説明

非鉄金属表面上の耐アルカリ性コーティング

a)ベースコートとして、ケイ素及びホウ素の酸化物層と、b)ガラス質トップコートとして、ケイ素の酸化物層とを含む耐アルカリ性保護コートを備えた非鉄金属の表面を有する物品、及びその製造方法について記載する。保護コートは、特に陽極酸化物コートを備えている場合、特にAl及びその合金の表面に好適である。保護コートは、非鉄金属表面、より詳細には家庭用品、例えばポット及びフライパン、並びに家庭用具が、食器洗浄機に耐えるようにするために、これらの透明な耐アルカリ性保護として好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐アルカリ性保護コートを備えた軽金属の表面を有する物品、その製造方法、及びその使用に関する。
【0002】
アルミニウム金属及びその合金は、産業、慣用法及び消費者区分で広く利用されている材料である。この広範な使用について他が追随しない理由は、アルミニウム金属及びその合金が非貴金属性であるにもかかわらず、表面不動態化能力のために周囲条件下で比較的高い耐性を有するためである。この不動態化の過程で、水分による腐食攻撃に耐えるのに十分に不透過性の酸化物層が形成される。しかしながら、酸化物層を攻撃する条件が発生すると、不動態が除かれ、腐食が急速に進行する。これは酸及び塩基による攻撃、即ち、pH7を越えるか又はこれよりも低いpHにおける攻撃全てに該当する。この理由は、酸及び塩基の両方に可溶性をもたらす酸化アルミニウムの両性特性である。
【0003】
固形物への任意の化学攻撃の反応速度は表面サイズに応じて変わる。比表面積が大きい場合、溶解速度は速い。
【0004】
特に装飾効果と合わせて、長年にわたって確立された、アルミニウム表面を保護する方法は、陽極酸化法(anodic oxidation)である。商品名「Eloxal」の名で知られている最も一般的な方法の1つは、産業及び事業に普及している。この方法では、電位を用いて、比較的速く、必要に応じて及び必要とされる場合には、顔料を組み込むこと及び色彩効果をもたらすことを可能にする酸化物層が生成される。しかしながら、この酸化物層の構造は緻密でないが、代わりにより多孔質であるため、高表面積を例えばアルカリ攻撃に提供する。結果的に、これらの陽極層は、塩基に対して非常に感応性である。したがって、例えば食器洗浄機で広く使用される或る種のpHレベルでは、より速い速度又はあまり速くない速度で陽極層が溶解又は攻撃されるか、又は次第に消失する。
【0005】
特に、陽極酸化によって生成される表面効果は、装飾効果に非常に重要であるため、例えば家庭用具に必要とされる種類のアルミニウム表面上の、食器洗浄機に耐える装飾コートの製造が重要である。
【0006】
文献には、加水分解に安定な酸化物を液体形態で表面に塗布した後、例えば圧密化又は硬化によって熱安定化する、ゾル−ゲルプロセスが記載されている。
【0007】
しかしながら、陽極層に固有の多孔質を完全に閉じることは不可能であるため、陽極酸化物層を安定化するためにこのようなプロセスを使用する試みは、実施可能であることが証明されていない。結果的に、アルカリ媒体の層中への、及びアルミニウムとの界面への浸透を防止することが不可能である。さらに、かかる系を加熱して200℃を超える温度に安定化し、亀裂をもたらす収縮効果が多孔質層中に生じることが見い出された。これにより、耐化学薬品性がさらに下がる。これらの系に用いられる酸化物は二酸化チタン又は酸化ジルコニウムであり、酸化物は両方とも耐アルカリ性が高いことで知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、本発明の目的は、陽極酸化された表面を安定化させる一方、先行の陽極酸化を行わないアルミニウム表面への塗布にも好適である、コーティング系及び技術を開発することであった。さらに、コートは、液体形態で塗布され、好適な方法によって安定化することができるものとする。得られる保護コートは亀裂がなく、耐アルカリ性である。さらなる目的は、透明な保護コートの製造である。
【0009】
この目的は、耐アルカリ性保護コートによって達成され、この耐アルカリ性保護コートは、軽金属の表面に塗布され、且つa)ベースコートとして、ケイ素及びホウ素の酸化物層と、b)ガラス質トップコートとして、ケイ素の酸化物層とを含む。この方法では、アルカリ媒体に対する透過性が極めて制限されることにより、保護コートがアルカリ媒体による攻撃に対して優れた保護を与えるため、軽金属表面上、軽金属の多孔質表面層上にさえ、驚くべきことに亀裂のない耐アルカリ性保護コートを得ることができる。二重コートは湿式化学法によって塗布され得るため、保護コートの製造はさらに、単純で安価である。透明な保護コートを得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、耐アルカリ性保護コートを備えた軽金属の表面を有する物品であって、当該保護コートが、a)ベースコートとして、ケイ素及びホウ素の酸化物層と、b)ガラス質トップコートとして、ケイ素の酸化物層とを含むことを特徴とする、耐アルカリ性保護コートを備えた軽金属の表面を有する物品を提供する。本発明を以下に詳細に説明する。
【0011】
物品又は物品の表面は、完全に軽金属であっても、又は物品の一部又は構成要素が軽金属表面を有し、また残りの部分又は構成要素が任意の他の材料を有していてもよい。当然のことながら、初めに金属表面を有する一部分に本発明の保護コートを備え、その後、残りの構成要素と合わせて組み立て、物品を形成するだけでよい。
【0012】
物品は広範な幾何学形状を有し得る。本発明の1つの利点は、比較的複雑な幾何学形状を有する物品にさえ容易に保護コートが備えられることである。軽金属表面の一部にのみ保護コートを備えることもできる。このため、例えば、ポット又はパイプの内部のみコーティングする可能性が存在する。
【0013】
保護コートを備える物品は、軽金属表面を有する任意の所望の物品であってもよい。また、問題となる材料は、例えば、或る特定の物品の製造に関する原材料として役立つ、例えばシート又はパネルの形態の純材料であってもよい。問題となる物品は、例えば、産業、例えば、輸送、自動車、酪農、製薬、スポーツ、日常必需品、供給、研究又は医療の分野に由来するものであり得る。具体例は、導管等のパイプ、容器、車両、医療機器、器具又は筐体又はそれらの一部である。特に好ましくは、物品は、家庭用品又は家庭用具、例えば、陶器類、カトラリー、トレイ、フライパン、ポット、ベーキングシート、調理具、冷蔵庫、ベーキングオーブン、卵茹で器、電子レンジ、ケトル、グリル、蒸し器、オーブン、天板、台所取り付け具及びバス取り付け具、家庭用(電化)製品のハウジング、コイル、ランプ及びライトであるが、特に、カトラリー及び調理器具、例えばフライパン若しくはポット、又はそれらの一部である。特に好適な物品は、食器洗浄機内で洗浄するように意図されるものである。
【0014】
保護コートを備える物品のさらなる例は、化学装置用の容器又はその一部、マグネシウム構成要素、及びAlから成る自動車の構成要素である。
【0015】
保護コートは軽金属表面に塗布される。軽金属は、最大5g/cmの密度を有する金属である。また軽金属とは、本明細書中でこれらの軽金属の合金を意味する。好ましい例は、アルミニウム、マグネシウム及びチタン、並びにそれらの合金であり、特に好ましくはアルミニウム及びその合金である。
【0016】
上記で既に説明した、軽金属のこれまでとは異なる性質から、保護コートは、往々にして表面上に酸化物層を有するか、又は表面処理されており、軽金属の表面上に、酸化物層等の少なくとも1つの層、又は不動態化コート若しくは装飾コート等の別の機能層、例えば、酸化物、リン酸塩、クロム酸塩、亜鉛含有又はニッケル含有コートを大抵有する。これらのコートは大抵、多かれ少なかれ多孔質であり、そのため、さらなるコーティングによって問題がもたらされるおそれがある。適切な場合には、他のコーティングが存在することも可能であるが、他のコーティングの存在は好ましくない。かかる多孔質コートが軽金属上に存在する場合、亀裂のない保護コートを適用することが必要となるため、本発明の保護コートは特に好適である。
【0017】
本発明は、酸化物層、特に多孔質酸化物層を有する軽金属に特に好適である。しかしながら、一般に薄い不透過性の酸化不動態化コートが存在してもよい。酸化物層は、自然に、即ち、環境中酸素による酸化を介した「自然」不動態化が形成され得る。特に好ましくは、軽金属、特にAl又はその合金は、例えばEloxal(登録商標)プロセスによって形成された陽極酸化(陽極酸化物層)によって形成される酸化物層を有する。この種類の陽極酸化物層も、装飾効果のために表面効果を得るのに用いられ、その場合には、例えば、陽極酸化物層に顔料が組み込まれていてもよい。
【0018】
コーティング組成物を塗布する前に、金属表面を全体的に洗浄し、特に油脂及び粉塵を取り除く。コーティングする前に、例えばコロナ放電によって表面処理を実施することも可能である。
【0019】
物品の軽金属の表面又はその一部に、2つのコート、即ちベースコートとその上のトップコートとから構成される耐アルカリ性保護コート系を設ける。両コートとも特に湿式化学法を用いて塗布される、即ち、コーティング組成物は、例えば、溶液、分散液、乳化剤、又は好ましくはゾルの形態の液体であるか又は注入可能である。コーティング組成物は、加水分解性化合物の加水分解物又は縮合物を含む。加水分解性化合物の加水分解又は縮合は好ましくはゾル−ゲルプロセスによって達成される。
【0020】
加水分解及び/又は縮合の過程で、特にゾル−ゲルプロセスによって、加水分解性化合物が典型的に水で加水分解され、適切な場合には、酸性触媒又は塩基性触媒を用いて、適切な場合には、少なくとも部分的に縮合される。この状況では、水との塩の反応も加水分解とみなされる。加水分解反応及び/又は縮合反応は、形成される酸化物層の前駆体として役立つ、ヒドロキシル基、オキソ基及び/又はオキソ架橋を含む化合物又は縮合物の形成をもたらす。2つ以上の元素の加水分解性化合物を使用する場合、例えばSi、B、及び適切な場合にはTi等の2つ以上の元素を含有する縮合物が形成されることが可能であり、又は各々1つの元素から本質的に形成される異なる縮合物が形成される。加水分解性基の数に基づき使用される水の化学量論量、さもなければこれよりも少ない量又はより多くの量、おおよそ化学量論量である水が加水分解に好ましい。形成される加水分解物及び縮合物は、より詳細にはゾルであり、好適なパラメータ、例えば、縮合度、溶媒又はpHを用いてコーティング組成物のための所望の粘度に調節することができる。ゾル−ゲルプロセスのさらなる詳細は、例えばC. J. Brinker, G. W. Scherer: "Sol-Gel Science-The Physics and Chemistry of Sol-Gel-Processing", Academic Press, Boston, San Diego, New York, Sydney (1990)に記載されている。
【0021】
加水分解は水の添加によって、適切な場合には、触媒、好ましくは酸の存在下で開始される。反応は、加熱によって補助され得る。反応時間は広い範囲で変動し、例えば、水の量、温度、出発化合物の性質、及び触媒に応じて変わる。加水分解性化合物を一緒に加水分解してもよく、又は別々に加水分解した後に合わせてもよい。代替的な選択肢は、初めに1つの加水分解性化合物を水で加水分解し、後に他の加水分解性化合物をこの混合物に添加することである。所望量の水を時間的に2回以上に分けて添加してもよい。さらに、当業者に既知の様式に従って加水分解及び縮合を実施してもよい。
【0022】
ベースコートのコーティング組成物は、1つ又は複数の加水分解性ケイ素化合物及び1つ又は複数の加水分解性ホウ素化合物の加水分解物又は縮合物を含む。この状況では、続くコートの圧密化の過程において、コート内の亀裂の形成を伴う応力を阻害するために、焼結機構としてかなりの量の粘性流が得られることを保証することが得策である。単一又は複数の加水分解性ケイ素化合物は好ましくは、少なくとも1つの非加水分解性有機基を含有する。1つの特に好ましい実施形態では、コーティング組成物は、1つ又は複数の加水分解性ケイ素化合物、1つ又は複数の加水分解性ホウ素化合物、及び1つ又は複数の加水分解性チタン化合物の加水分解物又は縮合物を含む。さらなるTi化合物を用いることにより保護コートの耐アルカリ性をさらに改善する。加水分解性化合物はまた、有機溶媒に適宜溶解する単一の塩であってもよい。
【0023】
加水分解性ケイ素化合物(本明細書中でシランとも呼ぶ)として、一般式(I)
SiX4−n (I)
(式中、互いに同一又は異なるX基は、加水分解性基又はヒドロキシル基であり、互いに同一又は異なるR基は非加水分解性有機基であり、且つnは0、1又は2である)の1つ又は複数のシランを使用することが好ましい。
【0024】
一般式(I)の上記シランには、一般式(I)中、nが1又は好ましくは2の値を有する好ましくは少なくとも1つのシランが存在する。好ましい一実施形態では、合わせて用いられる一般式(I)の少なくとも2つのシランが存在してもよく、1つのシランはn=1又は好ましくは2である一般式(I)を有し、且つ1つのシランは、n=0である一般式(I)を有する。nが1又は2である一般式(I)のシランとnが0である一般式(I)のシランとの、Siに基づくモル比は、好ましくは1:0〜1:1、好ましくは1:0〜2:1である。比率1:0とは本明細書中で、少なくとも1つの非加水分解性有機基を有するシランしか用いられないことを意味する。少なくとも1つの非加水分解性有機基を有するシランの少なくとも部分使用は、可撓性を改善し、さらにクラッキング能を低減するため、有益である。
【0025】
一般式(I)において、X基(互いに同様なものであっても又は異なっていてもよい)は加水分解性基又はヒドロキシルである。加水分解性基Xの例は、水素又はハロゲン(F、Cl、Br又はI)、アルコキシ(好ましくは、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ及びブトキシ等のC1〜6アルコキシ)、アリールオキシ(好ましくは、例えばフェノキシ等のC6〜10アリールオキシ)、アシルオキシ(好ましくは、例えばアセトキシ又はプロピオニルオキシ等のC1〜6アシルオキシ)、アルキルカルボニル(好ましくは、例えばアセチル等のC2〜7アルキルカルボニル)、アミノ、好ましくは1個〜12個(特に1個〜6個)の炭素原子を有するモノアルキルアミノ又はジアルキルアミノである。好ましい加水分解性基は、ハロゲン、アルコキシ基、特にメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ及びイソプロポキシ等のC1〜4アルコキシ基であり、メトキシ基又はエトキシ基が特に好ましい。
【0026】
一般式(I)中のR基(nが2の場合、同様なものであっても又は異なっていてもよい)は、例えば水素、アルキル、アルケニル及びアルキニル基(好ましくは最大4個の炭素原子を有する)、並びにアリール、アラルキル及びアルカリル基(好ましくは6個〜10個の炭素原子を有する)であり、アルキル基が優先される。このような基の具体例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ビニル、アリル、プロパルギル、フェニル、トリル及びベンジルである。このような基は、通常の置換基を含有してもよいが、置換基を保有しないのが好ましい。アルキル基を含有するシランは、アルキルシラン、即ちn=1の場合モノアルキルシラン及びn=2の場合ジアルキルシランとも称される。好ましいR基は、1個〜4個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル及びエチル、並びにまたフェニルである。
【0027】
式(I)のシランの例は、Si(OCH、Si(OC、Si(O−n−又はi−C、Si(OC、SiCl、HSiCl、Si(OOCCH)、メチルトリ(メ)エトキシシラン((メ)エトキシは、メトキシ又はエトキシを指す)、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリ(メ)エトキシシラン、フェニルトリ(メ)エトキシシラン、ジメチルジ(メ)エトキシシラン、及びジフェニルジ(メ)エトキシシランである。これらのシランのうち、n=0では、テトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン(TEOS)、並びにn=1又は2では、メチルトリエトキシシラン及びジメチルジ(メ)エトキシシランが特に優先される。ベースコートには、少なくとも1つのジアルキルシラン(ジメチルジエトキシシラン等)を使用するのが特に好ましく、これはこの場合に、最良のフレキシビリティ及び耐亀裂性が達成されるためである。
【0028】
使用することができる加水分解性ホウ素化合物は、一般式BX(II)(式中、Xは、好ましくは式(I)で定められるものである、同一又は異なる加水分解性基である)の化合物である。好ましいホウ素化合物は、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸、及びホウ酸エステルである。例は、ホウ酸、BCl、B(OCH及びB(OCである。
【0029】
必要に応じてまた好んで使用される加水分解性チタン化合物は、より詳細には式TiX(III)(式中、Xは、好ましくは式(I)に定められる同一又は異なる加水分解性基である)の加水分解性化合物である。好ましい加水分解性基は、アルコキシ基、特にC1−4アルコキシである。好んで使用される具体的なチタン酸塩は、TiCl、Ti(OCH、Ti(OC、Ti(ペントキシ)、Ti(ヘキソキシ)、Ti(2−エチルヘキソキシ)、Ti(n−OC又はTi(i−OCであり、好ましくはTi(OCH、Ti(OC、及びTi(n−又はi−OCである。
【0030】
加水分解又は縮合は、有機溶媒又は水等の溶媒の存在下で実施することができる。特に好適な有機溶媒は、水混和性溶媒、例えば、一価脂肪族アルコール又は多価脂肪族アルコール、好ましくは1個〜4個の炭素原子を有するアルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール及びイソパノール、例えばエーテル(例えばジエーテル等)、エステル(例えば酢酸エチル等)、ケトン、アミド、スルホキシド、及びスルホンである。さらに好適な溶媒又は共溶媒は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール又はブチレングリコール等のグリコールである。好ましい一実施形態では、溶媒の非存在下で加水分解又は縮合も実施することができる。アルコキシドを出発原料として使用する場合、加水分解は、溶媒として作用し得るアルコールを形成する。
【0031】
ケイ素化合物、ホウ素化合物、及び適切な場合にチタン化合物の量は、広い範囲で変動し得る。しかしながら、好ましくは、ケイ素出発化合物及びホウ素出発化合物の量は好ましくは、Si:Bのモル比が32:1〜1:1であり、好ましくは10:1〜1.2:1であり、より好ましくは8:1〜2:1であり、特に良好な結果は例えば約4:1の比率で得られる。同様に加水分解性チタン化合物が使用される場合、この量は、Si:Tiの比率が30:1〜1:1、好ましくは16:1〜1.3:1であり、特に良好な結果が、例えば約8:1の比率で達成されるように選択される。モル比B:Tiは、例えば、5:1〜1:2、好ましくは4:1〜1:1であり、特に良好な結果は、例えば、約2:1の比率で得られる。
【0032】
コーティング組成物は、適切な場合、さらなる成分を含んでいてもよく、例としては、マトリクス用の他の成分の加水分解性化合物又は塩、又は、例えば流れ調整剤、艶消剤、焼結助剤、界面活性剤、及び粘度改良剤等の他の添加剤である。酸化物マトリクスに組み込まれ得る他の元素の加水分解性化合物は適切な場合、より詳細には、元素の周期表の主族III〜V及び/又は遷移族II〜IVからの少なくとも1つの元素Mの化合物である。これらは、Al、Sn、Zr、V又はZnの加水分解性化合物であってもよい。周期表の主族I及びII(例えば、Na、K、Ca及びMg)、並びに周期表の遷移族V〜VIII(例えば、Mn、Cr、Fe及びNi)の元素の化合物、又はランタニドの加水分解性化合物等の他の加水分解性化合物を使用することもできる。しかしながら、一般的に言えば、このような他の加水分解性化合物は、ベースコート又はトップコート全体の酸化固形分に基づき、20重量%以下、好ましくは5重量%以下、及びより好ましくは2重量%以下を占める。
【0033】
トップコート用のコーティング組成物は、1つ又は複数の加水分解性ケイ素化合物の加水分解物又は縮合物を含み、少なくとも1つの加水分解性ケイ素化合物は非加水分解性有機基を含有する。特に好ましい一実施形態において、コーティング組成物はさらに、粒子、好ましくはナノスケール粒子、より好ましくはSiO等の金属酸化物又は半金属酸化物を含む。
【0034】
トップコートに好適な加水分解性ケイ素化合物は、ベースコートについて上記で説明された一般式(I)の厳密に同じシランであり、トップコートに使用される少なくとも1つのシランは、nが1又は2の値を有する一般式(I)のシランである。一般的に、nが0である一般式(I)の少なくとも1つのシランと、nが1又は2であり、好ましくは1である一般式(I)の少なくとも1つのシランとが合わせて利用される。その場合、これらのシランは、好ましくは(モルに基づきシランの)nの平均値が0.2〜1.5、好ましくは0.5〜1.0であるような比率で使用することができる。nの平均値が0.6〜0.8の範囲であることが特に好ましい。
【0035】
トップコート用のこの種類のシラン混合物は、例えば、好ましくは、nの平均値が上記の好ましい範囲内であるような比率で使用される少なくとも1つのアルキルシラン、例えば、アルキルトリアルコキシシラン、例えばメチルトリ(メ)エトキシシラン又はエチルトリ(メ)エトキシシラン、及びテトラアルコキシシラン、例えばテトラ(メ)エトキシシランを含む。トップコート用の式(I)の出発シランの1つの特に好ましい組合せは、メチルトリ(メ)エトキシシラン及びテトラ(メ)エトキシシランである。出発シラン中のR基の存在が、有機SiOフレームワークの過剰な架橋、それゆえ過剰な脆化を防止するように働くと考えられる。
【0036】
好ましい一実施形態において、トップコート用のコーティング組成物は、粒子、より詳細にはナノスケール粒子をさらに含む。粒子は、例えば平均粒径が1μm未満であるような任意の好適なサイズを有し得る。ナノスケール粒子とは好ましくは、200nm以下、より好ましくは100nm以下、特に50nm以下の平均粒径を有する粒子を意味する。平均粒径は、UPA(超微粒子分析計(Leeds Northrup)(レーザー光学式レーザーダイナミック光散乱))を測定に使用することができる場合、体積平均(d50)を指す。
【0037】
粒子はより詳細には無機粒状固体である。好ましくは、それらは、金属化合物又は半金属化合物、特に、金属カルコゲニド又は半金属カルコゲニドの粒子である。これらの化合物としては、全ての金属又は半金属(また以下ではまとめてMと省略される)を使用することが可能である。金属化合物又は半金属化合物用の好ましい金属又は半金属Mは、例えば、Mg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Y、Ti、Zr、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Cu、Ag、Zn、Cd、Ce及びLa、又はそれらの混合物である。1種類のナノ粒子又はナノ粒子の混合物を使用することが可能である。粒子は、例えば、火炎熱分解、プラズマプロセス、コロイド法、ゾル−ゲルプロセス、制御核形成及び成長プロセス、MOCVDプロセス、及びエマルジョンプロセス等による様々な方法で、調製することができる。これらのプロセスは概して文献に記載されている。
【0038】
例としては、ZnO、CdO、SiO、GeO、TiO、ZrO、CeO、SnO、Al(特にベーマイト、同様に水酸化アルミニウムの形態のAlO(OH))、B、In、La、Fe、Fe、CuO、Ta、Nb、V、MoO又はWO等の(水和又は非水和)酸化物;金属又は半金属のリン酸塩、ケイ酸塩、ジルコン酸塩、アルミン酸塩、スズ酸塩、及び対応する混合酸化物、スピネル、フェライト、又はBaTiO及びPbTiO等のペロブスカイト構造との混合酸化物である。好ましい粒子は、SiO、Al、AlOOH、Ta、ZrO、及びTiOであり、SiOが最も好ましい。
【0039】
使用され得る粒子は、例えば、市販のシリカ製品、例えば、Levasils(登録商標)等のシリカゾル、Bayer AG製のシリカゾル、又は熱分解法シリカであり、例としては、Degussa製のAerosil製品である。粒状材料は粉末及びゾルの形態で使用してもよい。それらはまたin situで形成され得る。
【0040】
本発明の方法のこの好ましい実施形態の場合、一般式(I)の加水分解性シランに加えて使用される粒子、特にn=0であるシランとn=1又は2であるシランとの上記の組合せ、より詳細にはナノスケールSiO粒子は、好ましくは一般式(I)のシラン中の全てのSi原子と、粒子中の全てのM原子(SiO粒子の場合同様にSiである)とのモル比が5:1〜1:2、より好ましくは3:1〜1:1の範囲であるような量で使用される。
【0041】
溶媒、加水分解及び縮合、さらなる成分、例えば加水分解性化合物、ベースコートについて定めたものと同じである、トップコートにも好適な加水分解性チタン化合物、又はマトリクス用の他の元素の塩、又はトップコート用の他の添加剤に関しては、対応するベースコートの塗布について上記で言及してある。
【0042】
より詳細にはトップコート用のコーティング組成物に、市販の艶消剤を添加することが可能であり、この例は、マイクロスケールSiO粉末、有機艶消剤又はセラミック粉末であり、アンチフィンガープリント性を有するマットコートが得られる。シランの加水分解及び重縮合は、艶消剤を使用する場合この存在下で起こすことができ、この例は、マイクロスケールSiO粉末又はセラミック粉末である。
【0043】
さらなる実施形態では、色効果を得るために、トップコート用のコーティング組成物を添加剤として着色無機顔料と混合することも可能である。着色顔料は、市販の通例の顔料であってもよい。
【0044】
当然のことながら、全ての好適な着色顔料、特に無機着色顔料を使用することが可能である。好適な着色顔料の概説は、例えば、Ullmanns Encyklopaedie der technischen Chemie, 4th edition, vol. 18, pp. 569-645に見られる。この例は、黒色酸化鉄顔料、例えばFK 3161(Ferro GmbH、Co/Fe/Crから成る)、Black 1G(The Sheperd Coloro Company)及び黒色酸化鉄1310 HR(Liebau Metox GmbH)、黒色炭素顔料、例えばTimrex KS4(Timcal Graphite & Carbon, carbon black paste DINP 25/V and Tack AC 15/200(Gustav Grolman GmbH & Co. KG)、グラファイト、金属酸化物顔料、例えば着色酸化鉄顔料、酸化クロム顔料、混合金属酸化物顔料(例えば、Ni/Sb/Ti酸化物、Co/Al酸化物、Mn/Cu/Cr酸化物、Fe/Cr酸化物)、金属酸化物顔料とグラファイトとの混合物、カドミウム顔料(例えば、CdS、Cd(S,Se))、ビスマス顔料、クロメート顔料、例えばクロミウムイエロー、クロミウムグリーン、モリブデートレッド、ウルトラマリン顔料、及びプルシアンブルーである。
【0045】
適切である場合、溶媒を添加又は除去することによって粘度を調節すると、ベースコート及びトップコートのコーティング組成物を、それぞれ通常の湿式化学的コーティングプロセスによって、コーティングされる軽金属の表面に塗布する。使用され得る技法としては、例えば、浸漬、キャスティング、遠心塗装、噴霧、スピンコーティング又は刷毛塗りが挙げられる。
【0046】
ベースコート用のコーティング組成物の塗布後に、適切であれば、これにベースコートを形成するためにこれを乾燥し、その後熱処理を施す。続いて、トップコートのコーティング組成物を、熱処理したベースコートに塗布し、熱処理して、トップコートを形成する。これが好ましい手法である。代替的に、ベースコートコーティング組成物を塗布した直後に、トップコートコーティング組成物を塗布することもでき、この2つのコートを一緒に熱処理し、ベースコート及びトップコートを形成することができる。この場合、トップコートコーティング組成物を塗布する前に、塗布されたベースコートの組成物を事実上、例えば、完全硬化を起こすことなく低温及び短時間で、乾燥によって又は加熱予備処理によって不完全であるが或る程度固化してもよい。
【0047】
2つのコートの必要に応じた乾燥及び熱処理は、熱処理が別々に又は一緒に実施されるかに関係なく本質的に同様に行われ得る。したがって以下で両コートについて等しく言及する。
【0048】
圧密化又は固化するために、塗布したコーティング組成物を熱処理する。熱的な圧密化前に、コーティング組成物を室温又はわずかに高い温度、例えば最大100℃又は最大80℃の温度で乾燥してもよい。
【0049】
熱処理の場合の温度又は最終温度はまた金属表面の熱抵抗によって誘導されるはずであるが、この温度は一般的に少なくとも300℃、一般的に少なくとも350℃、及び好ましくは少なくとも400℃、又は少なくとも420℃である。例えば時間間隔内の所定の温度上昇等で、一般に温度を徐々に上げることによって最終温度に到達させる。熱処理後に、安定化した(即ち、圧密化又は固化した)コートが得られる。金属表面が特に高温で酸化を受けやすい場合、酸素を含まない雰囲気中、例えば窒素又はアルゴンの下で熱的な圧密化を実施することが得策である。減圧下での圧密化も可能である。適切な場合、IR又はレーザー放射によって熱処理を行ってもよい。
【0050】
熱処理の最高温度は、当然のことながら処理される物品の熱安定性に応じて変動し、また物品の軟化点より少し下の温度までの範囲をとり得る。一般的に、熱処理の温度は800℃未満である。一般的に、熱処理中、有機構成成分は完全に燃失し、純粋な無機コートをもたらす。コーティング組成物を圧密化して、多孔質コートがコーティングされる軽金属表面上に存在する場合であっても、亀裂のない透明なコートを形成することができる。
【0051】
圧密化の熱処理は、例えばIR照射を用いて又は火炎処理によってオーブン内で行ってもよい。熱処理は保護コートを焼きなます。
【0052】
本明細書中でSi及びホウ素、及び適切な場合にはチタンの酸化物層、又はSiの酸化物層と呼ぶ、Si(SiO)のベースコート中の、酸化物又はSiとBとの混合酸化物(SiO/B)、又は適切な場合にはTiとの混合酸化物(SiO/B/TiO)のマトリクスが得られ、この化学量論量は、上記のように、使用される出発化合物のモル比に応じて変わる。トップコートをガラス質コートに圧密化する。上記のように、他の金属又は半金属のさらなる加水分解性化合物をコーティング組成物に使用する場合、Si及びホウ素、及び適切な場合チタンの酸化物層、又はSiの酸化物層は必要に応じて、さらなる金属又は半金属を含む。酸化物層は、顔料等のさらなる添加剤をさらに含み得る。トップコートにおける粒子の好ましい使用により、加水分解物及び縮合物を含む周囲マトリクス相中の粒子の粒状構造が認識可能なままである構造化相又はコートを形成することが可能であり、これは、適切であればSiO粒子が使用される場合にも同様である。2つのコートを含む得られる保護コートは、アルカリ媒体の攻撃に対して極めて良好な保護をもたらす。
【0053】
本発明に従って使用される保護コートは、上記の物品のコーティングに特に好適である。一般に、保護コートは、無色明澄且つ透明であり、例えば着色陽極酸化の結果として装飾が示される場合であっても金属表面の外観を変えないように塗布され得る。特にトップコートにおける艶消剤の使用により、外観は例えば光沢の観点から最適になり得る。保護コートはまた、アンチフィンガープリント仕上げ処理に好適である。模様付き表面の装飾効果を含む金属表面の装飾効果は、コーティングの光学的に中性な効果から維持される。
【0054】
本発明の系は、より詳細には軽金属表面用の耐アルカリ性保護コートとして、特に食器洗浄機に耐える保護コートとして好適である。以下の実施例は本発明を例示するものである。
【実施例】
【0055】
A.ベースコート
1.DMDEOS/B(OEt)系(ベースコート1用)
3.71g(0.025mol)のジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)及び0.92g(0.006mol)のホウ酸トリエチルを混合し、この混合物をその後、0.50gの水と0.04gの濃塩酸との混合物と混合し、室温で30分間攪拌した。続いて1.1gのブチルグリコールに溶解させた0.45gの水をこの混合物に添加し、化学量論的に完全に加水分解させた。1時間攪拌した後、0.06gのBYK 306を添加し、得られるコーティング組成物を、Bのようにコーティングに使用した。
【0056】
2.DMDEOS/TEOS/B(OEt)/Ti(Oi−Pr)系(ベースコート2用)
3.71g(0.025mol)のジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、0.87g(0.0042mol)のテトラエトキシシラン(TEOS)及び0.92g(0.006mol)のホウ酸トリエチルを混合し、この混合物をその後、0.50gの水と0.04gの濃塩酸と混合した。反応混合物を直ちに1.04g(0.0037mol)のチタン(IV)イソプロポキシドと混合し、全体を室温で30分間攪拌した。続いて2gのブチルグリコールに溶解させた0.85gの水をこの混合物に添加し、化学量論的に完全に加水分解させた。1時間攪拌した後、0.06gのBYK 306を添加し、得られるコーティング組成物を、Bのようにコーティングに使用した。
【0057】
3.DMDEOS/TEOS/B(OEt)/Ti(Oi−Pr)系(ベースコート3用)
3.71g(0.025mol)のジメチルジエトキシシラン(DMDEOS)、0.87g(0.0042mol)のテトラエトキシシラン(TEOS)及び0.92g(0.006mol)のホウ酸トリエチルを混合し、この混合物をその後、0.50gの水と0.04gの濃塩酸と混合し、全体を室温で30分間攪拌した。続いて1.65gのブチルグリコールに溶解させた0.72gの水をこの混合物に添加し、化学量論的に完全に加水分解させた。1時間攪拌した後、0.06gのBYK 306を添加し、得られるコーティング組成物を、Bのようにコーティングに使用した。
【0058】
B.ベースコート1〜3を用いたコーティング
Tefal製ポットを各々の場合に系1〜系3でコーティングした。ベースコート用の溶液をコーティング前に濾過した(1.2μm孔径)。このポットは予めアルコールで洗浄しておいた。各々について1°K/分の加熱速度において450℃でコートを硬化させた。これによりベースコート1〜ベースコート3を得た。
【0059】
C.トップコート
MTEOS/TEOS/Levasil 300−30系(トップコート用)
8.9g(0.05mol)のメチルトリエトキシシラン(MTEOS)、2.6g(0.0125mol)のテトラエトキシシラン(TEOS)及び1.93gのLevasil 300−30(Bayer)を混合し、この混合物を続いて0.08gの濃塩酸と混合した。この混合物を室温で30分間攪拌した。続いて、1.41gの水を混合物に添加し、化学量論的に完全に加水分解させた。15分の攪拌後、0.19gの艶消剤OK 500(SiO粒子(Degussa))を混合物に添加した後、1時間攪拌した。
【0060】
Bのようにベースコート1〜ベースコート3で事前にコーティングした部分をそれぞれ上記のトップコート用コーティング組成物で塗り重ねた。1°K/分の加熱速度において450℃でコートを硬化した。これにより保護コート1〜保護コート3が得られた。
【0061】
D.比較例
予めベースコートを塗布せずにTefal製ポットに、Cに記載したのと同じようにトップコートを施した。
【0062】
E.試験
保護コート1〜保護コート3は全て亀裂を含まなかった。比較すると、比較例に従って塗布されたコート(ベースコートなしのトップコート)は、亀裂を示し、十分な耐塩基性を得ることができなかった。
【0063】
保護コート1〜保護コート3を60℃の4%NaOH溶液に4度、5分間曝すことによって耐塩基性を試験した。全ての保護コートが良好な耐性を示し、保護コート2(Ti含有ベースコート2及びトップコート)が保護コート1及び保護コート3(それぞれ、ベースコート1及びトップコート、並びにベースコート3及びトップコート)よりもかなり安定である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐アルカリ性保護コートを備えた軽金属の表面を有する物品であって、該保護コートが、a)ベースコートとして、ケイ素及びホウ素の酸化物層と、b)ガラス質トップコートとして、必要に応じて着色顔料を含むケイ素の酸化物層とを含むことを特徴とする、耐アルカリ性保護コートを備えた軽金属の表面を有する物品。
【請求項2】
前記軽金属が、アルミニウム、チタン若しくはマグネシウム、又はそれらの合金であり、好ましくはアルミニウム及びその合金であることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記軽金属が表面処理されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の物品。
【請求項4】
前記軽金属が、該軽金属の酸化物層でコーティングされていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の物品。
【請求項5】
前記軽金属の前記酸化物層が自然に又は陽極酸化によって形成されることを特徴とする、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記軽金属が、陽極に形成された必要に応じて顔料を組み込んだ酸化物層でコーティングされているアルミニウム又はアルミニウム合金であることを特徴とする、請求項4に記載の物品。
【請求項7】
前記ベースコートが、ケイ素、ホウ素及びチタンの酸化物層を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の物品。
【請求項8】
前記ベースコートにおけるSi:Bの原子比率が32:1〜1:1の範囲であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
前記ベースコートにおけるSi:Tiの原子比率が30:1〜1:1の範囲であることを特徴とする、請求項7又8に記載の物品。
【請求項10】
前記保護コートが透明であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の物品。
【請求項11】
前記ベースコートが本質的に、ケイ素及びホウ素の、又はケイ素、ホウ素及びチタンの酸化物層であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の物品。
【請求項12】
前記トップコートが着色顔料を含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の物品。
【請求項13】
家庭用品若しくは家庭用具、又はそれらの一部であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項14】
カトラリー又は調理器具であることを特徴とする、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
化学装置用の容器又はその一部であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の物品。
【請求項16】
物品の軽金属の表面上に耐アルカリ性保護コートを製造する方法であって、該保護コートが、a)ベースコートとして、ケイ素及びホウ素の酸化物層と、b)ガラス質トップコートとして、必要に応じて着色顔料を含むケイ素の酸化物層とを含み、
1)1つ又は複数の加水分解性ケイ素化合物及び1つ又は複数の加水分解性ホウ素化合物の加水分解物又は縮合物を含むコーティング組成物を、前記軽金属の表面に湿式化学的に塗布すると共に、これに熱処理を施して前記ベースコートを形成すること、及び
2)1つ又は複数の加水分解性ケイ素化合物、少なくとも1つの非加水分解性有機基を含有する少なくとも1つの加水分解性ケイ素化合物の加水分解物又は縮合物を含むコーティング組成物を、前記ベースコートに湿式化学的に塗布すると共に、これに熱処理を施して前記トップコートを形成すること、
を含み、前記ベースコートを形成するための前記熱処理を、前記トップコートの前記コーティング組成物の塗布前に行うか、又はその後、前記トップコートを形成するための前記熱処理と共に行う、物品の軽金属の表面上に耐アルカリ性保護コートを製造する方法。
【請求項17】
前記ベースコート及び/又は前記トップコートを形成するための前記熱処理を、少なくとも300℃の温度で実施することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ベースコート用の前記コーティング組成物が、加水分解性ケイ素化合物、加水分解性ホウ素化合物、及び加水分解性チタン化合物の加水分解物又は縮合物を含むことを特徴とする、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記ベースコートの前記コーティング組成物用の少なくとも1つの加水分解性ケイ素化合物が、少なくとも1つの非加水分解性有機基を含有することを特徴とする、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記ベースコートの前記コーティング組成物中の前記加水分解物又は前記縮合物について、非加水分解性有機基を有する加水分解性ケイ素化合物と、非加水分解性基を含まない加水分解性ケイ素化合物とのモル比が1:0〜1:1の範囲であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ベースコート及び/又は前記トップコートの前記コーティング組成物用の少なくとも1つの加水分解性ケイ素化合物が、モノアルキルシラン及びジアルキルシランから選択されるシランであることを特徴とする、請求項16〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ベースコート用の加水分解性ケイ素化合物がジアルキルシランであることを特徴とする、請求項16〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ベースコート用の加水分解性ケイ素化合物がモノアルキルシランであることを特徴とする、請求項16〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記トップコート用の前記コーティング組成物中に、粒子、好ましくはナノスケールSiO粒子が存在することを特徴とする、請求項16〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ベースコート又は前記トップコート用の前記コーティング組成物が、少なくとも1つの添加剤をさらに含むことを特徴とする、請求項16〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項16〜25に記載の方法によって得られ得る、請求項1〜15のいずれか一項に記載の物品。
【請求項27】
耐アルカリ性の軽金属表面を製造するための、a)ベースコートとして、ケイ素及びホウ素、必要に応じてチタンの酸化物層と、b)ガラス質トップコートとして、必要に応じて顔料を含むケイ素の酸化物層とから構成される二重層の使用。
【請求項28】
食器洗浄機に耐える保護コートとしての、請求項27の使用。

【公表番号】特表2010−507502(P2010−507502A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533817(P2009−533817)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061368
【国際公開番号】WO2008/049846
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(507202600)イーピージー (エンジニアード ナノプロダクツ ジャーマニー) アーゲー (9)
【Fターム(参考)】