非接触型連続的磁気分離装置および分離方法。
【課題】本発明は、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することのできる非接触型連続的磁気分離装置、およびその磁気分離方法を提供することを目的とする。
【解決手段】流路の長手方向にマイクロメーターオーダーの幅のライン状の強磁性体を配設し、流路の幅方向に磁界を印加することによって、流路の幅方向に磁束密度の大きさによって分画された領域をマイクロメーターオーダーで形成する。上記流路に連続的に懸濁液を圧送することによって、被分離微粒子が自身の磁化率に基づいて、流路に形成された磁束密度によって分画された流路領域を選択して流れこむ。このようにして形成された被分離微粒子の流れを好適に分流し回収する。
【解決手段】流路の長手方向にマイクロメーターオーダーの幅のライン状の強磁性体を配設し、流路の幅方向に磁界を印加することによって、流路の幅方向に磁束密度の大きさによって分画された領域をマイクロメーターオーダーで形成する。上記流路に連続的に懸濁液を圧送することによって、被分離微粒子が自身の磁化率に基づいて、流路に形成された磁束密度によって分画された流路領域を選択して流れこむ。このようにして形成された被分離微粒子の流れを好適に分流し回収する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を利用して懸濁液の中から微粒子を分離する装置および方法に関し、より詳細には、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触かつ連続的に分離する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血液に代表される生体懸濁液の成分分離にはもっぱら遠心分離法が用いられていた。しかしながら、遠心分離法には、遠心力に起因する細胞への損傷や細胞の凝集を引き起こすという問題があり、また、微量のサンプルの分離が難しいという問題があった。
【0003】
一方で、懸濁液に分散している微粒子を分離する方法として、磁気分離法が種々検討されており、その中でも、懸濁媒体と被分離微粒子との磁性差を利用した高勾配磁気分離方式(HGMS方式)が注目されている。このHGMS装置においては、超電導マグネットによる強磁界空間中に懸濁液を導き、該懸濁液中に数10〜100μmの直径のステンレス鋼線などの強磁性線からなる磁気フィルタを配置して被分離微粒子をフィルタに吸着する。
【0004】
さらに、被分離微粒子をフィルタなどに吸着させるのではなく、被分離微粒子を非接触で分離するべく、被分離対象である懸濁液をマイクロメーターオーダーの所定の流路に流し、該流路の外部に所定の強磁性体を配置して、流路の長手方向に垂直な外部磁界を印加することによって微粒子を分離する方法が検討されている。例えば、特開平7−232097号公報(特許文献1)には、流路の内部にあって、強磁性体の近傍とそれ以外の部分との間に生じる微粒子の流速の違いを利用した磁気クロマトグラフィー法なるものが開示されており、特開2002−1163号公報(特許文献2)、および特開2002−86015号公報(特許文献3)には、微粒子を、強磁性体が配置された流路の途中にてトラップして分離する構成が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムでは、どの程度の分離能が達成されるのか不明であり、特許文献2および3に開示されたシステムでは、非接触とはいえども被分離微粒子を流れに逆らって一旦トラップすることにはかわりなく、別途、トラップした被分離微粒子を回収するステップが必要となるものであって、所望の成分を連続的に分離しうるものではなかった。
【0006】
上述したように、血液に代表される生体懸濁液の成分分離において、遠心分離法に比べて利点の多い磁気分離法を応用し、赤血球などの生体成分粒子を非接触でかつ連続的に分離することが可能な磁気分離システムであって、より簡便で分離能の高い磁気分離システムの構築が求められていた。
【特許文献1】特開平7−232097号公報
【特許文献2】特開2002−1163号公報
【特許文献3】特開2002−86015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明は、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することのできる非接触型連続的磁気分離装置、およびその磁気分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図8は、強磁性体80がライン状に挿設された表面Sに対し、強磁性体80の長手方向Yに対して直行する矢印B方向に磁界を印加した場合の磁力線82を概念的に示した図である。図8は、磁力線82が強磁性体80に引きつけられる態様を概念的に示している。図9は、図8における表面Sの破線X上の位置[X]と磁束密度[B(X)]との関係、すなわち、表面S近傍の磁束密度分布を概念的に示した図である。図9に示されるように、強磁性体80が挿設された表面位置[X]においては、強磁性体80のところで磁束密度[B(X)]が小さくなり、結果的に表面S近傍は不均一磁場となる。本発明者は、ライン状に挿設された強磁性体の長手方向に対して直行する方向に磁界を印加した場合に、該強磁性体に起因して生じるこの不均一磁場に着目し、磁気分離システムの流路の幅方向に磁束密度の大きさによって分画された領域を、マイクロメーターオーダーで形成することよって、被分離微粒子を磁気によって懸濁液の流れに逆らってトラップするのではなく、被分離微粒子とそれ以外の粒子とを仕切りのない共通の流路内で共に流下させながらも、それぞれの粒子が自身の磁化率に基づいて、磁束密度によって分画された別々の流路領域を選択して流れこむようにし、ひいては、この各流路領域の流れを好適に分流することで、被分離微粒子を非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することに成功し、本発明に至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、流体の導入口と、流体の導出口と、該導入口と該導出口の間に延びる流路と、該流路の底面に沿って該流路の長手方向にライン状に配設された強磁性体と、該流路の幅方向に磁場を印加する磁場発生手段とを備え、前記流路は、前記強磁性体が配設されているか否かによって幅方向に分画された第1の流路領域と第2の流路領域とを含み、前記導出口は、前記第1の流路領域を流れる流体と前記第2の流路領域を流れる流体とを個別に導出可能に設けられた磁気分離装置が提供される。
【0010】
本発明においては、前記ライン状に配設された強磁性体の幅を5〜1000μmとすることができる。また、前記磁場発生手段を、永久磁石、電磁石、超電導磁石からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段とすることができる。
【0011】
また、本発明の別の構成によっては、懸濁液から、被分離対象微粒子と懸濁媒体の磁性率の差を利用して被分離対象微粒子を連続的に分離する方法であって、流路の幅方向に磁束密度の大きい第1の流路領域と磁束密度の小さい第2の流路領域とを形成するステップと、前記懸濁液を前記流路に連続的に圧送するステップと、前記第1の流路領域を流れる流体と前記第2の流路領域を流れる流体とを個別に連続的に回収するステップとを含む方法が提供される。
【0012】
本発明においては、前記懸濁液が血液であり、前記懸濁媒体が血漿であり、前記被分離対象微粒子が赤血球である方法が提供され、前記血液を前記流路に圧送するステップの前に、前記血漿に常磁性物質を添加するステップをさらに含むことができる。
【0013】
前記常磁性物質は、常磁性塩、常磁性塩のキレート化合物、常磁性ナノ粒子、強磁性ナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含むものとすることができ、前記常磁性物質は、MnCl2、Mn−EDTA、Gd−DTPAからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含むものとすることができる。
【0014】
また、前記血液を前記流路に圧送するステップの前に、前記赤血球に含まれるヘモグロビンを脱酸素化するステップをさらに含むことができ、前記脱酸素化するステップは、前記血液にアスコルビン酸を添加するステップ、あるいは、前記血液に窒素バブリングを施すステップを含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明によれば、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することのできる非接触型連続的磁気分離装置、およびその磁気分離方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体的な実施の形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の非接触型連続的磁気分離装置10の斜視図である。図1においては、説明の便宜のため分解図として示してある。本発明の非接触型連続的磁気分離装置10(以下、磁気分離装置10として参照する)は、血液などの懸濁液を注入する流路部12と、流路部12の内部に不均一磁場を生じさせるための磁気変調部14とを含んで構成される。流路部12はさらに、底面部16、スペーサー部18、および上面部20を含んで構成されている。スペーサー部18は所定の厚みを持ったプレート状の部材であり、その長手方向に所定の幅で開口部を有しており、開口部は一方の端部において二股に分かれた形で形成されている。この開口部によって、懸濁液の流路22が画成される。スペーサー部18を、同じくプレート状の底面部16と上面部20との間に挟み固着することによって、上面部20、スペーサー部18、および底面部16の三層からなる流路部12が形成される。
【0018】
本発明においては、スペーサー部18を、シリコンゴム、高分子フィルムなどによって形成することができる。また、底面部16および上面部20を、ガラス、高分子フィルムなどによって形成することができる。
【0019】
ここで、最終的に形成される流路22の幅および厚みはマイクロメーターオーダーであることが好ましい。本実施形態においては、流路22の幅を5〜1000μmとすることができ、より好ましくは、10〜100μmにすることができ、流路22の厚み、すなわち高さを5〜1000μmとすることができ、より好ましくは、10〜100μmにすることができる。また、底面部16の厚さは、磁気変調部14が生じさせる不均一磁場の影響によって流路22内部に磁束密度の大きさによって分画された領域が生じうる程度の厚さであることが好ましく、後述する磁気変調子30の幅よりも薄いことが好ましい。なお、上面部20には懸濁液の導入口24が、底面部16には、分流液の導出口26、28がそれぞれ設けられている。
【0020】
磁気変調部14には、Alのような非強磁性体からなる立方体の表面に、ライン状の磁気変調子30が設けられている。このようなライン状の磁気変調子30を含む磁気変調部14は、磁気変調子30となる所定の厚さのプレートを他の非強磁性体からなるプレートで挟むことで作ることができる。磁気変調子30は、磁力線を引きつけることによって不均一磁場を発生させる強磁性体であればよく、Fe、Ni、Co、あるいはこれらを含む合金などを磁気変調子30として用いることができる。磁気変調子30の幅は、500μm〜1mm程度にすることができる。
【0021】
流路部12は、流路22の長手方向と磁気変調子30の長手方向Yとが平行になるように磁気変調部14の上に位置決めされ固定される。また、流路22は、その下に磁気変調子30が存在する部分と、その下に磁気変調子30が存在しない部分とが形成されるように磁気変調部14の上に位置決めされ固定される。すなわち、流路22の幅方向に図示しない磁場発生装置によって磁場Bが印加された場合に、流路22の幅方向において不均一磁場が生じるように、流路22は磁気変調子30の上方に位置決めされて配置される。本発明においては、磁場発生装置として、永久磁石、電磁石、超電導磁石などを適宜用いることができる。
【0022】
本実施形態においては、磁気変調子30を含む磁気変調部14と、流路部12とを別個に形成する態様を示したが、本発明においては、磁気変調子30の形成態様をこれに限定するものではなく、たとえば、Feなどの強磁性体物質をメッキ法や蒸着法によって底面部16や上面部20などにライン状に直接形成することもできる。
【0023】
図2は、磁気分離装置10の上面図を示した図であり、流路22の中で、被分離微粒子の流れが形成され分流される態様を概念的に示した図である。図中、●は、反磁性微粒子aを示し、○は、常磁性の懸濁媒体bを示す。また、説明の便宜のため、流路22を幅方向に二分割し、一方をL側ライン、他方をR側ラインとして図示している。以下、図2を参照しながら、懸濁液Kから反磁性の被分離微粒子aを分離する場合を例にとって、本発明の磁気分離装置10の機構を説明する。
【0024】
まず、懸濁液Kが、図示しないシリンダポンプなどの供給装置から一定の流速をもって導入口24から圧送される。ここで、懸濁液Kとは、反磁性微粒子aが常磁性の懸濁媒体bに拡散してなる流体である。懸濁液Kが流路22に流入されると、拡散していた懸濁液Kの中の反磁性微粒子aは、R側ラインに移動を始め、常磁性の懸濁媒体bは、L側ラインに移動を始める。これは、流路22のR側ラインの下には、図示しない底面部16に沿って磁気変調子30が設けられており、図示しない磁場発生装置によって流路22の幅方向に磁場Bが印加されているため、R側ラインにおける磁束密度がL側ラインにおけるそれに比べて小さくなるような不均一磁場が形成されていることに起因する。すなわち、流路22に磁束密度の大きさによって幅方向に分画された二つの領域である、R側ラインおよびL側ラインが形成されることによって、反磁性、すなわち、磁場の印加方向と逆向きに磁化される性質をもつ反磁性微粒子aは、エネルギー的に安定化しうる磁束密度の小さいR側ラインに移動し、常磁性、すなわち、磁場の印加方向と同方向に弱く磁化する性質をもつ懸濁媒体bは、磁束密度の大きいL側ラインに移動することになる。
【0025】
以上説明したように、本発明においては、流路22は、磁束密度の大きさの観点から二つの領域に分けられる。すなわち、磁束密度の小さいR側ラインと磁束密度の大きいL側ラインである。ここで、各領域の幅wをマイクロメーターオーダーとすることによって、反磁性微粒子aのL側ラインからR側ラインへの移動、あるいは、懸濁媒体bのR側ラインからL側ラインへの移動が速やかに生じる。各領域の幅wが広くなりすぎると、各粒子に働く拡散力によって上述した各成分ごとの流れの形成が阻害される。
【0026】
しかし、本発明においては、流路22自体の幅Wを限定するものでないことを理解されたい。本発明においては、磁束密度の大きさによって幅方向に分画される流路領域の各区画の幅wがマイクロメーターオーダーであればよい。この点については、後述する第2の実施形態のところでより詳細に説明する。
【0027】
このようにして、懸濁液Kが流路22を流下していく過程において、懸濁液Kの成分は、それぞれが有する磁性率の差によって徐々にそれぞれが別個の流れを形成しながら、分岐点Sに到達する。そして、分岐点Sにおいて流路が二つに分岐し、R側ラインを流れていた反磁性微粒子aは、導出口26から導出され、L側ラインを流れていた懸濁媒体bは、導出口28から導出される。すなわち、懸濁液Kが導入口24から連続的に圧送されるに伴って、導出口26および28のそれぞれから各成分が連続的に導出され、回収される。以上が、本発明の磁気分離装置10による、反磁性微粒子aの連続的な分離の機構である。
【0028】
図3は、本発明の第2の実施形態である非接触型連続的磁気分離装置40の上面図を示す図である。本発明の非接触型連続的磁気分離装置40(以下、磁気分離装置40として参照する)は、流路領域形成部42と分流部44と回収部46とを含んで構成されている。流路領域形成部42には、流路22が形成されている。流路22の厚み、すなわち高さは、第1の実施形態のところで述べたのと同様であり、マイクロメーターオーダーであることが好ましく、5〜1000μmとすることができ、より好ましくは10〜100μmとすることができる。
【0029】
磁気分離装置40においては、磁気変調子30が流路領域形成部42の上面および底面に沿って、流路領域形成部42の長手方向、すなわち、被分離対象の流下方向に4本のラインが平行に配設されている。磁気変調子30のラインの幅は、マイクロメーターオーダーであることが好ましく、5〜1000μmとすることができ、より好ましくは10〜100μmとすることができる。このように磁気変調子30が配設された流路22の幅方向に図示しない磁場発生装置によって磁場Bが印加されることによって、流路22にはその幅方向において不均一磁場が生じる。すなわち、流路22にはその幅方向において、磁気変調子30の位置に符合して、磁束密度の小さい領域と磁束密度の大きい領域とが、いずれもマイクロメーターオーダーの幅wで交互に形成されるようになっている。
【0030】
なお、本実施形態においては、流路22の幅Wについて特に制限するものではない。本実施形態においては、説明の便宜のため、磁気変調子30のラインを4本としているが、本発明においては、磁気変調子30のラインの本数を限定するものではなく、磁気変調子30のラインの本数を増やして、流路領域形成部42の幅Wを適宜広げることによって、一度に処理しうる流体量を増やすことが可能である。
【0031】
導入口24から流入された懸濁液Kは、流路領域形成部42で幅Wの流れとなって矢印D方向に進む。懸濁液K中に分散された反磁性微粒子aは、その流下の過程において、磁気変調子30のラインに沿って流路22に形成された磁束密度の小さいマイクロメーターオーダーの幅の領域に移動する一方、常磁性の懸濁媒体bは、磁束密度の大きい同じくマイクロメーターオーダーの幅の領域に移動する。これらの移動は非常に速やかに行なわれるため、流路22の下流に向かうに従って、最終的に、各成分は流路内で流路の幅方向に8つの流れを形成するようになる。すなわち、磁性微粒子aの流れと常磁性の懸濁媒体bの流れとが磁気変調子30の位置に符合して交互に形成されたのち、分流部44に到達するようになっている。
【0032】
分流部44においては、磁気変調子30が形成されている部分と形成されていない部分とを境にして8つの分流路に分流する。この8つの分流路は、4つの反磁性微粒子aの流れのグループと4つの常磁性の懸濁媒体bの流れのグループに分けられ、回収部46において各グループごとに回収されるようになっている。
【0033】
図4は、本発明の磁気分離装置40の断面を示し、図4(a)〜(e)は、上から図3に示すaa、bb、cc、dd、およびeeの断面を示す図である。図4(a)は、流路領域形成部42における断面図であり、流路22の上面および底面に沿って磁気変調子30がマイクロメーターオーダーの所定の間隔をおいて設けられている態様を示す。磁気変調子30と流路22内の流体とが直接接触しないよう流路22の壁面を適宜コーティングすることが好ましく、例えば、抗血栓性のコーティングを施すこともできる。図4(b)は、流路領域形成部42の下流域における断面図である。流路領域形成部42の下流域においては、すでに、反磁性微粒子aの流れと常磁性の懸濁媒体bの流れとが別々にほぼ形成されるため、つづく分流部44における各分流路への分岐に対応しうるよう、流路22の分画領域ごとに少しずつ高低差が設けられている。
【0034】
図4(c)は、分流部44における断面図であり、反磁性微粒子aの流れを分流するための4つの分流路48aと、常磁性の懸濁媒体bの流れを分流するための4つの分流路48bとが交互に段違いで形成されている態様を示している。図4(d)は、回収部46の導入部の断面図であり、上述した4つの分流路48aが合流して、再びひとつの流路50aとなり、4つの分流路48bが合流して、再びひとつの流路50bとなった態様を示している。図4(e)は、排出部の断面図であり、流路50aおよび流路50bが、それぞれ導出口26および導出口28に収束される態様を示す。
【0035】
図5は、懸濁液Kが分離される態様を概念的に示すために磁気分離装置40の断面を示す図である。図5中、●は、反磁性微粒子aを示し、○は、常磁性の懸濁媒体bを示し、図5(a)〜(e)は、それぞれ図4(a)〜(e)に対応するものである。
【0036】
本発明の非接触型連続的磁気分離装置は、被分離対象の磁化率などしたがって、懸濁液の圧送の流速および印加する磁場の大きさを適宜最適化することができる。また、本発明の非接触型連続的磁気分離方法は、懸濁液の中に分散した微粒子と懸濁媒体の磁性率の差を利用してこれを分離するものであり、その分離対象を特に限定するものではない。本発明者は、数ある分離対象のなかでも、血液中の赤血球に着目し、その分離方法について鋭意検討した。以下、本発明の非接触型連続的磁気分離装置を用いた血液分離方法について詳細に説明する。
【0037】
赤血球は、含有するヘモグロビンと酸素分子との結合状態によって磁性が変化することが知られており、酸素分子が結合した場合には反磁性を示し、酸素分子が離れた場合は、磁化率の大きい常磁性を示す。まず最初に、ヘモグロビンに酸素分子が結合した反磁性の赤血球を分離する方法を以下説明する。
【0038】
赤血球が反磁性の場合、赤血球を本発明の非接触型連続磁気分離装置によって分離するためには、赤血球と血液における懸濁媒体に該当する血漿との間に磁化率の差を生じさせることが必要となる。そこで、本発明の磁気分離装置に投入する前に、全血に常磁性の物質を加える。常磁性の物資を加えられた血漿は常磁性化し、赤血球と血漿との間に磁化率の差が生じる。その後、この常磁性の物質を加えた全血を本発明の磁気分離装置にかけ、磁気変調子が設けられた位置と符合した流路領域を流れる流体を分流、回収することで赤血球が分離される。この方法において、血漿に加える常磁性の物質としては、常磁性塩あるいは常磁性のキレート化合物が挙げられ、具体的には、MnCl2、FeCl3、CuSO4、Mn−EDTA、Fe−EDTA、Gd−DTPAなどが挙げられる。
【0039】
一方、血漿に人体に有害な常磁性の添加剤を加えられない場合においては、赤血球を常磁性にする必要がある。そこで、本発明の磁気分離装置に投入する前に、全血に人体に無害なアスコルビン酸を加えることができる。すると、赤血球の中の酸素結合型のヘモグロビンは脱酸素化され、その磁性を常磁性へと変化させる。その後、この常磁性となった赤血球を含んだ全血を本発明の磁気分離装置にかけ、磁気変調子が設けられない位置と符合した流路領域を流れる流体を分流、回収することで赤血球が分離される。
【0040】
さらに、血漿に一切添加剤を加えずに赤血球を分離する方法としては、窒素バブリングによって赤血球の中の酸素結合型のヘモグロビンを脱酸素化する方法がある。窒素バブリングは、窒素ガスを充填した空間内にガス透過性の管を通し、その管の中に全血を流すことによって行なうことができる。窒素バブリングによって赤血球内のヘモグロビンの脱酸素化処理が施され、赤血球の磁性は常磁性へと変化する。窒素バブリング後、この常磁性となった赤血球を含んだ全血を本発明の磁気分離装置にかけ、磁気変調子が設けられない位置と符合した流路領域を流れる流体を分流、回収することで赤血球が分離される。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の磁気分離装置10について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。本発明の磁気分離装置10の分離能を評価する実験を後述する手順で行なった。
【0042】
(磁気分離装置10の作製)
本発明の磁気分離装置10は、以下の手順にて作製した。まず、スペーサーとして厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムを用意し、幅500μm、長さ50mmの長方形の開口部を形成し、その開口部の一端からさらに二つ開口部を分岐させて、Y字型の開口部を形成した。Y字型の開口部を形成したスペーサーの下側を厚さ60μmのポリエチレンのフィルムで、その上側を厚さ400μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムで挟み、スペーサーの厚み、すなわち、流路の厚みが200μmとなるように調整した上で、両面接着テープで接着し流路部12を作製した。また、厚さ1mmの鉄の板とアルミの板を交互に並べてたて、磁気変調子としての鉄のスリットを形成し磁気変調部14を作製した。
【0043】
流路部12のスペーサーの開口部の幅方向の右半分、すなわち流路の幅方向の右半分が、鉄のスリットの上にくるように、流路部12を磁気変調部14の上に正確に位置決めしたのちテープで固定して、本発明の磁気分離装置10を作製した。
【0044】
(試料の調整)
実験にあたり、全血を採取し、採取した全血を常磁性塩、あるいは常磁性のキレート化合物の水溶液で10倍に希釈して試料とした。具体的には、全血を、MnCl2水溶液(0.12M)、Mn−EDTA水溶液(0.12M)、およびGd−DTPA水溶液(0.12M)でそれぞれ10倍に希釈して試料を調整した。
【0045】
上記試料の他、全血を0.2Mのアスコルビン酸水溶液で10倍に希釈して試料を調整した。なお、上述した試料には、血液凝固防止剤として、EDTA2Na二水和物を適宜加えた。
【0046】
(分離能評価実験)
本発明の磁気分離装置10の分離能を評価するために行なった実験装置について図6を参照しながら、以下説明する。まず、磁気分離セル51を電磁石52のA極とB極との間に水平に固定した。ここで、磁気分離セル51とは、流路部12と磁気変調部14とがユニット化されたものである。この際、電磁石52から、磁気分離セル51の磁気変調部14の鉄のスリットの長手方向に対し垂直に磁場が印加されるように、磁気分離セル51を正確に位置決めして固定した。さらに、磁気分離装置10の導入口24とシリンダポンプ54(KDScientific社、IC−3100)とをパイプ56で接続し、磁気分離装置10の二つの導出口26、28にもそれぞれパイプ56を接続し、各導出口26、28から排出される液体を、それぞれ容器58および容器60へと回収可能に設置した。また、磁気分離装置10の流路部12のスペーサーの開口部におけるY字の分岐部分Sの上方に分流する様子を撮影するためのCCDカメラ(キーエンス、VH−5000)をセットした。
【0047】
分離能評価実験は以下の手順で行なった。まず、電磁石52によって、2.1Tの磁場を印加した。次に、調整した試料をシリンダポンプ54にセットし、16mm/sの一定流速で磁気分離セル51に圧送した。磁気分離セル51内を流下後、鉄のスリットが配設された流路領域を流れたものは、導出口26を経て容器58に回収され、鉄のスリットが配設されない流路領域を流れたものは、導出口28を経て容器60に回収された。それぞれの容器に回収された液体について、含まれる赤血球の濃度(赤血球の個数/体積(ml))を測定した。赤血球濃度の測定は、血球測定板(HIRSCHMANN、EM TECHCOLOR、8100101)を用いて行なった。
【0048】
(実験結果)
上述した手順によって、調整した各試料について赤血球の分離率を求めた。分離率は、(注入した試料の赤血球濃度−容器60の回収液中の赤血球濃度)/(注入した試料の全赤血球濃度)によって求めた。求めた試料ごとの分離率を下記表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】
上記表1に示されるように、本発明の磁気分離装置10は、全血からの赤血球の分離において、何れの添加剤を加えた試料についても高い分離率を示した。特に、Gd−DTPAを添加剤として加えた試料に関しては、99.1%という極めて高い分離率を得た。この数値は、従来の遠心分離法に比較しても遜色ない数値であり、本発明の磁気分離装置10の高い分離能が示された。
【0050】
図7は、Gd−DTPAを添加剤として加えた試料を磁気分離装置10で分離したときの、流路部12のY字の分岐部分を上方からCCDカメラで撮影した写真を示す。図7は、本発明の磁気分離装置10により、分岐点の手前で赤血球の流れと、血漿の流れが鮮明に分画され、分岐点を境にして赤血球を含む流れが好適に分離される態様を示している。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することのできる非接触型連続的磁気分離装置、およびその磁気分離方法が提供される。特に、本発明によれば、生体懸濁液である血液中の赤血球に代表される生体成分をその生理状態を損なうことなく好適に分離することができ、また、検体が微量の場合であっても、また逆に大量の場合であっても、簡便にかつ短時間で所望の生体成分を分離することが可能となることから、臨床または医療研究の現場において更なる作業の効率化に資することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の磁気分離装置10の斜視図。
【図2】本発明の磁気分離装置10の上面図。
【図3】本発明の第2の実施形態である磁気分離装置40の上面図。
【図4】本発明の磁気分離装置40の断面図。
【図5】懸濁液Kが分離される態様を概念的に示す磁気分離装置40の断面図。
【図6】本発明の磁気分離装置10の分離能を評価するために行なった実験装置図。
【図7】Gd−DTPAを添加剤として加えた試料を磁気分離装置10で分離したときの、流路部12のY字の分岐部分を上方からCCDカメラで撮影した写真。
【図8】磁力線82がライン状の強磁性体80に吸収される態様を示した概念図。
【図9】表面S近傍の磁束密度分布を概念的に示した図。
【符号の説明】
【0053】
10…磁気分離装置、12…流路部、14…磁気変調部、16…底面部、18…スペーサー部、20…上面部、22…流路、24…導入口、26…導出口、28…導出口、30…磁気変調子、40…磁気分離装置、42…流路領域形成部、44…分流部、46…回収部、48…分流路、50…流路、51…磁気分離セル、52…電磁石、54…シリンダポンプ、56…パイプ、58…容器、60…容器、80…強磁性体、82…磁力線、
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気を利用して懸濁液の中から微粒子を分離する装置および方法に関し、より詳細には、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触かつ連続的に分離する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血液に代表される生体懸濁液の成分分離にはもっぱら遠心分離法が用いられていた。しかしながら、遠心分離法には、遠心力に起因する細胞への損傷や細胞の凝集を引き起こすという問題があり、また、微量のサンプルの分離が難しいという問題があった。
【0003】
一方で、懸濁液に分散している微粒子を分離する方法として、磁気分離法が種々検討されており、その中でも、懸濁媒体と被分離微粒子との磁性差を利用した高勾配磁気分離方式(HGMS方式)が注目されている。このHGMS装置においては、超電導マグネットによる強磁界空間中に懸濁液を導き、該懸濁液中に数10〜100μmの直径のステンレス鋼線などの強磁性線からなる磁気フィルタを配置して被分離微粒子をフィルタに吸着する。
【0004】
さらに、被分離微粒子をフィルタなどに吸着させるのではなく、被分離微粒子を非接触で分離するべく、被分離対象である懸濁液をマイクロメーターオーダーの所定の流路に流し、該流路の外部に所定の強磁性体を配置して、流路の長手方向に垂直な外部磁界を印加することによって微粒子を分離する方法が検討されている。例えば、特開平7−232097号公報(特許文献1)には、流路の内部にあって、強磁性体の近傍とそれ以外の部分との間に生じる微粒子の流速の違いを利用した磁気クロマトグラフィー法なるものが開示されており、特開2002−1163号公報(特許文献2)、および特開2002−86015号公報(特許文献3)には、微粒子を、強磁性体が配置された流路の途中にてトラップして分離する構成が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムでは、どの程度の分離能が達成されるのか不明であり、特許文献2および3に開示されたシステムでは、非接触とはいえども被分離微粒子を流れに逆らって一旦トラップすることにはかわりなく、別途、トラップした被分離微粒子を回収するステップが必要となるものであって、所望の成分を連続的に分離しうるものではなかった。
【0006】
上述したように、血液に代表される生体懸濁液の成分分離において、遠心分離法に比べて利点の多い磁気分離法を応用し、赤血球などの生体成分粒子を非接触でかつ連続的に分離することが可能な磁気分離システムであって、より簡便で分離能の高い磁気分離システムの構築が求められていた。
【特許文献1】特開平7−232097号公報
【特許文献2】特開2002−1163号公報
【特許文献3】特開2002−86015号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、本発明は、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することのできる非接触型連続的磁気分離装置、およびその磁気分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
図8は、強磁性体80がライン状に挿設された表面Sに対し、強磁性体80の長手方向Yに対して直行する矢印B方向に磁界を印加した場合の磁力線82を概念的に示した図である。図8は、磁力線82が強磁性体80に引きつけられる態様を概念的に示している。図9は、図8における表面Sの破線X上の位置[X]と磁束密度[B(X)]との関係、すなわち、表面S近傍の磁束密度分布を概念的に示した図である。図9に示されるように、強磁性体80が挿設された表面位置[X]においては、強磁性体80のところで磁束密度[B(X)]が小さくなり、結果的に表面S近傍は不均一磁場となる。本発明者は、ライン状に挿設された強磁性体の長手方向に対して直行する方向に磁界を印加した場合に、該強磁性体に起因して生じるこの不均一磁場に着目し、磁気分離システムの流路の幅方向に磁束密度の大きさによって分画された領域を、マイクロメーターオーダーで形成することよって、被分離微粒子を磁気によって懸濁液の流れに逆らってトラップするのではなく、被分離微粒子とそれ以外の粒子とを仕切りのない共通の流路内で共に流下させながらも、それぞれの粒子が自身の磁化率に基づいて、磁束密度によって分画された別々の流路領域を選択して流れこむようにし、ひいては、この各流路領域の流れを好適に分流することで、被分離微粒子を非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することに成功し、本発明に至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明によれば、流体の導入口と、流体の導出口と、該導入口と該導出口の間に延びる流路と、該流路の底面に沿って該流路の長手方向にライン状に配設された強磁性体と、該流路の幅方向に磁場を印加する磁場発生手段とを備え、前記流路は、前記強磁性体が配設されているか否かによって幅方向に分画された第1の流路領域と第2の流路領域とを含み、前記導出口は、前記第1の流路領域を流れる流体と前記第2の流路領域を流れる流体とを個別に導出可能に設けられた磁気分離装置が提供される。
【0010】
本発明においては、前記ライン状に配設された強磁性体の幅を5〜1000μmとすることができる。また、前記磁場発生手段を、永久磁石、電磁石、超電導磁石からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段とすることができる。
【0011】
また、本発明の別の構成によっては、懸濁液から、被分離対象微粒子と懸濁媒体の磁性率の差を利用して被分離対象微粒子を連続的に分離する方法であって、流路の幅方向に磁束密度の大きい第1の流路領域と磁束密度の小さい第2の流路領域とを形成するステップと、前記懸濁液を前記流路に連続的に圧送するステップと、前記第1の流路領域を流れる流体と前記第2の流路領域を流れる流体とを個別に連続的に回収するステップとを含む方法が提供される。
【0012】
本発明においては、前記懸濁液が血液であり、前記懸濁媒体が血漿であり、前記被分離対象微粒子が赤血球である方法が提供され、前記血液を前記流路に圧送するステップの前に、前記血漿に常磁性物質を添加するステップをさらに含むことができる。
【0013】
前記常磁性物質は、常磁性塩、常磁性塩のキレート化合物、常磁性ナノ粒子、強磁性ナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含むものとすることができ、前記常磁性物質は、MnCl2、Mn−EDTA、Gd−DTPAからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含むものとすることができる。
【0014】
また、前記血液を前記流路に圧送するステップの前に、前記赤血球に含まれるヘモグロビンを脱酸素化するステップをさらに含むことができ、前記脱酸素化するステップは、前記血液にアスコルビン酸を添加するステップ、あるいは、前記血液に窒素バブリングを施すステップを含むことができる。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明によれば、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することのできる非接触型連続的磁気分離装置、およびその磁気分離方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体的な実施の形態をもって説明するが、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の非接触型連続的磁気分離装置10の斜視図である。図1においては、説明の便宜のため分解図として示してある。本発明の非接触型連続的磁気分離装置10(以下、磁気分離装置10として参照する)は、血液などの懸濁液を注入する流路部12と、流路部12の内部に不均一磁場を生じさせるための磁気変調部14とを含んで構成される。流路部12はさらに、底面部16、スペーサー部18、および上面部20を含んで構成されている。スペーサー部18は所定の厚みを持ったプレート状の部材であり、その長手方向に所定の幅で開口部を有しており、開口部は一方の端部において二股に分かれた形で形成されている。この開口部によって、懸濁液の流路22が画成される。スペーサー部18を、同じくプレート状の底面部16と上面部20との間に挟み固着することによって、上面部20、スペーサー部18、および底面部16の三層からなる流路部12が形成される。
【0018】
本発明においては、スペーサー部18を、シリコンゴム、高分子フィルムなどによって形成することができる。また、底面部16および上面部20を、ガラス、高分子フィルムなどによって形成することができる。
【0019】
ここで、最終的に形成される流路22の幅および厚みはマイクロメーターオーダーであることが好ましい。本実施形態においては、流路22の幅を5〜1000μmとすることができ、より好ましくは、10〜100μmにすることができ、流路22の厚み、すなわち高さを5〜1000μmとすることができ、より好ましくは、10〜100μmにすることができる。また、底面部16の厚さは、磁気変調部14が生じさせる不均一磁場の影響によって流路22内部に磁束密度の大きさによって分画された領域が生じうる程度の厚さであることが好ましく、後述する磁気変調子30の幅よりも薄いことが好ましい。なお、上面部20には懸濁液の導入口24が、底面部16には、分流液の導出口26、28がそれぞれ設けられている。
【0020】
磁気変調部14には、Alのような非強磁性体からなる立方体の表面に、ライン状の磁気変調子30が設けられている。このようなライン状の磁気変調子30を含む磁気変調部14は、磁気変調子30となる所定の厚さのプレートを他の非強磁性体からなるプレートで挟むことで作ることができる。磁気変調子30は、磁力線を引きつけることによって不均一磁場を発生させる強磁性体であればよく、Fe、Ni、Co、あるいはこれらを含む合金などを磁気変調子30として用いることができる。磁気変調子30の幅は、500μm〜1mm程度にすることができる。
【0021】
流路部12は、流路22の長手方向と磁気変調子30の長手方向Yとが平行になるように磁気変調部14の上に位置決めされ固定される。また、流路22は、その下に磁気変調子30が存在する部分と、その下に磁気変調子30が存在しない部分とが形成されるように磁気変調部14の上に位置決めされ固定される。すなわち、流路22の幅方向に図示しない磁場発生装置によって磁場Bが印加された場合に、流路22の幅方向において不均一磁場が生じるように、流路22は磁気変調子30の上方に位置決めされて配置される。本発明においては、磁場発生装置として、永久磁石、電磁石、超電導磁石などを適宜用いることができる。
【0022】
本実施形態においては、磁気変調子30を含む磁気変調部14と、流路部12とを別個に形成する態様を示したが、本発明においては、磁気変調子30の形成態様をこれに限定するものではなく、たとえば、Feなどの強磁性体物質をメッキ法や蒸着法によって底面部16や上面部20などにライン状に直接形成することもできる。
【0023】
図2は、磁気分離装置10の上面図を示した図であり、流路22の中で、被分離微粒子の流れが形成され分流される態様を概念的に示した図である。図中、●は、反磁性微粒子aを示し、○は、常磁性の懸濁媒体bを示す。また、説明の便宜のため、流路22を幅方向に二分割し、一方をL側ライン、他方をR側ラインとして図示している。以下、図2を参照しながら、懸濁液Kから反磁性の被分離微粒子aを分離する場合を例にとって、本発明の磁気分離装置10の機構を説明する。
【0024】
まず、懸濁液Kが、図示しないシリンダポンプなどの供給装置から一定の流速をもって導入口24から圧送される。ここで、懸濁液Kとは、反磁性微粒子aが常磁性の懸濁媒体bに拡散してなる流体である。懸濁液Kが流路22に流入されると、拡散していた懸濁液Kの中の反磁性微粒子aは、R側ラインに移動を始め、常磁性の懸濁媒体bは、L側ラインに移動を始める。これは、流路22のR側ラインの下には、図示しない底面部16に沿って磁気変調子30が設けられており、図示しない磁場発生装置によって流路22の幅方向に磁場Bが印加されているため、R側ラインにおける磁束密度がL側ラインにおけるそれに比べて小さくなるような不均一磁場が形成されていることに起因する。すなわち、流路22に磁束密度の大きさによって幅方向に分画された二つの領域である、R側ラインおよびL側ラインが形成されることによって、反磁性、すなわち、磁場の印加方向と逆向きに磁化される性質をもつ反磁性微粒子aは、エネルギー的に安定化しうる磁束密度の小さいR側ラインに移動し、常磁性、すなわち、磁場の印加方向と同方向に弱く磁化する性質をもつ懸濁媒体bは、磁束密度の大きいL側ラインに移動することになる。
【0025】
以上説明したように、本発明においては、流路22は、磁束密度の大きさの観点から二つの領域に分けられる。すなわち、磁束密度の小さいR側ラインと磁束密度の大きいL側ラインである。ここで、各領域の幅wをマイクロメーターオーダーとすることによって、反磁性微粒子aのL側ラインからR側ラインへの移動、あるいは、懸濁媒体bのR側ラインからL側ラインへの移動が速やかに生じる。各領域の幅wが広くなりすぎると、各粒子に働く拡散力によって上述した各成分ごとの流れの形成が阻害される。
【0026】
しかし、本発明においては、流路22自体の幅Wを限定するものでないことを理解されたい。本発明においては、磁束密度の大きさによって幅方向に分画される流路領域の各区画の幅wがマイクロメーターオーダーであればよい。この点については、後述する第2の実施形態のところでより詳細に説明する。
【0027】
このようにして、懸濁液Kが流路22を流下していく過程において、懸濁液Kの成分は、それぞれが有する磁性率の差によって徐々にそれぞれが別個の流れを形成しながら、分岐点Sに到達する。そして、分岐点Sにおいて流路が二つに分岐し、R側ラインを流れていた反磁性微粒子aは、導出口26から導出され、L側ラインを流れていた懸濁媒体bは、導出口28から導出される。すなわち、懸濁液Kが導入口24から連続的に圧送されるに伴って、導出口26および28のそれぞれから各成分が連続的に導出され、回収される。以上が、本発明の磁気分離装置10による、反磁性微粒子aの連続的な分離の機構である。
【0028】
図3は、本発明の第2の実施形態である非接触型連続的磁気分離装置40の上面図を示す図である。本発明の非接触型連続的磁気分離装置40(以下、磁気分離装置40として参照する)は、流路領域形成部42と分流部44と回収部46とを含んで構成されている。流路領域形成部42には、流路22が形成されている。流路22の厚み、すなわち高さは、第1の実施形態のところで述べたのと同様であり、マイクロメーターオーダーであることが好ましく、5〜1000μmとすることができ、より好ましくは10〜100μmとすることができる。
【0029】
磁気分離装置40においては、磁気変調子30が流路領域形成部42の上面および底面に沿って、流路領域形成部42の長手方向、すなわち、被分離対象の流下方向に4本のラインが平行に配設されている。磁気変調子30のラインの幅は、マイクロメーターオーダーであることが好ましく、5〜1000μmとすることができ、より好ましくは10〜100μmとすることができる。このように磁気変調子30が配設された流路22の幅方向に図示しない磁場発生装置によって磁場Bが印加されることによって、流路22にはその幅方向において不均一磁場が生じる。すなわち、流路22にはその幅方向において、磁気変調子30の位置に符合して、磁束密度の小さい領域と磁束密度の大きい領域とが、いずれもマイクロメーターオーダーの幅wで交互に形成されるようになっている。
【0030】
なお、本実施形態においては、流路22の幅Wについて特に制限するものではない。本実施形態においては、説明の便宜のため、磁気変調子30のラインを4本としているが、本発明においては、磁気変調子30のラインの本数を限定するものではなく、磁気変調子30のラインの本数を増やして、流路領域形成部42の幅Wを適宜広げることによって、一度に処理しうる流体量を増やすことが可能である。
【0031】
導入口24から流入された懸濁液Kは、流路領域形成部42で幅Wの流れとなって矢印D方向に進む。懸濁液K中に分散された反磁性微粒子aは、その流下の過程において、磁気変調子30のラインに沿って流路22に形成された磁束密度の小さいマイクロメーターオーダーの幅の領域に移動する一方、常磁性の懸濁媒体bは、磁束密度の大きい同じくマイクロメーターオーダーの幅の領域に移動する。これらの移動は非常に速やかに行なわれるため、流路22の下流に向かうに従って、最終的に、各成分は流路内で流路の幅方向に8つの流れを形成するようになる。すなわち、磁性微粒子aの流れと常磁性の懸濁媒体bの流れとが磁気変調子30の位置に符合して交互に形成されたのち、分流部44に到達するようになっている。
【0032】
分流部44においては、磁気変調子30が形成されている部分と形成されていない部分とを境にして8つの分流路に分流する。この8つの分流路は、4つの反磁性微粒子aの流れのグループと4つの常磁性の懸濁媒体bの流れのグループに分けられ、回収部46において各グループごとに回収されるようになっている。
【0033】
図4は、本発明の磁気分離装置40の断面を示し、図4(a)〜(e)は、上から図3に示すaa、bb、cc、dd、およびeeの断面を示す図である。図4(a)は、流路領域形成部42における断面図であり、流路22の上面および底面に沿って磁気変調子30がマイクロメーターオーダーの所定の間隔をおいて設けられている態様を示す。磁気変調子30と流路22内の流体とが直接接触しないよう流路22の壁面を適宜コーティングすることが好ましく、例えば、抗血栓性のコーティングを施すこともできる。図4(b)は、流路領域形成部42の下流域における断面図である。流路領域形成部42の下流域においては、すでに、反磁性微粒子aの流れと常磁性の懸濁媒体bの流れとが別々にほぼ形成されるため、つづく分流部44における各分流路への分岐に対応しうるよう、流路22の分画領域ごとに少しずつ高低差が設けられている。
【0034】
図4(c)は、分流部44における断面図であり、反磁性微粒子aの流れを分流するための4つの分流路48aと、常磁性の懸濁媒体bの流れを分流するための4つの分流路48bとが交互に段違いで形成されている態様を示している。図4(d)は、回収部46の導入部の断面図であり、上述した4つの分流路48aが合流して、再びひとつの流路50aとなり、4つの分流路48bが合流して、再びひとつの流路50bとなった態様を示している。図4(e)は、排出部の断面図であり、流路50aおよび流路50bが、それぞれ導出口26および導出口28に収束される態様を示す。
【0035】
図5は、懸濁液Kが分離される態様を概念的に示すために磁気分離装置40の断面を示す図である。図5中、●は、反磁性微粒子aを示し、○は、常磁性の懸濁媒体bを示し、図5(a)〜(e)は、それぞれ図4(a)〜(e)に対応するものである。
【0036】
本発明の非接触型連続的磁気分離装置は、被分離対象の磁化率などしたがって、懸濁液の圧送の流速および印加する磁場の大きさを適宜最適化することができる。また、本発明の非接触型連続的磁気分離方法は、懸濁液の中に分散した微粒子と懸濁媒体の磁性率の差を利用してこれを分離するものであり、その分離対象を特に限定するものではない。本発明者は、数ある分離対象のなかでも、血液中の赤血球に着目し、その分離方法について鋭意検討した。以下、本発明の非接触型連続的磁気分離装置を用いた血液分離方法について詳細に説明する。
【0037】
赤血球は、含有するヘモグロビンと酸素分子との結合状態によって磁性が変化することが知られており、酸素分子が結合した場合には反磁性を示し、酸素分子が離れた場合は、磁化率の大きい常磁性を示す。まず最初に、ヘモグロビンに酸素分子が結合した反磁性の赤血球を分離する方法を以下説明する。
【0038】
赤血球が反磁性の場合、赤血球を本発明の非接触型連続磁気分離装置によって分離するためには、赤血球と血液における懸濁媒体に該当する血漿との間に磁化率の差を生じさせることが必要となる。そこで、本発明の磁気分離装置に投入する前に、全血に常磁性の物質を加える。常磁性の物資を加えられた血漿は常磁性化し、赤血球と血漿との間に磁化率の差が生じる。その後、この常磁性の物質を加えた全血を本発明の磁気分離装置にかけ、磁気変調子が設けられた位置と符合した流路領域を流れる流体を分流、回収することで赤血球が分離される。この方法において、血漿に加える常磁性の物質としては、常磁性塩あるいは常磁性のキレート化合物が挙げられ、具体的には、MnCl2、FeCl3、CuSO4、Mn−EDTA、Fe−EDTA、Gd−DTPAなどが挙げられる。
【0039】
一方、血漿に人体に有害な常磁性の添加剤を加えられない場合においては、赤血球を常磁性にする必要がある。そこで、本発明の磁気分離装置に投入する前に、全血に人体に無害なアスコルビン酸を加えることができる。すると、赤血球の中の酸素結合型のヘモグロビンは脱酸素化され、その磁性を常磁性へと変化させる。その後、この常磁性となった赤血球を含んだ全血を本発明の磁気分離装置にかけ、磁気変調子が設けられない位置と符合した流路領域を流れる流体を分流、回収することで赤血球が分離される。
【0040】
さらに、血漿に一切添加剤を加えずに赤血球を分離する方法としては、窒素バブリングによって赤血球の中の酸素結合型のヘモグロビンを脱酸素化する方法がある。窒素バブリングは、窒素ガスを充填した空間内にガス透過性の管を通し、その管の中に全血を流すことによって行なうことができる。窒素バブリングによって赤血球内のヘモグロビンの脱酸素化処理が施され、赤血球の磁性は常磁性へと変化する。窒素バブリング後、この常磁性となった赤血球を含んだ全血を本発明の磁気分離装置にかけ、磁気変調子が設けられない位置と符合した流路領域を流れる流体を分流、回収することで赤血球が分離される。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の磁気分離装置10について、実施例を用いてより具体的に説明を行なうが、本発明は、後述する実施例に限定されるものではない。本発明の磁気分離装置10の分離能を評価する実験を後述する手順で行なった。
【0042】
(磁気分離装置10の作製)
本発明の磁気分離装置10は、以下の手順にて作製した。まず、スペーサーとして厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムを用意し、幅500μm、長さ50mmの長方形の開口部を形成し、その開口部の一端からさらに二つ開口部を分岐させて、Y字型の開口部を形成した。Y字型の開口部を形成したスペーサーの下側を厚さ60μmのポリエチレンのフィルムで、その上側を厚さ400μmのポリエチレンテレフタレートのフィルムで挟み、スペーサーの厚み、すなわち、流路の厚みが200μmとなるように調整した上で、両面接着テープで接着し流路部12を作製した。また、厚さ1mmの鉄の板とアルミの板を交互に並べてたて、磁気変調子としての鉄のスリットを形成し磁気変調部14を作製した。
【0043】
流路部12のスペーサーの開口部の幅方向の右半分、すなわち流路の幅方向の右半分が、鉄のスリットの上にくるように、流路部12を磁気変調部14の上に正確に位置決めしたのちテープで固定して、本発明の磁気分離装置10を作製した。
【0044】
(試料の調整)
実験にあたり、全血を採取し、採取した全血を常磁性塩、あるいは常磁性のキレート化合物の水溶液で10倍に希釈して試料とした。具体的には、全血を、MnCl2水溶液(0.12M)、Mn−EDTA水溶液(0.12M)、およびGd−DTPA水溶液(0.12M)でそれぞれ10倍に希釈して試料を調整した。
【0045】
上記試料の他、全血を0.2Mのアスコルビン酸水溶液で10倍に希釈して試料を調整した。なお、上述した試料には、血液凝固防止剤として、EDTA2Na二水和物を適宜加えた。
【0046】
(分離能評価実験)
本発明の磁気分離装置10の分離能を評価するために行なった実験装置について図6を参照しながら、以下説明する。まず、磁気分離セル51を電磁石52のA極とB極との間に水平に固定した。ここで、磁気分離セル51とは、流路部12と磁気変調部14とがユニット化されたものである。この際、電磁石52から、磁気分離セル51の磁気変調部14の鉄のスリットの長手方向に対し垂直に磁場が印加されるように、磁気分離セル51を正確に位置決めして固定した。さらに、磁気分離装置10の導入口24とシリンダポンプ54(KDScientific社、IC−3100)とをパイプ56で接続し、磁気分離装置10の二つの導出口26、28にもそれぞれパイプ56を接続し、各導出口26、28から排出される液体を、それぞれ容器58および容器60へと回収可能に設置した。また、磁気分離装置10の流路部12のスペーサーの開口部におけるY字の分岐部分Sの上方に分流する様子を撮影するためのCCDカメラ(キーエンス、VH−5000)をセットした。
【0047】
分離能評価実験は以下の手順で行なった。まず、電磁石52によって、2.1Tの磁場を印加した。次に、調整した試料をシリンダポンプ54にセットし、16mm/sの一定流速で磁気分離セル51に圧送した。磁気分離セル51内を流下後、鉄のスリットが配設された流路領域を流れたものは、導出口26を経て容器58に回収され、鉄のスリットが配設されない流路領域を流れたものは、導出口28を経て容器60に回収された。それぞれの容器に回収された液体について、含まれる赤血球の濃度(赤血球の個数/体積(ml))を測定した。赤血球濃度の測定は、血球測定板(HIRSCHMANN、EM TECHCOLOR、8100101)を用いて行なった。
【0048】
(実験結果)
上述した手順によって、調整した各試料について赤血球の分離率を求めた。分離率は、(注入した試料の赤血球濃度−容器60の回収液中の赤血球濃度)/(注入した試料の全赤血球濃度)によって求めた。求めた試料ごとの分離率を下記表1にまとめて示す。
【0049】
【表1】
上記表1に示されるように、本発明の磁気分離装置10は、全血からの赤血球の分離において、何れの添加剤を加えた試料についても高い分離率を示した。特に、Gd−DTPAを添加剤として加えた試料に関しては、99.1%という極めて高い分離率を得た。この数値は、従来の遠心分離法に比較しても遜色ない数値であり、本発明の磁気分離装置10の高い分離能が示された。
【0050】
図7は、Gd−DTPAを添加剤として加えた試料を磁気分離装置10で分離したときの、流路部12のY字の分岐部分を上方からCCDカメラで撮影した写真を示す。図7は、本発明の磁気分離装置10により、分岐点の手前で赤血球の流れと、血漿の流れが鮮明に分画され、分岐点を境にして赤血球を含む流れが好適に分離される態様を示している。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明によれば、懸濁液に分散された被分離対象微粒子を、非接触で連続的に、かつ、高い分離率をもって分離することのできる非接触型連続的磁気分離装置、およびその磁気分離方法が提供される。特に、本発明によれば、生体懸濁液である血液中の赤血球に代表される生体成分をその生理状態を損なうことなく好適に分離することができ、また、検体が微量の場合であっても、また逆に大量の場合であっても、簡便にかつ短時間で所望の生体成分を分離することが可能となることから、臨床または医療研究の現場において更なる作業の効率化に資することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の磁気分離装置10の斜視図。
【図2】本発明の磁気分離装置10の上面図。
【図3】本発明の第2の実施形態である磁気分離装置40の上面図。
【図4】本発明の磁気分離装置40の断面図。
【図5】懸濁液Kが分離される態様を概念的に示す磁気分離装置40の断面図。
【図6】本発明の磁気分離装置10の分離能を評価するために行なった実験装置図。
【図7】Gd−DTPAを添加剤として加えた試料を磁気分離装置10で分離したときの、流路部12のY字の分岐部分を上方からCCDカメラで撮影した写真。
【図8】磁力線82がライン状の強磁性体80に吸収される態様を示した概念図。
【図9】表面S近傍の磁束密度分布を概念的に示した図。
【符号の説明】
【0053】
10…磁気分離装置、12…流路部、14…磁気変調部、16…底面部、18…スペーサー部、20…上面部、22…流路、24…導入口、26…導出口、28…導出口、30…磁気変調子、40…磁気分離装置、42…流路領域形成部、44…分流部、46…回収部、48…分流路、50…流路、51…磁気分離セル、52…電磁石、54…シリンダポンプ、56…パイプ、58…容器、60…容器、80…強磁性体、82…磁力線、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の導入口と、流体の導出口と、該導入口と該導出口の間に延びる流路と、該流路の底面に沿って該流路の長手方向にライン状に配設された強磁性体と、該流路の幅方向に磁場を印加する磁場発生手段とを備え、
前記流路は、前記強磁性体が配設されているか否かによって幅方向に分画された第1の流路領域と第2の流路領域とを含み、
前記導出口は、前記第1の流路領域を流れる流体と前記第2の流路領域を流れる流体とを個別に導出可能に設けられた
磁気分離装置。
【請求項2】
前記ライン状に配設された強磁性体の幅が5〜1000μmである、
請求項1に記載の磁気分離装置。
【請求項3】
前記磁場発生手段は、永久磁石、電磁石、超電導磁石からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段である、
請求項1または2にいずれか1項に記載の磁気分離装置。
【請求項4】
懸濁液から、被分離対象微粒子と懸濁媒体の磁性率の差を利用して被分離対象微粒子を連続的に分離する方法であって、
流路の幅方向に磁束密度の大きい第1の流路領域と磁束密度の小さい第2の流路領域とを形成するステップと、
前記懸濁液を前記流路に連続的に圧送するステップと、
前記第1の流路領域を流れる流体と前記第2の流路領域を流れる流体とを個別に連続的に回収するステップと
を含む方法。
【請求項5】
前記懸濁液は血液であり、前記懸濁媒体は血漿であり、前記被分離対象微粒子は赤血球である、
請求項4に記載の分離方法。
【請求項6】
前記血液を前記流路に圧送するステップの前に、前記血漿に常磁性物質を添加するステップをさらに含む
請求項5に記載の分離方法。
【請求項7】
前記常磁性物質は、常磁性塩、常磁性塩のキレート化合物、常磁性ナノ粒子、強磁性ナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含む
請求項6に記載の分離方法。
【請求項8】
前記常磁性物質は、MnCl2、Mn−EDTA、Gd−DTPAからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含む
請求項6に記載の分離方法。
【請求項9】
前記血液を前記流路に圧送するステップの前に、前記赤血球に含まれるヘモグロビンを脱酸素化するステップをさらに含む
請求項5に記載の分離方法。
【請求項10】
前記脱酸素化するステップは、前記血液にアスコルビン酸を添加するステップを含む
請求項9に記載の分離方法。
【請求項11】
前記脱酸素化するステップは、前記血液に窒素バブリングを施すステップを含む
請求項9に記載の分離方法。
【請求項1】
流体の導入口と、流体の導出口と、該導入口と該導出口の間に延びる流路と、該流路の底面に沿って該流路の長手方向にライン状に配設された強磁性体と、該流路の幅方向に磁場を印加する磁場発生手段とを備え、
前記流路は、前記強磁性体が配設されているか否かによって幅方向に分画された第1の流路領域と第2の流路領域とを含み、
前記導出口は、前記第1の流路領域を流れる流体と前記第2の流路領域を流れる流体とを個別に導出可能に設けられた
磁気分離装置。
【請求項2】
前記ライン状に配設された強磁性体の幅が5〜1000μmである、
請求項1に記載の磁気分離装置。
【請求項3】
前記磁場発生手段は、永久磁石、電磁石、超電導磁石からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段である、
請求項1または2にいずれか1項に記載の磁気分離装置。
【請求項4】
懸濁液から、被分離対象微粒子と懸濁媒体の磁性率の差を利用して被分離対象微粒子を連続的に分離する方法であって、
流路の幅方向に磁束密度の大きい第1の流路領域と磁束密度の小さい第2の流路領域とを形成するステップと、
前記懸濁液を前記流路に連続的に圧送するステップと、
前記第1の流路領域を流れる流体と前記第2の流路領域を流れる流体とを個別に連続的に回収するステップと
を含む方法。
【請求項5】
前記懸濁液は血液であり、前記懸濁媒体は血漿であり、前記被分離対象微粒子は赤血球である、
請求項4に記載の分離方法。
【請求項6】
前記血液を前記流路に圧送するステップの前に、前記血漿に常磁性物質を添加するステップをさらに含む
請求項5に記載の分離方法。
【請求項7】
前記常磁性物質は、常磁性塩、常磁性塩のキレート化合物、常磁性ナノ粒子、強磁性ナノ粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含む
請求項6に記載の分離方法。
【請求項8】
前記常磁性物質は、MnCl2、Mn−EDTA、Gd−DTPAからなる群より選ばれる少なくとも1種の物質を含む
請求項6に記載の分離方法。
【請求項9】
前記血液を前記流路に圧送するステップの前に、前記赤血球に含まれるヘモグロビンを脱酸素化するステップをさらに含む
請求項5に記載の分離方法。
【請求項10】
前記脱酸素化するステップは、前記血液にアスコルビン酸を添加するステップを含む
請求項9に記載の分離方法。
【請求項11】
前記脱酸素化するステップは、前記血液に窒素バブリングを施すステップを含む
請求項9に記載の分離方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2007−209962(P2007−209962A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35775(P2006−35775)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(305027401)公立大学法人首都大学東京 (385)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【Fターム(参考)】
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