説明

非対称アルキリデン多価フェノール類とその製造方法

【課題】置換基としてフェニル基を有する置換フェノール核と3つの水酸基を有する多価フェノール骨格とをアルキリデン基にて連結した構造を有する、分子構造が非対称である新規なアルキリデン多価フェノール類を提供する。
【解決手段】一般式(I)


(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3 はフェニル基を示し、R4 は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、X1 及びX3 は水素原子を示し、X2 は水酸基を示す。)で表わされる非対称アルキリデン多価フェノール類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称アルキリデン多価フェノール類に関し、詳しくは、置換基として、アルキル基、フェニル基若しくはシクロヘキシル基を有する置換フェノール核と2〜3個の水酸基を有する多価フェノール骨格とをアルキリデン基にて連結した構造を有するか、又は炭素数6〜16の長鎖のアルキリデン基若しくはフェニル置換アルキリデン基を有し、分子構造が非対称である新規なアルキリデン多価フェノール類に関する。このような多価フェノール類は、エポキシ樹脂を含め、非直線性の構造や網目構造を有する種々の重合体の原料や、エポキシ樹脂の硬化剤や、高粘性を備えた特殊な顕色剤等として有用である。
【0002】
更に、本発明は、そのような非対称アルキリデン多価フェノール類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、分子中に3つ以上のフェノール性水酸基を有し、対称中心をもたない非対称なアルキリデン多価フェノール類は、既に、一部については、フォトレジスト関連材料やエポキシ樹脂硬化剤等として有用であることが知られている。
【0004】
例えば、塩化アルミニウム触媒の存在下にジオキサン中、2−(3−ヒドロキシフェニル)プロペン又は2−(4−ヒドロキシフェニル)プロペン等のアルケニルフェノール類にハイドロキノン、メチルハイドロキノン、レゾルシン等の2価フェノール類を反応させて、種々のアルキリデン多価フェノール類が得られることが知られている(特許文献1参照)。例えば、2−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,5−ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(3−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,5−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,5−ジヒドロキシ−3−メチルフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等がポジ型フォトレジスト材料として有用であることが知られている。
【0005】
しかしながら、これらの多価フェノール類は、いずれも、フェノール骨格と2価フェノール骨格とをプロピリデン基で連結した構造を有し、しかも、メチル基を2価フェノール骨格に有する非対称プロピリデン多価フェノール類である。
【0006】
他方、分子に対称中心を有する対称性アルキリデン多価フェノール類としては、ベンゼン又はメタノール溶剤中、36%塩酸、47%臭化水素酸、p−トルエンスルホン酸、強酸性カチオン樹脂等の酸性触媒の存在下に、レゾルシン1モル部に2−(4−ヒドロキシフェニル)プロペン1.4〜2.0モル部を反応させて、1,3−ジヒドロキシ−4,6−ビス〔α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼンが得られることが知られている(特許文献2参照)。
【0007】
また、上記2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの製造方法として、ベンゼン又はベンゼン−メタノール混合溶剤中、36%塩酸を触媒として用い、レゾルシン1モル部に4−イソプロペニルフェノール0.8〜1.1モル部を反応させる方法も知られている(特許文献3参照)。
【0008】
更に、上記2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンと4−イソプロペニルフェノールを用いて、1,3−ジヒドロキシ−4,6−ビス〔α−メチル−α−(4'−ヒドロキシフェニル)エチル〕ベンゼンを製造する方法が知られている(特許文献4参照)。
【0009】
以上のように、従来、分子中に3つ以上のフェノール性水酸基を有すると共に、置換基としてs−ブチル基、フェニル基若しくはシクロヘキシル基を有する置換フェノール核と2〜3個の水酸基を有する多価フェノール骨格とをアルキリデン基にて連結した構造を有するか、又は炭素数6〜15の長鎖のアルキリデン基若しくはフェニル置換アルキリデン基を有し、分子構造が非対称であるアルキリデン多価フェノール類は、知られていない。
【0010】
【特許文献1】特開平2−269351号公報
【特許文献2】特開平4−364147号公報
【特許文献3】特開平5−201903号公報
【特許文献4】特開平6−116191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、置換基として、アルキル基、フェニル基若しくはシクロヘキシル基を有する置換フェノール核と2〜3つの水酸基を有する多価フェノール骨格とをアルキリデン基にて連結した構造を有するか、又は炭素数6〜16の長鎖のアルキリデン基を有し、分子構造が非対称である新規なアルキリデン多価フェノール類を提供することを目的とする。このような非対称であるアルキリデン多価フェノール類は、エポキシ樹脂を含め、非直線性の構造や網目構造を有する種々の重合体の原料や、エポキシ樹脂の硬化剤や、高粘性の特殊な顕色材料等として有用である。また、本発明は、そのような非対称アルキリデン多価フェノール類の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、一般式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3 は炭素数1〜13のアルキル基又はフェニル基を示し、R4 は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、X1、X2 及び X3 は、これらのうち、1つ又は2つは水酸基を示し、残余は水素原子を示す。但し、X1、X2 及びX3 のうち、X2 とX3 が共に水酸基であって、残余が水素原子である場合と、R1、R2 及びR4 がそれぞれ水素原子であり、R3 がメチル基であり、X1、X2 及びX3 のうち、X1 が水酸基であり、残余が水素原子である場合を除く。)
で表わされる非対称アルキリデン多価フェノール類が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、一般式(II)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3' はメチル基又はフェニル基を示し、R3' がメチル基のとき、R4' は水素原子を示し、R3' がフェニル基のとき、R4' は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
で表わされるアルケニルフェノール類とカテコール、レゾルシン、ピロガロール及び1,2,4−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる多価フェノール類とを酸触媒の存在下に反応させることを特徴とする一般式(I')
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3' はメチル基又はフェニル基を示し、R3' がメチル基のとき、R4' は水素原子を示し、R3' がフェニル基のとき、R4' は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、X1、X2 及びX3 は、これらのうち、1つ又は2つは水酸基を示し、残余は水素原子を示す。但し、X1、X2 及びX3 のうち、X2 とX3 が共に水酸基であって、残余が水素原子である場合と、R1、R2 及びR4 がそれぞれ水素原子であり、R3 がメチル基であり、X1、X2 及びX3 のうち、X1 が水酸基であり、残余が水素原子である場合を除く。)
で表わされる非対称アルキリデン多価フェノール類の製造方法が提供される。
【0020】
更に、本発明によれば、一般式(IIIa)
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3" は水素原子又はアルキル基を示し、R3'" はアルキル基を示す。但し、R3" の炭素数とR3'" の炭素数との合計は1〜12の範囲である。R4" は水素原子又はメチル基を示す。)
で表わされる第1の異性体と一般式(IIIb)
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、R1、R2 、R3"、R3"' 及びR4" は上記と同じである。)
で表わされる第2の異性体とからなるアルケニルフェノール類の異性体混合物とカテコール、レゾルシン、ピロガロール及び1,2,4−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる多価フェノール類とを酸触媒の存在下に反応させることを特徴とする一般式(IV)
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、R1、R2、R3"、R3"' 及びR4" は上記と同じであり、X1、X2 及びX3 は、これらのうち、1つ又は2つは水酸基を示し、残余は水素原子を示す。但し、X1、X2 及びX3 のうち、X2 とX3 が共に水酸基であって、残余が水素原子である場合と、R1、R2 及びR4 がそれぞれ水素原子であり、R3 がメチル基であり、X1、X2 及びX3 のうち、X1 が水酸基であり、残余が水素原子である場合を除く。)
で表わされる非対称アルキリデン多価フェノール類の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0027】
本発明による非対称アルキリデン多価フェノール類は、フェノール骨格中にアルキル基、フェニル基又はシクロヘキシル基を有するか、又は分子中に炭素数6〜16のアルキリデン基を有し、分子中に3〜4つの水酸基を有する非対称構造を有し、従って、このような多価フェノール類を原料として用いることによって、従来にない可撓性や耐衝撃性等の新しい機能を備えた新規な重合体や、高粘性を有する顕色剤等とうして有用であり、更には、選択的反応性、種々の溶剤、酸、アルカリ等に対する選択的溶解性を有する新規なフォトレジスト材料の開発を可能とするものである。
【0028】
更に、本発明によれば、このような非対称アルキリデン多価フェノール類をアルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類とを酸触媒の存在下、アルコール溶剤中で反応させることによって、望ましくない副反応を抑えて、高収率にて得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明による新規な非対称アルキリデン多価フェノール類は、一般式(I)
【0030】
【化7】

【0031】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3 は炭素数1〜13のアルキル基又はフェニル基を示し、R4 は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、X1、X2 及びX3 は、これらのうち、1つ又は2つは水酸基を示し、残余は水素原子を示す。但し、X1、X2 及びX3 のうち、X2 とX3 が共に水酸基であって、残余が水素原子である場合と、R1、R2 及びR4 がそれぞれ水素原子であり、R3 がメチル基であり、X1、X2 及びX3 のうち、X1 が水酸基であり、残余が水素原子である場合を除く。)
で表わされる。
【0032】
上記一般式(I)で表わされるアルキリデン多価フェノール類において、R1 又はR2 が炭素数1〜4のアルキル基であるとき、それらの具体例として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を挙げることができる。プロピル基及びブチル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。R3 が炭素数1〜13のアルキル基であるとき、その具体例として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基又はトリデシル基を挙げることができ、炭素数3以上のアルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。また、R4 が炭素数1〜12のアルキル基であるとき、その具体例として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基又はドデシル基を挙げることができ、炭素数3以上のアルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。
【0033】
しかしながら、本発明によれば、上記一般式(I)で表わされるアルキリデン多価フェノール類において、R3 はメチル基又はフェニル基であることが好ましい。また、R1 又はR2 が共に水素原子であるときは、R3 がフェニル基であるか、又はR4 が炭素数4以上のアルキル基であることが好ましい。
【0034】
従って、本発明による非対称アルキリデン多価フェノール類の具体例として、例えば、2−(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)オクタン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)オクタン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)オクタン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
1−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−1−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、
2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、
2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン
等を挙げることができる。
【0035】
本発明による前記一般式(I)で表わされる非対称アルキリデン多価フェノール類の製造について、原料であるアルケニルフェノール類が異性体を有しない場合と異性体を有する場合とに分けて説明する。
【0036】
先ず、原料であるアルケニルフェノール類が異性体を有しない場合は、本発明によれば、一般式(II)
【0037】
【化8】

【0038】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3' はメチル基又はフェニル基を示し、R3' がメチル基のとき、R4' は水素原子を示し、R3' がフェニル基のとき、R4' は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
で表わされるアルケニルフェノール類とカテコール、レゾルシン、ピロガロール及び1,2,4−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる多価フェノール類とを酸触媒の存在下に反応させることによって、一般式(I')
【0039】
【化9】

【0040】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3' はメチル基又はフェニル基を示し、R3' がメチル基のとき、R4' は水素原子を示し、R3' がフェニル基のとき、R4' は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、X1、X2 及びX3 は、これらのうち、1つ又は2つは水酸基を示し、残余は水素原子を示す。但し、X1、X2 及びX3 のうち、X2 とX3 が共に水酸基であって、残余が水素原子である場合と、R1、R2 及びR4 がそれぞれ水素原子であり、R3 がメチル基であり、X1、X2 及びX3 のうち、X1 が水酸基であり、残余が水素原子である場合を除く。)
で表わされる非対称アルキリデン多価フェノール類を得ることができる。
【0041】
上記一般式(II)で表わされるアルケニルフェノール類において、R1 又はR2 が炭素数1〜4のアルキル基であるとき、それらの具体例として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基を挙げることができる。プロピル基及びブチル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。
【0042】
従って、このようなアルケニルフェノール類の具体例として、
2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン、
2−(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン、
2−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン、
2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン、
2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン、
2−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン、
2−(3−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン、
α−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スチレン、
α−(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)スチレン、
α−(4−ヒドロキシフェニル)スチレン
等を挙げることができる。
【0043】
次に、原料であるアルケニルフェノール類が異性体混合物である場合は、本発明によれば、一般式(IIIa)
【0044】
【化10】

【0045】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3" は水素原子又はアルキル基を示し、R3'" はアルキル基を示す。但し、R3" の炭素数とR3'" の炭素数との合計は1〜12の範囲である。R4" は水素原子又はメチル基を示す。)
で表わされる第1の異性体と一般式(IIIb)
【0046】
【化11】

【0047】
(式中、R1、R2、R3"、R3"' 及びR4" は上記と同じである。)
で表わされる第2の異性体とからなるアルケニルフェノール類の異性体混合物とカテコール、レゾルシン、ピロガロール及び1,2,4−トリヒドロキシベンゼンから選ばれる多価フェノール類とを酸触媒の存在下に反応させることによって、一般式(IV)
【0048】
【化12】

【0049】
(式中、R1、R2、R3"、R3"' 及びR4" は上記と同じであり、X1、X2 及びX3 は、これらのうち、1つ又は2つは水酸基を示し、残余は水素原子を示す。但し、X1、X2 及びX3 のうち、X2 とX3 が共に水酸基であって、残余が水素原子である場合と、R1 、R2 及びR4 がそれぞれ水素原子であり、R3 がメチル基であり、X1、X2 及びX3 のうち、X1 が水酸基であり、残余が水素原子である場合を除く。)
で表わされる非対称アルキリデン多価フェノール類を得ることができる。
【0050】
上記一般式(IIIa) 又は(IIIb) で表わされるアルケニルフェノール類において、R3" の炭素数とR3'" の炭素数との合計は、好ましくは、3〜10の範囲である。
【0051】
上記第1の異性体と第2の異性体からなるアルケニルフェノール類の異性体混合物の具体例として、例えば、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−1−ペンテンと2−(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−2−ペンテンとからなる異性体混合物、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−オクテンと2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オクテンとからなる異性体混合物、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ノネンと2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ノネンとからなる異性体混合物、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ペンタデセンと2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ペンタデセンとからなる異性体混合物、
2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−ブテンと2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−ブテンとからなる異性体混合物
等を挙げることができる。
【0052】
本発明によれば、このような異性体混合物は、分離することなく、そのまま原料として用いて、これらに酸触媒の存在下に多価フェノール類を反応させることによって、目的とする非対称アルキリデン多価フェノール類を得ることができる。
【0053】
本発明によれば、前記一般式(II)で表わされるアルケニルフェノール類又は前記一般式(IIIa) 又は (IIIb) で表わされるアルケニルフェノール類の異性体混合物と前記多価フェノール類とを酸触媒の存在下に反応させて、非対称アルキリデン多価フェノール類を製造するに際して、多価フェノール類は、通常、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物に対して過剰に用いられ、好ましくは、多価フェノール類は、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物1モル部に対して、2〜5モル部、より好ましくは、2.5〜3モル部の範囲で用いられる。多価フェノール類/アルケニルフェノール類又はその異性体混合物のモル比が小さすぎるときは、多価フェノール類1分子にアルケニルフェノール類2分子が付加した副生物が増加する。他方、多価フェノール類/アルケニルフェノール類又はその異性体混合物のモル比が大きすぎるときは、未反応のフェノール類が増加し、目的物の生産効率が低下する。
【0054】
上記酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、カチオン交換樹脂、濃塩酸、硫酸、メタンスルホン酸等が用いられるが、特に、p−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。p−トルエンスルホン酸は、通常、一水和物が用いられる。特に、限定されるものではないが、酸触媒は、通常、アルケニルフェノール類まその異性体混合物に対して、1〜10モル%の範囲で用いられる。
【0055】
アルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類とを酸触媒の存在下で反応させるに際して、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物は、酸触媒や高温環境下において自己重合しやすいので、本発明によれば、目的とする非対称アルキリデン多価フェノール類を高収率で得るために、反応は溶剤中、特に、アルコール溶剤中で行なわれる。アルコール溶剤は、炭素数1〜10の脂肪族アルコールや、炭素数5〜7のシクロアルカノールが好ましく、具体例として、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール等を挙げることができるが、なかでも、本発明によれば、メタノールが好ましく用いられる。
【0056】
本発明においては、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類とを酸触媒の存在下で反応させるに際して、その態様については、特に、限定されるものではなく、例えば、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類とアルコール溶剤と酸触媒を反応器に一括して仕込み、加熱して、反応させてもよいが、多価フェノール類とアルコール溶剤と酸触媒とを予め反応器に仕込み、これにアルケニルフェノール類又はその異性体混合物とアルコール溶剤とからなる混合溶液を滴下し、反応させるが好ましい。
【0057】
このような方法において、アルコール溶剤の使用量は、特に、限定されるものではないが、常温乃至60℃程度の温度において、反応器に予め仕込むアルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類とアルコール溶剤と酸触媒が溶液を形成し、これをアルケニルフェノール類又はその異性体混合物とアルコール溶剤とからなる溶液に滴下することができるように選ばれる。そこで、一例として、例えば、仕込み溶液中のアルコール溶剤は、多価フェノール類100重量部に対して通常、30〜100重量部が好ましく、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物とアルコール溶剤とからなる溶液においては、アルコール溶剤は、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物100重量部に対して、通常、50〜150重量部の範囲で用いられる。
【0058】
アルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類との反応温度も、特に、限定されるものではないが、反応温度が低すぎるときは、反応速度が遅すぎて、実用的ではなく、他方、反応温度が高すぎるときは、望ましくない副反応が起こって、目的とする非対称アルキリデン多価フェノール類の収率が低下する。従って、本発明においては、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類との反応は、通常、20〜80℃の範囲で行なわれる。
【0059】
アルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類との反応は、液体クロマトグラフィー又はガスクロマトグラフィー分析にて追跡することができ、従って、反応混合物中において、未反応のアルケニルフェノール類又はその異性体混合物が消失し、目的とする非対称アルキリデン多価フェノール類の増加が認められなくなった時点を終点とすればよい。
【0060】
このようにして、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物と多価フェノール類とを酸触媒の存在下、アルコール溶剤中で反応させた後、得られた反応混合物をアルカリ水溶液でpH5〜7に中和し、アルコール溶剤を蒸留にて回収し、次いで、蒸留残留物に晶析溶剤、例えば、芳香族炭化水素類と水との混合物か、又は芳香族炭化水素類と飽和炭化水素類との混合溶剤と水との混合物を加え、未反応の多価フェノール類を水層に抽出、除去した後、油層において、目的とするアルキリデン多価フェノール類を晶析させ、これを濾過、分離する。
【0061】
上記アルカリ水溶液は、限定されることなく、種々のものが用いられるが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、第二リン酸ナトリウム等の水溶液が好ましく用いられる。
【0062】
また、上記芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン等が好ましく用いられ、飽和炭化水素類としては、例えば、ペンタン、n−ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類やシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類が用いられる。このような晶析溶剤は、通常、アルカリ溶剤を回収した後の蒸留残留物の重量の1〜4倍程度が用いられる。
【0063】
本発明において用いる前記一般式(II)で表わされるアルケニルフェノール類のうち、例えば、α−(4−ヒドロキシフェニル)スチレンは、既に知られている化合物であり、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの熱分解によって得ることができる。
【0064】
一般に、前記一般式(II)で表わされるアルケニルフェノール類又はその異性体混合物は、一般式(V)
【0065】
【化13】

【0066】
(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3' はメチル基又はフェニル基を示し、R3' がメチル基のとき、R4' は水素原子を示し、R3' がフェニル基のとき、R4' は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示す。)
で表わされるアルキリデンビスフェノール類を塩基性触媒の存在下、不活性雰囲気中、減圧下に熱分解し、生成するフェノール類を分留にて留出させ、次いで、アルケニルフェノール類又はその異性体混合物を留出させて、これを回収することによって得ることができる。
【0067】
上記塩基性触媒としては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物が、通常、アルキリデンビスフェノール類に対して、0.5〜20モル%の範囲で用いられる。
【0068】
アルキリデンビスフェノール類の熱分解は、好ましくは、減圧下、例えば、30〜5mmHgの減圧下、不活性ガス、例えば、窒素ガス雰囲気下に、160〜270℃の範囲の温度にアルキリデンビスフェノール類を加熱することによって行なわれ、この熱分解によって、生成するフェノール類を先に分留にて留出させ、その後、目的とするアルケニルフェノール類を留出させ、これを回収する。
【0069】
このようにして得たアルケニルフェノール類は、常温付近で結晶性であれば、これを適宜の溶剤から再結晶することによって精製品を得ることができる。好ましい再結晶のための溶剤として、例えば、メタノール水溶液を挙げることができる。他方、得られたアルケニルフェノール類が常温付近で液体であれば、好ましくは減圧下に、蒸留することによって精製品を得ることができる。
【0070】
従って、例えば、2,2−ビス(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンを熱分解することによって、2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペンを得ることができる。また、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタンを熱分解することによって、2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−オクテンと2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オクテンの異性体との混合物を得ることができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例と共に原料の製造例を示す参考例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0072】
参考例1
(2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペンの合成)
攪拌機、温度計、窒素ガス吹き込み管及び精留塔(ヘリパック10cm充填)を備えた1000mL容量の四つ口フラスコに2,2−ビス(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン500g(1.47モル)を仕込み、反応器内を窒素ガス置換した後、48%水酸化ナトリウム水溶液2.5g(30ミリモル)を加え、昇温して、溶解させた。
【0073】
内温が170℃付近から反応器内を一定の減圧(10mmHg)下におき、更に、内温を185〜228℃に昇温し、熱分解して、o−s−ブチルフェノール留分193.7g(ガスクロマトグラフ組成はo−s−ブチルフェノールが94.2%、2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペンが5.7%)、中間留分51.7g(ガスクロマトグラフ組成はo−sec.−ブチルフェノールが52.4%、2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペンが46.6%)、主留分211.3g(ガスクロマトグラフ組成はo−s−ブチルフェノールが8.5%、2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペンが89.4%)及び蒸留残渣36.7gを得た(存在収率80.3モル%)。
【0074】
上記主留分133.5gをシクロヘキサン66.4gに溶解させて、再結晶させた後、これを20℃で吸引濾過し、エバポレータで減圧乾燥して、2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン75.3g(液体クロマトグラフィーによる純度98.6%)を白色結晶として得た。
【0075】
沸点:140℃/10mmHg
融点:26.0℃(DSC法)
質量分析(m/z):
190(M+)、175(M+−CH3)、161(M+−C25)、147(M+−C37
赤外線吸収スペクトル(cm-1):
3282.6(フェノール性水酸基)、2962.5、2929.7、1600.8、1507.3、1456.2、1424.3、1375.2、1346.2、1234.4、1184.2、1159.1、1137.9、1080.1、889.1、819.7、750.3
プロトンNMR分析(CDCl3 溶媒、60MHz):
【0076】
【化14】

【0077】
【表1】

【0078】
参考例2
(2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−オクテンと2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オクテンの異性体との混合物の合成)
攪拌機、温度計、滴下漏斗、塩化水素ガス吹き込み管及び還流コンデンサを備えた2000mL容量の四つ口フラスコにフェノール770g(8.19モル)、水15.5g及びオクチルメルカプタン7.5g(50ミリモル)を仕込み、反応器内を塩化水素ガスに置換した。内温を約48℃に維持しつつ、2−オクタノン150g(1.17モル)を2.5時間で滴下した後、更に、同じ温度で4時間攪拌した。
【0079】
このようにして得られた反応混合物中、2−オクタノンは0.1%以下であり、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタンの存在収率は92.2モル%、その構造異性体である2,4'−体(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)オクタン)の存在収率は4.5モル%であった。
【0080】
反応終了後、得られた反応混合物に16%水酸化ナトリウム水溶液222g(0.89モル)を加えてpH5〜6に中和した後、水100gを加えて、水層を分液除去し、有機層にトルエン440gを加え、水230gで3回、水洗分液を行なった。
【0081】
次いで、得られた有機層を常圧下に蒸留して、トルエンと未反応フェノールの一部を回収し、蒸留残渣490gを精留塔(ヘリパック10cm充填)を備えた1000mL容量四つ口フラスコに仕込み、窒素置換した後、48%水酸化ナトリウム水溶液1.7g(0.02モル)を加えて、80℃/80mmHg〜195℃/10mmHgの減圧下に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタンを熱分解して、フェノール留分237.8g、中間留分48.1g(フェノール29.5%、留分P1が37.0%、留分P2が7.5%、留分P3が25.8%)を留去した後、主留分151.8g(留分P1が40.9%、留分P2が12.8%、留分P3が43.2%)を得た。
【0082】
この主留分を構成する上記留分P1、P2及びP3はすべて同じ分子量を有し、従って、2−(4−ヒドロキシフェニル)−1−オクテンと2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−オクテンの異性体の混合物を主留分(純度96.9%)として分離することができた。
【0083】
沸点(主留分):164〜150℃/7mmHg
質量分析(m/z):
204(M+)、189(M+−CH3)、147(M+−C49、134(M+−C511
赤外線吸収スペクトル(cm-1):
3333.7(フェノール性水酸基)、3030.9、2925.8、2855.4、1885.3、1609.5、1594.1、1511.1、1435.9、1377.1、1235.3、1175.5、1107.1、1603.7、1012.6、831.3、725.2、691.4、574.7、548.7
プロトンNMR分析(CDCl3 溶媒、60MHz):
【0084】
【化15】

【0085】
【表2】

【0086】
実施例1
(2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパンの合成)
攪拌機、温度計、滴下漏斗及び還流コンデンサを備えた300mL容量の四つ口フラスコにレゾルシン22.0g(0.20モル)とp−トルエンスルホン酸一水和物0.6g(3.2ミリモル)をメタノール11.0gと共に仕込んだ。フラスコの内温を30℃に保持し、攪拌しながら、2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロペン19g(0.1モル)とメタノール19gとの混合物を1.5時間で滴下した後、同じ温度で7時間、反応させた。
【0087】
反応終了後、得られた反応混合物に8%水酸化ナトリウム水溶液1.9gを加えて、pH5〜6に中和し、常圧下、蒸留にてメタノールを回収した。蒸留残渣45.7gにトルエン91.4gと水91.4gとを加え、50℃で30分間、攪拌した後、水層を分液除去した。油層に更に水91.4gを加え、水洗分液を2回行なった。油層を脱水した後、冷却し、晶析させて、27℃で遠心濾過し、得られたケーキをトルエンで洗浄した後、乾燥して、2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン18.3g(液体クロマトグラフィー純度97.8%)を白色結晶として得た。
【0088】
融点:125.9℃(DSC法)
質量分析:300(M+)
赤外線吸収スペクトル(cm-1):
3545.9〜3300.9(フェノール性水酸基)、3029.0、2965.4、2932.6、2872.8、2732.0、1624.0、1594.1、1505.3、1459.0、1448.4、1418.5、1376.1、1336.6、1299.9、1272.0、1247.9、1205.4、1141.8、1115.7、1098.4、1087.8、974.0、854.4、819.7、800.4、772.4、739.7、633.6、529.4、422.4
プロトンNMR分析(DMSO溶媒、60MHz):
【0089】
【化16】

【0090】
【表3】

【0091】
実施例2
(2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパンの合成)
実施例1と同様の装置を用い、レゾルシンに代えて、ピロガロール25.2g(0.20モル)を用いた以外は、実施例1と同様に反応を行なった。
【0092】
反応終了後、得られた反応混合物に8%水酸化ナトリウム水溶液1.9gを加えて、pH5〜6に中和し、常圧下、蒸留にてメタノールを回収した。蒸留残渣47.2gにトルエン95gを加え、析出した未反応のピロガロールを吸引濾過によって除去した。濾液を室温下に放置し、析出した結晶を吸引濾過し、得られたケーキをトルエンで洗浄した後、乾燥して、2−(3−s−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)プロパン24.5g(液体クロマトグラフィー純度91.3%)を灰白色結晶として得た。
【0093】
融点:84.5℃(DSC法)
質量分析:316(M+)
赤外線吸収スペクトル(cm-1):
3395.4(フェノール性水酸基)、3026.1、2964.4、2928.7、2868.0、1626.8、1607.6、1559.3、1505.3、1458.1、1424.3、1362.6、1287.4、1258.5、1177.5、1116.7、1085.8、1024.1、1002.9、948.9、907.4、875.6、824.5、802.3、768.6、731.0、695.3、631.3、612.4、654.1、522.7、491.8、466.7、422.4
プロトンNMR分析(DMSO溶媒、60MHz):
【0094】
【化17】

【0095】
【表4】

【0096】
実施例3
(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)オクタンの合成)
実施例1と同様の装置にレゾルシン22.0g(0.20モル)とp−トルエンスルホン酸一水和物0.6g(3.2ミリモル)をメタノール11gと共に仕込んだ。フラスコの内温を30℃に保持し、攪拌しながら、2−(4−ヒドロキシフェニル)オクテン20.4g(0.10モル)とメタノール20.4gとの混合物を1時間で滴下した後、同じ温度で7時間、反応させた。
【0097】
反応終了後、得られた反応混合物に8%水酸化ナトリウム水溶液1.9gを加えて、pH5〜6に中和し、常圧下、蒸留にてメタノールを回収した。蒸留残渣46.3gにトルエン92.6gと水46.3gとを加え、60℃で水洗分液を2回行なった。油層にトルエン46.3gを加えて、再結晶させ、20℃まで冷却して遠心濾過し、得られたケーキをトルエンで洗浄した後、乾燥して、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)オクタン18.5g(液体クロマトグラフィー純度97.4%)を白色結晶として得た。
【0098】
融点:142.8℃(DSC法)
質量分析:314(M+)
赤外線吸収スペクトル(cm-1):
3500.6〜3358.8(フェノール性水酸基)、3027.1、2936.4、2855.4、1618.2、1600.8、1511.1、1015.5、981.7、838.0、803.3、783.0、727.1、626.8、593.1、562.2
プロトンNMR分析(DMSO溶媒、60MHz):
【0099】
【化18】

【0100】
【表5】

【0101】
実施例4
(2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)オクタンの合成)
実施例1と同様の装置を用い、実施例3において、レゾルシンに代えて、ピロガロール25.2g(0.20モル)を用いた以外は、実施例3と同様に反応を行なった。
【0102】
反応終了後、得られた反応混合物に8%水酸化ナトリウム水溶液1.9gを加えて、pH5〜6に中和し、常圧下、蒸留にてメタノールを回収した。蒸留残渣49.0gにトルエン98gと水49gとを加え、40〜50℃で水洗分液を2回行なった。油層にトルエン24gを加え、脱水した後、再結晶させ、27℃まで冷却して遠心濾過し、得られたケーキをトルエンで洗浄した後、乾燥して、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)オクタン19.5g(液体クロマトグラフィー純度97.0%)を白色結晶として得た。
【0103】
融点:147.2℃(DSC法)
質量分析:330(M+)
赤外線吸収スペクトル(cm-1):
3468.7〜3384.8(フェノール性水酸基)、3054.1、2932.6、2855.4、1608.5、1595.0、1511.1、1461.0、1434.9、1375.2、1346.2、1265.2、1211.2、1126.4、1055.0、1019.3、939.3、843.8、808.1、792.7、718.4、676.9、631.9、563.2、507.2
プロトンNMR分析(DMSO溶媒、60MHz):
【0104】
【化19】

【0105】
【表6】

【0106】
実施例5
(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンの合成)
実施例1と同様の装置にカテコール22.0g(0.20モル)とp−トルエンスルホン酸一水和物0.6g(3.2ミリモル)とα−(4−ヒドロキシフェニル)スチレン20gをメタノール22.0gと共に仕込み、80℃で7時間、反応させた。
【0107】
反応終了後、得られた反応混合物に8%水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH7に中和し、減圧下、エバポレータでメタノールを回収した。蒸留残渣43.1gにトルエン50g、メチルイソブチルケトン10g及び水40gを加え、30℃で水洗分液を3回行なった。エバポレータを用いて、油層から水分と溶剤を回収した後、トルエン46gを加えて、再結晶させて、室温まで冷却し、吸引濾過し、得られたケーキをトルエンで洗浄して、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン13.7g(液体クロマトグラフィー純度97.3%)を白色結晶として得た。
【0108】
融点:144.9℃(DSC法)
質量分析:
306(M+) 、291(M+−CH3
赤外線吸収スペクトル(cm-1):
3282.6(フェノール性水酸基)、3026.1、2977.9、2947.0、1609.5、1600.8、1510.2、1491.8、1434.9、1284.5、1245.9、1182.3、1111.9、930.6、876.6、840.9、819.7、799.4、780.2、758.0、701.1、668.3、638.4、596.9、567.0、553.5、518.8、492.5、446.5、418.5
プロトンNMR分析(DMSO溶媒、60MHz):
【0109】
【化20】

【0110】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、R1 及びR2 はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基又はフェニル基を示し、R3 はフェニル基を示し、R4 は水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示し、X1 及びX3 は水素原子を示し、X2 は水酸基を示す。)
で表わされる非対称アルキリデン多価フェノール類。
【請求項2】
1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン。


【公開番号】特開2008−88179(P2008−88179A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−286837(P2007−286837)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【分割の表示】特願平11−364369の分割
【原出願日】平成11年12月22日(1999.12.22)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】