説明

非対称ベンゾキサンテン染料

【課題】蛍光染料として有用な種類の非対称ベンゾキサンテン染料を提供すること。
【解決手段】以下の式(A)を有する非対称ベンゾキサンテン染料化合物であって、YおよびYは、別個に、ヒドロキシル、酸素、イミニウム、またはアミンである。R〜Rは、別個に、水素、フッ素、塩素、低級アルキル、低級アルケン、低級アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、連結基またはそれらの組合せである。そしてRは、アセチレン、アルカン、アルケン、シアノ、置換フェニル、またはそれらの組合せであり、この置換フェニルは、以下の式(B)の構造を有し、Xは、カルボン酸またはスルホン酸であり;XおよびXは、別個に、水素、塩素、フッ素、または低級アルキルであり;そしてXおよびXは、別個に、水素、塩素、フッ素、低級アルキル、カルボン酸、スルホン酸、または連結基である、化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、分子プローブとして有用な蛍光染料化合物に関する。より詳細には、本発明は、蛍光標識試薬として有用な非対称ベンゾキサンテン染料に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
生物学的分析物の非放射性検出は、現在の分析バイオテクノロジーにおいて、重要な技術である。放射性標識の必要性をなくすことにより、安全性が高まり、試薬廃棄物の環境上の影響が著しく低下し、その結果、分析コストが低減される。このような非放射性検出方法を使用する方法の例には、DNA配列決定、オリゴヌクレオチドプローブ法、ポリメラーゼ鎖反応生成物の検出、イムノアッセイなどが包含される。
【0003】
多くの用途では、混合物中の複数の空間的に重複した分析物の独立した検出、例えば、単一管の多重DNAプローブアッセイ、イムノアッセイ、多色DNA配列決定法などが必要である。複数座のDNAプローブアッセイの場合には、多色検出を提供することにより、反応管の数を減らすことができ、それにより、実験プロトコルが簡潔化され、そして適用特異的なキットの製造が促進される。自動化したDNA配列決定の場合には、多色標識化により、単一ラインの4個の塩基全ての分析が可能となり、それにより、単色法よりも処理能力が増え、レーン間の電気泳動の可動性の変化に付随した不確実性がなくなる。
【0004】
多重検出では、特に、電気泳動分離および酵素処理が必要な分析(例えば、DNA配列決定)に対して、染料標識の選択について、非常に多くの厳しい制約が課せられている。第1に、有機蛍光染料の典型的な発光バンドの半値幅は、約40〜80ナノメーター(nm)であり、利用できるスペクトルの幅は、励起光源により制限されるので、その発光スペクトルが分光的に分解される一連の染料を見つけるのは困難である。1組の染料に関連して、本明細書中で使用する「スペクトル分解」との用語は、これらの染料の蛍光発光バンドが充分に異なること、すなわち、充分に重なりがないことを意味し、個々の染料が結合している試薬(例えば、ポリヌクレオチド)が、米国特許第4,230,558号、第4,811,218号またはWheelessら、21〜76ページ、Flow Cytometry:Instrumentation and Data Analysis(Academic Press、New York、1985)に記述の系によって例示されるように、例えば、バンドパスフィルターおよび光電子増倍管、帯電カップルド装置(charged−coupled device)、および分光器のシステムを使用する標準的な光検出システムを用いて、個々の染料により発生する蛍光信号を基準にして、識別できることを意味する。第2に、たとえ、非重複発光スペクトルを有する染料を見出しても、個々の蛍光効率が低すぎるなら、そのセットは、依然として、適当ではない。例えば、DNA配列決定の場合には、試料の充填を多くしても、低い蛍光効率を補填できない(Pringleら、DNA Core Facilities Newsletter、1:15〜21(1988))。第3に、数個の蛍光染料を同時に使用するとき、これらの染料の吸収バンドが広範囲に分離するために、同時励起が困難となる。第4に、これらの染料の電荷、分子サイズおよび立体配座は、そのフラグメントの電気泳動可動性に悪影響を与えてはならない。最後に、これらの蛍光染料は、これらのフラグメントを製造するかまたは操作するのに使用する化学物質(例えば、DNA合成溶媒および試薬、緩衝液、ポリメラーゼ酵素、リガーゼ酵素など)と適合性でなければならない。
【0005】
これらの厳しい制約のために、多色用途(特に、4色DNA配列決定の領域)で使用できる蛍光染料のセットは、少数発見されているにすぎない(例えば、Smithら、Nucleic Acids Research、113;2399〜2412(1985);Proberら、Science、238:336〜341(1987);およびConnellら、Biotechniques、5:342〜348(1987))。図1は、2種のローダミンベースの染料であるTAMRA(22)およびROX(26)および2種のフルオレセインベースの染料であるHEX(23)およびNAN(24)を含めて、550nmを超えると発光する長波長標識として使用される蛍光キサンテン染料の例を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、複数の空間的に重複した分析物の同時検出に有用な種類の非対称ベンゾキサンテン染料であって、上記制約を満たし、480nmと550nmの間の波長を有する励起光を照射したとき、550nmを超える蛍光発光最大を与えるものを提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、複数の空間的に重複した分析物の同時検出に有用な種類の非対称ベンゾキサンテン染料であって、上記制約を満たし、その蛍光特性が、種々の位置における置換基の操作により調整できるものを提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料の合成に有用な方法および中間体化合物を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料で標識化したヌクレオチドおよびポリヌクレオチドを提供することにある。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料を含むホスホロアミデート化合物を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料を使用して、DNA配列決定法を含めたフラグメント解析法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の局面では、本発明の上述の目的および他の目的は、次式を有する非対称ベンゾキサンテン染料化合物により、達成される:
【0013】
【化3】

ここで、YおよびYは、別個に、ヒドロキシル、酸素、イミニウム、またはアミンである。R〜Rは、別個に、水素、フッ素、塩素、低級アルキル、低級アルケン、低級アルキン、スルホネート、アミノ、アンモニウム、アミド、ニトリル、アルコキシ、連結基またはそれらの組合せである。そしてRは、アセチレン、アルカン、アルケン、シアノ、置換フェニル、またはそれらの組合せであり、この置換フェニルは、以下の構造を有する:
【0014】
【化4】

ここで、Xは、カルボン酸またはスルホン酸であり;XおよびXは、別個に、水素、塩素、フッ素、または低級アルキルであり;そしてXおよびXは、別個に、水素、塩素、フッ素、低級アルキル、カルボン酸、スルホン酸、または連結基である。
【0015】
第2の局面では、本発明は、次式を有するホスホロアミダイト化合物を包含する:
【0016】
【化5】

ここで、Xは、スペーサーアーム(spacer arm)であり;Yは、連結基であり;Bは、亜リン酸エステル保護基であり;B、およびBは、別個に、低級アルキル、低級アルケン、1個と8個の間の炭素原子を有する低級アリール、アリールアルキル、および10個までの炭素原子を含有するシクロアルキルであり;そしてDは、上記非対称ベンゾキサンテン染料化合物である。YおよびDは、連結基およびその相補官能基(complementary functionality)の反応により形成した連結基を介して結合されており、このような連結基は、R〜R位置のうちの1つで、染料Dに結合している。
【0017】
第3の局面では、本発明は、次式を有するホスホルアミダイト化合物を包含する:
【0018】
【化6】

ここで、Bは、亜リン酸エステル保護基であり、BおよびBは、別個に、低級アルキル、低級アルケン、1個と8個の間の炭素原子を有する低級アリール、アリールアルキル、および10個までの炭素原子を含有するシクロアルキルであり;Bは、酸切断可能なヒドロキシル保護基であり;Bは、ヌクレオチド塩基であり;そしてDは、上記染料化合物である。Bがプリンまたは7−デアザプリンのとき、その糖部分は、このプリンまたは7−デアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンのとき、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合している。BおよびDは、連結基およびその相補官能基の反応により形成した連結基を介して結合されており、このような連結基は、R〜R位置の1個で、Dに結合している。Bがプリンである場合、その連結基は、このプリンの8−位置に結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、その連結基は、この7−デアザプリンの7−位置に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、その連結基は、このピリミジンの5−位置にて結合している。好ましくは、Bは、ウラシル、シトシン、7−デアザアデニン、および7−デアザグアノシンからなる群から選択される。
【0019】
第4の局面では、本発明は、上記非対称ベンゾキサンテン染料の合成で中間体として有用な化合物を包含し、このような化合物は、次式を有する:
【0020】
【化7】

ここで、R〜Rは、上で記述のものと同じであり、そしてYは、ヒドロキシルまたはアミンである。本局面の特に好ましい実施形態では、Rは、フッ素であり、そしてYは、ヒドロキシルである。
【0021】
第5の局面では、本発明は、本発明の上記非対称ベンゾキサンテン染料で標識化したヌクレオチドを包含し、このヌクレオチドは、次式を有する:
【0022】
【化8】

ここで、Bは、7−デアザプリン、プリンまたはピリミジンヌクレオチド塩基である;WおよびWは、別個に、HまたはOHである;Wは、OH、
【0023】
【化9】

であり、そしてDは、本発明の染料化合物である。Bがプリンまたは7−デアザプリンのとき、その糖部分は、このプリンまたはデアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンのとき、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合している。BおよびDを連結している連結基は、R〜R位置のうちの1つで、Dに結合している。Bがプリンである場合、その連結基は、このプリンの8−位置に結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、その連結基は、この7−デアザプリンの7−位置に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、その連結基は、このピリミジンの5−位置にて結合している。好ましくは、Bは、ウラシル、シトシン、デアザアデニンおよびデアザグアノシンからなる群から選択される。
【0024】
第6の局面では、本発明は、次式を有するヌクレオチドを含有する標識化ポリヌクレオチドを包含する:
【0025】
【化10】

ここで、Bは、7−デアザプリン、プリン、またはピリミジンヌクレオチド塩基であり;Zは、HまたはOHであり;Zは、H、OH、HPO、およびNucであり、ここで、「Nuc」は、ヌクレオチドを意味する。このヌクレオシドおよびNucは、ホスホジエステル連結基により連結され、この連結基は、Nucの5’−位置に結合している;Zは、H、HPOおよびそれらのホスフェートアナログ、およびNucからなる群から選択され、ここで、Nucおよびこのヌクレオシドは、ホスホジエステル連結基により連結されており、この連結基は、Nucの3’−位置に結合している;そしてDは、本発明の染料化合物である。HPOのホスフェートアナログには、非架橋酸素を非酸素部分(例えば、イオウ、アミノ、アニリデート、アニリンチオエートなど)で置き換えたアナログが挙げられる。Bがプリンまたは7−デアザプリンのとき、その糖部分は、このプリンまたはデアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンのとき、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合している。BおよびDを連結している連結基は、R〜R位置の1個で、Dに結合している。Bがプリンである場合、その連結基は、このプリンの8−位置に結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、その連結基は、この7−デアザプリンの7−位置に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、その連結基は、このピリミジンの5−位置にて結合している。好ましくは、Bは、ウラシル、シトシン、デアザアデニンおよびデアザグアノシンからなる群から選択される。
【0026】
第7の局面では、本発明は、本発明の染料を用いたポリヌクレオチド配列決定方法を包含する。この方法は、第1、第2、第3、および第4のクラスのポリヌクレオチドの混合物を以下のように形成する工程を包含する:第1のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシアデノシンを含有し、第1染料で標識化されている;第2のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシシチジンを含有し、第2染料で標識化されている;第3のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシグアノシンを含有し、第3染料で標識化されている;そして第4のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシチミジンを含有し、第4染料で標識化されている。この方法では、第1染料、第2染料、第3染料、または第4染料の1種以上は、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料である。これらの染料の他のものは、それらが、この非対称ベンゾキサンテン染料からおよび互いから分光的に分解可能なように、選択される。上記混合物を形成した後、このポリヌクレオチドは、電気泳動的に分離され、それにより、類似のサイズのポリヌクレオチドのバンドが形成される。次に、これらのバンドは、これらの染料に蛍光を起こすことができる照射ビームで照射される。最後に、これらのポリヌクレオチドのクラスは、各バンド中の標識化ポリヌクレオチドの蛍光スペクトルにより、同定される。
【0027】
第8の局面では、本発明は、本発明の染料化合物を使用するフラグメント解析方法を包含する。この局面の方法は、以下の工程を包含する:標識化ポリヌクレオチドフラグメントを形成する工程であって、このフラグメントが、本発明の染料化合物で標識化されている、工程;この標識化ポリヌクレオチドフラグメントを、サイズ依存性分離プロセスに供する工程;およびこの分離プロセスに引き続いて、この標識化ポリヌクレオチドフラグメントを検出する工程。
1つの局面において、本発明は、次式を有する非対称ベンゾキサンテン染料化合物:
【0028】
【化11】

を提供し、
ここで、
およびYは、別個に、ヒドロキシル、酸素、イミニウムおよびアミンからなる群から選択され;
〜Rは、別個に、水素、フッ素、塩素、低級アルキル、低級アルケン、低級アルキン、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、低級アルコキシ、連結基およびそれらの組合せからなる群から選択され;そして
は、アセチレン、低級アルキル、低級アルケン、シアノ、フェニル、置換フェニル、複素環芳香族およびそれらの組合せからなる群から選択され、この置換フェニルは、以下の構造を有し:
【0029】
【化12】

ここで、
〜Xは、別個に、水素、塩素、フッ素、低級アルキル、カルボン酸、スルホン酸、−CHOH、または連結基である。
【0030】
1つの実施形態において、上記の化合物は、YおよびYの1個が、酸素であり得、そして他が、ヒドロキシルであり得る。
【0031】
別の実施形態において、上記の化合物は、
は、カルボン酸、スルホン酸、および−CHOHからなる群から選択され得;
およびXは、別個に、水素、塩素、フッ素、および低級アルキルからなる群から選択され得;そして
およびXは、別個に、水素、塩素、フッ素、低級アルキル、カルボン酸、スルホン酸、および連結基からなる群から選択され得る。
【0032】
別の実施形態において、上記の化合物は、XおよびXが、塩素であり得る。
【0033】
別の実施形態において、上記の化合物は、Xが、カルボン酸であり得る。
【0034】
別の実施形態において、上記の化合物は、XまたはXの一方が、連結基であり得、そして他方が、水素であり得る。
【0035】
別の実施形態において、上記の化合物は、XまたはXの一方が、カルボン酸、スルホン酸、および−CHOHからなる群から選択され得る。
【0036】
別の実施形態において、上記の化合物は、R〜Rの1個が、フッ素であり得る。好ましい実施形態において、上記の化合物は、Rが、フッ素であり得る。
【0037】
別の実施形態において、上記の化合物は、
およびYの一方は、酸素であり得、そして他方は、ヒドロキシルであり得;
は、塩素であり得;
は、フッ素であり得;
、およびR〜Rは、水素であり得;そして
は、置換フェニルであり得、ここで、Xは、カルボキシルであり得、XおよびXは、塩素であり得、そしてXおよびXの一方は、カルボキシルであり得、そして他方は、水素であり得る。
【0038】
別の実施形態において、上記の化合物は、
およびYの一方は、酸素であり得、そして他方は、ヒドロキシルであり得;
およびRは、フッ素であり得;
、およびR〜Rは、水素であり得;そして
は、置換フェニルであり得、ここで、Xは、カルボキシルであり得、XおよびXは、塩素であり得、そしてXおよびXの一方は、カルボキシルであり得、そして他方は、水素であり得る。
【0039】
別の実施形態において、上記の化合物は、
およびYの一方は、酸素であり得、そして他方は、ヒドロキシルであり得;
は、メトキシであり得、Rは、塩素であり得、Rは、フッ素であり得;
〜Rは、水素であり得;そして
は、置換フェニルであり得、ここで、Xは、カルボキシルであり得、XおよびXは、塩素であり得、そしてXおよびXの一方は、カルボキシルであり得、そして他方は、水素であり得る。
【0040】
別の実施形態において、上記の化合物は、
およびYの一方は、酸素であり得、そして他方は、ヒドロキシルであり得;
は、フッ素であり得;R、R、およびR〜Rは、水素であり得;そして
は、置換フェニルであり得、ここで、Xは、カルボキシルであり得、XおよびXは、塩素であり得、そしてXおよびXの一方は、カルボキシルであり得、そして他方は、水素であり得る。
【0041】
別の実施形態において、上記の化合物は、
およびYの一方は、酸素であり得、そして他方は、ヒドロキシルであり得;
〜Rは、水素であり得;そして
は、置換フェニルであり得、ここで、Xは、カルボキシルであり得、XおよびXは、塩素であり得、そしてXおよびXの一方は、カルボキシルであり得、そして他方は、水素であり得る。
【0042】
別の実施形態において、上記の化合物は、
およびYの一方は、酸素であり得、そして他方は、ヒドロキシルであり得;
は、塩素であり;R〜Rは、水素であり得;そして
は、置換フェニルであり得、ここで、Xは、カルボキシルであり得、XおよびXは、塩素であり得、そしてXおよびXの一方は、カルボキシルであり得、そして他方は、水素であり得る。
【0043】
別の実施形態において、上記の化合物は、
およびYの一方は、酸素であり得、そして他方は、ヒドロキシルであり得;
は、メトキシであり;Rは、塩素であり得;
〜Rは、水素であり得;そして
は、置換フェニルであり得、ここで、Xは、カルボキシルであり得、XおよびXは、塩素であり得、そしてXおよびXの一方は、カルボキシルであり得、そして他方は、水素であり得る。
【0044】
別の局面において、本発明は、次式を有するホスホルアミダイト化合物:
【0045】
【化13】

を提供し、ここで、
Xは、スペーサーアーム(spacer arm)であり;
Yは、連結基であり;
は、亜リン酸エステル保護基であり;
およびBは、別個に、低級アルキル、低級アルケン、アリール、および10個までの炭素原子を含有するシクロアルキルからなる群から選択され;そして
Dは、上記の染料化合物である;
ここで、YおよびDは、R〜R位置のうち1つで染料Dに結合した連結基を介して、連結されている。
【0046】
1つの実施形態において、上記の化合物は、BおよびBは、一緒になって、その主鎖に5個までの炭素原子を含み、かつ全体で10個までの炭素原子を含有するアルケン鎖であり得、この鎖の両末端の原子価結合は、この窒素原子に結合されており得るか;あるいはBおよびBは、窒素原子と一緒になって、飽和窒素複素環を形成し得、これは、窒素、酸素、およびイオウからなる群から選択される1個以上のヘテロ原子を含有し得る。好ましい実施形態において、上記の化合物は、
は、メチル、β−シアノエチル、または4−ニトロフェニルエチルからなる群から選択され得;
およびBは、別個に、イソプロピル、t−ブチル、イソブチル、およびsec−ブチルからなる群から選択され得;そして
およびBは、一緒になって、モルホリノであり得る。
【0047】
別の実施形態において、上記の化合物は、XおよびYが、一緒になって、以下の式であり得、ここで、nが、2〜10の範囲であり得る:
【0048】
【化14】


【0049】
別の実施形態において、上記の化合物は、XおよびYが、一緒になって、以下の式であり得、ここで、nが、2〜10の範囲であり得る:
【0050】
【化15】


【0051】
別の局面において、本発明は、次式を有するホスホロアミダイト化合物:
【0052】
【化16】

を提供し、ここで:
は、亜リン酸エステル保護基であり;
、およびBは、別個に、低級アルキル、低級アルケン、アリール、および10個までの炭素原子を含有するシクロアルキルからなる群から選択され;
は、酸切断可能なヒドロキシル保護基であり;
Bは、ヌクレオチド塩基であり;そして
Dは、上記の染料化合物である;
ここで、Bがプリンまたは7−デアザプリンである場合、その糖部分は、このプリンまたは7−デアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンである場合、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合している;
ここで、BおよびDは、R〜R位置のうち1つでDに結合した連結基により、連結されている;そして
ここで、Bがプリンである場合、この連結基は、このプリンの8−位置に結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、この連結基は、この7−デアザプリンの7−位置に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、この連結基は、このピリミジンの5−位置にて結合している。
【0053】
1つの実施形態において、上記の化合物は、上記連結基が、以下の式であり得る:
【0054】
【化17】


【0055】
別の実施形態において、上記の化合物は、上記連結基が、以下であり得る
【0056】
【化18】


【0057】
別の実施形態において、上記の化合物は、上記連結基が、以下であり得る:
【0058】
【化19】


【0059】
別の実施形態において、上記の化合物は、Bが、ウラシル、シトシン、デアザアデニン、およびデアザグアノシンからなる群から選択され得る。
【0060】
別の局面において、本発明は、次式を有する化合物:
【0061】
【化20】

を提供し、ここで:
は、フッ素、塩素、スルホネート、アミノ、アミド、ニトリル、低級アルコキシ、および連結基からなる群から選択され;
〜Rは、別個に、水素、フッ素、塩素、低級アルキル、低級アルケン、低級アルキン、スルホネート、アミノ、アミド、ニトリル、低級アルコキシ、および連結基からなる群から選択され;そして
は、ヒドロキシルおよびアミンからなる群から選択される。
【0062】
1つの実施形態において、上記の化合物は、Rが、フッ素であり得る。
【0063】
別の実施形態において、上記の化合物は、Yが、ヒドロキシルであり得る。
【0064】
別の実施形態において、上記の化合物は、Rが、塩素であり得る。
【0065】
別の実施形態において、上記の化合物は、Yが、アミンであり得る。
【0066】
別の局面において、本発明は、次式を有する標識化ヌクレオチド:
【0067】
【化21】

を提供し、ここで:
Bは、7−デアザプリン、プリン、またはピリミジンヌクレオチド塩基であり;
およびWは、別個に、HおよびOHからなる群から選択され;
は、OH、
【0068】
【化22】

からなる群から選択され;
Dは、上記の染料化合物であり;
ここで、Bがプリンまたは7−デアザプリンである場合、その糖部分は、このプリンまたはデアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンである場合、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合している;
ここで、BおよびDを連結している連結基は、R〜R位置のうちの1つで、Dに結合している;そして
ここで、Bがプリンである場合、この連結基は、このプリンの8−位置に結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、この連結基は、この7−デアザプリンの7−位置に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、この連結基は、このピリミジンの5−位置に結合している。
【0069】
1つの実施形態において、上記の標識化ヌクレオチドは、Bが、ウラシル、シトシン、デアザアデニン、およびデアザグアノシンからなる群から選択され得る。
【0070】
別の実施形態において、上記の標識ヌクレオチドは、上記連結基が、以下の式であり得る:
【0071】
【化23】


【0072】
別の実施形態において、上記の標識化ヌクレオチドは、WおよびWの両方が、Hであり得、そしてWが、以下の式であり得る:
【0073】
【化24】


【0074】
別の実施形態において、上記の標識化ヌクレオチドは、Wが、Hであり得、Wが、OHであり得、そしてWが、以下の式であり得る:
【0075】
【化25】


【0076】
別の局面において、本発明は、次式を有するヌクレオチドを含有する標識化ポリヌクレオチド:
【0077】
【化26】

を提供し、ここで:
Bは、7−デアザプリン、プリン、またはピリミジンヌクレオチド塩基であり;
は、HまたはOHからなる群から選択され;
は、H、OH、HPO、およびNucからなる群から選択され、ここで、Nucおよびこのヌクレオシドは、ホスホジエステル連結基により連結され、この連結基は、Nucの5’−位置に結合している;
は、H、HPO、ホスフェートアナログおよびNucからなる群から選択され、ここで、Nucおよびこのヌクレオシドは、ホスホジエステル連結基により連結され、この連結基は、Nucの3’−位置に結合している;そして
Dは、上記の染料化合物である;
ここで、Bがプリンまたは7−デアザプリンである場合、その糖部分は、このプリンまたはデアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンである場合、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合している;
ここで、BおよびDを連結している連結基は、R〜R位置のうちの1つで、Dに結合している;
ここで、Bがプリンである場合、この連結基は、このプリンの8−位置に結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、この連結基は、この7−デアザプリンの7−位置に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、この連結基は、このピリミジンの5−位置に結合している。
【0078】
1つの実施形態において、上記の標識化ポリヌクレオチドは、Bが、ウラシル、シトシン、デアザアデニン、およびデアザグアノシンからなる群から選択され得る。
【0079】
別の実施形態において、上記の標識化ポリヌクレオチドは、上記連結基が、以下の式であり得る:
【0080】
【化27】


【0081】
別の局面において、本発明は、以下の工程を包含する、ポリヌクレオチド配列決定方法を提供する:
第1、第2、第3、および第4のクラスのポリヌクレオチドの混合物を以下:
この第1のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシアデノシンを含有し、第1染料で標識されており;
この第2のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシシチジンを含有し、第2染料で標識されており;
この第3のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシグアノシンを含有し、第3染料で標識されており;そして
この第4のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシチミジンを含有し、第4染料で標識されており;
ここで、この第1染料、この第2染料、この第3染料、またはこの第4染料のうちの1種は、上記の非対称ベンゾキサンテン染料であり;
この染料の他のものは、この非対称ベンゾキサンテン染料からおよび互いから、分光的に分解可能である、
ように形成する工程;
このポリヌクレオチドを電気泳動的に分離し、それにより、同様にサイズ分類されたポリヌクレオチドのバンドを形成する工程;
このバンドを、この染料が蛍光を発するのを引き起こすことができる照射ビームで照射する工程;ならびに
このバンド中のこのポリヌクレオチドのクラスを、この染料の蛍光スペクトルにより同定する工程。
【0082】
1つの実施形態において、上記のポリヌクレオチド配列決定方法は、上記染料の他のものが、6−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシ−4,7,2’,7’−テトラクロロフルオレセイン、および6−カルボキシ−4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロフルオレセインからなる群から選択され得る。
【0083】
別の局面において、本発明は、以下を包含する、フラグメント解析方法を提供する:
標識化ポリヌクレオチドフラグメントを形成する工程であって、このフラグメントが、上記の染料化合物で標識化されている、工程;
この標識化ポリヌクレオチドフラグメントを、サイズ依存性(size−dependent)分離プロセスに供する工程;および
この分離プロセスに引き続いて、この標識化ポリヌクレオチドフラグメントを検出する工程。
【0084】
1つの実施形態において、上記のフラグメント解析方法は、上記サイズ依存性分離プロセスが、電気泳動であり得、そして上記検出する工程が、蛍光によって検出する工程であり得る。
【0085】
本発明はさらに、以下を提供する:
(項目1)次式:
【化1】

を有する非対称ベンゾキサンテン染料化合物であって、
ここで、
およびYは、別個に、ヒドロキシル、酸素、イミニウムおよびアミンからなる群から選択され;
〜Rは、別個に、水素、フッ素、塩素、低級アルキル、低級アルケン、低級アルキン、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、低級アルコキシ、連結基およびそれらの組合せからなる群から選択され;そして
は、アセチレン、低級アルキル、低級アルケン、シアノ、フェニル、複素環式芳香族、および以下の構造:
【化2】

を有する置換フェニルからなる群より選択され、
ここで、
〜Xは、別個に、水素、塩素、フッ素、低級アルキル、カルボン酸、スルホン酸、−CHOH、または連結基であり、
ここで、この連結基は、イソチオシアネート、スルホニルクロライド、4,6−ジクロロトリアジニルアミン、スクシンイミジルエステル、活性カルボキシレート、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドおよび活性化N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルからなる群より選択される、
化合物。
(項目2)次式を有するホスホロアミダイト化合物であって:
【化100】

ここで、
Xは、線状低級アルキル、環状低級アルキル、線状置換低級アルキル、環状置換低級アルキル、ポリエチレンオキシド、1個と8個との間の炭素原子を有する低級アリール、ペプチドおよびポリエーテルからなる群より選択される、スペーサーアームであり;
Yは、アミド、スルホンアミド、尿素、ウレタンおよびチオ尿素からなる群より選択される、結合であり;
は、亜リン酸エステル保護基であり;
およびBは、別個に、低級アルキル、低級アルケン、アリール、および10個までの炭素原子を含有するシクロアルキルからなる群から選択され;そして
Dは、項目1に記載の染料化合物であり;
ここで、YおよびDは、R〜R位のうち1つで染料Dに結合した結合を介して、連結されている、
化合物。
(項目3)次式を有するホスホロアミダイト化合物であって:
【化101】

ここで:
は、亜リン酸エステル保護基であり;
、およびBは、別個に、低級アルキル、低級アルケン、アリール、および10個までの炭素原子を含有するシクロアルキルからなる群から選択され;
は、トリフェニルメチルラジカル、トリフェニルメチルラジカルの電子供与性置換誘導体、ビス(p−アニシル)フェニルメチル、モノメトキシトリフェニルメチル、α−ナフチルジフェニルメチルおよびトリ(p−メトキシフェニルメチル)からなる群より選択される、酸切断可能なヒドロキシル保護基であり、この電子供与性置換基は、アミノ、低級アルキル、1個と8個との間の炭素原子を有する低級アリール、低級アルコキシおよびメトキシからなる群より選択され;
Bは、ヌクレオチド塩基であり;そして
Dは、項目1に記載の染料化合物であり;
ここで、Bがプリンまたは7−デアザプリンである場合、その糖部分は、このプリンまたは7−デアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンである場合、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合しており;
ここで、BおよびDは、R〜R位置のうち1つでDに結合した結合により、連結されており;そして
ここで、Bがプリンである場合、この結合は、このプリンの8−位にて結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、この結合は、この7−デアザプリンの7−位に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、この結合は、このピリミジンの5−位にて結合している、
化合物。
(項目4)次式を有する化合物であって:
【化102】

ここで:
は、フッ素、塩素、スルホネート、アミノ、アミド、ニトリル、低級アルコキシ、および連結基からなる群から選択され;
〜Rは、別個に、水素、フッ素、塩素、低級アルキル、低級アルケン、低級アルキン、スルホネート、アミノ、アミド、ニトリル、低級アルコキシ、および連結基からなる群から選択され、この連結基は、イソチオシアネート、スルホニルクロライド、4,6−ジクロロトリアジニルアミン、スクシンイミジルエステル、活性カルボキシレート、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドおよび活性化N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルからなる群より選択され;そして
は、ヒドロキシルおよびアミンからなる群から選択され、
ただし、Yがヒドロキシルである場合、Rはアミドではない、
化合物。
(項目5)次式を有する標識ヌクレオチドであって:
【化103】

ここで:
Bは、7−デアザプリン、プリン、またはピリミジンヌクレオチド塩基であり;
およびWは、別個に、HおよびOHからなる群から選択され;
は、OH、
【化104】

からなる群から選択され;
Dは、項目1に記載の染料化合物であり;
ここで、Bがプリンまたは7−デアザプリンである場合、その糖部分は、このプリンまたはデアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンである場合、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合しており;
ここで、BおよびDを連結している結合は、R〜R位置のうちの1つで、Dに結合しており;そして
ここで、Bがプリンである場合、この結合は、このプリンの8−位に結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、この結合は、この7−デアザプリンの7−位に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、この結合は、このピリミジンの5−位に結合している、
標識ヌクレオチド。
(項目6)次式を有するヌクレオチドを含有する標識ポリヌクレオチドであって:
【化105】

ここで:
Bは、7−デアザプリン、プリン、またはピリミジンヌクレオチド塩基であり;
は、HおよびOHからなる群から選択され;
は、H、OH、HPO、およびNucからなる群から選択され、ここで、Nucおよびこのヌクレオシドは、ホスホジエステル結合により連結され、このホスホジエステル結合は、Nucの5’−位に結合しており;
は、H、HPO、ホスフェートアナログおよびNucからなる群から選択され、ここで、Nucおよびこのヌクレオシドは、ホスホジエステル結合により連結され、このホスホジエステル結合は、Nucの3’−位に結合しており;そして
Dは、項目1に記載の染料化合物であり;
ここで、Bがプリンまたは7−デアザプリンである場合、その糖部分は、このプリンまたはデアザプリンのN−位置にて結合しており、Bがピリミジンである場合、その糖部分は、このピリミジンのN−位置にて結合しており;
ここで、BおよびDを連結している結合は、R〜R位置のうちの1つで、Dに結合しており;そして
ここで、Bがプリンである場合、このBおよびDを連結している結合は、このプリンの8−位に結合しており、Bが7−デアザプリンである場合、このBおよびDを連結している結合は、この7−デアザプリンの7−位に結合しており、そしてBがピリミジンである場合、このBおよびDを連結している結合は、このピリミジンの5−位に結合している、標識ポリヌクレオチド。
(項目7)ポリヌクレオチド配列決定方法であって:
第1、第2、第3、および第4のクラスのポリヌクレオチドの混合物を以下:
この第1のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシアデノシンを含有し、第1染料で標識されており;
この第2のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシシチジンを含有し、第2染料で標識されており;
この第3のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシグアノシンを含有し、第3染料で標識されており;そして
この第4のクラスの各ポリヌクレオチドは、3’−末端ジデオキシチミジンを含有し、第4染料で標識されており;
ここで、この第1染料、この第2染料、この第3染料、またはこの第4染料のうちの1種は、項目1に記載の非対称ベンゾキサンテン染料であり;
この染料の他のものは、この非対称ベンゾキサンテン染料からおよび互いから、分光的に分解可能である、
ように形成する工程;
このポリヌクレオチドを電気泳動的に分離し、それにより、同様にサイズ分類されたポリヌクレオチドのバンドを形成する工程;
このバンドを、この染料が蛍光を発するのを引き起こすことができる照射ビームで照射する工程;ならびに
このバンド中のこのポリヌクレオチドのクラスを、この染料の蛍光スペクトルにより同定する工程、
を包含する方法。
(項目8)以下を包含する、フラグメント解析方法:
標識ポリヌクレオチドフラグメントを形成する工程であって、このフラグメントが、項目1に記載の染料化合物で標識されている、工程;
この標識ポリヌクレオチドフラグメントを、サイズ依存性分離プロセスに供する工程;および
この分離プロセスに引き続いて、この標識ポリヌクレオチドフラグメントを検出する工程。
【発明の効果】
【0086】
本発明により、蛍光染料として有用な種類の非対称ベンゾキサンテン染料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】図1は、長波長標識(すなわち、550nmを超えると発光する標識)として以前に使用されている種々の蛍光染料の構造を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料の好ましい合成を描写する。
【図2B】図2Bは、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料の好ましい合成を描写する。
【図3】図3は、本発明の染料で標識化したオリゴヌクレオチドの好ましい合成を示す。
【図4】図4は、TAMRA(22)およびCl−FLAN(2)で標識化したオリゴヌクレオチドの励起スペクトルを示す。
【図5】図5は、TAMRA(22)およびCl−FLAN(2)で標識化したオリゴヌクレオチドの量子収量の比較を示す。
【図6】図6は、TAMRA(22)およびCl−FLAN(2)で標識化したオリゴヌクレオチドの等モル発光強度の比較を示す。
【図7】図7は、4プレックス(plex)のセットの染料標識化DNA配列決定プライマーのメンバーの蛍光発光スペクトルを示す。
【図8】図8は、本発明の2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレン中間体の合成を示す。
【図9】図9は、本発明の染料化合物で標識化したオリゴヌクレオチド配列決定プライマーを使用したDNA配列決定実験の結果を示す。
【図10】図10は、本発明の染料化合物で標識化したオリゴヌクレオチドPCRプライマーを使用したマイクロサテライト分析の結果を示す。
【図11】図11は、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料の合成の4個の好ましい合成経路を示す。
【図12】図12は、本発明の1−置換3−ヒドロキシナフタレン中間体の合成の3個の好ましい合成経路を示す。
【発明を実施するための形態】
【0088】
(発明の要旨)
本発明は、蛍光染料として有用な種類の非対称ベンゾキサンテン染料を本発明者が発見したことに関する。
本発明の染料は、特に、多色蛍光ベースのDNA配列決定の領域において、複数の空間的に重複した分析物の同時検出に使用する現在利用可能な染料よりも、少なくとも7個の重要な利点を提供する。第1に、本発明の染料は、所望のスペクトル特性を有する現在利用可能な染料よりも、DNA合成条件に対して、ずっと安定である。このDNA合成条件に対する高い安定性により、自動化DNA合成技術(例えば、標識化PCRプライマー、DNA配列決定プライマーおよびオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ)を用いて、標識化オリゴヌクレオチド試薬をずっと容易に調製することが可能となる。第2に、本発明の染料は、約550nmを超える波長範囲で以前に使用されているフルオレセインベースの染料よりも、著しく光安定性である。第3に、本発明の染料は、青い「肩部」のある吸収スペクトルを有し、それにより、ジベンゾキサンテン染料またはローダミンベースの染料よりも短い波長で、この染料のより効率的な励起が可能となる。第4に、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料は、分光的に類似のローダミンベースの染料よりも著しく高い量子収量を有する。第5に、本発明の染料の高い量子収量と相まって、典型的な光源による高い励起効率により、この染料は、所望のスペクトル特性を有する現在利用可能な染料よりも、著しく明るくなる。DNA配列決定用途(この場合、分析物の量は、電気泳動負荷因子により制限され、その全蛍光は、数百の空間的に分離された種に分配されている)の状況では、明度は、特に重要である。本明細書中で使用する「明度」とは、最終的な蛍光発光強度に対する、吸光係数および蛍光量子収量を合わせた効果を意味する。この蛍光標識の明度を高くすることにより、より大きく数の少ないフラグメントが容易に検出でき、この電気泳動に充填する必要がある試料が少なくなり、それにより、優れた電気泳動解像度が得られる。さらに、これらの分析物の高い明度は、高い信号:ノイズ比に寄与し、空間的かつ分光的に近接した種の改良された解析を生じる。第6に、本発明の染料の非対称性により、この染料の置換基R〜R、特に、そのレゾルシノール誘導部分の置換基R〜Rを変えることにより、これらの染料の発光スペクトルの調整が可能となる。対称ベンゾキサンテン化合物では、1個の等価の置換基位置だけが利用可能であり、それにより、この染料のスペクトル調整に利用できる自由度が大きく制限される。第7に、本発明の染料は、安定なホスホロアミダイト誘導体に容易に転化され、これは、標識化オリゴヌクレオチドの自動化化学合成に使用できる。
【0089】
本発明のこれらの目的および他の目的、特徴および利点は、以下の記載、図面、および添付の請求の範囲を参照すると、よく理解される。
(好適な実施形態の詳細な説明)
本発明のある好ましい実施形態を、ここで、詳細に言及する。本発明は、その好ましい実施形態に関連して記述されているものの、それらは、本発明をこれらの実施形態に限定する意図はないことが分かる。逆に、本発明は、添付の請求の範囲で規定した本発明の範囲内に含まれ得る代替、改良および等価物を含むことを意図している。
【0090】
一般に、本発明は、蛍光染料として有用な新規なクラスの非対称ベンゾキサンテン化合物、このような染料を合成するための方法および中間体、このような染料を分子標識として使用する試薬、およびこのような染料および試薬を分析生物工学の領域で使用する方法を包含する。本発明の化合物は、多色蛍光DNA配列決定およびフラグメント解析の領域で、特に用途が見出されている。
【0091】
(I.非対称ベンゾキサンテン染料化合物)
第一の局面では、本発明は、すぐ下の式Iで示す一般構造を有する新規なクラスの非対称ベンゾキサンテン染料化合物を包含する。(本明細書中で提供した全ての分子構造は、提示した正確な電子構造だけでなく、それらの全ての共鳴構造およびプロトン付加状態を含むことを意図している)。
【0092】
【化28】

式1
式Iでは、YおよびYは、独立して、ヒドロキシル、酸素、アミンまたはイミニウムである。Yがヒドロキシルであり、そしてYが酸素のとき、この化合物は、フルオレセインに類似しており、これに対して、Yがアミンであり、そしてYがイミニウムのとき、この化合物は、ローダミンに類似している。好ましくは、Yは、ヒドロキシルであり、そしてYは、酸素である。
【0093】
〜R部分は、この分子の基底状態および励起状態の電子構造を変えることにより、この染料の種々の特性を調節するのに使用される置換基である。特に、R〜R部分を変えることは、この化合物のスペクトル特性、化学的安定性および光安定性に影響を与える。置換基R〜RおよびRは、式Iの化合物の特性を規定する際に、特に重要である。例えば、R〜R位の1つにフッ素原子を配置すると、化学的安定性および光安定性が高まること、およびRが置換フェニルなら、置換基XおよびXを塩素にすることにより、より狭い発光バンドが生じることが観察されている。(置換基XおよびXの定義については、以下を参照)。
【0094】
好ましくは、置換基R〜Rは、水素、フッ素、塩素、低級アルキル、低級アルケン、低級アルキン、スルホネート、スルホン、アミノ、イミニウム、アミド、ニトリル、アリール、低級アルコキシ、連結基、またはそれらの組合せであり、本明細書中で使用する「連結基」との用語は、試薬に結合した「相補官能性」と反応できる官能性を意味し、このような反応は、この染料をこの試薬に連結する「結合」を形成する。本開示の次の節では、特定の連結基、相補官能性および結合について、さらに詳しく述べる。好ましくは、Rは、低級アルコキシ、塩素、フッ素または水素である;Rは、低級アルキル、フッ素または塩素である;そしてRは、低級アルキルまたはフッ素である。より好ましくは、R、RおよびRの1個は、フッ素である。特に好ましい実施形態では、少なくともRは、フッ素である。
【0095】
本明細書中で使用する「低級アルキル」との用語は、1個〜8個の炭素原子を含有する直鎖および分枝炭化水素部分(すなわち、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、ネオペンチル、tert−ペンチルなど)を表わす。「低級置換アルキル」とは、電子吸引性置換基(例えば、ハロ、シアノ、ニトロ、スルホなど)を含む低級アルキルを表わす。「低級ハロアルキル」とは、1個またはそれ以上のハロゲン原子置換基(通常、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)を有する低級置換アルキルを表わす。「低級アルケン」とは、1個〜8個の炭素原子を含有する炭化水素であって、ここで、その炭素−炭素結合の1個またはそれ以上が二重結合であり、ここで、その非二重結合炭素が、低級アルキルまたは低級置換アルキルを包含するものを表わす。「低級アルキン」とは、1個〜8個の炭素原子を含有する炭化水素であって、ここで、1個またはそれ以上の炭素が三重結合で結合しており、ここで、その非三重結合炭素が、低級アルキルまたは低級置換アルキルを包含するものを表わす。「スルホネート」とは、3個の酸素原子に結合したイオウ原子を含有する部分を意味し、これには、それらのモノ塩およびジ塩が含まれる(例えば、スルホン酸ナトリウム、スルホン酸カリウム、スルホン酸二ナトリウムなど)。「アミノ」とは、2個の水素原子、低級アルキル部分またはそれらの任意の組合せに結合した窒素原子を含有する部分を意味する。「アミド」とは、酸素原子に二重結合しアミノ部分に単結合した炭素原子を含有する部分を意味する。「ニトリル」とは、窒素原子に三重結合した炭素原子を含有する部分を意味する。「低級アルコキシ」とは、酸素原子に単結合した低級アルキルを含有する部分を意味する。「アリール」とは、単一または複数のフェニルまたは置換フェニル(例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなど)を意味する。
【0096】
好ましくは、Rは、アセチレン、低級アルキル、低級アルケン、シアノ、フェニルまたは置換フェニル、複素環式芳香族、またはそれらの組合せであり、この置換フェニルは、以下の構造を有する:
【0097】
【化29】

ここで、X〜Xは、別個に、水素、塩素、フッ素、低級アルキル、カルボン酸、スルホン酸、−CHOHまたは連結基である。本明細書中で使用する「複素環式芳香族」との用語は、その環式構造の一部としてヘテロ原子を有する芳香族部分(例えば、ピロール、フラン、インドールなど)を意味する。好ましくは、Xは、カルボン酸、スルホン酸または−CHOHである;XおよびXは、別個に、水素、塩素、フッ素または低級アルキルである;そしてXおよびXは、別個に、水素、塩素、フッ素、低級アルキル、カルボン酸、スルホン酸または連結基である。より好ましくは、XおよびXは、塩素である。さらに別の好ましい実施形態では、XまたはXの1個は、連結基である。好ましくは、Xは、カルボン酸である。本発明の染料化合物を含むホスホロアミダイト化合物を形成するのに特に適切なさらに別の好ましい実施形態では、XまたはXの1個は、環状エステルまたは環状エーテルを形成できる部分(例えば、カルボン酸、スルホン酸または−CHOH)、またはスピロ環系(すなわち、両方の環に共通の1個の炭素原子を有する二環式化合物、例えば、スピロ[4,5]デカン)を形成するいずれかの他の基である。
【0098】
好ましくは、本発明の連結基は、その相補官能性がアミンであるときは、イソチオシアネート、スルホニルクロライド、4,6−ジクロロトリアジニルアミン、スクシンイミジルエステル、または他の活性カルボキシレートである。好ましくは、この連結基は、その相補官能性がスルフヒドリルであるときは、マレイミド、ハロアセチルまたはヨードアセトアミドである。R.Haugland、Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals、Molecular probes,Inc.(1992)を参照せよ。特に好ましい実施形態では、この連結基は、アミン相補官能性と反応する活性化N−ヒドロキシスクシンイミジル(NHS)エステルであり、ここで、この活性化NHSエステルを形成するには、カルボキシレート連結基を含む本発明の染料は、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミドと反応させて、NHSエステルを形成する。図3を参照せよ。
【0099】
本発明の非対称ベンゾキサンテン染料化合物を合成するには、いくつかの可能な一般化した方法が使用でき、その4つは、図11を参照して、本明細書中で記述する。図11で経路Aとして表わされる第一の好ましい方法では、化合物27は、酸触媒および熱の存在下にて、1,3−ジヒドロキシまたは1,3−アミノヒドロキシベンゼン誘導体28および1,3−ジヒドロキシまたは1,3−アミノヒドロキシナフタレン誘導体29と、それぞれ同じ当量を使用して反応させ、非対称染料化合物30が得られる。好ましくは、化合物27は、環状または直鎖無水物(例えば、LVGは、OCORである);エステル(例えば、LVGは、ORであり、ここで、Rは、低級アルキル、フェニルまたはスルホネートである);または酸塩化物(例えば、LVGは、塩素または他のハロゲンである)である。
【0100】
図11で経路Bとして表わされる別の好ましい合成方法では、化合物27は、2当量の1,3−ジヒドロキシベンゼン誘導体(すなわち、Yは、ヒドロキシである)または1,3−アミノヒドロキシベンゼン誘導体(すなわち、Yは、アミノである)28と反応させて、対称キサンテン染料31が得られる。化合物31は、次いで、塩基加水分解により分解されて、中間体ベンゾイル縮合生成物32が形成される。縮合生成物32は、次いで、酸触媒および熱の存在下にて、化合物29と反応させて、非対称染料30が得られ、ここで、29は、Yがヒドロキシのとき、1,3−ジヒドロキシナフタレンであり、またはYがアミノのとき、1,3−アミノヒドロキシナフタレンである。
【0101】
さらに、図11の経路Cとして表わされる第三の一般化した合成方法では、化合物27は、熱と共に、1当量の28と反応させ、中間体ベンゾイル縮合生成物32が得られる。化合物32は、次いで、酸触媒および熱の存在下にて、29と反応させ、非対称染料30が得られる。
【0102】
図11で経路Dとして表わされる第四の一般化した方法では、酸触媒および熱の存在下にて、同じ当量の化合物33、化合物28および化合物29を反応させ、非対称キサントン中間体34が得られる。好ましくは、33は、カーボネート(例えば、LVGは、ORであり、ここで、Rは、好ましくは、低級アルキルまたはフェニルである);またはホルメート(例えば、LVGは、ハロゲンおよびORであり、ここで、Rは、好ましくは、低級アルキルまたはフェニルである)である。化合物34は、次いで、アニオン性有機金属R誘導体(例えば、RLi、RMgXであり、ここで、Xは、ハライド(例えば、Br、Cl、I)などである)と反応させ、非対称染料30が得られる。
【0103】
図2Aおよび2Bは、本発明の特に好ましい非対称染料化合物の一組の合成を示す。この合成では、1,3−ジヒドロキシナフタレン誘導体(例えば、1,3−ジヒドロキシナフタレン(9b)または2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレン(9a))は、1当量の無水フタル酸誘導体(例えば、無水3,6−ジクロロトリメリト酸(10a))および1当量のレゾルシノール誘導体(11a、11b、11cまたは11d)と反応させ、そしてアルゴン下にて、正味の有機酸(例えば、MeSOH)中で16時間加熱される。この粗染料は、次いで、氷/水混合物への添加により沈殿され、そして濾過により単離される。この粗染料は、次いで、分取薄層クロマトグラフィーにより、異性体1および2にさらに精製される。
【0104】
この非対称ベンゾキサンテン染料の非置換誘導体(Rおよび/またはRは、Hである)は、ハロゲン化試薬(例えば、市販の陽性フッ素(positive fluorine)源、NaOCl、NaOH/Br、NaOH/I)とさらに反応させて、10% HCl/EtOAcでの抽出仕上げ、NaSOでの乾燥、濾過および真空中での濃縮後に、定量的にハロゲン化した誘導体(例えば、R=R=Cl、Br、IまたはFである)を生成し得る。図2B中の挿入図を参照のこと。
【0105】
(II.置換ナフタレン中間体)
第二の局面では、本発明は、主題発明の非対称ベンゾキサンテン化合物の合成に有用な新規な中間体化合物を包含し、このような中間体は、すぐ下の式IIに示す一般構造を有する。特に、本発明の中間体化合物は、2−置換非対称ベンゾキサンテン化合物の2位にて、置換基(例えば、ハロゲン原子)の位置選択的含入を伴う非対称ベンゾキサンテン化合物の合成を可能にし、この場合、この2位は、式Iおよび式IIの化合物では、R位置に対応する。
【0106】
【化30】

式II
式IIの構造において、置換基R〜Rは、上記式Iの構造において、同じ番号を付けた置換基に対応し、そしてYは、ヒドロキシルまたはアミンである。好ましくは、Rは、フッ素であり、そしてYは、ヒドロキシルである。
【0107】
図12は、本発明の置換ナフタレン中間体の合成について、3つの別の一般化した合成スキームを示す。図12で経路Aとして示す第一の方法では、置換エステルエノレート誘導体35は、例えば、COの自発損失により(R’がカルボキシレートのとき)、活性化ホモフタル酸エステル誘導体36と反応させて、β−ケトエステル誘導体37が得られる。好ましくは、化合物35では、R’は、水素、カルボキシレートまたはハロゲンであり、そしてRは、低級アルキルである。好ましくは、化合物36では、LVGは、ハロゲン、N−ヒドロキシスクシンイミド、フェノキシド、ヒドロキシベンゾトリアゾールまたはカルボキシレートである。化合物37は、次いで、塩基触媒および熱の存在下にて環化されて、置換1,3−ナフタレンジオール38(すなわち、Yは、OHである)が得られる。
【0108】
図12にて経路Bとして示す第二の好ましい合成方法では、化合物35は、例えば、COの自発損失により(R’がカルボキシレートのとき)、活性化フェニルアセテート誘導体39(ここで、LVGは、経路Aにおいて、化合物36について上で記述のものと同じである)と反応させて、β−ケトエステル誘導体40が得られる。化合物40は、次いで、酸触媒および熱の存在下にて環化されて、置換1,3−ナフタレンジオール38(すなわち、Yは、OHである)が得られる。
【0109】
経路Cとして示す第三の好ましい合成方法では、化合物35は、例えば、COの自発損失により(R’がカルボキシレートのとき)、シアノフェニルアセテート誘導体41(ここで、LVGは、経路Aにおいて、化合物36について上で記述のものと同じである)と反応させて、β−ケトエステル誘導体42が得られる。化合物42は、次いで、塩基触媒および熱の存在下にて環化されて、置換1−アミノ−3−ヒドロキシナフタレン38(すなわち、Yは、NHである)が得られる。
【0110】
(III.染料化合物を使用する試薬)
他の局面では、本発明は、式Iの非対称ベンゾキサンテン染料化合物で標識した試薬を包含する。本発明の試薬は、事実上、本発明の染料が結合できるいずれのものでもよい。好ましくは、この染料は、この試薬に共有結合される。試薬には、タンパク質、ポリペプチド、多糖類、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ポリヌクレオチド、脂質、固体支持体、有機および無機重合体、およびそれらの組合せおよび集合(例えば、染色体、核、生存細胞(例えば、細菌、他の微生物、哺乳類細胞、組織)など)が挙げられる。
【0111】
(A.ヌクレオチド試薬)
本発明の好ましい種類の試薬は、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料を含有するヌクレオチドおよびヌクレオシドを包含する。このようなヌクレオシド試薬は、酵素合成により形成した標識ポリヌクレオチド(例えば、PCR増幅、サンガー型ポリヌクレオチド配列決定およびニック翻訳反応の文脈で使用されるヌクレオチド三リン酸)の文脈で、特に有用である。
【0112】
本明細書中で使用する「ヌクレオシド」とは、例えば、KornbergおよびBaker、DNA Replication、第2版(Freeman、San Francisco、1992)に記述のように、2’−デオキシ形態および2’−ヒドロキシル形態を含めて、その1’位でペントースに結合したプリン、デアザプリンまたはピリミジンヌクレオシド塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミン、デアザアデニン、デアザグアノシンなど)からなる化合物を意味する。本明細書中で使用する「ヌクレオチド」との用語は、ヌクレオシドのリン酸エステル(例えば、三リン酸エステル)を意味し、ここで、最も一般的なエステル化部位は、ペントースのC−5位に結合した水酸基である。ヌクレオシドに関する「アナログ」には、例えば、Scheit、Nucleotide Analogs(John Wiley、New York、1980)により一般的に記述のように、変性塩基部位および/または変性糖部位を有する合成ヌクレオシドが挙げられる。「標識ヌクレオシド」との用語は、結合を介して式Iの染料化合物に共有結合したヌクレオシドを意味する。
【0113】
本発明の好ましいヌクレオチドは、式IIIで以下に示されており、ここで、Bは、ヌクレオチド塩基(例えば、ウラシル、シトシン、デアザアデニンおよびデアザグアノシン)である。
【0114】
【化31】

式III
およびWは、別個に、HまたはOHである。Wは、OH、
【0115】
【化32】

であり、これには、もし存在するなら、会合対イオン(例えば、H、Na、NHなど)が含まれる。Dは、式Iの染料化合物である。特に好ましい1実施形態では、本発明のヌクレオチドは、以下の式III.1に示した構造を有するジデオキシヌクレオチド三リン酸である(もし存在するなら、会合対イオンを含めて)。
【0116】
【化33】

式III.1
式III.1に示したもののような標識ジデオキシヌクレオチドは、サンガー型DNA配列決定法において、鎖停止剤として、特定の用途が見出されている。第二の特に好ましい実施形態では、本発明のヌクレオチドは、以下の式III.2に示した構造を有するデオキシヌクレオチド三リン酸である(もし存在するなら、会合対イオンを含めて)。
【0117】
【化34】

式III.2
式III.2に示したもののような標識デオキシヌクレオチドは、例えば、ポリメラーゼ鎖反応において、ポリメラーゼ伸長産物を標識する手段として、特定の用途が見出されている。
【0118】
Bがプリンまたは7−デアザプリンのとき、その糖部分は、プリンまたはデアザプリンのN−位にて結合しており、Bがピリミジンのとき、その糖部分は、ピリミジンのN−位にて結合している。
【0119】
BおよびDを連結している結合は、R〜R位の1つで、Dに結合している。好ましくは、この結合は、R〜Rでは結合していない。本発明の染料が、無水トリメリト酸から合成されるなら、Rは、好ましくは、置換フェニルであり、この結合は、この置換フェニルのXまたはX位の1つで、この染料に結合しており、他の位置は、水素原子である。
【0120】
Bがプリンのとき、BおよびDを結合している結合は、プリンの8−位に結合しており、Bが7−デアザプリンのとき、結合は、7−デアザプリンの7−位に結合しており、Bがピリミジンのとき、結合は、ピリミジンの5−位にて結合している。
【0121】
ヌクレオシド標識化は、公知の結合、連結基および関連する相補官能性を用いて、非常に多くの公知のヌクレオシド標識化技術のいずれかを使用して、達成できる。この染料およびヌクレオシドを結合する結合は、(i)オリゴヌクレオチド合成条件に対して安定であり、(ii)オリゴヌクレオチド標的ハイブリダイゼーションを妨害せず、(iii)適切な酵素(例えば、ポリメラーゼ、リガーゼなど)と相溶性であり、そして(iv)この染料の蛍光を消失させてはならない。
【0122】
好ましくは、この染料は、ピリミジン塩基の5−炭素および7−デアザプリン塩基の7−炭素に共有結合される。本発明で使用できる数個の適当な塩基標識化操作が報告されている(例えば、
【0123】
【表1】

従って、これらの参考文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0124】
好ましくは、この結合は、アセチレン性アミド結合またはアルケン性アミド結合であり、この染料とヌクレオチド塩基との間の結合は、この染料の活性化N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルと、ヌクレオチドのアルキニルアミノまたはアルケニルアミノ誘導体化塩基とを反応させることにより、形成される。より好ましくは、得られた結合は、3−(カルボキシ)アミノ−1−プロピニルまたは3−アミノ−1−プロピン−1−イルである(式III.3)。本発明の染料をヌクレオシド塩基に結合するための数個の好ましい結合は、式III.3、式III.4および式III.5にて、以下に示す。
【0125】
【化35】

アルキニルアミノ誘導体化ヌクレオシドの合成は、Hobbsら、ヨーロッパ特許出願第87305844.0号およびHobbsら、J.Org.Chem.、54:3420(1989)に教示され、その内容は、本明細書中で参考として援用されている。要約すると、このアルキニルアミノ誘導体化ヌクレオチドは、適当なハロジデオキシヌクレオシド(通常、Hobbsら(前出)により教示されるように、5−ヨードピリミジンおよび7−ヨード−7−デアザプリンジデオキシヌクレオシド)およびCu(I)をフラスコに入れ、アルゴンをフラッシュして空気を取り除き、無水DMFを添加し、続いて、アルキニルアミン、トリエチルアミンおよびPd(0)を添加することにより、形成される。この反応混合物は、数時間、または薄層クロマトグラフィーがハロジデオキシヌクレオシドの消費を示すまで、撹拌し得る。未保護のアルキニルアミンを使用するとき、このアルキニルアミノヌクレオシドは、この反応混合物を濃縮し、そして水酸化アンモニウムを含有する溶出溶媒を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけて、カップリング反応で生成したヒドロハライドを中和することにより、単離できる。保護アルキニルアミンを使用するとき、この反応混合物には、メタノール/塩化メチレンを添加し得、続いて、重炭酸塩形態の強塩基性アニオン交換樹脂を添加し得る。次いで、このスラリーは、約45分間撹拌し得、濾過し得、樹脂は、追加のメタノール/塩化メチレンで洗浄し得る。合わせた濾液は濃縮し得、そしてメタノール−塩化メチレン勾配を用いたシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製し得る。トリホスフェートは、標準的な方法により得られる。
【0126】
(B.ホスホロアミダイト試薬)
他の好ましい種類の試薬には、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料を含有するホスホロアミダイト化合物が包含される。このようなホスホロアミダイト試薬は、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料で標識したポリヌクレオチドの自動化化学合成に、特に有用である。このようなホスホロアミダイト化合物は、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの5’−水酸基と反応させたとき、亜リン酸エステルリンカーを形成し、これは、次に、酸化されて、リン酸エステルリンカーが得られる(例えば、米国特許第4,458,066号および第4,415,732号;両特許は、本明細書中で参考として援用されている)。
【0127】
(1.非ヌクレオチドホスホロアミダイト試薬):一般に、1局面では、本発明のホスホロアミダイト試薬は、すぐ下の式IVの構造を有する:
【0128】
【化36】

式IV
ここで、Xは、スペーサーアームである;Dは、式Iの非対称ベンゾキサンテン染料またはそれらの保護誘導体である;Yは、この染料上の連結基を用いて形成した結合である;Bは、亜リン酸エステル保護基であり、そしてBおよびBは、別個に、低級アルキル、低級アルケン、1個と8個の間の炭素原子を有する低級アリール、アラルキル、または10個までの炭素原子を含有するシクロアルキルである。式IVで示した非ヌクレオチドホスホロアミダイトは、ヌクレオチドの糖部分を介して、化学的に合成したポリヌクレオチドの5’−末端を標識するのに、特によく適合する。
【0129】
スペーサーXおよび結合Yは、種々の形態をとり得るが、しかしながら、構造X−Yは、(i)DNA合成条件に対して安定であり、(ii)オリゴヌクレオチド標的ハイブリダイゼーションを妨害せず、そして(iii)それが結合する染料の蛍光を消失させてはならない(例えば、米国特許第5,231,191号、第5,258,538号、および第4,757,141号、第5,212,304号;全ての特許は、本明細書中で参考として援用されている)。
【0130】
好ましくは、Xは、線状または環状の低級アルキル、線状または環状の置換低級アルキル、ポリエチレンオキシド、1個と8個の間の炭素原子を有する低級アリール、ペプチド、またはポリエーテルである。好ましくは、結合Yは、アミド、スルホンアミド、尿素、ウレタンまたはチオ尿素である。特に好ましい実施形態では、結合Yは、アミドであり、そしてスペーサーXは、式IV.1の以下の構造を有する線状アルキルである:
【0131】
【化37】

式IV.1
ここで、nは、2〜30、好ましくは、2〜10、より好ましくは、2〜6である。第二の特に好ましい実施形態では、結合Yは、アミドであり、そしてスペーサーXは、式IV.2で以下に示す構造を有する線状ポリエチレンオキシドである:
【0132】
【化38】

式IV.2
ここで、nは、2〜30、好ましくは、2〜10、より好ましくは、2〜6である。
【0133】
好ましくは、BおよびBは、一緒になって、その主鎖に5個までの炭素原子および全体で10個までの炭素原子を含有するアルキル鎖を形成し、この鎖の両方の末端原子価結合は、窒素原子に結合されている。他方、BおよびBは、窒素原子と一緒になって、飽和窒素複素環を形成し、これは、窒素、酸素およびイオウからなる群から選択した1個またはそれ以上のヘテロ原子を含有する。好ましくは、BおよびBは、別個に、イソプロピル、t−ブチル、イソブチルまたはsec−ブチルであり、そしてBおよびBは、一緒になって、モルホリノである。
【0134】
は、ホスホロアミダイトが結合したポリヌクレオチドの不要な伸長を防止する亜リン酸エステル保護基である。Bは、ポリヌクレオチド合成条件に対して安定であるが、このポリヌクレオチドまたは染料の完全性に悪影響を及ぼさない試薬を用いて、このポリヌクレオチド生成物から除去できる。好ましくは、Bは、メチル、β−シアノエチルまたは4−ニトロフェニルエチルである。BおよびBは、別個に、イソプロピル、t−ブチル、イソブチルまたはsec−ブチルであり、そしてBおよびBは、一緒になって、モルホリノである。
【0135】
YおよびDを結合する結合は、R〜R位の1つで、Dに結合している。好ましくは、この結合は、R〜Rでは結合していない。本発明の染料が、無水トリメリト酸から合成されるとき、Rは、好ましくは、置換フェニルであり、そして結合は、この置換フェニルのXまたはX位の1つで、この染料に結合している。
【0136】
このようなホスホロアミダイト化合物は、公知の方法により合成できる。一般に、合成は、以下のように進行する。この染料のフェノール性ヒドロキシルは、DNA合成脱保護剤(例えば、アンモニア、エタノールアミン、メチルアミン/水酸化アンモニウム混合物、およびt−ブチルアミン/水/メタノール(1:2:1)混合物)で除去できる染料保護基で保護される(例えば、米国特許第5,231,191号を参照せよ;その内容は、本明細書中で参考として援用されている)。そのように保護した染料は、この染料の「保護誘導体」と呼ばれる。好ましい保護基には、安息香酸またはピバル酸のエステルが挙げられる。この保護染料の連結基(例えば、カルボン酸)は、次いで、例えば、カルボジイミドで活性化され、そしてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)または他の非プロトン性溶媒中にて、アルコールリンカー誘導体(例えば、アミノアルコール(例えば、エタノールアミン、ヘキサノールアミンなど))と反応させて、遊離アルコール官能性(例えば、アルコール−アミド誘導体)を有する保護染料が生じる。この遊離アルコールは、次いで、触媒量のテトラゾールジイソプロピルアミンを含有するアセトニトリル中にて、標準操作を用いて、ホスフィチル化剤(例えば、ジ−(N,N−ジイソプロピルアミノ)メトキシホスフィン)と反応させて、ホスホロアミダイトが生じる(例えば、米国特許第5,231,191号)。
【0137】
(2.ヌクレオチドホスホルアミダイト試薬):一般に、第二の局面では、本発明のホスホルアミダイト剤は、すぐ下の式Vの構造を有する:
【0138】
【化39】

式V
ここで、B〜Bは、上で記述のものと同じである。Bは、水素またはヒドロキシル保護基であり、Bは、ヌクレオチド塩基であり、そしてDは、式Iの非対称ベンゾキサンテン染料またはそれらの保護誘導体である。式Vのようなヌクレオチドホスホルアミダイトは、化学的に合成したポリヌクレオチドの内部標識化に特によく適合する。
【0139】
Bがプリンまたは7−デアザプリンのとき、その糖部分は、このプリンまたはデアザプリンのN−位にて結合している。他方、Bがピリミジンのとき、その糖部分は、このピリミジンのN−位にて結合している。BおよびDは、連結基およびその相補官能性の反応により形成した結合により結合されており、染料とヌクレオチド塩基との間のこのような結合は、上で詳細に記述されている。Bがプリンなら、その結合は、このプリンの8−位に結合しており、Bが7−デアザプリンなら、その結合は、この7−デアザプリンの7−位に結合している。Bがピリミジンなら、その結合は、このピリミジンの5−位にて結合している。
【0140】
は、一般に、水素または酸切断可能なヒドロキシル保護基を表わす。好ましくは、Bは、トリフェニルメチルラジカルおよびその電子供与性置換した誘導体であり、この場合、本明細書中で使用する「電子供与性」との用語は、それが一部をなす分子内において、近接原子に原子価電子を放出するという置換基の傾向を表わし、すなわち、それは、近接原子に関して、電子的に正である。好ましくは、電子供与性置換基には、アミノ、低級アルキル、1個と8個の間の炭素原子を有する低級アリール、低級アルコキシなどが挙げられる。さらに好ましくは、この電子供与性置換基は、メトキシである。代表的なトリチルには、4,4’−ジメトキシトリチル、すなわち、ビス(p−アニシル)フェニルメチル、モノメトキシトリチル、α−ナフチルジフェニルメチル、トリ(p−メトキシフェニル)メチルなどが挙げられる。これらのトリチルおよび他のトリチルの結合条件および切断条件は、GreeneおよびWuts、Protective Groups in
Organic Synthesis、第2版(John Wiley、New York、1991)に見出される。
【0141】
一般に、本発明のヌクレオチドホスホルアミダイトは、以下のようにして合成できる。その5’−ヒドロキシル上にヒドロキシル保護基およびその塩基上に保護相補的官能性を有するヌクレオシドは、この相補的官能性だけを暴露するように、選択的に脱保護される。次に、(上記のようにして)保護した染料は、連結基をその反応形状に転化することにより、活性化される。この染料の活性化連結基は、次いで、このヌクレオシドの相補的官能性と反応されて、この染料の5’−ヒドロキシル上(およびRNAの場合には、2’−ヒドロキシル上)およびフェノール基上に保護基を有する染料標識ヌクレオシドが形成される。この染料標識ヌクレオシドは、次いで、上記のホスフィチル化剤と反応されて、このヌクレオチドホスホルアミダイトが生成される。
【0142】
その相補的官能性がアミンでありかつ連結基がカルボキシルである好ましい方法では、この合成は、以下のようにして進行する。その5’−ヒドロキシル上にヒドロキシル保護基(例えば、トリチル基)を有し、その塩基上に保護アミノ−窒素相補的官能性を有する保護ヌクレオシドは、そのアミンを暴露するように選択的に脱保護され、このような選択的脱保護は、その保護5’−ヒドロキシル部分を脱保護することなく、そのアミノ官能性のみを脱保護するように供される。(上記のように)保護した染料は、カルボキシ連結基を、ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを用いて、そのNHSエステルに転化することにより、活性化される。このNHSエステルは、このヌクレオシドのアミノ基と反応されて、この染料の5’−ヒドロキシル上(およびRNAの場合には、2’−ヒドロキシル上)およびフェノール基上に保護基を有する染料標識ヌクレオシドが形成される。次いで、この染料標識ヌクレオシドは、上記のホスフィチル化剤と反応される。
【0143】
(C.ポリヌクレオチド試薬)
本発明のさらに他の好ましい種類の試薬には、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料で標識したポリヌクレオチドが包含される。このような標識ポリヌクレオチドは、DNA配列決定プライマー、PCRプライマー、オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブなどを含めた非常に多くの状況で、有用である。
【0144】
本明細書中で使用する用語「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」は、天然または変性ヌクレオシドモノマーの線状ポリマーを意味し、これには、二本鎖および一本鎖のデオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、それらのα−アノマー形状などが含まれる。通常、このヌクレオシドモノマーは、ホスホジエステル結合により連結されており、本明細書中で使用する用語「ホスホジエステル結合」は、ホスホジエステル結合またはそれらのアナログを意味し、これには、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホルアニリデート、ホスホロアミデートなどが含まれ、これは、会合した対イオンが存在するなら、このような対イオン(H、NH、Naなど)を含む。このポリヌクレオチドの大きさは、数個(例えば、8個〜40個)のモノマー単位から、数千個のモノマー単位までに及ぶ。ポリヌクレオチドが「ATGCCTG」のような一連の文字で表わされるときは、常に、このヌクレオチドは、他に指示がなければ、5’→3’の順序で左から右に配列されており、「A」は、デオキシアデノシンを表わし、「C」は、デオキシシチジンを表わし、「G」は、デオキシグアノシンを表わし、そして「T」は、チミジンを表わすことが分かる。
【0145】
本発明の標識ポリヌクレオチドには、次式を有するヌクレオチドが挙げられる:
【0146】
【化40】

式VI
ここで、Bは、7−デアザプリン、プリンまたはピリミジンヌクレオチド塩基である。Zは、HまたはOHである。Zは、H、OH、HPOおよびNucであり、ここで、Nucは、ヌクレオシドまたはポリヌクレオチドを意味する。式VIのヌクレオシドおよびNucは、ホスホジエステル結合により連結され、この結合は、Nucの5’−位に結合している。Zは、H、HPOまたはNucであり、ここで、Nucおよびこのヌクレオシドは、ホスホジエステル結合により連結されており、この結合は、Nucの3’−位に結合している。そしてDは、式Iの染料化合物である。塩基Bは、本発明のヌクレオチドホスホルアミダイト試薬について記述のようにして、この糖部分および染料化合物に結合される。ここで定義されるように、式VIの標識ヌクレオチドは、5’−末端ヌクレオチド、3’−末端ヌクレオチド、またはポリヌクレオチドのいずれかの内部ヌクレオチドであり得る。
【0147】
好ましい1実施形態では、本発明の標識ポリヌクレオチドには、供与体染料と受容体染料との間で、蛍光エネルギーの移動が起こるように配置した複数の染料が挙げられる。このような複数染料ポリヌクレオチドは、分光調整可能な配列決定プライマーとして(例えば、Juら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:4347〜4351(1995))およびハイブリダイゼーションプローブとして(例えば、Leeら、Nucleic Acids Research、21:3761〜3766(1993))、用途が見出されている。
【0148】
標識ポリヌクレオチドは、例えば、DNAポリメラーゼまたはリガーゼを用いて、酵素的に合成するか(例えば、Stryer、Biochemistry、Chapter 24、W.H.Freeman and Company(1981))または例えば、ホスホルアミダイト法、亜リン酸トリエステル法などによる化学合成によるか(例えば、Gait、Oligonucleotide
Synthesis、IRL Press(1990))いずれかにより、合成できる。標識は、上記の標識ヌクレオチド三リン酸モノマーを使用して、酵素合成中に導入してもよく、または上記の標識非ヌクレオチドまたはヌクレオチドホスホルアミダイトを用いて、化学合成中に導入してもよく、または合成に引き続いて導入してもよい。
【0149】
一般に、この標識ポリヌクレオチドが、酵素合成により製造されるなら、以下の操作が使用できる。テンプレートDNAが変性され、このテンプレートDNAに、オリゴヌクレオチドプライマーがアニールされる。この反応系に、デオキシヌクレオチド三リン酸(dGTP、dATP、dCTPおよびdTTPを含めて)が添加され、この場合、このデオキシヌクレオチドの1個の少なくとも断片は、上記の本発明の染料化合物で標識される。次に、ポリメラーゼ酵素が活性である条件下にて、ポリメラーゼ酵素は活性である。ポリメラーゼ鎖合成中に、この標識デオキシヌクレオチドの混入により、標識ポリヌクレオチドが形成される。別の酵素的合成法では、1個のプライマーの代わりに2個のプライマーが使用され、1個のプライマーは、この標的の+(プラス)鎖に相補的であり、他は、この標的の−(マイナス)鎖に相補的であり、このポリメラーゼは、熱安定性ポリメラーゼであり、その反応温度は、変性温度と延長温度の間で反復され、それにより、PCRによって、標識成分が標的配列へと急激に合成される(例えば、PCR Protocols、Innisら編、Academic Press(1990))。
【0150】
標識ポリヌクレオチドは、ホスホルアミダイト法を用いて、化学的に合成できる。このホスホルアミダイト法によりポリヌクレオチドを形成するのに使用される化学の詳細な説明は、例えば、
【0151】
【表2】

に提供されている。従って、これらの参考文献の各内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0152】
ポリヌクレオチド合成のホスホルアミダイト法は、その効率および急速なカップリングおよび出発物質の安定性のために、好ましい方法である。この合成は、固体支持体に結合した成長ポリヌクレオチド鎖を用いて行われ、その結果、過剰の試薬は、液相にあるので、濾過により容易に除去でき、それにより、サイクル間の精製工程の必要性がなくなる。
【0153】
以下は、このホスホルアミダイト法を用いる、典型的なポリヌクレオチド合成サイクルの工程を簡単に記述する。まず、保護ヌクレオチドモノマーを含めた固体支持体は、酸(例えば、トリクロロ酢酸)で処理されて、5’−ヒドロキシル保護基が除去され、このヒドロキシルは、引き続くカップリング反応のために、遊離される。次いで、この反応系に、保護ホスホルアミダイトヌクレオシドモノマーおよび弱酸(例えば、テトラゾール)を同時に添加することにより、活性化中間体が形成される。この弱酸は、このホスホルアミダイトの窒素にプロトンを付加して、反応性中間体を形成する。ヌクレオシド付加は、30秒以内に完結する。次に、ヌクレオシド付加を受けなかったいずれかのポリヌクレオチド鎖を停止するキャップ化工程が行なわれる。キャップ化は、好ましくは、無水酢酸および1−メチルイミダゾールを用いて行われる。このインターヌクレオチド結合は、次いで、好ましい酸化剤としてのヨウ化物および酸素供与体としての水を用いる酸化により、この亜リン酸エステルから、より安定なホスホジエステルに転化される。酸化後、このヒドロキシル保護基は、プロトン酸(例えば、トリクロロ酢酸またはジクロロ酢酸)で除去され、このサイクルは、鎖の延長が完結するまで、繰り返される。合成後、このポリヌクレオチド鎖は、塩基(例えば、水酸化アンモニウムまたはt−ブチルアミン)を用いて、この支持体から切断される。この切断反応はまた、いずれのリン酸エステル保護基(例えば、シアノエチル)も除去する。最後に、この塩基の環外アミン上の保護基およびこの染料上のヒドロキシル保護基は、塩基中にて、このポリヌクレオチド溶液を高温(例えば、55℃)で処理することにより、除去される。
【0154】
このホスホルアミダイトヌクレオシドモノマーのいずれかは、上記の染料標識したホスホルアミダイトであり得る。このヌクレオチドの5’−末端位置が標識されているなら、この最終縮合工程中に、本発明の標識した非ヌクレオチドホスホルアミダイトを使用してもよい。このオリゴヌクレオチドの内部位置が標識されるなら、いずれかの縮合工程中に、本発明の標識ヌクレオチドホスホルアミダイトが使用できる。
【0155】
合成に引き続いて、このポリヌクレオチドは、非常に多くの位置で標識でき、これらの位置には、5’−末端(例えば、Oligonucleotides and Analogs、Eckstein編、Chapter 8、IRL Press(1991)およびOrgelら、Nucleic Acids Research 11(18):6513(1983);米国特許第5,118,800号;これらの内容は、本明細書中で参考として援用されている);ホスホジエステル骨格(例えば、同書、Chapter 9);3’−末端(例えば、Nelson、Nucleic Acids Research 20(23):6253−6259、および米国特許第5,401,837号および第5,141,813号;両方の特許の内容は、本明細書中で参考として援用されている)が含まれる。オリゴヌクレオチド標識化操作の総説については、R.Haugland in Excited States of Biopolymers、Steiner編、Plemum Press、NY(1983)を参照のこと。
【0156】
1つの好ましい合成後化学標識化法では、オリゴヌクレオチドは、以下のようにして標識化される。カルボキシ連結基を含む染料は、無水酢酸エチル中にて、室温で3時間にわたり、およそ1当量の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびおよそ3当量のn−ヒドロキシスクシンイミドと反応させることにより、そのn−ヒドロキシスクシンイミドエステルに転化される。この反応混合物は、5% HClで洗浄され、硫酸マグネシウムで乾燥され、濾過され、そして固形物になるまで濃縮され、この固形物は、DMSOに再懸濁される。このDMSO染料ストックは、次いで、過剰で(10〜20倍)、pH 9.4にて、0.25M重炭酸塩/炭酸塩緩衝液中のアミノヘキシル誘導体化オリゴヌクレオチドに添加され、そして6時間反応される(例えば、米国特許第4,757,141号)。この染料標識したオリゴヌクレオチドは、緩衝液(例えば、0.1Mトリエチルアミン酢酸塩(TEAA))で溶出するサイズ排除クロマトグラフィーカラムに通すことにより、未反応染料から分離される。この粗標識オリゴヌクレオチドを含有する画分は、勾配溶離液を使用する逆相HPLCにより、さらに精製される。
(IV.本発明の化合物および試薬を使用する方法)
本発明の染料および試薬は、蛍光検出を使用するいずれかの方法(特に、複数の空間的に重複した分析物の同時検出を必要とする方法)によく適合される。本発明の染料および試薬は、生化学分離操作(例えば、電気泳動)を受けるポリヌクレオチドの種類を同定するのに、特によく適合され、この場合、類似の物理化学的特性(例えば、サイズ、コンホメーション、電荷、疎水性など)を有する標的物質のバンドまたはスポットが、線状または平面状の配列において存在する。ここで使用する「バンド」との用語は、類似のまたは同一の物理化学的な特性を基準にして、いずれかの空間的な配置または集塊を含む。通常、バンドは、染料−ポリヌクレオチド複合体の電気泳動による分離において、生じる。
【0157】
ポリヌクレオチドの分類は、種々の状況において生じ得る。「フラグメント解析」法または「遺伝解析」法と呼ぶ好ましいカテゴリーの方法では、標識プライマーまたはヌクレオチドを用いたテンプレート定方向酵素的合成(例えば、結合またはポリメラーゼ定方向プライマー伸長による)により、標識ポリヌクレオチド断片が生じる。これらの断片は、サイズ依存性分離プロセス(例えば、電気泳動またはクロマトグラフィー)にかけられる。分離した断片は、この分離に引き続いて、例えば、レーザー誘発した蛍光により、検出される。特に好ましい実施形態では、複数の種類のポリヌクレオチドが同時に分離され、異なる種類のものは、分光学的に分析可能な標識により、識別される。
【0158】
このようなフラグメント解析の1方法は、増幅断片長多型検出(AmpFLP)として知られているが、PCRにより増幅した増幅断片長の多型現象(すなわち、制限断片長の多型現象)に基づいている。種々のサイズのこれらの増幅断片は、系統による次の突然変異遺伝子のための連結マーカーとして役立つ。増幅断片が、染色体上の突然変異遺伝子に近づくほど、この結合の相関が高くなる。多く遺伝的疾患に対する遺伝子は、同定されていないので、これらの結合マーカーは、疾患のリスクまたは起源を評価するのに役立つ。このAmpFLP方法では、このポリヌクレオチドは、標識ポリヌクレオチドPCRプライマーを用いることにより、またはPCR中の標識ヌクレオチド三リン酸を使用することにより、標識できる。
【0159】
ニック(nick)翻訳として知られているような他のフラグメント解析では、二本鎖DNA分子内の未標識ヌクレオシド三リン酸を標識したものに置き換えるために、反応が使用される。デオキシリボヌクレアーゼI(DNAaseI)処理により生じる「ニック」によって、未標識DNA内に、遊離の3’−水酸基が作られる。DNAポリメラーゼIは、次いで、このニックの3’−ヒドロキシル末端への標識ヌクレオチドの付加を触媒する。同時に、この酵素の5’−〜3’−エクソヌクレアーゼ活性は、このニックの5’−ホスホリル末端からこのヌクレオチド単位を取り除く。最初に切開したヌクレオチドの位置には、遊離の3’−OHを有する新しいヌクレオチドが取り込まれ、このニックは、3’方向に沿って、1ヌクレオチド単位だけシフトする。この3’シフトの結果、既存の未標識ヌクレオチドの除去を伴って、新しく標識したヌクレオチドのDNAへの連続付加が生じる。このニック翻訳したポリヌクレオチドは、次いで、分離プロセス(例えば、電気泳動)を用いて分析される。
【0160】
他の代表的なフラグメント解析法は、可変数のタンデム繰り返し、すなわち、VNTRを基準にしている。VNTRは、特定の配列の隣接した複数コピーを含有する二本鎖DNAの領域であり、繰り返し単位の数は、可変である。VNTR遺伝子座の例には、pYNZ22、pMCT118およびApo Bがある。VNTR法のサブセットには、微小サテライト繰り返しまたは短タンデム繰り返し(STR)、すなわち、短い(2個〜4個の塩基)繰り返し配列により特徴付けられるDNAのタンデム繰り返しの検出を基準にしている。ヒトにて最も豊富に点在した繰り返しDNAファミリーの1つには、(dC−dA)n−(dG−dT)nジヌクレオチド繰り返しファミリー(これはまた、(CA)nジヌクレオチド繰り返しファミリーとも呼ばれる)である。ヒトのゲノムには、50,000個〜100,000個程度の(CA)n繰り返し領域があると考えられ、典型的には、1ブロックあたり、15個〜30個の繰り返しを有する。これらの繰り返し領域の多くは、長さが多様であり、従って、有用な遺伝子マーカーとして供され得る。好ましくは、VNTR法またはSTR法では、染料標識PCRプライマーを用いることにより、ポリヌクレオチド断片に標識が導入される。
【0161】
特に好ましいフラグメント解析法では、本発明に従って確認した種類のものは、4個の可能な末端塩基と分光学的に分析可能な染料のセットのメンバーとの間で、対応が確立されるように、末端ヌクレオチドによって規定される。このようなセットは、市販の分光光度計を用いて、発光および吸収バンド幅を測定することにより、本発明の染料から容易に組み立てられる。さらに好ましくは、DNA配列決定の化学的方法または鎖停止法の状況にて、種類が生じ、最も好ましくは、この鎖停止法、すなわち、ジデオキシDNA配列決定またはサンガー配列決定の状況において、種類が生じる。この方法は、配列が決定されるべき一本鎖または二本鎖DNAテンプレートを用いた、インビボでのDNAポリメラーゼによるDNA合成を包含する。合成は、このテンプレートにオリゴヌクレオチドプライマーがアニールする1個の部位だけで、開始される。この合成反応は、連続DNA伸長を支持しないヌクレオチド類似物の含入により、停止される。この鎖停止ヌクレオチド類似物には、2’,3’−ジデオキシヌクレオシド5’−三リン酸(ddNTP)があり、これは、3’から5’へのDNA鎖の伸長に必要な3’−OH基がない。適切な割合のdNTP(2’−デオキシヌクレオシド5’−三リン酸)および4個のddNTPの1個を使用すると、酵素触媒した重合は、このddNTPが含入できる各部位で、鎖集団の断片において、停止される。各反応に対して、標識プライマーまたは標識ddNTPを使用するなら、この配列情報は、高分解能電気泳動による分離後、蛍光により検出できる。この鎖停止法では、本発明の染料は、配列決定プライマーまたはジデオキシヌクレオチドのいずれかに結合できる。染料は、例えば、Fungら、米国特許第4,757,141号(その内容は、本明細書中で参考として援用されている)での教示に従って、このプライマーの5’末端にて;プライマーの塩基にて;または例えば、Hobbsら、ヨーロッパ特許出願第87305844.0号(その内容は上述され、本明細書中で参考として援用されている)に開示のアルキニルアミノ連結基を介して、ジデオキシヌクレオチドの塩基にて、相補的官能基と連結できる。
【0162】
上記フラグメント解析法のそれぞれでは、標識ポリヌクレオチドは、好ましくは、電気泳動操作により、分離される(例えば、
【0163】
【表3】

好ましくは、電気泳動マトリックスのタイプは、約2〜20重量%の間の濃度(重量対容量)を有する架橋または非架橋ポリアクリルアミドである。さらに好ましくは、このポリアクリルアミド濃度は、約4〜8重量%の間である。好ましくは、DNA配列決定の状況では、特に、この電気泳動マトリックスは、鎖分離または変性剤(例えば、尿素、ホルムアミドなど)を含有する。このようなマトリックスを構築する詳細な操作は、
【0164】
【表4】

により示されている。従って、これらの参考文献の内容は、本明細書中で参考として援用されている。特定の分離における最適なポリマー濃度、pH、温度、使用する変性剤の濃度などは、多くの要因に依存し、これらには、分離されるべき核酸のサイズ範囲、それらの塩基組成、それらが一本鎖か二本鎖か、およびその情報が電気泳動により追究される分類の性質が含まれる。従って、本発明の適用には、特定の分離のための条件を最適化する標準予備試験が必要な場合がある。例によれば、約20個〜300個の間の塩基範囲のサイズのオリゴヌクレオチドは、以下のマトリックスにおいて、本発明に従って分離され、そして検出される:19部:1部のアクリルアミド:ビスアクリルアミドから製造した6%ポリアクリルアミドであって、pH 8.3のトリス−ボレートEDTA緩衝液中で形成したもの。
【0165】
電気泳動分離に引き続いて、染料−ポリヌクレオチド複合体は、この染料標識ポリヌクレオチドからの蛍光発光を測定することにより、検出される。このような検出を行うために、この標識ポリヌクレオチドは、標準的な手段、例えば、高強度水銀蒸気ランプ、レーザーなどにより照射される。好ましくは、この照射手段は、488nmと550nmの間の波長の照射ビームを有するレーザーである。さらに好ましくは、この染料−ポリヌクレオチドは、アルゴンイオンレーザー(特に、488nmおよび514nmの発光系列のアルゴンイオンレーザー)、または532nmの発光系列のネオジム固相YAGレーザーにより発生したレーザー光によって、照射される。いくつかのアルゴンイオンレーザーが市販されており、これらは、これらの系列で、同時にレーザーとして使える(例えば、Cyonics、Ltd.(Sunnyvale、Calif.)のModel 2001など)。次いで、光感受性検出器(例えば、光電子増倍管、荷電結合素子など)により、その蛍光が検出される。
【実施例】
【0166】
本発明は、以下の実施例を考慮することにより、さらに明確となるが、これらの実施例は、単に、本発明の例示であることを意図し、いずれの点でも、本発明の範囲を限定しない。
【0167】
他に指示がなければ、全てのケミカルは、Aldrich Chemical
Company(Milwaukee、WI)から入手し、購入した状態で使用した。3−フルオロレゾルシノール(11a)は、文献の操作(Perkin、J. Chem. Soc. 110:1658−1666 (1980))に従って、2,4−ジメトキシアニリンから合成した。2−クロロ−4−メトキシレゾルシノール(11c)は、米国特許第4,318,846号に従って、3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒドから合成した。3,6−ジクロロトリメリト酸は、米国特許第4,318,846号に従って合成し、そして純粋な無水酢酸中で4時間還流してその冷却混合物をジエチルエーテルで沈殿させることにより、その無水物10aに転化した。フルオロマロン酸水素エチルは、文献(Org. Syn. Coll. 4:417−419 (1963))に従って、フルオロマロン酸ジエチルから合成した。トリブチルホスホニウム−フルオロ酢酸エチル(19)は、文献(Tet. Lett. 30:6113(1980))に従って、合成した。2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレン(9a)は、本明細書開示に記述のようにして、合成した。乾燥ジクロロメタン(CHCl)は、使用前に、水素化カルシウム上で蒸留し、テトラヒドロフラン(THF)は、水素化アルミニウムリチウム(LAH)上で蒸留した。無水エタノールは、購入した状態で使用するか、またはナトリウム上の蒸留により乾燥し、そして活性化モレキュラーシーブ上で保存した。乾燥酢酸エチル(EtOAc)は、MgSOで予備乾燥した後、P上で蒸留した。乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)は、硫酸マグネシウムで予備乾燥した後、蒸留し、そして活性化モレキュラーシーブ上で保存した。全ての反応は、乾燥アルゴン下にて、無水条件で行った。反応は、薄層クロマトグラフィー(TLC)(シリカゲル60、A254)によりモニターした。フラッシュクロマトグラフィーは、シリカゲル60(200〜400メッシュ、Baxter)上で行った。「1」および「2」で明示される純粋な異性体を得るための非対称ベンゾキサンテン染料の最終精製は、シリカゲル60 PTLCプレート(EM Science)上の予備TLCでCHCl:MeOH:AcOH(7:3:0.1)で溶出して行った。純粋な染料異性体は、CHCl:MeOH:AcOH(7:3:0.1)を使用してTLC上に単一斑点を作り、そして短波長および長波長UV照射で視覚化することにより、同定した。異性体2は、通常媒体および逆層媒体の両方でより遅く処理した。中間体生成物は、Varian 300 MHz NMRによるHNMRスペクトルにより同定した。精製した染料の吸収スペクトルは、Hewlett Packard 8451Aダイオードアレイ分光光度計で記録し、蛍光発光スペクトルは、Perkin Elmer LS 50−B発光分光光度計で記録した。染料標識オリゴヌクレオチドのHPLC精製は、2チャンネルのPE 1022積分計に接続されたPELC 240蛍光検出器およびPELC 295 UV/VIS検出器に接続されたPerkin−Elmer 200シリーズのポンプで行った。染料標識オリゴヌクレオチドの精製および同定に使用される緩衝液は、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/ホウ酸塩/EDTA(TBE)、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン/EDTA(TE)、トリエチルアンモニウムアセテート(TEAA)が挙げられる。緩衝液は、10倍溶液として0℃で保存し、そして使用前に新しく希釈する。HPLC精製は、逆相RP−18カラムを使用した。
【0168】
(実施例1)
(非対称ベンゾキサンテンの合成)
1,3−ジヒドロキシナフタレン誘導体(例えば、1,3−ジヒドロキシナフタレン9bまたは2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレン9a)(0.2モル)と、1.1当量の無水フタル酸誘導体3,6−ジクロロトリメリト酸無水物10aおよび1当量のレゾルシノール誘導体11(0.2モル)、(所望の最終生成物によって11a、11b、11cまたは11d)とを反応させることにより、図2Aおよび2Bの化合物1〜7を合成し、そしてアルゴン下、110℃で、純粋なMeSOH(3ml)中16時間加熱した。この粗染料(10aを使用する反応における位置(regio)異性体の混合物)を、氷/水混合物への添加により沈殿させ、そして濾過により単離した。この粗染料を、CHCl:MeOH:酢酸(70:30:1)の混合物で溶出する調製薄層クロマトグラフィーにより、2種の異性体1および2に精製した。
【0169】
図2Bの差込図は、染料5の異性体2について示した非対称ベンゾキサンテン染料のRおよび/またはRが非置換の(R=R=H)誘導体が、さらに、ハロゲン化試薬(NaOCl、NaOH/Br、NaOH/I)と0℃で3時間、反応し、続いて10% HCl/EtOAcでの抽出処理、NaSOでの乾燥、濾過および真空中での濃縮で、そのハロゲン化誘導体(例えば、8(R=R=Cl、Br、I、F))を定量的に生成することを示している。
【0170】
(実施例2)
(染料標識オリゴヌクレオチドの合成)
本発明の染料標識オリゴヌクレオチドの合成を、図3を参照して記述する。Cl−FLAN、染料2を、乾燥酢酸エチル中にて、室温で3時間にわたって、1.2当量の1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドおよび3当量のn−ヒドロキシスクシンイミドと反応させることにより、そのn−ヒドロキシスクシンイミドエステル12に転化した。この反応混合物を5% HClで洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そして固形物になるまで濃縮し、これを、DMSO中に再懸濁した(10mgの染料/50μLのDMSO)。このDMSO染料ストック(5〜10μL)を、pH 9.4にて、0.25M重炭酸塩/炭酸塩緩衝液中、アミノヘキシル誘導化−21M13オリゴヌクレオチドプライマー(1×10−3M)に、過剰に(10〜20倍)添加し、そして6時間反応させた。アミノヘキシル誘導化プライマーは、最終サイクルにAminolink−2を用いた自動固相DNA合成により、調製した(PE p/n 400808)。染料標識オリゴヌクレオチドは、0.1モルのトリエチルアミンアセテート(TEAA)で溶出するSephadex G−25カラムに通すことにより、未反応染料から分離した。粗標識オリゴヌクレオチドを含有するフラクションは、RP−18クロマトグラフィーカラムを用い、25分間かけて、0.1 M TEAA中8%〜25% AcCNの勾配溶出を使用した逆相HPLCにより、精製した。この純粋な染料標識オリゴヌクレオチド13は、凍結乾燥で固形物にし、そして1×TE緩衝液(pH 8.4)に再懸濁した。この染料標識オリゴヌクレオチドの濃度は、添加物根絶係数(additive extinction coefficient)がTに対して6,650、Cに対して7,350、Gに対して11,750およびAに対して14,900であると仮定して、260nmでのUV吸収により決定し、260nmでの染料吸収の相対寄与を、同じ緩衝液中で測定した遊離染料のスペクトルから決定した。
【0171】
(実施例3)
(実施例2のTAMPA(22)およびCl−FLAN(2)標識オリゴヌクレオチドの励起スペクトルの比較)
1×TBE緩衝液中pH 8.4で各染料について、励起スペクトルを記録した。染料は、等モル濃度(約1×10−6M)で存在していた。各染料について、その発光強度を、λmaxEmで記録した。図4は、488nmでの励起について、Cl−FLANの相対励起効率は、TAMRA染料のそれのおよそ2.5倍であるのに対して、514nmでの励起については、Cl−FLANの相対励起効率は、TAMRA染料のそれのおよそ1.5倍であることを示している。
【0172】
(実施例4)
(実施例2のTAMRA(22)およびCl−FLAN(2)標識オリゴヌクレオチドの量子収率の比較)
図5は、各染料の吸収最大で励起したTAMRA(22)標識−21M13オリゴヌクレオチドおよびCl−FLAN(2)標識−21M13オリゴヌクレオチドの蛍光発光強度の発光スペクトルを示す。オリゴヌクレオチドは実施例2中のように調製された。このデータは、TAMRA(22)標識オリゴヌクレオチドと比較して、Cl−FLAN(2)標識オリゴヌクレオチドでは60%より多い量子収率を示している。スペクトルは、各標識オリゴヌクレオチドについて、同じλmaxAbs(0.05)となる濃度で、1×TE緩衝液中pH 8.4で記録した。発光スペクトルは、各染料のλmaxAbsでの照射により、各染料について記録した。
【0173】
(実施例5)
(Cl−FLAN(2)およびTAMRA(22)標識オリゴヌクレオチドのモル発光強度の比較)
1×TE緩衝液(pH8.4)に溶解した等モル濃度(約1×10−6M)のTAMRA(22)標識オリゴヌクレオチドおよびCl−FLAN(2)標識オリゴヌクレオチドの発光スペクトルを、各オリゴヌクレオチドを488nmおよび514nmで照射し、そしてこのスペクトルに付加することにより測定し、複数ラインのアルゴンレーザーの照射を概算した。図6は、Cl−FLAN(2)標識オリゴヌクレオチドの蛍光強度が、TAMRA(22)標識オリゴヌクレオチドの蛍光強度の2倍以上であることを明らかにしている。
【0174】
(実施例6)
(多重染料標識オリゴヌクレオチドセット)
Cl−FLAN(2)標識オリゴヌクレオチド−21M13配列プライマーの長波長蛍光発光を、6−FAM、TETおよびHEX 23染料で標識した−21M13配列プライマーからの発光と比較した。ここで、6−FAMは、6−カルボキシフルオレセインを示し、「TET」は、6−カルボキシ−4,7,2’,7’−テトラクロロフルオレセインを示し、そして「HEX」は、6−カルボキシ−4,7,2’,4’,5’,7’−ヘキサクロロフルオレセインを示す。上記の実施例2のように、プライマーを標識した。その励起波長は490nmであった。発光スペクトルは、1×TE緩衝液中pH 8.4で測定し、そして同じ強度(約1×10−6M)に規格化した。図7は、このCl−FLAN(2)標識オリゴヌクレオチドの発光スペクトルの573nm発光最大ピークおよび狭い幅によって、このCl−FLAN(2)標識オリゴヌクレオチドが、このセット内の他の3種の染料の発光スペクトルから、スペクトル的に分離されていることを示す。このスペクトルの分離は、FAM、TETおよびHEX標識オリゴヌクレオチドを含む染料セットのCl−FLAN(2)非対称ベンゾキサンテン染料との適合を示している。
【0175】
(実施例7)
(2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレン中間体の合成)
図8参照。市販の無水ホモフタル酸(14)(100gm)を、酸触媒下(TFA 0.5mL)、エタノール(300mL)と反応させ、還流3時間、固形物への濃縮およびトルエンから再結晶し、中間体エチルエステル15(収率95%)を生成した。次いで、中間体15(10gm)を、1.1当量の塩化オキサリルとCHCl(200mL)中、室温で4時間、反応させ、高真空下、室温で濃縮し、粗固形物として、酸塩化物16(収率80%)を生成した。粗生成物16をTHF中に懸濁させ、そして以下の二つの方法のいずれかにより、フルオロ酢酸エステル等価物と反応させて、化合物20を生成した。
【0176】
方法A:フルオロ酢酸エチルのカリウム塩(17)(3当量)(THF中、0℃で、フルオロ酢酸エチルおよびカリウムt−ブトキシドの反応により生成)またはフルオロマロン酸水素エチルのマグネシウム塩(18)(1.5当量)(−60℃で、臭化イソプロピルマグネシウム(2当量)およびフルオロマロン酸水素エチルの反応により生成)を16のTHF懸濁液に徐々に添加し、そして0℃で6時間反応させた。反応系を、5% HClの添加によりクエンチし、EtOAcで抽出し(3回)、有機層を乾燥し、濃縮し、そして得られた粗混合物を、ヘキサン/CHCl6:4〜CHCl100%の勾配溶出液を使用したフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、化合物20(収率35〜50%)を得た。
【0177】
方法B:リンイリド19を、−70℃で、16のTHF懸濁液に徐々に添加し、次いで、室温まで暖め、そして16時間反応させた。この反応系を、5% NaHCOの添加によりクエンチし、そして6時間撹拌した。この反応系をTHF/水で抽出し(3回)、そして生成物を方法Aと同様に単離して、中間体20(収率>50%)を生成した。精製した20を、塩基触媒下(NaOEt 2当量)、分子内環化して、環状中間体21を得、これを、インサイチュで脱カルボキシル化して、2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレン(9a)(収率50%)を得た。他方、この環状中間体21は、THF中、カリウムt−ブトキシドを使用すると、単離でき(収率>80%)、そして2−フルオロ−1,3−ジヒドロキシナフタレン(9a)に脱カルボキシル化できる。
【0178】
(実施例8)
(非対称ベンゾキサンテン化合物2を使用したDNA配列決定)
Perkin−Elmer Catalyst 800 Molecular
Biology Labstation(The Perkin−Elmer
Corporation、Foster City、CA(PE))を用いて、自動サイクル配列決定を行った。以下に記載のように6−FAM(C末端停止剤)、TET(A末端停止剤)、HEX(G末端停止剤)またはCl−FLAN
2(T末端停止剤)で標識した同一の−21 M13プライマーを使用し、4個の別個のサンガー配列決定反応を行った。4個の反応物の混合物を充填しPerkin−Elmer ABI PrismTM377 DNA配列決定器および付随のデータ分析ソフトウェアにより、データを得た。
【0179】
サイクル配列決定反応は、3.02プラットホームソフトウェアを用いたCatalyst 800 Molecular Biology Labstationで行った。このCatalystは、100ng/μLの濃度でpGEM
3Z+テンプレートDNA 0.6μL、および以下で規定したプレミックス
1.9μLを分配するように、プログラム化した。配列決定データは、5%のLong
Rangerゲル(FMC corporation、Rockland、Maine)を用いて、ABI PrismTM377 DNA配列決定器で作成した。4個の配列決定プレミックスのそれぞれは、表Iで、以下に規定される。
【0180】
【表5】

サイクル配列決定は、上記のテンプレートおよびプレミックスの混合物で行った。このCatalystのサイクル条件は、以下のようであった:96℃で20秒間の1サイクル;94℃で20秒間、55℃で40秒間および68℃で60秒間の15サイクル;および94℃で20秒間および68℃で60秒間の15サイクル。
【0181】
熱サイクルに続いて、4個の別個の反応物を濃厚緩衝液(83% DMSO/25mM
EDTA/8mg/ml Blue Dextran)中で混合し、そして標準Express Load法(v 2.02 Catalyst Mannual、PE)を用いて濃縮した。濃縮試料2mLを、377配列決定器のウェルに充填し、操作し、そしてversion 1.1 Softwareを用いて分析した。塩基233と263との間の配列を、図9に示す。
【0182】
(実施例9)
(Cl−FLAN(2)、HEXおよびTET標識プライマーを用いて標識し、ROX標識内部サイズ標準で同時に分離したマイクロサテライトフラグメント)
染料標識プライマーを用いたヒトCEPH族DNAの4個の座のPCR反応を、以下に記載するように行った。これらのPCR生成物をプールし、そしてPerkin−Elmer ABI Prism 377TM DNA配列決定器(PE)にて、電気泳動で分離した。各染料標識フラグメントピークの独特の蛍光シグナルを、GeneScanTM
Analysis Software v. 2.0.2(PE)を用いて分析した。図10を参照すると、赤色のピーク(Rと表示)は、ROX(26)標識した内部標準フラグメントに対応し、青色のピーク(Bと表示)は、TET標識フラグメントに対応し、緑色のピーク(Gと表示)は、HEX標識フラグメントに対応し、そして黒色のピーク(Kと表示)は、Cl−FLAN(2)標識フラグメントに対応する。
【0183】
これらのPCR反応を、Perkin−Elmer 9600サーモサイクラー(PE)で行った。以下のカクテルを使用して、各染料標識プライマーについて、別の反応を行った:
【0184】
【表6】

これらの混合物を、以下のサイクル条件を用いて、増幅した:95℃で5分間の1サイクル;94℃で15秒間、55℃で15秒間および72℃で30秒間の10サイクル;89℃で15秒間、55℃で15秒間および72℃で30秒間の20サイクル;および72℃で10分間の1サイクル。
【0185】
これらの増幅PCR生成物を、Cl−FLAN(2)およびTET標識PCR生成物(0.5μL)を各HEX標識PCR生成物1.0μLと混合することによりプールし全体の比がCl−FLAN:HEX:TEX(1:2:1)からなる混合染料標識フラグメントを得た。プールしたPCRフラグメントを、ホルムアミド2.5μL、Blue Dextran(50mM EDTA、50mg/mL Blue Dextran)0.5μLのおよびSize Standard(GS−350 ROX、PE p/n 401735)0.5μLからなる充填カクテルと混合した。プールした混合物を95℃で5分間変性し、次いで、PE ABI PrismTM 377 DNA配列決定器の1ゲル列に充填した。これらのフラグメントを電気泳動で分離し、そして以下の特性を有するアクリルアミドゲルを用いて検出した:厚さ0.20mm、アクリルアミド4.25%(wt)、アクリルアミド/ビスアクリルアミド19:1(wt/wt)、34ウェルの四角い目の細かい篩、10XTBE緩衝液(Tris 89mM、ホウ酸89mM、EDTA 2mM)(pH 8.3)。この器具は、Filter Wheel AおよびGS
36D−2400 Module(これは、以下の操作パラメーターを有する)を用いて操作した:EP電圧 3000 V、EP電流60.0mA、EP電力200W、ゲル温度51℃およびレーザー出力40mW。
【0186】
(実施例10)
(本発明のローダミン染料、キサンテン染料および非対称キサンテン染料のスペクトル特性、光安定性および化学安定性の比較)
以下の表IIは、本発明の非対称ベンゾキサンテン染料および他のスペクトル的に類似のキサンテン染料およびローダミンベース染料の種々のスペクトル特性および化学特性を要約し、そして比較する。
【0187】
【表7】

この表で示した染料の構造については、図1および2を参照せよ。全てのデータは、純粋な染料異性体2について報告している。全ての発光スペクトルを、室温で、λmaxAbs(約1×10−6M)で吸光度0.05を有する染料溶液にて、1×TBE緩衝液(pH 8.4)で記録した。λmaxAbsで初期1吸収単位にて、等容量のこれらの染料に対して、光分解速度を決定し、そして1×TBE緩衝液(pH 8.4)中、35℃で、等しい高強度の白色光照射下にて、等容量で、ペアで操作した。アリコートの吸収スペクトルを1時間間隔で取り出し、λmaxEmでの強度を一次指数曲線に適合させて、染料損失速度t1/2を決定した。ほぼ等しい濃度で、染料の514nm励起を用いて、λmaxEmでの相対明度を決定した。(λmaxAbs=0.05)。NHOH安定性測定については、染料はほぼ同じ濃度の濃水酸化アンモニウムに希釈し(λmaxAbs=1)、そして密封バイアルにて、60℃で20時間インキュベートした。アリコートの吸収スペクトルを1時間間隔で取り出し、λmaxEmでの強度を一次指数曲線に適合させて、染料分解に対するt1/2を決定した。
【0188】
全ての文献および特許出願の内容は、各個々の文献または特許出願の内容が具体的かつ独立して参考として援用されているのと同じ程度まで、本明細書中で参考として援用されている。
【0189】
化学および生化学の当業者は、その好ましい実施形態において、それらの教示から逸脱することなく、多くの改良が可能であることを、充分に理解している。このような改良の全ては、以下の請求の範囲の範囲内に包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−70769(P2010−70769A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286989(P2009−286989)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【分割の表示】特願2006−122728(P2006−122728)の分割
【原出願日】平成9年4月1日(1997.4.1)
【出願人】(509130413)アプライド バイオシステムズ, エルエルシー (48)
【Fターム(参考)】