説明

非接触型ICカード処理装置

【課題】アンテナ部に強い力が加えられてもその力を吸収してアンテナ部を保護できるようにする。
【解決手段】非接触型ICカード処理装置の本体のアンテナ部に非接触型ICカードがタッチ又はかざされたときに、その非接触型ICカード処理装置の本体とその非接触型ICカードとの間でデータ授受を行って所定の処理を行う非接触型ICカード処理装置において、前記アンテナ部は、そのアンテナ部に外部から力が加えられたときにその力を吸収する吸収機構が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型ICカードとの間でデータ授受を行って自動改札等の所定の処理を行う非接触型ICカード処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、駅に設置される自動改札機は、利用者の利便向上を図るために、乗車券を自動改札機に投入することなく非接触式に自動改札が行える非接触式自動改札機が使用されるようになってきている(特許文献1参照)。
【0003】
この非接触式自動改札機は、非接触型ICカードからなる、いわゆる非接触券が非接触式自動改札機の本体に設けられているアンテナ部にタッチされ、又はアンテナ部にかざされると、非接触券と非接触式自動改札機の本体との間でデータ授受が行われて入出場処理(入場処理又は出場処理を意味している。)が行われるように構成されている。
【0004】
また、近年のIT技術の進歩により携帯電話機に非接触券の機能をも持たせ、その携帯電話機を非接触式自動改札機の本体のアンテナ部にタッチ又はかざして入出場できるようにすることも提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−223659号公報
【特許文献2】特開2001−52213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の非接触型ICカード処理装置においては、例えばその非接触型ICカード処理装置が非接触式自動改札機の場合、その非接触式自動改札機の本体のアンテナ部に非接触券や携帯電話機が強くタッチされるとアンテナ部及びそのアンテナ部に組込まれているリーダライタユニットが損傷するだけでなく、非接触券や携帯電話機自身も損傷を受けるおそれがあった。
【0006】
すなわち、非接触式自動改札機の本体のアンテナ部の表面は、電波を通す硬質の合成樹脂製のカバー材で覆われていて、その内部に組込まれているアンテナやリーダライタユニットが保護されている。しかし、そのアンテナ部の硬質の表面に物体が強く当たるとアンテナ部の内部に衝撃が加わりアンテナ部に悪影響を与えるだけでなく、アンテナ部の硬質の表面に強く当たった物体の非接触券や携帯電話機自身にも衝撃が加わり悪影響を与えるおそれがあった。
【0007】
加えて、非接触券や携帯電話機がアンテナ部の硬質の表面に強く当たったときは、反力により瞬時にアンテナ部が離れてしまい、十分なリードライト時間が確保できずに入出場が拒否されてしまうおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであって、その目的は、非接触型ICカード処理装置の本体のアンテナ部を保護することができるとともに、非接触型ICカード又は携帯電話機等のその非接触型ICカード処理装置で使用される媒体自身も保護することのできる非接触型ICカード処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る非接触型ICカード処理装置は、上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、非接触型ICカード処理装置の本体のアンテナ部に非接触型ICカードがタッチ又はかざされたときに、その非接触型ICカード処理装置の本体とその非接触型ICカードとの間でデータ授受を行って所定の処理を行う非接触型ICカード処理装置において、前記アンテナ部は、そのアンテナ部に外部から力が加えられたときにその力を吸収する吸収機構が設けられていることを特徴としている。
本発明の請求項2に記載の非接触型ICカード処理装置は、吸収機構は、アンテナ部を弾性部材に載置して、又はそのアンテナ部を弾性部材で支持して構成されていることを特徴としている。
本発明の請求項3に記載の非接触型ICカード処理装置は、非接触型ICカード処理装置の本体は、非接触式自動改札機の本体からなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に記載の非接触型ICカード処理装置は、アンテナ部は、そのアンテナ部に外部から力が加えられたときにその力を吸収する吸収機構が設けられているので、アンテナに外部から強い力が加えられてもその力が吸収され、アンテナ部の衝撃を緩和して、アンテナ部を保護することができるとともに、そのアンテナ部にタッチされた非接触型ICカードや携帯電話機、あるいはPDA等の媒体も保護することができる。
本発明の請求項2に記載の非接触型ICカード処理装置は、吸収機構がアンテナ部を弾性部材に載置して、又はそのアンテナ部を弾性部材で支持して構成されているので、吸収機構を簡単に実現することができる。
本発明の請求項3に記載の非接触型ICカード処理装置は、非接触型ICカード処理装置の本体が非接触式自動改札機の本体のときは、利用者が改札通路を急いで通過しようとして非接触型ICカードや携帯電話機、あるいはPDA等の媒体を強くアンテナ部にタッチしても、非接触式自動改札機の本体のアンテナ部を保護することができるとともに、その非接触型ICカード等の媒体をも保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る非接触式ICカード処理装置の本体を非接触式自動改札機の本体としたときのその非接触式自動改札機の本体(以下、「改札機本体」という。)Gを構成する一対の筐体のうちの一方の筐体Hの斜視図である。この筐体Hの上面には、本発明の非接触型ICカードに相当する非接触券Cと交信するための本発明の特徴とする後に詳述するアンテナ部aが設けられている。なお、本発明の非接触型ICカードには、非接触券Cの機能を備えた携帯電話機やPDA等の携帯型情報処理装置も含まれている。
【0012】
筐体Hの改札通路Pの入口側には、改札機本体Gの使用状態、つまり改札通路Pを通過できるか否かを利用者に報知するための表示部1が設けられている。また、図1中、S,S…は、改札通路Pへの利用者の進入、又はその改札通路Pからの退出、あるいは通過を検知するための光電式の人間検知器であって、筐体Hの側面に所定の間隔を保って設けられている。さらに、この人間検知器は、筐体Hの上面の改札通路Pと反対側で、その改札通路Pの通過方向に沿って設けられたセンサ取付ボック2内に設けられている反射型センサからなる人間検知器S′,S′…によっても構成されている。この反射型センサからなる人間検知器S′,S′…は、改札通路P内の大人の利用者を検知できるように、改札通路Pの床面から所定高さ以上の物体(利用者)を検知できるように構成されている。
【0013】
筐体Hの側面には、利用者に対して音声により所定の案内をアナウンスするためのスピーカ3が取付けられているとともに、その筐体Hの側面の改札通路Pの出口側及び進入側には、ドアD1 ,D2 がそれぞれ設けられている。また、筐体Hの上面のほぼ中央部には、利用者に対して文字により所定の案内を行うための表示画面4が取付けられている。
【0014】
図1中、5は、改札機本体Gの動作を司どる制御器であり、マイクロコンピュータを中心に構成されている。そして、この制御器5には、非接触券Cとの間でデータの授受を行うための上述のアンテナaを接続したリーダライタR(後述の図2参照)が接続されている。
【0015】
図2は、制御器5及び非接触券Cの電気的構成を示すブロック図である。制御器5側から説明すると、この制御器5のCPU20は、ROM21に記憶されているシステムプログラム及びRAM22に記憶されているワーキングデータを用いて演算処理を行って、改札機本体Gを統括的に制御できるように構成されている。そして、このCPU20には、I/Oユニット23を介してドアD1 ,D2 を駆動制御するドア駆動ユニット24と、スピーカ3を駆動制御する音声駆動ユニット25と、表示画面4を駆動する表示画面駆動ユニット26とが接続されている。なお、I/Oユニット23には、人間検知器S,S…、S′,S′…の検知信号を入力するための人間検知器ユニット等も接続されているが、ここでは省略されている。
【0016】
図2中、27は、上記I/Oユニット23に接続されたリーダライタであって、非接触券Cと交信を行うためのアンテナ27aを接続してアンテナ部a内に設けられている。このアンテナ27aは、非接触券Cとデータ授受を行う機能と、非接触券Cに電力を供給する機能とが備えられている。なお、図示の例では、アンテナ部a内にリーダライタ27及びアンテナ27aの両方が組込まれている例が示されているが、リーダライタ27を筐体H内に設け、アンテナ27aのみをアンテナ部a内に設けるようにすることもできる。
【0017】
非接触券Cは、無線通信機能を有する非接触型ICカードと同様に構成されている。すなわち、この非接触券Cには、アンテナAと、改札機本体G側と交信するための通信制御部30と、その通信制御部30とI/Oユニット31を介して接続されているCPU32と、システムプログラムデータの他に所定のカードデータの記憶されているメモリ33と、改札機本体Gからの電力波をアンテナAを介して受信し、非接触券Cの駆動電力を生成する電力生成回路34とを有している。上記メモリ33は、非接触券Cの識別情報(ID番号)を記憶するカードIDデータ記憶部m1 と、乗車区間や有効期間等の所定の定期券データを記憶する定期券データ記憶部m2 と、非接触券Cが定期券の乗車区間外(定期券データが有効期間切れ等により無効券のときは、定期券の乗車区間内も含む。)で使用されたときに、乗車運賃を減額処理する普通乗車券の機能を有するSFデータ(金額データ)を記憶するSFデータ記憶部m3 を有している。また、図示しないが、メモリ33には、所定の入場データ及び出場データを記憶する記憶部も設けられている。
【0018】
以下、本発明の特徴であるアンテナ部aの説明の前にこの改札機本体Gの制御動作を説明する。今、利用者がある駅に設置されている改札機本体Gを介して定期券区間外で入場しようとして非接触券Cがその改札機本体Gのアンテナ部aにタッチされ、又はそのアンテナ部aにかざされると(以下、タッチで説明する。)、非接触券Cと改札機本体Gとの間で交信が行われる。そして、その非接触券Cによる入場が許可されると、その非接触券Cのメモリ33の図示しない入場データ記憶部に改札機本体Gの設置駅に係る入場データが書込まれるとともに、SFデータ記憶部m3 から初乗運賃に相当する金額が減額処理される。なお、非接触券CのSFデータ記憶部m3 のSFデータの金額が初乗運賃に満たないときは、当然のことながら入場は拒否される。
【0019】
利用者が所定の降車駅に到着し、その利用者の所持している非接触券Cが改札機本体Gのアンテナ部aにタッチされて非接触券Cと改札機本体Gとの間で交信が行われると、非接触券Cのメモリ33に記憶されているデータ(カードデータ)が改札機本体G(制御器5)により読取られ、その読取られたデータを基にCPU20により所定の演算処理が行われる。この演算処理の結果、非接触券Cで入場した駅から出場しようとする駅までの運賃が算出され、初乗運賃を除いた不足分の運賃が非接触券Cのメモリ33のSFデータ記憶部m3から減額処理されて新たな残額が書込まれるとともに、出場駅に係る所定の出場データがメモリ33の図示しない場所に書込まれ、そして、表示画面4には、新たな残額が表示して案内される。なお、出場の際、SFカードCの残額が徴収金額に満たないときは、ドアD1 が閉じられて表示画面4及びスピーカ3を介して精算案内が行われる。
【0020】
さて、図3は、アンテナ部aの詳細図であって、上記図に示されるアンテナ部aを改札通路Pの通過方向と同方向に中央で断面した拡大断面図に相当している。このアンテナ部a内には、図示しないが、上述したように、非接触券Cとデータ授受を行うためのアンテナ27aを備えたリーダライタ27が組込まれている(図2参照)。また、このアンテナ部aの表面側には、図示しないが、非接触券Cとの交信状態、すなわち、交信OK又は交信NGを利用者に報知する表示ランプ機構が組込まれている。
【0021】
このアンテナ部aの平面形状は、図1に示されるように、所定面積を有する四角形を呈し、かつ、改札通路Pの入口側(図3において右側)の高さが少し低くなっていて、斜面に形成され、非接触券Cがタッチしやすいように工夫されている。
【0022】
図3中、30は、本発明の吸収機構に相当する弾性部材であって、スポンジゴム等の弾性に富んだ合成樹脂製のマットにより構成されている。すなわち、この弾性部材30は、アンテナ部aの平面形状よりも少し大きい平面形状を有し、かつ、アンテナ部aの上面が筐体Hの上面位置から少し突出するように設けられた凹部H1 内に設けられている。そして、この弾性部材30の上面にアンテナ部aが載置されるように構成されている。なお、凹部H1 と弾性部材30、及び弾性部材30とアンテナ部aは接着剤により固着されている。
【0023】
上記構成からなるアンテナ部aにおいて、アンテナ部aに図3の矢印で示される方向から強い力が加えられたとき、アンテナ部aは下方及び前後左右に自由に揺動(スイング)して、その加えられた強い力は弾性部材30により吸収される(図3の二点鎖線で示されるアンテナ部a参照)。このため、アンテナ部aは、その強い力によって損傷を受けるのを効果的に防止することができるとともに、そのアンテナ部aに強い力を与えた非接触券C自身の損傷も防止することができる。特に、アンテナ部aに対するこのような強い力は、携帯電話機等の質量の大きな媒体がタッチされた場合に発生しやすいが、弾性部材30が介在していると、質量の大きな媒体であってもタッチ時の力を効率よく吸収することができる。
【0024】
また、上述のように、アンテナ部aに媒体(非接触券や携帯電話機等)が強くタッチしたときには、そのタッチ力を弾性部材30が吸収するので、その吸収の間、改札機本体G側と媒体との間のデータ授受時間が長くなり、すなわち、データ授受時間が十分に確保され、読取不良や書込不良により入出場処理が不調になるという不都合を未然に防止することができる。
【0025】
図4は、本発明の吸収機構の他の例を示すもので、吸収機構は、アンテナ部aと筐体Hとの間にコイルばねからなるばね部材31,31…を介在させて構成されている。すなわち、ここにおける吸収機構は、筐体Hの凹部H′に等間隔にばね部材31,31…を設け、これらばね部材31,31…上にアンテナ部aを支持して構成されている。アンテナ部aがこのようにばね部材31,31…に支持されていると、アンテナ部aの上面に強い力が加えられたときには、アンテナ部aは上下,左右,前後に自由に揺動(スイング)でき、その強い力を効率よく吸収することができる。このため、アンテナ部a及び非接触券C等の媒体をその強い力から保護することができる。なお、ばね部材31としてコイルばねを用いたが、板ばね等の他の形式のばね部材を用いてもよい。
【0026】
図5は、本発明の吸収機構のさらに他の例を示すもので、吸収機構は、アンテナ部aと筐体Hとの間に上記図3と同様の弾性部材30を設けるとともに、アンテナ部aの一端側(図5において右端側)を支軸a′を介して回動自在に軸支して構成されている。アンテナ部aがこのように回動自在に支持され、かつ、弾性部材30上に載置されていると、アンテナ部aの上面に強い力が加えられたときには、アンテナ部aは上下に自由に揺動(スイング)でき、その強い力を効率よく吸収することができる。このため、アンテナ部a及び非接触券C等の媒体をその強い力から保護することができる。なお、弾性部材30の代りに上記図4に示されるようなばね部材用いることもできる。
【0027】
図6は、本発明の吸収機構の他の例を示すもので、上記図3に示される弾性部材30の代りにエアークッション32が用いられている。このエアークッション32の場合も、アンテナ部aの上面に強い力が加えられたときには、アンテナ部aは上下,左右,前後に自由に揺動(スイング)でき、その強い力を効率よく吸収することができる。このため、アンテナ部a及び非接触券C等の媒体をその強い力から保護することができる。なお、このエアークッション32の代りに袋体の中に水や油等の液体の封入されたクッションとすることもできる。
【0028】
なお、上述の例では、非接触型ICカード処理装置の本体として改札機本体Gの例を示したが、非接触券Cを処理する装置であればその種類は問わない。例えば、駅の売店に設置される支払機や無人駅に設置されるリーダライタ処理機等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態に係る改札機本体を構成する一対の筐体のうちの一方の筐体の斜視図である。
【図2】制御器及び非接触券のブロック図である。
【図3】アンテナ部の詳細図である。
【図4】アンテナ部の他の例を示す詳細図である。
【図5】アンテナ部の他の例を示す詳細図である。
【図6】アンテナ部の他の例を示す詳細図である。
【符号の説明】
【0030】
G 非接触式自動改札機の本体(改札機本体)
H 筐体
D1 ,D2 ドア
P 改札通路
S,S′ 人間検知器
a アンテナ部
5 制御器
2 センサ取付ボックス
3 スピーカ
4 表示画面
C 非接触券
27 リーダラライタ
27a アンテナ
30 弾性部材(吸収機構)
31 ばね部材(吸収機構)
32 エアークッション(吸収機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触型ICカード処理装置の本体のアンテナ部に非接触型ICカードがタッチ又はかざされたときに、その非接触型ICカード処理装置の本体とその非接触型ICカードとの間でデータ授受を行って所定の処理を行う非接触型ICカード処理装置において、
前記アンテナ部は、そのアンテナ部に外部から力が加えられたときにその力を吸収する吸収機構が設けられていることを特徴とする非接触型ICカード処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触型ICカード処理装置において、吸収機構は、アンテナ部を弾性部材に載置して、又はそのアンテナ部を弾性部材で支持して構成されていることを特徴とする非接触型ICカード処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の非接触型ICカード処理装置において、非接触型ICカード処理装置の本体は、非接触式自動改札機の本体からなることを特徴とする非接触型ICカード処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−4235(P2006−4235A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180800(P2004−180800)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】