説明

非接触式情報処理装置および非接触式カード状媒体発行機

【課題】非接触式通信アンテナの電磁波放射機能が正常に動作するのか否かを簡易かつ迅速に判定することが可能な非接触式情報処理装置および非接触式カード状媒体発行機を提供する。
【解決手段】電磁誘導によりカード状媒体と非接触で情報を記録又は再生する非接触式情報処理手段と、カード状媒体が搬送される搬送路と、を有するカードリーダ1であって、非接触式情報処理手段は、カード状媒体に設けた媒体側非接触式通信アンテナと情報の送受信が可能な装置側非接触式通信アンテナ23を備え、装置側非接触式通信アンテナ23の動作の可否を検知する検知手段が設けられ、検知手段は、装置側非接触式通信アンテナ23を制御する制御回路(制御基板40)とは独立した制御部を有するとともに、装置側非接触式通信アンテナ23から発生する電磁波を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば銀行カードやクレジットカードなどの各種カード状媒体に対して非接触で情報の記録又は再生を行う非接触式情報処理装置および非接触式カード状媒体発行機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金融機関などで使用され、キャッシュレスや個人認証などを実現するカードとして、表面に磁気ストライプが形成された磁気カードや、内部に集積回路チップ(ICチップ)が埋設されるとともに、表面にIC端子が配置されたICカードがある。また、RF(Radio Frequency)ICチップと通信アンテナ(アンテナコイル)が埋設され、電磁誘導によって情報の授受が行われる非接触式ICカードも広く普及しつつある。非接触式ICカードは、情報の記録又は再生にあたって、カード表面の汚れや磨耗等の影響を受けない利点がある。
【0003】
磁気カードや接触式ICカードに対する情報の記録又は再生は、磁気ヘッドやIC接点を備えた磁気カードリーダによって行われる一方、非接触式ICカードに対する情報の記録又は再生は、非接触式通信アンテナが設けられた非接触式カードリーダによって行われる。また、この非接触式カードリーダが搭載されたカード発行機は、非接触式ICカードのリードライト機能を有する非接触式カード状媒体発行機となる。このような非接触式カード状媒体発行機では、ゲート口に挿入された非接触式ICカードは、非接触式通信アンテナが設置された場所までモータ搬送され、電磁誘導によって情報の送受信(非接触ICカード通信)が行われる。そして、通信終了後、非接触式ICカードはゲート口から排出される。
【0004】
ここで、電磁誘導によって情報の送受信を行う方式は、磁界を介して通信を行うものであり、その磁界の様子を目視することはできない。そのため、非接触式通信アンテナの機能が正常に動作しているのか否かを判定する技術が各種開発されている。たとえば、HOST部に相当する箇所(上位装置など)において、実際に通信を行った際のデータの有無を確認することによって判定するものがある。また、非接触式カードリーダ単体で判定を行う際には、非接触式通信アンテナの機能を制御する非接触用制御ICから所定回路を介してCPUポートに信号を送り、判定用LEDなどを別途実装し、この判定用LEDのON/OFFを確認することで判定するものもある。さらに、近年になって、非接触式通信アンテナ自体にアンテナ検査用ICタグを付加し、非接触用制御ICとアンテナ検査用ICタグとの間でIDコードのやりとりが行われることによって、非接触式通信アンテナの動作の可否を判定する技術が開発されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2008−42452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、HOST部やメインCPU、或いはアンテナ検査用ICタグなどを用いて、非接触ICカード通信機能が発揮されているかを判定する従来の技術では、非接触式通信アンテナの不具合を簡易に特定することが難しい。具体的には、上述したHOST部を用いた判定の場合、実際に通信を行った際のデータが無かったとしても、それが非接触式通信アンテナの不具合なのか、それとも非接触用制御IC,メインCPUの故障なのか、メンテナンスマン等が簡易に特定することは難しい。また、上述した判定用LEDのON/OFFを用いた判定でも同様に、判定用LEDがOFFになったとき、それが非接触式通信アンテナの不具合なのか、それとも非接触用制御ICの故障なのか、メンテナンスマン等が簡易に特定することは難しい。この点、上述した特許文献1のアンテナ検査用ICタグを用いた判定によれば、IDコードのやりとりにより、非接触式通信アンテナの異常状態を検出することができる。しかし、IDコードのやりとりという追加的な情報処理が必要になるため、検出された非接触式通信アンテナの異常状態は、IDコードの情報処理エラーが原因である可能性も否定できない。このように、従来の技術では、非接触式カードリーダに設置された非接触式通信アンテナの電磁波放射機能が正常に動作するのか否かを簡易かつ迅速に特定することは困難であった。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触式通信アンテナの電磁波放射機能が正常に動作するのか否かを簡易かつ迅速に判定することが可能な非接触式情報処理装置および非接触式カード状媒体発行機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0009】
(1) 電磁誘導によりカード状媒体と非接触で情報を記録又は再生する非接触式情報処理手段と、前記カード状媒体が搬送される搬送路と、を有する非接触式情報処理装置であって、前記非接触式情報処理手段は、前記カード状媒体に設けた媒体側非接触式通信アンテナと情報の送受信が可能な装置側非接触式通信アンテナを備え、前記装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を検知する検知手段が設けられ、前記検知手段は、前記装置側非接触式通信アンテナを制御する制御回路とは独立した制御部を有するとともに、前記装置側非接触式通信アンテナから発生する電磁波を検知することを特徴とする非接触式情報処理装置。
【0010】
本発明によれば、装置側非接触式通信アンテナが設けられた非接触式情報処理装置に、その装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を検知する検知手段が設けられており、この検知手段は、装置側非接触式通信アンテナを制御する制御回路とは独立した制御部を有するとともに、装置側非接触式通信アンテナから発生する電磁波を検知することが可能なので、非接触式通信アンテナの電磁波放射機能が正常に動作するか否かを簡易かつ迅速に判定することができる。
【0011】
すなわち、非接触式通信アンテナから放射される電磁波を検知手段によって検知できれば、非接触式通信アンテナの電磁波放射機能は正常に動作していることが分かるし、逆に、検知手段によって電磁波を検知できなければ、メンテナンスマンは非接触式通信アンテナの故障を念頭におきながら、迅速なメンテナンスを行うことができる。このように、本発明は、検知手段によって、実際に非接触式通信アンテナから電磁波が放射されているか否かを簡易かつ迅速に判定することができる。また、本発明における検知手段は、装置側非接触式通信アンテナを制御する制御回路(例えば非接触用制御ICなど)とは独立した制御部によって動作するので、その制御回路の故障等とは無関係に、電磁波検知機能を発揮することができる。
【0012】
(2) 前記検知手段は、前記装置側非接触式通信アンテナから発生する電磁波を検知する電磁波検知用アンテナと、装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を視認するための電磁波検知用LEDと、を有し、前記制御部は、前記電磁波検知用アンテナで得られた電流を整流して前記電磁波検知用LEDに供給する整流回路を備えることを特徴とする非接触式情報処理装置。
【0013】
本発明によれば、上述した検知手段には、電磁波を検知する電磁波検知用アンテナと、装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を視認するための電磁波検知用LEDとが設けられ、上述した制御部には、電磁波検知用アンテナで得られた電流を整流して電磁波検知用LEDに供給する整流回路が設けられているので、電磁波検知用LEDは整流回路を通じて電力供給を受けることができる。したがって、検知手段を動作させるために外部電源や電池が不要になり、より簡易な構成で、装置側非接触式通信アンテナの電磁波放射機能が正常に動作するか否かを判定することができる。また、電磁波検知用LEDや整流回路は、廉価に入手可能なので、製造コスト削減に寄与することもできる。
【0014】
(3) 前記制御部は、前記電磁波検知用LEDへの電流供給量を調整する可変抵抗を備えることを特徴とする非接触式情報処理装置。
【0015】
本発明によれば、上述した制御部には、電磁波検知用LEDへの電流供給量を調整する可変抵抗が設けられているので、電磁波検知用LEDに過大電流が流れるのを防ぐ本来の目的に加えて、電磁波の強弱による電流供給量を可変できることにより電磁波検知用LEDの明るさ調整を行うことができる。
【0016】
(4) 前記非接触式情報処理装置全体を統合的に制御するCPUの動作の可否を視認するためのCPU検知用LEDが設けられ、前記CPU検知用LEDによって、前記CPUの動作の可否を視認するとともに、前記電磁波検知用LEDによって、装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を視認することを特徴とする非接触式情報処理装置。
【0017】
本発明によれば、非接触式情報処理装置には、装置全体を統合的に制御するCPU(メインCPU)の動作の可否を視認するためのCPU検知用LEDが設けられており、このCPU検知用LEDと上述した電磁波検知用LEDとによって、CPU及び装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を視認することができるので、メンテナンスマンは、より簡易かつ迅速に、不具合箇所を特定することができる。
【0018】
(5) 前記検知手段は、前記装置側非接触式通信アンテナの少なくとも一部を囲むように配置された電磁シールドが形成されていない場所に取り付けられていることを特徴とする非接触式情報処理装置。
【0019】
本発明によれば、上述した検知手段は、装置側非接触式通信アンテナの少なくとも一部を囲むように配置された電磁シールドが形成されていない場所に取り付けられているので、電磁シールドの存在に起因した磁束の乱れによって、検知エラーが生じるのを防ぐことができる。
【0020】
(6) 請求項1から5のいずれか記載の非接触式情報処理装置を備え、前記カード状媒体の発行を行う非接触式カード状媒体発行機。
【0021】
本発明によれば、装置側非接触式通信アンテナの電磁波放射機能が正常に動作するか否かを簡易かつ迅速に判定することが可能な非接触式カード状媒体発行機を提供することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を検知する検知手段によって、装置側非接触式通信アンテナの電磁波放射機能が正常に動作するか否かを簡易かつ迅速に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係る非接触式カード発行機100(非接触式カード状媒体発行機の一例)の構成を示す図である。特に、図1(a)は、非接触式カード発行機100を左前から見たときの外観側面図であって、図1(b)は、非接触式カード発行機100を右前から見たときの外観側面図である。図2(a)は、図1(b)に示す非接触式カード発行機100から筐体のカバー102を取り外した状態を示す図であり、図2(b)は、図2(a)の一部を拡大した拡大図である。また、図3(a)は、図2(a)に示す非接触式カード発行機100を右後から見たときの状態を示す図であり、図3(b)は、図3(a)の一部を拡大した拡大図である。カードリーダ1は、例えば(ATM等(ホスト)など)の上位装置に接続され、所定のインターフェースを介して上位装置からコマンドを受信したり、上位装置へコマンド実行結果等を送信したりする。また、カードリーダ1は、磁気ヘッド(図示せず)や装置側非接触式通信アンテナ23を備え、磁気カードと非接触式ICカードCの両方を処理可能な複合機となっている。
【0025】
なお、図1(a)及び図1(b)に示すように、互いに直交する3方向のそれぞれをX方向、Y方向およびZ方向とするとともに、X1方向を右、X2方向を左、Y1方向を前、Y2方向を後ろ、Z1方向を上、Z2方向を下とする。
【0026】
図1〜図3において、非接触式カード発行機100は、内部に収納されたカードを発行する機能を備えており、たとえば、ホテルのフロントやコンビニエンスストアのレジカウンタ等に設置されて使用される。また、不要、使用済みあるいはエラーとなったカード等を回収する機能も備えている。
【0027】
非接触式カード発行機100は、非接触式情報処理装置の一例としてのカードリーダ1と、カードの発行や回収が行われるカード発行回収部101とを有している。カードリーダ1は、カードを挿入するためのカード挿入口11(カードを排出するときにはカード排出口となる)、カード挿入口11から後方に向けてカードが搬送される搬送路、カード上の磁気ストライプに摺接させカードに対してリードライト処理(情報の記録又は再生)を行う磁気ヘッドや装置側非接触式通信アンテナ23などを備えている。なお、磁気ヘッドを含めカードリーダ1の全体を制御するCPU等が実装された回路基板22(図4参照)は、カードリーダ1の下方に配置されている。また、特に図示しないが、駆動モータの回転数を検出するエンコーダや、カードリーダ1内に挿入されたカードの端部等を検知する位置検知センサなども設けられている。
【0028】
磁気ヘッドは、カード表面上の磁気ストライプに接触・摺動することによって、その磁気ストライプに記録された磁気データを読み取り、その磁気データに係る再生信号を生成するものである。一方、装置側非接触式通信アンテナ23は、カードに設けた(埋設された)非接触式通信アンテナと情報の送受信が可能であって、その非接触式通信アンテナを通じて、電磁誘導によりカードに埋設されたICチップとの通信を行うものである。また、搬送路の近傍かつ上方に配置され、制御基板40に実装された非接触用制御IC40aによって制御される。
【0029】
カード発行回収部101は、発行前の複数のカードが積層されて収納されるカード収納機能と、不要なカードを回収するためのカード回収機能とを有しており、また、収納されているカードをカードリーダ1に向かって送り出す排出機構なども有している(図示省略)。具体的には、カード発行回収部101は、発行前の複数のカードが積層されて収納されるカード収納部101Aと、不要なカードを回収するためのカード回収庫101Bとを有している。
【0030】
カード発行時には、まず、カード排出機構がカード発行回収部101に収納されたカードをカードリーダ1に向かって送り出す。カードリーダ1では、たとえばカードに所定の情報が記録される。また、情報が記録されたカードは、非接触式カード発行機100からカード挿入口11を通じて排出される(発行される)。
【0031】
また、たとえば非接触式カード発行機100に挿入され、カードリーダ1で情報の通信が行われた結果、回収が必要であると判断されたカードは、カードリーダ1からカード発行回収部101に向かって排出される。カードリーダ1から排出されるカードは、図示しないガイド部材によってカード回収庫101Bへ案内されて回収される。カード回収庫101Bは、カードリーダ1よりも下側に配置されているため、カードリーダ1から排出されるカードは、自重でカード回収庫101Bの中に落下する。
【0032】
図1(b)に示すカバー102は樹脂素材で構成されており、このカバー102を取り除くと、図2(a)に示す状態になる。その拡大図である図2(b)において、カードリーダ1の右側面にはローラ12、16があり、ローラ12とローラ16との間には、樹脂素材から構成される電磁波検知回路設置板60が設けられている。この電磁波検知回路設置板60は、前後上下(図1でいうY1,Y2,Z1,Z2)に広がる板であって、左右方向(図1でいうX1,X2)に厚みがある。
【0033】
図2(a)および図2(b)に示すように、カードリーダ1の上方には、装置側非接触式通信アンテナ23を制御するための非接触用制御IC40aが実装された制御基板40が設置されている。装置側非接触式通信アンテナ23は、挿入されるカードと平行になるように、制御基板40の下方に設置されている。また、図2(a)に示すように、装置側非接触式通信アンテナ23を囲むように電磁シールド30が配置されている。電磁シールド30は、装置側非接触式通信アンテナ23の周りを全て囲っているわけではなく、カードリーダ1では、装置側非接触式通信アンテナ23の前方、左方、後方を囲っている。すなわち、装置側非接触式通信アンテナ23の右方は電磁シールドが形成されていない場所になり、この場所に、上述した電磁波検知回路設置板60が取り付けられている。
【0034】
ここで、本発明に係るカードリーダ1では、電磁波検知回路設置板60の右側面に、電磁波検知回路50が設けられている。電磁波検知回路50は、装置側非接触式通信アンテナ23の動作の可否を検知する検知手段の一例として機能する回路である。回路構成については後述する。なお、図2および図3の電磁波検知回路50を示す図は、直方体で、中央付近に左右方向に穴が開いた図となっているが、これらはあくまで設置場所を示す概念図であって、その形状や大きさの如何は問わない(丸みを帯びていていもよいし、中央付近に穴が開いていなくてもよい)。また、本実施形態では、電磁波検知回路50が設けられた樹脂素材の電磁波検知回路設置板60を、装置側非接触式通信アンテナ23の右方に配置することとしたが、これを前方や左方、後方に設けても構わない。また、カードリーダ1の外観は、基本的に金属体で覆われるが、電磁波検知回路設置板60とカバー102を樹脂素材とすることによって、電磁波検知回路50において電磁誘導の特性が変化することを防いでいる。さらに、電磁シールド30が形成されていない場所であれば、電磁波検知回路50のみを配置してもよい(電磁波検知回路設置板60は必ずしも必要ない)。
【0035】
図4は、カードリーダ1の電気的構成を示すブロック図である。図4において、カードリーダ1は、カードリーダ1の全体を制御するメインCPU22a等が実装された回路基板22と、非接触用制御IC40aが実装された制御基板40とを有している。回路基板22には、カードリーダ1全体を統合的に制御するメインCPU22aと、図示しないがROMやRAM等のメモリが設けられている。メインCPU22aには、回路基板22の動作確認用のLED22bが接続されており、これにより、メインCPU22aの動作の可否を視認することができる。このLED22bは、CPU検知用LEDの一例として機能するとともに、可変抵抗22cを介して接地されている。一方で、制御基板40には、装置側非接触式通信アンテナ23が電気的に接続されており、非接触式ICカードCと情報の授受を行うことができるようになっている。また、制御基板40に実装された非接触用制御IC40aは、メインCPU22aからの指令に従って、装置側非接触式通信アンテナ23を制御する。
【0036】
ここで、本実施形態に係るカードリーダ1では、上述したように装置側非接触式通信アンテナ23の近くに電磁波検知回路50が設けられた樹脂素材の電磁波検知回路設置板60が配置されている(図2(b)参照)。電磁波検知回路50は、装置側非接触式通信アンテナ23から発生する電磁波(図中の点線矢印を参照)を検知する電磁波検知用アンテナ51と、装置側非接触式通信アンテナ23の動作の可否を視認するためのLED54とを有しており、このLED54は、電磁波検知用LEDの一例として機能する。また、本実施形態では、整流回路52、コンデンサ53、可変抵抗55を有している。整流回路52は、電磁波検知用アンテナ51で得られた誘導電流を整流してLED54に電流供給する整流機能を有しており、コンデンサ53は、整流された電流のリップルを抑制したり、パルス状の電流を平滑化したりする機能を有している(非接触用制御IC40aからの信号源はパルス源を含んでいることがある)。また、可変抵抗55は、LED54への過大電流を防止する機能とともに、LED54への電流供給量を調整し、電磁波の強弱による電流供給量を可変できることにより電磁波検知用LEDの明るさを調整する機能も有している。なお、図4において二点鎖線で示すように、電磁波検知回路50は、メインCPU22a、非接触用制御IC40a等とは電気的に独立している。また、電磁波検知用アンテナ51、整流回路52、コンデンサ53、可変抵抗55は、LED54を制御する「制御部」の一例として機能する。
【0037】
図4に示すLED22bとLED54を有するカードリーダ1によれば、LED22bによって、メインCPU22aの動作の可否を視認でき、また、LED54によって、装置側非接触式通信アンテナ23の動作の可否を視認できる。このように、メインCPU22aが正常動作していることを前提として、装置側非接触式通信アンテナ23が電磁波放射機能を正常に発揮しているか、非接触用制御ICが正常に動作しているか、をLED54によってモニタリングすることによって、メンテナンスマンは、より簡易かつ迅速に不具合箇所を特定することができる。
【0038】
図5は、電磁波検知回路50によって装置側非接触式通信アンテナ23からの電磁波を検知している様子を示す概念図である。
【0039】
図5において、カードリーダ1は、装置側非接触式通信アンテナ23から発せられた電磁波の磁束を用いて非接触式ICカードCとの通信を行う(図中の点線矢印参照)。これは、電磁誘導方式によるもので、電磁波の磁束の方向性についてはインダクタンス成分に依存するため、意図的に電磁波の磁束の方向性を変えることができる。本実施形態では、装置側非接触式通信アンテナ23は、非接触式ICカードCと対面方向となるが、電磁波検知回路50の基板(電磁波検知用アンテナ51)とは垂直面に設置される。装置側非接触式通信アンテナ23から発せられる電磁波の磁束は、中心に近い位置ほど強磁界であるため、中心に近いほど電磁波の磁束は得られやすい。そこで、電磁波検知回路50の基板は、中心に近い電磁波の磁束を得るため、また、容易に設置が可能であるため、図5に示すような位置(装置側非接触式通信アンテナ23と非接触式ICカードCの間の中央付近)に設置する。これにより、非接触式ICカードCとの通信時の電磁波の磁束とは方向性は異なるが、LED54を動作させるための電圧を得ることができる。
【0040】
図6は、本実施形態に係るカードリーダ1において非接触式ICカードCとの通信確認を行う流れを示すフローチャートである。なお、本実施形態では、非接触式ICカードCが、カードリーダ1の搬送路内の所定の位置に到達した場合に、装置側非接触式通信アンテナ23を動作するように制御されている。もし、装置側非接触式通信アンテナ23が常時、動作している状態とした場合には、非接触式ICカードCを所定の位置へ搬送する途中で、通信可能な状態となり、通信を行ってしまう場合が生じる。しかし、非接触式ICカードCが搬送されている状態なので、不安定な状態で通信を行うことになり、エラーを発生し易い状態となってしまう。これを回避するために、上述のとおり、非接触式ICカードCが所定の位置に停止した後、装置側非接触式通信アンテナ23を動作させて、非接触式ICカードCと通信を行うようにしている。また、費用面等においても、節約することができる。
【0041】
図6において、まず、メインCPU22a(図中では「制御CPU」と記載)の駆動を行う(ステップS1)。その結果、メインCPU22aから出力される信号源の命令によって、LED22b(図中では「CPU検知用LED」と記載)が点灯するか否かが、メンテナンスマン等によって判断される(ステップS2)。LED22bが点灯しない場合には、ハードウェア上の問題またはインターフェース間でのエラーが考えられるため、再動作を行って、メインCPU22aが駆動するか否かを確認する(ステップS3)。それでも点灯しない場合には(ステップS3:NO)、制御不良であるため処理を中止する(中止(1))。
【0042】
一方、ステップS2でLED22bが点灯した場合(ステップS2:YES)、或いは、再動作を行ってメインCPU22aが駆動し、LED22bが点灯した場合には(ステップS3:YES)、非接触用制御IC40aに含まれるCPU(図中では「非接触制御CPU」と記載)を駆動する(ステップS4)。なお、この非接触制御CPUは、電力出力CPUであり、非接触式ICカードCとの通信を行うための機能を有するものである。その後、非接触制御CPUの駆動、すなわちLED54が点灯したか否かがメンテナンスマン等によって判断され(ステップS5)、点灯していない場合には(ステップS5:NO)、装置側非接触式通信アンテナ23の不具合か(結線不良等)、非接触用制御IC40aの不具合(非接触用制御IC40aから適正な電力が出力されていないか、電力が不十分であるか等)であるので、処理を中止する(中止(2))。
【0043】
一方、ステップS5においてLED54が点灯した場合には(ステップS5:YES)、非接触用制御IC40aから適正な電力が出力され、装置側非接触式通信アンテナ23が電磁波放射機能を正常に発揮していることが確認できるので、非接触式ICカードCとの通信を開始する(ステップS6)。そして、読み取りができたか否かが判断され(ステップS7)、非接触式ICカードCのデータ読み取りができなければ(ステップS7:NO)、ステップS6に戻って再度通信を行う一方、非接触式ICカードCのデータ読み取りに成功すれば(ステップS7:YES)、通信が完了したとして(ステップS8)、処理を終了する。
【0044】
また、ステップS6、ステップS7を複数回繰り返し、非接触式ICカードCのデータ読み取りができなければ、例えば、カード不良と判断し、非接触式ICカードCをカード挿入口から排出する。
【0045】
[実施形態の主な効果]
以上説明したように、本実施形態に係る非接触式カード発行機100およびカードリーダ1によれば、メンテナンスマンは、LED54が点灯しているか否かを視認することで(図6のステップS5)、装置側非接触式通信アンテナ23の故障または非接触用制御ICの不具合を念頭におきながら迅速なメンテナンスを行うことができる。また、LED54は、制御基板40とは独立して動作するので、制御基板40の非接触用制御IC40aの不具合とは別に、電磁波検知機能を発揮することができる(たとえば非接触用制御IC40aは正常に動作しているが、装置側非接触式通信アンテナ23から電磁波が発せられてないような不具合も特定できる)。
【0046】
また、図4のブロック図に示すように、電磁波検知回路50は、外部からの電源や電池は不要であるので、より簡易な構成で、装置側非接触式通信アンテナ23の電磁波放射機能が正常に動作するか否かを判定することができる。また、LED54を機種の見やすい位置に設置することで、メンテナンスマンは動作確認が容易になるし、LED54の光源の強弱によって、磁界の強弱も確認できる。
【0047】
さらに、図6のステップS2とステップS5で示すように、2個のLED22bおよびLED54を利用することで、メインCPU22aおよび装置側非接触式通信アンテナ23の動作の可否を視認することができるので、メンテナンスマンは、より簡易かつ迅速に不具合箇所を特定することができる(問題箇所の早期特定に繋がる)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上説明したように、本発明は、カードリーダの装置側非接触式通信アンテナの電磁波放射機能が正常に動作するか否かを、簡易かつ迅速に判定するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る非接触式カード発行機の構成を示す図である。
【図2】図1(b)に示す非接触式カード発行機から筐体のカバーを取り外した状態を示す図である。
【図3】図2(a)に示す非接触式カード発行機を右後から見たときの状態を示す図である。
【図4】カードリーダの電気的構成を示すブロック図である。
【図5】電磁波検知回路によって装置側非接触式通信アンテナからの電磁波を検知している様子を示す概念図である。
【図6】本実施形態に係るカードリーダにおいて非接触式ICカードとの通信確認を行う流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0050】
1 カードリーダ
11 カード挿入口
12,16 ローラ
22 回路基板
22a メインCPU
22b LED
23 装置側非接触式通信アンテナ
50 電磁波検知回路
51 電磁波検知用アンテナ
52 整流回路
53 コンデンサ
54 LED
55 可変抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導によりカード状媒体と非接触で情報を記録又は再生する非接触式情報処理手段と、前記カード状媒体が搬送される搬送路と、を有する非接触式情報処理装置であって、
前記非接触式情報処理手段は、前記カード状媒体に設けられた媒体側非接触式通信アンテナと情報の送受信が可能な装置側非接触式通信アンテナを備え、
前記装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を検知する検知手段が設けられ、
前記検知手段は、前記装置側非接触式通信アンテナを制御する制御回路とは独立した制御部を有するとともに、前記装置側非接触式通信アンテナから発生する電磁波を検知することを特徴とする非接触式情報処理装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記装置側非接触式通信アンテナから発生する電磁波を検知する電磁波検知用アンテナと、装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を視認するための電磁波検知用LEDと、を有し、
前記制御部は、前記電磁波検知用アンテナで得られた電流を整流して前記電磁波検知用LEDに供給する整流回路を備えることを特徴とする請求項1記載の非接触式情報処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記電磁波検知用LEDへの電流供給量を調整する可変抵抗を備えることを特徴とする請求項2記載の非接触式情報処理装置。
【請求項4】
前記非接触式情報処理装置全体を統合的に制御するCPUの動作の可否を視認するためのCPU検知用LEDが設けられ、
前記CPU検知用LEDによって、前記CPUの動作の可否を視認するとともに、前記電磁波検知用LEDによって、装置側非接触式通信アンテナの動作の可否を視認することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の非接触式情報処理装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記装置側非接触式通信アンテナの少なくとも一部を囲むように配置された電磁シールドが形成されていない場所に取り付けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の非接触式情報処理装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか記載の非接触式情報処理装置を備え、前記カード状媒体の発行を行う非接触式カード状媒体発行機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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