説明

非接触式ICカード、非接触式携帯可能電子装置及び通信装置

【課題】 衝突防止処理にかかる時間を短縮できる非接触式ICカード、非接触式携帯可能電子装置及び通信装置を提供する。
【解決手段】 非接触式携帯可能電子装置は、外部と非接触式通信が可能な通信部と、前記通信部を介して入力される初期応答要求の回数を計上する計数部と、初期応答要求の回数を登録可能な記憶部と、制御部とを備える。制御部は、初期応答可能な状態に移行した後に通信部を介して初期応答要求が入力される際、計数部にて計上された初期応答要求の回数が、記憶部に登録されている初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断する(S4)。制御部は、上記計上された回数が上記登録されている回数と一致した場合、通信部を介して外部に初期応答する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非接触式ICカード、非接触式携帯可能電子装置及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯可能電子装置としてICカードが使用されている。ICカードは、カード本体、ICチップ及び通信部を備えている。ICカードは、接触通信、非接触通信(無線通信)、又は接触通信及び非接触通信の双方の機能を有している。
【0003】
非接触式ICカードの通信方式は、国際規格であるISO/IEC 14443で標準化されているが、上記規格では、複数枚の非接触式ICカードを同時にリーダライタにかざした場合でも、何れかの非接触式ICカードが優先的に選択できるような仕組みとなっている。
【0004】
例えば、ISO/IEC 14443のType−Bカードでは、リーダライタは、非接触式ICカードを検出するために「REQBコマンド」を非接触式ICカードに送信し、選択したい非接触式ICカードの応用分野(交通用途や金融用途など)を識別する「応用分野識別子」を指定することが可能である。
【0005】
ISO/IEC 14443では、リーダライタが応用分野識別子を指定すると、同じ応用分野識別子を有する非接触式ICカードだけがリーダライタに応答する。なお、応用分野識別子を指定しない場合には、全ての非接触式ICカードがリーダライタに応答する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ISO/IEC 14443
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記各応用分野では、現実に、複数の異なるアプリケーションが使用されている。このため、リーダライタが「REQBコマンド」を送信して応用分野識別子を指定する手法では、非接触式ICカードが通信の対象であるのかどうか識別するのに時間がかかってしまう。このため、衝突防止処理にかかる時間を短縮できる技術が求められている。
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その目的は、衝突防止処理にかかる時間を短縮できる非接触式ICカード、非接触式携帯可能電子装置及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る非接触式ICカードは、
外部と非接触式通信が可能な通信部と、前記通信部を介して入力される初期応答要求の回数を計上する計数部と、初期応答要求の回数を登録可能な記憶部と、制御部と、を具備したICモジュールと、
前記ICモジュールを収納したICカード本体と、を備え、
前記制御部は、初期応答可能な状態に移行した後に前記通信部を介して前記初期応答要求が入力される際、前記計数部にて計上された前記初期応答要求の回数が、前記記憶部に登録されている前記初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断し、前記計上された回数が前記登録されている回数と一致した場合、前記通信部を介して外部に初期応答する。
【0009】
また、一実施形態に係る非接触式携帯可能電子装置は、
外部と非接触式通信が可能な通信部と、
前記通信部を介して入力される初期応答要求の回数を計上する計数部と、
初期応答要求の回数を登録可能な記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、初期応答可能な状態に移行した後に前記通信部を介して前記初期応答要求が入力される際、前記計数部にて計上された前記初期応答要求の回数が、前記記憶部に登録されている前記初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断し、前記計上された回数が前記登録されている回数と一致した場合、前記通信部を介して外部に初期応答する。
【0010】
また、一実施形態に係る通信装置は、
外部と非接触式通信が可能な通信部と、前記通信部を介して入力される初期応答要求の回数を計上する計数部と、初期応答要求の回数を登録可能な記憶部と、制御部と、を備えた非接触式携帯可能電子装置であって、前記制御部は、初期応答可能な状態に移行した後に前記通信部を介して前記初期応答要求が入力される際、前記計数部にて計上された前記初期応答要求の回数が、前記記憶部に登録されている前記初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断し、前記計上された回数が前記登録されている回数と一致した場合、前記通信部を介して外部に初期応答する非接触式携帯可能電子装置との間で非接触通信可能な通信装置であって、
前記非接触式携帯可能電子装置と非接触式通信が可能な通信モジュールと、
前記通信モジュールを介して前記非接触式携帯可能電子装置に前記初期応答要求を出力し、前記通信モジュールを介して前記非接触式携帯可能電子装置から前記初期応答があるのかどうか判断し、前記初期応答がある場合、前記通信モジュールを介して前記非接触式携帯可能電子装置との間で非接触通信を開始する処理モジュールと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るICカードと、ICカードとの通信機能を有する外部装置としてのICカード処理装置と、を備えた通信システムを概略的に示すブロック図である。
【図2】図1に示したICカードの構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】上記ICカードの記憶部に登録された、アプリケーションによる初期応答要求の回数の値を示すテーブルである。
【図4】上記ICカード及びICカード処理装置間で行う通信方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】図4に続く、上記通信方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る非接触式ICカード及びICカード処理装置について詳細に説明する。
図1に示すように、非接触式携帯可能電子装置としての非接触式のICカード2及び非接触式携帯可能電子装置の処理装置としてのICカード処理装置1は、通信システムを形成している。
【0013】
ICカード処理装置1は、リーダライタ10、端末装置13、キーボード14、表示部としてのCRT(Cathode-Ray Tube)15、プリンタ16などを有している。端末装置13は、CPU、種々のメモリ及び各種インターフェースなどを有する装置により構成され、ICカード処理装置1全体の動作を制御するものである。端末装置13は、リーダライタ10によりICカード2へコマンドを送信する機能、ICカード2から受信したデータを基に種々の処理を行う機能などを有している。
【0014】
例えば、端末装置13は、リーダライタ10を介してICカード2にデータの書き込みコマンドを送信することによりICカード2内の不揮発性メモリにデータを書き込む。また、端末装置13は、ICカード2に読み取りコマンドを送信することによりICカード2からデータを読み出す。
【0015】
キーボード14は、ICカード処理装置1の操作員が操作する操作部として機能し、操作員により種々の操作指示やデータなどが入力される。CRT15は、端末装置13の制御により種々の情報を表示する。
【0016】
通信装置としてのリーダライタ10は、ICカード2と非接触式通信が可能な通信モジュール11及び処理モジュール12を備えている。リーダライタ10は、ICカード2との通信を行うためのインターフェース装置である。リーダライタ10では、ICカード2に対して電磁波により、データの送受信が行われるようになっている。このような機能によってリーダライタ10は、端末装置13による制御に基づいてICカード2の活性化(起動)、種々のコマンドの送信、及び送信したコマンドに対する応答の受信などを行なう。
【0017】
処理モジュール12は、通信モジュール11を介してICカード2に電磁波により電力供給を開始し、ICカード2の活性化を行い、ICカード2を初期応答可能な状態に移行させる。その後、処理モジュール12は、通信モジュール11を介してICカード2に初期応答要求を出力する。処理モジュール12は、通信モジュール11を介してICカード2に初期応答要求を出力し、通信モジュール11を介してICカード2から初期応答があるのかどうか判断する。すなわち、処理モジュール12は、ICカード2が通信の対象であるのかどうか識別する。
【0018】
このため、衝突防止処理にかかる時間を短縮することができる。また、処理モジュール12によりICカード2の識別が行われるため、従来と比較すると、ICカード2の返信が衝突する機会を大幅に減らすことができる。さらに、通信不要のICカード2との通信(交信)機会を最初の初期応答要求のみで排除することができるため、衝突防止処理にかかる時間を短縮することが可能である。なお、上記初期応答要求の詳細は後述する。
【0019】
上記初期応答がある場合、すなわち、ICカード2が通信の対象であると識別した場合、処理モジュール12は、通信モジュール11を介して上記ICカード2との間で非接触通信を開始する。この場合、上記のように、衝突防止処理にかかる時間を短縮することができ、ICカード2の返信が衝突する機会を大幅に減らすことができる。
【0020】
上記初期応答がない場合、すなわち、ICカード2が通信の対象ではないと識別した場合、処理モジュール12は、上記ICカード2との間で非接触通信を行わない。この場合、上記のように、通信不要のICカード2との通信(交信)機会を最初の初期応答要求のみで排除することができ、衝突防止処理にかかる時間を短縮することができる。
【0021】
図1及び図2に示すように、ICカード2は、カード本体3と、カード本体3に収納されたICモジュール4とを有している。ICモジュール4は、1つまたは複数のICチップ5と通信部としてのアンテナ回路27とが接続された状態で一体的に形成され、ICカード2のカード本体3内に埋設されている。また、ICモジュール4は、制御部21、不揮発性メモリ22、RAM(Random Access Memory)23、ROM(Read-Only Memory)24、計数回路25、乱数生成回路26、復調モジュール28及び変調モジュール29を備えている。
【0022】
ICカード2は、ICカード処理装置1などの上位機器から動作可能な磁界を受けた際、活性化される(動作可能な状態になる)ようになっている。ICカード2が非接触通信によりICカード処理装置1と通信する場合、ICカード2は、アンテナ回路27を介してICカード処理装置1からの電波を受信し、その電波から図示しない電源部により動作電源及び動作クロックを生成して活性化するように構成されている。リーダライタ10との間のデータの送受信は、アンテナ回路27を介して電磁誘導方式等により行われる。
【0023】
制御部21は、ICカード2全体の制御を司るものである。制御部21は、CPU(central processing unit)等のプロセッサにより構成されている。
【0024】
制御部21は、ROM24に格納された制御プログラムに従って受信データの解析や受信したデータを不揮発性メモリ22に格納するなどの処理を行う。また、制御部21は、受信データをRAM23内の送受信バッファに一旦書き込むようにしても良い。その後、制御部21は、受信データについて、不揮発性メモリ22との間で、データの読み出し、書き込み処理を行い、応答のための送信データを作成する。制御部21は、不揮発性メモリ22或いはROM24に記憶されている制御プログラムや制御データに基づいて動作することにより、種々の処理手段として機能する。
【0025】
プログラムメモリとしてのROM24は、予め制御用のプログラムや制御データなどが記憶されている不揮発性のメモリである。ROM24は、製造段階で制御プログラムや制御データなどが記憶された状態でICカード2内に組み込まれるものである。つまり、ROM24に記憶されている制御プログラムや制御データは、予めICカード2の仕様に応じて組み込まれる。
【0026】
揮発性メモリとしてのRAM23は、ワーキングメモリとして機能するメモリである。また、RAM23は、制御部21が処理中のデータなど一時保管する送信バッファ(バッファ)としても機能する。送信バッファは、不揮発性メモリ22、RAM23又はROM24の送信予定のデータを一時保管する。
【0027】
不揮発性メモリ22は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュROMなどの、データの書き込み及び書換えが可能なメモリにより形成されている。不揮発性メモリ22には、ICカード2の運用用途に応じて制御プログラムや種々のデータが書込まれ、記憶される。例えば、不揮発性メモリ22では、プログラムファイルやデータファイルなどが定義され、それらのファイルに制御プログラムや種々のデータが記憶される。不揮発性メモリ22は、初期応答要求の回数を登録可能な記憶部22aを有している。
【0028】
計数部としての計数回路25は、アンテナ回路27を介して入力される初期応答要求の回数を計上するものである。
乱数生成部としての乱数生成回路26は、乱数を生成するものである。乱数生成回路26は、制御部21からの指示に応じて乱数を生成するようになっている。このため、制御部21は、乱数生成回路26が生成した乱数を用いて記憶部22aに初期応答要求の回数を登録することができる。また、制御部21は、乱数生成回路26が生成した乱数を用いて記憶部22aに登録されている初期応答要求の回数を変更することができる。なお、ICカード2は、乱数生成回路26無しに形成されていてもよく、例えば、乱数を生成させるためのプログラムにより、制御部21に乱数生成部を形成しても良い。
【0029】
初期応答可能な状態に移行した後にアンテナ回路27を介して初期応答要求が入力される際、制御部21は、計数回路25にて計上された初期応答要求の回数が、記憶部22aに登録されている初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断する。制御部21は、上記計上された回数が上記登録されている回数と一致していると判断した場合、アンテナ回路27を介してリーダライタ10に初期応答するように構成されている。反対に、制御部21は、上記計上された回数が上記登録されている回数と一致していないと判断した場合、リーダライタ10に初期応答しないように構成されている。
【0030】
復調モジュール28は、アンテナ回路27にて変調されたデータを受信する。復調モジュール28は、受信したデータを復調し、制御部21に送信する。
変調モジュール29は、制御部21が作成した応答のためのデータを受信する。変調モジュール29は、受信したデータを変調し、アンテナ回路27に送信する。これにより、変調したデータは、アンテナ回路27を介してリーダライタ10に送信される。
【0031】
図2及び図3に示すように、この実施形態において、不揮発性メモリ22は、複数のアプリケーションを記憶可能である。記憶部22aに登録されている初期応答要求の回数は、各アプリケーションに付与されている。このように、記憶部22aは、初期応答要求の回数を、複数のアプリケーションに対応させて複数登録可能である。
図3に示す例では、7以下の自然数をnとすると、アプリケーションnに付与されている初期応答要求の回数の値は「n」である。
【0032】
例えば、リーダライタ10から入力される初期応答要求の回数がn回の場合、計数回路25は「n」を計上する。制御部21は、上記計上された回数が上記登録されている回数と一致していると判断し、リーダライタ10に初期応答する。これにより、制御部21はアプリケーションnを選択できるため、ICカード2はアプリケーションnを使用してリーダライタ10との間で通信を行うことができる。
【0033】
反対に、リーダライタ10から入力される初期応答要求の回数が8回以上の場合、例えば10回の場合、計数回路25は「10」を計上する。制御部21は、上記計上された回数が上記登録されている回数と一致していないと判断し、リーダライタ10に初期応答しないことになる。
【0034】
次に、ICカード処理装置1から初期応答要求が入力された場合の制御部21の制御方法について説明する。ここでは、上記のように構成されたICカード処理装置1及びICカード2間で行う、通信方法と併せて説明する。図4及び図5は、上記通信方法を説明するためのフローチャートである。
【0035】
図1、図2及び図4に示すように、通信システムによる通信方法がスタートすると、まず、ステップS1において、ICカード処理装置1の通信エリア内に存在するICカード2に、リーダライタ10から電力供給が行われ、ICカード2が活性化される。これにより、ICカード2は、初期応答可能な状態に移行する。
【0036】
次いで、ステップS2において、リーダライタ10の通信エリア内に存在するICカード2に、リーダライタ10から初期応答要求が入力される。続いて、ステップS3において、ICカード2毎、制御部21は、計数回路25にリーダライタ10から入力される初期応答要求の回数を計上させる。
【0037】
その後、ステップS4において、制御部21は、計数回路25にて計上された初期応答要求の回数が、記憶部22aに登録されている初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断する。
【0038】
上記計上された回数が上記登録されている回数と一致していない場合(ステップS4)、ステップS5に移行し、ステップS5において、制御部21は、リーダライタ10に初期応答するための設定を初期化し、上記通信方法は、ICカード2がリーダライタ10と通信すること無しに終了する。なお、この場合、制御部21は、リーダライタ10に応答しない。
【0039】
上記計上された回数が上記登録されている回数と一致している場合(ステップS4)、図1、図2及び図5に示すように、ステップS6に移行し、ステップS6において、制御部21は、リーダライタ10に初期応答する。
次いで、ステップS7において、リーダライタ10は、ICカード2からの初期応答(返信)に衝突が生じているのかどうか判断する。
【0040】
ICカード2からの初期応答に衝突が生じていない場合(ステップS7)、ステップS9に移行する。なお、ICカード2からの初期応答に衝突が生じていない場合とは、リーダライタ10の通信エリア内にICカード2が複数存在していない場合や、リーダライタ10の通信エリア内にICカード2が複数存在しているが各ICカード2の記憶部22aに登録されている初期応答要求の回数が異なっている場合が挙げられる。これにより、ステップS9において、リーダライタ10及びICカード2は通信を開始する。
【0041】
ICカード2からの初期応答に衝突が生じている場合(ステップS7)、ステップS8に移行する。なお、ICカード2からの初期応答に衝突が生じている場合とは、リーダライタ10の通信エリア内にICカード2が複数存在し、ICカード2間で、記憶部22aに登録されている初期応答要求の回数が一致している場合が挙げられる。
【0042】
この場合、ステップS8において、制御部21は、他の手法を用い、通信の対象となるICカード2を識別し、ステップS9に移行すればよい。ここで、上記他の手法としては、「REQBコマンド」で、選択したいICカード2の応用分野(交通用途や金融用途など)を識別する「応用分野識別子」を指定し、又はスロット番号を指定し、非接触ICカードを識別する手法が挙げられる。なお、上記他の手法は、上述した例に限定されるものではなく、従来から使用されている手法であってもよい。
次に、ステップS10において、制御部21は、通信終了であるのかどうか判断を続け、通信が終了すると、ステップS5に移行し、上記通信方法が終了する。
【0043】
以上のように構成された上記実施形態に係るICカード2及びICカード処理装置1によれば、リーダライタ10は、ICカード2に初期応答要求を出力し、ICカード2から初期応答があるのかどうか判断する。詳しくは、計数回路25が計上した初期応答要求の回数が記憶部22aに登録されている初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断し、上記計上された回数が上記登録されている回数と一致した場合に制御部21はリーダライタ10に初期応答し、一致しない場合に制御部21は無応答としている。これにより、リーダライタ10は、ICカード2が通信の対象であるのかどうか識別することができる。
【0044】
このため、衝突防止処理にかかる時間を短縮することができる。また、リーダライタ10(処理モジュール12)によりICカード2の識別が行われるため、従来と比較すると、ICカード2の返信が衝突する機会を大幅に減らすことができる。さらに、通信不要のICカード2との通信(交信)機会を最初の初期応答要求のみで排除することができるため、衝突防止処理にかかる時間を短縮することが可能である。
上記のことから、衝突防止処理にかかる時間を短縮できるICカード2及びICカード処理装置1を得ることができる。
【0045】
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【0046】
例えば、制御部21は、計数回路25に、計上する回数の最大値を設定可能であってもよい。そして、制御部21は、計数回路25が上記最大値を超えて初期応答要求の回数を計上したとの情報を取得した場合、計数回路25の上記回数の計上を初期化させ、リーダライタ10に初期応答するための設定を初期化してもよい。上記最大値は、例えば16又は32である。計数回路25に上記最大値を設定することにより、初期応答にかかる時間の短縮に寄与することができる。
【0047】
制御部21は、記憶部22aに初期応答要求の回数を登録したり、また、記憶部22aに予め登録されている初期応答要求の回数を変更したりしてもよい。
例えば、制御部21は、初期応答可能な状態に移行する毎に、初期応答可能な状態に移行するまでの間、記憶部22aに登録されている初期応答要求の回数を変更してもよい。すなわち、制御部21は、記憶部22aの初期応答要求の回数を増減させてもよい。また、制御部21は、初期応答可能な状態に移行するまでの間、記憶部22aに初期応答要求の回数を登録してもよい。
【0048】
初期応答要求の回数を登録可能な記憶部は、記憶部22aに限らず種々変形可能であり、例えばRAM23の一部で構成したり、図示しない他のメモリで構成されていてもよい。
【0049】
この発明の非接触式携帯可能電子装置は、ICカード2に限らず、通信機能を有した各種の非接触式携帯可能電子装置に適用することが可能である。この発明の通信装置は、リーダライタ10に限らず、各種の通信装置に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…ICカード処理装置、2…ICカード、3…カード本体、4…ICモジュール、5…ICチップ、10…リーダライタ、11…通信モジュール、12…処理モジュール、21…制御部、22…不揮発性メモリ、22a…記憶部、23…RAM、24…ROM、25…計数回路、26…乱数生成回路、27…アンテナ回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部と非接触式通信が可能な通信部と、前記通信部を介して入力される初期応答要求の回数を計上する計数部と、初期応答要求の回数を登録可能な記憶部と、制御部と、を具備したICモジュールと、
前記ICモジュールを収納したICカード本体と、を備え、
前記制御部は、初期応答可能な状態に移行した後に前記通信部を介して前記初期応答要求が入力される際、前記計数部にて計上された前記初期応答要求の回数が、前記記憶部に登録されている前記初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断し、前記計上された回数が前記登録されている回数と一致した場合、前記通信部を介して外部に初期応答する非接触式ICカード。
【請求項2】
複数のアプリケーションを記憶可能な他の記憶部をさらに備え、
前記記憶部は、前記初期応答要求の回数を、前記複数のアプリケーションに対応させて複数登録可能である請求項1に記載の非接触式ICカード。
【請求項3】
前記制御部は、
前記計数部に、計上する回数の最大値を設定可能であり、
前記計数部が前記最大値を超えて前記初期応答要求の回数を計上したとの情報を取得した場合、前記計数部の前記回数の計上を初期化させ、外部に前記初期応答するための設定を初期化する請求項1に記載の非接触式ICカード。
【請求項4】
前記制御部は、前記記憶部に前記初期応答要求の回数を登録及び変更可能である請求項1に記載の非接触式ICカード。
【請求項5】
前記制御部は、前記初期応答可能な状態に移行する毎に、前記初期応答可能な状態に移行するまでの間、前記記憶部に登録されている前記初期応答要求の回数を変更可能である請求項1に記載の非接触式ICカード。
【請求項6】
乱数を生成する乱数生成部をさらに備え、
前記制御部は、前記乱数生成部で生成した乱数を用いて前記記憶部に登録されている前記初期応答要求の回数を変更可能である請求項5に記載の非接触式ICカード。
【請求項7】
前記制御部は、前記初期応答可能な状態に移行するまでの間、前記記憶部に前記初期応答要求の回数を登録可能である請求項1に記載の非接触式ICカード。
【請求項8】
乱数を生成する乱数生成部をさらに備え、
前記制御部は、前記乱数生成部で生成した乱数を用いて前記記憶部に前記初期応答要求の回数を登録可能である請求項7に記載の非接触式ICカード。
【請求項9】
外部と非接触式通信が可能な通信部と、
前記通信部を介して入力される初期応答要求の回数を計上する計数部と、
初期応答要求の回数を登録可能な記憶部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、初期応答可能な状態に移行した後に前記通信部を介して前記初期応答要求が入力される際、前記計数部にて計上された前記初期応答要求の回数が、前記記憶部に登録されている前記初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断し、前記計上された回数が前記登録されている回数と一致した場合、前記通信部を介して外部に初期応答する非接触式携帯可能電子装置。
【請求項10】
外部と非接触式通信が可能な通信部と、前記通信部を介して入力される初期応答要求の回数を計上する計数部と、初期応答要求の回数を登録可能な記憶部と、制御部と、を備えた非接触式携帯可能電子装置であって、前記制御部は、初期応答可能な状態に移行した後に前記通信部を介して前記初期応答要求が入力される際、前記計数部にて計上された前記初期応答要求の回数が、前記記憶部に登録されている前記初期応答要求の回数と一致しているのかどうか判断し、前記計上された回数が前記登録されている回数と一致した場合、前記通信部を介して外部に初期応答する非接触式携帯可能電子装置との間で非接触通信可能な通信装置であって、
前記非接触式携帯可能電子装置と非接触式通信が可能な通信モジュールと、
前記通信モジュールを介して前記非接触式携帯可能電子装置に前記初期応答要求を出力し、前記通信モジュールを介して前記非接触式携帯可能電子装置から前記初期応答があるのかどうか判断し、前記初期応答がある場合、前記通信モジュールを介して前記非接触式携帯可能電子装置との間で非接触通信を開始する処理モジュールと、を備える通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−18649(P2012−18649A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157281(P2010−157281)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】