説明

非常通報用押しボタンスイッチのカバー保持部材

【課題】非常通報設備への装着やリセットが容易な非常通報用押しボタンスイッチのカバー保持部材を提供する。
【解決手段】ゴム又は弾性樹脂で一体成型されるカバー保持部材1は、フランジ部2と、押さえ突部3と、係合突部4とを具備し、カバー部材34を前面板31に支持する。係合突部4を前面側から開口32へ押し込んで前面板31へ装着する。カバー部材34は、これを前面側からフランジ部2の内側開口5内へ押し込んでカバー保持部材1へ装着する。カバー保持部材1は、カバー部材34を適当な支持力で保持し、スイッチ操作の際には、カバー受け部6が柔軟に撓んでカバー部材34の脱落を許容するので、いずれの部材も破壊されることなく、再使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、火災通報のような非常通報用の押しボタンスイッチのカバーを保持する部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、火災通報のような非常通報のための押しボタンスイッチには、平常時に誤って起動させないように、これを覆うカバーが付設される。このカバーは、合成樹脂板でできていることが多く、スイッチを操作する場合には、このカバーを押し破ったり、カバーを保持している部材を破壊してカバーを外したりする必要がある(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−302426号公報
【特許文献2】特開2003−190316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の非常通報用押しボタンスイッチのカバー保持機構においては、一度スイッチを動作させると、カバーやそれの支持部材を交換したりカバーをリセットしたりするのに多くの手数を要するという課題がある。
したがって、この出願に係る発明は、非常通報設備への装着やリセットが容易な非常通報用押しボタンスイッチのカバー保持部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するため、この出願に係る発明の非常通報用押しボタンスイッチのカバー保持部材1は、押しボタンスイッチのカバー部材34を前面板31に支持するものであり、ゴム又は弾性樹脂で一体成型され、フランジ部2と、押さえ突部3と、係合突部4とを具備する。フランジ部2は、前面板31の開口32の周縁に沿い、当該開口32内に開放する内側開口5を形成する環状をなし、前面板31の開口32の周縁前面に当接する背面2aと、その反対側の前面2bとを具備する。フランジ部2の内側開口5は、カバー部材34を密に嵌合できる形態に形成される。押さえ突部4は、内側開口5の奥行き方向中間部の内周に突出して周方向に相互間隔を置いて複数設けられ、カバー部材34が内側開口5内へ押し込まれるときに、圧縮変形してカバー部材34の通過を許容可能に形成される。係合突部4は、内側開口5の縁に沿って相互間隔を置き、フランジ部2の背面側及び内側開口5内へ突出するように複数設けられる。係合突部4は、カバー受け部6と、周縁挟持部7とを具備する。カバー受け部6は、内側開口5内へ突出し、内側開口5内へ嵌合されるカバー部材34の外周縁を、押さえ突部3と協働して保持する。周縁挟持部7は、カバー受け部6との間に内側開口5の周縁に沿う隔離溝8を挟んで内側開口5の反対側に配置され、前面板の開口32の周縁より外方へ広がり、フランジ部2の背面2aとの間に前面板の開口32の周縁を挟持する。そして、カバー受け部6は、柔軟性を有し、それが保持するカバー部材34が押圧操作により押されたときに、隔離溝8を境に周縁挟持部7に対して後方へ撓み、カバー部材34の後方への脱落を許容する。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明のカバー保持部材1によれば、柔軟な係合突部4を前面側から開口32へ押し込むことにより、前面板31へ容易に装着できる。カバー保持部材1へのカバー部材34の装着は、これを前面側からフランジ部2の内側開口5内へ押し込むことにより容易に行える。カバー保持部材1は、カバー部材34を適当な支持力をもって保持し、スイッチ操作の際には、カバー受け部6が柔軟に撓んでカバー部材34の脱落を許容するので、いずれの部材も破壊されることなく、再使用できる。押しボタンスイッチの起動操作で、カバー保持部材1から脱落したカバー部材34が、内側開口5の近傍位置にあるときは、前面側から内側開口5に指を入れて、これを内側開口5を通して摘み出し、外側から容易に再装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】カバー保持部材の正面図である。
【図2】カバー保持部材の側面図である。
【図3】カバー保持部材の背面図である。
【図4】図1におけるIV−IV断面図である。
【図5】前面板への装着状態のカバー保持部材の正面図である。
【図6】前面板への装着状態のカバー保持部材の背面図である。
【図7】図5におけるVII−VII断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
非常通報用押しボタンスイッチ装置は、図5ないし図7に示すように、操作用の円形の開口32を有する前面板31と、開口32の後方に配置される押しボタンスイッチ33と、常時は開口32を閉塞するカバー部材34とを具備する。カバー部材34は、非常時には後方への押圧操作による一定圧力で前面板31から脱落し、押しボタンスイッチ33の押圧操作を許容するように前面板に支持される。カバー部材34は、図示の実施形態において円板状であるが、これに限定されない。
【0009】
カバー保持部材1は、カバー部材34を前面板31に支持するものであって、
ゴム又は弾性樹脂で一体成型される。
【0010】
カバー保持部材1は、円環状のフランジ部2と、押さえ突部3と、係合突部4とを具備する。フランジ部2は、前面板31の開口32の周縁に沿う環状体で、開口32内に開放する内側開口5を有し、また前面板31の開口32の周縁の前面に当接する背面2aと、その反対側の前面2bとを具備する。
【0011】
フランジ部2の内側開口5は、カバー部材34を密に嵌合できる形態に形成される。押さえ突部3は、内側開口5の奥行き方向中間部の内周に突出して周方向に相互間隔を置いて複数設けられ、カバー部材34が内側開口5内へ押し込まれるときに、圧縮変形してカバー部材34の通過を許容可する。押さえ突部3は、内側開口5の周縁に沿って周方向に所定長さ延びる突条である。
【0012】
係合突部4は、内側開口5の縁に沿って相互間隔を置き、フランジ部2の背面2a側及び内側開口5内へ突出するように複数設けられる。係合突部4は、押さえ突部3と対向する位置にあり、カバー受け部6と、周縁挟持部7とを具備する。カバー受け部6と周縁挟持部7との間には、内側開口5の周縁に沿う隔離溝8が形成される。
【0013】
カバー受け部6は、内側開口5内へ突出し、内側開口5内へ嵌合されるカバー部材34の外周縁を、押さえ突部3と協働して保持する。そして、カバー受け部6は、それが保持するカバー部材34が、押圧操作により押されたときに、隔離溝8を縮小しつつ、周縁挟持部7に対して後方へ撓み、カバー部材34の後方への脱落を許容する柔軟性を保有する。
【0014】
周縁挟持部7は、カバー受け部6との間に隔離溝8を挟んで内側開口5の反対側に配置される。周縁挟持部7は、前面板31の開口32の周縁より外方へ広がり、フランジ部の背面2aとの間に開口32の周縁を挟持する。すなわち、周縁挟持部7の外縁部とフランジ部の背面2aとの間には、内側開口5の半径方向外側に開放する受け溝9が形成され、この受け溝9内に前面板の開口32の周縁部を受け入れる。複数の周縁挟持部7は、それぞれその外周縁に、集合的に後方すぼまりの円錐面を形成する斜面7aを有する。この斜面7aが、係合突部4を前面板の開口32へ押し込む際に、開口32の周縁に対して相対摺動して挿入を容易にする。
【0015】
カバー保持部材1は、柔軟な係合突部4を前面側から開口32へ押し込むことにより、前面板31へ装着する。すなわち、係合突部4を開口32へ押し込むと、斜面7aが、開口32の周縁に相対摺動しつつ、内側開口5の半径方向内側へ縮小するように弾性的に変形して開口32内へ進入する。周縁挟持部7が開口32の周縁を通過すると、収縮していた周縁挟持部7が半径方向外側へ広がるように復元し、自動的に受け溝9内に開口32の周縁を挟持する。全ての係合突部4が開口32の周縁に係合すれば前面板31への装着が完了する。カバー部材34の装着は、前面側から、これを内側開口5内へ押し込むことにより容易に行える。すなわち、カバー部材34を内側開口5内へ押し込むと、押さえ突部3が圧縮変形し、これを乗り越えてカバー部材34を通過させる。カバー部材34は、カバー受け部6に当接し、押さえ突部3とカバー受け部6との間に保持される。スイッチ操作の際には、カバー受け部6が柔軟に撓んで、カバー部材34を破壊させることなく、それの後方への脱落を許容するので、スイッチ33の操作が可能となる。カバー部材34が、押さえ突部3とカバー受け部6との間から外れると、カバー受け部6は弾性的に復元するので、いずれの部材も破壊されることなく、再使用できる。
【符号の説明】
【0016】
1 カバー保持部材
2 フランジ部
2a 背面
2b 前面
3 押さえ突部
4 係合突部
5 内側開口
6 カバー受け部
7 周縁挟持部
8 隔離溝
9 受け溝
31 前面板
32 開口
33 スイッチ
34 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作用の開口を有する前面板と、前記開口の後方に配置される押しボタンスイッチと、常時は前記開口を閉塞し非常時の後方への押圧操作による一定圧力で脱落して押しボタンスイッチの押圧操作を許容するように前記前面板に支持されるカバー部材とを具備する非常通報用押しボタンスイッチ装置において、前記カバー部材を前面板に支持する保持部材であって、
ゴム又は弾性樹脂で一体成型され、
前記前面板の開口周縁に沿う環状で、当該開口に内に開放する内側開口を有し、前面板の開口周縁の前面に当接する背面と、その反対側の前面とを具備するフランジ部と、
前記内側開口の奥行き方向中間部の内周に突出して周方向に相互間隔を置いて複数設けられる押さえ突部と、
前記内側開口の縁に沿って相互間隔を置き、前記フランジ部の背面側及び内側開口内へ突出するように複数設けられる係合突部とを具備し、
前記フランジ部の内側開口は、前記カバー部材を密に嵌合できる形態に形成され、
前記押さえ突部は、前記カバー部材が前記内側開口内へ押し込まれるときに、圧縮変形してカバー部材の通過を許容可能に形成され、
前記係合突部は、前記内側開口内へ突出し前記押さえ突部と協働して内側開口内へ嵌合される前記カバー部材の外周縁を保持するカバー受け部と、このカバー受け部との間に内側開口の周縁に沿う隔離溝を挟んで内側開口の反対側に位置して前記前面板の開口の周縁より外方へ広がり前記フランジ部の背面との間に前面板の開口周縁を挟持する周縁挟持部とを具備し、
前記カバー受け部は、それが保持する前記カバー部材が押圧操作により押されたときに前記隔離溝を境界に前記周縁挟持部に対して後方へ撓んでカバー部材の後方への脱落を許容する柔軟性を保有することを特徴とする非常通報用押しボタンスイッチのカバー保持部材。
【請求項2】
操作用の円形の開口を有する前面板と、前記開口の後方に配置される押しボタンスイッチと、常時は前記開口を閉塞し非常時の後方への押圧操作による一定圧力で脱落して押しボタンスイッチの押圧操作を許容するように前記前面板に支持される円形のカバー部材とを具備する非常通報用押しボタンスイッチ装置において、前記カバー部材を前面板に支持する保持部材であって、
ゴム又は弾性樹脂で一体成型され、
前記前面板の開口周縁に沿う環状で、当該開口に内に開放する円形の内側開口を有し、前面板の開口周縁の前面に当接する背面と、その反対側の前面とを具備するフランジ部と、
前記内側開口の奥行き方向中間部の内周に突出して周方向に相互間隔を置いて複数設けられる押さえ突部と、
前記内側開口の縁に沿って相互間隔を置き、前記フランジ部の背面側及び内側開口内へ突出するように複数設けられる係合突部とを具備し、
前記フランジ部の内側開口は、前記カバー部材を密に嵌合できる形態に形成され、
前記押さえ突部は、前記カバー部材が前記内側開口内へ押し込まれるときに、圧縮変形してカバー部材の通過を許容可能に形成され、
前記係合突部は、前記内側開口内へ突出し前記押さえ突部と協働して内側開口内へ嵌合される前記カバー部材の外周縁を保持するカバー受け部と、このカバー受け部との間に内側開口の周縁に沿う隔離溝を挟んで内側開口の反対側に位置し前記フランジ部の背面との間に前記前面板の開口周縁を挟持する周縁挟持部とを具備し、
これらの周縁挟持部は、外周縁に、集合的に後方すぼまりの円錐面を形成する斜面を有し、この斜面が、前記前面板の開口周縁への装着操作時に、開口周縁を相対摺動して開口内へ挿入されるよう構成され、
前記カバー受け部は、それが保持する前記カバー部材が押圧操作により押されたときに前記隔離溝を境界に前記周縁挟持部に対して後方へ撓んでカバー部材の後方への脱落を許容する柔軟性を保有することを特徴とする非常通報用押しボタンスイッチのカバー保持部材。
【請求項3】
前記周縁挟持部の外縁部と前記フランジ部の背面との間に、前記前面板の開口周縁部を受け入れる隙間を形成する受け溝が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非常通報用押しボタンスイッチのカバー保持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−54111(P2011−54111A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204890(P2009−204890)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】