説明

非透水性テキスタイル支持体、その製造法及びその使用

【課題】テキスタイル支持体を、有利に自浄特性をこの支持体の表面上に生じさせながら、出来る限り長期間に亘って蒸気透過性及び非透水性であるように仕上げることを可能にする、出来る限り容易な方法を提供する。
【解決手段】a)支持体を少なくとも1種の定着剤を有する液体で処理し引き続き乾燥させ、かつb)a)により処理した支持体を0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子、溶剤及び少なくとも1種の定着剤を有する混合物で処理し、引き続き乾燥させる、蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、テキスタイル支持体、殊に自浄特性、即ちいわゆるハス効果を有するフリースである。
【背景技術】
【0002】
自浄性表面を多くの技術分野において製造し、かつ極めて種々の適用に利用することが試みられている。撥水性であるものとして、強度に疎水性の材料は久しく公知である。ここで、とりわけテフロンを有するテキスタイル(Goretex(R))を挙げることができ、これは水蒸気(汗)に対して透過性であるが、液体の水(雨)に対しては不透過性である。その間に、そのような材料から成るテキスタイル、殊に運動及び作業用衣服が広く普及した。表面の純粋な疎水化によって表面への自浄特性の付与(ハス化(Lotusierung))を達成することはできない。
【0003】
自然界において、ハス植物は自浄性表面が機能する原理を示す。表面の良好な自浄性を達成するためには、表面は、極めて疎水性である表面の他に、ある程度の粗度を有していなければならない。構造と疎水性との適切な組合せによって、移動する水がすでに少量で、表面上に付着している汚染粒子を連行し、かつ表面を清浄化することが可能となる(WO96/04123)。
【0004】
EP0933388によれば、このような自浄性の表面のために、1より大きいアスペクト比及び20mN/mよりも低い表面エネルギーが必要であることは従来技術である。この場合、アスペクト比は、構造の幅に対する高さの商として定義されている。前記の基準は、自然界では例えばハスの葉において実現されている。疎水性のワックス状材料から形成される植物の表面は凸部を有し、これは相互に数μm離れている。水滴は実質的にこの凸部の先端でのみ接触する。このような撥水性表面は文献に多数記載されている。
【0005】
EP0909747は自浄性の表面を製造する方法を教示している。該表面は高さ5〜200μmの疎水性の凸部を有する。このような表面は粉末粒子の分散液及びシロキサン溶液中の不活性材料を塗布し、かつ引き続き硬化させることにより製造される。従って構造を形成する粒子は補助媒体によって支持体上に固定される。
【0006】
WO00/58410は、物品の表面を人工的に自浄性にすることは技術的に可能であるという結論に到達している。このために必要とされる、凸部と凹部とからなる表面構造は、表面構造の凸部の間に0.1〜200μmの範囲の間隔を有し、かつ0.1〜100μmの範囲の凸部の高さを有する。このために使用される材料は疎水性ポリマー又は持続的に疎水化された材料からなっていなくてはならない。
【0007】
多数の特許出願において、表面に自浄特性を付与することも行われており、その際しばしば接着剤を用いて粒子も表面上に施与される。そのような方法はテキスタイルの加工のために極めて不適当であり、それというのも、その場合その柔軟性及び水蒸気に関する透過性が失われるためである。
【0008】
DE10118348には自浄性表面を有するポリマー繊維が記載されており、ここでは、自浄性表面は、構造形成粒子を有する溶剤の作用、溶剤によるポリマー繊維の表面の溶解、溶解表面への構造形成粒子の付着及び溶剤の除去によって得られる。この方法の欠点は、ポリマー繊維の加工(紡糸、編織等)の際に、自浄性表面を生じさせる構造形成粒子、ひいては構造が損傷され得るか又は場合によっては更には完全に失われることがあり、それによって自浄効果が同様に失われることにある。
【0009】
DE10118346には、少なくとも1種の合成及び/又は天然のテキスタイル基材Aと、接着剤、樹脂又は塗料なしに基材Aと堅固に結合している粒子から成る凸部及び凹部を有する人工的な少なくとも部分的に疎水性の表面とから構成された、自浄性及び撥水性の表面を有するテキスタイル平面構造物が記載されており、この平面構造物は、粒子を溶解せずに含有する少なくとも1種の溶剤で基材Aを処理し、溶剤を除去することにより得られ、その際、粒子の少なくとも一部分は、基材Aの表面と堅固に結合している。
【0010】
最後に記載した2つの方法は、テキスタイル支持体への粒子の堅固な固定を保証するために、粒子を支持体ないし繊維の表面に埋め込まねばならず、この処理によって支持体の特性が悪化するという欠点を有する。
【0011】
DE10205007では、前記の欠点を克服することが試みられている。アルコール中の粒子の懸濁液をテキスタイル支持体上に吹き付け、次いでアルコールを蒸発させる。この方法で、繊維ないし支持体自体が損傷されることは回避される。しかしながら、粒子の持続的な固定は不可能である。確かに、落下する雨滴により生じるような負荷は被覆によって許容されることが記載されてはいるが、そのような被覆は剪断等の機械的負荷に耐えない。
【特許文献1】WO96/04123
【特許文献2】EP0933388
【特許文献3】EP0909747
【特許文献4】WO00/58410
【特許文献5】DE10118348
【特許文献6】DE10118346
【特許文献7】DE10205007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って本発明の課題は、テキスタイル支持体を、有利に自浄特性をこの支持体の表面上に生じさせながら、出来る限り長期間に亘って蒸気透過性及び非透水性であるように仕上げることを可能にする、出来る限り容易な方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚異的にも、テキスタイル支持体を第一の工程において定着剤を用いて処理し、第二の工程において、そのように処理した支持体を、もう1種の定着剤並びに0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子を有する混合物で処理することにより、適当な定着剤の二重の使用によってテキスタイル支持体への疎水性粒子の確実な結合が達成されるために、蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体を極めて容易に製造することができ、かつ自浄特性を付与することができることが見い出された。恐らく、定着剤を用いた第一の処理により、支持体の繊維の表面に、Si原子を介して繊維に結合する遊離ヒドロキシ基が付与され、この遊離ヒドロキシ基に、第二の処理工程において、疎水性粒子への結合までも有する第二の定着剤のシラノール基が化学的に結合し得るものと思われる。
【0014】
従って本発明の対象は、
工程a)において、支持体を、少なくとも1種の定着剤を有する液体で処理し、引き続き乾燥させ、かつ
工程b)において、a)により処理した支持体を、直径0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子、溶剤及び少なくとも1種の定着剤を有する混合物で処理し、引き続き乾燥させる
ことを特徴とする、少なくとも2つの処理工程を有する、蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体の製造法である。
【0015】
同様に、本発明の対象は、支持体が繊維の表面上に第一の被覆を有し、前記の第一の被覆は酸素及びケイ素を有する少なくとも1種の化合物を有し、かつ前記の第一の被覆の上に、0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子が存在していることを特徴とする、有利に本発明による方法により製造された蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体である。
【0016】
更に、本発明の対象は、工業用テキスタイルとして、テキスタイル長尺物品として又は衣服用テキスタイルとしての、本発明による蒸気透過性の非透水性支持体の使用である。本発明による支持体は自浄特性をも有するため、殊に、汚染及び水による高い負荷にさらされる物品の製造にも適当である。
【0017】
工業用テキスタイルとして、本発明による支持体は多大な利点を有する。液相に対する透過性が低下するにも関わらず、水蒸気透過性は低下しない。前記の効果は蒸気透過の際にも利用されるため、本発明による支持体はそのような方法においても適当である。本発明による支持体は高い摩耗強度を示し、かつ移動する水による卓越した自浄特性を有する。複合材料の製造法は、例えばWO99/16260に記載されているようなセラミックで支持体を被覆するための市販の機械で実施することができるという利点を有する。
【0018】
本発明による方法は、厳密に適合された定着剤の使用により、繊維への粒子の付着性を、繊維自体を損傷することなく改善することができたという利点を有する。
【0019】
本発明の範囲内で記載されるテキスタイル支持体は、蒸気透過性でかつ非透水性である。この場合、蒸気透過性とは、テキスタイル支持体が水蒸気及び他の気体に対して透過性であることを意味する。テキスタイル支持体は標準圧力で水に対して非透過性であり、これは即ち、前記の支持体の上に水柱を形成させることができるのに対して、前記の支持体は別の液体、殊に親水性の低い液体、例えばアルコール又は炭化水素に対しては透過性であり得ることを意味する。本発明によるテキスタイルが、所定の水柱の高さから、即ち所定の圧力で、水に対しても透過性となることは自明である。
【0020】
本発明による複合材料並びにその製造法を、本発明をこの実施態様に限定することなく以下に記載する。
【0021】
少なくとも2つの処理工程を有する、蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体の本発明による製造法は、工程a)において、支持体を、少なくとも1種の定着剤を有する液体で処理し、引き続き乾燥させ、かつ工程b)において、a)により処理した支持体を、0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子、アルコール及び少なくとも1種の定着剤を有する混合物で処理し、引き続き乾燥させることを特徴とする。
【0022】
液体として、工程a)において、水及び/又は他の溶剤、例えばアルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、N−メチルピロリドン等又は水と1種以上の溶剤との混合物が使用される。殊に有利にアルコールが使用され、極めて殊に有利にエタノールが使用される。工程a)において使用される液体は有利に、加水分解されたシラン0.1〜10質量%を定着剤として有する溶液又はゾルである。定着剤として作用するシランをその加水分解されていない形で使用する場合、全ての場合において、混合物に更にシランの加水分解のために必要な量の水、並びに加水分解のための触媒として更に1種の鉱酸を添加しなければならない。定着剤に対して付加的に、使用される液体は更に0.1〜10質量%、有利に1〜5質量%のテトラエトキシシラン(TEOS)を有してよい。TEOSの付加的な使用により、支持体上の第二の被覆の更に良好な付着性を達成することができる。
【0023】
定着剤として、工程a)において、有利に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(AMEO)、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシトリメトキシシラン(GLYMO)、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、Silfin(登録商標)、ビニルトリエトキシシラン(VTEO)、ビニルトリメトキシシラン及び/又はビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランが使用される。適当なシランは例えばDegussa AG社から得ることができる。
【0024】
工程b)における混合物として、有利に、溶剤中の0.1〜5質量%の疎水性粒子の分散液、有利に、酸、有利に鉱酸0.1〜20質量%(粒子割合に対する割合)、有利に水性の2.5〜7.5、有利に5質量%の酸、有利に塩酸を有する、酸性化された溶剤中の分散液、及び、粒子割合に対して0.1〜20質量%、有利に1〜10質量%の定着剤を有する混合物が使用される。定着剤として、工程b)において有利にトリメチルエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン及び/又はオクチルトリエトキシシランが使用される。有利な実施態様において、混合物に他のシランとして更にTEOSも混合される。溶剤として、とりわけアルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、N−メチルピロリドン等が適当であり、その際、アルコール、殊に有利にエタノールが有利に使用される。
【0025】
分散液中で使用される疎水性粒子は有利に珪酸塩、鉱物、金属酸化物、金属粉末、沈降シリカ及び/又は熱分解法シリカ、顔料及び/又はポリマーの疎水性粒子から選択される。殊に有利に疎水性粒子としてシリカが使用される。
【0026】
有利に、0.05〜50μm、極めて殊に有利に0.1〜30μmの平均粒径を有する粒子が使用される。しかしながら、一次粒子から0.2〜100μmのサイズを有する凝結体又は凝集体へと集まった粒子も適当である。
【0027】
使用される粒子が構造化表面を有することが有利であり得る。有利に、1〜1000nmの平均間隔及び1〜1000nmの平均高さ、有利にそれぞれ2〜750nm及び極めて殊に有利にそれぞれ10〜100nmの平均間隔及び平均高さを有する凸部を有するナノメートル範囲の不規則な微細構造を表面上に有する粒子が使用される。微細構造とは、上記の範囲内の高さ、幅及び間隔を有する構造であると解釈される。そのような粒子は、有利に、熱分解法シリカ、沈降シリカ、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、熱分解法シリカ及び/又はドープされたシリカ又は粉末状高温安定性ポリマーから選択された少なくとも1種の化合物を有する。ナノメートル範囲の不規則な通気性のよい亀裂のある微細構造を有する粒子は、有利に1を上回る、特に好ましくは1.5を上回る、微細構造中のアスペクト比を有する凸部を有する。この場合、アスペクト比は、凸部の最大幅に対する最大高さからの商として定義されている。図1において、粒子により形成される凸部と、微細構造により形成される凸部との差異が略示的に説明される。該図は、粒子Pを有する支持体の表面Xを示す(図の簡略化のために1つの粒子のみが示されている)。粒子の微細構造により粒子上に存在している凸部の選択された1つの凸部Eは、2.5である凸部の最大高さmH’とそれに比較して1である最大幅mB’とからの商として算出された2.5のアスペクト比を有する。
【0028】
粒子の疎水特性は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の場合のように、使用される材料により粒子に内在することができる。しかしながら、適当な処理の後に疎水特性を有する疎水性粒子、例えばフルオロアルキルシラン、アルキルシラン、ペルフルオロアルキルシラン、パラフィン、ロウ、脂肪酸エステル、官能化長鎖アルカン誘導体又はアルキルジシラザンの群からの少なくとも1種の化合物で処理された粒子を使用することもできる。粒子として、特に疎水化された熱分解法シリカ、いわゆるエアロシル(Aerosile)が適している。疎水性粒子の例は、例えばエアロシル(登録商標)VPR 411、エアロシル(登録商標)R202、エアロシル(登録商標)VPLE 8241又はエアロシル(登録商標)R 8200である。ペルフルオロアルキルシランでの処理及び引き続く熱処理により疎水化可能な粒子の例は、例えばエアロパール(Aeroperl)90/30、シパーナート(Sipernat)シリカ350、酸化アルミニウムC、バナジウムドープされたケイ酸ジルコニウム又はエアロパールP25/20である。そのような疎水化粒子の使用は、通常、疎水性を本質的に損なうことなく350℃の温度まで問題なく可能である。
【0029】
溶剤として、工程a)及び/又はb)において有利にアルコールを使用することができる。有利に例えばエタノール、イソプロパノール又はメタノールが使用される。有利に、エタノールがアルコールとして使用される。
【0030】
工程a)による液体を用いた支持体の処理及び/又は混合物を用いた工程b)による工程a)からの支持体の処理を、その都度、支持体に液体ないし混合物をナイフ塗布、吹き付け又はローラー塗布することにより、又は支持体を液体ないし混合物に含浸させることにより、又は支持体を液体ないし混合物に浸漬させることにより行うことができる。有利に、支持体は第一の工程において液体に浸漬され、引き続き工程b)において混合物に含浸される。
【0031】
工程a)及び/又はb)による乾燥を、有利に、処理した支持体を80〜250℃、有利に115〜180℃の温度、極めて殊に有利に120〜160℃の温度に加熱することにより行う。この場合、温度は、支持体のポリマー材料が変形、溶融又は分解しないように選択されねばならない。
【0032】
有利に、テキスタイル支持体として、繊維、殊にポリマー繊維からの、有利にポリエステル、ポリアミド又はポリオレフィン及び/又は天然繊維からの織物、編物、フェルト又はフリースが使用される。混合繊維からのフリースを使用することもできる。
【0033】
表面構造が付与された複合材料の表面を後から(再度)疎水化することは有利であり得る。これは、粒子の疎水化のために記載した化合物を用いた表面の処理により行うことができる。
【0034】
本発明による方法は、平面的な柔軟性のある支持体を出発材料として使用する場合、例えば、支持体をロールから1m/h〜10m/hの速度、有利に0.5m/分〜50m/分の速度、極めて殊に有利に2m/分〜10m/分の速度で巻き出し、液体を支持体の片面又は両面に施与する少なくとも1つの装置、例えばローラー、吹き付け装置、ナイフ又は浸漬浴、及び、そのように処理した支持体を加熱により乾燥させることができる少なくとも1つの他の装置、例えば電気加熱炉を通過させるというように実施することができる。そのように処理した支持体を巻き取り、かつ第二の通路において、前記の装置により、本発明による方法の工程b)による混合物を用いて処理するか、又は、工程a)により処理された支持体を、直接、工程a)を実施するための装置のように構成されていてよい第二の装置に導通させ、この場合、混合物を支持体の片面又は両面に施与する少なくとも1つの装置、例えばローラー、吹き付け装置、ナイフ又は浸漬浴、ないし支持体を中で浸漬させる少なくとも1つの装置、及び、そのように処理した支持体を加熱により乾燥させることができる少なくとも1つの他の装置、例えば電気加熱炉を導通させることができる。そのように製造された支持体を第二のロールに巻き取ることができる。このようにして本発明による支持体を連続法で製造することができる。場合により必要な後処理工程(例えば後で行う疎水化)も同様に連続法で実施することができる。
【0035】
本発明による方法を用いて、支持体が繊維の表面上に第一の被覆を有し、前記の第一の被覆は酸素及びケイ素を有する少なくとも1種の化合物を有し、かつ前記の第一の被覆の上に、0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子が存在することを特徴とする、本発明による蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体を製造することができる。支持体の繊維の表面は有利に少なくとも部分的に、1nm〜100μmの凸部の平均高さ及び相互に1nm〜100μmの凸部の平均間隔を有しかつ疎水性粒子により形成される凸部から成る構造を有する。
【0036】
極めて殊に有利に、本発明による支持体の繊維の表面は、0.1〜50μm、有利に0.5〜5μmの平均高さ及び0.1〜50μm、有利に0.5〜5μmの平均間隔を有する凸部を有する構造を有する。凸部の平均間隔とは本発明の意味では、凸部の最も高い突出部から最も近く最も高い突出部までの間隔であると理解される。凸部が円錐の形を有している場合、該円錐の先端が該凸部の最も高い突出部である。凸部が平行六面体である場合、該平行六面体の最上部の面が該凸部の最も高い突出部である。凸部の平均幅は有利に1nm〜100μm、有利に50nm〜4μm、極めて殊に有利に0.3〜1μmである。凸部の平均幅は凸部の半分の高さで測定されたもの、及び最小及び最大の幅の平均である。従って、円錐又は円筒の平均幅は、半分の高さにおける円筒ないし円錐の直径に相当する。立方体の平均幅は、側面の長さと面対角線との和の平均としてもたらされる。支持体の繊維の表面が相互に0〜10、殊に0〜3粒径の間隔の粒子を有する場合に、殊に有利であることが判明した。
【0037】
有利に、本発明による支持体は自浄特性を有する。自浄特性とはこの場合、本発明による支持体が、実施例11により体積60μlの水滴に関して測定された、20゜未満、有利に10゜未満の転がり角(Abrollwinkel)を有することであると定義される。
【0038】
本発明により存在する疎水性粒子は、有利に、珪酸塩、鉱物、金属酸化物、金属粉末、沈降シリカ及び/又は熱分解法シリカ及び/又はポリマーから選択された材料を有する疎水性又は疎水化粒子から選択されている。有利に、粒子は0.05〜50μm、極めて殊に有利に0.1〜30μmの平均粒径を有する。一次粒子から0.2〜100μmのサイズを有する凝結体又は凝集体へと集まった粒子も適当である。
【0039】
粒子が構造化表面を有する場合に有利であり得る。有利な粒子は、1〜1000nmの平均間隔及び1〜1000nmの平均高さ、有利にそれぞれ2〜750nm及び極めて殊に有利にそれぞれ10〜100nmの平均間隔及び平均高さを有する凸部を有するナノメートル範囲の不規則な微細構造を表面上に有する。微細構造とは、上記の範囲内の高さ、幅及び間隔を有する構造であると解釈される。そのような粒子は、有利に、熱分解法シリカ、沈降シリカ、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、熱分解法シリカ及び/又はドープされたシリカ又は粉末状高温安定性ポリマーから選択された少なくとも1種の化合物を有する。ナノメートル範囲の不規則な通気性のよい亀裂のある微細構造を有する粒子は、有利に1を上回る、特に好ましくは1.5を上回るアスペクト比を有する凸部を微細構造中に有する。ここで、アスペクト比は、凸部の最大幅に対する最大高さの商として定義されている。図1において、粒子により形成される凸部と、微細構造により形成される凸部との差異が略示的に説明される。該図は、粒子Pを有する支持体の表面Xを示す(図の簡略化のために1つの粒子のみが示されている)。粒子の微細構造により粒子上に存在している凸部の選択された1つの凸部Eは、2.5である凸部の最大高さmH’とそれに比較して1である最大幅mB’とからの商として算出された2.5のアスペクト比を有する。
【0040】
粒子の疎水特性は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の場合のように、使用される材料により粒子に内在することができる。しかしながら、適当な処理の後に疎水特性を有する疎水性粒子、例えばフルオロアルキルシラン、アルキルシラン、ペルフルオロアルキルシラン、パラフィン、ロウ、脂肪酸エステル、官能化長鎖アルカン誘導体又はアルキルジシラザンの群からの少なくとも1種の化合物で処理された粒子を使用することもできる。粒子として、特に疎水化された熱分解法シリカ、いわゆるエアロシル(Aerosile)が適している。疎水性粒子の例は、例えばエアロシル(登録商標)VPR 411、エアロシル(登録商標)R202、エアロシル(登録商標)VPLE 8241又はエアロシル(登録商標)R 8200である。ペルフルオロアルキルシランでの処理及び引き続く熱処理により疎水化可能な粒子の例は、例えばエアロパール(Aeroperl)90/30、シパーナート(Sipernat)シリカ350、酸化アルミニウムC、バナジウムドープされたケイ酸ジルコニウム又はエアロパールP25/20である。そのような疎水化粒子の使用は、通常、疎水性を本質的に損なうことなく350℃の温度まで問題なく可能である。
【0041】
有利に、テキスタイル支持体は繊維、殊にポリマー繊維及び/又は天然繊維からの織物、編物、フェルト又はフリースである。殊に有利に、テキスタイル支持体はポリエステル、ポリアミド及び/又はポリオレフィンからの繊維を有する。混合繊維からのフリースを使用することも可能である。
【0042】
本発明による蒸気透過性の非透水性支持体は、例えば工業用テキスタイルとして、テキスタイル長尺物品として又は衣服用テキスタイルとして使用することができる。殊に、本発明による支持体は、オーニング、日傘又は天幕、テント用布地、作業用衣服、自由時間用衣服、運動用衣服又は布団皮又は衣服の外被であってよく、そのままであってよいか、又はその製造のために使用することができる。
【0043】
図1〜4をもとに、本発明による方法及び本発明による支持体を詳説するが、これに限定されない。
【0044】
図1において、粒子により形成される凸部と、微細構造により形成される凸部との差異が略示的に説明される。該図は、粒子Pを有する支持体の表面Xを簡略的に示す(図の簡略化のために1つの粒子のみが示されている)。粒子自体により形成される凸部は、9である粒子の最大高さmHと、それに比較して7である最大幅mBとからの商として算出された約1.29のアスペクト比を有する。粒子の微細構造により粒子上に存在している凸部の選択された1つの凸部Eは、2.5である凸部の最大高さmH’とそれに比較して1である最大幅mB’とからの商として算出された2.5のアスペクト比を有する。
【0045】
図2、3及び4において、実施例により製造された支持体の走査電子顕微鏡写真が種々の倍率で再現されている。図4では、繊維を粒子で被覆することにより存在する凸部及び凹部が極めて良好に認められる。
【0046】
本発明による方法を以下の実施例をもとに例示的に記載するが、但し本発明はこれに制限されるべきではない。
【実施例】
【0047】
実施例1:本発明による支持体の製造(PET−フリースのハス化)
ポリエチレンテレフタラート−フリース(PET−フリース)(Freudenberg, FS22325)を、まず室温で2時間撹拌した、エタノール90g中のTEOS5g、5質量%塩酸5g及びGLYMO5gとから成るゾルで、連続法でローラーを用いて被覆し(ベルト速度:10m/h)、150℃で30秒間乾燥させる。
【0048】
そのように処理したフリースを、同一の装置で同一の温度で、更にGLYMO0.1g及びTEOS0.1g並びに5質量%塩酸0.1gを含有するエタノール99g中のエアロシルVPLE 8241 1gから成る懸濁液で被覆する。
【0049】
実施例2:PET−フリースのハス化
PET−フリース(Freudenberg, FS22325)を、まず室温で2時間撹拌した、エタノール90g中のTEOS5g、5質量%塩酸5g及びGLYMO5gとから成るゾルで、連続法でローラーを用いて被覆し(ベルト速度:10m/h)、150℃で30秒間乾燥させる。
【0050】
このフリースを、同一の装置で同一の温度で、更にGLYMO0.25g及びTEOS0.25g並びに5質量%塩酸0.25gを含有するエタノール97.5g中のエアロシルVPLE 8241 2.5gから成る懸濁液で被覆する。
【0051】
実施例3:PET−フリースのハス化
PET−フリース(Freudenberg, FS22325)を、まず室温で2時間撹拌した、エタノール90g中のTEOS5g、5質量%HCl5g及びGLYMO5gとから成るゾルで、連続法でローラーを用いて被覆し(ベルト速度:10m/h)、150℃で30秒間乾燥させる。
【0052】
このフリースを、同一の装置で同一の温度で、更にGLYMO0.5g及びTEOS0.5g並びに5質量%塩酸0.5gを含有するエタノール95g中のエアロシルVPLE 8241 5gから成る懸濁液で被覆する。
【0053】
実施例4:PAN−フリースのハス化
ポリアクリロニトリル(PAN)−フリース(Freudenberg, FS 1773)を、まず室温で2時間撹拌した、エタノール90g中のTEOS5g、5質量%塩酸5g及びGLYMO5gとから成るゾルで、連続法でローラーを用いて被覆し(ベルト速度:10m/h)、150℃で30秒間乾燥させる。
【0054】
このフリースを、同一の装置で同一の温度で、更にGLYMO0.25g及びTEOS0.25g並びに5質量%塩酸0.25gを含有するエタノール97.5g中のエアロシルVPLE 2.5gから成る懸濁液で被覆する。
【0055】
実施例5:ハス−フリースの特性決定
実施例1〜4により製造された支持体を、その自浄特性、その耐久性並びにその非透水性に関して試験した。更に、未処理の支持体に関して同一の試験を実施した。
【0056】
自浄効果を転がり角の測定により決定した。測定された転がり角が小さいほど、自浄特性は良好である(ハス効果)。転がり角を測定するために、処理した支持体を、一面を持ち上げることのできる平面的な表面上に置いた。その都度、体積20μl〜60μlの液滴を支持体の表面上にピペットにより施与した。引き続き、板を片側で持ち上げ、増加する角度をもとの位置にした。その都度、もとの水平の位置に対する、水滴が自然に転がる位置の角度を測定した。
【0057】
数サイクルの摩耗試験の後に、試験した支持体の箇所を水により湿潤させるか、又は水滴は水平に対して90°の角度であっても落下しなかったことにより摩耗強度を試験した。施与された水滴(20μl)が表面上に広がった場合に湿潤であるものとした。摩耗試験を、611gの重りで負荷された回転する円形の直径2cmのPET−フリースを用いて実施した。
【0058】
支持体上に施与される水柱のどの位の高さから水の漏出を認めることができるかを測定することによって水密性を測定した(DIN EN13562により測定した)。疎水性粒子で被覆されていないPET−フリース及びPAN−フリースによる支持体上で、水柱を形成させることは不可能であった。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
試験結果に基づき、耐久性に関して、実施例2及び3の試験による材料は最良の結果を示すことが認められる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】粒子により形成される凸部と、微細構造により形成される凸部との差異を略示的に示す図。
【図2】実施例により製造された支持体の走査電子顕微鏡写真を示す図。
【図3】実施例により製造された支持体の走査電子顕微鏡写真を示す図。
【図4】実施例により製造された支持体の走査電子顕微鏡写真を示す図。
【符号の説明】
【0063】
P 粒子、 X 支持体の表面、 E 凸部、 mH 粒子の最大高さ、 mB 粒子の最大幅、 mH’ 凸部の最大高さ、 mB’ 凸部の最大幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの処理工程を有する、蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体の製造法において、
a)支持体を、少なくとも1種の定着剤を有する液体で処理し、引き続き乾燥させ、かつ
b)a)により処理した支持体を、0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子、溶剤及び少なくとも1種の定着剤を有する混合物で処理し、引き続き乾燥させる
ことを特徴とする、蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体の製造法。
【請求項2】
工程a)における液体として水又は他の溶剤又は水と少なくとも1種の他の溶剤との混合物を使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
溶剤を、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、N−メチルピロリドンから選択する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程a)において使用される液体が、少なくとも部分的に加水分解されたシラン0.1〜10質量%を定着剤として有する溶液又はゾルである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
工程a)により使用される液体が、更にテトラエトキシシラン0.1〜10質量%を有する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
工程a)において、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、Silfin(登録商標)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランを定着剤として使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
b)による混合物として、アルコール中の0.1〜5質量%の疎水性粒子を有する分散液及び前記分散液に対して0.1〜20質量%の定着剤を有する混合物を使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
b)による混合物中で、定着剤として、トリメチルエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、Silfin(登録商標)及び/又はオクチルトリエトキシシランを使用する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
珪酸塩、鉱物、金属酸化物、金属粉末、沈降シリカ及び/又は熱分解法シリカ、顔料及び/又はポリマーの疎水性粒子から選択された疎水性粒子を使用する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
1〜1000nmの平均間隔及び1〜1000nmの平均高さを有する凸部を有する微細構造を有する疎水性粒子を使用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
疎水性粒子に、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン及び/又はジシラザンの群からの少なくとも1種の化合物を用いた処理により疎水特性を付与する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
溶剤として工程a)及び/又はb)においてエタノールを使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程a)による液体を用いた支持体の処理及び/又は混合物を用いた工程b)による工程a)からの支持体の処理を、支持体に液体ないし混合物をナイフ塗布、吹き付け又はローラー塗布することにより、又は支持体を液体ないし混合物に含浸させることにより、又は支持体を液体ないし混合物に浸漬させることにより行う、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
工程a)及び/又はb)による乾燥を、処理した支持体を80〜250℃の温度に加熱することにより行う、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
支持体として、ポリマー繊維及び/又は天然繊維からの織物、編物、フェルト又はフリースを使用する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体において、支持体が繊維の表面上に第一の被覆を有し、前記の第一の被覆は酸素及びケイ素を有する少なくとも1種の化合物を有し、かつ前記の第一の被覆の上に、0.02〜100μmの平均粒径を有する疎水性粒子から成る第二の被覆が存在していることを特徴とする、蒸気透過性の非透水性テキスタイル支持体。
【請求項17】
請求項1から15までのいずれか1項記載の方法により製造された、請求項16記載の支持体。
【請求項18】
支持体の繊維の表面が少なくとも部分的に、1nm〜100μmの凸部の平均高さ及び相互に1nm〜100μmの凸部の平均間隔を有しかつ疎水性粒子により形成される凸部から成る構造を有する、請求項16又は17記載の支持体。
【請求項19】
支持体が自浄特性を有する、請求項16から18までのいずれか1項記載の支持体。
【請求項20】
疎水性マイクロ粒子が、珪酸塩、鉱物、金属酸化物、金属粉末、沈降シリカ及び/又は熱分解法シリカ及び/又はポリマーから選択された材料を有する疎水性又は疎水化粒子から選択されている、請求項19記載の支持体。
【請求項21】
マイクロ粒子が、1を上回るアスペクト比を有する凸部を有する微細構造を有するナノ構造化されたマイクロ粒子である、請求項16から20までのいずれか1項記載の支持体。
【請求項22】
支持体がポリマー繊維及び/又は天然繊維からのフリース、織物、編物又はフェルトである、請求項16から21までのいずれか1項記載の支持体。
【請求項23】
工業用テキスタイルとして、テキスタイル長尺物品として又は衣服用テキスタイルとしての、請求項16から22までのいずれか1項記載の蒸気透過性の非透水性支持体の使用。
【請求項24】
長尺物品がオーニング、日傘又は天幕、テント用布地、布団皮又は衣服における外被である、請求項23記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−183230(P2006−183230A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372860(P2005−372860)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa AG
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】