すなわち5μg/ml未満)、例えばチオメルサールを含まないべきである[30、40]。水銀を全く含有しないワクチンがより好ましい。水銀化合物の代替物として、コハク酸α−トコフェロールを含めることができる[30]。保存剤を含まないワクチンが特に好ましい。
【0093】
張性を調節するために、ナトリウム塩などの生理的な塩を含むことが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、それは1〜20mg/mlで存在してもよい。存在してもよい他の塩には、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二ナトリウム無水物、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが含まれる。
【0094】
ワクチン組成物は一般に、200mOsm/kg〜400mOsm/kg、好ましくは240〜360mOsm/kgの重量オスモル濃度を有し、より好ましくは290〜310mOsm/kgの範囲に入る。重量オスモル濃度はワクチン接種によって引き起こされる痛みに影響を有さないことが以前に報告されているが[41]、それにも関わらずこの範囲で重量オスモル濃度を維持することが好ましい。
【0095】
ワクチン組成物は1つまたは複数の緩衝剤を含んでよい。典型的な緩衝剤には、リン酸緩衝剤、トリス緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、(特に水酸化アルミニウムアジュバントを有する)ヒスチジン緩衝剤、またはクエン酸緩衝剤が含まれる。緩衝剤は、典型的には5〜20mMの範囲で含める。
【0096】
ワクチン組成物のpHは一般に5.0〜8.1、より典型的には6.0〜8.0、例えば6.5〜7.5、または7.0〜7.8である。したがって、本発明のプロセスは、パッケージング前にバルクワクチンのpHを調整するステップを含んでよい。
【0097】
ワクチン組成物は好ましくは無菌である。ワクチン組成物は好ましくは非発熱性であり、例えば用量当たり<1EU(エンドトキシン単位、標準的な尺度)、好ましくは用量当たり<0.1EUを含有する。ワクチン組成物は好ましくはグルテンを含まない。
【0098】
本発明のワクチン組成物は、特にスプリットまたは表面抗原ワクチン用に、洗浄剤、例えば(「Tween」として公知である)ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤、オクトキシノール(オクトキシノール−9(TritonX−100)またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノールなど)、臭化セチルトリメチルアンモニウム(「CTAB」)、またはデオキシコール酸ナトリウムを含んでよい。洗浄剤は微量でのみ存在できる。したがって、ワクチンは、オクトキシノール−10およびポリソルベート80をそれぞれ1mg/ml未満で含み得る。微量の他の残りの構成成分は抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。
【0099】
ワクチン組成物は、単回免疫化用の物質を含んでもよく、または複数回免疫化用の物質を含んでもよい(すなわち「複数用量」キット)。複数用量で準備する際には保存剤を含めることが好ましい。複数用量組成物で保存剤を含めることの代替法として(またはそれに加えて)、物質を取り出すための無菌的アダプターを有する容器に組成物を入れることができる。
【0100】
インフルエンザワクチンは、典型的には約0.5mlの投与容積で投与するが、半分の用量(すなわち約0.25ml)を小児に投与してもよい。
【0101】
組成物およびキットは好ましくは2℃〜8℃で貯蔵する。それらは凍結すべきでない。それらは理想的には直接光を避けるべきである。
【0102】
(宿主細胞DNA)
細胞系統でウイルスを単離および/または増殖させている場合、DNAのあらゆる腫瘍形成活性を最小限にするために、最終的なワクチン中に残存する細胞系統DNAの量を最小限にすることが標準的には実施される。
【0103】
したがって、本発明に従って調製されたワクチン組成物は、好ましくは、用量当たり10ng未満(好ましくは1ng未満、より好ましくは100pg未満)の残存する宿主細胞DNAを含有するが、微量の宿主細胞DNAが存在してもよい。
【0104】
任意の残存する宿主細胞DNAの平均の長さは、500bp未満、例えば400bp未満、300bp未満、200bp未満、100bp未満などであることが好ましい。
【0105】
ワクチン調製の間に、標準的な精製手順、例えばクロマトグラフィーなどを使用して、汚染DNAを除去することができる。残存する宿主細胞DNAの除去は、ヌクレアーゼ処理によって、例えばDNアーゼを使用することによって増強することができる。宿主細胞DNAの汚染を低減する便利な方法は、参考文献42および43で開示され、2ステップの処理を伴い、最初にウイルス増殖の間に使用できるDNアーゼ(例えばBenzonase)を、次いでビリオン破壊の間に使用できる陽イオン性洗浄剤(例えばCTAB)を使用することを伴なう。β−プロピオラクトンなどのアルキル化剤での処理は、宿主細胞DNAの除去に使用することもでき、有利にはビリオンの不活性化に使用することもできる[44]。
【0106】
(アジュバント)
本発明の組成物は、有利には、組成物を受容した被験体中で惹起される(体液性および/または細胞性)免疫応答を増強するように機能することができるアジュバントを含んでよい。好ましいアジュバントは水中油型エマルジョンを含む。種々のそのようなアジュバントが公知であり、それらは典型的には少なくとも1つの油および少なくとも1つの界面活性剤を含み、油(複数可)および界面活性剤(複数可)は生分解性(代謝可能)であり生体適合性である。エマルジョン中の油滴は一般に直径5μm未満であり、理想的にはサブミクロンの直径を有し、この小さいサイズは、安定なエマルジョンを提供するマイクロフルイダイザーを用いて実現される。フィルター滅菌に供することができるため、220nm未満のサイズを有する液滴が好ましい。
【0107】
エマルジョンは、動物(魚など)または植物供給源由来のものなどの油を含み得る。植物油の供給源には、堅果、種子および穀物が含まれる。最も一般的に入手可能であるラッカセイ油、ダイズ油、ヤシ油、およびオリーブ油が堅果油を例示する。例えばホホバ豆から得られるホホバ油を使用することができる。種子油には、ベニバナ油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ油などが含まれる。穀物の群では、トウモロコシ油が最も容易に入手可能であるが、コムギ、オートムギ、ライムギ、イネ、テフ、ライコムギなど他の穀物類の油を使用することもできる。種子油では天然に存在しないが、グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素脂肪酸エステルを、堅果および種子油から開始する適当な物質の加水分解、分離およびエステル化によって調製することができる。哺乳動物の乳由来の脂肪および油は代謝可能であり、したがって本発明の実施に使用することができる。動物供給源から純粋な油を得るのに必要な分離、精製、鹸化および他の手段の手順は当技術分野で周知である。ほとんどの魚は、容易に収集することができる代謝可能な油を含有する。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨蝋などのクジラ油が、本明細書で使用することができるいくつかの魚油を例示する。5炭素イソプレン単位でいくつかの分岐鎖油が生化学的に合成され、それは一般にテルペノイドと称される。サメ肝油は、スクアレンとして公知である分岐不飽和テルペノイド2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサエンを含有し、それが本明細書で特に好ましい。スクアレンの飽和類似体であるスクアランも好ましい油である。スクアレンおよびスクアランを含めた魚油は、商業的供給源から容易に入手可能であり、または当技術分野で公知である方法によって得ることができる。別の好ましい油はα−トコフェロールである(下記を参照)。
【0108】
油の混合物を使用することができる。
【0109】
界面活性剤は、その「HLB」(親水性/親油性バランス)によって分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、より好ましくは少なくとも16のHLBを有する。それだけに限らないが、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般的にTweenと称される)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;直鎖EO/POブロックコポリマーなど、DOWFAXTMの商品名で販売されているエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー;反復するエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が様々となり得、オクトキシノール−9(TritonX−100、またはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深いオクトキシノール;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);ホスファチジルコリン(レシチン)などのリン脂質;TergitolTMNPシリーズなどのノニルフェノールエトキシレート;トリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij30)など、ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから誘導されるポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知);ならびにトリオレイン酸ソルビタン(Span85)やモノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタンエステル(一般的にSPANとして公知)を含めた界面活性剤と共に本発明を使用することができる。非イオン性界面活性剤が好ましい。エマルジョン中に含めるのに好ましい界面活性剤は、Tween80(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)、Span85(トリオレイン酸ソルビタン)、レシチンおよびTritonX−100である。
【0110】
界面活性剤の混合物、例えば、Tween80/Span85混合物を使用することができる。モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(Tween80)などのポリオキシエチレンソルビタンエステルおよびt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(TritonX−100)などのオクトキシノールの組合せも適切である。別の有用な組合せは、ラウレス9、プラス、ポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含む。
【0111】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween80など)では0.01〜1%、詳細には約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(TritonX−100、またはTritonシリーズ中の他の洗浄剤など)では0.001〜0.1%、詳細には0.005〜0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(ラウレス9など)では0.1〜20%、好ましくは0.1〜10%、詳細には0.1〜1%または約0.5%である。
【0112】
ワクチンがスプリットウイルスを含有する場合、水相中に遊離界面活性剤を含有することが好ましい。遊離界面活性剤が抗原に対して「スプリット化効果」を発揮することができ、それによって非スプリットビリオンおよび/またはその他の形で存在し得るビリオン凝集物が破壊されるので、これは有利である。これはスプリットウイルスワクチンの安全性を向上させることができる[45]。
【0113】
好ましいエマルジョンは、<lμm、例えば≦750nm、≦500nm、≦400nm、≦300nm、≦250nm、≦220nm、≦200nmの、またはそれより小さい平均液滴サイズを有する。これらの液滴サイズは、好都合なことに、マイクロフルイダイゼーションなどの技術によって実現することができる。
【0114】
本発明で有用な特定の水中油型エマルジョンアジュバントには、それだけに限らないが、以下のものが含まれる。
【0115】
・スクアレン、Tween80、およびSpan85のサブミクロンエマルジョン。そのエマルジョンの組成は容積で約5%がスクアレン、約0.5%がポリソルベート80、約0.5%がSpan85であり得る。重量でいうと、これらの比は4.3%がスクアレン、0.5%がポリソルベート80、0.48%がSpan85となる。このアジュバントは、「MF59」として公知であり[46〜48]、参考文献49の第10章および参考文献50の第12章でより詳細に記載されている。MF59エマルジョンは、有利には、クエン酸イオン、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝剤を含む。
【0116】
・スクアレン、DL−α−トコフェロール、およびポリソルベート80(Tween80)のエマルジョン。そのエマルジョンは、リン酸緩衝食塩水を含んでよい。それは、Span85(例えば1%)および/またはレシチンも含んでもよい。これらのエマルジョンは、2〜10%のスクアレン、2〜10%のトコフェロールおよび0.3〜3%のTween80を有してもよく、より安定なエマルジョンを提供するのでスクアレン:トコフェロールの重量比は好ましくは≦1である。スクアレンおよびTween80は、約5:2の容積比、または約11:5の重量比で存在してもよい。1つのそのようなエマルジョンは、PBS中にTween80を溶解して2%溶液を得、次いでこの溶液90mlを(DL−α−トコフェロール5gおよびスクアレン5ml)の混合物と混合し、次いでその混合物をマイクロフルイダイズすることによって作製することができる。得られたエマルジョンは、例えば、平均直径が100〜250nm、好ましくは約180nmであるサブミクロンの油滴を有してもよい。そのエマルジョンは、3−脱−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3d−MPL)も含んでもよい。この型の別の有用なエマルジョンは、ヒト用量当たり0.5〜10mgのスクアレン、0.5〜11mgのトコフェロール、および0.1〜4mgのポリソルベート80を含み得る[51]。
【0117】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton洗浄剤(例えば、TritonX−100)のエマルジョン。そのエマルジョンは、3d−MPLも含んでもよい(下記を参照)。そのエマルジョンは、リン酸緩衝液を含有してもよい。
【0118】
・ポリソルベート(例えばポリソルベート80)、Triton洗浄剤(例えばTritonX−100)およびトコフェロール(例えばコハク酸α−トコフェロール)を含むエマルジョン。そのエマルジョンは、約75:11:10の質量比でこれら3つの構成成分を含んでよく(例えば750μg/mlのポリソルベート80、110μg/mlのTritonX−100および100μg/mlのコハク酸α−トコフェロール)、これらの濃度は抗原からのこれらの構成成分の任意の寄与を含むべきである。そのエマルジョンは、スクアレンも含んでもよい。そのエマルジョンは、3d−MPLも含んでもよい(下記を参照)。その水相は、リン酸緩衝液を含有してもよい。
【0119】
・スクアレン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTML121」)のエマルジョン。そのエマルジョンは、リン酸緩衝食塩水、pH7.4中で処方することができる。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント中でスレオニル−MDPと共に使用されている[52](0.05〜1%のThr−MDP、5%のスクアレン、2.5%のPluronic L121および0.2%のポリソルベート80)。それは、「AF」アジュバントに見られるように、Thr−MDPを伴わずに使用することもできる[53](5%のスクアレン、1.25%のPluronicL121および0.2%のポリソルベート80)。マイクロフルイダイゼーションが好ましい。
【0120】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えばポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、モノオレイン酸ソルビタンまたは「Span80」などのソルビタンエステルまたはマンニドエステル)を含むエマルジョン。そのエマルジョンは好ましくは熱可逆性であり、かつ/またはサイズが200nm未満の油滴を(容積で)少なくとも90%有する[54]。そのエマルジョンは、アルジトール、凍結保護剤(例えば、ドデシルマルトシドおよび/またはスクロースなどの糖)、および/またはアルキルポリグリコシドのうち1つまたは複数も含んでもよい。そのエマルジョンはTLR4アゴニストを含んでよい[55]。そのようなエマルジョンを凍結乾燥することができる。
【0121】
・スクアレン、ポロキサマー105およびAbil−Care[56]のエマルジョン。アジュバント添加ワクチン中のこれらの構成成分の終濃度(重量)は、5%スクアレン、4%ポロキサマー105(プルロニックポリオール)および2%Abil−Care85(ビス−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16ジメチコン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド)である。
【0122】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性界面活性剤を有するエマルジョン。参考文献57に記載されているように、好ましいリン脂質構成成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロンの液滴サイズが有利である。
【0123】
・代謝不可能な油(軽油など)および少なくとも1つの界面活性剤(レシチン、Tween80またはSpan80など)のサブミクロン水中油型エマルジョン。QuilAサポニン、コレステロール、サポニン親油性結合体(グルクロン酸のカルボキシル基を介してデスアシルサポニンに脂肪族アミンを付加することによって作製される、参考文献58に記載のGPI−0100など)、臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(dimethyidioctadecylammonium bromide)および/またはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミンなどの添加物を含めることができる。
【0124】
・サポニン(例えばQuilAまたはQS21)およびステロール(例えばコレステロール)がらせん状ミセルとして会合しているエマルジョン[59]。
【0125】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシ化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシ化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[60]。
【0126】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシ化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシ化脂肪アルコールおよび/またはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[60]。
【0127】
いくつかの実施形態では、エマルジョンは送達時にその場で抗原と混合することができ、したがってアジュバントおよび抗原はパッケージングまたは分配されたワクチンにおいて別々に維持され、使用時に最終的な処方物にする準備ができていてもよい。他の実施形態では、製造の間にエマルジョンを抗原と混合し、したがって液体アジュバント添加形態で組成物をパッケージングする。抗原は一般に水性の形態にあり、その結果ワクチンは2つの液体を混合することによって最終的に調製される。混合する2つの液体の容積比は(例えば5:1と1:5との間で)様々となり得るが、一般に約1:1である。特定のエマルジョンの上記の記載において構成成分の濃度が示されている場合、これらの濃度は典型的には無希釈の組成物についてのものであり、したがって抗原溶液と混合した後の濃度は低下する。
【0128】
(ワクチン組成物のパッケージング)
本発明の組成物(またはキット構成成分)に適した容器には、バイアル、シリンジ、(例えば、ディスポーザブルシリンジ)、鼻スプレーなどが含まれる。これらの容器は無菌であるべきである。
【0129】
組成物/構成成分がバイアルの中にある場合、バイアルは、好ましくは、ガラスまたはプラスチック物質でできている。バイアルは、好ましくは、それに組成物を添加する前に滅菌する。ラテックス感受性の患者に伴う問題を回避するために、好ましくはラテックスを含まないストッパーでバイアルを密封し、すべてのパッケージング物質においてラテックスが存在しないことが好ましい。バイアルは単回用量のワクチンを含んでもよく、または1を超える用量(「複数用量」バイアル)、例えば10用量を含んでもよい。好ましいバイアルは、無色のガラスでできている。
【0130】
バイアルは、キャップ中に充填済(pre−filled)シリンジを挿入することができるように適合させたキャップ(例えば、ルアーロック)を有することができ、(例えば、その中の凍結乾燥物質を再構成するために)シリンジの内容物をバイアルに放出することができ、そして、バイアルの内容物をシリンジに戻すことができる。バイアルからシリンジを取り出した後、次いで針を取り付けることができ、組成物を患者に投与することができる。キャップは好ましくはシールまたはカバーの内部にあり、その結果、キャップに到達できる前には、シールまたはカバーを取り外さなければならない。バイアルは、特に複数用量バイアル用に、その内容物の無菌的取り出しを可能にするキャップを有してもよい。
【0131】
構成成分がシリンジにパッケージングされている場合、シリンジは、それに取り付けられた針を有してもよい。針が取り付けられていない場合、組み立てて使用するための別々の針をシリンジと共に供給することができる。そのような針は、鞘に入っていてもよい。安全針が好ましい。1インチ23ゲージ、1インチ25ゲージおよび5/8インチ25ゲージの針が典型的である。記録の維持が容易となるように、ロット番号、インフルエンザの流行期および内容物の使用期限が印刷され得る剥離式のラベルを付けてシリンジを提供することができる。シリンジ中のプランジャーは、好ましくは、吸引の間にプランジャーが誤って取り出されることを防止するストッパーを有する。シリンジは、ラテックスゴムキャップおよび/またはプランジャーを有してもよい。ディスポーザブルシリンジは、単回用量のワクチンを含有する。シリンジは一般に、針を取り付ける前に先端を密封する先端キャップを有し、その先端キャップは好ましくはブチルゴムでできている。シリンジおよび針が別々にパッケージングされている場合、針は、好ましくはブチルゴム遮蔽を装着している。好ましいシリンジは、商品名「Tip−Lok」TMで販売されているものである。
【0132】
例えば小児への送達を容易にするために、容器に半分の用量の容積を示す印をつけてもよい。例えば、0.5ml用量を含有するシリンジは、0.25mlの容積を示す印を有してもよい。
【0133】
ガラス容器(例えばシリンジまたはバイアル)が使用される場合、ソーダ石灰ガラスではなくホウケイ酸ガラスでできている容器を使用することが好ましい。
【0134】
キットまたは組成物は、ワクチンの詳細、例えば投与の指示、ワクチン内の抗原の詳細などを含むリーフレットと共に(例えば、同じ箱の中に)パッケージングすることができる。その指示は、例えばワクチン接種後のアナフィラキシー反応の場合に備えて、アドレナリンの溶液を容易に入手できるようにしておくなどの警告も含有してもよい。
【0135】
(処置の方法、およびワクチンの投与)
本発明は、本発明に従って製造されたワクチンを提供する。これらのワクチン組成物は、ヒトまたはブタなどの非ヒト動物被験体への投与に適しており、本発明は、本発明の組成物を被験体に投与するステップを含む、被験体中で免疫応答を起こす方法を提供する。本発明は、医薬として使用するための本発明の組成物も提供し、被験体中で免疫応答を起こす医薬を製造するための、本発明の組成物の使用も提供する。
【0136】
これらの方法および使用により起こった免疫応答は一般に抗体応答、好ましくは保護的抗体応答を含む。インフルエンザウイルスワクチン接種後の抗体応答、中和能力および保護を評価する方法は当技術分野で周知である。ヒトでの研究では、ヒトインフルエンザウイルスの赤血球凝集素に対する抗体価が保護と相関する(血清試料の赤血球凝集阻止反応力価が約30〜40であると、同種のウイルスによる感染からおよそ50%保護される)ことが示されている[61]。抗体応答は、典型的には、赤血球凝集阻止反応法、マイクロ中和法、一元放射免疫拡散法(SRID)、および/または一元放射溶血反応法(SRH)によって測定される。これらのアッセイ技術は当技術分野で周知である。
【0137】
本発明の組成物は様々な方法で投与することができる。最も好ましい免疫化経路は、(例えば腕または脚への)筋肉内注射によるものであるが、他の利用可能な経路には、皮下注射、鼻内[62〜64]、経口[65]、皮内[66、67]、経皮(transcutaneous)、経皮(transdermal)[68]などが含まれる。
【0138】
本発明に従って調製されるワクチンを使用して、小児も成人も処置することができる。インフルエンザワクチンは、6カ月齢から、小児および成人の免疫化での使用について現在推奨されている。したがって、ヒト被験体は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、または少なくとも55歳でよい。ワクチンを受けることが好ましい被験体は、高齢者(例えば≧50歳、≧60歳、好ましくは≧65歳)、幼年者(例えば≦5歳)、入院している被験体、医療従事者、軍人および軍関係者、妊娠している女性、慢性疾患の免疫不全被験体、ワクチンを受ける前7日以内に抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルまたはザナミビル化合物;下記を参照)を服用した被験体、卵アレルギーの人々および外国旅行をしている人々である。しかし、ワクチンはこれらの群にだけ適しているわけではなく、より一般に集団で使用することができる。世界的流行株では、すべての年齢群への投与が好ましい。
【0139】
本発明の好ましい組成物は、効力についてのCPMP基準の1つ、2つまたは3つを満たす。成人(18〜60歳)では、これらの基準は、(1)≧70%のセロプロテクション、(2)≧40%のセロコンバージョン、および/または(3)≧2.5倍のGMT増大である。高齢者(>60歳)では、これらの基準は、(1)≧60%のセロプロテクション、(2)≧30%のセロコンバージョン、および/または(3)≧2倍のGMT増大である。これらの基準は、少なくとも50人の患者での非盲検試験に基づいている。
【0140】
処置は、単回投与スケジュールによるものでもよく、または複数回投与スケジュールによるものでもよい。初回免疫化スケジュールおよび/または追加免疫化スケジュールで複数回投与を使用することができる。複数回投与スケジュールでは、例えば非経口での初回および粘膜での追加、粘膜での初回および非経口での追加など、同じかまたは異なる経路によって様々な投与を行うことができる。1を超える投与(典型的には2回の投与)を施すことは、免疫学的にナイーブな患者で、例えばこれまでインフルエンザワクチンを受けたことのない人々に、または(世界的流行の発生でのように)新たなHAサブタイプに対するワクチン接種に特に有用である。典型的には、少なくとも1週間間隔で(例えば約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)複数回投与を行う。
【0141】
本発明によって産生されるワクチンは、他のワクチンと実質的に同時に(例えば、医療専門家またはワクチン接種センターへの同じ医療相談または訪問の間に)、例えば麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合型H.influenzae b型ワクチン、不活性化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌結合型ワクチン(4価のA−C−W135−Yワクチンなど)、RSウイルスワクチン、肺炎球菌結合型ワクチンなどと実質的に同時に患者に投与することができる。肺炎球菌ワクチンおよび/または髄膜炎菌ワクチンと実質的に同時の投与は、高齢患者で特に有用である。
【0142】
同様に、本発明のワクチンは、抗ウイルス化合物、詳細にはインフルエンザウイルスに対して活性のある抗ウイルス化合物(例えばオセルタミビルおよび/またはザナミビル)と実質的に同時に(例えば、同じ医療相談または医療専門家への訪問の間に)患者に投与することができる。これらの抗ウイルス薬には、そのエステル(例えばエチルエステル)およびその塩(例えばリン酸塩)を含めた、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸または5−(アセチルアミノ)−4−[(アミノイミノメチル)−アミノ]−2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノン−2−エノン酸などのノイラミニダーゼインヒビターが含まれる。好ましい抗ウイルス薬は、リン酸オセルタミビル(TAMIFLUTM)としても公知である、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸,エチルエステル,リン酸塩(1:1)である。
【0143】
(全般)
「含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、もっぱらXのみからなるものでもよく、または追加の何か、例えばX+Yを含んでもよい。
【0144】
「実質的に」という語は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないこともある。必要な場合、「実質的に」という語は、本発明の定義から省略することができる。
【0145】
数値xに関連して「約」という用語は任意選択のものであり、例えば、x±10%を意味する。
【0146】
別段に述べられない限り、2つ以上の構成成分を混合するステップを含むプロセスは、混合する任意の特定の順序を必要としない。したがって、任意の順序で構成成分を混合することができる。3つの構成成分が存在する場合、2つの構成成分を互いに組み合わせ、次いでその組合せを第3の構成成分と組み合わせることなどができる。
【0147】
細胞の培養で動物(特にウシ)物質を使用する場合、それは、伝染性海綿状脳症(TSE)を含まない、詳細にはウシ海綿状脳症(BSE)を含まない供給源から得るべきである。全体的に、動物由来物質が総じて存在しない状態で細胞を培養することが好ましい。
【0148】
組成物の一部として化合物を身体に投与する場合、その化合物は、代わりに適切なプロドラッグに置換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】図1は、ルシフェラーゼレポーターを用いたpolIプロモーター活性のアッセイに使用した発現構築物を図示する。
【図2】図2は、完全長(FL)ヒトpolIプロモーター配列(配列番号1)を示す。完全長配列内のpHW2000ヒトpolIプロモーター配列(配列番号2;「ショート」ヒトpolIプロモーター)が下線を引いたフォントで示されている。矢印は転写開始部位を指し示す。
【図3】図3は、完全長(FL)イヌpolIプロモーター配列(NW_878945;配列番号3)を示す。完全長プロモーター配列内のSHORTプロモーター配列が下線を引いた大文字フォント(配列番号5)で示され、完全長プロモーター配列内のMIDプロモーター配列が下線を引いた大文字フォントおよび太い小文字フォント(配列番号4)で示されている。
【図4】図4は、MDCK細胞中でのイヌpolIプロモーター活性を示す。無地の灰色のカラムはFLイヌpolIプロモーターを用いた結果を示し、斜線付きのカラムはMIDイヌプロモーターを用いた結果を示し、斑点付きのカラムはSHORTイヌpolIプロモーターを用いた結果を示す。「A」はLUCおよびウイルスポリメラーゼを指し示し、「B」はLUCおよび感染(MOI=0.05)を指し示し、「C」はLUCを指し示し、「D」はDNA無しである。y軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図5】図5は、MDCK33016細胞中でのヒトpolIプロモーター活性を示す。無地の灰色のカラムはヒトpolIプロモーターを用いた結果を示し、斜線付きのカラムはFLイヌpolIプロモーターを用いた結果を示し、斑点付きのカラムはMIDイヌpolIプロモーターを用いた結果を示し、垂直線付き(vertically hatched)のカラムはSHORTイヌpolIプロモーターを用いた結果を示す。「A」はLUCおよびウイルスポリメラーゼを指し示し、「B」はLUCおよび感染(MOI=0.05)を指し示し、「C」はLUCを指し示す。y軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図6】図6は、MDCK細胞の33016細胞中でのFLおよびSHORTヒトpolIプロモーターならびに完全長イヌpolIプロモーターの活性の比較を示す。無地の灰色のカラムは完全長ヒトプロモーターを用いた結果を示し、斜線カラムは完全長イヌプロモーターを用いた結果を示し、斑点付きのカラムはショートヒトpolIプロモーターを用いた結果を示す。AはLUC+ポリメラーゼを指し示し、BはLUC+感染を指し示し、CはLUCのみを指し示す。y軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図7】図7は、MDCK33016細胞(図7A)およびMDCK ATCC細胞(図7B)中でのヒトpolIプロモーター(斑点付きのカラム)およびイヌpolIプロモーター(斜線付きのカラム)の活性を示す。AはLUC+ポリメラーゼを指し示し、BはLUC+感染を指し示し、CはLUCのみを指し示す。y軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図8】図8は、ウイルスレスキュー後の細胞溶解物中のMおよびNPタンパク質のウェスタンブロット分析を示す。
【図9】図9は、逆遺伝学構築物を感染させた細胞の上清を使用したフォーカス形成アッセイの結果を示す。
【図10】図10は、ヒトおよびイヌpolIプロモーターのDNA配列(それぞれ配列番号1および3)のアラインメントを示す。
【図11】図11Aは、MDCK ATCC、MDCK33016−PFおよび293T細胞中でのヒトpolI(hPolI)プロモーターまたはイヌpolIプロモーター(cPolI)の調節下のレポーター導入遺伝子の発現レベルを示す。黒色カラムは293T細胞を用いた結果を表し、白色カラムはMDCK33016−PFを用いた結果を示し、斜線付きのカラムはMDCK ATCC細胞を用いた結果を表す;図11Bは、ヒトおよびイヌ細胞中でのトランスフェクション効率を比較している。どちらのグラフでもy軸は相対光単位(RLU)を指し示す。
【図12】図12は、TMPRSS2ヘルパープラスミドの存在下(白色カラム)および不在下(黒色カラム)、ならびにフィーダー細胞を添加した状態(黒色カラム)および添加していない状態(白色カラム)(12B)における、MDCK ATCC、MDCK33016−PFおよび293T細胞中でのヒトpolIプロモーターに基づく逆遺伝学によるA/プエルトリコ/8/34インフルエンザ株のレスキューを示す。y軸はウイルス力価(ffu/mL)を表す。
【図13】図13は、MDCK33016−PF細胞中での、ヒトまたはイヌpolIで促進される逆遺伝学によるA/プエルトリコ/8/34インフルエンザ株のレスキューを比較している。黒色カラムはTMPRSS2ヘルパープラスミドの不在下での結果を示し、白色バーはTMPRSS2ヘルパープラスミドの存在下での結果を示す。y軸はウイルス力価(ffu/mL)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0150】
(配列表の簡単な説明)
配列番号1は、完全長(FL)ヒトpolIプロモーター配列である。
配列番号2は、pHW2000ヒトPolIプロモーター配列である。
配列番号3は、完全長(FL)イヌpolIプロモーター配列である。
配列番号4は、MIDイヌpolIプロモーター配列である。
配列番号5は、SHORTイヌpolIプロモーター配列である。
配列番号6は、A/カリフォルニア/04/09由来のHA配列である。
配列番号7は、A/チリ/1/1983由来のHA配列である。
配列番号8は、A/カリフォルニア/04/09由来のNA配列である。
配列番号9は、A/チリ/1/1983由来のNA配列である。
【0151】
(発明を実施するための様式)
(ヒトpolIプロモーターはヒトならびにイヌ細胞中で活性である)
非内因性宿主細胞中でのpolIプロモーターの活性を評価するために、ヒトpolIプロモーターの487bp断片またはイヌpolIプロモーターの様々な断片の調節下で(図3に示されている)、アンチセンスの方向でルシフェラーゼ(luc)RNAの発現を可能とする発現構築物をMDCK細胞にトランスフェクトした。発現したRNAをウイルスポリメラーゼによりmRNAに転写し、その後lucタンパク質に翻訳することができる。したがって、ルシフェラーゼ活性についてアッセイを行うことにより、導入遺伝子を発現している細胞を容易に同定することができる。このアッセイが働くには、ウイルスポリメラーゼを提供することが必要である。これは、細胞にウイルスポリメラーゼをコードする発現構築物を共トランスフェクト(co−transfect)するか、あるいはトランスフェクトした細胞にヘルパーウイルスを感染させることによって実現することができる。このアッセイは図1に図示されている。
【0152】
図11Aは、ヒトpolIプロモーターが、MDCK ATCC細胞中で、またMDCK33016−PF細胞中でもイヌpolIプロモーターと同じ効率で導入遺伝子の発現を促進できることを示す。MDCK ATCC細胞中でヒトpolIプロモーターを用いた導入遺伝子の発現レベルは、ヒト293T細胞中で観察されるものよりさらに高い。試験した細胞型のトランスフェクション効率が同等であることを確認するために、CMVプロモーターの調節下にあるルシフェラーゼ遺伝子を含有する構築物をそれらにトランスフェクトした。ルシフェラーゼ活性のレベルを測定した。その結果は図11Bに示され、それから、試験した細胞のトランスフェクション効率が同等であることが確認される。
【0153】
図4は、イヌpolIプロモーターの試験した断片がすべて、MDCK細胞中でluc導入遺伝子の発現を促進できることを示す。さらに、図5は、完全長ヒトpolIプロモーターがMDCK細胞中で導入遺伝子の発現を促進でき、イヌpolIプロモーターよりさらに効率がよいことを実証している。
【0154】
導入遺伝子の発現の促進に必要なヒトpolIプロモーターの領域をさらに規定するために、図2に示されているヒトpolIプロモーターの断片(「ショート」polI)を用いて実験を反復した。完全長polIプロモーターがより活性であるが、完全長ならびにショートヒトpolIプロモーターがMDCK細胞中で活性であることが分かった(図6)。
【0155】
ヒトpolIプロモーターの活性が特定の細胞系統に制限されるかどうかを判定するために、ヒトおよびイヌpolIプロモーター配列を含有する構築物をATCCのMDCKおよびMDCK33016細胞[18]にさらにトランスフェクトした。図7に示されているように、ヒトpolIプロモーターは、どちらの細胞型でも導入遺伝子の発現を促進することができたが、その発現は、MDCK33016細胞でより効率がよかった。ヒトpolIプロモーターを使用した、MDCK細胞からのインフルエンザウイルスのレスキュー。
【0156】
ヒトpolIプロモーターを使用したインフルエンザウイルスレスキューの効率をMDCKおよび293T細胞で比較した。インフルエンザウイルスゲノムをpHW2000発現ベクター中にクローニングした[69]。このベクターは、MDCK細胞中で活性であることが示されたヒトpolIプロモーターの断片を含有する(図5を参照)。詳細には、以下のベクターを使用した:pHW−WSN PA(0.534μg/μl);pHW−WSN PB1(0.432μg/μl);pHW−WSN PB2(0.357μg/μl);pHW−WSN NP(0.284μg/μl);pHW−WSN NS(0.217μg/μl);pHW−WSN M(0.232μg/μl);pHW−WSN HA(0.169μg/μl);pHW−WSN NA(0.280μg/μl)およびpcDNA−TMPRSS(0.775μg/μl;セリンプロテアーゼをコードする)。タンパク質コード遺伝子は、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターによって調節されていた。
【0157】
ウイルスレスキューでは、10%FCSを入れたダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)2mlを入れた6ウェルディッシュ中の1ウェル当たり細胞5×106個の密度に293T細胞を播いた。培地2mlを入れた6ウェルディッシュ中の1ウェル当たり細胞0.3×106個にMDCK細胞を入れた(plate)。細胞を37℃で1晩インキュベートし、50〜80%のコンフルエンシーに達したときにトランスフェクトした。
【0158】
293TおよびMDCK細胞は、FuGENE6トランスフェクション試薬(Rocheカタログ番号11988387001)およびリポフェクタミンLTXプラス試薬(Invitrogenカタログ番号15338−100)をそれぞれ使用してトランスフェクトした。以下のプロトコールに従って細胞に各ベクター1μgをトランスフェクトした。FuGENE6では、試薬(DNA1μg当たりFuGENE3μl)を無血清培地73μl(抗生物質を含まない)で希釈し、穏やかに混合し、室温で5分間インキュベートした。その後、希釈したFuGENEにそれぞれDNAを添加し、穏やかに混合し、室温で少なくとも15分間インキュベートした。増殖培地を除去せずにDNA/FuGENE複合体を293T細胞に滴下して加え、細胞を37℃で24時間インキュベートした。
【0159】
リポフェクタミンを用いたトランスフェクションでは、試薬(25μl)を無血清培地500μlで希釈し、室温で5分間インキュベートした。DNAを添加し、その混合物を室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、細胞から増殖培地を除去した後に無血清培地500μlをトランスフェクション試薬に滴下して加えた。その後細胞を37℃で24時間インキュベートした。トランスフェクションから24時間後に培地を交換した。
【0160】
感染から2日後、1000rpmで5分間の遠心分離によって細胞から上清を収集した。上清中に収集されたウイルスをフォーカス形成アッセイに使用した。さらに、感染した細胞を溶解させ、それをウェスタンブロット分析に使用した。
【0161】
(ウェスタンブロット分析)
標準的なプロトコールに従って、293TおよびMDCK細胞を溶解しそれをウェスタンブロット分析に供した。MおよびNPタンパク質に対する抗体を使用して、膜上のこれらのタンパク質を検出した。S6に対する抗体をローディング対照として使用した。「WSN」とラベルを付けたレーンに、レスキューされたウイルス由来のタンパク質をロードした。「M」および「NP」のラベルを付けたレーンは、対照として組換えMおよびNPタンパク質を含有する。これらの組換えタンパク質は異なる遺伝子から発現したので、ゲル中でわずかにゆっくりと移動する。
【0162】
分析の結果は図8に示され、ヒトpolIプロモーターの調節下にある発現構築物が293TならびにMDCK細胞中でのウイルスレスキューを可能とすることが明らかである。
【0163】
(フォーカス形成アッセイ)
10%FCSを入れたDMEM500μlの入った48ウェルプレート中の1ウェル当たり細胞6.25×104個の密度に、感染していないMDCK細胞を入れた。次の日に、細胞に100〜150μlの容積のウイルスを37℃で2時間感染させた。それによって細胞は様々な希釈のウイルスに感染した。感染から2時間後、培地を吸引し10%FCSを入れたDMEM500μlを各ウェルに添加した。細胞を37℃で次の日までインキュベートした。
【0164】
感染から24時間後、培地を吸引し細胞をPBSで1回洗浄した。PBS中80%の氷冷アセトン500μlを各ウェルに添加し、その後4℃で30分間インキュベーションを行った。アセトン混合物を吸引し、細胞をPBST(PBS+0.1%Tween)で1回洗浄した。PBS中2%のBSA500μlを各ウェルに添加し、その後室温(RT)で30分間インキュベーションを行った。ブロッキング緩衝液中1:6000希釈の抗NPを500μl添加し、その後RTで2時間インキュベーションを行った。抗体溶液を吸引し、細胞をPBSTで2回洗浄した。500μlのブロッキング緩衝液中1:2000の希釈で二次抗体(ヤギ抗マウス)を添加し、プレートをRTで2時間インキュベートした。抗体溶液を吸引し、細胞をPBSTで3回洗浄した。KPL True Blue 500μlを各ウェルに添加し10分間インキュベートした。True−Blueを吸引し、dH2Oで1回洗浄することによって反応を停止した。水を吸引し、細胞を乾燥させた。
【0165】
アッセイの結果は図9に示され、それから、293TならびにMDCK細胞から感染性ウイルスが得られたことがはっきりと実証される。
【0166】
参考文献70に記載されているように、ヒトpolI逆遺伝学系を使用したA/プエルトリコ/8/34インフルエンザ株のウイルスレスキューもMDCK ATCC、MDCK33016−PFおよび293T細胞で試験した。セリンプロテアーゼをコードするヘルパープラスミドTMPRSS2の存在下および不在下でウイルスがレスキューされる実験を行った。さらに、ウイルスレスキューから24時間後にフィーダー細胞を添加して、および添加せずにウイルスレスキューを行った。その結果は図12に示され、それから、ヒトpolIプロモーターを使用して様々な条件下で効率的なウイルスレスキューをMDCK細胞で実現できることが実証される。
【0167】
ヒトpolIプロモーターを使用したMDCK33016−PFでのウイルスレスキューの効率がイヌpolIプロモーターを使用したレスキューと同等であるかどうかを比較するため、参考文献70に記載されているように、細胞にヒトpolI RG系またはイヌpolI RG系をトランスフェクトした。TMPRSSヘルパープラスミドの存在下および不在下で実験を行った。その結果(図13)は、ヒトpolI系を使用したときイヌpolI系と同等の効率でA/プエルトリコ/8/34株がレスキューされたことを実証している。
【0168】
本発明がほんの一例として記載されており、本発明の範囲および精神の中にとどまりつつ改変をなすことができることが理解される。
【0169】
(参考文献)
【0170】
【数1】
【0171】
【数2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスRNA分子をコードする少なくとも1つの発現構築物を含む宿主細胞であって、該構築物からの該ウイルスRNA分子の発現は、該宿主細胞の分類学上の目にとって内因性ではないpolIプロモーターによって調節される、宿主細胞。
【請求項2】
内因性rRNAの発現を調節する少なくとも1つの内因性polIプロモーター、および、ウイルスRNAまたはその相補体の発現を調節する少なくとも1つの非内因性polIプロモーターを有する細胞。
【請求項3】
ウイルスを産生させるためにウイルスRNA分子が発現される条件下で請求項1または請求項2に記載の細胞を増殖させるステップを含む、組換えウイルスを産生するための方法。
【請求項4】
(i)請求項3に記載の方法によって組換えウイルスを産生するステップと、(ii)培養宿主にステップ(i)で得られたウイルスを感染させるステップと、(iii)さらなるウイルスを産生させるためにステップ(ii)の宿主を培養するステップと、(iv)ステップ(iii)で得られたウイルスを精製するステップとを含む、ウイルスを調製する方法。
【請求項5】
(a)請求項4に記載の方法によってウイルスを調製するステップと、(b)該ウイルスからワクチンを調製するステップとを含む、ワクチンを調製するための方法。
【請求項6】
前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法であって、前記polIプロモーターが霊長目polIプロモーターであり、該細胞が非霊長目細胞である、細胞または方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の細胞または方法であって、前記polIプロモーターが非イヌpolIプロモーターであり、該細胞がイヌ細胞である、細胞または方法。
【請求項8】
請求項7に記載の細胞または方法であって、前記polIプロモーターがヒトpolIプロモーターであり、該細胞がイヌ細胞である、細胞または方法。
【請求項9】
請求項8に記載の細胞または方法であって、該細胞がMDCK細胞である、細胞または方法。
【請求項10】
請求項9に記載の細胞または方法であって、前記MDCK細胞が細胞系統MDCK33016(DSM ACC2219)である、細胞または方法。
【請求項11】
前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法であって、該細胞が少なくとも1つの両方向性発現構築物を含む、細胞または方法。
【請求項12】
前記発現構築物が発現ベクターまたは直鎖発現構築物である、前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法。
【請求項13】
前記ウイルスが分節型ウイルスである、前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法。
【請求項14】
前記ウイルスが非分節型ウイルスである、前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法。
【請求項15】
前記ウイルスがマイナス鎖RNAウイルスである、前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法。
【請求項16】
前記ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項15に記載の細胞または方法。
【請求項1】
ウイルスRNA分子をコードする少なくとも1つの発現構築物を含む宿主細胞であって、該構築物からの該ウイルスRNA分子の発現は、該宿主細胞の分類学上の目にとって内因性ではないpolIプロモーターによって調節される、宿主細胞。
【請求項2】
内因性rRNAの発現を調節する少なくとも1つの内因性polIプロモーター、および、ウイルスRNAまたはその相補体の発現を調節する少なくとも1つの非内因性polIプロモーターを有する細胞。
【請求項3】
ウイルスを産生させるためにウイルスRNA分子が発現される条件下で請求項1または請求項2に記載の細胞を増殖させるステップを含む、組換えウイルスを産生するための方法。
【請求項4】
(i)請求項3に記載の方法によって組換えウイルスを産生するステップと、(ii)培養宿主にステップ(i)で得られたウイルスを感染させるステップと、(iii)さらなるウイルスを産生させるためにステップ(ii)の宿主を培養するステップと、(iv)ステップ(iii)で得られたウイルスを精製するステップとを含む、ウイルスを調製する方法。
【請求項5】
(a)請求項4に記載の方法によってウイルスを調製するステップと、(b)該ウイルスからワクチンを調製するステップとを含む、ワクチンを調製するための方法。
【請求項6】
前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法であって、前記polIプロモーターが霊長目polIプロモーターであり、該細胞が非霊長目細胞である、細胞または方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の細胞または方法であって、前記polIプロモーターが非イヌpolIプロモーターであり、該細胞がイヌ細胞である、細胞または方法。
【請求項8】
請求項7に記載の細胞または方法であって、前記polIプロモーターがヒトpolIプロモーターであり、該細胞がイヌ細胞である、細胞または方法。
【請求項9】
請求項8に記載の細胞または方法であって、該細胞がMDCK細胞である、細胞または方法。
【請求項10】
請求項9に記載の細胞または方法であって、前記MDCK細胞が細胞系統MDCK33016(DSM ACC2219)である、細胞または方法。
【請求項11】
前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法であって、該細胞が少なくとも1つの両方向性発現構築物を含む、細胞または方法。
【請求項12】
前記発現構築物が発現ベクターまたは直鎖発現構築物である、前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法。
【請求項13】
前記ウイルスが分節型ウイルスである、前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法。
【請求項14】
前記ウイルスが非分節型ウイルスである、前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法。
【請求項15】
前記ウイルスがマイナス鎖RNAウイルスである、前述の請求項のいずれかに記載の細胞または方法。
【請求項16】
前記ウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項15に記載の細胞または方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【公表番号】特表2012−527228(P2012−527228A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511364(P2012−511364)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001332
【国際公開番号】WO2010/133964
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/001332
【国際公開番号】WO2010/133964
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】
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