非凝集性蛍光性タンパク質およびその使用方法
【課題】非凝集性色素/蛍光タンパク質およびそれらの変異体をコードする核酸組成物、ならびにそれらによってコードされるタンパク質を提供する。
【解決手段】非凝集性有色および/または蛍光性タンパク質(非凝集性特質は、タンパク質のN末端の残基の調整により発生し、色素性かつ/または蛍光性特質は、タンパク質の2個またはそれ以上の残基の相互作用により発生する)であるポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸、および該タンパク質に対する抗体、ならびにトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物。
【解決手段】非凝集性有色および/または蛍光性タンパク質(非凝集性特質は、タンパク質のN末端の残基の調整により発生し、色素性かつ/または蛍光性特質は、タンパク質の2個またはそれ以上の残基の相互作用により発生する)であるポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸、および該タンパク質に対する抗体、ならびにトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年12月4日出願の特許出願第10/006,922号の一部継続出願であり、また2001年2月21日出願の特許出願第60/270,983号に基づく優先権を主張し、これらの出願の開示は完全に本明細書に組み込まれる。
【0002】
序論
発明の分野
本発明の分野は、色素タンパク質および蛍光性タンパク質である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
標識は、関心対象のタンパク質、細胞、または生物に印をつけるための道具であり、多くの生化学、分子生物学、および医学的診断適用において顕著な役割を果たしている。放射性標識、色素標識、蛍光標識、化学発光標識等を含む多様な異なる標識が開発されている。しかしながら、新規の標識の開発への関心は依然としてある。特に関心があるのは、色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質標識を含む、新規のタンパク質標識の開発である。
【0004】
最近開発された重要な新規のクラスの蛍光性タンパク質は、Matz,M.V.ら(1999)Nature Biotechnol.,17:969-973(非特許文献1)に記載されている、造礁サンゴ蛍光性タンパク質(Reef Coral Fluorescent Proteins)である。これらの蛍光性タンパク質は多くの利点を示すが、ある種の型は、高分子量凝集を起こしやすく、それにより問題を起こし、その結果それらの適用可能性を制限し得る。
【0005】
そのため、この重要な新規のクラスの蛍光性タンパク質の非凝集性型の開発は、非常に関心がある。本発明は、この必要を満たす。
【0006】
関連文献
関心対象の米国特許には、第6,066,476号(特許文献1);第6,020,192号(特許文献2);第5,985,577号(特許文献3);第5,976,796号(特許文献4);第5,968,750号(特許文献5);第5,968,738号(特許文献6);第5,958,713号(特許文献7);第5,919,445号(特許文献8);第5,874,304号(特許文献9);および第5,491,084号(特許文献10)が含まれる。関心対象の国際特許出願には、国際公開公報第00/46233号(特許文献11);国際公開公報第99/49019号(特許文献12);およびDE 197 18 640 A(特許文献13)が含まれる。Anderluhら、Biochemical and Biophysical Research Communications(1996)220:437-442(非特許文献2);Dove ら、Biological Bulletin(1995)189:288-297(非特許文献3);Fradkovら、FEBS Lett.(2000)479(3): 127-30(非特許文献4);Gurskayaら、FEBS Lett.,(2001)507(1):16-20(非特許文献5);Gurskayaら、BMC Biochem.(2001)2:6(非特許文献6);Lukyanov,K.ら、(2000)J Biol Chemistry 275(34):25879-25882(非特許文献7);Macekら、Eur.J.Biochem.(1995)234:329-335(非特許文献8);Martynovら、J Biol Chem.(2001)276: 21012-6(非特許文献9);Matz,M.V.ら(1999)Nature Biotechnol.,17:969-973(非特許文献1);Terskikhら、Science(2000)290:1585-8(非特許文献10);Tsien, Annual Rev. of Biochemistry(1998)67:509-544(非特許文献11);Tsien, Nat. Biotech. (1999)17:956-957(非特許文献12);Wardら、J.Biol.Chem.(1979)254:781-788(非特許文献13);Wiedermannら、Jarhrestagung der Deutschen Gesellschact fur Tropenokologie-gto.Ulm.17-19.02.1999.Poster P-4.20(非特許文献14);Yanushevichら、FEBS Lett(2002年1月30日)511(1-3):11-4(非特許文献15);およびYarbroughら、Proc Natl Acad Sci U S A(2001)98:462-7(非特許文献16)も関心対象である。
【特許文献1】米国特許第6,066,476号
【特許文献2】米国特許第6,020,192号
【特許文献3】米国特許第5,985,577号
【特許文献4】米国特許第5,976,796号
【特許文献5】米国特許第5,968,750号
【特許文献6】米国特許第5,968,738号
【特許文献7】米国特許第5,958,713号
【特許文献8】米国特許第5,919,445号
【特許文献9】米国特許第5,874,304号
【特許文献10】米国特許第5,491,084号
【特許文献11】国際公開公報第00/46233号
【特許文献12】国際公開公報第99/49019号
【特許文献13】DE 197 18 640 A
【非特許文献1】Matz,M.V.ら(1999)Nature Biotechnol.,17:969-973
【非特許文献2】Anderluhら、Biochemical and Biophysical Research Communications(1996)220:437-442
【非特許文献3】Dove ら、Biological Bulletin(1995)189:288-297
【非特許文献4】Fradkovら、FEBS Lett.(2000)479(3): 127-30
【非特許文献5】Gurskayaら、FEBS Lett.,(2001)507(1):16-20
【非特許文献6】Gurskayaら、BMC Biochem.(2001)2:6
【非特許文献7】Lukyanov,K.ら、(2000)J Biol Chemistry 275(34):25879-25882
【非特許文献8】Macekら、Eur.J.Biochem.(1995)234:329-335
【非特許文献9】Martynovら、J Biol Chem.(2001)276: 21012-6
【非特許文献10】Terskikhら、Science(2000)290:1585-8
【非特許文献11】Tsien, Annual Rev. of Biochemistry(1998)67:509-544
【非特許文献12】Tsien, Nat. Biotech. (1999)17:956-957
【非特許文献13】Wardら、J.Biol.Chem.(1979)254:781-788
【非特許文献14】Wiedermannら、Jarhrestagung der Deutschen Gesellschact fur Tropenokologie-gto.Ulm.17-19.02.1999.Poster P-4.20
【非特許文献15】Yanushevichら、FEBS Lett(2002年1月30日)511(1-3):11-4
【非特許文献16】Yarbroughら、Proc Natl Acad Sci U S A(2001)98:462-7
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
非凝集性色素/蛍光タンパク質およびそれらの変異体をコードする核酸組成物、ならびにそれらによってコードされるタンパク質が提供される。関心対象のタンパク質は、非凝集性有色および/または蛍光性タンパク質(非凝集性特質は、タンパク質のN末端の残基の調整により発生し、色素性および/または蛍光性特質は、タンパク質の2個またはそれ以上の残基の相互作用により発生する)であるポリペプチドである。本発明の核酸の断片、およびそれによってコードされるペプチドも提供され、さらに、本発明のタンパク質に対する抗体、ならびにトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物も提供される。本発明のタンパク質組成物および核酸組成物は、多様な異なる適用において有益である。最後に、そのような適用において使用するためのキット、例えば本発明の核酸組成物を含むキットが提供される。
【0008】
定義
本発明に従い、当技術分野の技術の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学、および組み換えDNA技術が利用され得る。そのような技術は、文献中に充分に説明されている。例えば、Maniatis、Fritsch、およびSambrook、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(1982);「DNA Cloning:A Practical Approach」、第IおよびII巻(D.N.Glover編 1985);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編 1984);「Nucleic Acid Hybridization」(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1985));「Transcription and Translation」(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1984));「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney編(1986));「Immobilized Cells and Enzymes」(IRL Press,(1986));B. Perbal、「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984)を参照のこと。
【0009】
「ベクター」とは、別のDNAセグメントが、そのセグメントの複製が行われるように付加され得る、プラスミド、ファージ、またはコスミドのようなレプリコンである。
【0010】
「DNA分子」とは、一本鎖形態または二本鎖ヘリックスのいずれかのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)の重合体形態をさす。この用語は、分子の一次構造および二次構造のみをさし、任意の特定の三次形態に分子構造を制限するものではない。従って、この用語には、特に直鎖状DNA分子(例えば、制限断片)、ウイルス、プラスミド、および染色体に見出される二本鎖DNAが含まれる。
【0011】
DNA「コード配列」とは、適切な制御配列の調節下に置かれた場合に、インビボで転写されポリペプチドへと翻訳されるDNA配列である。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドンおよび3'(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列には、これらに制限はされないが、原核生物配列、真核生物mRNAに由来するcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNAに由来するゲノムDNA配列、および合成DNA配列が含まれ得る。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列が、コード配列の3'に位置していてもよい。
【0012】
本明細書において使用されるように、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相対するの核酸鎖の残基間の水素結合によって安定化された逆平行二重鎖を形成するための、2個の核酸鎖の会合の過程をさす。
【0013】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、短い(100塩基長未満の)核酸分子をさす。
【0014】
「DNA制御配列」とは、本明細書において使用されるように、宿主細胞におけるコード配列の発現を提供および/または制御する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター等のような転写および翻訳の調節配列である。
【0015】
「プロモーター配列」とは、細胞内でRNAポリメラーゼと結合し、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始させることができるDNA制御領域である。本発明を定義する目的のため、プロモーター配列は、転写開始部位を3'末端の境界とし、バックグラウンドを超える検出可能なレベルで転写を開始させるために必要な最少数の塩基、または要素を含むように、上流(5'方向)に拡がっている。プロモーター配列内には、転写開始部位のみならずRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメインが見い出されると考えられる。真核生物のプロモーターは、常にではないが、多くの場合、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有しているであろう。誘導可能プロモーターを含む様々なプロモーターが、本発明の様々なベクターを駆動するために使用され得る。
【0016】
本明細書において使用されるように、「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、各々が特異的なヌクレオチド配列で、またはその近傍で二本鎖DNAを切断する細菌酵素をさす。
【0017】
外因性または異種のDNAが細胞内に導入されている場合、その細胞は、そのようなDNAによって「形質転換」または「トランスフェクト」されている。形質転換DNAは、細胞のゲノムへ組み込まれて(共有結合して)いてもよく、またはそうでなくてもよい。例えば、原核生物、酵母、および哺乳動物細胞においては、形質転換DNAは、プラスミドのようなエピソーム要素上に維持され得る。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞とは、形質転換DNAが、染色体複製を通じて娘細胞によって受け継がれるように、染色体へ組み込まれているものである。この安定性は、形質転換DNAを含有している娘細胞の集団から構成される細胞株またはクローンを確立する真核細胞の能力によって証明される。「クローン」とは、有糸分裂によって単一の細胞または共通の祖先より派生した細胞の集団である。「細胞株」とは、多くの世代にわたりインビトロで安定に増殖することができる初代細胞のクローンである。
【0018】
DNA構築物の「異種」領域とは、自然界において、より大きなDNA分子に関連して見出されない、そのより大きな分子中の同定可能なDNAのセグメントである。従って、異種領域が哺乳動物遺伝子をコードする場合、その遺伝子は通常、起源生物のゲノムにおいて哺乳動物ゲノムDNAと隣接していないDNAと隣接していると考えられる。もう一つの例において、異種DNAには、融合タンパク質生成物を作製するために二つの異なる起源に由来する遺伝子の一部が集められた構築物の中のコード配列が含まれる。対立遺伝子変化または天然に存在する変異事象は、本明細書において定義されるようなDNAの異種領域を生成しない。
【0019】
本明細書において使用されるように、「レポーター遺伝子」という用語は、構築物が組織または細胞へ導入された場合に、産物が容易かつ定量的にアッセイされ得る、異種のプロモーター要素またはエンハンサー要素に付加されたコード配列をさす。
【0020】
本明細書に記載されたアミノ酸は、「L」異性体であることが好ましい。アミノ酸配列は、一文字記号(A:アラニン;C:システイン;D:アスパラギン酸;E:グルタミン酸;F:フェニルアラニン;G:グリシン;H:ヒスチジン;I:イソロイシン;K:リジン;L:ロイシン;M:メチオニン;N:アスパラギン;P:プロリン;Q:グルタミン;R:アルギニン;S:セリン;T:トレオニン;V:バリン;W:トリプトファン;Y:チロシン;X:任意の残基)で与えられる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基をさす。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基をさす。標準的なポリペプチド命名法に沿って、J Biol.Chem.,243(1969),3552-59が使用される。
【0021】
「免疫学的に活性な」という用語は、天然の、組換えの、または合成の色素/蛍光性タンパク質またはそれらの任意のオリゴペプチドの、適切な動物または細胞において特異的な免疫応答を誘導する能力、および特異的抗体と結合する能力を定義する。本明細書において使用されるように、「抗原性アミノ酸配列」とは、単独でまたは担体分子と会合して、哺乳動物において抗体応答を誘発することができるアミノ酸配列を意味する。抗体の抗原への結合に関連して、「特異的結合」という用語は、当技術分野においてよく理解されている用語であり、抗体が、その抗体を産生させた抗原と結合し、その他の無関係な抗原とは結合しないことさす。
【0022】
本明細書において使用されるように、「単離された」という用語は、そのポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または宿主細胞が天然に存在する環境とは異なる環境に存在するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または宿主細胞を記載することが意図される。
【0023】
生物発光(BL)とは、暗所において充分可視であり、動物の視覚的な行動に影響を与える、生物による光の放射と定義される(例えば、Harvey, E.N.(1952). Bioluminescence. New York:Academic Press;Cell Physiology (N. Speralakis編)pp.651-681における、Hastings,J.W.(1995). Bioluminescence. New York:Academic Press.;Wilson,T.およびHastings,J.W.(1998). Bioluminescence.Annu Rev Cell Dev Biol 14,197-230を参照のこと)。生物発光には、高感度の照度測定装置を使用して事実上全ての生物構造において検出され得る、いわゆる極微弱光放射(Murphy,M.E.およびSies,H.(1990), Visible-range low-level chemiluminescence in biological systems. Meth.Enzymol.186,595-610;Radotic,K,Radenovic,C,Jeremic,M.(1998)Spontaneous ultra-weak bioluminescence in plants:origin, mechanisms and properties. Gen Physiol Biophys 17,289-308)、およびタケ成長円錐の発光(Totsune,H.,Nakano,M.,Inaba,H.(1993). Chemiluminescence from bamboo shoot cut. Biochem.Biophys.Res Comm.194,1025-1029)、または動物卵の受精中の光の放射(Klebanoff,S. J., Froeder, C. A., Eddy, E. M.,Shapiro,B.M.(1979). Metabolic similarities between fertilization and phagocytosis. Conservation of peroxidatic mechanism. J.Exp.Med.149,938-953;Schomer,B.およびEpel,D.(1998). Redox changes during fertilization and maturation of marine invertebrate eggs. Dev Biol 203,1-11)のような、おそらくいかなる生態学的役割も果たさない微弱光放射は含まれない。
【0024】
特定の態様の説明
非凝集性色素/蛍光タンパク質およびそれらの変異体をコードする核酸組成物、ならびにそれらがコードするタンパク質が提供される。関心対象のタンパク質は、有色および/または蛍光性である非凝集性タンパク質(非凝集性特質は、タンパク質のN末端の残基の調整より発生し、色素性および/または蛍光性特質は、タンパク質の2個またはそれ以上の残基の相互作用により発生する)である。前記の特定のタンパク質と実質的に類似しているタンパク質、または前記の特定のタンパク質の変異体も、関心対象である。核酸の断片およびそれらによってコードされるペプチドも提供され、さらに、本発明のタンパク質に対する抗体、ならびに本発明の核酸/タンパク質組成物を含むトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物も提供される。本発明のタンパク質組成物および核酸組成物は、多様な異なる適用において有益である。最後に、そのような適用において使用するためのキット、例えば本発明の核酸組成物を含むキットが提供される。
【0025】
本発明をさらに記載する前に、本発明は下記の本発明の特定の態様に制限されず、特定の態様の変形物が作成されてもよく、それらも添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。利用された語法は、特定の態様を記載するためのものであり、本発明を制限するものではないことも理解されたい。その代わり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
【0026】
この明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」には、特記しない限り、複数形の言及が含まれる。他に定義しない限り、本明細書において使用された全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。
【0027】
ある範囲の値が提供される場合には、その範囲の上限と下限との間に入るそれぞれの値(特記しない限り、下限の単位の10分の1まで)、およびその記述された範囲における他の任意の記述された値または間に入る値が、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、記述された範囲において任意の限度が特に除外される条件において、独立にそのより小さな範囲に含まれてもよく、同様に本発明に包含される。記述された範囲が、限度の一方または両方を含む場合、含まれている限度のいずれかまたは両方を除く範囲も、本発明に含まれる。
【0028】
他に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、全て、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。本明細書に記載されたものと類似しているかまたは等価である任意の方法、機器、および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法、機器、および材料が以下に記載される。
【0029】
本明細書において言及された全ての刊行物は、本明細書に記載された発明に関して使用され得る、刊行物中に記載されている細胞株、ベクター、方法論、およびその他の発明の構成要素を記載かつ開示する目的のため、参照として本明細書に組み込まれる。
【0030】
本発明のさらなる記載においては、まず本発明の核酸組成物を記載し、続いて本発明のタンパク質組成物、抗体組成物、およびトランスジェニック細胞/生物について考察する。次に、本発明のタンパク質が有益である代表的な方法の概要を提供する。
【0031】
核酸組成物
上に要約されたように、本発明は、非凝集性色素タンパク質および蛍光タンパク質ならびにそれらの変異体、ならびにこれらのタンパク質の断片および相同体をコードする核酸組成物を提供する。
【0032】
上に要約されたように、本発明の核酸によってコードされるタンパク質は、非凝集性色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質である。非凝集性とは、タンパク質が凝集しないこと、即ち相互の複合体が、高分子量凝集物を形成しないことを意味する。本明細書において使用されるように、「凝集物」とは、より高次の分子複合体、例えば、タンパク質の四量体を2個またはそれ以上含む複合体をさす。そのような凝集物の分子量は、典型的には約100 kDaを超え、より典型的には約150 kDaを超える。凝集物は多量体(「多量体」という用語は、二量体、三量体、および四量体のようなオリゴマーをさす)とは区別される。本発明の非凝集性ポリペプチドには、対応する凝集性アナログ、例えば対応する野生型タンパク質と比較して、インビトロおよび/またはインビボにおける凝集の減少を示すポリペプチドが含まれる。
【0033】
ある種の態様において、本発明のポリペプチドは、対応する凝集性アナログ、例えば対応する野生型タンパク質と比べて、インビトロにおける凝集の減少を示す。「インビトロにおける凝集の減少」とは、無細胞系または溶液における凝集の減少をさす。いくつかの態様において、非凝集性ポリペプチドは、同じインビトロ条件下で、対応する凝集性アナログによって示される凝集の約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満を示し、例えば、試料中に存在する本発明のポリペプチドの約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満が凝集する。本発明のポリペプチドを対応する凝集性アナログと比較するのに適したインビトロ条件は、凝集性アナログの凝集を阻止しない条件、例えば標準的な生理学的条件である。生理学的現象を研究するために当技術分野において使用されている、極めて多様な緩衝液系のうちの任意のものが、インビトロの比較のために使用され得る。そのような条件の非制限的な例には、約0.01mM〜約0.1 mMの範囲の塩濃度;約19℃〜約25℃の範囲の温度;および約6.5〜約8.0の範囲のpHが含まれるが、これらに制限はされない。凝集の比較に適した緩衝液には、任意の生理学的緩衝液;トリス-Cl、リン酸緩衝生理食塩水;トリス緩衝生理食塩水;ホウ酸緩衝生理食塩水等が含まれるが、これらに制限はされない。一例は、1×トリス-Cl緩衝液、pH8.8、0.1%SDS、室温である。本発明のDsRed変異体が凝集物を形成するか否かを決定するための例示的なアッセイは、実施例に記載されたとおりである。簡潔には、標準的なドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(SDS-PAGE)プロトコルが、細菌細胞、例えば大腸菌において組み換えにより作製された、DsRed変異タンパク質を分離するために使用される。試料はゲルにロードする前に煮沸されない。SDS-PAGEのための標準的な条件は、Short Protocols in Molecular Biology、第4版、1999年、FM Ausubelら編、John Wiley&Sons,Incに記載されている。典型的に、試料は、1×トリス-Cl緩衝液(pH約8.8)中の約0.1%SDSの存在下で電気泳動される。
【0034】
いくつかの態様において、本発明の非凝集性ポリペプチドは、インビボにおける凝集の減少を示す。「インビボにおける凝集の減少」とは、細胞内での凝集の減少をさす。いくつかの態様において、非凝集性ポリペプチドは、同じインビボ条件下、例えば同じ細胞株に由来するもう一つの真核細胞において、同一の原核細胞において、または同一細胞型の真核細胞もしくは細胞集団において、対応する凝集性アナログによって示される凝集の約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満を示す。一般に、細胞または細胞集団の中に存在する本発明の非凝集性ポリペプチドの約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満が凝集する。凝集の程度を測定する方法は、当技術分野において既知であり;所与の変異体が、対応する凝集性アナログと比較して、例えば対応する凝集性野生型ポリペプチドと比較して、凝集の減少を示すか否かを決定するために、任意の既知の方法が使用され得る。そのような方法には、実施例に記載されたような「偽非変性(pseudo-native)」タンパク質ゲル電気泳動;ゲルろ過;超遠心分離;円偏光二色性;および光散乱が含まれるが、これらに制限はされない。凝集は、実施例に記載されるように、光散乱によって測定され得る。凝集していないタンパク質に関しては、より長い波長における吸光に対する、より短い波長における吸光の比率がゼロに近い。いくつかの態様において、非凝集性ポリペプチドの566nmにおける吸光に対する400nmにおける吸光の比率は、約0.01〜約0.1、約0.015〜約0.09、約0.02〜約0.08、約0.025〜約0.07、または約0.03〜約0.06の範囲内である。
【0035】
多くの態様において、本発明の非凝集性ポリペプチドは、天然に存在するタンパク質またはその凝集性変異体の非凝集性変異体を作製するのに十分な様式で、例えば電荷を逆転させるかまたは中和するために、N末端残基の側鎖基上に出現する電荷を調整するN末端の変異によって、対応する野生型配列と異なるアミノ酸配列を有している。より具体的には、タンパク質のN末端近傍に位置している塩基性残基が置換され、例えばN末端近傍のLys残基およびArg残基が、負の電荷を有するかまたは中性の残基に置換される。N末端とは、N末端から約50残基以内、多くの場合にはN末端の約25残基以内、より多くの場合にはN末端の約15残基以内を意味し、多くの態様において、残基改変はN末端の約10残基以内に起こる。多くの態様において、関心対象の特定の残基には、2、3、4、5、6、7、8、9および10が含まれる。
【0036】
前述のように、本発明の核酸によってコードされる本発明のポリペプチドの非凝集性特質に加え、本発明のポリペプチドは、有色および/または蛍光性であることも特徴とする。色素および/または蛍光性タンパク質とは、有色である、即ち着色しているタンパク質を意味し、タンパク質は蛍光性であってもよいしまたは蛍光性でなくてもよく、例えば、励起波長の光での照射に応じて、低い、中程度の、または高い蛍光を示し得る。いずれにせよ、関心対象の本発明のタンパク質は、その有色の特徴、即ち色素性および/または蛍光性特徴が、タンパク質の単一の残基、より具体的には単一の残基の単一の側鎖からではなく、タンパク質の2個またはそれ以上の残基の相互作用から発生するものであるタンパク質である。そのため、本発明の蛍光性タンパク質には、それ自体が内在性蛍光団(intrinsic fluors)としてはたらく残基、即ちトリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニンからの蛍光のみを示すタンパク質は含まれない。そのため、本発明の蛍光性タンパク質は、その蛍光が、前記の単一残基以外のタンパク質内の何らかの構造から発生する、例えば2個またはそれ以上の残基の相互作用から発生するような蛍光性タンパク質である。
【0037】
多くの態様において、本発明の核酸によってコードされるポリペプチドは、天然に存在するタンパク質、多くの場合には刺胞動物種、例えば花虫綱種に存在するタンパク質の変異体である。ある種の態様において、核酸は、さらに、(1)非生物発光性種、多くの場合には非生物発光性刺胞動物種、例えば非生物発光性花虫綱種;または(2)ウミエラ目(Pennatulacean)種でない、即ちウミエラでない花虫綱種のいずれかに由来する野生型タンパク質(またはそれらの変異体)の非凝集性変異体をコードすることを特徴とする。そのため、これらの態様の核酸は、ウミエラ目種でない限り、例えばウミシイタケ(Renillan)種またはプチロサルカン(Ptilosarcan)種でない限り、生物発光性花虫綱種に由来するタンパク質の非凝集性変異体をコードし得る。ある種の態様において特に関心対象であるのは、以下の特定の野生型タンパク質(またはそれらの変異体)の非凝集性変異体である:(1)特許出願第10/006,922号に開示されるamFP485、cFP484、zFP506、zFP540、drFP585、dsFP484、asFP600、dgFP512、dmFP592(この開示は参照として本明細書に組み込まれる);(2)特許出願第09/976,673号に開示されるhcFP640(この開示は参照として本明細書に組み込まれる);(3)特許出願第60/255,533号に開示されるCgCP(この開示は参照として本明細書に組み込まれる);および(4)特許出願第60/332,980号に開示されたようなhcriGFP、zoanRFP、scubGFP1、scubGFP2、rfloRFP、rfloGFP、mcavRFP、mcavGFP、cgigGFP、afraGFP、rfloGFP2、mcavGFP2、mannFP(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)。関心対象の特定の非凝集性蛍光性ポリペプチドには、FP1-NA;FP3-NA;FP4-NA;FP6-NA;E5-NA;6/9Q-NA;7A-NA;mutM35-5 dimer-NA等が含まれるが、これらに制限はされず、これらの特定の非凝集性変異体は以下にさらに記載される。
【0038】
いくつかの態様において、本発明の核酸は、上記の特徴に加え、参照タンパク質、例えば対応する野生型タンパク質と比べて増加した等電点(pI)を示すポリペプチドをコードする。等電点は、当技術分野において既知の任意の方法を使用して決定され得る。いくつかの態様において、pIは、実施例に記載されたようにして計算された理論pIである。いくつかの態様において、本発明の変異タンパク質は、約5.50〜約7.00、約5.75〜約6.75、約6.00〜約6.50、または約6.10〜約6.40の範囲のpIを有している。
【0039】
特定の蛍光性タンパク質の蛍光輝度は、極大吸光係数を掛けた量子収率によって決定される。色素タンパク質の輝度は、極大吸光係数によって表され得る。いくつかの態様において、本発明の核酸によりコードされたポリペプチドは、参照タンパク質、例えば対応する野生型タンパク質と比較して、実質的に同じかまたはより大きな輝度を細胞において示し、例えば、変異体は、参照タンパク質より少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%。少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(または2倍)、少なくとも約150%、少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、またはそれ以上、高い輝度を細胞において有する。「細胞」は、原核細胞または真核細胞であり得る。輝度を測定する方法は、当技術分野において既知である。輝度は、視覚的スクリーニング、分光測光法、分光蛍光分析、蛍光顕微鏡検、蛍光標示式細胞分取(FACS)機等を含むが、これらに制限はされない任意の既知の方法を使用して測定され得る。いくつかの例において、細胞における本発明の変異タンパク質の輝度は、同じ細胞型の細胞、または同じ細胞株の別の細胞において、参照タンパク質の輝度と視覚的に比較され得る。
【0040】
核酸組成物とは、本発明の非凝集性色素/蛍光ポリペプチドをコードするオープン・リーディング・フレーム、即ち色素/蛍光タンパク質コード配列を有し、適切な条件の下で、本発明に係る非凝集性色素/蛍光タンパク質として発現され得るDNAの配列を含む組成物を意味する。この用語には、本発明の核酸と相同であるか、実質的に類似しているか、または同一である核酸も包含される。従って、本発明は、本発明のタンパク質をコードするコード配列のみならず、それらの相同体も提供する。
【0041】
前記の特定の核酸組成物に加え、前記の配列の相同体も関心対象である。ある態様において、相同体間の配列類似性は、少なくとも約20%、ときには少なくとも約25%であり、30%、35%、40%、50%、60%、70%、またはそれ以上であってもよく、75%、80%、85%、90%、および95%、もしくはそれ以上を含んでもよい。配列類似性は、保存モチーフ、コード領域、隣接領域等のような、より大きな配列のサブセットであってもよい参照配列に基づき計算される。参照配列は、通常は少なくとも約18nt長、より通常には少なくとも30nt長であり、比較される完全配列にまで及んでいてもよい。Altschulら(1990)、J.Mol.Bilo.215:403-10に記載されたBLAST(初期設定、即ちパラメータW=4およびT=17を使用)のような、配列分析のためのアルゴリズムが、当技術分野において既知である。ある種の態様において特に関心対象であるのは、配列番号:13;14;15;17;19;21;および23として同定された核酸と実質的に同じ長さの核酸であり(実質的に同じ長さとは、長さの差違が約20個数(number)%を超えないこと、通常は約10個数%を超えないこと、より通常には約5個数%を超えないことを意味する);かつ、核酸の全長にわたり、これらの配列のうちのいずれかに対して、少なくとも約90%、通常は少なくとも約95%、より一般的には少なくとも約99%の配列同一性を有しているものである。多くの態様において、核酸は、配列番号:14;15;17;19;21;および23の配列と実質的に類似している(即ち、同じである)か、または同一である配列を有している。実質的に類似している、とは、配列同一性が、一般に、少なくとも約60%、通常は少なくとも約75%、多くの場合には少なくとも約80%、85%、90%、または95%でさえあると考えられることを意味する。
【0042】
前記の核酸によってコードされるタンパク質をコードするが、遺伝暗号の縮重により前記の核酸と配列が異なっている核酸も、提供される。
【0043】
ストリンジェントな条件の下で前記の核酸とハイブリダイズする核酸も提供される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、50℃またはそれ以上および0.1×SSC(15mM塩化ナトリウム/1.5mMクエン酸ナトリウム)におけるハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のもう一つの例は、溶液:50%ホルムアミド、5×SSC(150 mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAにおける42℃での一晩のインキュベーション、それに続く約65℃での0.1×SSCにおけるフィルターの洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、上記の代表的な条件と少なくとも同等にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であって、上記の特定のストリンジェントな条件と比べて少なくとも約80%ストリンジェントである場合、典型的には少なくとも約90%ストリンジェントである場合、その条件は少なくとも同等にストリンジェントであると見なされる。その他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、当技術分野において既知であり、それらも本発明のこの特定の態様の核酸を同定するために利用され得る。
【0044】
本発明の非凝集性タンパク質の変異体をコードする核酸も提供される。変異核酸は、当技術分野において慣例的である周知の技術を使用して、無作為突然変異誘発または標的突然変異誘発により生成され得る。いくつかの態様において、相同体または変異体をコードする核酸によってコードされる色素タンパク質または蛍光性タンパク質は、野生型の蛍光性タンパク質と同じ蛍光特性を有している。その他の態様において、相同体または変異核酸は、本明細書により詳細に記載されるように、改変されたスペクトル特性を有する色素タンパク質または蛍光性タンパク質をコードする。
【0045】
以下に一層詳細に記載されるように、本発明の核酸は、染色体外維持のため、または宿主ゲノムへの組み込みのため、適切なベクターの中に存在し得る。
【0046】
本発明の核酸組成物は、本発明のタンパク質の全部または一部をコードし得る。二本鎖または一本鎖の断片は、従来の方法によるオリゴヌクレオチドの化学合成、制限酵素消化、PCR増幅等によってDNA配列より入手され得る。大抵、DNA断片は、少なくとも約15nt、通常は少なくとも約18ntまたは約25 ntであると考えられるが、少なくとも約50ntであってもよい。いくつかの態様において、本発明の核酸分子は、約100nt、約200nt、約300nt、約400nt、約500nt、約600nt、約700nt、または約720ntの長さであり得る。本発明の核酸は、本発明のタンパク質の断片または完全長タンパク質をコードすることができ、例えば、本発明の核酸は、約25aa、約50aa 、約75aa 、約100aa 、約125aa、約150aa、約200aa、約210aa、約220aa、約230aa、または約240aa、最大でタンパク質全体の長さまでのポリペプチドをコードし得る。
【0047】
本発明のポリヌクレオチドおよびその構築物が提供される。これらの分子は、当業者に既知の多数の異なるプロトコルにより、合成的に生成され得る。適切なポリヌクレオチド構築物は、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、(1989)Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NYに記載されている標準的な組み換えDNA技術を使用して、かつ米国保健社会福祉省(United States Dept. of HHS)、国立衛生研究所(National Institute of Health)(NIH)の組換えDNA研究に関するガイドライン(Guidelines for Recombinant DNA Research)に記載された現行の規制の下で、精製される。
【0048】
第二のタンパク質、例えば分解配列、シグナル・ペプチド、関心対象のタンパク質(即ち、研究されるタンパク質)等と融合した、本発明のタンパク質またはその断片の融合タンパク質をコードする核酸も、提供される。融合タンパク質は、本発明のポリペプチドまたはその断片、ならびに本発明のポリペプチドのN末端および/またはC末端とインフレームで(in-frame)融合した非非凝集性ポリペプチド(「融合パートナー」)を含み得る。融合パートナーには、その融合パートナーに特異的な抗体と結合することができるポリペプチド(例えば、エピトープ・タグ);抗体またはそれらの結合性断片;触媒機能を提供するか、または細胞応答を誘導するポリペプチド;リガンドもしくは受容体またはそれらの模倣体等が含まれるが、これらに制限はされない。そのような融合タンパク質において、融合パートナーは、一般に、融合タンパク質の本発明の非凝集性タンパク質部分と天然には会合しておらず、ある種の態様においては、刺胞動物タンパク質またはその誘導体/断片ではなく、即ち刺胞動物種には見出されない。
【0049】
増幅、タンパク質生産等を含む、多数の異なる適用のために使用され得る、ベクターに挿入された本発明の核酸を含む構築物も提供される。プラスミドを含むウイルス・ベクターおよび非ウイルス・ベクターが、調製され使用され得る。ベクターの選択は、増幅が望まれる細胞の型および増幅の目的に依存するであろう。ある種のベクターは、所望のDNA配列を増幅し、大量に作製するために有用である。培養細胞における発現に適しているベクターも存在する。さらに、完全な動物またはヒトの体内の細胞における移入および発現に適しているベクターも存在する。適切なベクターの選択は、十分に当技術分野の技術の範囲内にある。多くのそのようなベクターが、市販されている。構築物を調製するためには、部分的または完全長のポリヌクレオチドが、典型的にベクター内の切断された制限酵素部位へのDNAリガーゼによる付加によって、ベクターへと挿入される。または、所望のヌクレオチド配列は、インビボにおける相同的組み換えによって挿入され得る。典型的には、これは、ベクターの所望のヌクレオチド配列の両側に相同領域を付加することにより達成される。相同領域は、例えば、オリゴヌクレオチドのライゲーションによって、または相同領域および所望のヌクレオチド配列の一部の両方を含むプライマーを使用した、ポリメラーゼ連鎖反応によって追加される。
【0050】
適用の中でも、とりわけ本発明のタンパク質の合成において有益である発現カセットまたは発現系も提供される。発現のため、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる遺伝子産物は、例えば細菌、酵母、昆虫、両生動物、および哺乳動物の系を含む任意の便利な発現系において発現される。適当なベクターおよび宿主細胞は、米国特許第5,654,173号に記載されている。発現ベクターにおいて、本発明のポリヌクレオチドは、所望の発現特性を得るため、適宜制御配列と連結される。これらの制御配列には、プロモーター(センス鎖の5'末端、またはアンチセンス鎖の3'末端に付加される)、エンハンサー、ターミネーター、オペレーター、リプレッサー、およびインデューサーが含まれ得る。プロモーターは、制御型または構成型であってもよい。いくつかの状況においては、組織特異的プロモーターまたは発達段階特異的プロモーターのような、条件活性プロモーターを使用することが望まれ得る。これらは、ベクターとの連結に関する前記の技術を使用して、所望のヌクレオチド配列に連結される。当技術分野において既知の任意の技術が使用され得る。換言すると、発現ベクターは、誘導可能であるか、または構成型であってもよい、転写および翻訳の開始領域(コード領域が、転写開始領域の転写調節下で機能可能に連結されている)、ならびに転写および翻訳の終結領域を提供するであろう。これらの調節領域は、本発明の核酸が得られる本発明の種に在来するものであってもよいし、または外因的な起源に由来してもよい。
【0051】
発現ベクターは、一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するため、プロモーター配列の近傍に位置する便利な制限部位を有している。発現宿主において機能する選択可能マーカーが存在してもよい。発現ベクターは、とりわけ前記の融合タンパク質の生産のために使用され得る。
【0052】
転写開始領域、遺伝子またはその断片、および転写終結領域を含む発現カセットが調製され得る。特に関心対象であるのは、通常は少なくとも8アミノ酸長、より通常には少なくとも約15アミノ酸長〜約25アミノ酸長、最大で遺伝子の完全なオープン・リーディング・フレームの長さまでの、機能性のエピトープまたはドメインの発現を可能にする配列の使用である。DNAの導入の後、構築物を含有している細胞が選択可能なマーカーによって選択され、その細胞が増幅され、次いで発現のために使用され得る。
【0053】
前記の発現系は、発現の目的に依って、従来の方式に従い原核生物または真核生物を用いて利用され得る。タンパク質の大量生産のためには、大腸菌、枯草菌(B.subtilis)、出芽酵母(S.cerevisiae)のような単細胞生物、バキュロウイルス・ベクターと組み合わされた昆虫細胞、または脊椎動物のような高等生物の細胞、例えばCOS7細胞、HEK293、CHO、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞等が、発現宿主細胞として使用され得る。いくつかの状況においては、発現したタンパク質が、在来の折り畳みおよび翻訳後修飾の恩恵を得ると考えられる真核細胞において遺伝子を発現させることが望ましい。小さなペプチドは、実験室において合成することもできる。完全タンパク質配列のサブセットであるポリペプチドは、機能にとって重要なタンパク質の部分を同定し検討するために使用され得る。
【0054】
関心対象の特定の発現系には、細菌、酵母、昆虫細胞、および哺乳動物細胞に由来する発現系が含まれる。これらの各カテゴリーからの代表的な系を、以下に挙げる。
【0055】
細菌
細菌における発現系には、Changら、Nature(1978)275:615;Goeddelら、Nature(1979)281:544;Goeddelら、Nucleic Acids Res.(1980)8:4057;欧州特許第0 036,776号;米国特許第4,551,433号;DeBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1983)80:21-25;およびSiebenlistら、Cell(1980)20:269に記載されたものが含まれる。
【0056】
酵母
酵母における発現系には、Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1978)75:1929;Itoら、J.Bacteriol.(1983)153:163;Kurtzら、Mol.Cell.Biol.(1986)6:142;Kunzeら、J.Basic Microbiol.(1985)25:141;Gleesonら、J.Gen.Microbiol.(1986)132:3459;Roggenkampら、Mol.Gen.Genet.(1986)202:302;Dasら、J.Bacteriol.(1984)158:1165;De Louvencourtら、J.Bacteriol.(1983)154:737;Van den Bergら、Bio/Technology(1990)8:135;Kunzeら、J.Basic Microbiol.(1985)25:141;Creggら、Mol.Cell.Biol.(1985)5:3376;米国特許第4,837,148号および第4,929,555号;BeachおよびNurse、Nature(1981)300:706;Davidowら、Curr.Genet.(1985)10:380;Gaillardinら、Curr.Genet.(1985)10:49;Ballanceら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1983)112:284-289;Tilburnら、Gene(1983)26:205-221;Yeltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1984)81:1470-1474;KellyおよびHynes、EMBO J.(1985)4:475479;欧州特許第0 244,234号;および国際公開公報第91/00357号に記載されたものが含まれる。
【0057】
昆虫細胞
昆虫における異種遺伝子の発現は、米国特許第4,745,051号;The Molecular Biology Of Baculoviruses(1986)(W.Doerfler編)における、Friesenら、The Regulation of Baculovirus Gene Expression;欧州特許第0 127,839号;欧州特許第0 155,476号;およびVlakら、J.Gen.Virol.(1988)69:765-776;Millerら、Ann.Rev.Microbiol.(1988)42:177;Carbonellら、Gene(1988)73:409;Maedaら、Nature(1985)315:592-594;Lebacq-Verheydenら、Mol.Cell.Biol.(1988)8:3129;Smithら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1985)82:8844;Miyajimaら、Gene(1987)58:273;およびMartinら、DNA(1988)7:99に記載されたようにして達成される。多数のバキュロウイルス株および異型、ならびに対応する許容性昆虫宿主細胞が、Luckowら、Bio/Technology(1988)6:47-55、Millerら、Generic Engineering(1986)8:277-279、およびMaedaら、Nature(1985)315:592-594に記載されている。
【0058】
哺乳動物細胞
哺乳動物発現は、Dijkemaら、EMBO J.(1985)4:761、Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1982)79:6777、Boshartら、Cell(1985)41:521、および米国特許第4,399,216号に記載されたようにして達成される。哺乳動物発現のその他の特質は、HamおよびWallace,Meth.Enz.(1979)58:44、BarnesおよびSato、Anal.Biochem.(1980)102:255、米国特許第4,767,704号、第4,657,866号、第4,927,762号、第4,560,655号、国際公開公報第90/103430号、国際公開公報第87/00195号、米国再発行特許第30,985号に記載されたようにして促進される。
【0059】
上記の宿主細胞、またはその他の適切な宿主細胞もしくは宿主生物のいずれかが、本発明のポリヌクレオチドまたは核酸を複製、および/または発現させるために使用される場合、得られる複製した核酸、RNA、発現したタンパク質またはポリペプチドは、宿主細胞または宿主生物の産物として、本発明の範囲内に含まれる。産物は、当技術分野において既知の任意の適切な手段によって回収される。
【0060】
本発明の核酸は、コードされるタンパク質の配列、コードされるタンパク質の蛍光特性を含むコードされるタンパク質の特性等において、標的とする変化を発生させるための、当技術分野において既知の様々な方式で変異させられ得る。そのように変異させたDNA配列またはタンパク質産物は、通常は、本明細書に提供される配列と実質的に類似していると考えられ、例えば、少なくとも1個のヌクレオチドまたはアミノ酸がそれぞれ異なると考えられ、少なくとも2個、しかし最高約10個のヌクレオチドまたはアミノ酸が異なっていてもよい。配列の変化は、置換、挿入、欠失、またはそれらの組み合わせであり得る。欠失には、ドメインまたはエクソンの欠失、例えば10aa残基、20aa残基、50aa残基、75aa残基、100aa残基、150aa残基、またはそれ以上の範囲の欠失のような、より大きな変化をさらに含み得る。クローニングされた遺伝子のインビトロ突然変異誘発のための技術は、既知である。部位特異的突然変異誘発のためのプロトコルの例は、Gustinら(1993)、Biotechniques 14:22;Barany(1985)、Gene 37:111-23;Colicelliら(1985)、Mol.Gen.Genet.199:537-9;およびPrentkiら(1984)、Gene 29:303-13に見出され得る。部位特異的突然変異誘発のための方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSH Press 1989年、pp.15.3-15.108;Weinerら(1993)、Gene 126:35-41;Sayersら(1992)、Biotechniques 13:592-6;JonesおよびWinistorfer(1992)、Biotechniques 12:528-30;Bartonら(1990)、Nucleic Acids Res 18:7349-55;MarottiおよびTomich(1989)、Gene Anal.Tech.6:67-70;およびZhu(1989)、Anal Biochem 177:120-4に見出され得る。そのように変異させた核酸誘導体は、特定の色素/蛍光性タンパク質の構造−機能関係を研究するため、またはその機能もしくは制御に影響を与えるタンパク質の特性を改変するために使用され得る。
【0061】
本発明の核酸のヒト化型も、関心対象である。本明細書において使用されるように、「ヒト化」という用語は、ヒト細胞におけるタンパク質の発現のためのコドンを最適化するために、核酸配列に対してなされる変化をさす(Yangら、Nucleic Acids Research 24 (1996),4592-4593)。タンパク質のヒト化を記載している米国特許第5,795,737号(その開示は参照として本明細書に組み込まれる)も、参照されたい。
【0062】
タンパク質/ポリペプチド組成物
本発明の核酸によりコードされる非凝集性の色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質ならびにそれらの変異体、そしてそれらに関連するポリペプチド組成物も、本発明によって提供される。本明細書に使用されるように、ポリペプチド組成物という用語は、完全長タンパク質、およびそれらの一部または断片の両方をさす。この用語には、後に一層詳細に記載される、天然に存在するタンパク質と相同であるかまたは実質的に類似している、天然に存在するタンパク質の変形物、および天然に存在するタンパク質の変異体も含まれる。
【0063】
多くの態様において、本発明のタンパク質は、約300nm〜700nm、通常は約350nm〜650nm、より通常には約400nm〜600nmの範囲の吸光極大を有している。本発明のタンパク質が蛍光性タンパク質である場合、即ち、ある波長の光により励起された後、別の波長で光を放射することができる場合、本発明のタンパク質の放射スペクトルは、典型的には約400nm〜800nm、通常は約425nm〜775nm、より通常には約450nm〜750nmの範囲である一方、本発明のタンパク質の励起スペクトルは、典型的には約300nm〜700nm、通常は約350nm〜650nm、より通常には約400nm〜600nmの範囲である。本発明のタンパク質は、一般に約10,000〜50,000、通常は約15,000〜45,000の範囲の極大吸光係数を有している。本発明のタンパク質は、典型的には、約150〜300アミノ酸残基長、一般的には約200〜300アミノ酸残基長であり、一般には、約15kDa〜35kDa、通常は約17.5kDa〜32.5 kDaの範囲の分子量を有している。
【0064】
ある種の態様において、本発明のタンパク質は明るい(明るいとは、通常の方法(例えば、視覚的スクリーニング、分光測光法、分光蛍光分析、蛍光顕微鏡検、FACS機等)により、色素タンパク質およびそれらの蛍光性変異体が検出され得ることを意味する)。特定の蛍光性タンパク質の蛍光輝度は、極大吸光係数を掛けた量子収量により決定される。色素タンパク質の輝度は、その極大吸光係数によって表され得る。
【0065】
ある種の態様において、本発明のタンパク質は、宿主細胞における発現の後、迅速に折り畳まれる。迅速な折り畳みとは、タンパク質が、色素性または蛍光性を生じる三次構造に短時間で達することを意味する。これらの態様において、タンパク質は、一般に約3日を超えない期間、通常は約2日を超えない期間、より通常には約1日を超えない期間に折り畳まれる。
【0066】
関心対象の特定のタンパク質は、以下の特定の花虫綱種:アネモニア・マジャノ(Anemonia majano)、クラブラリア(Clavularia)種、ゾアンツス(Zoanthus)種、ゾアンツス(Zoanthus)種、ディスコソマ・ストリアタ(Discosoma striata)、ディスコソマ(Discosoma)種「赤色」、アネモニア・スルカタ(Anemonia sulcata)、ディスコソマ(Discosoma)種「緑色」、ディスコソマ(Discosoma)種「マゼンタ」に由来する色素/蛍光タンパク質(およびそれらの変異体)の非凝集性の変異ポリペプチドまたは異型である。関心対象の特定の非凝集性蛍光性ポリペプチドには、FP1-NA;FP3-NA;FP4-NA;FP6-NA;E5-NA;6/9Q-NA;7A-NA等が含まれるが、これらに制限はされない。
【0067】
前記で提供される特定の非凝集性ポリペプチドのアミノ酸配列と配列が異なる、相同体またはタンパク質(またはそれらの断片)も提供される。相同体とは、D.G.HigginsおよびP.M.Sharp、「Fast and Sensitive multiple Sequence Alignments on a Microcomputer」(1989)CABIOS、5:151-153に記載されているDNAstar(1998)クラスタル・アルゴリズムであるMegAlign(使用されるパラメータは、ktuple 1、ギャップ・ペナルティ(gap penalty)3、ウィンドウ(window)5、および保存対角(diagonals saved)5である)を使用して決定されるように、本発明のタンパク質と少なくとも約10%、通常は少なくとも約20%、より通常には少なくとも約30%、そして多くの態様においては少なくとも約35%、通常には少なくとも約40%、より通常には少なくとも約60%の、アミノ酸配列同一性を有するタンパク質を意味する。多くの態様において、関心対象の相同体は、はるかに高い配列同一性、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上を有する。
【0068】
前記で提供される特定のタンパク質の配列と実質的に同一のタンパク質も提供される(実質的に同一とは、タンパク質が、上記で提供される特定のタンパク質のうちの一つと少なくとも約60%、通常は少なくとも約65%、より通常には少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性を有することを意味し、いくつかの例において、同一性ははるかに高く、例えば75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上であり得る)。
【0069】
多くの態様において、本発明の相同体は、β-can折り畳みを含む、前記で提供される特定の配列に見出される構造的特質を有している。
【0070】
上記で具体的に記載されたタンパク質の変異体であるタンパク質も提供される。変異体は、野生型の(例えば、天然に存在する)タンパク質の生物学的特性を保持するか、または野生型のタンパク質と異なる生物学的特性を有してもよい。本発明のタンパク質の「生物学的特性」という用語には、吸光極大、放射極大、極大吸光係数、輝度(例えば、野生型タンパク質またはA.ビクトリア(victoria)由来の緑色蛍光タンパク質のような別の参照タンパク質と比較したもの)等のようなスペクトル特性;インビボおよび/またはインビトロの安定性(例えば、半減期)等が含まれるが、これらに制限はされない。変異体は、単一のアミノ酸変化、1個または複数のアミノ酸の欠失、N末端短縮、C末端短縮、挿入等を含む。
【0071】
変異体は、分子生物学の標準的な技術、例えば無作為突然変異誘発および標的突然変異誘発を使用して生成され得る。いくつかの変異体は、本明細書に記載されている。実施例に案内が提供されることを考慮すると、標準的な技術を使用して、当業者は極めて多様な追加の変異体を容易に製造し、生物学的特性が改変されているか否かを試験することができる。例えば、蛍光強度は、様々な励起波長で分光測光器を使用して測定され得る。
【0072】
上記で具体的に提供されたタンパク質の変異体も提供される。一般に、そのようなポリペプチドは、完全長タンパク質、ならびにその断片、特に生物学的に活性な断片および/または機能ドメインに対応する断片等を含み;本発明のポリペプチドの、その他のタンパク質またはその一部との融合体を含む、本発明の野生型タンパク質をコードする遺伝子のオープン・リーディング・フレーム(ORF)によってコードされるアミノ酸配列を含む。関心対象の断片は、典型的には少なくとも約10aa長、通常は少なくとも約50aa長であると考えられ、300aa長またはそれ以上であってもよいが、通常は約1000aa長は超えないと考えられる。ここで、断片は、少なくとも約10aa長、通常は少なくとも15aa長、多くの態様においては少なくとも50aa長の本発明のタンパク質と同一のアミノ酸範囲を有するであろう。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、約25aa長、約50aa長、約75aa長、約100aa長、約125aa長、約150aa長、約200aa長、約210aa長、約220aa長、約230aa長、または約240aa長であり、最大でタンパク質全体である。いくつかの態様において、タンパク質断片は、野生型タンパク質の生物学的特性の全部、または実質的に全部を保持している。
【0073】
本発明のタンパク質およびポリペプチドは、任意の便利なプロトコルを使用して、例えば前記のように、適当な宿主において関心対象のタンパク質をコードする組換え遺伝子または核酸のコード配列を発現させることにより、合成的に作製され得る。任意の便利なタンパク質精製手法を利用してもよく、適当なタンパク質精製方法論は、Guide to Protein Purification、(Deuthser編)(Academic Press、1990)に記載されている。例えば、最初の起源から溶解物を調製し、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティ・クロマトグラフィー等を使用して精製することができる。
【0074】
抗体組成物
本発明の非凝集性蛍光性タンパク質に特異的に結合する抗体も提供される。適当な抗体は、本発明のタンパク質の全部または一部を含むペプチドで宿主動物を免疫化することにより得られる。適当な宿主動物には、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ハムスター、ウサギ等が含まれる。免疫原には、完全なタンパク質、またはその断片および誘導体が含まれ得る。
【0075】
ポリクローナル抗体の調製のための第一段階は、約1%未満の汚染物質を含む、好ましくは実質的に純粋な形態で存在すると考えられる標的タンパク質による、宿主動物の免疫化である。免疫原には、完全な標的タンパク質、その断片または誘導体が含まれ得る。宿主動物の免疫応答を増加させるため、標的タンパク質は、アジュバントと組み合わせられてもよく、適当なアジュバントには、ミョウバン、デキストラン、硫酸塩、高分子重合体陰イオン、油水乳剤、例えばフロイントのアジュバント、フロイントの完全アジュバント等が含まれる。標的タンパク質は、合成担体タンパク質または合成抗原に抱合させられてもよい。多様な宿主が、ポリクローナル抗体を作製するために免疫化され得る。そのような宿主には、ウサギ、モルモット、げっ歯動物、例えばマウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等が含まれる。標的タンパク質は、通常は皮内に初回用量を投与された後、1回または複数回、通常は少なくとも2回の付加的な追加用量を投与される。免疫化の後、宿主から血液が収集され、続いて血球から血清の分離が行われる。得られた抗血清の中に存在するIgは、アンモニウム塩分画、DEAEクロマトグラフィー等のような既知の方法を使用してさらに分画され得る。
【0076】
モノクローナル抗体は、従来の技術によって作製される。一般に、免疫化された宿主動物の脾臓および/またはリンパ節が、プラズマ細胞の起源を提供する。プラズマ細胞は、ハイブリドーマ細胞を作製するため、骨髄腫細胞との融合によって不死化される。産生される抗体が所望の特異性を有することを確認するため、個々のハイブリドーマに由来する培養上清が、標準的な技術を使用してスクリーニングされる。ヒト・タンパク質に対するモノクローナル抗体の作製に適した動物には、マウス、ラット、ハムスター等が含まれる。マウス・タンパク質に対する抗体を生成させるための動物には、一般に、ハムスター、モルモット、ウサギ等が考えられる。抗体は、従来の技術、例えば不溶性支持体、プロテインAセファロース等と結合したタンパク質を使用したアフィニティ・クロマトグラフィーによって、ハイブリドーマ細胞上清または腹水より精製され得る。
【0077】
抗体は、通常の多量体構造ではなく、単鎖として作製されてもよい。単鎖抗体は、Jostら(1994)J.B.C.269:26267-73、およびその他に記載されている。重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域をコードするDNA配列が、グリシンおよび/またはセリンを含む、小さな中性アミノ酸を少なくとも約4アミノ酸コードするスペーサーへ連結される。この融合体によってコードされるタンパク質は、元の抗体の特異性および親和性を保持する機能性可変領域の組み立てを可能にする。
【0078】
ある種の態様において、ヒト化抗体も関心対象である。抗体をヒト化する方法は、当技術分野において既知である。ヒト化抗体は、遺伝子導入したヒト免疫グロブリン定常領域遺伝子を有する動物の産物であり得る(例えば、国際特許出願、国際公開公報第90/10077号および第90/04036号を参照のこと)。または、関心対象の抗体を組替えDNA技術によって設計して、CH1、CH2、CH3、ヒンジ・ドメイン、および/またはフレームワーク・ドメインを、対応するヒトの配列に置換してもよい(国際公開公報第92/02190号を参照のこと)。
【0079】
キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのIg cDNAの使用は、当技術分野において既知である(Liuら(1987)P.N.A.S.84:3439および(1987)J.Immunol.139:3521)。mRNAが、抗体を産生するハイブリドーマまたはその他の細胞から単離され、cDNAを作製するために使用される。関心対象のcDNAは、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応によって増幅され得る(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号)。または、ライブラリーが作成され、関心対象の配列を単離するためにスクリーニングされる。抗体の可変領域をコードするDNA配列は、次いで、ヒト定常領域配列と融合させられる。ヒト定常領域遺伝子の配列は、Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、N.I.H.刊行物第91-3242号に見出すことができる。ヒトC領域遺伝子は、既知のクローンより容易に入手可能である。アイソタイプの選択は、補体結合、または抗体依存性細胞毒性における活性のような所望のエフェクター機能によって導かれると考えられる。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域であるκまたはλのいずれかが使用され得る。次いで、キメラ・ヒト化抗体が、従来の方法によって発現させられる。
【0080】
Fv、F(ab')2、およびFabのような抗体断片は、完全なタンパク質の切断によって、例えばプロテアーゼまたは化学的切断によって調製され得る。または、切断型遺伝子が設計される。例えば、F(ab')2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ・ドメインをコードするDNA配列の後に、切断型分子を生じるための翻訳終止コドンを含むと考えられる。
【0081】
後に続くV領域セグメントのヒトC領域セグメントへの連結のために、有用な制限部位をJ領域へ導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計するために、HおよびLのJ領域のコンセンサス配列が使用され得る。C領域cDNAは、ヒト配列内の類似の位置に制限部位を置くための、部位特異的突然変異誘発により改変され得る。
【0082】
発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、YAC、EBV由来エピソーム等が含まれる。便利なベクターは、任意のVHまたはVL配列が容易に挿入され、かつ発現させられるよう設計された適切な制限部位を有する、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターにおいては、スプライシングが、通常は、挿入されたJ領域内のスプライス供与部位と、ヒトC領域の前に位置するスプライス受容部位との間に起こり、そしてヒトCHエクソン内に存在するスプライス領域においても起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流の在来の染色体部位において起こる。得られたキメラ抗体は、レトロウイルスLTR、例えばSV-40初期プロモーター(Okayamaら(1983) Mol.Cell.Bio.3:280)、ラウス肉腫ウィルスLTR(Gormanら(1982)P.N.A.S.79:6777)、およびモロニーマウス白血病ウィルスLTR(Grosschedlら(1985) Cell 41:885);在来のIgプロモーター等を含む、任意の強力なプロモーターに接続され得る。
【0083】
トランスジェニック
本発明の核酸は、トランスジェニック非ヒト植物もしくは動物、または細胞株における部位特異的遺伝子改変を生じるために使用され得る。本発明のトランスジェニック細胞は、導入遺伝子として存在する本発明による核酸を1個または複数含んでいる(この定義には、導入遺伝子を含むよう形質転換された親細胞およびそれらの子孫が含まれる)。多くの態様において、トランスジェニック細胞は、本発明に係る核酸を通常は保有または含有していない細胞である。トランスジェニック細胞が本発明の核酸を天然に含有している態様においては、その核酸は、細胞内の天然の位置ではない位置に存在すると考えられ、即ち細胞のゲノム物質内に非天然の位置で組み込まれているであろう。内因性遺伝子座を改変したトランスジェニック動物は、相同的組み換えを介して作製され得る。または、核酸構築物は、ゲノム内へ無作為に組み込まれる。安定的な組み込みのためのベクターには、プラスミド、レトロウイルスおよびその他の動物ウイルス、YAC等が含まれる。
【0084】
本発明のトランスジェニック生物には、内因性遺伝子の発現が、排除されない場合には少なくとも減少している、内因性ノックアウトである細胞および多細胞生物、例えば植物および動物が含まれる。関心対象のトランスジェニック生物には、タンパク質またはその異型が、それが通常発現しない細胞または組織において発現しており、かつ/またはそのような細胞または組織において通常は存在しないレベルで発現している、細胞および多細胞生物、例えば植物および動物も含まれる。
【0085】
相同的組替えのためのDNA構築物は、所望の(1個以上の)遺伝学的改変を有しており、標的遺伝子座と相同な領域を含む、本発明の遺伝子の少なくとも一部を含むと考えられる。無作為組み込みのためのDNA構築物には、組み換えを媒介するための相同領域が含まれている必要はない。都合のよいことには、ポジティブ選択およびネガティブ選択のためのマーカーが含まれる。相同的組替えを介して標的遺伝子を改変した細胞を産生するための方法は、当技術分野において既知である。哺乳動物細胞をトランスフェクトするための様々な技術については、Keownら(1990)、Meth.Enzymol.185:527-537を参照のこと。
【0086】
胚性幹(ES)細胞については、ES細胞株が使用されてもよいし、または胚細胞が、例えばマウス、ラット、モルモット等の宿主から新鮮に得られてもよい。そのような細胞は、適切な繊維芽細胞フィーダー層の上で増殖させられるか、または白血病阻止因子(LIF)の存在下で増殖させられる。ESまたは胚細胞が形質転換された場合、それらはトランスジェニック動物を作製するために使用され得る。形質転換の後、細胞は、適切な培地中でフィーダー層上に播かれる。構築物を含有している細胞は、選択培地を利用することにより検出され得る。コロニーが増殖するのに十分な時間の後、それらは選び取られ、構築物の相同的組み換えまたは組み込みの発生に関して分析される。次いで、陽性であるコロニーが、胚操作および胚盤胞注入のために使用され得る。胚盤胞は、4〜6週齢の過排卵雌より得られる。ES細胞がトリプシン処理され、改変した細胞が胚盤胞の胞胚腔へと注入される。注入の後、胚盤胞が偽妊娠雌の各子宮角に戻される。次いで、雌を満期に到達させ、得られた子孫を構築物に関してスクリーニングする。発現型の異なる胚盤胞および遺伝学的に改変した細胞を提供することにより、キメラ子孫は容易に検出され得る。
【0087】
キメラ動物は、改変遺伝子の存在に関してスクリーニングされ、改変を有している雄および雌がホモ接合性子孫を作製するために交配される。遺伝子改変が、発達中のある時点で致死を引き起こす場合には、組織または器官が、同種異系もしくは類遺伝子性の移植片もしくは移植物として、またはインビトロ培養物中に維持され得る。トランスジェニック動物は、実験動物、家畜等の任意の非ヒト哺乳類であり得る。トランスジェニック動物は、機能研究、薬物スクリーニング等において使用され得る。トランスジェニック動物の使用の代表的な例には、下記のものが含まれる。
【0088】
トランスジェニック植物は、類似の様式で作製され得る。トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物体を調製する方法は、米国特許第5,767,367号;第5,750,870号;第5,739,409号;第5,689,049号;第5,689,045号;第5,674,731号;第5,656,466号;第5,633,155号;第5,629,470号;第5,595,896号;第5,576,198号;第5,538,879号;第5,484,956号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されている。トランスジェニック植物体を作製する方法は、Plant Biochemistry and Molecular Biology(LeaおよびLeegood編、John Wiley&Sons)(1993)pp.275-295にも概説されている。簡潔には、植物種の性質に依って適当な植物細胞または組織が収穫される。そのため、ある種の例においては、プロトプラストが単離されると考えられ、そのようなプロトプラストは多様な異なる植物組織、例えば葉、胚軸、根等より単離され得る。プロトプラスト単離のためには、収穫された細胞が、細胞壁を除去するためセルラーゼの存在下でインキュベートされる(ここで、正確なインキュベーション条件は、細胞の由来した植物および/または組織の型に依って変動する)。次いで、ふるい分けおよび遠心分離により、得られた細胞砕片から、得られたプロトプラストが分離される。プロトプラストを使用する代わりに、体細胞を含む胚形成外植片が、トランスジェニック宿主の調製のために使用されてもよい。細胞または組織の収穫の後、関心対象の外因性DNAが、植物細胞へ導入され、そのような導入には、多様な異なる技術が利用可能である。単離されたプロトプラストを得ることにより、多価陽イオン、例えばPEGまたはPLO存在下における、関心対象の外因性コード配列を含む、裸のDNA、例えばプラスミドとのプロトプラストのインキュベーション;および関心対象の外因性配列を含む裸のDNAの存在下での、プロトプラストの電気穿孔を含む、DNA媒介性の遺伝子移入プロトコルを介した導入の機会が生じる。次いで、外因性DNAの取り込みに成功したプロトプラストを選択し、カルスへ成長させ、適切な量および比率の刺激因子、例えばオーキシンおよびサイトカイニンとの接触を通じて、最終的にはトランスジェニック植物体へと成長させる。胚形成外植片を用いる場合、標的体細胞に外因性DNAを導入する便利な方法は、粒子加速プロトコルまたは「遺伝子銃」プロトコルの使用を介したものである。次いで、得られた外植片を、キメラ植物体へと成長させ、交雑させ、トランスジェニック子孫を得る。前記の裸のDNAアプローチの代わりに、トランスジェニック植物を作製するもう一つの便利な方法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)により媒介される形質転換である。アグロバクテリウムにより媒介される形質転換では、外因性DNAを含む共組み込み(co-integrative)またはバイナリー・ベクターを調製し、次いで、適切なアグロバクテリウム株、例えばA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)へと導入する。次いで、得られた細菌を、調製したプロトプラストまたは組織外植片、例えばリーフディスクと共にインキュベートし、カルスを作製する。次いで、カルスを選択条件下で成長させ、選択し、根および苗条の成長を誘導するための成長培地に供し、最終的にはトランスジェニック植物体を作製する。
【0089】
有用性
本発明の非凝集性色素タンパク質およびその蛍光性変異体は、多様な異なる適用において有益であるが、適用は、タンパク質が色素タンパク質であるかまたは蛍光性タンパク質であるかに依って必然的に異なる。これらの各タンパク質型の代表的な用途を以下に記載するが、以下に記載された用途は、単なる代表的なものであり、本発明のタンパク質の使用を下記のものに制限するものでは決してない。
【0090】
色素タンパク質
本発明の色素タンパク質は、多様な異なる適用において有益である。一つの関心対象の適用は、問題としている特定の組成物に色または色素を付与することができる着色料としての本発明のタンパク質の使用である。ある種の態様において特に関心対象であるのは、無毒の色素タンパク質である。本発明の色素タンパク質は、問題とする多様な異なる組成物に取り込まれ得る(問題とする組成物の代表には、食物組成物、医薬品、化粧品、生物、例えば動物および植物等が含まれる)。着色料または色素として使用される場合、所望の色または色素を付与するために十分な量の色素タンパク質が、問題とする組成物に取り込まれる。色素タンパク質は、任意の便利なプロトコルを使用して、問題とする組成物に取り込まれてもよく、利用される特定のプロトコルは、少なくとも部分的には、着色すべき問題とする組成物の性質に必然的に依存すると考えられる。利用され得るプロトコルには、混和、拡散、摩擦、噴霧、注入、および入れ墨等が含まれるが、これらに制限はされない。
【0091】
色素タンパク質は、分析物検出アッセイ法、例えば関心対象の生物学的分析物に関するアッセイ法における標識としても有益であり得る。例えば、色素タンパク質は、分析物に特異的な抗体またはその結合性断片を含む付加体に取り込まれ、その後、米国特許第4,302,536号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されるように、複合試料中の関心対象の分析物に関する免疫アッセイ法において利用され得る。抗体またはその結合性断片の代わりに、本発明の色素タンパク質またはその色素生産性断片は、当業者には容易に明らかであるように、関心対象の分析物と特異的に結合するリガンド、またはその他の成分(moiety)、増殖因子、ホルモン等と抱合されてもよい。
【0092】
さらなる他の態様において、本発明の色素タンパク質は、組替えDNA適用、例えば前記のようなトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物の作製において、選択可能マーカーとして使用され得る。そのため、成功プロトコルまたは非成功プロトコルのいずれかのために、選択可能マーカーとして本発明の色素タンパク質の発現を利用するため、特定のトランスジェニック作製プロトコルを設計することが可能である。従って、特定のプロセスによって作製されたトランスジェニック生物の発現型における、本発明の色素タンパク質の色の出現は、特定の生物が、多くの場合、生物における導入遺伝子の発現を提供する様式で組み込まれる、関心対象の導入遺伝子の保有に成功したことを示すために使用され得る。選択可能マーカーとして使用される場合、本発明の色素タンパク質をコードする核酸は、より詳細に上記で記載されたトランスジェニック産生プロセスにおいて利用され得る。本発明のタンパク質が選択可能マーカーとして利用され得る特定の関心対象のトランスジェニック生物には、トランスジェニック植物、トランスジェニック動物、トランスジェニック細菌、トランスジェニック真菌等が含まれる。
【0093】
さらなる他の態様において、本発明の色素タンパク質(および蛍光性タンパク質)は、国際公開公報第00/46233号に記載されたタンパク質の用途と類似の様式で、日焼け止め、選択的フィルター等として有益である。
【0094】
蛍光性タンパク質
本発明の蛍光性タンパク質(および前記の本発明のその他の構成要素)は、以下のものを含むがこれらに制限はされない、多様な異なる適用において有益である。第一の関心対象の適用は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の適用における本発明のタンパク質の使用である。これらの適用において、本発明のタンパク質は、第二の蛍光性タンパク質または染料、例えばMatzら、Nature Biotechnology(1999年10月)17:969-973に記載されたような蛍光性タンパク質、例えば米国特許第6,066,476号;第6,020,192号;第5,985,577号;第5,976,796号;第5,968,750号;第5,968,738号;第5,958,713号;第5,919,445号;第5,874,304号(これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されたようなエクオリア・ビクトリア(Aequoria victoria)由来の緑色蛍光タンパク質またはその蛍光性変異体、その他の蛍光染料、例えばクマリンおよびその誘導体、例えば7-アミノ-4-メチルクマリン、アミノクマリン、ボディピー(Bodipy)FLのようなボディピー(bodipy)染料、カスケードブルー(cascade blue)、フルオレセインおよびその誘導体、例えばフルオレセイン・イソチオシアネート、およびオレゴングリーン(Oregon green)、ローダミン染料、例えばテキサスレッド、テトラメチルローダミン、エオシン、およびエリスロシン、シアニン染料、例えばCy3およびCy5、ランタニド・イオンの大環状キレート、例えば量子染料(quantum dye)等、化学発光染料、例えば米国特許第5,843,746号;第5,700,673号;第5,674,713号;第5,618,722号;第5,418,155号;第5,330,906号;第5,229,285号;第5,221,623号;第5,182,202号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されたものを含むルシフェラーゼと組み合わされて、供与体および/または受容体として機能する。本発明の蛍光性タンパク質を利用したFRETアッセイ法が使用され得る特定の例には、多数の異なる事象のバイオセンサーとしての、タンパク質−タンパク質相互作用、例えば哺乳動物ツー・ハイブリッド系、転写因子の二量体化、膜タンパク質の多量体化、多重タンパク質の複合体形成等の検出(この場合、ペプチドまたはタンパク質が、本発明の蛍光性タンパク質を含むFRET蛍光組合せと共有結合的に連結され、連結されるペプチドまたはタンパク質は、例えばカスパーゼ媒介切断などのためのプロテアーゼ特異的基質であるか、FRETを増加または減少させるシグナル、例えばPKA制御ドメイン(cAMPセンサー)、リン酸化(例えば、リンカー内にリン酸化部位が存在するか、またはリンカーが別のタンパク質のリン酸化/脱リン酸化ドメインとの結合特異性を有するか、またはリンカーがCa2+結合ドメインを有する場合)の受容によりコンフォメーション変化を起こすリンカーである)が含まれるが、これらに制限はされない。本発明のタンパク質が有益である代表的な蛍光共鳴エネルギー転移またはFRETの適用には、米国特許第6,008,373号;第5,998,146号;第5,981,200号;第5,945,526号;第5,945,283号;第5,911,952号;第5,869,255号;第5,866,336号;第5,863,727号;第5,728,528号;第5,707,804号;第5,688,648号;第5,439,797号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されたものが含まれるが、これらに制限はされない。
【0095】
本発明の蛍光性タンパク質が有益であるもう一つの適用は、BRET(生物発光共鳴エネルギー転移)である。BRETは、生物発光供与体から蛍光受容体タンパク質へのエネルギー転移に基づくタンパク質−タンパク質相互作用のアッセイ法である。BRETシグナルは、供与体によって放射された光の量に対する、受容体によって放射された光の量によって測定される。これらの二つの値の比率は、2個のタンパク質が接近するにつれ増加する。BRETアッセイ法は、文献中に充分に記載されている。例えば、米国特許第6,020,192号;第5,968,750号;および第5,874,304号;ならびにXuら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:151-156を参照のこと。BRETアッセイ法は、生物発光供与体タンパク質および蛍光受容体タンパク質を、独立に2個の異なる生物学的パートナーと遺伝学的に融合させ、パートナーA-生物発光供与体融合体およびパートナーB-蛍光性受容体融合体を作成することにより実行され得る。例えばリガンドまたは被験化合物によって調整される、融合タンパク質のパートナー部分間の相互作用の変化が、融合タンパク質の生物発光部分、および蛍光部分により放射された光の比率の変化によってモニタリングされ得る。この適用において、本発明のタンパク質は、供与体タンパク質および/または受容体タンパク質として機能する。BRETアッセイ法は、FRETと同様に前述の多くのアッセイ法において使用され得る。
【0096】
本発明の蛍光性タンパク質は、原核細胞および真核細胞におけるバイオセンサーとして、例えばCa2+イオン指示薬として;pH指示薬として、リン酸化指示薬として、その他のイオン、例えばマグネシウム・イオン、ナトリウム・イオン、カリウム・イオン、塩素イオン、およびハロゲン・イオンの指示薬としても有益である。例えば、Caイオンの検出に関して、EF-ハンド・モチーフを含有しているタンパク質は、Ca2+との結合により、細胞質ゾルから膜へと移動することが既知である。これらのタンパク質は、タンパク質の他の領域との疎水性相互作用によって分子内に埋め込まれているミリストイル基を含有している。Ca2+の結合は、ミリストイル基を露出させるコンフォメーション変化を誘導し、次いでミリストイル基が脂質二重層への挿入に利用可能となる(「Ca2+-ミリストイル・スイッチ」と呼ばれる)。そのようなEF-ハンド含有タンパク質のフルオレセント・プロテイン(FP)との融合体は、共焦点顕微鏡検によって細胞質ゾルから原形質膜への移動をモニタリングすることにより、細胞内 Ca2+の指示薬となり得る。この系において使用するのに適したEF-ハンド・タンパク質には、リカバリン(recoverin)(1-3)、カルシニューリンB、トロポニンC、ビシニン(visinin)、ニューロカルシン(neurocalcin)、カルモジュリン、パルブアルブミン等が含まれるが、これらに制限はされない。pHについては、ヒサクトフィリン(hisactophilins)に基づく系が使用され得る。ヒサクトフィリンは、ジクチオステリウム(Dictyostelium)に存在することが既知である、ミリストイル化されたヒスチジンリッチなタンパク質である。それらのアクチンおよび酸性脂質との結合は、細胞質pH変動の範囲内で鮮明にpH依存的である。生細胞において、膜結合は、ヒサクトフィリンとアクチン・フィラメントとの相互作用より優先されるようである。pH6.5においては、それらは、原形質膜および核へと移行する。対照的に、pH7.5においては、それらは、細胞質空間全体に均一に分布する。この分布の変化は可逆的であり、分子表面上のループ内に露出したヒスチジン・クラスターに起因する。細胞質pH変動の範囲内での細胞内分布の復帰は、ヒスチジン残基の6.5というpKと合致する。細胞分布は、タンパク質のミリストイル化には依存しない。FP(フルオレセント・プロテイン)をヒサクトフィリンと融合させることによって、融合タンパク質の細胞内分布は、レーザー走査型共焦点顕微鏡検、または標準的な蛍光顕微鏡検によって追跡され得る。定量的蛍光分析は、細胞のライン・スキャン(line scans)(レーザー走査型共焦点顕微鏡検)またはその他の電子データ分析(例えば、メタモルフ(metamorph)ソフトウェア(Universal Imaging社)を使用)を実行し、細胞集団において収集されたデータの平均をとることにより実施され得る。細胞質ゾルから原形質膜へのヒサクトフィリン-FPの実質的なpH依存性の再分布は、1分〜2分以内に起こり、5分〜10分後には定常状態レベルに達する。逆反応は同様のタイムスケールで起こる。そのため、類似の様式で働くヒサクトフィリン-蛍光性タンパク質融合タンパク質は、哺乳動物生細胞におけるリアルタイムの細胞質ゾルpH変化をモニタリングするために使用され得る。そのような方法は、高処理量の(high throughput)適用、例えば増殖因子受容体活性化(例えば、上皮増殖因子または血小板由来増殖因子)、走化刺激/細胞運動の結果としてのpH変化の測定において、セカンドメッセンジャーとしての細胞内pH変化の検出において、pH操作実験における細胞内pHのモニタリング等において有益である。PKC活性の検出のため、レポーター系は、MARCKS(ミリストイル化アラニンリッチCキナーゼ基質)と呼ばれる分子がPKC基質であるという事実を活用する。それは、ミリストイル化、および負の電荷を有する原形質膜と静電相互作用によって結合する、正の電荷を有するアミノ酸の領域(ED-ドメイン)によって原形質膜につながれている。PKC活性化により、PKCによってED-ドメインはリン酸化され、それにより負に荷電し、静電的反発の結果として、MARCKSが原形質膜から細胞質へと移動する(「ミリストイル-静電スイッチ」と呼ばれる)。MARCKSのミリストイル化モチーフからED-ドメインまでの範囲にわたるMARCKSのN末端の、本発明の蛍光性タンパク質との融合体は、PKC活性の検出系となる。PKCによってリン酸化されると、融合タンパク質は、原形質膜から細胞質ゾルへと移動する。この移動は、標準的な蛍光顕微鏡検または共焦点顕微鏡検によって、例えばセロミクス(Cellomics)技術、またはその他のハイ・コンテンツ・スクリーニング系(High Content Screening systems)(例えば、Universal Imaging社/Becton Dickinson)を使用して追跡される。上記のレポーター系は、ハイ・コンテンツ・スクリーニングにおける適用、例えばPKC阻害剤のスクリーニングにおける適用、およびこのシグナル伝達経路を妨害する可能性のある試薬に関する多くのスクリーニング・シナリオにおける、PKC活性の指示薬としての適用を有している。蛍光性タンパク質をバイオセンサーとして使用する方法には、米国特許第972,638号;第5,824,485号、および第5,650,135号(ならびに、これらの中に引用された参照)に記載されたものも含まれ、これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【0097】
本発明の蛍光性タンパク質は、顕微鏡による画像化、および電子分析を使用することによる、蛍光性レポート基を発現している細胞のアレイの、自動化スクリーニングを含む適用においても有益である。スクリーニングは、薬物発見のため、そして機能ゲノム科学の分野において使用され得る:例えば、本発明のタンパク質は、多細胞の再編成および遊走における変化、例えば内皮細胞による多細胞細管の形成(血管形成)、フルオロブロック・インサート・システム(Fluoroblok Insert System)(Becton Dickinson社)を介した細胞の遊走、創傷治癒、神経突起伸長等を検出するため、全細胞のマーカーとして使用され得る(この場合、タンパク質は、細胞活性、刺激によるキナーゼおよび転写因子の移動(プロテインキナーゼC、プロテインキナーゼA、転写因子NFkB、およびNFATなど);サイクリンA、サイクリンB1、およびサイクリンEなどの細胞周期タンパク質、切断された基質のその後の運動を伴うプロテアーゼ切断、リン脂質などのシグナル伝達の指標としての細胞内位置の変化の、小胞体、ゴルジ装置、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、核、核小体、原形質膜、ヒストン、エンドソーム、リソソーム、微小管、アクチンなどの細胞内構造のマーカーをハイ・コンテンツ・スクリーニングのための道具として用いる(他の蛍光性融合タンパク質と、これらの局在マーカーとの共局在を、細胞内蛍光性融合タンパク質の運動の指標として用いる、またはマーカー単独として用いる)検出等を可能にするペプチド(例えば、ターゲティング配列)およびタンパク質と融合されたマーカーとして使用される)。本発明の蛍光性タンパク質が有益である細胞アレイの自動化スクリーニングを含む適用の例には、米国特許第5,989,835号;ならびに国際公開公報第0017624号;第00/26408号;第00/17643号;および第00/03246号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)が含まれる。
【0098】
本発明の蛍光性タンパク質は、ハイ・スループット・スクリーニング・アッセイ法においても有益である。本発明の蛍光性タンパク質は、24時間を超える半減期を有する安定なタンパク質である。薬物発見のための転写レポーターとして使用され得る、より短い半減期を有する本発明の蛍光性タンパク質の不安定化型も提供される。例えば、本発明によるタンパク質は、より短い半減期を有するタンパク質に由来する推定タンパク質分解シグナル配列、例えばマウス・オルニチン・デカルボキシラーゼ遺伝子由来のPEST配列、マウス・サイクリンB1破壊ボックス、およびユビキチン等と融合させられ得る。不安定化タンパク質およびそれを作製するために利用され得るベクターの記載については、米国特許第6,130,313号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。シグナル伝達経路、例えばAP1、NFAT、NFkB、Smad、STAT、p53、E2F、Rb、myc、CRE、ER、GR、およびTRE等のプロモーターは、薬物スクリーニングのための本発明の蛍光性タンパク質の不安定化型を使用して検出され得る。
【0099】
本発明のタンパク質は、例えば本発明のタンパク質を特定のドメイン、例えばPKCγCa結合ドメイン、PKCγDAG結合ドメイン、SH2ドメイン、およびSH3ドメイン等と融合させることによって、セカンドメッセンジャー検出剤として使用され得る。
【0100】
本発明のタンパク質の分泌型を、例えば分泌型先導配列を本発明のタンパク質と融合させ、本発明のタンパク質の分泌型を構築することによって、調製することができ、そして、多様な異なる適用において使用され得る。
【0101】
本発明のタンパク質は、蛍光標示式細胞分取適用においても有益である。そのような適用においては、本発明の蛍光性タンパク質が、細胞集団に印をつけるための標識として使用され、次いで、得られた標識細胞集団が、当技術分野において既知である、蛍光標示式細胞分取機により分取される。FACS法は、米国特許第5,968,738号および第5,804,387号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されている。
【0102】
本発明のタンパク質は、動物(例えば、トランスジェニック動物)におけるインビボのマーカーとしても有益である。例えば、本発明のタンパク質の発現を、組織特異的プロモーターによって駆動することができ、そのような方法は、遺伝子治療の研究において、例えば適用の中でも特に導入遺伝子発現の効率の試験において有益である。本発明のタンパク質のこのクラスの適用を例示する、トランスジェニック動物における蛍光性タンパク質の代表的な適用は、国際公開公報第00/02997号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0103】
本発明のタンパク質のさらなる適用には、細胞または動物への注入の後の、定量的測定(蛍光およびタンパク質)のための較正におけるマーカーとしての適用;細胞生存率をモニタリングするための酸素バイオセンサー機器における、マーカーまたはレポーターとしての適用;動物、ペット、玩具、食物等のためのマーカーまたは標識としての適用等が含まれる。
【0104】
本発明の蛍光性タンパク質は、プロテアーゼ切断アッセイ法においても有益である。例えば、切断不活化蛍光アッセイ法が、本発明のタンパク質を使用して開発され得る。この場合、本発明のタンパク質は、タンパク質の蛍光性を破壊することなく、プロテアーゼ特異的切断配列を含むよう改造される。活性化されたプロテアーゼにより蛍光性タンパク質が切断されると、機能性発色団の破壊により、蛍光は鮮明に減少するであろう。または、切断によって活性化された蛍光が、本発明のタンパク質を使用して現像され得る。この場合、本発明のタンパク質は、発色団の近傍/または内部に付加的なスペーサー配列を含有するよう設計される。機能性発色団の部分がスペーサーによって分割されるため、この異型の蛍光活性は有意に減少するであろう。スペーサーは、2個の同一のプロテアーゼ特異的切断部位によって構成されるであろう。活性化されたプロテアーゼによる分解によって、スペーサーが切り出され、蛍光性タンパク質の2個の残存「サブユニット」が、機能性の蛍光性タンパク質が生成するよう再び組み立てられ得る。多様な異なる型のプロテアーゼ、例えばカスパーゼ等に関するアッセイ法において、上記の型の適用の両方が開発され得る。
【0105】
本発明のタンパク質は、生体膜中のリン脂質組成を決定するためのアッセイ法においても、使用され得る。例えば、特定のリン脂質ラフト(raft)における膜タンパク質の共局在をも可能にする、生体膜内のリン脂質分布のパターンを特定/可視化するための、特定のリン脂質との結合を可能にする本発明のタンパク質の融合タンパク質(または本発明のタンパク質のその他の任意の種類の共有結合的修飾または非共有結合的修飾)が、本発明のタンパク質を用いて達成され得る。例えば、GRP1のPHドメインは、ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)に対する高い親和性を有しているが、PIP2に対する親和性は有していない。そのため、GRP1のPHドメインと本発明のタンパク質との間の融合タンパク質が、生体膜内のPIP3リッチな区域を特異的に標識するために構築され得る。
【0106】
さらにもう一つの本発明のタンパク質の適用は、蛍光性タンパク質の加齢に付随する、ある蛍光色のもう一つの色への(例えば、緑色から赤色への)スイッチが、遺伝子発現、例えば発達遺伝子発現、細胞周期依存性遺伝子発現、概日リズム特異的遺伝子発現等の活性化/不活化を決定するために使用される、蛍光タイマーとしての適用である。
【0107】
本発明の非凝集性蛍光性タンパク質は、米国特許出願第60/261,448号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載される、細胞標識適用においても使用され得る。例えば、本発明の非凝集性タンパク質、および細胞表面分子と結合する特異的結合パートナーのメンバー(例えば、細胞表面受容体と結合するリガンド;細胞表面タンパク質と結合する抗体;細胞表面タンパク質と結合する逆受容体(counterreceptor)等)を含む融合タンパク質は、細胞の混合物から1個または複数の細胞集団を同定および/または分画および/または単離するために使用され得る。いくつかの態様において、融合タンパク質は多量体化し、これらの態様のうちのいくつかにおいては、細胞標識適用は多量体化特質を活用する。従って、いくつかの態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む固有蛍光性多量体非凝集性融合タンパク質複合体、および細胞標識法における融合タンパク質複合体の使用のための方法を提供する。
【0108】
一つの非制限的な例において、MHC分子の抗原結合部分と本発明のポリペプチドとを含む融合タンパク質が、標準的な分子生物学技術を使用して製造され得る。そのような融合タンパク質は、多量体化するが、凝集はしないと予想される。融合タンパク質の非凝集性構成要素の多量体化特性は、多量体融合タンパク質複合体が形成されるよう、融合タンパク質のMHC部分を寄せ集めるよう機能するであろう。また、多量体融合タンパク質複合体は、ペプチド抗原を負荷され得る。ペプチド抗原が負荷されたそのような融合タンパク質は、同じペプチド抗原に特異的なT細胞受容体を表面上に保持する、Tリンパ球を同定するために使用され得る。融合タンパク質複合体のペプチド抗原およびMHCペプチド提示ドメインは、いずれも変動し得るため、固有蛍光性多量体複合体は、一般に、抗原受容体の抗原(およびMHC)の特異性に基づき、ほぼ無限に多様なTリンパ球を蛍光標識するために使用され得る。
【0109】
従って、抗原受容体の特異性に基づきTリンパ球を検出可能に標識(染色)するために、本発明のタンパク質を使用するための方法を提供することが、本発明のもう一つの局面である。
【0110】
第一の態様において、方法は、複合体のTリンパ球との検出可能な結合を許容するのに十分な時間、および条件の下で、標識すべきTリンパ球を、本発明のポリペプチドを含む固有蛍光性多量体非凝集性融合タンパク質複合体(複合体は、Tリンパ球の抗原受容体に特異的なペプチド抗原およびMHCペプチド提示ドメインを有している)と接触させることを含む。
【0111】
これに関して、リンパ球表面上で複合体が抗原受容体(TCR)と検出可能な結合を達成するのに十分なTリンパ球に対する結合活性を、全体として複合体に付与できるように、複合体のMHCコンテキストにおける、抗原受容体(TCR)のペプチド抗原に対する親和性が十分高い場合に、そのTリンパ球はペプチド抗原に特異的であると言われる。
【0112】
この定義によると、表面上に単一または複数のTCR種を有している単一Tリンパ球を、複数の(典型的には密接に関連している)ペプチド抗原に特異的であると言うことは不可能ではない。そのような場合、TCRは、典型的には、ペプチドのうちの1個に対して、他のものに対するよりも大きな親和性を有するであろう。多くの場合、Tリンパ球がこの定義によって特異的であると言われる(1個以上の)ペプチド抗原は、Tリンパ球によるサイトカイン発現を刺激することもできるであろう;しかしながら、MHC四量体に関する本発明の多量体複合体の利用可能性は、機能的に応答性のTリンパ球の標識および同定に制限されないため、そのような機能的応答は、必要とはされない。
【0113】
そのような標識にとって妥当な条件および時間は、便利なことに、MHC四量体またはMHC/Ig融合体によりTリンパ球を染色するために当技術分野において使用されているものから適合化され得る。
【0114】
例えば、Altmanら、Science 274:94-96(1996)は、およそ0.5mg/mlの四量体の濃度における、1時間、4℃でのインキュベーションによって、MHC四量体を用いて200,000個の細胞障害性リンパ球を染色しており;NIAIDテトラマー・ファシリティ(Tetramer facility)(http://www.niaid.nih.gov/reposit/tetramer/genguide.htm)は、現在、高温のために使用されるインキュベーション時間を減少させ、シグナル対ノイズ比を最適化するために、4℃、室温、そして37℃のそれぞれで、15分〜60分間染色することを推奨している。Gretenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:7568-7573(1998) は、1×106個の末梢血単核細胞を、4°で、3μgのMHCクラスI MHC/Igキメラを用いて染色している。
【0115】
従って、Tリンパ球は、便利なことに、4℃〜37℃の間の温度において、15分〜60分のインキュベーションを使用して、約104個、105個、106個、またはさらには107個の末梢血単核細胞を標識するため、少なくとも約0.1μg、典型的には少なくとも約0.25μg、より典型的には少なくとも約1μg、2μg、3μg、4μg、またはさらには少なくとも5μgの多量体を使用して、本発明の方法において、固有蛍光性多量体複合体を用いて標識され得る。
【0116】
これらの広範な例示的なガイドラインから開始し、MHC四量体、MHC/Ig融合体、および蛍光団抱合抗体を使用したTリンパ球の標識に熟練している者であれば、容易に、最適な標識条件を決定することができよう。使用すべき多量体試薬の量、ならびに染色の温度および時間長に影響する変数には、Tリンパ球に関するもの(複合体のペプチド抗原(およびMHC)に特異的な、試料中のTリンパ球の数、試料中の細胞の総数、細胞試料の型(例えば、全血、赤血球溶解後の全血、フィコール精製末梢血単核細胞(PBMC)画分))、ならびに標識複合体の化学量論および分子量、ペプチド抗原の正体(identity)、ならびに複合体に含まれているMHC対立遺伝子の選択を含む、多量体複合体に関するものが含まれる。
【0117】
標識条件を最適化するために、単一種の多量体複合体を使用し、標識条件(例えば、温度、時間長、複合体濃度、細胞数、細胞濃度、細胞純度)を変動させ、標識すべき細胞試料の平行アリコート(parallel aliquots)を使用した標識反応が容易に実行され得る。陰性対照には、多量体を使用しない標識反応、ペプチドを欠く多量体を使用した標識反応、ならびに/またはMHCペプチド提示ドメイン、および/もしくは細胞試料中のTリンパ球により認識されないと考えられるペプチド抗原を含有している多量体を使用した、標識反応が含まれ得る。各アリコートについての標識効率は、蛍光性複合体と結合する試料中のTリンパ球の、フローサイトメトリーによる計数によって、容易に決定され得る。フローサイトメトリー分野において周知のように、標識された細胞は、未結合の複合体を細胞および培地から除去するため、フローサイトメトリーの前に洗浄され得る。これらの技術および手段は全て、フローサイトメトリー分野において慣例であり、技術者によって慣例的に実行されている。
【0118】
典型的には、標識すべきTリンパ球は、不均一な細胞試料の中に存在し、標識の目標は、この集団内の抗原特異的Tリンパ球を検出し、そして多くの場合には、計数することである。
【0119】
従って、もう一つの局面において、本発明は、細胞試料中の選択された抗原に特異的なTリンパ球を検出するための方法を提供する。その方法は、複合体の、選択された抗原およびMHCに特異的な、試料中のTリンパ球との検出可能な結合を、許容するのに十分な時間および条件の下で、試料を、本発明に係る固有蛍光性多量体複合体(複合体のペプチド抗原は、選択された抗原であり、複合体のMHC提示ドメインは、検出することが望まれるTリンパ球が拘束されると考えられるものである)と接触させること;ならびに次いでそれらに結合した複合体の蛍光により試料中の特異的Tリンパ球を検出することを含む。
【0120】
細胞と結合した蛍光の検出は、典型的には、FACSVantage(商標)、FACSVantage(商標)SE、またはFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA,USA)のようなフローサイトメーターを使用して実行される。励起のために選択されるレーザーは、多量体複合体、および試料中の同時に検出されることが望まれる、任意の付加的な蛍光団の吸光スペクトルによって決定される。例えば、多量体複合体が内在性DsRedのスペクトル特徴を有している場合には(例えば、融合タンパク質サブユニットが全て内在性DsRed GFP様発色団を有しているようなホモ四量体)、488nm系列を有する標準的なアルゴン・イオン・レーザーが励起のために使用され得る。検出に関して、フィルター・セットおよび検出器の型は、試料中の検出することが望まれる多量体複合体、および任意の付加的な蛍光団の放射スペクトルによって選択されるであろう。例えば、多量体複合体が、約583nmにおいて放射極大を有する内在性DsRedのスペクトル特徴を有している場合、複合体からの蛍光放射は、PEセットアップを使用して、FL2チャンネルにおいて検出され得る。
【0121】
または、細胞と結合した複合体の蛍光は、IMAGN2000(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA,USA)のような微量蛍光光度計を使用して検出され得る。血球の特徴決定への微量蛍光光度計の適用、およびそのための条件は、特にSeghatchianら、Transfus.Sci. 22(1-2):77-9(2000);Glencrossら、Clin.Lab.Haematol.21(6):391-5(1999);およびReadら、J.Hematother.6(4):291-301(1997)に記載されている。
【0122】
または、細胞と結合した複合体の蛍光は、レーザー走査型サイトメーター(Compucyte Corp.,Cambridge,MA,USA)を使用して検出され得る。
【0123】
細胞と結合した多量体複合体の蛍光は、Skinnerら、「Cutting edge:In situ tetramer staining of antigen-specific T cells in tissues」、J.Immunol.165(2):613-7(2000)に記載されたのと本質的に同様の条件を使用して、タッチ調製物(touch prep)から、サイトスピン調製物(cytospin prep)から、または組織試料からであっても、顕微鏡スライド上で直接検出され得る。
【0124】
Tリンパ球含有試料は、抗凝固収集チューブ(例えば、EDTA含有またはヘパリン含有Vacutainer(商標)チューブ、Becton Dickinson Vacutainer Systems,Franklin Lakes,NJ,USA)へと直接採取された全血試料、典型的には末梢静脈血標本であり得る。
【0125】
有利なことには、Tリンパ球含有試料は、特にChangらの米国特許第4,902,613号および第4,654,312号に記載されたような赤血球(RBC)溶解剤により検出前に処理された全血試料であってもよい(溶解剤は、当技術分野において周知であり、多数の供給元(FACS(商標)Lysing Solution、Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA,USA;Cal-Lyse(商標)Lysing Solution、Caltag Labs,Burlingame,CA,USA;No-Wash Lysing Solution、Beckman Coulter,Inc.,Fullerton,CA)より市販されている)。試料は、選択的にRBC溶解の後かつ検出の前に洗浄されてもよい。
【0126】
本発明の方法によってTリンパ球が検出されることが望まれる試料は、末梢血画分、有利なことには単核細胞(PBMC)画分であってもよい。PBMCは、フィコール・パック(Ficoll-Paque)(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ,USA)による遠心分離、および細胞調製血液収集チューブ(Vacutainer(商標)CPT(商標)Cell Preparation Tube、Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ,USA)における直接遠心分離を含む、周知の当技術分野において認められている技術に従い調製され得る。
【0127】
試料は、有利なことには、Tリンパ球が濃縮された試料、例えば(クローン細胞株もしくは多重クローン培養物のような)培養リンパ球、リンパ球浸潤物を含む組織から抽出もしくは溶出されたリンパ球(例えば、腫瘍生検材料から抽出され、選択的に培養物中で増幅された腫瘍浸潤リンパ球)、リンパ液もしくは胸腺から採取されたリンパ球、または一回目の蛍光標示式細胞分取の後に得られたリンパ球であってもよい。
【0128】
もう一つの態様において、その方法は、さらに、そのようにして検出された抗原特異的Tリンパ球を計数することを含む。計数は、便利なことには、全細胞数、アッセイされた細胞(全細胞、単核細胞、もしくはTリンパ球)の中の抗原特異的Tリンパ球の割合、またはT細胞サブセットの中の抗原特異的リンパ球の割合の形態で表され得る。
【0129】
これらの測定規準のうちのいくつかについては、試料中全体のTリンパ球の総数、または試料中全体の特定のサブセットのTリンパ球の総数を定量することがさらに必要である。
【0130】
従って、他の態様において、本発明の方法は、試料を、少なくとも1個の蛍光団抱合抗体(抗体は、汎T抗体およびT細胞サブセッティング(subsetting)抗体からなる群より選択される)と接触させること、および次いで多量体蛍光複合体および蛍光団抱合抗体からの蛍光を同時に検出することをさらに含む。
【0131】
この態様において有用に使用される抗体には、CD3、CD4、CD8、CD45RO、CD45RA、およびCD27に特異的な抗体が含まれる。理解されるように、抗体は、典型的には、Tリンパ球が検出されている分類学的な種(ヒト、マウス、ラット等)によって発現されるようなマーカーに特異的であるか、またはそれらと交差反応性であろう。
【0132】
フローサイトメトリー分野において周知のように、汎Tおよび/またはTリンパ球サブセッティング抗体は、トリガリング(triggering)データ取得、ライブ・ゲーティング(live gating)、またはゲーティング予備取得データのうちのいずれかまたは全部に使用され得る。
【0133】
多くの試料において、抗原特異的Tリンパ球の存在数は少ないため、本発明の方法においては、多数の事象を取得することが、多くの場合に有利である。さらに、Tリンパ球活性化抗原に特異的な抗体からの蛍光に対するトリガリングまたはゲーティングにより、抗原特異的Tリンパ球を検出するためのシグナル対ノイズ比を改善することが可能である場合もある。
【0134】
従って、もう一つの態様において、方法は、試料を、T細胞活性化抗原に特異的な少なくとも1個の蛍光団抱合抗体と接触させること、および次いで多量体蛍光性複合体および蛍光団抱合抗体からの蛍光を同時に検出することをさらに含む。抗体は、有用なことには、CD69、CD25、CD71、およびMHCクラスII(ヒトTリンパ球の標識には、HLA-DR)からなる群より選択される活性化抗原に特異的なものであり得る。
【0135】
有利なことには、本発明の方法において使用される抗体は、蛍光団、典型的には、その放射が、固有蛍光性多量体T細胞標識複合体、および本方法において同時に使用されるその他の蛍光団の放射から、フローサイトメトリーによって区別可能であるような蛍光団と、直接、予め抱合されるであろう。蛍光団は、有用なことには、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、ペリディニン(peridinin)葉緑素タンパク質(PerCP)、アロフィコシアニン(APC)、テキサスレッド、Alexa Fluor 488(Molecular Probes,Inc.,Eugene Or.)、ならびにタンデム蛍光団PerCP-CY5.5、PE-Cy5、PE-Cy7、およびAPC-Cy7であり得る。抗体は、有用なことには、蛍光団で標識されたストレプトアビジンを使用した第二段階検出を許容する、ビオチンと抱合されてもよい。
【0136】
抗原特異的Tリンパ球を検出し計数するための本発明の方法は、MHC四量体およびMHC/Igキメラの使用のみならず、限界希釈アッセイ法、ELISPOT、および細胞内サイトカイン発現のフローサイトメトリー検出のようなその他の機能アッセイ法も含む、従来技術の方法と同じ目的のために使用され得る(Waldropら、J.Clin.Invest.99(7):1739-50(1997))。従って、方法は、例えば感染に対する、ワクチンに対する、および自己免疫における、CD4+およびCD8+T細胞の応答を評価するために使用され得る。
【0137】
抗原特異的Tリンパ球の検出は、使用される装置に依って、直接的または間接的に分取と連結され、従って、本発明の他の局面において、選択された抗原に特異的な Tリンパ球に関して試料を濃縮するかまたは減少させるための方法を提供する。
【0138】
一般に、本方法は、複合体の、選択された抗原およびMHCに特異的な、試料中のTリンパ球との検出可能な結合を許容するのに十分な時間、および条件の下で、試料を、本発明の固有蛍光性多量体複合体(複合体のペプチド抗原は選択された抗原であり、複合体のMHC提示ドメインは、濃縮または減少が望まれるTリンパ球が拘束されると考えられるものである)と接触させることを含む。結合の後、標識されたTリンパ球は、それらと結合した複合体の蛍光に基づき、濃縮されるかまたは減少させられる。
【0139】
そのような方法は、便利なことには、蛍光標示式細胞分取器を使用して実行される(本発明の多量体複合体からの蛍光に、少なくとも部分的に基づく分取は、細胞が除去される試料を減少させ、細胞が置かれるアリコートを濃縮する)。
【0140】
しかしながら、蛍光標示式細胞分取以外の手段を使用して、細胞を濃縮するかまたは減少させるために本発明の多量体を使用することも可能である。
【0141】
例えば、TCR結合複合体の超常磁性粒子とのさらなる抱合により、蛍光測定的にではなく磁気的に、多量体で特異的に染色されたTリンパ球を分離することができる。これは、例えば融合タンパク質のエピトープに特異的な抗体を使用して行われ得る(例えば、DsRedがGFP様発色団および/または多量体化ドメインに寄与する場合、抗体はClontech Labs、Palo Alto、CA、USAより市販されているDsRed特異的抗体であり得る)。
【0142】
もう一つの例として、TCR結合複合体をビオチンとさらに抱合させ、続いてアビジン親和性基質を使用することにより、蛍光ではなくビオチン/アビジン親和性相互作用を使用して、多量体で特異的に染色されたTリンパ球を分離することができる。この多量体複合体のさらなる標識は、融合タンパク質のエピトープに特異的なビオチン抱合抗体を使用して間接的に行われ得る。または、化学的に、またはBirA基質ペプチドを複合体(典型的には融合タンパク質)へと設計する場合には酵素的に、多量体自体を予めビオチンと抱合させてもよい。
【0143】
本発明の方法に従い抗原特異的T細胞が濃縮された試料は、抗原特異的T細胞の、抗原提示細胞、細胞障害性標的、B細胞、またはその他の免疫系の細胞要素との特異的相互作用の研究のため、インビトロで使用され得る。本発明の方法に従い抗原特異的T細胞が濃縮された試料は、そのような相互作用を改変するために、インビトロで使用されてもよい。例えば、Dal Portoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6671-6675(1993)を参照されたい。
【0144】
本発明の方法に従い抗原特異的T細胞が濃縮された試料は、腫瘍免疫療法のようなインビボの治療的介入にも使用され得る。例えば、Oelkeら、Clin.Cancer Res.6(5):1997-2005(2000)を参照されたい。
【0145】
前記の本発明の抗体は、その他の蛍光性タンパク質からの本発明のタンパク質の区別を含む、多数の適用においても有益である。
【0146】
キット
典型的には、本発明のタンパク質を作成するための要素、例えば本発明のタンパク質のコーディング領域を含むベクターを含む構築物を含む、前記の適用のうちの一つ以上の実施において使用するためのキットも、本発明によって提供される。本発明のキット成分は、典型的には、適当な容器内に、適当な保存媒体、例えば緩衝溶液の中に存在する。本発明のキットには、提供されたタンパク質に対する抗体も存在し得る。ある種の態様において、キットは、各々が本発明のタンパク質をコードする複数の異なるベクター(この場合、ベクターは、異なる環境における、かつ/または異なる条件下での発現、例えば構成性発現のために設計されており、かつ哺乳動物細胞における発現のための強力なプロモーターを含む)、プロモーターのカスタム(custom)挿入およびテーラード(tailored)発現のためのマルチプル・クローニング・サイトを有するプロモーターレス・ベクター等を含む。
【0147】
上記の成分に加え、本発明のキットは、本発明の方法を実施するための説明をさらに含むであろう。これらの説明は、多様な形態で本発明のキット内に存在することができ、1個以上の形態がキット内に存在してもよい。これらの説明が存在し得る一つの形態は、キットの包装材の中、パッケージ・インサートの中等の適当な媒体または基体の上に印刷された情報(例えば情報が印刷された1枚以上の紙)としてである。さらにもう一つの手段は、情報が記録されたコンピューター読取可能媒体、例えばディスク、CD等であろう。さらにもう一つの存在し得る手段は、遠隔地において情報にアクセスするためにインターネットを介して使用され得る、ウェブサイト・アドレスである。任意の便利な手段が、キット内に存在し得る。
【0148】
以下の実施例は、制限のためではなく、例示のために提示されるものである。
【0149】
実験
I.親凝集性野生型花虫綱タンパク質およびその変異体の配列
以下の表は、本発明の9個の特定の野生型花虫綱タンパク質の特性を要約したものである。
【0150】
(表1)
【0151】
II.突然変異誘発
適切な標的置換を含有しているプライマーを用いたPCRにより、部位特異的突然変異誘発を実行した。全ての変異体を、pQE30ベクター(Qiagen)のBamHI制限部位とHindIII制限部位と間にクローニングした。組換えタンパク質は、最初のMetの代わりに配列「MRHHHHHHGS」を含有するよう6×ヒスチジンタグ化した。大腸菌における一晩の発現の後、蛍光性タンパク質を、タロン・メタル・アフィニティ・レジン(TALON Metal Affinity Resin)(CLONTECH)を使用して精製した。SDS-PAGE分析により、タンパク質が少なくとも95%純粋であることが明らかとなった。
【0152】
より詳細には、突然変異誘発は、オーバーラップ伸長法(Ho,S.N.,Hunt,H.D.,Horton,R.M.,Pullen,J.K.,Pease,L.R. Site-directed mutagenesis by overlap extension using the polymerase chain reaction.(Gene 1989,77,51-59)によって実行した。簡潔には、FPコーディング領域の2個のオーバーラップ断片を増幅した。「順方向クローニング」プライマーおよび「逆方向突然変異誘発」プライマーを、5'末断片増幅のために使用し、「順方向突然変異誘発」プライマーおよび「逆方向クローニング」プライマーを、3'末断片増幅のために使用した。PCRは、アドバンテージ(Advantage)(登録商標)2 ポリメラーゼミックス(Polymerase Mix)(CLONTECH)を使用し、100μMの各dNTP、0.2μMの各プライマー、および1ngのプラスミドDNAが添加された1×製造業者の緩衝液25μl(最終容量)中で実施した。サイクル・パラメーターは、95℃10秒、65℃30秒、72℃30秒に設定した。20サイクルを、PTC-200 MJ Researchサーモサイクラーを使用して完了した。初期(野生型)タンパク質をコードするプラスミドを除去するため、5'断片および3'断片を1×TAE緩衝液中で2%低融点アガロース・ゲルより切り出した。DNA溶液を排液させるために、ゲル片を3回の凍結−解凍サイクルに供した。以下のように、全長cDNAを得るため、5'断片および3'断片を組み合わせた。等量の5'断片溶液、3'断片溶液、ならびにアドバンテージ(登録商標)2 ポリメラーゼミックス、緩衝液、およびdNTPを含有している3×PCR混合物を共に混合し、2〜3サイクルの95℃20秒、65℃30分、72℃30秒に供した。次いで、反応物を10倍に希釈し、希釈された試料1μlを、順方向クローニング・プライマーおよび逆方向クローニング・プライマー(前記の5'断片および3'断片の増幅のためのもの)を用いたPCRのための鋳型として使用した。結果として、(1個以上の)標的置換を有する全長コーディング領域を含有しているクローニング用(ready-for-cloning)断片が製造された。
【0153】
変異cDNAをBamHIおよびHindIIIで消化し(クローニング・プライマーはこれらのエンドヌクレアーゼのための部位を含有している)、次いでBamHIおよびHindIIIで消化されたpQE30(Qiagen)へとクローニングした。組換えタンパク質は、N末端に6×Hisタグを含有していた。
【0154】
選択された大腸菌クローンを、光学密度(OD)が0.6になるまで、50ml中37℃で増殖させた。その時点で、組換えFPの発現を0.2 mM IPTGで誘導した。次いで、培養物を一晩インキュベートした。翌日、細胞を遠心分離により採集し、緩衝液(20 mMトリス-HCl、pH8.0;100 mM NaCl)に再懸濁させ、超音波処理により破壊した。タロン・メタル・アフィニティ・レジン(CLONTECH)を使用して可溶性画分から蛍光性タンパク質を精製した。タンパク質は、SDS-PAGEによると少なくとも95%純粋であった。
【0155】
III.製造された変異体
表2は、上記のプロトコルを使用して製造された代表的な非凝集性変異体に関する詳細を提供する。
【0156】
(表2)
【0157】
図14は、前記のようなある種の非凝集性変異体のアライメントを提供している。
【0158】
IV. 代表的な非凝集性変異体の特徴づけ
A.材料および方法
理論pI
理論pIは、「expasy.pku.edu.cn/tools/protoparam」の前に「http://」、後に「.html」を付けることによって作製され、Appel R.D.、Bairoch A.、Hochstrasser D.F. A new generation of information retrieval tools for biologists:the example of the ExPASy WWW server. Trends Biochem.Sci.1994、19:258-260に記載されているウェブサイト上で利用可能な、ProtParamプログラムを使用して計算した。
【0159】
タンパク質凝集を評価する方法
1.「偽非変性」タンパク質電気泳動。変異タンパク質の凝集特性の迅速な評価のため、本発明者らは、「偽非変性」タンパク質電気泳動と名付けた単純な方法を使用した。この方法は、通常のドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル(SDS-PAG)への非煮沸タンパク質試料の適用に基づく。これらの条件において、FPは蛍光性のままである。さらに、これらの条件は、適用されたタンパク質の超分子構造を維持する。高分子量の凝集したタンパク質は、ゲルの一番上に残り、四量体タンパク質は>100 kDのバンドとして移動する。
【0160】
2.光散乱。この方法は、凝集したタンパク質の粒子による溶液中での光散乱に基づく。そのような粒子のサイズおよび量が大きいほど、光散乱は大きくなる。光散乱は、光の波長に依存するため(短波の方が散乱がはるかに顕著である)、凝集は吸光スペクトルの一般的な傾斜をもたらす。一般に、より短い波長(凝集していないタンパク質の吸光が最小となる)における吸光の、より長い波長(凝集していないタンパク質の吸光が極大となる)における吸光に対する比率により、凝集を評価することが好ましい。例えば、E57の場合には、吸光(400nm)/吸光(566nm)のような吸光の比率を測定することにより、凝集を評価することができる。凝集していないタンパク質の試料においては、この比率はゼロに近いはずである。
【0161】
変異体を、凝集を阻止しない同じ緩衝条件の下で、1mg/mlの濃度で試験した。
【0162】
3.哺乳動物細胞株における輝度。特定の変異体を、C1ベクター(CLONTECH)を使用して、哺乳動物細胞株フェニックス(Phoenix)へと一過性トランスフェクトした。凝集は、蛍光顕微鏡を使用して、FPを発現している細胞の数の視覚的な検査によって評価した。
【0163】
4.インビボの凝集の正確な動力学を生存細胞において測定することは困難であるため、この過程は不明瞭である。おそらく、より明るい細胞が一般的にはより顕著なFP凝集物を示すため、凝集はFP濃度に依存する。にも関わらず、シグナルが可視となるやいなや、低蛍光性細胞ですら、凝集像が観察され得る。これは、凝集にとって十分なFP濃度の閾値が極めて低いことを示している。
【0164】
精製されたFPの凝集は、さらにインビトロで観察される。例えば、色または蛍光の損失なしに、ほぼ全ての花虫綱FPが溶液(PBS)から部分的に沈殿する。精製されたFPの凝集を可視化するため、本発明者らは、非加熱タンパク質試料の不連続SDS-PAGEに基づく「偽非変性」タンパク質電気泳動を使用した(Baird,G.S.,Zacharias,D.A.およびTsien,R.Y.(2000) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97,11984-11989)。これらの条件の下で、FPは、蛍光特性のみならず超分子構造をも保持し:高分子量の凝集したタンパク質はゲルの一番上に残り、オリゴマーは高分子量のバンドとして移動する。
【0165】
B.結果
赤色蛍光drFP583が、突然変異誘発に供された最初のタンパク質であった。E57と名付けられた、DsRed(哺乳動物細胞における発現のために最適化された、改変されたコドン使用を有するdrFP583の市販されている型)の改良された変異体を、親遺伝子として使用した(表2)。置換R2A、K5E、K9T(異なる組み合わせ)を含有するE57の変異体を製造した。大腸菌における発現および精製の後、これらのタンパク質を、偽非変性PAGE(上記参照)により分析した。全ての変異体が、親E57と比較して低いレベルの凝集を示し、R2A置換は、この結果に最も強い影響を及ぼすようであった(示していない)。凝集を示さず(図15)、励起−放射極大、蛍光輝度、および成熟速度に関してはE57と極めて類似していた、これらの3個の置換(R2A、K5E、およびK9T)全てを含有しているE57-NAと呼ばれる変異体を、最適なタンパク質として選択した。
【0166】
E57-NAは、哺乳動物細胞において優れた蛍光イメージを示した(図16)。大部分の細胞において、核および核小体が明白に可視であり、細胞の境界および過程が明確であった。対照的に、E57発現細胞の蛍光は不明瞭であり、可視の細胞内構造は存在しなかった。蛍光シグナルの境界は、しばしば、細胞の境界および過程と一致しなかったため、細胞は丸形に見えた。従って、インビボおよびインビトロ両方の試験によって、E57-NAタンパク質が低凝集性であることが確認された。重要なこととして、他の研究室におけるE57-NAの予備試験により、細胞株(B.Angres,Clontech,Palo-Alto,CA,USA、個人的通信)、アフリカツメガエル(Xenopus)胚(A.Zaraisky,IBCh,Moscow,Russia、個人的通信)、および植物(A.Touraev,IMG,Vienna Biocenter,Vienna,Austria、個人的通信)における発現の際の、DsRedおよびE57の両方と比較して、このタンパク質の大きく減少した毒性が示された。現在、E57-NAはDsRed2としてClontechより市販されている。
【0167】
最近、経時的に色を変化させるため「Timer」と命名された、関心対象のDsRedの変異体が、記載された。このタンパク質の非凝集性型を製造するため、本発明者らは、前述の3個の置換を利用した。親Timerと事実上同じ成熟特性を所有しているが、偽非変性PAGEでは凝集物を形成しない(図15)、新規の変異体Timer-NAを製造した(表2)。哺乳動物細胞において、TimerとTimer-NAとの間の差異は、E57とE57-NAとの間の差異と類似していた(図16)。
【0168】
次に標的としたFPは、616nmにピークを有する赤色にシフトした蛍光を示すds/drFP616(6/9Q)であった。このタンパク質は、2個の赤色FP(dsFP593およびdrFP583)の組替え(shuffling)の後、無作為突然変異誘発を行うことにより製造された。しかしながら、ds/drFP616は極めて高い凝集を示した。E57およびTimer(図14、表2)と同様の、ds/drFP616のN末端領域の5位および9位の2個のLys残基の変異は、偽非変性PAGEにおける凝集したタンパク質量の有意な減少をもたらしたが、Lys変異体ds/drFP616-K5E/K9Tには依然として残存する凝集が検出された(示していない)。タンパク質産生大腸菌クローンのスクリーニングの後、偽非変性PAGEにおける凝集の完全な欠如を示すものを選択した(図15)。配列分析により、このクローンが、タンパク質のN末端領域に2個の付加的な変異(クローニング手法の間に偶然欠失したSer-2およびCys-3)を含有していることが明らかとなった。真核細胞において発現させると、ds/drFP616-NA(6/9QNA)と名付けられたその変異体は、E57-NAおよびTimer-NAと類似する、蛍光イメージの有意な改善を示した。親ds/drFP616の、明るいが、完全に構造化されていないブロット様のイメージとは対照的に、ds/drFP616-NAは、より均一に核および細胞質に分布していた(図16)。
【0169】
その後、無作為突然変異誘発により先に製造された改良変異体(表2)に基づき、前記の突然変異誘発戦略を、異なる色の4個のFP:緑色のzFP506タンパク質、黄色のzFP538タンパク質、赤色のasFP595タンパク質、および緑がかった青色(cyan)のamFP486タンパク質に適用した。大腸菌において発現させると、変異タンパク質は、対応する野生型タンパク質(未公開のデータ)と比較して、より大きな輝度、およびより速く、より完全なタンパク質折り畳みを示した。しかしながら、導入された置換は、これらのFPの凝集特性には影響を及ぼさなかった。凝集傾向を減少させる試みにおいて、タンパク質のN末端近傍の全てのリジンを変異させた(図14、表2)。得られた二次タンパク質変異体のインビトロ分析では、凝集が確認されなかった(図15)。さらに、4個の非凝集性変異体(zFP506-N66M-NA、zFP538-M129V-NA、amFP486-K68M-NA、およびasFP595-M35-5-NA)は、E57-NA、Timer-NA、およびds/drFP616-NAと類似した、哺乳動物細胞における蛍光イメージの明白な改善を示した(図16、amFP486およびasFP595に関するイメージは示していない)。
【0170】
C.結論
要約すると、花虫綱FPのN末端近傍の塩基性残基は、タンパク質凝集物の形成において顕著な役割を果たすと結論付けられる。タンパク質凝集に対する単一アミノ酸置換の有意な効果の例は、多数、立証されている。同様に、FP内の1〜3個の残基の置換は、タンパク質可溶性の相当の増加をもたらした。
【0171】
V.付加的な特徴決定
【0172】
(表3)改変されたpIを有するE57に基づく変異体の特性
aこの方法は、非煮沸タンパク質試料のSDS-PAGEへの適用に基づく。これらの条件では、FPは蛍光性であり、電気泳動の条件は超分子構造を保存する。
b比率:(吸光(400nm)−吸光(650nm)/(吸光(566nm)−吸光(650nm))
【0173】
上記の考察および結果より、本発明が、重要な新規変異蛍光性タンパク質、およびそれらをコードする核酸を提供することが明らかである(本発明の変異体は、参照発色/蛍光タンパク質と比較した場合、改善された特質、即ち非凝集性を有し、かつ本発明のタンパク質および核酸は、多様な異なる適用において有益である)。そのため、本発明は、当技術分野にとっての有意な貢献である。
【0174】
この明細書中に引用された全ての刊行物および特許出願は、あたかも個々の刊行物または特許出願が、各々参照として組み込まれることが特別にかつ個々に示されたかのごとく、参照として本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日より前の開示に関するものであり、本発明が、先行発明のためそのような出版物に先行する権利を有することの承認として解釈されるべきではない。
【0175】
本発明を、理解の明確のため、例示および具体例によってある程度詳細に記載したが、本発明の教示を考慮することにより、添付の請求請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、ある種の変化および改変が、本発明に対してなされ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】野生型amFP486(NFP-1)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:01および02)を提供する。
【図2】野生型zFP506(NFP-3)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:03および04)を提供する。
【図3】野生型zFP538(NFP-4)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:05および06)を提供する。
【図4】野生型drFP583(NFP-6)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:07および08)、ならびにそれらの代替型のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を提供する。
【図5】野生型asFP600(NFP-7)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:09および10)を提供する。
【図6】6/9Qハイブリッド・タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:11および12)を提供する。
【図7】変異型E57-NA(DsRED2)のヌクレオチド配列(配列番号:13)を提供する。
【図8】変異型E5-NA(Timer NA)のヌクレオチド配列(配列番号:14)を提供する。
【図9】FP3-NAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:15および16)を提供する。
【図10】NFP4-NAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:17および18)を提供する。
【図11】mut32-NAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:19および20)を提供する。
【図12】変異FP7-NAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:21および22)を提供する。
【図13】変異FP7-NAダイマーのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:23および24)を提供する。
【図14】蛍光性タンパク質のN末端領域の多重アラインメント。配列の上の矢印は、GFPおよびdrFP583の構造に基づくタンパク質内の第1βシートを表す。非凝集性変異体において置換されたアミノ酸残基は影付きである。
【図15】親蛍光性タンパク質(奇数レーン)およびそれらの非凝集性変異体(偶数レーン)の偽非変性ゲル電気泳動。写真はUV照明の下で得られた。凝集したタンパク質は、濃縮用ゲルに観察される。オリゴマー・タンパク質は、高分子量のバンドとして分離ゲル中を移動する(FPの単量体および四量体の予想MWは、約27および108 kDaである)。分子量標準が、ゲルの左側に示されている。レーン:1−DsRed変異体E57;2−E57-NA;3−DsRed変異体Timer;4−Timer-NA;5−ds/drFP616;6−ds/drFP616-NA;7−zFP506変異体N66M;8−zFP506-N66M-NA;9−zFP538変異体M129V;10−ZFP538-M129V-NA;11−amFP486変異体K68M;12−amFP486-K68M-NA;13−asFP595変異体M35-5;14−M35-5-NA;15−EGFP。
【図16】親蛍光性タンパク質(左カラム)および対応する非凝集性蛍光性タンパク質(右カラム)を発現している細胞の蛍光イメージ(詳細に関しては表2を参照のこと)。タンパク質名が左側に示されている。EGFP発現細胞が、周知の非凝集性蛍光性タンパク質として、比較のため示されている(下)。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2001年12月4日出願の特許出願第10/006,922号の一部継続出願であり、また2001年2月21日出願の特許出願第60/270,983号に基づく優先権を主張し、これらの出願の開示は完全に本明細書に組み込まれる。
【0002】
序論
発明の分野
本発明の分野は、色素タンパク質および蛍光性タンパク質である。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
標識は、関心対象のタンパク質、細胞、または生物に印をつけるための道具であり、多くの生化学、分子生物学、および医学的診断適用において顕著な役割を果たしている。放射性標識、色素標識、蛍光標識、化学発光標識等を含む多様な異なる標識が開発されている。しかしながら、新規の標識の開発への関心は依然としてある。特に関心があるのは、色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質標識を含む、新規のタンパク質標識の開発である。
【0004】
最近開発された重要な新規のクラスの蛍光性タンパク質は、Matz,M.V.ら(1999)Nature Biotechnol.,17:969-973(非特許文献1)に記載されている、造礁サンゴ蛍光性タンパク質(Reef Coral Fluorescent Proteins)である。これらの蛍光性タンパク質は多くの利点を示すが、ある種の型は、高分子量凝集を起こしやすく、それにより問題を起こし、その結果それらの適用可能性を制限し得る。
【0005】
そのため、この重要な新規のクラスの蛍光性タンパク質の非凝集性型の開発は、非常に関心がある。本発明は、この必要を満たす。
【0006】
関連文献
関心対象の米国特許には、第6,066,476号(特許文献1);第6,020,192号(特許文献2);第5,985,577号(特許文献3);第5,976,796号(特許文献4);第5,968,750号(特許文献5);第5,968,738号(特許文献6);第5,958,713号(特許文献7);第5,919,445号(特許文献8);第5,874,304号(特許文献9);および第5,491,084号(特許文献10)が含まれる。関心対象の国際特許出願には、国際公開公報第00/46233号(特許文献11);国際公開公報第99/49019号(特許文献12);およびDE 197 18 640 A(特許文献13)が含まれる。Anderluhら、Biochemical and Biophysical Research Communications(1996)220:437-442(非特許文献2);Dove ら、Biological Bulletin(1995)189:288-297(非特許文献3);Fradkovら、FEBS Lett.(2000)479(3): 127-30(非特許文献4);Gurskayaら、FEBS Lett.,(2001)507(1):16-20(非特許文献5);Gurskayaら、BMC Biochem.(2001)2:6(非特許文献6);Lukyanov,K.ら、(2000)J Biol Chemistry 275(34):25879-25882(非特許文献7);Macekら、Eur.J.Biochem.(1995)234:329-335(非特許文献8);Martynovら、J Biol Chem.(2001)276: 21012-6(非特許文献9);Matz,M.V.ら(1999)Nature Biotechnol.,17:969-973(非特許文献1);Terskikhら、Science(2000)290:1585-8(非特許文献10);Tsien, Annual Rev. of Biochemistry(1998)67:509-544(非特許文献11);Tsien, Nat. Biotech. (1999)17:956-957(非特許文献12);Wardら、J.Biol.Chem.(1979)254:781-788(非特許文献13);Wiedermannら、Jarhrestagung der Deutschen Gesellschact fur Tropenokologie-gto.Ulm.17-19.02.1999.Poster P-4.20(非特許文献14);Yanushevichら、FEBS Lett(2002年1月30日)511(1-3):11-4(非特許文献15);およびYarbroughら、Proc Natl Acad Sci U S A(2001)98:462-7(非特許文献16)も関心対象である。
【特許文献1】米国特許第6,066,476号
【特許文献2】米国特許第6,020,192号
【特許文献3】米国特許第5,985,577号
【特許文献4】米国特許第5,976,796号
【特許文献5】米国特許第5,968,750号
【特許文献6】米国特許第5,968,738号
【特許文献7】米国特許第5,958,713号
【特許文献8】米国特許第5,919,445号
【特許文献9】米国特許第5,874,304号
【特許文献10】米国特許第5,491,084号
【特許文献11】国際公開公報第00/46233号
【特許文献12】国際公開公報第99/49019号
【特許文献13】DE 197 18 640 A
【非特許文献1】Matz,M.V.ら(1999)Nature Biotechnol.,17:969-973
【非特許文献2】Anderluhら、Biochemical and Biophysical Research Communications(1996)220:437-442
【非特許文献3】Dove ら、Biological Bulletin(1995)189:288-297
【非特許文献4】Fradkovら、FEBS Lett.(2000)479(3): 127-30
【非特許文献5】Gurskayaら、FEBS Lett.,(2001)507(1):16-20
【非特許文献6】Gurskayaら、BMC Biochem.(2001)2:6
【非特許文献7】Lukyanov,K.ら、(2000)J Biol Chemistry 275(34):25879-25882
【非特許文献8】Macekら、Eur.J.Biochem.(1995)234:329-335
【非特許文献9】Martynovら、J Biol Chem.(2001)276: 21012-6
【非特許文献10】Terskikhら、Science(2000)290:1585-8
【非特許文献11】Tsien, Annual Rev. of Biochemistry(1998)67:509-544
【非特許文献12】Tsien, Nat. Biotech. (1999)17:956-957
【非特許文献13】Wardら、J.Biol.Chem.(1979)254:781-788
【非特許文献14】Wiedermannら、Jarhrestagung der Deutschen Gesellschact fur Tropenokologie-gto.Ulm.17-19.02.1999.Poster P-4.20
【非特許文献15】Yanushevichら、FEBS Lett(2002年1月30日)511(1-3):11-4
【非特許文献16】Yarbroughら、Proc Natl Acad Sci U S A(2001)98:462-7
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
非凝集性色素/蛍光タンパク質およびそれらの変異体をコードする核酸組成物、ならびにそれらによってコードされるタンパク質が提供される。関心対象のタンパク質は、非凝集性有色および/または蛍光性タンパク質(非凝集性特質は、タンパク質のN末端の残基の調整により発生し、色素性および/または蛍光性特質は、タンパク質の2個またはそれ以上の残基の相互作用により発生する)であるポリペプチドである。本発明の核酸の断片、およびそれによってコードされるペプチドも提供され、さらに、本発明のタンパク質に対する抗体、ならびにトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物も提供される。本発明のタンパク質組成物および核酸組成物は、多様な異なる適用において有益である。最後に、そのような適用において使用するためのキット、例えば本発明の核酸組成物を含むキットが提供される。
【0008】
定義
本発明に従い、当技術分野の技術の範囲内にある従来の分子生物学、微生物学、および組み換えDNA技術が利用され得る。そのような技術は、文献中に充分に説明されている。例えば、Maniatis、Fritsch、およびSambrook、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」(1982);「DNA Cloning:A Practical Approach」、第IおよびII巻(D.N.Glover編 1985);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編 1984);「Nucleic Acid Hybridization」(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1985));「Transcription and Translation」(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編(1984));「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney編(1986));「Immobilized Cells and Enzymes」(IRL Press,(1986));B. Perbal、「A Practical Guide To Molecular Cloning」(1984)を参照のこと。
【0009】
「ベクター」とは、別のDNAセグメントが、そのセグメントの複製が行われるように付加され得る、プラスミド、ファージ、またはコスミドのようなレプリコンである。
【0010】
「DNA分子」とは、一本鎖形態または二本鎖ヘリックスのいずれかのデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、またはシトシン)の重合体形態をさす。この用語は、分子の一次構造および二次構造のみをさし、任意の特定の三次形態に分子構造を制限するものではない。従って、この用語には、特に直鎖状DNA分子(例えば、制限断片)、ウイルス、プラスミド、および染色体に見出される二本鎖DNAが含まれる。
【0011】
DNA「コード配列」とは、適切な制御配列の調節下に置かれた場合に、インビボで転写されポリペプチドへと翻訳されるDNA配列である。コード配列の境界は、5'(アミノ)末端の開始コドンおよび3'(カルボキシル)末端の翻訳終止コドンによって決定される。コード配列には、これらに制限はされないが、原核生物配列、真核生物mRNAに由来するcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)DNAに由来するゲノムDNA配列、および合成DNA配列が含まれ得る。ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列が、コード配列の3'に位置していてもよい。
【0012】
本明細書において使用されるように、「ハイブリダイゼーション」という用語は、相対するの核酸鎖の残基間の水素結合によって安定化された逆平行二重鎖を形成するための、2個の核酸鎖の会合の過程をさす。
【0013】
「オリゴヌクレオチド」という用語は、短い(100塩基長未満の)核酸分子をさす。
【0014】
「DNA制御配列」とは、本明細書において使用されるように、宿主細胞におけるコード配列の発現を提供および/または制御する、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、ターミネーター等のような転写および翻訳の調節配列である。
【0015】
「プロモーター配列」とは、細胞内でRNAポリメラーゼと結合し、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始させることができるDNA制御領域である。本発明を定義する目的のため、プロモーター配列は、転写開始部位を3'末端の境界とし、バックグラウンドを超える検出可能なレベルで転写を開始させるために必要な最少数の塩基、または要素を含むように、上流(5'方向)に拡がっている。プロモーター配列内には、転写開始部位のみならずRNAポリメラーゼの結合を担うタンパク質結合ドメインが見い出されると考えられる。真核生物のプロモーターは、常にではないが、多くの場合、「TATA」ボックスおよび「CAT」ボックスを含有しているであろう。誘導可能プロモーターを含む様々なプロモーターが、本発明の様々なベクターを駆動するために使用され得る。
【0016】
本明細書において使用されるように、「制限エンドヌクレアーゼ」および「制限酵素」という用語は、各々が特異的なヌクレオチド配列で、またはその近傍で二本鎖DNAを切断する細菌酵素をさす。
【0017】
外因性または異種のDNAが細胞内に導入されている場合、その細胞は、そのようなDNAによって「形質転換」または「トランスフェクト」されている。形質転換DNAは、細胞のゲノムへ組み込まれて(共有結合して)いてもよく、またはそうでなくてもよい。例えば、原核生物、酵母、および哺乳動物細胞においては、形質転換DNAは、プラスミドのようなエピソーム要素上に維持され得る。真核細胞に関して、安定に形質転換された細胞とは、形質転換DNAが、染色体複製を通じて娘細胞によって受け継がれるように、染色体へ組み込まれているものである。この安定性は、形質転換DNAを含有している娘細胞の集団から構成される細胞株またはクローンを確立する真核細胞の能力によって証明される。「クローン」とは、有糸分裂によって単一の細胞または共通の祖先より派生した細胞の集団である。「細胞株」とは、多くの世代にわたりインビトロで安定に増殖することができる初代細胞のクローンである。
【0018】
DNA構築物の「異種」領域とは、自然界において、より大きなDNA分子に関連して見出されない、そのより大きな分子中の同定可能なDNAのセグメントである。従って、異種領域が哺乳動物遺伝子をコードする場合、その遺伝子は通常、起源生物のゲノムにおいて哺乳動物ゲノムDNAと隣接していないDNAと隣接していると考えられる。もう一つの例において、異種DNAには、融合タンパク質生成物を作製するために二つの異なる起源に由来する遺伝子の一部が集められた構築物の中のコード配列が含まれる。対立遺伝子変化または天然に存在する変異事象は、本明細書において定義されるようなDNAの異種領域を生成しない。
【0019】
本明細書において使用されるように、「レポーター遺伝子」という用語は、構築物が組織または細胞へ導入された場合に、産物が容易かつ定量的にアッセイされ得る、異種のプロモーター要素またはエンハンサー要素に付加されたコード配列をさす。
【0020】
本明細書に記載されたアミノ酸は、「L」異性体であることが好ましい。アミノ酸配列は、一文字記号(A:アラニン;C:システイン;D:アスパラギン酸;E:グルタミン酸;F:フェニルアラニン;G:グリシン;H:ヒスチジン;I:イソロイシン;K:リジン;L:ロイシン;M:メチオニン;N:アスパラギン;P:プロリン;Q:グルタミン;R:アルギニン;S:セリン;T:トレオニン;V:バリン;W:トリプトファン;Y:チロシン;X:任意の残基)で与えられる。NH2は、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離アミノ基をさす。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離カルボキシ基をさす。標準的なポリペプチド命名法に沿って、J Biol.Chem.,243(1969),3552-59が使用される。
【0021】
「免疫学的に活性な」という用語は、天然の、組換えの、または合成の色素/蛍光性タンパク質またはそれらの任意のオリゴペプチドの、適切な動物または細胞において特異的な免疫応答を誘導する能力、および特異的抗体と結合する能力を定義する。本明細書において使用されるように、「抗原性アミノ酸配列」とは、単独でまたは担体分子と会合して、哺乳動物において抗体応答を誘発することができるアミノ酸配列を意味する。抗体の抗原への結合に関連して、「特異的結合」という用語は、当技術分野においてよく理解されている用語であり、抗体が、その抗体を産生させた抗原と結合し、その他の無関係な抗原とは結合しないことさす。
【0022】
本明細書において使用されるように、「単離された」という用語は、そのポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または宿主細胞が天然に存在する環境とは異なる環境に存在するポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または宿主細胞を記載することが意図される。
【0023】
生物発光(BL)とは、暗所において充分可視であり、動物の視覚的な行動に影響を与える、生物による光の放射と定義される(例えば、Harvey, E.N.(1952). Bioluminescence. New York:Academic Press;Cell Physiology (N. Speralakis編)pp.651-681における、Hastings,J.W.(1995). Bioluminescence. New York:Academic Press.;Wilson,T.およびHastings,J.W.(1998). Bioluminescence.Annu Rev Cell Dev Biol 14,197-230を参照のこと)。生物発光には、高感度の照度測定装置を使用して事実上全ての生物構造において検出され得る、いわゆる極微弱光放射(Murphy,M.E.およびSies,H.(1990), Visible-range low-level chemiluminescence in biological systems. Meth.Enzymol.186,595-610;Radotic,K,Radenovic,C,Jeremic,M.(1998)Spontaneous ultra-weak bioluminescence in plants:origin, mechanisms and properties. Gen Physiol Biophys 17,289-308)、およびタケ成長円錐の発光(Totsune,H.,Nakano,M.,Inaba,H.(1993). Chemiluminescence from bamboo shoot cut. Biochem.Biophys.Res Comm.194,1025-1029)、または動物卵の受精中の光の放射(Klebanoff,S. J., Froeder, C. A., Eddy, E. M.,Shapiro,B.M.(1979). Metabolic similarities between fertilization and phagocytosis. Conservation of peroxidatic mechanism. J.Exp.Med.149,938-953;Schomer,B.およびEpel,D.(1998). Redox changes during fertilization and maturation of marine invertebrate eggs. Dev Biol 203,1-11)のような、おそらくいかなる生態学的役割も果たさない微弱光放射は含まれない。
【0024】
特定の態様の説明
非凝集性色素/蛍光タンパク質およびそれらの変異体をコードする核酸組成物、ならびにそれらがコードするタンパク質が提供される。関心対象のタンパク質は、有色および/または蛍光性である非凝集性タンパク質(非凝集性特質は、タンパク質のN末端の残基の調整より発生し、色素性および/または蛍光性特質は、タンパク質の2個またはそれ以上の残基の相互作用により発生する)である。前記の特定のタンパク質と実質的に類似しているタンパク質、または前記の特定のタンパク質の変異体も、関心対象である。核酸の断片およびそれらによってコードされるペプチドも提供され、さらに、本発明のタンパク質に対する抗体、ならびに本発明の核酸/タンパク質組成物を含むトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物も提供される。本発明のタンパク質組成物および核酸組成物は、多様な異なる適用において有益である。最後に、そのような適用において使用するためのキット、例えば本発明の核酸組成物を含むキットが提供される。
【0025】
本発明をさらに記載する前に、本発明は下記の本発明の特定の態様に制限されず、特定の態様の変形物が作成されてもよく、それらも添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。利用された語法は、特定の態様を記載するためのものであり、本発明を制限するものではないことも理解されたい。その代わり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって確立される。
【0026】
この明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」、および「その(the)」には、特記しない限り、複数形の言及が含まれる。他に定義しない限り、本明細書において使用された全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。
【0027】
ある範囲の値が提供される場合には、その範囲の上限と下限との間に入るそれぞれの値(特記しない限り、下限の単位の10分の1まで)、およびその記述された範囲における他の任意の記述された値または間に入る値が、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さな範囲の上限および下限は、記述された範囲において任意の限度が特に除外される条件において、独立にそのより小さな範囲に含まれてもよく、同様に本発明に包含される。記述された範囲が、限度の一方または両方を含む場合、含まれている限度のいずれかまたは両方を除く範囲も、本発明に含まれる。
【0028】
他に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語は、全て、本発明が属する技術分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有している。本明細書に記載されたものと類似しているかまたは等価である任意の方法、機器、および材料が、本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法、機器、および材料が以下に記載される。
【0029】
本明細書において言及された全ての刊行物は、本明細書に記載された発明に関して使用され得る、刊行物中に記載されている細胞株、ベクター、方法論、およびその他の発明の構成要素を記載かつ開示する目的のため、参照として本明細書に組み込まれる。
【0030】
本発明のさらなる記載においては、まず本発明の核酸組成物を記載し、続いて本発明のタンパク質組成物、抗体組成物、およびトランスジェニック細胞/生物について考察する。次に、本発明のタンパク質が有益である代表的な方法の概要を提供する。
【0031】
核酸組成物
上に要約されたように、本発明は、非凝集性色素タンパク質および蛍光タンパク質ならびにそれらの変異体、ならびにこれらのタンパク質の断片および相同体をコードする核酸組成物を提供する。
【0032】
上に要約されたように、本発明の核酸によってコードされるタンパク質は、非凝集性色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質である。非凝集性とは、タンパク質が凝集しないこと、即ち相互の複合体が、高分子量凝集物を形成しないことを意味する。本明細書において使用されるように、「凝集物」とは、より高次の分子複合体、例えば、タンパク質の四量体を2個またはそれ以上含む複合体をさす。そのような凝集物の分子量は、典型的には約100 kDaを超え、より典型的には約150 kDaを超える。凝集物は多量体(「多量体」という用語は、二量体、三量体、および四量体のようなオリゴマーをさす)とは区別される。本発明の非凝集性ポリペプチドには、対応する凝集性アナログ、例えば対応する野生型タンパク質と比較して、インビトロおよび/またはインビボにおける凝集の減少を示すポリペプチドが含まれる。
【0033】
ある種の態様において、本発明のポリペプチドは、対応する凝集性アナログ、例えば対応する野生型タンパク質と比べて、インビトロにおける凝集の減少を示す。「インビトロにおける凝集の減少」とは、無細胞系または溶液における凝集の減少をさす。いくつかの態様において、非凝集性ポリペプチドは、同じインビトロ条件下で、対応する凝集性アナログによって示される凝集の約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満を示し、例えば、試料中に存在する本発明のポリペプチドの約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満が凝集する。本発明のポリペプチドを対応する凝集性アナログと比較するのに適したインビトロ条件は、凝集性アナログの凝集を阻止しない条件、例えば標準的な生理学的条件である。生理学的現象を研究するために当技術分野において使用されている、極めて多様な緩衝液系のうちの任意のものが、インビトロの比較のために使用され得る。そのような条件の非制限的な例には、約0.01mM〜約0.1 mMの範囲の塩濃度;約19℃〜約25℃の範囲の温度;および約6.5〜約8.0の範囲のpHが含まれるが、これらに制限はされない。凝集の比較に適した緩衝液には、任意の生理学的緩衝液;トリス-Cl、リン酸緩衝生理食塩水;トリス緩衝生理食塩水;ホウ酸緩衝生理食塩水等が含まれるが、これらに制限はされない。一例は、1×トリス-Cl緩衝液、pH8.8、0.1%SDS、室温である。本発明のDsRed変異体が凝集物を形成するか否かを決定するための例示的なアッセイは、実施例に記載されたとおりである。簡潔には、標準的なドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(SDS-PAGE)プロトコルが、細菌細胞、例えば大腸菌において組み換えにより作製された、DsRed変異タンパク質を分離するために使用される。試料はゲルにロードする前に煮沸されない。SDS-PAGEのための標準的な条件は、Short Protocols in Molecular Biology、第4版、1999年、FM Ausubelら編、John Wiley&Sons,Incに記載されている。典型的に、試料は、1×トリス-Cl緩衝液(pH約8.8)中の約0.1%SDSの存在下で電気泳動される。
【0034】
いくつかの態様において、本発明の非凝集性ポリペプチドは、インビボにおける凝集の減少を示す。「インビボにおける凝集の減少」とは、細胞内での凝集の減少をさす。いくつかの態様において、非凝集性ポリペプチドは、同じインビボ条件下、例えば同じ細胞株に由来するもう一つの真核細胞において、同一の原核細胞において、または同一細胞型の真核細胞もしくは細胞集団において、対応する凝集性アナログによって示される凝集の約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、または約5%未満を示す。一般に、細胞または細胞集団の中に存在する本発明の非凝集性ポリペプチドの約60%未満、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満が凝集する。凝集の程度を測定する方法は、当技術分野において既知であり;所与の変異体が、対応する凝集性アナログと比較して、例えば対応する凝集性野生型ポリペプチドと比較して、凝集の減少を示すか否かを決定するために、任意の既知の方法が使用され得る。そのような方法には、実施例に記載されたような「偽非変性(pseudo-native)」タンパク質ゲル電気泳動;ゲルろ過;超遠心分離;円偏光二色性;および光散乱が含まれるが、これらに制限はされない。凝集は、実施例に記載されるように、光散乱によって測定され得る。凝集していないタンパク質に関しては、より長い波長における吸光に対する、より短い波長における吸光の比率がゼロに近い。いくつかの態様において、非凝集性ポリペプチドの566nmにおける吸光に対する400nmにおける吸光の比率は、約0.01〜約0.1、約0.015〜約0.09、約0.02〜約0.08、約0.025〜約0.07、または約0.03〜約0.06の範囲内である。
【0035】
多くの態様において、本発明の非凝集性ポリペプチドは、天然に存在するタンパク質またはその凝集性変異体の非凝集性変異体を作製するのに十分な様式で、例えば電荷を逆転させるかまたは中和するために、N末端残基の側鎖基上に出現する電荷を調整するN末端の変異によって、対応する野生型配列と異なるアミノ酸配列を有している。より具体的には、タンパク質のN末端近傍に位置している塩基性残基が置換され、例えばN末端近傍のLys残基およびArg残基が、負の電荷を有するかまたは中性の残基に置換される。N末端とは、N末端から約50残基以内、多くの場合にはN末端の約25残基以内、より多くの場合にはN末端の約15残基以内を意味し、多くの態様において、残基改変はN末端の約10残基以内に起こる。多くの態様において、関心対象の特定の残基には、2、3、4、5、6、7、8、9および10が含まれる。
【0036】
前述のように、本発明の核酸によってコードされる本発明のポリペプチドの非凝集性特質に加え、本発明のポリペプチドは、有色および/または蛍光性であることも特徴とする。色素および/または蛍光性タンパク質とは、有色である、即ち着色しているタンパク質を意味し、タンパク質は蛍光性であってもよいしまたは蛍光性でなくてもよく、例えば、励起波長の光での照射に応じて、低い、中程度の、または高い蛍光を示し得る。いずれにせよ、関心対象の本発明のタンパク質は、その有色の特徴、即ち色素性および/または蛍光性特徴が、タンパク質の単一の残基、より具体的には単一の残基の単一の側鎖からではなく、タンパク質の2個またはそれ以上の残基の相互作用から発生するものであるタンパク質である。そのため、本発明の蛍光性タンパク質には、それ自体が内在性蛍光団(intrinsic fluors)としてはたらく残基、即ちトリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニンからの蛍光のみを示すタンパク質は含まれない。そのため、本発明の蛍光性タンパク質は、その蛍光が、前記の単一残基以外のタンパク質内の何らかの構造から発生する、例えば2個またはそれ以上の残基の相互作用から発生するような蛍光性タンパク質である。
【0037】
多くの態様において、本発明の核酸によってコードされるポリペプチドは、天然に存在するタンパク質、多くの場合には刺胞動物種、例えば花虫綱種に存在するタンパク質の変異体である。ある種の態様において、核酸は、さらに、(1)非生物発光性種、多くの場合には非生物発光性刺胞動物種、例えば非生物発光性花虫綱種;または(2)ウミエラ目(Pennatulacean)種でない、即ちウミエラでない花虫綱種のいずれかに由来する野生型タンパク質(またはそれらの変異体)の非凝集性変異体をコードすることを特徴とする。そのため、これらの態様の核酸は、ウミエラ目種でない限り、例えばウミシイタケ(Renillan)種またはプチロサルカン(Ptilosarcan)種でない限り、生物発光性花虫綱種に由来するタンパク質の非凝集性変異体をコードし得る。ある種の態様において特に関心対象であるのは、以下の特定の野生型タンパク質(またはそれらの変異体)の非凝集性変異体である:(1)特許出願第10/006,922号に開示されるamFP485、cFP484、zFP506、zFP540、drFP585、dsFP484、asFP600、dgFP512、dmFP592(この開示は参照として本明細書に組み込まれる);(2)特許出願第09/976,673号に開示されるhcFP640(この開示は参照として本明細書に組み込まれる);(3)特許出願第60/255,533号に開示されるCgCP(この開示は参照として本明細書に組み込まれる);および(4)特許出願第60/332,980号に開示されたようなhcriGFP、zoanRFP、scubGFP1、scubGFP2、rfloRFP、rfloGFP、mcavRFP、mcavGFP、cgigGFP、afraGFP、rfloGFP2、mcavGFP2、mannFP(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)。関心対象の特定の非凝集性蛍光性ポリペプチドには、FP1-NA;FP3-NA;FP4-NA;FP6-NA;E5-NA;6/9Q-NA;7A-NA;mutM35-5 dimer-NA等が含まれるが、これらに制限はされず、これらの特定の非凝集性変異体は以下にさらに記載される。
【0038】
いくつかの態様において、本発明の核酸は、上記の特徴に加え、参照タンパク質、例えば対応する野生型タンパク質と比べて増加した等電点(pI)を示すポリペプチドをコードする。等電点は、当技術分野において既知の任意の方法を使用して決定され得る。いくつかの態様において、pIは、実施例に記載されたようにして計算された理論pIである。いくつかの態様において、本発明の変異タンパク質は、約5.50〜約7.00、約5.75〜約6.75、約6.00〜約6.50、または約6.10〜約6.40の範囲のpIを有している。
【0039】
特定の蛍光性タンパク質の蛍光輝度は、極大吸光係数を掛けた量子収率によって決定される。色素タンパク質の輝度は、極大吸光係数によって表され得る。いくつかの態様において、本発明の核酸によりコードされたポリペプチドは、参照タンパク質、例えば対応する野生型タンパク質と比較して、実質的に同じかまたはより大きな輝度を細胞において示し、例えば、変異体は、参照タンパク質より少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%。少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%(または2倍)、少なくとも約150%、少なくとも約3倍、または少なくとも約4倍、またはそれ以上、高い輝度を細胞において有する。「細胞」は、原核細胞または真核細胞であり得る。輝度を測定する方法は、当技術分野において既知である。輝度は、視覚的スクリーニング、分光測光法、分光蛍光分析、蛍光顕微鏡検、蛍光標示式細胞分取(FACS)機等を含むが、これらに制限はされない任意の既知の方法を使用して測定され得る。いくつかの例において、細胞における本発明の変異タンパク質の輝度は、同じ細胞型の細胞、または同じ細胞株の別の細胞において、参照タンパク質の輝度と視覚的に比較され得る。
【0040】
核酸組成物とは、本発明の非凝集性色素/蛍光ポリペプチドをコードするオープン・リーディング・フレーム、即ち色素/蛍光タンパク質コード配列を有し、適切な条件の下で、本発明に係る非凝集性色素/蛍光タンパク質として発現され得るDNAの配列を含む組成物を意味する。この用語には、本発明の核酸と相同であるか、実質的に類似しているか、または同一である核酸も包含される。従って、本発明は、本発明のタンパク質をコードするコード配列のみならず、それらの相同体も提供する。
【0041】
前記の特定の核酸組成物に加え、前記の配列の相同体も関心対象である。ある態様において、相同体間の配列類似性は、少なくとも約20%、ときには少なくとも約25%であり、30%、35%、40%、50%、60%、70%、またはそれ以上であってもよく、75%、80%、85%、90%、および95%、もしくはそれ以上を含んでもよい。配列類似性は、保存モチーフ、コード領域、隣接領域等のような、より大きな配列のサブセットであってもよい参照配列に基づき計算される。参照配列は、通常は少なくとも約18nt長、より通常には少なくとも30nt長であり、比較される完全配列にまで及んでいてもよい。Altschulら(1990)、J.Mol.Bilo.215:403-10に記載されたBLAST(初期設定、即ちパラメータW=4およびT=17を使用)のような、配列分析のためのアルゴリズムが、当技術分野において既知である。ある種の態様において特に関心対象であるのは、配列番号:13;14;15;17;19;21;および23として同定された核酸と実質的に同じ長さの核酸であり(実質的に同じ長さとは、長さの差違が約20個数(number)%を超えないこと、通常は約10個数%を超えないこと、より通常には約5個数%を超えないことを意味する);かつ、核酸の全長にわたり、これらの配列のうちのいずれかに対して、少なくとも約90%、通常は少なくとも約95%、より一般的には少なくとも約99%の配列同一性を有しているものである。多くの態様において、核酸は、配列番号:14;15;17;19;21;および23の配列と実質的に類似している(即ち、同じである)か、または同一である配列を有している。実質的に類似している、とは、配列同一性が、一般に、少なくとも約60%、通常は少なくとも約75%、多くの場合には少なくとも約80%、85%、90%、または95%でさえあると考えられることを意味する。
【0042】
前記の核酸によってコードされるタンパク質をコードするが、遺伝暗号の縮重により前記の核酸と配列が異なっている核酸も、提供される。
【0043】
ストリンジェントな条件の下で前記の核酸とハイブリダイズする核酸も提供される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、50℃またはそれ以上および0.1×SSC(15mM塩化ナトリウム/1.5mMクエン酸ナトリウム)におけるハイブリダイゼーションである。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のもう一つの例は、溶液:50%ホルムアミド、5×SSC(150 mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAにおける42℃での一晩のインキュベーション、それに続く約65℃での0.1×SSCにおけるフィルターの洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件とは、上記の代表的な条件と少なくとも同等にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件であって、上記の特定のストリンジェントな条件と比べて少なくとも約80%ストリンジェントである場合、典型的には少なくとも約90%ストリンジェントである場合、その条件は少なくとも同等にストリンジェントであると見なされる。その他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、当技術分野において既知であり、それらも本発明のこの特定の態様の核酸を同定するために利用され得る。
【0044】
本発明の非凝集性タンパク質の変異体をコードする核酸も提供される。変異核酸は、当技術分野において慣例的である周知の技術を使用して、無作為突然変異誘発または標的突然変異誘発により生成され得る。いくつかの態様において、相同体または変異体をコードする核酸によってコードされる色素タンパク質または蛍光性タンパク質は、野生型の蛍光性タンパク質と同じ蛍光特性を有している。その他の態様において、相同体または変異核酸は、本明細書により詳細に記載されるように、改変されたスペクトル特性を有する色素タンパク質または蛍光性タンパク質をコードする。
【0045】
以下に一層詳細に記載されるように、本発明の核酸は、染色体外維持のため、または宿主ゲノムへの組み込みのため、適切なベクターの中に存在し得る。
【0046】
本発明の核酸組成物は、本発明のタンパク質の全部または一部をコードし得る。二本鎖または一本鎖の断片は、従来の方法によるオリゴヌクレオチドの化学合成、制限酵素消化、PCR増幅等によってDNA配列より入手され得る。大抵、DNA断片は、少なくとも約15nt、通常は少なくとも約18ntまたは約25 ntであると考えられるが、少なくとも約50ntであってもよい。いくつかの態様において、本発明の核酸分子は、約100nt、約200nt、約300nt、約400nt、約500nt、約600nt、約700nt、または約720ntの長さであり得る。本発明の核酸は、本発明のタンパク質の断片または完全長タンパク質をコードすることができ、例えば、本発明の核酸は、約25aa、約50aa 、約75aa 、約100aa 、約125aa、約150aa、約200aa、約210aa、約220aa、約230aa、または約240aa、最大でタンパク質全体の長さまでのポリペプチドをコードし得る。
【0047】
本発明のポリヌクレオチドおよびその構築物が提供される。これらの分子は、当業者に既知の多数の異なるプロトコルにより、合成的に生成され得る。適切なポリヌクレオチド構築物は、例えばSambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、(1989)Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NYに記載されている標準的な組み換えDNA技術を使用して、かつ米国保健社会福祉省(United States Dept. of HHS)、国立衛生研究所(National Institute of Health)(NIH)の組換えDNA研究に関するガイドライン(Guidelines for Recombinant DNA Research)に記載された現行の規制の下で、精製される。
【0048】
第二のタンパク質、例えば分解配列、シグナル・ペプチド、関心対象のタンパク質(即ち、研究されるタンパク質)等と融合した、本発明のタンパク質またはその断片の融合タンパク質をコードする核酸も、提供される。融合タンパク質は、本発明のポリペプチドまたはその断片、ならびに本発明のポリペプチドのN末端および/またはC末端とインフレームで(in-frame)融合した非非凝集性ポリペプチド(「融合パートナー」)を含み得る。融合パートナーには、その融合パートナーに特異的な抗体と結合することができるポリペプチド(例えば、エピトープ・タグ);抗体またはそれらの結合性断片;触媒機能を提供するか、または細胞応答を誘導するポリペプチド;リガンドもしくは受容体またはそれらの模倣体等が含まれるが、これらに制限はされない。そのような融合タンパク質において、融合パートナーは、一般に、融合タンパク質の本発明の非凝集性タンパク質部分と天然には会合しておらず、ある種の態様においては、刺胞動物タンパク質またはその誘導体/断片ではなく、即ち刺胞動物種には見出されない。
【0049】
増幅、タンパク質生産等を含む、多数の異なる適用のために使用され得る、ベクターに挿入された本発明の核酸を含む構築物も提供される。プラスミドを含むウイルス・ベクターおよび非ウイルス・ベクターが、調製され使用され得る。ベクターの選択は、増幅が望まれる細胞の型および増幅の目的に依存するであろう。ある種のベクターは、所望のDNA配列を増幅し、大量に作製するために有用である。培養細胞における発現に適しているベクターも存在する。さらに、完全な動物またはヒトの体内の細胞における移入および発現に適しているベクターも存在する。適切なベクターの選択は、十分に当技術分野の技術の範囲内にある。多くのそのようなベクターが、市販されている。構築物を調製するためには、部分的または完全長のポリヌクレオチドが、典型的にベクター内の切断された制限酵素部位へのDNAリガーゼによる付加によって、ベクターへと挿入される。または、所望のヌクレオチド配列は、インビボにおける相同的組み換えによって挿入され得る。典型的には、これは、ベクターの所望のヌクレオチド配列の両側に相同領域を付加することにより達成される。相同領域は、例えば、オリゴヌクレオチドのライゲーションによって、または相同領域および所望のヌクレオチド配列の一部の両方を含むプライマーを使用した、ポリメラーゼ連鎖反応によって追加される。
【0050】
適用の中でも、とりわけ本発明のタンパク質の合成において有益である発現カセットまたは発現系も提供される。発現のため、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる遺伝子産物は、例えば細菌、酵母、昆虫、両生動物、および哺乳動物の系を含む任意の便利な発現系において発現される。適当なベクターおよび宿主細胞は、米国特許第5,654,173号に記載されている。発現ベクターにおいて、本発明のポリヌクレオチドは、所望の発現特性を得るため、適宜制御配列と連結される。これらの制御配列には、プロモーター(センス鎖の5'末端、またはアンチセンス鎖の3'末端に付加される)、エンハンサー、ターミネーター、オペレーター、リプレッサー、およびインデューサーが含まれ得る。プロモーターは、制御型または構成型であってもよい。いくつかの状況においては、組織特異的プロモーターまたは発達段階特異的プロモーターのような、条件活性プロモーターを使用することが望まれ得る。これらは、ベクターとの連結に関する前記の技術を使用して、所望のヌクレオチド配列に連結される。当技術分野において既知の任意の技術が使用され得る。換言すると、発現ベクターは、誘導可能であるか、または構成型であってもよい、転写および翻訳の開始領域(コード領域が、転写開始領域の転写調節下で機能可能に連結されている)、ならびに転写および翻訳の終結領域を提供するであろう。これらの調節領域は、本発明の核酸が得られる本発明の種に在来するものであってもよいし、または外因的な起源に由来してもよい。
【0051】
発現ベクターは、一般に、異種タンパク質をコードする核酸配列の挿入を提供するため、プロモーター配列の近傍に位置する便利な制限部位を有している。発現宿主において機能する選択可能マーカーが存在してもよい。発現ベクターは、とりわけ前記の融合タンパク質の生産のために使用され得る。
【0052】
転写開始領域、遺伝子またはその断片、および転写終結領域を含む発現カセットが調製され得る。特に関心対象であるのは、通常は少なくとも8アミノ酸長、より通常には少なくとも約15アミノ酸長〜約25アミノ酸長、最大で遺伝子の完全なオープン・リーディング・フレームの長さまでの、機能性のエピトープまたはドメインの発現を可能にする配列の使用である。DNAの導入の後、構築物を含有している細胞が選択可能なマーカーによって選択され、その細胞が増幅され、次いで発現のために使用され得る。
【0053】
前記の発現系は、発現の目的に依って、従来の方式に従い原核生物または真核生物を用いて利用され得る。タンパク質の大量生産のためには、大腸菌、枯草菌(B.subtilis)、出芽酵母(S.cerevisiae)のような単細胞生物、バキュロウイルス・ベクターと組み合わされた昆虫細胞、または脊椎動物のような高等生物の細胞、例えばCOS7細胞、HEK293、CHO、アフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞等が、発現宿主細胞として使用され得る。いくつかの状況においては、発現したタンパク質が、在来の折り畳みおよび翻訳後修飾の恩恵を得ると考えられる真核細胞において遺伝子を発現させることが望ましい。小さなペプチドは、実験室において合成することもできる。完全タンパク質配列のサブセットであるポリペプチドは、機能にとって重要なタンパク質の部分を同定し検討するために使用され得る。
【0054】
関心対象の特定の発現系には、細菌、酵母、昆虫細胞、および哺乳動物細胞に由来する発現系が含まれる。これらの各カテゴリーからの代表的な系を、以下に挙げる。
【0055】
細菌
細菌における発現系には、Changら、Nature(1978)275:615;Goeddelら、Nature(1979)281:544;Goeddelら、Nucleic Acids Res.(1980)8:4057;欧州特許第0 036,776号;米国特許第4,551,433号;DeBoerら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1983)80:21-25;およびSiebenlistら、Cell(1980)20:269に記載されたものが含まれる。
【0056】
酵母
酵母における発現系には、Hinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1978)75:1929;Itoら、J.Bacteriol.(1983)153:163;Kurtzら、Mol.Cell.Biol.(1986)6:142;Kunzeら、J.Basic Microbiol.(1985)25:141;Gleesonら、J.Gen.Microbiol.(1986)132:3459;Roggenkampら、Mol.Gen.Genet.(1986)202:302;Dasら、J.Bacteriol.(1984)158:1165;De Louvencourtら、J.Bacteriol.(1983)154:737;Van den Bergら、Bio/Technology(1990)8:135;Kunzeら、J.Basic Microbiol.(1985)25:141;Creggら、Mol.Cell.Biol.(1985)5:3376;米国特許第4,837,148号および第4,929,555号;BeachおよびNurse、Nature(1981)300:706;Davidowら、Curr.Genet.(1985)10:380;Gaillardinら、Curr.Genet.(1985)10:49;Ballanceら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1983)112:284-289;Tilburnら、Gene(1983)26:205-221;Yeltonら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1984)81:1470-1474;KellyおよびHynes、EMBO J.(1985)4:475479;欧州特許第0 244,234号;および国際公開公報第91/00357号に記載されたものが含まれる。
【0057】
昆虫細胞
昆虫における異種遺伝子の発現は、米国特許第4,745,051号;The Molecular Biology Of Baculoviruses(1986)(W.Doerfler編)における、Friesenら、The Regulation of Baculovirus Gene Expression;欧州特許第0 127,839号;欧州特許第0 155,476号;およびVlakら、J.Gen.Virol.(1988)69:765-776;Millerら、Ann.Rev.Microbiol.(1988)42:177;Carbonellら、Gene(1988)73:409;Maedaら、Nature(1985)315:592-594;Lebacq-Verheydenら、Mol.Cell.Biol.(1988)8:3129;Smithら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1985)82:8844;Miyajimaら、Gene(1987)58:273;およびMartinら、DNA(1988)7:99に記載されたようにして達成される。多数のバキュロウイルス株および異型、ならびに対応する許容性昆虫宿主細胞が、Luckowら、Bio/Technology(1988)6:47-55、Millerら、Generic Engineering(1986)8:277-279、およびMaedaら、Nature(1985)315:592-594に記載されている。
【0058】
哺乳動物細胞
哺乳動物発現は、Dijkemaら、EMBO J.(1985)4:761、Gormanら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)(1982)79:6777、Boshartら、Cell(1985)41:521、および米国特許第4,399,216号に記載されたようにして達成される。哺乳動物発現のその他の特質は、HamおよびWallace,Meth.Enz.(1979)58:44、BarnesおよびSato、Anal.Biochem.(1980)102:255、米国特許第4,767,704号、第4,657,866号、第4,927,762号、第4,560,655号、国際公開公報第90/103430号、国際公開公報第87/00195号、米国再発行特許第30,985号に記載されたようにして促進される。
【0059】
上記の宿主細胞、またはその他の適切な宿主細胞もしくは宿主生物のいずれかが、本発明のポリヌクレオチドまたは核酸を複製、および/または発現させるために使用される場合、得られる複製した核酸、RNA、発現したタンパク質またはポリペプチドは、宿主細胞または宿主生物の産物として、本発明の範囲内に含まれる。産物は、当技術分野において既知の任意の適切な手段によって回収される。
【0060】
本発明の核酸は、コードされるタンパク質の配列、コードされるタンパク質の蛍光特性を含むコードされるタンパク質の特性等において、標的とする変化を発生させるための、当技術分野において既知の様々な方式で変異させられ得る。そのように変異させたDNA配列またはタンパク質産物は、通常は、本明細書に提供される配列と実質的に類似していると考えられ、例えば、少なくとも1個のヌクレオチドまたはアミノ酸がそれぞれ異なると考えられ、少なくとも2個、しかし最高約10個のヌクレオチドまたはアミノ酸が異なっていてもよい。配列の変化は、置換、挿入、欠失、またはそれらの組み合わせであり得る。欠失には、ドメインまたはエクソンの欠失、例えば10aa残基、20aa残基、50aa残基、75aa残基、100aa残基、150aa残基、またはそれ以上の範囲の欠失のような、より大きな変化をさらに含み得る。クローニングされた遺伝子のインビトロ突然変異誘発のための技術は、既知である。部位特異的突然変異誘発のためのプロトコルの例は、Gustinら(1993)、Biotechniques 14:22;Barany(1985)、Gene 37:111-23;Colicelliら(1985)、Mol.Gen.Genet.199:537-9;およびPrentkiら(1984)、Gene 29:303-13に見出され得る。部位特異的突然変異誘発のための方法は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、CSH Press 1989年、pp.15.3-15.108;Weinerら(1993)、Gene 126:35-41;Sayersら(1992)、Biotechniques 13:592-6;JonesおよびWinistorfer(1992)、Biotechniques 12:528-30;Bartonら(1990)、Nucleic Acids Res 18:7349-55;MarottiおよびTomich(1989)、Gene Anal.Tech.6:67-70;およびZhu(1989)、Anal Biochem 177:120-4に見出され得る。そのように変異させた核酸誘導体は、特定の色素/蛍光性タンパク質の構造−機能関係を研究するため、またはその機能もしくは制御に影響を与えるタンパク質の特性を改変するために使用され得る。
【0061】
本発明の核酸のヒト化型も、関心対象である。本明細書において使用されるように、「ヒト化」という用語は、ヒト細胞におけるタンパク質の発現のためのコドンを最適化するために、核酸配列に対してなされる変化をさす(Yangら、Nucleic Acids Research 24 (1996),4592-4593)。タンパク質のヒト化を記載している米国特許第5,795,737号(その開示は参照として本明細書に組み込まれる)も、参照されたい。
【0062】
タンパク質/ポリペプチド組成物
本発明の核酸によりコードされる非凝集性の色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質ならびにそれらの変異体、そしてそれらに関連するポリペプチド組成物も、本発明によって提供される。本明細書に使用されるように、ポリペプチド組成物という用語は、完全長タンパク質、およびそれらの一部または断片の両方をさす。この用語には、後に一層詳細に記載される、天然に存在するタンパク質と相同であるかまたは実質的に類似している、天然に存在するタンパク質の変形物、および天然に存在するタンパク質の変異体も含まれる。
【0063】
多くの態様において、本発明のタンパク質は、約300nm〜700nm、通常は約350nm〜650nm、より通常には約400nm〜600nmの範囲の吸光極大を有している。本発明のタンパク質が蛍光性タンパク質である場合、即ち、ある波長の光により励起された後、別の波長で光を放射することができる場合、本発明のタンパク質の放射スペクトルは、典型的には約400nm〜800nm、通常は約425nm〜775nm、より通常には約450nm〜750nmの範囲である一方、本発明のタンパク質の励起スペクトルは、典型的には約300nm〜700nm、通常は約350nm〜650nm、より通常には約400nm〜600nmの範囲である。本発明のタンパク質は、一般に約10,000〜50,000、通常は約15,000〜45,000の範囲の極大吸光係数を有している。本発明のタンパク質は、典型的には、約150〜300アミノ酸残基長、一般的には約200〜300アミノ酸残基長であり、一般には、約15kDa〜35kDa、通常は約17.5kDa〜32.5 kDaの範囲の分子量を有している。
【0064】
ある種の態様において、本発明のタンパク質は明るい(明るいとは、通常の方法(例えば、視覚的スクリーニング、分光測光法、分光蛍光分析、蛍光顕微鏡検、FACS機等)により、色素タンパク質およびそれらの蛍光性変異体が検出され得ることを意味する)。特定の蛍光性タンパク質の蛍光輝度は、極大吸光係数を掛けた量子収量により決定される。色素タンパク質の輝度は、その極大吸光係数によって表され得る。
【0065】
ある種の態様において、本発明のタンパク質は、宿主細胞における発現の後、迅速に折り畳まれる。迅速な折り畳みとは、タンパク質が、色素性または蛍光性を生じる三次構造に短時間で達することを意味する。これらの態様において、タンパク質は、一般に約3日を超えない期間、通常は約2日を超えない期間、より通常には約1日を超えない期間に折り畳まれる。
【0066】
関心対象の特定のタンパク質は、以下の特定の花虫綱種:アネモニア・マジャノ(Anemonia majano)、クラブラリア(Clavularia)種、ゾアンツス(Zoanthus)種、ゾアンツス(Zoanthus)種、ディスコソマ・ストリアタ(Discosoma striata)、ディスコソマ(Discosoma)種「赤色」、アネモニア・スルカタ(Anemonia sulcata)、ディスコソマ(Discosoma)種「緑色」、ディスコソマ(Discosoma)種「マゼンタ」に由来する色素/蛍光タンパク質(およびそれらの変異体)の非凝集性の変異ポリペプチドまたは異型である。関心対象の特定の非凝集性蛍光性ポリペプチドには、FP1-NA;FP3-NA;FP4-NA;FP6-NA;E5-NA;6/9Q-NA;7A-NA等が含まれるが、これらに制限はされない。
【0067】
前記で提供される特定の非凝集性ポリペプチドのアミノ酸配列と配列が異なる、相同体またはタンパク質(またはそれらの断片)も提供される。相同体とは、D.G.HigginsおよびP.M.Sharp、「Fast and Sensitive multiple Sequence Alignments on a Microcomputer」(1989)CABIOS、5:151-153に記載されているDNAstar(1998)クラスタル・アルゴリズムであるMegAlign(使用されるパラメータは、ktuple 1、ギャップ・ペナルティ(gap penalty)3、ウィンドウ(window)5、および保存対角(diagonals saved)5である)を使用して決定されるように、本発明のタンパク質と少なくとも約10%、通常は少なくとも約20%、より通常には少なくとも約30%、そして多くの態様においては少なくとも約35%、通常には少なくとも約40%、より通常には少なくとも約60%の、アミノ酸配列同一性を有するタンパク質を意味する。多くの態様において、関心対象の相同体は、はるかに高い配列同一性、例えば65%、70%、75%、80%、85%、90%、またはそれ以上を有する。
【0068】
前記で提供される特定のタンパク質の配列と実質的に同一のタンパク質も提供される(実質的に同一とは、タンパク質が、上記で提供される特定のタンパク質のうちの一つと少なくとも約60%、通常は少なくとも約65%、より通常には少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性を有することを意味し、いくつかの例において、同一性ははるかに高く、例えば75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上であり得る)。
【0069】
多くの態様において、本発明の相同体は、β-can折り畳みを含む、前記で提供される特定の配列に見出される構造的特質を有している。
【0070】
上記で具体的に記載されたタンパク質の変異体であるタンパク質も提供される。変異体は、野生型の(例えば、天然に存在する)タンパク質の生物学的特性を保持するか、または野生型のタンパク質と異なる生物学的特性を有してもよい。本発明のタンパク質の「生物学的特性」という用語には、吸光極大、放射極大、極大吸光係数、輝度(例えば、野生型タンパク質またはA.ビクトリア(victoria)由来の緑色蛍光タンパク質のような別の参照タンパク質と比較したもの)等のようなスペクトル特性;インビボおよび/またはインビトロの安定性(例えば、半減期)等が含まれるが、これらに制限はされない。変異体は、単一のアミノ酸変化、1個または複数のアミノ酸の欠失、N末端短縮、C末端短縮、挿入等を含む。
【0071】
変異体は、分子生物学の標準的な技術、例えば無作為突然変異誘発および標的突然変異誘発を使用して生成され得る。いくつかの変異体は、本明細書に記載されている。実施例に案内が提供されることを考慮すると、標準的な技術を使用して、当業者は極めて多様な追加の変異体を容易に製造し、生物学的特性が改変されているか否かを試験することができる。例えば、蛍光強度は、様々な励起波長で分光測光器を使用して測定され得る。
【0072】
上記で具体的に提供されたタンパク質の変異体も提供される。一般に、そのようなポリペプチドは、完全長タンパク質、ならびにその断片、特に生物学的に活性な断片および/または機能ドメインに対応する断片等を含み;本発明のポリペプチドの、その他のタンパク質またはその一部との融合体を含む、本発明の野生型タンパク質をコードする遺伝子のオープン・リーディング・フレーム(ORF)によってコードされるアミノ酸配列を含む。関心対象の断片は、典型的には少なくとも約10aa長、通常は少なくとも約50aa長であると考えられ、300aa長またはそれ以上であってもよいが、通常は約1000aa長は超えないと考えられる。ここで、断片は、少なくとも約10aa長、通常は少なくとも15aa長、多くの態様においては少なくとも50aa長の本発明のタンパク質と同一のアミノ酸範囲を有するであろう。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドは、約25aa長、約50aa長、約75aa長、約100aa長、約125aa長、約150aa長、約200aa長、約210aa長、約220aa長、約230aa長、または約240aa長であり、最大でタンパク質全体である。いくつかの態様において、タンパク質断片は、野生型タンパク質の生物学的特性の全部、または実質的に全部を保持している。
【0073】
本発明のタンパク質およびポリペプチドは、任意の便利なプロトコルを使用して、例えば前記のように、適当な宿主において関心対象のタンパク質をコードする組換え遺伝子または核酸のコード配列を発現させることにより、合成的に作製され得る。任意の便利なタンパク質精製手法を利用してもよく、適当なタンパク質精製方法論は、Guide to Protein Purification、(Deuthser編)(Academic Press、1990)に記載されている。例えば、最初の起源から溶解物を調製し、HPLC、排除クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティ・クロマトグラフィー等を使用して精製することができる。
【0074】
抗体組成物
本発明の非凝集性蛍光性タンパク質に特異的に結合する抗体も提供される。適当な抗体は、本発明のタンパク質の全部または一部を含むペプチドで宿主動物を免疫化することにより得られる。適当な宿主動物には、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ハムスター、ウサギ等が含まれる。免疫原には、完全なタンパク質、またはその断片および誘導体が含まれ得る。
【0075】
ポリクローナル抗体の調製のための第一段階は、約1%未満の汚染物質を含む、好ましくは実質的に純粋な形態で存在すると考えられる標的タンパク質による、宿主動物の免疫化である。免疫原には、完全な標的タンパク質、その断片または誘導体が含まれ得る。宿主動物の免疫応答を増加させるため、標的タンパク質は、アジュバントと組み合わせられてもよく、適当なアジュバントには、ミョウバン、デキストラン、硫酸塩、高分子重合体陰イオン、油水乳剤、例えばフロイントのアジュバント、フロイントの完全アジュバント等が含まれる。標的タンパク質は、合成担体タンパク質または合成抗原に抱合させられてもよい。多様な宿主が、ポリクローナル抗体を作製するために免疫化され得る。そのような宿主には、ウサギ、モルモット、げっ歯動物、例えばマウス、ラット、ヒツジ、ヤギ等が含まれる。標的タンパク質は、通常は皮内に初回用量を投与された後、1回または複数回、通常は少なくとも2回の付加的な追加用量を投与される。免疫化の後、宿主から血液が収集され、続いて血球から血清の分離が行われる。得られた抗血清の中に存在するIgは、アンモニウム塩分画、DEAEクロマトグラフィー等のような既知の方法を使用してさらに分画され得る。
【0076】
モノクローナル抗体は、従来の技術によって作製される。一般に、免疫化された宿主動物の脾臓および/またはリンパ節が、プラズマ細胞の起源を提供する。プラズマ細胞は、ハイブリドーマ細胞を作製するため、骨髄腫細胞との融合によって不死化される。産生される抗体が所望の特異性を有することを確認するため、個々のハイブリドーマに由来する培養上清が、標準的な技術を使用してスクリーニングされる。ヒト・タンパク質に対するモノクローナル抗体の作製に適した動物には、マウス、ラット、ハムスター等が含まれる。マウス・タンパク質に対する抗体を生成させるための動物には、一般に、ハムスター、モルモット、ウサギ等が考えられる。抗体は、従来の技術、例えば不溶性支持体、プロテインAセファロース等と結合したタンパク質を使用したアフィニティ・クロマトグラフィーによって、ハイブリドーマ細胞上清または腹水より精製され得る。
【0077】
抗体は、通常の多量体構造ではなく、単鎖として作製されてもよい。単鎖抗体は、Jostら(1994)J.B.C.269:26267-73、およびその他に記載されている。重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域をコードするDNA配列が、グリシンおよび/またはセリンを含む、小さな中性アミノ酸を少なくとも約4アミノ酸コードするスペーサーへ連結される。この融合体によってコードされるタンパク質は、元の抗体の特異性および親和性を保持する機能性可変領域の組み立てを可能にする。
【0078】
ある種の態様において、ヒト化抗体も関心対象である。抗体をヒト化する方法は、当技術分野において既知である。ヒト化抗体は、遺伝子導入したヒト免疫グロブリン定常領域遺伝子を有する動物の産物であり得る(例えば、国際特許出願、国際公開公報第90/10077号および第90/04036号を参照のこと)。または、関心対象の抗体を組替えDNA技術によって設計して、CH1、CH2、CH3、ヒンジ・ドメイン、および/またはフレームワーク・ドメインを、対応するヒトの配列に置換してもよい(国際公開公報第92/02190号を参照のこと)。
【0079】
キメラ免疫グロブリン遺伝子の構築のためのIg cDNAの使用は、当技術分野において既知である(Liuら(1987)P.N.A.S.84:3439および(1987)J.Immunol.139:3521)。mRNAが、抗体を産生するハイブリドーマまたはその他の細胞から単離され、cDNAを作製するために使用される。関心対象のcDNAは、特異的プライマーを使用したポリメラーゼ連鎖反応によって増幅され得る(米国特許第4,683,195号および第4,683,202号)。または、ライブラリーが作成され、関心対象の配列を単離するためにスクリーニングされる。抗体の可変領域をコードするDNA配列は、次いで、ヒト定常領域配列と融合させられる。ヒト定常領域遺伝子の配列は、Kabatら(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、N.I.H.刊行物第91-3242号に見出すことができる。ヒトC領域遺伝子は、既知のクローンより容易に入手可能である。アイソタイプの選択は、補体結合、または抗体依存性細胞毒性における活性のような所望のエフェクター機能によって導かれると考えられる。好ましいアイソタイプは、IgG1、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域であるκまたはλのいずれかが使用され得る。次いで、キメラ・ヒト化抗体が、従来の方法によって発現させられる。
【0080】
Fv、F(ab')2、およびFabのような抗体断片は、完全なタンパク質の切断によって、例えばプロテアーゼまたは化学的切断によって調製され得る。または、切断型遺伝子が設計される。例えば、F(ab')2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ・ドメインをコードするDNA配列の後に、切断型分子を生じるための翻訳終止コドンを含むと考えられる。
【0081】
後に続くV領域セグメントのヒトC領域セグメントへの連結のために、有用な制限部位をJ領域へ導入するためのプライマーとして使用するためのオリゴヌクレオチドを設計するために、HおよびLのJ領域のコンセンサス配列が使用され得る。C領域cDNAは、ヒト配列内の類似の位置に制限部位を置くための、部位特異的突然変異誘発により改変され得る。
【0082】
発現ベクターには、プラスミド、レトロウイルス、YAC、EBV由来エピソーム等が含まれる。便利なベクターは、任意のVHまたはVL配列が容易に挿入され、かつ発現させられるよう設計された適切な制限部位を有する、機能的に完全なヒトCHまたはCL免疫グロブリン配列をコードするものである。そのようなベクターにおいては、スプライシングが、通常は、挿入されたJ領域内のスプライス供与部位と、ヒトC領域の前に位置するスプライス受容部位との間に起こり、そしてヒトCHエクソン内に存在するスプライス領域においても起こる。ポリアデニル化および転写終結は、コード領域の下流の在来の染色体部位において起こる。得られたキメラ抗体は、レトロウイルスLTR、例えばSV-40初期プロモーター(Okayamaら(1983) Mol.Cell.Bio.3:280)、ラウス肉腫ウィルスLTR(Gormanら(1982)P.N.A.S.79:6777)、およびモロニーマウス白血病ウィルスLTR(Grosschedlら(1985) Cell 41:885);在来のIgプロモーター等を含む、任意の強力なプロモーターに接続され得る。
【0083】
トランスジェニック
本発明の核酸は、トランスジェニック非ヒト植物もしくは動物、または細胞株における部位特異的遺伝子改変を生じるために使用され得る。本発明のトランスジェニック細胞は、導入遺伝子として存在する本発明による核酸を1個または複数含んでいる(この定義には、導入遺伝子を含むよう形質転換された親細胞およびそれらの子孫が含まれる)。多くの態様において、トランスジェニック細胞は、本発明に係る核酸を通常は保有または含有していない細胞である。トランスジェニック細胞が本発明の核酸を天然に含有している態様においては、その核酸は、細胞内の天然の位置ではない位置に存在すると考えられ、即ち細胞のゲノム物質内に非天然の位置で組み込まれているであろう。内因性遺伝子座を改変したトランスジェニック動物は、相同的組み換えを介して作製され得る。または、核酸構築物は、ゲノム内へ無作為に組み込まれる。安定的な組み込みのためのベクターには、プラスミド、レトロウイルスおよびその他の動物ウイルス、YAC等が含まれる。
【0084】
本発明のトランスジェニック生物には、内因性遺伝子の発現が、排除されない場合には少なくとも減少している、内因性ノックアウトである細胞および多細胞生物、例えば植物および動物が含まれる。関心対象のトランスジェニック生物には、タンパク質またはその異型が、それが通常発現しない細胞または組織において発現しており、かつ/またはそのような細胞または組織において通常は存在しないレベルで発現している、細胞および多細胞生物、例えば植物および動物も含まれる。
【0085】
相同的組替えのためのDNA構築物は、所望の(1個以上の)遺伝学的改変を有しており、標的遺伝子座と相同な領域を含む、本発明の遺伝子の少なくとも一部を含むと考えられる。無作為組み込みのためのDNA構築物には、組み換えを媒介するための相同領域が含まれている必要はない。都合のよいことには、ポジティブ選択およびネガティブ選択のためのマーカーが含まれる。相同的組替えを介して標的遺伝子を改変した細胞を産生するための方法は、当技術分野において既知である。哺乳動物細胞をトランスフェクトするための様々な技術については、Keownら(1990)、Meth.Enzymol.185:527-537を参照のこと。
【0086】
胚性幹(ES)細胞については、ES細胞株が使用されてもよいし、または胚細胞が、例えばマウス、ラット、モルモット等の宿主から新鮮に得られてもよい。そのような細胞は、適切な繊維芽細胞フィーダー層の上で増殖させられるか、または白血病阻止因子(LIF)の存在下で増殖させられる。ESまたは胚細胞が形質転換された場合、それらはトランスジェニック動物を作製するために使用され得る。形質転換の後、細胞は、適切な培地中でフィーダー層上に播かれる。構築物を含有している細胞は、選択培地を利用することにより検出され得る。コロニーが増殖するのに十分な時間の後、それらは選び取られ、構築物の相同的組み換えまたは組み込みの発生に関して分析される。次いで、陽性であるコロニーが、胚操作および胚盤胞注入のために使用され得る。胚盤胞は、4〜6週齢の過排卵雌より得られる。ES細胞がトリプシン処理され、改変した細胞が胚盤胞の胞胚腔へと注入される。注入の後、胚盤胞が偽妊娠雌の各子宮角に戻される。次いで、雌を満期に到達させ、得られた子孫を構築物に関してスクリーニングする。発現型の異なる胚盤胞および遺伝学的に改変した細胞を提供することにより、キメラ子孫は容易に検出され得る。
【0087】
キメラ動物は、改変遺伝子の存在に関してスクリーニングされ、改変を有している雄および雌がホモ接合性子孫を作製するために交配される。遺伝子改変が、発達中のある時点で致死を引き起こす場合には、組織または器官が、同種異系もしくは類遺伝子性の移植片もしくは移植物として、またはインビトロ培養物中に維持され得る。トランスジェニック動物は、実験動物、家畜等の任意の非ヒト哺乳類であり得る。トランスジェニック動物は、機能研究、薬物スクリーニング等において使用され得る。トランスジェニック動物の使用の代表的な例には、下記のものが含まれる。
【0088】
トランスジェニック植物は、類似の様式で作製され得る。トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物体を調製する方法は、米国特許第5,767,367号;第5,750,870号;第5,739,409号;第5,689,049号;第5,689,045号;第5,674,731号;第5,656,466号;第5,633,155号;第5,629,470号;第5,595,896号;第5,576,198号;第5,538,879号;第5,484,956号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されている。トランスジェニック植物体を作製する方法は、Plant Biochemistry and Molecular Biology(LeaおよびLeegood編、John Wiley&Sons)(1993)pp.275-295にも概説されている。簡潔には、植物種の性質に依って適当な植物細胞または組織が収穫される。そのため、ある種の例においては、プロトプラストが単離されると考えられ、そのようなプロトプラストは多様な異なる植物組織、例えば葉、胚軸、根等より単離され得る。プロトプラスト単離のためには、収穫された細胞が、細胞壁を除去するためセルラーゼの存在下でインキュベートされる(ここで、正確なインキュベーション条件は、細胞の由来した植物および/または組織の型に依って変動する)。次いで、ふるい分けおよび遠心分離により、得られた細胞砕片から、得られたプロトプラストが分離される。プロトプラストを使用する代わりに、体細胞を含む胚形成外植片が、トランスジェニック宿主の調製のために使用されてもよい。細胞または組織の収穫の後、関心対象の外因性DNAが、植物細胞へ導入され、そのような導入には、多様な異なる技術が利用可能である。単離されたプロトプラストを得ることにより、多価陽イオン、例えばPEGまたはPLO存在下における、関心対象の外因性コード配列を含む、裸のDNA、例えばプラスミドとのプロトプラストのインキュベーション;および関心対象の外因性配列を含む裸のDNAの存在下での、プロトプラストの電気穿孔を含む、DNA媒介性の遺伝子移入プロトコルを介した導入の機会が生じる。次いで、外因性DNAの取り込みに成功したプロトプラストを選択し、カルスへ成長させ、適切な量および比率の刺激因子、例えばオーキシンおよびサイトカイニンとの接触を通じて、最終的にはトランスジェニック植物体へと成長させる。胚形成外植片を用いる場合、標的体細胞に外因性DNAを導入する便利な方法は、粒子加速プロトコルまたは「遺伝子銃」プロトコルの使用を介したものである。次いで、得られた外植片を、キメラ植物体へと成長させ、交雑させ、トランスジェニック子孫を得る。前記の裸のDNAアプローチの代わりに、トランスジェニック植物を作製するもう一つの便利な方法は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)により媒介される形質転換である。アグロバクテリウムにより媒介される形質転換では、外因性DNAを含む共組み込み(co-integrative)またはバイナリー・ベクターを調製し、次いで、適切なアグロバクテリウム株、例えばA.ツメファシエンス(A.tumefaciens)へと導入する。次いで、得られた細菌を、調製したプロトプラストまたは組織外植片、例えばリーフディスクと共にインキュベートし、カルスを作製する。次いで、カルスを選択条件下で成長させ、選択し、根および苗条の成長を誘導するための成長培地に供し、最終的にはトランスジェニック植物体を作製する。
【0089】
有用性
本発明の非凝集性色素タンパク質およびその蛍光性変異体は、多様な異なる適用において有益であるが、適用は、タンパク質が色素タンパク質であるかまたは蛍光性タンパク質であるかに依って必然的に異なる。これらの各タンパク質型の代表的な用途を以下に記載するが、以下に記載された用途は、単なる代表的なものであり、本発明のタンパク質の使用を下記のものに制限するものでは決してない。
【0090】
色素タンパク質
本発明の色素タンパク質は、多様な異なる適用において有益である。一つの関心対象の適用は、問題としている特定の組成物に色または色素を付与することができる着色料としての本発明のタンパク質の使用である。ある種の態様において特に関心対象であるのは、無毒の色素タンパク質である。本発明の色素タンパク質は、問題とする多様な異なる組成物に取り込まれ得る(問題とする組成物の代表には、食物組成物、医薬品、化粧品、生物、例えば動物および植物等が含まれる)。着色料または色素として使用される場合、所望の色または色素を付与するために十分な量の色素タンパク質が、問題とする組成物に取り込まれる。色素タンパク質は、任意の便利なプロトコルを使用して、問題とする組成物に取り込まれてもよく、利用される特定のプロトコルは、少なくとも部分的には、着色すべき問題とする組成物の性質に必然的に依存すると考えられる。利用され得るプロトコルには、混和、拡散、摩擦、噴霧、注入、および入れ墨等が含まれるが、これらに制限はされない。
【0091】
色素タンパク質は、分析物検出アッセイ法、例えば関心対象の生物学的分析物に関するアッセイ法における標識としても有益であり得る。例えば、色素タンパク質は、分析物に特異的な抗体またはその結合性断片を含む付加体に取り込まれ、その後、米国特許第4,302,536号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されるように、複合試料中の関心対象の分析物に関する免疫アッセイ法において利用され得る。抗体またはその結合性断片の代わりに、本発明の色素タンパク質またはその色素生産性断片は、当業者には容易に明らかであるように、関心対象の分析物と特異的に結合するリガンド、またはその他の成分(moiety)、増殖因子、ホルモン等と抱合されてもよい。
【0092】
さらなる他の態様において、本発明の色素タンパク質は、組替えDNA適用、例えば前記のようなトランスジェニック細胞およびトランスジェニック生物の作製において、選択可能マーカーとして使用され得る。そのため、成功プロトコルまたは非成功プロトコルのいずれかのために、選択可能マーカーとして本発明の色素タンパク質の発現を利用するため、特定のトランスジェニック作製プロトコルを設計することが可能である。従って、特定のプロセスによって作製されたトランスジェニック生物の発現型における、本発明の色素タンパク質の色の出現は、特定の生物が、多くの場合、生物における導入遺伝子の発現を提供する様式で組み込まれる、関心対象の導入遺伝子の保有に成功したことを示すために使用され得る。選択可能マーカーとして使用される場合、本発明の色素タンパク質をコードする核酸は、より詳細に上記で記載されたトランスジェニック産生プロセスにおいて利用され得る。本発明のタンパク質が選択可能マーカーとして利用され得る特定の関心対象のトランスジェニック生物には、トランスジェニック植物、トランスジェニック動物、トランスジェニック細菌、トランスジェニック真菌等が含まれる。
【0093】
さらなる他の態様において、本発明の色素タンパク質(および蛍光性タンパク質)は、国際公開公報第00/46233号に記載されたタンパク質の用途と類似の様式で、日焼け止め、選択的フィルター等として有益である。
【0094】
蛍光性タンパク質
本発明の蛍光性タンパク質(および前記の本発明のその他の構成要素)は、以下のものを含むがこれらに制限はされない、多様な異なる適用において有益である。第一の関心対象の適用は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)の適用における本発明のタンパク質の使用である。これらの適用において、本発明のタンパク質は、第二の蛍光性タンパク質または染料、例えばMatzら、Nature Biotechnology(1999年10月)17:969-973に記載されたような蛍光性タンパク質、例えば米国特許第6,066,476号;第6,020,192号;第5,985,577号;第5,976,796号;第5,968,750号;第5,968,738号;第5,958,713号;第5,919,445号;第5,874,304号(これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載されたようなエクオリア・ビクトリア(Aequoria victoria)由来の緑色蛍光タンパク質またはその蛍光性変異体、その他の蛍光染料、例えばクマリンおよびその誘導体、例えば7-アミノ-4-メチルクマリン、アミノクマリン、ボディピー(Bodipy)FLのようなボディピー(bodipy)染料、カスケードブルー(cascade blue)、フルオレセインおよびその誘導体、例えばフルオレセイン・イソチオシアネート、およびオレゴングリーン(Oregon green)、ローダミン染料、例えばテキサスレッド、テトラメチルローダミン、エオシン、およびエリスロシン、シアニン染料、例えばCy3およびCy5、ランタニド・イオンの大環状キレート、例えば量子染料(quantum dye)等、化学発光染料、例えば米国特許第5,843,746号;第5,700,673号;第5,674,713号;第5,618,722号;第5,418,155号;第5,330,906号;第5,229,285号;第5,221,623号;第5,182,202号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されたものを含むルシフェラーゼと組み合わされて、供与体および/または受容体として機能する。本発明の蛍光性タンパク質を利用したFRETアッセイ法が使用され得る特定の例には、多数の異なる事象のバイオセンサーとしての、タンパク質−タンパク質相互作用、例えば哺乳動物ツー・ハイブリッド系、転写因子の二量体化、膜タンパク質の多量体化、多重タンパク質の複合体形成等の検出(この場合、ペプチドまたはタンパク質が、本発明の蛍光性タンパク質を含むFRET蛍光組合せと共有結合的に連結され、連結されるペプチドまたはタンパク質は、例えばカスパーゼ媒介切断などのためのプロテアーゼ特異的基質であるか、FRETを増加または減少させるシグナル、例えばPKA制御ドメイン(cAMPセンサー)、リン酸化(例えば、リンカー内にリン酸化部位が存在するか、またはリンカーが別のタンパク質のリン酸化/脱リン酸化ドメインとの結合特異性を有するか、またはリンカーがCa2+結合ドメインを有する場合)の受容によりコンフォメーション変化を起こすリンカーである)が含まれるが、これらに制限はされない。本発明のタンパク質が有益である代表的な蛍光共鳴エネルギー転移またはFRETの適用には、米国特許第6,008,373号;第5,998,146号;第5,981,200号;第5,945,526号;第5,945,283号;第5,911,952号;第5,869,255号;第5,866,336号;第5,863,727号;第5,728,528号;第5,707,804号;第5,688,648号;第5,439,797号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されたものが含まれるが、これらに制限はされない。
【0095】
本発明の蛍光性タンパク質が有益であるもう一つの適用は、BRET(生物発光共鳴エネルギー転移)である。BRETは、生物発光供与体から蛍光受容体タンパク質へのエネルギー転移に基づくタンパク質−タンパク質相互作用のアッセイ法である。BRETシグナルは、供与体によって放射された光の量に対する、受容体によって放射された光の量によって測定される。これらの二つの値の比率は、2個のタンパク質が接近するにつれ増加する。BRETアッセイ法は、文献中に充分に記載されている。例えば、米国特許第6,020,192号;第5,968,750号;および第5,874,304号;ならびにXuら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 96:151-156を参照のこと。BRETアッセイ法は、生物発光供与体タンパク質および蛍光受容体タンパク質を、独立に2個の異なる生物学的パートナーと遺伝学的に融合させ、パートナーA-生物発光供与体融合体およびパートナーB-蛍光性受容体融合体を作成することにより実行され得る。例えばリガンドまたは被験化合物によって調整される、融合タンパク質のパートナー部分間の相互作用の変化が、融合タンパク質の生物発光部分、および蛍光部分により放射された光の比率の変化によってモニタリングされ得る。この適用において、本発明のタンパク質は、供与体タンパク質および/または受容体タンパク質として機能する。BRETアッセイ法は、FRETと同様に前述の多くのアッセイ法において使用され得る。
【0096】
本発明の蛍光性タンパク質は、原核細胞および真核細胞におけるバイオセンサーとして、例えばCa2+イオン指示薬として;pH指示薬として、リン酸化指示薬として、その他のイオン、例えばマグネシウム・イオン、ナトリウム・イオン、カリウム・イオン、塩素イオン、およびハロゲン・イオンの指示薬としても有益である。例えば、Caイオンの検出に関して、EF-ハンド・モチーフを含有しているタンパク質は、Ca2+との結合により、細胞質ゾルから膜へと移動することが既知である。これらのタンパク質は、タンパク質の他の領域との疎水性相互作用によって分子内に埋め込まれているミリストイル基を含有している。Ca2+の結合は、ミリストイル基を露出させるコンフォメーション変化を誘導し、次いでミリストイル基が脂質二重層への挿入に利用可能となる(「Ca2+-ミリストイル・スイッチ」と呼ばれる)。そのようなEF-ハンド含有タンパク質のフルオレセント・プロテイン(FP)との融合体は、共焦点顕微鏡検によって細胞質ゾルから原形質膜への移動をモニタリングすることにより、細胞内 Ca2+の指示薬となり得る。この系において使用するのに適したEF-ハンド・タンパク質には、リカバリン(recoverin)(1-3)、カルシニューリンB、トロポニンC、ビシニン(visinin)、ニューロカルシン(neurocalcin)、カルモジュリン、パルブアルブミン等が含まれるが、これらに制限はされない。pHについては、ヒサクトフィリン(hisactophilins)に基づく系が使用され得る。ヒサクトフィリンは、ジクチオステリウム(Dictyostelium)に存在することが既知である、ミリストイル化されたヒスチジンリッチなタンパク質である。それらのアクチンおよび酸性脂質との結合は、細胞質pH変動の範囲内で鮮明にpH依存的である。生細胞において、膜結合は、ヒサクトフィリンとアクチン・フィラメントとの相互作用より優先されるようである。pH6.5においては、それらは、原形質膜および核へと移行する。対照的に、pH7.5においては、それらは、細胞質空間全体に均一に分布する。この分布の変化は可逆的であり、分子表面上のループ内に露出したヒスチジン・クラスターに起因する。細胞質pH変動の範囲内での細胞内分布の復帰は、ヒスチジン残基の6.5というpKと合致する。細胞分布は、タンパク質のミリストイル化には依存しない。FP(フルオレセント・プロテイン)をヒサクトフィリンと融合させることによって、融合タンパク質の細胞内分布は、レーザー走査型共焦点顕微鏡検、または標準的な蛍光顕微鏡検によって追跡され得る。定量的蛍光分析は、細胞のライン・スキャン(line scans)(レーザー走査型共焦点顕微鏡検)またはその他の電子データ分析(例えば、メタモルフ(metamorph)ソフトウェア(Universal Imaging社)を使用)を実行し、細胞集団において収集されたデータの平均をとることにより実施され得る。細胞質ゾルから原形質膜へのヒサクトフィリン-FPの実質的なpH依存性の再分布は、1分〜2分以内に起こり、5分〜10分後には定常状態レベルに達する。逆反応は同様のタイムスケールで起こる。そのため、類似の様式で働くヒサクトフィリン-蛍光性タンパク質融合タンパク質は、哺乳動物生細胞におけるリアルタイムの細胞質ゾルpH変化をモニタリングするために使用され得る。そのような方法は、高処理量の(high throughput)適用、例えば増殖因子受容体活性化(例えば、上皮増殖因子または血小板由来増殖因子)、走化刺激/細胞運動の結果としてのpH変化の測定において、セカンドメッセンジャーとしての細胞内pH変化の検出において、pH操作実験における細胞内pHのモニタリング等において有益である。PKC活性の検出のため、レポーター系は、MARCKS(ミリストイル化アラニンリッチCキナーゼ基質)と呼ばれる分子がPKC基質であるという事実を活用する。それは、ミリストイル化、および負の電荷を有する原形質膜と静電相互作用によって結合する、正の電荷を有するアミノ酸の領域(ED-ドメイン)によって原形質膜につながれている。PKC活性化により、PKCによってED-ドメインはリン酸化され、それにより負に荷電し、静電的反発の結果として、MARCKSが原形質膜から細胞質へと移動する(「ミリストイル-静電スイッチ」と呼ばれる)。MARCKSのミリストイル化モチーフからED-ドメインまでの範囲にわたるMARCKSのN末端の、本発明の蛍光性タンパク質との融合体は、PKC活性の検出系となる。PKCによってリン酸化されると、融合タンパク質は、原形質膜から細胞質ゾルへと移動する。この移動は、標準的な蛍光顕微鏡検または共焦点顕微鏡検によって、例えばセロミクス(Cellomics)技術、またはその他のハイ・コンテンツ・スクリーニング系(High Content Screening systems)(例えば、Universal Imaging社/Becton Dickinson)を使用して追跡される。上記のレポーター系は、ハイ・コンテンツ・スクリーニングにおける適用、例えばPKC阻害剤のスクリーニングにおける適用、およびこのシグナル伝達経路を妨害する可能性のある試薬に関する多くのスクリーニング・シナリオにおける、PKC活性の指示薬としての適用を有している。蛍光性タンパク質をバイオセンサーとして使用する方法には、米国特許第972,638号;第5,824,485号、および第5,650,135号(ならびに、これらの中に引用された参照)に記載されたものも含まれ、これらの開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【0097】
本発明の蛍光性タンパク質は、顕微鏡による画像化、および電子分析を使用することによる、蛍光性レポート基を発現している細胞のアレイの、自動化スクリーニングを含む適用においても有益である。スクリーニングは、薬物発見のため、そして機能ゲノム科学の分野において使用され得る:例えば、本発明のタンパク質は、多細胞の再編成および遊走における変化、例えば内皮細胞による多細胞細管の形成(血管形成)、フルオロブロック・インサート・システム(Fluoroblok Insert System)(Becton Dickinson社)を介した細胞の遊走、創傷治癒、神経突起伸長等を検出するため、全細胞のマーカーとして使用され得る(この場合、タンパク質は、細胞活性、刺激によるキナーゼおよび転写因子の移動(プロテインキナーゼC、プロテインキナーゼA、転写因子NFkB、およびNFATなど);サイクリンA、サイクリンB1、およびサイクリンEなどの細胞周期タンパク質、切断された基質のその後の運動を伴うプロテアーゼ切断、リン脂質などのシグナル伝達の指標としての細胞内位置の変化の、小胞体、ゴルジ装置、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、核、核小体、原形質膜、ヒストン、エンドソーム、リソソーム、微小管、アクチンなどの細胞内構造のマーカーをハイ・コンテンツ・スクリーニングのための道具として用いる(他の蛍光性融合タンパク質と、これらの局在マーカーとの共局在を、細胞内蛍光性融合タンパク質の運動の指標として用いる、またはマーカー単独として用いる)検出等を可能にするペプチド(例えば、ターゲティング配列)およびタンパク質と融合されたマーカーとして使用される)。本発明の蛍光性タンパク質が有益である細胞アレイの自動化スクリーニングを含む適用の例には、米国特許第5,989,835号;ならびに国際公開公報第0017624号;第00/26408号;第00/17643号;および第00/03246号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)が含まれる。
【0098】
本発明の蛍光性タンパク質は、ハイ・スループット・スクリーニング・アッセイ法においても有益である。本発明の蛍光性タンパク質は、24時間を超える半減期を有する安定なタンパク質である。薬物発見のための転写レポーターとして使用され得る、より短い半減期を有する本発明の蛍光性タンパク質の不安定化型も提供される。例えば、本発明によるタンパク質は、より短い半減期を有するタンパク質に由来する推定タンパク質分解シグナル配列、例えばマウス・オルニチン・デカルボキシラーゼ遺伝子由来のPEST配列、マウス・サイクリンB1破壊ボックス、およびユビキチン等と融合させられ得る。不安定化タンパク質およびそれを作製するために利用され得るベクターの記載については、米国特許第6,130,313号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)を参照されたい。シグナル伝達経路、例えばAP1、NFAT、NFkB、Smad、STAT、p53、E2F、Rb、myc、CRE、ER、GR、およびTRE等のプロモーターは、薬物スクリーニングのための本発明の蛍光性タンパク質の不安定化型を使用して検出され得る。
【0099】
本発明のタンパク質は、例えば本発明のタンパク質を特定のドメイン、例えばPKCγCa結合ドメイン、PKCγDAG結合ドメイン、SH2ドメイン、およびSH3ドメイン等と融合させることによって、セカンドメッセンジャー検出剤として使用され得る。
【0100】
本発明のタンパク質の分泌型を、例えば分泌型先導配列を本発明のタンパク質と融合させ、本発明のタンパク質の分泌型を構築することによって、調製することができ、そして、多様な異なる適用において使用され得る。
【0101】
本発明のタンパク質は、蛍光標示式細胞分取適用においても有益である。そのような適用においては、本発明の蛍光性タンパク質が、細胞集団に印をつけるための標識として使用され、次いで、得られた標識細胞集団が、当技術分野において既知である、蛍光標示式細胞分取機により分取される。FACS法は、米国特許第5,968,738号および第5,804,387号(これらの開示は本明細書に参照として組み込まれる)に記載されている。
【0102】
本発明のタンパク質は、動物(例えば、トランスジェニック動物)におけるインビボのマーカーとしても有益である。例えば、本発明のタンパク質の発現を、組織特異的プロモーターによって駆動することができ、そのような方法は、遺伝子治療の研究において、例えば適用の中でも特に導入遺伝子発現の効率の試験において有益である。本発明のタンパク質のこのクラスの適用を例示する、トランスジェニック動物における蛍光性タンパク質の代表的な適用は、国際公開公報第00/02997号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に見出される。
【0103】
本発明のタンパク質のさらなる適用には、細胞または動物への注入の後の、定量的測定(蛍光およびタンパク質)のための較正におけるマーカーとしての適用;細胞生存率をモニタリングするための酸素バイオセンサー機器における、マーカーまたはレポーターとしての適用;動物、ペット、玩具、食物等のためのマーカーまたは標識としての適用等が含まれる。
【0104】
本発明の蛍光性タンパク質は、プロテアーゼ切断アッセイ法においても有益である。例えば、切断不活化蛍光アッセイ法が、本発明のタンパク質を使用して開発され得る。この場合、本発明のタンパク質は、タンパク質の蛍光性を破壊することなく、プロテアーゼ特異的切断配列を含むよう改造される。活性化されたプロテアーゼにより蛍光性タンパク質が切断されると、機能性発色団の破壊により、蛍光は鮮明に減少するであろう。または、切断によって活性化された蛍光が、本発明のタンパク質を使用して現像され得る。この場合、本発明のタンパク質は、発色団の近傍/または内部に付加的なスペーサー配列を含有するよう設計される。機能性発色団の部分がスペーサーによって分割されるため、この異型の蛍光活性は有意に減少するであろう。スペーサーは、2個の同一のプロテアーゼ特異的切断部位によって構成されるであろう。活性化されたプロテアーゼによる分解によって、スペーサーが切り出され、蛍光性タンパク質の2個の残存「サブユニット」が、機能性の蛍光性タンパク質が生成するよう再び組み立てられ得る。多様な異なる型のプロテアーゼ、例えばカスパーゼ等に関するアッセイ法において、上記の型の適用の両方が開発され得る。
【0105】
本発明のタンパク質は、生体膜中のリン脂質組成を決定するためのアッセイ法においても、使用され得る。例えば、特定のリン脂質ラフト(raft)における膜タンパク質の共局在をも可能にする、生体膜内のリン脂質分布のパターンを特定/可視化するための、特定のリン脂質との結合を可能にする本発明のタンパク質の融合タンパク質(または本発明のタンパク質のその他の任意の種類の共有結合的修飾または非共有結合的修飾)が、本発明のタンパク質を用いて達成され得る。例えば、GRP1のPHドメインは、ホスファチジルイノシトール三リン酸(PIP3)に対する高い親和性を有しているが、PIP2に対する親和性は有していない。そのため、GRP1のPHドメインと本発明のタンパク質との間の融合タンパク質が、生体膜内のPIP3リッチな区域を特異的に標識するために構築され得る。
【0106】
さらにもう一つの本発明のタンパク質の適用は、蛍光性タンパク質の加齢に付随する、ある蛍光色のもう一つの色への(例えば、緑色から赤色への)スイッチが、遺伝子発現、例えば発達遺伝子発現、細胞周期依存性遺伝子発現、概日リズム特異的遺伝子発現等の活性化/不活化を決定するために使用される、蛍光タイマーとしての適用である。
【0107】
本発明の非凝集性蛍光性タンパク質は、米国特許出願第60/261,448号(この開示は参照として本明細書に組み込まれる)に記載される、細胞標識適用においても使用され得る。例えば、本発明の非凝集性タンパク質、および細胞表面分子と結合する特異的結合パートナーのメンバー(例えば、細胞表面受容体と結合するリガンド;細胞表面タンパク質と結合する抗体;細胞表面タンパク質と結合する逆受容体(counterreceptor)等)を含む融合タンパク質は、細胞の混合物から1個または複数の細胞集団を同定および/または分画および/または単離するために使用され得る。いくつかの態様において、融合タンパク質は多量体化し、これらの態様のうちのいくつかにおいては、細胞標識適用は多量体化特質を活用する。従って、いくつかの態様において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む固有蛍光性多量体非凝集性融合タンパク質複合体、および細胞標識法における融合タンパク質複合体の使用のための方法を提供する。
【0108】
一つの非制限的な例において、MHC分子の抗原結合部分と本発明のポリペプチドとを含む融合タンパク質が、標準的な分子生物学技術を使用して製造され得る。そのような融合タンパク質は、多量体化するが、凝集はしないと予想される。融合タンパク質の非凝集性構成要素の多量体化特性は、多量体融合タンパク質複合体が形成されるよう、融合タンパク質のMHC部分を寄せ集めるよう機能するであろう。また、多量体融合タンパク質複合体は、ペプチド抗原を負荷され得る。ペプチド抗原が負荷されたそのような融合タンパク質は、同じペプチド抗原に特異的なT細胞受容体を表面上に保持する、Tリンパ球を同定するために使用され得る。融合タンパク質複合体のペプチド抗原およびMHCペプチド提示ドメインは、いずれも変動し得るため、固有蛍光性多量体複合体は、一般に、抗原受容体の抗原(およびMHC)の特異性に基づき、ほぼ無限に多様なTリンパ球を蛍光標識するために使用され得る。
【0109】
従って、抗原受容体の特異性に基づきTリンパ球を検出可能に標識(染色)するために、本発明のタンパク質を使用するための方法を提供することが、本発明のもう一つの局面である。
【0110】
第一の態様において、方法は、複合体のTリンパ球との検出可能な結合を許容するのに十分な時間、および条件の下で、標識すべきTリンパ球を、本発明のポリペプチドを含む固有蛍光性多量体非凝集性融合タンパク質複合体(複合体は、Tリンパ球の抗原受容体に特異的なペプチド抗原およびMHCペプチド提示ドメインを有している)と接触させることを含む。
【0111】
これに関して、リンパ球表面上で複合体が抗原受容体(TCR)と検出可能な結合を達成するのに十分なTリンパ球に対する結合活性を、全体として複合体に付与できるように、複合体のMHCコンテキストにおける、抗原受容体(TCR)のペプチド抗原に対する親和性が十分高い場合に、そのTリンパ球はペプチド抗原に特異的であると言われる。
【0112】
この定義によると、表面上に単一または複数のTCR種を有している単一Tリンパ球を、複数の(典型的には密接に関連している)ペプチド抗原に特異的であると言うことは不可能ではない。そのような場合、TCRは、典型的には、ペプチドのうちの1個に対して、他のものに対するよりも大きな親和性を有するであろう。多くの場合、Tリンパ球がこの定義によって特異的であると言われる(1個以上の)ペプチド抗原は、Tリンパ球によるサイトカイン発現を刺激することもできるであろう;しかしながら、MHC四量体に関する本発明の多量体複合体の利用可能性は、機能的に応答性のTリンパ球の標識および同定に制限されないため、そのような機能的応答は、必要とはされない。
【0113】
そのような標識にとって妥当な条件および時間は、便利なことに、MHC四量体またはMHC/Ig融合体によりTリンパ球を染色するために当技術分野において使用されているものから適合化され得る。
【0114】
例えば、Altmanら、Science 274:94-96(1996)は、およそ0.5mg/mlの四量体の濃度における、1時間、4℃でのインキュベーションによって、MHC四量体を用いて200,000個の細胞障害性リンパ球を染色しており;NIAIDテトラマー・ファシリティ(Tetramer facility)(http://www.niaid.nih.gov/reposit/tetramer/genguide.htm)は、現在、高温のために使用されるインキュベーション時間を減少させ、シグナル対ノイズ比を最適化するために、4℃、室温、そして37℃のそれぞれで、15分〜60分間染色することを推奨している。Gretenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:7568-7573(1998) は、1×106個の末梢血単核細胞を、4°で、3μgのMHCクラスI MHC/Igキメラを用いて染色している。
【0115】
従って、Tリンパ球は、便利なことに、4℃〜37℃の間の温度において、15分〜60分のインキュベーションを使用して、約104個、105個、106個、またはさらには107個の末梢血単核細胞を標識するため、少なくとも約0.1μg、典型的には少なくとも約0.25μg、より典型的には少なくとも約1μg、2μg、3μg、4μg、またはさらには少なくとも5μgの多量体を使用して、本発明の方法において、固有蛍光性多量体複合体を用いて標識され得る。
【0116】
これらの広範な例示的なガイドラインから開始し、MHC四量体、MHC/Ig融合体、および蛍光団抱合抗体を使用したTリンパ球の標識に熟練している者であれば、容易に、最適な標識条件を決定することができよう。使用すべき多量体試薬の量、ならびに染色の温度および時間長に影響する変数には、Tリンパ球に関するもの(複合体のペプチド抗原(およびMHC)に特異的な、試料中のTリンパ球の数、試料中の細胞の総数、細胞試料の型(例えば、全血、赤血球溶解後の全血、フィコール精製末梢血単核細胞(PBMC)画分))、ならびに標識複合体の化学量論および分子量、ペプチド抗原の正体(identity)、ならびに複合体に含まれているMHC対立遺伝子の選択を含む、多量体複合体に関するものが含まれる。
【0117】
標識条件を最適化するために、単一種の多量体複合体を使用し、標識条件(例えば、温度、時間長、複合体濃度、細胞数、細胞濃度、細胞純度)を変動させ、標識すべき細胞試料の平行アリコート(parallel aliquots)を使用した標識反応が容易に実行され得る。陰性対照には、多量体を使用しない標識反応、ペプチドを欠く多量体を使用した標識反応、ならびに/またはMHCペプチド提示ドメイン、および/もしくは細胞試料中のTリンパ球により認識されないと考えられるペプチド抗原を含有している多量体を使用した、標識反応が含まれ得る。各アリコートについての標識効率は、蛍光性複合体と結合する試料中のTリンパ球の、フローサイトメトリーによる計数によって、容易に決定され得る。フローサイトメトリー分野において周知のように、標識された細胞は、未結合の複合体を細胞および培地から除去するため、フローサイトメトリーの前に洗浄され得る。これらの技術および手段は全て、フローサイトメトリー分野において慣例であり、技術者によって慣例的に実行されている。
【0118】
典型的には、標識すべきTリンパ球は、不均一な細胞試料の中に存在し、標識の目標は、この集団内の抗原特異的Tリンパ球を検出し、そして多くの場合には、計数することである。
【0119】
従って、もう一つの局面において、本発明は、細胞試料中の選択された抗原に特異的なTリンパ球を検出するための方法を提供する。その方法は、複合体の、選択された抗原およびMHCに特異的な、試料中のTリンパ球との検出可能な結合を、許容するのに十分な時間および条件の下で、試料を、本発明に係る固有蛍光性多量体複合体(複合体のペプチド抗原は、選択された抗原であり、複合体のMHC提示ドメインは、検出することが望まれるTリンパ球が拘束されると考えられるものである)と接触させること;ならびに次いでそれらに結合した複合体の蛍光により試料中の特異的Tリンパ球を検出することを含む。
【0120】
細胞と結合した蛍光の検出は、典型的には、FACSVantage(商標)、FACSVantage(商標)SE、またはFACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA,USA)のようなフローサイトメーターを使用して実行される。励起のために選択されるレーザーは、多量体複合体、および試料中の同時に検出されることが望まれる、任意の付加的な蛍光団の吸光スペクトルによって決定される。例えば、多量体複合体が内在性DsRedのスペクトル特徴を有している場合には(例えば、融合タンパク質サブユニットが全て内在性DsRed GFP様発色団を有しているようなホモ四量体)、488nm系列を有する標準的なアルゴン・イオン・レーザーが励起のために使用され得る。検出に関して、フィルター・セットおよび検出器の型は、試料中の検出することが望まれる多量体複合体、および任意の付加的な蛍光団の放射スペクトルによって選択されるであろう。例えば、多量体複合体が、約583nmにおいて放射極大を有する内在性DsRedのスペクトル特徴を有している場合、複合体からの蛍光放射は、PEセットアップを使用して、FL2チャンネルにおいて検出され得る。
【0121】
または、細胞と結合した複合体の蛍光は、IMAGN2000(Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA,USA)のような微量蛍光光度計を使用して検出され得る。血球の特徴決定への微量蛍光光度計の適用、およびそのための条件は、特にSeghatchianら、Transfus.Sci. 22(1-2):77-9(2000);Glencrossら、Clin.Lab.Haematol.21(6):391-5(1999);およびReadら、J.Hematother.6(4):291-301(1997)に記載されている。
【0122】
または、細胞と結合した複合体の蛍光は、レーザー走査型サイトメーター(Compucyte Corp.,Cambridge,MA,USA)を使用して検出され得る。
【0123】
細胞と結合した多量体複合体の蛍光は、Skinnerら、「Cutting edge:In situ tetramer staining of antigen-specific T cells in tissues」、J.Immunol.165(2):613-7(2000)に記載されたのと本質的に同様の条件を使用して、タッチ調製物(touch prep)から、サイトスピン調製物(cytospin prep)から、または組織試料からであっても、顕微鏡スライド上で直接検出され得る。
【0124】
Tリンパ球含有試料は、抗凝固収集チューブ(例えば、EDTA含有またはヘパリン含有Vacutainer(商標)チューブ、Becton Dickinson Vacutainer Systems,Franklin Lakes,NJ,USA)へと直接採取された全血試料、典型的には末梢静脈血標本であり得る。
【0125】
有利なことには、Tリンパ球含有試料は、特にChangらの米国特許第4,902,613号および第4,654,312号に記載されたような赤血球(RBC)溶解剤により検出前に処理された全血試料であってもよい(溶解剤は、当技術分野において周知であり、多数の供給元(FACS(商標)Lysing Solution、Becton Dickinson Immunocytometry Systems,San Jose,CA,USA;Cal-Lyse(商標)Lysing Solution、Caltag Labs,Burlingame,CA,USA;No-Wash Lysing Solution、Beckman Coulter,Inc.,Fullerton,CA)より市販されている)。試料は、選択的にRBC溶解の後かつ検出の前に洗浄されてもよい。
【0126】
本発明の方法によってTリンパ球が検出されることが望まれる試料は、末梢血画分、有利なことには単核細胞(PBMC)画分であってもよい。PBMCは、フィコール・パック(Ficoll-Paque)(Amersham Pharmacia Biotech,Piscataway,NJ,USA)による遠心分離、および細胞調製血液収集チューブ(Vacutainer(商標)CPT(商標)Cell Preparation Tube、Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ,USA)における直接遠心分離を含む、周知の当技術分野において認められている技術に従い調製され得る。
【0127】
試料は、有利なことには、Tリンパ球が濃縮された試料、例えば(クローン細胞株もしくは多重クローン培養物のような)培養リンパ球、リンパ球浸潤物を含む組織から抽出もしくは溶出されたリンパ球(例えば、腫瘍生検材料から抽出され、選択的に培養物中で増幅された腫瘍浸潤リンパ球)、リンパ液もしくは胸腺から採取されたリンパ球、または一回目の蛍光標示式細胞分取の後に得られたリンパ球であってもよい。
【0128】
もう一つの態様において、その方法は、さらに、そのようにして検出された抗原特異的Tリンパ球を計数することを含む。計数は、便利なことには、全細胞数、アッセイされた細胞(全細胞、単核細胞、もしくはTリンパ球)の中の抗原特異的Tリンパ球の割合、またはT細胞サブセットの中の抗原特異的リンパ球の割合の形態で表され得る。
【0129】
これらの測定規準のうちのいくつかについては、試料中全体のTリンパ球の総数、または試料中全体の特定のサブセットのTリンパ球の総数を定量することがさらに必要である。
【0130】
従って、他の態様において、本発明の方法は、試料を、少なくとも1個の蛍光団抱合抗体(抗体は、汎T抗体およびT細胞サブセッティング(subsetting)抗体からなる群より選択される)と接触させること、および次いで多量体蛍光複合体および蛍光団抱合抗体からの蛍光を同時に検出することをさらに含む。
【0131】
この態様において有用に使用される抗体には、CD3、CD4、CD8、CD45RO、CD45RA、およびCD27に特異的な抗体が含まれる。理解されるように、抗体は、典型的には、Tリンパ球が検出されている分類学的な種(ヒト、マウス、ラット等)によって発現されるようなマーカーに特異的であるか、またはそれらと交差反応性であろう。
【0132】
フローサイトメトリー分野において周知のように、汎Tおよび/またはTリンパ球サブセッティング抗体は、トリガリング(triggering)データ取得、ライブ・ゲーティング(live gating)、またはゲーティング予備取得データのうちのいずれかまたは全部に使用され得る。
【0133】
多くの試料において、抗原特異的Tリンパ球の存在数は少ないため、本発明の方法においては、多数の事象を取得することが、多くの場合に有利である。さらに、Tリンパ球活性化抗原に特異的な抗体からの蛍光に対するトリガリングまたはゲーティングにより、抗原特異的Tリンパ球を検出するためのシグナル対ノイズ比を改善することが可能である場合もある。
【0134】
従って、もう一つの態様において、方法は、試料を、T細胞活性化抗原に特異的な少なくとも1個の蛍光団抱合抗体と接触させること、および次いで多量体蛍光性複合体および蛍光団抱合抗体からの蛍光を同時に検出することをさらに含む。抗体は、有用なことには、CD69、CD25、CD71、およびMHCクラスII(ヒトTリンパ球の標識には、HLA-DR)からなる群より選択される活性化抗原に特異的なものであり得る。
【0135】
有利なことには、本発明の方法において使用される抗体は、蛍光団、典型的には、その放射が、固有蛍光性多量体T細胞標識複合体、および本方法において同時に使用されるその他の蛍光団の放射から、フローサイトメトリーによって区別可能であるような蛍光団と、直接、予め抱合されるであろう。蛍光団は、有用なことには、フルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)、ペリディニン(peridinin)葉緑素タンパク質(PerCP)、アロフィコシアニン(APC)、テキサスレッド、Alexa Fluor 488(Molecular Probes,Inc.,Eugene Or.)、ならびにタンデム蛍光団PerCP-CY5.5、PE-Cy5、PE-Cy7、およびAPC-Cy7であり得る。抗体は、有用なことには、蛍光団で標識されたストレプトアビジンを使用した第二段階検出を許容する、ビオチンと抱合されてもよい。
【0136】
抗原特異的Tリンパ球を検出し計数するための本発明の方法は、MHC四量体およびMHC/Igキメラの使用のみならず、限界希釈アッセイ法、ELISPOT、および細胞内サイトカイン発現のフローサイトメトリー検出のようなその他の機能アッセイ法も含む、従来技術の方法と同じ目的のために使用され得る(Waldropら、J.Clin.Invest.99(7):1739-50(1997))。従って、方法は、例えば感染に対する、ワクチンに対する、および自己免疫における、CD4+およびCD8+T細胞の応答を評価するために使用され得る。
【0137】
抗原特異的Tリンパ球の検出は、使用される装置に依って、直接的または間接的に分取と連結され、従って、本発明の他の局面において、選択された抗原に特異的な Tリンパ球に関して試料を濃縮するかまたは減少させるための方法を提供する。
【0138】
一般に、本方法は、複合体の、選択された抗原およびMHCに特異的な、試料中のTリンパ球との検出可能な結合を許容するのに十分な時間、および条件の下で、試料を、本発明の固有蛍光性多量体複合体(複合体のペプチド抗原は選択された抗原であり、複合体のMHC提示ドメインは、濃縮または減少が望まれるTリンパ球が拘束されると考えられるものである)と接触させることを含む。結合の後、標識されたTリンパ球は、それらと結合した複合体の蛍光に基づき、濃縮されるかまたは減少させられる。
【0139】
そのような方法は、便利なことには、蛍光標示式細胞分取器を使用して実行される(本発明の多量体複合体からの蛍光に、少なくとも部分的に基づく分取は、細胞が除去される試料を減少させ、細胞が置かれるアリコートを濃縮する)。
【0140】
しかしながら、蛍光標示式細胞分取以外の手段を使用して、細胞を濃縮するかまたは減少させるために本発明の多量体を使用することも可能である。
【0141】
例えば、TCR結合複合体の超常磁性粒子とのさらなる抱合により、蛍光測定的にではなく磁気的に、多量体で特異的に染色されたTリンパ球を分離することができる。これは、例えば融合タンパク質のエピトープに特異的な抗体を使用して行われ得る(例えば、DsRedがGFP様発色団および/または多量体化ドメインに寄与する場合、抗体はClontech Labs、Palo Alto、CA、USAより市販されているDsRed特異的抗体であり得る)。
【0142】
もう一つの例として、TCR結合複合体をビオチンとさらに抱合させ、続いてアビジン親和性基質を使用することにより、蛍光ではなくビオチン/アビジン親和性相互作用を使用して、多量体で特異的に染色されたTリンパ球を分離することができる。この多量体複合体のさらなる標識は、融合タンパク質のエピトープに特異的なビオチン抱合抗体を使用して間接的に行われ得る。または、化学的に、またはBirA基質ペプチドを複合体(典型的には融合タンパク質)へと設計する場合には酵素的に、多量体自体を予めビオチンと抱合させてもよい。
【0143】
本発明の方法に従い抗原特異的T細胞が濃縮された試料は、抗原特異的T細胞の、抗原提示細胞、細胞障害性標的、B細胞、またはその他の免疫系の細胞要素との特異的相互作用の研究のため、インビトロで使用され得る。本発明の方法に従い抗原特異的T細胞が濃縮された試料は、そのような相互作用を改変するために、インビトロで使用されてもよい。例えば、Dal Portoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6671-6675(1993)を参照されたい。
【0144】
本発明の方法に従い抗原特異的T細胞が濃縮された試料は、腫瘍免疫療法のようなインビボの治療的介入にも使用され得る。例えば、Oelkeら、Clin.Cancer Res.6(5):1997-2005(2000)を参照されたい。
【0145】
前記の本発明の抗体は、その他の蛍光性タンパク質からの本発明のタンパク質の区別を含む、多数の適用においても有益である。
【0146】
キット
典型的には、本発明のタンパク質を作成するための要素、例えば本発明のタンパク質のコーディング領域を含むベクターを含む構築物を含む、前記の適用のうちの一つ以上の実施において使用するためのキットも、本発明によって提供される。本発明のキット成分は、典型的には、適当な容器内に、適当な保存媒体、例えば緩衝溶液の中に存在する。本発明のキットには、提供されたタンパク質に対する抗体も存在し得る。ある種の態様において、キットは、各々が本発明のタンパク質をコードする複数の異なるベクター(この場合、ベクターは、異なる環境における、かつ/または異なる条件下での発現、例えば構成性発現のために設計されており、かつ哺乳動物細胞における発現のための強力なプロモーターを含む)、プロモーターのカスタム(custom)挿入およびテーラード(tailored)発現のためのマルチプル・クローニング・サイトを有するプロモーターレス・ベクター等を含む。
【0147】
上記の成分に加え、本発明のキットは、本発明の方法を実施するための説明をさらに含むであろう。これらの説明は、多様な形態で本発明のキット内に存在することができ、1個以上の形態がキット内に存在してもよい。これらの説明が存在し得る一つの形態は、キットの包装材の中、パッケージ・インサートの中等の適当な媒体または基体の上に印刷された情報(例えば情報が印刷された1枚以上の紙)としてである。さらにもう一つの手段は、情報が記録されたコンピューター読取可能媒体、例えばディスク、CD等であろう。さらにもう一つの存在し得る手段は、遠隔地において情報にアクセスするためにインターネットを介して使用され得る、ウェブサイト・アドレスである。任意の便利な手段が、キット内に存在し得る。
【0148】
以下の実施例は、制限のためではなく、例示のために提示されるものである。
【0149】
実験
I.親凝集性野生型花虫綱タンパク質およびその変異体の配列
以下の表は、本発明の9個の特定の野生型花虫綱タンパク質の特性を要約したものである。
【0150】
(表1)
【0151】
II.突然変異誘発
適切な標的置換を含有しているプライマーを用いたPCRにより、部位特異的突然変異誘発を実行した。全ての変異体を、pQE30ベクター(Qiagen)のBamHI制限部位とHindIII制限部位と間にクローニングした。組換えタンパク質は、最初のMetの代わりに配列「MRHHHHHHGS」を含有するよう6×ヒスチジンタグ化した。大腸菌における一晩の発現の後、蛍光性タンパク質を、タロン・メタル・アフィニティ・レジン(TALON Metal Affinity Resin)(CLONTECH)を使用して精製した。SDS-PAGE分析により、タンパク質が少なくとも95%純粋であることが明らかとなった。
【0152】
より詳細には、突然変異誘発は、オーバーラップ伸長法(Ho,S.N.,Hunt,H.D.,Horton,R.M.,Pullen,J.K.,Pease,L.R. Site-directed mutagenesis by overlap extension using the polymerase chain reaction.(Gene 1989,77,51-59)によって実行した。簡潔には、FPコーディング領域の2個のオーバーラップ断片を増幅した。「順方向クローニング」プライマーおよび「逆方向突然変異誘発」プライマーを、5'末断片増幅のために使用し、「順方向突然変異誘発」プライマーおよび「逆方向クローニング」プライマーを、3'末断片増幅のために使用した。PCRは、アドバンテージ(Advantage)(登録商標)2 ポリメラーゼミックス(Polymerase Mix)(CLONTECH)を使用し、100μMの各dNTP、0.2μMの各プライマー、および1ngのプラスミドDNAが添加された1×製造業者の緩衝液25μl(最終容量)中で実施した。サイクル・パラメーターは、95℃10秒、65℃30秒、72℃30秒に設定した。20サイクルを、PTC-200 MJ Researchサーモサイクラーを使用して完了した。初期(野生型)タンパク質をコードするプラスミドを除去するため、5'断片および3'断片を1×TAE緩衝液中で2%低融点アガロース・ゲルより切り出した。DNA溶液を排液させるために、ゲル片を3回の凍結−解凍サイクルに供した。以下のように、全長cDNAを得るため、5'断片および3'断片を組み合わせた。等量の5'断片溶液、3'断片溶液、ならびにアドバンテージ(登録商標)2 ポリメラーゼミックス、緩衝液、およびdNTPを含有している3×PCR混合物を共に混合し、2〜3サイクルの95℃20秒、65℃30分、72℃30秒に供した。次いで、反応物を10倍に希釈し、希釈された試料1μlを、順方向クローニング・プライマーおよび逆方向クローニング・プライマー(前記の5'断片および3'断片の増幅のためのもの)を用いたPCRのための鋳型として使用した。結果として、(1個以上の)標的置換を有する全長コーディング領域を含有しているクローニング用(ready-for-cloning)断片が製造された。
【0153】
変異cDNAをBamHIおよびHindIIIで消化し(クローニング・プライマーはこれらのエンドヌクレアーゼのための部位を含有している)、次いでBamHIおよびHindIIIで消化されたpQE30(Qiagen)へとクローニングした。組換えタンパク質は、N末端に6×Hisタグを含有していた。
【0154】
選択された大腸菌クローンを、光学密度(OD)が0.6になるまで、50ml中37℃で増殖させた。その時点で、組換えFPの発現を0.2 mM IPTGで誘導した。次いで、培養物を一晩インキュベートした。翌日、細胞を遠心分離により採集し、緩衝液(20 mMトリス-HCl、pH8.0;100 mM NaCl)に再懸濁させ、超音波処理により破壊した。タロン・メタル・アフィニティ・レジン(CLONTECH)を使用して可溶性画分から蛍光性タンパク質を精製した。タンパク質は、SDS-PAGEによると少なくとも95%純粋であった。
【0155】
III.製造された変異体
表2は、上記のプロトコルを使用して製造された代表的な非凝集性変異体に関する詳細を提供する。
【0156】
(表2)
【0157】
図14は、前記のようなある種の非凝集性変異体のアライメントを提供している。
【0158】
IV. 代表的な非凝集性変異体の特徴づけ
A.材料および方法
理論pI
理論pIは、「expasy.pku.edu.cn/tools/protoparam」の前に「http://」、後に「.html」を付けることによって作製され、Appel R.D.、Bairoch A.、Hochstrasser D.F. A new generation of information retrieval tools for biologists:the example of the ExPASy WWW server. Trends Biochem.Sci.1994、19:258-260に記載されているウェブサイト上で利用可能な、ProtParamプログラムを使用して計算した。
【0159】
タンパク質凝集を評価する方法
1.「偽非変性」タンパク質電気泳動。変異タンパク質の凝集特性の迅速な評価のため、本発明者らは、「偽非変性」タンパク質電気泳動と名付けた単純な方法を使用した。この方法は、通常のドデシル硫酸ナトリウム・ポリアクリルアミド・ゲル(SDS-PAG)への非煮沸タンパク質試料の適用に基づく。これらの条件において、FPは蛍光性のままである。さらに、これらの条件は、適用されたタンパク質の超分子構造を維持する。高分子量の凝集したタンパク質は、ゲルの一番上に残り、四量体タンパク質は>100 kDのバンドとして移動する。
【0160】
2.光散乱。この方法は、凝集したタンパク質の粒子による溶液中での光散乱に基づく。そのような粒子のサイズおよび量が大きいほど、光散乱は大きくなる。光散乱は、光の波長に依存するため(短波の方が散乱がはるかに顕著である)、凝集は吸光スペクトルの一般的な傾斜をもたらす。一般に、より短い波長(凝集していないタンパク質の吸光が最小となる)における吸光の、より長い波長(凝集していないタンパク質の吸光が極大となる)における吸光に対する比率により、凝集を評価することが好ましい。例えば、E57の場合には、吸光(400nm)/吸光(566nm)のような吸光の比率を測定することにより、凝集を評価することができる。凝集していないタンパク質の試料においては、この比率はゼロに近いはずである。
【0161】
変異体を、凝集を阻止しない同じ緩衝条件の下で、1mg/mlの濃度で試験した。
【0162】
3.哺乳動物細胞株における輝度。特定の変異体を、C1ベクター(CLONTECH)を使用して、哺乳動物細胞株フェニックス(Phoenix)へと一過性トランスフェクトした。凝集は、蛍光顕微鏡を使用して、FPを発現している細胞の数の視覚的な検査によって評価した。
【0163】
4.インビボの凝集の正確な動力学を生存細胞において測定することは困難であるため、この過程は不明瞭である。おそらく、より明るい細胞が一般的にはより顕著なFP凝集物を示すため、凝集はFP濃度に依存する。にも関わらず、シグナルが可視となるやいなや、低蛍光性細胞ですら、凝集像が観察され得る。これは、凝集にとって十分なFP濃度の閾値が極めて低いことを示している。
【0164】
精製されたFPの凝集は、さらにインビトロで観察される。例えば、色または蛍光の損失なしに、ほぼ全ての花虫綱FPが溶液(PBS)から部分的に沈殿する。精製されたFPの凝集を可視化するため、本発明者らは、非加熱タンパク質試料の不連続SDS-PAGEに基づく「偽非変性」タンパク質電気泳動を使用した(Baird,G.S.,Zacharias,D.A.およびTsien,R.Y.(2000) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97,11984-11989)。これらの条件の下で、FPは、蛍光特性のみならず超分子構造をも保持し:高分子量の凝集したタンパク質はゲルの一番上に残り、オリゴマーは高分子量のバンドとして移動する。
【0165】
B.結果
赤色蛍光drFP583が、突然変異誘発に供された最初のタンパク質であった。E57と名付けられた、DsRed(哺乳動物細胞における発現のために最適化された、改変されたコドン使用を有するdrFP583の市販されている型)の改良された変異体を、親遺伝子として使用した(表2)。置換R2A、K5E、K9T(異なる組み合わせ)を含有するE57の変異体を製造した。大腸菌における発現および精製の後、これらのタンパク質を、偽非変性PAGE(上記参照)により分析した。全ての変異体が、親E57と比較して低いレベルの凝集を示し、R2A置換は、この結果に最も強い影響を及ぼすようであった(示していない)。凝集を示さず(図15)、励起−放射極大、蛍光輝度、および成熟速度に関してはE57と極めて類似していた、これらの3個の置換(R2A、K5E、およびK9T)全てを含有しているE57-NAと呼ばれる変異体を、最適なタンパク質として選択した。
【0166】
E57-NAは、哺乳動物細胞において優れた蛍光イメージを示した(図16)。大部分の細胞において、核および核小体が明白に可視であり、細胞の境界および過程が明確であった。対照的に、E57発現細胞の蛍光は不明瞭であり、可視の細胞内構造は存在しなかった。蛍光シグナルの境界は、しばしば、細胞の境界および過程と一致しなかったため、細胞は丸形に見えた。従って、インビボおよびインビトロ両方の試験によって、E57-NAタンパク質が低凝集性であることが確認された。重要なこととして、他の研究室におけるE57-NAの予備試験により、細胞株(B.Angres,Clontech,Palo-Alto,CA,USA、個人的通信)、アフリカツメガエル(Xenopus)胚(A.Zaraisky,IBCh,Moscow,Russia、個人的通信)、および植物(A.Touraev,IMG,Vienna Biocenter,Vienna,Austria、個人的通信)における発現の際の、DsRedおよびE57の両方と比較して、このタンパク質の大きく減少した毒性が示された。現在、E57-NAはDsRed2としてClontechより市販されている。
【0167】
最近、経時的に色を変化させるため「Timer」と命名された、関心対象のDsRedの変異体が、記載された。このタンパク質の非凝集性型を製造するため、本発明者らは、前述の3個の置換を利用した。親Timerと事実上同じ成熟特性を所有しているが、偽非変性PAGEでは凝集物を形成しない(図15)、新規の変異体Timer-NAを製造した(表2)。哺乳動物細胞において、TimerとTimer-NAとの間の差異は、E57とE57-NAとの間の差異と類似していた(図16)。
【0168】
次に標的としたFPは、616nmにピークを有する赤色にシフトした蛍光を示すds/drFP616(6/9Q)であった。このタンパク質は、2個の赤色FP(dsFP593およびdrFP583)の組替え(shuffling)の後、無作為突然変異誘発を行うことにより製造された。しかしながら、ds/drFP616は極めて高い凝集を示した。E57およびTimer(図14、表2)と同様の、ds/drFP616のN末端領域の5位および9位の2個のLys残基の変異は、偽非変性PAGEにおける凝集したタンパク質量の有意な減少をもたらしたが、Lys変異体ds/drFP616-K5E/K9Tには依然として残存する凝集が検出された(示していない)。タンパク質産生大腸菌クローンのスクリーニングの後、偽非変性PAGEにおける凝集の完全な欠如を示すものを選択した(図15)。配列分析により、このクローンが、タンパク質のN末端領域に2個の付加的な変異(クローニング手法の間に偶然欠失したSer-2およびCys-3)を含有していることが明らかとなった。真核細胞において発現させると、ds/drFP616-NA(6/9QNA)と名付けられたその変異体は、E57-NAおよびTimer-NAと類似する、蛍光イメージの有意な改善を示した。親ds/drFP616の、明るいが、完全に構造化されていないブロット様のイメージとは対照的に、ds/drFP616-NAは、より均一に核および細胞質に分布していた(図16)。
【0169】
その後、無作為突然変異誘発により先に製造された改良変異体(表2)に基づき、前記の突然変異誘発戦略を、異なる色の4個のFP:緑色のzFP506タンパク質、黄色のzFP538タンパク質、赤色のasFP595タンパク質、および緑がかった青色(cyan)のamFP486タンパク質に適用した。大腸菌において発現させると、変異タンパク質は、対応する野生型タンパク質(未公開のデータ)と比較して、より大きな輝度、およびより速く、より完全なタンパク質折り畳みを示した。しかしながら、導入された置換は、これらのFPの凝集特性には影響を及ぼさなかった。凝集傾向を減少させる試みにおいて、タンパク質のN末端近傍の全てのリジンを変異させた(図14、表2)。得られた二次タンパク質変異体のインビトロ分析では、凝集が確認されなかった(図15)。さらに、4個の非凝集性変異体(zFP506-N66M-NA、zFP538-M129V-NA、amFP486-K68M-NA、およびasFP595-M35-5-NA)は、E57-NA、Timer-NA、およびds/drFP616-NAと類似した、哺乳動物細胞における蛍光イメージの明白な改善を示した(図16、amFP486およびasFP595に関するイメージは示していない)。
【0170】
C.結論
要約すると、花虫綱FPのN末端近傍の塩基性残基は、タンパク質凝集物の形成において顕著な役割を果たすと結論付けられる。タンパク質凝集に対する単一アミノ酸置換の有意な効果の例は、多数、立証されている。同様に、FP内の1〜3個の残基の置換は、タンパク質可溶性の相当の増加をもたらした。
【0171】
V.付加的な特徴決定
【0172】
(表3)改変されたpIを有するE57に基づく変異体の特性
aこの方法は、非煮沸タンパク質試料のSDS-PAGEへの適用に基づく。これらの条件では、FPは蛍光性であり、電気泳動の条件は超分子構造を保存する。
b比率:(吸光(400nm)−吸光(650nm)/(吸光(566nm)−吸光(650nm))
【0173】
上記の考察および結果より、本発明が、重要な新規変異蛍光性タンパク質、およびそれらをコードする核酸を提供することが明らかである(本発明の変異体は、参照発色/蛍光タンパク質と比較した場合、改善された特質、即ち非凝集性を有し、かつ本発明のタンパク質および核酸は、多様な異なる適用において有益である)。そのため、本発明は、当技術分野にとっての有意な貢献である。
【0174】
この明細書中に引用された全ての刊行物および特許出願は、あたかも個々の刊行物または特許出願が、各々参照として組み込まれることが特別にかつ個々に示されたかのごとく、参照として本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日より前の開示に関するものであり、本発明が、先行発明のためそのような出版物に先行する権利を有することの承認として解釈されるべきではない。
【0175】
本発明を、理解の明確のため、例示および具体例によってある程度詳細に記載したが、本発明の教示を考慮することにより、添付の請求請求の範囲の趣旨または範囲から逸脱することなく、ある種の変化および改変が、本発明に対してなされ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】野生型amFP486(NFP-1)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:01および02)を提供する。
【図2】野生型zFP506(NFP-3)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:03および04)を提供する。
【図3】野生型zFP538(NFP-4)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:05および06)を提供する。
【図4】野生型drFP583(NFP-6)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:07および08)、ならびにそれらの代替型のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を提供する。
【図5】野生型asFP600(NFP-7)のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:09および10)を提供する。
【図6】6/9Qハイブリッド・タンパク質のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:11および12)を提供する。
【図7】変異型E57-NA(DsRED2)のヌクレオチド配列(配列番号:13)を提供する。
【図8】変異型E5-NA(Timer NA)のヌクレオチド配列(配列番号:14)を提供する。
【図9】FP3-NAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:15および16)を提供する。
【図10】NFP4-NAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:17および18)を提供する。
【図11】mut32-NAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:19および20)を提供する。
【図12】変異FP7-NAのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:21および22)を提供する。
【図13】変異FP7-NAダイマーのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列(配列番号:23および24)を提供する。
【図14】蛍光性タンパク質のN末端領域の多重アラインメント。配列の上の矢印は、GFPおよびdrFP583の構造に基づくタンパク質内の第1βシートを表す。非凝集性変異体において置換されたアミノ酸残基は影付きである。
【図15】親蛍光性タンパク質(奇数レーン)およびそれらの非凝集性変異体(偶数レーン)の偽非変性ゲル電気泳動。写真はUV照明の下で得られた。凝集したタンパク質は、濃縮用ゲルに観察される。オリゴマー・タンパク質は、高分子量のバンドとして分離ゲル中を移動する(FPの単量体および四量体の予想MWは、約27および108 kDaである)。分子量標準が、ゲルの左側に示されている。レーン:1−DsRed変異体E57;2−E57-NA;3−DsRed変異体Timer;4−Timer-NA;5−ds/drFP616;6−ds/drFP616-NA;7−zFP506変異体N66M;8−zFP506-N66M-NA;9−zFP538変異体M129V;10−ZFP538-M129V-NA;11−amFP486変異体K68M;12−amFP486-K68M-NA;13−asFP595変異体M35-5;14−M35-5-NA;15−EGFP。
【図16】親蛍光性タンパク質(左カラム)および対応する非凝集性蛍光性タンパク質(右カラム)を発現している細胞の蛍光イメージ(詳細に関しては表2を参照のこと)。タンパク質名が左側に示されている。EGFP発現細胞が、周知の非凝集性蛍光性タンパク質として、比較のため示されている(下)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
刺胞動物の凝集性色素タンパク質もしくは蛍光性タンパク質またはその変異体の、非凝集性色素変異体または蛍光性変異体をコードする核酸。
【請求項2】
刺胞動物の色素タンパク質または蛍光性タンパク質が非生物発光性刺胞動物種に由来する、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
非生物発光性刺胞動物種が花虫綱種である、請求項2記載の核酸。
【請求項4】
配列番号:14;15;17;19;21;および23の少なくとも10残基長のヌクレオチド配列と実質的に同じであるか、または同一である残基の配列を有する、請求項1記載の核酸。
【請求項5】
請求項1記載の選択された核酸の断片。
【請求項6】
ベクターおよび請求項1記載の核酸を含む構築物。
【請求項7】
(a)発現宿主において機能性の転写開始領域;
(b)請求項1記載の核酸;および
(c)該発現宿主において機能性の転写終結領域
を含む発現カセット。
【請求項8】
宿主細胞への発現カセットの導入の結果として、染色体外要素の一部として存在するか、または宿主細胞のゲノムへ組み込まれている、請求項7記載の発現カセットを含む細胞またはその子孫。
【請求項9】
色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質を作製する方法であって:
該タンパク質を発現する請求項8記載の細胞を増殖させる段階;および
その他のタンパク質を実質的に含まない該タンパク質を分離する段階
を含む方法。
【請求項10】
請求項1記載の核酸によってコードされるタンパク質またはその断片。
【請求項11】
請求項10記載のタンパク質に特異的に結合する抗体。
【請求項12】
請求項1記載の核酸である導入遺伝子を含む、トランスジェニック細胞またはその子孫。
【請求項13】
請求項1記載の核酸である導入遺伝子を含む、トランスジェニック生物。
【請求項14】
色素タンパク質または蛍光性タンパク質を利用する適用において、請求項10記載のタンパク質を利用する段階を含む改良方法。
【請求項15】
色素タンパク質または蛍光性タンパク質をコードする核酸を利用する適用において、請求項1記載の核酸を利用する段階を含む改良方法。
【請求項16】
請求項1記載の核酸を含むキット。
【請求項17】
請求項1記載の核酸を作製する方法であって、刺胞動物の凝集性色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質をコードする配列の、少なくとも1個のN末端残基コドンを調整して該核酸を作製する段階を含む方法。
【請求項18】
少なくとも1個の残基が塩基性残基である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
調整が、塩基性残基の中性残基への置換である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
塩基性残基がlysまたはargである、請求項18記載の方法。
【請求項1】
刺胞動物の凝集性色素タンパク質もしくは蛍光性タンパク質またはその変異体の、非凝集性色素変異体または蛍光性変異体をコードする核酸。
【請求項2】
刺胞動物の色素タンパク質または蛍光性タンパク質が非生物発光性刺胞動物種に由来する、請求項1記載の核酸。
【請求項3】
非生物発光性刺胞動物種が花虫綱種である、請求項2記載の核酸。
【請求項4】
配列番号:14;15;17;19;21;および23の少なくとも10残基長のヌクレオチド配列と実質的に同じであるか、または同一である残基の配列を有する、請求項1記載の核酸。
【請求項5】
請求項1記載の選択された核酸の断片。
【請求項6】
ベクターおよび請求項1記載の核酸を含む構築物。
【請求項7】
(a)発現宿主において機能性の転写開始領域;
(b)請求項1記載の核酸;および
(c)該発現宿主において機能性の転写終結領域
を含む発現カセット。
【請求項8】
宿主細胞への発現カセットの導入の結果として、染色体外要素の一部として存在するか、または宿主細胞のゲノムへ組み込まれている、請求項7記載の発現カセットを含む細胞またはその子孫。
【請求項9】
色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質を作製する方法であって:
該タンパク質を発現する請求項8記載の細胞を増殖させる段階;および
その他のタンパク質を実質的に含まない該タンパク質を分離する段階
を含む方法。
【請求項10】
請求項1記載の核酸によってコードされるタンパク質またはその断片。
【請求項11】
請求項10記載のタンパク質に特異的に結合する抗体。
【請求項12】
請求項1記載の核酸である導入遺伝子を含む、トランスジェニック細胞またはその子孫。
【請求項13】
請求項1記載の核酸である導入遺伝子を含む、トランスジェニック生物。
【請求項14】
色素タンパク質または蛍光性タンパク質を利用する適用において、請求項10記載のタンパク質を利用する段階を含む改良方法。
【請求項15】
色素タンパク質または蛍光性タンパク質をコードする核酸を利用する適用において、請求項1記載の核酸を利用する段階を含む改良方法。
【請求項16】
請求項1記載の核酸を含むキット。
【請求項17】
請求項1記載の核酸を作製する方法であって、刺胞動物の凝集性色素タンパク質および/または蛍光性タンパク質をコードする配列の、少なくとも1個のN末端残基コドンを調整して該核酸を作製する段階を含む方法。
【請求項18】
少なくとも1個の残基が塩基性残基である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
調整が、塩基性残基の中性残基への置換である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
塩基性残基がlysまたはargである、請求項18記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−131260(P2009−131260A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309300(P2008−309300)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願2002−567969(P2002−567969)の分割
【原出願日】平成14年2月20日(2002.2.20)
【出願人】(500321863)クローンテック ラボラトリーズ インク. (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【分割の表示】特願2002−567969(P2002−567969)の分割
【原出願日】平成14年2月20日(2002.2.20)
【出願人】(500321863)クローンテック ラボラトリーズ インク. (2)
【Fターム(参考)】
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