説明

非接触電力供給装置

【課題】電磁界による生体への影響が少なく、患者の安全性を確保することができる非接触電力供給装置を実現する。
【解決手段】非接触電力供給装置1は、電池4から電力が供給される直径90mmの一次コイル2と、一次コイル2から電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓5に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイル3とを備え、一次コイル2に供給される電力の周波数が、300kHz以上1000kHz以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から電力が供給される一次コイルと、一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に供給する体内埋め込み可能な二次コイルとを備えた非接触電力供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、人工心臓に電力を供給する非接触電力供給装置が使われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
リード線等により皮膚を貫通させてのエネルギー伝送は、皮膚に穴を開けるという性質上、感染症の問題がある。また、リード線からのエネルギー供給により人工心臓といった医療装置を直接駆動させる場合、患者の行動範囲が制限される。このように、皮膚を介してのエネルギー伝送は患者のクオリティオブライフ(QOL)という観点からさまざまな問題を含んでいる。そこで、皮膚を貫通することなくエネルギーを供給するため、体外と体内に置かれた二つのコイル間の電磁誘導作用を利用して、経皮的にエネルギーを伝送する方法がとられている。これを利用したエネルギー伝送システムは、経皮エネルギー伝送システム(TETS:Transcutaneous Energy Transmission System、またはTET)と呼ばれている。
【0004】
このシステムの、体外と体内に置かれた二つのコイルにより、経皮トランスが構成される。そして、電力伝送部となる経皮トランスを介し、体外の電源装置から体内のポンプといった駆動部へと電力が伝送される。これまで、さまざまな経皮トランスが考案され、実験されてきた。例えば、空心コイルと呼ばれる銅線を円盤状に巻いたコイルが、経皮エネルギー伝送システムに使用されている。
【特許文献1】特開2005−288138号公報(平成17年10月20日(2005.10.20)公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の構成では、電力の伝送効率が高く、入力電圧が低いという性能を向上させる目的と、コイルの大きさが小さいという患者への負担を軽減する目的とを達成するための設計しかなされておらず、電磁界による生体への影響といった患者の安全性を考慮した設計がなされていないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電磁界による生体への影響が少なく、患者の安全性を確保することができる非接触電力供給装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る非接触電力供給装置は、上記課題を解決するために、電源から電力が供給される直径90mmの一次コイルと、前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、前記一次コイルに供給される電力の周波数が、300kHz以上1000kHz以下であることを特徴とする。
【0008】
上記特徴により、直径90mmの一次コイルと、直径60mmの二次コイルで出力電圧24ボルトのものとにおいて、300kHz以上1000kHz以下の電力を、一次コイルに供給するので、生体への刺激作用を表す電流密度が小さく、且つ伝送効率が高い非接触電力供給装置を提供することができる。
【0009】
本発明に係る他の非接触電力供給装置は、上記課題を解決するために、電源から電力が供給される直径90mmの一次コイルと、前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧12ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、前記一次コイルに供給される電力の周波数が、200kHz以上700kHz以下であることを特徴とする。
【0010】
上記特徴により、直径90mmの一次コイルと、直径60mmの二次コイルで出力電圧12ボルトのものとにおいて、200kHz以上700kHz以下の電力を、一次コイルに供給するので、生体への刺激作用を表す電流密度が小さく、且つ伝送効率が高い非接触電力供給装置を提供することができる。
【0011】
本発明に係るさらに他の非接触電力供給装置は、上記課題を解決するために、電源から電力が供給される直径100mmの一次コイルと、前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径70mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、前記一次コイルに供給される電力の周波数が、200kHz以上850kHz以下であることを特徴とする。
【0012】
上記特徴により、直径100mmの一次コイルと、直径70mmの二次コイルで出力電圧24ボルトのものとにおいて、200kHz以上850kHz以下の電力を、一次コイルに供給するので、生体への刺激作用を表す電流密度が小さく、且つ伝送効率が高い非接触電力供給装置を提供することができる。
【0013】
本発明に係るさらに他の非接触電力供給装置は、電源から電力が供給される直径100mmの一次コイルと、前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧12ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径70mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、前記一次コイルに供給される電力の周波数が、100kHz以上450kHz以下であることを特徴とする。
【0014】
上記特徴により、直径100mmの一次コイルと、直径70mmの二次コイルで出力電圧12ボルトのものとにおいて、100kHz以上450kHz以下の電力を、一次コイルに供給するので、生体への刺激作用を表す電流密度が小さく、且つ伝送効率が高い非接触電力供給装置を提供することができる。
【0015】
本発明に係るさらに他の非接触電力供給装置は、電源から電力が供給される直径90mmの一次コイルと、前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、電流密度が職業的曝露の基本制限に基づくように、前記一次コイルに供給される電力の周波数を、600kHz以上1000kHz以下にすることを特徴とする。
【0016】
本発明に係るさらに他の非接触電力供給装置は、電源から電力が供給される直径90mmの一次コイルと、前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧12ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、電流密度が職業的曝露の基本制限に基づくように、前記一次コイルに供給される電力の周波数を、300kHz以上700kHz以下にすることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るさらに他の非接触電力供給装置は、電源から電力が供給される直径100mmの一次コイルと、前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径70mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、電流密度が職業的曝露の基本制限に基づくように、前記一次コイルに供給される電力の周波数を、400kHz以上850kHz以下にすることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るさらに他の非接触電力供給装置は、電源から電力が供給される直径100mmの一次コイルと、前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧12ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径70mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、電流密度が職業的曝露の基本制限に基づくように、前記一次コイルに供給される電力の周波数を、200kHz以上450kHz以下にすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る非接触電力供給装置は、以上のように、直径90mmの一次コイルと、直径60mmの二次コイルで出力電圧24ボルトのものとにおいて、300kHz以上1000kHz以下の電力を、一次コイルに供給するので、生体への刺激作用を表す電流密度を小さくすることができ、且つ伝送効率を高くすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態について図1ないし図18に基づいて説明すると以下の通りである。図1は、本実施の形態に係る非接触電力供給装置1の構成を示す模式図である。図2は、非接触電力供給装置1に設けられた一次コイル2と二次コイル3との構成を示す模式図である。
【0021】
非接触電力供給装置1は、空心型の一次コイル2を備えている。一次コイル2には、電池4からインバータ回路7を介して電力が供給される。一次コイル2は、生体の皮膚の表面に対向して配置される。非接触電力供給装置1には、空心型の二次コイル3が設けられている。二次コイル3は、生体の皮膚の表面から5mm〜10mmよりも深い皮下組織に埋め込まれており、一次コイル2に対向するように配置されており、一次コイル2から電磁誘導作用により伝送された電力を、駆動装置6を介して人工心臓5に供給する。
【0022】
図3は、非接触電力供給装置1の伝送等価回路の構成を示す回路図である。電池4及び一次コイル2は、周波数ωの電圧V1、電流I1を供給する交流電源と、この交流電源に接続されたコンデンサC1、コイルL1及び巻線抵抗r1によって等価的に表される。二次コイル3、駆動装置6及び人工心臓5は、コイルL2、巻線抵抗r2、コンデンサC2及び負荷抵抗RLによって等価的に表される。
【0023】
一次コイル2、二次コイル3間の伝送効率は、下記の(式1)によって表される。
【0024】
【数1】

【0025】
交流電源から一次コイル2に入力される入力電圧V1の絶対値は、下記の(式2)によって表される。
【0026】
【数2】

【0027】
非接触電力供給装置1を適用する患者への負担を考慮すると、二次コイル3の直径は、70mm以下であることが必要であり、一次コイル2の直径は、100mm以下であることが必要である。
【0028】
高性能なコイルを設計するために、下記の(式3)によって表される評価関数Fを最小にするコイルの大きさ及び周波数を検討する。
【0029】
【数3】

【0030】
ここで、
η:伝送効率(%)(85%〜100%)、
V1:入力電圧(V)(0〜100V)、
D2:二次コイル3(体内コイル)の外直径(40mm〜70mm)、
である。
【0031】
図4は、非接触電力供給装置1の入力周波数と伝送効率ηとの関係を示すグラフである。横軸は一次コイル2に供給される入力電圧の周波数を示しており、縦軸は伝送効率ηを示している。一次コイル2の直径は90mmであり、二次コイル3の直径は60mmである。伝送効率ηを85%以上確保するためには、入力電圧の周波数を300kHz〜1000kHzにすればよいことが分かる。
【0032】
図5は、非接触電力供給装置1の入力周波数と入力電圧との関係を示すグラフである。横軸は一次コイル2に供給される入力電圧の周波数を示しており、縦軸は一次コイル2に供給される入力電圧を示している。入力電圧の周波数が0〜1000kHzのいずれであっても入力電圧は100V以下にすることができることが分かる。
【0033】
このように、一次コイル2の直径が90mmであり、二次コイル3の直径が60mmである場合(以下、基本モデルという)は、伝送効率ηを85%以上とし、入力電圧を100V以下にするためには、入力電圧の周波数を300kHz〜1000kHzにすればよい。
【0034】
図6は、非接触電力供給装置1の効率を高める構成の組み合わせを説明するための図である。前述したように、基本モデルで出力電圧を24Vにする場合は、伝送効率ηを85%以上とし、入力電圧を100V以下にするためには、入力電圧の周波数を300kHz〜1000kHzにすればよい。
【0035】
また、基本モデルで出力電圧を12Vにする場合は、入力電圧の周波数を200kHz〜700kHzにすればよい。また、一次コイル2の直径が100mmであり、二次コイル3の直径が70mmで(以下、拡張モデルという)出力電圧を24Vにする場合は、伝送効率ηを85%以上とし、入力電圧を100V以下にするためには、入力電圧の周波数を200kHz〜850kHzにすればよい。拡張モデルで出力電圧を12Vにする場合は、入力電圧の周波数を100kHz〜450kHzにすればよい。
【0036】
図7は、電磁界による生体への影響を説明するための図である。図8は、電磁界による生体への影響の解析評価方法を説明するための図である。電磁界による生体への影響としては、生体組織内のジュール熱の発生により温度上昇を引き起こす作用(熱作用)と、誘導電流により神経及び筋の興奮を引き起こす作用(刺激作用)とが知られている。一般に、熱作用の指標には生体組織に吸収される単位質量あたりの電力である比吸収率(SAR:Specific Absorption Rate[W/kg])が用いられ、刺激作用の指標には電流密度[A/m]が用いられる。これらの値は、国際非電離放射線防護委員会(International Commission on Non−Ionizing Radiation Protection;ICNIRP)により基本制限が定められている。本発明者らは、熱作用と刺激作用とに着目し、電磁界解析により、SARと電流密度とを求め、生体に影響の少ない周波数及び伝送電力等の伝送条件を導出する。
【0037】
SARは、
E:電界の実効値[V/m]、
σ:導電率[S/m]、
ρ:生体組織の密度[kg/m]、
とすると、
SAR=σE/ρ
で表される。
【0038】
SARの見積もりは、解析によるものと、実験によるものとがある。実験によるものは、一般的に生体の形状及び電気特性を模擬した擬似生体(ファントム)を用い、電磁照射時の温度上昇を測定して電力に換算する方法、及び液体ファントムの場合には電界プローブを直接挿入し、電界強度分布を測定する方法が知られている。しかし、実験による場合、電磁界によるファントムの温度上昇以外に、銅損による経皮トランス自体の温度上昇が考えられるため、正確な測定ができないと考えられる。よって、ここでは電磁界解析によってSARを求める。
【0039】
次に、SARの基本制限について述べる。ICNIRPにより定められている基本制限を図8に示す。基本制限は、職業的曝露と公衆の曝露とに分けられる。職業的曝露は、通常は既知の条件下で曝露を受けており、適切な予防措置をとるための訓練を受けている成人から成っている集団に適用される。一方、公衆の曝露は、あらゆる年齢層、健康状態の人から成り、特に影響を受けやすいグループ、個人が含まれる集団に適用される。職業的曝露のSARの基本制限は、10[W/kg]であり、公衆の曝露のSARの基本制限は、2[W/kg]である。
【0040】
電流密度Jは、
J=πRfσμH
によって表される。
ここで、
f:周波数[Hz]、
μ:透磁率[H/m]、
R:誘導電流ループの半径[m]、
H:磁界
である。
【0041】
電流密度Jの見積もりも、解析によるものと実験によるものとがある。実験によるものとしては、測定部位以外の表面を導体と絶縁体との二層構造よりなるカバーで被覆することにより、測定部位のみに流れる電流を測る方法が提案されている。ここでは、電磁界解析によって電流密度を求める。電流密度Jの基本制限も職業的曝露と公衆の曝露とに分けられる。職業的曝露の電流密度Jの基本制限は、f/100[mA/m]であり、公衆の曝露の電流密度Jの基本制限は、f/500[mA/m]である。
【0042】
SAR、電流密度を求めるための解析には、伝送線路行列法(TLM法:Transmission−Line Modeling Method)を用いた電磁解析ソフトを用いる。TLM法は、ホイヘンスの原理に基づいた波動伝播のメカニズムを時空間について離散化して、コンピュータ上で波動伝播を追跡する手法である。これを定量的に扱うために、波動伝播を等価的に伝達線路網状の電圧インパルスの伝播・散乱に変換している。
【0043】
この電磁解析ソフトを用いて解析を行う手順を以下に示す。まず、形状及び電気的特性を生体に近似させたモデルを作成する。次に、作成したモデルをメッシュで切り、細かいセルに分割する。そして、分割したセルごとに電界E、磁界Hを計算し、求まった磁界EよりSARを計算する。ここまでをソフト上で行い、その後、計算して求めた磁界Hに基づいて電流密度Jを導出する。
【0044】
図9は、電磁界による生体への影響の解析モデルを説明するための図である。胴体を短軸230mm、長軸280mm、高さ625mmの楕円柱でモデル化した。生体組織は、皮膚、脂肪及び筋の3層としている。胴の長さは、成人以上の日本人男性の平均値を用いた。皮膚は5mm、脂肪は10mmの厚さとし、残りは筋とした。空心型経皮トランスの体外コイル(二次コイル3)は、外直径90mm(35回巻)、内直径20mmとし、胴から5mm離れた場所に配置した。
【0045】
図10は、非接触電力供給装置1の人工心臓5の出力電力と局所SARとの関係を示すグラフである。横軸は人工心臓5で消費される出力電力を示しており、縦軸は非接触電力供給装置1によって生じる局所SARを示している。局所SARは、出力電力が変化しても、殆ど変化しないことが分かる。
【0046】
図11は、非接触電力供給装置1の一次コイル2への入力周波数と局所SARとの関係を示すグラフである。横軸は一次コイル2へ入力される電圧の入力周波数を示しており、縦軸は非接触電力供給装置1によって生じる局所SARを示している。出力電圧24V、入力周波数1000kHzのときの局所SARの最大値0.014[W/kg]は、公衆の曝露のSARの基本制限値2[W/kg]よりもはるかに小さい。従って、電磁界による生体への影響において、SARは考慮する必要がないことが分かる。
【0047】
図12は、非接触電力供給装置1の人工心臓5の出力電力と電流密度との関係を示すグラフである。横軸は人工心臓5で消費される出力電力を示しており、縦軸は非接触電力供給装置1によって生じる電流密度を示している。電流密度は、出力電力が変化しても、殆ど変化しないことが分かる。
【0048】
図13は、非接触電力供給装置1の基本モデルにおける一次コイル2への入力周波数と電流密度との関係を示すグラフである。横軸は一次コイル2へ入力される電圧の入力周波数を示しており、縦軸は非接触電力供給装置1によって生じる電流密度を示している。出力電圧24Vのとき、入力周波数が200kHzに減少すると、電流密度は、職業的曝露の電流密度Jの基本制限を超えることが分かる。
【0049】
図14は、拡大モデルにおける一次コイル2への入力周波数と電流密度との関係を示すグラフである。出力電圧24Vのとき、入力周波数が200kHzに減少しても、電流密度は、職業的曝露の電流密度Jの基本制限を超えないことが分かる。
【0050】
図15は、非接触電力供給装置1を安全に使用可能な伝送条件を説明するための図である。電流密度JとICNIRPに基づく職業的曝露の電流密度Jの基本制限とを考慮すれば、電流密度Jが職業的曝露の基本制限を超えないためには、基本モデルで出力電圧24Vでは、入力周波数300kHz以上にすればよい。出力電圧12Vでは、入力周波数100kHz以上にすればよい。拡大モデルで出力電圧24Vでは、入力周波数200kHz以上にすればよい。出力電圧12Vでは、入力周波数100kHz以上にすればよい。
【0051】
電流密度Jが職業的曝露の基本制限×0.5を超えないためには、基本モデルで出力電圧24Vでは、入力周波数600kHz以上にすればよい。出力電圧12Vでは、入力周波数300kHz以上にすればよい。拡大モデルで出力電圧24Vでは、入力周波数400kHz以上にすればよい。出力電圧12Vでは、入力周波数200kHz以上にすればよい。
【0052】
図16は、非接触電力供給装置1を安全且つ高効率に使用可能な構成条件を説明するための図である。電流密度Jが職業的曝露の基本制限を超えず安全であり、且つ伝送効率が85%以上、入力電圧100V以下であって高効率にするためには、基本モデルで出力電圧24Vのときは、入力周波数を300kHz以上1000kHz以下にすればよい。出力電圧12Vのときは、入力周波数を200kHz以上700kHz以下にすればよい。拡大モデルで出力電圧24Vのときは、入力周波数を200kHz以上850kHz以下にすればよい。出力電圧12Vのときは、入力周波数を100kHz以上450kHz以下にすればよい。
【0053】
図17は、非接触電力供給装置1を安全且つ高効率に使用可能な構成条件を説明するための図である。電流密度Jが職業的曝露の基本制限×0.5を超えず安全であり、且つ伝送効率が85%以上、入力電圧100V以下であって高効率にするためには、基本モデルで出力電圧24Vのときは、入力周波数を600kHz以上1000kHz以下にすればよい。出力電圧12Vのときは、入力周波数を300kHz以上700kHz以下にすればよい。拡大モデルで出力電圧24Vのときは、入力周波数を400kHz以上850kHz以下にすればよい。出力電圧12Vのときは、入力周波数を200kHz以上450kHz以下にすればよい。
【0054】
なお、図16及び図17に示すような安全面及び性能面の全条件を満たす周波数範囲を示す表示を、非接触電力供給装置1に貼り付けてもよい。また、非接触電力供給装置1の取り扱い説明書に上記周波数範囲を示す表示を貼り付けてもよい。
【0055】
図18は、非接触電力供給装置1を安全且つ高効率に使用可能な構成条件を説明するための図である。図17に示すように、基本モデルでは、電流密度Jが職業的曝露の基本制限×0.2を超えず安全である条件は存在しない。また、図18に示すように、拡大モデルでは、出力電圧12Vのときに、入力周波数が600kHz以上であれば、電流密度Jが職業的曝露の基本制限×0.2を超えず安全であるが、図6に示すように、拡大モデルで出力電圧12Vのときは、入力周波数が600kHz以上になると、伝送効率85%以上という高効率の条件を満足することができない。従って、職業的曝露の基本制限×0.2という条件にすると、安全且つ高性能という全条件を満たすことはできない。
【0056】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電源から電力が供給される一次コイルと、一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に供給する体内埋め込み可能な二次コイルとを備えた非接触電力供給装置に適用することができる。
【0058】
また、本発明は、携帯電話に使用する非接触電力供給装置に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施の形態に係る非接触電力供給装置の構成を示す模式図である。
【図2】上記非接触電力供給装置に設けられた一次コイルと二次コイルとの構成を示す模式図である。
【図3】上記非接触電力供給装置の伝送等価回路の構成を示す回路図である。
【図4】上記非接触電力供給装置の入力周波数と伝送効率との関係を示すグラフである。
【図5】上記非接触電力供給装置の入力周波数と入力電圧との関係を示すグラフである。
【図6】上記非接触電力供給装置の効率を高める構成の組み合わせを説明するための図である。
【図7】電磁界による生体への影響を説明するための図である。
【図8】上記電磁界による生体への影響の解析評価方法を説明するための図である。
【図9】上記電磁界による生体への影響の解析モデルを説明するための図である。
【図10】上記非接触電力供給装置の人工心臓の出力電力と局所SARとの関係を示すグラフである。
【図11】上記非接触電力供給装置の一次コイルへの入力周波数と局所SARとの関係を示すグラフである。
【図12】上記非接触電力供給装置の人工心臓の出力電力と電流密度との関係を示すグラフである。
【図13】上記非接触電力供給装置の基本モデルにおける一次コイルへの入力周波数と電流密度との関係を示すグラフである。
【図14】上記非接触電力供給装置の拡大モデルにおける一次コイルへの入力周波数と電流密度との関係を示すグラフである。
【図15】上記非接触電力供給装置を安全に使用可能な伝送条件を説明するための図である。
【図16】上記非接触電力供給装置を安全且つ高効率に使用可能な構成条件を説明するための図である。
【図17】上記非接触電力供給装置を安全且つ高効率に使用可能な構成条件を説明するための図である。
【図18】上記非接触電力供給装置を安全且つ高効率に使用可能な構成条件を説明するための図である。
【符号の説明】
【0060】
1 非接触電力供給装置
2 一次コイル
3 二次コイル
4 電池(電源)
5 人工心臓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源から電力が供給される直径90mmの一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、
前記一次コイルに供給される電力の周波数が、300kHz以上1000kHz以下であることを特徴とする非接触電力供給装置。
【請求項2】
電源から電力が供給される直径90mmの一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧12ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、
前記一次コイルに供給される電力の周波数が、200kHz以上700kHz以下であることを特徴とする非接触電力供給装置。
【請求項3】
電源から電力が供給される直径100mmの一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径70mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、
前記一次コイルに供給される電力の周波数が、200kHz以上850kHz以下であることを特徴とする非接触電力供給装置。
【請求項4】
電源から電力が供給される直径100mmの一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧12ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径70mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、
前記一次コイルに供給される電力の周波数が、100kHz以上450kHz以下であることを特徴とする非接触電力供給装置。
【請求項5】
電源から電力が供給される直径90mmの一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、
電流密度が職業的曝露の基本制限に基づくように、前記一次コイルに供給される電力の周波数を600kHz以上1000kHz以下にすることを特徴とする非接触電力供給装置。
【請求項6】
電源から電力が供給される直径90mmの一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧12ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径60mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、
電流密度が職業的曝露の基本制限に基づくように、前記一次コイルに供給される電力の周波数を、300kHz以上700kHz以下にすることを特徴とする非接触電力供給装置。
【請求項7】
電源から電力が供給される直径100mmの一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧24ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径70mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、
電流密度が職業的曝露の基本制限に基づくように、前記一次コイルに供給される電力の周波数を、400kHz以上850kHz以下にすることを特徴とする非接触電力供給装置。
【請求項8】
電源から電力が供給される直径100mmの一次コイルと、
前記一次コイルから電磁誘導作用により伝送された電力を人工心臓に出力電圧12ボルトで供給するために設けられた体内埋め込み可能な直径70mmの二次コイルとを備えた非接触電力供給装置であって、
電流密度が職業的曝露の基本制限に基づくように、前記一次コイルに供給される電力の周波数を、200kHz以上450kHz以下にすることを特徴とする非接触電力供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−49055(P2008−49055A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230869(P2006−230869)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】