説明

面光源装置、及び画像表示装置

【課題】画像表示パネルの画素配列周期との干渉によるモアレ発生を、画面の輝度ムラ発生を抑えつつ目立たなくした面光源装置及び画像表示装置とする。
【解決手段】面光源装置100は面光源20上の光学シート10として、シート状の本体部1の一方の面1pに配置された複数の単位レンズ2に対して、隣接する二つの単位レンズの間を延びる境界線分Lからなるライン部Ltが画成され、境界線分の両端が二以上の他の境界線分と接続する分岐点Bをなし、境界線分によって囲まれて閉領域Aが画成され、ライン部は配置パターン2Pを呈する。一つの閉領域に一つの単位レンズが配置され、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが3.0≦N<4.0で、且つ単位レンズの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでいる。この面光源装置の出光側に画像表示パネル30を配置して画像表示装置200とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示パネルの背面光源として好適な面光源装置と、この面光源装置を備えた画像表示装置に関する。特に、周期的な画素配列の画像表示パネルと組み合わせたときに、画素の配列周期との干渉によるモアレ(干渉縞)発生を生じ難い面光源装置と、この面光源装置を備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示パネルに透過型液晶表示パネルなどを用いた画像表示装置は、画像表示パネルを背面から照明する面光源装置を備えている。こうした面光源装置では、所望の正面輝度と視野角を実現し且つ光源の像を目立たなくするべく光源からの光を適切に配光し、なお且つ有効利用する為に、通常、1乃至は2以上の光学シートを通してから画像表示パネルを照明している。例えば、光学シートとして、光源からの光の進行方向を正面方向へ絞り込み、正面方向の正面輝度を向上させる集光シート、光源からの光を拡散させて光源の像を目立たなくさせる光拡散シート等である。
【0003】
このような光学シートとして、図15の斜視図で示す様な、本体部41の一方の面に、多数の半球状の単位レンズ42を二次元配列した、いわゆるマイクロレンズアレイを設けた光学シート40が知られている(特許文献1、特許文献2)。図15は、この光学シート40を面光源20の出光側に配置して面光源装置300を構成し、この面光源装置300の出光側に画像表示パネル30を配置して画像表示装置400を構成した例である。
前記光学シート40における単位レンズ42の二次元配列の様式は、図16の平面図で示す様な、X軸方向を第1の方向と、これと直交するY軸方向を第2の方向として、第1の方向及び第2の方向の両方向に縦横に配列する様式である。この配列様式では、単位レンズ42の配列周期は、X軸方向ではTxで一定であり、Y軸方向ではTyで一定である。したがって、この配列様式では、二次元配列した複数の単位レンズ42は、正方格子状に配列していることになる(特許文献1参照)。また、単位レンズ42の配列様式には、図示はしないが、三角格子状に配列しているものもある(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1、特許文献2等で開示されたような、多数の単位レンズを二次元配列した光学シートを、面光源の出光面側に配置した構成の面光源装置では、単位レンズの二次元配列の様式に一定の周期性を有するために、画像表示パネルの画素の配列周期と干渉し、モアレ(干渉縞)が発生することがある。
【0005】
一方、単位レンズが周期配列されていることによるモアレ発生を低減するために、特許文献3は、単位レンズの配列様式を不規則化した面光源装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−32888号公報
【特許文献2】特公平7−7162号公報
【特許文献3】特開2006−301582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3で開示された様な、単位レンズの配列を不規則化する手法を試みたところ、確かに、モアレは軽減するが、モアレは依然として残る。モアレをより少なくする為に、単位レンズの二次元配列の不規則化をより高めると、モアレ解消効果はより高められるが、代わりに、背面から照明する画像表示パネルの画面に輝度ムラ(輝度の面内分布)が目立つようなった。一方、単位レンズの配列の不規則化を抑え目にすると、輝度ムラは低減するが、代わりにモアレが目立つようになった。
このため、単位レンズの配置の周期性と画像表示パネルの画素配列周期との干渉によるモアレ発生の解消と、画像表示パネルの画面の輝度ムラの解消とを、両立させることができなかった。
【0008】
すなわち、本発明の課題は、面光源装置が備える光学シートにおける単位レンズの配置の周期性と、画像表示パネルの画素配列周期とが干渉すると発生するモアレを、画面の輝度ムラ発生を抑えつつ目立たなくした面光源装置を提供することである。また、この面光源装置を備えた画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明では、次の様な構成の、面光源装置と画像表示装置とした。
(1)面光源と、この面光源の出光側に配置された光学シートとを備える、面光源装置であって、
前記光学シートは、
シート状の本体部と、
前記本体部の一方の面上に配置された複数の単位レンズと、を備え、
前記本体部の一方の面上に、隣り合う二つの単位レンズの間を延びる境界線分からなるライン部が画成され、
前記ライン部の各境界線分の両端は、二以上の他の境界線分と接続する分岐点をなし、
前記ライン部は、前記境界線分によって囲まれる閉領域を画成し、
一つの閉領域内に一つの単位レンズが配置されるようにして、前記単位レンズが前記本体部の一方の面上に配置されており、
前記ライン部は、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、
前記単位レンズの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなる、
面光源装置。
(2)前記閉領域には、周域を囲繞する境界線分の本数が5本の閉領域、6本の閉領域、7本の閉領域のうちの、少なくとも2種以上が含まれている、前記(1)の面光源装置。
(3)前記(1)または(2)の面光源装置と、この面光源装置の出光側に配置された画像表示パネルとを備える、画像表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光学シートの単位レンズの配置の周期と、背面から照明する画像表示パネルの画素配列の周期との干渉によるモアレ発生を目立たなくすることが出来るとともに、単位レンズの配置の粗密による画面の輝度ムラ発生も目立たなくすることが出来る。このため、モアレ解消効果と輝度ムラ解消効果の両方が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による面光源装置及び画像表示装置の一実施形態を説明する部分断面図(A)とライン部による配置パターンを説明する平面図(B)。
【図2】面光源装置における光学シートを例示する部分拡大斜視図。
【図3】配置パターンの平面視形状の一例を示す平面図。
【図4】単位レンズの配置に、周期性を有する方向が存在しないことを、単位レンズが配置される閉領域を画成するライン部が呈する配置パターンによって説明する平面図。
【図5】配置パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図6】配置パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図7】配置パターンを設計する方法において、母点を決定する方法を示す図。
【図8】決定された母点群の分散の程度を絶対座標系と相対座標系で説明する図。
【図9】決定された母点からボロノイ図を作成して配置パターンを決定する方法を示す図。
【図10A】本発明による配置パターンを示す平面図。
【図10B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図10C】図10Aと図10Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図11A】従来の周期的配置パターンを示す平面図。
【図11B】画像表示パネルの画素配列を示す平面図。
【図11C】図11Aと図11Bとを重ねた状態を示す平面図。
【図12】単位レンズの輪郭線が境界線分と一致せず、境界線分で囲われる閉領域よりも小さくなる一例を示す平面図。
【図13】単位レンズ2の各種形状を示す断面図。
【図14】配置パターンが光学シートの寸法の1/3以上の大きさの単位パターン領域として繰り返された一例を示す平面図。
【図15】周期的配置の単位レンズを有する光学シートを備えた、従来の面光源装置と画像表示装置を例示する斜視図。
【図16】図15の光学シートでの単位レンズの周期的配置を説明する平面図。
【0012】
〔A〕用語の定義:
以下に、本発明において用いる主要な用語について、その定義をここで説明しておく。
【0013】
「シート面」とは、シート状の光学シート10を全体的かつ大局的に見た場合において、この光学シート10の平面の広がり方向と一致する面のことを意味する。「シート面」は、通常は、光学シート10の表面、裏面、又は表裏両面と平行な面となる。「シート面」は、図1に於いては、XY平面又はこれと平行な面となる。
本体部1の「一方の面1p」は、単位レンズ2が配置されている側の面であるが、単位レンズ2で隙間なく埋め尽くされたときは、面としては実在しない仮想的な面となる。
【0014】
「平面視形状」とは、「シート面」に平行な面に於ける形状のことを意味する。言い換えると、「平面視形状」とは、「シート面」に立てた法線nの方向から見た形状のことを意味する。
「輪郭形状」とは、本体部1の一方の面1pに配置された単位レンズ2の、前記本体部1の一方の面1p上に於ける形状のことを意味する。言い換えると、単位レンズ2の前記一方の面1pに於ける平面視形状である。或いは、また、単位レンズ2の表面が本体部1と前記一方の面1pと接続する部分がなす外形形状である。
「輪郭線2F」とは、単位レンズ2の輪郭形状がなす線を意味する。
【0015】
「断面」とは、特に断りのない限り、「シート面」に立てた法線nに平行な断面のことを意味し、「断面形状」とは、この「断面」における形状のことを意味する。
「シート」、「フィルム」、「板」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。したがって、例えば、「シート」はフィルムや板とも呼ばれ得るような部材も含む概念である。
【0016】
[B]面光源装置:
先ず、本発明による面光源装置を、図1の斜視図で示す一実施形態例を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明による面光源装置100と、これを備えた画像表示装置200の一実施形態を説明する図であり、図1(A)はその部分断面図、図1(B)は、光学シート10において、隣接する単位レンズ2間に画成される境界線分Lからなるライン部Ltが呈する配置パターン2Pを説明する平面図である。
【0018】
本実施形態における面光源装置100は、面光源20と、この面光源20の平面状の出光面20a上に配置された光学シート10とを備える。この光学シート10の出光面10aが、面光源装置100の出光面でもある。
面光源装置100の出光側に、透過型の液晶表示パネルなどの画像表示パネル30が配置されて、画像表示装置200が構成される。画像表示パネル30は画素配列に周期性を有する。面光源装置100からの照明光は、画像表示パネル30を通過して、その画像の観察者Vに到達する。
【0019】
《面光源20》
面光源20は、出光面20aが平面状となる光源であり、この面光源20の発光源としては、公知の発光源を採用できる。
例えば、発光源として、面状発光体の電界発光パネル(ELパネル)を用いれば、そのまま面光源の発光源として用いることができる。また、発光源として、線状発光体の冷陰極管、点状発光体の発光ダイオード(LED)を用いるときは、導光板、光拡散板、光反射板などを適宜組み合わせて、出光面20aが平面状となる様に、エッジライト(サイドライトとも言う)型又は直下型として面光源20構成する。換言すれば、この場合、面光源20は光源モジュールとも言える。
出光面20aは、導光板や光拡散板など中実の物体と空気との界面による実在の面のこともあるし、例えば、直下型の面光源で発光体から光学シート10に至る部分に空間を有する場合などでは仮想的な面のこともある。
【0020】
《光学シート10》
光学シート10は、シート状の本体部1と、この本体部の一方の面1p上に配置された複数の単位レンズ2とを備える。単位レンズ2の断面形状は、本実施形態においては、図面上方の本体部1から離れる方向に向かって凸となる曲線形状である。
複数の単位レンズ2の一方の面1p上での配置が、本発明特有の配置をしている。すなわち、図1(B)のように、本体部1の一方の面1p上に、隣り合う二つの単位レンズ2の間を延びる境界線分Lからなるライン部Ltが画成され、このライン部Ltを構成する各境界線分Lの両端は、二以上の他の境界線分Lと接続する分岐点Bを形成している。さらに、このライン部Ltは、前記境界線分Lによって囲まれる閉領域Aを画成している。そして、一つの閉領域Aの中に一つの単位レンズ2が配置される。しかも、このライン部Ltは、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記単位レンズ2の配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなる、配置パターン2Pをしている。
【0021】
こうした単位レンズ2の配置様式とすることで、本発明による面光源装置100は、周期的画素配列を有する画像表示パネル30の照明装置として用いたときに、単位レンズ2の配置の周期性に起因するモアレを効果的に目立たなくすることが出来るとともに、単位レンズ2の配置の粗密による輝度ムラも効果的に目立たなくすることが出来る。
【0022】
以下、光学シート10を構成する本体部1、単位レンズ2、及び本発明固有の単位レンズ2の配置様式などについてさらに詳述する。
【0023】
〔本体部1〕
本体部1は、単位レンズ2を支持する透明なシート状の構成要素であり、樹脂シートの様な有機系材料、ガラス、セラミックスなどの無機系材料から構成される。具体例を示せば、本体部1には、ポリエチレンテレフタレートシートを用いることができる。
本体部1は、「シート状」であるが、「シート」とは前記定義欄で述べたとおり、フィルムや板も含む概念であり、厚みや剛性によって区別されるものではない。例えば、本体部1の厚みは、樹脂シートを用いる場合は20〜200μm、無機材料の板を用いる場合は500〜5000μmである。
【0024】
〔単位レンズ2〕
単位レンズ2は、光の屈折と反射の何れか1以上の現象によって面光源20からの光の進行方向を変化させる透明な光学要素であり、本体部1の一方の面1p上に二次元的に多数配置される。単位レンズ2の配置の様式は、前記閉領域Aに対して、一つの閉領域Aに一つの単位レンズ2が配置される。
単位レンズ2は、本実施形態においては、一方の面1pに対して本体部1から離れる方向に向かって凸なる形状、即ち所謂凸レンズ形状の形態を有している。
【0025】
単位レンズ2は、樹脂やガラスなどの透明材料から構成される。なかでも、樹脂材料は形成が容易な点で好ましい。樹脂材料としては、例えば、紫外線や電子線等の電離放射線照射で硬化可能な電離放射線硬化性樹脂を用いることができる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えばアクリレート系樹脂を用いることができる。また、単位レンズ2は本体部1と同一材料で構成することもできる。
【0026】
単位レンズ2を本体部1の一方の面1pに形成する方法は、特に限定されない。成形法など公知の各種形成方法を適宜採用して形成することができる。例えば、本体部1とする樹脂シートの一方の面1pに塗布した電離放射線硬化性樹脂に成形型を密着させた状態で紫外線や電子線などの電離放射線を照射して樹脂硬化させた後、成形型を離型する2P法(フォトポリマー法)によって、本体部1の一方の面1p上に複数の単位レンズ2を形成することができる。
或いは、本体部1と同一材料で一体的に同時に形成しても良く、例えば、熱プレス法、射出成形法、溶融押出法などで形成しても良い。
【0027】
(形状)
単位レンズ2の形状は、本実施形態においては、そのレンズ面が曲面からなる凸レンズとなる形状である。したがって、この単位レンズ2の集合体は、単位レンズ2を二次元配置する点で、いわゆる、マイクロレンズアレイ、或いは蝿の目レンズ(フライアイレンズ)を構成している。但し、単位レンズ2の配置様式が従来のものとは異なる。
単位レンズ2は、レンズ面が曲面からなる凸レンズであり、レンズ面は球面、非球面、またはこれらの面の繋ぎ合わせによる曲面となっている。
単位レンズ2によって、要求される光学仕様に応じて、面光源20からの光を拡散或いは集光して、面光源装置100として出光するようになっている。
【0028】
(寸法)
単位レンズ2の平面視形状における寸法は、要求される光学機能に応じて適宜な寸法に設定される。
なお、ここで言う各単位レンズ2の寸法とは、単位レンズ2の幾何学的形状を代表すると共に光学的性質に関与する寸法を言う。例えば、単位レンズ2の一方の面1pからの高さ、単位レンズ2の一方の面1p上に於ける径が挙げられる。単位レンズ2の一方の面1p上に於ける径とは、代表的な形状については、以下の如く定義される。
(1)円、或いは正多角形のように外接円を持つ多角形、或いは円で近似される形状の場合は、これら円自体、外接円、或いは近似する円の直径で定義される。
(2)楕円、或いは外接楕円を持つ多角形、或いは楕円で近似される形状の場合は、これら楕円円自体、外接楕円、或いは近似する楕円の長(直)径及び短(直)径で定義される。
(3)円、或いは楕円で外接も近似もされ無い多角形の場合は、該多角形の最長の対角線及び最短の対角線で定義される。
単位レンズ2の寸法の下限は、可視光線に対して機能する様に、最小でも可視光線の最大波長800nm以上であり、製造上の容易さの観点から10μm以上とするのが好ましい。単位レンズ2の寸法の上限は、単位レンズ2が視認され表示画像の画質低下を来たさない様に、300μm以下とするのが好ましい。
【0029】
以上、単位レンズ2の各種形状及び配置は、集光乃至は光拡散などの要求される光学機能、及び材料の収差等の光学性能に基づいて、適宜選択される。
【0030】
〔単位レンズ2の配置様式〕
単位レンズ2の配置様式は、隣り合う二つの単位レンズ2の間を延びる境界線分Lからなるライン部Ltを、シート面の法線方向(図1でZ軸方向)から観察した場合における
平面視形状である配置パターン2Pによって、特定され得る。
【0031】
(配置パターン2P)
前記ライン部Ltは、このライン部Ltを構成する境界線分Lの両端が、二以上の他の境界線分Lと接続する分岐点Bを形成する。また、複数の境界線分Lによって囲まれて、閉領域Aが画成される。この結果、複数の境界線分Lから構成される一つのライン部Ltがシート面に広がり、この一つのライン部Ltによって、複数の閉領域Aが画成される。この複数の閉領域Aは、個々の閉領域Aについて、その境界線分Lからなる輪郭線が、一つの単位レンズ2の周囲を内側に含み、一つの単位レンズ2を囲繞(いにょう)する。言い換えると、一つの閉領域Aに一つの単位レンズ2が配置されている。
ライン部Ltの平面視形状は、単位レンズ2を囲繞する閉領域Aの形状、大きさ及び配置を表している。このため、ライン部Ltの平面視形状は、単位レンズ2の配置様式を表しており、これを配置パターン2Pと呼ぶことにする。
【0032】
本実施形態では、一つの閉領域A内に一つの単位レンズ2が配置されるという閉領域Aの配置と対応関係のある単位レンズ2の配置は、従来の様に整然と並べられた配置(配列)ではなく、周期性を有する方向が存在しない配置である。このことから、単位レンズ2の配置のパターンを、本発明においては、「配列パターン」とは呼ばないで、「配置パターン」と呼ぶ。
【0033】
本実施形態では、ライン部Ltで画成される閉領域Aの輪郭線は、単位レンズ2を法線方向から見たときの外輪郭である輪郭線2Fと同一となり互いに重なる形態である。前記外輪郭は、単位レンズ2のレンズ面が本体部1の一方の面1pと出会う部分がなす線である。したがって、ライン部Ltは、複数の単位レンズ2の輪郭線が集合した線として、視認することができる実在の線である。つまり、ライン部Ltは、単位レンズ2の輪郭線によって特定される。
なお、単位レンズ2の輪郭線2Fと閉領域Aの輪郭線の形状が非同一で重ならない形態は図12を参照して後述する。
【0034】
以下、この配置パターン2Pについて、図3および図9を主として参照しながら説明する。
【0035】
配置パターン2Pを特定するライン部Ltは、図3に示す如く、両端において二以上の他の境界線分Lと接続する分岐点Bを形成する多数の境界線分Lから構成される。言い換えると、配置パターン2Pを特定するライン部Ltは、二つの分岐点Bの間を延びて閉領域Aを画成する多数の境界線分Lから構成される。そして、分岐点Bにおいて、境界線分Lが接続され、閉領域Aが画成される。
【0036】
配置パターン2Pを特定するライン部Ltは、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0、つまり、3.0以上で4.0未満であり、且つ、
閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないパターンとなっている。また、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの面積及び形状の少なくとも一方が一定でないパターンとなっていることが好ましい。
【0037】
本発明においては、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、閉領域Aが繰返周期を持つ方向が存在しない、とも言う。
【0038】
モアレの発生を防止するため、本実施形態による配置パターン2Pでは、その全領域が、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの面積及び形状は一定でないようになっている。
これは、言い換えると、配置パターン2Pに含まれる閉領域Aのうち、周囲を囲繞する境界線分数が同一となる閉領域Aの形状及び面積がすべて同一ではなく、少なくとも一部は他と異なるものになると言うことを意味する。
好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの50%以上が互いにその面積及び形状が異なるようにする。より好ましくは、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aを配置パターン2Pの全域に亙って、全て互いにその面積及び形状が異なるようにする。
なお、ここで周囲を囲繞する境界線分Lの数とは、閉領域Aが多角形である場合は、その多角形の角数(或いは辺数)と一致する。また、以上に於いて、2つの閉領域A同士が互いに合同な図形であって且つその向きが異なる場合も、その2つの閉領域Aの形状は互いに異なると見做す。
【0039】
モアレを確実に解消する為には、配置パターン2Pの全領域がこのような領域のみから構成されていることが好ましい。本実施形態はこの様な構成からなる。本件発明者らは、鋭意研究を重ねた結果として、単に配置パターン2Pのパターンを不規則化するのではなく、配置パターン2Pの閉領域Aが、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在せず、また周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの面積及び形状の少なくとも一方が一定でないように配置パターン2Pのパターンを画成することにより、単位レンズ2の配置のパターンが周期的な配列パターンである構成の従来の光学シート40を備えた従来の面光源装置300と、周期的画素配列を有する画像表示パネル30とを重ねた際に生じ得るモアレを、極めて効果的に目立たなくさせることが出来ると判明した。
【0040】
[繰返周期の不存在]
図4は、配置パターン2Pで画成される多数の閉領域Aが、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの面積及び形状は一定でない。そして、閉領域Aに一定の周期で配置されている領域が存在せず、繰返周期が存在しない、言い換えると、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しない、ことを説明するXY平面に平行なシート面に於ける平面図である。このシート面の面内において、同図では、任意の位置で任意の方向を向く一本の仮想的な直線diが選ばれている。
この一本の直線diが、ライン部Ltの境界線分Lと交差し交差点が形成される。この交差点を、図面では図面左下から順に、交差点c1,c2,c3,・・・・・,c9として図示してある。隣接する交差点、例えば、交差点c1と交差点c2との距離が、前記或る一つの閉領域Aの直線di上での寸法t1である。次に、寸法t1の閉領域Aに対して直線di上で隣接する別の閉領域Aについても、同様に、直線di上での寸法t2が定まる。そして、任意位置で任意方向の直線diについて、直線diと交差する境界線分Lとから、任意位置で任意方向の直線diと遭遇する多数の閉領域Aについて、該直線di上における寸法として、t1,t2,t3,・・・・・・,t8が定まる。そして、t1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びには、周期性が存在しない。
図4では、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8は、判り易い様に図面下方に、直線diと共に配置パターン2Pとは分離して描いてある。
【0041】
この直線diを図4で図示のものから任意の位置で任意の角度回転させて別の方向について各閉領域Aの寸法t1,t2,・・を求めると、やはり図4の場合と同様、直線di方向に対して繰返し周期性は見られない。
すなわち、このt1,t2,t3,・・・・・・,t8の数値の並びの様に、境界線分Lで画成された閉領域Aには繰返周期を持つ方向が存在しない。
言い換えると、閉領域Aの配置において、任意位置を通る任意方向の仮想的線分di上での閉領域Aの寸法tiの並びの数列が非周期関数となる。すなわち、t(i)=t(i+M)となるMが存在しない(i,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
このように、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないことを、閉領域Aが一定の繰返周期で並べられている方向が存在しない、と表現する。
【0042】
[一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値N]
さらに、配置パターン2Pは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている。言い換えると、一つの分岐点Bに接続する境界線分Lの数の平均値Nが3.0以上4.0未満となっている。このように一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっている場合、配置パターン2Pを、図11Aに示された正方格子パターン(N=4.0)から大きく異なるパターンとすることができる。また、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている場合には、六角形を規則的に配列したようなハニカム配列(N=3.0)からも大きく異なるパターンとすることができる。そして、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nを3.0≦N<4.0とした上で、閉領域Aの配列を不規則化して、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が安定して存在しないようにすることが可能となり、その結果、モアレを極めて効果的に目立たなくさせることが可能となることが、確認された。
【0043】
なお、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nは、厳密には、配置パターン2P内に含まれる全ての分岐点Bについて、延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出することになる。ただし、実際的には、ライン部Ltによって画成された一つ当たりの閉領域Aの大きさ等を考慮した上で、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の全体的な傾向を反映し得ると期待される面積を持つ一区画(例えば、前述した単位レンズ2の寸法例で閉領域Aが形成されている配置パターン2Pにおいては、30mm×30mmの正方形部分)に含まれる分岐点Bについて延び出す境界線分Lの数を調べてその平均値を算出し、算出された値を当該配置パターン2Pについての一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nとして取り扱うようにしてもよい。
【0044】
実際に、図3に示されたライン部Ltによる配置パターン2Pでは、一つの分岐点Bから延び出す境界線分Lの数の平均値Nが3.0<N<4.0となっている。一例を挙げると、図3の配置パターン2Pの場合、合計387個の分岐点Bについて計測したところ、境界線分Lが3本の分岐点Bが373個、境界線分Lが4本の分岐点Bが14個であり(分岐する境界線分Lの数が5個以上の分岐点は0個)、分岐点Bから出る境界線分Lの平均本数(平均分岐数)は3.04個であった。
【0045】
[閉領域Aの形状;一つの閉領域Aを囲繞する境界線分Lの数]
前記閉領域Aには、周域を囲繞する境界線分Lの本数が5本の閉領域、6本の閉領域、7本の閉領域のうちの少なくとも2種以上が含まれていることが好ましい。
こうすることによって、モアレを目立たなくさせることが出来ると共に、配置パターン2Pの粗密による輝度ムラをより確実に目立たなくさせることができる。
さらに、前記少なくとも2種類の閉領域Aとして、境界線分Lが6本の閉領域Aを含むのが好ましい。
さらに、周域を囲繞する境界線分Lが5本の閉領域Aの数をA5、周域を囲繞する境界線分Lが6本の閉領域Aの数をA6、周域を囲繞する境界線分Lが7本の閉領域Aの数をA7、としたときに、A5、A6、A7のうちでA6が一番多いのが好ましい。
さらに、周域を囲繞する境界線分Lの本数が5本の閉領域、6本の閉領域、7本の閉領域のうちの少なくとも2種として、周域を囲繞する境界線分Lの本数が5本の閉領域と、6本の閉領域とを含むことが好ましい。言い換えると、A6>A5>A7であることが好ましい。
なお、前記周囲を囲繞する境界線分Lが全て直線からなる閉領域Aは多角形となる。
【0046】
[画像表示パネルの画素配列との干渉によるモアレ発生状況]
図10Cには、図3及び図10Aに示された配置パターン2Pを、図10Bに示された画像表示パネル30に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図10Cからも理解され得るように、図3及び図10A示された配置パターン2Pを実際に作製して画像表示パネル30の画素配列上に配置した場合、視認され得る程度の縞状の模様、すなわちモアレ(干渉縞)は発生しなかった。
【0047】
ここで、図10Bで示された画像表示パネル30の画素配列は、画像表示パネル30に於ける典型的な画素配列である。図10Bに示す様に、この画像表示パネル30では、一つの画素Pは、赤色に発光する副画素(サブピクセル)RPと、緑色に発光する副画素GPと、青色に発光する副画素BPと、から構成されている。すなわち、画像表示パネル30はカラーで画像を形成することができる。図10Bに示された例は、いわゆるストライプ配列として、画素Pが形成されている。すなわち、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、それぞれ、一つの方向(図10Bでは縦方向)に連続して並べられている。一方、赤色に発光する副画素RP、緑色に発光する副画素GPおよび青色に発光する副画素BPは、当該一つの方向に直交する方向(図10Bでは横方向)に、一つずつ、順に並べられている。なお、図10Bは、画像表示パネル30の画像形成面(出光面、即ち画面)への法線方向、言い換えると、画像表示パネル30のパネル面への法線方向から当該画像表示パネル30を観察した状態で、画素Pの配列を示している。
【0048】
一方、画成される閉領域Aの配置が周期性を有する配列パターンである周期的配置パターン42P(周期的配列パターンとも呼称すべきものである)の場合のモアレ発生を例示するのが図11A〜図11Cである。
【0049】
図11Aは、正方格子状の周期的配置パターン42Pであり、本発明の配置パターン2Pとは異なるものである。
図11Cには、図11Aに示された周期的配置パターン42Pを、図11Bに示された画像表示パネル30(図10Bで示したものと同じである)に於ける典型的な画素配列上に重ねた状態が示されている。図11A、図11B及び図11Cからも理解され得るように、周期的配置パターン42Pを有する光学シート40が画像表示パネル30の画素配列上に配置されると、周期的配置パターン42Pと画素の規則的パターンとの干渉によって、明暗の筋(図11Cに示された例では、左上から右下に延びている明暗の筋)が視認されるようになる。
【0050】
なお、図11Aおよび図11Cに示された例では、周期的配置パターン42Pにおける配列方向が、画素Pの配列方向に対して、数度傾斜している。この傾斜角をバイアス角(度)と呼称する。このような傾斜は、一般的に、モアレを目立たなくさせるものとして広く用いられている手法である。但し、図11Cに縞状模様が視認されることからも理解され得るように、モアレ発生の程度は単にバイアス角のみで決まる訳では無く、この他、画素P及び周期的配置パターン42Pの周期比、周期的配置パターン42Pの配列周期等の要因にも依存する。周期的配置パターン42Pのバイアス角のみでモアレを解消しようとすると、画像表示パネル30の設計仕様毎に応じてバイアス角の異なる光学シートを用意する必要が有る。
【0051】
[配置パターン2Pのパターン形状の作成方法]
ここで、本発明固有の上記配置パターン2Pのパターンを作成する方法の一例を以下に説明する。
【0052】
ここで説明する方法は、母点を決定する工程と、決定された母点からボロノイ図を作成する工程と、ボロノイ図における一つのボロノイ境界によって結ばれる二つのボロノイ点の間を延びる境界線分Lの経路を決定する工程と、決定された経路の太さを決定して各境界線分Lを画定して配置パターン2P(ライン部Lt)のパターンを決定する工程と、を有している。以下、各工程について順に説明していく。なお、上述した図3に示されたパターンは、実際に以下に説明する方法で決定されたパターンである。
【0053】
まず、母点を決定する工程について説明する。最初に、図5に示すように、絶対座標系O−X−Y(略して、XYとも表記する。この座標系O−X−Yは普通の2次元平面であるが、後述の相対座標系と区別する為、頭に「絶対」を付記する。)の任意の位置に一つ目の母点(以下、「第1の母点」と呼ぶ)BP1を配置する。次に、図6に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れた任意の位置に第2の母点BP2を配置する。言い換えると、第1の母点BP1を中心として絶対座標系XY上に位置する半径rの円の円周(以下、「第1の円周」と呼ぶ)上の任意の位置に、第2の母点BP2を配置する。次に、図7に示すように、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つ第2の母点BP2から距離r以上離れた任意の位置に、第3の母点BP3を配置する。その後、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点BP2,BP3から距離r以上離れた任意の位置に、第4の母点を配置する。
【0054】
このようにして、次の母点を配置することができなくなるまで、第1の母点BP1から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、第2の母点BP2を基準にしてこの作業を続けていく。すなわち、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に、次の母点を配置する。第2の母点BP2を基準にして、次の母点を配置することができなくなるまで、第2の母点BP2から距離rだけ離れ且つその他の母点から距離r以上離れた任意の位置に母点を配置していく。その後、基準となる母点を順に変更して、同様の手順で母点を形成していく。
【0055】
以上の手順で、配置パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなるまで、母点を配置していく。配置パターン2Pが形成されるべき領域内に母点を配置することができなくなった際に、母点を作製する工程が終了する。ここまでの処理により、2次元平面(XY平面)に於いて不規則的に配置された母点群が、配置パターン2Pが形成されるべき領域内に一様に分散した状態となる。
【0056】
このような工程で2次元平面(XY平面)内に分布された母点群BP1、BP2、・・、BP6(図8(A)参照)について、個々の母点間の距離は一定では無く分布を有する。但し、任意の隣接する2母点間の距離Rの分布は完全なランダム分布(一様分布)でも無く、平均値RAVGを挾んで上限値RMAXと下限値RMINとの間の範囲ΔR=RMAX−RMINの中で分布している。なお、ここで、隣接する2母点であるが、母点群BP1、BP2、・・からボロノイ図を作成した後、2つのボロノイ領域XAが隣接していた場合に(図9参照)、その2つのボロノイ領域XAの母点同士が隣接していると定義する。
【0057】
即ち、ここで説明した母点群について、各母点を原点とする座標系(相対座標系o−x−yと呼称し、一方、現実の2次元平面を規定する座標系を絶対座標系O−X−Yと呼称する)上に、原点に置いた母点と隣接する全母点をプロットした図8(B)、図8(C)、・・等のグラフを全母点について求める。そして、これら全部の相対座標系上の隣接母点群のグラフを、各相対座標系の原点oを重ね合わせて表示すると、図8(D)の如きグラフが得られる。この相対座標系上での隣接母点群の分布パターンは、母点群を構成する任意の隣接する2母点間の距離が0から無限大迄の一様分布では無く、原点oからの距離がRAVG−ΔRからRAVG+ΔR迄の有限の範囲(半径RMINからRMAX迄のドーナツ形領域)内に分布していることを意味する。
【0058】
以上の様にして、各母点間の距離を設定することによって、該母点群から以下に説明する方法で得られるボロノイ領域XA、更には、これから得られる閉領域Aの大きさ(乃至は閉領域Aの面積)の分布についても、一様分布(完全ランダム)では無く、有限の範囲内に分布したものとなる。
なお、図8(D)からわかる様に、任意の1母点BPから見た他の母点BPの方位(角度)分布は等方的(乃至は略等方的)である。このことが、こうした母点(群)BPから生成される配置パターン2Pに於ける閉領域Aの方位(角度)分布が等方的(乃至は略等方的)となることに対応する。
この様に構成することにより、閉領域Aの面分布がより均一化し、輝度ムラがより一層効果的に解消する。
【0059】
また、閉領域Aの面分布の均一性が不足すると生じる輝度ムラを、実質上、目視不能とし、且つ閉領域Aの非周期性によるモアレ防止性とも両立させる為には、閉領域Aの大きさDの最大値をDMAX、最小値をDMINとしたときに、当該大きさDの分布範囲ΔD=DMAX−DMINが大きさDの平均値DAVGに対して、
0.1≦ΔD/DAVG≦0.6
より好ましくは、
0.2≦ΔD/DAVG≦0.4
とする。
ここで、閉領域Aの大きさDは、全ての閉領域Aについて、以下の定義とする。
(1)或る一つの閉領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描ける場合は、この閉領域Aの外接円直径を以って、大きさDとする。
(2)或る一つの閉領域Aに属する全ての分岐点B(多角形の場合は全頂点)を通る円が描けない場合は、この閉領域Aに属する2分岐点B間の距離の最大値(多角形の場合は最長の対角線長)を以って、大きさDとする。
【0060】
なお、以上の母点を決定する工程において、距離rの大きさを変化させることにより、一つあたりの閉領域Aの大きさDを調節することができる。具体的には、距離rの大きさを小さくすることにより、一つあたりの閉領域Aの大きさDを小さくすることができ、逆に距離rの大きさを大きくすることにより、一つあたりの閉領域Aの大きさDを大きくすることができる。
【0061】
次に、図9に示すように、配置された母点を基準にして、ボロノイ図を作成する。図9に示すように、ボロノイ図とは、隣接する2つの母点BP、BP間に垂直二等分線を引き、その各二等分線同士の交点で結ばれた線分で構成される図である。ここで、二等分線の線分をボロノイ境界XBと呼び、ボロノイ境界XBの端部をなすボロノイ境界XB同士の交点をボロノイ点XPと呼び、ボロノイ境界XBに囲まれた領域をボロノイ領域XAと呼ぶ。
【0062】
図9のように作成されたボロノイ図において、各ボロノイ点XPが、配置パターン2Pの分岐点Bをなすようにする。そして、一つのボロノイ境界XBの端部をなす二つのボロノイ点XPの間に、一つの境界線分Lを設ける。この際、境界線分Lは、図9に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定してもよいし、あるいは、他の境界線分Lと接触しない範囲で二つのボロノイ点XPの間を種々の経路(例えば、円(弧)、楕円(弧)、抛物線、双曲線、正弦曲線、双曲線正弦曲線、楕円函数曲線、ベッセル関数曲線等の曲線状、折れ線状等の経路)で延びるようにしてもよい。なお、境界線分Lは、図9に示された例のように二つのボロノイ点XPの間を直線状に延びるように決定した場合、各ボロノイ境界XBが、境界線分Lを画成するようになる。
【0063】
各境界線分Lの経路を決定した後、各境界線分Lの線幅(太さ)を決定する。境界線分Lの線幅は、通常、0〜100μmである。本実施形態では、0μmである。
境界線分Lの幅が0μmを超過する有限の値を持つ場合は、幅をもった境界線分Lの部分は、本体部1の一方の面1pが露出する部分である。境界線分Lの幅は、配置された複数の単位レンズ2による光学作用の度合いを勘案して決定される。
【0064】
以上のような本実施形態によれば、光学シート10の単位レンズ2から多数の境界線分Lが特定され、この境界線分Lから構成されるライン部Ltは配置パターン2Pを呈する。前記境界線分Lは、両端において二以上の他の境界線分Lと接続する分岐点Bを形成し、複数の境界線分Lによって囲まれて閉領域Aが画成され、一つの閉領域Aに一つの単位レンズ2が配置される様にして、単位レンズ2が本体部1の一方の面1p上に配置される。さらに、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが3.0≦N<4.0となっており、且つ、閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっており、また、周囲を囲繞する境界線分Lの数が同一の閉領域Aの面積及び形状は一定でないようになっている。
この結果、規則的(周期的)に画素Pが配列された画像表示パネル30を、この光学シート10を備えた面光源装置100で照明したとしても、表示される画像に、モアレが視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができるとともに、輝度ムラが視認され得る程度に発生することを効果的に防止することができる。
【0065】
〔変形形態〕
本発明の光学シート10は、上記した形態以外のその他の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0066】
(単位レンズ2の輪郭形状と閉領域Aの形状)
上記実施形態では、単位レンズ2は本体部1の一方の面1p上に隙間なく配置されている形態、つまり閉領域Aの境界線分Lからなる輪郭線の形状と単位レンズ2の輪郭線2Fの形状とが同じ形態であった。
しかし、本発明においては、これに限定されない。図12の平面図で例示する様に、一方の面1p上に配置される単位レンズ2同士の間に一方の面1pが露出する形態でも良い。同図では、作成された配置パターン2Pに従って単位レンズ2を本体部1の一方の面1p上に配置するときに、閉領域Aの内部に且つ閉領域Aの形状よりも小さい輪郭線形状で単位レンズ2を配置した例である。単位レンズ2間で露出させた部分の一方の面1pは平面であり、したがって、この露出部分に存在する境界線分Lは視認できない仮想的な線分となる。このため、このままでは、この境界線分Lは単位レンズ2の輪郭線形状によって特定することができない。よって、配置された後の単位レンズ2からは、複数の境界線分Lからなる配置バターン2Pも特定することができない。
しかし、同図の様に、隣接する単位レンズ2間を最短距離で結ぶ線分Dについて、その中点Dcに直交する線分を、境界線分Lとして取り決めて、それぞれの単位レンズ2同士の間で境界線分Lを決定していくことにより、隣り合う二つの単位レンズ2の間を延びる境界線分Lからなるライン部Ltを画成することができる。そして、このライン部Ltによる配置パターン2P及び閉領域Aも決めることができる。
ただ、こうして決めた境界線分L、ライン部Lt、閉領域A及び配置パターン2Pは、単位レンズ2を配置するときに使用した、ものとは異なり得る。しかし、これらについて、一つの分岐点Bから延びる境界線分Lの数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、前記単位レンズ2の配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んだものとなる。
以上のように、単位レンズ2同士の間に隙間を設けた形態とすることによって、光学シート10としての学性能を調整できる。
【0067】
(単位レンズ2の形状)
本発明においては、単位レンズ2の形状は、図1の実施形態で示した凸レンズ以外の形状でもよい。図13の断面図は、単位レンズ2の形状例を示す。先ず、図13(A)は図1で示した凸レンズ形状であり、図13(B)はプリズム形状である。こうしたプリズム機能を有する光学要素に対しても、本発明においては、総称して単位レンズ2と呼ぶことにする。単位レンズ2の形状は、円錐や角錘等の錐体状でもよく、錐体状の場合はプリズムと言うこともできる。
一般に、プリズムとは表面(空気との接触面)が平面の組み合わせからなる光学要素、レンズとは表面が単一の曲面乃至は複数の曲面の組み合わせからなる光学要素を意味する。
単位レンズ2は、その表面が平面と曲面との組み合わせからなる光学要素でも良く、この場合は平面の部分はプリズムとして機能し、曲面の部分はレンズとして機能する。
【0068】
単位レンズ2は、図13(A)及び図13(B)では、本体部1の一方の面1pに対して本体部1から離れる方向に向かって凸なる形状であったが、図13(C)の凹レンズ形状、及び図13(D)の凹プリズム形状のように、本体部1の一方の面1pに対して本体部1の内部に向かって凸なる形状、つまり窪んだ形状でもよい。
単位レンズ2は、レンズ要素の単位レンズ2とプリズム要素の単位レンズ2とが混在して配置されていても良い。
以上のように、単位レンズ2の形状を調整することで、光学シート10による、光拡散作用、及び集光作用を調整することができる。
【0069】
(単位パターン領域Sとしての繰返し)
上述した実施形態では、光学シート10中の単位レンズ2の全領域において、その配置パターン2Pの閉領域Aの配置に周期性を有する方向が存在しないようになっている例を説明した。しかしながら、図14の様に、その内部に於いて単位レンズ2で特定される配置パターン2Pの全領域が、単位パターン領域Sを複数集合して配置パターン2Pの全領域が構成されるようにして、且つ各単位パターン領域S内に於いては、複数の閉領域Aが、所定の繰返周期のないパターンで配列されている領域からなるようにしてもよい。
すなわち、この形態に於いては、配置パターン2Pの全領域中に、局所的に見たときに、同一パターンで閉領域群が配列されてなる単位パターン領域Sを2箇所以上含むようになる。この場合、特定方向について、一定周期で4箇所以上の繰返しが無ければ、単位パターン領域S同士の繋ぎ目は実質上目立ち難く、無視し得る。もちろん、単位パターン領域S中でモアレも輝度ムラも目立たなくされている。この例において、一つの単位パターン領域S内における配置パターン2Pのパターンは、例えば、図5〜図9を参照しながら説明したパターン作成方法と同様にして作成することができる。
【0070】
特に最近では、画像表示パネルの大型化が進んでおり、この様な大画面の画像表示パネル30に対しては、単位レンズ2の配置パターン2Pが、複数の単位パターン領域Sの配列から構成されていて、且つ各々の単位パターン領域S内に於いては互いに同一のパターンで閉領域Aが配置されている構成とした複数の単位パターン領域Sを含む形態とした方が、配置パターン2Pのパターン作成を格段に容易化することが可能となる点において好ましい。
【0071】
なお、特に一種類の単位パターン領域Sを図14に示す様に縦横に複数配置する例においては、特定方向(図面縦方向と横方向の2方向)で単位パターン領域Sとしての繰返しが存在する。図14の実施形態に於いては、横方向に繰返周期SP2、縦方向に繰返周期SP1を以って単位パターン領域Sが繰り返される。この条件下では、特定方向に於ける単位パターン領域Sの寸法をLsとし、該特定方向に延びる任意の直線dj上において単位パターン領域Sが寸法Ls内に閉領域AをM個有するとき、直線dj上の或る閉領域Aに注目すると、直線dj上では閉領域Aの個数がM個分だけ離れた位置には、全く同じ寸法tj及び形状の閉領域Aが常に存在するという規則性を有する。すなわち、閉領域Aの直線dj上での寸法tjについて、直線dj上で順番に数えてk番目の寸法tj(k)と、そこから更にM番目の(k+M)番目の寸法tj(k+M)とが同じとなる、tj(k)=tj(k+M)の関係が成立する(k,Mはそれぞれ独立な正の整数)。
【0072】
しかし、この規則性は、単位パターン領域Sとしての繰返周期(前記で言えば寸法Lsがその繰返周期に該当する)に基づくものであり、閉領域Aとしての繰返周期(周期性)ではなく、各単位パターン領域S内に於いて閉領域Aがその配置に周期性を上記特定方向に持つことではない。また、単位パターン領域Sとしての繰返周期は、画像表示パネルの画素配列の配列周期に対して寸法が例えば1000倍以上異なる為に、モアレが発生する様な近い寸法関係にない。
【0073】
図14に示された例では、光学シート10が、同一の形状を有した六つの単位パターン領域Sに分割され、各単位パターン領域S内で、各単位レンズ2の配置パターン2Pが同一に構成されている。そして、六つの単位パターン領域Sは、図14の縦方向(図の上下方向)に繰返周期SP1で三つの領域が並ぶとともに、図14の横方向に繰返周期SP2で二つの領域が並ぶように配列されている。
【0074】
(機能層)
本発明においては、光学シート10は、本体部1と単位レンズ2のみからなる層構成でもよいが、これ以外の構成要素、例えば機能層を備えていても良い。
例えば、光拡散層、反射防止層、帯電防止層、紫外線吸収層、赤外線吸収層、着色層(色補正層)、偏光層、位相差層、輝度向上層、視野角調整層、接着剤層(含む粘着剤層)、透明基材層などである。これらの機能層は、光学シートにおいて、従来公知のものを適宜採用することができる。これらの機能層を設けることにより、設けた機能層に応じた機能を付与することができる。
【0075】
(光学シート10の面光源装置100中での配置様式)
本発明においては、光学シート10の面光源20に対する向きは、図1(A)の様に、単位レンズ2を有する側の面を画像表示パネル30と対向する側とする形態の他、図示はしないが、単位レンズ2を有する側の面を面光源20と対向する側とする形態もあり得る。単位レンズ2の向きによって、その光学機能を適切に調整できる。
【0076】
本発明においては、光学シート10は1枚の配置の他、2枚など複数枚を重ねて配置してもよい。複数枚配置することで、それぞれの光学シート10における単位レンズ2の光学機能を複合化した面光源装置100とすることができる。
【0077】
本発明においては、光学シート10の入光面と、面光源20の出光面20aとは、図1(A)の様に間に空気層を介して配置する形態の他、間に空気層を介さずに、接触して或いは間に接着剤層(含む粘着剤層)などの樹脂層を介して配置する形態としてもよい。こうすることによって、空気層を介することで生じる空気層との界面での光反射による光利用効率の低下を抑制できる。
【0078】
(面光源装置100のその他の構成要素)
本発明においては、面光源装置100は、面光源20及び光学シート10以外に、更にその他の部材を備えていても良く、その他の部材としては、面光源装置における公知の各種光学部材を適宜採用することができる。その他の光学部材の例を挙げれば、偏光分離シート等の輝度向上シート、光拡散シート、偏光シート、位相差シート等である。これらの光学部材を配置することによって、配置した光学部材の効果を付加することができる。
【0079】
[C]画像表示装置:
本発明による画像表示装置は、上記した本発明による面光源装置100と、この面光源装置100の出光側に配置された画像表示パネルとを少なくとも備える。
本発明による画像表示装置を、図1の一実施形態例に於ける画像表示装置200を参照して説明する。図1の画像表示装置200は、上記した様な面光源装置100の出光側に配置された画像表示パネル30とを備える表示装置である。本画像表示装置200は、面光源装置100及び画像表示パネル30以外に、筐体(キャビネット)、入出力部品等の他、画像表示装置の用途に応じて、例えば、テレビジョン受像機の場合はチューナ等の、公知の各種部品を備える。これらのその他の構成要素は、特に制限はなく、用途に応じたものとなる。
【0080】
画像表示パネル30は、透過型で画像を表示可能であって画素配列に周期性を有する表示パネルである。こうした画像表示パネル30には、代表的には透過型の液晶表示パネルがある。また、画像表示パネル30としては、ディスプレイ駆動回路等の各種回路、該駆動回路とディスプレイパネル本体間の配線、これらを一体化するシャーシ、フレーム、タッチパネル等を含んでいても良い。従って、画像表示パネル30は、「ディスプレイモジュール」乃至は「パネルモジュール」等と呼ぶこともできる。
【0081】
この様な構成の画像表示装置200とすることによって、面光源装置100が備える光学シート10の単位レンズ2の配置の周期と、画像表示パネル30の画素配列の周期との干渉によるモアレ発生を目立たなくすることが出来るとともに、単位レンズ2の配置の粗密による画面の輝度ムラ発生も目立たなくすることが出来る。このため、モアレ解消効果と輝度ムラ解消効果の両方が得られる。
【0082】
[D]用途:
本発明による面光源装置100は、透過型の画像表示パネル30におけるバックライトとして好適であり、この面光源装置100と画像表示パネル30とを備える本発明による画像表示装置200は、テレビジョン受像機、測定機器や計器類、事務用機器、医療機器、電算機器、電話機、電子看板、遊戯機器、デジタルフォトフレーム等の画像表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0083】
1 本体部
1p 一方の面
2 単位レンズ
2F 輪郭線
2P 配置パターン
10 光学シート
20 面光源
20a 出光面
30 画像表示パネル
40 従来の光学シート
100 面光源装置
200 画像表示装置
300 従来の面光源装置
400 従来の画像表示装置
A 閉領域
B 分岐点
BP 母点
L 境界線分
Lt ライン部(境界線分の集合)
S 単位パターン領域
V 観察者



【特許請求の範囲】
【請求項1】
面光源と、この面光源の出光側に配置された光学シートとを備える、面光源装置であって、
前記光学シートは、
シート状の本体部と、
前記本体部の一方の面上に配置された複数の単位レンズと、を備え、
前記本体部の一方の面上に、隣り合う二つの単位レンズの間を延びる境界線分からなるライン部が画成され、
前記ライン部の各境界線分の両端は、二以上の他の境界線分と接続する分岐点をなし、
前記ライン部は、前記境界線分によって囲まれる閉領域を画成し、
一つの閉領域内に一つの単位レンズが配置されるようにして、前記単位レンズが前記本体部の一方の面上に配置されており、
前記ライン部は、一つの分岐点から延びる境界線分の数の平均値Nが、3.0≦N<4.0であり、且つ、
前記単位レンズの配置に周期性を有する方向が存在しない領域を含んでなる、
面光源装置。
【請求項2】
前記閉領域には、周域を囲繞する境界線分の本数が5本の閉領域、6本の閉領域、7本の閉領域のうちの、少なくとも2種以上が含まれている、請求項1に記載の面光源装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の面光源装置と、この面光源装置の出光側に配置された画像表示パネルとを備える、画像表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−114010(P2013−114010A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259712(P2011−259712)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】