説明

非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ

【課題】特性に優れるとともに、汎用性に富んだユビキタス通信用途に好適な非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナを提供する。
【解決手段】金属板と、金属線が螺旋状に巻回されてなるとともに前記金属板に近接して配置されるコイルと、給電点に接続された導体から構成される結合素子とを備え、前記金属板の面法線方向を上下方向として、前記コイルは、螺旋軸延長方向が前記金属板の面と平行となるように当該金属板の上方に近接して配置され、前記結合素子は、前記コイルおよび前記金属板と非接触で上下方向に積層された状態で、前記金属板の上方に配置されている非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノーマルモードヘリカルアンテナに関し、具体的には、ユビキタス通信の小形無線タグや生体埋め込み用の小形無線センサーなどに適用可能な小型のノーマルモードヘリカルアンテナにおける給電方式の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
===タグについて===
ユビキタス通信の一つのサービス形態として、RFID(Radio Frequency Identification:無線を用いた情報識別 )システムがある。このシステムは、例えば、商品の流通管理や空港における手荷物の自動仕分け作業などに利用されており、商品や手荷物などにICとアンテナとを含んで構成される電波荷札(タグ)を貼り付け、そのICに書き込まれた情報を読み取り、その情報に基づいて在庫管理をしたり、手荷物の仕分けをしたりするのである。
【0003】
図1にタグの実用例を(A)と(B)に示した。これらのタグ(200a,200b)は、扁平矩形状の基板(220a,220b)上にアンテナ部分(210a,210b)となる金属配線が適宜な形状にパターニングされており、そのアンテナ(210a,210b)の形状は、ダイポールアンテナに分類されるものである。また、基板(220a,220b)の長辺(221a,221b)は、アンテナ(210a,210b)の長さ(L4,L5)にほぼ等しく、その長さ(L4,L5)は、送受信する電波の半波長程度となっている。
【0004】
そして、基板(220a,220b)上に印刷配線されたアンテナ(210a,210b)の長さ方向の中央には、ICチップ230が配置され、アンテナ(210a,210b)を構成する印刷配線にこのIC230が接続されている。
【0005】
周知のごとく、このようなタグ(200a,200b)では、電波を受信するとアンテナ(210a,210b)に図中矢印で示した方向に電流Iが流れ、その電流Iを電源として能動化されたIC230が自身に記憶されているデータの信号をアンテナ(210a,210b)に送出し、その信号を電波として放射させる。
【0006】
===従来のタグにおける問題点===
ところで、上述したようなタグ(200a,200b)では、金属や液体などの導電体に近接すると、これらの導電体の影響により電流によって放射される電波が著しく低減されてしまうという問題がある。図2に、この問題の原因についての概略図を示した。この図では、アンテナ(111a〜111d)とそれに近接する金属板20との配置関係に応じ、(A)(B)に示した良好に動作するアンテナ(111a,111b)と、(C)(D)に示した良好に動作しないアンテナ(111c,111d)とを電気映像(112a〜112d)によって説明している。また、そのアンテナ(111a〜111d)を構成する導体の形状が(A)(C)に示した直線状のアンテナ(直線アンテナ:111a,111c)と、(B)(D)に示したループ状のアンテナ(ループアンテナ:111b,111d)のそれぞれについて説明している。
【0007】
実際のアンテナ(現実アンテナ:111a〜111d)に対し、金属板20の影響は、図中点線で示されている電気映像(112a〜112d)によって表される。まず、直線アンテナ(111a,111c)について説明すると、(A)に示したように、アンテナ111aが金属板20の面21に対して垂直に配置されている場合では、現実アンテナ111aと電気映像112aとで電流Iが同方向になり、良好に動作する。一方、(C)に示したように、直線アンテナ111cが金属板20の面21に対して平行に配置されている場合、すなわち、電流Iが金属板20に対して平行に流れる場合では、現実アンテナ111cと電気映像112cとで電流Iが逆方向になり、電流Iが相殺され、良好に動作しない。
【0008】
次にループアンテナ(111b,111d)について説明すると、ループ状導体に流れる電流Iはそのループ面113を貫通する磁流Jと等価であり、これを磁流源Jと考えることができる。そして,(B)に示したように、ループ面113を垂直に貫通する軸が金属板20に対して平行となる場合、すなわち、ループ面113が金属板20の面21に対して垂直に配置される場合では、現実アンテナ111bと電気映像112bとで磁流J同方向になり、アンテナ111bは良好に動作するが、(D)に示したように、ループ面113が金属板20の面21と平行となる場合には、現実アンテナ111dと電気映像112dとでは磁流Jが逆方向となり、アンテナ111dは良好に動作しない。
【0009】
以上より、(A)(B)に示した良好に動作するアンテナ(111a,111b)では、現実アンテナ(111a,111b)の放射が、電気映像(112a,112b)により増強され、(C)(D)に示した良好に動作しないアンテナ(111c,111d)では、その現実アンテナ(111c,111d)の放射が、電気映像(112c,112d)により相殺されてしまうことがわかる。そして、図1に示したタグ(200a,200b)に使用されるアンテナ(210a,210b)などは、(C)に示した良好に動作しないアンテナ(111c,111d)に相当し、従来のタグでは、金属板20が近接配置された環境で使用されたり、タグ(200a,200b)を貼る対象物が金属製であったりすると、RFIDシステムが正常に動作しない。また、生体に埋め込むタグなどでは、体液や血液など、導体として作用する液体がタグの周囲に存在することになり、金属板20の場合と同様にRFIDシステムが正常に動作しない。
【0010】
もちろん、図1に示したタグ(200a,200b)を金属板20に対して直交させればアンテナ(210a,210b)は動作するが、タグ(200a,200b)を対象物に対して直交配置すれば、対象物からタグ(200a,200b)が大きく突出することになり、実用上問題が多い、以上から、金属板20に近接配置するアンテナとしては、図2(B)に示したような磁流動作するループアンテナが適することが分かる。
【0011】
===ノーマルモードヘリカルアンテナ===
代表的な磁流動作アンテナとして、ノーマルモードヘリカルアンテナがある。図3に、ノーマルモードヘリカルアンテナ100aの基本構造を示した。ノーマルモードヘリカルアンテナ100aは、細い金属の導線を螺旋状に巻回した本体(コイル)110aに給電点130aを接続した構造を基本としている。直径d1の金属線を長さL1に渡って幅W1となるようにN回巻回したコイル110aは、電気的に、アンテナ長L1に等しい直径d1の直線状導体111と、幅W1のN個のループ状導体112に分解できる。直線状導体111に対応する部分は微小ダイポールアンテナに相当し、微小電流Iで動作する。ループ状導体112に対応する部分は、ループに沿って電流が流れるため、電気的には小さな円板の磁石と同様の働きをし、微小磁流Jで動作する。
【0012】
ここで、ノーマルモードヘリカルアンテナアンテナ100aにおけるコイル110aの螺旋軸11に対し、面21が平行となるように金属板20をこのコイル110aに近接配置すると、微小電流Iと微小磁流Jが金属板20の面21に並行して流れる。そして、図2に示したアンテナ(111a〜111d)における金属板20の配置を考慮すると、良好に動作するのは微小磁流Jで動作するループ状導体112部分だけとなる。なお、金属板20が近接しない状態では、微小電流Iと微小磁流Jが共に動作し、ノーマルモードヘリカルアンテナ100aは、金属板20が近接配置されているかどうかにかかわらず動作する、という万能の特性を有することが分かる。
【0013】
===ノーマルモードヘリカルアンテナを用いたタグ===
図4は、金属板20に近接配置されたノーマルモードヘリカルアンテナ100bにICチップ130bを接続したタグ101の作製例を示している(特許文献1、非特許文献1参照)。この例では、金属板20を下方とすると、その金属板20の上面21に発泡スチロールからなるスペーサ140を介して、ノーマルヘリカルアンテナ100bを配置した構成であり、金属板20の面21とアンテナ本体であるコイル110bの螺旋軸11の延長方向とが互いに平行となるように配置されている。なお、ICチップ130bはスペーサ140の上方に実装されている。
【0014】
また、図示したタグ101では、コイル110bをその螺旋軸11に対して切断したときの断面形状(ループ形状)が上下に扁平な矩形状となっており、当該矩形の長辺12が金属板20および基板140の面(21,141)と平行となるようにしている。それによって、上下方向の厚さが薄くなり、タグに適した形状となっている。
【0015】
コイル110bへの給電方法は、タップ給電法と呼ばれるもので、コイル110bを構成する金属線とICチップ130bとを2本の導線によって構成されるタップ131を介して接続する方法である。このタップ131を構成する2本の導線は、コイル110bのループの上下の長辺12部分にそれぞれ接続されており、この構造においては、ICチップ130bの位置がノーマルモードヘリカルアンテナ100bの給電点に相当する。そして、このタップ131を構成する導線の長さや導線間隔などを調整することによって、ICチップ130bとコイル110bとのインピーダンスを整合させている。なお、図4に示したタグ101におけるノーマルモードヘリカルアンテナ100bは、動作周波数f=953MHz、すなわち、波長λ=315mm、巻き数N=6で、自己共振構造となっている。そして、波長をλとして、アンテナ長L1=0.049λ、幅W1=0.045λであり、極めて小型のアンテナとなっている。
【0016】
しかしながら、上記タップ給電法では、扁平矩形状のループによってアンテナ本体であるコイル110bを小型にすることができても、タップ131をコイル110bに接続する必要があり、この接続部分によってタグ101自体の小型化を困難にしている。また、タグ101を製造する際に、タップ131をコイル110bに直接接続する工程に時間やコストがかかり、製品を安価に大量に製造することが困難となる。さらに、ICチップ130bは、メーカごとの仕様や個体差などがあり、コイル110bと給電点であるICチップ130bとのインピーダンスを整合させるためにタップ131の長さなどを微調整する必要がある。タップ131を直接コイル110bに接続する構造では、この微調整にさらに多くのコストが掛かることになる。したがって、給電方式としては、タップ131を用いない非接触給電方式が好ましい。
【0017】
===非接触給電方式について===
アンテナにおける非接触給電方法としては、以下の文献1〜5などに記載されている方法がある。図5および図6に、これらの文献に記載されている給電方法の概略を示した。図5は、下記非特許文献2に記載されている各種非接触給電方法であり、軸モードヘリカルアンテナ300a、すなわち、ループの周囲長がほぼ1波長の大きさを有し、螺旋軸の延長方向へ電波を放射するアンテナにおける非接触給電方法を示している。例えば、(A)に示した構造では、給電部330aと放射部310aの螺旋軸11を一致させて配置して、放射部310aを励振させている。また、(B)に示したアンテナ310bのように、2重コイルの一方を給電部330bとし、一方をアンテナとなる放射部310bとした構造もある。(C)に示したアンテナ310cの構造では、放射部310cの螺旋内部に2本の伝送線330cを挿入し、この電送線330cの延長方向に伝搬する電界により放射部310cを励振させている。しかし、いずれも、軸モードヘリカルアンテナにおける非接触給電方法であり、ループの周囲長が1波長分と長く、本発明が対象とする、タグにも適用可能なノーマルモードヘリカルアンテナにこれらの給電方法を適用することはできない。なお、図6(A)と(B)は、それぞれ以下の非特許文献3と非特許文献4に記載された非接触給電型アンテナについての説明図であり、(A)はその原理を示しており、(B)はメアンダラインアンテナにその原理を応用した具体例に対応している。しかし、これらの非接触給電型アンテナ(400a,400b)は、図からも明らかなように、給電部となるループ状の結合素子(430a,430b)に流れる電流によってアンテナ(410a,410b)に電磁誘導に伴う電流を発生させる電流動作型であり、上述した従来のタグ(200a,200b)に採用されているアンテナ(210a,210b)と同様に、金属板20の近くに配置されると良好な動作状態を維持することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2007−195069号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Wongook Hong, Yoshihide Yamada and Naobumi Michishita, ” Low profile smallnormal mode helical antenna achieving long communication distance”, 2008 IEEEInternational Workshop on Antenna Technology (iWAT08), pp.167-170 , March 2008
【非特許文献2】J.D.Kraus, ”ANTENNAS Second Edition”, McGraw-Hill Book Company, Chapter 7,pp.323-324, 1988
【非特許文献3】H.W.Son and C.S.Pyo, ”Design of RFID tag antennas using an inductively coupledfeed”, McGraw-Hill Book Company, Chapter 7, pp.323-324, 1988
【非特許文献4】KyoheiFujimoto, ”Mobile Antenna Systems Handbook, Third Edition”,Artech House,Chapter 13, pp.609-610, 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
タグなどのユビキタス通信システムに適用可能なアンテナは、その動作モードが電流動作であると、金属板の近くに配置されると動作不良を起こす。ノーマルモードヘリカルアンテナは電流動作部分と磁流動作部分とを混在させた構造により、金属板の近くに配置されても磁流動作部分により良好に動作する。そして、ノーマルモードヘリカルアンテナは、全長が送受信する電波の波長の1/10程度であり、軽量小型化が要求されるユビキタス通信システムに適用することが可能である。しかし、タグへの使用を想定した従来のノーマルモードヘリカルアンテは、タップ給電法を採用しており、アンテナ本体以外のタップによってタグ自体の小型化に限界があった。したがって、非接触給電方法を採用したノーマルモードヘリカルアンテナが望まれる。
【0021】
ここで、本発明者は、ノーマルモードヘリカルアンテナに対して非接触給電方法を採用するのに当たり、次の点について考察した。まず、従来のタップに相当する結合素子と金属板との配置関係を考慮しないとアンテナとしての特性が劣化する。そのため、ノーマルモードヘリカルアンテナの本体と、結合素子、金属板との配置を最適化することが必要であると考えた。もちろん、使用状況に応じて簡単に設計変更が可能で、さらに、ICチップの個体差などに起因するインピーダンスの不整合に対しても柔軟に対応できる構造も必要であると考えた。本発明はこのような考察に基づいて創作されたものであり、その目的は、特性に優れるとともに、汎用性に富んだユビキタス通信用途に好適な非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明は、次の事項(1)〜(3)によって特定される非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナである。
(1)金属板と、金属線が螺旋状に巻回されてなるとともに前記金属板に近接して配置されるコイルと、給電点に接続された導体から構成される結合素子とを備えること。
(2)前記金属板の面法線方向を上下方向として、前記コイルは、螺旋軸延長方向が前記金属板の面と平行となるように当該金属板の上方に近接して配置されていること。
(3)前記結合素子は、前記コイルおよび前記金属板と非接触で上下方向に積層された状態で、前記金属板の上方に配置されていること。
【0023】
本発明は、上記(1)〜(3)に加え、以下の事項(21)(31)(41)の何れか事項によって特定される非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナとすることもできる。
(21)前記結合素子は、前記金属板の上方に配置された前記コイルの上方に積層された状態で当該アンテナ本体に近接配置されていること。
(31)前記結合素子は、前記金属板と前記コイルとの間に挿入された状態で配置されていること。
(41)請求項1において前記結合素子は、その一部あるいは全部が前記コイルの内側に挿入された状態で配置されていること。
【0024】
また、上記(1)〜(3)と(21)(31)(41)のいずれかの事項と、以下の(51)(61)(71)(81)のいずれかの事項によって特定される非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナも本発明の範囲である。
(51)前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、前記コイルの螺旋軸延長方向に延長しつつ、前記コイルの全長より短い直線状導体であること。
(61)前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、前記コイルの螺旋軸延長方向と直交する方向に延長する直線状導体であること。
(71)前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、前記螺旋軸延長方向を長手方向とした扁平なループ状導体で、当該長手方向の長さが前記コイルの全長より短く、前記ループの面が前記金属板の面と平行となるように配置されていること。
(81)前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、前記螺旋軸延長方向に扁平したループ状導体で、当該扁平ループの長手方向が前記螺旋軸延長方向と直交するとともに、当該ループの面が前記金属板の面と平行となるように配置されていること。
【0025】
本発明は、上記事項(1)〜(3)と、以下の事項(91)または事項(101)とによって特定される非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナとしてもよい。
(91)前記螺旋軸延長方向を前後方向として、前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、上下に扁平なループ状導体からなり、当該ループ面が前記コイルの前記断面と対面するように前記コイルの前方あるいは後方に配置されていること。
(101)前記螺旋軸延長方向を前後方向として、前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、上下に扁平なループ状導体からなり、当該ループ面が前記コイルの前記断面と対面するように、その一部あるいは全部が前記コイルの内側に挿入された状態で配置されていること。
【0026】
そして、上記いずれかの非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナは、さらに次の事項(111)と事項(112)のいずれか、または両方を要件として備えていてもよい。
(111)前記コイルの全長は送受信する電波の波長の1/10以下であること。
(112)前記金属板の周縁は上方に立設する壁面が形成され、前記コイルと、前記給電点と、当該給電点に接続された前記結合素子は、当該壁面により取り囲まれた領域に配置されていること。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、小型・薄型化が可能であるとともに、特性に優れ、汎用性にも富んだユビキタス通信用途に好適な非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】典型的なタグの構造を示す図である。
【図2】上記タグなどに採用されているアンテナの問題点を説明するための図である。
【図3】ノーマルモードヘリカルアンテナの基本構造を示す図である。
【図4】ノーマルモードヘリカルアンテナを採用したタグの従来例を示す図である。
【図5】軸モードヘリカルアンテナにおける各種非接触給電方式の原理を示す図である。
【図6】電流動作型のアンテナにおける非接触給電方式の原理図(A)と、その具体例における構造図(B)である。
【図7】非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの基本構成図である。
【図8】直接給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの構造と誘起電流の状態を示す図である。
【図9】上記直接給電型ノーマルモードヘリカルアンテナのインピーダンス特性図(A)と、放射特性図(B)である。
【図10】上記直接給電型ノーマルモードヘリカルアンテナにおける電解分布を示す図である。
【図11】本発明の第1の実施例における非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの構造図である。
【図12】上記第1の実施例のアンテナにおける各種条件を説明するための図である。
【図13】上記第1の実施例のアンテナの誘起電流特性図である。
【図14】上記第1の実施例のアンテナのインピーダンス特性図である。
【図15】本発明の第2の実施例における非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの構造図である。
【図16】上記第2の実施例のアンテナにおける各種条件を説明するための図である。
【図17】上記第2の実施例のアンテナの誘起電流特性図(A)と、インピーダンス特性図(B)である。
【図18】本発明の第3の実施例における非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの構造図である。
【図19】上記第3の実施例のアンテナにおける各種条件を説明するための図である。
【図20】上記第3の実施例のアンテナの誘起電流特性図(A)と、インピーダンス特性図(B)である
【図21】本発明の第1の具体例における非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの構造図である。
【図22】上記第1の具体例のアンテナの誘起電流特性図である。
【図23】本発明の第2の具体例における非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの構造図である。
【図24】上記第2の具体例のアンテナの誘起電流特性図(A)と、インピーダンス特性図(B)である
【発明を実施するための形態】
【0029】
===非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの基本構造===
図7に、本発明の非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの基本構造を示した。本発明の非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ(以下、アンテナ)1は、アンテナ本体であるコイル10が金属板20に近接配置されることを前提として、当該コイル10の螺旋軸11と金属板の板面21とが平行となるように配置するとともに、このコイル10に給電するための結合素子30をコイル10に非接触状態で近接配置した構造を基本としている。そのため、本発明のアンテナ1は、タップ給電法のように、タップとなる配線を引き回す際の凹凸がなく、原理的に薄型化が可能となっている。以下、金属板20の面法線方向を上下方向とし、コイル10の螺旋軸11の延長方向を前後方向とし、上下方向と前後方向の双方に直交する方向を左右方向として説明する。なお、図7に示したアンテナ1では、金属板20の上方にコイル10が配置され、その上方に結合素子30が配置されているが、本発明では、金属板20とコイル10と結合素子30の相互の配置関係や、結合素子30の形状に応じて様々な実施形態が存在する。
【0030】
===本発明の有効性について===
まず、図4に示したようなタグと同様に、タップ給電法を採用したノーマルモードヘリカルアンテナに金属板を近接配置した直接給電型ノーマルモードヘリカルアンテナの電気特性をシミュレーションによって検討することで本発明の有効性を判断し、その上で、金属板20とコイル10と結合素子30の配置関係に応じた3つの実施形態(第1の実施例〜第3の実施例)を挙げ、本発明を説明する。なお、上記有効性の判断に当たっては、直接給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ(従来例)の電気特性を周知のモーメント法による電磁界シミュレータを用いて求め、その特性を基準として、本発明のアンテナの特性とその基準とを比較した。
【0031】
図8にシミュレーションに用いた従来例101の構造を示した。(A)は上方から見たときの平面図であり、(B)は左右いずれかの側から見た側面図である。なお、この図8では、給電点130の位置と、コイル10における電流値の大小も合わせて示しており、電流値の大小を濃淡によって示した。ここでは、電流値が大きいほど濃くなっている。ここに示した従来例は、金属板20の面21上にコイル10を配置した構造であり、コイル20は、太さd1=1mmの導線を巻回してなり、その巻回したときに形成されるループの形状、すなわちコイルの断面形状が上下に扁平な矩形状となっている。そして、金属板20と距離s1=1mmの間隙を介して配置されている。
【0032】
シミュレーションでは、金属板20を無限大の平板とし、コイル10のサイズは、タグへの適用を考慮し、長さL1が1/10λ以下となるように、L1=29mmとしている。また、左右の幅W1=14.8mm、上下の高さH1=5mmとし、コイルの巻回数N=6とし、周波数953MHzにて自己共振状態となるように設定した。
【0033】
図9(A)にシミュレーションによる入力インピーダンス特性を示した。953MHzにおいてリアクタンスが0で純抵抗の0.47Ωが得られており、自己共振状態であることが確認できる。なお、アンテナ101の入力抵抗値が0.47Ωと非常に小さな値となっているため、本発明のアンテナには、インピーダンスの増大効果も要求される。図8における電流値の大小関係を見ると、給電点130で最大となっており、その最大電流値は6.2dBAであった。以後、この値を直接給電時の電流値I1として本発明のアンテナにおける誘起電流値と比較する。
【0034】
図9(B)は、従来例の放射特性を示しており、強い放射性分は磁流からの放射50であり、無指向性放射に対する放射強度は約1.3dBiとなっている。電流からの放射51は−7.7dBiとなっており、小さな放射強度しか得られていない。このことより、従来例では、磁流動作となっていることが分かる。
【0035】
次に、非接触給電を行うための結合素子30を配置するのに当たり、従来例101におけるコイル10近傍の電界分布を求めた。図10(A)は、コイル10の矩形断面の長辺(図8,符号12)に平行な断面の電界分布を示しており、同図(B)は、短辺(図8,13)に平行な断面の電界分布を示している。図中に10mmの長さを示すスケール53を表示しており、(A)ではコイル10の矩形断面の長辺12の一端をそのスケール53の基端53aとし、(B)では、短辺13の一端を基端53aとしている。また、図中には、同じ電界強度の値(dBV/m)を示等高線様の閉曲線と濃淡によって示した。
【0036】
図10(A)から、スケール53の基端53aでの電界強度は90dBV/mであり、基端53aからコイル10の外方に向かって10mm離れたスケール53の他端53bの位置では、その強度が65dBV/mとなり、25dBの強度低下が生じていることが分かる。すなわち、コイル10の長辺12に平行な面内では、電界強度の変化がかなり大きいことが分かる。
【0037】
一方、図10(B)から、金属面20の上方では、スケール53の基端53aでの電界強度は(A)と同様に95dBv/mである。しかし、その基端53aから10mm離れたスケール53の他端53b位置では80〜85dBv/mもの強度があり、強度低下は10〜15dBと小さいことが分かる。すなわち、コイル10上方の電界強度低下は緩やかであり、コイル10に非接触で給電する場合には、コイル10と結合素子30の距離s1を変化させても、コイル10と結合素子30との電磁結合量の変化は小さいと考えられる。
【0038】
===第1の実施例===
本発明の第1の実施例に係るアンテナは、図7に基づいて説明すると、金属板20の上方に、下方からコイル10、結合素子30がこの順に積層された状態で配置されたアンテナであり、結合素子30の形状、およびコイル10の螺旋軸11に対する結合素子30の回転位置に応じて4種類の異なる代表的な構造が存在する。
【0039】
図11(A)〜(D)に第1の実施例における上記4種類のアンテナ(1a〜1d)の概略構造を示した。本実施例では、直線状導体からなる直線状結合素子31と、扁平な矩形ループからなるループ状結合素子32の形状の異なる2種類の結合素子について、直線状結合素子31の直線延長方向、あるいはループ状結合素子32における長辺方向がコイル10の螺旋軸11に対して平行、または直交の2種類の回転位置を規定することで、図11(A)直線状結合素子/平行配置、図11(B)直線状結合素子/直交配置、図11(C)ループ状結合素子/平行配置、図11(D)ループ状結合素子/直交配置、の4種類のアンテナ(1a〜1d)の構造を規定した。そして、第1の実施例における各構造のアンテナ(1a〜1d)について、図8に示した従来例101と同様にして電磁界シミュレータを用いて解析した。
【0040】
図12は、当該シミュレーションにおける各種設定条件の説明図であり、(A)は上方から見たときのコイル10の平面サイズに関する説明図であり、(B)は、アンテナ(1〜1d)の側面を示しており、その側面から見たときのコイル10のサイズと各構成要素(コイル10,金属板20,結合素子30)間の配置関係を示している。(C)と(D)は、それぞれ、直線状結合素子31とループ状結合素子32のサイズに関する説明図である。
【0041】
結合素子(31,32)を構成する導体の太さd2を1mmとし、ループ状結合素子32については、長辺33を構成する導体間に1mmの間隙d3を設けている。そして、直線状結合素子31の直線部分の長さL2、あるいはループ状結合素子32の長辺の長さL3を「結合素子の長さ」として、この結合素子の長さ(L2,L3)を変えてシミュレーションを行った。なお、コイル10と結合素子(31,32)との間隔s2については、1mmと10mmのいずれかとし、その他の条件については従来例に対して行ったシミュレーションに準じている。すなわち、コイル10は、太さd1=1mmの導線を巻回してなり、その断面形状は上下に扁平な矩形状で、その矩形の長辺12の長さである幅W1=14.8mm、矩形の短辺13となる高さh=5mm、前後の長さL1=29mmのサイズで、巻回数N=6である。そして、金属板20を無限大の平面とし、金属板20とコイル10との間隔s1=1mmとしている。
【0042】
第1の実施例における上記4種類のアンテナ(1a〜1d)について、その誘起電流特性のグラフを図13に示した。(A)はs2=1mmの場合であり、(B)はs2=10mmの場合である。そして、これらのグラフにおいて、横軸を結合素子(31,32)の長さ(L2,L3)として、その長さ(L2,L3)と、コイル10に誘起された電流の最大値との関係を示した。また、また、線種が異なる4本の曲線は、それぞれ図11に示した上記4種類のアンテナ(1a〜1d)構造に対応している。
【0043】
当該誘起電流特性において、図11(A)(B)に示した直線状結合素子31を用いたアンテナ(1a,1b)では、s2=1mm、s2=10mmの双方において、従来例101として先に示した直接給電時の電流値I1にほぼ等しい電流がコイル10に誘起されていることが分かる。したがって、図11(A)(B)に示した構造のアンテナ(1a,1b)は、十分な性能を有すると判断できる。
【0044】
ここで、さらに、図11(A)(B)に示したアンテナ(1a,1b)における電磁結合の仕組みについて考察すると、図11(A)に示したアンテナ1aでは、図7に示したアンテナ1と実質的に同じ構造であり、当該図7において示した等価電流Iと磁流Jとが平行になっており、等価電流Iと電磁結合していると考えることができる。図11(B)のアンテナ1bでは、コイル10の断面形状である扁平矩形状の長辺12方向と結合素子31の延長方向とが揃っているため、結合素子31は、コイル10を構成する導線と電磁結合していると考えられる。
【0045】
図11(C)のアンテナ1cは、s2=1mmとs2=10mmの双方において、結合素子の長さを適宜選定すれば、非接触給電として使用できることが分かる。図11(D)のアンテナ1dでは、s2=1mmのとき非接触給電が可能であることが分かる。なお、ループ状結合素子32を用いたアンテナ(1c,1d)における電磁結合は、ループの周方向に流れる電流がアンテナ(1c,1d)の導線に直接結合していると考えられる。
【0046】
なお、第1の実施例においては、非接触給電を行う結合素子(31,32)をコイル10の外側に配置していた。しかし、結合素子(31,32)とコイル10を構成する導線やそのコイル10における等価電流との配置関係を考えれば、コイル10の内部に結合素子(31,32)を配置しても同様の電磁結合が得られることは明らかであり、本発明には、直線状結合素子31やループ状結合素子32をコイル10の内側に配置するアンテナも含まれている。
【0047】
次に、従来例のノーマルモードヘリカルアンテナ101における0.47Ωの入力抵抗値Rを非接触給電によって変化させることができるかどうかを検討した。図14(A)(B)は、それぞれ図11(B)(D)に示したアンテナ(1b,1d)について、s2=1mmとしたときの入力インピーダンスを示している。図11(B)に示した直線状結合素子31を用いたアンテナ1bでは、結合素子31の長さL2に応じて入力抵抗値Rが数Ωから400Ωまで大きく変化している。なわち、広範囲の入力抵抗値を得ることができ、給電点からの配線とインピーダンスを整合させることができる。また入力リアクタンスXは、大きな容量性の値となり、誘導性素子との整合に適している。
【0048】
一方、図11(D)に示したループ状結合素子32を用いたアンテナ1dでは、図14(B)に示すように、結合素子32の長さL3を長くすると、入力抵抗値Rは数Ω程度まで大きくなり、極大値を経て減少に転じる。入力リアクタンスXは100Ωまでの誘導性の値を示し、容量性素子との整合に適することが分かる。
【0049】
以上の結果から、結合素子(31,32)の構成(形状やコイル10との位置関係など)、コイル10と結合素子(31,32)との間隔s2、結合素子(31,32)の長さ(L2,L3)などの各種条件を適宜に選択することで、入力インピーダンスを大きな範囲で変化させることができる。したがって、目的とする負荷素子(ICチップなど)のインピーダンスに応じて、最適値を求め、その最適値に応じて各種条件を設定すれば、実用可能な非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナを得ることができる。
【0050】
===第2の実施例===
図15に本発明の第2の実施例おけるアンテナ2の構造を示した。また、そのアンテナ2におけるコイル10や結合素子32のサイズや配置関係に関する説明図を図16に示した。なお、図16(A)は、アンテナ2を前方あるいは後方から見たときの正面図であり、(B)は側面図である。第2の実施例におけるアンテナ2は、ループ状結合素子32を用いるとともに、そのループの面34をコイル10の螺旋軸11と直交させる構造となっている。すなわち、コイル10の磁流Jとループ状結合素子32の面34とが直交する構造となっている。また、そのループ状結合素子32における扁平ループの長辺33の延長方向は、金属板20の面21と平行となっている。そして、この第2の実施例におけるアンテナ2について、電磁シミュレータを用いてその特性を解析した。なお、第2の実施例におけるループ状結合素子32自体は、第1の実施例と同様の構造であり、コイル10と間隔s2=1mm、およびs2=10mm離間している場合のそれぞれについて解析した。
【0051】
図17(A)に当該解析結果として、アンテナ2における誘起電流特性を示した。コイル10とループ状結合素子32の前後何れかの端面34とを距離s2=1mmとなるように近接させると、アンテナ誘起電流が直接給電時における電流値I1に近い値が得られることが分かった。したがって、コイルの長さL1は、コイル10の幅W1程度の大きさがあれば十分である。一方、s2=10mmでは、s2=1mmのときと比較するとアンテナ誘起電流は小さくなった。また、結合素子32の長さL3による電流値の変動幅もs1=1mmの場合よりも大きい。
【0052】
ここで、第2の実施例のアンテナ2における電磁結合について考察する。当該アンテナ2の構造では、コイル10の矩形状断面とループ状結合素子32のループ面34とが並行になるように配置されているため、両者(10,32)には磁気的結合が生じていると考えられる。したがって、ループ状結合素子32をコイル10の外側ではなく、コイル10の内側に配置してもコイル10を励振することができるはずである。
【0053】
なお、参考までに、第2の実施例において、s2=1mmとしたときの結合素子32の入力インピーダンス特性を図17(B)に示した。抵抗値Rは20Ω程度であり、リアクタンスXは90Ω程度である。したがって、第2の実施例のアンテナ2は、目的とする負荷素子のインピーダンスの適正値を求め、その適正値に基づいて各種条件を設定すれば、十分に実用可能となる。
【0054】
===第3の実施例===
図18に、本発明の第3の実施例におけるアンテナ(3a〜3d)の構造を示した。当該実施例では、結合素子(31,32)をコイル10と金属板20との間に配置した構造となっている。この第3の実施例では、第1の実施例と同様に、結合素子(31,32)の形状や配置に応じ、図(A)〜(D)のそれぞれに示した代表的な構造のアンテナ(1a〜1d)が存在する。そして、これらの各構造のアンテナ(3a〜3d)の特性をシミュレーションによって求めた。図19に当該シミュレーションに際しての各種条件を側面図によって示した。この図に示すように、結合素子(31,32)とコイル10は、極めて近接するように配置されており、その間隔s2=0.1mmとしている。なお、コイル10と金属板20との間隔s1、およびコイル10や状結合素子(31,32)のサイズなどは、上記第1の実施例や第2の実施例で示したアンテナ(1a〜1d、2)と同様である。すなわち、第3の実施例では、上記第1および第2の実施例のアンテナ(1a〜1d、2)と比較すると、コイル10の上方や前後方向に結合素子(31,32)が無く、さらに小型・薄型化に適した構造となっている。
【0055】
図20に示したシミュレーション結果によれば、図18(A)(C)に示した、電流と等価磁流とが並行となるように結合素子(31,32)を配置したアンテナ(3a,3c)では、誘起電流が図18(B)(D)に示した構造のアンテナ(3b,3d)と比較して小さくなる。先に第1の実施例における同様の配置のアンテナ(1b,1d)の誘起電流が大きかったことを考えると、第3の実施例におけるアンテナ(3a,3c)では、金属板20とコイル10との間に結合素子(31,32)を配置したことによって、等価電流との結合が弱められたためと推察できる。
【0056】
一方、図18(B)(D)に示したアンテナ(3b,3d)では、効果的に結合しており、図8に示した従来例のアンテナ101の電流値I1よりも高い電流が誘起されている。これは、コイル10の導体と結合素子(31,32)とが直接結合している場合と同様の効果が残っているものと考えられる。なお、第3の実施例の代表例として、図18(D)の構造のアンテナ3dの入力インピーダンス特性を図20に示した。入力抵抗値Rは、同軸ケーブルなどとの整合に適した範囲内にある。また、入力リアクタンスXは、200Ω以下の値となっており、ICチップとの整合に適した値となっている。
【0057】
したがって、第3の実施例においても、アンテナ(3a〜3d)を構成する配線部材(ケーブルなど)の種別や、目的とする負荷素子のインピーダンスなどの差異に対して柔軟に対応することができる。
【0058】
===その他の実施例===
<金属板の大きさ>
上記各実施例では、各種構造のアンテナ(1a〜1d,2,3a〜3d)について、その有効性をシミュレーションによって確認した。このシミュレーションに際しては、金属板20を無限大の平面としていた。しかし、実際の金属板20は、ある形状をした有限の大きさを持つものである。そこで、上記各実施例のアンテナ(1a〜1d,2,3a〜3d)を実際のタグなどに適用する場合を想定し、金属板20の大きさや形状を変化させた際にアンテナが有効に動作するかどうかをシミュレーションによって評価した。ここでは二種類の具体例を想定して評価した。
【0059】
図21は、本発明の第1の具体例におけるアンテナ4の概略構造であり、(A)はその平面図であり、(B)は正面図である。シミュレーションでは、第3の実施例における4種類のアンテナ(3a〜3d)の内、図11(d)に示したアンテナ3dの金属板20を有限の大きさにしてアンテナ4の特性を評価した。なお、シミュレーションに当たっては、大きさが有限の金属板(有限金属板)22の形状を矩形状とし、その矩形の縦横の辺の長さW2、L4を、それぞれW2=35mm、L4=20.8mmとした。また、この有限金属板22とコイル10との位置関係は、図21(B)に示すように、コイル10と金属板20との間隙s1=1mm、ループ状結合素子32とコイル10との間隙s2=0.1mmとした。
【0060】
図22に、上記第1の具体例のアンテナ4の特性を示した。(A)は結合素子の長さL3に対する誘起電流の特性を示しており、結合素子長を7.5mm以上にすると、直接給電時の電流値I1に近いアンテナ誘起電流が得られ、非接触給電が有効であることが分かる。(B)は、入力インピーダンス特性を示しており、抵抗値Rは数Ω程度の小さな値となるが、リアクタンスXは数10Ωと適当な大きさになっている。
【0061】
<金属板の形状>
例えば、タグを貼る対象物が金属製である場合、その対象物が金属板として作用し、アンテナの特性がその対象物の形状や大きさに応じて変化してしまう可能性がある。そこで、外部の金属からの影響を遮断するため、金属板の周囲に側壁を形成することが考えられる。
【0062】
図23に本発明の第2の具体例として、周囲に側壁24が形成された金属板23を備えたアンテナ5を示した。そして、このアンテナ5について、上記各実施例と同様に特性をシミュレーションした。なお、シミュレーションにおける各種条件は、ほぼ、図21に示した第1の具体例のアンテナ4と同様であり、例えば、金属板23の上面21は矩形状で、その縦横の長さL4、W2も第1の具体例と同じとした。また、コイル10やループ状結合素子32の構造や配置も同じとした。第2の具体例では、金属板23の上面21の周囲に高さH2=7mmの側壁が形成されている点のみが第1の具体例におけるアンテナ4と異なっている。
【0063】
図24に当該アンテナ5におけるループ状結合素子32の長さと誘起電流との関係を示した。アンテナ誘起電流は直接給電したときの値I1と比べて小さくなるが、実用上問題ない程度である。そして、無限大の金属板20を想定した上記第1〜第3の実施例におけるシミュレーション結果を考慮すれば、金属板23の底面積を広くすれば、特性を改善することができると思われる。
【0064】
また、本発明を金属製の物体に貼り付けるタグなどに適用する場合では、必ずしも、アンテナ自体に金属板を設けなくてもよい。すなわち、コイルと結合素子からなる構成を金属製物体に近接させることで非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナが構成されるようにしてもよい。
【0065】
===本発明のアンテナの有効性===
上記したように、本発明のアンテナでは、結合素子(30〜32)がコイル10と非接触であるため、タップ給電法のように給電点130とコイル10とを配線で直接接続する工程を不要とし、低コスト化が期待できる。また、コイル10に固定的に接続されるタップとは異なり、結合素子の位置や配置をコイルに対して柔軟に変更することが可能である。そのため、用途に応じた特性を得ることができるとともに、負荷素子側のインピーダンスが不安定であっても柔軟にインピーダンスを整合させることができる。
【0066】
また、コイルの断面形状を上下に扁平な矩形とすることで、小型・薄型化が可能である。しかも、コイルと結合素子との間隔も1mm程度でよく、より一層の薄型化が期待できる。また、タップのように給電点からコイルまで配線を引き回す際に生じる凹凸がなく、上面をほぼ平坦にすることができ、タグに適した形状を得ることができる。なお、実際のアンテナでは、各構成要素(金属板、コイル、結合素子)を所定の間隔で所定の配置で固定する必要がある。そのためには、図4に示したタップ給電法を採用したアンテナのように、適所に絶縁性のスペーサを介在させればよい。そして、各構成要素を固定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
ユビキタス通信の小形無線タグや生体埋め込み用の小形無線センサーなどに利用するのに適している。
【符号の説明】
【0068】
1 非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ
1a〜1d 非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ
2 非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテ
3a〜3d 非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテ
4、5 非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテ
10 コイル
20 金属板
30、31、32 給電素子
101、200a、200b タグ
100a、100b ノーマルモードヘリカルアンテナ
130a 給電点
131 タップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、金属線が螺旋状に巻回されてなるとともに前記金属板に近接して配置されるコイルと、給電点に接続された導体から構成される結合素子とを備え、
前記金属板の面法線方向を上下方向として、前記コイルは、螺旋軸延長方向が前記金属板の面と平行となるように当該金属板の上方に近接して配置され、
前記結合素子は、前記コイルおよび前記金属板と非接触で上下方向に積層された状態で、前記金属板の上方に配置されている
ことを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項2】
請求項1において、前記結合素子は、前記金属板の上方に配置された前記コイルの上方に積層された状態で当該アンテナ本体に近接配置されていることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項3】
請求項1において、前記結合素子は、前記金属板と前記コイルとの間に挿入された状態で配置されていることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項4】
請求項1において前記結合素子は、その一部あるいは全部が前記コイルの内側に挿入された状態で配置されていることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれかにいて、前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、前記コイルの螺旋軸延長方向に延長しつつ、前記コイルの全長より短い直線状導体であることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項6】
請求項2〜4のいずれかにいて、前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、前記コイルの螺旋軸延長方向と直交する方向に延長する直線状導体であること特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項7】
請求項2〜4のいずれかにいて、前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、前記螺旋軸延長方向を長手方向とした扁平なループ状導体で、当該長手方向の長さが前記コイルの全長より短く、前記ループの面が前記金属板の面と平行となるように配置されていることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項8】
請求項2〜4のいずれかにいて、前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、前記結合素子は、前記螺旋軸延長方向に扁平したループ状導体で、当該扁平ループの長手方向が前記螺旋軸延長方向と直交するとともに、当該ループの面が前記金属板の面と平行となるように配置されていることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項9】
請求項1において、前記螺旋軸延長方向を前後方向として、前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、
前記結合素子は、上下に扁平なループ状導体からなり、当該ループ面が前記コイルの前記断面と対面するように前記コイルの前方あるいは後方に配置されていることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項10】
請求項1において、前記螺旋軸延長方向を前後方向として、前記コイルは、前記螺旋軸に直交する断面形状が上下に扁平な略矩形状であり、
前記結合素子は、上下に扁平なループ状導体からなり、当該ループ面が前記コイルの前記断面と対面するように、その一部あるいは全部が前記コイルの内側に挿入された状態で配置されていることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項11】
請求項1〜10において、前記コイルの全長は送受信する電波の波長の1/10以下であることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。
【請求項12】
請求項1〜請求項11において、前記金属板の周縁は上方に立設する壁面が形成され、前記コイルと、前記給電点と、当該給電点に接続された前記結合素子は、当該壁面により取り囲まれた領域に配置されていることを特徴とする非接触給電型ノーマルモードヘリカルアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図3】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−166522(P2010−166522A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9187(P2009−9187)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【特許番号】特許第4359648号(P4359648)
【特許公報発行日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(505054531)
【出願人】(505053970)
【出願人】(504385708)マイティカード株式会社 (11)