説明

非接触ICカード通信調整板および非接触ICカード収納具

【課題】磁性シートに無駄を省くことができ、安価で容易に製造することが可能である非接触ICカード通信調整板を提供する。
【解決手段】非接触ICカード通信調整板1は、外部装置40が発信する電磁波を利用して前記外部装置40と非接触で通信することができる非接触ICカード30に重ね合わせて使用し、外部装置40と非接触ICカード30との間の電磁波を遮断ないし減衰させるものであり、シールドシート10と、シールドシート10の片面または両面に積層され、外部装置40と非接触ICカード30との間の電磁波を透過させる、複数の貫通孔21,21aを有する多孔磁性シート20,20Aと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置が発信する電磁波を利用して外部装置と非接触で通信することができる非接触ICカードに重ね合わせて使用する、外部装置と非接触ICカードとの通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板および非接触ICカードを収納したままで使用することができる非接触ICカード収納具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の非接触ICカード通信調整板としては、例えば本願出願人が提案した特許文献1、および特許文献2に示すようなものがある。
すなわち、特許文献1は、電磁シールド効果を有する略四辺形の電磁シールド層の片面または両面に該電磁シールド層よりもやや狭い面積を有する高透磁層を積層したものである。そして、高透磁層は、電磁シールド層にほぼ相似の形状を有しており、その周縁外側は電磁シールド層に囲まれるように形成されている。
【0003】
また、特許文献2も特許文献1と同様に、導電性シートに磁性シートを積層したものであり、磁性シートは、導電性シートの形状より小さい形状であり、導電性シートの外周縁部分には積層しないようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2006−350748号公報
【特許文献2】特許第3872496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、電磁シールド層の外周縁部を残してその内側全体に高透磁層が形成されているので、外部装置と非接触ICカードとの通信は良好にすることができるが、高透磁層の占める面積が大きいので高価になるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2には、導電性シートの外周縁部を残してその近傍内側に磁性シートを積層するようにして形成したもので、磁性シートとして一枚の磁性シートの内側を広い面積に亘ってくり貫いた形状を有するものが開示されている。しかしながら、このような形状の磁性シートを製造するためには、例えば、磁性シートを四辺形に形成してから中央側をくり貫くなどしなければならず、磁性シートに無駄が生じ得るという問題があった。また、中央側をくり貫くことなく製造するには、そのための製造技術が必要になるという問題があった。さらに、このような形状の磁性シートを導電性シートに貼着するには、そのための生産技術が必要であった。
【0007】
本発明は、このような従来の技術が有する問題点に着目してなされたもので、磁性シートに無駄を省くことができ、安価で容易に製造することが可能である非接触ICカード通信調整板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。[1] 外部装置(40)が発信する電磁波を利用して前記外部装置(40)と非接触で通信することができる非接触ICカード(30)に重ね合わせて使用する、前記外部装置(40)と前記非接触ICカード(30)との通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板(1)において、
前記外部装置(40)と前記非接触ICカード(30)との間の前記電磁波を遮断ないし減衰させる、シールドシート(10)と、
前記シールドシート(10)の片面または両面に積層され、前記外部装置(40)と前記非接触ICカード(30)との間の前記電磁波を透過させる、複数の貫通孔(21,21a)を有する多孔磁性シート(20,20A)と、を備えたことを特徴とする非接触ICカード通信調整板(1)。
【0009】
[2] 前記多孔磁性シート(20,20A)は、前記シールドシート(10)の周縁の外側にはみ出した部分がなく、前記多孔磁性シート(20,20A)の周縁(23,23a)には前記貫通孔(21,21a)が掛かって形成された切欠き凹部(22,22a)を有することを特徴とする[1]に記載の非接触ICカード通信調整板(1)。
【0010】
[3] 前記非接触ICカード(30)がICに接続されたアンテナコイル(33)を内蔵し、
前記多孔磁性シート(20,20A)は、前記シールドシート(10)を前記非接触ICカード(30)に重ね合わせた使用状態において、前記アンテナコイル(33)の少なくとも一部に重なることを特徴とする[1]または[2]に記載の非接触ICカード通信調整板(1)。
【0011】
[4] 外部装置(40)が発信する電磁波を利用して前記外部装置(40)と非接触で通信することができる非接触ICカード(30)に重ね合わせて使用する、前記外部装置(40)と前記非接触ICカード(30)との通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板(1A)において、
前記外部装置(40)と前記非接触ICカード(30)との間の前記電磁波を遮断ないし減衰させる、シールドシート(10)と、
前記シールドシート(10)の片面または両面に積層され、前記外部装置(40)と前記非接触ICカード(30)との間の前記電磁波を透過させる複数の磁性シート片(100)と、を備え、
前記複数の磁性シート片(100)は、シールドシート(10)の周縁のうち一つの角部(101)で繋がる、2方向に延びる2つの周縁には同時に接触可能であるが、同方向に延びる2つの周縁には接触しない大きさであることを特徴とする非接触ICカード通信調整板(1A)。
【0012】
[5] 前記非接触ICカード(30)がICに接続されたアンテナコイル(33)を内蔵し、
前記複数の磁性シート片(100)の少なくとも1つは、前記シールドシート(10)を前記非接触ICカード(30)に重ね合わせた使用状態において、前記アンテナコイル(33)の一部に重なることを特徴とする[4]に記載の非接触ICカード通信調整板(1A)。
【0013】
[6] 外部装置(40)と非接触で通信することができる非接触ICカード(30)を収納したままで使用する非接触ICカード収納具(50、60)において、
前記非接触ICカード(30)を収納するICカード収納部(51、63)内に、前記外部装置(40)と前記非接触ICカード(30)との通信状態を調整するための[1]から[5]の何れか一項に記載の非接触ICカード通信調整板(1、1A)を備え、
前記非接触ICカード通信調整板(1、1A)は、前記ICカード収納部(51、63)に収納した前記非接触ICカード(30)と重なり合うように取り付けたことを特徴とする非接触ICカード収納具(50、60)。
【0014】
前記本発明は次のように作用する。
シールドシート(10)は、透過しようとする電磁波を遮断ないし減衰することができるものである。また、多孔磁性シート(20,20A)および磁性シート片(100)は、電磁波を空気層よりも高密度に透過させることができるものである。
【0015】
したがって、非接触ICカード(30)の表裏両面のうち外部装置(40)に面する側に非接触ICカード通信調整板(1A)が重ね合わされているような状態にあるときは、非接触ICカード通信調整板(1A)側の面が多孔磁性シート(20,20A)または磁性シート片(100)を備える面であるか否かにかかわらず、シールドシート(10)が外部装置(40)からの電磁波を遮断して、非接触ICカード(30)と外部装置(40)との通信を防止することができる。
【0016】
逆に、非接触ICカード通信調整板(1A)が外部装置(40)とは反対側で非接触ICカード(30)に重ね合わさった状態にあり、すなわち、非接触ICカード(30)が外部装置(40)に面するような状態にあり、かつ、その重ね合わさった非接触ICカード通信調整板(1A)側の面が多孔磁性シート(20,20A)または磁性シート片(100)を備えない面であるときは、外部装置(40)からの電磁波は、非接触ICカード(30)を透過した後、シールドシート(10)によって減衰させられるので、この場合にも外部装置(40)との通信を防止することができる。
【0017】
これに対して、非接触ICカード通信調整板(1A)に重ね合わさった非接触ICカード(30)が外部装置(40)に面するような状態にあり、かつ、その重ね合わさった非接触ICカード通信調整板(1A)側の面が多孔磁性シート(20,20A)または磁性シート片(100)を備える面であるときは、外部装置(40)からの電磁波は、非接触ICカード通信調整板(1A)に遮られずに直接に非接触ICカード(30)に至る。そして、アンテナコイル(33)が電磁波を受信すると、磁誘導により非接触ICカード(30)内に電流が供給され、これにより、非接触ICカード(30)が動作して電磁波を発信する。このようにして、非接触ICカード通信調整板(1A)は、非接触ICカード(30)と外部装置(40)との通信を可能にしたり、防止したりすることができる。
【0018】
項[1]に係る非接触ICカード通信調整板(1)は、シールドシート(10)の片面または両面には、多孔磁性シート(20,20A)が積層されている。この多孔磁性シート(20,20A)には、その全面にわたって複数の貫通孔(21,21a)がくり貫かれている。これにより、複数の貫通孔(21,21a)の分だけ使用する磁性材が少なく済むので、安価に製造することができる。
【0019】
また、貫通孔(21,21a)を形成する際にくり貫かれた磁性シート片は、後述するように他のタイプの非接触ICカード通信調整板(1A)に使用することができるので、無駄を省くことができる。
【0020】
シールドシート(10)に積層された多孔磁性シート(20,20A)の周縁(23,23a)がシールドシート(10)の周縁(23,23a)の外側にはみ出さない大きさに形成されており、さらに、周縁には貫通孔(21,21a)が掛かって形成された切欠き凹部(22,22a)を有するものの場合には、切欠き凹部(22,22a)の周縁は、切欠き凹部(22,22a)が形成されていない周縁よりも内側に凹んでいる。このため、例えば多孔磁性シート(20,20A)とシールドシート(10)の大きさがほぼ同じであり、多孔磁性シート(20,20A)の周縁(23,23a)のうち切欠き凹部(22,22a)の無い部分とシールドシート(10)の周縁とが一致している場合であっても、多孔磁性シート(20,20A)の周縁(23,23a)とシールドシート(10)の周縁とはそれぞれの全周にわたって一致しているわけではなく、切欠き凹部(22,22a)の周縁は、シールドシート(10)の周縁が囲む領域の内側に凹んでおり、シールドシート(10)の周縁から必ず離れた位置にある。
【0021】
すなわち、多孔磁性シート(20,20A)の切欠き凹部(22,22a)の所では、多孔磁性シート(20,20A)の周縁(23,23a)がシールドシート(10)の周縁に至っていない。これにより、使用状態において、外部装置(40)からの電磁波が非接触ICカード通信調整板(1)を回り込んで反対側にある非接触ICカード(30)の情報を読み取ってしまう読み取りエラーの発生する可能性を低下させることができる。
【0022】
また、複数の貫通孔(21,21a)の部分ではシールドシート(10)が露出しているので、その部分に入射する電磁波では非接触ICカード(30)の情報を読み取ることができないが、シールドシート(10)を非接触ICカード(30)に重ね合わせた使用状態において、非接触ICカード(30)のアンテナコイル(33)の少なくとも一部に多孔磁性シート(20,20A)が重なるようにすることにより、その重なった部分に入射する電磁波によって非接触ICカード(30)の情報を読み取ることができる。また、シールドシート(10)が露出していることにより、非接触ICカード通信調整板(1)の反対側にある非接触ICカード(30)の情報を読み取ってしまう読み取りエラーの発生する可能性をより低下させることができる。
【0023】
項[4]に係る非接触ICカード通信調整板(1A)は、シールドシート(10)の片面または両面には、複数の磁性シート片(100)が積層されている。この磁性シート片(100)は、例えば、項[1]に係る非接触ICカード通信調整板(1)の多孔磁性シート(20,20A)に複数の貫通孔(21,21a)を形成する際に磁性シートからくり貫いた磁性シート片を使用することができる。これにより、磁性材をほとんど無駄にすることなく非接触ICカード通信調整板(1、1A)を製造することができる。
【0024】
複数の磁性シート片(100)は、シールドシート(10)の周縁のうち一つの角部(101)で繋がる、2方向に延びる2つの周縁には同時に接触可能であるが、同方向に延びる2つの周縁には接触しない大きさであるので、シールドシート(10)上に積層する際に、ランダムに配置することができるので、容易に製造することができる。
【0025】
複数の磁性シート片(100)のシールドシート(10)上への積層に際しては、非接触ICカード(30)のアンテナコイル(33)全体が複数の磁性シート片(100)同士間の間隙に収まってしまうような配置にならないようにすればよい。すなわち、シールドシート(10)を非接触ICカード(30)に重ね合わせた使用状態において、複数の磁性シート片(100)の少なくとも1つがアンテナコイル(33)の一部に重なるようにすればよい。これにより、アンテナコイル(33)に重なった磁性シート片(100)に入射する電磁波によって非接触ICカード(30)の情報を読み取ることができる。
【0026】
また、非接触ICカード(30)を収納するICカード収納部(51、63)を有し、該ICカード収納部(51、63)に収納した非接触ICカード(30)と重なり合うように非接触ICカード通信調整板(1、1A)を取り付けた非接触ICカード収納具(50、60)によれば、非接触ICカード通信調整板(1、1A)と非接触ICカード(30)とが適切な位置関係に重なるので、非接触ICカード通信調整板(1、1A)の奏する効果を好適に発揮させることができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に係る発明の非接触ICカード通信調整板によれば、シールドシートに積層する磁性シートとして、磁性シートに複数の貫通孔をくり貫いた多孔磁性シートとしたので、複数の貫通孔の分だけ磁性材が少なく済むので、安価に製造することができ、また、くり貫いた磁性シート片を他のタイプの非接触ICカード通信調整板に磁性シート片として使用することができるので磁性材に無駄が生じることをなくすことができる。
【0028】
また、多孔磁性シートの周縁に形成された切欠き凹部は、その周縁がシールドシートの周縁が囲む領域の内側に確実に位置し、シールドシートの周縁から離れているので、その分、外部装置からの電磁波が非接触ICカード通信調整板を回り込んで反対側にある非接触ICカードの情報を読み取ってしまう読み取りエラーの発生する可能性を低下させることができる。また、多孔磁性シートの貫通孔により、非接触ICカード通信調整板の全面にわたってシールドシートの露出部分が分布しているので、非接触ICカード通信調整板の反対側にある非接触ICカードの情報を読み取ってしまう読み取りエラーの発生する可能性をより低下させることができ、非接触ICカードからの情報の読み取りが安定したものとなる。
【0029】
請求項4に係る発明の非接触ICカード通信調整板によれば、シールドシートに積層する磁性シートの代わりに、複数の磁性シート片をシールドシートに積層してあり、その磁性シート片は、シールドシートの周縁のうち一つの角部で繋がる、2方向に延びる2つの周縁には同時に接触可能であるが、同方向に延びる2つの周縁には接触しない大きさであるので、シールドシートに積層する際に磁性シート片の向きや配置の仕方に制限がなく、磁性シート片をランダムに配置することができ、もって容易に製造することができる。また、磁性シート片同士の間には、シールドシートの露出した部分があるので、非接触ICカード通信調整板の反対側にある非接触ICカードの情報を読み取ってしまう読み取りエラーの発生する可能性をより低下させることができ、非接触ICカードからの情報の読み取りが安定したものとなる。
【0030】
また、磁性シート片として、多孔磁性シートを製造する際に磁性シートからくり貫いたものを使用することができるので、磁性材をほとんど無駄にすることなく、安価に非接触ICカード通信調整板を製造することができる。
【0031】
請求項6に係る非接触ICカード収納具によれば、非接触ICカードをICカード収納部に収納することにより、非接触ICカード通信調整板と非接触ICカードとが適切な位置関係に重なるので、非接触ICカード通信調整板の奏する効果を好適に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、図面に基づき本発明の好適な各種の実施の形態を説明する。
図1から図5までは、本発明の第1の実施の形態を示している。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板に積層する多孔磁性シートを示す平面図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板の長辺側から見た側面図であり、図3は、本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板の作用を説明する図である。図4は、本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板に積層する多孔磁性シートの変形例を示す平面図であり、図5は、本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板の変形例を示す平面図である。また、図9は、非接触ICカードを示す斜視図であり、図10は、非接触ICカードの使用状態を示す概略図である。
【0033】
図9に示すように、非接触ICカード通信調整板1を使用する非接触ICカード30は、カード型の本体31にICチップ32と該ICチップ32に接続されたアンテナコイル33とが埋設されたものであり、電磁波を利用して無線で非接触に外部装置40との間でデータやプログラムの読み書きを行うものである。外部装置40はカードリーダ・ライタ等である。
【0034】
図10に示すように、外部装置40側から非接触ICカード30に誘導電磁波を照射すると、非接触ICカード30側ではアンテナコイル33が誘導電磁波を受信して、アンテナコイル33に誘導起電力が生じる。この誘導起電力が非接触ICカード30の駆動電力となるとともに誘導電磁波に重畳された電磁波によりICチップ32に記憶されたデータが読み取られる。
【0035】
このような非接触ICカード30に重ね合わせて使用する非接触ICカード通信調整板1は、外部装置40と非接触ICカード30との間での通信を防止するために、非接触ICカード30と外部装置40との間の電磁波を遮断ないし減衰させる作用を発揮することができるものである。
【0036】
図2および図3に示すように、非接触ICカード通信調整板1は、電磁波を遮断ないし減衰させるためのシールドシート10に電磁波が透過する磁性シート20を積層して配設したものである。この非接触ICカード通信調整板1は、図10に示すように外部装置40と非接触ICカード30との間で行われる非接触の通信状態を調整するために使用するものである。
【0037】
シールドシート10は、略四辺形の平面形状に形成されており、その大きさは、非接触ICカード30と重ね合わせたときに非接触ICカード30に内蔵されるアンテナコイル33より大きいものであることが好ましい。これにより、非接触ICカード通信調整板1を非接触ICカード30に重ね合わせたときに、非接触ICカード通信調整板1の周縁からの電磁波の回り込みを減少させて、外部装置40と非接触ICカード30との間の電磁波を確実に遮断ないし減衰させるようにすることができる。
【0038】
非接触ICカード30のアンテナコイル33は、送信と受信を兼用するものであるが、これには限定されず、送信用アンテナと受信用アンテナとを別個に備えていてもよい。送信用と受信用に別個のアンテナを備えている場合には、いずれか一方のアンテナをシールドシート10により遮蔽することができれば、非接触ICカード30と外部装置40との通信を防止することができる。
【0039】
このシールドシート10は、導電性を有することによって電磁シールド効果が得られる素材を用いて形成されている。金属であれば、例えば、金、銀、白金、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル等である。また、金属以外の物質としては、例えば導電性セラミックなどを用いることができる。これら金属等は、メッシュ状、ラティス状、箔状、あるいは板状等に形成したものが使用される。
【0040】
シールドシート10は、所定の媒体から成る基体(Base)に前記のように形成した金属等を貼付等して設けたものであってもよい。基体の素材としては、例えば、シート状のプラスチック、布、紙等を使用することができる。
【0041】
また、シールドシート10は、平板状に形成した基体に粉状の金属等を塗布したものであってもよい。また、粉状のプラスチックに金属粉を含有させ、これを層状に成形したものであってもよい。さらに、層状の基体に金属等を貼付したり、縫い込んだりしてシールドシート10を構成するようにしてもよい。
【0042】
基体に使用するプラスチックは、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の任意の樹脂材料を用いることができる。これら樹脂材料を基体とする場合、シールドシート10は、基体中に導電性パウダーが混入されたプラスチックフィルム状に形成されたもの、表面に金属薄膜が蒸着されたプラスチックフィルム状に形成されたもの、表面に金属箔が貼り付けられたプラスチックフィルム状に形成されたもの、表面に導電性樹脂が塗布されたプラスチックフィルム状に形成されたもの、内部に金属線又は金属製の網が埋め込まれたプラスチックフィルム状に形成されたもの等にすることができる。
以上のようにして形成したシールドシート10は、透過しようとする電磁波を遮蔽することができる。
【0043】
このシールドシート10に積層する磁性シートは、非接触により外部装置40と通信する非接触ICカード30が当該外部装置40と通信するのを誘導する役割を果たすものであり、シールドシート10との組み合わせにより、非接触ICカード30の通信状態を好適に調整するものである。
【0044】
図1から図4までに示すように、本実施の形態の非接触ICカード通信調整板1が備える磁性シートは、複数の貫通孔21,21aが穿設されている。この複数の貫通孔21,21aを有する磁性シートを以下に多孔磁性シート20,20Aと記す。この多孔磁性シート20,20Aは、シールドシート10の両面に積層されている。
【0045】
多孔磁性シート20,20Aは、その全面にわたって多数の貫通孔21,21aが穿設されている。図1では、全ての貫通孔21を同一の大きさの円形のものとして例示し、図4では全ての貫通孔を同一の大きさの正方形の貫通孔21aとして例示したが、これらの形状に限定されるものではなく、また、他の形状に限定されるものでもない。貫通孔21,21aは、異なる大きさのものが混在していてもよいし、さらに、複数種類の形状のものが混在していてもよい。また、図1や図4には、多孔磁性シート20,20Aの全面にわたって多数の貫通孔21,21aがほぼ均等に配置されているように例示してあるが、貫通孔21,21aの配置は均等でなくてもよい。磁性シートに貫通孔をくり貫いた際の磁性シートの切片は、例えば図6の磁性シート片100や図7の磁性シート片100a,100b,100c,100dや図8の磁性シート片100eとして、本実施の形態の非接触ICカード通信調整板1とは異なるタイプの非接触ICカード通信調整板1Aの製造に有効利用することができる。
【0046】
貫通孔21,21aは、例えば非接触ICカード30を非接触ICカード通信調整板1に重ね合わせた使用状態において、非接触ICカード30に内蔵されたアンテナコイル33全体が収まってしまうような大きさでなければよい。ただし、図9に示したアンテナコイル33は、非接触ICカード30の本体31よりもやや小さい領域を囲むような大きさに配置されているが、非接触ICカード30に内蔵されているアンテナコイルはこのように大きく配置されたものばかりではない。このため、全体が図示したアンテナコイル33よりも小さいアンテナコイル33が内蔵されている非接触ICカード30に対しては、アンテナコイル33の全体が収まってしまうような大きさの貫通孔21,21aであっても、使用状態において多孔磁性シート20,20Aがアンテナコイル33の少なくとも一部に重なる部分が残るような配置となるように穿設すればよい。
【0047】
図2に示したように多孔磁性シート20,20Aは、その周縁23,23aがシールドシート10の周縁の外側にはみ出さないように配設されている。また、図1や図4に示したように貫通孔21,21aは、多孔磁性シート20,20Aの周縁23,23aにかかってくり貫かれたものもあり、それらは周縁23,23aに切欠き凹部22,22aを形成している。このため、多孔磁性シート20,20Aの形状と大きさがシールドシート10と同一の場合に、多孔磁性シート20,20Aの周縁23,23aをシールドシート10の周縁と一致するように積層させても、切欠き凹部22,22aの周縁は、シールドシート10の周縁よりも必ず内側に位置する。これにより、シールドシートの全周縁と磁性シートの全周縁とが一致している非接触ICカード通信調整板に比べて、外部装置40に面した面とは反対側にある非接触ICカード30を外部装置40が読み取ってしまう読取りエラーの防止効果が向上する。さらに、多孔磁性シート20,20Aの貫通孔21,21aにより、非接触ICカード通信調整板1の全面にわたってシールドシート10の露出部分が分布していることにより、非接触ICカード通信調整板1の反対側にある非接触ICカード30の情報を読み取ってしまう読み取りエラーの発生する可能性をより低下させることができる。これにより、情報を読み取るべき非接触ICカード30からの情報の読み取りがより安定したものとなる。
【0048】
このように形成される多孔磁性シート20,20Aは、透磁率μに優れた材料が使用される。例えば、使用する電磁波の周波数において、比透磁率は100以上のものが好ましく、より好ましくは1000以上のものである。具体的には、パーマロイ、フェライト、センダスト、方向性ケイ素鋼等を使用することができる。これにより、多孔磁性シート20,20Aは、電磁波を空気層よりも高密度に透過させることができる。
【0049】
多孔磁性シート20,20Aは、プラスチックフィルム等に前記パーマロイ等の材料を蒸着等させたものから貫通孔21,21aを打ち抜くなどしてくり貫くことで製造することができる。
【0050】
なお、シールドシート10と多孔磁性シート20,20Aとを積層する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を使用することができる。一例として、それぞれ単独で形成されたシールドシート10と多孔磁性シート20,20Aとを接着剤や粘着剤を介して接着する等の手段により、両者を積層し、一体化させる方法がある。
【0051】
このようにして製造した非接触ICカード通信調整板1は、非接触ICカード30と略同じ大きさであってもよいし、ある程度余裕のある大きさであっても良い。
【0052】
次に作用を説明する。
なお、非接触ICカード通信調整板1と非接触ICカード通信調整板1Aとの説明は共通するので、非接触ICカード通信調整板1を代表として説明する。
図3は、本実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板1の両面に非接触ICカード30a,30bを重ね合わせた使用状態での非接触ICカード通信調整板1の作用を説明する図である。図示したように、使用状態では、非接触ICカード通信調整板1のシールドシート10に多孔磁性シート20を積層した両面に非接触ICカード30a,30bが重ね合わせられている。
【0053】
図3において、矢印は、非接触ICカード30a,30bの情報を読み取るための電磁波(信号)を示している。また、「○」印は、通信が正常に行われることを示し、「×」印は、通信が正常に行われないことを示す。
【0054】
図3においてシールドシート10の左側から非接触ICカード30aに向かう電磁波は、非接触ICカード30aの裏面側に配置されている多孔磁性シート20によってシールドシート10の影響が軽減される。これにより、非接触ICカード30aは、外部からの電磁波を問題なく受信することができ、また、非接触ICカード30aから電磁波を発信することができる。これは、高透磁率の多孔磁性シート20中は磁界が集中しやすいため、非接触ICカード30aも磁界の中に置かれることによるものである。このため、非接触ICカード30aは、外部からの電磁波を受信し、また、電磁波を発信することができる。したがって、シールドシート10の左側から非接触ICカード30aに向かう方向に外部装置40が電磁波を発信したときには、非接触ICカード30aと外部装置40との間で通信をすることができる。
【0055】
一方、同じシールドシート10の左側から非接触ICカード30aに向かう電磁波は、シールドシート10の右側に重ね合わせられた非接触ICカード30bに対しては、非接触ICカード通信調整板1のシールドシート10によって遮蔽されるので、非接触ICカード30bに到達することはない。このため、非接触ICカード30bが非接触ICカード通信調整板1を挟んで反対側から来る電磁波を受信してしまうことはなく、外部装置40と非接触ICカード30bとの間の不所望の通信を防止することができる。
【0056】
このような作用は、シールドシート10の右側から非接触ICカード30bに向かう電磁波についても全く同様である。
【0057】
一般に、導体(シールドシート10)の内部には電磁波が存在せず、また、空気と導体との境界面でも境界条件より電磁波が充分に存在しない性質を有する。このため、例えば図3に示すように非接触ICカード30bを読み取るための電磁波が右側から発信されても、非接触ICカード30bの裏面に配置されるシールドシート10のために電磁波が減衰してしまう。これにより、非接触ICカード30bは、非接触ICカード30bに対して電磁波を発信した外部装置40と通信することができない。
【0058】
また、非接触ICカード30aに対してシールドシート10の右側から進行して来る電磁波は、非接触ICカード30bに対してシールドシート10の左側から進行して来る電磁波がシールドシート10に遮断されてしまうのと同様にシールドシート10によって遮断されるので、非接触ICカード30aに到達することがない。このため、非接触ICカード30aによる電磁波の受信は行われず、シールドシート10の右側にある外部装置40は、非接触ICカード30aとの通信を妨げられる。
【0059】
このように、本実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板1によれば、非接触ICカード30a,30bと非接触ICカード通信調整板1との重ね合わせ方および非接触ICカード通信調整板1に重ね合わせた非接触ICカード30a,30bを外部装置40が発する電磁波が来る方向に対してどのように位置させるかによって、非接触ICカード30a,30bと外部装置40との通信を好適に調整することができる。
【0060】
また、多孔磁性シート20の大きさを、その周縁23のうち切欠き凹部22が形成されていない部分がシールドシート10の周縁と一致するようなものとしても、シールドシート10の長辺および短片に沿ったそれぞれの周縁23に形成された切欠き凹部22の周縁は、シールドシート10の周縁よりも必ず内側に位置するので、その分、外部装置40が外部装置40に面した面とは反対側にある非接触ICカード30の情報を読み取ってしまう可能性が低くなっている。すなわち、切欠き凹部22は、いわゆる読取りエラーの発生防止効果を向上させる機能を発揮している。
【0061】
さらにまた、外部装置40と非接触ICカード30との間で通信を可能とするためには多孔磁性シート20がアンテナコイルの少なくとも一部に重なることが必要であるが、多孔磁性シート20は、全面に多数の貫通孔21が形成されているものであるので、すなわち、全面的に貫通孔21と多孔磁性シート20との間の磁性シート部が残っているので、貫通孔21をよほど大きくし、数を少なくしない限り多孔磁性シート20がアンテナコイル33に重なり、もって外部装置40と非接触ICカード30との間の通信ができないものとなることはない。したがって、貫通孔21の形状や大きさ、多孔磁性シート20上の貫通孔21の分布位置等にほとんど制限がないので、貫通孔21の形状や大きさ、多孔磁性シート20上の貫通孔21の分布位置等に様々なバリエーションを持たせることができる。
【0062】
なお、多孔磁性シート20は、シールドシート10の両面に積層するのではなく、片面だけに積層してもよい。この場合は、多孔磁性シート20を積層していない面に重ねた非接触ICカード30は、外部装置40による読み取りはできない。
【0063】
また、シールドシート10の両面に配設された多孔磁性シート20は、シールドシート10の両面で同じものであってもよいし、貫通孔21の形状や大きさや配置の分布などが全く異なるものとしてもよい。
【0064】
なお、多孔磁性シート20,20Aは、金属成分を含まない塗料や着色材で色付けしてもよい。このように色分けすることによって、非接触ICカード通信調整板1を使用者の好みを反映し得るものにすることができる。
また、図5に示したように多孔磁性シート20,20Aは、金属成分を含まない塗料や着色材で表面に似顔絵やキャラクター等の絵柄や文字等を描いたものとしてもよい。この場合にも、非接触ICカード通信調整板1を使用者の好みを反映し得るものにすることができる。
【0065】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図6から図8までは、本発明の第2の実施の形態を示している。
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板を示す平面図であり、図7は、図6における磁性シート片とは異なる形状の磁性シート片を備えた非接触ICカード通信調整板の平面図であり、図8は、キャラクターに模した磁性シート片を備えた非接触ICカード通信調整板の平面図である。
【0066】
図6に例示した非接触ICカード通信調整板1Aは、シールドシート10に複数の磁性シート片100が積層されたものである。磁性シート片100は、テープ状に製造された磁性シートを小さく裁断したものでもよいし、本発明の第1の実施の形態で説明した多孔磁性シートの貫通孔をくり貫いたときにできる磁性シートの切片であってもよい。
【0067】
磁性シート片100の素材、磁性シート片100をシールドシート10に積層する方法等は、本発明の第1の実施の形態における多孔磁性シート20,20aと同じであるので説明を省略する。また、シールドシート10の作用は、本願発明の第1の実施の形態の非接触ICカード通信調整板1について図3を参照しながら説明したものと同じであるので省略する。
【0068】
図6に示した複数の磁性シート片100は、長方形のものであり、その長辺をシールドシート10の長辺の延びる方向に沿うように配置されており、シールドシート10の長辺の延びる方向に4つ程度配置されているが、それらの形状や大きさや配置は図示したものに限られない。但し、大きさは、磁性シート片100は、シールドシート10の周縁のうち一つの角部101で繋がる、2方向に延びる2つの周縁には同時に接触可能であるが、2方向に延びる2つの周縁と他の周縁とには接触しない大きさであることが好ましい。
【0069】
すなわち、磁性シート片100は、シールドシート10の一つの角部101で繋がるシールドシート10の長辺と短辺には同時に接触可能であるが、同方向に延びて、相対する短辺と短辺または相対する長辺と長辺には同時に接触しない大きさであることが好ましい。このような大きさにすることにより、シールドシート10上へ積層する際に、磁性シート片100ごとの方向を揃える必要がなくなり、それだけ製造が容易になる。また、前記のような大きさのものであれば、1枚の非接触ICカード通信調整板に使用する磁性シート片の大きさや形状はどのようなものでもよい。
【0070】
シールドシート10に積層した複数の磁性シート片100は、少なくとも1つが、シールドシート10を非接触ICカード30に重ね合わせた使用状態において、非接触ICカード30のアンテナコイル33の一部に重なるように配置されている。このように構成された非接触ICカード通信調整板1Aでは、それぞれの磁性シート片100は周囲の磁性シート片100との間にシールドシートの露出した部分が形成されているので、非接触ICカード通信調整板1Aの反対側にある非接触ICカード30aまたは30bの情報を読み取ってしまう読み取りエラーの発生する可能性をより低下させることができ、非接触ICカード30bまたは30aからの情報の読み取りが安定したものとなる。
【0071】
図7は、図6のシールドシート10の磁性シート片100をトランプの4種類のマークに模した磁性シート片100a,100b、100c、100dに置き換えたものである。すなわち、スペードの磁性シート片100a、クローバーの磁性シート片100b、ハートの磁性シート片100cおよびダイヤの磁性シート片100dである。図7では、各マークの向きや大きさや配置を揃えて示したが、向き、大きさおよび配置とも揃える必要はない。また、金属成分を含まない塗料や着色材でスペード100aとクローバー100bを黒色に色付けし、ハート100cとダイヤ100dを赤色で着色してもよい。さらに、マークの種類はどのようなものでもよく、混在させるマークの種類や大きさは特に限定されるものではない。
【0072】
図8は、顔に模した絵を描いた磁性シート片100eをシールドシート10に積層したものである。この場合にも、磁性シート片100eの大きさや顔の向きはランダムであってよく、また、金属成分を含まない塗料や着色材で色付けしてもよい。
【0073】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図11は、本発明の第3の実施の形態に係る非接触ICカード収納具50を示す斜視図である。
図示した非接触ICカード収納具50は、カードケースタイプのものである。この非接触ICカード収納具50は、非接触ICカード30を収納したままで非接触ICカード30と外部装置40とを非接触で通信することができるようにしたものである。この非接触ICカード収納具50は、断面が略矩形状のICカード収納部51が形成され、その内部には、該内部を2つに仕切るように前記した第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板1または第2の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板1Aが取り付けられている。非接触ICカード通信調整板1または非接触ICカード通信調整板1A(以下、「非接触ICカード通信調整板1または非接触ICカード通信調整板1A」を「非接触ICカード通信調整板1または1A」と記す。)は、ICカード収納部51から脱落しないように、接着、溶着、縫付け等によって取り付けられている。
【0074】
ICカード収納部51は、非接触ICカード30を収容したときに、非接触ICカード30と非接触ICカード通信調整板1または1Aとが相対的に上下方向ないし左右方向にほとんどずれることなく重なるような大きさおよび形状に形成されている。
【0075】
非接触ICカード30は、非接触ICカード通信調整板1または1Aによって2つの部分に仕切られたICカード収納部51の何れの部分にも収容することができる。ICカード収納部51内に取り付けられたものが磁性シート20を片面だけに配設した非接触ICカード通信調整板である場合には、2つに仕切られた部分の何れに非接触ICカード30を収納するかによって非接触ICカード通信調整板の作用効果が異なるので、適宜に判断して非接触ICカード30を収納すればよい。
【0076】
なお、ICカード収納部51の内に取り付けられたものが多孔磁性シート20または磁性シート片100を片面だけに積層した非接触ICカード通信調整板である場合には、ICカード収納部51の内部を2つに仕切るのではなく、非接触ICカード通信調整板をICカード収納部51の内壁の一部に沿うように取り付けてもよい。
【0077】
ICカード収納部51内に取り付けられたものが多孔磁性シート20または磁性シート片100を両面に配設した非接触ICカード通信調整板1または1Aである場合には、2つに仕切られた部分の何れに非接触ICカード30を収納しても非接触ICカード通信調整板1または1Aの作用効果は同じである。
【0078】
以上のように構成された非接触ICカード収納具50は、ICカード収納部51に非接触ICカード30を収納したままで非接触ICカード30と外部装置40との通信を可能にしたり、防止したりの調整をすることができる。
【0079】
なお、図示した非接触ICカード収納具50は、断面が略矩形状のICカード収納部51を有するものであるが、カード状のベース部材に、空間的な遊びが殆どないポケットを備え、該ポケット内のベース部材側に非接触ICカード通信調整板1または1Aを取り付けて、そのポケットに非接触ICカード30を差し込むようにしたものでもよい。
【0080】
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る非接触ICカード収納具の変形例を示す斜視図である。この非接触ICカード収納具60は財布タイプのものである。以下、この非接触ICカード収納具60を財布60と記す。図示した財布60は、二つ折の財布であり、財布60を開いたときの見開き面側が示されている。
財布60は、札入れタイプのものであり、非接触ICカード30を収納したままで非接触ICカード30と外部装置40とを非接触で通信することができるようにしたものである。この財布60は、各種カードを収納することができるカード収納部61、紙幣を収納しておくための紙幣収納部62、および非接触ICカード30を収納することができるICカード収納部63が設けられている。
【0081】
ICカード収納部63の内部には、非接触ICカード通信調整板1または1Aが縫い付けるなどして固定されている。ICカード収納部63は、その内部に非接触ICカード30を収納したときに、非接触ICカード30と非接触ICカード通信調整板1または1Aとが相対的に上下方向ないし左右方向にほとんどずれることなく重なるような大きさおよび形状に形成されている。
【0082】
このように構成された財布60は、矢印で示したように非接触ICカード30をICカード収納部63に収納したときに非接触ICカード通信調整板1または1Aが前記の説明のように作用するので、非接触ICカード30を財布60から取り出さず、財布60に収納したままで非接触ICカード30と外部装置40との通信を可能にしたり、防止したりの調整をすることができる。
【0083】
また、非接触ICカード30を利用する場合、非接触ICカード30を収納しておくカードケースタイプのものを別個に所持する必要がなく、より利便性にすぐれた財布60(非接触ICカード収納具60)となる。
【0084】
なお、本発明の第1の実施の形態の非接触ICカード通信調整板1および第2の実施の形態の被接触ICカード通信調整板1Aにおけるシールドシート10の露出部分は、その全面の30%以下であることが好ましい。シールドシート10の露出部分を全面の30%以下とすることにより、非接触ICカード30のアンテナコイル33全体が多孔磁性シート20,20Aや磁性シート片100,100a,100b,100c,100d,100eに全く重ならないという事態の発生を防ぐとともに、非接触ICカード30と外部装置40との間の通信状態を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板に積層する多孔磁性シートを示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板の長辺側から見た側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板の作用を説明する図である
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板に積層する多孔磁性シートの変形例を示す平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板の変形例を示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る非接触ICカード通信調整板を示す平面図である。
【図7】図6における磁性シート片とは異なる形状の磁性シート片を備えた非接触ICカード通信調整板の平面図である。
【図8】他の磁性シート片を備えた非接触ICカード通信調整板の平面図である。
【図9】非接触ICカードを示す斜視図である。
【図10】非接触ICカードの使用状態を示す概略図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る非接触ICカード収納具を示す斜視図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る非接触ICカード収納具の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
1,1A…非接触ICカード通信調整板
10…シールドシート
20…多孔磁性シート
20A…多孔磁性シート
21…貫通孔
21a…貫通孔
22…切欠き凹部
22a…切欠き凹部
23,23a…周縁
30…非接触ICカード
30a…非接触ICカード
30b…非接触ICカード
31…本体
32…ICチップ
33…アンテナコイル
40…外部装置
50…非接触ICカードケース
51…ICカード収納部
60…財布
61…カード収納部
62…紙幣収納部
63…ICカード収納部
100…磁性シート片
100a…磁性シート片
100b…磁性シート片
100c…磁性シート片
100d…磁性シート片
100e…磁性シート片
101…角部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置が発信する電磁波を利用して前記外部装置と非接触で通信することができる非接触ICカードに重ね合わせて使用する、前記外部装置と前記非接触ICカードとの通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板において、
前記外部装置と前記非接触ICカードとの間の前記電磁波を遮断ないし減衰させる、シールドシートと、
前記シールドシートの片面または両面に積層され、前記外部装置と前記非接触ICカードとの間の前記電磁波を透過させる、複数の貫通孔を有する多孔磁性シートと、を備えたことを特徴とする非接触ICカード通信調整板。
【請求項2】
前記多孔磁性シートは、前記シールドシートの周縁の外側にはみ出した部分がなく、前記多孔磁性シートの周縁には前記貫通孔が掛かって形成された切欠き凹部を有することを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカード通信調整板。
【請求項3】
前記非接触ICカードがICに接続されたアンテナコイルを内蔵し、
前記多孔磁性シートは、前記シールドシートを前記非接触ICカードに重ね合わせた使用状態において、前記アンテナコイルの少なくとも一部に重なることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触ICカード通信調整板。
【請求項4】
外部装置が発信する電磁波を利用して前記外部装置と非接触で通信することができる非接触ICカードに重ね合わせて使用する、前記外部装置と前記非接触ICカードとの通信状態を調整するための非接触ICカード通信調整板において、
前記外部装置と前記非接触ICカードとの間の前記電磁波を遮断ないし減衰させる、シールドシートと、
前記シールドシートの片面または両面に積層され、前記外部装置と前記非接触ICカードとの間の前記電磁波を透過させる複数の磁性シート片と、を備え、
前記複数の磁性シート片は、シールドシートの周縁のうち一つの角部で繋がる、2方向に延びる2つの周縁には同時に接触可能であるが、同方向に延びる2つの周縁には接触しない大きさであることを特徴とする非接触ICカード通信調整板。
【請求項5】
前記非接触ICカードがICに接続されたアンテナコイルを内蔵し、
前記複数の磁性シート片の少なくとも1つは、前記シールドシートを前記非接触ICカードに重ね合わせた使用状態において、前記アンテナコイルの一部に重なることを特徴とする請求項4に記載の非接触ICカード通信調整板。
【請求項6】
外部装置と非接触で通信することができる非接触ICカードを収納したままで使用する非接触ICカード収納具において、
前記非接触ICカードを収納するICカード収納部内に、前記外部装置と前記非接触ICカードとの通信状態を調整するための請求項1から5の何れか一項に記載の非接触ICカード通信調整板を備え、
前記非接触ICカード通信調整板は、前記ICカード収納部に収納した前記非接触ICカードと重なり合うように取り付けたことを特徴とする非接触ICカード収納具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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