説明

非接触型情報カード

【課題】本発明は、簡易な構成で確実にスキミングを防止できるようにする。
【解決手段】本発明は、誘導起電力に基づいて動作するダミー非接触ICカード4において、外部から供給される磁界を検出したとき、リーダライタ2から信号を受信するか否かに拘わらず、意味のないノイズ信号NSを発生させて出力することにより、磁界を検出したときにはリーダライタ2と本非接触ICカード3との間の通信をノイズ信号NSによって妨害することができるので、当該本非接触ICカードの情報に対するスキミングを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型情報カードに関し、例えばキャッシュカード、クレジットカード等の非接触IC(Integrated Circuit)カードに適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子マネーなどの用途のため、非接触ICカードとして鉄道の前払いカード、キャッシュカードやクレジットカード等が広く普及している。一般に、このような非接触ICカードでは、カードに記録された鉄道の入出場履歴や、電子マネーの残高履歴、使用履歴等のデータを、ユーザの自宅にあるパーソナルコンピュータによって鍵無しで読み取って種々の履歴情報を確認し得るようになされている。
【0003】
従って悪意のユーザにとっては、非接触型のカードリーダーと、パーソナルコンピュータとを用いれば、洋服や鞄越しに非接触ICカードのデータを読み取ることが可能になる。このような非接触ICカードのデータは、履歴情報が読み取られたとしても、直ちにシステムのセキュリティーに影響があるというものではないが、個人の行動記録が読み取られるのと同じであるので不安要因となり得る。
【0004】
また非接触ICカードの普及に伴って、個人情報に準じた情報がカードに記録される可能性も今後大いにあり、スキミングに対する防衛機能の要望が益々大きくなりつつある。このようなスキミングを防止するため、非接触ICカードを動作させるための拠り所である磁界を遮断してしまうような金属製カードやシートが開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
【非特許文献1】朝日新聞の速報ニュースサイト、「とれんどサーチ」、2005年10月9日、[平成17年10月19日検索]、インターネット<URL:http://be.asahi.com/be_s/20051009/20050929TKEZ0007A.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところでかかる構成の金属製カードにおいては、リーダライタが作り出す磁界に反応し、カード内部で自動的にうず電流を流させることにより当該リーダライタの磁界とは逆向きの磁界を発生させ、その結果双方の磁界が打ち消し合うことになるので、リーダライタからの磁界がICカードに到達することがなく、通信用アンテナを起動させることがないようになされているものの、当該金属製カード用に新しいハードウェアを構築しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、簡易な構成で確実にスキミングを防止し得る非接触型情報カードを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、誘導起電力に基づいて動作する非接触型情報カードにおいて、外部から供給される磁界を検出したとき、所定の通信対象機器から信号を受信するか否かに拘わらずノイズ信号を発生させて出力することにより、磁界を検出したときには必ず通信対象機器との間の通信をノイズ信号によって妨害することができるので、確実にスキミングを防止することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘導起電力に基づいて動作する非接触型情報カードにおいて、外部から供給される磁界を検出したとき、所定の通信対象機器から信号を受信するか否かに拘わらずノイズ信号を発生させて出力することにより、磁界を検出したときには必ず通信対象機器との間の通信をノイズ信号によって妨害することができるので、確実にスキミングを防止することができ、かくして簡易な構成で確実にスキミングを防止し得る非接触型情報カードを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0010】
(1)スキミング防止システムの全体構成
図1において、1は全体としてスキミング防止システムを示し、リーダライタ2、当該リーダライタ2と非接触で無線通信を行うべき本来の非接触ICカード(以下、本非接触ICカードと呼ぶ)3、及びリーダライタ2と本非接触ICカード3との間の無線通信を妨害するために必要な本発明に係るダミーの非接触ICカード(以下、これをダミー非接触ICカードと呼ぶ)4によって構成されている。
【0011】
このダミー非接触ICカード4は、本非接触ICカード3に重ねられた状態で用いられるようになされており、例えば財布のカード入れに収納される際、外側にダミー非接触ICカード4が位置するように重ねられて用いられる。
【0012】
すなわちダミー非接触ICカード4は、悪意のユーザが所有するリーダライタ2から本非接触ICカード3のデータがスキミングされるのを防止するため、リーダライタ2と本非接触ICカード3との間に位置され、リーダライタ2からは本非接触ICカード3を保護するためのダミーとして用いられるようになされている。
【0013】
従ってスキミング防止システム1では、悪意のユーザが所有するリーダライタ2ではなく、本来無線通信を行うべきリーダライタ2を通信対象とする場合、ユーザは本非接触ICカード3の前に重ねられた状態で配置されたダミー非接触ICカード4を取り除くか、或いは本非接触ICカード3だけを取り出して通信対象のリーダライタ2に翳すようにすれば良い。
【0014】
このようなスキミング防止システム1を構成する本非接触ICカード3及びダミー非接触ICカード4の回路構成について、次に説明する。
【0015】
(2)本非接触ICカードの回路構成
図2に示すように、本非接触ICカード3は、リーダライタ2から発生された電磁波をアンテナ部11で受け、電磁誘導の原理によって得られた電源電圧を電源部12へ供給し、当該電源電圧に基づいて受信部13、送信部14及びデータ処理部15を動作させるようになされている。
【0016】
受信部13は、リーダライタ2から送信された電磁波からなる質問信号DS1をアンテナ部11を介して受け取り、リーダライタ2の変調方式に対応した復調方式で質問信号DS1を復調し、その結果得られる質問信号DS2をデータ処理部15へ送出する。
【0017】
データ処理部15はマイクロプロセッサ構成でなり、受信部13から供給された質問信号DS2に応じた応答信号DS3を生成し、これを送信部14へ送出する。ここでデータ処理部15が質問信号DS2に応じて生成する応答信号DS3の内容としては、リーダライタ2との通信状態を維持させるための情報や、相互認証のための応答情報や、内部に蓄積しておいた個人情報又はそれに順ずる情報等である。
【0018】
送信部14は、応答信号DS3に基づいてリーダライタ2と同じ例えば振幅変調又は位相変調を行うことによりレスポンス信号REを生成し、これをアンテナ部11を介してリーダライタ2へ返信する。
【0019】
(3)ダミー非接触ICカードの回路構成
図2との対応部分に同一符号を付した図3に示すように、ダミー非接触ICカード4は、本非接触ICカード3のアンテナ部11、電源部12、受信部13及び送信部14を有し、これらについては本非接触ICカード3と同じであり、それ以外のデータ処理部21だけが本非接触ICカード3とは異なる回路構成を有している。
【0020】
このダミー非接触ICカード4では、リーダライタ2からの磁界による電磁誘導の原理によって電源電圧の供給を受ける点及び質問信号DS1に応じたレスポンス信号REを返信することができる点については本非接触ICカード3と同じであるが、予めインストールされたスキミング防止プログラムSPRに従ってデータ処理部21がスキミング防止処理を行うようになされており、その点が大きく異なる。
【0021】
データ処理部21についてもマイクロプロセッサ構成でなり、アンテナ部11及び受信部13によりリーダライタ2からの電磁波を検出したとき、質問信号DS1の有無に拘わらず、スキミング防止プログラムSPRに従って乱数等の意味のない信号(以下、これを乱数信号と呼ぶ)Z1を発生させ、これを送信部14へ供給し続ける。
【0022】
送信部14は、データ処理部21から供給される乱数信号Z1に基づいてリーダライタ2と同じ例えば振幅変調又は位相変調を行うことによりノイズ信号NSを生成し、これをアンテナ部11を介してリーダライタ2へ返信するようになされている。これによりスキミング防止システム1では、リーダライタ2と本非接触ICカード3との間における無線通信の成立がノイズ信号NSによって阻害されることになる。
【0023】
(4)スキミング防止処理手順
このような構成のスキミング防止システム1におけるダミー非接触ICカード4が行うスキミング防止処理手順について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0024】
ダミー非接触ICカード4のデータ処理部21は、ルーチンRT1の開始ステップから入って次のステップSP1へ移り、アンテナ部11及び受信部13により外部から磁界を検出したか否かを検出し、否定結果が得られると、磁界を検出するまで待ち受ける。
【0025】
これに対しステップSP1で肯定結果が得られると、このことは外部から磁界を検出したこと、すなわちリーダライタ2からの電磁波を受けたことを表しており、このときデータ処理部21は次のステップSP2へ移る。
【0026】
ステップSP2においてダミー非接触ICカード4のデータ処理部21は、リーダライタ2から電磁波を受けたので、リーダライタ2から送信される質問信号DS1の有無に拘わらず、スキミング防止プログラムSPRに従って乱数を発生させ、次のステップSP3へ移る。
【0027】
ステップSP3においてダミー非接触ICカード4のデータ処理部21は、ステップSP2で発生させた乱数を乱数信号Z1として送信部14へ供給し、次のステップSP4へ移る。ここでデータ処理部21は、電磁波を受けている間は乱数信号Z1を発生させ続けるので、乱数信号Z1を送信部14へ供給し続ける。
【0028】
ステップSP4においてダミー非接触ICカード4のデータ処理部21は、乱数信号Z1に基づいて変調したノイズ信号NSをアンテナ部11を介してリーダライタ2へ無線送信することにより、悪意のユーザが所持するリーダライタ2と本非接触ICカード3との間で無線通信が成立することを妨害し、当該リーダライタ2からスキミングのための質問信号DS1に対して本非接触ICカード3がレスポンス信号REを返信することを回避させた後、次のステップSP5へ移って処理を終了する。
【0029】
(5)動作及び効果
以上の構成において、スキミング防止システム1では、ユーザがダミー非接触ICカード4を本非接触ICカード3の上に重ねて所持しているだけで、当該リーダライタ2から磁界を検出したときに質問信号DS1を受け取ったか否かに拘わらず、乱数信号Z1に基づくノイズ信号NSをリーダライタ2へ返信することになるため、当該リーダライタ2と本非接触ICカード3との間で無線通信が成立することを妨害し、悪意のユーザによるスキミングを確実に防止することができる。
【0030】
またスキミング防止システム1では、ユーザは通信対象とすべきリーダライタ2との間で無線通信を成立させたいときには、ダミー非接触ICカード4を取り除くか、或いは本非接触ICカード3をリーダライタ2に翳せばよく、ユーザの意思に応じてスキミング防止状態を維持するか、スキミング防止状態を解除するかを自由に選択させることができる。
【0031】
特にダミー非接触ICカード4は、本非接触ICカード3とその基本構成が同じであり、データ処理部21にスキミング防止プログラムSPRをインストールするだけの構成であるため、新しいハードウェアを開発する必要もなく、ソフトウェアの追加だけで簡単に構成することができる。
【0032】
またダミー非接触ICカード4は、本非接触ICカード3と同様のハードウェアによりノイズ信号NSを発生させるようにしたことにより、当該本非接触ICカード3と同じ環境下で動作するので、本非接触ICカード3に対して影響を及ぼすときには必ずノイズ信号NSをリーダライタ2へ送信することが出来るので、安定したスキミング防止効果を期待することができる。
【0033】
さらにダミー非接触ICカード4は、基本的に本非接触ICカード3と同一サイズ及び同一構造であるため、本非接触ICカード3と重ね易く、かつ重ねた状態で財布のカード入れ等に収納し易い状態を形成する。
【0034】
この場合、財布のカード入れに収納された状態のダミー非接触ICカード4は、見た目的にも本非接触ICカード3と同一サイズであるため、あたかも本非接触ICカード3であるかのように見せかけることができ、ダミーであることが気付かれ難いという特徴もある。
【0035】
以上の構成によれば、スキミング防止システム1では、ダミー非接触ICカード4が外部から磁界を検出している間中、当該ダミー非接触ICカード4からノイズ信号NSをリーダライタ2へ送信し続けることになるので、当該リーダライタ2と本非接触ICカード3との間の無線通信が成立することを回避し、悪意のユーザから本非接触ICカード3に格納されている種々の情報が漏洩することを確実に防止することができる。
【0036】
(6)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、ダミー非接触ICカード4と本非接触ICカード3とを重ねた状態で用いられるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、リーダライタ2からの磁界を本非接触ICカード3が検出し得るのと同じ距離範囲内にダミー非接触ICカード4を位置させることが出来れば、必ずしも重ねた状態で用いられる必要はない。例えば、ダミー非接触ICカード4と本非接触ICカード3との間に、紙状シート等が介在しても良い。
【0037】
また上述の実施の形態においては、ノイズ信号NSを送信するために乱数信号Z1を発生させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、リーダライタ2と本非接触ICカード3との間における無線通信の成立を妨げることができれば、「0」又は「1」が続く意味の無い信号や、その他種々の信号を発生させ、それをノイズ信号NSとしてリーダライタ2へ送信するようにしても良い。
【0038】
さらに上述の実施の形態においては、非接触型情報カードとしてのダミー非接触ICカード4を、磁界検出手段としてのアンテナ部11及び受信部13、ノイズ信号発生手段としてのデータ処理部21、出力手段としての送信部14及びアンテナ部11によって構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の回路構成でなる磁界検出手段、ノイズ信号発生手段及び出力手段によって非接触型情報カードを構成するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の非接触型情報カードは、例えばキャッシュカードやクレジットカード等以外にもセキュリティーカードやETC(Electronic Toll Collection System)カード等のその他種々の無線通信用カードに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】スキミング防止システムの全体構成を示す略線図である。
【図2】本非接触ICカードの回路構成を示す略線的ブロック図である。
【図3】ダミー非接触ICカードの回路構成を示す略線的ブロック図である。
【図4】スキミング防止処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
1……スキミング防止システム、2……リーダライタ、3……本非接触ICカード、4……ダミー非接触ICカード、11……アンテナ部、12……電源部、13……受信部、14……送信部、15、21……データ処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導起電力に基づいて動作する非接触型情報カードにおいて、
外部から供給される磁界を検出する磁界検出手段と、
上記磁界を検出したとき、所定の通信対象機器から信号を受信するか否かに拘わらずノイズ信号を発生させるノイズ信号発生手段と、
上記ノイズ信号を出力する出力手段と
を具えることを特徴とする非接触型情報カード。
【請求項2】
上記非接触型情報カードは、
上記通信対象機器との間で本来的に通信を行うための本非接触型情報カードと重ねられた状態で用いられる
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触型情報カード。
【請求項3】
上記ノイズ信号発生手段は、上記磁界を検出している間は継続して上記ノイズ信号を発生させ、
上記出力手段は、上記ノイズ信号を出力し続ける
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触型情報カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−188266(P2007−188266A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−5411(P2006−5411)
【出願日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】