説明

非同期同期通信網の変換装置、方法、プログラム、記録媒体及び通信システム

【課題】レガシー多重通信装置間の同期通信の実現。
【解決手段】レガシーIP変換器12−1にクロックマスタ、残りのレガシーIP変換装置12−2,3にクロックスレーブを設定。クロックマスタの特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定。クロックマスタレガシーIP変換器12−1はマルチフレームデータをチャネル分散したIPパケットによりIPネットワーク18に送信。クロックスレーブレガシーIP変換器12−2〜6は、受信したIPパケットをチャネル毎の受信バッファに蓄積し、全チャネルを読み出しマルチフレームデータとして同期送信。マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に可変クロック部を中心周波数に設定して起動、起動後に受信バッファ量がセンタ値に安定するように可変クロック部のクロック周波数を制御して、クロックマスタ側にクロック同期させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期通信網でマルチフレームデータを同期伝送するレガシー多重通信装置を非同期通信網であるIP通信網に接続してレガシー機器間で通信するための非同期同期通信網の変換装置、方法、プログラム、記録媒体及び通信システムに関し、特に外部的な網同期を取ることなく非同期通信網を介して同期通信網のレガシー多重通信装置間でマルチフレームデータを通信するための非同期同期通信網の変換装置、方法、プログラム、記録媒体及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レガシー機器と同期通信網により構成される通信設備が存在しており、主に光ファイバーで同期通信網を構築し、回線交換に使用する2.048Mbpsや1.544Mbps等の多重伝送装置を収容し、クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送するレガシーデータ通信を行っている。
【0003】
このような同期通信網のレガシー多重伝送装置にあっては、相手装置の受信データから同期クロックを抽出することで、相互間でクロックに同期したデータ通信を行っている。
【0004】
しかしながら、従来のレガシー機器と同期通信網により構成される通信設備ついては、非同期通信網であるインターネットプロトコルネットワーク(以下「IP通信網」という)への変更が望まれている。これは光ファイバーによる通信インフラを、製品の製造販売が既に終わっているために高額となっている特殊なレガシー機器しか端末として接続できない同期通信網として使用するよりも、IP通信網とすることの方が、接続できる機器が飛躍的に増大し、機器のコストも下がるため、近年の主流となっている。
【特許文献1】特開平9−252292号公報
【特許文献2】特開2002−217945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、新設の光ファイバーの場合は問題ないが、既に大量のレガシー機器を接続した既設の同期通信網、例えば高速道路に沿って幹線光ファイバーケーブルを設置した通信設備の場合、同期通信網を非同期通信網であるIP通信網に変更することは、既存の同期通信端末である回線交換などに使用するレガシー多重伝送装置が全て使用不可能となるため、その実現が非常に困難となっている。
【0006】
即ち、同期通信網であれば伝送データから同期クロックを抽出できるが、IP通信網の場合、完全非同期通信網のためデータから同期クロックは抽出できず、同期クロックを必要とするレガシー多重伝送装置の同期通信ができない。
【0007】
またIP通信網の場合、一定の間隔でデータを送信しても通信網の遅延やゆらぎ等のため、一定の問隔でデータを受信することができず、このような通信状況からIP通信網を経由して安定した同期通信を行うことは非常に困難である。仮に、IP通信網を経由してレガシー同期通信を実現したとしても、定常的に同期外れによる伝送エラーが発生するか、クロック制御が常時頻繁に発生し、安定動作に至らない。
【0008】
このため従来のレガシー機器間の同期通信をIP通信網で実現する場合、対向するレガシー機器がIP通信網の外部で網同期が取れていることを前提としており、IP通信網のみでレガシー機器間の同期通信を実現することは困難であった。
【0009】
特に、クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する回線交換に使用しているレガシー多重通信装置間の同期通信をIP通信網で実現する場合、マルチフレームデータをチャネル分散したIPパケットとしてIP通信網に送出しているため、IPパケットの受信状態はチャネル毎にランダムとなり、IP通信網だけでは同期の確保が困難であり、IP通信網の外部の網同期によりチャネル単位に同期をとらなければならず、そのためIP通信網への変更を更に困難なものとしている。
【0010】
本発明は、外部の網同期を必要とすることなく同期通信網による複数チャネルのマルチフレームデータをチャネル分散によりIP通信網に伝送して同期多重通信装置間の安定した同期通信を実現する同期非同期通信網の変換装置、方法、プログラム、記録媒体及び通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(装置)
本発明は同期非同期通信変換のための変換装置を提供する。本発明は、クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる同期非同期通信網の変換装置に於いて、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定部と、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して非同期通信網に送信する送信変換部と、
非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
クロックマスタの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御部と、
クロックスレーブの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に可変クロック部を中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量がセンタ値に安定するように可変クロック部のクロック周波数を制御して、クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させる第1クロックスレーブ同期制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
ここで、受信変換部は、電源投入に伴う立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データ(例えばメイクビジー処理によるマークホールドデータ等)としたマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルから受信バッファに蓄積したデータの読出し送信に切り替える。
【0013】
受信変換部は、運用中にマスタチャネルの異常が回復した立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替える。
【0014】
受信変換部は、運用中にマスタチャネル以外のチャネルの異常が回復した立上げ時に、異常回復チャネルの受信バッファをクリアすると共に無信号データをマルチフレームデータに含めて同期多重通信装置に同期送信し、異常回復チャネルの受信バッファ量がマスタチャネルの受信バッファ量に達した時に、バッファ蓄積データの読出し送信に切り替える。
【0015】
クロックスレーブ同期制御部は、
クロック周波数を中心周波数foから起動した後に受信バッファ量Cがバッファ変動許容範囲の上限値Cmaxを超えた場合は所定の最大調整周波数fmaxに変更し、変更後に受信バッファ量Cがセンタ値Coに戻った時に最大調整周波数fmaxを中心周波数foに所定のオフセット周波数αを加算した周波数(fo+α)に変更する処理を、オフセット周波数をα、2α、3α・・・と順次増加させながら繰り返し、
また、クロック周波数を中心周波数foから起動した後に受信バッファ量Cがバッファ変動許容範囲の下限値Cminを下回った場合は所定の最小調整周波数fminに変更し、変更後に受信バッファ量Cがセンタ値Coに戻った時に最小調整周波数fminを中心周波数foから所定のオフセット周波数αを減算した周波数(fo−α)に変更する処理を、オフセット周波数をα、2α、3α・・・と順次増加させながら繰り返す。
【0016】
同期多重通信装置はレガシーインタフェースを備えた装置であり、同期通信網の機器はインターネットプロトコルインタフェースを備えた機器である。
【0017】
(方法)
本発明は同期非同期通信網の変換方法を提供する。本発明は、
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる同期非同期通信網の変換方法に於いて、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定ステップと、
同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して非同期通信網に送信する送信変換ステップと、
非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に送信する受信変換ステップと、
クロックマスタの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御ステップと、
クロックスレーブの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に可変クロック部を中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量をセンタ値に安定するように可変クロック部のクロック周波数を制御して、クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御ステップと、
を備える。
【0018】
受信変換ステップは電源投入時のスタートアップ処理として、電源投入に伴う立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルから受信バッファに蓄積したデータの読出し送信に切り替える。
【0019】
(プログラム)
本発明は同期非同期通信の変換のためのプログラムを提供する。本発明のプログラムは、クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる同期非同期通信網の変換装置のコンピュータに、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定ステップと、
同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して非同期通信網に送信する送信変換ステップと、
非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に送信する受信変換ステップと、
クロックマスタの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御ステップと、
クロックスレーブの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に可変クロック部を中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量がセンタ値に安定するように可変クロック部のクロック周波数を制御して、クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【0020】
(記録媒体)
本発明は同期非同期通信の変換プログラムを格納した記録媒体を提供する。本発明の記録媒体は、クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる同期非同期通信網の変換装置のコンピュータに、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、前記クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定ステップと、
記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して非同期通信網に送信する送信変換ステップと、
非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に送信する受信変換ステップと、
クロックマスタの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御ステップと、
クロックスレーブの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に可変クロック部を中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量をセンタ値に安定するように可変クロック部のクロック周波数を制御して、クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御ステップと、
を実行させるプログラムを格納したことを特徴とする。
【0021】
(システム)
本発明は同期非同期通信の変換機能を備えた通信システムを提供する。本発明は、
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを転送する同期多重通信装置を非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網に接続するクロックマスタに設定され、割当チャネルの中の特定の1チャネルをマスタチャネルに設定されたマスタ変換装置と、
他の同期多重通信装置を非同期通信網に接続するクロックスレーブに設定されたスレーブ変換装置と、
を備え、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる通信システムに於いて、
クロックマスタ装置は、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して非同期通信網に送信する送信変換部と、
非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
クロックマスタの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御部と、
を備え、
スレーブ変換装置は、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して非同期通信網に送信する送信変換部と、
非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
クロックスレーブの設定状態で有効となり、マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に可変クロック部を中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量をセンタ値に安定するように可変クロック部のクロック周波数を制御して、クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを転送するレガシー機器である同期多重通信装置と非同期通信網であるIP通信網の間に本発明の変換装置を挿入接続し、複数の変換装置の内の一台をクロックマスタ、残りクロックスレーブに設定し、更に、クロックマスタに設定した変換装置の割当チャネルの特定の1チャネルをクロック同期制御に用いるマスタチャネルに設定し、クロックスレーブを設定した変換装置でマスタチャネルの受信バッファ量を規定のセンタ値に安定させるようにクロック周波数を増減させることでIP通信網を経由したチャネル分散伝送についてクロック同期が実現され、同期多重通信装置から見れば、あたかも同期通信網で接続されたようにチャネル分散による高品質の同期通信をIP通信網により実現することができる。
【0023】
このため既設の同期通信網を非同期通信網であるIP通信網に変更しても、本発明の変換装置を使用することで、IP通信網の外部に網同期を必要とすることなく既設のレガシー同期多重通信装置をそのままIP通信網に接続してチャネル分散による同期通信することができ、既設の光ファイバーのインフラを同期通信網からIP通信網に変更する際の障害がなくなり、接続できる機器が飛躍的に増大し、機器のコストも下がるという様々なメリットが得られる。
【0024】
またクロックスレーブを設定した複数の変換装置において、クロックマスタを設定した特定の変換装置からの割当てチャネルの1つをマスタチャネルとし、このマスタチャネルの受信バッファ量をクロック制御に使用することで、簡単にクロック同期の主従関係が設定でき、且つネットワーク全体として確実にクロック同期を維持することができる。
【0025】
またチャネル分散伝送の場合、システム立上げ時に、変換装置のスタートアップ処理のタイミングやIPパケットの受信タイミング等はチャネル毎にばらばらになるが、同期多重通信装置に対してはIPパケットのチャネル分散伝送で受信した全チャネルのデータを揃えて送出するマルチフレームデータの同期伝送を必要とするが、本発明にあっては、全チャネルの受信バッファをクリアした後に、受信バッファの蓄積データではなく、メイクビジー処理で生成されるマークホールドデータなどの無信号データによるマルチフレームデータの同期伝送を開始することで、受信バッファの蓄積データの状態に依存することなく、確実にマルチフレームデータによる同期伝送を開始できる。
【0026】
また、運用中のチャネルの異常が発生して回復した場合のスタートアップ処理として、異常回復チャネルがマスタチャネルの場合は、電源投入時と同様に全チャネルの受信バッファをクリアして立ち上げることで、マスタチャネルの異常で破綻したクロック同期を回復させることができる。
【0027】
また運用中にマスタチャネル以外のチャネルに異常が発生して回復した場合のスタートアップ処理としては、異常回復チャネルの受信バッファをクリアして無信号データからマルチフレームデータの同期伝送を起動し、受信バッファ量がマスタチャネルの受信バッファ量に達した時にバッファ蓄積データの同期データ伝送に切替えることで、異常回復したチャネルの受信バッファ量を、クロック同期制御に使用しているマスタチャネルの受信バッファ量に連動させてマスタチャネルの受信バッファ量とほぼ等しいところで推移させ、これによってバッファエンプティ等の異常を起こしにくくして、より高品質な同期通信を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は本発明による同期非同期通信網の変換装置を用いた通信システムの説明図である。図1において、レガシー多重伝送装置10−1〜10−5は例えば光ファイバーで構築された同期通信網を使用してデータ同期通信する機器であり、本実施形態にあっては2.048Mbpsのレガシーインタフェースを使用して30チャネル分のデータを時分割配置したマルチフレームデータをクロックに同期して転送する多重伝送装置を対象としている。
【0029】
ここで、レガシー多重伝送装置10−1〜10−6にあっては、30チャネル分のデータを時分割多重したマルチフレームデータを同期伝送することから、1チャネル当たりの帯域幅は64Kbpsとなる。
【0030】
本実施形態のレガシーIP変換器12−1〜12−6のそれぞれは対応するレガシー多重伝送装置10−1〜10−6と非同期通信網であるルーターやスイッチで構成されたIPネットワーク18の間に挿入接続され、IPネットワーク18を介してレガシー多重伝送装置10−1〜10−6の相互間でマルチフレームデータの相互通信を行うようにしている。
【0031】
即ち本実施形態のレガシーIP変換器12−1〜12−6は、同期通信網11−1,11−2のレガシー多重伝送機器10−1〜10−6をレガシーネットワーク14−1〜14−6を介して接続すると共に、非同期通信網15であるIPネットワーク18にイーサネット(R)などのLAN16−1〜16−6により接続している。またレガシーIP変換器12−1〜12−6には固有のIPアドレスが設定されている。
【0032】
レガシーIP変換器12−1〜12−6は、レガシー多重伝送装置10−1〜10−6から受信したマルチフォーマットフレームのデータを同期クロックに基づいてサンプリングして受信した後に、チャネル分散によりチャネル単位にIPパケットを生成して、IPネットワーク18に一定の時間間隔で送出している。
【0033】
またIPネットワーク18からチャネル分散で送られてくるIPパケットを受信し、30チャネルに対応して設けた各受信バッファに対応するIPパケットのパケットデータを格納した後、30チャネル分の受信バッファの蓄積データを一括して読み出してマルチフォーマットフレームを生成して、クロックに同期してレガシー多重伝送装置10−1〜10−6に送出する。
【0034】
図2は本実施形態のレガシーIP変換器12の機能構成を示したブロック図である。図2において、レガシーIP変換器12は、レガシーインタフェース部20、30チャネル分の送信バッファ240−1〜240−30を備えた送信バッファ群24、30チャネル分のパケット組立部260−1〜260−30を備えたパケット組立群26、IPインタフェース部22、30チャネル分のパケット分解部280−1〜280−30を備えたパケット分解群28、30チャネル分の受信バッファ300−1〜300−30を備えた受信バッファ群30、可変クロック部32及びコントロール部34で構成される。
【0035】
コントロール部34はCPUによるプログラムの実行により実現される機能であり、送信変換部38、受信変換部40、クロックマスタ同期制御部42、クロックスレーブ同期制御部44、マスタスレーブ設定部36、スタートアップ部46及び異常時スタートアップ部48を備えている。
【0036】
コントロール部34に設けたマスタスレーブ設定部36は、IPネットワーク18に接続する複数のレガシーIP変換器のうちの特定の装置、例えば図1のレガシーIP変換器12−1にクロックマスタを設定し、残りのレガシーIP変換器12−2〜12−6にはクロックスレーブを設定する。
【0037】
またクロックマスタに設定されたレガシーIP変換器12−1は、レガシーネットワーク14−1を介して接続しているレガシー多重伝送装置10−1の割当チャネルの中の特定の1チャネルを、クロック同期制御に使用するためのマスタチャネルを設定している。
【0038】
一方、クロックスレーブに設定されたレガシーIP変換器12−2〜12−6は、クロックマスタに設定されたレガシーIP変換器10−1の割当てチャネルの中の特定の1チャネルを、クロック同期制御に使用するためのマスタチャネルを設定している。
【0039】
コントロール部34に設けた送信変換部38は、レガシー多重伝送装置10から伝送されたマルチフレームデータの同期通信を可変クロック部32からのクロックに同期してサンプリングし、30チャネル分のデータに分散して、送信バッファ240−1〜240−30のそれぞれに蓄積した後、IPインタフェース部22の機能例えばイーサネット(R)の規格に従って可変クロック部32からの同期クロックに基づく一定の時間間隔で送信バッファ240−1〜240−30からデータを読み出し、パケット組立部260−1〜260−30でIPパケットを生成し、IPネットワーク18に送信させる。
【0040】
受信変換部40は、IPネットワーク18から受信したIPパケットからパケット分解部280−1〜280−30のそれぞれで分解して取り出したパケットデータを、対応する受信バッファ300−1〜300−30に蓄積させ、可変クロック部32からのクロック信号に同期して、レガシーインタフェース部20により受信バッファ300−1〜300−30から30チャネル分のデータを読み出して時分割配置したマルチフレームデータを生成し、レガシー多重伝送装置10に送信する。
【0041】
クロックマスタ同期制御部42は、マスタスレーブ設定部36によるクロックマスタの設定状態で有効となる。即ち図1にあっては、レガシーIP変換器12−1においてのみクロックマスタ同期制御部42としての機能が有効となる。
【0042】
このようにマスタクロックの設定に基づいて有効となったクロックマスタ同期制御部42は、マスタチャネルに対応した例えば受信バッファ300−1に蓄積された受信バッファ量Cが所定のセンタ値Coに達した際に、可変クロック部32を所定の中心周波数foに固定して起動し、これにより送信信変換部38のチャネル分散によるIPパケットの送信処理、及び受信変換部40のチャネル分散による受信したIPパケットの受信データに基づくマルチフォーマットフレームの同期通信を、固定周波数で発信したクロック信号に基づいて行うことになる。
【0043】
クロックスレーブ同期制御部44は、クロックスレーブの設定状態で有効となる。即ち、図1の場合にはレガシーIP変換器12−2,12−4で有効となる。
【0044】
有効となったクロックスレーブ同期制御部44は、マスタチャネルの受信バッファ300−1に蓄積された受信バッファ量Cが所定のセンタ値Coに達した際に、可変クロック部32を中心周波数foに設定して起動し、起動後にマスタチャネルの受信バッファ300−1の受信バッファ量Cを、センタ値Coに安定するように可変クロック部32のクロック周波数を増減する制御を行い、これによってクロックマスタの設定状態にあるレガシーIP変換器12−1に、クロックスレーブの設定状態にあるレガシーIP変換器12−2〜12−6をクロック同期させる。
【0045】
コントロール部34に設けたスタートアップ部46は、電源投入に伴うレガシーIP変換器12の立上げ時に、全チャネルの受信バッファ300−1〜300−30をクリアすると共に、この段階では蓄積データが存在しないことから、全チャネルをメイクビジー処理として、30チャネル分の無信号データとして例えばマークホールドデータからマルチフォーマットフレームを生成してレガシー多重伝送装置10に対する同期伝送を開始する。
【0046】
即ち、レガシーIP変換器12でIPネットワークに対しチャネル分散伝送を行う場合、立上げ時に受信バッファ300−1〜300−30に対するIPパケットの受信に基づくパケットデータの蓄積は、他のレガシーIP変換器における立上げ動作のばらつきやIPネットワークにおけるばらつきから様々であり、電源を投入しても受信バッファ300−1〜300−30に蓄積データが揃うことはあり得ない。
【0047】
したがって本実施形態にあっては、立上げ時におけるスタートアップ処理として、メイクビジー処理により蓄積データに依存しないマークホールドデータを使用したマルチフォーマットフレームの作成でクロックに同期して、レガシー多重伝送装置10側に同期通信データの送信を開始できるようにしている。
【0048】
このようなメイクビジー処理による起動した後は、受信バッファ量が所定のセンタ値Coに達したチャネルの受信バッファからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替える。
【0049】
なお、無信号データとして生成するマークホールドデータは、音声伝送の場合、オール1のデータであり、これは無音状態を示すデータである。
【0050】
またスタートアップ処理としては、受信バッファ300−1〜300−30のクリアと同時に、送信バッファ240−1〜240−30についてもクリアを行った後に、IPインタフェース部22側のタイミングにより、一定の時間間隔で各チャネルのIPパケットを生成して、IPネットワーク18に送信することになる。
【0051】
コントロール部34に設けた異常時スタートアップ部48は、システムの運用中にチャネル分散伝送を行っているいずれかのチャネルの受信バッファが何らかの異常、例えばネットワーク異常、個別機器異常などが発生して蓄積データが空になるバッファエンプティで破綻し、その後にこの異常が回復した場合のスタートアップ処理を行う。
【0052】
異常時スタートアップ処理には
マスタチャネルの異常回復時のスタートアップ処理
マスタチャネル以外のチャネルの異常回復時のスタートアップ処理
の2つがある。
【0053】
まずマスタチャネルの異常が回復した場合の異常時スタートアップ処理は、全チャネルの受信バッファ300−1〜300−30をクリアすると共に、メイクビジー処理により全チャネルをマークホールドデータとしたマルチフォーマットフレームの同期通信データを生成してレガシー多重伝送装置10−1に対する同期通信を開始し、その後に、受信バッファ量が所定のセンタ値Coに達したチャネルの受信バッファからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替える。
【0054】
これはスタートアップ部46による電源投入による立上げ時のスタートアップ処理と基本的に同じである。即ち、システム運用中にマスタチャネルに通信異常を起こして回復した場合には、レガシーIP変換器12におけるクロック同期制御を伴うチャネル分散伝送は破綻していることから、電源投入時と同様、最初から立ち上げるスタートアップ処理を行う。
【0055】
一方、マスタチャネル以外のチャネルの受信バッファ、即ち受信バッファ300−2〜300−30のいずれかについて通信異常が発生した後の異常回復時の異常スタートアップ処理としては、異常が回復したチャネルの受信バッファ、例えば受信バッファ300−2をクリアすると共に、メイクビジー処理によりマークホールドデータを生成してマルチフォーマットフレームを対応するチャネル位置に配置してレガシー多重伝送装置10に同期送信する。
【0056】
その後、異常回復チャネルの受信バッファ300−2の受信バッファ量が、この場合には電源立上げ時のようにセンタ値Coではなく、そのときのマスタチャネルの受信バッファ300−1の受信バッファ量に達したときに、受信バッファ300−2からのバッファ蓄積データの読出し送信に切り替える。
【0057】
このように異常回復したチャネルの受信バッファの受信バッファ量をマスタチャネルの受信バッファ量に達したときにレガシー多重伝送装置10側への蓄積データの送信を開始させる理由は、異常回復した受信バッファの受信バッファ量をマスタチャネルの受信バッファ量とほぼ同じ値となるように連動して推移させるためである。
【0058】
もし異常回復したチャネルの受信バッファ量を、電源投入時と同様、所定の中心値Coに達したときに蓄積データの読出し送出を開始したとすると、このときマスタチャネルの受信バッファ量は必ずしもセンタ値Coになく、そのときのIPパケットの通信状態に応じてずれており、その結果、異常回復したチャネルの受信バッファ量とマスタチャネルの受信バッファ量との間に差を生ずることになる。
【0059】
このような両者の差が大きくなると、差を保ったまま、クロックずれに応じてマスタチャネルのバッファ受信量の変動に連動して異常回復チャネルのバッファ受信量も変動し、ずれ量が大きいと、マスタチャネルの受信バッファ量が下がったときに異常回復チャネルの受信バッファ量がバッファ正常領域を下回ってバッファエンプティの異常を起こす恐れがある。
【0060】
これに対し本実施形態にあっては、異常回復したチャネルの受信バッファ量がそのときのマスタチャネルの受信バッファ量に達したときに蓄積データの読出し送出を開始することで、マスタチャネルの受信バッファ量に異常回復したチャネルの受信バッファ量をほぼ一致させることができ、クロック同期制御に伴う受信バッファ量の変動を全チャネルにつき同じ値で変化させることで、受信バッファ量の変動によるバッファエンプティなどの異常を回避し、安定した高品質な同期通信を確保することができる。
【0061】
図3は図2のレガシーIP変換器12をプログラムの実行により実現するコンピュータのハードウェア環境の説明図である。図3において、CPU54のバス56に対しては、RAM58、ROM60に加え、レガシーインタフェース部20及びIPインタフェース部22が接続されている。
【0062】
ROM60にはBIOS、OSに加え、本実施形態のレガシーIP変換装置の変換プログラムが格納されている。コンピュータを起動すると、ROM60のBIOISの実行によりOSがRAM58に読み出された後、OSの処理によりROM60から変換プログラムがRAM58に読出し配置され、CPU54により実行されることになる。
【0063】
図4(A)〜(F)は図1のレガシーIP変換器12−1〜12−6に格納されたチャネル管理テーブル50−1〜50−6の説明図である。
【0064】
ここでIPネットワーク18を使用したチャネル分散伝送におけるレガシーIP変換器12−1〜12−6のチャネル割当てを図5について説明すると次のようになる。
【0065】
図5において、6台のレガシーIP変換器12−1〜12−6が30チャネルのマルチフレームデータのチャネル分散によるパケット伝送をしている場合、それぞれを6つのノードN1〜N6で表すと、ノードN1〜N6の全点通信(全2二重)を構築する必要がある。
【0066】
このようなチャネル分散伝送にあっては、ノード数をnとすると、トーナメント計算により、全点通信のパス数mは、
m=n(n−1)/2
の関係にある。
【0067】
本実施形態では、チャネル数n=6であることからパス数はm=15となる。この15本のパスを図5ではパスP12〜P16,P23〜P26,P34〜P36,P45〜P46,P56として示している。
【0068】
またノードN1〜N6はそれぞれ30チャネルのチャネル分散伝送を行うことから、1ノード当りの5パスにつきチャネルを均等に割当てるとすると、1パス当り6チャネルが割当てられる。なお、実際の使用するチャネルは割当てチャネルの一部であってもよい。
【0069】
このような図5みのチャネル分散伝送のパスとチャネル割当てに基づいて図4(A)〜(F)のチャネル管理テーブル50−1〜50−6を設定している。
【0070】
クロックスレーブが設定されたレガシーIP変換器12−2〜12−6のチャネル管理テーブル50−2〜50−6は、クロックマスタが設定されたレガシーIP変換器12−1とのパスP12,P13,P14,P15,P16に割当てた6チャネルの内の特定の1チャネル、例えばチャネル番号=1がマスタチャネルに設定されている。
【0071】
クロックスレーブが設定されたレガシーIP変換器12−2〜12−6は、マスタチャネル番号=1に対応した受信バッファ300−1の受信バッファ量をセンタ値Coに保つように可変クロック部32のクロック周波数を増減するクロック同期制御を行うことになる。
【0072】
なお、図5は6台のレガシーIP変換器12−1〜12−6の全点通信によるパス構成を例にとっているが、IPネットワーク18の帯域を超えない範囲で、必要に応じて任意の数とすることができる。
【0073】
図6は図1のレガシーIP変換器12−1,12−2を取り出して、それぞれの機能構成を示した説明図であり、レガシーIP変換器12−1がクロックマスタに設定され、またレガシーIP変換器12−2がクロックスレーブに設定されている。
【0074】
クロックマスタの設定に伴い、レガシーIP変換器12−1のコントロール部34−1にはクロックマスタ同期制御部42としての機能が有効となって動作している。これに対しクロックスレーブを設定したレガシーIP変換器12−2にあっては、コントロール部34−2にクロックスレーブ同期制御部44としての機能が有効となって動作している。
【0075】
一方、レガシーIP変換器12−1,12−2の両方について、コントロール部34−1,34−2にスタートアップ部46−1,46−2及び異常時スタートアップ部48−1,48−2の機能がそれぞれ有効となって動作している。
【0076】
なお、図6では示していないが、いずれのコントロール部34−1,34−2にも、図2に示した送信変換部38及び受信変換部40、更にマスタスレーブ設定部36としての機能が存在することはもちろんである。
【0077】
図7は図6のクロックスレーブが設定されたレガシーIP変換器12−2のクロックスレーブ同期制御部44の制御を示したタイムチャートであり、電源投入もしくはシステム異常が回復した後の立上げ時に受信バッファ量が増加する場合を例に取っている。
【0078】
図7(A)は受信バッファ量Cであり、図7(B)がクロック周波数を示している。立上げ時にあっては、図7(A)の時刻toのように、受信バッファ量Cが所定のセンタ値Coに達した時に、図7(B)のように可変クロック部32−2のクロック周波数fを中心周波数foに設定し、受信バッファ30−2の蓄積データをレガシー多重伝送機器10−2に送出するスタートアップ処理を起動する。
【0079】
このときクロックマスタ側のクロック周波数がクロックスレーブ側のクロック周波数より高かったとすると、立ち上げ時に設定している中心周波数foのクロックによるレガシー機器10−2へのデータ送出では、受信バッファ30−2に対するIPネットワーク18側から受信したデータの蓄積に対しデータ読出しの方が遅れることから、受信バッファ量Cは時間の経過に伴って増加する。
【0080】
受信バッファ量Cが増加して時刻t1で上限値Cmaxを超えると、クロック周波数fを中心周波数foから最大調整周波数fmaxに変更し、これによって、受信バッファ30−2からレガシー多重伝送機器10−2に対するデータの送出を早める。このため、時刻t1から受信バッファ量は減少を始め、時刻t2で再びセンタ値Coに戻る。
【0081】
時刻t2では、クロック周波数fを、それまでの最大調整周波数fmaxから、中心周波数foに対しプラス側に所定オフセット周波数αだけずらした周波数(fo+α)に変更する。
【0082】
このように中心周波数foにオフセット周波数αを加えた周波数(fo+α)に変更することで、時刻toの中心周波数foの場合に比べ、受信バッファ量は緩やかな割合で再び増加を始め、時刻t3で上限値Cmaxに達する。この場合にも時刻t1と同様、クロック周波数を最大調整周波数fmaxに変更し、これによって受信バッファ量を再び減少させて、センタ値Coに時刻t4で戻す。
【0083】
時刻t4にあっては、クロック周波数foを、中心周波数にオフセット周波数αを調整回数nを乗じた周波数n・αを加算した周波数(α+2α)に変更する。これによって時刻t4からの受信バッファ量の増加は更に緩やかとなり、時刻t5で上限値Cmaxに達する。時刻t5では再びクロック周波数を最大調整周波数fmaxに変更して、受信バッファ量をセンタ値Coに時刻t6で戻し、この場合にはクロック周波数foは周波数(fo+3α)に変更する。
【0084】
時刻t6で周波数(fo+3α)へ変更すると、この例では受信バッファ量Cはセンタ値Coに安定するようなる。受信バッファ量がセンタ値Coに安定した状態は、IPネットワーク18からのIPパケットの受信で受信バッファ30−2に格納されるデータ量と、可変クロック部32−2のクロック周波数(fo+3α)により受信バッファ30−2からレガシー機器10−2に送出されるデータ量が一致した場合であり、これは結局、IPネットワーク18を介してクロックマスタ側の可変クロック部32−1のクロック周波数にクロックスレーブ側の可変クロック部32−2のクロック周波数が同期した状態を確立したことになる。
【0085】
このように本実施形態にあっては、クロックスレーブが設定されたレガシーIP変換器12−2のクロックスレーブ同期制御部44による受信バッファ量をセンタ値に安定させるためのクロック周波数の調整という学習処理を経て、クロックマスタ側のクロック周波数にクロックスレーブ側のクロック周波数を同期させるクロック同期制御を実現することができる。
【0086】
ここで図7(B)におけるクロック周波数fの中心周波数foに対する最大調整周波数fmaxの周波数変化は、例えば+100ppm、また中心周波数foに対する最小調整周波数fminの変化幅は−100ppmであり、クロック周波数を段階的に調整するオフセット周波数αとしては例えばα=0.1ppmの分解能としている。
【0087】
なお、ppmは周波数確度であり、これを周波数の変化幅±Δfで表すと、周波数角度ppmと周波数誤差との間には
(周波数角度ppm)=Δf/(fo×10-8
の関係があることから、例えばfo=2MHz、ppm=100とすると、Δf=5KHzとなり、調整分解能となるオフセット周波数αはα=50Hzとなる。
【0088】
また、図7にあっては、3回の調整処理でクロック周波数を安定化させているが、実際にはα=0.1ppmといった分解能であることから、立上げ時のクロックずれにもよるが、本実施形態のクロックスレーブ同期制御によりクロックスレーブ側のクロック周波数を安定化させた同期状態とするためには、通常、数時間から数十時間程度の処理時間が掛かることになる。
【0089】
しかしながら、このような長い時間であっても、一度立ち上げて安定してしまえば、その後は受信バッファ量の変化に対する+αまたは−αのクロック調整の頻度は例えば数日に1回程度となり、IPネットワークに対する外部網によりクロックを伝送してクロック同期を取った場合と遜色のない伝送品質を確保することができる。
【0090】
図8は立上げ時に受信バッファ量が減少する場合の本実施形態のクロックスレーブ同期制御を示したタイムチャートである。
【0091】
図8(A)において、電源投入あるいはシステム異常の回復に伴う立上げにより、図6のクロックスレーブ側のレガシーIP変換器12−2の受信バッファ30−2に、IPネットワーク18からIPインタフェース部22−2で受信したICパケットのパケットデータの蓄積を開始し、受信バッファ量がセンタ値Coに達したとき、図7の場合と同様、図8(B)のようにクロック周波数foをセンタ値foに設定し、レガシーインタフェース部20−2からレガシー多重伝送機器10−2に対し受信バッファ30−2の蓄積データを読み出して同期通信データの送信を開始する。
【0092】
この場合、クロックマスタを設定したレガシーIP変換器12−1の可変クロック部32−1によるクロック周波数に対し、クロックスレーブを設定したレガシーIP変換器12−2の可変クロック部32−2のクロック周波数が高かったとすると、受信バッファ30−2からレガシー多重伝送機器10−2に対するデータ送出が早まるため、図8(A)のように受信バッファ量Cは時刻toから減少を始め、時刻t1で下限値Cminを下回る。
【0093】
この場合には、クロック周波数fを中心周波数foから最小調整周波数fminに変更し、受信バッファ30−2からの送出量を低下させる。このため、時刻t1から受信バッファ量Cは増加を始め、時刻t2で再びセンタ値Coに回復する。
【0094】
センタ値Coに回復したら、クロック周波数fを中心周波数foからオフセット周波数αに調整回数である1回を乗じた周波数を差し引いた周波数(fo−α)に変更する。これにより、時刻t2からの受信バッファ量Cが現象し、減少割合は時刻toの1回目より緩やかとなり、時刻t3で再び下限値Cminを下回ると、クロック周波数fを再び最小調整周波数fminに変更し、時刻t3から受信バッファ量Cを増加させる。
【0095】
時刻t4で受信バッファ量Cがセンタ値Coに回復すると、クロック周波数を(fo−2α)に変更し、時刻t4からの受信バッファ量Cの減少割合を更に小さくする。同様な処理を時刻t5,t6で繰り返し、これによりクロック周波数が(fo−3α)となったとき、受信バッファ量Cがセンタ値Coに安定し、マスタクロック側に対しマスタスレーブ側のクロックが同期した安定状態を作り出すことができる。
【0096】
また本実施形態にあっては、図7または図8のように、立上げ後のクロックスレーブ同期制御による学習処理を通じてクロック同期状態となる安定状態が得られたならば、安定状態におけるクロック周波数、例えば図7の場合には安定クロック周波数(fo+3α)、また図8の場合には安定クロック周波数(fo−3α)をそれぞれ保存する。
【0097】
そして次に電源投入による立上げ時もしくは通信異常から回復した立上げ時には、受信バッファがセンタ値Coに達したとき、クロック周波数fを中心周波数foではなく、保存している安定クロック周波数に設定してクロック調整処理を開始する。これによって2回目以降のスタートアップ時におけるクロック調整処理の時間を大幅に短縮することができる。
【0098】
またクロックスレーブ同期制御の他の実施形態としては、バッファ変動許容範囲の上下限値として大小2段階の値を有し、クロック周波数を起動してから安定するまで間は小さい方の上下限値による狭いバッファ変動許容範囲を設定し、クロック周波数が安定した後は大きい方の上下限値による広いバッファ変動許容範囲を設定し、これによってクロック周波数が同期状態に安定するまでの時間を短縮することができる。
【0099】
このようなバッファ上限値を2段階に設定したクロックスレーブ同期制御によれば、図7,図8の場合にはクロックの安定領域に到達するまでの時間が数時間〜数十時間と長くかかっていたものが、2段階とした場合の設定値の度合にもよるが、数分〜数十分程度というようにクロックが安定するまで時間を大幅に短縮するができる。
【0100】
そして幅の狭いバッファ変動許容範囲により短時間でクロックを安定領域に調整した後は、バッファ変動許容範囲の上下限値を大きくして範囲を広げることによって、安定領域でのクロック調整制御が発生する頻度を抑え、より安定したクロック同期状態を確保することができる。
【0101】
図9は本実施形態による変換処理の概略を示したフローチャートである。図9において、図2のレガシーIP変換器12を対象に処理を説明すると次のようになる。レガシーIP変換器12の電源を投入して立ち上げると、まずステップS1で初期設定を行う。この初期設定はマスタスレーブ設定部36による設定処理を含み、具体的には
クロックマスタ/スレーブ設定
マスタチャネル設定
クロック同期制御のパラメータ設定
を含んでいる。
【0102】
続いてステップS2でクロックマスタの設定の有無をチェックし、クロックマスタが設定されている場合にはステップS3に進み、クロックマスタ同期制御部42の機能を有効としてクロックマスタ変換処理を実行し、ステップS4で停止指示があるまでクロックマスタ変換処理を繰り返す。
【0103】
一方、ステップS2でスレーブマスタの設定を判別した場合にはステップS5に進み、クロックスレーブ同期制御部44の機能を有効としてクロックスレーブ変換処理を行い、ステップS6で停止指示があるまで、これを繰り返す。
【0104】
図10は本実施形態におけるクロックマスタ送信変換処理を示したフローチャートであり、図2のクロックマスタを設定されたコントロール部34に設けた送信変換部38による処理となる。
【0105】
図9において、クロックマスタ送信変換処理は、IPインタフェース部22でイーサネット(R)などのIPインタフェースにより決まる一定の送信タイミングに達したかどうかを判別した後、ステップS2で送信バッファ240−1〜240−30に蓄積しているデータからパケット組立部260−1〜260−30で全チャネル分のIPパケット、即ち30個のIPパケットを生成し、IPネットワーク18に送信する。
【0106】
IPパケットを生成してIPネットワークに送信する処理は、イーサネット(R)などのIPネットワーク18の通信アルゴリズムにより行うことになる。このようなステップS1〜S2の処理を、ステップS3で停止指示があるまで繰り返す。
【0107】
図11は本実施形態のクロックマスタ受信変換処理を示したフローチャートであり、図2のクロックマスタを設定されたレガシーIP変換器12の受信変換部40による処理となる。
【0108】
図11において、クロックマスタ受信変換処理は、ステップS1で可変クロック部32のクロック周波数を中心周波数foに固定して起動した後、ステップS2で全チャネルのスタートアップ処理を実行する。
【0109】
スタートアップ処理が済むと、ステップS3で全チャネルの受信バッファの蓄積データを読み出してマルチフレームデータを作成し、可変クロック部32からのクロックに同期してレガシー多重伝送装置10に同期伝送する。
【0110】
続いて、ステップS4で特定チャネルに異常が発生したか否かチェックしており、もし異常が発生した場合には、ステップS5でチャネルの異常回復を待ってステップS6の異常時スタートアップ処理を実行する。このようなステップS1〜S6の処理を、ステップS7で停止指示があるまで繰り返す。
【0111】
図12は図11のステップS2に示したスタートアップ処理の詳細を示したフローチャートである。図11において、スタートアップ処理は、ステップS1で全チャネルの受信バッファ300−1〜300−30をクリアし、続いてステップS2で全チャネルをメイクビジー処理によりマークホールドデータとしてレガシーインタフェース部20により可変クロック部32のクロックに同期してマルチフォーマットフレームを生成してレガシー多重伝送装置に対する同期通信を開始する。
【0112】
続いてステップS3で、受信バッファ300−1〜300−30の受信バッファ量のうち、センタ値に達した受信バッファがあるか否かチェックし、センタ値に達した受信バッファがあれば、ステップS4でその受信バッファの蓄積データをマルチフォーマットフレームに含めてレガシー多重伝送装置に同期通信するデータ読出し送信に切り替える。
【0113】
ステップS5にあっては、全チャネルについて蓄積データの送信に切り替えたかどうかのメイクビジー解消の有無をチェックしており、30チャネルのすべてについて受信バッファの蓄積データの送信に切り替わるとメイクビジー解消が判別され、ステップS6で全チャネルを受信バッファの蓄積データからマルチフォーマットフレームを生成して送信する正常処理状態に移行する。
【0114】
図13は図11のステップS6に示した異常時スタートアップ処理の詳細を示したフローチャートである。図13において、異常時スタートアップ処理は、ステップS1でマスタチャネルの異常回復か否かチェックし、マスタチャネルの異常回復であった場合には、ステップS2に進み、全チャネル受信バッファをクリアした後、ステップS3で全チャネルのスタートアップ処理を実行する。このスタートアップ処理の詳細は図12のスタートアップ処理のフローチャートと同じである。
【0115】
ステップS1でマスタチャネル以外のチャネルの異常回復を判別した場合には、ステップS4に進み、異常が回復したチャネルの受信バッファをクリアした後、ステップS5でメイクビジー処理により生成したマークホールドデータを異常回復したチャネルに対応するマルチフォーマットフレームの位置に配置して同期通信を開始する。
【0116】
続いてステップS6でマスタチャネルの受信バッファ量を基準値として読み込み、ステップS7で異常回復チャネルの受信バッファ量が基準値に達したか否かチェックしている。ステップS7で異常回復チャネルの受信バッファ量が基準値に到達すると、ステップS8に進み、それまでのメイクビジー処理によるマークホールドデータの送信から受信バッファの蓄積データの送信に切り替えて通常の同期通信状態に移行する。
【0117】
図14は本実施形態におけるクロックスレーブ送信変換処理のフローチャートであり、図2のレガシーIP変換器12でクロックスレーブが設定されてクロックスレーブ同期制御部44の機能が有効となった場合の送信変換処理である。
【0118】
このクロックスレーブ変換処理にあっては、図10のクロックマスタ送信変換処理と同様、ステップS1でIPインタフェース部22の規格で決まる一定の時間間隔の送信タイミングに達したことを判別すると、ステップS2で全チャネルの送信バッファ240−1〜240−30の蓄積データからIPパケットを生成し、IPネットワーク18に送信する。
【0119】
図15は本実施形態のクロックスレーブ受信変換処理のフローチャートであり、図2のレガシーIP変換器12でクロックスレーブの設定が行われてクロックスレーブ同期制御部44の機能が有効となっている場合の処理となる。
【0120】
図15において、ステップS1で可変クロック部32のクロック周波数を中心周波数foに設定して、ステップS2で全チャネルのスタートアップ処理を行う。ステップS2のスタートアップ処理の詳細は図12のフローチャートと同じになる。
【0121】
次にステップS3で全チャネルのクロック同期によるマルチフレーム送信に移行する。続いてステップS4でクロックスレーブ同期制御部44によりクロック同期制御を実行する。続いてステップS5で特定チャネルに異常発生があったか否かチェックしており、異常発生を判別すると、ステップS6で異常回復を判別した後、ステップS7で異常時スタートアップ処理を実行する。
【0122】
ステップS7の異常時スタートアップ処理の詳細は図12のフローチャートと同じになる。このようなステップS3〜S7の処理を、ステップS8で停止指示があるまで繰り返す。
【0123】
図16は図15のステップS4におけるクロック同期制御処理の詳細を示したフローチャートである。図16において、クロック同期制御処理は、ステップS1でマスタチャネルに対応した受信バッファ量、例えば図2の受信バッファ300−1の受信バッファ量を読み込み、ステップS2で受信バッファ量は上限値か否かチェックする。
【0124】
ここでステップS2〜S6の処理は図7に示した受信バッファ量が増加する場合の制御処理であり、ステップS7〜S11が図8に示した受信バッファ量が減少する場合の制御処理である。
【0125】
ここで図7(A)に示したように、立上げ時センタ値Coから受信バッファ量Cが増加して時刻t1で上限値Cmaxに達したとすると、これがステップS2で判別され、ステップS3でクロック周波数fを最大調整周波数fmaxに変更する。
【0126】
続いてステップS4で受信バッファ量はセンタ値Coに戻ったか否かチェックし、戻った場合には、ステップS5で調整回数n(ただし初期値n=0)を1つ加算し、ステップS6でクロック周波数をオフセット周波数αに調整回数nを乗算した値を中心周波数foに加えた周波数
f=fo+n・α
に変更し、再びステップS1の処理に戻る。
【0127】
そして受信バッファ量が上限値に達するごとに同様な処理を繰り返し、図7に示したように、最終的に受信バッファ量Cがセンタ値Coに安定した状態で決まるクロック周波数の制御状態でスレーブ側をマスタ側のクロック周波数に同期させる同期安定状態を確立できる。
【0128】
一方、バッファ量がセンタ値Coから図8(A)に示したように減少した場合には、ステップS7に進み、受信バッファ量が下限値Cminに達したことを判別すると、ステップS8でクロック周波数を最小調整周波数fminに変更する。
【0129】
続いてステップS9で受信バッファ量がセンタ値Coに回復したか否かチェックし、回復した場合には、ステップS10に進んで調整回数nを1つ増加した後、ステップS11でクロック周波数fを調整回数nにオフセット周波数αを乗算した値を中心周波数foから差し引いた
f=fo−n・α
に調整する。
【0130】
そして、再びステップS1に戻り、ステップS2を介してステップS7〜S11の処理を繰り返すことで、図8に示すように、受信バッファ量がセンタ値Coに安定したときのクロック周波数によりスレーブ側をマスタ側にクロック同期させることができる。
【0131】
また本発明は図2に示したレガシーIP変換器12のコントロール部34として機能する図3のコンピュータで実行される同期非同期網の変換プログラムを提供するものであり、このプログラムは図9乃至図16のフローチャートに示した内容となる。
【0132】
また本発明はレガシーIP変換器12で実行されるプログラムを格納した記録媒体を提供する。この記録媒体とは、CD−ROM、フロッピィディスク(R)、DVDディスク、光磁気ディスク、ICカードなどの可搬型記録媒体や、コンピュータシステムの内外に備えられたハードディスクドライブなどの記憶装置の他、回線を介してプログラムを保持するデータベースあるいは他のコンピュータシステム並びにそのデータベース、更には回線上の伝送媒体を含むものである。
【0133】
なお上記の実施形態にあっては、レガシー多重伝送装置として2.048Mbpsの30チャネル対応の装置を例に取るものであったが、これ以外の1.544Mbpsのレガシー多重伝送装置であってもよいし、適宜のマルチフォーマットフレームの同期通信を行うレガシー機器を含む。
【0134】
また図7及び図8に示したクロックスレーブ同期制御にあっては、受信バッファ量Cに対し、バッファ変動許容範囲62を決める上限値Cmaxと下限値Cminを設定し、上下限値への到達でクロック周波数を増減させているが、受信バッファ量Cのセンタ値Coからの上昇または下降の傾きに応じてクロック周波数を増減させるようにしてもよい。
【0135】
更に、センタ値Coに対する受信バッファ量の偏差に応じて、クロック周波数fを増減制御することも可能である。即ち、センタ値Coに対し、受信バッファ量のプラス偏差に対してはクロック周波数を増加させ、マイナス偏差に対してはクロック周波数を減少させ、この減少量、増加量を偏差量に応じて制御するいわゆるフィードバック制御を行ってもよい。
【0136】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【0137】
ここで本発明の特徴を列挙すると次の付記のようになる。
(付記)

(付記1)(装置)
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる同期非同期通信網の変換装置に於いて、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、前記クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定部と、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換部と、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、前記可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御部と、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御部と、
を備えたことを特徴とする変換装置。(1)
【0138】
(付記2)(スタートアップ処理)
付記1記載の変換装置に於いて、前記受信変換部は、電源投入に伴う立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルから受信バッファに蓄積したデータの読出し送信に切り替えることを特徴とする変換装置。(2)
【0139】
(付記3)(マスタチャネル異常時スタートアップ処理)
付記1記載の変換装置に於いて、前記受信変換部は、運用中に前記マスタチャネルの異常が回復した立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレーデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替えることを特徴とする変換装置。(3)
【0140】
(付記4)(非マスタチャネル異常時スタートアップ処理)
付記1記載の変換装置に於いて、前記受信変換部は、運用中に前記マスタチャネル以外のチャネルの異常が回復した立上げ時に、異常回復チャネルの受信バッファをクリアすると共に無信号データをマルチフレームデータに含めて前記同期多重通信装置に同期送信し、前記異常回復チャネルの受信バッファ量が前記マスタチャネルの受信バッファ量に達した時に、バッファ蓄積データの読出し送信に切り替えることを特徴とする変換装置。(4)
【0141】
(付記5)(クロックスレーブ同期制御の詳細)
付記1記載の変換装置に於いて、前記クロックスレーブ同期制御部は、
クロック周波数を中心周波数から起動した後に受信バッファ量がバッファ変動許容範囲の上限値を超えた場合は所定の最大調整周波数に変更し、変更後に受信バッファ量が前記センタ値に戻った時に前記最大調整周波数を前記中心周波数に所定のオフセット周波数を加算した周波数に変更する処理を、前記オフセット周波数を順次増加させながら繰り返し、
クロック周波数を中心周波数から起動した後に受信バッファ量が前記バッファ変動許容範囲の下限値を下回った場合は所定の最小調整周波数に変更し、変更後に受信バッファ量が前記センタ値に戻った時に前記最小調整周波数を前記中心周波数から所定のオフセット周波数を減算した周波数に変更する処理を、前記オフセット周波数を順次増加させながら繰り返すことを特徴とする変換装置。(5)
【0142】
(付記6)(レガシーIFとIP通信網)
付記1記載の変換装置に於いて、前記同期多重通信装置はレガシーインタフェースを備えた機器であり、前記非同期通信網の機器はインターネットプロトコルインタフェースを備えた機器であることを特徴とする変換装置。
【0143】
(付記7)(方法)
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる変換装置の変換方法に於いて、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、前記クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定ステップと、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換ステップと、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換ステップと、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御ステップと、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御ステップと、
を備えたことを特徴とする変換方法。(6)
【0144】
(付記8)(スタートアップ処理)
付記7記載の変換方法に於いて、前記受信変換ステップは、電源投入に伴う立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルから受信バッファに蓄積したデータの読出し送信に切り替えることを特徴とする変換方法。
【0145】
(付記9)(マスタチャネル異常時スタートアップ処理)
付記7記載の変換方法に於いて、前記受信変換ステップは、
運用中に前記マスタチャネルの異常が回復した立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替え、
運用中に前記マスタチャネル以外のチャネルの異常が回復した立上げ時に、異常回復チャネルの受信バッファをクリアすると共に無信号データをマルチフレームデータに含めて前記同期多重通信装置に同期送信し、前記異常回復チャネルの受信バッファ量が前記マスタチャネルの受信バッファ量に達した時に、バッファ蓄積データの読出し送信に切り替えることを特徴とする変換方法。
【0146】
(付記10)(クロックスレーブ同期制御の詳細)
付記7記載の変換方法に於いて、前記クロックスレーブ同期制御ステップは、
クロック周波数を中心周波数から起動した後に受信バッファ量がバッファ変動許容範囲の上限値を超えた場合は所定の最大調整周波数に変更し、変更後に受信バッファ量が前記センタ値に戻った時に前記最大調整周波数を前記中心周波数に所定のオフセット周波数を加算した周波数に変更する処理を、前記オフセット周波数を順次増加させながら繰り返し、
クロック周波数を中心周波数から起動した後に受信バッファ量が前記バッファ変動許容範囲の下限値を下回った場合は所定の最小調整周波数に変更し、変更後に受信バッファ量が前記センタ値に戻った時に前記最小調整周波数を前記中心周波数から所定のオフセット周波数を減算した周波数に変更する処理を、前記オフセット周波数を順次増加させながら繰り返すことを特徴とする変換方法。
【0147】
(付記11)(プログラム)
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる変換装置のコンピュータに、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、前記クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定ステップと、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換ステップと、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換ステップと、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御ステップと、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させる第1クロックスレーブ同期制御ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【0148】
(付記12)(スタートアップ処理)
付記11記載のプログラムに於いて、前記受信変換ステップは、電源投入に伴う立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルから受信バッファに蓄積したデータの読出し送信に切り替えることを特徴とするプログラム。
【0149】
(付記13)(マスタチャネル異常時スタートアップ処理)
付記11記載のプログラムに於いて、前記受信変換ステップは、
運用中に前記マスタチャネルの異常が回復した立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替え、
運用中に前記マスタチャネル以外のチャネルの異常が回復した立上げ時に、異常回復チャネルの受信バッファをクリアすると共に無信号データをマルチフレームデータに含めて前記同期多重通信装置に同期送信し、前記異常回復チャネルの受信バッファ量が前記マスタチャネルの受信バッファ量に達した時に、バッファ蓄積データの読出し送信に切り替えることを特徴とするプログラム。
【0150】
(付記14)(クロックスレーブ同期制御の詳細)
付記11記載のプログラムに於いて、前記クロックスレーブ同期制御ステップは、
クロック周波数を中心周波数から起動した後に受信バッファ量がバッファ変動許容範囲の上限値を超えた場合は所定の最大調整周波数に変更し、変更後に受信バッファ量が前記センタ値に戻った時に前記最大調整周波数を前記中心周波数に所定のオフセット周波数を加算した周波数に変更する処理を、前記オフセット周波数を順次増加させながら繰り返し、
クロック周波数を中心周波数から起動した後に受信バッファ量が前記バッファ変動許容範囲の下限値を下回った場合は所定の最小調整周波数に変更し、変更後に受信バッファ量が前記センタ値に戻った時に前記最小調整周波数を前記中心周波数から所定のオフセット周波数を減算した周波数に変更する処理を、前記オフセット周波数を順次増加させながら繰り返すことを特徴とするプログラム。
【0151】
(付記15)(記録媒体)
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる同期非同期通信網の変換装置のコンピュータに、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、前記クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定ステップと、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換ステップと、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換ステップと、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御ステップと、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御ステップと、
を実行させるプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ可読の記録媒体。(7)
【0152】
(付記16)(スタートアップ処理)
付記15記載の記録媒体に於いて、前記受信変換ステップは、電源投入に伴う立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルから受信バッファに蓄積したデータの読出し送信に切り替えることを特徴とする記録媒体。
【0153】
(付記17)(マスタチャネル異常時スタートアップ処理)
付記15記載の記録媒体に於いて、前記受信変換ステップは、
運用中に前記マスタチャネルの異常が回復した立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替え、
運用中に前記マスタチャネル以外のチャネルの異常が回復した立上げ時に、異常回復チャネルの受信バッファをクリアすると共に無信号データをマルチフレームデータに含めて前記同期多重通信装置に同期送信し、前記異常回復チャネルの受信バッファ量が前記マスタチャネルの受信バッファ量に達した時に、バッファ蓄積データの読出し送信に切り替えることを特徴とする記録媒体。
【0154】
(付記18)(システム)
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを転送する同期多重通信装置を非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網に接続するクロックマスタに設定され、割当チャネルの中の特定の1チャネルをマスタチャネルに設定されたマスタ変換装置と、
他の同期多重通信装置を前記非同期通信網に接続するクロックスレーブに設定されたスレーブ変換装置と、
を備え、前記複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる通信システムに於いて、
前記クロックマスタ装置は、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換部と、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、前記可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御部と、
を備え、
前記スレーブ変換装置は、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換部と、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、前記可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御部と、
を備えたことを特徴とする通信システム。(8)
【0155】
(付記19)(スタートアップ処理)
付記18記載の通信システムに於いて、前記受信変換部は、
電源投入に伴う立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルから受信バッファに蓄積したデータの読出し送信に切り替えることを特徴とする通信システム。
【0156】
(付記20)(異常回復時スタートアップ処理)
付記18記載の通信システムに於いて、前記受信変換部は、
運用中に前記マスタチャネルの異常が回復した立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替え、
運用中に前記マスタチャネル以外のチャネルの異常が回復した立上げ時に、異常回復チャネルの受信バッファをクリアすると共に無信号データをマルチフレームデータに含めて前記同期多重通信装置に同期送信し、前記異常回復チャネルの受信バッファ量が前記マスタチャネルの受信バッファ量に達した時に、バッファ蓄積データの読出し送信に切り替えることを特徴とする通信システム。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明の同期非同期通信変換装置を用いた通信システムの説明図
【図2】本発明による同期非同期通信変換装置の実施形態を示した機能構成のブロック図
【図3】本実施形態の変換プログラムが実行されるコンピュータのハードウェア環境の説明図
【図4】図1の6台のレガシーIP変換器に格納されたチャネル管理テーブルの説明図
【図5】図1の6台のレガシーIP変換器におけるチャネル分散伝送の説明図
【図6】図1のクロックマスタとクロックスレーブに設定したレガシーIP変換器を取り出して機能構成を示したブロック図
【図7】立上げ時に受信バッファ量が増加する場合の本実施形態のクロックスレーブ同期制御を示したタイムチャート
【図8】立上げ時に受信バッファ量が減少する場合の本実施形態のクロックスレーブ同期制御を示したタイムチャート
【図9】本実施形態による変換処理の概略を示したフローチャート
【図10】本実施形態のクロックマスタ送信変換処理を示したフローチャート
【図11】本実施形態のクロックマスタ受信変換処理を示したフローチャート
【図12】図11のステップS2におけるスタートアップ処理の詳細を示したフローチャート
【図13】図11のステップS6における異常回復時スタートアップ処理の詳細を示したフローチャート
【図14】本実施形態のクロックスレーブ送信変換処理を示したフローチャート
【図15】本実施形態のクロックスレーブ受信変換処理を示したフローチャート
【図16】図15のステップS4におけるクロック同期制御処理の詳細を示したフローチャート
【符号の説明】
【0158】
10,10−1〜10−6:レガシー多重伝送装置
11−1,11−2:同期通信網
12,12−1〜12−6:レガシーIP変換器
14−1〜14−6:レガシーネットワーク
15:非同期通信網
16−1〜16−6:LAN
18:IPネットワーク
20,20−1〜20−3:レガシーインタフェース部
22,22−1〜22−3:IPインタフェース部
24:送信バッファ群
26:パケット組立群
28:パケット分解群
30:受信バッファ群
32,32−1,32−2:可変クロック部
34,34−1,34−2:コントロール部
36,36−1,36−2:マスタスレーブ設定部
38:送信変換部
40:受信変換部
42:クロックマスタ同期制御部
44:クロックスレーブ同期制御部
46,46−1,46−2:スタートアップ部
48,48−1,48−2:異常時スタートアップ部
50−1〜50−6:チャネル管理テーブル
54:CPU
56:バス
58:RAM
60:ROM
62:バッファ変動許容範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる同期非同期通信網の変換装置に於いて、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、前記クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定部と、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換部と、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、前記可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御部と、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御部と、
を備えたことを特徴とする変換装置。
【請求項2】
請求項1記載の変換装置に於いて、前記受信変換部は、電源投入に伴う立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルから受信バッファに蓄積したデータの読出し送信に切り替えることを特徴とする変換装置。
【請求項3】
請求項1記載の変換装置に於いて、前記受信変換部は、運用中に前記マスタチャネルの異常が回復した立上げ時に、全チャネルの受信バッファをクリアすると共に全チャネルを無信号データとしたマルチフレーデータを生成して前記同期多重通信装置に同期送信を開始し、同期送信開始後に受信バッファ量が所定のセンタ値に達したチャネルからバッファ蓄積データの読出し送信に切り替えることを特徴とする変換装置。
【請求項4】
請求項1記載の変換装置に於いて、前記受信変換部は、運用中に前記マスタチャネル以外のチャネルの異常が回復した立上げ時に、異常回復チャネルの受信バッファをクリアすると共に無信号データをマルチフレームデータに含めて前記同期多重通信装置に同期送信し、前記異常回復チャネルの受信バッファ量が前記マスタチャネルの受信バッファ量に達した時に、バッファ蓄積データの読出し送信に切り替えることを特徴とする変換装置。
【請求項5】
請求項1記載の変換装置に於いて、前記クロックスレーブ同期制御部は、
クロック周波数を中心周波数から起動した後に受信バッファ量がバッファ変動許容範囲の上限値を超えた場合は所定の最大調整周波数に変更し、変更後に受信バッファ量が前記センタ値に戻った時に前記最大調整周波数を前記中心周波数に所定のオフセット周波数を加算した周波数に変更する処理を、前記オフセット周波数を順次増加させながら繰り返し、
クロック周波数を中心周波数から起動した後に受信バッファ量が前記バッファ変動許容範囲の下限値を下回った場合は所定の最小調整周波数に変更し、変更後に受信バッファ量が前記センタ値に戻った時に前記最小調整周波数を前記中心周波数から所定のオフセット周波数を減算した周波数に変更する処理を、前記オフセット周波数を順次増加させながら繰り返すことを特徴とする変換装置。
【請求項6】
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる変換装置の変換方法に於いて、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、前記クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定ステップと、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換ステップと、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換ステップと、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御ステップと、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御ステップと、
を備えたことを特徴とする変換方法。
【請求項7】
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを伝送する同期多重通信装置と非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網との間に挿入接続され、複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる変換装置のコンピュータに、
複数の変換装置の内の特定の変換装置にクロックマスタを設定すると共に残りの変換装置にクロックスレーブを設定し、前記クロックマスタに設定された変換装置の割当チャネルの中の特定の1チャネルをクロック同期制御のマスタチャネルに設定するマスタスレーブ設定ステップと、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換ステップと、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換ステップと、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御ステップと、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させる第1クロックスレーブ同期制御ステップと、
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
クロック信号に同期して複数チャネルのマルチフレームデータを転送する同期多重通信装置を非同期にデータを転送する機器で構成された非同期通信網に接続するクロックマスタに設定され、割当チャネルの中の特定の1チャネルをマスタチャネルに設定されたマスタ変換装置と、
他の同期多重通信装置を前記非同期通信網に接続するクロックスレーブに設定されたスレーブ変換装置と、
を備え、前記複数の同期多重通信装置の相互間でデータを転送させる通信システムに於いて、
前記クロックマスタ装置は、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換部と、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、前記可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
前記クロックマスタの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に、前記可変クロック部を所定の中心周波数に固定して起動させるクロックマスタ同期制御部と、
を備え、
前記スレーブ変換装置は、
出力するクロック信号の周波数を可変制御可能な可変クロック部と、
前記同期多重通信装置から受信したマルチフレームデータをチャネル分散して各送信バッファに蓄積し、一定間隔で送信バッファの蓄積データから非同期データを生成して前記非同期通信網に送信する送信変換部と、
前記非同期通信網からチャネル分散された非同期データを受信して各受信バッファに蓄積し、前記可変クロック部のクロック信号に同期して受信バッファの蓄積データからマルチフレームデータを生成して前記同期多重通信装置に送信する受信変換部と、
前記クロックスレーブの設定状態で有効となり、前記マスタチャネルの受信バッファに蓄積された受信バッファ量が所定のセンタ値に達した際に前記可変クロック部を前記中心周波数に設定して起動し、起動後に受信バッファ量を前記センタ値に安定するように前記可変クロック部のクロック周波数を制御して、前記クロックマスタの設定状態にある他の変換装置にクロック同期させるクロックスレーブ同期制御部と、
を備えたことを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−199161(P2008−199161A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30248(P2007−30248)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(595026380)株式会社ヒノックス (4)
【Fターム(参考)】