説明

面付錠の取付構造

【課題】中実の扉表裏に、締結手段にて一対の錠箱が挟着される場合においても、錠箱に撓みの生じない面付錠の取付構造を提供し、見栄えの向上を図る。
【解決手段】中実の扉11aに透孔91を形成し、裏板55,57と表板59,61の間に空間63,65を有する一対の錠箱51,53にて透孔91の位置で扉11aを表裏から挟み、一方の錠箱51を貫通した締結手段93を透孔91に挿通し他方の錠箱53を貫通して締結することで、一対の錠箱51,53を扉11aに挟着する面付錠の取付構造であって、締結手段93が、透孔91より大外径にて形成され貫通方向の両端が裏板55,57と表板59,61に当接する大径部101,103をそれぞれの錠箱51,53の空間63,65に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の錠箱にて取付穴を有する扉を表裏から挟み、双方の錠箱を貫通する締結手段にてこれらの錠箱を扉に挟着する面付錠の取付構造に関し、特に、錠箱の変形を防止する改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス素材の強度向上によって全面ガラス扉が多用されるようになってきている。全面ガラス扉は、例えばオフィスビルの玄関や店舗の入り口に設置される場合、施錠装置を設ける必要がある。従来、この種の全面ガラス扉に施錠装置を設けるには、吊元金具や、上框、下框、或いは中央部に付設した金属枠部に施錠装置を設けるのが一般的であった。
ところが、施錠装置を設けるために金属枠部分を付設するのでは、折角の全面ガラス扉の意匠性を低下させることがあり、好ましくはこれら金属枠部分が設けられない方が良い。
このような不具合を解消するものに、扉ガラス素材に直接穿設した取付穴を利用して、施錠装置のみを全面ガラス扉に取り付けた特許文献1のドア錠が提案されている。
このドア錠によれば、全面ガラス扉に施錠装置を設けるための金属枠部を付設せずに、全面ガラス扉の開閉端にドア錠のみを取り付けでき、全面ガラス扉の意匠性を損ねず、見栄えを向上させることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−523660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全面ガラス扉のような内部に空間のない中実の扉に、表裏一対の面付錠を取り付けるには、全面ガラス扉と表裏一対の面付錠とを貫通する締結手段にて、全面ガラス扉に挟着する取付構造が考えられる。すなわち、全面ガラス扉に、透孔である取付穴を形成し、一対の錠箱にて透孔の位置で扉を表裏から挟み、一方の錠箱を貫通した締結手段を取付穴に挿通し他方の錠箱を貫通して締結することで、一対の錠箱を扉に挟着することができる。
しかしながら、一般的に錠箱は裏板と表板の間に空間を有するため、取り付け対象である扉が、弾性の乏しいガラス等の中実素材からなる場合、締付け荷重では扉が殆ど変形せず、錠箱の表板(化粧板)がビス締結部において撓んで凹んだり、裏板が取付穴内へ没入したり、錠箱端部が反りにより扉面から浮き上がったりして見栄えを低下させる不具合が生じる。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、中実の扉表裏に、締結手段にて一対の錠箱が挟着される場合においても、錠箱に撓みの生じない面付錠の取付構造を提供し、もって、見栄えの向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の面付錠の取付構造は、中実の扉11aに透孔91を形成し、裏板55,57と表板59,61の間に空間63,65を有する一対の錠箱51,53にて前記透孔91の位置で前記扉11aを表裏から挟み、一方の錠箱51を貫通した締結手段93を前記透孔91に挿通し他方の錠箱53を貫通して締結することで、一対の錠箱51,53を前記扉11aに挟着する面付錠100の取付構造であって、
前記締結手段93が、
前記透孔91より大外径にて形成され前記貫通方向の両端が前記裏板55,57と前記表板59,61に当接する大径部101,103をそれぞれの前記錠箱51,53の前記空間63,65に有することを特徴とする。
【0007】
この面付錠の取付構造では、締結手段93が貫通する錠箱51,53の空間63,65に、透孔91の内径より外径の大きい大径部101,103が配置され、表板59,61に加わる締付け荷重が大径部101,103を介して中実扉11aの透孔周縁に直接加わり、空間63,65を有する錠箱51,53の表板59,61や裏板55,57が撓まなくなる。
【0008】
請求項2記載の面付錠の取付構造は、請求項1記載の面付錠の取付構造であって、
前記締結手段93が、
第1の前記大径部101を前記一方の錠箱51の前記空間63に有し前記透孔91に挿通されるスタッドナット97と、
第2の前記大径部103を前記他方の錠箱53の前記空間65に有し該スタッドナット97の先端を内方に嵌合する撓み防止ブロック99と、
前記他方の錠箱53の表板61から挿入され該撓み防止ブロック99を貫通して前記スタッドナット97の先端に形成した雌ネジ107に螺合する締結ビス95と、
からなることを特徴とする。
【0009】
この面付錠の取付構造では、スタッドナット97が締結手段と撓み防止手段の機能を有し、撓み防止ブロック99も締結手段と撓み防止手段の機能を有することとなり、締結手段と撓み防止手段とが一体で構成可能となる。
【0010】
請求項3記載の面付錠の取付構造は、請求項2記載の面付錠の取付構造であって、
前記スタッドナット97が、前記一方の錠箱51の前記裏板55に穿設された締結手段貫通穴117に嵌合する第1の位置決め外径部135を有し、
前記撓み防止ブロック99が、前記他方の錠箱53の前記裏板57に穿設された締結手段貫通穴129に嵌合する第2の位置決め外径部139を有することを特徴とする。
【0011】
この面付錠の取付構造では、一方の錠箱51に設けられるスタッドナット97が第1の位置決め外径部135を介して錠箱51に対して位置決めされ、他方の錠箱53に設けられる撓み防止ブロック99が第2の位置決め外径部139を介して錠箱53に位置決めされ、撓み防止ブロック99を貫通した締結ビス95がスタッドナット97に螺合することで、表裏一対の錠箱51,53同士が位置決めされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る請求項1記載の面付錠の取付構造によれば、締結手段を貫通締結することで一対の錠箱を扉に挟着する取付構造において、締結手段が、透孔の内径より大外径となって裏板と表板に当接する大径部をそれぞれの錠箱の空間に有するので、中実の扉表裏に、締結手段にて一対の錠箱が挟着される場合においても、錠箱が撓むことによる透孔への裏板の没入や、表板の凹み、錠箱端部の浮き等の不具合が発生せず、見栄えを向上させることができる。
【0013】
請求項2記載の面付錠の取付構造によれば、締結手段が、一方の錠箱に設けられるスタッドナットと、撓み防止ブロックと、他方の錠箱の表板から挿入され撓み防止ブロックを貫通してスタッドナットに螺合する締結ビスとからなるので、締結手段と、撓み防止手段である大径部とを一体に構成でき、部品点数を少なくして、取付構造のコンパクト化を図ることができる。
【0014】
請求項3記載の面付錠の取付構造によれば、スタッドナットが一方の錠箱の締結手段貫通穴に嵌合する第1の位置決め外径部を有し、撓み防止ブロックが他方の錠箱の締結手段貫通穴に嵌合する第2の位置決め外径部を有するので、表裏一対の錠箱同士の位置決めを、他部材を用いずに、締結手段のみを用いて行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る面付錠の取付構造を備えたガラス扉の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2に示した戸当たりユニットとストライクユニットの拡大断面図である。
【図4】図3に示した戸当たりユニットとストライクユニットにおける取付構造の分解断面図である。
【図5】図4に示したスタッドナットと撓み防止ブロックの分解斜視図である。
【図6】比較例に係る取付構造の断面図である。
【図7】本実施の形態に係る図3に示した取付構造の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る面付錠の取付構造を備えたガラス扉の正面図である。
本実施の形態による面付錠の取付構造は、開閉体である例えば両開きの全面ガラス扉に好適に用いることができる。この他、面付錠の取付構造は、片開きの全面ガラス扉、両開き・片開きのスチール扉等にも用いることができる。本実施の形態では、面付錠の取付構造が両開きの全面ガラス扉11(11a,11b)に用いられる例を説明する。
【0017】
建物開口の左右にはガラスパネル13,13が設けられ、ガラスパネル13,13は開口サッシ等に取付固定されている。ガラスパネル13,13に挟まれる出入口開口部には上記した一対の全面ガラス扉11a,11bがヒンジ15,15を介して開閉自在に支持される。全面ガラス扉11a,11bは、例えば一方のガラス扉11aが不図示の規制手段にて開閉が規制され、他方のガラス扉11bが室内側(図2の下側)へ開放可能となる。ガラス扉11の召合17には面付錠100が取り付けられる。
【0018】
図2は図1のA−A断面図である。
面付錠100は、他方のガラス扉11bの戸先を挟んで取り付けられる室外錠ユニット21と、室内錠ユニット23と、一方のガラス扉11aの戸先を挟んで取り付けられる室外側の戸当たりユニット25と、室内側のストライクユニット27と、から構成される。
【0019】
室外錠ユニット21には、レバーハンドル31、シリンダー錠(図示せず)等が設けられる。室内錠ユニット23には、レバーハンドル33、サムターン35、進退自在な錠ボルト37が設けられる。錠ボルト37は、レバーハンドル31,33の回動操作にて、内蔵される施解錠機構(図示せず)により進退が可能となる。また、錠ボルト37は、レバーハンドル31,33の操作されない閉扉時、ストライクユニット27からの反力で後退する。一方、錠ボルト37は、シリンダー錠及びサムターン35の操作にて進退が規制・規制解除されて係止・係止解除、すなわち施解錠が行える。つまり、錠ボルト37は、「ラッチボルト」と「デッドボルト」の双方として機能する。室内錠ユニット23から突出する錠ボルト37は、ストライクユニット27のストライク穴(図示せず)へ進入係止される。
【0020】
全面ガラス扉11a,11bは、他方のガラス扉11bに設けられた錠ボルト37が、サムターン35等の施錠操作により、一方のガラス扉11aのストライクユニット27へ後退不能に係止すれば、双方が開閉の規制された施錠状態となる。また、サムターン35等の解錠操作により施錠、すなわち後退規制が解除されれば、レバーハンドル31,33により錠ボルト37が後退可能となり、他方のガラス扉11bが開放可能となる。
【0021】
戸当たりユニット25は、一方のガラス扉11aの小口端面よりも突出する戸当たり部41を有する。戸当たり部41の室内側の面には戸当たり板43が表出し、戸当たり板43は他方のガラス扉11bの戸先室外面45が当接する。図2中、47はストライク穴を一体に形成するストライク板、49はストライク板47に形成されたボルト衝接片を示す。
【0022】
室外錠ユニット21と室内錠ユニット23、戸当たりユニット25とストライクユニット27は、本実施の形態による取付構造にて全面ガラス扉11のそれぞれ、すなわち他方のガラス扉11bと、一方のガラス扉11aとに取り付けられている。これらそれぞれの取付構造は、同様であるので、以下、戸当たりユニット25とストライクユニット27の取付構造を代表例に説明する。
【0023】
図3は図2に示した戸当たりユニットとストライクユニットの拡大断面図である。
戸当たりユニット25とストライクユニット27は、それぞれが錠箱51,53を有する。錠箱51,53は、裏板55,57と表板59,61の間に空間63,65を有する。空間63,65は、裏板55,57に基端を加締め固定したスタッドナット62,64を表板59,61で挟み、表板59,61から挿通した固定ビス67,69をスタッドナット62,64の先端に螺合することで離間される。空間63,65を有する錠箱51,53は、外側が仕上部材である化粧ケース71,73にて覆われ、各ビスの頭部などが覆われる。
【0024】
なお、図3中、75は裏板55,57とスタッドナット62,64の間に介在する施解錠機構の基板、77は錠箱51,53と全面ガラス扉11の間に滑り止め,ズレ止めなどの目的で挟まれるゴム板製や樹脂板製のライナー、79は位置決めピン、81は扉11aに穿設されたシリンダー錠取付穴兼用貫通穴、83はシリンダー錠取付部の補強用締結手段、85は固定ネジ、87,89は補強ブロックを示す。
【0025】
全面ガラス扉11には透孔である取付穴91が穿設され、取付穴91は戸当たりユニット25とストライクユニット27を挟着するための締結手段93を挿通する。図3中、95は締結手段93の締結ビスを示す。
【0026】
図4は図3に示した戸当たりユニットとストライクユニットにおける取付構造の分解断面図である。
締結手段93は、スタッドナット97と、撓み防止ブロック99と、上記した締結ビス95と、からなる。本実施の形態による取付構造は、一対の錠箱51,53にて取付穴91の位置で一方のガラス扉11aを表裏から挟む。そして、一方の錠箱51を貫通した締結手段93を取付穴91に挿通し、他方の錠箱53を貫通して締結することで、一対の錠箱51,53をガラス扉11aに挟着する。
【0027】
締結手段93は、取付穴91よりも大きな外径(大外径)にて形成され貫通方向(図4の上下方向)の両端が裏板55,57と表板59,61に当接する大径部(後述の第1の大径部101、第2の大径部103)をそれぞれの錠箱51,53の空間63,65に有する。
【0028】
スタッドナット97の基端には第1の大径部101が形成され、第1の大径部101は一方の錠箱51の空間63に配置される。第1の大径部101の基端面111には加締め部113が形成され、第1の大径部101は基端面111を表板59に当接し加締め部113が表板59の加締め穴115に加締められて表板59に固定される。第1の大径部101には取付穴91に遊嵌される小径挿通部105が連設され、小径挿通部105は先端面に上記締結ビス95が螺合する雌ネジ107を有する。小径挿通部105は、裏板55に穿設された締結手段貫通穴117に挿通される。なお、図4中、119は基板75に穿設された挿通穴、121はライナー77に穿設された挿通穴を示す。
【0029】
撓み防止ブロック99の基端には筒状の第2の大径部103が形成され、第2の大径部103は他方の錠箱53の空間65に配置される。第2の大径部103は、基端面123が表板61に当接される。第2の大径部103は、基端面で開口し締結ビス95が挿通される貫通穴125と、先端面で開口しスタッドナット97の小径挿通部105が挿入される嵌合穴127とを有する。締結ビス95は、他方の錠箱53の表板61に穿設されたビス穴128から挿入され、第2の大径部103の貫通穴125に挿通された後、嵌合穴127に嵌合した小径挿通部105の雌ネジ107に螺合する。なお、図4中、129は裏板57に穿設された締結手段貫通穴、131は基板75に穿設された挿通穴、133はライナー77に穿設された挿通穴を示す。
【0030】
図5は図4に示したスタッドナットと撓み防止ブロックの分解斜視図である。
スタッドナット97の第1の大径部101と小径挿通部105の間には、一方の錠箱51の裏板55に穿設された締結手段貫通穴117に嵌合する第1の位置決め外径部135が形成される。第1の大径部101と第1の位置決め外径部135の間には段部が形成され、第1の大径部101はこの段部の当接面137が取付穴91の室外側周縁に(正確には基板75、裏板55、ライナー77を介して)当接する。
【0031】
また、撓み防止ブロック99の基端面123と反対側の先端面には、他方の錠箱53の裏板57に穿設された締結手段貫通穴129に嵌合する第2の位置決め外径部139が形成される。第2の位置決め外径部139と第2の大径部103の間には段部が形成され、第2の大径部103はこの段部の当接面141が取付穴91の室内側周縁に(正確には基板75、裏板55、ライナー77を介して)当接する。
【0032】
次に、上記した取付構造の作用を、比較例に係る取付構造の作用と共に説明する。
図6は比較例に係る取付構造の断面図、図7は本実施の形態に係る図3に示した取付構造の要部拡大図である。なお、図6において図1〜図5に示した部材と同等の部材には同一の符号を付す。
先ず、本実施の形態による取付構造の説明に先立ち、比較例に係る取付構造について説明する。
図6に示す比較例に係る取付構造は、錠箱51の表板59に基端を加締め部113にて固定した同一外径のスタッド101Aが取付穴91に挿通される。スタッド101Aの先端には、錠箱53の表板61から挿通された締結ビス95が螺合される。スタッド101Aは、外径が裏板55,57の締結手段貫通穴117,129よりも小さく、先端が錠箱53の空間65まで突出する。このように、比較例に係る取付構造では、スタッド101Aの雌ネジ107に締結ビス95が螺合されることで、錠箱51,53が一方のガラス扉11aに挟着される。
【0033】
このため、締結ビス95の締め込みにより締付け荷重が作用すると、表板59,61がスタッド101Aの加締め部113近傍や、締結ビス95の締め付け部近傍で矢印a,b方向に撓み、凹むことがある。また、裏板55の締結手段貫通穴117の周囲が取付穴91内へ矢印c方向に没入する、すなわち締め込みが進むにつれて飲み込まれてゆくことにより、錠箱端部、例えば図3に示す戸当たりユニット25の左端部が反りにより扉面から浮き上がることがある。すなわち、締結ビス95の周囲で、表板59,61の間隔距離を縮め空間63,65を狭めようとする。
【0034】
これに対し、本実施の形態による取付構造では、図7に示すように、締結手段93が貫通する錠箱51,53の空間63,65に、取付穴91の内径より外径の大きい第1の大径部101、第2の大径部103が配置され、表板59,61に加わる締付け荷重が、第1の大径部101、第2の大径部103を介して中実扉であるガラス扉11aの取付穴91の周縁に直接加わる。つまり、締め込み荷重がガラス扉11aの表裏に直接作用する。これにより、空間63,65を有する錠箱51,53の表板59,61や裏板55,57が撓まなくなる。
【0035】
また、本実施の形態による面付錠の取付構造では、一方の錠箱51に設けられるスタッドナット97が第1の位置決め外径部135を介して錠箱51に対して位置決めされ、他方の錠箱53に設けられる撓み防止ブロック99が第2の位置決め外径部139を介して錠箱53に位置決めされる。そして、スタッドナット97の小径挿通部105が撓み防止ブロック99の嵌合穴127に嵌合され、撓み防止ブロック99を貫通した締結ビス95が小径挿通部105の雌ネジ107に螺合することで、錠箱51,53が相対的に位置決めされる。これにより、表裏一対の錠箱51,53同士の位置決めを、他部材を用いずに、締結手段93のみを用いて行うことが可能となる。
【0036】
なお、第1の位置決め外径部135と第2の位置決め外径部139は、締め込み荷重をガラス扉11aの表裏に作用させないため、ガラス扉11aと干渉しないようになされる。干渉させない手段としては、第1の位置決め外径部135と第2の位置決め外径部139の外径を取付穴91より小径とする構造、或いは第1の位置決め外径部135と第2の位置決め外径部139の先端面を取付穴91の周縁に当てない構造が考えられる。本実施の形態では、後者の第1の位置決め外径部135と第2の位置決め外径部139の先端面を取付穴91の周縁に当てない構造を採用している。これによれば、取付穴91を小さくできる一方、強度低下の生じない外径で(取付穴91より大きい外径で)締結手段93を形成することができる。
【0037】
さらに、スタッドナット97が締結手段と撓み防止手段の機能を有し、撓み防止ブロック99も締結手段と撓み防止手段の機能を有することとなり、締結手段と撓み防止手段とが一体で構成可能となる。これにより、部品点数を少なくして、取付構造のコンパクト化が図られている。
【0038】
したがって、本実施の形態による面付錠の取付構造によれば、締結手段93を貫通締結することで一対の錠箱51,53をガラス扉11aに挟着する取付構造において、締結手段93が、取付穴91の内径より大外径となって裏板55,57と表板59,61に当接する第1の大径部101、第2の大径部103をそれぞれの錠箱51,53の空間63,65に有するので、中実のガラス扉11aの表裏に、締結手段93にて一対の錠箱51,53が挟着される構造においても、取付穴91に対する裏板55,57の没入や、表板59,61の凹み、錠箱端部の浮き等の不具合発生を防止して、面付錠100を見栄え良く取り付けることができる。
【符号の説明】
【0039】
11a…ガラス扉(中実の扉)
51…一方の錠箱
53…他方の錠箱
55,57…裏板
59,61…表板
63,65…空間
91…取付穴(透孔)
93…締結手段
95…締結ビス
97…スタッドナット
99…撓み防止ブロック
101…第1の大径部
103…第2の大径部
107…スタッドナットの先端に形成した雌ネジ
117,129…締結手段貫通穴
135…第1の位置決め外径部
139…第2の位置決め外径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中実の扉に透孔を形成し、裏板と表板の間に空間を有する一対の錠箱にて前記透孔の位置で前記扉を表裏から挟み、一方の錠箱を貫通した締結手段を前記透孔に挿通し他方の錠箱を貫通して締結することで、一対の錠箱を前記扉に挟着する面付錠の取付構造であって、
前記締結手段が、
前記透孔より大外径にて形成され前記貫通方向の両端が前記裏板と前記表板に当接する大径部をそれぞれの前記錠箱の前記空間に有することを特徴とする面付錠の取付構造。
【請求項2】
請求項1記載の面付錠の取付構造であって、
前記締結手段が、
第1の前記大径部を前記一方の錠箱の前記空間に有し前記透孔に挿通されるスタッドナットと、
第2の前記大径部を前記他方の錠箱の前記空間に有し該スタッドナットの先端を内方に嵌合する撓み防止ブロックと、
前記他方の錠箱の表板から挿入され該撓み防止ブロックを貫通して前記スタッドナットの先端に形成した雌ネジに螺合する締結ビスと、
からなることを特徴とする面付錠の取付構造。
【請求項3】
請求項2記載の面付錠の取付構造であって、
前記スタッドナットが、前記一方の錠箱の前記裏板に穿設された締結手段貫通穴に嵌合する第1の位置決め外径部を有し、
前記撓み防止ブロックが、前記他方の錠箱の前記裏板に穿設された締結手段貫通穴に嵌合する第2の位置決め外径部を有することを特徴とする面付錠の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−265635(P2010−265635A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116596(P2009−116596)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)