説明

非汚染性シリコーンコーティング剤組成物

【解決手段】下記一般式(1)で示される分子量300〜30,000のオルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、縮合硬化を促進する触媒を配合してなり、室温硬化性であることを特徴とする非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
a1bSi(OR2c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、R1はビニル基又はアリル基、R2は水素原子、炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基、又はフェニル基を表す。a,bは1.5以下の正数で、但し0.5≦a+b≦1.5、0.05≦b/(a+b)≦0.5を満足するものであり、cは3未満の正数を表す。)
【効果】本発明の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物は、硬化した後の非汚染性に優れ、しかも光劣化が少なく、建物壁面、屋根などに汚染を起こさず、耐候性に優れるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用外装塗料のトップコート剤として好適に使用される非汚染性シリコーンコーティング剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
各種建造物における外装塗料として、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などが広く用いられている。特にシリコーン樹脂は光劣化しにくく、チョーキングも生起しづらいという耐候性を活かして、汎用されているが、昨今の大気汚染による汚れ付着、いわゆる雨垂れ汚染が問題化している。また、フッ素樹脂は非常に耐候性が高いが、価格が高く、経済的には好ましくない。
【0003】
そこで、本出願人は、上記の問題を解決するため、酸化チタン、酸化亜鉛等の光触媒活性を有する粒子が分散、含有された硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物を提案し、これに紫外線が照射されることで表面が改質されて親水化され、非汚染性が付与されることを先に示した(特許文献1:特開平9−227779号公報)。更に、この光触媒活性能を有する粒子の配合系で、硬化性オルガノポリシロキサンを乳化して、環境に対応した組成物も本出願人は提案した(特許文献2:特開2002−363494号公報)。
【0004】
この方法によって汚染性は大幅に改良されたものの、光触媒活性粒子の配合が多いため、経済的に不利になること、塗膜の平坦性が乏しいなど、改善が求められていた。そこで、本出願人は所定量のアルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサンからなるシーリング剤、及びそれのエマルジョン組成物を提案し、経済的に非汚染性が達成されることを見出した(特許文献3:特開2003−119388号公報、特許文献4:特開2004−161922号公報)。しかし、これらの提案はジオルガノポリシロキサンをベースとするもので、塗膜が柔らかく、砂埃で傷つきやすいといった問題点があった。
【0005】
【特許文献1】特開平9−227779号公報
【特許文献2】特開2002−363494号公報
【特許文献3】特開2003−119388号公報
【特許文献4】特開2004−161922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情を改善するためになされたもので、非汚染性に優れたシリコーンコーティング剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、縮合硬化型シリコーンコーティング剤組成物において、ベースポリマーのオルガノポリシロキサンの珪素原子に直結する全置換基のうち、5〜50モル%がビニル基あるいはアリル基である特定のオルガノポリシロキサンを用いることにより、著しい非汚染性向上を達成できることを知見し、本発明をなすに至った。
【0008】
従って、本発明は、下記非汚染性シリコーンコーティング剤組成物を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)で示される分子量300〜30,000のオルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、縮合硬化を促進する触媒を配合してなり、室温硬化性であることを特徴とする非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
a1bSi(OR2c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、R1はビニル基又はアリル基、R2は水素原子、炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基、又はフェニル基を表す。a,bは1.5以下の正数で、但し0.5≦a+b≦1.5、0.05≦b/(a+b)≦0.5を満足するものであり、cは3未満の正数を表す。)
請求項2:
更に、下記一般式(2)又は(3)で示されるオルガノシラン又はオルガノポリシロキサンを一般式(1)で表されるベースポリマー100質量部に対し1〜50質量部配合してなることを特微とする請求項1記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
dSiR3-d−X−SiR3-dd (2)
dSiR3-d−X−(R2SiO)n−SiR2−X−SiR3-dd (3)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基、nは0〜10の整数、dは1,2又は3である。)
請求項3:
ベースポリマーである一般式(1)のオルガノポリシロキサンの加水分解性基以外の珪素原子に結合する置換基が、メチル基とビニル基であることを特徴とする請求項1又は2記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
請求項4:
下記一般式(1)で示される分子量300〜30,000のオルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、これに乳化剤及び水を配合し、エマルジョン化してなり、加熱硬化性であることを特徴とする非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
a1bSi(OR2c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、R1はビニル基又はアリル基、R2は水素原子、炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基、又はフェニル基を表す。a,bは1.5以下の正数で、但し0.5≦a+b≦1.5、0.05≦b/(a+b)≦0.5を満足するものであり、cは3未満の正数を表す。)
請求項5:
更に、下記一般式(2)又は(3)で示されるオルガノシラン又はオルガノポリシロキサンを一般式(1)で表されるベースポリマー100質量部に対し1〜50質量部と、乳化剤及び水を配合し、エマルジョン化してなることを特徴とする請求項4記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
dSiR3-d−X−SiR3-dd (2)
dSiR3-d−X−(R2SiO)n−SiR2−X−SiR3-dd (3)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基、nは0〜10の整数、dは1,2又は3である。)
請求項6:
更に、エポキシ基含有ケイ素化合物からなる接着性向上剤を、一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンベースポリマー100質量部に対し1〜20質量部添加することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
請求項7:
建築用外装塗料のトップコート剤であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物は、硬化した後の非汚染性に優れ、しかも光劣化が少なく、建物壁面、屋根などに汚染を起こさず、耐候性に優れるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明にかかる非汚染性シリコーンコーティング剤組成物は、下記一般式(1)で示される分子量300〜30,000のオルガノポリシロキサンを主成分(ベースポリマー)とするものであり、その硬化方式としては、縮合硬化型が用いられる。
a1bSi(OR2c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、R1はビニル基又はアリル基、R2は水素原子、炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基、又はフェニル基を表す。a,bは1.5以下の正数で、但し0.5≦a+b≦1.5、0.05≦b/(a+b)≦0.5を満足するものであり、cは3未満の正数を表す。この場合、a+b+cは0.5≦a+b+c<4.0が好ましい。)
【0011】
本発明で使用されるベースポリマーのオルガノポリシロキサンとしては、縮合反応で硬化するため、分子中に少なくとも2個の珪素原子に直結した水酸基又は加水分解性基を有する。更に、珪素原子に結合した有機基(加水分解性基を除く)R及びR1の5〜50モル%、好ましくは7〜10モル%、更に好ましくは10〜50モル%がビニル基あるいはアリル基を有するものである。
【0012】
従来、使用されている縮合硬化型シリコーンコーティング剤のベースポリマーにおいて、縮合反応に関与する水酸基又は加水分解性基以外の置換基は、ほとんどがメチル基及び/又はフェニル基であるが、本発明においては、この加水分解性基以外の置換基に縮合反応(架橋)に関与しないアルケニル基を特定量導入したもので、これにより、著しく非汚染性が向上するものである。
【0013】
一般式(1)中、Rはメチル基又はフェニル基が好ましく、R1は好ましくはビニル基であり、R2は水素原子、炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基、又はフェニル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロペニル基である。a,bは1.5以下の正数であるが、但し0.5≦a+b≦1.5、0.05≦b/(a+b)≦0.5を満足するものであり、cは3未満、好ましくは2.8以下、特に好ましくは2.5以下の正数を表す。
【0014】
また、R1としては5モル%以上、好ましくは10モル%以上が必要で、5モル%未満では耐汚染性が低く、50モル%を超えると塗膜強度が低下するので好ましくない。更に分子量としては、300〜30,000が好ましく、300未満では塗布時に蒸発しやすいし、30,000を超えると粘凋過ぎて取り扱い性が悪く、乳化する際には乳化機が使用できなくことがあり、好ましくない。ここで、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算数平均分子量である。
【0015】
一般式(1)のオルガノポリシロキサンとしては、以下のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。なお、Meはメチル基、Viはビニル基、φはフェニル基、Etはエチル基を表す。
Me0.75Vi0.25Si(OMe)1.50.75
Me0.8Vi0.4Si(OMe)1.20.8
Me0.7Vi0.3φ0.2Si(OMe)1.20.8
Me0.75Vi0.25Si(OEt)1.50.75
Me0.8Vi0.4Si(OEt)1.20.8
Me0.7Vi0.3φ0.2Si(OEt)1.20.8
Me0.4Vi0.4φ0.4Si(OMe)1.20.8
Me0.4Vi0.4φ0.4Si(OEt)1.20.8
Me0.8Vi0.3Si(OH)0.221.34
Me0.6Vi0.3φ0.2Si(OH)0.221.34
【0016】
上記一般式(1)で示されるのは平均組成式であり、単独分子で本発明のベースポリマーを用いてもいいし、アルケニル基を含んだオルガノポリシロキサンとアルケニル基を含まないオルガノポリシロキサンの混合物で利用することも構わない。
【0017】
また、本発明のシリコーンコーティング剤組成物は、室温で硬化するには硬化触媒を使用することが好ましく、硬化触媒としては、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジオクトエート等のアルキル錫エステル化合物、テトライソプロポキシチタン、テトラn−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、ジプロポキシビス(アセチルアセトナ)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、亜鉛−2−エチルオクトエート、鉄−2−エチルヘキソエート、コバルト−2−エチルヘキソエート、マンガン−2−エチルヘキソエート、ナフテン酸コバルト、アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルコキシアルミニウム化合物等の有機金属化合物、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノアルキル基置換アルコキシシラン、ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミン等のアミン化合物及びその塩、ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の第4級アンモニウム塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩、ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン、テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン等が例示され、これらはその1種に限定されず、2種もしくはそれ以上の混合物として使用してもよい。
【0018】
なお、これら硬化触媒の配合量は、上記オルガノポリシロキサンベースポリマー100質量部に対し、0〜20質量部、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.01〜5質量部である。
【0019】
更に、本発明の塗膜に可とう性を付与する目的で、下記一般式(2)あるいは(3)の珪素化合物が添加されてもよい。
dSiR3-d−X−SiR3-dd (2)
dSiR3-d−X−(R2SiO)n−SiR2−X−SiR3-dd (3)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基、nは0〜10の整数、dは1,2又は3である。)
【0020】
Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、二価炭化水素基としては−(CH2m−(mは1〜8)で表されるアルキレン基が好ましい。これらの中でも酸素原子、−CH2CH2−が好ましい。nは0〜10の整数であり、10を超えると、オルガノポリシロキサンベースとの相溶性が乏しくなり、好ましくない。Yは加水分解性基であり、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基などのケトオキシム基、アセトキシ基などのアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基などのアルケニルオキシ基等が挙げられる。
【0021】
上記一般式(2)あるいは(3)の珪素化合物の配合量としては、一般式(1)のオルガノポリシロキサンベースポリマー100質量部に対し、1〜50質量部、特に2〜40質量部が好適であり、50質量部を超えると、塗膜が柔らかくなり、好ましくない。
【0022】
上記一般式(2)あるいは(3)の珪素化合物は、具体的には以下のものが例示される。
(MeO)3SiCH2CH2Si(OMe)3
(EtO)3SiCH2CH2Si(OEt)3
(MeO)3Si(CH24Si(OMe)3
(MeO)2SiMeCH2CH2SiMe(OMe)2
(MeO)3SiCH2CH2(SiMe2O)8SiMe2CH2CH2Si(OMe)3
【0023】
本発明のオルガノポリシロキサンベースポリマーとしてシラノール基を含有する場合は、架橋剤が使用されてもよい。架橋剤としては、加水分解性の基を1分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するシラン、あるいはその部分加水分解縮合物が使用される。この場合、その加水分解性の基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基、ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基などのケトオキシム基、アセトキシ基などのアシルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基などのアルケニルオキシ基、N−ブチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基などのアミノ基、N−メチルアセトアミド基などのアミド基等が挙げられる。これらの中でもアルコキシ基、ケトオキシム基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基が好ましい。
【0024】
架橋剤の配合量は、上記オルガノポリシロキサンベースポリマー100質量部に対し、0.5〜20質量部、特に0.7〜18質量部とすることが望ましい。
【0025】
また、本発明のシリコーンコーティング剤組成物には、上記成分以外に補強や着色等の目的で1種以上の充填剤や顔料を用いることも可能である。このような充填剤としては、例えば、シリカ、石英粉末、カーボンブラック、タルク、ゼオライト及びベントナイト、アスベスト、ガラス繊維、炭素繊維などの繊維質充填剤、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、セライト等の塩基性充填剤、酸化チタンなどの光触媒活性を有する充填剤等が例示される。
【0026】
次に、本発明のシリコーンコーティング剤組成物は、特に環境を考慮するならば、エマルジョン状態で塗布することが好ましく、式(1)のベースポリマーあるいは式(1)及び式(2)あるいは式(3)のシリコーン化合物の混合物に所定量の乳化剤及び水を加え、せん断応力を加えることにより得られた、対応する乳化物を用いることができる。使用される乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤が挙げられ、特に限定されないが、ノニオン系界面活性剤が安定性の面で好ましい。例えばポリオキシアルキレンラウリルエーテル、ポリオキシアルキレントリデシルエーテル、ポリオキシアルキレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が例示される。
【0027】
乳化剤の配合量は、オルガノポリシロキサン総質量に対し、1〜30質量%が好ましく、特に2〜20質量%が好適である。1質量%未満では乳化力に乏しいし、30質量%を超えると耐候性が悪くなるので好ましくない。
【0028】
乳化物で本発明のシリコーンコーティング剤組成物を実施するには、上記の縮合触媒を添加してもしなくてもよいが、低温で硬化するには、触媒を添加したほうが好ましい。十分に加熱できる場合はその限りではない。式(1)のベースポリマーの粘度が高いときには、エチレングリコール、セロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルメチルカルビトール、カルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、酢酸ブチルカルビトール等の親水性の溶剤を少量用いて粘度を下げて、乳化することもできる。
【0029】
更に、本発明のシリコーンコーティング剤組成物において、基材との接着性を高める目的で、エポキシ基含有有機珪素化合物が添加される。
【0030】
具体的には3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらシランの部分加水分解物、テトラキス−(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、ビス−(3−グリシドキシプロピル)ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、ビス−(3−グリシドキシプロピル)ジビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、(3−グリシドキシプロピル)テトラメチルシクロテトラシロキサン、(3−グリシドキシプロピル)(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン等が例示される。
【0031】
添加量としては、式(1)のベースポリマー100質量部に対し1〜20質量部、特に1.5〜18質量部が好ましい。20質量部を超えると、塗膜の変色があり、好ましくない。
【0032】
また、非汚染性を阻害しない範囲において、種々の化合物を添加することは任意であり、例えばポリエチレングリコール又はその誘導体からなるチクソトロピー性付与剤、ベンガラ及び酸化セリウムなどの耐熱性向上剤、耐寒性向上剤、脱水剤、防錆剤、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどの密着向上剤などを必要に応じてその所定量を添加することができる。
【0033】
また、非汚染性向上の目的で、従来から使用されている光硬化性物質(例えばアクリル基等の不飽和基含有オリゴマー及びポリマーなど)、光崩壊性物質(例えば桐油、亜麻仁油など)等を本発明の目的を損なわない範囲で更に添加してもよい。
【0034】
本発明の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物は、建築用外装塗料、プラント用外装塗料、耐汚染性コーティング剤などに好適に使用され、特に建築用外装塗料のトップコート剤として好適である。
このような用途に使用する場合、本発明のコーティング剤組成物を被塗物に0.1〜500μm、特に1〜300μmの厚さに塗布した後、縮合硬化触媒を用いた場合は室温(雰囲気温度)で硬化し、また縮合硬化触媒を用いない場合は特に制限されないが、70〜120℃程度に加熱して、耐汚染性皮膜を形成することが好ましい。なお、室温で硬化する場合、硬化時間は1〜20日程度であり、70〜120℃で加熱した場合は0.5〜6時間程度である。
【実施例】
【0035】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記例で分子量はGPCによるポリスチレン換算数平均分子量である。また、Meはメチル基、Viはビニル基、φはフェニル基、Etはエチル基を表す。
【0036】
[実施例1]
組成式:Me0.75Vi0.25Si(OMe)1.50.75で表される分子量418のポリマー100質量部とアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)5質量部を均一になるまで混合し、組成物を調製した。
【0037】
[実施例2]
組成式:Me0.75Vi0.25Si(OMe)1.50.75で表される分子量418のポリマー100質量部、式:(MeO)3SiCH2CH2(SiMe2O)8SiMe2CH2CH2Si(OMe)3 20質量部とアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)5質量部を、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0038】
[実施例3]
組成式:Me0.4φ0.4Vi0.4Si(OMe)1.20.8で表される分子量628のポリマー100質量部とジブチル錫ジラウレート2質量部を、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0039】
[実施例4]
組成式:Me0.4φ0.4Vi0.4Si(OMe)1.20.8で表される分子量628のポリマー100質量部、(3−グリシドキシプロピル)(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン5質量部とジブチル錫ジラウレート2質量部を、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0040】
[実施例5]
組成式:Me0.8Vi0.3Si(OH)0.221.34で表される分子量2,000のポリマー100質量部、ブチルセロソルブアセテート10質量部、及びノイゲンXL40(第一工業製薬(株)製:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)5質量部、ノイゲンXL400(第一工業製薬(株)製:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)5質量部、ニューコール291−M(日本乳化剤(株)製:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)1質量部及びイオン交換水89質量部を、ホモディスパーを用いて乳化分散して調製した。
【0041】
[実施例6]
組成式:Me0.8Vi0.3Si(OH)0.221.34で表される分子量2,000のポリマー100質量部、ブチルセロソルブアセテート10質量部、(3−グリシドキシプロピル)(トリメトキシシリルエチル)テトラメチルシクロテトラシロキサン5質量部、及びノイゲンXL40(第一工業製薬(株)製:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)5質量部、ノイゲンXL400(第一工業製薬(株)製:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)5質量部、ニューコール291−M(日本乳化剤(株)製:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)1質量部及びイオン交換水89質量部を、ホモディスパーを用いて乳化分散して調製した。
【0042】
[実施例7]
組成式:Me0.8Vi0.3Si(OH)0.221.34で表される分子量2,000のポリマー100質量部、ブチルセロソルブアセテート10質量部、及びノイゲンXL40(第一工業製薬(株)製:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)5質量部、ノイゲンXL400(第一工業製薬(株)製:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)5質量部、ニューコール291−M(日本乳化剤(株)製:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)1質量部及びイオン交換水89質量部を、ホモディスパーを用いて乳化分散した後、10%酢酸ナトリウム水溶液10質量部を、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0043】
[比較例1]
組成式:Me1.0Si(OMe)1.50.75で表される分子量406のポリマー100質量部とアルミニウムトリス(アセチルアセトナート)5質量部を、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0044】
[比較例2]
組成式:Me0.8φ0.4Si(OMe)1.20.8で表される分子量604のポリマー100質量部とジブチル錫ジラウレート2質量部を、均一になるまで混合して組成物を調製した。
【0045】
[比較例3]
組成式:Me1.1Si(OH)0.221.34で表される分子量1,800のポリマー100質量部、ブチルセロソルブアセテート10質量部、及びノイゲンXL40(第一工業製薬(株)製:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB10.5)5質量部、ノイゲンXL400(第一工業製薬(株)製:ポリオキシアルキレンデシルエーテル、HLB18.4)5質量部、ニューコール291−M(日本乳化剤(株)製:アルキルスルホコハク酸ソーダ75%液)1質量部及びイオン交換水89質量部を、ホモディスパーを用いて乳化分散して調製した。
【0046】
モルタル板に信越化学工業(株)製プライマーR3を塗布、風乾2時間後、これらのオルガノポリシロキサン組成物をスプレーコートし、実施例5,6及び比較例3以外は全て20℃,55%RHの雰囲気下に7日間養生した。実施例5,6及び比較例3はオルガノポリシロキサン組成物を塗布、風乾4時間後、120℃で1時間加熱乾燥した。これらのテストパネルは群馬県安中市の信越化学工業(株)松井田工場内にある実暴台(傾斜45度)に設置され、2年間屋外暴露したところ、表1に示した結果が得られた。
【0047】
【表1】

○:汚染なし、△:若干汚染あり、×:汚染あり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される分子量300〜30,000のオルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、縮合硬化を促進する触媒を配合してなり、室温硬化性であることを特徴とする非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
a1bSi(OR2c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、R1はビニル基又はアリル基、R2は水素原子、炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基、又はフェニル基を表す。a,bは1.5以下の正数で、但し0.5≦a+b≦1.5、0.05≦b/(a+b)≦0.5を満足するものであり、cは3未満の正数を表す。)
【請求項2】
更に、下記一般式(2)又は(3)で示されるオルガノシラン又はオルガノポリシロキサンを一般式(1)で表されるベースポリマー100質量部に対し1〜50質量部配合してなることを特微とする請求項1記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
dSiR3-d−X−SiR3-dd (2)
dSiR3-d−X−(R2SiO)n−SiR2−X−SiR3-dd (3)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基、nは0〜10の整数、dは1,2又は3である。)
【請求項3】
ベースポリマーである一般式(1)のオルガノポリシロキサンの加水分解性基以外の珪素原子に結合する置換基が、メチル基とビニル基であることを特徴とする請求項1又は2記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
【請求項4】
下記一般式(1)で示される分子量300〜30,000のオルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、これに乳化剤及び水を配合し、エマルジョン化してなり、加熱硬化性であることを特徴とする非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
a1bSi(OR2c(4-a-b-c)/2 (1)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、R1はビニル基又はアリル基、R2は水素原子、炭素数1〜6の置換もしくは非置換のアルキル基、又はフェニル基を表す。a,bは1.5以下の正数で、但し0.5≦a+b≦1.5、0.05≦b/(a+b)≦0.5を満足するものであり、cは3未満の正数を表す。)
【請求項5】
更に、下記一般式(2)又は(3)で示されるオルガノシラン又はオルガノポリシロキサンを一般式(1)で表されるベースポリマー100質量部に対し1〜50質量部と、乳化剤及び水を配合し、エマルジョン化してなることを特徴とする請求項4記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
dSiR3-d−X−SiR3-dd (2)
dSiR3-d−X−(R2SiO)n−SiR2−X−SiR3-dd (3)
(式中、Rはメチル基又はフェニル基、Xは酸素原子又は炭素数1〜8の二価炭化水素基であり、Yは加水分解性基、nは0〜10の整数、dは1,2又は3である。)
【請求項6】
更に、エポキシ基含有ケイ素化合物からなる接着性向上剤を、一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンベースポリマー100質量部に対し1〜20質量部添加することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。
【請求項7】
建築用外装塗料のトップコート剤であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の非汚染性シリコーンコーティング剤組成物。

【公開番号】特開2008−24823(P2008−24823A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−199008(P2006−199008)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】