説明

面状発光装置

【課題】輝度むらを低減でき且つ非発光部の面積を低減できる面状発光装置を提供する。
【解決手段】透明基板1の一表面側に形成され平面視矩形状の面状陽極21および面状陰極23それぞれに電気的に接続された陽極給電部24および陰極給電部25と、面状陽極21の表面の周部の全周に亘って形成された矩形枠状の陽極用枠状補助電極26と、陽極用枠状補助電極26に連続一体に形成されて陽極給電部24に積層された陽極給電部用補助電極27とを備える。面状陽極21と面状陰極23との間に有機層22のみが介在する領域により構成される矩形状の発光部20の4辺のうちの所定の平行な2辺と透明基板1の外周縁との距離が他の平行な2辺と透明基板1の外周縁との距離に比べて小さく、陰極給電部25および陽極給電部24は、発光部20の上記他の平行な2辺に沿って配置され、且つ、陰極給電部25の幅方向の両側それぞれに陽極給電部24が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、照明用途に用いる発光装置として、有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス素子)を利用した面状発光装置が各所で研究開発されている。ここにおいて、この種の面状発光装置をより高輝度で点灯させるためには、より大きな電流を流す必要があるが、透明導電膜を用いた面状陽極のシート抵抗が金属膜を用いた面状陰極のシート抵抗に比べて大きいため、面状陽極での電位勾配が大きくなって、面状陽極と面状陰極との間の発光層にかかる電圧が大きくなり、輝度のばらつきが大きくなってしまう。
【0003】
これに対して、図23に示すように、矩形板状の透明基板1’と、透明基板1’の一表面側に形成された有機EL素子2’とを備え、有機EL素子2’が、透明基板の一表面側に形成された平面視矩形状の透明導電膜(例えば、ITO膜)からなる面状陽極21’と、面状陽極21’における透明基板1’側とは反対側に形成され少なくとも発光層を含む平面視矩形状の有機層22’と、有機層22’における面状陽極21’側とは反対側に形成され面状陽極21’に対向した平面視矩形状の金属膜(例えば、Al膜)からなる面状陰極23’と、透明基板1の上記一表面側で面状陽極21’に連続一体に形成されて面状陽極21’に電気的に接続された2つの陽極給電部24’,24’と、透明基板1’の上記一表面側で面状陰極23’に連続一体に形成されて面状陰極23’に電気的に接続された2つの陰極給電部25’,25’とを備え、面状陽極21’における透明基板1’側とは反対側の表面の四隅近傍に感光性ポリイミドや酸化珪素などからなる非発光絶縁層129’が形成されてなる面状発光装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、図23に示した構成の面状発光装置では、有機EL素子2’において面状陽極21と面状陰極23との間に有機層22のみが介在する領域が発光部20’を構成しており、透明基板1’の上記一表面側に有機EL素子2’の発光部20’を覆うガラス製もしくはステンレス製の封止基材3’が固着されている。
【0004】
ここで、図23に示した構成の面状発光装置では、上述の非発光絶縁層129’を設けてあることにより、平均輝度が1000cd/mとなる駆動条件で点灯させたときの場合の輝度むらが低減されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−123882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図23に示した構成の面状発光装置では、上述のように輝度むらを低減することができるが、平面視矩形状の発光部20’の4辺のうちの任意の平行な2辺に沿って陽極給電部24’,24’が配置されるとともに、他の平行な2辺に沿って陰極給電部25’,25’が配置されているので、発光部20’の大面積化が制限され、非発光部の面積が大きくなってしまう。また、図23に示した構成の面状発光装置を並べて使用する照明器具では、隣り合う発光部20’間の距離が大きくなり、見栄えが悪くなってしまう。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、輝度むらを低減でき且つ非発光部の面積を低減できる面状発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、平面視矩形状の透明基板と、透明基板の一表面側に形成された有機EL素子とを備え、有機EL素子は、透明基板の前記一表面側に形成された透明導電膜からなる平面視矩形状の面状陽極と、面状陽極における透明基板側とは反対側に形成され少なくとも発光層を含む平面視矩形状の有機層と、有機層における面状陽極側とは反対側に形成され面状陽極に対向した金属膜からなる平面視矩形状の面状陰極と、透明基板の前記一表面側に形成され面状陽極に電気的に接続された陽極給電部と、透明基板の前記一表面側に形成され面状陰極に電気的に接続された陰極給電部と、面状陽極における透明基板側とは反対側の表面の周部の全周に亘って形成され面状陽極に電気的に接続された矩形枠状の陽極用枠状補助電極と、陽極用枠状補助電極に連続一体に形成されて陽極給電部に積層された陽極給電部用補助電極とを備え、面状陽極と面状陰極との間に有機層のみが介在する領域により構成される発光部の平面形状が矩形状であって当該矩形状の4辺のうちの所定の平行な2辺と透明基板の外周縁との距離が他の平行な2辺と透明基板の外周縁との距離に比べて小さくなる矩形状であり、陰極給電部および陽極給電部は、平面視において発光部の前記他の平行な2辺に沿って配置され、且つ、陰極給電部の幅方向の両側それぞれに陽極給電部が配置されてなることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、面状陽極における透明基板側とは反対側の表面の周部の全周に亘って形成され面状陽極に電気的に接続された矩形枠状の陽極用枠状補助電極と、陽極用枠状補助電極に連続一体に形成されて陽極給電部に積層された陽極給電部用補助電極とを備えているので、透明導電膜からなる面状陽極の電位勾配に起因した輝度むらを低減でき、しかも、面状陽極と面状陰極との間に有機層のみが介在する領域により構成される発光部の平面形状が矩形状であって当該矩形状の4辺のうちの所定の平行な2辺と透明基板の外周縁との距離が他の平行な2辺と透明基板の外周縁との距離に比べて小さくなる矩形状であり、陰極給電部および陽極給電部は、平面視において発光部の前記他の平行な2辺に沿って配置され、且つ、陰極給電部の幅方向の両側それぞれに陽極給電部が配置されているので、輝度むらを低減できるとともに、非発光部の面積を低減できる。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記陰極給電部に積層され前記陰極給電部に電気的に接続された陰極給電部用補助電極を備えること特徴とする。
【0011】
この発明によれば、前記陰極給電部に外部導体を接触させて電気的に接続する場合に比べて、外部導体との接触抵抗を低減することができるとともに接触抵抗のばらつきを低減でき、発光効率の向上を図れる。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記陽極給電部と前記陰極給電部とが同一材料により同一厚さで形成されるとともに、前記陽極給電部用補助電極と前記陰極給電部用補助電極とが同一材料により同一厚さで形成され、前記陽極給電部と前記陽極給電部用補助電極とで構成される陽極側外部接続電極の幅の合計寸法と、前記陰極給電部と前記陰極給電部用補助電極とで構成される陰極側外部接続電極の幅の合計寸法とが、同じ値に設定されてなることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、陽極側外部接続電極の幅の合計寸法と陰極側外部接続電極の幅の合計寸法とが異なる場合に比べて、前記有機EL素子へ流す電流を大きくできるとともに、発光効率の向上を図れる。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3の発明において、前記陽極給電部用補助電極の幅方向の両側縁それぞれと前記陽極用枠状補助電極の外周縁との間に面取り部が形成されてなることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記陽極給電部用補助電極の幅方向の両側縁それぞれと前記陽極用枠状補助電極の外周縁との間に面取り部が形成されていない場合に比べて、電界集中を緩和でき、輝度むらを低減できる。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし請求項4の発明において、前記面状陰極から連続一体に延設され前記面状陰極と前記陰極給電部とを電気的に接続する引出配線を備え、当該引出配線の幅方向の両側縁それぞれと前記面状陰極の外周縁との間に面取り部が形成されてなることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、引出配線の幅方向の両側縁それぞれと前記面状陰極の外周縁との間に面取り部が形成されていない場合に比べて、電界集中を緩和でき、輝度むらを低減できる。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5の発明において、前記陽極用枠状補助電極の隣り合う内側縁間に面取り部が形成されてなることを特徴とする。
【0019】
この発明によれば、前記陽極用枠状補助電極のコーナ部での電界集中を緩和でき、局所的に過大な電流が流れるのを防止することができ、輝度むらを低減できるとともに短寿命化を防止できる。
【0020】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記有機EL素子の前記発光部を覆う形で前記透明基板の前記一表面側に封止材料からなる非導電性接着剤により固着された封止基材を備え、当該封止基材は、金属箔からなることを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、封止基材を備えていることにより、耐湿性を向上でき、また、封止基材が、金属箔により構成されていることにより、封止基材がバリアフィルムの場合に比べて、前記有機EL素子の前記発光部で発生した熱を効率良く放熱させることができる。
【0022】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、前記金属箔における前記透明基板側の表面と側縁との間に面取り部が形成されてなることを特徴とする。
【0023】
この発明によれば、前記金属箔を所定サイズに切断する時に発生するバリに起因して前記金属箔と前記有機EL素子とが接触して短絡不良が発生するのを防止することができる。
多数個取りが可能な平面サイズの電解銅箔から封止基材3の平面サイズの電解銅箔に切断する時
請求項9の発明は、請求項7または請求項8の発明において、前記封止材料は、粒径が20μm以上の球状のフィラーを含有していることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、前記封止基材と前記有機EL素子との間に粒径が20μm以上の球状のフィラーが介在することとなり、前記封止基材と前記有機EL素子との距離を短くしつつ前記封止基材を構成する前記金属箔と前記有機EL素子との接触による短絡不良の発生を防止することが可能となる。
【0025】
請求項10の発明は、請求項7ないし請求項9の発明において、前記金属箔における前記透明基板側とは反対の表面側が黒色酸化処理されてなることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、前記封止基材の放射率が高くなって放熱性が向上し、前記有機EL素子の温度上昇を抑制することができ、前記有機EL素子へ流す電流を大きくできて高輝度化を図れる。
【0027】
請求項11の発明は、請求項7ないし請求項9の発明において、前記金属箔における前記透明基板側とは反対の表面側に前記金属箔に比べて放射率の高い材料からなる熱放射層が被着されてなることを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、前記封止基材の放射率が高くなって放熱性が向上し、前記有機EL素子の温度上昇を抑制することができ、前記有機EL素子へ流す電流を大きくできて高輝度化を図れる。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明では、輝度むらを低減でき且つ非発光部の面積を低減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態1の面状発光装置を示し、(a)は背面図、(b)は(a)のB−B’概略断面図、(c)は(a)のC−C’概略断面図である。
【図2】同上の面状発光装置の正面図である。
【図3】図1(b)の要部拡大図である。
【図4】図1(c)の要部拡大図である。
【図5】同上の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図6】同上の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図7】同上の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図8】同上の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図9】同上の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図10】同上の製造方法を説明するための主要工程平面図である。
【図11】同上の面状発光装置のシミュレーションによる輝度分布図である。
【図12】同上の面状発光装置のシミュレーションによる輝度分布図である。
【図13】同上の面状発光装置を用いた照明器具の概略分解斜視図である。
【図14】同上の面状発光装置を用いた照明器具の要部概略断面図である。
【図15】同上の面状発光装置の他の構成例の背面図である。
【図16】同上の面状発光装置の実施例1についてのシミュレーション結果を示し、(a)は要部のシート抵抗分布図、(b)は要部の輝度分布図(電流密度分布図)、(c)は要部の電位分布図である。
【図17】同上の面状発光装置の比較例1についてのシミュレーション結果を示し、(a)は要部のシート抵抗分布図、(b)は要部の輝度分布図(電流密度分布図)、(c)は要部の電位分布図である。
【図18】同上の面状発光装置の実施例2についてのシミュレーション結果を示し、(a)は要部のシート抵抗分布図、(b)は要部の輝度分布図(電流密度分布図)、(c)は要部の電位分布図である。
【図19】同上の面状発光装置の比較例2についてのシミュレーション結果を示し、(a)は要部のシート抵抗分布図、(b)は要部の輝度分布図(電流密度分布図)、(c)は要部の電位分布図である。
【図20】同上の面状発光装置の実施例3についてのシミュレーション結果を示し、(a)は要部のシート抵抗分布図、(b)は要部の輝度分布図(電流密度分布図)、(c)は要部の電位分布図である。
【図21】同上の面状発光装置の比較例3についてのシミュレーション結果を示し、(a)は要部のシート抵抗分布図、(b)は要部の輝度分布図(電流密度分布図)、(c)は要部の電位分布図である。
【図22】実施形態2の面状発光装置の背面図である。
【図23】従来例を示し、(a)は一部破断した概略斜視図、(b)は概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態1)
本実施形態の面状発光装置Aは、図1〜4に示すように、平面視矩形状(図示例では、平面視長方形状)の透明基板1と、透明基板1の一表面側に形成された有機EL素子2と、有機EL素子2の平面視矩形状(図示例では、平面視正方形状)の発光部20を覆う形で透明基板1の上記一表面側に封止材料(例えば、粒径が30μmの球状のシリカを含有したエポキシ樹脂など)からなる非導電性接着剤により固着された平面視矩形状(図示例では、平面視正方形状)の封止基材3とを備え、封止基材3と発光部20との間には上述の非導電性接着剤からなる封止部4が形成されている。
【0032】
上述の面状発光装置Aは、透明基板1の他表面を光出射面(発光面)として用いるものであり、透明基板1としては、ガラス基板を用いているが、透明基板1はガラス基板に限らず、例えば、透明な樹脂フィルム基板を用いてもよい。
【0033】
有機EL素子2は、透明基板1の上記一表面側に形成された透明導電膜(例えば、ITO膜、IZO膜など)からなる平面視矩形状(図示例では、平面視正方形状)の面状陽極21(図5参照)と、面状陽極21における透明基板1側とは反対側に形成され少なくとも発光層を含む平面視矩形状(図示例では、平面視正方形状)の有機層22(図8参照)と、有機層22における面状陽極21側とは反対側に形成され面状陽極21に対向した金属膜からなる平面視矩形状(図示例では、平面視正方形状)の面状陰極23(図9参照)と、透明基板1の長手方向の両端部それぞれにおいて当該透明基板1の上記一表面側に形成され面状陽極21に電気的に接続された透明導電膜(例えば、ITO膜、IZO膜など)からなる陽極給電部24(図5参照)と、透明基板1の長手方向の両端部において当該透明基板1の上記一表面側に形成され面状陰極23に電気的に接続された透明導電膜(例えば、ITO膜、IZO膜など)からなる陰極給電部25(図9参照)とを備えている。
【0034】
上述の有機EL素子2は、透明基板1の長手方向の両端部それぞれにおいて、2つの陽極給電部24,24が透明基板1の短手方向に離間して形成されており、透明基板1の短手方向において隣り合う2つの陽極給電部24,24の間に1つの陰極給電部25が配置されている。ここで、透明基板1の短手方向において隣り合う2つの陽極給電部24,24は、図1および図9に示すように、面状陽極21において透明基板1の短手方向に沿った一側縁の長手方向の両端部から当該一側縁に直交する方向に延長された矩形状の平面形状に形成されている。
【0035】
有機EL素子2は、有機層22における発光層が面状陽極21と面状陰極23との間に直流電圧を通電したときに発光するように構成されており、有機層22が、所望の発光色の光が得られる有機分子材料により形成された発光層と、発光層と面状陽極21との間に介在する正孔輸送層と、発光層と陰極23との間に介在する電子輸送層とを備えている。ここで、有機層22の層構造は特に限定するものではなく、例えば、有機層22の所望の発光色が白色の場合には、発光層中に赤色、緑色、青色の3種類のドーパント色素をドーピングするようにして正孔輸送層と発光層と電子輸送層との積層構造を採用するようにしてもよいし、青色正孔輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよいし、正孔輸送層と青色電子輸送性発光層と緑色電子輸送性発光層と赤色電子輸送性発光層との積層構造を採用してもよい。また、透明基板1中に有機層22の発光層からの光によって励起されて発光層からの光に比べて長波長の光を放射する1ないし複数の蛍光体を含有させてもよく、発光層の発光色を青色、蛍光体の発光色を黄色とすれば、白色光を得ることが可能となる。また、有機層22は、正孔輸送層および電子輸送層を設けずに発光層のみにより構成してもよい。
【0036】
また、面状陰極23を構成する金属膜は、Al膜により構成してあるが、Al膜に限らず、透明導電膜に比べて抵抗率が小さく仕事関数の小さな金属により形成されていればよく、例えば、Mg膜とAg膜との積層膜により構成してもよい。また、面状陰極23は、当該面状陰極23において透明基板1の短手方向に沿った一側縁の長手方向の中央部から当該一側縁に直交する方向に延設された引出配線23b(図9参照)を介して、陰極給電部25と電気的に接続されている。ここで、面状陰極23と引出配線23bとは、同一の材料により同一厚さで同時に形成されている。なお、面状陰極23および引出配線23bは、上述の封止部4により封止されている。
【0037】
ところで、有機EL素子2は、透明基板1の上記一表面側において、面状陽極21における透明基板1側とは反対側の表面の周部の全周に亘って形成され面状陽極21に電気的に接続された平面視矩形枠状(図示例では、平面視正方枠状)の陽極用枠状補助電極26と、陰極給電部25における透明基板1側とは反対側に積層され陰極給電部25に電気的に接続された陰極給電部用補助電極28とを備えている。ここで、陽極用枠状補助電極26および陰極給電部用補助電極28は、Cr膜とAu膜との積層膜により構成してあり、それぞれ面状陽極21および陰極給電部25よりも抵抗率の小さな材料により形成されていればよく、例えば、Mo膜とAl膜とMo膜との積層膜により構成してもよい。ここで、陰極給電部25に積層され陰極給電部25に電気的に接続された陰極給電部用補助電極28を備えていることにより、陰極給電部25に外部導体を接触させて電気的に接続する場合に比べて、外部導体との接触抵抗を低減することができるとともに接触抵抗のばらつきを低減でき、発光効率の向上を図れる。
【0038】
また、上述の陽極用枠状補助電極26は、陽極給電部24に積層され陽極給電部24に電気的に接続される陽極給電部用補助電極27が連続一体に形成されている。したがって、透明導電膜からなる陽極給電部24上に当該透明導電膜に比べて抵抗率の低い陽極給電部用補助電極27が積層され一体化されていることにより、陽極給電部24に外部導体を接触させて電気的に接続する場合に比べて、外部導体との接触抵抗を低減することができるとともに接触抵抗のばらつきを低減できるとともに、陽極用枠状補助電極26と陽極給電部24との間の電圧ロスを低減することができる。
【0039】
ここにおいて、面状陽極21と陽極給電部24と陰極給電部25とは、同一の透明導電材料(例えば、ITO、IZOなど)により同一厚さで同時に形成されている。また、陽極給電部用補助電極27と陰極給電部用補助電極28とが同一材料により同一厚さで形成されており、陽極給電部24と陽極給電部用補助電極27とで構成される陽極側外部接続電極E1の幅の合計寸法と、陰極給電部25と陰極給電部用補助電極28とで構成される陰極側外部接続電極E2の幅の合計寸法とが、同じ値に設定されている。しかして、陽極側外部接続電極E1の幅の合計寸法と陰極側外部接続電極E2の幅の合計寸法とが異なる場合に比べて、電流ロスが少なく、有機EL素子2へ流す電流を大きくできるとともに、発光効率の向上を図れる。
【0040】
また、有機EL素子2は、透明基板1の上記一表面側において陽極用枠状補助電極26および面状陽極21の側縁を覆う平面視矩形枠状(図示例では、平面視正方枠状)の絶縁膜29(図3および図4参照)が形成されており、当該絶縁膜29により、陽極用枠状補助電極26および面状陽極21と面状陰極23との短絡が防止されるようになっている。絶縁膜29の材料としては、例えば、ポリイミド、ノボラック樹脂、エポキシ樹脂などを採用すればよい。
【0041】
上述の有機EL素子2では、面状陽極21と面状陰極23との間に有機層22のみが介在する領域が上述の発光部20を構成しており、発光部20の平面形状が絶縁膜29の内周縁の形状と同じ矩形状(図示例では、正方形状)になっている。ここで、面状発光装置Aは、平面視において有機EL素子2の発光部20以外の部分が非発光部となる。
【0042】
本実施形態では、発光部20の平面サイズを60mm□として、陰極給電部25の幅方向の両側に配置される2つの陽極給電部24,24の中心間距離を45mmとし、面状陽極21の厚さを110nm〜300nm程度の範囲、有機層22の厚さを150nm〜300nm程度の範囲、面状陰極23の厚さを70nm〜100nm程度の範囲、絶縁膜29の厚さを0.7μm〜1μm程度の範囲、枠状の陽極用枠状補助電極26および陰極給電部用補助電極28の厚さを300nm〜600nm程度の範囲で適宜設定してあるが、これらの数値は一例であって特に限定するものではない。
【0043】
矩形枠状の陽極用枠状補助電極26の幅については、幅が広くなるほど、陽極用枠状補助電極26のインピーダンスが低下し、発光部20の輝度の面内ばらつきは低減されるが、非発光部の面積が増加して光束が低下するので、本実施形態では、1mm〜3mm程度の範囲で設定してある。また、陽極給電部24および陰極給電部25と透明基板1の周縁との距離は、0.2mmに設定してあるが、この点については後述する。
【0044】
また、本実施形態では、上述の封止基材3として、銅箔からなる金属箔を採用し、透明基板1の上記一表面側で有機EL素子2の大部分を覆うように上述の封止部4を介して真空ラミネートされている。ここで、銅箔としては、熱伝導率および接着強度の観点から、圧延銅箔よりも電解銅箔を用いることが好ましい。また、本実施形態の面状発光装置Aでは、封止基材3の平面サイズを絶縁膜29の外周形状のサイズよりも大きく設定してあり、封止基材3の周部の一部が上述の封止材料からなる非導電性接着剤により透明基板1に固着され、面状陽極21および面状陰極23は露出しないようになっているので、耐湿性を高めることができる。ここで、有機EL素子2のうち露出するのは、陽極給電部用補助電極27、陽極給電部24のうち陽極給電部用補助電極27に覆われていない部位(図4参照)、陰極給電部用補助電極28、および陰極給電部25のうち陰極給電部用補助電極28に覆われていない部位(図3参照)のみである。なお、本実施形態では、封止基材3の厚さを0.1mm〜0.2mm程度としてあるが、この数値は特に限定するものではない。また、封止基材3の金属箔としては、銅箔に限らず、例えば、アルミニウム箔、金箔などを採用してもよい。
【0045】
ところで、有機EL素子2で発生する熱を封止基材3側から効率良く放熱させるには、有機EL素子2と封止基材3との距離が短い方が好ましい。しかしながら、電解銅箔の表面粗さは、JIS B 0601−1994で規定されている算術平均粗さRaが10μm程度であり、封止基材3と有機EL素子2の電極部(陽極給電部用補助電極27、陽極給電部24、陰極給電部用補助電極28、陰極給電部25、面状陽極21、面状陰極23など)との接触による短絡不良の発生を防ぐ必要があり、上述の非導電性接着剤を構成する封止材料として、粒径が30μmの球状のフィラーを含有したエポキシ樹脂を用いている。なお、フィラーとしては、エポキシ樹脂との接着性、電気絶縁性、および低水分透過性に優れた球状のシリカを用いるのが好ましいが、シリカに限らず、例えば、球状のアルミナを用いてもよい。
【0046】
ここで、球状のシリカからなるフィラーの粒径および含有量を種々変化させたエポキシ樹脂よりなる封止材料を用いて、短絡不良の発生の有無を調べた実験結果を下記表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から、フィラーの粒径が20μm以上であれば、短絡不良の発生を防止することが可能となることが分かる。また、フィラーの粒径が40μmを超えると、水分の浸入量が増加して有機EL素子2の特性が劣化する懸念があるので、フィラーの粒径は、30μm〜40μmの範囲で設定することが好ましい。
【0049】
また、フィラーの含有量については、3.0〜6.0質量%の範囲で設定することが好ましく、フィラーの含有量が例えば20質量%以上になると、透明基板1と電解銅箔からなる封止基材3との接着強度が低下し、有機EL素子2の点灯と消灯との繰り返しによる温度サイクルに起因して封止基材3が剥離する確率が高くなる。
【0050】
また、封止基材3として用いる電解銅箔の外周部には、多数個取りが可能な平面サイズの電解銅箔から封止基材3の平面サイズ(所定サイズ)の電解銅箔に切断する時にバリが発生するので、当該バリを除去して透明基板1側の表面と側縁との間に面取り部を形成することが好ましく、当該面取り部を形成することにより、封止基材3と上記電極部(陽極給電部用補助電極27、陽極給電部24、陰極給電部用補助電極28、陰極給電部25、面状陽極21、面状陰極23など)との短絡をより確実に防止することができる。
【0051】
また、本実施形態では、封止基材3を構成する金属箔たる電解銅箔における透明基板1側とは反対の表面側が黒色酸化処理(黒色処理)されており、当該表面側に黒色酸化処理が施されていない場合に比べて、封止基材3の放射率が高くなって放熱性が向上し、有機EL素子2の温度上昇を抑制することができ、入力電力を大きくして高輝度化を図った場合の長寿命化を図れる。一例を挙げれば、有機EL素子2への通電電流を250mAとして有機EL素子2を高輝度(例えば、平均輝度で3000cd/m程度)で点灯させた場合、透明基板1の表面温度が約3℃低下した。また、有機EL素子2への通電電流を250mA一定として、初期平均輝度を3000cd/mとし、長時間連続点灯させたときの寿命(輝度半減期)を長くすることができる。
【0052】
また、封止基材3を構成する金属箔における透明基板1側とは反対の表面側に当該金属箔に比べて放射率の高い媒体(例えば、黒色系や白色系のアクリル樹脂など)からなる熱放射層を例えば塗装などにより形成してもよく、この場合も、封止基材3の放射率が高くなって放熱性が向上し、有機EL素子2の温度上昇を抑制することができ、入力電力を大きくして高輝度化を図った場合の長寿命化を図れる。また、封止基材3の耐食性を高めることができるという利点もある。
【0053】
なお、封止基材3は、金属箔に限らず、例えば、バリアフィルムを採用してもよいが、放熱性の観点からは金属箔の方が好ましい。要するに、封止基材3が、金属箔により構成されていることにより、封止基材3がバリアフィルムの場合に比べて、有機EL素子2の発光部20で発生した熱を効率良く放熱させることができる。
【0054】
以下、本実施形態の面状発光装置Aの製造方法について図5〜図10を参照しながら説明する。
【0055】
まず、ガラス基板からなる透明基板1の上記一表面側に、それぞれ透明導電膜(例えば、ITO膜、IZO膜など)からなる面状陽極21、陽極給電部24、および陰極給電部25を蒸着法やスパッタ法などを利用して同時に形成することによって、図5に示す構造を得る。
【0056】
次に、透明基板1の上記一表面側に、それぞれ低抵抗導電層(例えば、Cr膜とAu膜との積層膜や、Mo膜とAl膜とMo膜との積層膜など)からなる陽極用枠状補助電極26、陽極給電部用補助電極27、および陰極給電部用補助電極28を蒸着法やスパッタ法などを利用して同時に形成することによって、図6に示す構造を得る。
【0057】
続いて、透明基板1の上記一表面側に、ポリイミドなどからなる絶縁膜29を形成することによって、図7に示す構造を得る。
【0058】
その後、透明基板1の上記一表面側に、有機層22を例えば蒸着法などにより形成することによって、図8に示す構造を得る。なお、有機層22の形成方法は蒸着法に限らず、例えば、塗布法などでもよく、有機層22の有機分子材料に応じて適宜選択すればよい。
【0059】
続いて、透明基板1の上記一表面側に、面状陰極23および引出配線23bを蒸着法やスパッタ法などを利用して形成することによって、図9に示す構造を得る。
【0060】
その後、透明基板1の上記一表面側に、封止基材3を真空ラミネートすることで接着することにすることによって、図10に示す構造の面状発光装置Aを得る。
【0061】
次に、上述の面状発光装置Aの発光部20の面内の輝度分布をシミュレーションするにあたり、面状陽極21を厚さが300nmのITO膜とするとともに、面状陰極23を厚さが80nmのAl膜とし、有機層22の厚さを150nmとし、有機EL素子2への通電電流を250mAに設定して、輝度に略比例する電流密度の分布についてシミュレーションしたところ、図11および図12に示す結果が得られた。なお、図11は、平面視における透明基板1の1つの角を原点として透明基板1の長手方向をX軸方向(単位はcm)、透明基板1の短手方向をY軸方向(単位はcm)、透明基板1の厚み方向をZ軸方向としたときのXY平面での電流密度(単位はmA/cm)の分布を示している。また、図12は、平面視における透明基板1の1つの角を原点として透明基板1の長手方向をX軸方向(単位はcm)とし、透明基板1の短手方向をY軸方向(単位はcm)、Z軸方向を電流密度の大きさ(単位はmA/cm)としてある。
【0062】
上述の図11および図12から、平均輝度が3000cd/mという高輝度(従来例の輝度である1000cd/mの3倍)の点灯において、発光部20の面内での輝度のばらつきが±15%程度に抑えられていることが確認された。
【0063】
ここで、上述の面状発光装置Aを光源として備えた照明器具の一例について、図13および図14を参照しながら説明する。
【0064】
図13および図14に示した構成の照明器具は、厚み方向の一面に面状発光装置Aを収納する収納凹所が形成された偏平な表ケース(カバー部材)50と、表ケース50の収納凹所に面状発光装置Aを覆う形で収納される裏板80とで、器具本体を構成しており、面状発光装置Aと裏板60との間に、面状発光装置Aで発生した熱を放熱させるとともに発光部20の均熱化を図るための放熱材5を介在させてある。
【0065】
表ケース50は、外周形状が矩形状の前壁51の外周縁から後方へ向かって延設された周壁52を備え、前壁51と周壁52とで囲まれた空間が上記収納凹所を構成し、前壁51の中央部に、面状発光装置Aの透明基板1の上記他表面において発光部20に対応する部位を露出させる矩形状(図示例では、正方形状)の窓孔51aが形成されている。ここで、表ケース50における窓孔51aの開口サイズは、表ケース50の前面側から面状発光装置Aの透明基板1において発光部20に対応する部位以外の部位が見えないように設定してある。
【0066】
また、表ケース50の周壁52の後端縁には、面状発光装置Aへの給電用の電線61,61,63,63を挿通する切欠部54が形成されている。ここで、各電線61,61,63,63における面状発光装置Aの陽極側外部接続電極E1,E1および陰極側外部接続電極E2,E2に接続される一端側とは反対側には、別置の電源ユニット(図示せず)の出力用の第1のコネクタ(図示せず)に着脱自在に接続される第2のコネクタ70が設けられている。なお、陰極側外部接続電極E2を挟んで配置されている2つの陽極側外部接続電極E1,E1間は送り配線62により電気的に接続されている。
【0067】
ところで、表ケース50および裏板60は、面状発光装置Aを保護し且つ放熱性を高める観点から、プラスチックに比べて熱伝導率の高い金属(例えば、Al、Cuなど)により形成してあり、有機EL素子2と表ケース50とはガラス基板からなる透明基板1によって電気的に絶縁されている。また、放熱材5としては、例えば、フィラーを高充填したエポキシ樹脂シート(例えば、溶融シリカを高充填したエポキシ樹脂シートからなる有機グリーンシート)や、セラミックシート、グラファイトシート、放熱用ゴムシートなどの熱伝導性および電気絶縁性を有するものを適宜採用すればよく、有機EL素子2と裏板60とが放熱材5によって熱結合される一方で電気的に絶縁される。なお、表ケース50の収納凹所の深さ寸法は、面状発光装置Aの厚み寸法と放熱材5の厚み寸法と裏板60の厚み寸法との合計厚み寸法と同じ値に設定してある。
【0068】
また、本実施形態の面状発光装置Aは、上述のように金属製の表ケース50と金属製の裏板60とで構成される金属部材である器具本体を備えた照明器具の光源として用いることを想定している。また、表ケース50は、上記収納凹所が矩形状に開口されており、面状発光装置Aの平面サイズのばらつきを考慮して上記収納凹所の開口サイズを面状発光装置Aの平面サイズよりもやや大きく設定してあるが、面状発光装置Aの位置ずれなどにより表ケース50の周壁52と面状発光装置Aの透明基板1とが接触する場合がある。そこで、本実施形態の面状発光装置Aでは、照明器具において、陽極側外部接続電極E1および陰極側外部接続電極E2と器具本体の一部を構成する表ケース50との間の沿面距離(電気的絶縁距離)の要求(例えば、0.2mm以上)を満足できるように、透明基板1の周縁と陽極側外部接続電極E1および陰極側外部接続電極E2と透明基板1の周縁との距離を設定してある(ここでは、0.2mm)。しかして、金属により形成された表ケース50と面状発光装置Aの側縁(透明基板の側縁)との間に電気絶縁用の絶縁部材を設ける必要がなく、低コスト化が可能となる。
【0069】
ところで、図1に示した構成の面状発光装置Aの発光部20の大面積化を図る場合には、陽極側外部接続電極E1間の距離の増大による輝度ばらつきの増大を抑制するために、例えば、図15に示すように、陽極側外部接続電極E1および陰極側外部接続電極E2の数を増やし、陰極給電部25の幅方向の両側に配置される2つの陽極給電部24,24の中心間距離を短くすればよい。なお、図15に示した面状発光装置Aは、発光部20の平面サイズを80mm□に設定してあり、陰極給電部25の幅方向の両側に配置される2つの陽極給電部24,24の中心間距離を30mmに設定してあるが、この値に限らず、30mm〜60mm程度の範囲で適宜設定すればよい。
【0070】
ここにおいて、図15に示した構成の面状発光装置Aにおいて陽極用枠状補助電極26の幅を2mmとした実施例1について要部のシート抵抗分布、要部の輝度分布(電流密度分布)、要部の電位分布のシミュレーション結果を図16(a),(b),(c)それぞれに示す。また、実施例1と略同じ構成で陽極用枠状補助電極26および陽極給電部用補助電極27を設けていない比較例1について同様のシミュレーション結果を図17(a),(b),(c)それぞれに示す。また、実施例1と同じ構成で陽極用枠状補助電極26の幅を1.2mmとした実施例3について同様のシミュレーション結果を図18(a),(b),(c)それぞれに示す。また、実施例1と略同じ構成で陽極用枠状補助電極26を設けていない比較例3について同様のシミュレーション結果を図19(a),(b),(c)それぞれに示す。また、実施例1と略同じ構成で陽極給電部用補助電極27に幅5mmのスリットを設けて透明導電膜たるITO膜からなる陽極給電部24の一部を露出させた実施例3について同様のシミュレーション結果を図20(a),(b),(c)それぞれに示す。また、実施例1と略同じ構成で陽極側外部接続電極E1の数を1個にして陽極側外部接続電極E1と陰極側外部接続電極E2とを透明基板1の上記短手方向における両端部に設けた比較例3について同様のシミュレーション結果を図21(a),(b),(c)それぞれに示す。なお、図16〜図21それぞれの(a)では、平面視における透明基板1の1つの角を原点として透明基板1の長手方向をX軸方向、透明基板1の短手方向をY軸方向、透明基板1の厚み方向をZ軸方向として、XY平面内でのシート抵抗(単位はΩ/□)の面内分布を示してある。また、図16〜図21それぞれの(b)では、上述の図12と同様に電流密度の大きさ(単位はmA/cm)をZ軸方向として電流密度の面内分布を示してあり、(c)では、(a)における面状陽極21および当該面状陽極21に電気的に接続された各部位の電位の大きさ(単位はV)をZ軸方向として電位分布を示してある。
【0071】
上述の実施例1、比較例1、実施例2、比較例2、実施例3、比較例3それぞれの条件をまとめると下記表2のようになり、シミュレーション結果をまとめると下記表3のようになる。なお、表3に関して、Vp(max)は上述の電位分布における最高電位を、Vp(min)は上述の電位分布における最低電位を、ΔVは最高電位Vp(max)と最低電位Vp(min)との電位差を、J(max)は上述の電流密度の面内分布における最高電流密度を、J(min)は上述の電流密度の面内分布における最低電流密度を、J(min)/J(max)は最高電流密度J(max)に対する最低電流密度J(min)の百分率を、それぞれ示している。
【0072】
【表2】

【0073】
【表3】

【0074】
上述の実施例1と比較例1との比較から、陽極用枠状補助電極26および陽極給電部用補助電極27を設けた実施例1では、陽極用枠状補助電極26および陽極給電部用補助電極27を設けていない比較例1に比べて、J(min)/J(max)の値が大きくなっており、電流密度の面内ばらつきが低減され輝度の面内ばらつきが低減されることが分かる。また、実施例1の方が比較例1に比べて、Vp(max)の値が小さくなっており、駆動電圧の低電圧化による省エネルギ化を図れることが分かる。
【0075】
また、上述の実施例1と比較例2との比較から、陽極用枠状補助電極26および陽極給電部用補助電極27を設けた実施例1では、陽極用枠状補助電極26を設けていない比較例2に比べて、電位差ΔVの値が小さくなってJ(min)/J(max)の値が大きくなっており、電流密度の面内ばらつきが低減され輝度の面内ばらつきが低減されることが分かる。要するに、陽極用枠状補助電極26に加えて陽極給電部用補助電極27を設けることにより、輝度の面内ばらつきをより低減できることが分かる。
【0076】
また、上述の実施例1と実施例2との比較から、陽極用枠状補助電極26の幅を2mmとした実施例1と陽極用枠状補助電極26の幅を1.2mmとした実施例2とで、電位差ΔおよびJ(min)/J(max)の値にほとんど差が見られず、輝度むらを低減するうえで陽極用枠状補助電極26を設けることが非常に重要であることが分かる。
【0077】
また、上述の実施例1と実施例3との比較から、陽極給電部用補助電極27により陽極給電部24の表面を完全に覆った実施例1と陽極給電部用補助電極27に幅5mmのスリットを形成して陽極給電部24の表面の一部を露出させた実施例2とで、J(min)/J(max)の値にほとんど差は見られず輝度むらの差もほとんど見られないが、実施例1の方が実施例2に比べて電位差Δが小さくなっており、陽極給電部用補助電極27を設けることが重要であることが分かる。
【0078】
また、上述の実施例1と比較例3との比較から、実施例1と略同じ構成で陽極側外部接続電極E1の数を1個にして陽極側外部接続電極E1と陰極側外部接続電極E2とを透明基板1の上記短手方向における両端部に設けた比較例3では、電位差ΔVについては実施例1とほとんど変わらないが、J(min)/J(max)の値については実施例1に比べて大きくなっているので、陽極側外部接続電極E1を複数設けるようにして、陰極側外部接続電極E2を挟む形で配置することが輝度むらを低減するうえで有効であることが分かる。
【0079】
以上説明した本実施形態の面状発光装置Aによれば、面状陽極21における透明基板1側とは反対側の表面の周部の全周に亘って形成され面状陽極21に電気的に接続された矩形枠状(図示例では、正方形状)の陽極用枠状補助電極26と、陽極用枠状補助電極26に連続一体に形成されて陽極給電部24に積層された陽極給電部用補助電極27とを備えているので、透明導電膜からなる面状陽極21の電位勾配に起因した輝度むらを低減でき、しかも、面状陽極21と面状陰極23との間に有機層22のみが介在する領域により構成される発光部20の平面形状が矩形状(図示例では、正方形状)であって当該矩形状の4辺のうちの所定の平行な2辺(図1、図15の例では、透明基板1の長手方向に沿った2辺)と透明基板1の外周縁との距離が他の平行な2辺(図1、図15の例で、透明基板1の短手方向に沿った2辺)と透明基板1の外周縁との距離に比べて小さくなる矩形状であり、陰極給電部25および陽極給電部24は、平面視において発光部20の上記他の平行な2辺に沿って配置され、且つ、陰極給電部25の幅方向の両側それぞれに陽極給電部24が配置されているので、輝度むらを低減できるとともに、非発光部20の面積を低減できて意匠性を向上できる。しかして、本実施形態の面状発光装置Aを複数個並べて使用する照明器具では、隣り合う発光部20間の距離を小さくでき、見栄えが良くなる。また、本実施形態の面状発光装置Aでは、陰極給電部25の幅方向の両側それぞれに陽極給電部24が配置されていることにより、駆動電圧の低電圧化による省エネルギ化も図れる。
【0080】
なお、透明基板1の平面視形状は矩形状であればよく、長方形状に限らず、正方形状でもよく、この場合は、発光部20の平面形状を長方形状とし、当該長方形状の発光部20における2つの短辺を上記所定の2辺とすればよい。また、透明基板1の平面視形状を長方形状として、発光部20の平面視形状を透明基板1とは非相似の長方形状として、当該長方形状の発光部20における2つの長辺を上記所定の2辺としてもよい。
【0081】
また、本実施形態の面状発光装置Aは、陽極給電部用補助電極27の幅方向の両側縁それぞれと陽極用枠状補助電極26の外周縁との間に面取り部167(図6参照)が形成されているので、当該面取り部167が形成されていない場合に比べて、電界集中を緩和でき、輝度むらを低減できる。また、本実施形態の面状発光装置Aは、上述のように面状陰極23から連続一体に延設され面状陰極23と陰極給電部25とを電気的に接続する引出配線23bを備え、当該引出配線23bの幅方向の両側縁それぞれと面状陰極23の外周縁との間に面取り部135(図9参照)が形成されているので、当該面取り部135が形成されていない場合に比べて、電界集中を緩和でき、輝度むらを低減できる。なお、上述の各面取り部167,135は、平面視直線状のC面取り部となっているが、これに限らず、平面視円弧状のR面取り部でもよい。
【0082】
また、図示していないが、陽極用枠状補助電極26の隣り合う内側縁間に面取り部を形成すれば、陽極用枠状補助電極26のコーナ部での電界集中を緩和でき、局所的に過大な電流が流れて局所的に輝度が高くなるのを防止することができ、輝度むらを低減できるとともに焼き付きや短寿命化を防止できる。同様に、陽極用枠状補助電極の隣り合う外側縁間に面取り部を形成すれば、陽極用枠状補助電極26のコーナ部での電界集中を緩和でき、局所的に過大な電流が流れるのを防止することができ、輝度むらを低減できるとともに短寿命化を防止できる。なお、陽極用枠状補助電極26に形成する面取り部も例えばC面取り部やR面取り部でよい。
【0083】
(実施形態2)
図22に示す本実施形態の面状発光装置Aの基本構成は実施形態1と略同じであり、透明基板1の平面サイズを図15に示した面状発光装置Aにおける透明基板1の略4倍の大きさとして、透明基板1上に4つの有機EL素子2を2次元アレイ状に配列してある点が相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
本実施形態の面状発光装置Aでは、実施形態1の面状発光装置Aに比べて、面状発光装置Aの大面積化を図れ(1枚の透明基板1当たりの発光部20の面積の増大を図れ)、しかも、図22の上下方向において隣り合う有機EL素子2の発光部20間の距離を短くできるから、隣接する発光部20間の非発光部を小さくでき、意匠性を向上できる。
【符号の説明】
【0085】
1 透明基板
2 有機EL素子
3 封止基材
4 封止部
20 発光部
21 面状陽極
22 有機層
23 面状陰極
24 陽極給電部
25 陰極給電部
26 陽極用枠状補助電極
27 陽極給電部用補助電極
28 陰極給電部用補助電極
29 絶縁膜
A 面状発光装置
E1 陽極側外部接続電極
E2 陰極側外部接続電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形状の透明基板と、透明基板の一表面側に形成された有機EL素子とを備え、有機EL素子は、透明基板の前記一表面側に形成された透明導電膜からなる平面視矩形状の面状陽極と、面状陽極における透明基板側とは反対側に形成され少なくとも発光層を含む平面視矩形状の有機層と、有機層における面状陽極側とは反対側に形成され面状陽極に対向した金属膜からなる平面視矩形状の面状陰極と、透明基板の前記一表面側に形成され面状陽極に電気的に接続された陽極給電部と、透明基板の前記一表面側に形成され面状陰極に電気的に接続された陰極給電部と、面状陽極における透明基板側とは反対側の表面の周部の全周に亘って形成され面状陽極に電気的に接続された矩形枠状の陽極用枠状補助電極と、陽極用枠状補助電極に連続一体に形成されて陽極給電部に積層された陽極給電部用補助電極とを備え、面状陽極と面状陰極との間に有機層のみが介在する領域により構成される発光部の平面形状が矩形状であって当該矩形状の4辺のうちの所定の平行な2辺と透明基板の外周縁との距離が他の平行な2辺と透明基板の外周縁との距離に比べて小さくなる矩形状であり、陰極給電部および陽極給電部は、平面視において発光部の前記他の平行な2辺に沿って配置され、且つ、陰極給電部の幅方向の両側それぞれに陽極給電部が配置されてなることを特徴とする面状発光装置。
【請求項2】
前記陰極給電部に積層され前記陰極給電部に電気的に接続された陰極給電部用補助電極を備えること特徴とする請求項1記載の面状発光装置。
【請求項3】
前記陽極給電部と前記陰極給電部とが同一材料により同一厚さで形成されるとともに、前記陽極給電部用補助電極と前記陰極給電部用補助電極とが同一材料により同一厚さで形成され、前記陽極給電部と前記陽極給電部用補助電極とで構成される陽極側外部接続電極の幅の合計寸法と、前記陰極給電部と前記陰極給電部用補助電極とで構成される陰極側外部接続電極の幅の合計寸法とが、同じ値に設定されてなることを特徴とする請求項2記載の面状発光装置。
【請求項4】
前記陽極給電部用補助電極の幅方向の両側縁それぞれと前記陽極用枠状補助電極の外周縁との間に面取り部が形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の面状発光装置。
【請求項5】
前記面状陰極から連続一体に延設され前記面状陰極と前記陰極給電部とを電気的に接続する引出配線を備え、当該引出配線の幅方向の両側縁それぞれと前記面状陰極の外周縁との間に面取り部が形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の面状発光装置。
【請求項6】
前記陽極用枠状補助電極の隣り合う内側縁間に面取り部が形成されてなることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の面状発光装置。
【請求項7】
前記有機EL素子の前記発光部を覆う形で前記透明基板の前記一表面側に封止材料からなる非導電性接着剤により固着された封止基材を備え、当該封止基材は、金属箔からなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の面状発光装置。
【請求項8】
前記金属箔における前記透明基板側の表面と側縁との間に面取り部が形成されてなることを特徴とする請求項7記載の面状発光装置。
【請求項9】
前記封止材料は、粒径が20μm以上の球状のフィラーを含有していることを特徴とする請求項7または請求項8記載の面状発光装置。
【請求項10】
前記金属箔における前記透明基板側とは反対の表面側が黒色酸化処理されてなることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の面状発光装置。
【請求項11】
前記金属箔における前記透明基板側とは反対の表面側に前記金属箔に比べて放射率の高い材料からなる熱放射層が被着されてなることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか1項に記載の面状発光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2010−198980(P2010−198980A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44274(P2009−44274)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】