説明

非円形の断面を有する導体

【課題】漏話及び遅延時間差を減少させ且つ、より強力でより減衰されていない信号を提供する。
【解決手段】絶縁した波形導体12を有する通信ケーブルが提供される。波形導体はリッジ16及び凹部17を有し、凹部の領域内にて絶縁体14とワイヤー10の外面との間に空隙18が提供される。一部の実施の形態において、リッジ20及び凹部21は正弦波輪郭外形の断面を形成する。絶縁体には波形部を設けることができ、また、絶縁体の波形部は導体の波形部と整合させることができる。幾つかのワイヤーを組み合わせて1本の通信ケーブルにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
[0001] 本出願は、その内容の全体を参考として引用し本明細書に含めた、2006年6月1日付けで出願された米国仮特許出願明細書60/803,639号による優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
[0002] 本発明は、全体として、通信ケーブルに関し、より具体的には、ワイヤー絶縁体の正味誘電定数を減少させる装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 通信システムの信頼性及び通信の質を向上させるため、通信システム内の外部漏話を抑制することが益々重要となっている。通信システムの帯域幅が増すに伴い、外部漏話を減少させ又は解消する重要性も増している。
【0004】
[0004] 有線通信システムにおいて、漏話は、通信ケーブル内の又はケーブル間の電磁干渉によって生じる。ケーブル対の間の漏話結合は、2つの対を分離する材料の誘電定数に比例する。このため、導体間の材料の全体的な誘電定数を減少させれば、対の間の漏話は減少する。また、その結果、導体を分離する材料に対して、全体的な誘電定数が減少した隣接する通信ケーブル間の外部漏話も減少することになるであろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] 誘電定数は、高性能ケーブルを製造するときの重要なパラメータである。誘電定数は、ケーブルの設計が適正に最適化されたとき、信号の処理能力に反比例し且つ、減衰値に正比例する。全体として、誘電定数が減少すれば、信号の処理能力は増大し、信号の減衰値は減少する。これらは、全て、ケーブルの寸法上の設計が原因であり、これらの設計は、より好ましいよう最適化することができる。このように、より小さい誘電定数であれば、より少ない歪み及び少ない遅延時間差(delay skew)にてより迅速に到達するより強力な信号となることができる。
【0006】
[0006] このため、漏話及び遅延時間差を減少させ且つ、より強力でより減衰されていない信号を提供するため、ケーブル内の導体を分離する材料の全体的な誘電定数を減少させることが必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0007] 本発明の1つの実施の形態に従い、波形ケーブル内にて導体間の材料の全体的な誘電定数を減少させるため空隙が提供される。
【0008】
[0008] 本発明の一部の実施の形態に従い、導体と絶縁体との間に空隙を提供するため、導体は波形とされる。
【0009】
[0009] 本発明の一部の実施の形態に従い、導体及びその絶縁体の双方が空隙を提供し得るよう波形とされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[0016] 先ず、図1を参照すると、ワイヤー10の断面図が示されている。ワイヤーは、導体12と、絶縁体14とを含む。導体12は非円形である。より具体的には、図1の実施の形態にて示すように、導体は、波形とされ、導体12と絶縁体14との間にリッジ16及び凹部17を形成する。リッジ16及び凹部17は、捩った対にて隣接する導体間の材料の正味誘電定数を減少させる空隙18を形成する。このことは、捩った対を多数備えるケーブルにて捩った対の間の漏話を減少させることになる。
【0011】
[0017] 導体12を波形にすることは、また、導体12の表面積を増大させることにもなる。導体には、外皮効果が加わり、このことは、信号は、(電磁界ビームに従って)導体の外周面にて又はその付近にて流れることを意味する。導体の表面積を増大させれば、導体の寸法を増すことなく、信号が流れることができる面積を増大させることになる。このように、空隙18を有する導体12は、同一寸法の平滑な導体よりもデータを伝送するより多くの容量を有する(中周波数範囲の場合)。
【0012】
[0018] 絶縁体14は、また、リッジ20及び凹部21を有し且つ、波形とされる。リッジ20及び凹部21は、空隙22も形成する。絶縁体14のリッジ20の頂部は、導体12のリッジ16の頂部と整合され、絶縁体14が、絶縁体14に圧力が加えられたとき、潰れて導体12の空隙18に入ることはない。絶縁体14のリッジ20及び導体12のリッジ16は、図1に示すように、共通の半径rを形成する。
【0013】
[0019] 圧力が絶縁体14に加わったならば、絶縁体14は、圧力により潰れて導体12の空隙18内に入る虞れがある。このことは、誘電定数を減少させ、これにより漏話を増し且つ、遅延時間差が生ずる可能性を増すであろう。2本のワイヤー10が互いに捩られて捩ったワイヤー対を形成するとき、圧力が生じる可能性がある。しかし、図1に示した設計において、導体12のリッジ16が絶縁体14のリッジ20と整合することは、絶縁体14が潰れて空隙18内に入るのを防止することになる。
【0014】
[0020] 図2には、ワイヤー10の斜視図が示されている。図示するように、リッジ16、20及び凹部17、21は、導体12及び絶縁体14の長さに沿って伸びて空隙18、20が長い通路を形成するようにする。図1及び図2の双方に示すように、リッジ16、20は、正弦波の輪郭外形を有する。しかし、その他非円形の形状及び湾曲部を使用することもできる。好ましくは、形状体は丸味を付けた端縁を有するものとする。また、任意の数のリッジ及び凹部があるようにしてもよい。
【0015】
[0021] 図3には、図1の実施の形態に従った捩ったワイヤー対30の断面図が示されている。図示するように、ワイヤー10の対が互いに捩れたとき、絶縁体14のリッジ20は互いに押す。しかし、導体12のリッジ16の頂部は、絶縁体14のリッジ20の頂部と整合されるから、何れの絶縁体14も潰れて導体12の空隙18内に入ることはない。このため、導体12の間の材料の全体的な誘電定数は低いままである。
【0016】
[0022] 次に、図4を参照して、本発明の別の実施の形態について説明する。ワイヤー50は、非円形の導体52と、絶縁体54とを有するものとして示されている。導体52は、空隙58を形成する、リッジ56及び凹部57を有している。絶縁体54は、リッジ又は凹部が存在しない、平滑な円形の面である。空隙58は、導体52間の材料の全体的な誘電定数を減少させる。
【0017】
[0023] 図5には、図4の実施の形態の斜視図が示されている。図示するように、リッジ56及び凹部57は、導体の長さに沿って伸びており、空隙58は通路を形成するようにする。リッジ56及び凹部57は、正弦波の輪郭外形を形成するが、その他の形状及び(又は)湾曲部を使用することができる。好ましくは、形状体は、丸味を付けた端縁を有するものとする。また、任意の数のリッジ56及び凹部57が存在するようにしてもよい。
【0018】
[0024] 図6には、図3の実施の形態に従った捩ったワイヤー対60の断面図が示されている。図示するように、対のワイヤー50は、絶縁体54が当接するように互いに捩られている。導体52は、空隙58が残るよう波形とされている。
【0019】
[0025] 本発明の特定の実施の形態及び適用例について図示し且つ説明したが、本発明は、本明細書に開示した正確な構造及び組成にのみ限定されるものではなく、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、色々な改変例、変化及び変更例が上記の説明から明らかであろう。
【0020】
[0026] 本出願にて示唆したように、誘電定数が減少するとき、ワイヤー対の設計は性能のため最適化することができる。誘電定数が減少すれば、単位長さ当たりの容量はこれに比例して減少する。特徴的なインピーダンスを一定に保つため(すなわちZ=SQRT/(L/C))、ワイヤーの直径を増大させ、これにより単位長さ当たりの容量を増すことができる。このワイヤー直径の増大は、ワイヤーの外側表面積が増大するから、ワイヤー対の減衰量を低下させることになろう。他方、減少した誘電定数のため、容量が小さく保たれるならば、一定の特徴的なインピーダンスを実現するためには、インダクタンスを減少させなければならない。この小さい容量及びインダクタンスにて、特徴的インピーダンスは一定のままであり、伝搬速度は増すであろう(速度=1/(SQRT(L/C)))。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の1つの実施の形態に従ったワイヤーの断面図である。
【図2】絶縁体の一部分が除去された図1のワイヤーの斜視図である。
【図3】図1の実施の形態に従った捩ったワイヤー対の断面図である。
【図4】本発明の別の実施の形態に従ったワイヤーの断面図である。
【図5】絶縁体の一部分が除去された、図4のワイヤーの斜視図である。
【図6】図4の実施の形態に従った捩ったワイヤー対の断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 ワイヤー
12 導体
14 絶縁体
16 リッジ
17 凹部
18 空隙
20 リッジ
21 凹部
22 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信信号を伝達するワイヤーにおいて、
リッジと、凹部とを有する外面を備え、前記リッジ及び凹部は正弦波輪郭外形の断面を有する波形導体と、
前記波形導体を取り囲む絶縁体と、
前記導体の前記凹部の領域内にて波形導体の外面と前記絶縁体の内面との間の空隙とを備える、通信信号を伝達するワイヤー。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤーにおいて、前記絶縁体は、絶縁体のリッジ及び凹部を備える波形絶縁体である、ワイヤー。
【請求項3】
請求項2に記載のワイヤーにおいて、前記絶縁体のリッジは、前記波形導体の前記リッジと整合される、ワイヤー。
【請求項4】
複数のワイヤーにて形成された、通信信号を伝達するケーブルにおいて、前記複数のワイヤーの少なくとも1つは、
リッジと、凹部とを有する外面を備え、前記リッジ及び凹部は正弦波輪郭外形の断面を有する波形導体と、
前記波形導体を取り囲む絶縁体と、
前記導体の前記凹部の領域内にて波形導体の外面と前記絶縁体の内面との間の空隙とを備える、通信信号を伝達するケーブル。
【請求項5】
請求項4に記載のケーブルにおいて、前記複数のワイヤーの全ては、前記波形導体を取り囲む波形導体と、前記空隙を備える、ケーブル。
【請求項6】
請求項5に記載のケーブルにおいて、前記絶縁体は、絶縁体のリッジ及び凹部を備える波形絶縁体である、ケーブル。
【請求項7】
請求項6に記載のケーブルにおいて、前記絶縁体のリッジは前記波形導体の前記リッジと整合される、ケーブル。
【請求項8】
請求項4に記載のケーブルにおいて、前記複数のワイヤーは捩ったワイヤー対として配置される、ケーブル。
【請求項9】
通信信号を伝達するワイヤーにおいて、
導体のリッジと、凹部とを有する外面を備え、前記絶縁体のリッジの各々が頂部を有する波形導体と、
前記波形導体を取り囲む波形導体であって、絶縁体のリッジ及び凹部を有し、前記絶縁体のリッジの各々が頂部を有する前記波形導体とを備え、
前記導体のリッジの前記頂部は、前記絶縁体のリッジの前記頂部と整合される、通信信号を伝達するワイヤー。
【請求項10】
請求項9に記載のワイヤーにおいて、前記導体のリッジ及び凹部は正弦波状輪郭外形の断面を有する、ワイヤー。
【請求項11】
請求項9に記載のワイヤーにおいて、前記絶縁体のリッジ及び凹部は正弦波状輪郭外形の断面を有する、ワイヤー。
【請求項12】
請求項9に記載のワイヤーにおいて、前記導体のリッジは丸味を付けた端縁を有する、ワイヤー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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