説明

非接触給電機能付き床構造

【課題】室内の受電装置に対して非接触給電を行う給電装置を床材の下面側に簡単に設置すること。
【解決手段】床下に給電装置5を配設し、この給電装置5から発生する高周波磁界により室内に設置される受電装置に対して非接触で電力供給を行う非接触給電機能付き床構造であって、根太31間に前記給電装置5を配置する。前記給電装置5を隣り合う根太31,31間に架け渡される支持部材32を用いて支持すると共に、前記給電装置5の上面側に床材8を施工する非接触給電機能付き床構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触給電機能付き床構造に関し、詳しくは、室内の受電装置に対して非接触給電を行う給電装置を床下に配置する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高周波磁界を発生する給電装置を建屋の床パネルの下面に配置し、電磁誘導を利用して給電装置から非接触で受電した電力を直流機器へ供給する受電装置を、床パネルの表面において給電装置と対向する位置に配置した非接触給電機能付き建造物が知られている。これにより配電系統による建屋の意匠性及び空間性の悪化を防止できると共に、負荷機器への電源供給が容易で安全性を高めるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−159683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に示された従来例では、床パネルの裏面に給電装置を設けることが記載されているが、具体的な取り付け構造についての開示はなされていない。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、室内の受電装置に対して非接触給電を行う給電装置を床材の下面側に簡単に設置できるようにした非接触給電機能付き床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために、本発明の非接触給電機能付き床構造は、床下に給電装置を配設し、この給電装置から発生する高周波磁界により室内に設置される受電装置に対して非接触で電力供給を行う非接触給電機能付き床構造であって、根太間に前記給電装置を配置し、前記給電装置を隣り合う根太に架け渡される支持部材を用いて支持すると共に、前記給電装置の上面側に床材を施工したことを特徴とする。
【0007】
前記支持部材は、前記給電装置を載置する載置部と、この載置部の両端を隣合う根太にそれぞれ固定する一対の固定部とで構成されており、前記載置部は前記床材の下面から離れる下方向に向かって折曲形成されていることが好ましい。
【0008】
前記支持部材の載置部と前記給電装置の下面との間に、前記給電装置の上面を前記床材の下面に密着させるための隙間塞ぎ部材を介在させることが好ましい。
【0009】
前記隙間塞ぎ部材を弾性体で構成することが好ましい。
【0010】
前記隙間塞ぎ部材を所定間隔をあけて複数設けることで、この隙間塞ぎ部材の間を前記給電装置の熱を逃がすための放熱用空間部とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の非接触給電機能付き床構造にあっては、室内の受電装置に対して非接触給電を行う給電装置を床材の下面側に簡単に設置できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の非接触給電機能付き床構造の実施形態の一例を説明する正面断面図である。
【図2】同上の側面断面図である。
【図3】(a)〜(c)は同上の給電コイルを内蔵する給電ボックスを根太間に施工する手順を説明する斜視図である。
【図4】(a)は同上の給電装置を構成する給電ボックスを床材の下面に密着させるための隙間塞ぎ部材の一例を示す断面図であり、(b)は隙間塞ぎ部材の他例を示す断面図である。
【図5】(a)は同上の床材を捨て張り工法で施工する場合における支持部材の配置状態を説明する斜視図であり、(b)は捨て張り材の開口位置で支持部材で給電ボックスを支持した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の非接触給電機能付き床構造と什器とを組み合わせた非接触給電システムを正面から見た図であり、図2は側面から見た図である。以下の例では、建物として、戸建て住宅或いは集合住宅を想定するが、住宅に限らず、オフィスや店舗などの建屋でもよい。
【0015】
什器2は、間仕切り壁の機能を有する什器本体3を備える。什器本体3にはキャスター18が取り付けられており、床F上を移動走行可能としている。なお、キャスター18にロック機構(図示せず)を設けて、什器本体3をその場で動かないように固定するのが望ましい。
【0016】
上記什器本体3には、天板部9と、天板部9の四辺側から床面7近傍まで延出された側壁部12と、側壁部12の下面側を覆う底板部23とが設けられている。これら天板部9と側壁部12と底板部23とで囲まれた空間部10に、受電装置6が収納されている。
【0017】
本例の受電装置6は、受電コイル6aと、整流平滑回路21と、正弦波出力インバータ22とを備えている。受電装置6は、後述する床下の給電装置5からの磁気エネルギーを電磁誘導の原理で電気エネルギーに変換して、負荷機器に電力を供給するものであり、これら給電装置5と受電装置6とで非接触給電ユニット4が構成される。なお、整流平滑回路21は、受電コイル6aで受電された電力を直流電圧に変換して出力する。正弦波出力インバータ22は、整流平滑回路21から出力される直流電力(例えば24V)を負荷電力(250W以上、AC100V、50/60Hz)に変換する。
【0018】
図1、図2に示す例では、天板部9の内面全面に亘って非透磁性を有するシールド部材11aが被覆されており、さらに側壁部12の内面全面に亘って非透磁性を有するシールド部材11bが被覆されている。なお、床対向側Aに位置する底板部23の内面には、シールド部材は被覆されていない。これにより、天板部9と側壁部12とで囲まれた空間部10は、床対向側A以外のすべての面が磁気シールド空間となっている。
【0019】
また、上記天板部9の上面からは、上方に向けて扁平箱形状をした垂直な仕切壁13が立設されている。仕切壁13の上端高さは天井高さよりも低く設定されているが、天井高さと同じ高さとしてもよい。本例の仕切壁13の大きさは37V型テレビが設置可能な大きさとされる。
【0020】
仕切壁13の表側の面13aには、負荷機器1として薄型テレビを設置固定するテレビ設置面14(図2)が設けられている。負荷機器としては、薄型テレビ以外に、DVDレコーダー、LED照明器具、ノートパソコン、ラジオ、ステレオ、チューナー、理美容機器、携帯電話などの各種の電子機器を広く含む。
【0021】
テレビ設置面14の下側にはコンセント15が設置されている。コンセント15は、天板部9とシールド部材11aとを貫通する電路50を介して正弦波出力インバータ22の出力側に接続されている。比較的大きな電力を供給可能なコンセント15を設け、薄型テレビの電源コード51の一端に設けられているプラグをコンセント15に差し込むことでテレビを使用できる。なお、コンセント15の設置位置は、仕切壁13以外の什器本体3の側面部や天面部など、適宜に選択自在である。
【0022】
一方、フローリング用の床Fは、床材8と、床材8の下面に所定配列で配設された複数本の根太31とで構成される。床材8の下面側には、上記受電装置6に対して非接触給電を行う給電装置5が配置されている。この給電装置5は、例えば、商用電源からの電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して高周波磁界を発生する給電コイル5aと、交流電流の周波数を制御する高周波インバータのような制御部(図示せず)とを備えており、制御部には商用電源の配線コード(図示せず)が接続されている。
【0023】
ここで、給電装置5は、隣合う根太31間に掛け渡される支持部材32を用いて、根太31間のスペースに配置されている。
【0024】
支持部材32は、例えば金属製或いは樹脂製で構成される。支持部材32は、給電装置5を載置する載置部32aと、この載置部32aの両端に設けられた一対の固定部32bとが一体に形成されている。一対の固定部32bは隣合う根太31の上面にそれぞれ固定される。載置部32aは、床材8の下面から離れる下方向に向かって略溝型に折曲形成されている。載置部32aの深さは給電装置5の上から床材8を施工した際に、給電装置5の上面が床材8の下面と密着するように設定される。本例では給電コイル5aと受電コイル6aの間隔G(図1)は例えば45mmとされる。
【0025】
なお床材8として、単位寸法に形成されたものが用いられるが、単位寸法に形成することは必須ではない。またコルクタイル、プラスチックタイルなどを床材8として用いることもできる。
【0026】
しかして、上記構成の給電装置5を床下に設置するにあたっては、図1(a)に示すように、隣合う根太31,31間に支持部材32の両端の固定部32bをそれぞれ固定してから、載置部32a上に給電装置5をセットする。その後、給電装置5の上から床材8を施工する。これにより根太31を利用して、給電装置5を床材8の下面に簡単に配設することができる。しかも、給電装置5の上面を床材8の下面に密着させることにより、給電コイル5aと受電コイル6a間の距離を短縮でき、給電の安定化及び給電効率化を図ることができる。
【0027】
しかも、支持部材32を根太31間に掛け渡す方式を採用しているので、床材8や根太31の加工が一切不要となり、既存の床材8、根太31を利用でき、コストアップを招く心配がない。
【0028】
また、床下に設置した給電装置5は床面7上に露出することがない。このため給電装置5を配置した床材8の表面側は、給電装置5を配置しない床材8の表面側と同じ表面化粧材を用いて仕上げることができるので、床F全体として違和感のない仕上がり状態を実現できる。そのうえ、給電装置5は、根太31,31間の面積が比較的大きい床材8の下面側に配置されるので、比較的大きい電力の供給が可能となり、テレビなどの消費電力の大きい負荷機器1にも対応可能となる。
【0029】
また本例の支持部材32の載置部32aは側面から見て略溝型に折曲されているので、載置部32a上に給電装置5を安定支持できると同時に、給電装置5から発生した熱を床下空間に放熱でき、給電装置5の長寿命化を図ることができる。
【0030】
さらに本例では、什器本体3の天板部9と側壁部12とで包囲される空間部10に受電装置6を収納すると共に、空間部10の床対向側A以外の面をシールド部材11a,11bで磁気シールドしたので、非接触給電ユニット4から発生する高周波磁界が什器本体3の外部に漏洩することがなく、従って、非接触給電ユニット4の給電効率を高めることができると同時に、空間部10の外部に設置されたすべての負荷機器1に対して電磁波の影響を及ぼさないようにできる利点もある。
【0031】
図3(a)〜(c)は、給電装置5を、内部に給電コイル5a(図1)と、交流電流の周波数を制御する高周波インバータなどの制御部(図示せず)とを収納した給電ボックス50で構成し、根太31間に掛け渡した支持部材32により給電ボックス50を支持する場合の一例を示している。なお、給電ボックス50内の制御部には、外部から商用電源の配線コード(図示せず)が接続される。
【0032】
図4(a)は、本発明の他の実施形態であり、支持部材32の載置部32aと給電ボックス50の下面との間に隙間塞ぎ部材30を介在させた場合の一例を示している。本例では、支持部材32の載置部32aと給電ボックス50の下面との間に隙間塞ぎ部材30を介在させることによって、給電ボックス50の上面を床材8の下面に確実に密着させることができ、給電の一層の安定化及び給電効率化を図ることができる。
【0033】
また本例の隙間塞ぎ部材30は弾性体で構成されている。弾性体として、例えば、発泡ウレタンなどの発泡材、或いは、ゴム材、樹脂製バネ材などが用いられる。勿論、弾性体に限らず、給電ボックス50の上面を床材8の下面に密着させるものであれば、隙間塞ぎ部材30の材質は問わないものとする。
【0034】
図4(b)は隙間塞ぎ部材30の他例を示す。本例では、隙間塞ぎ部材30を所定間隔をあけて複数設けることで、隙間塞ぎ部材30の間に給電ボックス50の熱を逃がすための放熱用空間部60を形成している。つまり、放熱用空間部60では給電ボックス50が載置部32aから浮いた状態となり、これにより、給電ボックス50からの熱は放熱用空間部60に放熱されることとなり、給電ボックス50の放熱性が一層良くなる。
【0035】
図5は更に他の実施形態である。図3の実施形態では床材8を根太31に直接敷設する直張り工法を例示したが、本例では、捨て張り材33を用いた捨て張り工法を例示する。本例では図5(a)に示すように、捨て張り材33一部に隣合う一対の根太31の一部を露出させるための開口33aを形成しておく。捨て張り材33を根太31上に敷設してから、開口33aを介して支持部材32を露出している隣合う根太31にそれぞれ掛け渡して固定する。その後、図5(b)に示すように、支持部材32の載置部32a上に隙間塞ぎ部材30を載せ、その上に給電ボックス50を載置し、その後、捨て張り材33及び給電ボックス50のそれぞれの上から床材8を施工する。これにより、本例の支持部材32による給電ボックス50の支持構造が、捨て張り工法にも対応できるようになると共に、隙間塞ぎ部材30によって床材8の下面に対して給電ボックス50の上面が隙間なく密着した状態で保たれるようになる。なお図5(b)の隙間塞ぎ部材30として、前記図4(b)で示したように複数の隙間塞ぎ部材30を所定間隔をあけて配置し、隙間塞ぎ部材30間に給電ボックス50の熱を逃がすための放熱用空間部60を形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
4 非接触給電ユニット
5 給電装置
6 受電装置
7 床面
8 床材
30 隙間塞ぎ部材
31 根太
32 支持部材
32a 載置部
32b 固定部
60 放熱用空間部
F 床

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床下に給電装置を配設し、この給電装置から発生する高周波磁界により室内に設置される受電装置に対して非接触で電力供給を行う非接触給電機能付き床構造であって、根太間に前記給電装置を配置し、前記給電装置を隣り合う根太に架け渡される支持部材を用いて支持すると共に、前記給電装置の上面側に床材を施工したことを特徴とする非接触給電機能付き床構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記給電装置を載置する載置部と、この載置部の両端を隣合う根太にそれぞれ固定する一対の固定部とで構成されており、前記載置部は前記床材の下面から離れる下方向に向かって折曲形成されていることを特徴とする請求項1記載の非接触給電機能付き床構造。
【請求項3】
前記支持部材の載置部と前記給電装置の下面との間に、前記給電装置の上面を前記床材の下面に密着させるための隙間塞ぎ部材を介在させたことを特徴とする請求項2記載の非接触給電機能付き床構造。
【請求項4】
前記隙間塞ぎ部材を弾性体で構成したことを特徴とする請求項3記載の非接触給電機能付き床構造。
【請求項5】
前記隙間塞ぎ部材を所定間隔をあけて複数設けることで、この隙間塞ぎ部材の間を前記給電装置の熱を逃がす放熱用空間部としたことを特徴とする請求項3又は4に記載の非接触給電機能付き床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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