説明

非水系キャパシタ及びその製造方法

【課題】 耐電圧、エネルギー密度及び出力密度が高いキャパシタを提供すること。
【解決手段】 集電極と電極とセパレータとからなる電極ユニット及び電解液をケースに収納し、封緘してなるキャパシタにおいて、集電極、電極及びセパレータがそれぞれ280℃以上の融点または熱分解開始温度(融点を発現しない場合)を有する材料によって構成され、そして電極ユニットが、その組み立て後に、該電極ユニットを構成する材料の融点または熱分解開始温度のうち最も低い温度より100℃低い温度以上の温度で乾燥されたものであることを特徴とする非水系キャパシタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルムホルツが1879年に発見した電気を蓄える電気二重層を活用し、活性炭、泡状カーボン、カーボン・ナノチューブ、ポリアセン、ナノゲート・カーボンなどのカーボン系材料を電極とした電気化学キャパシタ、酸還元反応を伴う擬似容量も活用し、金属酸化物、導電性ポリマー、有機ラジカルなどを電極としたキャパシタ、及び片方の電極に電池を活用したハイブリッドキャパシタなどのキャパシタでのうちで、電解液として有機電解液を使用する非水系キャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯通信機器や高速情報処理機器などの最近の進歩に象徴されるように、エレクトロニクス機器の小型軽量化、高性能化には目覚しいものがある。なかでも、小型、軽量、高容量で長期保存にも耐える高性能なキャパシタに対する期待は大きく、幅広く応用が図られ、部品開発が急速に進展している。キャパシタは一般に電池と比較して長寿命かつ急速充放電が可能であることから、電源の平滑化、ノイズ吸収などの従来の用途以外に、近年、電気自動車用、ハイブリッド自動車用、燃料電池自動車用の二次電池としての用途が期待されている。そのキャパシタとして、特許文献1には、非水系電解液中に1対の電極が浸漬された構造を有するものが開示されている。この非水系キャパシタは、含有水分除去の観点から、以下の2種類に分類される。
【0003】
(1) 集電極、電極及びセパレータをそれぞれ加熱減圧乾燥した後、これらを組み立てて電極ユニットを作製し、次いで、ケースに電極ユニットを挿入し、電解液を減圧含浸した後、ケースを封緘してなる非水系キャパシタ。この場合、集電極、電極及びセパレータのそれぞれを加熱減圧乾燥することが必要であり製造が煩雑である、そのために複数の乾燥装置を必要とし広いスペースが必要となる、電極の構成部材として知られている活性炭の非常に水分を吸収しやすい性質に由来して、加熱減圧乾燥後組み立て時に電極が水分を再吸着し、耐電圧が低下する、などの問題がある。
【0004】
(2) 集電極、電極及びセパレータを組み立てた後、これを加熱減圧下に乾燥し、得られる電極ユニットをケースに挿入した後、非水系電解液を減圧含浸し、次いで、記ケースを封緘してなる非水系キャパシタ。この場合、電極ユニットを組み立てた後に加熱減圧乾燥するため製造工程を簡素化することができ、乾燥装置を少なくすることができるため広いスペースを必要としないという利点があるが、組み立て後の加熱減圧乾燥温度を、例えば、電極ユニットの組み立てに用いる結着剤に含まれるポリフッ化ビニリデンやセパレータを構成するセルロース、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタテレートなどがもつ低い融点及び熱分解温度以下にしなければならないため、十分に水分を除去することがでず、従って、得られるキャパシタは耐電圧、エネルギー密度、出力密度が十分でないという問題がある。
【0005】
また、特許文献2には、電極ユニットに含まれる水分を十分に除去するために、非水系キャパシタの電極ユニットのうちのセパレータを軟化温度が高い樹脂を用いて構成し、組み立てられた電極ユニットを該軟化温度よりも低い温度で乾燥させることが開示されている。しかし、特許文献2には、電極ユニットから水分を確実に除去することができる乾燥温度と電極ユニットを構成する材料の温度特性との間の関係が明示されておらず、非水系キャパシタの構成材料によっては所望のキャパシタ特性が得られない可能性がある。
【特許文献1】特開2000−243453号公報
【特許文献2】特開2001−185455号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、耐電圧、エネルギー密度及び出力密度の高いキャパシタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、高容量化・大出力化による大電流に耐え、耐電圧、エネルギー密度、出力密度の高いキャパシタを開発すべく鋭意検討を進めた結果、今回、電極ユニットの構成材料として高い融点又は熱分解開始温度を有するものを使用し且つ電極ユニットの組み立て後に特定の温度で乾燥することにより上記の目的を達成することができることを見い出し本発明を完成するに至った。
【0008】
かくして、本発明は、集電極と電極とセパレータとからなる電極ユニット及び電解液をケースに収納し、封緘してなるキャパシタにおいて、集電極、電極及びセパレータがそれぞれ280℃以上の融点または熱分解開始温度(融点を発現しない場合)を有する材料によって構成され、そして電極ユニットが、その組み立て後に、該電極ユニットを構成する材料の融点または熱分解開始温度のうち最も低い温度より100℃低い温度以上の温度で乾燥されたものであることを特徴とする非水系キャパシタを提供するものである。
【0009】
本発明は、また、電圧2.8V及び温度70℃において500時間浮動状態で放置した後の容量の保持率が70%以上であることを特徴とする上記の非水系キャパシタを提供するものである。
【0010】
本発明は、さらに、乾燥後の電極の含有水分率が1700ppm以下であることを特徴とする上記の非水系キャパシタを提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のキャパシタは、電極ユニットを構成する集電極、電極及びセパレータの3部材の素材として、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が280℃以上の素材を使用し、電極ユニッを組み立てた後に、該電極ユニットを構成する素材の中で最も低い融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)を有する素材の融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)より100℃低い温度以上の温度で、電極ユニットを乾燥したことにより、十分に水分を除去することができるため、高い耐電圧、エネルギー密度、出力密度を実現することができる。
【0012】
以下、本発明の非水系キャパシタについてさらに詳細に説明する。
【0013】
本明細書において、「融点」は、DSC(Differential Scanning Calorimetry)、DTA(Differential Thermal Analysis)などの熱的測定方法により測定される融点を意味する。一般に、ポリマーは、単一でない分子量成分を含んでいることおよび結晶化の程度の違いなどを反映して幅広い融解挙動を示す。本発明においては、DSC分析による吸熱ピークに対応する温度を以って融点とする。
【0014】
また、「熱分解開始温度」は、或る物質に熱を加えたときに、その物質が分解して質量の小さいものに変化する最低の温度であり、通常はTGA(熱重量分析装置)を使用し、一定の昇温速度で物質を加熱したときに、物質の質量の減少が開始する温度として測定される。
【0015】
集電極:
本発明における電極ユニットを構成する集電極は、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が280℃以上の素材からなり、導電性であれば、その材質には特に制限はないが、生産性などの観点から、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が320℃以上であるのものが好ましい。集電極の材料としては、例えば、アルミニウム薄板、白金薄板などの金属薄板が挙げられ、リード線の部分を含んでいることが好ましい。
【0016】
電極:
本発明における電極ユニットを構成する電極もまた、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が280℃以上の素材からなり、導電性であれば、その材質には特に制限はないが、生産性などの観点から、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が320℃以上であるものが好ましい。電極の素材としては、例えば、主剤として、ヘルムホルツが1879年に発見した電気を蓄える電気二重層を活用した、活性炭、泡状カーボン、カーボン・ナノチューブ、ポリアセン、ナノゲート・カーボンなどのカーボン系材料や、酸還元反応を伴う擬似容量も活用した、金属酸化物、導電性ポリマー、有機ラジカルなどの材料等が挙げられ、片方の電極には電池の電極を使用することもできる。電極は、例えば、上記主剤に、必要に応じて、導電剤、結着剤などを混ぜ合わせ、混練法、圧粉法、圧延法、塗布法、焼結法、ドクターブレード法、湿式抄造法などによって成形することにより作製することができる。
【0017】
上記導電剤は、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が280℃以上の素材からなり、導電性であれば、その材質には特に制限はないが、生産性などの観点から、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が320℃以上であるものが好ましく、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどのカーボン系材料を使用することができる。
【0018】
上記結着剤もまた、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が280℃以上の素材からなり、主剤を捕捉できるものであれば、その材質には特に制限はないが、生産性などの観点から、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が320℃以上であるものが好ましく、具体的には、例えば、アラミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアゾ化合物、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアミドイミド、ポリイミド、ビスマレイミド・トリアジン、ポリマミノビスマレイミド、ポリテトラフルオロエチレン、セラミック、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、ガラス、ロックウール、チッ化ケイ素などが挙げられるが、特に、主剤の捕捉性のよいアラミド、ポリテトラフルオロエチレンが好ましく使用される。
【0019】
セパレータ:
本発明における電極ユニットを構成するセパレータとしては、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が280℃以上の素材からなり、イオン透過性があり、短絡などの問題が起きないものであれば、その材質には特に制限はないが、生産性などの観点から、融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)が320℃以上であるものが好ましく、具体的には、例えば、アラミド、全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリアゾ化合物、全芳香族ポリエステルアミド、全芳香族ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリ−p−フェニレンベンゾビスチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリ−p−フェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリアミドイミド、ポリイミド、ビスマレイミド・トリアジン、ポリマミノビスマレイミド、ポリテトラフルオロエチレン、セラミック、アルミナ、シリカ、アルミナシリカ、ガラス、ロックウール、チッ化ケイ素などの材料からなるものが挙げられるが、特に、特開2005−307360号公報に記載されている、下式(1)で示される内部抵抗値が250μm以下であり且つ王研式透気度が0.5秒/100cm以上である、アラミド繊維とフィブリル化されたアラミドの2成分又は該2成分とアラミドファイブリッドで構成されるアラミド薄葉材をセパレータとして使用すると、出力密度が高くなる効果がみられるので、好適である。
【0020】
(内部抵抗値)=(電解液の電気伝導度)/(セパレータに電解液を注入
したときの電気伝導度)×(セパレータの厚み) 式(1)

ここで、電解液は、溶媒中に電解質が溶解した液体を意味し、後述するものを使用することができる。また、(セパレータに電解液を注入したときの電気伝導度)は、上記電解液をセパレータに注入した状態で2枚の電極に挟み、測定した交流インピーダンスから算出される電気伝導度を意味する。交流インピーダンスの測定周波数については、特に制限はないが、1kHz〜100kHzの範囲内が好ましい。
【0021】
電極ユニット:
本発明における電極ユニットは、上記集電極、電極及びセパレータを組み立てたものであり、その構成には特に制限はなく、例えば、集電極/電極/セパレータ/電極/集電極の順に積み重ねたもの、電極/集電極/電極/セパレータ/電極/集電極/電極/セパレータの順に積み重ねたもの、これらの積み重ねを繰り返したもの、このように積み重ねた積層体を巻き上げたものなどが挙げられ、上記積み重ねの各部材間を予め接着剤などで接着することも可能である。また、特開2005−311190号公報に記載されている電極部材とセパレータからなり、セパレータの体積固有抵抗値が1010Ωcm以上である
複合体シートを使用することも可能である。
【0022】
電解液:
本発明において上記電極ユニットを含浸するのに用いられる電解液は、溶媒中に電解質が溶解した液体である。
【0023】
該電解液に使用される溶媒、電解質、電解質の濃度等には特に制約はなく、溶媒としては、例えば、エチレンカーボーネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートエチルメチルカーボネート、ブチレンカーボネート、グルタロニトリル、アジポニトリル、アセトニトニル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピオニトリル、γ―ブチロラクトン、γ―バレロラクトン、スルホラン、3−メチルスルホラン、ニトロエタン、ニトロメタン、リン酸トリメチル、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N’−シメチルイミダゾリジノン、アミジン、水など及びそれらの混合物を使用することができる。
【0024】
また、電解質としては、イオン性の物質、例えば、以下のカチオンとアニオンの組み合わせを使用することができる。
1) カチオン:第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン、水素イオン及びそれらの混合物など。
2) アニオン:過塩素酸イオン、ホウフッ化イオン、六フッ化リン酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン及びそれらの混合物など。
【0025】
また、低い融点を有し、常温でも液状の塩であるイミダゾリウム塩などのイオン性液体も電解質として使用可能である。イオン性液体は蒸気圧がほとんどゼロであるため、キャパシタの長寿命化が期待できるうえに、難燃性を付与できる可能性がある。
【0026】
電極ユニットの乾燥:
本発明においては、上記の如くして組み立てられた電極ユニットは、該電極ユニットを構成する集電極、電極及びセパレータの中で最も低い融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)を有する素材の融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)のうち最も低い温度より100℃低い温度以上の温度で乾燥される。キャパシタの製造時間の短縮という点から考えると、乾燥温度は高いほうが好ましく、上記融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)のうち最も低い温度より50℃低い温度以上であることが望ましい。また、乾燥温度の上限に関しては、高ければ高いほど製造時間が短縮されるが、素材の融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)に近くなると、組立られた電極ユニットが変形し、キャパシタとしての容量、インピーダンスなどの特性が劣化するなどの問題が生じる場合がある。したがって、乾燥温度は、電極ユニットを構成する集電極、電極及びセパレータの中で最も低い融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)を有する素材の融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)よりも30℃低い温度以下で且つ該温度よりも100℃低い温度以上の範囲内が好まし、製造時間の観点から、上記温度より30℃低い温度以下で且つ該温度よりも50℃低い温度以上の範囲内がさらに好ましい。
【0027】
また、乾燥時の雰囲気はできるだけ水分を含まないことが望ましい。電極ユニットの乾燥は、具体的には、例えば、乾燥したアルゴンなどの不活性ガスを流動させながら或いは減圧した状態で行うことが可能であるが、特に、電極ユニットの表面に付着した水分を極限まで除去するためにもまた水の沸点を降下させるためにも、減圧乾燥が好ましく、雰囲気の圧力としては1トル以下が好ましい。
【0028】
乾燥時間は、キャパシタとして目標とする耐電圧、エネルギー密度、出力密度などを達成することができる範囲であれば特に制限はないが、生産性などの観点から、24時間以内が好ましく、さらに好ましくは15時間以内である。
【0029】
また、乾燥の程度は、乾燥後の電極の含有水分率が1700ppm以下であることが好ましく、さらに、耐電圧、エネルギー密度、出力密度を大幅に向上させるためには、1000ppm以下であることが望ましい。したがって、電極ユニットの乾燥は、上記の条件下に、乾燥後の電極の含有水分率が上記限界以下になるまで行うことが望ましい。
【0030】
ケース:
本発明におけるケースは、上記電極ユニットと電解液を収納し且つ封緘することができるものであれば特に制限はなく、例えば、アルミ缶ケース、アルミラミネートケース、アルミコインケースなどを使用することができる。
【0031】
キャパシタ:
上記乾燥した電極ユニットをケースに収納し、電解液を注入した後、ケースを封緘することにより、本発明のキャパシタを得ることができる。電解液は減圧含浸するのが好ましい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例を挙げてさらに具体的に説明する。なお、これらの実施例は、単なる例示であり、本発明の範囲を何ら限定するためのものではない。
【0033】
実施例1
<電極の作製>
電極材料の主剤として水蒸気賦活した活性炭、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)および導電材としてケッチェンブラック(KB)を用い、活性炭/PTFE/KB=86/6.5/7.5(wt%)の組成でシート化し、厚さ115μm及び密度0.6g/cmの電極を得た。
【0034】
<電極ユニットの作製>
集電極アルミ箔(厚み40μm)に導電性塗料(フェノール樹脂系)を用いて50×30mmに打抜いた上記電極を接着し、電極と集電極の複合体を得た。
【0035】
特開2005−307360号公報に記載の実施例2の方法にしたがって、m−アラミドとp−アラミドからなるセパレータ(坪量24.4g/m、厚み46μm、密度0.53g/cm)を作製し、正負極1対の上記複合体の間に挟み電極ユニットを得た。
【0036】
<電極ユニットの乾燥>
上記電極ユニットを構成する素材のなかでもっとも低い融点又は熱分解開始温度(融点を発現しない場合)をもつ素材はポリテトラフルオロエチレンであり、その融点は327℃である。そこで、上記電極ユニットを温度280℃及び圧力1トル以下の条件にて12時間減圧乾燥した。
【0037】
<キャパシタの作製>
乾燥した雰囲気中で、乾燥後の電極ユニットをアルミラミネート外装に収納し、外装の三方を封口状態にし、その中に電解液として1.5MのTEMABF/PC(トリエチルメチルアンモニウム・テトラフルオロボーレイトをプロピレンカーボネートに溶解した液)を注入し、減圧含浸した後、残りの一方を減圧封口して、下記表1に示す構成のキャパシタを作製した。
【0038】
【表1】

<特性評価>
上記キャパシタの初期特性及びフロート特性を以下の方法で測定した。
1) 初期充放電特性
初期特性として、初期における1Cレートでの充放電測定およびインピーダンス測定を行い、抵抗を算出した。測定条件は下記のとおりである:
初期容量測定(25℃)
充電:CCCV 4.2mA(1C)、2.8V−2時間 (*)
放電:CC 4.2mA(1C)、0.01V (**)
(*)CCCV:定電流定電圧 (**)CC::定電流
インピーダンス測定(25℃)
測定状態:放電末
測定周波数:20000Hz〜0.1Hz
振幅(ΔE):10mV
2) 浮動(フロート)充電特性
フロート充電特性として、2.8Vの充電を印加した状態で70℃の環境にて保存を500時間行った。500時間のフロート終了時において、容量の確認とインピーダンスを測定し、抵抗を算出した。測定条件は下記のとおりである:
フロート試験
充電:2.8V−500時間(70℃)
容量測定 (25℃)
充電:CCCV 4.2mA(1C)、2.8V−2時間
放電:CC 4.2mA(1C)、0.01V
インピーダンス (25℃)
測定状態:放電末
測定周波数:20000Hz〜0.1Hz
振幅(ΔE):10mV
【0039】
比較例1
市販されているキャパシタ用のセルロースセパレータ(坪量19.7g/m、厚み42μm、密度0.47g/cm)を使用し、電極ユニットの乾燥を温度150℃で行った以外は、上記実施例1と同様の方法でキャパシタを作製し、実施例1と同様にして特性を測定した。それらの結果を下記表2に示す。
【0040】
【表2】

表2から明らかなように、フロート充電特性は、本発明実施例1のキャパシタが比較例1のキャパシタに比べて良い結果であり、電圧2.8V及び温度70℃で500時間浮動状態で放置した後の容量の保持率が70%以上、抵抗の増加率が500%以内に抑えられ、耐電圧の向上が確認された。これは電極ユニットの高温乾燥により、水分が十分に除去され、電解液の分解及び/又は水の電気分解によるガス発生が抑止された結果であると考えられる。
【0041】
さらに、上記結果をもとに、下式(2)、(3)により、実施例1のキャパシタ及び比較例1のキャパシタのエネルギー密度及び出力密度を算出した。その結果を表3に示す。
【0042】
(エネルギー密度)=0.5×(容量)×(電圧) 式(2)
(出力密度)=0.25×(電圧)/(インピーダンス) 式(3)
【0043】
【表3】

表3から明らかなように、実施例1のキャパシタには、エネルギー密度及び出力密度ともに大幅な向上が認められた。
【0044】
さらに、EMD−WA1000SW(電子科学製)を使用して電極の水分含有率を測定した。すなわち、水蒸気賦活した活性炭を、実施例1又は比較例1の条件で乾燥した後、真空状態を保ったまま1時間放冷し、次いで、60℃/分の速度で700℃まで昇温し、さらに、8分保持して、昇温時と保持時の水の脱離量から活性炭の含有水分率を計算した。その結果、含有水分率は、比較例1の乾燥条件では2300ppmであったのに対し、実施例1の乾燥条件では1100ppmであった。これらの計算値に電極中の活性炭比率(86%)を乗ずると、比較例1の乾燥条件では1978ppmであるのに対し、実施例1の乾燥条件では946ppmとなり、実施例1の乾燥条件では水分が大幅に除去されており、エネルギー密度、出力密度の向上には高温乾燥による水分の除去が有効であることが認められた。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電極と電極とセパレータとからなる電極ユニット及び電解液をケースに収納し、封緘してなるキャパシタにおいて、集電極、電極及びセパレータがそれぞれ280℃以上の融点または熱分解開始温度(融点を発現しない場合)を有する材料によって構成され、そして電極ユニットが、その組み立て後に、該電極ユニットを構成する材料の融点または熱分解開始温度のうち最も低い温度より100℃低い温度以上の温度で乾燥されたものであることを特徴とする非水系キャパシタ。
【請求項2】
電圧2.8V及び温度70℃において500時間浮動状態で放置した後の容量の保持率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の非水系キャパシタ。
【請求項3】
乾燥後の電極の含有水分率が1700ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の非水系キャパシタ。
【請求項4】
集電極と電極とセパレータからなる電極ユニットにおける集電極、電極及びセパレータをそれぞれ280℃以上の融点または熱分解開始温度(融点を発現しない場合)を有する材料によって構成し、電極ユニットを組み立てた後に、該電極ユニットを構成する材料の融点または熱分解開始温度のうち最も低い温度より100℃低い温度以上の温度で該電極ユニットを乾燥し、その乾燥された電極ユニットをケースに収納し、電解液を注入した後、該ケースを封緘することを特徴とする非水系キャパシタの製造方法。
【請求項5】
乾燥を電極の含有水分率が1700ppm以下になるまで行うことを特徴とする請求項4に記載の方法。

【公開番号】特開2007−201389(P2007−201389A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73898(P2006−73898)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(596001379)デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社 (26)