説明

非特異吸着を低減するプローブ固定担体の製造方法

【課題】
標的物質を検出するプローブ固定担体において、プローブ固定担体作製時のスポット間汚染やバックグラウンドエリアへのプローブ固定を防ぎ、また作製後においても非特異吸着が起きる事が無いプローブ固定担体の製造方法を提供する。
【解決手段】
プローブを固定させるための反応性基を含む基材を材料とするプローブ固定担体の製造方法において、以下の(I)〜(III)の工程を含むプローブ固定担体の製造方法を提供する。
(I)プロ−ブを含有する液滴を該基材上に点着する工程
(II)該基材の点着領域以外に存在する反応性基を不活性化する工程
(III)点着された液滴に存在する未反応プローブを除去する工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブ溶液を基材上に固定し標的物質を検出する、プローブ固定担体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
核酸の塩基配列の決定、検体試料中の目的とする特定の塩基配列をもつ核酸の検出、各種細菌の同定を迅速・正確に行い得る技術のひとつとして、標的核酸とハイブリダイゼーション反応により特異的に結合する物質、いわゆるプローブ(核酸であればプローブ核酸と呼ばれる場合もある)を固相支持体上に多数並べたプローブ固定担体(プローブアレイ)の使用が提案されている。
【0003】
プローブを固相支持体上に固定する方法としてはさまざまな方法が知られている。詳細には、固相支持体上においてプローブの逐次合成を行うことにより固定する方法(オン・チップ法)、予め用意されたプローブをピンもしくは、スタンプなどにより基材上に付与することにより固定する方法である。具体的には、例えば特許文献1に記載されているように、基体の選択された領域からアクチベーターによって保護基を除去し、除去可能な保護基を有するモノマーを前記領域に結合させることを繰返すことにより、基体上で種々の配列を有するポリマーを合成する方法が知られている。また、例えば特許文献2に記載されているように、基材及び該基材上に担持されたカルボジイミド基を有する高分子化合物よりなる固定用の材料と、カルボジイミド基との反応性を有する生物学的に活性な物質を接触させることにより固定する方法が知られている。また、例えば特許文献3に記載されているように末端部にチオール基を有するDNA断片と、該チオール基と反応して共有結合を形成し得る反応性基を有する鎖状分子が一方の末端で表面に固定された固相担体とを液相にて接触させることにより、該DNA断片と鎖状分子との間で共有結合を形成させることによるDNA断片の固相担体表面への固定方法が知られている。また、DNA断片と親水性ポリマーとを水性媒体に溶解あるいは分散してなる水溶液を固相担体表面に点着することによって、DNA断片と固相担体表面との結合を安定化させることが、例えば特許文献4に記載されている。
【0004】
このように作製されるプローブアレイは、一般に高感度である事が望まれる。それは、プローブアレイにより検出すべき標的物質の濃度が低い場合などは、S/N比などが低下して検出結果の信頼性に疑問が生じてしまうからである。そこで、プローブの濃度を高めて、基材上に固定されるプローブ量を多くする事で感度を向上させる方法が試される。
【0005】
しかし、そのようにして作製するプローブアレイは、基材上のプローブと結合し得る反応性基に対してプローブの結合量が飽和状態になる事があり、その結果、基材上に点着されたプローブを含有する液滴に未反応のプローブが残存する事がある。そして、その状態のまま液滴を水または洗浄剤などの液相処理にて除去すると、未反応のプローブが点着された領域(スポットエリア)以外の部分へ流されることになり、基材のスポットエリア以外の部分(バックグラウンドエリア)に存在する反応性基にプローブが固定され、標的物質(ターゲット)の非特異吸着の原因となる。また、未反応のプローブが点着した液滴に残存した状態で液滴を液相にて除去すると、流れ出したプローブが隣接のスポットエリアを汚染してしまい、1種類のプローブが固定されたスポットエリア内に、別種のプローブが混在することになりうる。
【0006】
これらの他にも、プローブを結合する基材自体にも非特異吸着の原因となる要因があり不具合を生じる場合がある。プローブアレイのバックグラウンドエリア全体に標的物質の非特異的吸着が起きると、スポットとその周りのバックグラウンドとの境界が見えなくなり、検出シグナルであるかどうかの判断が出来なくなってしまうからである。これは例えば、基材上にアミノ基などの水溶液中で正電荷を示す反応性基が存在する場合、標的核酸の負電荷と静電吸着してしまう時などに生じる。
【0007】
これらを解決するために従来においても、プローブアレイにおいて標的物質のバックグラウンドエリアへの非特異的吸着を防ぐ方法が試みられている。
【0008】
具体的な標的物質のバックグラウンドエリアへの非特異的吸着を抑えるためのプローブアレイの処理については、スキムミルクなどを用いてブロッキング処理することが知られている。また、プローブを基材上に固定した後に水溶性高分子溶液に浸漬してブロッキング処理することが知られている。例えば特許文献5に記載されているように、プローブのニトロセルロース膜への固定後、PVAおよび/またはPVPを含有する溶液に浸してブロッキング処理する方法である。
【0009】
しかしながら、これらのブロッキング試薬を用いても、ブロッキング剤と固相支持体は化学結合ではなく吸着によるものであるので、ブロッキング効果は必ずしも十分なものではなく、再現可能な結果が得られないこともあった。またこの方法ではプローブアレイ作製段階で未反応のプローブによる非特異吸着を防ぐ事は不可能である。
【0010】
一方、化学結合によるブロッキングとしては、例えばポリ−L−リジンコートされたスライドガラスを無水コハク酸を用いてブロッキングする方法が報告(例えば非特許文献1参照)されている。これは、スライドガラス上のアミノ基を無水コハク酸とカップリングさせることにより、アミノ基の電荷を消去することを試みる方法である。しかし、この方法においても、化学結合でブロッキングしたとしても、プローブアレイ作製段階で固相支持体に点着された液滴中に未反応プローブが残存していれば、ブロッキング方法は液相処理であるため、ブロッキング反応中に未反応のプローブがバックグラウンドエリアに流され、ブロッキング剤と流れ出したプローブが競合的に反応してしまい、非特異吸着の原因になってしまう。
【特許文献1】米国特許第51438545号明細書
【特許文献2】特開平8−23975号公報
【特許文献3】特開2001−178442号公報
【特許文献4】特開2000−295990号公報
【特許文献5】特許第2794728号公報
【非特許文献1】P.O.Brown et al, Genome Res, 1996;6:639-645
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来技術の要改良点を解消することを解決すべき課題とした。即ち、本発明は、標的物質(ターゲット)を検出するプローブ固定担体において、プローブ固定担体作製時のスポット間汚染やバックグラウンドエリアへのプローブ固定を防ぎ、また、アレイ作製後においても非特異吸着が起きることが無いプローブ固定担体の製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)プローブを固定させるための反応性基を含む基材を材料とするプローブ固定担体の製造方法において、以下の(I)〜(III)の工程を含むプローブ固定担体の製造方法。
(I)プロ−ブを含有する液滴を該基材上に点着する工程。
(II)該基材の点着領域以外に存在する反応性基を不活性化する工程。
(III)点着された液滴に存在する未反応プローブを除去する工程。
(2)不活性化はブロッキング化合物により行う事を特徴とする(1)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(3)不活性化は点着した液滴形状を変化させない手段で行う事を特徴とする(1)または(2)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(4)点着した液滴形状を変化させない手段は気相処理法である事を特徴とする(3)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(5)気相処理法は気化したブロッキング化合物を充満させた密閉チャンバ内に前記(I)の工程が完了した基材を封入して行う方法である事を特徴とする(4)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(6)点着された液滴形状を変化させない手段は噴霧処理法である事を特徴とする(3)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(7)噴霧処理法はブロッキング化合物を溶解したブロッキング溶液をスプレー装置によりミスト状にして基材上に吹き付ける方法である事を特徴とする(6)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(8)点着はインクジェット法を用いて行う事を特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
(9)インクジェット法はバブルジェット方式である事を特徴とする(8)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(10)インクジェット法はピエゾジェット方式である事を特徴とする(8)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(11)点着はピン法を用いて行う事を特徴とする(1)〜(7)の何れかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
(12)液滴中のブローブの基材に結合し得る反応性基がXである時、ブロッキング化合物は反応性基Xを分子内に含む事を特徴とする(1)〜(11)の何れかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
(13)反応性基Xはチオール基、アミノ基、マレイミド基、N‐ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、ホルミル基、カルボキシル基、アクリルアミド基、エポキシ基の何れかである事を特徴とする(12)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(14)ブロッキング化合物は標的物質に対し不活性な化学的構造を持つ事を特徴とする(1)〜(13)に記載のプローブ固定担体の製造方法。
(15)プローブはオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド又はペプチド核酸である事を特徴とする(1)〜(14)の何れかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
(16)プローブはヌクレオチド誘導体もしくはその類縁体である事を特徴とする(1)〜(14)の何れかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
従来のブロッキング方法は液相処理であるため、ブロッキング反応がまだ未完全であるにも関わらず、ブロッキング反応中にスポットされたDNAが流され、非特異吸着の原因となる場合があるが、本発明によれば点着後の液滴形状を変える事無く、バックグランドエリアを不活性化する事が出来るので上記課題を解決する事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、プローブを固定させるための反応性基を含む基材を材料とするプローブ固定担体の製造方法において、以下の(I)〜(III)の工程を含むプローブ固定担体の製造方法に関する。
(I)プロ−ブを含有する液滴を該基材上に点着させる工程
(II)該基材の点着領域以外に存在する反応性基を不活性化する工程
(III)点着された液滴に存在する未反応プローブを除去する工程。
【0015】
ここで、不活性化は点着した液滴形状を変化させない手段で行う事が本発明における特徴である。詳細には、基材上に点着された液滴の形状を保ちつつ点着部位(スポットエリア)の外部(バックグラウンドエリア)のプローブに結合する反応性基を不活性化させる事が本発明の特徴である。
【0016】
ここで、上記工程(II)には、ブロッキング化合物により不活性化させる工程を含むことができる。点着された液滴形状を変形させずにブロッキング化合物によるブロッキングを行う手段としては、気相処理、噴霧処理などが挙げられる。気相処理は、常温または加熱器などによる熱で気化するブロッキング化合物(例えば低分子化合物など)を用いる場合に特に有効であり、密閉チャンバまたは加熱器付きの密閉チャンバ内にブロッキング化合物と点着が完了したプローブ固定担体を密閉し、一定時間放置する事で不活性化が達成され得る。噴霧処理は、常温で気化しないブロッキング化合物(例えば高分子化合物や分子間力が強い極性化合物)を用いる場合に特に有効であり、ブロッキング化合物を適当な溶媒に溶解してブロッキング化合物溶液とし、該ブロッキング化合物溶液をスプレーなどの噴霧装置によりミスト状にし、点着が完了したプローブ固定担体にブロッキング液を吹き付ける事で達成され得る。
【0017】
気化させたブロッキング化合物による不活性化は、真空蒸着装置、またはポリカーボネート製の簡易的な真空デシケータでも可能であるが、真空空間を生成出来る装置内で行う事が望ましい。沸点が高い液体状または固定状のブロッキング化合物を使用する場合、真空空間により、ブロッキング化合物の沸点を下げ、比較的低温でもブロッキング化合物を蒸発させる事が出来るので、熱に弱いブロッキング化合物においてこの方法は有効である。
【0018】
また、噴霧処理については、スプレーノズルが組み込まれた製造ラインを構築し、ライン上でスプレーノズルからブロッキング化合物溶液を噴霧して液滴が点着された固相支持体に塗布するような工程で行う事が望ましい。この時、スプレーノズルから吐出されるブロッキング化合物溶液のミスト径は10μm〜20μm程度、理想的には1μm〜5μmである事が望ましい。ミスト径が高いとミストの痕跡が認められる場合があり、見た目に良くない。また、点着されたプローブを含有する液滴の直径は50μm〜500μm程度であるので、この大きさと同じ程度のミスト径の場合、物理的に点着された液滴の形状を変えてしまう事になり本発明意図の観点ではあまり好ましくない。
【0019】
また、ブロッキング化合物を使用せず、さらに液滴形状を変形させないでブロッキングを行う手段がある。例えば、液滴を基材上に形成してから液滴の形状に沿ったマスクを該基材上に数百μmのスペースを空けた状態でかけ、バックグラウンドエリアに存在する反応性基を、X線、α線、β線、γ線、高エネルギー中性子線、電子線、真空紫外線、紫外線等の高エネルギーな電磁波あるいは粒子線などにより不活性化しても良い。
【0020】
また、本発明における点着された液滴に存在する未反応プローブを除去する工程とは、液滴を水または洗浄剤などの液相処理にて除去することである。液相処理後の乾燥は、圧縮空気などを用い、水分を除去または基材をスピンさせて水分を除去した後に、自然乾燥または加熱などにより乾燥させる。
【0021】
また、本発明に使用されるプローブとしては、標準物質と特異的に結合可能な物質であれば特に限定されないが、タンパク質(複合タンパク質を含む)、核酸、糖鎖(複合糖質を含む)、脂質(複合脂質を含む)等の生体高分子などが含まれる。具体的には、酵素、ホルモン、フェロモン、抗体、抗原、ハプテン、ペプチド、合成ペプチド、DNA、合成DNA、RNA、合成RNA、PNA、合成PNA、ガングリオシド、レクチンなどが挙げられる。特に、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはペプチド核酸が好ましい。さらに、ヌクレオチド誘導体またはその類縁体も含まれる。
【0022】
また、プローブにチオール基を導入する際、例えば、自動合成するDNAをプローブとする場合にはDNA自動合成機での合成時にチオールモディファイア(Thiol−Modifier)(グレンリサーチ(GlenResearch)社製)を用いる事ができる。なお、効率良くチオール基を導入することができれば、特に限定されるものではない。
【0023】
一方、プローブにアミノ基を導入する際、例えば、自動合成するDNAをプローブとする場合にはDNA自動合成機での合成時にアミノモディファイア(amino−Modifier)(グレンリサーチ(GlenResearch)社製)を用いる事ができる。なお、効率良くアミノ基を導入することができれば、特に限定されるものではない。
【0024】
また、本発明における、プローブを固定するための固相支持体の点着手段としては、プローブを水性媒体に溶解あるいは分散した溶液を、インクジェット法、ピン法あるいはピン&リング法などにより基材に点着(スポット)する方法がある。
【0025】
上述した方法の中でも特にインクジェット法は高密度で尚且つ正確なスポッティングができることから好適なスポッティング方法である。インクジェット法とは、ごく細いノズルの中にプローブを含む溶液を入れ、ノズルの先端近くを瞬間的に加圧ないし加熱し、ノズルの先端から正確に極微量のプローブを含む溶液を飛び出させ、空間を飛翔させて基材面に付着させるという方法である。インクジェット法による点着において、プローブ溶液に含まれる成分は、プローブ溶媒としてインクジェットヘッドから吐出させた時にプローブに対して実質的に影響を与えないものであって、且つインクジェットヘッドを用いて基材上に正常に吐出可能である溶媒組成を満たすものであれば、特に限定されるものではない。例えば、インクジェットヘッドが溶媒に熱エネルギーを付与して吐出させる機構を備えるバブルジェットヘッドである場合、グリセリン、チオジグリコール、イソプロピルアルコール、アセチレンアルコールを含む液体はプローブ溶媒に含まれる成分として好ましいものである。更に具体的に述べるのであれば、グリセリン5〜10wt%、チオジグリコール5〜10wt%、アセチレンアルコール0.5〜1wt%を含む液体がプローブ媒体として好適に用いられる。また、インクジェットヘッドが圧電素子を用いて溶液を吐出させるピエゾジェットヘッドである場合、エチレングリコール、イソプロピルアルコールを含む液体はプローブ溶媒に含まれる成分として好ましいものである。更に具体的には、エチレングリコール5〜10wt%、イソプロピルアルコール0.5〜2wt%を含む液体がプローブ溶媒として好適に用いられる。
【0026】
このようにして得られたプローブ溶液をインクジェットヘッドより吐出させ基材上に付着させた時、スポットの形状が円形で、また吐出された範囲が広がることがない。高密度にプローブ溶液をスポッティングした場合にも、隣接するスポットとの連結を有効に抑えることができる。なお、本発明のプローブ溶液の特性は上記のものに限定されるものではない。
【0027】
また、上述したピン法は接触ピンを用いて基材にプローブを点着するという方法であり、簡便な設備でプローブを固定することができるので、フィジビリティを見る場合において好都合である。
【0028】
また、本発明における基材は、プローブを固定し、得られたプローブ固定基材を用いて検知物質(標的物質)を検出するのに支障のないものであれば特に限定されるものではないが、例えば無機材料または高分子材料などを挙げることができる。これらは、公知の手法を用いて材料表面に、アミノ基、マレイミド基、アクリルアミド基、N−ヒドロスクシンイミジルエステル基、ホルミル基、カルボキシル基、エポキシ基などを導入するか、元来これらの反応性基を含む材料を選定することが望ましいが、これらの反応性基に限定されるものではない。
【0029】
特に機材に無機材料を使用する場合は塩基性基を導入するために、基材表面を例えばアミノ基を有するシランカップリング剤で処理したものが好ましい。この場合には効率的にシランカップリング剤で処理できるような材質、特には石英、ガラス、シリカ、アルミナ、タルク、クレー、アルミニウム、水酸化アルミニウム、鉄、マイカなどが好ましいが、酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄などの酸化物などを使用することもできる。また、標的物質の検出や材料としての汎用性を考慮すると、アルカリ成分などが含まれない無アルカリガラスもしくは石英基板材料が特に好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤としては、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリアルコキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジアルコキシシランなどが挙げられる。アルコキシシリル基としては、加水分解が速やかに行えるメトキシシリル基もしくはエトキシシリル基が好ましい。
【0030】
また、高分子材料としては、アミノ基などの塩基性基を有する高分子材料または、塩基性基を容易に導入できる高分子材料が好ましい。例えば、末端にアミノ基を持つポリアミドなどを利用する方法、保護したアミノ基とビニル基を持つ物質を共重合させ、保護基を外す方法などがある。
【0031】
なお、本発明におけるシランカップリング剤とは、樹脂等の有機化合物と反応しうる有機官能基と、ガラス等の無機化合物とシロキサン結合を介して結合し得る部分を併せ持つ化合物のことをいう。
【0032】
また、基材の形状は制約されるものではないが、DNAチップを例としてあげるならば、検出方法および装置などの汎用性から基板状であることが好ましい。さらに、基板材料は、表面の平滑性が高い基板材料であることが好ましく、具体的には1インチ×3インチ、厚さ0.7〜1.5mm程度の基板であることが好ましい。
【0033】
また、本発明におけるブロッキング化合物は基材に反応しうるプローブの反応性基と同じ反応性基を分子内に含むものが好ましい。プローブの反応性基と同じ反応性基をブロッキング化合物の分子内に持つ事で、プローブを基板に固定する結合方法と同じメカニズムでバックグラウンドエリアのブロッキング反応が行えるため、制御がし易い事に利点がある。
【0034】
また、本発明におけるブロッキング化合物は標的物質に吸着しない化学的基本骨格を有する事が望ましい。さらには、ブロッキング反応が終わってから標的物質と相互作用しないように、反応活性基は分子内に1つ含有している事が望ましい。但し、標的物質と相互作用しないような活性基であれば、2つ以上分子内に含有されたブロッキング化合物を用いてもよい。
【0035】
具体的なブロッキング化合物としてはプローブの反応活性基がチオール基である場合、図1に図示されるような化学的基本骨格を持つ化合物が望ましい(図1においてn=0〜100、m=0〜25、R1〜R22は独立してH、OH、CH3、NH2、CH2−CH3、CH=CH3、X、CH2X、CHX2、CH2−CH2X、CX3、CX2−(CX2)m−CX3、O−(CH2)m−CH3、(CH2)m−OH、(CH2)m−C(=O)−OH、(CH2)m−NH2、(CH2)m−SH、およびC(=O)−(CH2)m−CH3の何れかから選択され、各Xはハロゲンから選択される。但し、CX2−(CX2)m−CX3、O−(CH2)m−CH3、(CH2)m−OH、(CH2)m−C(=O)−OH、(CH2)m−NH2、(CH2)m−SHに関して、(CX2)mと(CH2)mの箇所は分岐状であっても良く、分岐した末端はCX3、CH3、OH、C(=O)−OH、C(=O)−H、NH2、SHの何れかから選択される)。
【0036】
また、プローブの反応活性基がアミノ基である場合、図2に図示されるような化学的基本骨格を持つ化合物が望ましい(図2においてn=0〜100、m=0〜25、R23〜R95は独立してH、OH、CH3、NH2、CH2−CH3、CH=CH3、X、CH2X、CHX2、CH2−CH2X、CX3、CX2−(CX2)m−CX3、O−(CH2)m−CH3、(CH2)m−OH、(CH2)m−C(=O)−OH、(CH2)m−NH2 、(CH2)m−SH、およびC(=O)−(CH2)m−CH3の何れかから選択され、各Xはハロゲンから選択される。但し、CX2−(CX2)m−CX3、O−(CH2)m−CH3、(CH2)m−OH、(CH2)m−C(=O)−OH、(CH2)m−NH2、(CH2)m−SHに関して、(CX2)mと(CH2)mの箇所は分岐状であっても良く、分岐した末端はCX3、CH3、OH、C(=O)−OH、C(=O)−H、NH2、SHの何れかから選択される)。
【0037】
また、これらのブロッキング化合物の基材表面との反応確認は、TOF−SIMS(Time of Flight −Secondary Ion Mass Spectrometry)などのフラグメント検出値を二次元プロファイル化して解析する表面分析手法により可能である。具体的には、ブロッキング反応が完了したプローブ固定担体を、純水リンスし、N2ブローなどで乾燥させたものをTOF−SIMSにより表面分析を行う。チオール標識プローブとチオール基を含むブロッキング化合物の組み合わせに対してはS原子、アミノ標識プローブとアミノ基を含むブロッキング化合物の組み合わせに対してはN原子に着目してプローブ固定担体のフラグメント検出値を2次元プロファイル化し解析すると、スポットエリアと非スポットエリアのS原子またはN原子の検出値がブロッキングしていないものに比べ、検出値の差が少なくなっている事が分かる。またこの分析手法ではプローブの反応性基とブロッキング化合物の反応性基が同じであれば、S原子、N原子に限定されるものでなく反応性基特有のフラグメントに着目して分析する事も可能である。
【実施例】
【0038】
<実施例1>チオール標識DNAプローブを用いる場合のブロッキング
(i)プローブ合成および蛍光標識した標的物質(ターゲット)の合成
標的物質に対して特異的に結合可能なプローブとして一本鎖DNAプローブを用いた。DNA自動合成機を用いて配列番号1の一本鎖核酸を合成した。なお配列番号1の一本鎖DNA末端にはDNA自動合成機での合成時にチオールモディファイア(Thiol-Modifier)(グレンリサーチ(GlenResearch)社製)を用いる事によってメルカプト(SH)基を導入した。続いて通常の脱保護を行い、DNAを回収し、高速液体クロマトグラフィーにて精製し、以下の実験に用いた。
配列番号:1
5'HS-(CH2)6-O-PO2-O-ACTGGCCGTCGTTTTACA3'。
【0039】
また、上記記載の配列番号1の一本鎖DNAプローブと相補的な塩基配列を有する未標識の一本鎖DNAをDNA自動合成機で合成し、該一本鎖DNAプローブの5’末端にCy3を結合させて標識化した一本鎖DNA(ターゲット)を得た。
【0040】
(ii)プローブ固定担体の作製
[基板の洗浄]
プローブ固定担体の基材として、1インチ×3インチ角の合成石英ガラス基板を用いた。該石英ガラス基板の洗浄は以下の通り実施した。すなわち、純水ブラシ洗浄、純水リンス、アルカリ性洗剤超音波洗浄、純水リンス、純水超音波洗浄、純水リンス、窒素ブロー乾燥を定法に従って行い、これにより清浄面を有する石英ガラス基板を用意した。
【0041】
[表面処理]
アミノシランカップリング剤(商品名:KBM-603;信越化学工業(株)社製)を1wt%になるように溶解し、30分間撹拌してメトキシ基を加水分解させた。この水溶液にスライドガラスを30分間浸漬(温浴にて80℃に加温)させた後、取り出して純水で洗浄し、オーブン中120℃で1時間ベーク処理を行った。
【0042】
次いで、N−マレイミドカプロイロキシスクシンイミド(Dojin社製;以後、EMCSと略す)を2.7mg秤量し、ジメチルスルホキシド(DMSO)/エタノールの1:1溶液に最終濃度が0.3mg/mlとなるように溶解したEMCS溶液を用意した。前記のベーク処理したアミノ基導入石英ガラス基板を該EMCS溶液に室温で2時間浸漬して、表面にマレイミド基を導入した。EMCS溶液処理後、基板をDMSO/エタノール混合溶液、エタノールで順次洗浄し、窒素雰囲気下で乾燥させた。
【0043】
[プローブ固定]
上記<実施例1>(i)で合成した一本鎖DNAプローブ断片(配列番号:1)をグリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、アセチレンアルコール(商品名:アセチレノールE100;川研ファインケミカル(株)社製)1.0wt%を含む水溶液に溶解させた。上記水溶液中のプローブ濃度は8.75、26.25、43.75、61.25、87.5μMの5種類を調製した。ここで基板上のマレイミド基量に対し、チオール標識プローブの反応飽和濃度は50μM程度である事が分かっている。該プローブ含有溶液をバブルジェットプリンター(商品名:BJF−850、キヤノン(株)製)用インクタンクに充填し、印字ヘッドに装着した。なお、前記バブルジェットプリンターは、平板へのインクジェット印刷が可能なように改造を施したものである。また、該改造バブルジェットプリンターは、所定のファイル作成方法に従って印字パターンを入力することにより、約5plのDNA溶液液滴を、約120μmピッチでスポッティングすることが可能となっている。続いて、この改造バブルジェットプリンターを用いて、ガラス基板表面にプローブDNA溶液のスポッティング操作を行った。その後、該基板を30分間、恒温恒湿チャンバ内に静置してプローブと基板に反応させて固定しプローブ固定担体とした。
【0044】
(iii)プローブ固定担体のブロッキング
ブロッキング剤としては図1に示した化合物(1)において、R1=CH3、n=2の1‐プロパンチオール(1‐propanethiol)を用いて検討した。
【0045】
ブロッキングは1‐プロパンチオール10mlが入ったペトリ皿を密閉チャンバ内にセットし、続いて上記(ii)で作製したスポッティング溶液が点着されたままのプローブ固定担体をカセットにセットして上記密閉チャンバに入れ封止した。この状態で常温にて1時間放置し気相処理をすることにより、スポット周りのブロッキング反応を行った。次いで、1M NaCl/50mM リン酸緩衝溶液(pH7.0)で洗浄し、純水で軽く洗浄した後、窒素ブロー乾燥してハイブリダイゼーション用のプローブ固定担体を得た。また比較として、ブロッキングを行っていないプローブ固定担体も作製した。これについては上記(ii)で作製したスポッティング溶液が点着された状態のプローブ固定担体を1M NaCl/50mM リン酸緩衝溶液(pH7.0)で洗浄し、純水で軽く洗浄した後、窒素ブロー乾燥した。
【0046】
(iv)ハイブリダイゼーションおよび蛍光評価
前記<実施例1>(i)で合成した蛍光標識した標的物質を1M NaCl/50mM リン酸緩衝溶液(pH7.0)に最終濃度5nMとなるように溶解し、この溶液中に前記の洗浄済みのプローブ固定担体を浸漬し、温度45℃で2時間ハイブリダイゼーション処理を行った。処理後、プローブ固定担体を1M NaCl/50mMリン酸緩衝溶液(pH7.0)により洗浄し、ハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを洗い流した。次いで、純水で軽く洗浄し、塩分除去した後に、窒素ブローにて乾燥した。
【0047】
該プローブ固定担体のスポットの蛍光強度を蛍光スキャナー(商品名:GenePix4000B/Axon Instruments, Inc.製)を用いて測定した。なお、測定条件は実施例、比較例とも同一とした(蛍光強度測定波長:532nm)。
【0048】
(v)結果
1−プロパンチオールによるブロッキングありとなしとでスポット周りの蛍光輝度(バッグラウンド)の平均輝度をプローブ濃度に対してプロットすると図3のような結果になった(バックグラウンドの基準値をプローブ濃度が一番低い8.75μMでブロッキングなしの条件に設定)。
【0049】
ブロッキングなしの条件では、プローブ飽和濃度以上である61.25μMで急激にバックグラウンドの上昇が見られる(蛍光画像ではスポット流れが激しく起きている事が確認されている)。一方、ブロッキングありの条件では、飽和濃度以上である61.25μM以上でもバックグラウンドの上昇は見られず、つまり、本発明の点着したプローブ液滴形状を変形させない手段による不活性化(ブロッキング)を達成している事が示された。
【0050】
<実施例2>アミノ標識DNAプローブを用いる場合のブロッキング
(i)プローブ合成およびその相補鎖プローブおよび蛍光標識した標的物質(ターゲット)の合成
標的物質に対して特異的に結合可能なプローブとして一本鎖DNAプローブを用いた。DNA自動合成機を用いて配列番号2の一本鎖核酸を合成した。なお配列番号2の一本鎖DNA末端にはDNA自動合成機での合成時にアミノモディファイア(Amino−Modifier)(グレンリサーチ(GlenResearch)社製)を用いる事によってアミノ(NH2)基を導入した。続いて通常の脱保護を行い、DNAを回収し、高速液体クロマトグラフィーにて精製し、以下の実験に用いた。
配列番号:2
5'NH2-(CH2)6-O-PO2-O-ACTGGCCGTCGTTTTACA3'。
【0051】
また、上記記載の配列番号2の一本鎖DNAプローブと相補的な塩基配列を有する未標識の一本鎖DNAプローブをDNA自動合成機で合成した。さらに該一本鎖DNAプローブの5’末端にCy3を結合させて標識化した一本鎖DNA(ターゲット)を得た。
【0052】
(ii)プローブ固定担体の作製
[基板の洗浄]
プローブ固定担体の基材として、1インチ×3インチ角の合成石英ガラス基板を用いた。該石英ガラス基板の洗浄は以下の通り実施した。すなわち、純水ブラシ洗浄、純水リンス、アルカリ性洗剤超音波洗浄、純水リンス、純水超音波洗浄、純水リンス、窒素ブロー乾燥であり、これは定法に従って行い、これにより清浄面を有する石英ガラス基板を用意した。
【0053】
[表面処理]
エポキシ基を結合したシラン化合物(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)を含むシランカップリング剤(商品名:KBM403;信越化学工業株式会社製)を1wt%含有する50wt%メタノール水溶液を室温下で3時間攪拌し、上記シラン化合物中のメトキシ基を加水分解した。ついでこの溶液を上記基板表面にスピンコーターで塗布し、100℃で5分間加熱、乾燥して基板表面にエポキシ基を導入した。
【0054】
[プローブ固定]
NaClを50mMの濃度で含むTE溶液(pH8)に、アミノ標識DNAプローブ及び未標識の一本鎖DNAプローブをそれぞれ最終濃度が200μMとなるように溶解し、アミノ標識DNAプローブ溶液及び未標識一本鎖DNAプローブ溶液を調製した。そしてアミノ標識DNAプローブを含む溶液100μlに対して未標識の一本鎖DNAプローブを含む溶液を100μl加えて混合し、この混合溶液を90℃から25℃まで直線的に2時間かけて冷却し、各々のDNAプローブと各々の一本鎖核酸とのハイブリッドを形成させた。次に上記配列番号:2のアミノ標識DNAプローブのハイブリッドを含む溶液を、グリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、及びアセチレンアルコール(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)1wt%を含む水溶液に加え、ハイブリッドの最終濃度が8、24、40、56、72、88、104μMとなるように調整した(7種類の濃度で検討)。ここで基板上のエポキシ基量に対し、アミノ標識プローブの反応飽和濃度は65μM程度である事が分かっている。
【0055】
該プローブ含有溶液を、実施例1と同様に前記基板にスポッティングした後、恒温恒湿チャンバ内に基板を12時間置き、プローブのアミノ基と基板のエポキシ基とを反応させ、プローブ固定担体とした。なおプローブの塩基のアミノ基は完全相補的な一本鎖DNAとハイブリッドを形成しているため、基板表面のエポキシ基と反応することはない。
【0056】
(iii)プローブ固定担体のブロッキング
ブロッキング剤としては図2に示した化合物(9)において、R23=OH、n=2のエタノールアミン(Etanolamine)を用いて検討した。
【0057】
ブロッキングはエタノールアミン10mlが入ったペトリ皿をホットプレートにセットした状態で密閉チャンバ内にセットし、続いて上記(ii)で作製したスポッティング溶液が点着されたままのプローブ固定担体をカセットにセットして上記密閉チャンバに入れ封止した。次いでホットプレートを60℃に設定してペトリ皿中のエタノールアミンを気化させ、その状態で6時間放置して、スポット周りのブロッキング反応を行った。次に基板を80℃の純水で10分間洗浄し、基板に結合しているプローブとハイブリッドを組んでいる相補鎖をプローブから解離させると共に洗い流し、窒素ブロー乾燥してハイブリダイゼーション用のプローブ固定担体を得た。また比較として、ブロッキングを行っていないプローブ固定担体も作製した。これについては上記(ii)で作製したスポッティング溶液が点着された状態のプローブ固定担体を80℃の純水で10分間洗浄し、基板に結合しているプローブとハイブリッドを組んでいる相補鎖をプローブから解離させると共に洗い流し、窒素ブロー乾燥した。
【0058】
(iv)ハイブリダイゼーションおよび蛍光評価
前記(i)で合成した蛍光標識した標的物質を1M NaCl/50mM リン酸緩衝溶液(pH7.0)に最終濃度5nMとなるように溶解し、この溶液中に前記の洗浄済みのプローブ固定担体を浸漬し、温度45℃で2時間ハイブリダイゼーション処理を行った。処理後、プローブ固定担体を1M NaCl/50mM リン酸緩衝溶液(pH7.0)により洗浄し、ハイブリダイズしなかった一本鎖DNAを洗い流した。次いで、純水で軽く洗浄し、塩分除去した後に、窒素ブローにて乾燥した。
【0059】
該プローブ固定担体のスポットの蛍光強度を蛍光スキャナー(商品名:GenePix 4000B/Axon Instruments, Inc.製)を用いて測定した。なお、測定条件は実施例、比較例とも同一とした(蛍光強度測定波長:532nm)。
【0060】
(v)結果
エタノールアミンによるブロッキングありとなしでスポット周りの蛍光輝度(バックグラウンド)の平均輝度をプローブ濃度に対してプロットすると図4のような結果になった(バックグラウンドの基準値をプローブ濃度が一番低い8μMでブロッキングなしの条件に設定)。
【0061】
この結果より、ブロッキングなしの条件はプローブ飽和濃度以上である72μMで急激にバックグラウンドの上昇が見られる(蛍光画像ではスポット流れが激しく起きている事が確認されている)。一方、ブロッキングありのほうは飽和濃度以上である72μM以上でもバックグラウンドの上昇は見られず、本発明の点着したプローブ液滴形状を変形させない手段による不活性化(ブロッキング)を達成している事が示された。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】チオール標識プローブを用いる場合のブロッキング化合物の一例を示す。
【図2】アミノ標識プローブを用いる場合のブロッキング化合物の一例を示す。
【図3】プローブ濃度に対する1-プロパンチオールによるブロッキング効果を示す図である。
【図4】プローブ濃度に対するエタノールアミンによるブロッキング効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プローブを固定させるための反応性基を含む基材を材料とするプローブ固定担体の製造方法において、以下の(I)〜(III)の工程を含むプローブ固定担体の製造方法。
(I)プロ−ブを含有する液滴を該基材上に点着する工程。
(II)該基材の点着領域以外に存在する反応性基を不活性化する工程。
(III)点着された液滴に存在する未反応プローブを除去する工程。
【請求項2】
前記不活性化は、ブロッキング化合物により行う事を特徴とする請求項1に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項3】
前記不活性化は、点着した液滴形状を変化させない手段で行う事を特徴とする請求項1または2に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項4】
前記点着した液滴形状を変化させない手段は気相処理法である事を特徴とする請求項3に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項5】
前記気相処理法は、気化したブロッキング化合物を充満させた密閉チャンバ内に前記(I)の工程が完了した基材を封入して行う方法である事を特徴とする請求項4に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項6】
前記点着された液滴形状を変化させない手段は噴霧処理法である事を特徴とする請求項3に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項7】
前記噴霧処理法は、ブロッキング化合物を溶解したブロッキング溶液をスプレー装置によりミスト状にして基材上に吹き付ける方法である事を特徴とする請求項6に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項8】
前記点着はインクジェット法を用いて行う事を特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項9】
前記インクジェット法はバブルジェット方式である事を特徴とする請求項8に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項10】
前記インクジェット法はピエゾジェット方式である事を特徴とする請求項8に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項11】
前記点着はピン法を用いて行う事を特徴とする請求項1〜7の何れかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項12】
液滴中のブローブの基材に結合し得る反応性基がXである時、ブロッキング化合物は反応性基Xを分子内に含む事を特徴とする請求項2〜11の何れかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項13】
前記反応性基Xはチオール基、アミノ基、マレイミド基、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル基、ホルミル基、カルボキシル基、アクリルアミド基、エポキシ基の何れかである事を特徴とする請求項12に記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項14】
前記ブロッキング化合物は標的物質に対し不活性な化学的構造を持つ事を特徴とする請求項2〜13のいずれかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項15】
プローブはオリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはペプチド核酸である事を特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のプローブ固定担体の製造方法。
【請求項16】
プローブはヌクレオチド誘導体またはその類縁体である事を特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のプローブ固定担体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−343270(P2006−343270A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−170777(P2005−170777)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】