説明

非晶質染料相を有する感熱転写記録システム

【課題】 新規の感熱転写記録システムを提供すること。
【解決手段】
基材、及び非晶質であり非晶質相に存在する染料又は染料類は連続状フィルムを形成する染料含有相を有する感熱転写物質層を含む供与体要素を利用する感熱記録システムが記載されている。媒体の加熱により転写層の一部分が受容体シートへ画像様に転写され、従って画像が形成される。転写層は、また、感熱溶媒を含む非染料相も包含する。供与体要素の加熱過程で、結晶性感熱溶媒が溶融して、染料含有相の少なくとも一部分を溶解又は液化し、それにより転写層の転写が起こる温度は下がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照)
本出願書は、米国特許法第120条のもとで、2000年2月1日に出願された米国特許仮出願書出願番号第60/179562号の特典を主張する。
【0002】
(発明の背景)
本発明は、感熱(thermal)転写記録システムに関する。更に詳しくは、本発明は、転写層が非晶質、又は非結晶性染料相を含む供与体シートを利用する感熱転写記録システムに関する。
【背景技術】
【0003】
多数のいろいろな印刷システムは、供与体シートから受容体シートへの染料の感熱転写を利用する。感熱転写には、各種の特定のメカニズムが使用されてきたが、M.Kutami等の」A New Thermal Transfer Ink Sheet for Continuous−Tone Full Color Printer」、J.Imaging Sci.1990,16,70−74に記載されているように、全ては、大きく2つのカテゴリーに入る。そのうちの1つでは、染料が供与体シート上の高分子バインダーから受容体シート上の第2の高分子層へ熱的に拡散する、即ち」染料拡散型感熱転写」と呼ばれるプロセスである(又はD2T2;このプロセスはまた、」染料昇華型転写」とも呼ばれる)。このタイプでは、染料だけが転写されて、染料が供与体シート上で分散されているバインダーは転写されない。第2のカテゴリーでは、普通、感熱物質転写又はTMTと呼ばれ、染料もビークルも一緒に供与体シートから受容体シートへ転写される。
【0004】
感熱物質転写方法は、更に、以下の方法に細分され得る:示差的な(differential)付着を含む方法(供与体シートからの物質の加熱されたプラグ(plug)が受容体シートの表面に付着する);及び流動浸透(flow penetration)を含む方法(供与体シート上の色材層が溶融して受容体シート上の細孔の中に転写される)。感熱物質転写は、一般的に、染料拡散感熱転写よりも大幅に少ないエネルギーで済み、そしていろいろな感熱物質転写プロセスのなかでも、流動浸透は示差的な付着よりもかなり少ないエネルギーで済ますことが可能である。従って、流動浸透による感熱物質転写は、エネルギー消費を低く保たなければならない状況で、例えば電池電源型印刷装置で使用するのに典型的に好ましい技術である。
【0005】
流動浸透による感熱物質転写の先行技術の方法は、多くの欠点を有している。転写された層は、比較的厚く(典型的に、1.5〜2.5μm範囲内)なりがちであるので、受容体シートの細孔直径は、例えば米国特許第5,521,626号及び第5,897,254号に記載されているように、典型的には約1ないし10μmの範囲内である必要がある。従って、受容体シートは、可視光を散乱し易く、艶消しの外観となり易い。光沢性画像(例えば、大抵の消費者が光沢のある画像を期待する、写真の再生)を作るために、前記の方法を使用したい場合、第4番目の透明なパネル(3原色画像に加えて)が、典型的には画像の全領域に熱的に転写されなければならない。この第4番目のパネルの転写によって印刷物を作るために必要なエネルギーも時間も増える。なぜならば、フルカラーの画像を形成するには3回ではなく4回のパスが必要だからである。更に、ミクロ細孔質受容体シートが使用されない場合、画像の耐久性は劣ることがある。
【0006】
多孔質の受容体物質の中に感熱転写するための先行技術の方法の前記諸要件は、可視光の波長よりも実質的に小さい直径の受容体シートの細孔に溶融画像化インクを転写する方法によって解決することが出来た。そのような細孔サイズを有する光沢性受容体シートは、容易に市販品を購入出来、実際に、インクジェット印刷用に広く使用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
技術水準が進歩し、そして新しい性能要件を満たすことが出来る新しい感熱転写記録システムを提供し、かつ既知の記録システムの前記の望ましくない諸特性や要件の幾つかを減らす又は無くす努力が行なわれるにつれて、比較的薄い供与体層を利用出来、そして比較的平滑で、光沢性の表面を有する受容体シートを利用出来る感熱転写記録システムを持つことが有利である。従って、新規の感熱転写記録システムを提供することが本発明の目的である。転写物質の比較的薄い層を有する感熱転写供与体材料を提供することが本発明の別の目的である。比較的平滑で、光沢性受容体物質を利用出来る感熱転写記録方法を提供することが本発明の更なる目的である。約0.2μm未満の平均直径を有する細孔の中に転写されることが可能である供与体シート転写物質コーティングを提供することが本発明のさらに別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
これら及びその他の目的や長所は、新規の感熱転写記録システムを提供することにより本発明によって達成されるのであって、そのシステムでは、感熱転写物質層を含む基材を含む供与体要素は、加熱されると転写物質の一部を受容体要素へ画像様に転写する。本発明によると、感熱転写物質層は、少なくとも1種類の染料を含む染料含有の非晶質(非結晶性)相を含み、ここで、非晶質相に存在する染料又は染料類は連続状フィルムを形成する。感熱転写物質層は室温ではさほど粘着性はない。
【0009】
必要に応じて、そして好ましくは、感熱転写物質層は少なくとも1種類の感熱溶媒を含む。本明細書の下記で詳細に説明するように、感熱溶媒物質の少なくとも一部は染料含有相に組み入れられ、感熱溶媒物質の別の部分は染料含有相とは別個の第2結晶相を形成する。この感熱転写物質層の中の結晶性感熱溶媒が溶融して、染料含有相を溶解又は液化することにより、その染料含有相の溶解又は液化は、そのような溶解又は液化が結晶性感熱溶媒が存在しないで起こる温度よりも低い温度で起こることが出来る。
【0010】
感熱転写記録で使用するための新規の供与体要素、基材を含む供与体要素、又はキャリヤー層、及び前記のような感熱転写物質層も本発明により提供される。
【0011】
本発明は、また、前記の第1染料含有相と少なくとも1種類の結晶性感熱溶媒を含む第2相との混合物を含む溶融性組成物も提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(好ましい実施形態の説明)
前述のように、本発明は、感熱転写記録の方法、並びにそれに使用する供与体シート及び可融性組成物を提供し、そのシートや組成物は、非晶質、又は非結晶性染料含有相を含む感熱転写物質層に基づいている。本発明による感熱転写物質層は、室温では流動性が全く検出出来ない固形の透明又は半透明のフィルムであり、そのフィルムは非晶質相の中の染料(類)によって形成されると言う点に特徴がある。
【0013】
本発明によって利用される染料は、それ自体非晶質である固形物、即ち結晶性固体に特有の長い範囲で整然とした構造に欠ける固体を形成する染料であり得る。物質科学の当業者は、非晶質固体と結晶性固体を区別するいろいろな方法に精通している;例えば、非晶質固体は、結晶性固体によって示される強いX線回折線を示さない、そして結晶性固体に特有の強い電子回折も示さない。
【0014】
低分子量有機化合物から形成される非晶質固体は、当該分野では説明されてきた。前記のように、例えば、Michel F.Molaier及びRoger W.Johnsonによる「Organic Monomeric Glasses:A Novel Class of Materials」、J.Polymer Sci.1989,2569−2592、Katsuyki Naito及びAkira Miuraによる「Molecular Design for Nonpolymeric Organic Dye Glasses with Thermal Stability:Relations between Thermodynamic Parameters and Amorphous Properties」、J.Phys.Chem.1993,97,6240−6248、並びにSeong−JinKim及びT.E.Karisによる「Glass Formation from Low Molecular Weight Organic Melts」、J.Mater.Res.1995,10,2128−2136では、前記のような非晶質固形物が、ガラス状外観を有する透明で熱的に安定な非粘着性フィルムを生成することが出来る。このようなフィルムは、個々の分子間の弱い結合(例えば、水素結合)の網状構造によって、熱力学的(例えば、ガラス相の中で2種類以上の化学的に同類の分子の混合物を使用することによる)、又は速度論的のどちらかで、該当する結晶相に関して安定化されることが可能である。
【0015】
いずれのタイプの弱い非共有分子間結合(例えば、イオン性化合物のクーロン相互作用、水素結合及びVan der Waals相互作用)も、非晶質固形染料フィルムの安定化、に使用することが出来る。好ましい実施形態では、非晶質の染料含有相は、水素の隣接基と水素結合を形成出来る染料を含むことが可能である。そのような化合物のいろいろな例が知られている;例えば、水素結合形成染料は、少なくとも1個のジ−ヒドロキシベンゼン環を含むアゾ又はアントラキノン染料が可能である(本明細書で使用される用語「ジ−ヒドロキシベンゼン環」には、トリ−、テトラ−、及びペンタ−ヒドロキシ置換環が挙げられる)。そのような水素結合形成染料の好ましい例には、下記の染料I〜Xが挙げられる。特定のイオン性染料(そのうちの数個は市販されている)は、非晶質固形染料が接着テープによって供与体シート基材から取り外されないほど充分な粘着強度及び接着強度を有する非晶質固形染料の薄いフィルムとしてキャスティングされるほど充分な、コーティング溶媒(例えば、n−ブタノール)中の溶解度を有する;これらのフィルムも室温では粘着性がないほどの、実質的に室温超のガラス転移温度を有する。そのようなイオン性染料の例は、下記の染料XI〜XXVである。イオン性染料が2種類の別々のイオンを有する必要はない;そのような染料は双性イオンであり得る。その他の好適な染料の例には、ソルベントイエロー13、ソルベントイエロー19、ソルベントイエロー36、ソルベントイエロー47、ソルベントイエロー88、ソルベントイエロー143、ベーシックイエロー27、ソルベントレッド35、ソルベントレッド49、ソルベントレッド52、ソルベントレッド91、ソルベントレッド122、ソルベントレッド125、ソルベントレッド127、ベーシックレッド1、ベーシックバイオレット10、ソルベントブルー5、ソルベントブルー25、ソルベントブルー35、ソルベントブルー38、ソルベントブルー44、ソルベントブルー45、ソルベントブルー67、ソルベントブルー70、ベーシックブルー1、ベーシックブルー2、及びベーシックブルー3が挙げられる。これらの染料は周知であり、文献に、例えば(カラーインデックス)に記載されている。このような染料のその他の例は、カヤセット(Kayaset)イエローK−CL、カヤセットブルーK−FL及びカヤセットブラックK−Rであり、これら全ては日本化薬(Nippon Kayaku)社(日本国、東京都)色材事業部(Color Chemicals Div.)から購入出来る。これらの染料の混合物を使用しても、本発明により使用するための非晶質固形フィルムを生成することが出来る。染料I〜XXVは以下である:
以下のアゾ染料:
【0016】
【化1】

【0017】
I.(イエロー) R1=ヘキサ−1−イル、R2=n−ドデシル(dodceyl);
II.(イエロー) R1=1−(4−ヒドロキシフェニル)エタ−2−イル、R2=n−ドデシル;
III.(イエロー) R1=2−エチルヘキサ−1−イル、R2=1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)エタ−2−イル;
IV.(イエロー) R1=2−エチルヘキサ−1−イル、R2=1−(2,5−ジヒドロキシフェニル)エタ−2−イル;
V.(イエロー) R1=n−ヘプチル、R2=1−(2,5−ジヒドロキシフェニル)エタ−2−イル;
【0018】
【化2】

【0019】
VI.(マゼンタ) R1=プロパ−2−イル、R2=1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)エタ−2−イル;
VII.(マゼンタ) R1=ヘキサ−1−イル、R2=1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)エタ−2−イル;
VIII.(マゼンタ) R1=2−メチルプロパ−1−イル、R2=1−(2,4−ジヒドロキシフェニル)エタ−2−イル;
以下のアントラキノン染料:
【0020】
【化3】

【0021】
IX.(シアン) R1=水素、R2=(1−ヒドロキシブタ−2−イル)アミノ、R3=(1−(2,5−ジヒドロキシフェニル)プロパ−2−イル)アミノ;
X.(シアン) R1=5−(2,5−ジヒドロキシフェニル)ペンタ−1−イル、R2=R3=(ペンタ−3−イル)アミノ。
【0022】
以下のキノリン染料:
XI.(イエロー)
【0023】
【化4】

【0024】
以下のキサンテン染料:
【0025】
【化5】

【0026】
XII.(マゼンタ) R1=R3=2−クロロフェニル、R2=R4=メチル、R5=N,N−ジ(n−ヘキシル)アミノクロリド;
XIII.(マゼンタ) R1=R3=水素、R2=R4=2−クロロ−5−(2−エチルヘキサ−1−イル)カルボキサミドフェニル、R5=O
XIV.(マゼンタ) R1=R3=メチル、R2=R4=2−クロロ−5−(2−エチルヘキサ−1−イル)カルボキサミドフェニル、R5=O
XV.(マゼンタ) R1=R3=メチル、R2=R4=2−メチル−5−(2−エチルヘキサ−1−イル)カルボキサミドフェニル、R5=O
XVI.(マゼンタ) R1=R3=水素、R2=R4=2−(ブタ−1−イル)カルボキサミドフェニル、R5=O
XVII.(マゼンタ) R1=R3=エトキシカルボニルメチル、R2=R4=4−s−ブチルフェニル、R5=O
XVIII.(マゼンタ) R1=R3=各等量の2−エチルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル及び2,5−ジメチルフェニルから誘導される統計的混合物;R2=R4=メチル;R5=O
【0027】
【化6】

【0028】
XIX.(シアン) R=N,N−ジ(n−ヘキシル)アミノクロリド;
XX.(シアン) R=O
【0029】
【化7】

【0030】
XXI.(イエロー)
以下のトリアリールメタン染料:
【0031】
【化8】

【0032】
XXII.(マゼンタ) R1=ブタ−1−イル、R2=N,N−ジ(n−ヘキシル)アミノ;
XXIII.(マゼンタ) R1=ブタ−1−イル、R2=N−(4−((3,5−ジヒドロキシベンズアミド)メチル)ピペリジニル);
XXIV.(マゼンタ) R1=オクタ−1−イル、R2=N,N−ジエチルアミノ;
XXV.(マゼンタ) R1=オクタ−1−イル、R2=N,N−ビス(2−ヒドロキシ−2−オキソエタ−1−イル)。
【0033】
当業者は、染料の溶解度およびその色が充分に保持されるならば、イオン染料の対イオンは容易に変更することが可能であることを理解するだろう。
【0034】
本発明による染料からの非晶質固形フィルムの形成は、物質によって示される挙動を温度(℃)の関数として示す図1のグラフ図を参照することにより理解できる。使用される染料はイエローアゾ染料(IV)であり、この物質に入る熱流は、変調型DSCモード[MDSC]で操作されるTA Instruments 2920 DSC装置を使う示差走査熱量測定法(DSC)によって測定された。MDSCモードでの操作により、全熱流シグナルを可逆熱流成分と非可逆熱流成分に分離できる;結晶の溶融およびTgのような試料の相転移を、揮発、モルフォロジーの再編成および化学反応のような非可逆現象から分離できる。一般的に、試料は、窒素雰囲気のもとで、−10℃〜120℃[感熱溶媒]または−10℃〜200℃[染料]の温度範囲で、2℃/分または4℃/分のどちらかの加熱速度で試験された。試料が共通の熱履歴を有した後に試料を比較するために、試料には急冷を伴う2サイクル加熱試験が行なわれた。冷却速度が試料のモルフォロジーに及ぼす影響を調べるために、試料には、徐冷[4℃/分]段階と急冷段階によって分けられる3回の逐次加熱サイクル試験が行なわれた。試料の重量は4〜6mgの範囲であった。
【0035】
曲線Aは、粉末(結晶性)形態の染料で得られ、100℃より僅かに下の融点を示している。曲線Bは、染料をn−ブタノールに入れた溶液をガラス板に塗布し、その塗膜を乾燥したのち、そうして堆積した物質を掻き取ることにより形成された染料の非晶質固形層から取った同じ染料で得られた。非晶質(非結晶性)状態の染料は、非晶質染料への熱流で観察される変化によって示されるように、約60℃でガラス転移温度(Tg)を示したことが判る。曲線Cは、本明細書で詳細に説明することになっているように本発明によって利用できる感熱溶媒である1,10−デカンジオール(下記に示すTS1)で得られ、そして曲線Dは、ガラス板上に塗布することにより形成される感熱溶媒とイエロー染料との重量で1:1の混合物からのものである。
【0036】
図1で示されているデータを得るのに使用された物質のX線回折線は、図2で示されている。これらのデータは、回折計と組み合わせられたSiemens D500固定型アノード発生器(試験片キャリヤーを回転させる)を使って行なわれた広角X線回折(WAXD)試験から得られた。40kVと30mAでの0.154nmの波長を有するCuKαからなる単色X線ビームが、2〜80°の2θの範囲でこの測定で使用された。
【0037】
染料からの粉末(結晶性)形が、結晶固体に特有の強い回折線を示すことは曲線Aから知ることができる。曲線BおよびCは、各々、結晶性1,10−デカンジオール、および1,10−デカンジオールと記載されるように形成された染料との1:1の混合物を使ってガラス板に塗布することによって得られた。1,10−デカンジオールは、結晶固体に特有の強い回折線を示すのに対して、混合物は感熱溶媒に特有の強い回折線を示すが、結晶性染料物質に特有の回折線は示さず、従って、この染料は非晶質形態であることを示していることを知ることができる。
【0038】
本発明のいくつかの異なる好ましい実施形態があるが、概ね、2つのタイプ、すなわち単一相の実施形態と、多相の実施形態に分けることが可能である。名称が意味するように、単一相の実施形態では、転写層物質は主に1種類だけの染料含有相を含むけれども、別の相には少量の添加物または添加物類が含まれることが可能である。そのような添加物は、例えば、光安定剤、紫外線吸収剤および酸化防止剤が可能である。従って、この染料含有相は、本質的に染料または染料類の混合物を、もし別に何か物質があれば少量だけ含むことが可能である。一般的に、感熱転写物質層の中のいずれの他の成分も、必ずしもフィルム形成物質であるとは限らない、と言うのは、この層の主要なフィルム形成成分は染料それ自体であるからである。
【0039】
染料含有相は、必要な非晶質、非結晶性相をそれ自体形成できる単一化合物(前記で列記された化合物のような)、またはそのような化合物の混合物であり得る。染料と一緒に”稀釈剤”は存在しないか、または最小限の量しか存在しないので、本実施形態は極めて薄い転写物質層を提供できる長所を有する。本発明の単一相転写物質層実施形態は、可変のドット感熱転写のような特定の用途に特にうまく適合する。特定の染料、特にイオン性染料のガラス転移温度は、比較的高くあり得る(いくつかの場合には、実質的に100℃を超える)ので、転写物質をその固体状態から流動可能な状態へと転換し、それによりこの物質が受容体シートへ画像ごとに転写されることができるために、画像化される単位面積当たりかなりのエネルギーインプットが必要であり得る。エネルギーの使用量が主要な問題となることがあり、そして単位面積当たりの高エネルギーインプットがサーマルヘッドの印刷速度を制限することがある、ポータブル型プリンターまたはその他の画像化装置では、高エネルギーインプットは望ましくない。従って、単一相転写層はエネルギー要件が主な問題ではない感熱転写用途で使用することが好ましくあり得る。
【0040】
あるいは、単一相実施形態での転写物質層は第2の非染料成分と非共有結合(一般的に、水素結合による)する染料を含むことが可能である。例えば、染料および第2成分のうちの一方が複数の酸性基を含むことが可能であり、そして他方は複数の塩基性基を含むことが可能である。いろいろな染料(純粋な化合物のように、非晶質染料固形フィルムを形成することが可能でもあり、不可能でもある)は、別の非染料成分と一緒に非晶質、非結晶性網状構造を形成すること、およびこれらの網状構造を使用すると本発明の染料含有相を提供することができることが発見された。これらの網状構造の非晶質(非結晶性)の性質は、X線回折ピークが存在しないことによって確認されることができる。そのような網状構造を使用すると、本発明による単独では非晶質染料固形フィルムを形成しない染料を使用することができ、それによって利用可能な染料の選択を広げることができる。
【0041】
前記網状構造を形成するのに使用することが可能であるその他の技術の可能性を排斥する意図はないけれども、本発明のこの実施形態の現在の好ましい形態では、染料および第2非染料成分のうちの一方が複数の酸性基を含み、そして他方は複数の塩基性基、好ましくは含窒素塩基性基、そして最も望ましくは含窒素複素環式塩基性基を含む。例えば、下記に示すように、染料は複数のカルボン酸基を含み、第2非染料成分は1,3−ジ(4−ピリジル)プロパンであり得る。これらの2つの物質は、非染料成分の融点(46℃)に極めて近いガラス転移温度を有する非晶質水素結合型網状構造であると考えられる単一相を形成する。このタイプのシステムの1つの長所は、転写物質を化学的に媒染する受容体シートが使用されることができることである。例えば、染料がカルボン酸基を含む好ましい系では、受容体シートは、染料に化学的に結合する含窒素塩基の層で被覆されることが可能であり、それによって染料の拡散による画像の解像度の低下を防ぐことに役立つ。
【0042】
そのような網状構造で使用するのに好ましい染料には、
XXVI(イエロー)
【0043】
【化9】

【0044】
XXVII(マゼンタ)
【0045】
【化10】

【0046】
が挙げられる。
【0047】
本発明の2相の実施形態では、転写層は、染料含有相と結晶性物質である少なくとも1種類の”感熱溶媒”との混合物を含む。感熱転写物質層に含まれる感熱溶媒の少なくとも一部は染料含有相とは別の相を形成する。感熱溶媒は、染料含有非晶質相に含まれる非晶質形と、別の相に含まれる結晶形態との間で平衡状態にあると考えられる。染料含有非晶質相に含まれることができる感熱溶媒の量は、好ましくは少なくとも約50℃、そして特に好ましくは約60℃である非晶質相のTgによって制約されると考えられる。このようにして、感熱転写供与体シートのブロッキング、すなわち付着は、高温での貯蔵条件のもとでさえ避けることができる。好ましくは、約50℃未満で感熱転写物質層全体に1次相変化が起こるべきではない。すなわち、この層の溶融が起こるべきではない。結晶性感熱溶媒が、供与体シートの加熱過程で溶融して染料含有相を溶解または液化し、そしてこれにより、転写層の部分の受容体シートへの転写を、結晶性感熱溶媒が存在しないでこのような転写が起こる温度より低い温度で起こす。図1でわかるように、染料(類)と感熱溶媒との混合物は、結晶性感熱溶媒自体の温度とほぼ同じである(そして、粉末(結晶)形態のこの染料の融点より実質的に低い)温度で溶融する。
【0048】
本発明のいくつかの好ましい実施形態では、転写層用に選ばれる感熱溶媒は、染料含有相の染料(類)には良溶媒である。これらの実施形態では、転写された画像化物質のドットサイズは、可変ドット印刷に最適化されたサーマル印刷ヘッドの使用により変更されることが可能である。溶液が画像化条件のもとで形成される好ましい実施形態では、画像化物質の転写は、多孔質の受容体物質に行なわれることができる。低い溶融粘度が得られる場合には、比較的低い平均細孔サイズ、例えば約1μm未満、を有する受容体物質が使用されることが可能である。
【0049】
本発明の2相実施形態では、転写層が同じ染料含有相だけを含む場合に達成可能な温度より大幅に低い温度で染料の転写は実施できるので、画像化される単位面積当たりのエネルギーインプットは少なくなる。使用される感熱溶媒は、周囲温度より高い温度で溶融し、染料含有相を溶解または液化して染料含有相単独での温度より低い温度で転写する混合物を形成するいずれの可融性物質でもあり得る。2相画像化実施形態の過程で供与体シートから受容体シートへ転写される画像化物質は、従来の低粘度の真溶液の形態である必要はなく、スラリーまたは類似の物質であり得る。感熱溶媒と染料の比率は、重量で約1:3から約3:1の範囲であり得る。好ましい比率は約2:1である。従って、本発明の2相実施形態は、薄い供与体層を維持しながら、画像化温度を大幅に下げることができる。混合物が画像化後に冷却するにつれて感熱溶媒は第2相に分離するが、好ましくは感熱溶媒は、生成する画像の品質に悪影響を及ぼすような大きい結晶を生成するべきではない。供与体層は室温で粘着性がなく、しかも画像化の前に供与体シートの運搬や貯蔵の過程で経験することがあるような温度で溶融しないように、感熱溶媒は室温より充分高い融点を持つのが好ましい。
【0050】
本発明の2相実施形態で使用される結晶性感熱溶媒は、代表的に約60℃から約120℃の範囲内、そして好ましくは約85℃から約100℃の範囲内の融点を有する。好ましい実施形態では、感熱転写物質の融点は充分高く、融点温度では液体物質の粘度は、画像化のために与えられた時間内で感熱転写物質の実質的に全厚を受容体物質の細孔の中に転写するほど充分低い。この性質は、可変ドット印刷のようないくつかの場合に重要である、と言うのは、画素の全面に温度の正規分布状態が現われて、溶融感熱転写物質が受容体物質の細孔に完全には浸透できないほど高い粘度を有するならば、画像耐久性を比較的低下させ、多色系でのさらなる染料物質の転写に悪影響を及ぼす可能性のあるドットの縁部での染料の凹凸画像が生成することがあるからである。感熱溶媒は約90℃の融点を有することが特に好ましい。
【0051】
画像化の前に、供与体層の全ての感熱溶媒成分が必ずしも染料含有相から晶出して染料含有相とは別の第2相を形成するとは限らない。染料含有相に組み入れられる転写物質層の感熱溶媒の量は、染料含有相に添加物を含めて、後者を感熱溶媒とさらに適合性にすることにより染料含有相に配置される感熱溶媒のパーセンテージを更に高くして制御することができる。そのような添加物は、例えば、供与体層の調製条件のもとで結晶化しない感熱溶媒と似た分子または光安定剤のような他の添加物であり得る。比較的小さい結晶を形成する感熱溶媒を利用することが好ましい、と言うのは、このような結晶は画像化過程で染料含有相を速やかに溶解して、染料を受容体層に充分に転写するからである。
【0052】
染料含有相の中の感熱溶媒と転写層の第2結晶相の中の感熱溶媒との相対量は、転写層物質の融解熱を測定して、その値を転写層に存在する同じ質量の感熱溶媒の融解熱と比較することにより決めることができる。各々の値の比率は染料含有相と第2の結晶性相に存在する感熱溶媒の割合を示している。
【0053】
本発明の2相実施形態では、相変化は、室温と1つの相が本質的に形成されるような画像化温度との間で起こる。室温で粘着性のない染料含有相の転写層は、画像化温度では比較的低い粘度を有するように組成変化して、画像化物質を受容体層に転写する。
【0054】
別の好ましい実施形態では、2種類以上の感熱溶媒が転写層に組み入られる。いろいろな融点を有する2種類(以上)の異なる感熱溶媒を含む転写層が使用されて、低い方の融点を有する感熱溶媒が、高い方の融点を有する感熱溶媒より染料含有相を溶解または液化する程度が小さいように選ばれる場合、画像化方法の過程で画像化される画素当たり転写される染料含有相の量は、転写層が加熱される温度によって変動する。特定の画像化系では、染料含有相に加えて2種類だけの感熱溶媒を使用して優れた連続諧調性能を得る可能性を見出した。そのような連続諧調性能は、物質移動が厳密には2成分型である従来の感熱物質転写プロセスと比較して本発明の重要な長所である。あるいは、単一の感熱溶媒の中にいろいろな溶解度を有する2種類以上の染料の使用方法を採用することが可能である。
【0055】
明らかに、本発明のいずれの特定の画像化システムで使用される感熱溶媒も、提案されるシステムの染料含有相およびその他の成分を考慮して選ばれなければならない。感熱溶媒は、また、画像化前の供与体シートの運搬および貯蔵過程で、薄い転写層から実質的に昇華しないよう充分に不揮発性でもあるべきである。本発明によると好適ないずれの感熱溶媒も使用することが可能である。好適な感熱溶媒には、例えば少なくとも約12個の炭素原子を含むアルカノール、少なくとも約12個の炭素原子を含むアルカンジオール、少なくとも約12個の炭素原子を含むモノカルボン酸、前記酸のエステルおよびアミド、アリールスルホンアミドならびにヒドロキシアルキル置換アレーンが挙げられる。特定の好ましい感熱溶媒には、テトラデカン−1−オール、ヘキサデカン−1−オール、オクタデカン−1−オール、ドデカン−1,2−ジオール、ヘキサデカン−1,16−ジオール、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ドコサン酸メチル、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、およびp−トルエンスルホンアミドが挙げられる。特に好ましい感熱溶媒は、本明細書で後記のようなTS1〜TS13である。
【0056】
本発明により使用するのに好ましい部類の感熱溶媒は、低揮発度を有する感熱溶媒から成る。後記の実施例6を参照されたい。
【0057】
本発明により使用するのに好適である特定の染料と感熱溶媒との多数の適切な組み合わせは、後記の実施例に示している。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、転写物質層の中には、その層に存在する5重量%以下の物質が染料含有相の最大分子量染料の分子量より大きい分子量を持つべきである。高分子量種、特に高分子種が比較的高い量で存在すると、画像化条件のもとで、画像化物質が受容体シートへ転写するのに悪影響を及ぼすことがある、望ましくない、より粘稠な溶融物が生成する。更に、転写物質層のこのような特徴があると、比較的低い粘度を有する溶液からこの層を塗布することができる。転写層は、染料含有相の中の最大分子量染料の分子量より大きい分子量を有する成分を約2重量%以下、特に好ましくは約1重量%以下を含むことが好ましい。感熱転写物質層が前記のような比較的高い分子量種を何も含まないのが最適である。
【0059】
本発明の感熱転写記録システムを更に理解し、そして実施する当業者を手伝うために、供与体および受容体物質、ならびに感熱転写物質層の諸要件を今からいくつかの数学式と関連付けて議論する。この議論は単なる説明であって、決して本発明を限定する意図はないことを理解すべきである。
【0060】
単純化し過ぎるけれども、毛管流のLucas−Washbun方程式(1)を使って、受容体がインキによって完全に濡れていると仮定する前提で、供与体シートの諸要件を解析する:
t=2ηd/σr (1)
式中、tは受容体細孔への流動浸透距離dに要する時間であり、rは細孔半径、σは表面張力、そしてηは溶融インキの粘度である。非湿潤毛管の中に流体が進行する場合の更なる近似は、P.van Remoortere及びP.Joosによる“The Kinetics of Wetting:The Motion of a Three Phase Contactline in a Capillary”、J.Colloid Interface Sci.,1991,141,348−359に記載されていて、力学的前進接触角θの実験式(2)を適用して得ることが可能である。
【0061】
cosθ=1−4(ην/σ)1/2 (2)
式中、νは液体カラムの速度であり、この場合、式(3)は流動浸透に要する時間に対して得られる:
【0062】
【数1】

【0063】
式中、X=4d/r。
【0064】
X≫4の場合、(即ち、d≫r)式(3)は式(1)と等価になる。
【0065】
小細孔径、即ちd/rが大きい値の場合、Lucas−Washbun方程式は、妥当な近似法となる筈である。いずれの場合にしろ、最大表面張力と受容体の湿潤との両立を維持しながら、流動浸透物質転写の供与体構成の最適化には、転写される層の厚さ及び溶融粘度の最小化が必要である。
【0066】
反射濃度2(即ち、透過濃度1)を有し、密度ρkg/L、分子量m kg/モル−1及び吸光係数εLモル−1cm−1の、純粋で、等方性染料から成るフィルムの厚さd’(センチメートル単位)は:
d’=m/ερ (4)
で与えられる。
【0067】
従って、例えば全体として吸光係数25,000モル−1cm−1、分子量0.5kg/モル、及び密度1.0kg/Lを有する染料から成るフィルムの厚さは0.2マイクロメートルとなる。概ね、この厚さは、所与の染料の場合、感熱物質転写用の供与体フィルムの可能な最小の厚さであり、本発明の単一相実施形態によって達成可能な厚さである。ピーク吸光度(センチメートル当たりモル当たりのリットル単位)対分子量(モル当たりグラム単位)で測定される吸光係数の比が約10を超える染料を本発明によって利用することが好ましい。
【0068】
方程式(1)を使って、半径0.1マイクロメートルの受容体細孔の中に、各々の厚さが0.5マイクロメートルで表面張力が0.035N/mの3層が浸透するために必要な粘度を推定することが出来る。毛管の圧力は、感熱印刷ヘッドにより発生する圧力より大幅に大きいことが考えられ得る。更に、受容体の細孔容積は、全容積の50%(例えば、多孔質シリカゲル粒子間の間隙空間は全容積の約35%であり、シリカゲル粒子自体が多孔質である)と仮定すれば、物質移動の距離は供与体の厚さの約2倍となろう。最も難しいケースは、既に最初の2色を含む細孔の中に第3の色が転写することである:即ち、組み合わさった染料層が、受容体毛管の中に浸透する全距離はd=2×3×0.5マイクロメートルとなる。1ミリ秒の浸透時間が妥当な印刷時間と考えられる。更に、層及び受容体の温度が転写中は一定であると仮定する:明らかに、簡略化し過ぎであるが、大まかな推算には有用である。このような前提によると、目標粘度は次式で与えられる:
η≦tσr/2d
約0.19Pas(190cP)
図3は、いろいろな供与体層の厚さに対して、方程式(1)(上方の曲線)と(3)(下方の曲線)によって予測される粘度の要件を示している。
【0069】
Tgを超えるガラス形成物質の粘度と温度との関係は文献、例えばC.A.Angellによる“Thermodynamic Aspects of the Glass Transition in Liquids and Plastic Crystals”、Pure&Appl.Chem.1991,10,1387−1392で広く考察されている。粘度データは、Vogel−Tammann−Fulcherの実験方程式に合うことが多い:
η(T)=Aexp[DT/(T−T)] (5)
式中、A、D及びTは実験的に決められる。いろいろな物質の場合、約3ないし約50の範囲に及ぶDの値は、物質を構成する分子間の結合の性質を示していると考えられる。一般的に、高い値のDは、結合の強い網状構造に対応し(シリカガラスで見られるような、例えば所謂、“強い”液体)、一方、低い値のDは、弱い分子間結合に対応している(例えば、o−ターフェニル(terphenyl)で例示されるような“脆い(fragile)”液体)。
【0070】
図4は、Tg/Tの関数とする対数粘度のプロットであり、Tgを超えて加熱された時の高、低及び中位のD値による単一相液体の挙動を示している。室温を超えるTgを持つ物質の場合、粘度の変化は差次的な付着力によって画像化には充分であるが、微細な細孔への急速な浸透には殆ど適さない。
【0071】
本発明の2相実施形態では、単一相実施形態で得られる粘度より大幅に低い粘度が下記の実施例7で示すように得られることが可能であるように、相変化が室温と高い画像化温度との間で起こる。
【0072】
いずれの特定のシステムでも、非晶質染料対感熱溶媒の最適比は、次のように推算することが可能である:
J.Kunnenによる“General Viscosity−Composition Relationship for Dispersions,Solutions and Binary Liquid Systems”、Rheol.Acta 1984,23,424−434に記載されているように、種々の物質の2成分混合物の粘度は、実験的に方程式(7)に示す関係に従うことが判った:
η/η=exp[abΦ/(1−aΦ)] (6)
式中、ηは、粘度の低い方の純粋な成分の粘度(この場合、溶融した感熱溶媒)であり、ηは、より粘稠な成分(この場合、染料)の容積分率Φを有する成分の混合物の粘度であり、a及びbは無次元の定数である。bの値は温度に依るが、aはそうではない。a及びbの値は或る特定の温度で実験的に決めることが可能であり、それらの値から、層の最適組成が推算されることが可能である。供与体層の厚さはΦと逆比例するので、ηd(Lucas−Washburnの方程式(1)の時間tに比例する)の積の最小化は、
1/Φexp[abΦ/(1−aΦ)]
の最小化と等価であり、次となる:
【0073】
【数2】

【0074】
一般的な染料の場合、aは約1そしてbは約2(90℃で)、従ってΦ=0.38。言い換えれば、この場合の染料対感熱溶媒の最適比は約1:1.5である。
【0075】
積ηdは、細孔への浸透に要する時間に比例するので、この値が小さければ小さいほど、印刷はそれだけ速く出来る。本発明では約0.06Pasμmより小さい積ηdが好ましい。
【0076】
本発明の2相実施形態では、この2相が貯蔵又は実際の使用過程で到達しそうな温度で粘着性でないように、非晶質染料含有相の粘度は約1012Pasであること、或いはこの相のTgは室温より約30℃以上高いことが好ましい。従って、染料含有相のTgは約50℃が好ましく、約60℃が更に好ましい。
【0077】
本発明により利用される受容層はいずれの好適な受容層物質も含むことが可能である。約1μm未満の平均細孔サイズを有する受容体層を利用することが好ましく、そして約0.3μm未満の平均細孔サイズを有する受容体層を利用することが更に好ましい。そのような受容体物質層は、実質的に僅かの量の光も散乱しないで光沢性外観を呈する。そのようなミクロ細孔質受容体層は市販されている。供与体層からの感熱転写物質が粒子内部の細孔ならびに粒子間の間隙空間をも占めることが可能であるような、それ自体で多孔質である粒子から構成される市販の受容体物質もある。そのような受容体物質の例は、“Novel Sub−Micron Silica Gels for Glossy Ink Receptive Coatings”、D.M.Chapman及びD.Michos,IS&T NIP15:1999、164−168頁に記載されている。
【0078】
転写層に存在する染料(類)の量は、主に、利用される特定の染料(類)、目的とする画像化の用途及び所望の結果に依って広範囲に変更出来る。いずれの特定の転写層にも必要な染料濃度は、慣用的な調査実験によって決めることが可能である。
【0079】
前述のように、転写物質層は、優れた画像化特性、特に一般的に少なくとも約1.5であるべきとされる画像の最大光学濃度と両立させて、可能な限り薄く保つことが望ましい。本方法で使用される転写物質層の厚さは、一般的に、約1.5μm以下、好ましくは約1μm以下である。下記の実施例で説明するように、本発明の好ましいシステムは、約1.0μm以下の又は未満の厚ささえも有する転写物質層を使用することが出来る:満足のいく画像化特性及び光学濃度は、約0.5μmの厚さに対応する0.5gm−2ほどの少ない塗布量の転写層で達成されている。前述のように、好ましい感熱転写物質層は、約1Pas未満の溶融粘度及び比較的低い表面エネルギー、即ち表面張力を有する液化転写層も生成する。約0.5Pas未満の溶融粘度を有する転写層を利用することが特に好ましい。そのような薄い層、低い溶融粘度及び低い表面エネルギーによって、大半の細孔が直径で約1μm未満、そして好ましくは約0.5μm未満であるミクロ細孔質受容体シートは簡単に使用されることが出来、そして大抵の場合、大半の細孔が約0.2μm未満であるミクロ細孔質受容シートを使って、光沢性外観を有する画像を作り出すことが可能である。本発明の好ましい実施形態によると、感熱転写物質の溶融粘度は、結晶性感熱溶媒の融点で、感熱転写物質の実質的に全てが受容体物質の細孔に入ることが出来るほど充分に低い。
【0080】
そのような微細な細孔受容シートを使用出来ることが、従来の感熱物質転写プロセスと比較して本発明の好ましい実施形態の重要な長所である。そのような従来のプロセスでは、転写層は、ビヒクル、一般的にワックス及び/又は合成ポリマー、の中に溶解又は分散された染料又は顔料を含む。転写層を形成するのに使用される塗布プロセスの過程でも、供与体シートの貯蔵及び運搬の過程でも(これらの両過程で供与体シートは、温度、湿度及びその他の環境変数の実質的変化に曝されることがある)、染料又は顔料をビヒクルの中で均一に溶解又は分散を保つ必要があるので、実施に当たっては、一般的に、染料又は顔料は転写層の25重量%より少なく含み、従って高品質のフルカラー画像に必要な光学濃度(約1.5)を確保するために、転写層は約1.5μmの最少厚さを持つ必要がある。転写層の染料の割合を高めようとすると、転写層の溶融粘度も表面エネルギーも高くなり易く、従って、前記の従来のシステムは微細細孔受容シートと一緒に使用することは出来ない。
【0081】
本発明の記録方法で、非晶質染料固形層の物理的特性と一緒に使用出来る薄い転写層は、従来の感熱物質転写プロセスと比較して大きい利点をもたらす。本発明が、差次的な接着タイプのプロセスの中で使用されるとき、一般的に、生成される画像は、従来の差次的な接着の感熱物質転写画像よりも摩耗に対して敏感ではない。なぜなら、比較的薄い転写層は一般的に摩耗に対して本来的に敏感ではないからでもあり、本方法で使用される非晶質染料固形フィルムはそのガラス状の性質のために強靭で高い凝集性(coherent)層を作り出すことが出来るからでもある。本発明の2相転写層も、画像化用に必要な単位面積あたりのエネルギーを実質的に少なく済ませることが出来、このことは、後で考察するように、画像様の光線吸収を使用して画像化を行なうプリンター、例えばポータブルプリンター、で特に有用である。しかしながら、摩耗又はその他の環境上の悪いファクター(画像の退色の原因になり易いことがある紫外線又は画像を洗浄するのに使用される溶剤のような)に対する保護が望まれる場合、保護皮膜が受容体シート上の転写層全面に配置されことが可能である。そのような保護皮膜は、高温積層法又は同類の技術によって被覆することが出来るが、同じサーマルヘッド又は画像化方法それ自体用に使用される別のヘッド源を使用して画像全体に熱的に転写されるのが便利である;多色方法では、選ばれた画素だけよりもむしろ画像全体を被覆するために保護皮膜が通常転写される過程を除いて、保護皮膜はその他の色と同じ方法で転写される、本質的に余分な“色”となる。
【0082】
本発明の方法段階は、感熱物質転写画像化の当業者には慣れた従来技術によって実施することが出来る。従って、転写層の加熱は、直線タイプ若しくは横送りタイプのサーマルヘッド、又は加熱金属ダイを使って行なうことが可能である。それとは別に、転写層の加熱は、転写層又はそれに熱的に接触している層によって吸収された光線に転写層を画像様に曝露することによって行なうことが可能である。或る場合には、転写層自体が画像化用に使用される光線を強く吸収することが出来ない(例えば、コスト問題から、可視染料によって吸収されることが出来ない赤外レーザーを使用することを指摘されることがある)、そして転写層自体、又は転写層と感熱的に接触している層は、画像化用に使用される光線を強く吸収する光線吸収剤を含むことが可能である。必要に応じて、基材自体は光線吸収剤を含むことが可能であり、或いは、例えば、光線吸収剤は、転写層と基材との間に配置される別の層の中に含まれることが出来る;このことは、光線吸収剤が転写層と一緒に受容シートへ転写されるのを防ぐには望ましい。
【0083】
本発明の感熱転写記録システムを極めて普通に使用して、人の眼によって見られる可視画像を作り出すことが可能であるけれども、そのような画像に制約されずに、種々の形態の機械読み取りを目的とする非目視型画像を作り出すことに使用され得る。例えば、本発明は、例えば保安や身分証明に関するセキュリティーコード、バーコード及び類似の証印類を作成するのに使用することが可能であり、セキュリティーコードは通常の検査では現われないが、周知の技術によって読み取ることが出来るように、そのようなセキュリティーコード及びその他のコードは、赤外又は紫外領域で“色”を持つことが可能である。従って、用語“染料”は、本明細書では、電磁放射線の或る波長を選択的に吸収する物質を指すのに使用され、人の眼に見える色を持つ物質に限定されると解釈してはならない。用語“色”は、同じ様な方法で理解すべきである。本発明の記録方法は、また、一般的に“画像”と見なされない一連の着色要素、例えば液晶ディスプレイ及びその他の光学又は電子システムの中で使用するカラーフィルター、を形成するのにも使用されることが可能である。
【0084】
感熱画像化方法で使用するための記録技術は当該分野では周知であり、従ってそのような技術をここで詳細に考察する必要はない。本発明の新規の感熱転写記録方法は、あらゆる好適な感熱記録技術によって実施されることが可能である。
【0085】
感熱転写記録業界の当業者には公知のように、フルカラーの可視感熱物質転写画像を作り出すためには、少なくとも3種類の異なる着色転写層を受容シートへ転写することが必要である;一般的に、シアン、マゼンタ及びイエロー(CMY)又はシアン、マゼンタ、イエロー及び黒(CMYB)転写層が使用される。いろいろな着色転写層が、別々の基材上に、及び別々のサーマルヘッド又はその他の加熱源によって画像化される各転写層上に被覆されることが出来るけれども、そのようなことをするのに必要な印刷装置は嵩高く、複雑になりがちであり、別々の着色画像の正確な位置合わせの際に難問が起こることがある。従って、概略的には、例えば、米国特許第4,503,093号に記載されている方法で、基材の単一ウェブ上に、一連のカラー画像化領域又は“区画(patche)”としていろいろな転写層を被覆することにより供与体シートを形成することが好ましい。各色の1つの区画を使って単一の受容シートを画像化して、その区画は順次に受容シートと接触し、単一ヘッドによって画像化される。1個だけのウェブ(実際には、1個の供給スプールと1個の巻き取りスプールによって)と1個だけの印刷ヘッドで済むので、印刷装置をコンパクトにすることが出来る。
【0086】
多色の実施形態では、異なるカラーの感熱転写物質を、粘度が増える順に、即ち最初に最も粘稠性の小さい色材を、それに続けて次に最も粘稠性の小さい色材を、そして最後に最も粘稠な色材を転写するのが好ましい(感熱転写物質は全て実質的に同じ厚さ及び表面張力を有すると仮定して)。更に、本発明の感熱転写画像化システムの多色の実施形態では、異なる感熱溶媒を、各々異なる着色感熱転写物質層に組み入れることが好ましい。各々が、例えばシアン、マゼンタ、イエローに異なって着色された感熱転写物質を有する3種類の供与体要素を利用する好ましいフルカラーの実施形態では、各々の転写層には、1種類の感熱溶媒を組み入れて、少なくとも1種類の感熱転写層は、別の感熱転写層の中に存在する感熱溶媒(類)(thermal solvent)以外の異なる感熱溶媒を有することになるのが好ましい。同じ感熱溶媒が2種類以上の層で使用される場合、最終画像の中に“ブルーミング(blooming)”、即ち画像の表面に形成される望ましくない結晶、が起こり易くなると思われることが見出された。
【実施例】
【0087】
ここで、本発明の感熱転写記録システムを、例により、特に好ましい実施形態について更に詳細に説明するが、これらは例示だけを意図しており、本発明は、本明細書に記載される物質、手順、量、条件等に制約されないことが理解される。記載されている全ての部およびパーセンテージは、別に規定がない限り重量による。
【0088】
(実施例1)
本実施例は、多種多様の市販の合成染料が、本発明で使用するのに好適な非粘着性、非晶質固形フィルムを形成出来ることを例示する。市販されていてユーザー好みの合成品、イエロー、マゼンタ、シアンおよび黒の各染料を、次の方法で非晶質固形フィルム形成用にスクリーニングした:
2−ペンタノンまたは1−ブタノールの中に入れた試験染料の5重量%溶液を、#6Meyerロッドを使って、厚さ1.75ミル(44.5μm)のポリ(エチレンテレフタレート)フィルム基材に塗布した。この塗膜を温風で乾燥したのち、24時間後には結晶化(偏光顕微鏡法を使って)、耐摩耗性(摩耗試験法を使って)、およびタック試験を行なった。次の物質は、結晶化は検出されず、摩耗試験およびタック試験に合格であった(両試験は、各々、綿棒で固形フィルムの表面の両端までを擦ること、および固形フィルムの表面を指で触れることによって行なった)。
【0089】
カラーインデックス(C.I.)ソルベントイエロー13、C.I.ソルベントイエロー19、C.I.ソルベントイエロー36、C.I.ソルベントイエロー47、C.I.ソルベントイエロー88、C.I.ソルベントイエロー143、C.I.ベーシックイエロー27、およびカヤセットイエローK−CL(Nippon Kayakuから入手可能);
C.I.ソルベントレッド35、C.I.ソルベントレッド49、C.I.ソルベントレッド52、C.I.ソルベントレッド91、C.I.ソルベントレッド122、C.I.ソルベントレッド125、C.I.ソルベントレッド127、C.I.ベーシックレッド1、およびC.I.ベーシックバイオレット10。
【0090】
C.I.ソルベントブルー5、C.I.ソルベントブルー25、C.I.ソルベントブルー35、C.I.ソルベントブルー38、C.I.ソルベントブルー44、C.I.ソルベントブルー45、C.I.ソルベントブルー67、C.I.ソルベントブルー70、C.I.ベーシックブルー1、C.I.ベーシックブルー2、C.I.ベーシックブルー33、およびカヤセットブルーK−FL(Nippon Kayakuから入手可能)。
【0091】
カヤセットブラックK−R(Nippon Kayakuから入手可能);および染料I−XXIV。
【0092】
本実施例で説明した染料は、本発明によって使用するのに好ましい染料である。
【0093】
(実施例2)
本実施例では、それ自体では安定な非晶質固形層を形成しない染料と本発明による非晶質固形感熱転写物質層を形成する非染料成分との組み合わせを例示する。本実施例では、イエロー染料(XXV)およびマゼンタ染料(XXVI)の各々を、非染料成分1,3−ジ(4−ピリジル)プロパンと組み合わせた。
【0094】
調製法を後記の実施例4で説明しているイエロー染料XXVは、図2を参照して前述したように行なったX線粉末回折によって決定される結晶性固形物であった。
【0095】
イエロー染料XXVと1,3−ジ(4−ピリジル)プロパン(純粋な物質として61.2℃で溶融する)と組み合わせ物を、両物質ともテトラヒドロフランの中で溶解して調製し、穏やかな加熱のもとで真空蒸発によって溶媒を取り除いて、透明なイエロー固形物を製造した。これらの成分の種々の組み合わせ物のTgを表Iに示している(実施例5に記載されるように測定した)。
【0096】
【表1】

【0097】
これらの混合物のいずれもX線粉末回折、DSCまたは偏光顕微鏡法による検査によって検出された結晶性染料または結晶性1,3−ジ(4−ピリジル)プロパンではなかった。
【0098】
同様な一連の実験をマゼンタ染料XXVIを使って行ない、表IIに示している結果を得た。
【0099】
【表2】

【0100】
1:1の試料では、X線粉末回折は、約10%の染料が結晶形であり、1:2の試料では、染料の約5%が結晶形であることを示した。1:3の比では、結晶性物質は検出されなかった。
【0101】
下記の本実施例では、次の感熱溶媒物質を使用した:
感熱溶媒 構造
TS1 1,10−デカンジオール
TS2 1,12−ドデカンジオール
TS3 1,12−ドデカン二酸、ビス(ジメチルアミド)
TS4 1,14−テトラデカン二酸、ビス(ジメチルアミド)
TS5 1,16−ヘキサデカン二酸、ビス(ジメチルアミド)
TS6 N−ヘキサデカン−1−イルアセトアミド
TS7 N−デカン−1−イル−4−メトキシベンズアミド
TS8 N−デカン−1−イル−4−クロロベンズアミド
TS9 N−(ドデカン−1−イル−アミノカルボニル)モルホリン
TS10 ドデカン−1−イル−ニコチンアミド
TS11 N−デカン−1−イル−4−ニトロベンズアミド
TS12 カルバミン酸、1,4−ブタンジイル−ビス−ジエチルエステル
TS13 N−ドデシル−4−メトキシベンズアミド。
【0102】
(実施例3)
本実施例では、本発明で使用する幾つかの代表的感熱溶媒の調製を記載する。TS1およびTS2を、Aldrich Chemical社から入手し、受け取ったまま使用した。TS6は、Sasin等のJ.Am.Oil Chem.Soc.、34,358(1957)の記載通りに調製した。
【0103】
(TS3)(J.Am.Chem.Soc.110、5143(1988)も参照されたい)
1,12−ドデカン二酸6.9グラム(30ミリモル)を塩化チオニル40mLに加えたのち、こうして得た懸濁液を加熱しながら攪拌して還流した。30分間還流すると、混合物が透明になった;還流を更に30分間続けると、淡黄色が認められた。過剰の塩化チオニルの大半を蒸留で取り除いた(22mL集めた)。残留の淡黄色オイルを1,2−ジクロロエタン(30mL)で稀釈したのち、追加の30mLが集まるまで蒸留を再度続けた。残留油をジクロロエタン(25mL)で稀釈したのち、約−10℃で(ドライアイス/IPOH浴)で攪拌しつつ滴下しながら、ジクロロメタン(70mL)と40%ジメチルアミン水性液(40g)の攪拌混合物に加えた。更に15分間攪拌すると、下(有機)層が分離され、水(75mL)、次いでブラインで洗浄した(70mL;2種の溶液の比重が合致するので、エマルションになる可能性がある。追加の水(50mL)とジクロロメタン(25mL)で稀釈するとよく分離した)。有機層を蒸発させて乾燥させたのち、酢酸エチル(50mL)から再結晶化した。このケークを冷酢酸エチル(60mL)で洗浄したのち、真空で乾燥すると無色の板状物、融点83−84℃、6.49g(76%)となった。高速原子衝撃(FAB)イオン型質量スペクトルの分子イオンをM/e=313(M+1)で得た。
【0104】
(TS4)
工業グレードの1,14−テトラデカン二酸(ドデカンジカルボン酸)(5.08g、20ミリモル)、トルエン(11.6g)および塩化チオニル(5.95g、50ミリモル)の混合物を緩やかな還流で1時間攪拌したのち、20℃で一夜放置したのち、3時間還流した。次に20mLの留出物を集めて残留溶液を20℃に冷却し、40%のジメチルアミンの冷水溶液(40mL)に加えると、無色の沈殿物が得られ、この沈殿物を濾過により集めて、トルエン(20mL)で洗浄し、乾燥したのち、酢酸エチルから再結晶化すると無色の板状物、融点87−80℃、2.90gを得た(文献値91−92℃;Soldi等、J.Am.Chem.Soc.110,5137(1988))。FABイオン型質量スペクトルではM/e=313(M+1)で分子イオン。
【0105】
(TS5)
(a.1,16−ヘキサンデカン二酸の合成)
酢酸30cmに入れた1,1,14,14−テトラデカンテトラカルボン酸テトラメチル(J.Am.Chem.Soc.、1990,112、8458−8465に記載の通り調製した、10g、23.3ミリモル)溶液および濃塩酸7.5cmを48時間還流で攪拌した。この溶液を冷却するとその間に生成物が沈殿した。水を加えて濾過し易くした。生成物を濾過し、水で洗浄しのち、空気で乾燥した。この二酸を酢酸エチルから再結晶化し、濾過したのち真空乾燥した。
【0106】
収量=5.0g(75%)
融点122−124℃(文献値124−126℃)。
【0107】
(b.TS5の合成)(Anal.Chem.66,20,1994,3449−3457)
1,16−ヘキサデカン二酸(5g、17.5ミリモル)と塩化チオニル(3.83cm、6.25g、52.5ミリモル)の混合物をトルエン(25cm)の中で4時間、緩やかに還流して、次に室温で一夜攪拌した。トルエンおよび過剰の塩化チオニルを蒸留により取り除いた。溶液を20℃まで冷却したのち、40%のジメチルアミンの冷水溶液(5℃)(40cm)にゆっくりと加えた。温度を5−10℃に保つと、加えたときに生成物が沈殿した。生成物を濾過し、トルエン(10cm)で洗浄し、空気乾燥したのち酢酸エチルから再結晶化した。
【0108】
収量=4.25g(71%)
融点91−93℃(文献値91−92℃)。
【0109】
(TS7)
ジクロロメタン(50mL)に入れたデシルアミン(3.7g、0.024モル)とトリエチルアミン(2.4g、0.024モル)の混合物に、ジクロロメタン(10mL)に入れた塩化4−メトキシベンゾイル(4.0g、0.024モル)を、温度を氷−塩浴中で0℃に保ちながら、滴下しながら加えた。こうして生成した混合物を、この温度で1時間攪拌したのち、室温まで徐々に加温して更に2時間攪拌を続けた。水、2%塩酸、そして水で相次いで洗浄したのち、有機層を蒸発により乾燥し、こうして生成した生成物をメタノール/水から再結晶化すると、85%の収率、融点81.0−82.0℃で表題の組成物(5.9g、0.020モル)を得た。
【0110】
(TS8)
ジクロロメタン(50mL)に入れたデシルアミン(3.6g、0.023モル)とトリエチルアミン(2.3g、0.023モル)の混合物に、ジクロロメタン(10mL)に入れた塩化4−メトキシベンゾイル(4.0g、0.023モル)を、温度を氷−塩浴中で0℃に保ちながら、滴下しながら加えた。こうして生成した混合物をこの温度で1時間攪拌したのち、室温まで徐々に加温して更に2時間攪拌を続けた。水、2%塩酸、そして水で相次いで洗浄したのち、有機層を蒸発により乾燥し、こうして生成した生成物をメタノール/水から再結晶化すると、94%の収率、融点76.0−78.0℃で表題の化合物(6.4g、0.022モル)を得た。
【0111】
(TS9)
アミドドデカン(7.5g、40.5ミリモル)とトエチルアミン(5.85cm、4.25g、42ミリモル)をジクロロメタン(100cm)に溶解した。この溶液を5℃まで冷却したのち、モルホリンカルボニウムクロリド(4.72cm、6.05g、40.5ミリモル)をゆっくりと加えた。反応混合物を0.5時間還流したのち、水(200cm)で洗浄した。反応混合物の容積を50cmに減らした。冷却すると生成物は結晶し、濾過したのち空気で乾燥した。
【0112】
収率=6.11g(51%)。
【0113】
(TS10)
塩化ニコチノイル塩酸塩(5g、28ミリモル)を、1−ドデシルアミン(5.2g、28ミリモル)、トリエチルアミン(5.6g、56ミリモル)およびジクロロメタン(100mL)を含むフラスコに加えた。適度の発熱反応により、溶媒は還流し、この反応物を30分間攪拌された。反応混合物を水(200mL)に注ぎ、層を分離した。有機層を氷で冷却すると白色の沈殿物が生成した。固形物を濾過し、空気で乾燥させて、TS10(融点73−76℃)6.5g(80%)を得た。
【0114】
(TS11)
ジクロロメタン(60ml)の中の1−デシルアミン(3.4g、0.022モル)とトリエチルアミン(2.4g、0.024モル)との混合物に、塩化4−ニトロベンゾイル(4.0g、0.022モル)を、温度を氷−塩浴で0℃に保ちながら数回に分けて加えた。こうして生成した混合物をこの温度で1時間攪拌したのち、室温まで徐々に加温して更に2時間攪拌を続けた。水、2%の塩酸、そして水で洗浄したのち、有機層を蒸発により乾燥させて、こうして生成した生成物をメタノールから結晶化すると、96%の収率、融点90.0−91.0℃で表題の化合物(6.5g、0.020モル)を得た。
【0115】
(TS12)
機械的攪拌機、冷却浴および温度計付きの5Lの三ツ口フラスコに、水237.49mLに溶解させた炭酸カリウム109.25g(0.79モル)およびトルエン158.3mLに入れた1,4−ジアミノブタン28.5g(0.32モル)を加えた。この溶液を攪拌したのち、氷水浴中で冷却した。トルエン79.1mLに入れたエチルクロロホルメート77.27g(0.71モル)の溶液を1時間にわたって、冷却した反応混合物に加えた。エチルクロロホルメート/トルエン溶液の添加が終わると、反応混合物を氷浴中で15分間攪拌したのち、室温まで加温し、1時間攪拌し、そして65℃で半時間加熱した。反応混合物を分液濾斗に移した。温かい有機層を分離して無水硫酸マグネシウムの1インチ床で急速濾過を行なった。トルエン(63.3mL)を水性層に加え、そして混合物を攪拌して65℃で10分間加熱した。温かい有機層を分離して無水硫酸マグネシウムと同じ1インチ床で急速濾過を行なった。濾液を合わせて室温まで冷却し、ヘプタン633.3mLで稀釈し、そして3時間冷蔵庫に入れた。沈殿した固形物を濾過して、ヘプタン158.3mLで2回洗浄し、完全真空の真空炉で16時間乾燥して、63.33gのTS−12を得た。HPLC分析で96重量%と100面積%を示した。
【0116】
(TS13)
機械的攪拌機、温度計および窒素入り口付きの三ツ口丸底フラスコに、p−アニス酸(1.0kg、6.6モル)とドデシルアミン(1.22kg、6.6モル)を加えた。温度が220℃に達し、加熱中に泡が発生するのが観察されるまで混合物を加熱した。泡が生成しなくなるまで(2時間)、反応はこの温度で続けた。NMRにより反応が、この時点で完了したことが確認された。反応混合物を110℃に冷却したのち、n−ブタノール(4L)の中に移した。室温で一夜放置したのち、溶液から沈殿した生成物を濾過により集めて60℃で一夜乾燥した。生成物(1.5kg)を収率71.2%、融点91−92℃で得た。H NMR(300MHz、CDCl):δ 0.82(3H、t、CH)、1.24(18H、m、CH)、1.55(2H、m、CH)、3.42(2H、m、CH)、3.80(3H、s、CH)、6.10(1H、br、NH)、6.40(2H、d、芳香族)、7.70(2H、d、芳香族)ppm、13C NMR(75、MHz、CDCl):14.30、22.88、27.23、29.54、29.75、29.79、29.82、29.84、29.94、32.10、40.26、55.57、113.86、127.34、128.80、162.20、167.20ppm。
【0117】
(実施例4)
本実施例では、本発明で使用する幾つかの代表的染料の調製を記載する。染料IV、V、VI、VII、およびVIIIは全て、米国特許第3,134,764号に記載されている。染料IXは、米国特許第3,315,606号に記載されている。染料Xは米国特許第3,691,210号に記載されている。非染料成分1,3−ジ(4−ピリジル)プロパンは、Aldrich Chemical社から購入出来、受け取ったまま使用した。温度は全て摂氏度(℃)で表している。
【0118】
(染料I)
(a.3−エトキシカルボニル−5−ヒドロキシ−1−フェニル−4−(4−フェニルアゾ)ピラゾールの調製)
250mLの三ツ口フラスコの中で濃塩酸(6mL、0.9モル)を水(75mL)に入れた溶液に、p−ドデシルアニリン(5.22g、20ミリモル)をエタノール(5mL)に入れた溶液を20℃で加えた。こうして生成した濃厚な懸濁液に機械的に激しく攪拌しながら10℃で亜硝酸ナトリウム(1.38g、20ミリモル)を水(15mL)に入れた溶液を30分間にわたって加えた。こうして生成したオレンジ色スラリーを水で稀釈して230mLにしたのち、冷水(200mL)に入れて急冷した。このスラリーを濾過し、ケークを水(80mL)で洗浄し、未だに水分を含む赤橙色の柱状物が得られ、この柱状物をエタノール(450mL)から再結晶化して、真空乾燥後に金色のマット状板状物8.58g(85%)を得た。
【0119】
(b.染料の調製)
このエチルエステル(1.00g、2.0ミリモル)をn−ヘキシルアミン(7.2g)に入れた溶液を、100℃で攪拌しながらエタノールを時折排出させた。4時間後、この混合物を20°に冷却し、12時間放置したのち、酢酸10mLを含む氷水100mLに入れて急冷すると、金色の沈殿物が得られ、この沈殿物を濾過で集めて、水(30mL)で洗浄し、乾燥すると1:1メタノール/エタノールから再結晶化出来る橙黄色の板状物1.16g(104%)を得た。
【0120】
(染料II)
エタノール(7mL)の中の3−エトキシカルボニル−5−ヒドロキシ−1−フェニル−4−(4−フェニルアゾ)ピラゾール(0.504g、1.0ミリモル、前記染料Iで説明通りに調製した)、チラミン(0.248g、1.8ミリモル)および無水酢酸ナトリウム(0.10g、1.2ミリモル)の混合物を、窒素のもとで加熱して還流した。3時間後、混合物をエタノールを加えて稀釈して11mLとしたのち、冷却して、固形物を沈殿し、この固形物を濾過により集めて一夜乾燥させて、黄橙色の板状体0.32g(53%)を得た。FAB質量スペルトルではM/e=597(M+1)で分子イオン;ジクロロメタン中において464nmで最大吸収度。
【0121】
(染料III)
(a.N−(2−エチルヘキシル)−1−フェニルピラゾール−5−オン−3−カルボキサミド(5941−106)の調製)
エチルピラゾール−5−オン−3−カルボキシレート(4.64g、20ミリモル)を2−エチルヘキシルアミン(10.0g、123ミリモル)に入れた混合物を窒素のもとで還流で攪拌した。4時間後、混合物を20℃に冷却したのち、濃塩酸10gを含む氷水100mLの中に入れて急冷した。混合物をジクロロメタン(70mL)を使って抽出して有機層を水(100mL)、次にブライン(70mL)で洗浄し、そして蒸発させ赤褐色のオイルとし、このオイルをクロマトグラフィー(シリカゲル、2:1の酢酸エチル/ヘキサンを使って溶出)にかけた。主要画分は、重量2.67g(50%)、融点70.5−74°の黄褐色固形物として集めた。
【0122】
(b. 2,4−ジアクトキシ(diactoxy)ベンズアルデヒドの調製)
ジクロロメタン(150mL)の中の2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド(5.0g、36mmol)と塩化アセチル(5.15mL、72mmol)の攪拌懸濁液にピリジン(5.82mL、72mmol)を滴下した。反応混合物は殆ど透明となり、3時間攪拌した。追加の塩化アセチル2.58mL(36mmol)とピリジン2.91g(36mmol)を加えて、さらに2時間反応混合物を攪拌した。この時点で反応混合物を水(150mL)に入れてクエンチし、ジエチルエーテル(70mL)で抽出した。エーテル層を乾燥(硫酸マグネシウム)して濃縮すると、放置時に結晶化して5.46g(68%)の黄ばんだオイルを得た。
【0123】
(c. 2,4−ジアセトキシ−4’−ニトロスチルベンの調製)
テトラヒドロフラン(100mL)中の(4−ニトロベンジル)トリフェニルホスホニウムブロマイド(11.72g、24.4mmol)の懸濁液に、カリウムtert−ブトキシ(2.99g、24.5mmol)をTHF(100mL)に入れた溶液を滴下しながら加えた。反応混合物は明るい赤色に変わり、THF 50mLに入れた2,4−ジアセトキシベンズアルデヒド(5.46g、24.5mmol、前記のb.で説明したように調製した)を滴下した。この反応物を20℃で窒素下で24時間攪拌したのち、希酢酸(100mL)でクエンチし、ジクロロメタン(100mL)で抽出した。有機層を乾燥(硫酸マグネシウム)し、乾燥するまで蒸発したのち、クロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン中の5%メタノールで溶出)にかけると、重量で3.722g(44%)の黄色針状物としてシス−およびトランス異性体の混合物を得た。
【0124】
(d. 1−(4−アミノフェニル)−2−(2,4−ジアセトキシフェニル)エタンの調製)
ニトロスチルベン(前記のc.で説明したように調製した)をエタノール(100mL)に溶解したのち、10%Pd/C(0.5g)をこの溶液に加えた。この混合物を、初圧45psiのParr振とう器を使って14時間水素化した。触媒は濾過により取り除き、溶液をエバポレートして、次の段階で使用する粗製生成物2.947g(87%)を得た。
【0125】
濃HCl(1.41g)を水(10mL)に入れた溶液に、20℃で前記からのアミノジアリールエタン(1.239g、3.9mmol)を加えた。得られた溶液に、酢酸ナトリウム(0.483g、5.9mmol)と亜硝酸ナトリウム(0.269g、3.9mmol)を水(10mL)に入れた溶液を加えた。この混合物に、アセトン(10mL)に溶解したN−(2−エチルヘキシル)−1−フェニルピラゾール−5−オン−3−カルボキサミド(1.228g、3.9mmol、前記のa.で説明したように調製した)を加えた。暗褐色相が分離した;混合物は酢酸エチル(10mL)で稀釈した。有機層を単離し、乾燥(硫酸マグネシウム)し、エバポレートして、橙色のオイル1.892gを得、これはさらに精製をすることなく次の段階で使用した。
【0126】
このオイルを水に懸濁して水酸化カリウム(0.325g、5.8mmol)を加えた。得られた溶液を20℃で1時間攪拌したのち、希HCl(50mL)に入れてクエンチすると、橙色の沈殿物が得られ、これを濾過した。濾過ケークをクロマトグラフィーにかけた(シリカゲル、ヘキサン中の20%酢酸エチルで溶出した)。カラム上で結晶化するので、或る程度の物質は失われるが、純粋な生成物を0.23g(10%)の金色板状体として集めた。
【0127】
(染料XI)
2−(3−ヒドロキシ−キノリン−2−イル)−1,3−ジオキソ−インダン−5−カルボン酸テトラブチルアンモニウム。
【0128】
250mLの丸底フラスコに、3−ヒドロキシ−2−メチルキノリン−4−カルボン酸(4.0g、0.02mol)、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物(3.8g、0.02mol)および1,2,4−トリクロロベンゼンを加えて、この混合物を窒素下で2時間還流した。混合物を室温まで冷却した後、黄色沈殿物が生成し、濾過により集めた。この固をメタノールで洗浄し、水と一緒に還流して、熱時濾過により集めると、収率48%、融点>350℃、UV−Vis(DMSO)λmax:424(32,200)、442(39,600)の黄色粉末(3.2g、0.009)として2−(3−ヒドロキシ−キノリン−2−イル)−1,3−ジオキソ−インダン−5−カルボン酸を得た。この酸形態を対応するテトラブチルアンモニウム塩に変換するために、この酸2gをメタノール(100mL)に懸濁し、水酸化テトラブチルアンモニウム(0.1M、6.0mL)をゆっくりと加えた。黄色染料の第1プロトン(カルボン酸プロトン)の脱プロトン化は、この染料の吸収スペクトルを変化させないのに対して、第2プロトン(ヒドロキシ基)の脱プロトン化は、この染料の吸収スペクトルを大幅にシフトさせるので、塩基を加えるとUV−Vis分光法によって容易に追跡出来る。大半の黄色固体が溶液になった後、混合物を濾過して濾液を集めた。溶媒は真空のもとで取り除いたのち、得られた残渣をエーテルで洗浄して、表題化合物(3.2g)を得た。UV−Vis(CHCl)λmax:424(32,400)、442(40,000)。
【0129】
(染料XII)
3,6−ビス(N−メチル−2−クロロアニリノ)−9−(2’−スルホ)フェニルキサンテン(1.0g、1.6mmol、米国特許第4,304,834号に記載の通り調製した)は、アセトニトリルの中でオキシ塩化リン(1mL)で処理することにより対応する塩化スルホニルに転化した。反応混合物を1時間50℃に加温した。アセトニトリルと過剰のPOClは、減圧下で除去し、残った塩化スルホニルは高真空のもとで一夜放置した。次に、それを乾燥アセトニトリル15mLに溶解して、ジ−n−ヘキシルアミン(4mL)を加えてこの溶液を還流状態で30分間加熱した。アセトニトリルを減圧下で除去し、残渣を加熱ヘキサンで数回(20mL)洗浄した。次にそれを酢酸エチルに溶解し、塩酸1M水溶液で洗浄したのち、水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥した。酢酸エチルの濾過とエバポレーションにより約1gの染料XIIを得た。少量の不純物はシリカゲルクロマトグラフィーで取り除いた。(溶離液:5%メタノール/塩化メチレン)。構造は、H NMRおよび13C NMR、および質量分析法で確認した。
【0130】
(染料XIII)
3,6−ジクロロ−9−(2’−スルホ)フェニルキサンテン(ジクロロスルホフルオレセイン、米国特許第4,429,143号に記載の通り調製した)(1.8g、4.56mmol)をN−メチルピロリドン(NMP、25mL)の中で、3−アミノ−4−クロロ−(N−(2−エチルヘキシル))ベンズアミド(2.8g、10mmol)を使って、200℃で約8時間処理した。反応混合物を冷却して水性塩酸(0.5M溶液の400mL)に注いだ。沈殿した染料を、濾過して水で洗浄し、乾燥した。次に、それをシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:5%メタノール/塩化メチレン)で精製して、約1gのXIIIを得た。構造は、H NMRおよび13C NMR、および質量分析法で確認した。
【0131】
(染料XIV)
染料XIII(400mg)は、NMPの中で1時間、カリウムt−ブトキシド(112mg、1mmol)で処理し、次いでヨードメタン(284mg、2mmol)を加えて、さらにこの混合物を約16時間攪拌することにより、N−メチル化した。次に、この混合物を0.5Mの塩酸水溶液50mLの中に注いだ。固形沈殿物を濾過してシリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:5%メタノール/塩化メチレン)で精製して、XIV(340mg)を得た。構造は、H NMRおよび13C NMR、および質量分析法で確認した。
【0132】
(染料XV)
ジクロロスルホフルオレセイン(2g、5mmol)を、NMPの中で数時間3−アミノ−4−メチル安息香酸(3g、11mmol)と180℃で反応させた。反応混合物を冷却して水性塩酸(0.5M溶液400mL)の中に注いだ。沈殿した染料を濾過し、水で洗浄し、乾燥した。次に、それをNMP(50mL)に溶解して水酸化ナトリウムの50%水溶液(10mL)で処理した後、硫酸ジメチル(2.5g、20mmol)を加えた。次に、得られた混合物を室温で4時間攪拌し、その後、この混合物を水性塩酸(0.5M溶液400mL)に注いだ。沈殿物は濾過により取り出して乾燥した。
【0133】
この粗製染料(2個のカルボシキル基を有する)の一部(500mg、0.75mmol)を、NMP(5mL)の中で0℃で1時間ジフェニルスルホリルアジド(500mg、1.8mmol)、トリエチルアミン(181mg、1.8mmol)、および2−エチルヘキシルアミン(232mg、1.8mmol)で0℃で1時間処理したのち、室温まで加温することにより、bis−アミドに変換した。次に、反応混合物を塩酸(50mLの1M水溶液)に注ぎ、濾過したのち、乾燥した。次に粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(溶離液:10%メタノール/塩化メチレン)で精製ことにより染料XV(400mg)を得た。構造は、H NMRおよび13C NMR、および質量分析法で確認した。
【0134】
(染料XVI)
この染料は下記の2段階で調製した:
(a. N−(ブチ−1−イル)−2−アミノベンズアミドの調製)
n−ブチルアミン(3.0g、0.041mol)と水(75mL)は、オーバーヘッドスターラーを付けた250mlの三ツ口丸底フラスコの中で合わせた。混合物を高速で攪拌し、粉末状の無水イサト酸(4.08g、0.025mol)を2分間にわたって滴下した。やや発熱が起こり、白色の固体が溶液から沈殿した。混合物を10分間攪拌したのち、加熱マントルと還流凝縮器を取り付けて混合物を加熱して10分間還流した。加熱マントルを取り外したのち、混合物を室温で一夜攪拌した。沈殿した白色固体をBuchner濾斗に集めて、水(250ml)で洗浄し、真空で乾燥したのち、石油エーテルから再結晶化して、白色粉末(4.3g、収率90%、融点83〜84℃)として生成物を得た。生成物の構造は、HNMRおよび13C NMRで確認した。
【0135】
(b. 染料XVIの調製)
ジクロロスルホフルオレセイン(1.0g、0.025mol)、N−(ブチ−1−イル)−2−アミノベンズアミド(1.0g、0.0052mol)およびNMP(10mL)をスターラーバー付きの50mlの丸底フラスコの中で合わせた。その混合物を攪拌し、窒素下で170℃に加熱した。反応の経過はTLC(K5Fシリカ、7.5%MeOH/CHCl)で追跡した。3時間後に反応は完了した。反応混合物を室温まで冷却して、ゆっくりと塩酸(100mLの1M水溶液)に注いだ。紫色の沈殿物が生成した。混合物を30分間攪拌したのち、粗生成物をBuchner濾斗上に集めて、水で洗浄しのち、空気乾燥した。
【0136】
粗生成物は、シリカゲルのクロマトグラフィーで精製した(乾量200ml、ジクロロメタン中5〜10%メタノールで溶出)。生成物含有画分を一緒に合わせてエバポレートして、ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の中でλmax=536nm、ε=34100の紫色粉末(1.5g、収率85%)を得た。構造は、H NMRおよび13C NMR、および質量分析法で確認した。
【0137】
(染料XVII)
この染料は、次のような2段階で調製した:
(a. 3,6−ビス(2−(ブト−2−イル)アニリノ)−9−(2’−スルホ)フェニルキサンテンの合成)
ジクロロスルホフルオレセイン(4.1g、10mmol)、4−(ブト−2−イル)アニリン(3.8g、25mmol)、およびトリブチルアミン(4.7g、25mmol)を250mLの丸底フラスコに入れた。NMP(50mL、溶媒)を加え、反応混合物を磁気で撹拌し、窒素雰囲気下で約130℃の油浴の中で約2時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、ビーカーの中に濃塩酸(10mL)を含む冷水(200mL)の中に高速で攪拌しながら注ぎ込んだ。この混合物を2時間冷蔵し、その後、沈殿した染料を吸引濾過し、逐次、水(75mL)、希炭酸水素ナトリウム(50mL)および水(75mL×2回)で洗浄した。染料は、空気中で一晩、そして45℃の真空オーブンで2時間乾燥して、マゼンタ−銅粉末6.3g(定量的収量)を得た。
【0138】
(b. 染料XVIIの合成)
3,6−ビス(2−(ブト−2−イル)アニリノ)−9−(2’−スルホ)フェニルキサンテン(1.6g、2.5mmol)(前記a.の説明通り調製した)を、窒素雰囲気下で250mLの丸底フラスコの中のDMF(40mL)に溶解した。溶液を磁気的に攪拌し、カリウムt−ブトキシド(618mg、5.5mmol)を加えると緑青色の溶液が生成した。反応混合物を室温で30分間攪拌した。ブロモ酢酸エチル(920mg、5.5mmol)を加えて、反応物を室温で1時間、次に70〜80℃で4時間攪拌した。反応物を室温まで冷却してカリウムt−ブトキシド(2mmol)を加え、ブロモ酢酸エチル(2mmol)を加えた。反応物をさらに、75〜80℃で2時間攪拌した。反応混合物を室温まで冷却し、攪拌しながら水200mLに入れてクエンチし、2時間冷蔵した。マゼンタ染料を吸引濾過して、逐次、水(25mL)、1N HCl(25mL)、そして水(50mL×2回)で洗浄し、40℃の真空オーブンで4時間乾燥して、染料XVII 1.65g(80%)を得た。構造は、H NMRおよび13C NMR、および質量分析法で確認した。
【0139】
(染料XVIII)
a. ジクロロスルホフルオレセイン(63.6g、157mL)をn−メチルピロリジノン250mLに懸濁した。この懸濁液に、2,3−ジメチルアニリン(10.5g、86.6mmol)、2,4−ジメチルアニリン(10.5g、86.6mmol)、2,5−ジメチルアニリン(10.5g、86.6mmol)、および2−エチルアニリン(10.5g、86.6mmol)との混合物を加えた。反応温度を直ちに55℃に上げるとジクロロスルホフルオレセインは溶解した。一旦、反応系を30℃に冷却し、2,6−ルチジン(33.7g、314mmol)を加えた。次に、反応物を135℃で5時間加熱した。冷却した反応物を1.5%HCl200mLに注いだ。生成した固体を濾過し、濾液が無色になるまで洗浄した。湿ったケークを減圧下で50℃で乾燥して、紫色の固体79.1gを得た。固体は85重量%と分析され、81%の化学収率に相当した。
【0140】
b. 前述の反応実験からの未乾燥の湿ったケーク(49.88g、推定で15.0g、26.1mmolの染料中間体を含む)を塩化メチレン135mLを使ってスラリー化した。これを50%の水性水酸化ナトリウム(13.0g、162.5mmol)を含む35mLの水で処理した。攪拌した懸濁液を硫酸ジメチル(9.85mL 、104.0mmol)で処理し、一晩攪拌した。新規のマゼンタ物質、出発物質ではなく、モノメチル化又はジメチル化キサンテンを、tlcおよびLCで観察した。この物質は、ハイパーメチル化染料と名付けた。この反応をトリエチルアミン(3.0mL、21.6mmol)で処理したのち、一晩攪拌し、その後ハイパーメチル化物質は消失した。相を分離したのち、塩化メチレン相を5%HClで2回、そして水で1回洗浄した。塩化メチレン相をその容量の約半分に濃縮したのち、1−ブタノール(78.8g)を加えた。追加の1−ブタノールを加えるにつれて、塩化メチレンは徐々に留出した。蒸留の終わりでは1−ブタノール溶液は60.3gの重量があり、約25重量%の染料を含んでいた。1−ブタノールに入れたこのような染料溶液は、さらに精製することなく使用した。
【0141】
(染料XIX)
窒素のもとで染料XX(3.3g、5mmol)をアセトニトリル150mLと一緒に500mL丸底フラスコに入れた。オキシ塩化リン約2g(過剰)を加えて、この混合物を65〜70℃で2時間加熱した。次に、フラスコを室温まで冷却したのちジエチルアミン約20mLを加えた。反応を室温で一晩、そして50°で2時間攪拌した。減圧下で大半の溶媒を除去し、残渣をジクロロメタン(200mL)に溶解して2Mの塩酸およびブラインで洗浄した。溶液は硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下で除去して粗製生成物5gを得て、この生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して純粋なシアン染料2.5g(70%)を得た。構造は、H NMRおよび13C NMR、および質量分析法で確認した。
【0142】
(染料XX)
10ガロンのPfaulder反応器に、N−メチルピロリジノン(13.43Kg)、3,6−ジクロロスルホフルオレセイン(1.012Kg)、無水硫酸マグネシウム(0.151Kg)、および2,3,3−トリメチルインドリン(1.008Kg)を充填した。得られたスラリーを窒素下で60°で1時間攪拌した。この時点で、酸化マグネシウム(0.101kg)を加え、この混合物を120°に加熱し、この温度で8時間保持した。次に、この混合物を25℃に冷却したのち、濃塩酸(1.75kg)を水(23.92kg)に入れた溶液を90分にわたって加えた。生成物を濾過によりを集めて水で洗浄(濾液のpHが5ないし6になるまで7.5kg以上)し、減圧下、40℃で一定重量になるまで乾燥した。
【0143】
(染料XXI)
この染料は下記の2段階で調製した。
【0144】
(a. フルオレセインジメチルエーテルの調製)
粉砕した水酸化カリウム(5g)およびDMSO(50mL)を、250mLの丸底フラスコの中で窒素下で15分間攪拌した。フルオレセイン(3.5g、10mmol)を加えて、この反応物を15分間攪拌すると、暗橙色の溶液が得られた。ヨードメタン(6.2g、40mmol)を一度に全部を加えたのち、反応物を室温で2時間、次に40〜45°で1時間攪拌した。反応物を氷水(300mL)の中に注ぐことによりクエンチし、一晩冷蔵した。薄黄色の沈殿物を濾過し、水で洗浄し(100mL×3回)し、真空オーブンで乾燥した。粗生成物(2.8g)をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、薄ベージュ色の固体2g(56%)を得た。
【0145】
(b. 染料XXIの調製)
100mLの丸底フラスコ中、窒素下で、前記a.で調製したフルオレセインジメチル(360mg、1mmol)をジクロロメタン5mLに溶解し、塩化オキサリル(250mg)を加えた。反応を30分間攪拌したのち、大半の溶媒を減圧下で除去した。残渣をジクロロメタン(3mL)に再溶解した。無水エタノール0.5mLをジクロロメタン2mLに入れた溶液を反応フラスコに加えてその内容物を1時間攪拌した。反応体を冷水50mLに入れてクエンチし、ジクロロメタン(25mL×2回)で抽出した。有機相を、ブライン、希塩酸、および水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を除去して、橙色の粉末(400mg)を得た。粗製物質をシリカゲルクロマトグラフィーで精製して、純粋なイエロー染料(250mg)を得た。
【0146】
構造は、Hおよび13C NMR、および質量分析法で確認した。
【0147】
(染料XXII)
Copikem 16(Hilton−Davis Co.から入手可能)(2.80g、5mmol)を塩化メチレン(20mL)に入れた溶液に、20°で10分間にわたり塩化オキサリル(1.26g、10mmol)を滴下した(或る程度の発泡が観察された)。暗赤色の溶液を20°でさらに25分間攪拌し、その後、揮発性物質をエバポレートし、残留した赤色ガム状物質をジクロロメタン(25mL)に溶解した。この溶液に、ジ−n−ヘキシルアミン(2.5g、20mmol)を加えて、得られた混合物を20°で14時間攪拌した。この混合物を水(80mL)で、次に飽和塩化ナトリウム水溶液(150mL)で洗浄し、エバポレートし、クロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタンに入れた5%、次に7%メタノールで溶出される)にかけて、暗赤色のガラス状物質、2.247g(59%)を得た。FAB質量スペルトル、M/e=730(M+1)(分子イオン);ジクロロメタン中では542nmで最大吸光度。
【0148】
(染料XXIII)
3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル(5.0mg、29ミリモル)と4−アミノメチルピペリジン(10mL)との混合物を、窒素下、130℃で14時間攪拌し、次いで30℃に冷却し、ジクロロメタン(45mL)と一緒に粉砕した。濾過すると無色の吸湿性粉末が得られ、これを真空中で乾燥すると2.8g(38%)の重量であった。
【0149】
塩化メチレン(4mL)中のCopikem 16(0.7g、1.25ミリモル)の溶液に、塩化オキサリル(0.16g、1.26ミリモル)を滴下て添加した。得られた深赤色溶液を20℃で30分間攪拌し、次いで乾燥するまでエバポレートした。残留ガラス状物質をジメチルホルムアミド(2.5mL)に溶解し、トリエチルアミン(0.125g、1.24ミリモル)およびジメチルホルムアミド(4mL)中の上記の置換ピペリジン(0.48g、1.73ミリモル)の溶液に5℃で加えた。この混合物を5℃で30分間、次いで20℃で14時間攪拌した。これを、濃塩酸(2mL)を含む水(80mL)中にクエンチし、そしてジクロロメタン(35mL)で抽出した。この有機層を水(80mL)、次いで飽和塩化ナトリウム水(35mL)で洗浄し、乾燥するまでエバポレートし、そしてクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン中の5%、7.5%、10%、12.5%、15%および20%メタノールで溶出)にかけると、重量0.231g(22%)の赤色ガラス状物質として所望の生成物を得た。FAB質量スペルトルではM/e=792(M+1)で分子イオン;ジクロロメタン中では542nmで最大吸光度。
【0150】
(染料XXIV)
ジクロロメタン(2.5mL)中のCopikem 35(0.616g、1.0ミリモル、Hilton Davis Co.から入手可能)の溶液に、塩化オキサリル0.3mLを加えた。即時にガスの発生及び呈色が起こったのち、反応混合物を20℃で30分間攪拌し、次いで乾燥するまでエバポレートした。残留物を1,2−ジクロロエタン(3mL)に溶解し、そして乾燥するまでエバポレートし、次いでジクロロメタン(3mL)に溶解し、ジエチルアミン(0.6g)を入れたジクロロメタン(3mL)の溶液に加えた。得られた混合物を20℃で30分間攪拌し、水(10mL)、希塩酸(5mL)、および水(10mL×2回)で洗浄し、乾燥するまでエバポレートし、そしてクロマトグラフィー(シリカゲル、0%、4%、5%、6%及び7.5%のメタノールを含むジクロロメタンで溶出)にかけると、重量0.281g(31%)の暗赤色のガラス状物質を得た。FAB質量スペルトルではM/e=673(M+1)で分子イオン;ジクロロメタン中では542nmで最大吸光度;モル吸光係数=25,180Lモル−1cm−1
【0151】
(染料XXV)
Copikem35(1.23g、2.0ミリモル)をジクロロメタン(3mL)に入れた溶液に、塩化オキサリル0.5mLを加えた。得られた赤色溶液を20℃で30分間攪拌し、乾燥するまでエバポレートし、1,2−ジクロロエタン(3mL)に溶解し、乾燥するまでエバポレートし、そしてジクロロメタン(3mL)に再溶解した。この溶液を、イミノ二酢酸ジエチル(1.2g)をジクロロメタン(10mL)に入れた溶液に加えて、20℃で1時間攪拌した。この時点で、溶液を水(10mL)、希HCl(10mL)およびブライン(10mL)で洗浄し、乾燥するまでエバポレートし、そしてクロマトグラフィー(シリカゲル、0%、1%、2%および4%のメタノールを含むジクロロメタンで溶出)にかけると、暗赤色のゴム状物質1.036g(63%)を得た。FAB質量スペルトルではM/e=788(M+1)で分子イオン;ジクロロメタン中では542nmで最大吸光度。
【0152】
(染料XXVI)
3−シアノ−4−(3−クロロスルホニルフェニルアゾ)−1−フェニル−5−ピラゾロン(7.5g、18.5ミリモル、米国特許第5,658,705号に記載のように調製した)を、室温でテトラヒドロフランおよびトリエチルアミン2.6mLの中でジメチル−5−アミノイソフタレート(4g、19ミリモル)と反応させた。1時間後に反応は完了し、反応混合物を水500mLに注いだ。生成した橙色の沈殿物を濾過し、水で洗浄した。風乾により粗製ジエステル6.4gを得て、次にこのエステルをテトラヒドロフランおよびエタノールの1:1混合物(100mL)に溶解した。次いで、水酸化カリウムの1M水溶液(25mL)を加え、得られた混合物を還流で加熱した。数時間後、加水分解が完了し、大部分の有機溶媒を減圧下で除去した。水性混合物を塩酸の濃水溶液で酸性化して、固形の二酸を濾過で除去し、水で洗浄した。乾燥後、これを水性アセトンから再結晶化すると、〜5gの純粋な染料XXVIを得た。構造は、Hおよび13C NMR、ならびに質量分析法で確認した。
【0153】
(染料XXVII)
2−(モルホリノスルファモイル)−4−(3−クロロスルホニル−4−クロロフェニルアゾ)−5−メチルスルホンアミド−1−ナフトール(5g、8.53ミリモル、米国特許第5,658,705号の記載通りに調製した)は、トリエチルアミン(10mL)をTHF(60mL)に入れた溶液の中でジメチル−5−アミノイソフタレート(2g、9.3ミリモル)と一緒に攪拌した。室温で数時間攪拌すると、反応は完了し、混合物を濃塩酸(100mL)を含む水(500mL)に注ぎ、そして一夜攪拌した。暗橙色−赤色固形物を濾過し、水で洗浄した。湿った固形物ジエステルを、エタノール(〜200mL)と水酸化ナトリウムの1M水溶液(100mL)との混合物に懸濁し、加水分解が完了するまでこの混合物を数時間加熱還流した。次に、反応混合物を濃塩酸(bydrochloric acid)で酸性化し、この生成物を濾過し、そして水で洗浄した。粗製染料を熱エタノールから再結晶化すると、純粋な染料XXVII4.8gを得た。この構造を、Hおよび13C NMR、ならびに質量分析法で確認した。
【0154】
以下の実施例5〜14において、次の物質を使用した:
染料 構造
Y1 イエロー 上記の構造IV
Y2 イエロー XXV+XXVII(1:2のモル比)
Y3 イエロー C.I.ソルベントイエロー88
Y4 イエロー C.I.ソルベントイエロー13
M1 マゼンタ VII
M2 マゼンタ XII
M3 マゼンタ C.I.ソルベントレッド127
M4 マゼンタ XVIII
C1 シアン IX
C2 シアン C.I.ソルベントブルー70
C3 シアン C.I.ソルベントブルー44
(実施例5)
熱的データ。この実施例は、いくつかの代表的な染料から形成される非晶質固形染料層から得られるTgを示す。単独および非晶質固形染料マトリックス中での、両方の感熱溶媒の溶融挙動も説明されている。これらのデータは、染料が実質的に非晶質形であるのに対して、感熱溶媒は一部分は染料に溶解し、そして一部分は結晶形であることを証明している。
【0155】
サンプルの熱転移挙動を、変調型DSCモード[MDSC]で操作されるTA Instruments 2920 DSC装置を使う示差走査熱量測定法[DSC]によって測定した。MDSCモードの操作により、全熱流シグナルを可逆的熱量成分と非可逆的熱量成分とに分離することが出来;結晶の溶融およびTgのようなサンプルの相転移を、揮発、形態学的再編成、および化学反応のような非可逆的現象から分離することが出来る。全てのサンプルを、窒素雰囲気下で、2℃/分または4℃/分のいずれかの加熱速度で、以下の温度範囲;−10℃〜120℃[感熱溶媒]または−10℃〜200℃[染料]で試験した。サンプルが共通の熱履歴を有した後、サンプルを比較するために、サンプルに急冷を伴う2回の熱サイクルを通して試験を行なった。冷却速度がサンプルの形態学に及ぼす影響を決定するために、サンプルを徐冷[4℃/分]段階と急冷段階によって分けられる3回の逐次加熱サイクルを通して試験した。サンプル重量は、4〜6mgの範囲であった。
【0156】
【表3】

【0157】
(実施例6)
本実施例は、揮発度の関数として感熱溶媒の潜在的損失を説明する。実験的には、以下に記載の実験条件下で、90℃で1分当たり0.001%未満の定常状態的損失速度が代表的にはに好ましいことが見出された。
【0158】
感熱溶媒候補を、TA Instrumentsの型式2950の熱重量分析計[TGA]で、サンプルを90℃で3〜6時間保つ間の時間の関数としてサンプルの重量損失を測定することによって、その相対揮発度について評価した。サンプルサイズは5〜7mgの範囲内にあり、全ての測定は窒素雰囲気下で行なった。データは、時間に対する最初の重量の維持パーセントとしてプロットし、揮発度数は損失速度が定常状態に達した時に維持された重量%対時間プロットの勾配として表した。初期重量損失(サンプルが10℃/分の速度で等温の温度まで加熱される時の溶媒/水の損失に起因する)の後、損失の定常状態速度は、通常、等温の温度では1〜2時間以内に達する。
【0159】
高温で保管されたフィルムから失われた感熱溶媒の量を、以下のように測定した:
a.TS1について。染料Y3および感熱溶媒TS1を質量比1:1で含み、0.5グラム/cmの適用範囲の皮膜を調製した。この皮膜を2つの部分に分割し、そのうちの1つを室温で保存し、もう一方は表Xに示される時間にわたってオーブン中で60℃に加熱した。加熱後、各サンプル(4平方インチ)をメチルエチルケトン(1mL)で抽出し、そして得られた溶液をエレクロトスプレー(+)質量分析法により分析した。60℃で保管されたサンプルで測定された感熱溶媒と、コントロールサンプルで測定された感熱溶媒の比を報告した。
【0160】
b.TS3について。染料C2および感熱溶媒TS3を質量比1:1で含み、0.5グラム/cmの適用範囲の皮膜を調製した。この皮膜を、メチルエチルケトン抽出物の分析をガスクロマトグラフィーで行なったことを除いて、上記a.の記載通りに処理した。
【0161】
【表4】

【0162】
(実施例7)
本実施例は、画像化温度で、結晶性感熱溶媒を非晶質固形染料に組み入れることによって達成され得る溶融粘度の有意な変化を説明する。大部分の場合において、画像化温度での純粋な非晶質固形染料の粘度は、信頼できる測定ができないほど高過ぎる。しかしながら、ある場合(化合物Y1の場合)では、低せん断速度で測定することが可能であった。表Vから明らかなように、感熱溶媒TS1を組み入れることにより4桁もの大きい粘度の低下が達成可能である。
【0163】
高温粘度測定値は、TA instrumentsにより供給され、コーンおよびプレートの形状を用いるAR1000応力制御型レオメーターを使って得た。使用した温度ランプ(ramp)は、1分当たり10℃のランプ速度で、120〜150℃、続いて150〜80℃以下(この液体の固化まで)であった。使用したせん断速度を、表Vに示す。
【0164】
この表の最後の2段の事項は、比較的少量のポリマー(ポリ(2−エチル−2−オキサゾリン)、Aquazol 50、分子量約50,000、アリゾナ州、Tucson、Polymer Chemistry Innovatons,Inc.から入手可能である)の添加の効果が、染料と感熱溶媒との組み合わせの溶融粘度を大幅に上昇させることを示す。
【0165】
【表5】

【0166】
(画像化実施例)
以下の画像化実施例の熱転写用供与体シートを、以下の様式で調製した:
1−ブタノールの中で、染料(2重量%)および適量の指定の感熱溶媒を含む塗布溶液を調製した。この溶液を、#7Meyerロッドを使い、感熱印刷用に裏面にスリップ塗料付きの厚さ4.5ミクロンのポリ(エチレンテレフタレート)フィルム基材(ニューヨーク州、Amherst、International Imaging Materials,Inc.によって提供された)に塗布し、そしてこの皮膜を温風を使って乾燥した。1時間放置した後、得られた供与体要素を、塗布面がミクロ細孔質の受容体皮膜と接触するように受容体シートの全面に置いた。他に述べられない限り、受容体シートは、Konicaから入手可能なPhoto IJ Paper QPインクジェット紙であった。得られたアセンブリーを、Kyocera Corporation,Kyoto,Japanから供給されたサーマルヘッドを備えた実験用テストベッドプリンターを使って印刷した。以下の印刷パラメータを使用した:
印刷ヘッド幅: 4インチ
抵抗体サイズ: 70×70ミクロン
抵抗: 1124オーム
電圧: 11V
印刷速度: 1.67インチ/秒(行当たり2ミリ秒)
圧力: 1.5−2ポンド/直線状インチ
ドナー剥離: 90度の角度、印刷後の0.1〜0.2秒
ドットパターン: 奇数番号と偶数番号の画素が連続した線で交互に印刷される;1個の画素(7ミクロン)は、用紙の移動方向の行の間に位置する。10段階の異なるエネルギーが印刷され、各段階の所与の画素についての電流パルスは、行当たり0.2〜2ミリ秒の間で変動する。
【0167】
印刷の後、10個の印刷領域の各々の反射濃度は、GretagMacbeth社より提供された分光光度計を使って測定し、この濃度を、サーマルヘッドに供給されたエネルギーに対してプロットした。これらのグラフから、次の4個のパラメータを抜き出した:Dmin、Dmax、Dmax/2の濃度に達するエネルギー(E0.5)及びE0.5における勾配(勾配)。下記の実施例ではDmin、E0.5及び勾配を報告する。Dminは、使用した受容体シートのものである。
【0168】
(実施例8)
本発明の単一相実施形態による純粋な非晶質固形染料の画像化。本実施例は、特定のケースでは、その他の添加物を何も使用することなく、純粋な非晶質固形染料の感熱転写によって画像が得られたことを示している。このように、所与の染料の転写用に考えられる最も薄いドナー層を得ることが可能である。幾つかの染料、例えばM2、M3及びC1、は感熱溶媒が存在しないと画像が得られないことが判る。
【0169】
【表6】

【0170】
(実施例9)
種々の感熱溶媒を用いる代表的染料の画像化。本実施例では、実施例8に示しているように、試験条件のもとで単独で効率よく転写しなかったモデル染料と一緒に種々の感熱溶媒を使用することを説明する。実施例8と比較することにより、感熱溶媒が存在する染料M2の転写のエネルギーは、感熱溶媒が存在しないで試験した純粋な非晶質固形染料のいずれよりも実質的に低いことを知ることが出来る。
【0171】
【表7】

【0172】
(実施例10)
TS1を用いる種々の染料の画像化。本実施例は、α、ω−ジオール感熱溶媒を使う各種の染料の画像化を説明する。
【0173】
【表8】

【0174】
(実施例11)
TS3を用いる種々の染料の画像化。本実施例は、α、ω−ビスアミド感熱溶媒を使う各種の染料の画像化を説明する。
【0175】
【表9】

【0176】
(実施例12)
染料:感熱溶媒の種々の比を用いる供与体の画像化。上記の実施例7で説明したように、感熱溶媒対染料の比は、画像化温度で混合物の溶融粘度に大きい影響力を及ぼす。この実施例では、染料対感熱溶媒の比の変更によって画像化性能に及ぼす影響を説明する。最良の性能に対して、染料:感熱溶媒の比は約1:2が示される。
【0177】
【表10】

【0178】
(実施例13)
いろいろな密度の画像化。本実施例では、TS12は1−ヘキサデカノールを指し、一方、TS13は1−オクタデカノールを指す。少量の界面活性剤を加えたこと(FC−431、3Mから入手可能)、表の最初の2個の記載物の皮膜の乾量が0.3%になること、及び表の最終の2個の記載物の皮膜の乾量が0.6%になることを除いて、前述と同じ方法で供与体皮膜を調製した。使用した受容体シートは、Seiko Epson社から入手出来るインクジェット印刷用Epson Glossy Film紙であった。供与体/受容体の組み合わせ物は、Kyocera社(日本国、京都府)から提供されたサーマルヘッド付きの実験用テストベッドプリンターを使って印刷した。
【0179】
印刷ヘッド幅: 4インチ
抵抗体サイズ: 70×140ミクロン
抵抗: 3750オーム
電圧: 9.5V
印刷速度: 5インチ/秒(行当たり2ミリ秒)
圧力: 1.5−2ポンド/直線状インチ
ドナー剥離: 90度の角度、印刷後の0.1−0.2秒
ドットパターン: 長方形の格子が印刷されるように全画素が各行に使用された。染料拡散感熱転写(連続階調)印刷に対して最適なパルスパターンを使って画素当たり16段階の異なるエネルギーが印刷された。
【0180】
印刷の後、16個の印刷領域の各々の反射濃度は、GretagMacbeth社より提供された分光光度計を使って測定し、この濃度をサーマルヘッドに供給されたエネルギーに対してプロットした。これらのグラフから次の4個のパラメータを抜き出した:Dmin、Dmax、Dmax/2の濃度に達するエネルギー(E0.5)及びE0.5における勾配(勾配)。
【0181】
第2感熱溶媒(この場合は、染料に対して貧溶媒)を組み入れると、1種類だけの感熱溶媒が使用された場合(最初の横の列)と比較して達成される濃度とインプットエネルギーとを関連付ける曲線の勾配が大幅に低下する(即ち、連続階調性能が向上する)することが表の最終縦の欄から理解出来る。
【0182】
【表11】

【0183】
(実施例14)
本実施例は、本発明による3色印刷方法を説明する。
【0184】
3種類の供与体シートを次のように調製した:
1−ブタノールの中に表XIIに明記した染料及び感熱溶媒を含む3種類の塗布溶液は、感熱印刷用に裏面にスリップ塗料付きの厚さ4.5ミクロンのポリ(エチレンテレフタレート)フィルム基材(ニューヨーク州、Amherst、International Imaging Materials社から提供された)に別々に塗布すると、表XIIに示す付着量の乾燥皮膜を得た。別々に、染料と感熱溶媒との3種類の混合物の溶融粘度を実施例7に記載した通り測定した。これらの粘度は表XIIに含まれている。
【0185】
【表12】

【0186】
得られた供与体要素を、供与体要素の塗布された面をミクロ細孔質受容体皮膜に接触させて、受容体シート(Photo IJ Paper QP インクジェット紙、Konica社から入手可能)を覆って置く。こうして得た組立品は、Kyocera社(日本国、京都府)から提供されたサーマルヘッド付きの実験用テストベッドプリンターを使って印刷した。
【0187】
印刷ヘッド幅: 4インチ
抵抗体サイズ: 70×70ミクロン
抵抗体間隔: 300dpi
抵抗: 3690オーム
電圧: 19.3V
印刷速度: 1.66インチ/秒
圧力: 1.5−2ポンド/直線状インチ
ドナー剥離: 90度の角度、印刷後の0.2秒
ドットパターン: 奇数番号画素と偶数番号画素が連続行に交互で印刷される:用紙の移動方向の行間の間隔は68ミクロン。連続したグレイスケールが各色及び黒に印刷され、所与の画素の電流パルスは行当たり0−1ミリ秒の間で変動する。
【0188】
カラー印刷: 印刷順序は、マゼンタ、次にイエロー、次がシアンであった。移動の間は受容体シートは駆動ロールによって位置合わせの状態で保持された。
【0189】
印刷の後、イエロー、マゼンタ、シアン及び黒のDmax濃度は、Status A 濾過付きで、GretagMecbeth社から供給された分光光度計を使って測定した。各グレースケールウェジは、Taiwan、Hsinchu、Umax社から入手出来るPowerLook IIIスキャナーを使って走査し、スキャナー濃度はStatusAに定めた。この濃度は、感熱印刷ヘッドに供給されるエネルギーに対してプロットされたものであり、このグラフからDmax/2の濃度(E0.5)に達するエネルギー及びE0.5の勾配(勾配)を推定した。表XIIIはこれらの結果をまとめている。
【0190】
【表13】

【0191】
表XIIIから、各個別の原色、及び3原色の全部の組み合わせ(黒の画像を作る)は、許容出来る印刷濃度を発現するのとほぼ同じエネルギーで印刷することが出来た。表XIIに示すように、使用した印刷順序は供与体素材の溶融粘度の逆の順序であった。印刷を任意の別の順序で行なう場合、得られる画像の耐久性及び品質は、本明細書で報告した画像の耐久性及び品質よりも劣った。
【0192】
(発明の要旨)
本発明は、以下を提供する。
【0193】
(1) 感熱物質転写画像化方法であって、上記方法は、以下:
少なくとも1種類の染料を含む染料含有の非晶質相を含む感熱転写物質層を有する基材を含む供与体要素を加熱する工程であって、上記染料が連続状フィルムを形成する、工程、および
上記転写物質層の一部分を受容体層に画像様に転写する工程、
を包含する、方法。
【0194】
(2) 上記染料含有相が本質的に染料又は染料類からなる、項目1に記載の感熱画像化方法。
【0195】
(3) 上記染料含有相が非染料成分に非共有結合される少なくとも1種類の染料を含む、項目1に記載の感熱画像化方法。
【0196】
(4) 上記染料及び上記非染料成分のうちの一方が複数の酸性基を含み、上記染料及び上記非染料成分の他方が複数の塩基性基を含む、項目3に記載の感熱画像化方法。
【0197】
(5) 上記感熱転写物質層が更に約50℃超の融点を有する少なくとも1種類の感熱溶媒を含み、上記感熱溶媒の少なくとも一部分は別の結晶相を形成し、そしてここで上記結晶性感熱溶媒は、溶融時に、上記転写が上記結晶性感熱溶媒の存在なしでもたらされ得る温度より低い温度で上記染料含有相中の上記染料を上記受容体層に転写させ得る、項目1に記載の感熱画像化方法。
【0198】
(6) 上記感熱転写物質層が、異なる融点を有する2種類の異なる感熱溶媒を含み、上記感熱溶媒は、より高い融点を有する感熱溶媒よりも、より少ない染料を転写させる低い融点を有する、項目5に記載の感熱画像化方法。
【0199】
(7) 上記感熱溶媒が、約60℃から120℃の範囲の融点を有する、項目5に記載の感熱画像化方法。
【0200】
(8) 上記感熱溶媒が、約90℃の融点を有する、項目5に記載の感熱画像化方法。
【0201】
(9) 上記感熱溶媒が、上記染料含有相の中に上記染料の重量で約1:3から約3:1の量で存在する、項目5に記載の感熱画像化方法。
【0202】
(10) 上記感熱溶媒が、少なくとも約12個の炭素原子を含むアルカノール、少なくとも約12個の炭素原子を含むアルカンジオール、少なくとも約12個の炭素原子を含むモノ−及びジカルボン酸のエステル及びアミド、アリールスルホンアミド並びにヒドロキシアルキル置換アレーンからなる群から選ばれる、項目5に記載の感熱画像化方法。
【0203】
(11) 上記感熱溶媒が、以下:
1,10−デカンジオール;1,12−ドデカンジオール;1,12−ドデカン二酸、ビス(ジメチルアミド);1,14−テトラデカン二酸、ビス(ジメチルアミド);1,16−ヘキサデカン二酸、ビス(ジメチルアミド);n−ヘキサデカン−1−イルアセトアミド;n−デカン−1−イル−4−メトキシベンズアミド;n−デカン−1−イル−4−クロロベンズアミド;n−(ドデカン−1−イル−アミノカルボニル)モルホリン;ドデカン−1−イル−ニコチンアミド;n−デカン−1−イル−4−ニトロベンズアミド;カルバミン酸、1,4−ブタンジイル−ビス−ジエチルエステル;およびn−ドデシル−4−メトキシベンズアミドからなる群から選ばれる、項目5に記載の感熱画像化方法。
【0204】
(12) 上記受容体層がミクロ細孔性であり、約1μm以下の平均細孔径を有し、そしてここで上記結晶性感熱溶媒の融点での上記感熱転写物質の粘度が、上記受容体層に転写される実質的に全ての上記感熱転写物質を細孔に入れることが出来るほど充分に低い、項目5に記載の感熱画像化方法。
【0205】
(13) 上記非染料成分が、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパンである、項目3に記載の感熱画像化方法。
【0206】
(14) 上記感熱転写物質層が、約2μm以下の厚さを有する、項目1に記載の感熱画像化方法。
【0207】
(15) 上記感熱転写層が約1μm以下の厚さを有する、項目14に記載の感熱画像化方法。
【0208】
(16) 上記受容体層がミクロ細孔性であり、約1μm以下の平均細孔径を有する、項目1に記載の感熱画像化方法。
【0209】
(17) 上記受容体層が約0.5μm以下の平均細孔径を有する、項目16に記載の感熱画像化方法。
【0210】
(18) 上記感熱転写物質層又は上記物質層に熱的に接触する層のうちの少なくとも1つが放射線吸収物質を含み、上記感熱転写物質層の加熱が、上記放射線吸収物質を含む層を上記放射線吸収物質によって吸収される放射線に画像様に曝露することによって行なわれる、項目1に記載の感熱画像化方法。
【0211】
(19) 上記感熱転写物質層の中の約1重量%以下の物質が、上記染料含有相の中の最大分子量の染料の分子量より大きい分子量を有する、項目1に記載の感熱画像化方法。
【0212】
(20) 上記感熱転写物質層の上記染料含有相が約60℃超のガラス転移温度を有する、項目1に記載の感熱画像化方法。
【0213】
(21) 多色感熱物質転写画像化方法であって、上記方法は、以下:
少なくとも2個の供与体要素を順次に加熱する工程であって、上記供与体要素の各々は、少なくとも1種類の染料を含む染料含有非晶質相を含む感熱転写物質層を有する基材を含み、ここで各上記供与体要素の上記染料は連続状フィルムを形成し、そして各上記供与体要素の感熱転写物質層は異なる色である、工程、ならびに
各上記供与体要素の感熱転写物質層の各部分を、位置合わせして、順次に受容体要素へ画像様に転写をする工程、
を包含し、それにより多色画像が形成される、方法。
【0214】
(22) 少なくとも3個の供与体要素が順次に加熱され、各上記3個の供与体要素の感熱転写物質層は各々、シアン、マゼンタ及びイエローに着色される、項目21に記載の多色感熱物質転写画像化方法。
【0215】
(23) 各上記供与体の感熱転写物質が異なる溶融粘度を有し、そしてここで各上記供与体要素の転写物質層の一部分が、上記粘度の逆順で順次に受容体要素へ画像様に転写される、項目22に記載の多色感熱物質転写画像化方法。
【0216】
(24) 感熱転写画像化の際に使用する供与体要素であって、上記供与体要素が少なくとも1種類の染料を含む染料含有非晶質相を含む固形物感熱転写物質層を有する基材を含み、ここで上記染料が連続状フィルムを形成する、供与体要素。
【0217】
(25) 上記感熱転写物質層が約2μm以下の厚さを有する、項目24に記載の供与体要素。
【0218】
(26) 上記感熱転写物質層が約1μm以下の厚さを有する、項目25に記載の供与体要素。
【0219】
(27) 上記感熱転写物質層の上記染料含有相が約60℃超のガラス転移温度を有する、項目24に記載の供与体要素。
【0220】
(28) 上記感熱転写物質層中の約2重量%以下の物質が、上記染料含有相中の最大分子量の染料の分子量より大きい分子量を有する、項目24に記載の供与体要素。
【0221】
(29) 上記感熱転写物質層中の約1重量%以下の物質が、上記染料含有相中の最大分子量の染料の分子量より大きい分子量を有する、項目24に記載の供与体要素。
【0222】
(30) 上記染料含有相が本質的に染料又は染料類からなる、項目24に記載の供与体要素。
【0223】
(31) 上記染料含有相が非染料成分に非共有結合される少なくとも1種類の染料を含む、項目24に記載の供与体要素。
【0224】
(32) 上記染料及び上記非染料成分のうちの一方が複数の酸性基を含み、上記染料及び上記非染料成分の他方が複数の塩基性基を含む、項目31に記載の供与体要素。
【0225】
(33) 上記感熱転写物質層が更に約50℃超の融点を有する少なくとも1種類の感熱溶媒を含み、上記感熱溶媒の少なくとも一部分は別の結晶相を形成し、そしてここで上記結晶性感熱溶媒は、溶融時に、上記転写が上記結晶性感熱溶媒の存在なしで行なわれることが出来る温度より低い温度で上記染料含有相中の上記染料を受容体層に転写させる、項目24に記載の供与体要素。
【0226】
(34) 上記感熱転写物質層が、異なる融点を有する2種類の異なる感熱溶媒を含む、項目33に記載の供与体要素。
【0227】
(35) 上記感熱溶媒が、約60℃から120℃の範囲の融点を有する、項目33に記載の供与体要素。
【0228】
(36) 上記感熱溶媒が、約65℃から約100℃の範囲の融点を有する、項目33に記載の供与体要素。
【0229】
(37) 上記感熱溶媒が、上記染料含有相中に上記染料の重量で約1:3から約3:1の量で存在する、項目33に記載の供与体要素。
【0230】
(38) 上記感熱溶媒が、少なくとも約12個の炭素原子を含むアルカノール、少なくとも約12個の炭素原子を含むアルカンジオール、少なくとも約12個の炭素原子を含むモノ−及びジカルボン酸のエステル及びアミド、アリールスルホンアミド並びにヒドロキシアルキル置換アレーンからなる群から選ばれる、項目33に記載の供与体要素。
【0231】
(39) 上記感熱溶媒が、1,10−デカンジオール;1,12−ドデカンジオール;1,12−ドデカン二酸、ビス(ジメチルアミド);1,14−テトラデカン二酸、ビス(ジメチルアミド);1,16−ヘキサデカン二酸、ビス(ジメチルアミド);n−ヘキサデカン−1−イルアセトアミド;n−デカン−1−イル−4−メトキシベンズアミド;n−デカン−1−イル−4−クロロベンズアミド;n−(ドデカン−1−イル−アミノカルボニル)モルホリン;ドデカン−1−イル−ニコチンアミド;n−デカン−1−イル−4−ニトロベンズアミド;カルバミン酸、1,4−ブタンジイル−ビス−ジエチルエステル;およびn−ドデシル−4−メトキシベンズアミドからなる群から選ばれる、項目33に記載の供与体要素。
【0232】
(40) 上記非染料成分が、1,3−ジ(4−ピリジル)プロパンである、項目31に記載の供与体要素。
【0233】
(41) 可融性組成物であって、上記可融性組成物は、非晶質染料含有相、および少なくとも一部分は非晶質染料含有相とは別の結晶相を形成する少なくとも1種類の感熱溶媒を含み、上記感熱溶媒が、上記染料含有相を液化させることができ、それにより上記可融性組成物を、上記液化が上記感熱溶媒の存在なしで起こることが出来る温度より低い温度で液化させることが出来る、可融性組成物。

本発明を、特定の好ましい実施形態に関して説明してきたが、それらに限定する意図はなく、むしろ当業者は、これらは単なる例示であること、及び本発明の精神及び添付の特許請求の範囲内にある修正及び変更が行なわれることが可能であることを理解する。
【図面の簡単な説明】
【0234】
本発明ばかりでなく、本発明のその他の目的及び更なる特徴も更によく理解するために、添付の図面と併せて考慮される本発明のいろいろな好ましい実施形態の以下の詳細な説明を参照する。
【図1】図1は、a)結晶形態のイエロー染料;b)非晶質形態の同じイエロー染料;c)結晶形態の感熱溶媒;及びd)イエロー染料と感熱溶媒の1:1(重量で)混合物についての温度の関数とした熱流のグラフ図である;
【図2】図2は、a)結晶形態のイエロー染料;b)結晶形態の感熱溶媒;及びc)イエロー染料と感熱溶媒の1:1(重量で)混合物によって示されるX線回折線のグラフ図である。
【図3】図3は、半径0.1μmの受容体物質細孔の中に、示された厚さの供与体層を転写するのに必要な粘度の推定値である。
【図4】図4は、Vogel−Tamman−Fulcher式によって近似されるガラス転移温度超の液体の粘度と温度との関係を示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱物質転写画像化方法であって、該方法は、以下:
少なくとも1種類の染料を含む染料含有の非晶質相を含む感熱転写物質層を有する基材を含む供与体要素を加熱する工程であって、該染料が連続状フィルムを形成する、工程、および
該転写物質層の一部分を受容体層に画像様に転写する工程、
を包含する、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−1281(P2006−1281A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173057(P2005−173057)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【分割の表示】特願2001−556676(P2001−556676)の分割
【原出願日】平成13年1月30日(2001.1.30)
【出願人】(591193347)ポラロイド コーポレイション (27)
【Fターム(参考)】