説明

非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルム、その製造方法、およびそれへの透かしパターン形成方法

非架橋ランダムSAN-ポリマーを分散した状態で有し、且つ無機不透明顔料、白色剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、および難燃剤からなる成分の群から少なくとも一の成分を分散または溶解した状態で有する、連続相の線状ポリエステルマトリックスから本質的になるフィルムであって、ここで当該フィルムが微小空洞を含有し、非透明で、軸方向に延伸されており;線状ポリエステルマトリックスが、少なくとも一の芳香族ジカルボン酸、少なくとも一の脂肪族ジオール、および任意で少なくとも一の脂肪族ジカルボン酸から本質的になるモノマー単位を有し;線状ポリエステルの非架橋SAN-ポリマーに対する重量比が2.0:1から19.0:1の範囲であり;そして前記少なくとも一の芳香族ジカルボキシレートモノマー単位がイソフタレートであり、前記イソフタレートが、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボキシレートモノマー単位の15モル%以下の濃度で前記線状ポリエステルマトリックス中に存在する、フィルム;非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの、合成紙としての使用;非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムを備えた画像記録素子;非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法;およびそれへの透かしパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルム、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許3755499は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、およびエチレンテレフタレートおよびエチレンイソフタレートのコポリマーからなる群から選択される線状ポリエステルと、ポリマー混合物に対して7から35重量%の混合率で混合される、ガラス転移点が前記線状ポリエステルよりも高い高分子であってポリメチルメタクリレート、アクリロニトリルおよびスチレンのコポリマー、アクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンのコポリマーからなる群から選択されるものとから本質的になる書き込み用の合成シートを開示し、前記合成シートは、該シートの凸凹した表面に核を構成するために前記高分子が前記線状ポリエステルに均一に分散しているため表面のざらつきが非常に細かい。これら混合されたポリマー材料の同時および連続的な延伸は、通常85から95℃で、元の長さの2から3.5倍の延伸比率で行われ、シートはその最終用途に応じた書き込み易さおよび不透明度に調整されることが開示されている。米国特許3755499の発明の目的は、表面状態、不透明度および他の必要特性が向上された、書き込みおよび他の同様な目的のための合成シートの提供であると述べられている。米国特許3755499はさらに、混合される熱可塑性樹脂が、形成時に線状ポリエステルに実質的に均一に混合および分散される限り、線状ポリエステルと相溶性を有しても有さなくてもよいこと、形成されたフィルムが、透明であるかどうかにかかわらず、延伸時に均一でマットな表面を実現し、このように得られたフィルムが熱収縮性があり、書き込み特性の点で許容可能であり、且つ適切な不透明度を有しうること、そして高温におけるフィルムサイズの安定性をさらに向上するために、線状ポリエステルの延伸温度以上、且つ混合熱可塑性樹脂および線状ポリエステルの融点以下の温度で熱処理されうることを開示している。実施例2は、100から105℃のガラス転移温度を有するアクリロニトリルおよびスチレンのコポリマーを、ポリエチレンテレフタレートと7および35重量%の濃度で混合すること、およびTダイからの溶融押出により150μm厚のフィルム試料を形成することを例示している。これらのフィルムシートは次いで、二軸延伸機により、85℃で、長手方向および幅方向にフィルムの元の長さの2倍の延伸比率で同時に延伸され、また、85℃で、長手方向へ3倍および幅方向へ3倍に同時二軸延伸もされた。結果として得られたフィルムは、以下の特性を有すると報告されている:

米国特許3755499は、無機不透明顔料の添加の影響、またはここで開示された不透明微小空洞含有フィルムへの像様過熱の影響を明らかにできていない。
【0003】
米国特許4174883は、分散媒ポリマーおよび分散した分散相ポリマーから本質的になる溶融混合物からなる光散乱部材を備えたリアプロジェクションスクリーンを開示し、前記溶融混合物は前記ポリマーを溶融して混合することによって得られ、ここで分散媒ポリマーの屈折率と分散相ポリマーの最大屈折率の絶対差分値が0.01から0.25であり、分散媒ポリマーは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、6,6-ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリスチレンから選択されるメンバーであり、分散相ポリマーは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン、ポリカルボネート、ニトリルゴム、ネオプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、およびスチレンアクリロニトリルコポリマーからなる群から選択される少なくとも一のメンバーである。
【0004】
米国特許4128689は、熱可塑性シートまたはウェブの作成方法を開示し、この方法は、(i)発泡性熱可塑性ポリマー混合物をスクリュー押出機のダイから押し出してシートまたはウェブ状の発泡押出物を生成する工程、ここで該発泡性熱可塑性ポリマー混合物は少なくとも一の第一および第二の熱可塑性ポリマーを含み、第一の熱可塑性ポリマーは実質的に結晶性であり、第二の熱可塑性ポリマーよりも融点が高く、それと実質的に混和せず、そして押出温度は第一熱可塑性ポリマーの融点と等しいかそれより高い;(ii)工程(i)からの発泡押出物を、ダイから出る際に押出方向に延伸して、発泡押出物のセルのほとんどを破裂させ且つ壊れたセルの壁を延伸方向に伸ばす工程;(iii)工程(ii)からの延伸押出物をプラスチックのまま圧縮する工程;および(iv)工程(iii)からの発泡、延伸および圧縮押出物を冷却する工程を含む。さらに、米国特許4128689は、好適には第一の熱可塑性ポリマーが、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン66、およびナイロン11から選択され、好適には第二熱可塑性ポリマーが、好ましくは酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロース、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリルコポリマー、ポリカルボネート、スチレンおよびメチルスチレンコポリマー、および酸化フェニレンポリマーから選択される非晶性熱可塑性ポリマーであることを開示している。
【0005】
米国特許4243769は、ポリマーの単純ブレンドでは明らかでない特性を有し、且つ自然発生的に成分ポリマーに分離しない、極めて均一な恒久的混和性ポリマー混合物の提供方法を開示し、この方法は、(a)ニトリル官能性を含むポリマー成分を(b)ニトリルと凝縮可能なヒドロキシルまたはエステル化ヒドロキシル官能基を含むポリマー成分と均一に混合することを含み、前記ポリマー成分(a)および(b)は、約0.001から8重量%のポリマーおよび酸相溶剤の酸の混合物の存在下で、大気温度で固形の前記恒久的混和性ポリマー混合物を提供するのに十分な時間、その単純ブレンドから自然発生的に分離する傾向がある。
【0006】
さらに、米国特許4243769は、ニトリル基物質が、好適にはポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、メタクリロニトリル-アクリロニトリル-酢酸ビニルターポリマー、スチレン-クリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-アクリル酸エステルコポリマー、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンターポリマー、アクリロニトリル-スチレン-αメチルスチレンターポリマー、ニトリルゴム、ポリカプロラクタム-アクリロニトリルグラフトコポリマー、ポリエチレン-アクリロニトリルグラフトコポリマー、ポリエチレンテレフタレート-アクリロニトリルグラフトコポリマー、シアノ-スチレン-メチルメタクリレートコポリマー、アクリロニトリル-メチルビニルエーテルコポリマー、メタクリロニトリル-α-メチルスチレンコポリマー、シアノエチル化セルロース、シアノエチル化ポリビニルアルコール、シアノエチル化ポリアミド、シアノエチル化ポリスチレン、およびシアノエチル化シリコンポリマーからなる群から選択され;そして化学的凝縮性物質が、好適にはポリビニルアルコール、未反応アルコール基を含有するポリビニルブチラール、エチレン-酢酸ビニル、鹸化または一部鹸化されたエチレン-酢酸ビニルコポリマー、エチレン-酢酸ビニル-二酸化硫黄ターポリマー、塩化ビニル-酢酸ビニル、酢酸ビニルでグラフトされたナイロン、酢酸ビニルでグラフトされたポリテトラフルオロエチレン、ブチルメタクリレートでグラフトされたポリビニルアルコール、酢酸ビニル-イソブチルビニルエーテルコポリマー、スチレン-アリルアルコールコポリマー、ポリエチレンアジペート、エチレンおよびプロピレングリコールを有するマレイン酸およびフタル酸のスチレン化ポリエステル、ポリ(エチレンテレフタレート)、セルロース、ヒドロキシエチルメタクリレートコポリマー、ヒドロキシブチルビニルエーテルコポリマー、ヒドロキシエチルメタクリルアミドコポリマー、ポリエチレングリコール、ヒドロキシル末端ポリスチレン、ヒドロキシル末端ポリブタジエン、およびヒドロキシル末端ポリイソプレンからなる群から選択される。
【0007】
米国特許4342846は、(1)ジカルボン酸およびジオールの反応により形成されるポリエステル樹脂;および(2)架橋(メタ)アクリレート、架橋スチレン-アクリロニトリル、および非架橋スチレン-アクリロニトリルポリマー成分を含む耐衝撃性インターポリマーを含むブレンドを開示している。
【0008】
欧州特許公開0436178A2は、少なくとも部分的に空隙で縁取られている架橋ポリマーのマイクロビーズをその中に分散せしめている連続延伸ポリマーマトリックスからなり、前記マイクロビーズが前記延伸ポリマー重量を基にして5〜50重量%存在し、前記空隙が前記造形品の2〜60容量%を占めることを特徴とするポリマー性造形品を開示している。欧州特許公開0436178A2はさらに、前記架橋ポリマーが好適には、一般式Ar−C(−R)=CH(式中、Arは芳香族炭化水素基かまたはベンゼン系の芳香族ハロ炭化水素基を表し、Rは水素またはメチル基である)を有するアルケニル芳香族化合物;式CH=C(−R’)−C(−OR)=O(式中、Rは水素および炭素原子数約1〜12個のアルキル基からなる群から選択され、R’は水素およびメチルからなる群から選択される)のモノマーを含むアクリレート型モノマー;塩化ビニルおよび塩化ビニリデン、アクリロニトリルおよび塩化ビニル、臭化ビニル、式CH=CH−O−C(−R)=O(式中、Rは炭素原子数2〜18個のアルキル基である)を有するビニルエステルのコポリマー;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸、フマール酸、オレイン酸、ビニル安息香酸;テレフタル酸およびジアルキルテレフタルもしくはそれらのエステル形成性誘導体を、一連のHO(CHOH(式中、nは2〜10の範囲内の整数である)のグリコールと反応させることにより製造され且つポリマー分子内に反応性オレフィン結合を有する合成ポリエステル樹脂;反応性オレフィン不飽和を有する第2の酸またはそのエステルおよびそれらの混合物を20重量%まで共重合せしめた前記のポリエステルからなる群から選択されるメンバーである重合性有機物質、並びにジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジメタクリレート、オイアリルフマレート、ジアリルフタレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される架橋剤である。
【0009】
欧州特許公開0654503(米国特許5457018に対応)は、50から97重量%の線状ポリエステルと3から50重量%のスチレン含有ポリマー、例えばアクリロニトリル、ブタジエンおよびスチレンのグラフトポリマー(ABS)、スチレン-アクリロニトリルコポリマーまたは耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、とのポリマーブレンドから作られた造形品を開示し、ここでパーセンテージはポリエステルとスチレン含有ポリマーの合計に関連する。欧州特許公開0654503はさらに、好適なポリエステルが少なくとも80重量%のポリエチレンテレフタレートを含有し、および最大20重量%のポリエチレンイソフタレートを含有しうること、および、発明による支持材がさらなる添加物、例えば顔料、特にTiO、BaSO、CaCO、蛍光増白剤または青色色素を含んでよく、使用される成分の総重量に対して特に0.5から10重量%、好ましくは2から10、好ましくは3.5から6.5重量%の、好適にはアナタース型のTiO顔料が添加されることを開示している。実施例3においては、Mが約115,000およびM/M≦3の72重量%のスチレンおよび28重量%のアクリロニトリルから調製されたコポリマーを、使用される成分の総重量に対して15重量%でブレンドし、75℃で乾燥し、続いてPET押出機で溶解し、スロットから押し出し、長手方向に延伸し、下引層を塗布し、幅方向に延伸して、160℃で1分間ヒートセットすることを開示している。
【0010】
特開平9−255806は、ポリエステルとポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂が混合されたポリマー混合物を少なくとも一軸に配向することにより得られる微細な空洞を多数有する空洞含有ポリエステルフィルムにおいて、該フイルム中に存在するポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂の長軸径が1〜50μm、厚さが10μm以下、長軸径と厚さの比が2〜100であることを特徴とした空洞含有ポリエステルフィルムを開示している。 特開平9−255806はさらに、ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、アイオノマー樹脂EPラバー等のコポリマーオリオレフィン樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリルニトリルコポリマー、スチレン-ブタンジエン-アクリルニトリルコポリマー等のポリスチレン系樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、またはポリアクリルニトリル系樹脂であってよいことを開示している。特開平9−255806は、非相溶性の熱可塑性樹脂としてポリスチレンまたはポリ(メチルペンテン)を用い、且つ二酸化チタンで着色した白色半透明の二軸延伸ポリ(エチレンテレフタレート)を例示している。
【0011】
特開2004−196951は、ブチレンテレフタレート繰り返し単位を主成分とするポリエステル(1)78〜55重量%、およびアクリロニトリル-スチレンコポリマー(2)22〜45重量%からなるフイルムであって、該アクリロニトリル-スチレンコポリマー(2)がポリエステル(1)中に粒子状に分散してなり、その分散粒子の長軸方向の平均粒子長が3〜50μm、短軸方向の平均粒子長が5μm未満、平均アスペクト比が2.0以上であり、且つ該フィルムが、その分散粒子の長軸方向と直交する方向の引裂強さ(T(⊥))と、長軸方向の引裂き強さ(T(s))とが、T(⊥)/T(s)>1.0の関係であって、該分散粒子の長軸方向と直交する方向に易引裂き性を有することを特徴とするポリエステルフィルムを開示している。
【0012】
米国特許6703193は、連続相ポリエステルマトリックスを含む微小空洞含有層を含む画像記録素子を開示し、前記マトリックス中には、架橋有機マイクロビーズと、前記微小空洞含有層のポリエステルマトリックスと混和しない非架橋ポリマー粒子とが分散している。米国特許6703193はさらに、ポリエステルマトリックスと混和しない非架橋ポリマー粒子だけがハロゲン化銀ディスプレイ媒体の微小空洞含有層で使用される場合、配合工程が不要となるので原料費および製造費が抑えられるが、比較的大きな空洞が結果として生じるため画像鮮鋭度が非常に低くなることを開示している。このように、費用面では、画像形成媒体における空洞形成開始剤として非混和性ポリマー粒子の使用が魅力的であるが、鮮鋭度に関する品質が極めて劣る。米国特許6703193はまた、架橋有機マイクロビーズと、ポリエステルと混和しない非架橋ポリマー粒子とを、微小空洞含有層のポリエステルマトリックス中に混合することによって、単独で使用されたときの空洞形成剤の欠点が、特に画像品質および製造可能性の点で相乗的に改善されることを予想外に発見したと開示している。架橋有機ビーズと、ポリエステルマトリックス中に混和しない非架橋ポリマー粒子とを組み合わせることにより、鮮鋭度品質が低い材料を加えることに付随して予想される劣化を伴わずに、マイクロビーズにより空洞形成された媒体の鮮鋭度に関する品質が向上し、マイクロビーズをマトリックスポリマーと配合するのに必要な時間および労力を低減することとなる費用のより低い原材料を使用する必要から、費用と製造時間および労力が有意に低減される。米国特許6703193はまた、空洞含有層は、白色度または鮮鋭度といった写真応答を改善することが知られている白色顔料、例えば二酸化チタン、硫酸バリウム、クレイ、炭酸カルシウムまたはシリカを含有していてもよいこと;および画像形成要素の色を変えるために添加剤を層に添加してもよいことを開示している。米国特許6703193には、そこで開示された不透明微小空洞含有フィルムへの像様加熱の影響に関する開示がない。
【0013】
先行技術の非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムは、不十分な不透明度および寸法安定性または十分な寸法安定性の欠如および不十分な不透明度を課題としている。さらに、特定の用途では、非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの白色度が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】1973年8月28日公開の米国特許3755499
【特許文献2】1979年11月20日公開の米国特許4174883
【特許文献3】1978年12月5日公開の米国特許4128689
【特許文献4】1981年1月6日公開の米国特許4243769
【特許文献5】1982年8月3日公開の米国特許4342846
【特許文献6】1991年7月10日公開の欧州特許公開0436178A2
【特許文献7】1995年5月24日公開の欧州特許公開0654503(米国特許5457018)
【特許文献8】1997年9月30日公開の特開平9−255806
【特許文献9】2004年7月15日公開の特開2004−196951
【特許文献10】2004年3月9日公開の米国特許6703193
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって、本発明の態様は、改良された非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムを提供することである。
【0016】
よって、本発明のさらなる態様は、改良された非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法を提供することである。
【0017】
よって、本発明の態様はまた、非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムにおける透かしパターン(透明パターン)形成方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる態様および利点は後述から明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
少量の無機不透明顔料の添加により、許容可能な寸法安定性の実現に必要な熱固定(セッティング)工程を低温で実行することが可能となり、その結果、驚いたことに、前記添加がない場合に必要となるより高温での熱固定で生じるよりも実質的に少ない、熱固定中の不透明度の低下がもたらされることが驚いたことに発見された。また、延伸中に通常用いられるよりも低い温度を用いることによって、そして特に長手方向への延伸中にポリエチレンテレフタレート-SAN-ポリマーのブレンドとともに通常用いられるよりも低い温度を用いることによって、そしてこれを実現可能とするためにポリエステルマトリックス組成を調整することによって、不透明度が上昇されることも驚いたことに発見された。
【0020】
本発明の態様は、非架橋ランダムSAN-ポリマーを分散した状態で有し、且つ無機不透明顔料、白色剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、および難燃剤からなる成分の群から少なくとも一の成分を分散または溶解した状態で有する、連続相の線状ポリエステルマトリックスから本質的になるフィルムによって実現され、ここでフィルムは白色で、微小空洞を含有し、非透明で、軸方向に延伸されており;線状ポリエステルマトリックスは、少なくとも一の芳香族ジカルボキシレート、少なくとも一の脂肪族ジメチレンおよび任意で少なくとも一の脂肪族ジカルボキシレートから本質的になるモノマー単位を有し;線状ポリエステルの非架橋SAN-ポリマーに対する重量比は2.0:1から19.0:1の範囲であり;そして前記少なくとも一の芳香族ジカルボキシレートモノマー単位はイソフタレートであり、前記イソフタレートは、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボキシレートモノマー単位の15モル%以下の濃度で前記ポリエステルマトリックス中に存在する。
【0021】
本発明の態様はまた、上述したフィルムの、合成紙としての使用によって実現される。
【0022】
本発明の態様はまた、上述したフィルムを備えた画像記録素子によって実現され、ここで画像は非写真画像である。
【0023】
本発明の態様はまた、i)ポリエステルマトリックス中に非架橋ランダムSAN-ポリマーを含む混合物を製造するために、少なくとも一の芳香族ジカルボン酸、少なくとも一の脂肪族ジオールおよび任意で少なくとも一の脂肪族ジカルボン酸からなる群から選択されるモノマー成分を有する少なくとも一の線状ポリエステルと、非架橋ランダムSAN-ポリマーと、無機不透明顔料、白色剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、および難燃剤からなる成分の群から少なくとも一の成分とを、混練機または押出機内で混合する工程と;ii)工程i)で生成した混合物を厚いフィルムに形成して急冷する工程と;およびiii)前記SAN-ポリマーのガラス転移温度と前記線状ポリエステルのガラス転移温度の間の温度で、前記厚いフィルムを>2.5N/mmの延伸張力で初期長の少なくとも2倍に延伸する工程を含む非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法によって実現され、ここでポリエステルマトリックスの前記非架橋ランダムSAN-ポリマーに対する重量比は2.0:1から19.0:1の範囲であり、そして前記少なくとも一の芳香族ジカルボキシレートモノマー単位はイソフタレートであり、前記イソフタレートは、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボキシレートモノマー単位の15モル%以下の濃度で前記ポリエステルマトリックス中に存在する。
【0024】
本発明の態様はまた、上述した非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムへの加圧により随意に補助される像様加熱工程を含む、透かしパターン形成方法によって実現される。
【0025】
本発明の好適な実施態様は、本発明の詳細な説明に開示する。
【0026】
本発明の詳細な説明
定義
本発明の開示において使用される用語「空洞」または「微小空洞」は、例えばポリエステルマトリックスと混合しない粒子に起因する空洞誘発粒子の結果として延伸中に配向ポリマーフィルムに形成されうるマイクロセル、微小クローズドセル、キャビティ、気泡、または細孔または多孔を意味する。空洞または微小空洞は、空気または何らかの気体で満たされていてもいなくてもよい。空洞または微小空洞は、最初は何も満たされていなくても、経時的に空気または何らかの気体で満たされることとなってもよい。
【0027】
用語「不透明」は、ASTM D589−97にしたがって、またはTAPPI,360 Lexington Avenue,New York,USA公開の不透明度試験T425m−60にしたがって決定される、可視光に対する不透明度のパーセンテージが90%を超えることを意味する。
【0028】
本発明の開示において使用される用語「泡」は、多くの気泡を液体または固体に閉じ込めることにより形成される物質を意味する。
【0029】
本発明の開示において使用される用語「フィルム」は、特定の組成を持つ押出シート、または互いに接触する同一または異なる複数の組成物を有する液体の共押出によって製造される、同一または異なる複数の組成物を有する多数のフィルムからなるシートである。用語「フィルム」はまた、軸方向および二軸延伸フィルムにも適用される。本開示において用語「フィルム」および「ホイル」は同じ意味で用いられる。
【0030】
本発明の開示において使用される用語「非写真画像」は、従来のハロゲン化銀ゲル状乳剤を用いて形成されていない画像を意味する。
【0031】
本発明の開示において使用される用語「線状ポリエステル中のジカルボキシレートモノマー単位」は、ジカルボン酸またはそのエステルに由来するモノマー単位を意味する。
【0032】
本発明の開示において使用される用語「線状ポリエステル中のジメチレン脂肪族モノマー単位」は、ジメチレン脂肪族ジオールまたはそのエーテルに由来するモノマー単位を意味し、ここで用語「脂肪族」は脂環式を包含する。
【0033】
本発明の開示において使用される用語「線状ポリステル」は、炭化水素ジメチレンおよびジカルボキシレートモノマー単位を含むポリエステルを意味する。
【0034】
本発明の開示において使用される用語「線状芳香族ポリエステル」は、脂肪族ジメチレンおよび芳香族ジカルボキシレートモノマー単位を含むポリエステルを意味する。
【0035】
本発明の開示において使用される用語「無機不透明顔料」は、少なくとも1.4の屈折率を持つ実質的に白色の無機顔料、およびポリマー中に分散して微小空洞化により延伸時に不透明性を生じさせることができる顔料を含む、不透明化する(より不透明にする)ことができる顔料を意味する。
【0036】
本発明の開示において使用される用語「白色剤」は、大気紫外線の影響下で青色に発光する白色/無色の有機化合物を意味する。
【0037】
本発明の開示において使用される用語「支持体(支持)」は、「自己支持性材料」を意味し、分散溶液として支持体上に被覆、蒸発またはスパッタされうるがそれ自体は自己支持性がない「層」と区別される。また、任意の導電面層、および接着に必要な何らかの処理または接着を補助するために付けられる層も含む。
【0038】
本発明の開示において使用される用語「重ね刷り可能」は、従来のインパクトおよび/またはノンインパクト印刷工程で重ね刷り可能であることを意味する。
【0039】
本発明の開示において使用される用語「従来の印刷工程」は、インクジェット印刷、凹版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、スタンプ印刷、グラビア印刷、染料転写印刷、昇華型熱転写印刷、およびレーザー誘起熱転写法を含むが、これらに限定されない。
【0040】
本発明の開示において使用される用語「パターン」は、任意の形状の線、四角、円、または何らかの不揃いな形状であってよい非連続的な層を意味する。
【0041】
本発明の開示において使用される用語「層」は、例えば支持体と称されるものの全域を覆う(連続的な)被覆を意味する。
【0042】
本発明の開示において使用される用語「非透明フィルム」は、透明な画像に十分なコントラストを与えて該画像を明瞭に認識可能にすることができるフィルムを意味する。非透明フィルムは「不透明なフィルム」であってよいが、半透明性が全く残っていない、つまり光がフィルムを通過しないという意味で完全に不透明である必要はない。マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて測定される透過光学濃度が、フィルムの非透明度の尺度を提供することができる。ISO2471は紙の裏当ての不透明度に関し、一枚の紙が下にある同様の紙上の印刷物を目視できなくする度合いに影響する紙の特性に関連する場合に適用可能で、「パーセンテージで表される、黒い裏当てを有する一枚の紙の視感反射係数の、白い反射裏当てを有する同一サンプルの本来の視感反射係数に対する比」として不透明度を定義するものである。例えば80g/mのコピー用紙は白色、非透明で、ISO5−2に準拠してマクベスTR924を用いて黄色フィルタを介して測定したとき0.5の光学濃度を有し、金属蒸着フィルムは典型的に2.0から3.0の光学濃度を有する。
【0043】
本発明の開示において使用される用語「透過」は、入射する可視光の50%を拡散させることなく伝達(透過)し、好適には入射する可視光の70%を拡散させることなく伝達する特性を有することを意味する。
【0044】
本発明の開示において使用される用語「可撓」は、例えば損傷されることなくドラムなどの湾曲した物体の湾曲に沿うことができることを意味する。
【0045】
本発明の開示において使用される用語「着色剤」は、染料および顔料を意味する。
【0046】
本発明の開示において使用される用語「染料」は、適切な周囲条件下において、添加した媒質中で10mg/L以上の溶解度を有する着色剤を意味する。
【0047】
本発明の開示において使用される用語「顔料」は、DIN55943(参照により本明細書に組み込む)において、適切な周囲条件下で分散媒質中に実質的に不溶性であり、よって該媒質中で10mg/L以下の溶解度を有する、無機または有機で有彩または無彩の着色物質として定義されている。
【0048】
非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルム
本発明の態様は、非架橋ランダムSAN-ポリマーを分散した状態で有し、且つ無機不透明顔料、白色剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、および難燃剤からなる成分の群から少なくとも一の成分を分散または溶解した状態で有する、連続相の線状ポリエステルマトリックスから本質的になるフィルムによって実現され、ここでフィルムは微小空洞を含有し、非透明で、軸方向に延伸されており;線状ポリエステルマトリックスは、少なくとも一の芳香族ジカルボキシレート、少なくとも一の脂肪族ジメチレンおよび任意で少なくとも一の脂肪族ジカルボキシレートから本質的になるモノマー単位を有し;線状ポリエステルの非架橋SAN-ポリマーに対する重量比は2.0:1から19.0:1の範囲であり;そして前記少なくとも一の芳香族ジカルボキシレートモノマー単位はイソフタレートであり、前記イソフタレートは、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボキシレートモノマー単位の15モル%以下の濃度で前記ポリエステルマトリックス中に存在する。
【0049】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第一の実施態様によると、非透明フィルムは白色フィルムである。
【0050】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第二の実施態様によると、非透明フィルムは着色フィルムである。
【0051】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第三の実施態様によると、少なくとも一の脂肪族ジカルボキシレートは、線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボキシレート単位の20モル%以下の濃度でポリエステルマトリックス中に存在する。
【0052】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第4の実施態様によると、フィルムは二軸延伸フィルムである。
【0053】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第5の実施態様によると、線状ポリエステルの非架橋SAN-ポリマーに対する重量比は、2.3:1から13:1の範囲、好ましくは2.5:1から10:1の範囲、特に好ましくは2.7:1から9.0:1の範囲である。
【0054】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第6の実施態様によると、線状ポリエステルの非架橋SAN-ポリマーに対する重量比は、2.85:1から7.0:1の範囲、好ましくは3.0:1から5.5:1の範囲、特に好ましくは3.2:1から4.9:1の範囲である。
【0055】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第7の実施態様によると、非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムは、少なくとも一の英数字、エンボスパターン、任意でエンボス加工されたホログラム、および連続、網掛けまたはデジタル画像が付与されている。
【0056】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第8の実施態様によると、フィルムは、少なくとも一方の面に、透明な重ね刷り可能な層、つまりインパクトまたはノンインパクト印刷に適した層が設けられている。この透明な重ね刷り可能な層は、非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの表面上の少なくとも一の英数字、エンボスパターン、任意でエンボス加工されたホログラム、および連続、網掛けまたはデジタル画像の上に設けられる。
【0057】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第9の実施態様によると、フィルムは、少なくとも一方の面に、透明化可能で多孔質の重ね刷り可能な層、つまりインパクトまたはノンインパクト印刷、例えばインクジェット印刷に適した層が設けられている。適切な屈折率を有する液体を塗布することによって(像通りに塗布することもできる)透明化される透明化可能な多孔質層が、欧州特許公開1362710および欧州特許公開1398175に開示されている。この透明化可能で重ね刷り可能な層は、透かしパターンを有する非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの表面上の少なくとも一の英数字、エンボスパターン、任意でエンボス加工されたホログラム、および連続、網掛けまたはデジタル画像の上に設けられる。
【0058】
透明化可能な多孔質の受け層の一部の透明化それ自体が画像を形成することができるか、あるいは透明な多孔質の受け層の透明化されていない領域それ自体が画像を表すことができる。透かしパターンは例えば、紙幣、株券、チケット、クレジットカード、身分証明書、または手荷物や荷物のラベルの一部であってよい。
【0059】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第10の実施態様によると、非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムは、約15μmから約500μm、好適には約25μmから約300μm、特に好適には約50μmから約200μm、さらに好適には約75μmから約150μmの厚さを有する。
【0060】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第11の実施態様によると、非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムには下引層が設けられる。
【0061】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第12の実施態様によると、フィルムは気泡を含まない。
【0062】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第13の実施態様によると、フィルムは発泡剤および/または発泡剤の分解生成物を含まない。
【0063】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第14の実施態様によると、非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムはさらに、導電率高上添加剤、例えば溶融してイオン化し導電率を高める金属塩、例えば酢酸マグネシウム、マンガン塩、および硫酸コバルトを含む。適切な塩濃度は、約3.5×10−4モル/モルポリエステルである。ポリエステル溶融粘度を高めることで、押出物を冷却するために5から25℃(好ましくは15から30℃)の温度に維持される冷却ローラー上によりよく溶融物を固定することができ、それによってより高い延伸力を実現することが可能となり、したがって空洞形成を向上させ混濁化の度合いを高めることができる。
【0064】
非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法
本発明の態様はまた、i)ポリエステルマトリックス中に非架橋ランダムSAN-ポリマーを含む混合物を製造するために、少なくとも一の芳香族ジカルボン酸および少なくとも一の脂肪族ジオールからなる群から選択されるモノマー成分を有する少なくとも一の線状ポリエステルと、非架橋ランダムSAN-ポリマーと、無機不透明顔料、白色剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、および難燃剤からなる成分の群から少なくとも一の成分とを、混練機または押出機内で混合する工程と;ii)工程i)で生成した混合物を厚いフィルムに形成して例えば室温に急冷する工程と;およびiii)前記SAN-ポリマーのガラス転移温度と前記線状ポリエステルのガラス転移温度の間の温度で、前記厚いフィルムを>2.5N/mmの延伸張力で初期長の少なくとも2倍に延伸する工程を含む非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法によって実現され、ここでポリエステルマトリックスの前記非架橋ランダムSAN-ポリマーに対する重量比は2.0:1から19.0:1の範囲であり、そして前記少なくとも一の芳香族ジカルボキシレートモノマー単位はイソフタレートであり、前記イソフタレートは、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボキシレートモノマー単位の15モル%以下の濃度で前記ポリエステルマトリックス中に存在する。
【0065】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第一の実施態様によると、急冷され押出された厚いフィルムは、約10から約6000μm、好適には約100から約5000μm、特に好適には約200から約3000μm、さらに好適には約500から約2000μmの厚さを有する。
【0066】
非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムは、例えば機械の方向、または機械の方向と直交する方向(幅方向)への延伸によって厚いフィルムを配向することによって製造される。好ましくは、非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムは二軸延伸される。二軸延伸は、第一の方向(例えば機械の方向=MD)への第一の延伸と、その後の第二の方向(例えば機械の方向と直交する方向=TD(幅方向))への延伸とによるフィルムの配向によって実現される。これがポリマー鎖を配向し、よって密度および結晶化度を高める。直線押出速度V1に対する回転ローラーの表面速度V2を、延伸比率がV2/V1となるように設定することにより、2つのロールを所望の延伸比率に対応する異なる速度で走らせることで、押出方向における長手方向への配向が実行できる。長手方向の延伸比率は、空洞を形成するのに十分でなくてはならない。
【0067】
軸方向および二軸配向ポリエステルフィルムを製造するために当業者に知られている長手方向への延伸作業が用いられうる。例えば、組み合わせフィルム層を、延伸が起こる領域でポリエステルのガラス転移温度(ポリエチレンテレフタレートの場合は約80℃、およびポリエチレンイソフタレートの場合は約60℃)を超える温度まで層を加熱する一組の赤外線ヒーターの間を通過させる。上述の温度は、不透明度を向上するために連続相ポリマーのガラス転移温度に近くなくてはならない。さらに、延伸温度はPETSAN-ポリマーのガラス転移温度よりも低くなくてはならない。ポリエチレンテレフタレートの場合、長手方向の延伸は通常、約80から約130℃で実行される。長手方向への延伸で、空洞が、分散したポリマーの各粒子から長手方向に延伸するフィルムに形成された結果、不透明度が実現される。
【0068】
幅方向への延伸は、長手方向への延伸方向に対して実質的に90°の角度、典型的には約70から90°の角度で実行される。横への配向には通常、フィルムの両端をつかみ、次いで、例えばフィルムをガラス転移温度を超える温度に加熱する熱風ヒーターを通過させて下塗り層が上に載った組み合わせ層を加熱することによって両側方に引っ張る、適切なテンターフレームが用いられる。ポリエチレンテレフタレートの場合、幅方向の延伸は、約80から約170℃、好ましくは約90から約150℃で実行される。フィルムを幅方向に延伸することで、空洞が幅方向に延伸する。
【0069】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第二の実施態様によると、厚いフィルムの延伸は、>2.5N/mm、好ましくは>5.0N/mm、特に好ましくは>7.0N/mmの延伸張力で行われる。延伸温度が低いほど、延伸張力は強くなる。
【0070】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第三の実施態様によると、フィルムは二軸延伸される。
【0071】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第4の実施態様によると、当該方法はさらなる工程、(iv)第一の延伸工程に対して実質的に90℃の角度で、フィルムを>2.5N/mm、好ましくは4.0N/mmの延伸張力で初期長の少なくとも2倍にさらに延伸する工程を含む。
【0072】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第5の実施態様によると、当該方法はさらなる工程、(iv)第一の延伸工程に対して実質的に90℃の角度で、フィルムを>2.5N/mm、好ましくは4.0N/mmの延伸張力で初期長の少なくとも2倍にさらに延伸する工程を含み、工程(iv)は、線状ポリエステルマトリックスのガラス転移温度を30℃以下、好ましくは20℃以下、特に好ましくは10℃以下越える温度で実行される。延伸温度が低いほど、実現可能な延伸張力が強くなる。
【0073】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第6の実施態様によると、工程(iii)および(iv)は、例えばBruckner社製の装置を用いて同時に行われる。
【0074】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第7の実施態様によると、当該方法はさらに、第5の工程として熱固定工程を含む。
【0075】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第8の実施態様によると、長手方向の延伸の延伸比率は、約2から約6、好ましくは約2.5から約5、特に好ましくは約3から約4である。延伸比率が高いほど、不透明度が高くなる。
【0076】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第9の実施態様によると、幅方向の延伸比率は、約2から約6の範囲、好ましくは約2.5から約5の範囲、特に好ましくは約3から約4の範囲である。延伸比率が高いほど、不透明度は高くなる。さらに延伸速度%/分が高いほど、不透明度は高くなる。
【0077】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法の第10の実施態様によると、線状ポリエステルは、主要な成分としてブチレンテレフタレートを含まない。
【0078】
軸方向または二軸延伸フィルムを、フィルム層をヒートセットまたはサーモフィックスするために160から240℃の熱風をフィルム層に吹き付ける第二の熱風ヒーターセットを最後に通過させる。ヒートセット温度は、ポリエステルの結晶化を得るのに十分でなくてはならないが、空洞が潰れる可能性があるので層を熱し過ぎないように気を付けなければならない。一方、ヒートセット温度を高くすることにより、フィルムの寸法安定性が向上する。ヒートセット温度を変えることで適度に折衷した特性が得られる。ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートの場合の好適なヒートセットまたはサーモフィックス温度は少なくとも140℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも175℃である。
【0079】
長手方向の延伸の前または後に、下塗層と呼ばれる第一の下引層が、エアーナイフコーティングシステムといった被覆手段によって無空洞ポリエステル層に付着されうる。第一の下引層は例えば、(メタ)アクリレートコポリマー、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、スルホン化ポリエステル、または塩化物含有コポリマー、例えば水分散液として加えられる共重合不飽和カルボン酸の存在により何らかの親水性官能基を有するラテックスの形態の塩化ビニリデンコポリマーから形成される。
【0080】
微小空洞によるフィルムの光学濃度(OD)
可視フィルタを用いて透過率で測定される微小空洞によるフィルムの光学濃度は、比較値を提供するためにフィルムの厚さの関数として空洞形成成分を含まないフィルムの光学濃度を測定することで得られる。次いで、空洞(形成)による、可視フィルタを用いて透過率で測定されるフィルムの光学濃度(の差異)が、空洞誘発成分が添加された組成物を二軸延伸することと、長手方向および幅方向の引き伸ばし比率に基づいて予想されるフィルムの厚さに関する、空洞誘発成分を含まないフィルム組成物について可視フィルタを用いて透過率で測定される光学濃度から、可視フィルタを用いて透過率で測定される光学濃度を減算することとによって得られる。
【0081】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第15の実施態様によると、線状ポリエステルは、少なくとも一の芳香族ポリエステル樹脂、例えばポリ(エチレンテレフタレート)またはそのコポリマーを含む。加熱時、例えば押出機での混合中、存在する異なる線状芳香族ポリエステル樹脂は、十分に長い加熱により単一樹脂へと転じるようにメタセシス、縮合および脱凝縮を受ける。
【0082】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第16の実施態様によると、線状ポリエステルは、ジカルボキシレートモノマー単位の全濃度に対して少なくとも1モル%、好ましくは少なくとも3モル%、特に好ましくは少なくとも5モル%の濃度のイソフタレートモノマー単位を含む。
【0083】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第17の実施態様によると、線状ポリエステルは、ジカルボキシレートモノマー単位の全濃度に対して12モル%以下の濃度のイソフタレートモノマー単位を含む。
【0084】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第18の実施態様によると、線状ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレートのコポリマーである。
【0085】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第19の実施態様によると、線状ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、およびエチレンテレフタレートおよびエチレンイソフタレートのコポリマーを含む。
【0086】
適切なポリエステルとしては、芳香族、脂肪族、またはシクロ-脂肪族ジカルボン酸またはそのエステル、4〜20炭素原子および脂肪族(脂環式を含む)グリコールまたはそのエーテルを有するジカルボキシレート基、2〜24炭素原子を有する脂肪族ジメチレン基、およびその混合物から製造されるものが挙げられる。
【0087】
適切な芳香族ジカルボキシレートの例としては、テレフタレート、イソフタレート、フタレート、ナフタレートジカルボキシレート、およびナトリウムスルホイソフタレートが挙げられる。適切な脂肪族ジカルボキシレートの例としては、スクシネート、グルタネート、アジペート、アゼライエート(アゼライン酸由来)、セバケート、フマレート、マレイエート(マレイン酸由来)、およびイタコネートが挙げられる。適切な脂環式ジカルボキシレートの例としては、1,4-シクロヘキサン-ジカルボキシレート、1,3-シクロヘキサン-ジカルボキシレート、および1,3- シクロペンタン-ジカルボキシレートが挙げられる。適切な脂肪族ジメチレンの例としては、エチレン、プロピレン、メチルプロピレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ネオペンチレン[-CHC(CH-CH]、1,4-シクロヘキサン-ジメチレン、1,3-シクロヘキサン-ジメチレン、1,3- シクロペンタン-ジメチレン、ノルボルナン-ジメチレン、-CHCH(OCHCH)-、ここでnは好ましくは1から5の整数である、およびその混合物が挙げられる。
【0088】
こういったポリエステルは、当該技術分野でよく知られており、例えば米国特許2465319および米国特許2901466に記載のような周知の技術で製造されうる。
【0089】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第20の実施態様によると、線状ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸およびナフタレンジカルボン酸からなる群から選択される芳香族ジカルボン酸を有するポリマーである。
【0090】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第21の実施態様によると、線状ポリエステルは、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エンド(endo),3-エンドノルボルナンジメタノール、および1,4-シクロヘキサンジメタノール、好ましくはエチレングリコールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールの組み合わせからなる群から選択される脂肪族ジオールを有するポリマーである。
【0091】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第22の実施態様によると、線状ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート、およびエチレンテレフタレートおよび1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートのコポリマーを含む。
【0092】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第23の実施態様によると、線状ポリエステル中の脂肪族ジメチレンモノマー単位の少なくとも1モル%、好適には少なくとも3モル%、特に好適には少なくとも5モル%が、ネオペンチレンまたは1,4-シクロヘキサン-ジメチレンモノマー単位である。
【0093】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第24の実施態様によると、線状ポリエステルの数平均分子量は10,000から30,000である。
【0094】
少量の他のモノマーにより変性されてもよい、ポリ(エチレンテレフタレート)が特に好ましい。他の適切なポリエステルとしては、適量の共酸(co-acid)成分、例えばスチルベンジカルボン酸の含有によって形成される液晶コポリエステルが挙げられる。こういった液晶コポリエステルの例は、米国特許4420607、米国特許4459402および米国特許4468510に開示されたものである。
【0095】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第25の実施態様によると、線状ポリエステルは、40℃から150℃、好ましくは50℃から120℃、特に好ましくは60℃から100℃のガラス転移温度を有する。
【0096】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第26の実施態様によると、線状ポリエステルは配向可能である。
【0097】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第27の実施態様によると、線状ポリエステルは、25℃の60重量%フェノールおよび40重量%オルト-ジクロロベンゼンの0.5g/dL溶液中で決定される固有粘度が少なくとも0.45dl/g、好ましくは0.48から0.9dl/g、特に好ましくは0.5から0.85dl/g、さらに好ましくは0.55から0.8dl/gである。
【0098】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第28の実施態様によると、線状ポリエステルは、主要な成分としてブチレンテレフタレートを含まない。
【0099】
ポリエステルの混合物は、溶融物での混合中メタセシスを受け、その結果、混合物の全体組成を持つコポリマーが形成される。適切なマトリックスの例としては、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)を含むブレンドが挙げられる。
【0100】
ランダムSAN-ポリマー
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第29の実施態様によると、SAN-ポリマーの濃度は、少なくとも5重量%、好適には少なくとも10重量%、特に好適には少なくとも15重量%である。
【0101】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第30の実施態様によると、SAN-ポリマーの濃度は、35重量%以下、好適には30重量%以下、特に好適には25重量%以下である。
【0102】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第31の実施態様によると、SAN-ポリマーのAN-モノマー単位の濃度は、15から35重量%、好ましくは18から32重量%、特に好ましくは21から35重量%である。
【0103】
本組成物のSANポリマー添加剤は、スチレンおよびα-低級アルキル置換スチレンまたはその混合物を含むスチレンモノマー成分と、アクリロニトリルおよびα-低級アルキル置換アクリロニトリルまたはその混合物を含むアクリルニトリルモノマー成分とから本質的になる周知の種類のポリマーである。低級アルキルは、メチル、エチル、イソプロピルおよびt-ブチル基などの1から4炭素原子の直鎖または分枝鎖アルキル基を意味する。容易に入手できるSANポリマーにおいて、スチレン成分は通常、スチレン、α-直鎖アルキル置換スチレン、典型的にα-メチル-スチレン、またはその混合物であり、スチレンが好ましい。同様に容易に入手できるSANポリマーにおいて、アクリロニトリル成分は通常、アクリロニトリル、α-メチル-アクリロニトリル、またはその混合物であり、アクリロニトリルが好ましい。
【0104】
SANポリマーにおいて、スチレン成分は、スチレン成分とアクリロニトリル成分の総合重量に基づく重量の大部分を占め、つまり50%を超える重量割合、典型的には約65%から約90%、特に約70%から約80%の重量割合を占める。アクリロニトリル成分は、スチレン成分とアクリロニトリル成分の総合重量に基づく重量の小部分を占め、つまり50%以下の重量割合、典型的には約10%から約35%、特に約20%から約30%の重量割合を占める。
【0105】
SANポリマーの種類は、1976年10月26日公開のR. E. Gallagher, 米国特許3988393(特にコラム9, 14-16行および請求項8)、「Whittington’s Dictionary of Plastics」, Technomic Publishing Co., First Edition, 1968, 231ページ, セクション見出し「Styrene-Acrylonitrile Copolymers (SAN)」、およびR. B. Seymour, 「Introduction to Polymer Chemistry」, McGraw-Hill, Inc., 1971, 200ページ(最後の2行から201ページ(1行目)で特に同定および記載されている。スチレンおよびアクリロニトリルの共重合によるSANポリマーの調製は特に「Encyclopedia of Polymer Science and Technology」, John Wiley and Sons, Inc., Vol. 1, 1964, 425-435ページに記載されている。
【0106】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第32の実施態様によると、非架橋ランダムSAN-ポリマーの数平均分子量は、30,000から100,000、好適には32,000から80,000、特に好適には35,000から70,000、さらに好適には40,000から60,000である。典型的なSANポリマーは、45,000から60,000の数平均分子量と1.2から2.5のポリマー分散度(M/M)を有する。
【0107】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第33の実施態様によると、非架橋ランダムSAN-ポリマーの重量平均分子量は、50,000から200,000の範囲、好適には75,000から150,000の範囲である。
【0108】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第34の実施態様によると、分散したSAN-ポリマーは、1.5μmの数平均粒子サイズを有する。分散したSAN-ポリマーの粒子サイズが小さいほど、不透明度は高くなる。
【0109】
無機不透明顔料
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第35の実施態様によると、無機不透明顔料の濃度は、≧0.1重量%、好適には≧1重量%である。
【0110】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第36の実施態様によると、無機不透明顔料は、≦10重量%、好適には≦3重量%の濃度で存在する。
【0111】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第37の実施態様によると、フィルムは、2.0以下の屈折率を有する≦10重量%の無機不透明顔料を含む。
【0112】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第38の実施態様によると、フィルムは、少なくとも1.5の屈折率を有する≦10重量%、好ましくは≦3重量%の無機不透明顔料を含む。
【0113】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第39の実施態様によると、フィルムはさらに、0.1から10μm、好適には0.2から2μm、特に好適には0.2から1μmの間の数平均粒子サイズを有する無機不透明顔料を含む。
【0114】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第40の実施態様によると、フィルムはさらに、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、リン酸アルミニウム、および粘土からなる群から選択される少なくとも一の無機不透明顔料を含む。二酸化チタンは、アナターゼまたはルチル形態を有してよく、および酸化アルミナまたは二酸化シリコンで安定化されてよい。リン酸アルミニウムは、非晶性中空顔料、例えばBUNGE社のBiphorTM顔料であってよい。
【0115】
これらの顔料の屈折率を以下の表に示す:

【0116】
無機不透明顔料の添加は、ポリエステルの配向を安定化する利点を有し、これにより非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムを、その不透明度に実質的に影響することなく175℃で安定化できる。BaSOまたはTiOなど無機不透明顔料の存在なしでポリエステルのサーモフィックスは可能であるが、ただし非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの不透明度はいくらか犠牲になる。さらに、BaSOといった屈折率が2.0より低い顔料は、顔料およびポリエステルマトリックス間の屈折率の差が小さいため、それ自体で十分な不透明度を提供しない。
【0117】
ポリマーフィルム中に分散した二酸化チタン粒子はそれ自体が、フィルム延伸時に微小空洞を誘発しないことがわかっている。
【0118】
白色剤
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの第41の実施態様によると、白色剤の濃度は、≦0.5重量%、好適には≦0.1重量%、特に好適には≦0.05重量%、さらに好適には≦0.035重量%である。
【0119】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第42の実施態様によると、フィルムはさらに、ビス-ベンゾオキサゾール、例えばビス-ベンゾオキサゾリル-スチルベンおよびビス-ベンゾオキサゾリル-チオフェン;ベンゾトリアゾール-フェニルクマリン;ナフトトリアゾール-フェニルクマリン;トリアジン-フェニルクマリン、およびビス(スチリル)ビフェニルからなる群から選択される白色剤を含有する。
【0120】
適切な白色剤は:

【0121】
難燃剤
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第43の実施態様によると、フィルムはさらに、難燃剤を含有する。
【0122】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第44の実施態様によると、フィルムはさらに、臭素化化合物;有機リン酸化合物;メラミン;メラミン誘導体、例えば、ホウ酸、シアヌル酸、リン酸またはピロ/ポリ-リン酸などの有機または無機酸を有するメラミン塩、およびメラム、メレムおよびメロンなどのメラミン同族体;金属水酸化物、例えば水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム;ポリリン酸アンモニウムおよびホウ酸亜鉛、例えばxZnO.yB.zHO、例えば2ZnO.3B.3.5HOの組成を有するものからなる群から選択される難燃剤を含有する。
【0123】
適切な難燃剤として挙げられるのは:

【0124】
酸化防止剤
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第45の実施態様によると、フィルムはさらに、酸化防止剤を含有する。
【0125】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第46の実施態様によると、フィルムはさらに、有機スズ誘導体、立体障害フェノール、立体障害フェノール誘導体およびホスファイトからなる群から選択される酸化防止剤を含有する。
【0126】
適切な酸化防止剤として挙げられるのは:

【0127】
光安定剤
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第47の実施態様によると、フィルムはさらに、光安定剤を含有する。
【0128】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第48の実施態様によると、フィルムはさらに、立体障害アミン光安定剤を含有する。
【0129】
適切な光安定剤として挙げられるのは:

【0130】
紫外線吸収剤
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第49の実施態様によると、フィルムはさらに、紫外線吸収剤を含有する。
【0131】
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの第50の実施態様によると、フィルムはさらに、ベンゾトリアゾール誘導体およびトリアジン誘導体からなる群から選択される紫外線吸収剤を含有する。
【0132】
適切な紫外線吸収剤として挙げられるのは:

【0133】
画像記録素子
本発明の態様はまた、本発明による非透明微小空洞二軸延伸フィルムを備えた画像記録素子により実現される。
【0134】
本発明による画像記憶素子の第一の実施態様によると、フィルムは、少なくとも一方の面に、透明な重ね刷り可能な層、つまりインパクトまたはノンインパクト印刷のための層が設けられている。
【0135】
本発明による画像記憶素子の第二の実施態様によると、フィルムは、少なくとも一方の面に、非透明な重ね刷り可能な層、つまり少なくとも一のインパクトまたはノンインパクト印刷技術に適した層が設けられている。
【0136】
本発明による画像記憶素子の第三の実施態様によると、フィルムは、少なくとも一方の面に、非透明で透明化可能な重ね刷り可能な層、つまり少なくとも一のインパクトまたはノンインパクト印刷技術に適した層が設けられている。
【0137】
本発明による画像記憶素子の第4の実施態様によると、フィルムは、少なくとも一方の面にインクジェット受け層が設けられている。典型的な受け層は、短時間で手で触れる程度に乾くように水性または溶剤インクまたはペーストである場合は多孔質、あるいは相変化インクまたは硬化性インク、例えば放射線硬化性インクの場合は非多孔質である。多孔質の受け層は通常、少なくとも一の顔料、例えばシリカまたはアルミナ;少なくとも一のバインダー、例えばスチレン-アクリレート-アクリル酸ターポリマーのアンモニウム塩;アニオン性界面活性剤などの界面活性剤、例えば脂肪族スルホネート;任意で平滑化剤、例えばポリジメチルシロキサン、および任意で媒染剤を含む。
【0138】
本発明による画像記憶素子の第5の実施態様によると、フィルムは、少なくとも一方の面に、イメージング層、例えば写真層、例えばハロゲン化銀乳剤層;フォトサーモグラフィック要素および実質的に感光性のサーモグラフィック要素;および染料熱転写システムの染料受け層が設けられている。
【0139】
本発明による画像記憶素子の第6の実施態様によると、フィルムは、少なくとも一方の面に、例えば鉛筆、ボールペンおよび万年筆で書き込み可能な層が設けられている。
【0140】
透かしパターン(透明パターン)形成方法
本発明の態様は、非架橋ランダムSAN-ポリマーを分散した状態で有し、且つ無機不透明顔料、白色剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、および難燃剤からなる成分の群から少なくとも一の成分を分散または溶解した状態で有する、連続相の線状ポリエステルマトリックスから本質的になる、非透明微小空洞含有二軸延伸フィルムへの加圧により随意に補助される像様加熱工程を含む、透かしパターン形成方法によって実現され、ここで線状ポリエステルマトリックスは、少なくとも一の芳香族ジカルボキシレート、少なくとも一の脂肪族ジメチレンおよび任意で少なくとも一の脂肪族ジカルボキシレートから本質的になるモノマー成分を有し、非架橋SAN-ポリマーの線状ポリエステルに対する重量比は3.0から5.5の範囲であり、そしてSAN-ポリマーのAN-モノマー単位の濃度は、18から35重量%である。
【0141】
本発明の透かしパターン形成方法の第一の実施態様によると、フィルムは二軸延伸フィルムである。
【0142】
本発明の透かしパターン形成方法の第二の実施態様によると、無機不透明顔料の濃度は、≧0.1重量%、好適には≧1重量%である。
【0143】
本発明の透かしパターン形成方法の第三の実施態様によると、白色剤の濃度は、≦0.05重量%、好適には≦0.035重量%である。
【0144】
本発明の透かしパターン形成方法の第4の実施態様によると、熱は、熱またはホットスタンプ、感熱ヘッド、熱またはホットバー、またはレーザーによって加えられる。加熱は、フィルムの片面または両面に実行できる。本発明による透かしパターン形成で実現される透明化は、フィルムの厚さの減少に比例して増加し、100μmの厚さが好ましい。フィルムの厚さが実質的に変化することなく、少なくとも0.4または40%までの光学濃度の変化が容易に実現できる。さらに、本発明による透かしパターン形成方法により実現される透明化効果は、熱源から供給される熱、熱源およびフィルム間の圧力、および熱源の印加時間の組み合わせにより生じる。熱は、連続的または非連続的に少なくとも1ミリ秒加えられなければならない。感熱ヘッドによる加熱は、単一の熱パルスによるものであってよいが、加熱要素の過熱を避けるために多重短熱パルスが好ましい。感熱ヘッドが使用される場合、加熱工程中に感熱ヘッドと非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムとの間に箔が使用されてよく、例えば6μmの厚さのPETフィルムが、感熱ヘッドの汚染を防ぐために非透明微小空洞含有フィルムと感熱ヘッドとの間に入れられてよい。感熱ヘッドプリンタ、例えばAGFA-GEVAERT N.V.社から供給されるDRYSTARプリンタが、本発明の透かしパターン、例えば名前入りの透かし模様を作るために使用できる。
【0145】
この透明化効果には、手で触って、つまり触感と、光沢度の変化とで検知できる浮き彫りパターンが伴う。この浮き彫りパターンは熱源の温度が高いほど顕著になり、このエンボス効果は110℃と線状ポリエステルマトリックスの融点との間の温度で増大する。非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムにホットスタンプを当てて得られる触感で感知できる浮き彫りは、感熱ヘッドを用いて得られるものよりはるかに顕著である。
【0146】
実現される透明度は、スタンプ/感熱ヘッド印刷条件:時間、温度および圧力によって決まる。材料のこれまでのサーモフィックス歴もまた重要である。非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの熱誘導透明化は、インクジェット受け層といった層を任意で塗布する前またはその後、および透明化する前またはその後に行うことができる。透明化領域の相対的配置および支持体の透明度は、追加の安全対策として有用である。
【0147】
本発明の透かしパターン形成方法の第5の実施態様によると、熱は非連続的に加えられる。
【0148】
本発明の透かしパターン形成方法の第6の実施態様によると、透明な重ね刷り可能な層が、像様加熱の前にフィルム上に設けられる。
【0149】
本発明の透かしパターン形成方法の第7の実施態様によると、透明な重ね刷り可能な層が、像様加熱の後にフィルム上に設けられる。
【0150】
産業上の利用
本発明による非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムは、印刷用および他の用途のための合成紙として、非写真画像形成材料、例えばインパクトおよびノンインパクト(例えば電子写真、電送写真およびインクジェット)受け材料、フォトサーモグラフィック記録材料、実質的に感光性のサーモグラフィック記録材料、昇華型印刷、熱転写印刷等のための支持体として、例えばチケット、ラベル、タグ、IDカード、クレジットカード、法的文書、紙幣および包装における安全および偽造対策用途において使用することができ、また包装に組み込むこともできる。
【0151】
以下、比較例および本発明の実施例により本発明を説明する。これらの実施例で示したパーセンテージおよび比率は、そうでない表示がない場合は重量である。
【0152】
支持体の膜面上の下引層番号01:

【0153】
実施例で使用された成分:
ポリエステル:

【0154】
スチレン-アクリロニトリルコポリマー:

【0155】
TPX DX820:三井化学株式会社の高剛性ポリ(4-メチルペンテン)
硫酸バリウム:50重量%硫酸バリウムおよび50重量%ポリエステルを含有するCLARIANT GmbH社のマスターバッチである、NEOBRK/Renol白色
二酸化チタン:65重量%TiOおよび35重量%ポリエステルを含有するCLARIANT GmbH社のマスターバッチである、Renol-白色/PTX506
【0156】
実施例1から58
表1に示した各割合のPET01、PET03、特定のSAN、BaSOおよびUVITEX OB-oneを混合し、生じた混合物を真空下(<100mbar)で150℃で4時間乾燥し、それらをPET-押出機で溶融し、最後にそれらをシートダイから押し出し、生じた押出物を冷却することによって、1から4の押出物を生成した。
表1:

【0157】
押出物1から4をINSTRON社の装置で長手方向に延伸し(ここで押出物は表2に示した条件下で当該装置に搭載されたオーブンで加熱される)、実施例1から23、実施例24から35、実施例36から46、および実施例47から58の軸方向延伸フィルムをそれぞれ生成した。
表2:

【0158】
これらの実験は、不透明度が延伸とともに上昇し、且つポリエチレンテレフタレート連続相のTよりすぐ上の85℃まで延伸温度を下げるとともに上昇したことを示す。さらに、これらの実験は、3重量%の硫酸バリウムを加えると光学濃度が約0.15上昇したことを示す。さらに、これらの実験は、光学濃度が延伸張力とともに上昇したことも示す。首尾一貫性、つまり一様な測定群を与えるためには2分の加熱時間で十分であった。二次効果または相関は関連が見出されないとして、Unscramblerソフトウェアでの部分最小二乗回帰により、表2のデータから以下の方程式が導き出された:
光学濃度(OD)=1.273362−0.0270×PET/SAN重量比
+0.0496×[フィルム中のBaSO濃度 重量%]
+0.0394×[延伸張力 N/mm
【0159】
延伸速度は、観察された光学濃度に有意な影響を持つとは見出されなかったが、結果は、延伸速度が延伸張力と同様に小さな影響を持つことを示しているように思われる。4N/mmよりも強い延伸張力で、特に高い不透明度が得られたようである。
【0160】
ポリエチレンテレフタレートの連続相中に任意で硫酸バリウムとともにスチレン-アクリロニトリルコポリマーが分散したフィルムでは、不透明度はほとんどフィルム中の微小孔のみに起因し、これは、一方でスチレン-アクリロニトリルコポリマーの屈折率1.56〜1.57とポリエチレンテレフタレートの屈折率1.58〜1.64との間の屈折率の差異、およびもう一方で硫酸バリウムの屈折率1.63とポリエチレンテレフタレートの屈折率1.58〜1.64との間の屈折率の差異が極僅かであるためである。
【0161】
実施例59から78
実施例59から78のフィルムの製造に使用した押出物の生成に使用したPETの種類とSANの種類を表3に示す。表3に示した重量%のPET、SAN、BaSOおよびUVITEX OB-oneを混合し、真空下(<100mbar)で150℃で4時間乾燥し、続いて混合物をPET-押出機で溶融してシートダイから押し出し、冷却して、押出物1、2および5から22を生成した。
表3:

【0162】
次いで押出物1、2および5から22を、本発明の実施例59から67の硫酸バリウムを含有しない実質的に透明なフィルムと、本発明の実施例68から78の硫酸バリウムを含有する実質的に透明なフィルムのそれぞれのために、表4および5に示したように延伸し、最後に175℃で2分間熱固定した。
表4:

表5:

【0163】
ポリエチレンテレフタレートの連続相中にスチレン-アクリロニトリルコポリマーが分散したフィルムでは、不透明度はほとんどフィルム中の微小孔のみに起因し、これは、スチレン-アクリロニトリルコポリマーの屈折率1.56〜1.57とポリエチレンテレフタレートの屈折率1.58〜1.64との間の屈折率の差異が極僅かであるためである。さらに、屈折率1.63を有する硫酸バリウムの付加もまた、同様の理由で不透明度に極僅かしか貢献しない。二軸延伸および熱固定されたフィルムのSEM評価は、分散したSAN06の粒子サイズが約1.5μmであったことと、本発明の実施例68から78のフィルム中の硫酸バリウムの粒子サイズが約0.5μmであったことを示した。
【0164】
21重量%のSAN濃度まで、光学濃度は、SAN濃度の上昇とともに上昇すると思われる。SAN濃度が21重量%を超えると、SAN濃度は二軸延伸フィルムの光学濃度に有意な影響を持たなかった。硫酸バリウムの付加により、製造されたフィルムの光学濃度にさらなる有意な上昇がもたらされた。
【0165】
次に、本発明の実施例65、67、68および70のフィルムの、100、115および130℃での30分後の光学濃度および収縮の変化を測定し、結果をそれぞれ以下の表6および7に示す。
【0166】
表6および7の結果は、本発明による、透かしパターンを形成するために本発明の像様過熱を受けた、それぞれ2.0以下の屈折率を有する無機不透明顔料を≦3重量%含む非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムの安定性を実証する。
表6:

表7:

【0167】
本発明の実施例79
本発明の実施例72のフィルムを、Instron4411装置に仕掛け、0.5N/mmの圧力でフィルムと接触する上部クランプにあるはんだごてで、5秒間138から200℃の温度に加熱した。試験後のフィルムの光学濃度を、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した。結果を以下の表8にまとめる。
表8:

【0168】
他の実験において、熱固定した延伸フィルムを、Instron装置で0.1N/mmから1.50N/mmの間の異なる圧力で、5秒間175℃に加熱し、結果を以下の表9に示す。
表9:

【0169】
さらなる実験において、熱固定した延伸フィルムを、Instron装置で0.5N/mmの圧力で、2から300秒の異なる時間、175℃に加熱し、結果を以下の表10に示す。
表10:

【0170】
これらの実験は、透明化効果は、透明化するものの温度と、加えられる圧力と、加えられる時間との組み合わせによるものであることを実証する。光学濃度の大幅な変化が、利用しやすい温度および圧力で、比較的短時間で実現可能である。
【0171】
本発明の実施例80
本発明の実施例79に記載したように本発明の実施例66のフィルムに透明化試験を行った。温度を変更し、本発明の実施例79に記載したように接触圧力は0.5N/mm、および接触時間は5秒とした。結果を表11に示す。
表11:

【0172】
これらの実験は、透明化の実現に硫酸バリウムの存在は必要でないことを示す。
【0173】
本発明の実施例81
本発明の実施例65の8インチ(203.2mm)×10インチ(254mm)のフィルム片(120μmの厚さおよび0.92の光学濃度)を、東芝の感熱ヘッドを有するAGFA-GEVAERT N.V.社の標準的なDRYSTAR DS5500プリンタに入れ、矩形領域を最大出力49.5mWで紙送り時間4.3msで印刷した。印刷された領域は、可視フィルタを用いてマクベスTR924濃度計で測定した光学濃度が0.80であった。光学濃度の低下はおそらくシートと感熱ヘッドとの間の圧力が低すぎるためであり、これは、実験で使用したフィルムの厚さが100μmであるのに対して、DS5500プリンタが175μmの厚さの支持体を有する約200μmの厚さのフィルム用に設計されていることによる。
【0174】
次いで、AGFA-GEVAERT社のDS2サーモグラフィックフィルムのシート上に両面テープで取り付けた同じ8インチ(203.2mm)×10インチ(254mm)のサイズの2つ目のフィルム片で当該実験を繰り返し、最大出力を49.5mWではなく42.5mWとした以外は同じ印刷条件でDRYSTAR DS5500プリンタに入れた。印刷された領域は、可視フィルタを用いてマクベスTR924濃度計で測定した光学濃度が0.64であった。観察された0.28の光学濃度の変化は、従来の感熱ヘッドプリンタを使用して、本発明によるそれぞれ2.0以下の屈折率を有する無機不透明顔料を≦3重量%含む非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムに透かしパターンを形成することができることを実証するのに十分である。これらの透明度の変化は、手で触ってはっきりと検知できる顕著な浮き彫りパターンを伴う。
【0175】
本発明の実施例82
本発明の実施例79に記載したように本発明の実施例77のフィルムに透明化試験を行った。本発明の実施例79に記載したように0.5N/mmの接触圧力および5秒の接触時間で、120から190℃の間の様々な温度で透明化を測定し、結果を表12に示す。
表12:

【0176】
本発明の実施例83から87、および比較例1から3
[二軸延伸]
実施例83から87および比較例1から3のフィルムの製造に使用した押出物の生成に使用したPETの種類とSANの種類を表13に示す。表13に示した重量%のPET、SAN、BaSOおよびUVITEX OB-oneを混合し、真空下(<100mbar)で150℃で4時間乾燥し、続いて混合物をPET-押出機で溶融してシートダイから押し出し、冷却して、本発明の押出物22から26および比較押出物1から3を生成した。
表13:

【0177】
次いで本発明の押出物22から26および比較押出物1から3を、本発明の実施例83から87の実質的に不透明なフィルムと、比較例1から3の実質的に不透明なフィルムのそれぞれのために、表14に示したように延伸し、最後に175℃で1分間熱固定した。
【0178】
本発明の実施例83から87のフィルムおよび比較例1から3のフィルムの光学濃度を、可視フィルタを用いてマクベスTR924濃度計により透過率で測定し、結果を、本発明の実施例83から87のフィルムおよび比較例1から3のフィルムのそれぞれについて表14および15に示した。
表14:

表15:

【0179】
ポリエチレンテレフタレートの連続相中へのスチレン-アクリロニトリルコポリマーの分散による、本発明の実施例83から87のフィルムの実質的な不透明度への貢献は、ほとんどフィルム中の微小孔のみに起因し、これは、スチレン-アクリロニトリルコポリマーの屈折率1.56〜1.57とポリエチレンテレフタレートの屈折率1.58〜1.64との間の屈折率の差異が極僅かであるためである。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートの連続相中への二酸化チタンの分散による、本発明の実施例83から87のフィルムの実質的な不透明度への貢献は、ほとんど、二酸化チタンの屈折率2.76とポリエチレンテレフタレートの屈折率1.58〜1.64との間の屈折率の差異のみに起因する。
【0180】
二軸延伸および熱固定されたフィルムのSEM評価は、本発明の実施例83から87のフィルム中の分散したSAN06の粒子サイズが約1.5μmであったことと、本発明の実施例83から87のフィルム中の二酸化チタンの粒子サイズが約0.2μmであったことを示した。
【0181】
本発明の実施例84、85および87、および比較例1から3のフィルムをそれぞれ、Instron4411装置に仕掛け、0.5N/mmの圧力でフィルムと接触する上部クランプにあるはんだごてで、5秒間120から190℃の様々な温度に加熱した。試験後のフィルムの光学濃度を、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定し、フィルムの厚さも測定した。各結果を以下の表16および17にまとめる。
表16:

表17:

【0182】
フィルムの厚さが実質的に変化することなく、本発明の実施例84、85および86のフィルムの加熱時に有意な透明化が観察された一方で、実験誤差内で、比較例1から3のフィルムの加熱時には透明化は観察されなかった。
【0183】
これは、連続相としてポリエステルを有し、且つ、ガラス転移温度が前記連続相のものより高い非晶性高分子を均一に分散した状態で有する、非透明微小空洞含有軸方向延伸自己支持性フィルムにおいて、二酸化チタンの存在下で透明化が観察されるが、二酸化チタンの存在により透明化が非透明性に貢献することはないことを示す。
【0184】
比較例4
1.7重量%の二酸化チタンおよび98.3重量%のGP1の組成を有する比較例4の厚さ約1100μmの押出物を、実施例1から58に記載したように生成し、表18に示した条件下で、比較例1から58に記載したように長手方向に延伸した。
表18:

【0185】
次いで、長手方向に延伸したフィルムを、表19に示した条件下で、実施例59から78に記載したように、延伸時間30秒および延伸速度1000%/分で幅方向に延伸した。測定した厚さ、およびマクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度も表19に示す。
表19:

【0186】
比較例4/LS1/BS1のフィルムを、Instron4411装置でつかみ、5秒間150℃のはんだごてで加熱した。フィルムの厚さおよび光学濃度への影響を表20に示す。
表20:

【0187】
光学濃度およびフィルムの厚さのこれらの変化は僅かであり、2重量%の二酸化チタンを含有するポリエステル組成物中で空洞形成が起こらないことを実証する。
【0188】
比較例5
2重量%二酸化チタン、100ppmのUVITEX OB-one、および98重量%PET02の組成を有する比較例5の厚さ1083μmの押出物を、実施例1から58について記載したように生成し、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した該押出物の光学濃度は1.35であった。表20に示した条件下で、実施例1から58に記載したように押出物を長手方向に延伸した。
表20:

【0189】
その後、長手方向に延伸したフィルムを、表21に示した条件下で、実施例59から78に記載したように、延伸時間30秒および延伸速度1000%/分で幅方向に延伸した。測定した厚さ、およびマクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度も表21に示す。
表21:

【0190】
比較例1から4に見られるように、比較例5の組成物の場合、二軸延伸時の空洞形成は光学濃度に何ら貢献しないので、光学濃度のフィルム厚さへの依存性を用いて、二軸延伸時に空洞を形成する2重量%の同一の二酸化チタン顔料を有する芳香族ポリエステルに基づく組成物について空洞形成が光学濃度にもたらす貢献度を評価するための基準を提供することができる。
【0191】
二酸化チタンなど光散乱顔料を含有する着色フィルムの場合、ランベルトベールの法則による関係性は保持されない。フィルムの厚さが平均自由散乱光路長より小さい場合、光は散乱後散逸するかそうでなければ、光は散逸せず実際には光学濃度のフィルム厚さへの擬似指数関数的依存性を提供するさらなる散乱光に干渉する。この状況は非常に複雑で論理的に説明することが不可能なため、唯一可能なアプローチは、特定のフィルムの厚さで観察された実際の光学濃度を測定することである。上述の光学濃度は、公正な近似式において層厚の範囲が1084から120μmのフィルムの厚さの対数に一次従属すると思われ、以下の関係が与えられる:
光学濃度(OD)=0.891 log[厚さμm]−1.3727
【0192】
この関係は、2重量%の濃度の二酸化チタン顔料の使用に起因する光学濃度を、フィルムの厚さの関数として提供する。
【0193】
本発明の実施例88から105
いずれも2重量%の二酸化チタンおよび15重量%のSAN06を有する実施例88から105の厚さ約1100μmの押出物を、表22に示した割合で表22の成分を混合し、次いで真空下(<100mbar)で150℃で4時間乾燥し、その後PET-押出機で溶融し、シートダイから押し出し、そして冷却することによって生成し、表22にまとめたように約1.3g/mLの密度と、イソフタレート(IPA):テレフタレート(TPA)比率を有する実施例88から105の押出物を生成した。
表22:

【0194】
表23に示した条件下で、実施例1から58に記載したように各押出物を長手方向に延伸した。予想厚さは、無空洞フィルムで観察される押出物の厚さおよび長さに基づく厚さである。
【0195】
長手方向の延伸には、空洞形成による密度の低下が伴い、この密度低下はIPA:TA比率が高いほど明らかに大きく、驚いたことにIPA:TPA比率が高いほどフィルムの空洞形成が増加することが示された。
表23:

【0196】
表24に、測定した厚さ、予想厚さ、つまり押出物の厚さ、長手方向の延伸比率および幅方向の延伸比率に基づく、空洞形成がない場合の厚さ、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度、予想光学濃度、つまり層厚の理論値を用いて比較例5で開示した関係を用いて計算した光学濃度、および2重量%の濃度の特定の二酸化チタン顔料を用いたことによる予想光学濃度と観察された光学濃度の差異、ΔODを示す。
表24:

【0197】
長手方向の延伸には空洞形成による密度の低下が伴い、PET04の割合が増えると明らかに密度はさらに低下した。これはつまり驚いたことに、芳香族ポリエステル中のイソフタル酸単位の濃度の増加が、フィルムの空洞形成の増加を助長することを示す。空洞形成による光学濃度の上昇は、17から36%の範囲であった。
【0198】
次いで、長手方向に延伸したフィルムを、表25に示した条件下で、延伸時間30秒および延伸速度1000%/分で幅方向に延伸した。密度、測定した厚さ、および予想厚さ、つまり押出物の厚さ、長手方向の延伸比率および幅方向の延伸比率に基づく、空洞形成がない場合の厚さも表25に示した。
表25:

【0199】
幅方向の延伸はフィルムの密度を低下させ、また、PET04およびPET05の割合が増えると密度はさらに低下した。このこともまた驚いたことに、芳香族ポリエステル中のイソフタル酸単位の濃度の増加が、フィルムの空洞形成の増加を助長したことを示す。密度の低下は、無空洞フィルムの場合の予想厚さと比較して、単に測定した厚さに基づいて予想されるものよりも小さい。
【0200】
0.0650のIPA:TPA比率において、驚くことに幅方向の延伸は113℃以上で不可能であったが、線状ポリエステルマトリックスのガラス転移温度を10℃以下超える温度である85℃で可能であった。これにより、二軸延伸によるより高い光学濃度の実現が可能になる。
【0201】
表26に、測定した厚さ、予想厚さ、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度、予想光学濃度、つまり層厚の理論値を用いて比較例4で開示した関係を用いて計算した光学濃度、および2重量%の濃度の特定の二酸化チタン顔料を用いたことによる予想光学濃度と観察された光学濃度の差異、ΔODを示す。
表26:

【0202】
表26の結果は、ほぼ同じ延伸温度で、微小空洞化が二軸延伸フィルムの光学濃度にもたらす貢献度が、IPA:TPA比率が0.132に上昇すると70%以上まで高まる。IPA:TPA比率が0.132を超えると、30モル%のイソフタレートに相当するIPA:TPA比率0.421で、依然高い貢献度である0.66まで一様に低下する。
【0203】
Instron4411装置でフィルムをつかみ、フィルムを5秒間150℃のはんだごてに接触させたときのフィルムの厚さおよび光学濃度の変化を観察することによって、複数の二軸延伸フィルムについて空洞形成の存在を実証した。これらの実験の結果を表27に示す。
表27:

【0204】
本発明の実施例106から109
表27にまとめたように、15重量%のSANと、異なる重量比のPET02およびPET04とを有する実施例106から109の厚さ約1100μmの押出物を、実施例1から58について記載したように生成した。
表27:

【0205】
表28に示した条件下で、実施例59から78に記載したように各押出物を長手方向に延伸した。予想厚さは、無空洞フィルムで観察される押出物の厚さおよび長さに基づく厚さである。
表28:

【0206】
次いで、長手方向に延伸したフィルムを、表29に示した条件下で、実施例1から58に記載したように、延伸時間30秒および延伸速度1000%/分で幅方向に延伸した。測定した厚さ、予想厚さ、つまり押出物の厚さと長手方向および幅方向の延伸比率とに基づく、空洞形成がない場合の厚さ、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度、予想光学濃度、つまり層厚の理論値を用いて比較例5で開示した関係を用いて計算した光学濃度、および2重量%の濃度の特定の二酸化チタン顔料を用いたことによる予想光学濃度と観察された光学濃度の差異、ΔODも表29に示す。
表29:

【0207】
本発明の実施例106/LS1/BS1、106/LS1/BS2、および106/LS2/BS1について、二軸延伸した押出物の弾性率(ヤング率)および降伏応力を測定し、結果を以下の表30にまとめる。
表30:

【0208】
Instron4411装置でフィルムをつかみ、フィルムを5秒間様々な温度のはんだごてに接触させたときのフィルムの厚さおよび光学濃度の変化を観察することによって、本発明の実施例108/LS1/BS1および109/LS1/BS1の二軸延伸フィルムについて空洞形成の存在を実証した。これらの実験の結果を表31および32に示す。
表31:

表32:

【0209】
本発明の実施例108/LS1/BS1および109/LS1/BS1のフィルムについて、150℃での光学濃度の低下0.42および0.60が観察され、これらはそれぞれ38%および50%に相当する。
【0210】
本発明の実施例110から112
表33にまとめたように、いずれも2重量%の二酸化チタンと15重量%のSAN06、、および異なる重量比のPET02およびPET04とを有する本発明の実施例110から112の厚さ約1100μmの押出物を、実施例1から58について記載したように生成した。
表33:

【0211】
表34に示した条件下で、実施例59から78に記載したように各押出物を長手方向に延伸した。予想厚さは、無空洞フィルムで観察される押出物の厚さおよび長さに基づく厚さである。
表34:

【0212】
次いで、長手方向に延伸したフィルムを、表35に示した条件下で、実施例1から58に記載したように延伸時間30秒および延伸速度1000%/分で幅方向に延伸した。測定した厚さ、予想厚さ、つまり押出物の厚さ、長手方向の延伸比率および幅方向の延伸比率に基づく、空洞形成がない場合の厚さ、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度、予想光学濃度、つまり層厚の理論値を用いて比較例5で開示した関係を用いて計算した光学濃度、および2重量%の濃度の特定の二酸化チタン顔料を用いたことによる予想光学濃度と観察された光学濃度の差異、ΔODも表35に示す。
表35:

【0213】
表35の結果は、ほぼ同じ延伸温度で、組成物中のPET04の濃度が高いと、つまりポリエステル中のイソフタル酸単位の濃度がPET04中の芳香族ジカルボン酸の10モル%の濃度に上昇すると、二軸延伸フィルムの光学濃度への貢献度が明らかに大きくなることを示す。
【0214】
本発明の実施例113
2重量%二酸化チタン、100ppmのUVITEX OB-one[ppm]、15重量%SAN06、および83重量%PET04の組成を有する本発明の実施例113の厚さ1100μmの押出物を、実施例1から58について記載したように生成した。表36に示した4組の異なる条件下で、実施例1から58について記載したように該押出物を長手方向に延伸した。予想厚さは、無空洞フィルムで観察される押出物の厚さおよび長さに基づく厚さである。
表36:

【0215】
次いで、長手方向に延伸したフィルムを、表37に示した条件下で、実施例59から78について記載したように幅方向に延伸した。密度、測定した厚さ、および予想厚さ、つまり押出物の厚さ、長手方向の延伸比率および幅方向の延伸比率に基づく、空洞形成がない場合の厚さも表37に示す。
表37:

【0216】
二軸延伸はフィルムの密度を低下させ、幅方向の延伸温度が低いほど、密度の低下が激しかった。しかしながら、密度の低下は、予想厚さと比較して、単に測定した厚さに基づいて予想されるものよりも小さい。これは2つの作用の組み合わせによって一部説明できる:密度の低下が、一方でポリエステルマトリックスの結晶化度の増加により補われる程度の空洞形成によるものであり、もう一方で二軸延伸によるものであること。
【0217】
表38に、測定した厚さ、予想厚さ、つまり空洞形成がない場合の厚さ、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度、予想光学濃度、つまり層厚の理論値を用いて比較例5で開示した関係を用いて計算した光学濃度、および2重量%の濃度の特定の二酸化チタン顔料を用いたことによる予想光学濃度と観察された光学濃度の差異、ΔOD、さらに幅方向の延伸を行った温度を示す。
表38:

【0218】
幅方向の延伸工程中の他の条件にかかわらず幅方向の延伸温度を下げると、2重量%の二酸化チタンの存在には起因しない光学濃度で示されるように、空洞形成の程度が増加したことが表38の結果から明らかである。
【0219】
表39に、約110℃の延伸温度で得られた異なるフィルムの延伸条件、厚さ、予想厚さ、光学濃度、予想光学濃度、および空洞形成の結果としての他のものには起因しない光学濃度の増加をまとめた。
表39:

【0220】
表39のデータは、延伸時間を30秒から10秒に減らすこと、および延伸速度を1000%/分から2000%/分に上げることがまた、空洞形成を促進することを示す。
【0221】
Instron4411装置でフィルムをつかみ、フィルムを5秒間様々な温度のはんだごてに接触させたときのフィルムの厚さおよび光学濃度の変化を観察することによって、本発明の実施例113/LS3/BS1の二軸延伸フィルムについて空洞形成の存在を実証した。これらの実験の結果を表40および41に示す。
表40:

表41:

【0222】
本発明の実施例113/LS1/BS1のフィルムについて、150℃での光学濃度の低下0.42が観察され、これは25%に相当し、これに伴い層の厚さが26%減少する。
【0223】
本発明の実施例114から116
表42にまとめたようにSAN06、PET02およびPET04の濃度を異ならせて、芳香族ポリエステル中にSAN06の無着色分散物を有する本発明の実施例114から116の厚さ約1100μmの押出物を、実施例1から58について記載したように生成した。
表42:

【0224】
表43に示した条件下で、実施例1から58に記載したように各押出物を長手方向に延伸した。予想厚さは、無空洞フィルムで観察される押出物の厚さおよび長さに基づく厚さである。
表43:

【0225】
次いで、長手方向に延伸したフィルムを、表44に示した条件下で、延伸時間30秒および延伸速度1000%/分で幅方向に延伸した。測定した厚さ、予想厚さ、つまり押出物の厚さ、長手方向の延伸比率および幅方向の延伸比率に基づく、空洞形成がない場合の厚さ、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度、予想光学濃度、つまりフィルムの二面での屈折率によりほぼ完全に決定されるポリエチレンテレフタレートの光学濃度0.05、および芳香族ポリエステルによる予想光学濃度と観察された光学濃度の差異、ΔODも表44に示す。
表44:

【0226】
表44の結果は、3モル%のイソフタレートを含む線状ポリエステルマトリックスを有する本発明の実施例114/LS2/BS1のフィルムの場合、空洞形成による光学濃度混濁化(低下)が0.78であったのに比べて、10モル%のイソフタレートを含む線状ポリエステルマトリックスを有する本発明の実施例116/LS2/BS4および116/LS2/BS5のフィルムの場合、空洞形成による光学濃度混濁化(低下)が1.28および1.29と強く増大したことを示す。
【0227】
Instron4411装置でフィルムをつかみ、フィルムを5秒間様々な温度のはんだごてに接触させたときのフィルムの厚さおよび光学濃度の変化を観察することによって、実施例114/LS2/BS1、115/LS1/BS1および115/LS2/BS1、および一連の本発明の実施例116の二軸延伸フィルムについて空洞形成の存在を実証した。これらの実験の結果を表45および46に示す。
表45:

表46:

【0228】
本発明の実施例114/LS2/BS1、115/LS1/BS1、および115/LS2/BS1のフィルムについて、190℃での光学濃度の低下0.67、0.85および0.88が観察され、これらはそれぞれ81、86および85%に相当する。一連の本発明の実施例116では、190℃での光学濃度の低下は0.84から1.01(64から84%に相当)と様々であった。
【0229】
光学濃度のこれらの低下に伴い、層の厚さが13、16および19%減少し、一連の本発明の実施例116については25から36%の厚さの減少が観察された。これらの結果は、15または17重量%のSAN06を有するポリエステル層の透明化時の、1.01までの光学濃度の極めて大きな低下を示す。
【0230】
比較例6
IPA:TPAモル比が0.0636で、2重量%二酸化チタン、15重量%TPX(登録商標)DX820、ポリ(4-メチルペンテン)、33.3重量%PET02、および49.7重量%PET04を有する比較例6の厚さ1100μmの押出物(SP54)を、実施例1から58について記載したように生成した。表47に示した条件下で、実施例1から58に記載したように各押出物を長手方向に延伸した。予想厚さは、無空洞フィルムで観察される押出物の厚さおよび長さに基づく厚さである。
表47:

【0231】
次いで、長手方向に延伸したフィルムを、表48に示した条件下で、延伸時間30秒および延伸速度1000%/分で幅方向に延伸した。測定した厚さ、予想厚さ、つまり押出物の厚さ、長手方向の延伸比率および幅方向の延伸比率に基づく、空洞形成がない場合の厚さ、マクベスTR924濃度計により可視フィルタを用いて透過率で測定した光学濃度、予想光学濃度、および芳香族ポリエステルによる予想光学濃度と観察された光学濃度の差異、ΔODも表48に示す。
表48:

【0232】
表48の結果は、非常に大幅な不透明化を明らかに示し、実現された64%の光学濃度は、約10μmの粒子サイズを有する結晶性分散相としてTPX(登録商標)を有するPET04のマトリックスでの空洞形成に起因する。しかしながら、長手方向の弾性率(ヤング率)が1258N/mm、および長手方向の降伏応力が26.4N/mmと、本発明の実施例106/LS1/BS1、106/LS1/BS2、および106/LS2/BS1についての結果で見られる、不透明性発生物質としてSANを用いた材料の場合よりも大幅に低かった。
【0233】
本発明は、本請求項に記載の発明に関係するかどうかにかかわらず暗黙的または明示的に本明細書で開示された特徴または特徴の組み合わせ、またはその一般化のいかなるものも包含しうる。前述の説明の考察にあたり、本発明の範囲内で様々な修正が加えられうることは当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非架橋ランダムSAN-ポリマーを分散した状態で有し、且つ無機不透明顔料、白色剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、および難燃剤からなる成分の群から少なくとも一の成分を分散または溶解した状態で有する、連続相の線状ポリエステルマトリックスから本質的になるフィルムであって、ここで当該フィルムが微小空洞を含有し、非透明で、軸方向に延伸されており;線状ポリエステルマトリックスが、少なくとも一の芳香族ジカルボン酸、少なくとも一の脂肪族ジオール、および任意で少なくとも一の脂肪族ジカルボン酸から本質的になるモノマー単位を有し;線状ポリエステルの非架橋SAN-ポリマーに対する重量比が2.0:1から19.0:1の範囲であり;そして前記少なくとも一の芳香族ジカルボキシレートモノマー単位がイソフタレートであり、前記イソフタレートが、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボキシレートモノマー単位の15モル%以下の濃度で前記線状ポリエステルマトリックス中に存在する、フィルム。
【請求項2】
前記フィルムが二軸延伸フィルムである、請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
無機不透明顔料が、≦10重量%の濃度で存在する、請求項1または2に記載のフィルム。
【請求項4】
前記少なくとも一の芳香族ジカルボン酸モノマー単位がイソフタル酸であり、前記イソフタル酸が、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボン酸モノマー単位の12モル%以下の濃度で前記ポリエステルマトリックス中に存在する、請求項1ないし3のいずれかに記載のフィルム。
【請求項5】
前記線状ポリエステルが、主要な成分としてブチレンテレフタレートを含まない、請求項1ないし4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記線状ポリエステルの、25℃の60重量%フェノールおよび40重量%オルト-ジクロロベンゼンの0.5g/dL溶液中で決定される固有粘度が、少なくとも0.45dl/gである、請求項1ないし5のいずれかに記載のフィルム。
【請求項7】
前記SAN-ポリマーのAN-モノマー単位の濃度が、15から35重量%である、請求項1ないし6のいずれかに記載のフィルム。
【請求項8】
前記非架橋ランダムSAN-ポリマーの数平均分子量が、30,000から70,000である、請求項1ないし7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
前記非架橋ランダムSAN-ポリマーが、10μm以下の直径を有する粒子として前記ポリエステルマトリックス中に存在する、請求項1ないし8のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
前記線状ポリエステルの前記非架橋SAN-ポリマーに対する前記重量比が、2.7:1から5.5:1の範囲である、請求項1または9に記載のフィルム。
【請求項11】
無機不透明顔料の濃度が、≧0.1重量%である、請求項1ないし10のいずれかに記載のフィルム。
【請求項12】
前記無機不透明顔料が、シリカ、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、リン酸アルミニウム、および粘土からなる群から選択される、請求項1ないし11のいずれかに記載のフィルム。
【請求項13】
白色剤の濃度が、≦0.035重量%である、請求項1ないし12のいずれかに記載のフィルム。
【請求項14】
前記白色剤が、ビス-ベンゾオキサゾール、例えばビス-ベンゾオキサゾリル-スチルベンおよびビス-ベンゾオキサゾリル-チオフェン;ベンゾトリアゾール-フェニルクマリン;ナフトトリアゾール-フェニルクマリン;トリアジン-フェニルクマリン、およびビス(スチリル)ビフェニルからなる群から選択される、請求項1ないし13のいずれかに記載のフィルム。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載のフィルムの、合成紙としての使用。
【請求項16】
請求項1ないし14のいずれかに記載のフィルムを備えた画像記録素子であって、前記画像が非写真画像である、画像記録素子。
【請求項17】
前記フィルムの少なくとも一方の面に、透明な重ね刷り可能な層が設けられている、請求項16に記載の画像記録素子。
【請求項18】
前記フィルムの少なくとも一方の面に、非透明で透明化可能な重ね刷り可能な層が設けられている、請求項16に記載の画像記録素子。
【請求項19】
前記フィルムの少なくとも一方の面に、インクジェット受け層が設けられている、請求項16ないし18のいずれかに記載の画像記録素子。
【請求項20】
前記フィルムの少なくとも一方の面に、イメージング層が設けられている、請求項16ないし19のいずれかに記載の画像記録素子。
【請求項21】
前記フィルムの少なくとも一方の面に、書き込み可能な層が設けられている、請求項16ないし20のいずれかに記載の画像記録素子。
【請求項22】
i)ポリエステルマトリックス中に非架橋ランダムSAN-ポリマーを含む混合物を製造するために、少なくとも一の芳香族ジカルボン酸、少なくとも一の脂肪族ジオールおよび任意で少なくとも一の脂肪族ジカルボン酸から本質的になるモノマー成分を有する少なくとも一の線状ポリエステルと、非架橋ランダムSAN-ポリマーと、無機不透明顔料、白色剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、および難燃剤からなる成分の群から少なくとも一の成分とを、混練機または押出機内で混合する工程と;ii)工程i)で生成した混合物を厚いフィルムに形成して急冷する工程と;およびiii)前記SAN-ポリマーのガラス転移温度と前記線状ポリエステルのガラス転移温度の間の温度で、前記厚いフィルムを>2.5N/mmの延伸張力で初期長の少なくとも2倍に延伸する工程を含む非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムの製造方法であって、ここで前記ポリエステルマトリックスの前記非架橋ランダムSAN-ポリマーに対する重量比が2.0:1から19.0:1の範囲であり、そして前記少なくとも一の芳香族ジカルボキシレートモノマー単位がイソフタレートであり、前記イソフタレートが、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボキシレートモノマー単位の15モル%以下の濃度で前記ポリエステルマトリックス中に存在する、方法。
【請求項23】
さらなる工程、(iv)第一の延伸工程に対して実質的に90℃の角度で、フィルムを、>2.5N/mmの延伸張力および前記SAN-ポリマーのガラス転移温度と線状ポリエステルマトリックスのガラス転移温度の間の温度で初期長の少なくとも2倍にさらに延伸する工程を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
工程(iv)が、120℃以下の温度で実行される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(iii)および(iv)が同時に行われる、請求項22ないし24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
さらに熱固定工程を含む、請求項22ないし25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも一の芳香族ジカルボン酸モノマー単位がイソフタル酸であり、前記イソフタル酸が、前記線状ポリエステルマトリックス中の全てのジカルボン酸モノマー単位の15モル%以下の濃度で前記ポリエステルマトリックス中に存在する、請求項22ないし26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
請求項1ないし14のいずれかに記載の非透明微小空洞含有軸方向延伸フィルムへの加圧により随意に補助される像様加熱工程を含む、透かしパターン形成方法。

【公表番号】特表2010−505981(P2010−505981A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530853(P2009−530853)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060218
【国際公開番号】WO2008/040670
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509096256)
【Fターム(参考)】