説明

非常用照明器具及び非常用照明システム

【課題】耐熱性の高い端子台が不要であり、ある器具本体が故障した場合でも、他の器具本体への給電を継続できる非常用照明器具及び非常用照明システムを提供する。
【解決手段】非常用照明器具Aは、接続部2及び器具本体1を備える。接続部2は、導線71及び導線71を覆う絶縁被覆72を有する給電用の被覆電線7の絶縁被覆72に食い込むことにより導線71に電気的に接続される。そして、器具本体1は、接続部2経由で供給された電力で点灯するLED11を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常用照明器具及び非常用照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、廊下などの避難誘導経路に沿って複数配置され、それぞれ停電時に非常用電源から電力を供給されて避難方向を照明する誘導灯装置があった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−168606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような誘導灯装置を避難誘導経路に沿って複数台設置する場合、一般に誘導灯装置の間を送り配線することで各誘導灯装置へ電力が供給されている。この誘導灯装置において、火災による高温環境から電力を分配する経路を保護するため、給電用の被覆電線には耐火ケーブルが用いられる。また、誘導灯装置では給電用の被覆電線が接続される端子台に耐熱性の高い物を使用する必要がある。また、送り配線をしているために、火災における高温環境により器具本体内で短絡が発生した場合、短絡した器具本体の機能が失われるだけでなく、他の全ての器具本体の機能が失われる。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱性の高い端子台が不要であり、ある器具本体が故障した場合でも、他の器具本体への給電を継続できる非常用照明器具及び非常用照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の非常用照明器具は、接続部及び器具本体を備える。前記接続部は、導線及び前記導線を覆う絶縁被覆を有する給電用の被覆電線の前記絶縁被覆に食い込むことにより前記導線に電気的に接続される。そして、前記器具本体は、前記接続部経由で供給された電力で点灯する光源を有することを特徴とする。
【0007】
この非常用照明器具において、前記接続部から前記光源への給電路に過電流保護部が設けられたことが好ましい。
【0008】
また本発明の非常用照明システムは、前記非常用照明器具と、前記非常用照明器具が接続される前記被覆電線に電力を供給する電源部とを備える。そして、前記電源部は、常用電源によって充電され、前記常用電源の停電時に放電して前記非常用照明器具に給電する蓄電池を備えることを特徴とする。
【0009】
この非常用照明システムにおいて、前記電源部は、前記常用電源から電力が供給される状態と、前記常用電源からの電力供給を遮断する状態とを切り替えるための点検スイッチが設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、耐熱性の高い端子台が不要であり、ある器具本体が故障した場合でも、他の器具本体への給電を継続可能な非常用照明器具及び非常用照明システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の非常用照明器具が給電用の被覆電線に取り付けられる状態の図である。
【図2】(a)は同上の接続部の図であり、(b)は同上の接続部を導線に接続している図である。
【図3】同上における非常用照明システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では非常用照明器具及び非常用照明システムの実施形態について図1〜図3に基づいて説明する。
【0013】
非常用照明器具Aは、図1に示すように、器具本体1と、器具本体1から導出されるケーブル12、12にそれぞれ電気的に接続される接続部2、2とを備える。
【0014】
器具本体1は、天井に設けられた孔に上部を埋め込んだ状態で天井に取り付けられ、器具本体1の下面は室内側に露出する。器具本体1の下面には、光源として複数のLED11が配設されている。器具本体1の内部には、複数のLED11を点灯させる点灯回路(図示せず)が収納されている。器具本体1の上面からは、上記の点灯回路に電力を供給するためのケーブル12、12が導出されており、各ケーブル12の先端には接続部2が接続されている。尚、光源としてLED11の代わりに蛍光灯のような電子管を用いてもよい。尚、図3では器具本体1の外部に過電流保護部3が設けられているが、器具本体1の内部に過電流保護部3が設けられてもよい。
【0015】
非常用照明器具Aに供給される電力が直流電力の場合は、接続部2、2の一方を正極に、他方を負極に接続して器具本体1に電力が供給される。また、非常用照明器具Aは、図3に示すように、上記の点灯回路と接続部2とを結ぶ電路に、器具本体1へ過電流が流れるのを防ぐ過電流保護部3(ヒューズなどからなる)を備えてもよい。
【0016】
各接続部2は、図2(a)(b)に示すように、回転自在に連結された2つの接続板21a、21bと、対向した接点部24、24間に被覆電線7が挟まれた状態を保持するラッチ部25とを備えている。
【0017】
接続板21a、21bは、ともに導電性の金属板を型抜きした矩形板であり、それぞれ長手方向の一端側に近い部位を貫通する丸孔22、22と、接点部24、24とを備え、丸孔22、22に挿入された連結ピン23により回転自在に連結される。接点部24、24は、図2(a)に示すように、互いに対向する部位に設けられ、接続板21a、21bを楔型に型抜きされてできたV字形の刃24a、24aを備えている。尚、V字形の刃24aの開口端の幅は、被覆電線7の絶縁被覆72の外径よりも長い寸法に設定されている。また、図2(b)に示すように、接続板21a、21bが閉じた状態で、両接続板21a、21bの刃24a、24aによって形成される孔の最小幅は、絶縁被覆72の内径よりも僅かに小さい寸法に設定されている。これにより、刃24aが絶縁被覆72を切りながら、被覆電線7の導線71をできるだけ傷つけずに、導線71に刃24aを電気的に接続することができる。接続板21a、21bのいずれか一方には、ケーブル12が半田付け或いはかしめ固定などの方法で接続されている。
【0018】
ラッチ部25は、それぞれバネ性を有する金属板で形成された受け金具26と引掛金具27とを備え、受け金具26及び引掛金具27はそれぞれ接続板21a、21bの長手方向他端側に固定されている。
【0019】
受け金具26は、接続板21aの長手方向に沿って延び、その先端部には接続板21b側に突出する略U字形の曲り部が設けられている。
【0020】
引掛金具27は、略J形に形成されており、図2(b)に示すように、接続板21aがケーブル接続位置まで回転した際に、受け金具26に対して図中上側から係止する爪27aが設けられている。
【0021】
尚、ラッチ部25は上記の形態に限定されるものではなく、ケーブル接続状態を保持できればどの形態であってもよい。
【0022】
接続部2は上記のような構造をしており、接続部2に給電用の被覆電線7を接続する際の動作について説明する。まず、作業者が、図2(a)に示すように、接続板21a、21bを開いた状態で、接点部24の溝内に被覆電線7を置く。次に図2(b)に示すように、作業者によって接続板21a、21bが互いに近づく方向へ回転させられると、それぞれの刃24a、24aが被覆電線7の絶縁被覆72を切り裂いて導線71と電気的に接続する。この回転により受け金具26の曲り部が引掛金具27の爪27aに当接すると、爪27aが弾性変形し、受け金具26が爪27aを乗り越えて、爪27aが受け金具26に引っ掛かることで、接続板21a、21bの間に導線71が挟まれた状態が保持される。このラッチ部25による接続板21a、21bの回転の制限及び前記制限の解除は、受け金具26と引掛金具27の弾性を利用することで容易に行うことができる。尚、図2(b)の状態から、接続板21a、21bが互いに近づく方向へさらに回転することによって導線71が切断されないように、接続板21bが接続板21aと接している面に、接続板21aの端部に当接して接続板21aの回転を規制する回転止め28が設けられることが好ましい。
【0023】
このように被覆電線7、7に接続部2、2が接続されると、接続部2及びケーブル12を介して点灯制御回路42への給電路が確保される。尚、接続部2では、接点部24、24を除く部位は短絡防止のために絶縁処理を施すことが好ましい。
【0024】
次に、上述した非常用照明器具Aを備える非常用照明システムBについて説明する。
【0025】
非常用照明システムBは、図1と図3に示すように、複数の非常用照明器具Aと、電源ケーブル6と、電源ケーブル6を介して非常用照明器具Aに電力を供給する電源部4とを備える。
【0026】
電源ケーブル6は、図1に示すように、2芯の被覆電線7、7と、被覆電線7、7を束ねて覆う絶縁材質のシース61とを備える。電源ケーブル6は、例えば建物内の避難経路に沿って設置された非常用照明器具Aに電力を供給できるように天井裏や壁裏などに配線されている。被覆電線7に接続部2を接続する際は、図1に示すように、シース61が部分的に除かれることによって、被覆電線7が露出し、この露出部位に接続部2が接続される。
【0027】
電源部4は、非常用照明器具Aに電源ケーブル6を介して電力を送る点灯制御回路42と、停電時の電源となる蓄電池41と、点灯制御回路42と常用電源8との間に設けられた点検スイッチ43とを備える。
【0028】
蓄電池41には、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池が用いられ、点灯制御回路42によって充放電が制御される。
【0029】
点灯制御回路42は、常用電源8からの電力が点灯制御回路42に供給されている時に、蓄電池41を充電する。また、点灯制御回路42は、火災などの非常時に常用電源8からの電力の供給が停止された時に、蓄電池41を放電させて非常用照明器具Aに点灯電力を供給する。
【0030】
点検スイッチ43は、常用電源8から点灯制御回路42へ接続されている電路に設けられ、作業者の操作に応じて前記電路を開閉することができ、前記電路を開放することで常用電源8から点灯制御回路42への給電を遮断して、点灯状態を疑似的に発生させることができる。
【0031】
上述のように、非常用照明器具Aは、接続部2と器具本体1を備える。接続部2は、導線71及び導線71を覆う絶縁被覆72を有する被覆電線7の絶縁被覆72に食い込み、導線71と電気的に接続される。器具本体1は、接続部2経由で供給された電力で点灯する光源(本実施形態ではLED11)を備える。
【0032】
これにより、耐熱性の高い端子台が不要であり、ある器具本体1が故障した場合でも、他の器具本体1への給電を継続できるとともに、電源ケーブル6の任意の場所へ器具本体1を容易に接続することができる。
【0033】
また、非常用照明器具Aは、接続部2から光源への給電路に過電流保護部3が設けられてもよい。
【0034】
これにより、火災などの高温環境の影響によって、ある非常用照明器具Aに過電流が流れたとしても、過電流保護部3によって、当該非常用照明器具Aの内部回路を保護できる。
【0035】
非常用照明システムBは、非常用照明器具Aと、非常用照明器具Aが接続される電源ケーブル6に電力を供給する電源部4とを備える。電源部4は、常用電源8によって充電され、常用電源8の停電時に放電して非常用照明器具Aに給電する蓄電池41を備える。
【0036】
これにより、停電によって常用電源8から電源部4への給電が途絶えても、蓄電池41から非常用照明器具Aに電力が供給されるため、非常用照明器具Aは機能喪失を回避できる。
【0037】
非常用照明システムBは、常用電源8から電力が供給される状態と、常用電源8からの電力供給が遮断された状態とを切り替えるための点検スイッチ43とが電源部4に設けられる。
【0038】
これにより作業者が点検スイッチ43を開放することで、非常用照明器具Aが正常に点灯するか、蓄電池41が外部からの電力供給なしに非常用照明器具Aを必要な時間の間点灯できるかを点検することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 器具本体
11 LED(光源)
12 ケーブル
2 接続部
21a、21b 接続板
22 丸孔
23 連結ピン
24 接点部
24a 刃
25 ラッチ部
26 受け金具
27 引掛金具
27a 爪
28 回転止め
3 過電流保護部
4 電源部
41 蓄電池
42 点灯制御回路
43 点検スイッチ
6 電源ケーブル
61 シース
7 被覆電線
71 導線
72 絶縁被覆
8 常用電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導線及び前記導線を覆う絶縁被覆を有する給電用の被覆電線の前記絶縁被覆に食い込むことにより前記導線に電気的に接続される接続部と、前記接続部経由で供給された電力で点灯する光源を有する器具本体とを備えたことを特徴とする非常用照明器具。
【請求項2】
前記接続部から前記光源への給電路に過電流保護部が設けられたことを特徴とする請求項1記載の非常用照明器具。
【請求項3】
請求項1又は2の何れか記載の非常用照明器具と、前記非常用照明器具が接続される前記被覆電線に電力を供給する電源部とを備え、
前記電源部は、常用電源によって充電され、前記常用電源の停電時に放電して前記非常用照明器具に給電する蓄電池を備えることを特徴とする非常用照明システム。
【請求項4】
前記電源部に、前記常用電源から電力が供給される状態と、前記常用電源からの電力供給を遮断する状態とを切り替えるための点検スイッチが設けられたことを特徴とする請求項3記載の非常用照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4310(P2013−4310A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134408(P2011−134408)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】