説明

非水系二次電池用セパレータ及びそれを用いた非水系二次電池

【課題】サイクル特性を向上させ、セパレータの寸法安定性に優れ、ピンホールの発生を抑制した非水系二次電池用セパレータ及びそれを用いた非水系二次電池を提供する。
【解決手段】β晶核剤を含有するポリプロピレン樹脂を有する非水二次電池用セパレータ3において、核形成補助成分を含有し、該ポリプロピレン樹脂(pp)、該β晶核剤(nu)及び該核形成補助成分(poor)の相溶性パラメータを、それぞれSP(pp)、SP(nu)、SP(poor)としたとき、SP(nu)>SP(pp)>SP(poor)を満し、該β晶核剤(nu)と該核形成補助成分(poor)の融点を、それぞれTm(nu)、Tm(poor)とした時に、Tm(poor)<Tm(nu)を満し、かつ120℃における等温結晶化により形成させた球晶の最大平均粒径(d97.5)が、10.0μm未満であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ3。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクル特性が向上し、ピンホール発生率が低減された非水系二次電池用セパレータとそれを用いた非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動自動車等に搭載されるリチウムイオン二次電池に代表されるように、非水系二次電池の研究が活発に行われている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、主には正極、負極及びセパレータから構成されており、正極、負極間のリチウムイオンの移動により電池としての機能を果たすものである。
【0004】
リチウムイオン二次電池に用いられるセパレータは、ポリエチレン及びポリプロピレンに代表されるポリオレフィン系樹脂を用い、膜内に微細孔を有するフィルムであり、リチウムイオンの電極間での移動の通路として機能すると同時に、正極負極間の絶縁を行う役割も果たしている。
【0005】
セパレータの微細孔形成技術としては、例えば、ポリプロピレン系樹脂にβ晶核剤を添加し、延伸により微細孔を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、特許文献1に開示されているβ晶核剤を使用して形成したセパレータは、電池内へのβ晶核剤の析出による電池のサイクル特性の低下、セパレータの寸法変動、粗大な孔(以下、この故障をピンホールと称す)の生成による不良などの課題が残されており、これらの諸問題を解決する技術の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−43485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、非水系二次電池のサイクル特性を向上させ、セパレータの寸法安定性に優れ、ピンホールの発生を抑制した非水系二次電池用セパレータ及びそれを用いた非水系二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.β晶核剤を含有するポリプロピレン樹脂を有する非水二次電池用セパレータにおいて、少なくとも1種の核形成補助成分を含有し、該ポリプロピレン樹脂(pp)、該β晶核剤(nu)及び該核形成補助成分(poor)の相溶性パラメータを、それぞれSP(pp)、SP(nu)、SP(poor)としたとき、下記式(1)で規定する条件を満し、該β晶核剤(nu)と該核形成補助成分(poor)の融点を、それぞれTm(nu)、Tm(poor)とした時に、下記式(2)で規定する条件を満し、かつ120℃における等温結晶化により形成させた球晶の最大平均粒径(d97.5)が、10.0μm未満であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
【0010】
式(1)
SP(nu)>SP(pp)>SP(poor)
式(2)
Tm(poor)<Tm(nu)
2.下記の評価方法に従って、非水系二次電池用セパレータを120℃で等温結晶化させて形成した前記球晶の粒径の標準偏差が平均粒径の20%以下であり、かつ該平均粒径が5.0μm以下であることを特徴とする前記1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【0011】
等温結晶化の評価方法:非水系二次電池用セパレータを、室温から10℃/minで220℃まで昇温して溶解した後、220℃において平行なガラス板上で厚み5μmの状態で5分間保持し、次いで−10℃/minで降温し、120℃で1時間等温結晶化させる。
【0012】
3.電解質溶液中で90℃、100時間処理した時の寸法変化率が5.0%以下であり、かつ該電解質溶液中への前記β晶核剤の溶出率が5.0%以下であることを特徴とする前記1または2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【0013】
4.前記1から3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータを用いたことを特徴とする非水系二次電池。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、非水系二次電池のサイクル特性が向上し、寸法安定性に優れ、かつピンホールの発生が抑制された非水二次電池用セパレータとそれを用いた非水系二次電池を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】等温結晶化の評価に用いる温度履歴を表す図である。
【図2】球晶の粒径分布を示すヒストグラムである。
【図3】実施例で用いる寸法安定性の評価を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0017】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、β晶核剤を含有するポリプロピレン樹脂を有する非水二次電池用セパレータにおいて、少なくとも1種の核形成補助成分を含有し、該ポリプロピレン樹脂(pp)、該β晶核剤(nu)及び該核形成補助成分(poor)の相溶性パラメータを、それぞれSP(pp)、SP(nu)、SP(poor)としたとき、SP(nu)>SP(pp)>SP(poor)の関係を満し、該β晶核剤(nu)と該核形成補助成分(poor)の融点を、それぞれTm(nu)、Tm(poor)とした時に、Tm(poor)<Tm(nu)との関係を満し、かつ120℃における等温結晶化により形成させた球晶の最大平均粒径(d97.5)が、10.0μm未満であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータにより、非水系二次電池のサイクル特性が向上し、寸法安定性に優れ、かつピンホールの発生が抑制された非水二次電池用セパレータを実現することができることを見出し、本発明に至った次第である。
【0018】
本発明の非水二次電池用セパレータ(以降、単に「本発明のセパレータ」、あるいは「本発明のセパレータフィルム」ともいう)は、少なくともポリプロピレン系樹脂(pp)、β晶核剤(nu)及び核形成補助成分(poor)を含有し、それぞれの溶解度パラメータをSP(pp)、SP(nu)、SP(poor)とした時、それぞれのSP値が、式(1)で規定する「SP(nu)>SP(pp)>SP(poor)」との条件を満たすことを特徴の1つとする。
【0019】
本発明において、式(1)で規定するように、核形成補助成分(poor)、ポリプロピレン系樹脂(pp)、β晶核剤(nu)の順に、それぞれのSPが高くなる関係とする技術的な意義は、以下の通りである。
【0020】
すなわち、ポリプロピレン系樹脂の結晶成長の均一化を達成するためには、成長起点となるβ晶核剤を均一形成することが重要な要件となる。β晶核剤の均一形成を達成するためには、溶融液中での核形成補助成分が貧溶媒の役割を果たすと考えられるため、β晶核剤(nu)のSP(nu)と、核形成補助成分(poor)のSP(poor)の差をより大きく設定することが極めて好ましい条件となると考えられる。
【0021】
更に、本発明のセパレータフィルムにおいて、第2の要件として、β晶核剤(nu)と核形成補助成分(poor)のそれぞれの融点をTm(nu)、Tm(poor)とした時に、式(2)で規定する「Tm(poor)<Tm(nu)」との条件を満たすことを特徴の1つとする。
【0022】
本発明に係る式(2)で規定する条件の技術的な意義は、β晶核剤(nu)が、ポリプロピレン系樹脂(pp)の溶融液中で結晶を形成する際に、核形成補助成分(poor)が融解している状態であり、β晶核剤(nu)の融点Tm(nu)が核形成補助成分(poor)の融点Tm(poor)より高い条件であることが、安定した結晶形成に有効に寄与することを意味している。
【0023】
本発明のセパレータフィルムにおいては、120℃における等温結晶化により形成させた球晶の最大平均粒径(d97.5)が、10.0μm未満であることを1つの特徴とする。
【0024】
はじめに、等温結晶化について、図1を用いて説明する。
【0025】
図1において、横軸は処理時間(分)を表し、縦軸は試料温度(℃)を表している。Tmは融解温度(℃)であり、Tcは等温結晶化温度(℃)である。セパレータフィルムは、Tmまで昇温することにより溶融液となり、一定時間保持することにより熱履歴を消去し、等温結晶化温度(Tc)まで降温して結晶化(結晶成長)する。
【0026】
本発明においては、具体的な等温結晶化の評価方法としては、非水系二次電池用セパレータを、室温から10℃/minで220℃(融解温度Tm(℃))まで昇温して溶解した後、220℃において平行なガラス板上で厚み5μmの状態で5分間保持し、次いで−10℃/minで降温し、120℃(等温結晶化温度Tc(℃))で1時間等温結晶化させる。
【0027】
本発明では、等温結晶化温度(Tc)が120℃において、等温結晶化により形成されるセパレータフィルムにおける球晶の最大平均粒径(d97.5)が、10.0μm未満であることを特徴とする。
【0028】
更には、上記具体的な評価方法に従って、120℃で等温結晶化させて形成した球晶粒径の標準偏差が平均粒径の20%以下であり、かつ平均粒径が5.0μm以下であることが好ましい。
【0029】
本発明でいう球晶の最大平均粒径(d97.5)とは、以下に定義する通りである。
【0030】
120℃での等温結晶化により形成したセパレータフィルムの球晶群について、偏光顕微鏡(BX51−P(オリンパス株式会社製))と顕微鏡用ホットステージ(形式:10033L(ジャパンハイテック株式会社製))とを用いて、図1に示すように室温からTmは融解温度(℃)まで昇温させた後、等温結晶化温度(℃)として120℃まで降温させ、120℃における等温結晶化による球晶について、偏光顕微鏡の視野を動かして100点の球晶の粒径(直径)を測定する。
【0031】
また、球晶粒径の標準偏差については、例えば、X線による小角散乱法により球晶の粒径分布を測定し、その測定データより求めることができる。
【0032】
次いで、図2に示すように、縦軸を粒径、縦軸を粒子数とする球晶粒子の粒径分布ヒストグラム1と、球晶粒子の分布関数dG=F(D)dDの積分カーブ2を作成する。
【0033】
本発明では、球晶粒子の分布関数dG=F(D)dDの積分値として、球晶粒子の全粒子数の0.975(97.5個数%)に等しい粒径を球晶の最大平均粒径(d97.5)と定義する。本発明では、極端に巨大なサイズの球晶によるノイズを除去するために、球晶粒子の全粒子数の95.0個数%〜100個数%の領域での平均値として、97.5個数%における粒径値を、球晶の最大平均粒径として求めた。
【0034】
本発明において、等温結晶化により形成される球晶の最大平均粒径(d97.5)が、10.0μm未満であることを特徴とするが、上記で規定する技術的な意義は、β晶核剤の均一結晶化の効果により、ポリプロピレン樹脂の結晶成長が均一化され、結果として粗大結晶が成長しない条件であることを意味している。ポリプロピレン樹脂の粗大結晶の成長を抑制するには、均一なβ晶核剤結晶の析出が有効であると考えている。
【0035】
更には、本発明のセパレータにおいては、核形成補助成分の含有量が、非水二次電池用セパレータ全質量の0.1質量%以上、40.0質量%以下であることが好ましい。
【0036】
更には、本発明のセパレータでは、電解質溶液中で90℃、100時間処理した時の寸法変化率が5.0%以下であり、かつ電解質溶液中へのβ晶核剤の溶出率が5.0%以下であることが好ましい。すなわち、溶出成分の変化量と寸法変化を同時に達成するためには、添加するβ晶核剤量を少なくする、β晶核剤の析出を迅速化し、微小なβ晶核剤を均一粒径になるよう結晶化させる、あるいは結晶化されないβ晶核剤成分量を減少させることにより達成できると考えている。
【0037】
以下、本発明の非水二次電池用セパレータ及び非水二次電池の構成要件の詳細について説明する。
【0038】
《非水二次電池用セパレータ》
本発明の非水二次電池用セパレータは、少なくともβ晶核剤を含有するポリプロピレン樹脂、と核形成補助成分を含有する。
【0039】
〔ポリプロピレン樹脂〕
本発明に適用可能なポリプロピレン樹脂としては、具体的には、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセンなどα−オレフィンとのランダム共重合体またはブロック共重合体などが挙げられる。この中でも、セパレータとしての機械的強度の観点からはホモポリプロピレンがより好適に使用される。
【0040】
また、適用するポリプロピレン樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が80〜99%の比率であることが好ましく、より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%である。アイソタクチックペンタッド分率が低すぎるとセパレータとしての機械的強度が低下するおそれがある。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
【0041】
本発明でいうアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対し、側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造あるいはその割合を意味する。メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠している。
【0042】
また、本発明に係るポリプロピレン樹脂としては、分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnが2.0〜10.0であることが好ましく、より好ましくは2.0〜8.0、更に好ましくは2.0〜6.0である。Mw/Mnが小さいほど分子量分布が狭いことを意味するが、Mw/Mnが2.0未満であると押出成形性が低下する等の問題が生じるほか、工業的に生産することも困難である。一方、Mw/Mnが10.0を超えた場合は低分子量成分が多くなり、セパレータとしての機械的強度が低下しやすい。Mw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって求めることができる。
【0043】
また、本発明に係るポリプロピレン樹脂のメルトフローレート(MFR)は、特に制限されるものではないが、通常、MFRは0.5〜15g/10分であることが好ましく、1.0〜10g/10分であることがより好ましい。MFRが0.5g/10分未満では、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く生産性が低下する。一方、15g/10分を超えるとフィルムの機械的強度が不足するため、実用上問題が生じやすい。MFRはJIS K7210に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定して求めることができる。
【0044】
なお、本発明に適用するポリプロピレン樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法等が挙げられる。
【0045】
〔β晶核剤〕
本発明においては、本発明に係るポリプロピレン樹脂は、β晶核剤を含有することを特徴とする。
【0046】
本発明で用いることのできるβ晶核剤としては、以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば、特に限定されるものではなく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
【0047】
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物、テトラオキサスピロ化合物、キナクリドン類、ナノスケールのサイズを有する酸化鉄、1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物、二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類、フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料、有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物、環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられるが、その中でも特に好ましいものを以下に示す。
【0048】
1)アミド化合物1
好ましいβ晶核剤としては、下記一般式(I)〜(III)で表されるアミド化合物を挙げることができる。
【0049】
一般式(I)
b1−NHCO−Ra1−CONH−Rc1
一般式(II)
b2−CONH−Ra2−CONH−Rc2
一般式(III)
b3−CONH−Ra3−NHCO−Rc3
上記一般式(I)〜(III)において、Ra1、Ra2、Ra3は各々炭素数が1〜28の置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、Rb1、Rc1、Rb2、Rc2、Rb3、Rc3は、各々炭素数が1〜18の置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
【0050】
上記一般式(I)、(II)、(III)で示されるアミド化合物の中でも、更には下記一般式(1)、(2)、(3)で表されるアミド化合物が、特に好ましいβ晶核剤の一態様として挙げられる。
【0051】
2)アミド化合物2
前記一般式(I)で表されるアミド化合物の中でも、下記一般式(1)で表されるアミド化合物が好ましい。
【0052】
一般式(1)
−NHCO−R−CONH−R
上記一般式(1)において、Rは炭素数が1〜28の飽和若しくは不飽和の脂肪族、脂環族または芳香族のジカルボン酸残基を表し、RおよびRは各々、炭素数が3〜18のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、下記式(a)で表される基、式(b)で表される基、式(c)で表される基、または式(d)で表される基を表す。
【0053】
【化1】

【0054】
上記式(a)〜式(d)において、R、Rは各々水素原子、または炭素数が1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を表し、R、Rは各々炭素数が1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキレン基を表す。
【0055】
また、前記一般式(II)で表されるアミド化合物の中でも、下記一般式(2)で表されるアミド化合物が好ましい。
【0056】
一般式(2)
−CONH−R−CONH−R10
上記一般式(2)において、Rは炭素数が1〜28の飽和若しくは不飽和の脂肪族、脂環族または芳香族のアミノ酸残基を表し、R、R10は各々炭素数が3〜12のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、下記式(e)で表される基、式(f)で表される基、式(g)で表される基、または式(h)で表される基を表す。
【0057】
【化2】

【0058】
上記式(e)〜式(h)において、R11は水素原子、炭素数が1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基またはフェニル基を表し、R12は炭素数が1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を表す。R13、R14は各々炭素数が1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。
【0059】
なお、Rで示されるアミノ酸残基におけるアミノ酸としては、天然のアミノ酸に限らず非天然のアミノ酸であってもよく、D−体またはL−体のいずれでもよく、α−、β−、γ−、ε−型のいずれのものでもよい。
【0060】
また、前記一般式(III)で表されるアミド化合物の中でも、下記一般式(3)で表されるアミド化合物が好ましい。
【0061】
一般式(3)
15−CONH−R16−NHCO−R17
上記一般式(3)において、R15は炭素数が1〜24の脂肪族ジアミン残基、脂環族ジアミン残基または芳香族ジアミノ酸残基を表し、R16、R17は各々炭素数が3〜12のシクロアルケニル基、シクロアルキル基、下記式(i)で表される基、式(j)で表される基、式(k)で表される基、または式(l)で表される基を表す。
【0062】
【化3】

【0063】
上記式(i)〜式(l)において、R18は水素原子、炭素数が1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、またはアルケニル基を表し、R19は炭素数が1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を表し、R20、R21は各々炭素数が1〜3の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基を表す。
【0064】
前記一般式(1)で表されるアミド化合物は、ジカルボン酸とモノアミンとをアミド化することにより得ることができる。
【0065】
上記ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジフェニルマロン酸、コハク酸、フェニルコハク酸、ジフェニルコハク酸、グルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,18−オクタデカン二酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジ酢酸、p−フェニレンジ酢酸、p−フェニレンジエタン酸、フタル酸、4−tert−ブチルフタル酸、イソフタル酸、5−tert−ブチルイソフタル酸、テレフタル酸、1,8−ナフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸、3,3′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビナフチルジカルボン酸、ビス(3−カルボキシフェニル)メタン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、3,3′−スルホニルジ安息香酸、4,4′−スルホニルジ安息香酸、3,3′−オキシジ安息香酸、4,4′−オキシジ安息香酸、3,3′−カルボニルジ安息香酸、4,4′−カルボニルジ安息香酸、3,3′−チオジ安息香酸、4,4′−チオジ安息香酸、4,4′−(p−フェニレンジオキシ)ジ安息香酸、4,4′−イソフタロイルジ安息香酸、4,4′−テレフタロイルジ安息香酸、ジチオサリチル酸等が挙げられる。
【0066】
上記モノアミンとしては、例えば、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、2−プロピルシクロヘキシルアミン、2−イソプロピルシクロヘキシルアミン、4−プロピルシクロヘキシルアミン、4−イソプロピルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−イソブチルシクロヘキシルアミン、4−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ペンチルシクロヘキシルアミン、4−イソペンチルシクロヘキシルアミン、4−sec−ペンチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ペンチルシクロヘキシルアミン、4−ヘキシルシクロヘキシルアミン、4−ヘプチルシクロヘキシルアミン、4−オクチルシクロヘキシルアミン、4−ノニルシクロヘキシルアミン、4−デシルシクロヘキシルアミン、4−ウンデシルシクロヘキシルアミン、4−ドデシルシクロヘキシルアミン、4−シクロヘキシルシクロヘキシルアミン、4−フェニルシクロヘキシルアミン、シクロヘプチルアミン、シクロドデシルアミン、シクロヘキシルメチルアミン、α−シクロヘキシルエチルアミン、β−シクロヘキシルエチルアミン、α−シクロヘキシルプロピルアミン、β−シクロヘキシルプロピルアミン、γ−シクロヘキシルプロピルアミン、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、p−エチルアニリン、o−プロピルアニリン、m−プロピルアニリン、p−プロピルアニリン、o−クミジン、m−クミジン、p−クミジン、o−tert−ブチルアニリン、p−n−ブチルアニリン、p−イソブチルアニリン、p−sec−ブチルアニリン、p−tert−ブチルアニリン、p−n−アミルアニリン、p−イソアミルアニリン、p−sec−アミルアニリン、p−tert−アミルアニリン、p−ヘキシルアニリン、p−ヘプチルアニリン、p−オクチルアニリン、p−ノニルアニリン、p−デシルアニリン、p−ウンデシルアニリン、p−ドデシルアニリン、p−シクロヘキシルアニリン、o−アミノジフェニル、m−アミノジフェニル、p−アミノジフェニル、p−アミノスチレン、ベンジルアミン、α−フェニルエチルアミン、β−フェニルエチルアミン、α−フェニルプロピルアミン、β−フェニルプロピルアミン、γ−フェニルプロピルアミン等が挙げられる。
【0067】
前記一般式(2)で表されるアミド化合物は、アミノ酸とモノカルボン酸およびモノアミンとをアミド化することにより調製することができる。
【0068】
上記アミノ酸としては、例えば、アミノ酢酸、α−アミノプロピオン酸、β−アミノプロピオン酸、α−アミノアクリル酸、α−アミノブタン酸、β−アミノブタン酸、γ−アミノブタン酸、α−アミノ−α−メチルブタン酸、γ−アミノ−α−メチレンブタン酸、α−アミノイソブタン酸、β−アミノイソブタン酸、α−アミノ−n−ペンタン酸、δ−アミノ−n−ペンタン酸、β−アミノクロトン酸、α−アミノ−β−メチルペンタン酸、α−アミノイソペンタン酸、2−アミノ−4−ペンテノイック酸、α−アミノ−n−カプロン酸、6−アミノカプロン酸、α−アミノイソカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、α−アミノ−n−カプリル酸、8−アミノカプリル酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、1−アミノシクロヘキサンカルボン酸、2−アミノシクロヘキサンカルボン酸、3−アミノシクロヘキサンカルボン酸、4−アミノシクロヘキサンカルボン酸、p−アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸、2−アミノ−2−ノルボルナンカルボン酸、α−アミノフェニル酢酸、α−アミノ−β−フェニルプロピオン酸、2−アミノ−2−フェニルプロピオン酸、3−アミノ−3−フェニルプロピオン酸、α−アミノ桂皮酸、2−アミノ−4−フェニルブタン酸、4−アミノ−3−フェニルブタン酸、アントラニル酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、2−アミノ−4−メチル安息香酸、2−アミノ−6−メチル安息香酸、3−アミノ−4−メチル安息香酸、2−アミノ−3−メチル安息香酸、2−アミノ−5−メチル安息香酸、4−アミノ−2−メチル安息香酸、4−アミノ−3−メチル安息香酸、2−アミノ−3−メトキシ安息香酸、3−アミノ−4−メトキシ安息香酸、4−アミノ−2−メトキシ安息香酸、4−アミノ−3−メトキシ安息香酸、2−アミノ−4,5−ジメトキシ安息香酸、o−アミノフェニル酢酸、m−アミノフェニル酢酸、p−アミノフェニル酢酸、4−(4−アミノフェニル)ブタン酸、4−アミノメチル安息香酸、4−アミノメチルフェニル酢酸、o−アミノ桂皮酸、m−アミノ桂皮酸、p−アミノ桂皮酸、p−アミノ馬尿酸、2−アミノ−1−ナフトエ酸、3−アミノ−1−ナフトエ酸、4−アミノ−1−ナフトエ酸、5−アミノ−1−ナフトエ酸、6−アミノ−1−ナフトエ酸、7−アミノ−1−ナフトエ酸、8−アミノ−1−ナフトエ酸、1−アミノ−2−ナフトエ酸、3−アミノ−2−ナフトエ酸、4−アミノ−2−ナフトエ酸、5−アミノ−2−ナフトエ酸、6−アミノ−2−ナフトエ酸、7−アミノ−2−ナフトエ酸、8−アミノ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
【0069】
また、上記モノカルボン酸としては、例えば、シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、1−メチルシクロペンタンカルボン酸、2−メチルシクロペンタンカルボン酸、3−メチルシクロペンタンカルボン酸、1−フェニルシクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、1−メチルシクロヘキサンカルボン酸、2−メチルシクロヘキサンカルボン酸、3−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−メチルシクロヘキサンカルボン酸、4−プロピルシクロヘキサンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、4−ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、4−フェニルシクロヘキサンカルボン酸、1−フェニルシクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、4−ブチルシクロヘキセンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、1−シクロヘプテンカルボン酸、1−メチルシクロヘプタンカルボン酸、4−メチルシクロヘプタンカルボン酸、シクロヘキシル酢酸、安息香酸、o−メチル−安息香酸、m−メチル−安息香酸、p−メチル−安息香酸、p−エチル−安息香酸、p−プロピル−安息香酸、p−ブチル安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸、p−ペンチル安息香酸、p−ヘキシル安息香酸、o−フェニル安息香酸、p−フェニル安息香酸、p−シクロヘキシル安息香酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオン酸、フェニルブタン酸等が挙げられる。
【0070】
また、上記モノアミンとしては、前述の一般式(1)で表されるアミド化合物の原料であるモノアミンと同様のものを挙げることができる。
【0071】
前記一般式(3)で示されるアミド化合物は、ジアミンとモノカルボン酸とをアミド化することにより調製することができる。
【0072】
上記ジアミンとしては、例えば、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,3−ジアミノペンタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4′−ジアミノ−3,3′−ジメチルジシクロヘキシルメタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルエ−テル、4,4′−ジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。
【0073】
上記モノカルボン酸としては、前記一般式(2)で表されるアミド化合物の原料であるモノカルボン酸と同様のものが挙げられる。
【0074】
3)テトラオキサスピロ化合物
本発明に係るβ晶核剤の他の態様として、下記一般式(4)で表されるテトラオキサスピロ化合物が挙げられる。
【0075】
【化4】

【0076】
上記一般式(4)において、R41、R42は各々水素原子または炭素数が1〜18の置換若しくは無置換の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表す。また、R41、R42および窒素原子が共同して含窒素複素環基を形成してもよく、特に好ましくは、R41、R42は各々の端部で相互に結合し、共同して炭素数2〜6のアルキレン基を表す。
【0077】
一般式(4)で表されるテトラオキサスピロ化合物の具体的を例示すると、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス{4−[N−(4−t−ブチルシクロヘキシル)カルバモイル]フェニル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス{4−[N−(2,4−ジ−t−ブチルシクロヘキシル)カルバモイル]フェニル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス{4−[N−(1−アダマンチル)カルバモイル]フェニル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N−フェニルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス{4−[N−(4−t−ブチルフェニル)カルバモイル]フェニル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス{4−[N−(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)カルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス{4−[N−(1−ナフチル)カルバモイル]フェニル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N−n−ブチルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N−n−ヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N−n−ドデシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N−n−オクタデシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス(4−カルバモイルフェニル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N,N−ジシクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N,N−ジフェニルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N−n−ブチル−N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(N−n−ブチル−N−フェニルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(1−ピロリジニルカルボニル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[4−(1−ピペリジニルカルボニル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等を挙げることができる。
【0078】
4)キナクリドン類
本発明に適用可能なβ晶核剤の他の態様としては、例えば、キナクリドン、ジメチルキナクリドンおよびジメトキシキナクリドンなどのキナクリドン型化合物(例えば、キナクリドンキノン、5,12−ジヒドロ(2,3b)アクリジン−7−1,4−ジオンとキノ(2,3b)アクリジン−6,7,13−1,4−(5H,12H)−テトロンの混合結晶)、およびジメトキシキナクリドンキノンなどのキナクリドンキノン型化合物(例えば、ジヒドロキナクリドン、ジメトキシヒドロキナクリドンおよびジベンゾジヒドロキナクリドンなどのジヒドロキナクリドン型化合物)が挙げられる。
【0079】
5)金属塩化合物
本発明に適用可能なβ晶核剤の他の態様としては、例えば、ピメリン酸のカルシウム塩およびスベリン酸のカルシウム塩などの周期律表のIIa族からの金属のジカルボン酸塩、ならびにジカルボン酸と周期律表のIIa族からの金属塩の混合物が挙げられる。
【0080】
上記化合物の中でも、周期律表のIIa族から選ばれる金属と、下記一般式(5)で表されるイミド酸との塩が特に好ましい。
【0081】
【化5】

【0082】
上記一般式(5)において、nは1〜12の自然数であり、R51は水素原子、カルボキシル基、または炭素数が1〜12の置換若しくは無置換の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子、カルボキシル基、炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基である。
【0083】
Xは、炭素数が1〜12の置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、好ましくは置換若しくは無置換の炭素数が6〜12の二価の芳香族炭化水素基であり、より好ましくは炭素数が1〜12のアルキル基、炭素数が5〜8のシクロアルキル基または炭素数が6〜12のアリール基で置換されていてもよい炭素数が6〜12の二価の芳香族炭化水素基を表す。
【0084】
周期律表のIIa族から選ばれる金属と一般式(5)で表されるイミド酸との塩としては、例えば、フタロイルグリシン、ヘキサヒドロフタロイルグリシン、N−ナフタロイルアラニンまたはN−4−メチルフタロイルグリシンのカルシウム塩等が例示できる。
【0085】
6)リン化合物類
本発明において、他の好ましいβ晶核剤の態様としては、下記一般式(6)で表される環状リン化合物と、脂肪酸マグネシウム、脂肪族リン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、下記一般式(7)で表される環状リン化合物のマグネシウム塩及び下記一般式(8)で表されるマグネシウムホスフィネート系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種のマグネシウム化合物とからなる組成物、または、下記一般式(9)で表される環状リン化合物と、前記一般式(8)で示されるマグネシウムホスフィネート系化合物、硫酸マグネシウムおよびタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種のマグネシウム化合物とからなる組成物が挙げられる。
【0086】
環状リン化合物は、下記一般式(6)で表される。
【0087】
【化6】

【0088】
上記一般式(6)において、Ar、Arは各々置換若しくは無置換の炭素数が6〜12の二価の芳香族炭化水素基または置換若しくは無置換の炭素数が1〜18の炭化水素基で置換されていてもよいアリーレン基を表し、好ましくはアリーレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキルアリーレン基、アリールアリーレン基またはアラルキルアリーレン基を表す。
【0089】
環状リン化合物のマグネシウム塩は、下記一般式(7)で表される。
【0090】
【化7】

【0091】
上記一般式(7)において、Arは置換若しくは無置換の炭素数が6〜12の二価の芳香族炭化水素基または置換若しくは無置換の炭素数が1〜18の炭化水素基で置換されていてもよいアリーレン基を表し、より好ましくはアリーレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキルアリーレン基、アリールアリーレン基またはアラルキルアリーレン基を表す。
【0092】
マグネシウムホスフィネート系化合物は、下記一般式(8)で表される。
【0093】
【化8】

【0094】
上記一般式(8)において、Ar、Arは各々置換若しくは無置換の炭素数が6〜12の二価の芳香族炭化水素基または置換若しくは無置換の炭素数が1〜18の炭化水素基で置換されていてもよいアリーレン基を表し、好ましくはアリーレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキルアリーレン基、アリールアリーレン基またはアラルキルアリーレン基を表す。
【0095】
一般式(9)で表される環状リン化合物は、
【0096】
【化9】

【0097】
で表される。
【0098】
上記一般式(9)において、Ar、Arは各々置換若しくは無置換の炭素数が6〜12の二価の芳香族炭化水素基または置換若しくは無置換の炭素数が1〜18の炭化水素基で置換されていてもよいアリーレン基を表し、好ましくはアリーレン基、アルキルアリーレン基、シクロアルキルアリーレン基、アリールアリーレン基またはアラルキルアリーレン基を表す。
【0099】
前記一般式(6)で表される環状リン化合物としては、例えば、10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、1−メチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−メチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−メチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、7−メチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−メチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジメチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリメチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−エチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−エチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−エチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジエチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリエチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−i−プロピル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−i−プロピル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−i−プロピル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−i−プロピル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−i−プロピル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−s−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−s−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−s−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、1,8−ジ−s−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−s−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、1,6−ジ−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6−ジ−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,7−ジ−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,8−ジ−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−t−アミル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−アミル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−t−アミル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−t−アミル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−t−アミル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−t−オクチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−オクチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−t−オクチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−t−オクチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−t−オクチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−シクロヘキシル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−シクロヘキシル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−シクロヘキシル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−シクロヘキシル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−シクロヘキシル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−フェニル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−(α−メチルベンジル)−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−(α−メチルベンジル)−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−(α−メチルベンジル)−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ(α−メチルベンジル)−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ(α−メチルベンジル)−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6−ジ(α,α−ジメチルベンジル)−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−ブチル−8−メチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−ベンジル−8−メチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−シクロヘキシル−8−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−ベンジル−8−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−(α−メチルベンジル)−8−t−ブチル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−ブチル−8−シクロヘキシル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−ベンジル−8−シクロヘキシル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−ブチル−8−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−シクロヘキシル−8−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6−ジ−t−ブチル−8−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドおよび2,6−ジシクロヘキシル−8−ベンジル−10−ヒドロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドなどを例示できる。
【0100】
これら環状リン化合物は、単独あるいは2種以上の環状リン化合物を併用して用いることができる。
【0101】
本発明で用いられるβ晶核剤において、前記一般式(6)で表される環状リン化合物と併用するマグネシウム化合物としては、例えば、酢酸マグネシウム、プロピオン酸マグネシウム、n−酪酸マグネシウム、i−酪酸マグネシウム、n−吉草酸マグネシウム、i−吉草酸マグネシウム、n−ヘキサン酸マグネシウム、n−オクタン酸マグネシウム、2−エチルヘキサン酸マグネシウム、デカン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリストレイン酸マグネシウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミトレイン酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸マグネシウム、リノール酸マグネシウム、リノレン酸マグネシウム、アラキン酸マグネシウム、ベヘン酸マグネシウム、エルカ酸マグネシウム、リグノセリン酸マグネシウム、セロチン酸マグネシウム、モンタン酸マグネシウム、メリシン酸マグネシウム、12−ヒドロキシオクタデカン酸マグネシウム、リシノール酸マグネシウム、セレブロン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)ヘキシルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)オクチルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)2−エチルヘキシルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)デシルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)ラウリルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)ミリスチルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)パルミチルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)ステアリルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)オレイルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)リノールリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)リノリルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)ドコシルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)エルシルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)テトラコシルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)ヘキサコシルリン酸マグネシウム、(モノ,ジミックスド)オクタコシルリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムが挙げられる。
【0102】
本発明で用いられるβ晶核剤において、前記一般式(6)で表される環状リン化合物と併用するマグネシウム化合物としては、一般式(6)で表される環状リン化合物として例示した前記化合物のマグネシウム塩、例えば、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−メチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(6−メチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−メチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−5′−メチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−メチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジメチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリメチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−エチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−エチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−エチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジエチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリエチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−i−プロピル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−i−プロピル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−i−プロピル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジ−i−プロピル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリ−i−プロピル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−s−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−s−ブチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−s−ブチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(6,6′−ジ−s−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリ−s−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−t−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−t−ブチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−t−ブチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,6′−ジ−t−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′−ジ−t−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,5′−ジ−t−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(6,4′−ジ−t−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジ−t−ブチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリ−t−ブチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−t−アミル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−t−アミル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−t−アミル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジ−t−アミル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリ−t−アミル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−t−オクチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−t−オクチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−t−オクチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジ−t−オクチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリ−t−オクチル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−シクロヘキシル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−シクロヘキシル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−シクロヘキシル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジ−シクロヘキシル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリ−シクロヘキシル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−フェニル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5−ベンジル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−ベンジル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−6′−ベンジル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジ−ベンジル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′,6′−トリ−ベンジル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス[5−(α−メチルベンジル)−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート]、マグネシウム−ビス[1′−ヒドロキシ−4′−(α−メチルベンジル)−2,2′−ビフェニレンホスフィネート]、マグネシウム−ビス[1′−ヒドロキシ−6′−(α−メチルベンジル)−2,2′−ビフェニレンホスフィネート]、マグネシウム−ビス[1′−ヒドロキシ−4′,6′−ジ(α−メチルベンジル)−2,2′−ビフェニレンホスフィネート]、マグネシウム−ビス[5,4′,6′−トリ(α−メチルベンジル)−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート]、マグネシウム−ビス[5,4′−ジ(α,α−ジメチルベンジル)−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート]、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−t−ブチル−6′−メチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−ベンジル−6′−メチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−シクロヘキシル−6′−t−ブチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−ベンジル−6′−t−ブチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス[1′−ヒドロキシ−4′−(α−メチルベンジル)−6′−t−ブチル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート]、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−t−ブチル−6′−シクロヘキシル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−ベンジル−6′−シクロヘキシル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−t−ブチル−6′−ベンジル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(1′−ヒドロキシ−4′−シクロヘキシル−6′−ベンジル−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)、マグネシウム−ビス(5,4′−ジ−t−ブチル−6′−ベンジル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)およびマグネシウム−ビス(5,4′−ジシクロヘキシル−6′−ベンジル−1′−ヒドロキシ−2,2′−ビフェニレンホスフィネート)などを例示できる。
【0103】
これらマグネシウム化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上のマグネシウム化合物を併用して用いることもできる。
【0104】
前記一般式(6)で表される環状リン化合物と前記マグネシウム化合物との混合物の質量比率は特に限定されないが、通常環状リン化合物1質量部に対してマグネシウム化合物を0.01〜100質量部、好ましくは0.1〜10質量部の比率である。
【0105】
本発明で用いられるβ晶核剤において、前記一般式(9)で表される環状リン化合物としては、例えば、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、1−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、7−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジメチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリメチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−エチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−エチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−エチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジエチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリエチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−i−プロピル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−i−プロピル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−i−プロピル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−i−プロピル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−i−プロピル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−s−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−s−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−s−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、1,8−ジ−s−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−s−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、1,6−ジ−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6−ジ−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,7−ジ−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,8−ジ−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−t−アミル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−アミル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−t−アミル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−t−アミル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−t−アミル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−t−オクチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−オクチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−t−オクチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−t−オクチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−t−オクチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−シクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−シクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−シクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−シクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−シクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−フェニル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−(α−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−(α−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、8−(α−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6,8−ジ(α−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6,8−トリ(α−メチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6−ジ(α,α−ジメチルベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−ブチル−8−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−ベンジル−8−メチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−シクロヘキシル−8−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−ベンジル−8−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−(α−メチルベンジル)−8−t−ブチル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−ブチル−8−シクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−ベンジル−8−シクロヘキシル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−t−ブチル−8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、6−シクロヘキシル−8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,6−ジ−t−ブチル−8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドおよび2,6−ジシクロヘキシル−8−ベンジル−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイドなどを挙げることができる。
【0106】
これら環状リン化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上の環状リン化合物を併用して用いることもできる。
【0107】
本発明で用いられるβ晶核剤において、前記一般式(9)で表される環状リン化合物と併用するマグネシウム化合物としては、前述の各種マグネシウム系化合物、硫酸マグネシウム、塩基性硫酸マグネシウム(マグネシウムオキシサルフェート)、タルクなどを挙げることができる。これらマグネシウム化合物は、単独で使用しても、あるいは2種以上のマグネシウム化合物を併用して用いることもできる。
【0108】
前記一般式(9)で表される環状リン化合物とマグネシウム化合物との混合物の質量比率は特に限定されないが、通常環状リン化合物1質量部に対してマグネシウム化合物を0.01〜100質量部、好ましくは0.1〜10質量部の比率である。
【0109】
本発明において、「置換されていてもよい二価の炭化水素基」における「二価の炭化水素基」としては、飽和の直鎖状の二価の炭化水素基、不飽和の直鎖状の二価の炭化水素基、飽和の環状の二価の炭化水素基または不飽和の環状の二価の炭化水素基が挙げられる。飽和の直鎖状の二価の炭化水素基としては、直鎖状のアルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル等のC1−10アルキル基等)からその末端の水素原子を1個取り除いた基が挙げられ、具体的には、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレンなどの直鎖状のC1−6アルキレン基などが挙げられる。
【0110】
不飽和の直鎖状の二価の炭化水素基としては、直鎖状のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル、1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル等のC2−6アルケニル基等)または直鎖状のアルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等のC2−6アルキニル基等)からその末端の水素原子を1個取り除いた基が挙げられ、具体的には、例えば、直鎖状のC2−6アルケニレン基またはC2−6アルキニレン基などが挙げられる。
【0111】
飽和の環状の二価の炭化水素基としては、シクロアルキル基(例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル等のC3−9シクロアルキル基等)等の任意の位置(好ましくは、結合手を有する炭素原子と異なる炭素原子、さらに好ましくは、最も離れた位置の炭素原子)の水素原子を1個取り除いた基(例えば、C5−7のシクロアルキレン基など)が挙げられる。
【0112】
不飽和の環状の二価の炭化水素基としては、例えば、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、1−シクロブテン−1−イル、1−シクロペンテン−1−イル等のC3−6シクロアルケニル基等)、シクロアルカンジエニル基(例えば、2,4−シクロペンタンジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサンジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサンジエン−1−イル等のC4−6シクロアルカンジエニル基等)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル等のC6−12アリール基等)等の任意の位置(好ましくは、結合手を有する炭素原子と異なる炭素原子、さらに好ましくは最も離れた位置の炭素原子)の水素原子を1個取り除いた基(例えばC6−12アリレーンなど)が挙げられる。
【0113】
「置換されていてもよい二価の炭化水素基」の置換基としては、例えば、水酸基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)、ニトロ基、シアノ基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよい低級アルキル基、1ないし5個のハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)で置換されていてもよい低級アルコキシ基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基等が挙げられる。これらの任意の置換基は化学的に許容される位置に1ないし3個(好ましくは1ないし2個)置換されていてよい。
【0114】
本発明でいう「置換されていてもよい炭化水素基」の炭化水素基としては、例えば、脂肪族鎖式炭化水素基、脂環式炭化水素基、アリール基およびアラルキル基等が挙げられる。
【0115】
炭化水素基の例としての「脂肪族鎖式炭化水素基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−メチルプロピル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルプロピル、2−エチルブチル、n−ヘプチル、1−メチルヘプチル、1−エチルヘキシル、n−オクチル、1−メチルヘプチル、ノニル等のC1−10アルキル基(好ましくはC1−6アルキル等)等が挙げられる。
【0116】
アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニル、2−メチルアリル、1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、2−エチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル等のC2−6アルケニル基等が挙げられる。
【0117】
アルキニル基としては、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル等のC2−6アルキニル基が挙げられる。
【0118】
炭化水素基の例としての「脂環式炭化水素基」としては、例えば、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカンジエニル基等の飽和または不飽和の脂環式炭化水素基が挙げられる。
【0119】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル等のC3−9シクロアルキル等が挙げられる。
【0120】
シクロアルケニル基としては、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、1−シクロブテン−1−イル、1−シクロペンテン−1−イル等のC3−6シクロアルケニル基等が挙げられる。
【0121】
シクロアルカンジエニル基としては、例えば2,4−シクロペンタンジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサンジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサンジエン−1−イル等のC4−6シクロアルカンジエニル基等が挙げられる。
【0122】
炭化水素基の例としての「アリール基」としては、単環式または縮合多環式芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、アセナフチレニル等のC6−14アリール基等が挙げられる。
【0123】
炭化水素基の例としての「アラルキル基」としては、例えば、ベンジル、フェネチル、ジフェニルメチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル、2,2−ジフェニルエチル、3−フェニルプロピル、4−フェニルブチル、5−フェニルペンチル、2−ビフェニリルメチル、3−ビフェニリルメチル、4−ビフェニリルメチル等のC7−19アラルキル基等が挙げられる。
【0124】
「置換されていてもよい炭化水素基」の置換基としては、例えば、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルケニル基、置換されていてもよいアルキニル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいシクロアルキル基もしくはシクロアルケニル基、置換されていてもよい複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいイミドイル基、置換されていてもよいアミジノ基、置換されていてもよい水酸基、置換されていてもよいチオール基、エステル化されていてもよいカルボキシル基、置換されていてもよいカルバモイル基、置換されていてもよいチオカルバモイル基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等、好ましくは塩素、臭素等)、シアノ基、ニトロ基、スルホン酸由来のアシル基、カルボン酸由来のアシル基等が挙げられる。これらの任意の置換基は化学的に許容される位置に1ないし3個(好ましくは1ないし2個)置換されていてよい。
【0125】
これら特に好ましいβ晶核剤の具体例としては新日本理化社製β晶核剤『エヌジェスターNU−100』、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン『Bepol B−022SP』、Borealis社製ポリプロピレン『Beta(β)−PP BE60−7032』、mayzo社製ポリプロピレン『BNX BETAPP−LN』などが挙げられる。
【0126】
〔核形成補助成分〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいては、β晶核剤を含有するポリプロピレン樹脂と共に、核形成補助成分を含有することを特徴とする。
【0127】
本発明でいう核形成補助成分とは、核の形成及び成長をサポートする機能を備えた化合物で、電解液への溶出を生じることなく、かつ電池反応を阻害しない化合物で、かつ本発明で規定する式(1)及び式(2)を満たすSP値及び融点を備えた化合物であれば、特に制限はないが、ポリエチレン等に代表される低分子ポリマーを用いることが好ましい。
【0128】
〔その他添加剤〕
本発明の非水系二次電池用セパレータが含有することができる他の添加剤について説明する。
【0129】
本発明の非水系二次電池用セパレータが含有することができる他の添加剤としては、通常、樹脂組成物に配合される一般的な添加剤が挙げられる。
【0130】
添加剤としては、成形加工性、生産性および非水系二次電池用セパレータの諸物性を改良や調整する目的で添加される、端部などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。
【0131】
具体的には、例えば、「プラスチックス配合剤」のP154〜P158に記載されている酸化防止剤、P178〜P182に記載されている紫外線吸収剤、P271〜P275に記載されている帯電防止剤としての界面活性剤、P283〜294に記載されている滑剤などが挙げられる。
【0132】
《非水系二次電池用セパレータの製造方法》
次に、本発明の非水系二次電池用セパレータの製造方法について説明するが、本発明においては、ここで説明する製造方法により製造される非水系二次電池用セパレータのみに限定されるものではない。
【0133】
〔製膜全体〕
本発明の非水系二次電池用セパレータは、ポリプロピレン系樹脂とβ晶核剤及び核形成補助成分とを混練して、β晶を有する樹脂組成物からなる膜状物を延伸し、厚み方向に連通性を有する微細孔を多数形成することにより得られる。
【0134】
〔原材料のペレット化工程〕
本発明のセパレータの製造方法においては、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、核形成補助成分および所望によりその他添加物等の原材料を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーもしくはタンブラー型ミキサー等を用いて、または袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、ペレット化する。均一核形成のために、β晶核剤が混合融液となる条件(温度、剪断力)でペレットすることが好ましい。
【0135】
さらなる均一核形成のために、β晶核剤とポリプロピレン樹脂及び核形成補助成分を溶媒に溶解し、例えば、インクジェット記録ヘッド等より微小液滴を形成噴霧し、微小液滴のまま溶媒を乾燥除去することにより、微小かつ均一なβ晶核剤の結晶を形成したマスターペレットを作製する方法が好ましい。
【0136】
〔製膜工程〕
膜状物(フィルム状物)の形成方法は、特に制限されるものではなく、公知の製膜方法を適用することができ、例えば、押出機を用いて本発明に係るβ晶核剤、ポリプロピレン樹脂及び核形成補助成分を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。また、チューブラー法により製造した円筒膜状物を切り開いて、平面状フィルムとする方法も適用できる。
【0137】
Tダイを使用する場合、ギャップは最終的に必要な非水系二次電池用セパレータの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm以上では生産速度という観点からこのましく、また3.0mmより小さいと、ドラフト率が小さく出来るので生産安定性の観点から好ましい。
【0138】
押出成形において、押出加工温度は樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね150〜300℃が好ましく、180〜280℃の範囲であることが更に好ましい。150℃以上の場合、樹脂溶融粘度が十分に低く成形性に優れて好ましい。一方、300℃以下では樹脂組成物の低分子量化を抑制できる。
【0139】
キャストロールによる冷却固化温度により、延伸前の膜状物中のβ晶を生成・成長させ、膜状物中のβ晶比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は、好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで冷却固化させた膜状物中のβ晶比率を十分に増加させることができ好ましい。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ巻きつきを抑制し、効率よく膜状物化することが可能であるので好ましい。
【0140】
前記温度範囲にキャストロールを設定することで、得られる延伸前の膜状物のβ晶比率は30〜100%に調整することが好ましい。40〜100%がより好ましく、50〜100%が更に好ましく、60〜100%が特に好ましい。延伸前の膜状物のβ晶比率を30%以上とすることで、その後の延伸操作により多孔化が行われやすく、透気特性が優れるフィルムを得ることができる。
【0141】
延伸前の膜状物のβ晶比率は、示差走査型熱量計(DSC)を用いて、該膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリプロピレンのα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
【0142】
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
〔延伸〕
得られた膜状物の延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点からフィルム搬送(MD)方向及びフィルム搬送方向に対して垂直(TD)方向への逐次二軸延伸が好ましい。
【0143】
逐次二軸延伸を用いる場合、延伸温度は用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等によって適時選択する必要があるが、多孔構造の制御が容易であり、機械強度や収縮率など他の諸物性とのバランスがとりやすい。
【0144】
縦延伸での延伸温度は概ね20℃〜130℃、好ましくは40℃〜120℃、更に好ましくは60℃〜110℃の範囲で制御される。また、縦延伸倍率は好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。一方、横延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜150℃、更に好ましくは120〜140℃である。また、横延伸倍率は好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜8倍、更に好ましくは4〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12000%/分が好ましく、1500〜10000%/分がより好ましく、2500〜8000%/分であることが更に好ましい。
【0145】
〔緩和〕
このようにして得られた多孔性フィルムは、寸法安定性の改良等を目的として好ましくは100℃〜150℃程度、さらに好ましくは110℃〜140℃程度の温度で熱処理を行う。熱処理工程中には、必要に応じて1〜30%の緩和処理を施しても良い。この熱処理後均一に冷却して巻き取ることにより、多孔性フィルムが得られる。
【0146】
《非水系二次電池用セパレータの各特性値》
本発明の非水系二次電池用セパレータが備える望ましい特性値を、以下に説明するが、本発明はこれらの特性値に限定されるものではない。
【0147】
〔膜厚〕
本発明のセパレータの厚みは、非水系二次電池の体積エネルギー密度が上がり、内部抵抗が小さくなるという点で、機械的強度が保たれる限り薄くした方が好ましく、通常5〜200μm程度、好ましくは5〜40μm程度である。セパレータの膜厚分布としては、平均膜厚の変動幅が5%以内であることが好ましく、3%以内であることが更に好ましい。
【0148】
〔ガーレー透気度〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいては、ガーレー透気度が10秒/100ml〜600秒/100mlであることが好ましい。ガーレー透気度が10秒/100ml未満では空孔率が高くなりすぎる、もしくは孔径が大きくなりすぎてしまい、強度が十分保てなくなる場合がある、または、セパレータとして用いたとき電池の寿命が短くなる場合がある。一方、600秒/100mlを超えると、セパレータとして用いた際の特性が不十分となる。より好ましくは10秒/100ml〜300秒/100mlであり、さらに好ましくは10秒/100ml〜200秒/100mlであることが、セパレータ特性の観点から好ましい。
【0149】
本発明でいうガーレー透気度とは、シートの空気透過率の指標の1つであり、JIS P 8117(1998)に示されるものである。ガーレー値(透気度)の測定には、市販の東洋精機製 ガーレーデンソメータを用いて測定することができる。
【0150】
ガーレー透気度は、フィルムを構成するポリプロピレンに含有せしめるβ晶核剤もしくはβ晶核剤添加ポリプロピレンや、核形成補助成分の添加量のバランス、フィラーの粒径やその添加量、製造工程においては、キャスト工程における溶融ポリマーを固化させる際の結晶化条件(金属ドラム温度、金属ドラムの周速、得られる未延伸シートの厚みなど)や延伸工程における延伸条件(延伸方向(縦もしくは横)、延伸方式(縦もしくは横の一軸延伸、縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸、同時二軸延伸、二軸延伸後の再延伸など)、延伸倍率、延伸速度、延伸温度など)などにより制御することができる。
【0151】
〔孔径および孔径分布〕
本発明の非水系二次電池用セパレータに形成される多孔質膜の孔径は、最大孔径が0.01〜3.0μmの範囲内であることが好ましく、0.01〜0.5μmの範囲内であることがより好ましい。最大孔径が0.01μm未満では、電解液の拡散が不十分となる傾向がみられ、非水系二次電池の内部抵抗が高くなるおそれがある。また、最大孔径が3.0μmを超えると、例えば、リチウムイオン二次電池のセパレータとして用いた場合に、リチウムデンドライド(電池反応時に発生成長するリチウムの針状結晶)の発生を抑制することが困難となり、短絡が生じるおそれがある。
【0152】
平均孔径は、好ましくは0.01〜0.1μm、より好ましくは0.03〜0.1μmである。
【0153】
ここで、セパレータに形成されている細孔の平均値(平均孔径)は、例えばバブルポイント法(JIS K 3832、あるいはJIS B 8356−2)によって測定することができる。バブルポイント法に基づく細孔径(平均細孔径や細孔径分布)の測定は、例えば、市販される日本ベル株式会社製のPorometer3G装置を用いて容易に行うことができる。
【0154】
〔気孔率〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、多孔膜の気孔率としては40〜70%が好ましく、より好ましくは40〜65%、更に好ましくは40〜60%である。気孔率が40%以上であれば、透過性能に優れる傾向にあり、70%以下であれば、機械的強度に優れ、スリット時の捲回性が良好となる傾向にある。
【0155】
気孔率の測定には、ASTM D−2873に準じて、例えばヘキサデカン溶媒に試料を浸漬前後の質量の測定と試料の体積から測定することができる。
【0156】
〔密度特性〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、セパレータに使用される素材の密度は、JIS K−7112に準じて濃度勾配管中で試料の位置により測定して求めることができる。
【0157】
〔刺突強度〕
本発明の非水二次電池用セパレータの膜突刺強度としては、電極間の短絡による電池不良を改善する観点から、好ましくは2〜10N、より好ましくは3〜10Nである。刺突強度は、ASTM D3763に準じて測定することができる。
【0158】
〔破断強度、弾性率特性〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、破断強度としては電池の組立の観点からMD方向、TD方向ともに好ましくは500kg/cm以上である。電池組み立て時のセパレータの裂けや蛇行などの観点から、MD方向とTD方向の破断強度の比は0.1以上8.0以下が好ましい。より好ましくは0.1以上5.0以下、さらに好ましくは0.5以上2.0以下である。
【0159】
また、本発明の非水系二次電池用セパレータの弾性率は、好ましくは10MPa以上、600MPa以下であり、より好ましくは20MPa以上、550MPa以下であり、さらに好ましくは40MPa以上、500MPa以下の範囲である。弾性率が10MPa以上であれば、電池用セパレータとして使用した際に、電極と共に捲回する際等に破膜等の不具合が起こり難く捲回性に優れ、600MPa以下であれば、捲回後に巻締まり等の不具合が起こり難いので好ましい。
【0160】
破断強度及び弾性率は、JIS K−7127に準拠した方法、例えば、23℃、55%RHの環境下で24時間調湿し、市販の引っ張り試験器、例えば、オリエンテック(株)社製のテンシロンRTA−100を使用し、試験片の形状は1号形試験片で、試験速度は10mm/分の条件で測定することにより求めることができる。
【0161】
〔熱収縮率〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、熱収縮率としては、90℃条件において、MD方向、TD方向ともに0%以上、5%以下であることが好ましい。
【0162】
近年のリチウムイオン電池の高容量化に伴い、150℃条件においては、MD方向、TD方向ともに0%以上、15%以下であることがさらに好ましく、より好ましくは0%以上、10%以下であり、さらに好ましくは0%以上、5%以下である。熱収縮率がMD方向、TD方向ともに15%以下であると、電池の異常発熱時の多層多孔膜の破膜が抑制され、短絡を防止する観点から好ましい。
【0163】
〔直線性〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、セパレータ用多孔膜の直線性は0.5mm/m以下であることが好ましく、0.2mm/m以下であることが好ましい。例えば、円筒型電池として組み立てを行う際に、電極と共に捲回する際等に蛇行が起こる等の不具合が起こり難いので好ましい。
【0164】
セパレータ用多孔膜の直線性の評価としては、25℃、50%RHで調湿した条件下で、平面な台上で測定することができる。
【0165】
〔シャットダウン特性、メルトダウン耐性〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいては、安全性を確保するために、シャットダウン(SD)機能が求められる場合がある。SD機能とは、短絡等を起因として電池内部温度が過度に上昇した場合に、セパレータの電気抵抗を急激に上昇させることにより、電池反応を停止させて、温度上昇を防止する機能である。上記SD機能の発現機構としては、例えば、微多孔性フィルム製のセパレータの場合、所定の温度まで電池内部温度が上昇した場合、その多孔質構造を喪失して無孔化し、イオン透過を遮断する方法が挙げられる。しかし、このように無孔化してイオン透過を遮断しても、温度がさらに上昇してフィルム全体が溶融し破膜してしまった場合は、電気的絶縁性を維持できなくなってしまう。したがって、このフィルムがその形態を保持できなくなりイオン透過を遮断することができなくなる温度をメルトダウン温度といい、この温度が高いほどセパレータの耐熱性が優れているといえる。また上記メルトダウン温度とSD開始温度との差が大きいほど、安全性に優れているといえる。
【0166】
〔電解液吸収特性〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、セパレータの電解液吸収性は、電池生産性時の電解液工程において迅速に組み立てを行うために迅速吸収性が求められる。電解液の吸収速度は、例えば使用する電解液をセパレータ表面に一滴滴下し、目視により電解液が吸収される時間(透明化する時間)を計測する手法等により測定することができる。
【0167】
〔保液性〕
本発明の非水系二次電池において、リチウムイオン二次電池の電極は、リチウムの挿入及び脱離に伴い膨張及び収縮するが、電池の高容量化に伴い、膨張率が大きくなる傾向にある。充放電に伴い電極の膨張及び収縮に伴ってパレータは電極により圧迫されるので、セパレータには圧迫による電解液保持量の減少が小さいことが求められている。
【0168】
〔化学安定性〕
本発明の非水系二次電池用セパレータにおいて、リチウムイオン二次電池の高充電電圧化を図ると正極は高い電位となるため、セパレータは強い酸化環境にさらされ、酸化分解を受けやすくなる。酸化分解によって分子量が低下すると、機械的物性が著しく低下し、破膜などが起こりやすくなる。特に、高温環境下ではセパレータの酸化がさらに進行しやすいため、高温保存した場合には破膜などが一層起こりやすくなるため、化学安定性の高いセパレータが求められている。
【0169】
〔動摩擦係数〕
電池組み立て工程でのしわや折れ等の不具合を起こさずに安定的な生産を行う観点から、本発明の非水系二次電池用セパレータにおいては、フィルム同士のフィルム両面を重ね合わせたときの静摩擦係数μsが、0.3〜1.8の範囲であることが好ましい。静摩擦係数μsが0.3未満では、フィルムが滑り過ぎて、長尺に巻き取る際に巻きずれやしわが発生することがある。一方、μsが1.8を超えると、フィルム製造(製膜)ならびに二次加工工程で、フィルム同士あるいはフィルムとロール等との摩擦により、表層のポリマーの脱落やフィルム破れが起こり、生産性が低下することがある。フィルムの動摩擦係数は0.3〜1.5であることがより好ましく、0.5〜1.5であることが更に好ましい。
【0170】
《非水系二次電池の構成》
次いで、本発明の非水系二次電池の構成について説明する。
【0171】
〔正極〕
本発明の非水系二次電池を構成する正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物などの金属酸化物、二硫化モリブデンなどの金属硫化物などが活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤などを適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網などの集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
【0172】
正極の形成方法の例としては、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)に導電助剤としてリン状黒鉛を、(リチウムコバルト酸化物:リン状黒鉛)の質量比90:5で加えて混合し、この混合物と、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液とを混合してスラリーにする。この正極合剤スラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に均一に塗布して乾燥し、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の正極板とする方法が挙げられる。
【0173】
〔負極〕
負極の形成材料としては、アルカリ金属またはアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網などの集電材料と一体化させたものが用いられる。アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムなどが挙げられる。アルカリ金属を含む化合物としては、例えば、アルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウムなどとの合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物などが挙げられる。
【0174】
負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
【0175】
負極の形成方法の例として、フッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解させた溶液に、平均粒径が10μmの炭素材料を混合してスラリーとし、この負極合剤のスラリーを70メッシュの網を通過させて大きな粒子を取り除いた後、厚み18μmの帯状の銅箔からなる負極集電体の両面に均一に塗布して乾燥させ、その後、ロールプレス機により圧縮成形した後、切断し、帯状の負極板とする方法を挙げることができる。
【0176】
〔電解液〕
電解液としては、リチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル類、アセトニトリル等のニトリル類、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソランなどのエーテル類、またはスルホランなどが挙げられ、これらを単独でまたは二種類以上を混合して用いることができる。
【0177】
電解液の例として、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を1.4mol/Lの割合で溶解したものを挙げることができる。
【実施例】
【0178】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0179】
実施例1
《樹脂組成物の調製》
ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、核形成補助成分を、後述の表1に記載の組み合わせで調合し、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径φ40mm、L/D=32)を用いて280℃にて溶融混練してペレット状に加工した樹脂組成物1〜8を調製した。
【0180】
なお、上記樹脂組成物1〜8の調製に用いた構成素材の詳細は、以下の通りである。
【0181】
(ポリプロピレン系樹脂)
〈ポリプロピレン(表1には,PPと略記)〉
相溶性パラメータSP(pp)=17.0(J/cm1/2、融点Tm(pp)=178℃、数平均分子量Mn=38,000、重量平均分子量Mw=310,000、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)=97.2%
(核形成補助成分)
〈PE1〉
ポリエチレン1、SP(poor)=16.8(J/cm1/2、Tm(poor)=118℃
〈PE2〉
ポリエチレン2、SP(poor)=17.6(J/cm1/2、Tm(poor)=125℃
〈PMP〉
ポリメチルペンテン、SP(poor)=16.7(J/cm1/2、Tm(poor)=235℃
〈PSt〉
ポリスチレン、SP(poor)=15.4(J/cm1/2、Tm(poor)=256℃
(β晶核剤)
〈β晶核剤1〉
エヌジェスターNU100、β晶核剤、新日本理化社製、SP(nu)=23.7(J/cm1/2、Tm(nu)=385℃
〈β晶核剤2〉
γ−キナクリドン、SP(nu)=23.6(J/cm1/2、Tm(nu)=300℃以上
〈β晶核剤3〉
N,N−ジフェニルアジポアミド、SP(nu)=25.5(J/cm1/2、Tm(nu)=239℃
〈β晶核剤4〉
パインクリスタルKM−1500、荒川化学工業社製、SP(nu)=18.1(J/cm1/2、Tm(nu)=105℃
【0182】
【化10】

【0183】
(各特性値の測定)
上記各構成素材のSP値及び融点は、下記の方法に従って測定した。
【0184】
〈相溶性パラメータSPの測定〉
SP値(溶解度パラメーター)は溶解性の尺度となるものであり、本発明では下記の方法に従って測定した(参考文献:SUH,CLARKE〔J.P.S.A−1,5,1671−1681(1967)〕)。
【0185】
・測定温度:20℃
・サンプル:各構成素材0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶解10mlを加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
【0186】
・溶解 良溶解:ジオキサン、アセトン
・貧溶解:n−ヘキサン、イオン交換水
・濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶解を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とした。なお、本発明でのSP値の単位は(J/cm1/2で表示する。
【0187】
〈融点Tmの測定〉
示差走査型熱量計(セイコー電子工業(株)製、商品名DSC2000)を用い、10℃/min.の昇温速度にて測定した。
【0188】
《非水二次電池用セパレータの作製》
上記作製した各樹脂組成物を、押出機を用いて210℃で押出し、Tダイより押出して、125℃のキャスティングロールで冷却し、MD方向及びTD方向に逐次二軸延伸を行った後、100℃で4%熱弛緩して、非水二次電池用セパレータ1〜8を作製した。
【0189】
《リチウムイオン二次電池の作製》
各非水二次電池用セパレータを介して正極活物質層と負極活物質層とが対向するように、正極板、非水二次電池用セパレータおよび負極板を重ね合わせて単位電極を作製した。単位電極と単位電極との間に非水二次電池用セパレータを介在させて、単位電極9枚を積層し、積層型電極群を作製した。この積層型電極群に、ポリプロピレン(PP)樹脂からなるタブを有するアルミニウム製正極リードおよびニッケル製負極リードを接続した後、アルミニウムラミネートシートからなる外装ケースに挿入し、封口部にPPタブが配置されるようにして、熱溶着させた。その後、非水電解質を注液し、外装ケース内部を真空減圧しながら、外装ケースの開口を溶着させて、リチウムイオン二次電池1〜8を作製した。
【0190】
《非水二次電池用セパレータ及びリチウムイオン二次電池の評価》
上記作製した各非水二次電池用セパレータ及びリチウムイオン二次電池について、下記の各評価を行った。
【0191】
〔等温結晶化の評価〕
各非水二次電池用セパレータについて、偏光顕微鏡(BX51−P(オリンパス株式会社製))と顕微鏡用ホットステージ(形式:10033L(ジャパンハイテック株式会社製))とを用いて、図1に示すように室温から、10℃/分の昇温速度で、Tmとして220℃まで昇温させた後、水平なガラス板上で厚さ5.0μmの条件で、220℃で5分間保持した後、−10℃/分の条件で120℃まで降温させ、120℃における等温結晶化による球晶について、偏光顕微鏡の視野を動かして100点の球晶の粒径(直径)を測定し、図2に示すような縦軸を粒径、縦軸を粒子数とする球晶粒子の粒径分布ヒストグラムを作成し、最大平均粒径(d97.5)を求めた。最大平均粒径(d97.5)が10.0μm未満である試料を「○」、10.0μm以上である試料を「×」と判定した。
【0192】
〔ピンホール耐性の評価〕
各非水二次電池用セパレータを10cm×10cm角に断裁した後、その全面を、光学顕微鏡を用いてピンホール故障の有無を観察し、ピンホールの発生が全く認めらなかったものを「◎」、ピンホールの発生数が1個であれば「○」、ピンホールの発生数が2個以上であれば「×」と判定した。
【0193】
〔サイクル特性の評価〕
上記作製した各リチウムイオン二次電池について、25℃、50%RHの環境下において、800mAで4.2Vまで定電流充電した後、800mAで2.5Vまで定電流放電する工程を繰り返した。100サイクル後に、240mAで4.2V〜2.5Vの範囲で定電流充放電を行い、0.2C放電での放電容量を調べた。そして、初期の0.2C放電容量に対する100サイクル後の0.2C放電容量の比をサイクル容量維持率(%)として求め、下記の基準に従ってサイクル特性を評価した。
【0194】
◎:サイクル容量維持率(%)が95%以上である
○:サイクル容量維持率(%)が90%以上、95%未満である
×:サイクル容量維持率(%)が90%未満である
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0195】
【表1】

【0196】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明に係る式(1)及び式(2)で規定する条件を共に満たす組み合わせのポリプロピレン系樹脂、β晶核剤及び核形成補助成分を用いて作製した本発明の非水二次電池用セパレータは、比較例に対し、等温結晶化における最大粒径が10.0μm以下で、ピンホール耐性に優れ、かつそれを用いて作製した本発明のリチウムイオン二次電池は、比較例に対し、サイクル特性に優れていることが分かる。
【0197】
実施例2
《非水二次電池用セパレータの作製》
〔β晶核剤の調製〕
実施例1で用いたβ晶核剤3(N,N−ジフェニルアジポアミド)を、ナノスプレードライヤー法(ナノスプレードライヤーB−90 ビュッヒ社製)により、微小粒子化し、平均粒径が200nmのβ晶核剤A(N,N−ジフェニルアジポアミド)と、平均粒径が500nmのβ晶核剤B(N,N−ジフェニルアジポアミド)を調製した、なお、β晶核剤A、Bの粒径制御は、N,N−ジフェニルアジポアミド溶液の濃度変化により行った。
【0198】
〔非水二次電池用セパレータ9〜13の作製〕
ポリプロピレン系樹脂(PP)、β晶核剤(表2に記載)及び核形成補助成分(PE1)を表2に記載の種類及び比率で混合した後、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径φ40mm、L/D=32)を用いて、200℃にて溶融混練してペレット9〜13を作製した。
【0199】
次いで、上記調製したペレット9〜13を用い、実施例1に記載の方法と同様にして、非水二次電池用セパレータ9〜13を作製した。
【0200】
《リチウムイオン二次電池の作製》
上記作製した非水二次電池用セパレータ9〜13を用い、実施例1に記載の方法と同様にして、リチウムイオン二次電池9〜13を作製した。
【0201】
《非水二次電池用セパレータ及びリチウムイオン二次電池の評価》
上記作製した各非水二次電池用セパレータ及びリチウムイオン二次電池について、実施例1に記載の方法と同様にして、等温結晶化の評価(最大平均粒径(d97.5)の測定)、ピンホール耐性及びサイクル特性の評価と共に、下記方法に従って等温結晶化した時の球晶の平均粒径及び標準偏差を測定した。
【0202】
〔球晶の平均粒径及び標準偏差の測定〕
偏光顕微鏡(BX51−P(オリンパス株式会社製))と顕微鏡用ホットステージ(形式:10033L(ジャパンハイテック株式会社製))とを用いて、各非水系二次電池用セパレータを、室温から10℃/minで220℃まで昇温して溶解した後、220℃において平行なガラス板上で厚み5μmの状態で5分間保持し、次いで−10℃/minで降温し、120℃で1時間等温結晶化させ、偏光顕微鏡の視野を動かして100点の球晶の粒径(直径)を測定し、平均値を求め、平均粒径とした。球晶の平均粒径が、2.0μm未満であれば「◎」、2.0μm以上、5.0μm未満であれば「○」、5.0μm以上であれば「×」と判定した。
【0203】
同時に、実施例1に記載の方法と同様にして、最大平均粒径(d97.5)を求めた。最大平均粒径(d97.5)が10.0μm未満である試料を「○」、10.0μm以上である試料を「×」と判定した。次いで、X線による小角散乱法により球晶の粒径分布を測定し、得られたデータより標準偏差を求めた。
【0204】
また、球晶の粒径分布均一性として標準偏差/平均粒径を求め、10%未満であれば「◎」、10%以上、20%未満であれば「△」、20%以上であれば「×」と判定した。
【0205】
【表2】

【0206】
表2に記載の結果より明らかなように、粒径が揃って粒径分布の狭いβ晶核剤を用いることにより、ピンホール耐性及びサイクル特性がより向上することが分かる。
【0207】
実施例3
《非水二次電池用セパレータの作製》
〔β晶核剤の調製〕
実施例1で用いたβ晶核剤(核剤1:エヌジェスターNU100、β晶核剤、新日本理化社製)を、ナノスプレードライヤー法(ナノスプレードライヤーB−90 ビュッヒ社製)により、微小粒子化し、平均粒径が200nmのβ晶核剤C(エヌジェスターNU100)と、平均粒径が500nmのβ晶核剤D(エヌジェスターNU100)を調製した、なお、β晶核剤C、Dの粒径制御は、エヌジェスターNU100溶液の濃度変化により行った。
【0208】
〔非水二次電池用セパレータ14〜17の作製〕
ポリプロピレン系樹脂(PP)、β晶核剤及び核形成補助成分(PE1、PE2)を表3に記載の種類及び比率で混合した後、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径φ40mm、L/D=32)を用いて、200℃にて溶融混練してペレット14〜17を作製した。
【0209】
次いで、上記調製したペレット14〜17を用い、実施例1に記載の方法と同様にして、非水二次電池用セパレータ14〜17を作製した。
【0210】
《リチウムイオン二次電池の作製》
上記作製した非水二次電池用セパレータ14〜17を用い、実施例1に記載の方法と同様にして、リチウムイオン二次電池14〜17を作製した。
【0211】
【表3】

【0212】
《非水二次電池用セパレータ及びリチウムイオン二次電池の評価》
上記作製した各非水二次電池用セパレータ及びリチウムイオン二次電池について、実施例2に記載の方法と同様にして、等温結晶化(最大平均粒径d97.5)、ピンホール耐性及びサイクル特性の評価と、球晶の平均粒径及び標準偏差の測定を行った。
【0213】
更に、下記の方法に従って、寸法安定性及び溶出耐性の評価を行った。
【0214】
〔寸法安定性の評価〕
上記作製した各非水二次電池用セパレータを、10cm×10cmのサイズに断裁した後、23℃、50%RHの雰囲気下で48時間放置した。次いで、カッターにより、フィルム表面に図3に記載のように、TD方向及びMD方向に8cm長さとなるように目印をつけ、その距離を測定し、これをL1とした。
【0215】
次いで、各非水二次電池用セパレータを、電解液中(プロピオンカーボネートとエチレンカーボネートを質量比1:1で混合した液)に、90℃条件で100時間浸漬処理した。再度、23℃、50%RH条件で48時間調湿処理した、目印間(TD方向、MD方向)の距離を再度測定し、これをL2とした。各々得られた測定値から下記計算式により、23℃、50%RHにおける寸法変化率を評価し、下記の基準に従って寸法安定性を評価した。
【0216】
寸法変化率(%)=|〔(L1−L2)/L1〕|×100
なお、寸法変化量はMD方向及びTD方向をそれぞれ測定し、測定結果の大きい値を評価した。
【0217】
○:寸法変化率が、5.0%未満である
×:寸法変化率が、5.0%以上である
〔溶出耐性の評価〕
上記作製した各非水二次電池用セパレータを、23℃、50%RHの雰囲気下で48時間放置した後、GC/MS法を用いて溶出成分の基準量を測定し、これをW1とした。次いで、非水二次電池用セパレータを、電解液中(プロピオンカーボネートとエチレンカーボネートを質量比1:1で混合した液)で、90℃条件で100時間処理した。再度、23℃、50%RH条件で48時間調湿処理し、同様にGC/MS法により溶出成分を測定し、これをW2とした。各々得られた測定値から下記計算式により、溶出成分量を測定し、下記の基準に従って溶出耐性の評価を行った。
【0218】
溶出成分量(%)=〔(W1−W2)/W1〕×100
○:溶出成分量(%)が5.0質量%未満である
×:溶出成分量(%)が5.0質量%以上である
以上により得られた結果を表4に示す。
【0219】
【表4】

【0220】
表4に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する条件を満たす非水二次電池用セパレータ14及び15は、寸法安定性、溶出耐性、ピンホール耐性及びサイクル特性に優れた効果が得られることが分かる。これに対し、非水二次電池用セパレータ16及び17は、核形成補助成分が本発明の式(1)で規定する条件を満たさないため、非水二次電池用セパレータの結晶成長の不均一化が起こり、寸法安定性、溶出耐性、ピンホール耐性及びサイクル特性が不十分であった。
【符号の説明】
【0221】
1 粒径分布ヒストグラム
2 分布関数dG=F(D)dDの積分カーブ
3 非水系二次電池用セパレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
β晶核剤を含有するポリプロピレン樹脂を有する非水二次電池用セパレータにおいて、少なくとも1種の核形成補助成分を含有し、該ポリプロピレン樹脂(pp)、該β晶核剤(nu)及び該核形成補助成分(poor)の相溶性パラメータを、それぞれSP(pp)、SP(nu)、SP(poor)としたとき、下記式(1)で規定する条件を満し、該β晶核剤(nu)と該核形成補助成分(poor)の融点を、それぞれTm(nu)、Tm(poor)とした時に、下記式(2)で規定する条件を満し、かつ120℃における等温結晶化により形成させた球晶の最大平均粒径(d97.5)が、10.0μm未満であることを特徴とする非水系二次電池用セパレータ。
式(1)
SP(nu)>SP(pp)>SP(poor)
式(2)
Tm(poor)<Tm(nu)
【請求項2】
下記の評価方法に従って、非水系二次電池用セパレータを120℃で等温結晶化させて形成した前記球晶の粒径の標準偏差が平均粒径の20%以下であり、かつ該平均粒径が5.0μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
等温結晶化の評価方法:非水系二次電池用セパレータを、室温から10℃/minで220℃まで昇温して溶解した後、220℃において平行なガラス板上で厚み5μmの状態で5分間保持し、次いで−10℃/minで降温し、120℃で1時間等温結晶化させる。
【請求項3】
電解質溶液中で90℃、100時間処理した時の寸法変化率が5.0%以下であり、かつ該電解質溶液中への前記β晶核剤の溶出率が5.0%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータを用いたことを特徴とする非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−33315(P2012−33315A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170203(P2010−170203)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】