説明

非接触ICチップリーダライタ

【課題】 複数の非接触ICチップに対応可能な非接触ICチップリーダライタを低コストで提供することにある。
【解決手段】 非接触ICチップとの間でデータ通信を行う通信ユニット100と、外部装置からの要求に応じて前記通信ユニット100を介して非接触ICチップ10との通信制御を行う主制御装置200とを備えた非接触ICチップリーダライタにおいて、一つの主制御装置200に対して通信ユニット100を複数設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定期券・社員証・会員証・電子財布などとして機能可能な非接触ICチップに対してデータの読み書きを行う非接触ICチップリーダライタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば定期券・社員証・会員証・電子財布として機能するプログラムが内蔵された非接触ICチップが普及している。この非接触ICチップは、実際にはカードや携帯電話などに埋設されて使用され、また非接触ICチップリーダライタ(以下、単に「リーダライタ」と呼ぶ。)から供給される電波により動作する。
【0003】
従来のリーダライタとしては、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のリーダライタは、自動販売機に内蔵されたものであり、メインコンピュータにより動作を制御されている。メインコンピュータは、リーダライタを用いて非接触ICチップと電子マネーの決済処理を行った後に、電子マネーの管理を行う所定のサーバに決済データを送信する。
【特許文献1】特開2001−229347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メインコンピュータは所定のサーバに決済データを送信する際には電子マネーの管理業者と取り決めた所定の暗号処理等を行う必要がある。この暗号処理は高速で行う必要があるため高性能な演算装置が必要となる。このため、複数のリーダライタを設置する場合、従来の装置構成では高性能な演算装置が必要であり、コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の非接触ICチップに対応可能な非接触ICチップリーダライタを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願では、非接触ICチップとの間でデータ通信を行う通信ユニットと、外部装置からの要求に応じて前記通信ユニットを介して非接触ICチップとの通信制御を行う主制御装置とを備えた非接触ICチップリーダライタにおいて、一つの主制御装置に対して通信ユニットを複数設けるとともに、各通信ユニット及び主制御装置は各通信ユニットと主制御装置との間でデータ通信するための通信制御部を備えたことを特徴とするものを提案する。
【0007】
本発明によれば、一つの主制御装置に対して非接触ICチップとの間で通信する通信ユニットを複数設け、主制御装置と通信ユニットとの間で通信可能としているので、高い演算能力が必要な主制御装置を増やすことなく低コストで複数の非接触ICチップに対応可能となる。
【0008】
主制御装置と通信ユニットとの間のデータ通信経路は無線により構築してもよいし、有線により構築してもよい。また、主制御装置が少なくとも電源投入時に各通信ユニットが正当なものであるかを確認する認証処理を行うと、不正な機器の接続を防止できるので好適である。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、一つの主制御装置に対して非接触ICチップとの間で通信する通信ユニットを複数設け、主制御装置と通信ユニットとの間で通信可能としているので、高い演算能力が必要な主制御装置を増やすことなく低コストで複数の非接触ICチップに対応可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(第1の実施の形態)
本発明の一実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタについて図面を参照して説明する。図1は非接触ICカードリーダライタの構成図である。本実施の形態に係る非接触ICカードリーダライタ(以下、単に「リーダライタ」と言う)は、電子財布として機能する非接触ICチップが埋設されたICカードに対して決済処理や残高確認など電子マネーに関する処理を行うものとする。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係るリーダライタは、ICカード10との間でデータ通信する通信ユニット100と、例えば自動販売機やPOS端末の制御装置などの外部装置から要求に応じて通信ユニット100を用いた電子マネーに関する処理を行う主装置200とを備えている。本発明の特徴的な点は、図1に示すように、1つの主装置200に対して複数の通信ユニット100を通信ライン300で接続している点にある。
【0012】
各通信ユニット100は、主装置200と通信を行うための通信制御部110と、ICカード10とのデータ通信を制御するリーダライタ制御部120と、ICカード10との通信用の高周波(RF)回路部130及びアンテナ140とを備えている。また、リーダライタ制御部120は、通信ユニット100とICカード10との間で通信されるデータを暗号化する暗号処理部121を備えている。これにより、無線で通信される電子マネー情報が暗号化されるのでセキュリティが向上する。
【0013】
主装置200は、通信ユニット100と通信を行うための通信制御部210と、外部装置からの指示に応じて通信ユニット100を用いた各種電子マネーに関する処理を行う主制御部220とを備えている。また、主制御部220には、モデム230が接続されており、ネットワーク20を介して電子マネーの管理サーバ21と通信可能となっている。主制御部220が電子マネー管理サーバ21に送信するデータは、主として電子マネーによる決済を行った場合の決済情報である。この決済情報は、主制御部220に設けた暗号処理部221により暗号化される。
【0014】
次に各通信ユニット100と主装置200との接続形態について図2を参照して説明する。図2は通信ユニットと主装置との接続形態を説明する図である。
【0015】
図2に示すように、通信ユニット100と主装置200とはバス接続されており、通信ユニット100の通信制御部110及び主装置200の通信制御部210はそれぞれバス接続用のトランシーバからなる。このような接続形態におけるバスアクセス制御方式としては、例えばポーリング式,CSMA/CD方式など種々のものを用いることができる。
【0016】
次に、このリーダライタの動作について図3のフローチャートを参照して説明する。図3はリーダライタの主装置の動作を説明するフローチャートである。
【0017】
主装置200は、電源の投入により動作を開始すると、接続している複数の通信ユニット100に対してそれぞれアドレス(ID)を割り当てる(ステップS1)。次に、主装置200は、各通信ユニット100が正当なものか否かを確認する認証処理を行う(ステップS2)。以上のステップが初期動作である。
【0018】
以降、主装置200は、各通信ユニット100においてICカード10が検出されたか否かを検知するためにポーリング動作を開始する(ステップS3)。そして、何れかの通信ユニット100がICカード10を検出したことを検知すると(ステップS4)、当該通信ユニット100に対してICカード10との認証処理を行うよう指示する(ステップS5)。当該認証処理が完了したことを通信ユニット100から受信すると、主装置200は、外部装置から指示された所定の読み込み処理又は書き込み処理をICカード10に対して行うように通信ユニット100に指示する(ステップS6)。当該読み込み/書き込み処理が完了したら、主装置200は再びポーリング動作に戻る。
【0019】
このように、本実施の形態に係るリーダライタでは、1つの主装置200に対して複数の通信ユニット100を接続可能なので、多数のICカード10に対応したシステムを安価に構築することができる。
【0020】
なお、主装置200は、ある通信ユニット100を用いてICカード10に対するデータの読み書きを行っているときに、他の通信ユニット100との通信を許可するようにしても禁止するようにしてもよい。
【0021】
また、上記実施形態では、主装置200が通信ユニット100に対してポーリング動作を行うマスタースレーブ通信を例示したが、通信ユニット100がICカード10の検出などのイベントを検出したら当該通信ユニット100側から主装置200にアクセスするイベント形式であってもよい。
【0022】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態に係るリーダライタについて図面を参照して説明する。図4は非接触ICカードリーダライタの構成図である。
【0023】
本実施の形態に係るリーダライタが第1の実施の形態のものと異なる点は、主装置200と通信ユニット100との間の通信経路を無線で構築した点にある。通信経路の無線化を実現するため本実施の形態では、図4に示すように、主装置200及び各通信ユニット100に無線中継ユニット240,150を接続している。他の構成・動作については第1の実施の形態と同様である。
【0024】
無線中継ユニットの構成について図5を参照して説明する。図5は無線中継ユニットの構成図である。なお、主装置200に接続する無線中継ユニット240と、通信ユニット100に接続する無線中継ユニット150は同じものなので、ここでは主装置200に接続する無線中継ユニット240についてのみ説明するものとし、通信ユニット100に接続する無線中継ユニット150については説明を省略する。
【0025】
この無線中継ユニット240は、主装置200と接続する制御装置241と、受信側回路と送信側回路を切り替えるスイッチ242及び243と、デジタル信号をアナログ信号に変換する変調器244及び送信機245と、アナログ信号をデジタル信号に変換する復調器246及び受信機247と、送信機245及び受信機247で用いるアナログ信号の周波数と、キャリアとなる無線信号の周波数とを相互に変換する周波数変換器248と、アンテナ249とを備えている。制御装置241の主装置200との接続インタフェイスとしてはRS422を用いた。無線周波数帯域や変調・復調方式など各種プロトコルについては種々のものを適用可能である。
【0026】
本実施の形態によれば、主装置200と各通信ユニット100との間の通信経路を無線により構築しているので、各機器のレイアウトの自由度が向上する。他の作用・効果については第1の実施の形態と同様である。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では非接触ICチップを埋設したICカード10について説明したが、この非接触ICチップは種々の機器・物に搭載可能である。例えば、携帯電話、腕時計、PDA、パーソナルコンピュータ、ブレスレット、指輪、イヤリングなどが挙げられる。
【0028】
また、上記実施の形態では、電子財布として機能する非接触ICチップについて説明したが、他の機能を有する非接触ICチップについても本発明を適用できる。例えば、定期券、社員証、会員証として機能するものが挙げられる。また、これらの機能を複数搭載してもよい。
【0029】
さらに、上記実施の形態では、主装置200が電子マネー管理サーバ21と通信するために別途モデム230を設けているが、例えば外部装置としてPOS端末など既にネットワーク通信機器を備えている場合には、このネットワーク通信機器をPOS端末と主装置200で共用するようにしてもよい。
【0030】
さらに、上記実施の形態で例示した主装置200と通信ユニット100の接続形態は単なる一例であり、種々の通信方式・プロトコルを用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1の実施の形態に係る非接触ICチップリーダライタの構成図
【図2】主装置と通信ユニットの接続形態を説明する図
【図3】主装置の動作を説明するフローチャート
【図4】第2の実施の形態に係る非接触ICチップリーダライタの構成図
【図5】無線中継ユニットの構成図
【符号の説明】
【0032】
10…非接触ICカード、20…ネットワーク、21…電子マネー管理サーバ、100…通信ユニット、110…通信制御部、120…リーダライタ制御部、121…暗号処理部、130…RF回路部、140…アンテナ、150…無線中継ユニット、200…主装置、210…通信制御部、220…主制御部、221…暗号処理部、230…モデム、240…無線中継ユニット、300…通信ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICチップとの間でデータ通信を行う通信ユニットと、外部装置からの要求に応じて前記通信ユニットを介して非接触ICチップとの通信制御を行う主制御装置とを備えた非接触ICチップリーダライタにおいて、
一つの主制御装置に対して通信ユニットを複数設けるとともに、
各通信ユニット及び主制御装置は各通信ユニットと主制御装置との間でデータ通信するための通信制御部を備えた
ことを特徴とする非接触ICチップリーダライタ。
【請求項2】
前記通信ユニット及び主制御装置の通信制御部は有線によるデータ通信を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の非接触ICチップリーダライタ。
【請求項3】
前記通信ユニット及び主制御装置の通信制御部は無線によるデータ通信を制御する
ことを特徴とする請求項1記載の非接触ICチップリーダライタ。
【請求項4】
主制御装置は少なくとも電源投入時に各通信ユニットが正当なものであるかを確認する認証処理を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の非接触ICチップリーダライタ。
【請求項5】
前記主制御装置は電子財布として機能する非接触ICチップに対して電子マネーによる決済処理を行う
ことを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の非接触ICチップリーダライタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−48360(P2006−48360A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228245(P2004−228245)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】