説明

面発光装置

【課題】 光源からの光を効果的に用いるとともに高輝度を維持しつつ面状発光部の薄厚化を実現可能な面発光装置を得る。
【解決手段】 光源と導光体とを備えた特定の面発光装置を得る。導光体は、光源からの光を導入する光導入面を備える光導入部と、一方面側に光拡散面を有する面状発光部と、光導入部と面状発光部の間に介在して光導入部からの光を受け取るとともに該光を面状発光部に伝送する光伝送部とが一体となっており、光導入部は、その厚さが光導入面側から光伝送部側に向かって薄くなる部分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面発光装置は、様々な物品に組み込まれて様々な用途で使用される。例えば、面発光装置は、液晶表示装置の液晶表示パネルに組み付けられて、液晶表示パネルのバックライトとしての用途で使用される。このような面発光装置には、薄型化の要請が強くなってきている。
【0003】
例えば、携帯機器に搭載される液晶表示装置についてみると、携帯機器の薄型軽量化の要請に伴って液晶表示装置の薄型化が要請され、液晶表示パネルの薄型化も要請されるようになり、特に、液晶表示パネルの薄型化の要請に応えるためにバックライトの薄型化も強く要請されている。
【0004】
このような薄型化の要請に応えるバックライトとして、いわゆるサイドライト型のバックライトが提案されている。サイドライト型のバックライト110は、図13に示すとおり、光拡散面101を有して面状発光部102を構成する導光板103と、導光板103の側縁近傍位置に隣接して配置される光源104とからなり、導光板103には、光源104からの光を導光板103の側縁部から導入し、導入された光を光拡散面101に向けて反射させる反射面105が備えられる。このとき光源104には、高輝度であることが通常求められ、発光ダイオードや冷陰極管等が発光体に用いられることが多い。そして、光源104の高輝度化には大きな発光面積を確保して光量を確保することが必要となるため、光源104の厚みが必然的に大きくなる。上記したようなサイドライト型のバックライトでは、光源104が導光板103に隣接しているため、光源104自体に厚みがあると、液晶表示パネル111にバックライト110を取り付ける液晶表示装置112について、光源104を収納可能な程度に厚みが確保される必要がある。こうしたことから、従来のサイドライト型のバックライト110では、液晶表示装置112の厚みを十分に薄くすることが困難であるとされてきた。
【0005】
そこで、面表示装置における面状発光部を構成する導光板と、光源とを離間して配置させる技術が提案されている(特許文献1,2等)。
【0006】
特許文献1には、表示装置が開示されている。この表示装置は、導光板から離れた位置にある光源からの光を、光伝送板を通して導光板に導くように構成されている。この表示装置は、導光板近傍での感電やショートによる表示装置の故障を回避し、さらには表示装置のメンテナンス性を向上させるためのものである。
【0007】
特許文献2には、面状照明装置が開示されている。この面状照明装置は、光を拡散させる面状部を有する導光板から離れた位置にレーザー光源を配置するとともに、レーザー光源からの光を伝送する光ファイバーを導光板の面状部とは逆面側に配置しており、光ファイバーから光を取り出す構造体を光ファイバーと導光板の間に設けているものである。面状照明装置では、光ファイバーにて導光板まで伝送されたレーザー光が構造体より取り出され、取り出されたレーザー光が導光板の面状部から出射して、導光板が面発光する。
【0008】
特許文献1,2に記載された発明では、光源が導光板から離れて配置されるので、液晶表示パネルなどの対象物において、導光板を取り付ける部分の厚みが光源の厚みに依存して厚くなってしまう虞が、抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−275914号公報
【特許文献2】特開2009−49008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、面状発光部の厚みを薄くすると、光伝送板から光が導光板に十分に伝播されなくなり、光源からの光を効率的に使用できなくなる虞がある。特許文献2では、光が導光板に効果的に取り込まれるようにするため、光を伝送する光ファイバーが導光板の面状部とは逆面側に配置される。そして、面状発光部は、光ファイバーと構造体と導光板を重ね合わせた構造をなすことになるため、面状発光部を薄厚にすることは困難であるばかりか、面状発光部の厚みが、従来のサイドライト型のバックライトよりもかえって厚くなる虞すら生じてしまう。このように、特許文献1,2に記載された技術では、光源からの光を効率的に利用しながら面状発光部を薄型化することができない。
【0011】
本発明は、光源からの光を効率的に用いるとともに高輝度を維持しつつ面状発光部の薄厚化を実現可能な面発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(1)光源と導光体とを備え、
導光体は、光源からの光を導入する光導入面を備える光導入部と、一方面側に光拡散面を有する面状発光部と、光導入部と面状発光部の間に介在して光導入部からの光を受け取るとともに該光を面状発光部に伝送する光伝送部とが一体となっており、
光導入部は、その厚さが光導入面側から光伝送部側に向かって薄くなる部分を有する、ことを特徴とする面発光装置、
(2)光源からの光が光導入面から光拡散面まで導光体内部を伝播することを特徴とする、上記(1)に記載の面発光装置、
(3)導光体は、光伝送部が光導入部と面状発光部の少なくともいずれか一方に接合する接合部を有している、ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の面発光装置、
(4)導光体は、光導入部と光伝送部と面状発光部とを同種の樹脂材料にて構成されてなる、上記(1)から(3)のいずれかに記載の面発光装置、
(5)導光体は、光導入部と光伝送部と面状発光部とを同種の樹脂材料にて構成されてなり、且つ、光導入部と面状発光部の少なくともいずれか一方と光伝送部との間に接着剤層を有しており、
接着剤層を構成する接着剤の屈折率をNa、樹脂材料の屈折率をNbとした場合に、Na/Nbが0.85以上1.15以下である、上記(1)から(4)のいずれかに記載の面発光装置、
(6)光導入部は、光導入面側端面位置の厚みに対する、光導入面とは逆側端面位置の厚みの比率が0.01以上0.5以下である、上記(1)から5のいずれかに記載の面発光装置、
(7)面状発光部は、光伝送部から伝送された光を反射して光拡散面に向かわせる反射構造を、光拡散面を有する面と逆面側に備える、上記(1)から(6)のいずれかに記載の面発光装置、
(8)面状発光部は、光拡散面から拡散された光を面状発光部の正面方向に集光する集光構造を光拡散面側に設けてなる、上記(1)から(7)のいずれかに記載の面発光装置、
(9)面状発光部は、可撓性を有するフィルム材からなる、上記(1)から(8)のいずれかに記載の面発光装置、
(10)光伝送部は、可撓性を有するフィルム材からなる、上記(1)から(9)のいずれかに記載の面発光装置、
(11)面状発光部を複数備える、上記(1)から(10)のいずれかに記載の面発光装置、
(12)液晶表示装置またはサインボードのバックライトとして用いられる、上記(1)から(11)のいずれかに記載の面発光装置、
(13)環境照明装置として用いられる、上記(1)から(11)のいずれかに記載の面発光装置、を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光源からの光を効果的に用いるとともに高輝度を維持しつつ面状発光部の薄厚化を実現可能な面発光装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(A)本発明の面発光装置の一実施例を模式的に示す平面模式図である。(B)本発明の面発光装置の一実施例を模式的に示す側面模式図である。(C)本発明の面発光装置の導光体を模式的に示す正面模式図である
【図2】(A)本発明の面発光装置の他の実施例を模式的に示す平面模式図である。(B)本発明の面発光装置の導光体についての他の実施例を模式的に示す平面模式図である。
【図3】(A)本発明の面発光装置において導光体に反射構造を設けた構造を模式的に示す部分側面模式図である。(B)図3(A)における領域Xの部分拡大図である。
【図4】(A)集光構造の一実施例を示す部分斜視部である。(B)集光構造の一実施例を示す部分斜視部である。(C)集光構造の一実施例を示す部分斜視部である。(D)集光構造の一実施例を示す部分斜視部である。(E)集光構造の一実施例を示す部分斜視部である。
【図5】本発明の面発光装置において導光体に偏向構造を設けた構造を模式的に示す部分断面図である。
【図6】(A)本発明の面発光装置の製造工程を模式的に示す工程断面図である。(B)本発明の面発光装置の製造工程を模式的に示す工程断面図である。(C)本発明の面発光装置の製造工程を模式的に示す工程断面図である。
【図7】本発明の面発光装置の他の一実施例における導光体を模式的に示す平面模式図である。
【図8】本発明の面発光装置の他の一実施例を模式的に示す側面模式図である。
【図9】本発明の面発光装置を搭載した携帯機器の例を示す斜視模式図である。
【図10】本発明の面発光装置を搭載したサインボードの例を示す斜視模式図である。
【図11】本発明の面発光装置を搭載した独立型照明装置の例を示す斜視模式図である。
【図12】(A)本発明の面発光装置を搭載した照明装置の例を示す斜視模式図である。(B)図12(A)における領域Yの一実施例を示す部分拡大図である
【図13】従来のサイドライト型のバックライトを取り付けた液晶表示装置を示す概略側面図である。
【図14】実施例5に使用した光源の構成を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[面発光装置1の構成]
本発明の面発光装置1は、図1(A)から(C)に示すように、光源2と導光体3を備える。
【0016】
(光源2)
光源2は、導光体3を構成する光導入部4の光導入面7に隣接して配置される。光源2は、一般的な照明装置の光源として使用可能なものであれば、特に限定されない。光源2としては、例えば、冷陰極管、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)など、各種の発光体が適用可能である。光源2を構成する発光体は、省エネルギー性、色純度の高さの点からは、発光ダイオード、レーザーダイオードが好ましく用いられる。光源2は、さらにこれらの発光体を、単数用いて構成されてよいし、複数個用いて構成されてもよい。また、光源2が発光体を複数個用いて構成される場合、光源2は、単一種の発光体で構成されてもよいし、複数種の発光体を組み合わせて構成されてもよい。光源2を構成する発光体の数や組み合わせは、後述の面状発光部5の条件、例えば面状発光部5の光拡散面8の面積、面状発光部5に要請される輝度、色度等に応じて適宜選択される。
【0017】
光源2の厚みは、面発光装置1の用途に応じて適宜選択可能であるが、一般に100μm以上10mm以下の範囲にあることが多い。具体的に、光源2が液晶表示装置のバックライト用の光源である場合には、面状発光部5に対する高輝度の要請に応じて光源2の発光面の面積を確保する必要があり、さらに光導入面7に向かい合う光源2の端面から光が発せられる必要があることから、光源2の厚み(図1においてU)がある程度確保される必要があり、具体的には、光源2の厚みは1.5mmから2.5mm程度であることが多く、なかでも2mm程度であることが多い。
【0018】
(導光体3)
導光体3は、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6とを一体にしてなる構造を有して形成されている。
【0019】
本明細書において、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6とから一体的に形成されるとは、物理的に光導入部4と光伝送部6と面状発光部5とが連結固定されていることを示している。したがって、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6とから一体的に形成される場合には、光伝送部6が光導入部4と面状発光部5に接合して接合部を形成して一体的に形成されている場合、光伝送部6を光導入部4と面状発光部5に接合せずに光導入部4と光伝送部5と面状発光部6とが一体をなしている場合のいずれの場合も含まれる。
【0020】
導光体3において、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6が一体的に形成されて、光が光導入面7から光伝送部6を通って光拡散面8に達するように構成されておれば、光導入部4と面状発光部5に対する光伝送部6の接合位置は特に限定されるものではない。ただし、光伝送部6よりも面状発光部5が幅広である場合、平面視上、面状発光部5が、光伝送部6から伝播される光の拡がり角(°)未満で拡がるような面をなして構成されていることが好ましく、その点では、図1や図2(A)に示すように面状発光部5の側辺に光伝送部6を接合しているよりも、図2(B)に示すように面状発光部5の角位置に光伝送部6を接合していることが好ましい。この場合、光伝送部6から面状発光部5に伝播する光が面状発光部5の全面に効率的にいきわたるようになる。
【0021】
(光導入部4)
光導入部4は、光源2からの光を導入する光導入面7を備える。光導入部4は、その厚さが光導入面7側から光伝送部6側に向かって薄くなる部分を有して構成されており、図1の例では光導入面7から光伝送部6に向かって漸次薄厚になるように形成されている。
【0022】
光導入部4は、光導入面7側端面位置(X1)の厚み(W1)に対する、光導入面7側端面とは逆側端面の位置(X2)での厚み(W2)の比率(厚み比)(W2/W1)が、0.01以上0.5以下であるように形成されることが好ましい。厚み比が0.01未満であると、導入光の漏れ光量を抑えつつ光導入面7から光伝送部6に向かって漸次薄厚にするために、光導入部4の設計上、位置X1と位置X2との間の距離(D)を著しく長くする必要が生じてしまい、光導入部4を通る光の光路長が長くなるうえ、光導入部4を実装することが困難になる虞もある。厚み比が0.5を超えると、光導入部4で導入光の光束を十分に絞ることができず、光伝送部6の厚みを確保する必要を生じ、光導入部4のみならず光伝送部6を実装することが困難になる虞もある。
【0023】
光導入部4は、導入光の漏れ光量を抑える効果を確保する点で、D/W1の値が1以上50以下であることが好ましい。
【0024】
光導入部4は、適宜のパターンで光導入面7から光伝送部6に向かって薄厚になるように設定することが可能であり、例えば、光導入面7から光伝送部6に向かって光導入部4の厚みが一定の割合で薄厚になるように形成されてもよいし、光導入部4の厚みの変化量が光伝送部6に向かって徐々に小さくなるように形成されていてもよく、光導入部4の厚みの変化量が、光導入面7から、光伝送部6に向かった所定の位置まで一旦大きくなり、さらに所定の位置から光伝送部6に向かって徐々に小さくなるようにシグモイドカーブを描くように形成されていてもよい。
【0025】
光導入部4は、その厚みが光導入面7から光伝送部6に向かって徐々に薄くなるように構成されていることで、光導入面4に導入された光が光導入部4内で全反射を繰り返しながら光導入面4の位置の厚みよりも薄厚な光伝送部6へと向かうようにすることができるようになり、光源2から導入された光束が光導入部4から外部へ漏れてしまうことを抑制しつつ光束を徐々に光導入部4の厚み方向に絞り込むことができる。
【0026】
光導入部4は、光導入面から光伝送部6に向かって、漸次、光導入部4の幅を狭めた構成がさらに備えられてもよい(図2(A))。この場合、光源2から導入された光束は、光伝送部6に向かうにつれて徐々に光導入部4の幅方向(光の伝播方向に対して垂直な方向)について絞り込まれる。また、光導入部4が光導入面7から光伝送部6に向かって先細な形状に形成されることとなり、光導入部4の先細な端部に接合される光伝送部6についてもその厚みおよび幅を小さくすることができる。また、面発光装置1を液晶表示装置等の対象物に取り付ける際に、さらに可撓性を有するフィルム材などの部材で光伝送部6を形成しておれば、光伝送部6の取り回しの自由度を大きくすることができる。
【0027】
光導入部4の光導入面7側のサイズと形状は、光源2に用いられるLEDなどの発光体の数やサイズに応じて適宜設定される。光導入部4の光導入面7は、光源2を構成する発光体の発光面と符合するもしくは発光面よりも大きいように形成されることが、発光体から出射された光の利用効率の点から好ましい。光導入部4と光伝送部6との境界位置側における光導入部4のサイズと形状は、光伝送部6のサイズや形状に対応して適宜設定されており、好ましくは光伝送部6のサイズや形状に符合するように設定される。
【0028】
なお、図1の例では、光導入部4が全体的に漸次薄厚となるように構成されているが、これに限定されず、光導入部4は、漸次薄厚となるように構成されている部分の前後に、厚みの均一な部分を延設形成されていてもよい。この場合にも、光導入部4は、光源2から導入された光束が光導入面7から光伝送部6に向かって徐々に絞り込まれる。
【0029】
光導入部4は、光を所定方向に伝播可能な材料から構成され、具体的に後述の面状発光部5を構成する導光シート9と同様の透明樹脂から構成できる。光導入部4は、公知の成形方法を適宜用いて、透明樹脂を所定形状に成形することで得ることができる。
【0030】
(面状発光部5)
面状発光部5は、一方面側に光拡散面8を有してなる。このとき光拡散面8は、面状発光部5の一方面全面に形成されていても、部分的に形成されていてもよい。面状発光部5は、シート状に形成されており、また、その平面視上の輪郭形状については特に限定されず、円形、矩形、多角形状など適宜設定される。
【0031】
面状発光部5は、その厚みを特に限定されないが、光拡散面8に均一な輝度分布を得ることが可能な範囲で、可能な限りその厚みを薄く形成され、すなわちフィルム状に形成されていることが好ましい。面状発光部5の厚みは、3mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
面状発光部5は、導光性を有する導光シート9から形成される。導光シート9は、樹脂材料から形成できる。樹脂材料としては、400nmから700nmにおける可視光領域における透過率が高いものが好ましく用いられ、導光シートについて可視光領域における透過率は、導光性により優れる点で、90%/μm以上であることが好ましく、95%/μm以上であることがより好ましい。ここに、透過率は、測定対象物に入射した光の量(入射光量)とその測定対象物を通り抜けた光の量(透過光量)の比(透過光量/入射光量)を測定対象物の単位厚みあたりの値で表示した数値(%/μm)を示す。透過率は、例えば、大塚電子製のRETS−1250AV等を用いて具体的に測定可能である。
【0033】
面状発光部5を構成する導光シート9は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ノルボルネン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などの透明樹脂をシート状に成形することで得られる。このとき、透明樹脂の成形方法としては、公知の成形方法を選択可能であり、具体的に、溶融押し出し法、溶融延伸法、溶剤キャスト法、フュージョン法、ロール熱延伸法、一軸延伸法、二軸延伸法などの方法を用いることができる。
【0034】
面状発光部5は、可撓性有無を特に限定されないが、可撓性を有するフィルム材を導光シート9として用いて形成されていることが好ましい。面状発光部5を構成する導光シート9が、可撓性を有するフィルム材から形成されていていると、面発光装置1を取り付けようとする対象物の面が曲面形状を有する場合に、その曲面形状に沿うように面状発光部5を取り付けることができる。この場合、導光シート9の厚みは、面状発光部5に要請される可撓性の程度に応じて適宜選択される。
【0035】
(反射構造10)
面状発光部5は、図3(A)(B)に示すように、光伝送部6から伝送された光を反射して光拡散面8に向かわせる反射構造10を、光拡散面8の逆面(以下、単に、裏面という)側に備えていてもよい。
【0036】
反射構造10は、面状発光部5の裏面の凹状窪み10aであり、面状発光部5の裏面に多数形成される。個々の凹状窪み10aは、断面円形状、断面V形状、断面U字型など、その形状を特に限定されず、不定形でもよい。また、凹状窪み10aは、面状発光部5の裏面に所定の密度、所定の配置パターンで形成される。このように、凹状窪み10aの形状、凹状窪み10aの密度、配置パターンは、適宜選択可能ではあるが、面状発光部5の光拡散面8全領域にわたり略均一な発光強度が得られるように設定されていることが好ましい。具体的に、図3(A)の例に示すように、面状発光部5の裏面に形成されている多数の凹状窪み10aの形状について、光伝送部6までの距離が近い位置にある凹状窪み10aほどその深さが浅くなり、光伝送部6までの距離が遠い位置にある凹状窪み10aほどその深さが深くなるように形成されていることが好ましい。また、凹状窪み10aの密度と配置パターンについてみると、面状発光部5の裏面において光伝送部6までの距離が近い領域ほど、凹状窪み10aの形成が疎になり(密度が低く)、光伝送部6までの距離が遠い領域ほど、凹状窪み10aの形成が密になる(密度が高い)という配置パターンで、凹状窪みが形成されていることが好ましい。
【0037】
面状発光部5の裏面に反射構造10が設けられることで、光導入部4から光伝送部6内を伝播して面状発光部5に取り込まれた光が反射構造10に当たり、さらに光拡散面8側に向かって反射することとなり、光拡散面8から効率的に反射光が出射されることとなる。
【0038】
反射構造10には、金属面12aが形成されていることが、反射構造10による光の反射効率を高めて光の利用効率を向上することができて好ましい(図3(B))。具体的に、面状発光部5の裏面における少なくとも凹状窪み10aの窪み面上に金属薄膜12が形成されていることが好ましい。金属薄膜12の形成方法は、金属蒸着など周知の方法を適宜選択可能である。金属薄膜12を構成する金属材料としては、アルミニウムなど光の反射効率の高い金属光沢を有する金属が選択される。この場合、面状発光部5を構成する導光シート9と金属薄膜12との界面側に位置する金属薄膜12の金属面12aにて、光が効果的に反射することになる。
【0039】
(反射構造10の形成方法)
反射構造10をなす凹状窪み10aは、面状発光部5の裏面に微細な傷を入れることにより構成することができる。微細な傷を入れる方法としては、微粒子を高圧エアーで面状発光部5の裏面に吹き付けるサンドブラストにより、面状発光部5の裏面を荒らす方法などを適用することができる。
【0040】
凹状窪み10aは、多数の突起を設けた金属ロールなどの凹凸ロールを用いた方法にて形成してもよい。この方法は、次のように実施される。凹状窪み10aの形状、配置パターンに応じて、凹凸ロールのロール面に、突起を、所定形状、所定の配置パターンで予め形成しておく。次に、面状発光部5を形成するためのシート材を、面状発光部5の裏面側となる面を凹凸ロール面に対面させるように配置しつつ、シート材を凹凸ロールに通じる。これにより、面状発光部5の裏面側に凹状窪み10aが形成される。この場合、用いられるシート材は、導光シート単体から形成された導光シートの原反でもよいし、導光シートの一方面に更に樹脂膜を積層した積層材であってもよい。この積層材は、導光シートに紫外線硬化性樹脂材料を塗工して塗工膜を形成しその塗工膜に紫外線を照射して硬化させて硬化膜を形成しておくことで形成可能である。シート材が積層材である場合、硬化膜面に金属ロールなどの凹凸ロールの突起をおしあてるようにして積層材を凹凸ロールに通じることで、硬化膜面上に凹状窪みを形成することができる。なお、このとき、硬化膜と導光シートの屈折率を合わせるように構成することが、硬化膜と導光シートとの界面位置での反射を抑制できて好ましい。
【0041】
(集光構造11)
面状発光部5は、光拡散面8から拡散された光を面状発光部5の所定方向に集光する集光構造11を光拡散面8側に設けていてもよい(図4(A)から(E))。
【0042】
集光構造11は、レンズであり、面発光装置1の面状発光部5の光拡散面8側表面に多数設けられる。レンズの厚みについては、集光効果が弱くなりすぎない程度に厚みを確保しさらに面状発光部5の厚みが厚すぎないようにする観点から、7μm以上700μm以下であることが好ましい。集光構造11は、横並びに隣り合わせて配列配置されるパターンなど所定のパターンで多数配置されて、全体としてレンズアレイを形成している。
【0043】
集光構造11は、図4に示すような、断面三角形状や断面半円形状(いわゆる蒲鉾型)のシリンドリカルレンズ11a、11b、11c(図4(A)(B)(C))、ドーム形状のレンズ11d(図4(D))、四角錐形状のレンズ11e(図4(E))、など適宜選択可能である。断面三角形状のシリンドリカルレンズ11a、11bについては、その断面の三角形の形状を特に限定されず、頂角を突端とする断面二等辺三角形状のシリンドリカルレンズ11aや、突端を頂角とする二等辺三角形以外の断面三角形となるようなシリンドリカルレンズ11bなど適宜選択可能である。
【0044】
集光構造11は、四角錐形状のレンズ11eであることが好ましく、拡散光を効果的に所定方向に集光することができ、面状発光部5の所定方向についての輝度を向上させることができる。集光構造11が、特に、正四角錐体状のレンズ11eであると、拡散光を効果的に正面方向に集光することができる。
【0045】
集光構造11が断面二等辺三角形状のシリンドリカルレンズ11aである場合、頂角α1、底位置の角度(左底角β1、右底角γ1)は適宜設定可能であるが、より効果的な集光を実現するために、頂角α1が30°以上150°以下であり、左底角β1、右底角γ1が、それぞれ75°以上15°以下であることが好ましい。ただし、β1=γ1である。また、シリンドリカルレンズ11aの幅は、10μm〜1000μmであることが好ましい。シリンドリカルレンズ11aの幅は、集光構造11の平面視上、左底角β1に対応する角位置と右底角γ1に対応する角位置との間の距離を示す。
【0046】
集光構造11が、その断面の形状が突端を頂角する二等辺三角形以外の断面三角形状となるようなシリンドリカルレンズ11bである場合、突端位置の角度α2、底位置の角度(左底角β2、右底角γ2)は適宜設定可能であるが、より効果的な集光を実現するために、突端位置の角度αが45°以上80°以下であり、左底角β2、右底角γ2が、それぞれ45°以上10°以下、90°以上45°以下であることが好ましい。ただし、β2、γ2の値は互いに異なる。シリンドリカルレンズ11bとしては、その断面の形状が断面不等辺三角形状となるものや、α2=β2あるいはα2=γ2であるような三角形状のものが挙げられる。また、シリンドリカルレンズ11bの幅は、10μm〜1000μmであることが好ましい。シリンドリカルレンズ11bの幅は、集光構造11の平面視上、左底角β2に対応する角位置と右底角γ2に対応する角位置との間の距離を示す。この場合、面発光装置1は、α2、β2、γ2の値に応じて、光拡散面8からの拡散光を、シリンドリカルレンズ11bの幅方向の拡散について、効果的に特定の方向に集光することができ、面状発光部5の輝度を特定の方向に対して向上させることができることとなり、特定の方向に対する光の指向性が向上する。
【0047】
(集光構造11の形成方法)
集光構造11を面状発光部5の光拡散面8に形成する方法は、次に示すような形成方法1,2などを挙げることができる。
【0048】
(形成方法1)
フィルム材にレンズアレイを形成したレンズフィルム材を準備する。次に、面状発光部5をなす導光シート9の光拡散面8側に、レンズフィルム材を、光学接着剤などを用いて貼り付ける。これにより、面状発光部5に集光構造11を設けることができる。なお、レンズフィルム材に使用するフィルム材は、面状発光部5をなす導光シート9を構成する透明樹脂と同様の樹脂を用いて形成することができる。また、光学接着剤としては、エポキシ化合物など従前より公知のものを適宜選択可能である。
【0049】
(形成方法2)
集光構造11をなすレンズの形状に対応して所定の形状に形成された金型を準備する。面状発光部5の光拡散面8を含む所定領域に紫外線硬化樹脂を塗布して塗布膜を形成するとともに塗布膜面に、先に準備した金型を押し当ててレンズ形状を塗布膜に付型しながら、面状発光部5の裏面側から紫外線を照射する。このとき、塗布膜は、レンズ形状を付与された状態で硬化する。これにより、面状発光部5に集光構造11を設けることができる。なお、紫外線硬化樹脂としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどの多官能アクリレートを用いることができる。
【0050】
なお、面状発光部5に集光構造11を設ける方法としては、上記形成方法1,2のほかにも、例えば、次のような方法が用いられてもよい。面状発光部5をなす導光シート9の表面をレンズ形状に応じて適宜切削加工してもよい。また、透明樹脂を用いて導光シート9を調製する際に、導光シート9の面のうち光拡散面8とされる方の面に、形成方法2で使用した金型を押し当ててレンズ形状に応じた形状を付与してもよい。またさらに導光シート9を調整したのち、事後的に金型を押し当てて賦型しても良い。いずれについても、面状発光部5に集光構造11を設けることができる。
【0051】
(偏向構造13)
面状発光部5は、光拡散面8から拡散される光を所定方向に偏向する偏向構造13を光拡散面8側に設けていてもよい。偏向構造13としては、ホログラムを形成した層構造を挙げることができる。所定の方向に光を偏向させるような回折パターンを記録したホログラム層を、面状発光部5の光拡散面8側に積層することで、偏向構造を光拡散面側に設けることができる。ホログラム層としては、例えば、体積ホログラムを記録した層を挙げることができる。偏向構造13を光拡散面8側に設けることで、特定の方向に対して面状発光部5の輝度を向上させることができることとなり、特定の方向に対する光の指向性が向上する。
【0052】
(光伝送部6)
光伝送部6は、光導入部4と面状発光部5の間に介在している。光伝送部6は、光導入部4からの光を受け取るとともにその光を面状発光部5に伝送するものであり、光を所定方向に伝播可能に構成された光伝送部形成体14から構成される。
【0053】
光伝送部6を構成する光伝送部形成体14は、面状発光部5の用途に使用される導光シート9を構成する樹脂材料と同様の透明樹脂を適宜使用して形成することができる。光伝送部6は、こうした透明樹脂をシート状、フィルム状、棒状など所定の形状に成形することで得られる。このとき、光伝送部形成体14の成形方法としては、導光シート9の形成と同様の方法を適宜選択可能である。なお、光伝送部6が、図1に示すように、シート状やフィルム状に形成される場合、その幅は、適宜選択できるが、面状発光部5の幅より狭いのが通常である。
【0054】
光伝送部6は、可撓性有無を限定されるものではないが、可撓性を有するフィルム材を光伝送部形成体14として用いて形成されていることが好ましい。光伝送部6をなす光伝送部形成体14が、可撓性を有するフィルム材から形成されていていると、面発光装置1を対象物に取り付けるにあたり、光伝送部6を取り回しやすくなり、光伝送部6の両端に連結されている面状発光部5と光導入部4について、対象物に対する面状発光部5と光導入部4の取り付け位置の自由度を向上させることができる。
【0055】
(導光体3の製造)
導光体3は、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6の一体化構造を形成して調製される。このとき、導光体3は、光導入部4と光伝送部6と面状発光部5とを同種の樹脂材料にて構成されていることが好ましい。光導入部4と面状発光部5と光伝送部6が同種の樹脂材料で構成されていれば、これら各部の屈折率を同一にすることができ、光が光導入部4から光伝送部6に伝播する過程、および、光が光伝送部6から面状発光部5に伝播する過程で、反射による光量のロスを小さくすることができ、いわゆる光の界面反射を抑制することができる。
【0056】
導光体3の製造方法としては、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6の一体化構造を形成する方法であれば、特に限定されない。すなわち、面発光装置1は、面状発光部5、光伝送部6、光導入部4からなり、最終的にこれらが一体化された構造をとっておれば、面状発光部5、光伝送部6、光導入部4は製造過程においてそれぞれ別体に構成されて事後的に接合されて製造されてよいし(製造方法1)、一体をなすシート材から面状発光部5、光伝送部6、光導入部4となる部分を形成して製造されてもよい(製造方法2)。
【0057】
(製造方法1について)
導光体3を構成する光導入部4と面状発光部5と光伝送部6は、次のように別々に調製される。
【0058】
面状発光部5は、導光シート9の原反に、必要に応じて反射構造10と集光構造11の何れか、もしくは双方を設け、事後的に所定寸法に裁断することで調製することができる。また、光伝送部6は、面状発光部5と同様に、光伝送部形成体14の原反を所定形状に裁断することで調製することができる。さらに、光導入部4については、光導入部4を構成する材料を用い、その形状に応じた型を形成した金型を用いて金型成型することで成型体として調製することができる。そのほかにも、光導入部4を構成する材料を用い、押し出し成型・切削成型など適宜成型方法を適用して所定形状に成型することで、光導入部4を成型体として調製することができる。
【0059】
次に、光導入部4と面状発光部5の間に光伝送部6を配置し、光源2からの光が光導入面7から光拡散面8まで導光体3内部を伝播するように、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6とを一体化する。これにより導光体3を得ることができる。このとき、光伝送部6は、光の伝播方向一方端側を光導入部4に物理的に接合固定されて接合部を形成しており、他方端側を面状発光部5に物理的に接合固定されて接合部を形成している。光導入部4は、光導入面7を光伝送部6との接合位置に対して逆側に向け、光導入面7から取り込まれる光が光伝送部6に向けて進むように配置される。
【0060】
光導入部4と面状発光部5と光伝送部6の接合方法としては、公知の接合方法を適宜選択可能であり、熱溶融や、接着剤による接着などを用いることができる。熱溶融は、従前より公知のヒートシール機などを用いて実施可能できる。接着について、使用される接着剤としては、エポキシ化合物など従前より公知の光学接着剤を適宜使用することができる。
【0061】
光導入部4と面状発光部5と光伝送部6が接着剤による接着によって接合される場合、光導入部4と面状発光部5に対して接着剤層15を介して光伝送部6が接合されることとなる(図7)。さらに、このとき、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6が同一の樹脂材料から構成される場合にあっては、接着剤層15を構成する接着剤の屈折率をNa、樹脂材料の屈折率をNbとした場合に、Na/Nbが0.85以上1.15以下であることが好ましく、0.90以上1.10以下であることがより好ましく、0.95以上1.05以下であることがさらに好ましく、理想的には1である。Na/Nbが0.85以上1.15以下であると、光導入部4や面状発光部5や光伝送部6と、接着剤層15との間の屈折率差による界面反射による伝播光量のロスが抑制される。
【0062】
ここに、本明細書において、屈折率は、アッベ屈折計を使用し、波長589.3nmの単色光(ナトリウムD線)により測定された値を示す。
【0063】
なお、製造方法1について、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6のそれぞれを別体に構成する場合について説明したが、これに限定されず、光導入部4と光伝送部6、あるいは面状発光部5と光伝送部6について、それぞれ一体的に成形されてもよい。この場合、上記したような公知の接合方法を適宜用いて、光導入部4と面状発光部5のいずれか一方に対して光伝送部6を接続させることになる。
【0064】
(製造方法2について)
光導入部4と面状発光部5と光伝送部6の材料として使用可能な透明樹脂を用いて一定の厚みを有する原反シート材26を調製する。
【0065】
次に、図6(A)に示すように原反シート材26を加熱ローラー27で延伸して、面状発光部5、および光伝送部6の厚みに対応する厚みのシート部(第1シート部26a、第2シート部26b)を構成した後、徐々に加熱ローラー27の押し込み量を漸次減らすことで、漸次、厚みが異なるように構成されたシート部(第3シート部26c)を形成して延伸体を得る(図6(B))。そして、延伸体を適宜形状に裁断することで、第1シート部26a、第2シート部26b、第3シート部26cをそれぞれ、面状発光部5、光伝送部6、光導入部4となし、導光体3を構成することができる(図6(C))。
【0066】
なお、第1シート部について、面状発光部5となる際に光拡散面8とされる方の面(光拡散面予定面)側に、集光構造11を形成してよい。これは、加熱ローラー27の周面のうち第1シート部の光拡散面予定面に対面する領域に、集光構造11の形状に応じた形状に型付してなる賦形ローラーを用いることで、実現できる。この賦形ローラーで原反シート材26を延伸することで、第1シート部の一方面に集光構造11に対応する形状を付型することができる。
【0067】
製造方法2では、原反シート材26を加熱ローラー27で延伸した後に、面状発光部5、光伝送部6、光導入部4の形状に応じた裁断加工が実施されているが、これに限定されず、面状発光部5、光伝送部6、光導入部4の形状に応じて裁断加工した後に、原反シート材26を加熱ローラー27で延伸してもよい。
【0068】
また、第1シート部について、面状発光部5となる際に光拡散面8とされる方とは逆面(光拡散面予定面の逆面)側に、反射構造10を形成してよい。これは、加熱ローラー17の周面のうち第1シート部の光拡散面予定面の逆面に対面する領域に、反射構造10の形状に応じた型を付してなる賦形ローラーを作成し、その賦形ローラーで原反シート材16を延伸することで、実現できる。
【0069】
このような賦形ローラーを用いることで、一回の延伸工程の実施により、原反シート材16の延伸と同時に、集光構造11や反射構造10を付型することができる。
【0070】
[面発光装置1の製造]
面発光装置1は、光源2を導光体3の光導入面7に隣接配置することで得ることができる。この場合、面発光装置1は、光源2と光導入部4との間に空気層が介在して配置されていてもよい。ただし、光源2と光導入部4とが空気層を介して突き合わせて配置されていると、光導入部4と空気との界面で発生する光の界面反射により、光源2から生じる光の利用効率が低下する虞がある。そこで、面発光装置1は、光源2と導光体3とが光学接着剤で接着されて一体化されることが好ましい。この場合、光学接着剤は、公知のものを適宜選択されて使用されてよいが、その屈折率が光導入部4を構成する材料の屈折率に揃えられたものであることが好ましい。光学接着剤の屈折率と光導入部4を構成する材料の屈折率とが揃っていると、界面反射の虞を低減することができる。
【0071】
[面発光装置1における光の伝播]
面発光装置1では、光源2から出た光は光導入面7から光拡散面8まで導光体3内部を伝播する。ここに、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6が一体的に形成されるので、光導入面4から光拡散面8まで光路において、その光路全てで空気界面を介することなく連続的に導光体3内部を伝播することとなる。このため、光導入面4を通過した後に光が空気界面で反射する状況が生じることが抑制され、界面反射による光量ロスが抑えられ、光の利用効率を高めることができる。
【0072】
[面発光装置1の他の形態]
上記に説明した面発光装置1では、導光体3に面状発光部5が1つ形成されている場合について説明したが、面発光装置1はこれに限定されず、面状発光部5を導光体3に複数備えるものであってもよい。
【0073】
すなわち、面発光装置1は、例えば、図8に示すように、面状発光部5を複数備える(面状発光部5a、5b)とともに、面状発光部5ごとに光導入部4と面状発光部5の間に光伝送部6が介在して(図8において光伝送部6a、6b)、光導入部4内を伝播する光が個々の光伝送部6a、6bで受け取られるように光導入部4と光伝送部6と面状発光部5が一体的に形成されて導光体3をなしているものであってもよい。
【0074】
この場合、導光体3には、光導入部4と光伝送部6の接続部分にて、光路の分岐構造が形成されている。面発光装置1では、光導入部4内を伝播する光束が分岐構造によって分かれて個々の光伝送部6で受け取られる。
【0075】
したがって面発光装置1は複数の面状発光部5を備えて構成される場合、1つの光源2からの光を複数の面状発光部5(面状発光部5a、5b)に導光することが可能となる。このとき光源2の設置部位が一箇所で済むことから、光源2の冷却を一箇所で集中して行えばよくなり、光源2の冷却効率を高めることが可能となる。また1つの光源2について点灯のON・OFF制御を行えばよいから点灯制御のための電気回路も簡略化でき、面発光装置1は省エネルギーの観点からも有用である。
【0076】
[面発光装置1の使用]
面発光装置1の使用については、次のように、面発光装置1を様々なものに取り付けて用いることができる。
【0077】
(液晶表示装置のバックライト)
面発光装置1は、液晶パネルの液晶画面とは逆面側(裏面側)に取り付けられて液晶表示装置のバックライトとして用いることができる。また、面発光装置1は、携帯機器16の表示部17に搭載される液晶表示装置におけるバックライトとして好ましく用いられる(図9)。この場合、面発光装置1が面状発光部5と光導入部4とが離れて形成されるので、面状発光部5を携帯機器16の表示部17の液晶パネル17aの裏面側に配置し、光導入部4と光源2を携帯機器16の本体18に配置することができる。面状発光部5は薄厚に形成されるので、従来よりも液晶パネル17aの薄厚化の要請に応えた携帯機器16が提供できるようになる。なお、携帯機器16の本体18は、ある程度厚みのある部分にあたるため、光導入部4と光源2が配置されていても、それによって携帯機器16の全厚みが徒に増加してしまうおそれは小さい。
【0078】
また、光導入部4と面状発光部5と光伝送部6の一体化構造が形成されているため、光導入部4から面状発光部6に至る光の伝播経路中で光量ロスが少なく、また、強度的にも優れる。さらに、面発光装置1は面状発光部5に集光構造10を一体的に形成することが可能なものであるので、これまで別体の光学部材として準備されて面状発光部5上に重ね合わされていたレンズフィルム材の機能を、面状発光部5に統合一体化することができ、液晶パネル17aの全厚みを一層低減できる。
【0079】
(サインボードのバックライト)
面発光装置1は、自発光型のサインボードのバックライトとして用いることができる。例えば、サインボードに表示したい内容を、光透過性の着色剤を用いて無色透明フィルムに描き込み表示用フィルムを作製し、これの裏面側に面発光装置1の面状発光部5を配することによって、表示用フィルムに描かれた内容を照らし出し、サインボードとして機能させることができる。また、図10のサインボード19の例に示すように、複数の表示内容を順次描き込んだ表示用フィルム20をロール状に丸めて巻き取り装置21のローラー21aに取り付けてセットしておき、表示用フィルム20の裏面側にバックライトとして面発光装置1を配置して、表示用フィルム20の裏面側から面発光装置1で照らしながら、ローラー21aの回転で順次表示用フィルム20を送り出すことにより、表示用フィルム20に記載された内容の連続的な表示が可能となる。なお、ローラー21aの回転方向、表示用フィルム20の移動方向は、図10中、矢印F1、F2で示す。
【0080】
サインボードは高所に設置される場合が多いが、面発光装置1では、光導入部4と光源2を面状発光部5に対して離間することができるので、面状発光部5を高所に設置しておけば、光伝送部6を低所まで延長して光導入部4と光源2を低所に設置することができる。サインボードのうち高所に設置される部分の重量を軽減できる。
【0081】
(一般の独立型照明装置)
面発光装置1は、また、電気スタンドのような汎用の独立型照明装置22として使用されてよい。独立型照明装置22は、周囲を照らす照明本体23と、照明本体23を支える支柱24と、支柱24を固定する台座25とから構成される。照明本体23に面状発光部5を配置し、支柱24内を通して台座25まで光伝送部6を延設し、光源2と光導入部4を台座25に配置することで、面発光装置1を独立型照明装置22として使用することができる。独立型照明装置22によれば、面状発光部5がほとんど発熱しないため、照明本体が熱をもちにくく、使用者が照明本体23に接近して照明熱によって火傷してしまう危険性が抑制される。
【0082】
(環境照明装置)
面発光装置1は、街路灯、トンネル灯などの環境照明装置として用いることができる。環境照明装置は、建物外で使用されて人または物を照らす照明装置を示すものとする。
【0083】
(屋内照明装置)
面発光装置1は、電車などの車内灯、建物の天井や内壁面などに面状発光部5を取り付けて屋内照明として用いることができる。例えば、天井に光拡散面8を表側に向けつつ面状発光部5を貼り付け、光導入部4と光源2を配置した光源ボックスを床面に設置し、面状発光部5から天井裏を介して壁面裏を伝って床面の光源ボックスまで光伝送部6を延設し、光導入部4に光伝送部6の延設端を接続することが考えられる。このように構成した場合、光源2の寿命に伴う交換作業がすばやく安全に実施可能であり、重量が嵩む光源2を天井部分に設置する必要が無くなるため、天井の強度を低く設定することが可能であり、建物の建設コストを下げ、設計の自由度を高めることができる。
【0084】
(特殊用途)
また、面発光装置1は、足元灯などの特別な位置に設置する照明として使用することが可能である。面発光装置1は、面状発光部5に特定の方向に光を仕向ける集光構造を設けることができるものであるから、足元灯として使用される場合にあっては、面発光装置1は足元位置から少し離れた位置に配置されていたとしても、足元位置に向けて光を集中的に仕向けることが可能となる。
【0085】
また、面発光装置1は、面状発光部5を、可撓性を有するフィルム材で形成することができるものであることから、環境照明装置、屋内照明装置として使用される場合や、特殊用途に使用される場合のいずれについてみても、面状発光部5を取り付ける部分が曲面状であっても容易に面発光装置1の取り付けが可能である。さらに、面状発光部5を取り付ける部分が単調な曲面でなく複雑に波打った面など特殊な面である場合にも面状発光部5をその面に取り付けることができ、従来の照明では取り付けにくかったような場所にも容易に取り付けて使用することが可能となる。
【0086】
また、面発光装置1は、面状発光部5に集光構造11を設けることができ、所定の方向への輝度を高めるレンズを集光構造11とすることができる。このため、面発光装置1を組み合わせて特に照らしたい領域を狙って照らすような照明装置を設計することができる。
【0087】
例えば、図12(A)のように、照明装置50が、トンネル灯である場合についてみると、おおよそトンネル51内の特に照らしたい領域を狙って照らすようにトンネル灯を設計することができる。照明装置50は、面発光装置1a、1b、1cの組み合わせで構成される。面発光装置1(1a)はトンネル51内の天井部付近に設置され、正面方向の輝度を高める集光構造11を多数設けたレンズアレイ31を導光シート9の面(光拡散面側の面)に形成しており、面発光装置1(1b)についてはトンネル51内の側壁部に設置され、下方向の輝度(斜め方向の輝度)を高める集光構造11を多数設けたレンズアレイ31を導光シート9の面に形成しており、面発光装置1(1c)については、トンネル51内の天井部と側壁部をつなぐ曲面部付近に設置され、側壁から天井に向かうにしたがって斜め方向の輝度よりも正面方向の輝度を高めるように集光構造11を多数設けたレンズアレイ31を導光シート9の面に形成している。導光シート9の面上に形成されるレンズアレイ31の一例については、図12(B)に示す。このとき、照明装置50は、面状発光部5により、特に照らしたい領域(図12の領域N)を狙って照らすようになる(図12中、光の照射方向を矢印で示す)。なお、図12では、便宜上、光伝送部6と光導入部4、光源2の記載を省略している。
【0088】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0089】
実施例1.
(導光体の調製)
(導光シートと光伝送部形成体)
導光シートの原反および光伝送部形成体の原反としてノルボルネン樹脂(JSR製「アートン」)(屈折率1.51)からなる透明フィルム(厚み100μm)を準備し、これを面状発光部と光伝送部の形状に対応した金型で打ち抜き、面状発光部と光伝送部とされる予定の部材を調製した。これらの部材は、それぞれ図1(A)の面状発光部5、光伝送部6に対応する輪郭形状に形成された。面状発光部5とされる予定の部材は、厚みが0.1mmで、幅が4cm、長さが7cmの矩形状に形成された導光シートである。光伝送部6とされる予定の部材については、厚みが0.1mmで、幅が2cm、長さが7cmの矩形状に形成された光伝送部形成体である。なお、屈折率は、アッベ屈折計(アタゴ株式会社製「NAR−1T」)を使用し、ナトリウムD線により測定された値である。以下、記載される各屈折率は、すべてこれと同様に測定された値を示す。
【0090】
導光シートの一方面には、予め、サンドブラスト装置(不二製作所製「SGK4」)でサンドブラスト処理を施し、その表面に反射構造をなす多数の凹状窪みを形成した。サンドブラスト処理で、微粒子の吹き付けノズルのピッチを調整することにより、光伝送部との接合部となる位置(接合予定位置)から導光シート内を伝播する光が均一に導光シート内に広がり光拡散面に向けて反射するように、接合予定位置から遠ざかるにつれて、ブラスト度合いが大きくなり、凹状窪みの形成密度が大きくなるようにした。
【0091】
その後、導光シートのサンドブラスト面に、アルミニウムからなる金属面を0.2μmの厚さに製膜した。金属面の形成はスパッタリング法により行われた。このとき、凹状窪みは、金属面を形成したものとなる。こうして、面状発光部となる部材として、導光シートに反射構造を設けた部材(反射構造付導光シート)を調製した。
【0092】
反射構造付導光シートに対して光伝送部形成体を接合した。接合は、反射構造付導光シートと光伝送部形成体との熱溶融圧着により行われた。反射構造付導光シートの側端面に光伝送部形成体の端面を突き合せて、突き合された部分に熱が加えられた。このとき、反射構造付導光シートと光伝送部形成体とが相互に熱融着して一体化された。これにより、導光体の一部分をなす構造体が得られた。
【0093】
(光導入部となる成型体)
光導入部を構成する材料として、導光シートの原反と同一のノルボルネン樹脂を準備した。その一方で、光導入部に対応する形状の金型を作製した。これらの材料と金型を用い、射出成型法により成型体を得た。成型体は、光導入部の光導入面となることを予定された面(光導入面予定面)側の厚みが0.5mm、光導入面予定面とは逆側端面の厚みが0.1mmとなるように光導入面側から逆端側に向かって一定の割合で厚みが減少するような形状に構成された。また、成型体は、幅方向の長さが、2cmに形成された。光導入面予定面と逆側端面との間の長さが、1.0cmに形成された。
【0094】
最後に、成型体の光導入面予定面とは逆側端面側に、反射構造付導光シートと光伝送部形成体とが一体化された構造体の光伝送部形成体の先端を突き合せて熱溶融圧着により一体化された。これにより、成型体、光伝送部形成体、反射構造付導光シートの各部分が、それぞれ光導入部、光伝送部、面状発光部となり、導光体が調製された。
【0095】
(光源の調製)
市販の携帯電話(ソフトバンク社製832P)に実装されている白色LED光源を取り出し、これを光源とした。
【0096】
(面発光装置の調製)
光導入部の光導入面に隣り合わせて光源を配置した。このとき、光源の発光面を光導入面に向けた。さらに光源の発光面と光導入部の光導入面の間を埋めるようにアクリル系の光学接着剤(NTT−AT社製「AT6390」)を流しこみ、光学接着剤に紫外線(360nm、強度10mW/cm)(屈折率1.51)を5分照射し、光源を光導入部に接着して一体化し、面発光装置を得た。
【0097】
(面発光装置の評価)
面発光装置を用いて発光確認を行った。光源のON/OFFを行ったところ、このON/OFFに合わせて面状発光部からの発光がON/OFFされていることが確認された。また、面発光装置を用いて発光する光の分布(発光光分布)を測定したところ、均一な面発光が認められた。発光光分布は、ELDIM社製のEZコントラスト160Rを用いて実施された。
【0098】
実施例2.
導光体として次のように調製されたものを用いたほかは、実施例1と同様にして面発光装置を調製した。
【0099】
(導光体の調製)
原反シート材のとして厚さ0.5mmの熱可塑性樹脂からなる矩形のシート(幅10cm×長さ20cm)を準備した。熱可塑性樹脂として、アクリル樹脂(三菱レイヨン社製「アクリライトLN865」)(メタクリル酸メチルのポリマー)(屈折率1.49)を用いた。この原反シート材を用い、第1シート部と第2シート部の仕上がり膜厚が100μmとなるように、原反シート材の途中(第2シート部と第3シート部の境界位置(第3シート部の基端位置))まで、原反シート材を一対の加熱ローラーの間に通じて延伸処理を施した。延伸処理後の原反シート材の長手方向一方端から3cm内側を起端として他方端側に14cm内側の位置までの部分を第1シート部、第2シート部とし、14cmから16cmまでの部分を第3シート部と設定した。加熱ローラーによる延伸処理には、熱ローラー延伸処理装置(井元製作所製IMC−118C型)が用いられた。第2シート部と第3シート部の境界位置から第3シート部の端縁(延伸端縁)に向かって漸次第3シート部の厚みを増加させ、最終的に延伸端縁部分の厚みが0.5mmとなるようにローラー間の間隙を徐々に大きくして、延伸体を得た。
【0100】
延伸体の片面側全面と、他方面側の第2シート部,第3シート部の全部分に保護フィルムとして40μm厚のPETフィルムを貼り合わせ、実施例1と同様にして片面の第1シート部の一方面にサンドブラスト処理を施し、第1シート面の一方面の表面に凹状窪みを多数形成し、さらに凹状窪みの形成面に金属面を形成した。金属面は、実施例1と同様に、凹状窪みの形成面にアルミニウムをスパッタリングすることにより形成された。
【0101】
引き続き、延伸体の第1シート部、第2シート部、第3シート部が、それぞれ面状発光部、光伝送部、光導入部をなすよう金型で打ち抜き、導光体が調製された。導光体は、図1(A)に示す形状となるような輪郭形状に形成された。面状発光部5に対応する部分は、厚みが0.1mmで、短辺が4cm、長辺が7cmの矩形状、光伝送部6に対応する部分は、厚みが0.1mmで、短辺が2cm、長辺が7cmの矩形状であった。また、光導入部4に対応する部分は、光導入面予定面側の厚みが0.5mm、光導入面予定面とは逆側端面の厚みが0.1mm、幅方向の長さが、2cm、光導入面予定面と逆側端面との間の長さが、2cmに形成された。
【0102】
実施例3.
反射構造付導光シートに換えて、次に示すように調製された反射構造及び集光構造付導光シートを用いたほかは、実施例1と同様にして面状発光装置を調製した。
【0103】
(反射構造及び集光構造付導光シート)
実施例1と同様にして反射構造付導光シートを調製した。さらに、導光シートの非サンドブラスト面側(サンドブラスト処理される面とは逆面側)に、紫外線硬化型樹脂のモノマー(新中村化学社製 ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA))を含有する塗工組成物を塗工し、塗膜を得た。ローラー面に四角錐状の凹凸に対応した形状の型を有する凹凸ローラーを用い、凹凸ローラーで塗膜に向けて連続的に型押しを行い、紫外線を照射することにより、導光シートの非サンドブラスト面側に集光構造が形成された。この集光構造は、四角錐形状のレンズであり、導光シートの非サンドブラスト面側に多数連続的に形成されてレンズアレイをなす。この四角錐形状のレンズは、底辺が90μmの正方形で、その頂角が90°であった。こうして、反射構造及び集光構造付導光シートが調製された。ただし、四角錐形状のレンズの頂角は、レンズの突端から基端に向かう4つの斜辺のうち対向する一対の斜辺を通る平面でレンズを切断した際における切断面の三角形の頂角を示すものとする。
【0104】
(面発光装置の評価)
面発光装置を用いて発光確認を行った。光源のON/OFFを行ったところ、このON/OFFに合わせて面状発光部からの発光がON/OFFされていることが確認された。
【0105】
(面発光装置の正面輝度)
面発光装置を用いて発光する光の分布(発光光分布)を測定したところ、均一な面発光に加え、四角錐状のレンズ構造により正面輝度が高まった発光プロファイルが得られた。
【0106】
実施例4.
導光体として次のように調製されたものを用いたほかは、実施例2と同様にして面発光装置を調製した。
【0107】
(導光体の調製)
実施例2において熱延伸処理に用いた一対の加熱ローラーに変えて、一対の賦型ローラーを準備した。この賦型ローラーは加熱機能付である。この賦型ローラーの一方には、ローラー表面のうち第1シート部の一方面側に対面する領域に、四角錐状の形状を連続的に形成するパターンに対応した凹凸を形成し、賦型ローラーの他方には、第1シート部の他方面側に対面する領域に、断面三角形状の凹状窪みを多数形成するパターンに対応した凹凸を形成している。この賦型ローラーを用い、原反シート材を一対の賦型ローラーの間に通じたほかは実施例2と同様にして、延伸処理が施された。この延伸処理により、原反シート材の延伸体が形成されるとともに、延伸体の第1シート部の一方面側に多数の四角錘状の構造が形成され、他方面側に三角形状の凹状窪みが形成される。さらに、実施例2と同様に、凹状窪みの形成面にアルミニウムをスパッタリングすることにより金属面を形成した。
【0108】
このとき、延伸体の第1シート部、第2シート部、第3シート部が、それぞれ面状発光部、光伝送部、光導入部をなし、導光体が調製された。
【0109】
実施例5.
(導光体の調製)
光導入部となる成型体を、光導入面予定面の厚みを3mmとするように成型した他は、実施例1と同様にして導光体を調製した。
【0110】
(光源の調製)
光源として、赤色光源と緑色光源と青紫色光源の3種の組み合わせを準備した。赤色光源としては、レーザー光源MLXH;640nm、緑色光源としては、レーザー光源MLX−D13−532;532nm、青紫色光源としては、レーザー光源MLX;445nm、(全てキコー技研社製)が準備された。赤色光源と緑色光源と青紫色光源の3種の組み合わせにより、白色光を発光する光源が構成される。
【0111】
光源には、図14に示すような光源装置32を用いた。光源装置32は、内部に赤、緑、青紫色の各色の光源をなすレーザー光源33を設けたハウジング34を備える。各赤、緑、青紫色のレーザー光源33は、それぞれの光軸を調整しつつセッティングされている。ハウジング34には、波長選択性ミラー35からなるビームコンバイナーと、光線束を横断する断面について点状(断面円形)の光線を線状に拡散させるシリンドリカルレンズ36が備えられている。各色のレーザー光源33から出た光はビームコンバイナーでまとめられて白色化され、シリンドリカルレンズ36を通ったのち、縦2.8mm×横18.0mmの大きさで開口形成された光取り出し部37から取り出される。光取出部37には防塵のためのガラス材が取り付けられている。そして、光源は、光取出口37を光導入面と付き合わせ、実施例1と同様に光学接着剤で接合することで取り付けられた。なお、図14中、Lは光線を示す。
【0112】
実施例6.
まず、実施例1と同様にして導光体を調製した。次に、光源として次のように調製されたものを準備した。
【0113】
(光源の調製)
光源として、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)(Optwell Co.Ltd製 SS67−4U001)とミラー(反射率97%)との組み合わせを準備した。
【0114】
(面発光装置の調製)
光導入部の光導入面に隣り合わせてミラーを配置した。ミラー面は光導入面に対して傾斜するように配置さており、VCSELから照射されたレーザー光がミラーで反射しその反射光が光導入面に導入されるように、VCSELとミラーの配置が調整された。なお、VCSELとミラー、光導入面は実施例1と同様に光学接着剤により接合されている。
こうして、面状発光装置を調製した。
【0115】
(面発光装置の評価)
面発光装置を用いて発光確認を行った。光源のON/OFFを行ったところ、このON/OFFに合わせて面状発光部からの発光がON/OFFされていることが確認された。
【0116】
(面発光装置の正面輝度)
面発光装置を用いて発光する光の分布(発光光分布)を測定したところ、均一な面発光が確認された。
【0117】
実施例7.
導光体として次のように調製されたものを用いたほかは、実施例1と同様にして面発光装置を調製した。
【0118】
(導光体の調製)
実施例1と同様にして反射構造付導光シートと光伝送部形成体とが相互に熱融着して一体化された構造体を得た。ただし、実施例7では、この構造体を2つ調製した。
【0119】
実施例1と同様にして光導入部となる成型体を調整し、反射構造付導光シートと光伝送部形成体の一体化された構造体2つを、それぞれこの成型体に対して、それぞれ実施例1と同様の熱溶融圧着し、これらを一体化させた。これにより、導光体が得られた。
【0120】
(面発光装置の評価)
面発光装置を用いて発光確認を行った。光源のON/OFFを行ったところ、このON/OFFに合わせて2つの面状発光部からのいずれの発光についてもON/OFFされていることが確認された。同一光源から発生した光が二つの面状発光部の発光に使用されることが確認される。
【0121】
(面発光装置の正面輝度)
面発光装置を用いて発光する光の分布(発光光分布)を測定したところ、2つの面状発光部のいずれについても均一な面発光が確認された。
【0122】
実施例8.
反射構造付導光シートに換えて、次に示す反射構造及び集光構造付導光シートを用いたほかは、実施例1と同様にして面状発光装置を調製した。
【0123】
(反射構造及び集光構造付導光シート)
まず実施例1と同様にして反射構造付導光シートを調製した。さらに、導光シートの非サンドブラスト面側に、次のように調製されたレンズフィルム材を光学接着剤(住友3M製のOCAテープ:型番8171J)で貼り付け、反射構造及び集光構造付導光シートを得た。
【0124】
(レンズフィルム材の調製)
フィルム材として、ノルボルネン樹脂(JSR社製、商品名:アートン)からなるシートを用いた。このシートに、シリンドリカルレンズの形状に応じた凹凸を形成した金型を押し当てて、シート面にシリンドリカルレンズの形状を付型した。これにより、フィルム材の一方面に断面不等辺三角形状のシリンドリカルレンズを多数配列してなるレンズアレイを付型したレンズフィルム材が準備された。なお、シリンドリカルレンズの突端位置の角度α、底位置の角度(左底角β、右底角γ)はそれぞれ100°、20°、60°、シリンドリカルレンズの幅とした。
【0125】
(面発光装置の評価)
面発光装置を用いて発光確認を行った。光源のON/OFFを行ったところ、このON/OFFに合わせて面状発光部からの発光がON/OFFされていることが確認された。
【0126】
(面発光装置の正面輝度)
面発光装置を用いて発光する光の分布(発光光分布)を測定したところ、均一な面発光に加え、シリンドリカルレンズにより、面状発光部の平面視上、シリンドリカルレンズの突端から右底角に向かう部分の領域よりも突端から左底角に向かう部分の領域のほうが、輝度が高められている発光プロファイルが得られた。
【0127】
実施例9.
反射構造付導光シートに換えて、次に示す反射構造及び偏向構造付導光シートを用いたほかは、実施例1と同様にして面状発光装置を調製した。
【0128】
(反射構造及び偏向構造付導光シート)
まず実施例1と同様にして反射構造付導光シートを調製した。さらに、導光シートの非サンドブラスト面側に、次のようにホログラム層を偏向構造として形成したフィルム材(ホログラムシート)を光学接着剤(住友3M製のOCAテープ:型番8171J)で貼りつけることで、反射構造及び偏向構造付導光シートを得た。
【0129】
(ホログラムシート)
ホログラムシートとして、次に示すように、感光性材料からなりホログラムを記録可能な体積ホログラム記録材層を有するフィルム材を準備し、このフィルム材の体積ホログラム記録材層に透過型体積ホログラムを記録して体積ホログラム層となすことによって、作製された。
【0130】
50μmの厚さを有するフィルム基材としてのルミラーT60(東レ社製の未処理PETフィルムの商品名)上に、次に示す組成の感光性材料を、乾燥後の厚さが13μmとなるように塗布して塗布膜を得て、その後、塗布膜を乾燥して体積ホログラム記録材層となし、ルミラーT60からなるフィルム基材面上に体積ホログラム記録材層を形成してなるホログラム記録用フィルム材を作製した。
【0131】
<感光性材料の組成>
・ポリメチルメタクリレート系樹脂(分子量200,000)…70質量部
・下記一般式においてR=H、R=p−ビフェニルメチリレン基、m=n=1で示される化合物…150質量部
・3,9−ジエチル−3’−カルボキシメチル−2,2’−チアカルボシアニン、ヨウ素塩…0.6質量部
・ジフェニルヨードニウム−トリフルオロメタンスルホネート…6質量部
・1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル…80質量部
・溶媒(n−ブタノール:メチルイソブチルケトン=1:1)…390質量部
【0132】
【化1】

【0133】
上記(化1)に示す一般式中、Rは水素原子又はメチル基、Rはp−ビフェニリルメチリレン基又はフルオレニリデン基、Aはエチレン基又はプロピレン基を示し、m、nは各々1以上であり、m+nは2.0〜8.0の範囲の数である。
【0134】
ホログラム記録用フィルム材に対し、体積ホログラム記録材層へのホログラムの記録には波長514nmのレーザー光を用いた。また、記録にあたり、粗さ1000番、大きさ500mm×500mmのすりガラスを透過型拡散板として用いた。すなわち、この透過型拡散板を、体積ホログラム記録材層に対向するようにして430mm離間して配置しておき、参照光と物体光を体積ホログラム記録材層に入射する際に、透過型拡散板を通った散乱光を物体光として入射することで体積ホログラムを体積ホログラム記録材層に記録してこれを体積ホログラム層となし、ホログラムシートを得た。
【0135】
ホログラムシートは、30°入射光に対して、0°回折であり、中心部にて±30°の拡散角を有していた。なお、この実施例9ではホログラムシートに対して拡散性を持たせているが、拡散性が認められないホログラムシートを偏向構造から排除するものではない。拡散性が認められないホログラムシートは、ホログラムの記録を際に、すりガラスを用いず、物体光、参照光の双方を平行光とすることにより実現できる。
【0136】
(面発光装置の評価)
面発光装置を用いて発光確認を行った。光源のON/OFFを行ったところ、このON/OFFに合わせて面状発光部からの発光がON/OFFされていることが確認された。
【0137】
(面発光装置の正面輝度)
面発光装置を用いて発光する光の分布(発光光分布)を測定したところ、均一な面発光に加え、偏向構造により発光面の法線から30°の方向の輝度が高められた発光プロファイルが得られた。
【符号の説明】
【0138】
1 面発光装置
2 光源
3 導光体
4 光導入部
5 光伝送部
6 面状発光部
7 光導入面
8 光拡散面
9 導光シート
10 反射構造
11 集光構造
12 金属薄膜
12a 金属面
13 偏向構造
14 光伝送部形成体
15 接着剤層
16 携帯機器
17a 携帯機器の液晶パネル
18 携帯機器の本体
19 サインボード
20 表示用フィルム
21 巻き取り装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と導光体とを備え、
導光体は、光源からの光を導入する光導入面を備える光導入部と、一方面側に光拡散面を有する面状発光部と、光導入部と面状発光部の間に介在して光導入部からの光を受け取るとともに該光を面状発光部に伝送する光伝送部とが一体となっており、
光導入部は、その厚さが光導入面側から光伝送部側に向かって薄くなる部分を有する、ことを特徴とする面発光装置。

【請求項2】
光源からの光が光導入面から光拡散面まで導光体内部を伝播することを特徴とする、請求項1に記載の面発光装置。

【請求項3】
導光体は、光伝送部が光導入部と面状発光部の少なくともいずれか一方に接合する接合部を有している、ことを特徴とする請求項1または2に記載の面発光装置。

【請求項4】
導光体は、光導入部と光伝送部と面状発光部とを同種の樹脂材料にて構成されてなる、請求項1から3のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項5】
導光体は、光導入部と光伝送部と面状発光部とを同種の樹脂材料にて構成されてなり、且つ、光導入部と面状発光部の少なくともいずれか一方と光伝送部との間に接着剤層を有しており、
接着剤層を構成する接着剤の屈折率をNa、樹脂材料の屈折率をNbとした場合に、Na/Nbが0.85以上1.15以下である、請求項1から4のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項6】
光導入部は、光導入面側端面位置の厚みに対する、光導入面とは逆側端面位置の厚みの比率が0.01以上0.5以下である、請求項1から5のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項7】
面状発光部は、光伝送部から伝送された光を反射して光拡散面に向かわせる反射構造を、光拡散面を有する面と逆面側に備える、請求項1から6のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項8】
面状発光部は、光拡散面から拡散された光を面状発光部の正面方向に集光する集光構造を光拡散面側に設けてなる、請求項1から7のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項9】
面状発光部は、可撓性を有するフィルム材からなる、請求項1から8のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項10】
光伝送部は、可撓性を有するフィルム材からなる、請求項1から9のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項11】
面状発光部を複数備える、請求項1から10のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項12】
液晶表示装置またはサインボードのバックライトとして用いられる、請求項1から11のいずれかに記載の面発光装置。

【請求項13】
環境照明装置として用いられる、請求項1から11のいずれかに記載の面発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−59612(P2012−59612A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203173(P2010−203173)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】