説明

非木材材料用のシロアリによるチューブ形成防止剤

本発明は、非木材材料により造られた人工構造物を、ホウ酸塩を非木材材料の表面に施用することにより、シロアリによる損傷から保護するための材料及び方法に関する。一の態様においては、本発明は、非木材建築用部品を処理することにより、シロアリが非木材材料及び/又は非セルロース系材料にトンネル及び管をつくるのを防止するための方法であって、組成物を非木材建築用部品に施用し、その際、該組成物がホウ酸塩成分を含む工程を含む前記方法に関する。別の態様においては、本発明は、人工構造物に対するシロアリによる損傷を防止するための方法であって、ホウ酸塩を溶媒と混合して、ホウ酸塩溶液を形成し、非木材建築用部品を入手し、該非木材建築用部品を該ホウ酸塩溶液により被覆し、該被覆済み非木材建築用部品を人工構造物中に組込む工程を含む前記方法に関する。また、本発明は、非木材基体とホウ酸塩を含む被覆とを含む非木材建築用部品であって、該被覆が、該非木材基体の表面上に堆積されている、前記部品に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本出願は、米国国立法人であり米国を除くすべての国について出願人に指定されたNisus Corporation、ならびに、どちらも米国民であり米国のみについて出願人に指定されたJeffrey Douglas Lloyd及びRonald Thomas Schwalbの名義である、2005年1月14日付けのPCT国際特許出願であり、2004年1月16日付で出願された米国特許出願番号第10/758,987号に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、非木材材料及び/又は非セルロース系材料を処理することにより、シロアリによる損傷から人工構造物を保護するための材料及び方法に関する。より特定的には、本発明は、非木材材料及び/又は非セルロース系材料の表面にホウ酸塩を施用することに関する。
【0003】
発明の背景
シロアリは、木材及び植物の構成要素であり、細胞に対して構造上の剛性を与えるセルロースから栄養上の恩恵を得ることができる点で、昆虫の中で独特である。しかし、木材及びセルロース含有製品によって摂食する結果として、シロアリは、人工構造物とその内部に含有されるセルロース材料とに対して有意な損傷をもたらし得る。
【0004】
一般的に言って、地中のシロアリは、脱水により死なないように、常に土壌に近いところにとどまっていなければならない。したがって、土壌に接している木材は、シロアリが容易に接近して損傷を受ける。しかしまた、地中のシロアリは、土壌と、隣接するが実際には土壌に接していない木材との間を移動するための避難チューブをつくることもできる。避難チューブは、暗くて湿気の多い環境を提供し、この環境により、シロアリは太陽光、捕食者、又は脱水から保護される。また、シロアリは、高度に虫を寄せ付けない一定の防蟻剤を避けるために土壌中に避難チューブをつくることもある。
【0005】
シロアリによる損傷を防止するために、化学的バリアとして、何年もの間、シロアリバリア殺虫剤が住居の下や周囲の土壌に対して施用されてきた。複数のアプローチには、建築物の基礎を注ぐ又は組み立てる前に、有機リン殺虫剤及びピレスロイドなどの有機殺虫剤を大量に土壌中に注入又はスプレーにより施用することが含められてきた。しかし、このアプローチは、殺虫剤が直接環境中に広がるので環境問題を引き起こす。そのうえ、殺虫剤が3〜10年の期間内に付近から消失し、その後はシロアリの接近を許すことから、このアプローチは性能限界がある。更に、組立又は他の形態の肉体活動(掘削、歩行、パイプ敷設など)の間の雨により、バリアが壊され、殺虫剤処理が時期尚早の失敗につながることが多い。
【0006】
シロアリを駆除するための異なるアプローチとして、シロアリの栄養源に毒を入れるため、スプレー又は圧力を適用することにより建築に使用される木材に対してホウ酸塩が施用されてきた。ホウ酸塩は、固形体の木材、合板、及び木材合成材の処理をはじめとして、殆どすべてのタイプの木材最終用途において使用されてきた。ホウ酸塩の利点としては、すべての木材駆逐生物体(菌類、穴を掘る甲虫類、及びシロアリ)に対して効力があること、哺乳類に対する急性の毒性が低いこと、そして、環境への影響力が小さいことが挙げられる。このアプローチの例として、40重量%の八ホウ酸二ナトリウム四水和物(DOT)を含有し、水中で23重量%DOTに希釈して施用される(BORA−CARE(登録商標)として商業的に入手可能である)特定のホウ酸グリコール配合物が実証されており、新しい建築物においてすべての建築木材上に2フィートの高さまでスプレーしたときに、土壌被毒に対する単独型の代替法としてアメリカ合衆国において認可されている。
【0007】
しかし、建築木材のみをホウ酸塩で処理することには実施上の制限がある。このアプローチの一つの制限は、新しい建築物はかなりの割合で木材以外の建築用材料を使用していることである。レンガ、ブロック、コンクリート、鋼製の骨組、ビニル、スタッコ、石膏、発泡フォーム、及びポリスチレンボードは、木材なしで、又は非常に少量の木材と共に使用することができる、すべて一般的な建築用材料である。シロアリは、一般的には、コンクリートなどの非セルロース系材料に直接損傷を与えることはないが、これらの非木材建築用材料に対してシェルターチューブを形成することができるので、本、紙、壁紙、木材複合材の造作及び装備品、広葉樹床材、及び他の木材又はセルロース部材への損傷の原因となる。このように、建築用木材のみをホウ酸塩で処理することにより、このようにして建築される家及び商業的建物を処理することは有効ではないが、地中のシロアリの保護はなお保証される。
【0008】
ホウ酸塩の使用に関する別のアプローチは、セメント質の製品をはじめとする建築用製品中にホウ酸塩を組込むことであった。しかし、このアプローチは、依然として建築用材料に対するシロアリのチューブ形成を許容し、シロアリが他の脆弱な部材に到達することができるため、有効であることは証明されていない。このアプローチには、セメント質の製品にホウ酸塩を施用することにより、凝結抑制剤として作用する可能性があり、最終的には、それが組込まれる建築製品の構造上の完全性に影響を与える可能性があるという点で、更なる制限がある。
【0009】
したがって、非木材材料で製造された人工の構造物とその中の含有物とをシロアリによる損傷から保護する環境的により安全なやり方に対する必要性が存在する。
【0010】
発明の要旨
一の態様において、本発明は、非木材建築用部品を処理することにより、シロアリが非木材材料及び/又は非セルロース系材料にトンネル及びチューブをつくるのを防止するための方法であって、次の工程:組成物を非木材建築用部品に施用する;そして、その際、該組成物がホウ酸塩成分を含む工程を含む前記方法に関する。別の態様において、本発明は、人工構造物に対するシロアリによる損傷を防止するための方法であって、次の工程:ホウ酸塩を溶媒と混合して、ホウ酸塩溶液を形成し;非木材建築用部品を入手し;該非木材建築用部品を該ホウ酸塩溶液により被覆し;そして、該被覆済み非木材建築用部品を人工構造物中に組込む工程を含む前記方法に関する。また、本発明は、非木材基体と;ホウ酸塩を含む被覆とを含む非木材建築用部品であって、該被覆が、該非木材基体の表面上に堆積されている、前記部品に関する。
【0011】
上述の本発明の要旨は、それぞれ検討する本発明の態様を説明することを意図したものではない。これは図面及び以下の具体的な説明の目的である。
【0012】
図面
本発明は、以下の図面に関して、より完全に理解されるであろう。
【0013】
図1は、ホウ酸塩溶液を被覆した非木材建築用部品の断面図である。
【0014】
図2は、ホウ酸塩溶液を被覆した非木材建築用部品とホウ酸塩溶液を被覆していない非木材建築用部品に対するシロアリによるチューブ形成行動の例である。
【0015】
本発明は、種々の修飾及び代替的な形態が可能であるが、その詳細は実施例及び図面により示されており、詳細に説明がなされている。しかし、本発明は説明される特定の態様に限定されると理解すべきではない。それどころか、本発明の精神及び範囲に含まれる修飾、均等物、及び変更を包含することを意図している。
【0016】
本発明の具体的な説明
本発明にしたがってホウ酸塩組成物を非木材基材に施用すると、シロアリはチューブを形成しようと試みるが、非常に迅速にシロアリの大量死が発生するので、処理済み非木材基材に関するチューブ形成の活性は消失する。
【0017】
一の態様において、本発明は、非木材建築用部品を処理することにより、シロアリが非木材材料及び/又は非セルロース系材料にトンネル及びチューブをつくるのを防止するための方法であって、次の工程:組成物を非木材建築用部品に施用する;そして、その際、該組成物がホウ酸塩成分を含む工程を含む前記方法に関する。別の態様において、本発明は、人工構造物に対するシロアリによる損傷を防止するための方法であって、次の工程:ホウ酸塩を溶媒と混合して、ホウ酸塩溶液を形成し;非木材建築用部品を入手し;該非木材建築用部品を該ホウ酸塩溶液により被覆し;そして、該被覆済み非木材建築用部品を人工構造物中に組込む工程を含む前記方法に関する。また、本発明は、非木材基体と;ホウ酸塩を含む被覆とを含む非木材建築用部品であって、該被覆が、該非木材基体の表面上に堆積されている、前記部品に関する。
処理すべき材料
多くの異なる非木材及び/又は非セルロース系材料を、本発明の種々の態様にしたがって、ホウ酸塩組成物により処理することができる。例えば、一の態様においては、セメント質の材料が処理される。セメント質の材料は、セメントからつくられ、及び/又は、セメントの特性を有する材料である。処理のために適する材料としては、レンガ、ブロック、石、コンクリート、スタッコ、石膏を挙げることができる。また、金属も本発明にしたがってホウ酸塩組成物により処理することができる。例えば、鋼又は銅を処理してもよい。更に、発泡させたフォーム、PVC、ビニル、ポリスチレン、及び他のプラスチック又はポリマーをはじめとする、プラスチック又はポリマーをベースとする材料を処理することができる。当業者であれば、本発明にしたがって、多くの非木材及び/又は非セルロース系の基材を処理することができることを理解するであろう。
【0018】
様々なレベルの間隙率をもつ材料を本発明にしたがって処理してもよい。一定の態様においては、高いレベルの間隙率を有する材料が処理される。他の態様においては、高いレベルよりも低い間隙率を有する材料が処理される。
施用されるホウ酸塩組成物
施用されるホウ酸塩組成物は、活性剤、担体、及び希釈剤として、ホウ酸塩化合物を含んでいてもよい。当業者であれば、施用されるホウ酸塩組成物は、補助活性剤、溶解性向上剤、着色剤又は染料、共希釈剤(co-diluent)、粘性改質剤、接着剤成分、粉末、ポリマー形成剤などをはじめとする他の成分も含んでいてもよいことは理解するであろう。一の態様においては、施用されるホウ酸塩組成物は、処理すべき建築用部品の性質に依存して、乾燥組成物を含んでいてもよい。ホウ酸塩組成物の形態は、処理される材料のタイプ、保護が望まれるシロアリ種、及び周囲の気候条件に依存して変化してもよい。
【0019】
適するホウ酸塩化合物としては、溶解性の高い又は低いものを挙げることができる。低溶解性のホウ酸塩化合物は、懸濁液の形態で使用してもよく、はじめにその溶解性を高めるように処理してもよく、又はその溶解性を高めるように作用する別の化合物とともに使用してもよい。適するホウ酸塩化合物としては、ホウ酸、ホウ砂及びDOT(八ホウ酸二ナトリウム四水和物)などのホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムカルシウム、ホウ酸カルシウムマグネシウム、ボレステル(borester)及びボロン酸などの有機ホウ酸塩、ならびにこれらの任意の混合物が挙げられる。適する担体としては、約100〜500の平均分子量を有する短鎖ポリアルキレングリコールをはじめとするポリアルキレングリコールが挙げられる。具体的な担体としては、プロピレングリコール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、及びポリエチレングリコールが挙げられる。適する希釈剤としては、界面活性剤の添加の有無に関わらず、水、アルコール又はグリコールなどの極性溶媒が挙げられる。ミネラルスピリット及び灯油などの有機溶媒を、乳化剤とともに、又は、ボレステル若しくはボロン酸などの有機ホウ酸塩とともに使用することができる。また、デンプン、寒天、キサンタンガム、ゼラチン、ラテックス、アクリル樹脂、アルキド樹脂などといった、レオロジー改質剤、濃化剤、及び重合性フィルム形成剤などの他の成分も使用することができる。
【0020】
ホウ酸塩組成物は、余りに低い濃度のホウ酸塩化合物を含む場合には、施用したときに、最適には働かない。したがって、一定の態様においては、ホウ酸塩組成物は、0.1重量%より高い濃度のホウ酸塩化合物を含む。特定の態様においては、ホウ酸塩組成物は、0.1重量%〜100.00重量%のホウ酸塩化合物を含む。別の態様においては、ホウ酸塩素生物は、10.0重量%〜30.0重量%のホウ酸塩化合物を含んでいてもよい。
【0021】
一の態様においては、ホウ酸塩組成物は、グリコール、DOT(八ホウ酸二ナトリウム四水和物)、及び水を含み、その際、DOTは10.0重量%〜30.0重量%である。例として、グリコール、DOT(八ホウ酸二ナトリウム四水和物)及び水の溶液は、商業的に入手可能であり、BORA−CARE(登録商標)として販売されており、Nisus Corporation, 100 Nisus Drive, Rockford, TN 37853から入手可能である。グリコールは、種々の商業的な供給源から容易に入手可能である。そのような供給源の一つは、Dow Chemicalである。例えば、E200は、約200の平均分子量を有し、ケミカルアブストラクト登録番号が25322−68−3であるエチレングリコールであり、Dow Chemicalから入手可能である。
ホウ酸塩の施用
ホウ酸塩溶液は、低圧スプレー、高圧スプレー、はけ塗り、浸漬、ミスト、フォーム、噴霧塗り、ローラー被覆、散布、圧力浸漬、及び更には気体の施用をはじめとする数多くの異なる方法により施用することができる。気体の施用を使用する場合、ホウ酸トリメチルをはじめとするボレステルなどの揮発性のホウ酸塩を使用してもよい。使用される具体的な施用手法は、処理される所与の材料とともに変化してもよい。多くの態様においては、建築用部品を形成する前にホウ酸塩溶液をその材料中に混合することとは対照的に、建築用部品又は基材を既に形成した後に、ホウ酸塩溶液を施用する。
【0022】
ホウ酸塩溶液は、既に建築されたか、若しくは部分的に建築された構造物の内部の壁に施用してもよく、又はその外部の壁に施用してもよい。また、ホウ酸塩溶液は、既に建築された構造物の空洞部(例えば、空洞壁又は中空コンクリートブロックの内部)に施用してもよい。更に、ホウ酸塩溶液は、新しい又は現存する構造物のコンクリートスラブ又は基礎壁に施用してもよい。ホウ酸塩溶液は、バストラップ、又は、外部ユーティリティ(配水管、送電管、ガス管など)を構造物中に導く他の領域において、またその周りで施用してもよい。
【0023】
施用すべきホウ酸塩の全量は、特定の基材ならびに保護を求める特定の昆虫種に依存する。充分な量のホウ酸塩を含まない被覆は、最適ではない場合がある。一の態様においては、0.005g/cmのホウ酸塩溶液より高い濃度である被覆が施用される。しかし、充分な性能を発揮するために必要とされるよりも多いホウ酸塩を使用することは、不経済である場合がある。したがって、一の態様においては、ホウ酸塩溶液が1.0g/cm未満である被覆が施用される。一の態様においては、ホウ酸塩溶液が約0.005g/cm〜約1g/cmである平均的な被覆が施用される。別の態様においては、ホウ酸塩溶液が0.04g/cm〜0.10g/cmである平均的な被覆が施用される。特定の態様においては、ホウ酸塩溶液が0.071g/cmである平均的な被覆が施用される。
【0024】
多くの非木材建築用部品は多孔性であるので、ホウ酸塩組成物の施用により、溶液が建築用部品中にいくらか浸透することになる。浸透により、事実上、ホウ酸塩の表面濃度が低減することにより保護が消失する。多くの非多孔性材料においては、浸透は最小限である。また、浸透は、乾燥した多孔性材料において制限することもできる。浸透の深さは、ホウ酸塩の施用の様式に加えて、ホウ酸塩組成物、ならびに、その間隙率及び水分含量をはじめとする所与の建築用部品の詳細に依存することになる。一般的には、高いレベルの軽質有機溶媒を伴うホウ酸塩組成物は、所与の乾燥した建築用部品中により深く浸透することになる。
【0025】
図1を参照すると、建築用部品10の断面図が示されている。この部品はホウ酸塩組成物により処理されている。ホウ酸塩組成物は、建築用部品10の表面12に施用されており、建築用部品10の外辺部のまわりの浸透帯域14(一定の比率で描かれたものではない)全体にわたって浸透している。ホウ酸塩組成物は、浸透帯域14を建築用部品の内部にある除外帯域18から区分する浸透帯域の端部16まで浸透している。図1は浸透帯域14を示しているが、当業者であれば、少なくとも非多孔性又はごくわずかに多孔性の建築用部品を使用する場合は、浸透帯域は形成されない可能性があり、ホウ酸塩組成物は建築用部品の表面に存在する可能性があることは理解するであろう。
【0026】
本発明の一態様においては、浸透を制限して、建築用部品の表面で利用可能なホウ酸塩組成物の量を最大にするため、ホウ酸塩組成物は、非可溶化溶媒及び/又は高度に揮発性の溶媒中に施用された溶解性の低いホウ酸塩である。また、本発明はホウ酸塩の浸透を制限する他の方法も企図している。例として、ホウ酸塩溶液を施用する前に、非木材建築用部品に浸透最小化溶液を施用することができる。かかる浸透最小化溶液は、非木材建築用部品の孔を充填して、その後にホウ酸塩溶液が施用されたときにホウ酸塩溶液がその部品中に深く浸透しないように作用することができる。例としては、ワックスエマルジョン;ポリビニルアルコール、シリコーン、アクリル樹脂、アルキド樹脂などのポリマー形成剤;又は、コーティング系若しくは塗料などの他のシーラントが挙げられるだろう。一態様においては、本発明は、浸透最小化剤を被覆することを含む。
昆虫
本発明の種々の態様は、Reticulitermes、Heterotermes、Coptotermes、Microtermes、Nasutitermes、Neotermes及びMastitermesをはじめとする地中のシロアリからの損傷を防ぐのに有効である。本発明は、一の態様において、特にReticulitermes、Heterotermes及びCoptotermesのシロアリに対して有効である。特定の態様において、本発明は、Formosan地中シロアリ(Coptotermes formosanus)により引き起こされる損傷を防ぐために使用することができる。他の態様において、本発明は、一般的にはマッド・ドービング・ワスプ(mud daubing wasp)などの、チューブを形成する昆虫からの損傷を防ぐために使用される。
【0027】
本発明は、以下の実施例を参照すればより理解することができる。これらの実施例は、本発明の具体的な態様を代表するものとして意図され、本発明の範囲を限定するものと意図したものではない。
【0028】
実施例1:ホウ酸塩の施用
一端が扇形になっている15.2cm×5cm×61cm(6インチ×2インチ×24インチ)のコンクリート製装飾用カラムを例示的な非木材建築用部品として得た。これらのカラムを、20重量%八ホウ酸二ナトリウム四水和物、グリコール担体、及び水を含む溶液により、カラムのすべての表面に対して表面が受け付けなくなるまでブラシ処理した。
【0029】
表1に示すように、平均で0.071g/cmの溶液による被覆を施用した。これら処理物を試験前に室温にて硬化させた。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例2:チューブ形成試験
実施例1からの5つの処理済みカラム(カラム1〜5)を、5つの別の同一の未処理カラム(カラム6〜10)に対して試験した。試験は、通常のシロアリの活性を測定するためサザン・イエロー・パインの対照も含んでいた。各コンクリート製カラムを、カラムが土の表面上に58.4cm(23インチ)伸長するように縁端上に置いた。各カラムは、300グラムの蒸留水を含有する1500グラムのオートクレーブ処理したブラスティング・サンド(blasting sand)中に置いた。一片のサザン・イエロー・パイン辺材を各カラムの頂部に置いた。Formosan地中シロアリ(Coptotermes formosanus)は、ルイジアナ州にあるブレヒテル(Brechtel)州立公園から、おとりかご法(bait crate method)により集めた。これらは、最も食欲が旺盛であり、最も損傷を与えるものであり、そして最も駆逐するのが難しい地中シロアリであると認識されている。二千匹のFormosan地中シロアリ(サンプリングからの重量により測定)を平鉢に入れた土の上に載せた。この構造物を、シロアリが逃げないように濠をつくるため、より大きな平鉢に入れた。各セットアップをプラスチック製の袋で覆い、高い湿度を維持した。サザン・イエロー・パインの対照は、シロアリの健康と質をみるために使用した。適用可能である点において、試験は米国木材保存協会規格E1−97に記載されている規格に従った。すべての試験は27℃に調節した部屋の中で行った。
【0032】
コンクリートの対照(カラム#7)についての初期の試験は、シロアリがコンクリートにトンネルを掘るかどうかをみるためにセットアップした。4日後に、土のレベルより16インチ上にトンネルが作られた。サザン・イエロー・パインの対照をセットアップして28日間試験を行った。対照についての視覚評価は、次の評価体系に基づくものとした:10−正常、表面に噛みあとを許した;9−軽度の攻撃;7−中程度の攻撃;4−重度の攻撃;0−破壊。
【0033】
実施例3:チューブ形成防止の有効性
コンクリートカラム試験を30日間行った。カラムは、はじめに、存在するすべてのチューブの長さと、確認された周囲の水中にみられるシロアリの数に関して毎日調査した。チューブ形成の活性についての結果を表2に示す。これらの表において、処理済みのカラムは1〜5の番号を付け、未処理のカラムは6〜10の番号を付けてある。
【0034】
チューブ形成の活性は、はじめの18日間は毎日測定した。シロアリは、一旦チューブ形成を始めると、未処理のカラムについて1〜7日間でカラムの全長にわたるチューブをつくることがわかった。シロアリはホウ酸塩処理したカラムに対しては異なるように反応した。これらのセットアップにおけるFormosan地中シロアリは、長さが20cm(8インチ)を超えるチューブをつくることができず、一つは全高がわずか10cm(4インチ)に到達しただけであった。5つの処理済みカラムのうち2つについて、カラムの平たい縁端部上の初期のチューブは途中で放棄され、カラムの扇形になっている側の上に新しいチューブがつくられ始めた。これらのチューブは同様に途中で失敗した。シロアリは、未処理のカラムについて、土からカラムの頂部までチューブを完成させるのに平均で8日未満かかった。しかし、処理済みカラムについては、8日で平均16.5cmの高さまでしか到達できず、その地点より上には更なる前進はみられなかった。
【0035】
また、チューブの質も様々であった。未処理カラム上のチューブは、強くて耐久性があるようにみえたが、処理済みカラム上のチューブは弱くて砕けやすかった。処理済みカラム上のチューブは維持されなかった。結局は、カラムが処理されているか処理されていないかに関わらず、すべてのサザン・イエロー・パイン・ブロック上で何らかの劣化がみられた。劣化は、未処理のカラム上に支持された木材に関してはるかに苛酷であった。理論によって括ることを意図するものではないが、この実験装置中には代替的な食料源がなく、チューブなしであっても最終的にはシロアリが食料源までカラムを横切り、試験ユニットをプラスチック製の袋に閉じ込めて高い湿度を維持していたのでそうすることが可能であったことから、未処理のカラムに関して劣化が観察されたと考えられる。代替的な食料源が必ず入手可能であり、乾燥と死を防げるのがチューブだけである自然においては、このことは起こらなかったであろうと考えられる。
【0036】
図2を参照すると、ホウ酸塩溶液が被覆された、また被覆されていないカラム上でのチューブ形成挙動の例が示されている。例示的な被覆されていないカラム50に関して、シロアリは、被覆されていないカラム50の基部52から被覆されていないカラム50の頂部54まで、被覆されていないカラム50の表面58上にチューブ56を形成している。対照的に、被覆されたカラム60に関して、シロアリは、基部62から出発して、被覆されたカラムの表面68上にチューブ66を形成し始めるが、チューブ66は、被覆されたカラムの頂部64の手前である地点70で停止されている。
【0037】
【表2】

【0038】
実施例4:シロアリの死亡率
シロアリは、日々のベースで、セットアップの周囲の水中においてみられた。これらのシロアリを集めて計数し、日ごとの死亡率の計算をした。表3にみられるように、処理済みカラムからは未処理のものよりも有意に大きい数のシロアリが水中にいた。処理済みのコンクリートは、30日の期間で水中のシロアリが平均で799匹であり、すなわち、試験に供したもとの数の40%の死亡率であった。未処理コンクリートの試験に使用したシロアリの死亡率は、平均でシロアリが合計93匹、すなわち4.7%の死亡率であった。未処理カラムのシロアリの溺れることによる死亡率は、チューブが一旦カラムの頂部に到達すると相当減少する。溺れることを原因とする処理済みカラムのシロアリの死亡率は非常に高く、時には個々のカラムについて2週間で50%より高い死亡率に到達することがあった。
【0039】
試験の分析データのまとめを表4に示す。データは、コンクリートカラムのセットアップについてのシロアリの合計死亡率(水死と他の死因)と、ジャー試験におけるサザン・イエロー・パイン・ブロック対照についての死亡率、重量損失及び視覚評価とからなる。この表でわかるように、処理済みコンクリートカラムセットアップについて死亡率は非常に高く平均で92.7%であり、未処理カラムについての死亡率は中程度で平均35.7%であり、パイン対照についての死亡率は低く平均で13.2%であった。更に、対照についての高い重量損失(43.7%)は、低い評価(0.8)と組合わせると、シロアリが健康であり非常に活性があったことを示していた。表4で示したように、処理済みカラムについての非常に高い死亡率は、この処理により、土中でのシロアリの死と、ならびに溺れることによる死とが引き起こされたことを示している。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
本発明を幾つかの特定の具体化に関して説明してきたが、当業者であれば、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく本発明に対して多くの変更をなし得ることは理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】ホウ酸塩溶液を被覆した非木材建築用部品の断面図である。
【図2】ホウ酸塩溶液を被覆した非木材建築用部品とホウ酸塩溶液を被覆していない非木材建築用部品に対するシロアリによるチューブ形成行動の例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非木材建築用部品を処理することにより、シロアリが非木材材料及び/又は非セルロース系材料にトンネル及びチューブをつくるのを防止するための方法であって、次の工程:
組成物を非木材建築用部品に施用する;そして、
その際、該組成物がホウ酸塩成分を含む
工程を含む前記方法。
【請求項2】
組成物が、グリコール、八ホウ酸二ナトリウム四水和物、及び水を含むホウ酸塩溶液であって、その際、該八ホウ酸二ナトリウム四水和物が、重量基準で該溶液の10〜30%を構成する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
組成物を、シロアリが非木材建築用部品の表面全域でチューブを形成するのを防止するのに有効な量で施用する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
組成物を、非木材建築用部品の外表面すべてに施用する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
非木材建築用部品が、セメント質である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
非木材建築用部品が、金属である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
非木材建築用部品が、ポリマーである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
溶液が、非木材建築用部品の内部全体には浸透しない、請求項1記載の方法。
【請求項9】
組成物が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムカルシウム、ホウ酸カルシウムマグネシウム、及び有機ホウ酸塩からなる群から選択される化合物からのホウ酸塩を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
組成物を、スプレー、浸漬、はけ塗り、ローラー被覆、ミスト、フォーム、噴霧塗り、紛体被覆、圧力浸漬、又は気体の施用により施用する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
組成物を非木材建築用部品の表面に施用することが、組成物を、既に建築された又は部分的に建築された構造物の内部の壁及び/又は外部の壁に施用することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
組成物を非木材建築用部品の表面に施用することが、組成物を、既に建築された構造物の空洞部に施用することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
組成物を非木材建築用部品の表面に施用することが、組成物を、新しい又は現存する構造物のコンクリートスラブ又は基礎壁に施用することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
組成物を非木材建築用部品の表面に施用することが、組成物を、外部の複数のユーティリティーが一つの構造物となっているバストラップ又は他の領域の中及びその周りの非木材材料に施用することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
人工構造物に対するシロアリによる損傷を防止するための方法であって、次の工程:
ホウ酸塩を溶媒と混合して、ホウ酸塩溶液を形成し;
非木材建築用部品を入手し;
該非木材建築用部品を該ホウ酸塩溶液により被覆し;
該被覆済み非木材建築用部品を人工構造物中に組込む
工程を含む前記方法。
【請求項16】
被覆済み非木材建築用部品を、地面と木材材料又はセルロース系材料との間の部分で人工構造物中に組込み、その際、該非木材建築用部品がシロアリが通過できない障害を形成する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
防止すべきシロアリによる損傷が、Reticulitermes、Heterotermes、又はCoptotermesにより引き起こされる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
ホウ酸塩溶液が、グリコール、八ホウ酸二ナトリウム四水和物、及び水を含み、その際、該八ホウ酸二ナトリウム四水和物が、重量基準で該溶液の10〜30%を構成する、請求項15記載の方法。
【請求項19】
ホウ酸塩溶液を、シロアリが建築用部品の表面全域でチューブを形成するのを防止するのに有効な量で施用する、請求項15記載の方法。
【請求項20】
ホウ酸塩溶液を、建築用部品の外表面すべてに施用する、請求項15記載の方法。
【請求項21】
建築用部品が、セメント質である、請求項15記載の方法。
【請求項22】
非木材建築用部品が、金属である、請求項15記載の方法。
【請求項23】
非木材建築用部品が、ポリマーである、請求項15記載の方法。
【請求項24】
非木材建築用部品上の被覆が、該非木材建築用部品の内部全体には浸透しない、請求項15記載の方法。
【請求項25】
ホウ酸塩が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムカルシウム、ホウ酸カルシウムマグネシウム、及び有機ホウ酸塩からなる群から選択される化合物からのものである、請求項15記載の方法。
【請求項26】
ホウ酸塩を、スプレー、浸漬、はけ塗り、ローラー被覆、ミスト、フォーム、噴霧塗り、紛体被覆、圧力浸漬、又は気体の施用により施用する、請求項15記載の方法。
【請求項27】
非木材基体;及び
ホウ酸塩を含む被覆
を含む非木材建築用部品であって、
該被覆が、該非木材基体の表面上に堆積されている、前記部品。
【請求項28】
被覆が、シロアリが非木材基体の表面全域でチューブを形成するのを防止するのに有効な量のホウ酸塩を含む、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項29】
被覆が、グリコール、八ホウ酸二ナトリウム四水和物、及び水を含む溶液として施用され、その際、該八ホウ酸二ナトリウム四水和物が、重量基準で該溶液の10〜30%を構成する、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項30】
ホウ酸塩溶液を、非木材基体の接触可能表面すべてに施用する、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項31】
非木材基体が、セメント質である、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項32】
非木材建築用部品が、金属である、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項33】
非木材建築用部品が、ポリマーである、請求項27載の非木材建築用部品。
【請求項34】
溶液が、非木材基体の内部全体には浸透しない、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項35】
ホウ酸塩が、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウムカルシウム、ホウ酸カルシウムマグネシウム、及び有機ホウ酸塩からなる群から選択される化合物からのものである、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項36】
被覆を、スプレー、浸漬、はけ塗り、ローラー被覆、ミスト、フォーム、噴霧塗り、紛体被覆、圧力浸漬、又は気体の施用により施用する、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項37】
被覆が、土壌と構造物の台との間に、シロアリが通過できない完全な障害又は部分的な障害を形成する、請求項27記載の非木材建築用部品。
【請求項38】
更に、浸透最小化剤の被覆を含む、請求項27記載の非木材建築用部品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−521808(P2007−521808A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549669(P2006−549669)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/001432
【国際公開番号】WO2005/070211
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506244973)ニサス・コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】