説明

非晶性化合物及びその製造方法

【課題】炭化水素溶媒に迅速に溶解するポリマー安定剤の提供。
【解決手段】式(1)


で示され、示差走査熱量測定(DSC)による吸熱ピークが15〜25℃であり、下記の試験系において25℃でのシクロヘキサンに対する溶解速度が5mg/sec以上である非晶性化合物。<溶解速度に係る試験系>25℃で、50gのシクロヘキサン入り容器(容量:100ml、外径:55mm、高さ:70mm)に3gの被験物質を入れ、38mm径ファン型攪拌翼を100rpmの回転数で回転させ、前記被験物質が溶解するまでの時間を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶性化合物及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー安定剤は、熱可塑性ポリマー(例えば、ポリブタジエン等)等のポリマーに熱、光及び酸素などに対する安定性を付与するものであり、ポリマーに含有させて用いられる。該ポリマー安定剤の有効成分として、式(1−1)で示される化合物が知られており、当該化合物は粉末状の結晶として得られることも知られている(例えば、特許文献1参照)。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−168643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリマー安定剤の有効成分としては、炭化水素溶媒に迅速に溶解する性能が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような状況下、本発明者らは鋭意検討した結果、本発明に至った。
【0006】
即ち、本発明は、
1. 式(1)

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
で示され、示差走査熱量測定(DSC)による吸熱ピークが15〜25℃であり、下記の試験系において25℃でのシクロヘキサンに対する溶解速度が5mg/sec以上である非晶性化合物(以下、本発明非晶性化合物と記すこともある。)

<溶解速度に係る試験系>
25℃で、50gのシクロヘキサン入り容器(容量:100ml、外径:55mm、高さ:70mm)に3gの被験物質を入れ、38mm径ファン型攪拌翼を100rpmの回転数で回転させ、前記被験物質が溶解するまでの時間を測定する。;
2. CuKαスペクトルを用いたX線回折測定において図2記載のX線回折パターンで示される原子配列状態であることを特徴とする前項1記載の非晶性化合物;
3. 式(1)において、R及びRがt−ペンチル基であり、Rが水素原子であり、Xがエチリデン基であることを特徴とする前項1又は2記載の非晶性化合物;
4. 式(1)において、Rがt−ブチル基であり、Rがメチル基であり、Rが水素原子であり、Xがメチレン基であることを特徴とする前項1又は2記載の非晶性化合物;
5. 式(1)

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
で示され、融点が70℃〜220℃である結晶物質を融点以上の温度に加熱して融解する第1工程と、第1工程で得られた融解物を冷却及び固化する第2工程とを含むことを特徴とする前項1記載の非晶性化合物の製造方法;
等を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明非晶性化合物は、優れた「炭化水素溶媒に迅速に溶解する性能」を有しており、ポリマー安定剤の有効成分として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、DSCを用いた示差走査熱量測定における本発明非晶性化合物の吸熱ピークを示す図である。当該ピークは相転移におけるブロードなピークであることから、非晶性の原子配列状態であることを示す図である。
【0009】
【図2】図2は、CuKαスペクトルを用いたX線回折測定における本発明非晶性化合物のX線回折パターンを示す図である。当該パターンがブロードなピークを含むことから、非晶性の原子配列状態であることが確認できる。
【0010】
【図3】図3は、DSCを用いた示差走査熱量測定における結晶性化合物の吸熱ピークを示す図である。当該ピークは融点における一点のシャープなピークであることから、結晶性の原子配列状態であることを示す図である。
【0011】
【図4】図4は、CuKαスペクトルを用いたX線回折測定における結晶性化合物のX線回折パターンを示す図である。当該パターンが各結晶格子面でシャープな回折ピークを含むことから、結晶性の原子配列状態であることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、式(1)

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
で示され、示差走査熱量測定(DSC)による吸熱ピークが15〜25℃であり、下記の試験系において25℃でのシクロヘキサンに対する溶解速度が5mg/sec以上である非晶性化合物

<溶解速度に係る試験系>
25℃で、50gのシクロヘキサン入り容器(容量:100ml、外径:55mm、高さ:70mm)に3gの被験物質を入れ、38mm径ファン型攪拌翼を100rpmの回転数で回転させ、前記被験物質が溶解するまでの時間を測定する。
を含む。
【0013】
式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表す。ここで、アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、t−ペンチル基、2−エチルヘキシル基等を挙げることができる。またシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、3−メチルシクロペンチル、4−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロヘキシル基等を挙げることができる。中でも、例えば、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基等が好ましく挙げられる。
【0014】
3は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。R3のアルキル基としては、例えば、R1で例示されたアルキル基等を挙げることができる。中でも、水素原子又はメチル基が好ましく挙げられる。
【0015】
Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。
ここで、アルキリデン基としては、例えば、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基等を挙げることができる。またシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基等を挙げることができる。中でも、メチレン基、エチリデン基、又はブチリデン基が好ましく挙げられる。
【0016】
具体的な本発明非晶性化合物としては、例えば、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−プロピルフェニル)エチル〕−4−プロピルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)エチル〕−4−イソプロピルフェニル アクリレート等を挙げることができる。
【0017】
具体的な好ましい本発明非晶性化合物としては、例えば、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、即ち、式(1)において、R及びRがt−ペンチル基であり、Rが水素原子であり、Xがエチリデン基である物質や、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、即ち、式(1)において、Rがt−ブチル基であり、Rがメチル基であり、Rが水素原子であり、Xがメチレン基である物質等を挙げることができる。
【0018】
本発明非晶性化合物では、示差走査熱量測定(DSC)による吸熱ピークが15〜25℃である。また本発明非晶性化合物では、25℃で、50gのシクロヘキサン入り容器(容量:100ml、外径:55mm、高さ:70mm)に3gの被験物質を入れ、38mm径ファン型攪拌翼を100rpmの回転数で回転させ、前記被験物質が溶解するまでの時間を測定する「溶解速度に係る試験系」において、5mg/sec以上、好ましくは5mg/sec以上9mg/sec以下の溶解速度である。
【0019】
本発明非晶性化合物としては、例えば、CuKαスペクトルを用いたX線回折測定において図2記載のX線回折パターンで示される原子配列状態である物質等を挙げることができる。
図2は、縦軸をピーク強度、横軸を回折線の角度2θとしてX線回折測定した結果であり、好ましい本発明非晶性化合物としては、例えば、ピークトップの2θが10〜12°及び16〜19°に存在する2つのブロードなピークを有する回折パターンを持つ非晶性化合物等を挙げることができる。より好ましくは、ピークトップの2θが、例えば、10〜11°及び16〜18°に存在する2つのブロードなピークを有する回折パターンを持つ非晶性化合物等が挙げられる。
【0020】
本発明非晶性化合物の形状は、例えば、粒状、板状等を挙げることができ、粒状であることが好ましい。粒状の具体例としては、ペレット状、顆粒状、タブレット状、略球状、略半球状、フレーク状等が挙げられ、略球状又は略半球状が好ましい。また、粒状の本発明非晶性化合物の1粒当りの重量は、1mg以上の本発明非晶性化合物であることが好ましく、より好ましくは、例えば、1mg〜約25mg等を挙げることができる。粒状の本発明非晶性化合物の1粒当りの粒径としては、例えば、約1mm〜約6mm等を挙げることができる。中でも、約2mm〜約5mmが好ましく挙げられる。また、その高さとしては、例えば、約1mm〜約4mm等を挙げることができる。中でも、約1mm〜約3mmが好ましく挙げられる。また、粒状の本発明非晶性化合物の硬度は、例えば、約10N〜約30N等を挙げることができる。
【0021】
尚、本発明非晶性化合物質の形状が板状である場合には、必要により、粉砕してフレーク状とすることもできる。
【0022】
本発明非晶性化合物の製造方法としては、例えば、式(1)

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
で示され、融点が70℃〜220℃、好ましくは、100〜140℃であり、1粒当りの重量が1mg未満の微粉末である結晶物質を融点以上の温度に加熱して融解する第1工程と、第1工程で得られた融解物を冷却及び固化する第2工程とを含むことを特徴とする製造方法を挙げることができる。
【0023】
本発明非晶性化合物の製造方法における第1工程では、前記結晶物質を融点以上の温度に加熱して融解すればよいが、「融点以上の温度」としては、例えば、約90℃〜約250℃、好ましくは、約120℃〜約160℃等を挙げることができる。
【0024】
本発明非晶性化合物の製造方法における第2工程では、第1工程で得られた融解物を冷却及び固化すればよいが、「冷却」の温度及び時間としては、例えば、約50℃以下約10秒間以上等を挙げることができる。中でも、約0℃〜約50℃約10秒間以上約2分間以下が好ましく、更に約0℃〜約40℃約20秒間〜約2分間がより好ましく挙げられる。
【0025】
第1工程で得られた融解物を冷却及び固化する第2工程としては、例えば、第1工程で得られた融解物を冷却された熱交換板(例えば、ステンレス等の金属からなるシート等)に噴霧又は滴下する方法、例えば、第1工程で得られた融解物を冷却された水又は貧溶媒中へ滴下する方法、例えば、第1工程で得られた融解物を冷却されたベルト上へ連続的に押し出す方法等により成し遂げることができる。
【0026】
融解物を滴下する方法としては、例えば、滴下管から滴下する方法、具体的には例えば、融解物をロールドロップ式造粒機、ロートフォーム式造粒機等に充填したのちに滴下する方法等を挙げることができる。
ここで、ロールドロップ式造粒機とは、通常、突起を有する回転ドラムを有しており、溶融物は当該突起の先端部に掻き取られ、当該回転ドラムが回転して得られる遠心力及び/又は重力の作用にて熱交換板上に当該溶解物が滴下する機構を有する造粒機である。また、ロートフォーム式造粒機とは、通常、円筒部を有しており、当該円筒部は孔を有し、当該円筒部の内部に溶融物を受け入れる構造を有しており、当該孔から熱交換板上に該溶解物が滴下する機構を有する造粒機である。特に、ロートフォーム式造粒機による滴下が好ましい。
【0027】
尚、本発明非晶性化合物の1粒当りの重量を所望の値に制御するには、融解物を滴下管から滴下する方法では、滴下管の口径や、融解物の粘度等を調整することにより、融解物の滴下管から滴下量を制御すればよい。具体的には例えば、ロールドロップ式造粒機の場合には、突起の先端部に掻き取る融解物の量を制御すればよく、またロートフォーム式造粒機の場合には、孔の大きさや、融解物の粘度等を調整することにより、融解物の滴下管から滴下量を制御すればよい。
【0028】
「冷却された熱交換板」としては、例えば、約0℃〜約50℃にされた熱交換板を挙げることができる。具体的には例えば、水等で所定温度にされたステンレス製のベルト、冷風等で所定温度にされたステンレス製のベルト、水等で所定温度にされたステンレス板、冷風等で所定温度にされたステンレス板等が挙げられる。尚、融解物が滴下される熱交換板の面は、平滑であることがよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
式(1)で示され、融点が100℃〜140℃であり、1粒当りの重量が1mg未満の微粉末である結晶物質としては、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート(融点115℃、住友化学株式会社製)(以下、化合物(1)と記すこともある。)及び2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート(融点130℃、住友化学株式会社製)(以下、化合物(2)と記すことがある。)を用いた。
【0030】
(実施例1)
化合物(1)を、145℃に加熱した溶融タンクの中に投入して融解した。次いで、得られた融解物を30℃の冷却水で冷却されたステンレス板上に滴下した後、当該ステンレス板上で25秒間冷却及び固化することにより、略半球状の非晶性化合物を得た。尚、得られた非晶性化合物のサイズは、粒径(幅):3.4mm、高さ:2.2mmであり、その重量は8.62mg/個、その硬度は24.79Nであった。
次いで、得られた非晶性化合物を下記のDSC分析、XRD分析及び溶解速度測定等に供した。
【0031】
(DSC分析)
島津製作所製、示差走査熱量測定器DSC−60Aを用いて、得られた非晶性化合物をアルミニウムセルの中に密閉した。当該アルミニウムセルを前記示差走査熱量測定器が具備するサンプルホルダーの中に挿入した後、当該サンプルホルダーを窒素雰囲気下10℃/分の速度で150℃まで加熱しながら吸熱ピークを観察した。
その結果、図1に示すように、得られた非晶性化合物の吸熱ピークは23.7℃であった。
【0032】
(XRD分析)
得られた非晶性化合物を粉砕した。次いで、得られた粉砕物を、リガク社製、RINT2000縦型ゴニオメータが具備するサンプルホルダーに挿入した後、CuKαスペクトルを用いてX線回折測定におけるX線回折パターンを測定した。得られたX線回折パターンを図2に示した。
その結果、図2に示すように、当該パターンがブロードなピークを含むことから、非結晶な原子配列状態であることが確認できた。
【0033】
(粒状非晶性化合物の一粒当たりの重量測定)
メトラー・トレド社製精密天秤を用いて、得られた非晶性化合物の一粒当たりの重量を測定した。尚、測定は20回繰り返し実施され、その平均値を「粒状非晶性化合物の一粒当たりの重量」とした。
【0034】
(粒状非晶性化合物の硬度測定)
SHIMPO社製デジタルフォースゲージFGP−5を用いて、得られた非晶性化合物の硬度を下記のように測定した。尚、測定は20回繰り返し実施され、その平均値を「粒状非晶性化合物の硬度」とした。
得られた非晶性化合物を測定器が具備する試料台を載せた。当該測定器に付帯するプローブの先端を試料台上の非晶性化合物の位置まで下ろすことにより、当該非晶性化合物に圧力を与えた。前記非晶性化合物が圧砕した時の圧砕圧力計の目盛を読み取り、これを「粒状非晶性化合物の硬度」とした。
【0035】
(粒状非晶性化合物の粒径(幅)及び高さ測定)
ノギスを用いて、得られた非晶性化合物の粒径(幅)及び高さを測定した。尚、測定は10回繰り返し実施され、その平均値を「粒状非晶性化合物の粒径(幅)」及び「粒状非晶性化合物の高さ」とした。
【0036】
(溶解速度測定)
25℃で、50gのシクロヘキサン入り容器(容量:100ml、外径:55mm、高さ:70mm)に3gの被験物質を入れ、38mm径ファン型攪拌翼を100rpmの回転数で回転させ、前記被験物質が溶解するまでの時間を測定した。その結果を「mg/sec」単位で示される溶解速度として表1に示した。
【0037】
(実施例2)
実施例1で使用された「化合物(1)」の代わりに、「化合物(1)と化合物(2)とを99.5:0.5の重量割合で混合してなる混合物」を用いる以外は実施例1と同様な方法に準じて、半球状固体の非晶性化合物を得た。尚、得られた非晶性化合物のサイズは、粒径(幅):3.1mm、高さ:1.8mmであり、その重量は9.65mg/個、その硬度は23.77Nであった。
次いで、得られた非晶性化合物を上記のDSC分析、XRD分析及び溶解速度測定等に供した。
【0038】
(実施例3)
実施例1で使用された「化合物(1)」の代わりに、「化合物(1)と化合物(2)とを95:5の重量割合で混合してなる混合物」を用いる以外は実施例1と同様な方法に準じて、半球状固体の非晶性化合物を得た。尚、得られた非晶性化合物のサイズは、粒径(幅):2.7mm、高さ:1.7mmであり、その重量は9.99mg/個、その硬度は23.19Nであった。
次いで、得られた非晶性化合物を上記のDSC分析、XRD分析及び溶解速度測定等に供した。
【0039】
(比較例1)
化合物(1)を、「得られた非晶性化合物」の代りに「化合物(1)」をそのままの状態で供する以外は上記方法と同様な方法に準じたDSC分析、XRD分析及び溶解速度測定等に供した。
その結果を、図3(DSC分析)及び図4(XRD分析)並びに表1(重量、硬度、粒径(幅)及び高さ、溶解速度)に示した。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明非晶性化合物は、優れた「炭化水素溶媒に迅速に溶解する性能」を有しており、ポリマー安定剤の有効成分として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
で示され、示差走査熱量測定(DSC)による吸熱ピークが15〜25℃であり、下記の試験系において25℃でのシクロヘキサンに対する溶解速度が5mg/sec以上である非晶性化合物。

<溶解速度に係る試験系>
25℃で、50gのシクロヘキサン入り容器(容量:100ml、外径:55mm、高さ:70mm)に3gの被験物質を入れ、38mm径ファン型攪拌翼を100rpmの回転数で回転させ、前記被験物質が溶解するまでの時間を測定する。
【請求項2】
CuKαスペクトルを用いたX線回折測定において下図のX線回折パターンで示される原子配列状態であることを特徴とする請求項1記載の非晶性化合物。

【請求項3】
式(1)において、R及びRがt−ペンチル基であり、Rが水素原子であり、Xがエチリデン基であることを特徴とする請求項1又は2記載の非晶性化合物。
【請求項4】
式(1)において、Rがt−ブチル基であり、Rがメチル基であり、Rが水素原子であり、Xがメチレン基であることを特徴とする請求項1又は2記載の非晶性化合物。
【請求項5】
式(1)

(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を表し、R3 は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を表す。Xは、単結合、硫黄原子、酸素原子、炭素数1〜8のアルキリデン基又は炭素数5〜8のシクロアルキリデン基を表す。)
で示され、融点が70℃〜220℃である結晶物質を融点以上の温度に加熱して融解する第1工程と、第1工程で得られた溶融物を冷却及び固化する第2工程とを含むことを特徴とする請求項1記載の非晶性化合物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−260842(P2010−260842A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197860(P2009−197860)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】