説明

非晶質タクロリマス及びその調製

本発明は、遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスを提供する。非晶質タクロリマスの生成方法、及び非晶質タクロリマスを含んで成る錠剤もまた、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマス(tacrolimus)、非晶質タクロリマスの新規生成方法、及び非晶質タクロリマスを含んで成る錠剤に向けられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
マクロライドは、置換基として1又は複数のデオキシ糖を有する多員ラクトン環である。エリトロマイシン、アジトロマイシン及びクラリトロマイシンは、静菌及び/又は殺菌活性を有するマクロライドである。アスコマイシン、タクロリマス及びピメクロリマスもまた、マクロライドである。
【0003】
タクロリマス(FK506)は、ストレプトミセス・ツクバエンシス(Streptomyces tsukubaensis)により生成される免疫抑制剤でもあるマクロライド抗生物質である。その化学名は、3S-[3R*[E(1S*, 3S*, 4S*)], 4S*, 5R*, 8S*, 9E, 12R*, 14R*, 15S*, 16R*, 18S*, 19S*, 26aR*]−5, 6, 8, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 24, 25, 26, 26a−ヘキサデカヒドロ−5, 19−ジヒドロキシ−3−[2−(4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル)−1−メチルエテニル]−14, 16−ジメトキシ−4, 10, 12, 18−テトラメチル−8−(2−プロペニル)−15, 19−エポキシ−3H−ピリド[2, 1-c][1, 4]オキサアザシクロトリコシン−1, 7, 20, 21(4H, 23H)−テトロン、一水和物であり、そしてそれは下記化学式:
【0004】
【化1】

を有する。
【0005】
シクロスポリンよりも有能なタクロリマスは、T−リンパ球に対して選択的阻害効果を有する。
【0006】
本発明は、タクロリマスの固体状態物性に関する。それらの性質は、タクロリマスが固体形で得られる条件を調節することにより影響され得る。固体状態物性は、例えば微粉砕された固体の流動性を包含する。流動性は、材料が、医薬製剤への加工の間、取り扱われる容易性に影響を及ぼす。粉末化された化合物の粒子がお互い容易に流動しない場合、配合専門家は、潤滑剤、例えばコロイド状二酸化珪素、タルク、スターチ又は第三リン酸カルシウムの使用を必要とする錠剤又はカプセル配合物の開発を考慮すべきである。
【0007】
医薬化合物のもう1つの重要な固体状態性質は、水性流体におけるその溶解速度である。患者の胃液における活性成分の溶解速度は、経口投与される活性成分が患者の血流に達する速度の上限に影響を及ぼすので、治療的重要性を有する。溶解速度はまた、シロップ、エリキシル及び他の流体医薬の配合において考慮される。化合物の固体状態形はまた、圧縮及びその貯蔵安定性に対するその挙動性にも影響を及ぼすことができる。
【0008】
医薬的に有用な化合物の新規形の発見は、医薬製剤の性能特徴を改良するための新規機会を提供する。それは、配合科学者が、標的化された開放プロフィール又は他の所望する特徴を有する約物の医薬投与を企画するために利用できる材料の範囲を拡大する。タクロリマスの追加の形及び/又はそれらの調製方法についての必要性が当業界において存在する。
【発明の開示】
【0009】
発明の要約
1つの態様においては、本発明は、遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスを提供する。この非晶質タクロリマスは好ましくは、約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約5%以下含む。
【0010】
もう1つの態様においては、本発明は、タクロリマスを有機極性溶媒に溶解し、そして前記有機極性溶媒を除去することを含んで成る、非晶質タクロリマスの調製方法を提供する。この工程は反復され得、非晶質タクロリマスがもたらされ得る。
さらにもう1つの態様においては、本発明は、遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマス及び医薬的に許容できる賦形剤を含んで成る医薬製剤を提供する。
【0011】
1つの態様においては、本発明は、非晶質タクロリマスを含んで成る錠剤を提供する。
さらなる態様においては、本発明は、約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約5%以下含む非晶質タクロリマスを含んで成る錠剤を提供する。
【0012】
さらにもう1つの態様においては、本発明は、上記医薬製剤を、グラム陽性細菌感染を有する患者に投与する段階を含んで成る、前記患者を処理するための方法を提供する。上記医薬製剤を患者に投与する段階を含んで成る、免疫抑制の必要な患者にそれを提供する方法がまた提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
特定の記載
本明細書において使用される場合、用語“室温”とは、約15℃〜約30℃、好ましくは約18℃〜約25℃の温度を意味する。
本明細書において使用される場合、用語“遊離薬物”とは、共沈物に密接に埋封されない固体粒子を意味する。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語“粒子”とは、1又は複数の個々の粒子を意味する。
本発明は、遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスを提供する。本発明の非晶質タクロリマスは、図1及び2に実質的に示されるように、粉末X−線回折パターンにより特徴づけられる。遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスの顕微鏡像が、図3に示される。
【0015】
本発明の非晶質タクロリマスは、約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約5%以下含む。好ましくは、本発明の非晶質タクロリマスは、上記結晶形を約3%以下含む、そして最も好ましくは、本発明の非晶質タクロリマスは、前記結晶形を約1%以下含む。非晶質タクロリマスは、結晶性タクロリマスよりも良好な物性、例えば改良された溶解及び/又は溶解性を有する。
【0016】
大量活性成分としての非晶質形における、又は医薬組成物における結晶性タクロリマスの存在は、既知方法、例えばX−線粉末回折又は固体状態13C−NMRを用いて観察され得る。実験室において利用できるX−線粉末回折又は固体状態NMRの計測器は、大量物としての非晶質タクロリマスにおける又は医薬組成物における結晶性タクロリマスをモニターするために適切である。
【0017】
遊離薬物粒質形でのタクロリマスの使用は、粒子分布が調節され得ることにおいて、共沈物よりも好都合である。
本発明はさらに、タクロリマスを有機極性溶媒に溶解し、そして前記有機極性溶媒を除去し、非晶質タクロリマスを得ることを含んで成る、非晶質タクロリマスの新規調製方法を提供する。この方法は、反復され得る。
【0018】
好ましくは、有機極性溶媒は、C1-6アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、及び2−ブタノール;C3-8アルキルエステル、例えば酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、蟻酸エチル、酢酸n−プロピル、及び酢酸イソ−プロピル;C2-8アルキルケトン、例えばアセトン、及びメチルエチルケトン;C2-8アルキルエーテル、例えばテトラヒドロフラン;アセトニトリル;及びそれらの混合物から成る群から選択される。最も好ましくは、酢酸エチル又はアセトンである。
【0019】
好ましくは、有機極性溶媒は、当業界において知られているいずれかの方法、例えば蒸発により除去され得る。好ましくは、有機極性溶媒は、蒸発され、続いて、さらにほぼ室温に冷却される。
蒸発は好ましくは、乾燥まで行われる。溶液は、減圧下で又は大気圧下で回転蒸発器において蒸発され得る。蒸発は、減圧下でいずれかの加熱された容器、例えば大気圧又は減圧下で、回転蒸発器の試験管、市販の試験管又はいずれかほかのガラス反応器において行われ得る。
【0020】
溶液は、容器に、すべて1度に、徐々に添加することにより、又は連続的に、減圧下で加熱された装置中に配置され得る。好ましくは非晶質タクロリマスの乾燥形を得るために、加熱能力及び添加速度は等しいか、又は加熱能力は添加速度よりも強い。加熱能力が溶媒を一度に除去するのに不十分である場合、溶媒含有物のさらなる蒸留が必要とされ得る。
【0021】
連続溶液入力は、減圧下でポンプ又は毛管を用いての注入により確保され得る。毛管は、容器中への溶液のゆっくりした吸入を可能にする。小直径のいずれかの管が、その毛管の代わりに使用され得る。
蒸発工程は、好ましくは約40℃〜約60℃の温度で行われる。
本発明は、遊離薬物粒状形での非晶質タクロリマス及び医薬的に許容できる賦形剤を含んで成る医薬製剤を提供する。
【0022】
本発明はまた、非晶質タクロリマスを含んで成る錠剤を提供する。
本発明はさらに、約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約5%以下含む非晶質タクロリマスを含んで成る錠剤を提供する。好ましくは、前記錠剤は、上記のタクロリマスの結晶形を約3%以下含む非晶質タクロリマスを含んで成る。最も好ましくは、錠剤は、タクロリマスの結晶形を約1%以下含む非晶質タクロリマスを含んで成る。
【0023】
本発明はまた、治療的有効量の遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスを含んで成る医薬製剤を、グラム陽性細菌感染を有する患者に投与する段階を含んで成る、前記患者の処理方法を提供する。本発明のさらなる態様は、治療的有効量の遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスを含んで成る医薬製剤を、その必要な患者に投与する段階を含んで成る、前記患者に免疫抑制を提供するための方法を提供する。
【0024】
“治療的有効量”とは、疾病又は他の所望しない状態を処理するために患者に投与する場合、その疾病又は状態に対して有益な効果を有するのに十分である非晶形の量を意味する。“治療的有効量”とは、疾病又は状態及びその重症度、及び処理される患者の年齢、体重、等に依存して変化するであろう。所定の非晶形の治療的有効量の決定は、当業者の範囲内であり、そして通常の実験のみを必要とする。
【0025】
活性成分の他に、本発明の医薬製剤は、1又は複数の賦形剤を含むことができる。賦形剤は、種々の目的のために製剤に添加される。
【0026】
希釈剤は本発明の製剤に添加され得る。希釈剤は、固体医薬組成物の嵩を高め、そして前記組成物を含む医薬用量形を患者及び取り扱うケアー供与者を、より容易にすることができる。固体組成物のための希釈剤は、例えば微晶性セルロース(例えば、AVICEL(商標))、微小セルロース、ラクトース、スターチ、プレゲル化されたスターチ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート、デキストリン、第二リン酸カルシウム・二水和物、第三リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、EUDRAGIT(商標))、塩化カリウム、粉末化されたセルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール及びタルクを包含する。
【0027】
投与量形、例えば錠剤に圧縮される固体医薬組成物は、圧縮の後、活性成分及び他の賦形剤を一緒に結合することための賦形剤を含むことができる。固体医薬組成物のための結合剤は、アカシア、アルギン酸、カルボマー(例えば、カルボポール)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、水素化された植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、KLUCEL(商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、METHOCEL(商標))、液体グルコース、珪酸アルミニウム・マグネシウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、KOLLIDON(商標), PLASDONE(商標))、プレゲル化されたスターチ、アルギン酸ナトリウム及びスターチを包含する。
【0028】
患者の胃における圧縮された固体医薬組成物の溶解速度は、組成物への砕解剤の添加により高められ得る。砕解剤は、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、AC−DI−SOL(商標), PRIMELLOSE(商標))、コロイド状二酸化珪素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、KOLLIDON(商標), POLYPLASDONE(商標))、グアーガム、珪酸アルミニウム・マグネシウム、メチルセルロース、微晶性セルロース、ポラクリリンカリウム、粉末化されたセルロース、プレゲル化されたスターチ、アルギ酸ナトリウム、ナトリウムスターチグリコレート(例えば、EXPLOTAB(商標))及びスタートを包含する。
【0029】
潤滑剤は、圧縮されていない固体組成物の流動性を改良するために、及び投与量の精度を改良するために添加され得る。潤滑剤として機能することができる賦形剤は、コロイド状二酸化珪素、三珪酸マグネシウム、粉末化されたセルロース、スターチ、タルク及び第三リン酸カルシウムを包含する。
【0030】
用量形、例えば錠剤が、粉末化された組成物の圧縮により製造される場合、その組成物は、パンチ及び染料からの圧縮にゆだねられる。パンチ及び染料からの圧縮にゆだねられる。いくつかの賦形剤及び活性成分は、ピット及び他の表面不規則性の生成物による獲得を引起すことができる、パンチ及び染料の表面への付着傾向を有する。滑剤は、付着性を低め、そして染料からの生成物の開放を容易にするために組成物に添加され得る。滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、グリセリルモノステアレート、グルセリルパルミトステアレート、水素化されたヒマシ油、水素化された植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク及びステアリン酸亜鉛を包含する。
【0031】
風味剤及び風味増強剤は、用量形を、患者に対して口に合うようにする。本発明の組成物に含まれ得る、医薬生成物のための通常の風味剤及び風味増強剤は、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メンソール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール及び酒石酸を包含する。
固体及び液体組成物はまた、それらの外観を改良し、そして/又は生成物及び/又は生成物及び単位用量レベルの患者による同定を促進するために、いずれか医薬的に許容できる着色剤を用いて着色され得る。
【0032】
本発明は、タクロリマスの真の溶液を包含するものではなく、それに基づいて、新規形の構造、及び本発明のタクロリマスの新規形を区別する性質は失われる。従って、本明細書に開示されるタクロリマスの新規非晶形を含んで成る本発明の医薬組成物は、主に固体医薬組成物であろう。しかしながら、溶液を調製するためへの新規形の使用(例えば、溶液医薬製剤へのタクロリマスを供給するために)は、本発明の範囲内であると思われる。
【0033】
本発明の方法により生成される、精製されたピメクロリマスを用いて調製される液体医薬組成物においては、ピメクロリマス及びいずれか他の固体賦形剤が、液体キャリヤー、例えば水、植物油、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセリンに溶解されるか又は懸濁される。
【0034】
液体医薬組成物は、液体キャリヤーに不溶性である活性成分又は他の賦形剤を、組生物を通して均等に分散するために乳化剤を含むことができる。本発明の流体組成物において有用である乳化剤は、例えばゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アカシア、トラガカント、コンドラス、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコール及びセチルアルコールを包含する。
【0035】
液体医薬組成物はまた、生成物の口内感触を改良し、そして/又は胃腸管の内層を被覆するために粘度増強剤を含むことができる。そのような剤は、アカシア、アルギン酸ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム又はナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチングアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、プロピレンカーボネート、プロピレングリコールアルギネート、アルギン酸ナトリウム、ナトリウムスターチグリコレート、スターチトラガカント及びキサントガムを包含する。
【0036】
甘味剤、例えばソルビトール、サッカリン、ナトリウムサッカリン、スクロース、アスパータム、フルクトース、マンニトール、及び転化糖が、味覚を改良するために添加され得る。
保存剤及びキレート化剤、例えばアルコール、安息香酸ナトリウム、ブチル化されたヒドロキシルトルエン、ブチル化されたヒドロキシアニソール、及びエチレンジアミン四酢酸が、貯蔵安定性を改良するために摂取のための安全レベルで添加され得る。
【0037】
液体組成物はまた、緩衝液、例えばグルコン酸、乳酸、クエン酸又は酢酸、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、又は酢酸ナトリウムを含むことができる。賦形剤の選択及び使用される量は、この分野における標準の方法及び基準研究の経験及び考慮に基づいて配合科学者により容易に決定され得る。
【0038】
本発明の固体組成物は、粉末、顆粒、凝集体及び圧縮組成物を包含する。用量は、経口、頬、直腸、非経口(皮下、筋肉内及び静脈内)、吸入及び眼投与のために適切な用量である。いずれかの所定の場合における最も適切な投与は、処理される病状の性質及び重症度に依存するが、本発明の最も好ましい経路は経口である。その用量は、単位用量形で便利には提供され、そして医薬業界において良く知られているいずれかの方法により調製され得る。
【0039】
用量形は、固体用量形、例えば錠剤、粉末、カプセル、坐剤、サケット、トローチ及びロゼンジ、並びに液体シロップ、懸濁液及びエリキシルを包含する。
【0040】
錠剤化又はカプセル充填のための組成物は、湿式顆粒化により調製され得る。湿式顆粒化においては、粉末形での活性成分及び賦形剤のいくらか又はすべてが、ブレンドされ、そして次に、液体、典型的には粉末の顆粒への凝集を引起す水の存在下で、さらに混合される。顆粒はスクリーンされ、そして/又は微粉砕され、乾燥され、そして次に、所望する粒度にスクリーンされ、そして/又は微粉砕される。次に顆粒は錠剤化されるか、又は他の賦形剤、例えば滑剤及び/又は潤滑剤が、錠剤化の前、添加され得る。
【0041】
錠剤組成物は、便利には、ドライブレンドにより調製され得る。例えば、活性剤及び賦形剤のブレンドされた組成物が、スラグ又はシートに圧縮され、そして次に、圧縮された顆粒に微粉砕される。続いて、圧縮された顆粒が錠剤に圧縮され得る。
【0042】
乾燥顆粒化に変わるものとして、ブレンドされた組成物は、直接的圧縮技法を用いて、圧縮された用量形に直接的に圧縮され得る。直接的な圧縮は、顆粒を有さないより均等な錠剤を生成する。直接的な圧縮錠剤化のために特に適切である賦形剤は、微晶性セルロース、噴霧乾燥されたラクトース、リン酸二カルシウム・二水和物及びコロイド状シリカを包含する。直接的圧縮錠剤化におけるそれらの及び他の賦形剤の正しい使用は、当業者、特に直接的に圧縮錠剤化の配合専門家に知られている。
【0043】
本発明のカプセル充填は、錠剤化に関して記載された前述のブレンド及び顆粒のいずれかを含んで成るが、しかしながら、それらは最終錠剤化段階にゆだねられない。
活性成分及び賦形剤は、当業界において知られている方法に従って、組成物及び用量形に配合され得る。
【0044】
本発明の非晶形は、単一成分として、又は他の形のタクロリマスとの混合物として医薬製剤又は組成物に使用され得る。しかしながら、本発明の医薬製剤又は組成物は好ましくは、その製剤又は組成物における合計量のタクロリマスに基づいて、25〜100重量%、特に50〜100重量%の新規形を含む。好ましくは本発明の新規形のタクロリマスのそのような量は、75〜100重量%、特に90〜100重量%である。95〜100重量%の量が非常に好ましい。
【0045】
一定の好ましい態様に関して本発明を記載して来たが、他の態様が本明細書の考慮から当業者に明らかに成るであろう。本発明はさらに、本発明の組成物の調製及びその使用方法を詳細に記載する次の例により定義される。材料及び方法に関する多くの修飾が本発明の範囲内で行われ得ることは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0046】
計測器
本発明の方法により生成されるタクロリマスの非晶形を、X−線粉末回折計、ARL、θ−θゴニオメーター、Cu−管、Peltier冷却を備えた固体状態検出器上で行われる粉末X−線回折(PXRD)により分析した。サンプルホルダーは、丸型のゼロバックグラウンドを備えた丸型の標準アルミニウムサンプルホルダーであった。走査パラメーター:範囲:2〜40°2θ、連続走査速度:3°/分。
【0047】
非晶質タクロリマスをまた、デジタル走査熱量法(DSC)及び熱重量分析(TGA)により行われ得る熱分析により分析することができる。DSCサーモグラムを、DSC822e Mettler Toledo計測器(Advanced Instruments, San Juan, Puerto Rico)上で得ることができる。サンプル重量:3〜5mg;加熱速度:10℃/分;るつぼにおける穴の数:3。TGAサーモグラムを、標準のアルミナパンを用いて、Mettler TGA/SDTA851計測器(Advanced Instruments, San Juan, Puerto Rico)上で得ることができる。サンプル重量:7〜15mg;加熱速度:10℃/分。
【0048】
例1
結晶化されたタクロリマス(2g)を、酢酸エチル(6ml)に溶解し、そして蒸発乾燥した。この工程を2度、反復した。蒸発された発泡性材料を室温に冷却した。室温で、光沢のある白色の非晶質粒子(2.00g)を得た。
【0049】
例2
結晶化されたタクロリマス(140g)を、112mlのアセトンに溶解した。その溶液を、空の装置に注入し、これを40℃〜60℃の温度に加熱した。装置を減圧下で維持した。発泡性材料を観察し、そして次に、35℃〜45℃で減圧下で、生成物中のアセトン含有率が0.5%以下になるまで、乾燥した。白色の非晶質生成物を得た。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスの粉末X−線回折パターンを示す。
【図2】図2は、例2において得られた、遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスの粉末X−線回折パターンを示す。
【図3】図3は、遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマスの顕微鏡像を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離薬物粒質形での非晶質タクロリマス(tacrolimus)。
【請求項2】
図1及び2に実質的に示されるような請求項1記載の非晶質タクロリマス。
【請求項3】
図3に実質的に示されるような請求項1記載の非晶質タクロリマス。
【請求項4】
約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約5%以下含む請求項1記載の非晶質タクロリマス。
【請求項5】
約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約3%以下含む請求項1記載の非晶質タクロリマス。
【請求項6】
約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約1%以下含む請求項1記載の非晶質タクロリマス。
【請求項7】
タクロリマスを有機極性溶媒に溶解し、そして前記有機極性溶媒を除去し、非晶質タクロリマスを得ることを含んで成る、非晶質タクロリマスの調製方法。
【請求項8】
前記有機極性溶媒が、C1-6アルコール、C3-8アルキルエステル、C2-8アルキルケトン、C2-8アルキルエーテル、アセトニトリル、及びそれらの混合物から成る群から選択される請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記有機極性溶媒が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ−プロパノール、n−ブタノール、イソ−ブタノール、tert−ブタノール、2−ブタノール、酢酸エチル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、蟻酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソ−プロピル、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、及びそれらの混合物から成る群から選択される請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記有機極性溶媒が、酢酸エチル又はアセトンである請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記工程が反復される請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒が、蒸発により除去される請求項7記載の方法。
【請求項13】
前記蒸発が、回転蒸発器、回転蒸発器の試験管、又は市販の試験管において行われる請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記蒸発が、大気圧又は減圧下で行われる請求項8記載の方法。
【請求項15】
前記蒸発が、減圧下で行われる請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記蒸発が、約40℃〜約60℃の温度で行われる請求項8記載の方法。
【請求項17】
請求項1記載の非晶質タクロリマス及び医薬的に許容できる賦形剤を含んで成る医薬製剤。
【請求項18】
非晶質タクロリマスを含んで成る錠剤。
【請求項19】
約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約5%以下含む請求項18記載の錠剤。
【請求項20】
約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約3%以下含む請求項18記載の錠剤。
【請求項21】
約10.5, 11.3及び13.8±0.2°2θでピークを有する粉末XRDパターンにより特徴づけられる結晶形のタクロリマスを約1%以下含む請求項18記載の錠剤。
【請求項22】
請求項17記載の医薬製剤を、グラム陽性細菌感染を有する患者に投与する段階を含んで成る、前記患者を処理するための方法。
【請求項23】
請求項18記載の錠剤を、グラム陽性細菌感染を有する患者に投与する段階を含んで成る、前記患者を処理するための方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−527434(P2007−527434A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502130(P2007−502130)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/000508
【国際公開番号】WO2006/083486
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(501309071)テバ ジョジセルジャール ザ−トケルエン ムケド レ−スベニュタ−ルシャシャ−グ (30)
【Fターム(参考)】