靱帯再建のための材料および方法
【課題】骨孔内で靱帯グラフトを固定するための方法および装置を改良する。
【解決手段】靱帯グラフトを骨孔内に固定するための方法および装置が提供された。一般に、この方法および装置は、靱帯グラフトを骨孔内部で接着剤を用いて張り付けることを伴う。靱帯グラフトを通して固定装置を孔の軸に対して横方向に挿入して、靱帯グラフトを接着剤と接触した状態に維持することができる。固定装置は、接着剤が、靱帯グラフトが孔内で固定されるように固まったら、取り去ることができる。
【解決手段】靱帯グラフトを骨孔内に固定するための方法および装置が提供された。一般に、この方法および装置は、靱帯グラフトを骨孔内部で接着剤を用いて張り付けることを伴う。靱帯グラフトを通して固定装置を孔の軸に対して横方向に挿入して、靱帯グラフトを接着剤と接触した状態に維持することができる。固定装置は、接着剤が、靱帯グラフトが孔内で固定されるように固まったら、取り去ることができる。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、靱帯グラフトを骨孔(bone tunnels)に張り付けるための方法および装置に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
関節が損傷すると、一般に、靱帯、腱、および、軟部組織が完全に、または、部分的に骨から剥離する。組織の剥離は、多くの過程で、例えば、転倒のような事故、労働関連活動中、体育行事中、または、多くの他の状況および/または活動のいずれか1つにおける過度の努力の結果として生じうる。この種の損傷は、一般に、過度の圧力、すなわち、異常な力が組織にかかった結果として生じる。
【0003】
一般的な用語「捻挫」で普通は呼ばれる部分的な剥離の場合、損傷は、しばしば医療介入を行わずに治癒するもので、患者は休み、治癒過程の間に、損傷部をあまりに激しく動かさないように気をつける。しかし、靱帯または腱が、関連する1つまたは複数の骨におけるその付着部位から完全に剥離した場合、あるいは、靱帯または腱が外傷によって切断された場合、損傷を受けた関節の機能を完全に回復させるために、外科的介入が必要となるであろう。このような腱および靱帯を骨に再び取り付けるために、多数の従来型外科手術がある。
【0004】
このような処置の1つは、ステープル、縫合糸、および、骨ねじのような「従来」の取付装置を使って剥離した組織を再付着させることを必要とする。このような従来の取付装置は、腱グラフトまたは靱帯グラフト(多くの場合、体のいずれかから採取した自己組織から形成されている)を所望の1つまたは複数の骨に取り付けるのにも使用されている。ある処置では、損傷を受けた前十字靱帯(「ACL」)が人の膝の中で置換される。最初に、前十字靱帯が通常付着している位置において脛骨および大腿骨に骨孔が形成される。次に、端部の1つに骨グラフトがついている靱帯グラフトが骨孔に合う大きさに形成される。次に縫合糸が骨グラフトに取り付けられ、そしてその後に、脛骨と大腿骨の骨孔に通される。次に、骨グラフトが縫合糸を使って脛骨孔に引き通され、大腿骨孔内に引き上げられる。これが行われると、靱帯グラフトの靱帯(ligament graft ligament)は、大腿骨孔から後方へ飛び出すように延び、膝関節の内部を端から端まで延び、そして、脛骨孔を通って延びる。靱帯グラフトの靱帯の自由端は、脛骨の前側で脛骨の外部にある。次に、骨ねじが、骨グラフトをきつい締まりばめにより適所にしっかりと固定するように、骨グラフトと大腿骨孔の壁部の間に挿入される。最後に、靱帯グラフトの靱帯が脛骨にしっかりと取り付けられる。
【0005】
別のACL再建処置では、一直線に並んだ大腿骨孔と脛骨孔が最初に人の膝に形成される。靱帯グラフトが取り付けられた骨グラフトが、大腿骨孔の閉じた端部まで孔に通され、ここで、ブロックがアンカーによって適所に固定される。靱帯は、脛骨孔から延び出て、端部がステープル等で脛骨皮質に取り付けられる。あるいは、靱帯の端部は、アンカーまたはインターフェランス・スクリュー(interference screw)によって脛骨孔内に固定されてもよい。軟部組織を骨に取り付けるためのさまざまな種類の靱帯用および/または縫合糸用アンカーも当該技術で周知である。米国特許第4,898,156号、第4,899,743号、第4,968,315号、第5,356,413号、および、第5,372,599号にこのような装置が多数詳細にわたって記載されている。これらの特許はすべて、ジョンソン・アンド・ジョンソン・カンパニー(Johnson & Johnson company)のミテック・サージカル・プロダクツ社(Mitek Surgical Products, Inc.)に譲渡されており、その全部が参照により組み込まれる。
【0006】
骨グラフトを骨孔内に固定する既知の一方法は、「クロスピニング(cross-pinning)」手技によるものであり、この方法では、ピン、ねじ、または、ロッドが、骨グラフトを横切り、これにより、骨孔内の骨グラフトにピンが交差するように、骨孔に対して横向きにして骨に押し込まれる。骨孔内で骨グラフトのクロスピニングを適切に行うために、ドリルガイドが一般に用いられる。ドリルガイドは、横向きの通路が、適切な孔の部分および骨グラフトを横切るように、その横向きの通路を骨内に確実に配置するのに役立つ。
【0007】
クロスピニングは効果的であるが、骨孔内で靱帯グラフトを固定するための方法および装置を改良する必要性が引き続き存在する。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、概して、靱帯グラフトを骨孔内に固定するための方法および装置を提供する。ある典型的な実施形態では、この方法が、骨に第1の孔を開け、靱帯グラフトを少なくとも部分的に第1の孔に挿入することを含むことができる。接着剤が第1の孔に入れられ、固定装置が、靱帯グラフトを通して、孔の軸に対して実質的に横方向に挿入されて、靱帯グラフトを接着剤と接触した状態に維持する。クロスピンは、靱帯グラフトが第1の孔の中で固定されるように接着剤が硬化したら、取り去ることができる。
【0009】
この方法は、さまざまな外科手術で利用されうるが、ある典型的な実施形態では、この方法が前十字靱帯の修復に利用される。よって、靱帯グラフトは、少なくとも部分的に、大腿骨または脛骨に形成された大腿骨孔または脛骨孔に挿入することができ、接着剤が、大腿骨孔または脛骨孔に入れられる。クロスピンのような固定装置は、大腿骨または脛骨に形成され、大腿骨孔または脛骨孔と交差する横孔を通して挿入することができる。いくつかの典型的な実施形態では、横孔がスリーブを含むこともあり、このスリーブは、横孔の中に配置されていて、大腿骨孔または脛骨孔までの通路を画定する。固定装置は、靱帯グラフトの第1端部を大腿骨孔または脛骨孔内で接着剤と接触した状態に保つのに有効である。次に、接着剤が乾いている間に、靱帯グラフトの第2端部に張力をかけ、大腿骨孔または脛骨孔の他方の中に固定することができる。接着剤が硬化したら、固定装置を取り除くことができる。
【0010】
第1の孔は、さまざまな形態を有することができ、また、第1の孔は、一部のみが大腿骨または脛骨を通って延びてもよいし、または、全体が大腿骨または脛骨を通って延びてもよい。ある実施形態では、第1の孔が、その中に形成された端部壁部を含む。横孔は、その端部壁部の近傍で第1の孔と交差することができる。これにより、接着剤を横孔に通して入れ、接着剤が第1の孔の端部壁部の近傍に配置されるようにすることができる。ある典型的な実施形態では、接着剤が入れられる前に、靱帯グラフトが第1の孔の端部壁部から所与の距離離れたところに配置され、接着剤が第1の孔に入れられた後に、端部壁部の方へ、接着剤と接触するように靭帯グラフトが引っ張られる。靱帯グラフトは、オプションとして、靱帯グラフトに取り付けられた縫合糸を用いて引っ張って、第1の孔に通すこともできる。
【0011】
他の実施形態では、靱帯グラフトは第1の孔に直接接着されてもよいし、あるいは、骨グラフトのようなアンカーに連結されてもよい。アンカーが利用される場合、固定装置はアンカーに通して挿入されてもよいし、接着剤は、アンカーの周り、そしてオプションとしてアンカーの中に配置されてもよい。さらに別の実施形態では、接着剤は、最終的に体に吸収されるように、生体吸収性材料から形成されてもよい。あるいは、接着剤は、非吸収性接着剤であってもよい。さらに別の実施形態では、固定装置を接着剤と固定装置の間が接着されないように構成することもできる。例えば、固定装置は、固定装置の上に配置された保護用コーティングを含んでいてもよいし、あるいは、フルオロポリマープラスチック樹脂(fluoropolymer plastic resin)のような保護材料から形成されていてもよい。横孔の内部に配置されたスリーブもまた保護用コーティングを含んでいてもよいし、保護材料から形成されていてもよい。
【0012】
他の実施形態では、骨孔内に靱帯グラフトを固定する方法が提供され、この方法は、骨グラフトにアンカーを連結する段階と、アンカーおよび骨グラフトを骨孔に導入する段階と、接着剤を骨孔に入れて、接着剤がアンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、アンカーを骨孔内部に張り付ける段階とを含む。アンカーはさまざまな形態を有しうるが、ある実施形態では、骨孔に接着された第1部分と、骨グラフトと結合する第2部分とを含む。第1部分は、目穴付きの柱部を含むことが可能で、この目穴は、柱部の末端端部に形成されている。アンカーおよび骨グラフトを骨孔に導入するために、縫合糸を目穴に取り付け、縫合糸に張力をかけて、骨グラフトを骨孔に引っ張り込むことができる。アンカーの第2部分もさまざまな形態を有することができる。例えば、この第2部分は、ねじ部を含むことができ、このねじ部は、第2部分を骨グラフトにねじ込むために第2部分に形成されている。別の実施形態では、第2部分を骨グラフトに縫合糸を使って結合させることが可能である。具体的には、第2部分が対向する腕部を含んでいてもよく、少なくとも1つの縫合糸をその対向する腕部、および、骨グラフトに通すことにより、骨グラフトが対向する腕部に結合されてもよい。
【0013】
さらに別の実施形態では、靱帯グラフトが提供され、この靱帯グラフトは、靱帯がそこから延びている骨グラフトと、骨グラフトに結合された第1部分、および、少なくとも1つの表面特徴部を有する第2部分であって、その表面特徴部が、第2部分を骨孔に接着により結合させるよう、接着剤が入るように構成されている第2部分を有するアンカーとを含む。アンカーの第2部分にある表面特徴部は、例えば、その表面特徴部を貫通する開口部を有する目穴、少なくとも1つの切除部分、または、他の表面特徴部であってもよい。
【0014】
他の態様では、骨孔内に靱帯グラフトを固定する方法が提供され、この方法は、靱帯が取り付けられている骨グラフトを、少なくとも1つの切除部分を含むように改変する段階と、骨グラフトを骨孔に導入する段階と、接着剤を骨孔に入れ、接着剤が骨グラフトの少なくとも一部を囲み、少なくとも1つの切除部分の中へと広がるようにし、これにより、骨グラフトを骨孔内部に張り付ける段階とを含む。骨グラフトは、例えば、複数の溝部を骨グラフトの周囲に、もしくは、骨グラフトに形成する、または、少なくとも1つの貫通孔を骨グラフトに形成することなどにより改変することができる。
【0015】
さらに別の実施形態では、靱帯グラフトを骨孔内に固定する方法が提供され、この方法は、軟部組織靱帯をアンカーに連結する段階と、アンカーを骨孔に導入する段階と、接着剤を骨孔に入れ、接着剤がアンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、アンカーから軟部組織靱帯が延びているアンカーを骨孔内に張り付ける段階とを含む。アンカーは、表面特徴部が形成された第1部分であって、第1部分を骨孔内に結合させるために、接着剤が表面特徴部の間に入る第1部分、および、軟部組織グラフトに結合する結合要素を有する第2部分を含む。結合要素は、例えば、目穴(eyelet)であってもよい。
【0016】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と共に検討すれば、より詳細に理解されるであろう。
【0017】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、靱帯グラフトを骨孔に固定するための方法および装置を提供するものである。本明細書で開示されるさまざまな方法および装置は、いろいろな外科手術に使用されうるが、この方法および装置は、人の膝における前十字靱帯(ACL)を修復するのに特に有用である。ACL修復術では、断裂したACLが靱帯グラフトと置き換えられ、この靱帯グラフトは、脛骨および大腿骨に固定される。用語「靱帯グラフト」は、本明細書で使用する場合、採取された靱帯や腱を含む、自己移植片、同種移植片、および、異種移植片のような天然材料に加えて、合成材料を含むことが意図されている。靱帯グラフトは、グラフトを脛骨および大腿骨に固定するために靱帯グラフトに取り付けられた固定要素を含むこともできる。例えば、靱帯グラフトは、靱帯グラフトの一方または両方の末端端部に取り付けられた骨グラフト、栓子、または他の部材を含んでいてもよい。用語「骨グラフト」は、本明細書で使用される場合、自己移植片、同種移植片、および、異種移植片のような天然材料に加え、合成材料を含むことが意図されている。
【0018】
当業者には分かるであろうが、本明細書で開示されるさまざまな方法および装置は、さまざまな外科手術で使用されうるものであり、靱帯グラフトの具体的な形態は、意図する用途しだいで変わりうるものであり、事実上、当該技術で既知の全ての靱帯グラフトが本明細書で開示される方法で使用されうる。
【0019】
図1から図8は、靱帯グラフトを骨孔に、具体的には、人の膝の大腿骨孔および脛骨孔に固定するための、ある典型的な方法を図示している。一般に、この方法は、骨に孔をあけ、靱帯グラフトを少なくとも部分的にその孔に挿入することを含む。接着剤がこの孔に入れられ、固定装置が、その孔の軸を横切る方向において靱帯グラフトに通され、グラフトを接着剤と接触した状態に維持する。固定装置は、靱帯グラフトが孔内で固定されるように接着剤が硬化したら、取り除くことができる。固定装置を用いて、接着剤が硬化する間、靱帯グラフトを孔内に保持することにより、その靱帯グラフトの反対側端部に張力をかけ、同一または異なる固定手法を用いて固定することできる。この方法は、骨孔を準備し、靱帯グラフトをその骨孔に挿入するための、ある典型的な手順に関連して記載されている。例えば、ある典型的な方法では、靱帯グラフトが、脛骨孔内に張り付けられる前に、大腿骨孔内に張り付けられる。しかしながら、当業者には分かるであろうが、靱帯グラフトは、最初に、または、同時に、脛骨孔内に張り付けられてもよい。これも当業者には分かるであろうが、当該技術で既知のさまざまな他の手順を用いて、骨孔を準備したり、靱帯グラフトをその骨孔に挿入したりしてもよい。
【0020】
まず図1を参照すると、従来の外科手術用器具類および手法を用いて、骨孔を脛骨50および大腿骨60にあけて、脛骨孔52および大腿骨孔62を形成する。脛骨孔52および大腿骨孔62は、脛骨50および大腿骨60を完全に貫通してもよいが、ある典型的な実施形態では、大腿骨ソケット(femoral socket)が形成されるように、大腿骨孔62は、大腿骨60の途中で終端する。オプションとして、縫合用孔64が、大腿骨孔62と長さ方向に一直線に揃うように、大腿骨60の残りの部分を貫通し、より詳細に後述するように、縫合糸がその縫合用孔64を通って、グラフトを孔52、62に引っ張り込めるようにすることもできる。縫合用孔64は、大腿骨孔の末端端部が端部壁部62eを画定するように、好ましくは、大腿骨孔の内径よりも小さい内径を有する。
【0021】
脛骨孔52および大腿骨孔62を準備したら、横孔を大腿骨に形成することができる。横孔は、通路が横孔を通って大腿骨孔62まで形成されるように、好ましくは大腿骨孔62と交差する。この通路は、より詳細に後述するように、接着剤を大腿骨孔62に注入することに用いることができる。図1に示されているように、オプションとしてガイド装置10を使用して、横孔の位置を特定し、合わせることができる。図示されているように、ガイド装置10は、一般に、カニューレ状ガイドロッド14を有するL字状フレーム12であって、そのカニューレ状ガイドロッド14がL字状フレームの一方の端部から延びているL字状フレーム12と、開口部16を有するハウジングであって、その開口部16がハウジングを貫通してハウジングの反対側端部に形成されているハウジングとを含んでいる。カニューレ状ガイドロッド14は、ガイドフレーム12を一定の位置に保持するために、脛骨孔52および大腿骨孔62に挿入することができる。図2に示されているように、スリーブおよびトロカールの組立品70、72をガイドフレーム12にあるハウジングの開口部16に挿入し、スリーブとトロカールがカニューレ状ガイドロッド14に当たるまで、大腿骨の側面に突き入れることができる。横孔66は、このように大腿骨を通り、好ましくは、大腿骨孔の遠位端部壁部62eに実質的に隣接する場所において、大腿骨孔62に入る。当業者には分かるであろうが、横孔66は、大腿骨孔62に対して任意の角度で延びることができる。横孔66が完全に形成された後に、トロカール72を取り去り、図3に示されているように、スリーブ70をその場に残すことができる。スリーブ70は、大腿骨孔62に入ることがないように、横孔66に一部だけが挿入されてもよいし、あるいは、スリーブ70は、少なくとも部分的に大腿骨孔62に入ってもよい。このようにすると、より詳しく後述するように、スリーブ70が靱帯グラフトのための止め具として機能することができる。もっとも、この処置は、スリーブ70を使用することなく行うこともできる。
【0022】
脛骨孔52、大腿骨孔62、および、横孔66が形成された後に、靱帯グラフト80を脛骨孔52および大腿骨孔62に導入することができる。当該技術で既知のさまざまな方法が靱帯グラフト80を脛骨孔52および大腿骨孔62に導入するのに用いられうるが、ある典型的な実施形態では、縫合糸82を靱帯グラフト80の先端に取り付けることができ、そして、この縫合糸82を、例えば、ガイドピンまたは他の装置を使って、脛骨孔52および大腿骨孔62に通すことができる。次に、その縫合糸に張力を加えて、靱帯グラフト80を引っ張り上げて脛骨孔52に通し、少なくとも一部を大腿骨孔62に入れることができる。図3に示されているように、靱帯グラフト80を、大腿骨孔の端部壁部62eから所与の距離離れた場所まで引っ張り、靱帯グラフト80が横孔66の少し前で止まるようにすることができる。スリーブ70が大腿骨孔62の中へと延びる場合、靱帯グラフト80が十分に進められて、大腿骨孔62の端部壁部62eと接触することをスリーブ70が防ぐ。
【0023】
図4に示されているように、靱帯グラフト80が大腿骨孔62内に配置されたら、外科医は、接着剤98を大腿骨孔62に注入して、靱帯グラフト80を大腿骨孔62内で固定することができる。接着剤98は、さまざまな手法を用いて、いずれの孔からでも注入できるが、図示の典型的な実施形態では、接着剤98が、注射器90を使って、横孔66を通して注入される。具体的には、スリーブ70を通して横孔66の中に注射器90を配置し、大腿骨孔62に入れ、次に、注射器90のプランジャー92をバレル94の中へと動かして、接着剤98をバレル94から、針96を通して、大腿骨孔62の中へと出す。接着剤98の量はいろいろでありうるが、ある典型的な実施形態では、接着剤98が、端部壁部62eに隣接する、大腿骨孔62の末端端部を充填する。
【0024】
大腿骨孔62の末端端部が接着剤98で満たされると、縫合糸82にさらに張力を加えて、靱帯グラフト80を末端端部の中へと引っ張り、図5に示されているように、靱帯グラフト80が大腿骨孔62の端部壁部62eに当たるようにする。この結果、靱帯グラフト80が、接着剤98と接触するようになり、接着剤98は、靱帯グラフト80の中および周囲に広がる。接着剤98は、このようにして、端部壁部62eと靱帯グラフト80の間に広がり、キャップを形成し、このキャップは、靱帯グラフト80を囲み、オプションとして、靱帯グラフト80の一部の中へと広がる。他の実施形態では、靱帯グラフト80を大腿骨孔62の中へと、そして、端部壁部62eに接触するように十分引っ張ってもよく、また、次に接着剤98が、靱帯グラフト80の端部を完全に囲み、カプセル状に包むまで、接着剤98を孔62の中に注入してもよい。
【0025】
接着剤98は、硬化するのに時間がかかることがあるので、靱帯グラフト80の第1端部は、大腿骨孔62の中で、固定装置を使って一時的に固定することができる。図6は、固定装置のある典型的な実施形態を示しており、この固定装置は、靱帯グラフト80を大腿骨孔62内で固定するのに用いられるクロスピン100という形状をしている。図示されているように、クロスピン100は、細長い部材という形状をしており、この細長い部材は、スリーブ70を通して、横孔に挿入され、靱帯グラフト80の末端端部に形成されたループに通される。このクロスピン100は、大腿骨孔62を横切るように延び、そして、横孔のさらに先の部分に入るように延びてもよい。ある典型的な実施形態では、このクロスピン100が、クロスピン100の一部がスリーブ70の外に残りながらも、クロスピン100の残りの部分が、横孔66を通り、グラフト80を通り、そして、大腿骨孔62を完全に横切って延びることができる長さを有する。靱帯グラフト80を、クロスピン100を用いて大腿骨孔62内に一時的に固定したら、図7に示されているように、スリーブ70を取り去ってクロスピン100をその場に残すことができる。靱帯グラフト80の第2端部にも張力を加え、かつ、同じ固定手法を用いて、または、当該技術で既知の他の固定手法を用いて脛骨孔52内で固定することができる。接着剤98が最終的に硬化したら、図8に示されているように、クロスピン100を取り除いて、大腿骨孔62内に固定された靱帯グラフトを残すことができる。
【0026】
当業者には分かるであろうが、クロスピン100は、さまざまな形態を有することができ、また、当該技術で既知のさまざまな他の固定装置を使用することができる。例えば、細長いロッドが示されているが、他の実施形態では、固定装置がねじまたは他の固定要素という形状であってもよい。固定装置は、さまざまな材料からも形成できるが、いくつかの典型的な実施形態では、接着剤への接着を防止する材料で形成されるか、または、被覆されることが好ましい。例えば、固定装置は、テフロン(登録商標)のようなフルオロポリマープラスチック樹脂(fluoropolymer plastic resin)で形成または被覆されていてもよい。当業者には分かるであろうが、さまざまな他の材料を使用して、クロスピンと接着剤の間の接着を防止することが可能である。オプションとして、スリーブ70もまた、接着剤への接着を防止する保護材料で形成するか、または被覆してもよい。
【0027】
接着剤を形成するのに用いる材料もまた変えることができ、当該技術で既知の、事実上全ての骨接着剤(bone glue)または骨セメントが使用されうる。接着剤が乾く間、靱帯グラフトを大腿骨孔内に保持するのにクロスピンが一時的に使用されるので、接着剤の乾燥時間が著しく異なってもよく、外科医は、もっと自由に所望の接着剤を選択することができる。接着剤はまた、生体吸収性であってもよいし、非吸収性であってもよい。いくつかの典型的な実施形態では、接着剤は、したたり落ちることなく大腿骨孔に注入できるが、靱帯グラフトが大腿骨孔に十分に引っ張り込まれたときに、靱帯グラフトの周囲に広がる粘性を有することが好ましい。非限定的な例であるが、典型的な接着剤としては、2−オクチルシアノアクリレート(2-octyl cyanoacrylate)等およびその等価物を含む生体適合性骨接着剤などの骨接着剤と、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)等を含む従来の生体適合性骨セメントなどの骨セメントとに加え、プレミア・デンタル・インプラント・セメント(Premiere Dental Implant Cement)(登録商標)のような歯科用インプラントセメントがある。
【0028】
前述したように、靱帯グラフトもまたさまざまな形態を有することができ、また、靱帯グラフトは骨孔内に直接張り付けてもよく、あるいは、固定要素を用いて骨孔内に靱帯グラフトを張り付けてもよい。図9Aから図13は、靱帯グラフトのさまざまな典型的実施形態を図示している。図9Aから図11Cに示されている実施形態では、各靱帯グラフトが骨間グラフト(bone-to-bone graft)という形状をしていて、骨孔内で固定要素の接着を促進する表面特徴部を有する固定要素に結合されている。図12Aから図12Dに示されている実施形態でも、各靱帯グラフトが骨間グラフトという形状をしているが、固定要素を用いる代わりに、骨孔内で骨グラフトの接着を促進するための表面特徴部を含むように骨グラフトが改変されている。図13は、靱帯グラフトのさらに別の実施形態を図示しており、この靱帯グラフトは、軟部組織グラフトという形状をしており、その軟部組織グラフトは、骨孔内で固定要素の接着を促進するように構成された表面特徴部を有する固定要素に取り付けられている。当業者には分かるであろうが、靱帯グラフトはさまざまな他の形態であってもよく、これらの特徴部および当該技術で既知の他の特徴部の任意の組み合わせを用いることができる。さらに、このいろいろな靱帯グラフトは、本明細書で前述した手法を用いて植え込まれてもよいし、当該技術で既知のさまざまな他の手法を用いて植え込まれてもよい。
【0029】
前述したように、図9Aから図9Cに示されている実施形態では、固定要素110を用いて骨間グラフト120を骨孔内に張り付けることができる。固定要素110はさまざまな形態を有しうるが、ある典型的な実施形態では、固定要素110が、骨孔に接着して結合されるように構成された第1部分112と、第1部分112から延びていて、骨間グラフト120の骨グラフト122に結合するように構成された第2部分114とを含むのが好ましい。
【0030】
第1部分112は、さまざまな形態を有することができ、さまざまな手法を用いて第1部分112と骨孔の間の接着を促進することができる。図示の実施形態では、第1部分112が柱部の形状をしていて、この柱部は、末端端部に形成された目穴を有する。この目穴は、縫合糸を入れるために目穴の中に形成された開口部113を含んでいる。縫合糸は、この縫合糸に取り付けられたアンカー110および靱帯グラフト120を骨孔に引っ張り込むのに使用することができる。目穴もまた、柱部と同様に、図9Cに示されているように、接着剤が柱部を囲み、目穴の中へと広がるので、第1部分112の骨孔への接着を促進することができる。当業者には分かるであろうが、第1部分はさまざまな他の形状をしていてもよく、また、第1部分は、溝部、ボア、突起部等のような、さまざまな他の特徴部が形成されていてもよい。
【0031】
アンカー110の第2部分114もまたさまざまな形態を有することができ、さまざまな手法を用いて、この第2部分114を骨グラフト122に結合させることができる。図9Aから図9Cに示されているように、第2部分114はねじ部114aを含む。このねじ部114aは、図9Bに示されているように、第2部分114を骨グラフト122にねじ込めるように、第2部分114に形成されている。接着剤を含む他の結合手法を用いて第2部分114を骨グラフト122に結合させることもできる。
【0032】
図10は、アンカー130の別の実施形態を図示しており、このアンカー130は、骨グラフトに結合するように構成されており、接着剤を用いて骨孔内に張り付けられるように構成されている。アンカー130は、柱部および目穴を有する第1部分132と、骨グラフトと結合するように構成された第2部分134とを含むので、図9Aに示されているアンカー110と同様である。しかし、この実施形態では、第2部分134が環状切除領域116を含み、この環状切除領域116は、接着剤を受けるために、第2部分134の全長に沿って形成されている。接着剤は、この切除領域116の中へ、そしてその切除領域の周りに注入することができ、そして、第2部分134は骨グラフトにあけたボアに挿入して、第2部分134を骨グラフトに接着させることができる。
【0033】
図11Aから図11Cは、アンカー140のさらに別の実施形態を図示しており、このアンカー140は、骨間靱帯グラフト50の骨グラフト152に結合し、かつ、骨孔内で接着されるように構成されている。図9Aから図10に示されている実施形態と同様に、アンカー140は、柱部および目穴が形成された第1部分142と、骨グラフトに結合するように構成された第2部分144とを含む。この実施形態では、第2部分144が対向する腕部145a、145bを含み、これらの腕部145a、145bは、その間に骨グラフト152が入るように構成されている。腕部145a、145bは、オプションとして、骨グラフト152に接着で結合することができるが、腕部145a、145bは、さらに、または代わりに、骨グラフト152に縫合することもできる。このため、対向する腕部145a、145bは、各々、1つ以上の貫通孔が中に形成されていてもよい。図11Aから図11Cは、各腕部145a、145bに形成された2つの貫通孔144a、144bを図示している。対応する2つの貫通孔152a、152bを骨グラフト152にも開けて、図11Cに示されているように、縫合糸146a、146bが骨グラフト152を通って、骨グラフト152を腕部145a、145bに取り付けられるようにすることもできる。当業者には分かるであろうが、さまざまな他の手法を用いて骨グラフト152を腕部145a、145bに結合させることができ、また、腕部145a、145bは、さまざまな他の形態を有しうる。たとえば、腕部145a、145bは、骨グラフト152とねじ係合をしてもよい。
【0034】
使用時には、図9Aから図11Cの固定要素110、130、140を当該技術で既知のさまざまな方法を用いて骨孔内に植え込むことができる。しかしながら、ある典型的な実施形態では、アンカー110、130、140が、本明細書で前述した典型的な方法を用いて骨孔内に張り付けられる。具体的には、固定要素110、130、140を骨グラフトに取り付けた後に、固定要素110、130、140を引っ張って脛骨孔に通し、そして、少なくとも一部を大腿骨孔に入れることができる。このことは、さまざまな手法を用いて行うことができ、例えば、アンカーの目穴に取り付けられている縫合糸に張力をかけることで行ってもよい。接着剤、例えば、図9Cに示されているような接着剤98を次に大腿骨孔内に、好ましくは横孔を通って導入して、大腿骨孔の末端端部を充填することができる。アンカー110、130、140を大腿骨孔にさらに引っ張り込むことより、接着剤をアンカー110、130、140の第1部分の周囲に広げることができる。あるいは、アンカー110、130、140は、接着剤を導入する前に大腿骨孔内に十分に引っ張り上げてもよい。必須ではないが、オプションとして、クロスピンを目穴の穴に通し、アンカー110、130、140を、そしてそれ故に靱帯グラフトを大腿骨孔内に、接着剤が固まるまで保持することもできる。クロスピンを使用しない場合には、速乾性接着剤を好ましくは用いて、接着剤が固まるまで長い時間を待つことなく、靱帯の他端を脛骨孔内で固定できるようにする。
【0035】
他の実施形態では、前述したように、骨孔内で接着により張り付くように、骨グラフト自体が改変されてもよい。図12Aから図12Dは、このような骨グラフトのさまざまな典型的な実施形態を図示している。一般に、各骨グラフトは、靱帯が取り付けられていて、接着剤が入るように形成された表面特徴部を含むように改変されている。このような形態により、接着剤が骨グラフトを完全に囲み、骨グラフトの中に広がることができ、これにより、骨グラフトと骨孔の間が確実に接続される。表面特徴部の形状、数量、大きさ、および外形はいろいろでありうる。図12Aは、骨グラフト160の一実施形態を示しており、この骨グラフト160は、末端端部に形成された十字形状溝部162を有する。溝部は、図示されているように、骨グラフト160の側壁の少なくとも一部に沿ってさらに延びていてもよい。図12Bに示されている実施形態では、骨グラフト170が環状切除部分172を含み、この環状切除部分172は、骨グラフト170の周囲に形成されていて、骨グラフト170の全長の少なくとも一部に沿って互いに間隔を開けて配置されている。図12Cは、骨グラフト180のさらに別の実施形態を図示しており、この骨グラフト180は、接着剤を中に入れるために、グラフト180を貫通する貫通孔182を有する。図12Dに示されているさらに別の実施形態では、骨グラフトがその上に形成された小さな柱部を含むように、骨グラフト190が直径縮小領域192を含むように改変されている。各実施形態において、切除部分は、当該技術で既知の器械および手法を用いて形成することができる。使用時には、切除部分があることで、接着剤が切除部分の中へと広がり、骨グラフトを囲むことができ、これにより、骨グラフトを骨孔に結合させることができる。骨グラフトは、前述した手法を用いて、または、当該技術で既知の他の手法を用いて植え込むことができる。
【0036】
図13は、靱帯グラフトの別の実施形態を図示している。この実施形態では、靱帯グラフトが骨グラフトを含まない軟部組織グラフト(soft tissue graft)210という形状をしている。軟部組織グラフトは、アンカー200に直接結合されている。アンカー200の形態はいろいろでありうるし、また、さまざまな手法を用いて、軟部組織グラフト210をアンカー200に結合させることができる。図示の実施形態では、アンカー200が、一般に、骨孔に接着により結合するように構成された第1部分202と、軟部組織グラフト210に結合するように構成された第2部分204とを含む。第1部分202の形態はいろいろでありうるが、好ましくは、第1部分202を骨孔に結合しやすくする特徴部を含む。前述した特徴部は、図示されているように環状切除部分も含み、いずれもここで使用可能である。この実施形態では、切除部分がフランジ206を画定しており、このフランジ206は、アンカー200を骨孔内で、少なくとも一時的に、接着剤がフランジ206の周囲に配置され、固まってアンカー200を適所に固定するまで保持するのに役立つことができる。アンカーの第2部分204もまたいろいろでありえて、軟部組織グラフト210をこの第2部分210に取り付けやすくする事実上全ての形状および大きさを有することができる。図13に示されているように、第2部分204は、軟部組織グラフト210を入れるために第2部分204に形成された目穴207を含む。第2部分204は、くさび形状体208をさらに含み、このくさび形状体208は第2部分204から遠位方向に延びている。くさび形状体208は、アンカー200が骨孔にいったん挿入された後に、このアンカーが戻って出てしまうことを防止するのに役立ちうる。具体的には、張力が軟部組織グラフト210にかけられると、この軟部組織グラフト210によりアンカー200が軸回転する。この結果、くさび形状体208が骨孔の壁部中へと延びて骨孔の壁部とかみ合い、これにより、骨孔内でアンカー200が動かないようにする。当業者には分かるであろうが、アンカー200はさまざまな他の形態を有してもよく、容易に戻って出るため、または、アンカー200を一定の位置に保持するための何らかの特徴部を含むことを必ずしも必要としない。これは、接着剤を用いてアンカー200を骨孔内に固定することができるからである。使用時には、前述した手法を用いて、または、当該技術で既知の他の手法を用いてアンカー200を植え込むことができる。
【0037】
当業者には、上述した実施形態に基づいて、本発明の他の特徴および利点が分かるであろう。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲で示す場合を除いて、具体的に示され、説明されたことに限定されない。本明細書で列挙した全ての刊行物および参照文献は、参照することによりその全部が本明細書に特に組み込まれる。
【0038】
〔実施の態様〕
(1)骨孔に靱帯グラフトを固定する方法において、
靱帯が取り付けられている骨グラフトにアンカーを連結する段階と、
前記アンカー、および前記骨グラフトを骨孔に導入する段階と、
接着剤を前記骨孔に注入し、前記接着剤が前記アンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、前記アンカーを前記骨孔内に張り付ける段階と、
を含む、方法。
(2)実施態様1記載の方法において、
前記アンカーは、
前記骨孔に接着された第1部分と、
前記骨グラフトと結合する第2部分と、
を含む、
方法。
(3)実施態様2記載の方法において、
前記第1部分は、
目穴付きの柱部であって、前記目穴が前記柱部の末端端部に形成されている、柱部、
を含み、
前記アンカー、および前記骨グラフトを前記骨孔に導入する前記段階は、
縫合糸を前記目穴に取り付ける段階、ならびに、
前記縫合糸に張力をかけて前記骨グラフトを前記骨孔に引っ張り込む段階、
を含む、
方法。
【0039】
(4)実施態様2記載の方法において、
前記第2部分が、前記骨グラフトにねじ込まれる、方法。
(5)実施態様2記載の方法において、
前記第2部分が、縫合糸を使って前記骨グラフトに結合される、方法。
(6)実施態様5記載の方法において、
前記第2部分が、対向する腕部を含み、
前記骨グラフトが、少なくとも1つの縫合糸を前記対向する腕部に通し、さらに前記骨グラフトに通すことにより、前記対向する腕部に結合されている、
方法。
(7)実施態様1記載の方法において、
前記骨孔は、大腿骨に形成された大腿骨孔を含み、
前記接着剤を前記骨孔に注入する前記段階は、前記大腿骨孔の中へと延びる横孔を通して前記接着剤を注入する段階を含む、
方法。
【0040】
(8)実施態様2記載の方法において、
前記第1部分が、
目穴付きの柱部であって、前記目穴が前記柱部の末端端部に形成されている、柱部、
を含み、
前記接着剤が、前記柱部の周囲、および、前記目穴の中へと広がって、前記アンカーを前記骨孔に固定する、
方法。
(9)靱帯グラフトにおいて、
骨グラフトであって、前記骨グラフトから延びる靱帯を有する、骨グラフトと、
アンカーであって、
前記骨グラフトに結合された第1部分、および、
少なくとも1つの表面特徴部を有する第2部分であって、前記少なくとも1つの表面特徴部が、前記第2部分を骨孔に接着により結合させるために、接着剤を受け入れるように構成されている、第2部分、
を有する、アンカーと、
を備える、靱帯グラフト。
(10)実施態様9記載の靱帯グラフトにおいて、
前記少なくとも1つの表面特徴部が、前記表面特徴部を貫通する開口部を有する目穴を備える、靱帯グラフト。
【0041】
(11)実施態様9記載の靱帯グラフトにおいて、
前記少なくとも1つの表面特徴部が、少なくとも1つの切除部分を備える、靱帯グラフト。
(12)実施態様9記載の靱帯グラフトにおいて、
前記第1部分が、前記骨グラフトと係合するために前記第1部分に形成されたねじ部を有する、細長い部材を備える、靱帯グラフト。
(13)実施態様9記載の靱帯グラフトにおいて、
前記第1部分が、間に前記骨グラフトを入れるための対向する腕部を含む、靱帯グラフト。
(14)実施態様13記載の靱帯グラフトにおいて、
前記対向する腕部、および前記骨グラフトが、前記骨グラフトを前記対向する腕部に結合させるように構成された縫合糸を入れるために、前記対向する腕部、および前記骨グラフトを貫通している少なくとも1つの縫合糸孔を含む、靱帯グラフト。
【0042】
(15)靱帯グラフトを骨孔の中に固定する方法において、
靱帯が取り付けられている骨グラフトを、少なくとも1つの切除部分を含むように改変する段階と、
前記骨グラフトを前記骨孔に導入する段階と、
接着剤を前記骨孔に注入し、前記接着剤が前記骨グラフトの少なくとも一部を囲み、前記少なくとも1つの切除部分内へと広がるようにし、これにより、前記骨グラフトを前記骨孔内部に張り付ける段階と、
を含む、方法。
(16)実施態様15記載の方法において、
少なくとも1つの切除部分を含むように前記骨グラフトを改変する前記段階が、複数の環状溝部を前記骨グラフトの周囲に形成する段階を含む、方法。
(17)実施態様15記載の方法において、
少なくとも1つの切除部分を含むように前記骨グラフトを改変する前記段階が、複数の溝部を前記骨グラフトに形成する段階を含む、方法。
【0043】
(18)実施態様15記載の方法において、
少なくとも1つの切除部分を含むように前記骨グラフトを改変する前記段階が、少なくとも1つの貫通孔を前記骨グラフトに形成する段階を含む、方法。
(19)靱帯グラフトを骨孔内に固定する方法において、
軟部組織靱帯をアンカーに連結する段階と、
前記アンカーを前記骨孔に導入する段階と、
接着剤を前記骨孔に注入し、前記接着剤が前記アンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、前記アンカーから前記軟部組織靱帯が延びている前記アンカーを前記骨孔内に張り付ける段階と、
を含む、方法。
(20)実施態様19記載の方法において、
前記アンカーが、
複数の表面特徴部が形成された第1部分であって、前記第1部分を前記骨孔内に結合させるために、前記接着剤をこれら表面特徴部の間に入れる、第1部分、および、
軟部組織グラフトに結合する結合要素を有する第2部分、
を含む、
方法。
(21)実施態様20記載の方法において、
前記結合要素が、目穴を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】人の膝と、ガイド装置を図示しており、ガイド装置がカニューレ状ガイドロッドを有し、このガイドロッドが脛骨および大腿骨に形成された骨孔を貫通している。
【図2】図1の人の膝およびガイド装置を図示しており、スリーブとトロカールの組立品が大腿骨に挿入されていて、大腿骨孔と交差する横孔を形成しているところを示している。
【図3】図2の人の膝を図示しており、ガイド装置およびトロカールが取り除かれ、スリーブが残されて横穴の中へ延びていて、靱帯グラフトが脛骨孔を通って延び、大腿骨孔に入っているところを示している。
【図4】図3の人の膝を図示しており、注射器がスリーブを通して横孔に挿入されていて、接着剤を大腿骨孔に注入しているところを示している。
【図5】図4の人の膝を図示しており、接着剤が靱帯グラフトの端部を囲むように、靱帯グラフトがさらに大腿骨に引っ張り込まれ、接着剤と接触させられるところを示している。
【図6】図5の人の膝を図示しており、クロスピンがスリーブを通して横孔に挿入され、靱帯グラフトを貫通して、その靱帯グラフトを大腿骨孔内の一定の位置に保持するところを示している。
【図7】図6の人の膝を図示しており、スリーブが、クロスピンを適所に残して取り去られているところを示している。
【図8】図7の人の膝を図示しており、クロスピンが、接着剤が硬化した後に取り去られているところを示している。
【図9A】骨グラフトに結合され、かつ、骨孔内に張り付けられるように構成されたアンカーの典型的な一実施形態の側面斜視図である。
【図9B】靱帯グラフトが骨グラフトから延びている骨グラフトに結合された、図9Aに示されているアンカーの側面透視図である。
【図9C】アンカー、骨グラフト、および、図9Bの骨グラフトが骨内の骨孔内部に植え込まれているところを示し、接着剤を入れるための、骨孔内の空間を示す説明図である。
【図10】アンカーの別の実施形態の側面斜視図であり、アンカーは、骨グラフトに結合され、かつ、骨孔内に張り付けられて、骨グラフトを骨孔内に固定するように構成されており、接着剤を入れるための環状溝部を有する。
【図11A】アンカーおよび骨グラフトの別の実施形態の側面図であり、アンカーと骨グラフトの各々は、骨グラフトをアンカーに結合させるために形成された縫合糸孔を有する。
【図11B】図11Aに示されているアンカーおよび骨グラフトの別の側面図である。
【図11C】図11Aおよび図11Bに示されているアンカーおよび骨グラフトであって、縫合糸を用いて互いに結合されているアンカーおよび骨グラフトの側面図である。
【図12A】接着剤を入れるための十字形状切除部を有するように改変された骨グラフトの典型的な一実施形態の斜視図である。
【図12B】接着剤を入れるための環状溝部を有するように改変された骨グラフトの別の典型的な実施形態の斜視図である。
【図12C】接着剤を入れるための貫通孔特徴部を有するように改変された骨グラフトのさらに別の典型的な実施形態の斜視図である。
【図12D】接着剤を周囲に受けるために形成された柱部を有するように改変された骨グラフトの別の典型的な実施形態の斜視図である。
【図13】周りに接着剤を受けるための表面特徴部を有し、かつ、靱帯グラフトと結合するための結合要素を有するアンカーのさらに別の実施形態の斜視図である。
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、靱帯グラフトを骨孔(bone tunnels)に張り付けるための方法および装置に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
関節が損傷すると、一般に、靱帯、腱、および、軟部組織が完全に、または、部分的に骨から剥離する。組織の剥離は、多くの過程で、例えば、転倒のような事故、労働関連活動中、体育行事中、または、多くの他の状況および/または活動のいずれか1つにおける過度の努力の結果として生じうる。この種の損傷は、一般に、過度の圧力、すなわち、異常な力が組織にかかった結果として生じる。
【0003】
一般的な用語「捻挫」で普通は呼ばれる部分的な剥離の場合、損傷は、しばしば医療介入を行わずに治癒するもので、患者は休み、治癒過程の間に、損傷部をあまりに激しく動かさないように気をつける。しかし、靱帯または腱が、関連する1つまたは複数の骨におけるその付着部位から完全に剥離した場合、あるいは、靱帯または腱が外傷によって切断された場合、損傷を受けた関節の機能を完全に回復させるために、外科的介入が必要となるであろう。このような腱および靱帯を骨に再び取り付けるために、多数の従来型外科手術がある。
【0004】
このような処置の1つは、ステープル、縫合糸、および、骨ねじのような「従来」の取付装置を使って剥離した組織を再付着させることを必要とする。このような従来の取付装置は、腱グラフトまたは靱帯グラフト(多くの場合、体のいずれかから採取した自己組織から形成されている)を所望の1つまたは複数の骨に取り付けるのにも使用されている。ある処置では、損傷を受けた前十字靱帯(「ACL」)が人の膝の中で置換される。最初に、前十字靱帯が通常付着している位置において脛骨および大腿骨に骨孔が形成される。次に、端部の1つに骨グラフトがついている靱帯グラフトが骨孔に合う大きさに形成される。次に縫合糸が骨グラフトに取り付けられ、そしてその後に、脛骨と大腿骨の骨孔に通される。次に、骨グラフトが縫合糸を使って脛骨孔に引き通され、大腿骨孔内に引き上げられる。これが行われると、靱帯グラフトの靱帯(ligament graft ligament)は、大腿骨孔から後方へ飛び出すように延び、膝関節の内部を端から端まで延び、そして、脛骨孔を通って延びる。靱帯グラフトの靱帯の自由端は、脛骨の前側で脛骨の外部にある。次に、骨ねじが、骨グラフトをきつい締まりばめにより適所にしっかりと固定するように、骨グラフトと大腿骨孔の壁部の間に挿入される。最後に、靱帯グラフトの靱帯が脛骨にしっかりと取り付けられる。
【0005】
別のACL再建処置では、一直線に並んだ大腿骨孔と脛骨孔が最初に人の膝に形成される。靱帯グラフトが取り付けられた骨グラフトが、大腿骨孔の閉じた端部まで孔に通され、ここで、ブロックがアンカーによって適所に固定される。靱帯は、脛骨孔から延び出て、端部がステープル等で脛骨皮質に取り付けられる。あるいは、靱帯の端部は、アンカーまたはインターフェランス・スクリュー(interference screw)によって脛骨孔内に固定されてもよい。軟部組織を骨に取り付けるためのさまざまな種類の靱帯用および/または縫合糸用アンカーも当該技術で周知である。米国特許第4,898,156号、第4,899,743号、第4,968,315号、第5,356,413号、および、第5,372,599号にこのような装置が多数詳細にわたって記載されている。これらの特許はすべて、ジョンソン・アンド・ジョンソン・カンパニー(Johnson & Johnson company)のミテック・サージカル・プロダクツ社(Mitek Surgical Products, Inc.)に譲渡されており、その全部が参照により組み込まれる。
【0006】
骨グラフトを骨孔内に固定する既知の一方法は、「クロスピニング(cross-pinning)」手技によるものであり、この方法では、ピン、ねじ、または、ロッドが、骨グラフトを横切り、これにより、骨孔内の骨グラフトにピンが交差するように、骨孔に対して横向きにして骨に押し込まれる。骨孔内で骨グラフトのクロスピニングを適切に行うために、ドリルガイドが一般に用いられる。ドリルガイドは、横向きの通路が、適切な孔の部分および骨グラフトを横切るように、その横向きの通路を骨内に確実に配置するのに役立つ。
【0007】
クロスピニングは効果的であるが、骨孔内で靱帯グラフトを固定するための方法および装置を改良する必要性が引き続き存在する。
【0008】
〔発明の概要〕
本発明は、概して、靱帯グラフトを骨孔内に固定するための方法および装置を提供する。ある典型的な実施形態では、この方法が、骨に第1の孔を開け、靱帯グラフトを少なくとも部分的に第1の孔に挿入することを含むことができる。接着剤が第1の孔に入れられ、固定装置が、靱帯グラフトを通して、孔の軸に対して実質的に横方向に挿入されて、靱帯グラフトを接着剤と接触した状態に維持する。クロスピンは、靱帯グラフトが第1の孔の中で固定されるように接着剤が硬化したら、取り去ることができる。
【0009】
この方法は、さまざまな外科手術で利用されうるが、ある典型的な実施形態では、この方法が前十字靱帯の修復に利用される。よって、靱帯グラフトは、少なくとも部分的に、大腿骨または脛骨に形成された大腿骨孔または脛骨孔に挿入することができ、接着剤が、大腿骨孔または脛骨孔に入れられる。クロスピンのような固定装置は、大腿骨または脛骨に形成され、大腿骨孔または脛骨孔と交差する横孔を通して挿入することができる。いくつかの典型的な実施形態では、横孔がスリーブを含むこともあり、このスリーブは、横孔の中に配置されていて、大腿骨孔または脛骨孔までの通路を画定する。固定装置は、靱帯グラフトの第1端部を大腿骨孔または脛骨孔内で接着剤と接触した状態に保つのに有効である。次に、接着剤が乾いている間に、靱帯グラフトの第2端部に張力をかけ、大腿骨孔または脛骨孔の他方の中に固定することができる。接着剤が硬化したら、固定装置を取り除くことができる。
【0010】
第1の孔は、さまざまな形態を有することができ、また、第1の孔は、一部のみが大腿骨または脛骨を通って延びてもよいし、または、全体が大腿骨または脛骨を通って延びてもよい。ある実施形態では、第1の孔が、その中に形成された端部壁部を含む。横孔は、その端部壁部の近傍で第1の孔と交差することができる。これにより、接着剤を横孔に通して入れ、接着剤が第1の孔の端部壁部の近傍に配置されるようにすることができる。ある典型的な実施形態では、接着剤が入れられる前に、靱帯グラフトが第1の孔の端部壁部から所与の距離離れたところに配置され、接着剤が第1の孔に入れられた後に、端部壁部の方へ、接着剤と接触するように靭帯グラフトが引っ張られる。靱帯グラフトは、オプションとして、靱帯グラフトに取り付けられた縫合糸を用いて引っ張って、第1の孔に通すこともできる。
【0011】
他の実施形態では、靱帯グラフトは第1の孔に直接接着されてもよいし、あるいは、骨グラフトのようなアンカーに連結されてもよい。アンカーが利用される場合、固定装置はアンカーに通して挿入されてもよいし、接着剤は、アンカーの周り、そしてオプションとしてアンカーの中に配置されてもよい。さらに別の実施形態では、接着剤は、最終的に体に吸収されるように、生体吸収性材料から形成されてもよい。あるいは、接着剤は、非吸収性接着剤であってもよい。さらに別の実施形態では、固定装置を接着剤と固定装置の間が接着されないように構成することもできる。例えば、固定装置は、固定装置の上に配置された保護用コーティングを含んでいてもよいし、あるいは、フルオロポリマープラスチック樹脂(fluoropolymer plastic resin)のような保護材料から形成されていてもよい。横孔の内部に配置されたスリーブもまた保護用コーティングを含んでいてもよいし、保護材料から形成されていてもよい。
【0012】
他の実施形態では、骨孔内に靱帯グラフトを固定する方法が提供され、この方法は、骨グラフトにアンカーを連結する段階と、アンカーおよび骨グラフトを骨孔に導入する段階と、接着剤を骨孔に入れて、接着剤がアンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、アンカーを骨孔内部に張り付ける段階とを含む。アンカーはさまざまな形態を有しうるが、ある実施形態では、骨孔に接着された第1部分と、骨グラフトと結合する第2部分とを含む。第1部分は、目穴付きの柱部を含むことが可能で、この目穴は、柱部の末端端部に形成されている。アンカーおよび骨グラフトを骨孔に導入するために、縫合糸を目穴に取り付け、縫合糸に張力をかけて、骨グラフトを骨孔に引っ張り込むことができる。アンカーの第2部分もさまざまな形態を有することができる。例えば、この第2部分は、ねじ部を含むことができ、このねじ部は、第2部分を骨グラフトにねじ込むために第2部分に形成されている。別の実施形態では、第2部分を骨グラフトに縫合糸を使って結合させることが可能である。具体的には、第2部分が対向する腕部を含んでいてもよく、少なくとも1つの縫合糸をその対向する腕部、および、骨グラフトに通すことにより、骨グラフトが対向する腕部に結合されてもよい。
【0013】
さらに別の実施形態では、靱帯グラフトが提供され、この靱帯グラフトは、靱帯がそこから延びている骨グラフトと、骨グラフトに結合された第1部分、および、少なくとも1つの表面特徴部を有する第2部分であって、その表面特徴部が、第2部分を骨孔に接着により結合させるよう、接着剤が入るように構成されている第2部分を有するアンカーとを含む。アンカーの第2部分にある表面特徴部は、例えば、その表面特徴部を貫通する開口部を有する目穴、少なくとも1つの切除部分、または、他の表面特徴部であってもよい。
【0014】
他の態様では、骨孔内に靱帯グラフトを固定する方法が提供され、この方法は、靱帯が取り付けられている骨グラフトを、少なくとも1つの切除部分を含むように改変する段階と、骨グラフトを骨孔に導入する段階と、接着剤を骨孔に入れ、接着剤が骨グラフトの少なくとも一部を囲み、少なくとも1つの切除部分の中へと広がるようにし、これにより、骨グラフトを骨孔内部に張り付ける段階とを含む。骨グラフトは、例えば、複数の溝部を骨グラフトの周囲に、もしくは、骨グラフトに形成する、または、少なくとも1つの貫通孔を骨グラフトに形成することなどにより改変することができる。
【0015】
さらに別の実施形態では、靱帯グラフトを骨孔内に固定する方法が提供され、この方法は、軟部組織靱帯をアンカーに連結する段階と、アンカーを骨孔に導入する段階と、接着剤を骨孔に入れ、接着剤がアンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、アンカーから軟部組織靱帯が延びているアンカーを骨孔内に張り付ける段階とを含む。アンカーは、表面特徴部が形成された第1部分であって、第1部分を骨孔内に結合させるために、接着剤が表面特徴部の間に入る第1部分、および、軟部組織グラフトに結合する結合要素を有する第2部分を含む。結合要素は、例えば、目穴(eyelet)であってもよい。
【0016】
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と共に検討すれば、より詳細に理解されるであろう。
【0017】
〔発明の詳細な説明〕
本発明は、靱帯グラフトを骨孔に固定するための方法および装置を提供するものである。本明細書で開示されるさまざまな方法および装置は、いろいろな外科手術に使用されうるが、この方法および装置は、人の膝における前十字靱帯(ACL)を修復するのに特に有用である。ACL修復術では、断裂したACLが靱帯グラフトと置き換えられ、この靱帯グラフトは、脛骨および大腿骨に固定される。用語「靱帯グラフト」は、本明細書で使用する場合、採取された靱帯や腱を含む、自己移植片、同種移植片、および、異種移植片のような天然材料に加えて、合成材料を含むことが意図されている。靱帯グラフトは、グラフトを脛骨および大腿骨に固定するために靱帯グラフトに取り付けられた固定要素を含むこともできる。例えば、靱帯グラフトは、靱帯グラフトの一方または両方の末端端部に取り付けられた骨グラフト、栓子、または他の部材を含んでいてもよい。用語「骨グラフト」は、本明細書で使用される場合、自己移植片、同種移植片、および、異種移植片のような天然材料に加え、合成材料を含むことが意図されている。
【0018】
当業者には分かるであろうが、本明細書で開示されるさまざまな方法および装置は、さまざまな外科手術で使用されうるものであり、靱帯グラフトの具体的な形態は、意図する用途しだいで変わりうるものであり、事実上、当該技術で既知の全ての靱帯グラフトが本明細書で開示される方法で使用されうる。
【0019】
図1から図8は、靱帯グラフトを骨孔に、具体的には、人の膝の大腿骨孔および脛骨孔に固定するための、ある典型的な方法を図示している。一般に、この方法は、骨に孔をあけ、靱帯グラフトを少なくとも部分的にその孔に挿入することを含む。接着剤がこの孔に入れられ、固定装置が、その孔の軸を横切る方向において靱帯グラフトに通され、グラフトを接着剤と接触した状態に維持する。固定装置は、靱帯グラフトが孔内で固定されるように接着剤が硬化したら、取り除くことができる。固定装置を用いて、接着剤が硬化する間、靱帯グラフトを孔内に保持することにより、その靱帯グラフトの反対側端部に張力をかけ、同一または異なる固定手法を用いて固定することできる。この方法は、骨孔を準備し、靱帯グラフトをその骨孔に挿入するための、ある典型的な手順に関連して記載されている。例えば、ある典型的な方法では、靱帯グラフトが、脛骨孔内に張り付けられる前に、大腿骨孔内に張り付けられる。しかしながら、当業者には分かるであろうが、靱帯グラフトは、最初に、または、同時に、脛骨孔内に張り付けられてもよい。これも当業者には分かるであろうが、当該技術で既知のさまざまな他の手順を用いて、骨孔を準備したり、靱帯グラフトをその骨孔に挿入したりしてもよい。
【0020】
まず図1を参照すると、従来の外科手術用器具類および手法を用いて、骨孔を脛骨50および大腿骨60にあけて、脛骨孔52および大腿骨孔62を形成する。脛骨孔52および大腿骨孔62は、脛骨50および大腿骨60を完全に貫通してもよいが、ある典型的な実施形態では、大腿骨ソケット(femoral socket)が形成されるように、大腿骨孔62は、大腿骨60の途中で終端する。オプションとして、縫合用孔64が、大腿骨孔62と長さ方向に一直線に揃うように、大腿骨60の残りの部分を貫通し、より詳細に後述するように、縫合糸がその縫合用孔64を通って、グラフトを孔52、62に引っ張り込めるようにすることもできる。縫合用孔64は、大腿骨孔の末端端部が端部壁部62eを画定するように、好ましくは、大腿骨孔の内径よりも小さい内径を有する。
【0021】
脛骨孔52および大腿骨孔62を準備したら、横孔を大腿骨に形成することができる。横孔は、通路が横孔を通って大腿骨孔62まで形成されるように、好ましくは大腿骨孔62と交差する。この通路は、より詳細に後述するように、接着剤を大腿骨孔62に注入することに用いることができる。図1に示されているように、オプションとしてガイド装置10を使用して、横孔の位置を特定し、合わせることができる。図示されているように、ガイド装置10は、一般に、カニューレ状ガイドロッド14を有するL字状フレーム12であって、そのカニューレ状ガイドロッド14がL字状フレームの一方の端部から延びているL字状フレーム12と、開口部16を有するハウジングであって、その開口部16がハウジングを貫通してハウジングの反対側端部に形成されているハウジングとを含んでいる。カニューレ状ガイドロッド14は、ガイドフレーム12を一定の位置に保持するために、脛骨孔52および大腿骨孔62に挿入することができる。図2に示されているように、スリーブおよびトロカールの組立品70、72をガイドフレーム12にあるハウジングの開口部16に挿入し、スリーブとトロカールがカニューレ状ガイドロッド14に当たるまで、大腿骨の側面に突き入れることができる。横孔66は、このように大腿骨を通り、好ましくは、大腿骨孔の遠位端部壁部62eに実質的に隣接する場所において、大腿骨孔62に入る。当業者には分かるであろうが、横孔66は、大腿骨孔62に対して任意の角度で延びることができる。横孔66が完全に形成された後に、トロカール72を取り去り、図3に示されているように、スリーブ70をその場に残すことができる。スリーブ70は、大腿骨孔62に入ることがないように、横孔66に一部だけが挿入されてもよいし、あるいは、スリーブ70は、少なくとも部分的に大腿骨孔62に入ってもよい。このようにすると、より詳しく後述するように、スリーブ70が靱帯グラフトのための止め具として機能することができる。もっとも、この処置は、スリーブ70を使用することなく行うこともできる。
【0022】
脛骨孔52、大腿骨孔62、および、横孔66が形成された後に、靱帯グラフト80を脛骨孔52および大腿骨孔62に導入することができる。当該技術で既知のさまざまな方法が靱帯グラフト80を脛骨孔52および大腿骨孔62に導入するのに用いられうるが、ある典型的な実施形態では、縫合糸82を靱帯グラフト80の先端に取り付けることができ、そして、この縫合糸82を、例えば、ガイドピンまたは他の装置を使って、脛骨孔52および大腿骨孔62に通すことができる。次に、その縫合糸に張力を加えて、靱帯グラフト80を引っ張り上げて脛骨孔52に通し、少なくとも一部を大腿骨孔62に入れることができる。図3に示されているように、靱帯グラフト80を、大腿骨孔の端部壁部62eから所与の距離離れた場所まで引っ張り、靱帯グラフト80が横孔66の少し前で止まるようにすることができる。スリーブ70が大腿骨孔62の中へと延びる場合、靱帯グラフト80が十分に進められて、大腿骨孔62の端部壁部62eと接触することをスリーブ70が防ぐ。
【0023】
図4に示されているように、靱帯グラフト80が大腿骨孔62内に配置されたら、外科医は、接着剤98を大腿骨孔62に注入して、靱帯グラフト80を大腿骨孔62内で固定することができる。接着剤98は、さまざまな手法を用いて、いずれの孔からでも注入できるが、図示の典型的な実施形態では、接着剤98が、注射器90を使って、横孔66を通して注入される。具体的には、スリーブ70を通して横孔66の中に注射器90を配置し、大腿骨孔62に入れ、次に、注射器90のプランジャー92をバレル94の中へと動かして、接着剤98をバレル94から、針96を通して、大腿骨孔62の中へと出す。接着剤98の量はいろいろでありうるが、ある典型的な実施形態では、接着剤98が、端部壁部62eに隣接する、大腿骨孔62の末端端部を充填する。
【0024】
大腿骨孔62の末端端部が接着剤98で満たされると、縫合糸82にさらに張力を加えて、靱帯グラフト80を末端端部の中へと引っ張り、図5に示されているように、靱帯グラフト80が大腿骨孔62の端部壁部62eに当たるようにする。この結果、靱帯グラフト80が、接着剤98と接触するようになり、接着剤98は、靱帯グラフト80の中および周囲に広がる。接着剤98は、このようにして、端部壁部62eと靱帯グラフト80の間に広がり、キャップを形成し、このキャップは、靱帯グラフト80を囲み、オプションとして、靱帯グラフト80の一部の中へと広がる。他の実施形態では、靱帯グラフト80を大腿骨孔62の中へと、そして、端部壁部62eに接触するように十分引っ張ってもよく、また、次に接着剤98が、靱帯グラフト80の端部を完全に囲み、カプセル状に包むまで、接着剤98を孔62の中に注入してもよい。
【0025】
接着剤98は、硬化するのに時間がかかることがあるので、靱帯グラフト80の第1端部は、大腿骨孔62の中で、固定装置を使って一時的に固定することができる。図6は、固定装置のある典型的な実施形態を示しており、この固定装置は、靱帯グラフト80を大腿骨孔62内で固定するのに用いられるクロスピン100という形状をしている。図示されているように、クロスピン100は、細長い部材という形状をしており、この細長い部材は、スリーブ70を通して、横孔に挿入され、靱帯グラフト80の末端端部に形成されたループに通される。このクロスピン100は、大腿骨孔62を横切るように延び、そして、横孔のさらに先の部分に入るように延びてもよい。ある典型的な実施形態では、このクロスピン100が、クロスピン100の一部がスリーブ70の外に残りながらも、クロスピン100の残りの部分が、横孔66を通り、グラフト80を通り、そして、大腿骨孔62を完全に横切って延びることができる長さを有する。靱帯グラフト80を、クロスピン100を用いて大腿骨孔62内に一時的に固定したら、図7に示されているように、スリーブ70を取り去ってクロスピン100をその場に残すことができる。靱帯グラフト80の第2端部にも張力を加え、かつ、同じ固定手法を用いて、または、当該技術で既知の他の固定手法を用いて脛骨孔52内で固定することができる。接着剤98が最終的に硬化したら、図8に示されているように、クロスピン100を取り除いて、大腿骨孔62内に固定された靱帯グラフトを残すことができる。
【0026】
当業者には分かるであろうが、クロスピン100は、さまざまな形態を有することができ、また、当該技術で既知のさまざまな他の固定装置を使用することができる。例えば、細長いロッドが示されているが、他の実施形態では、固定装置がねじまたは他の固定要素という形状であってもよい。固定装置は、さまざまな材料からも形成できるが、いくつかの典型的な実施形態では、接着剤への接着を防止する材料で形成されるか、または、被覆されることが好ましい。例えば、固定装置は、テフロン(登録商標)のようなフルオロポリマープラスチック樹脂(fluoropolymer plastic resin)で形成または被覆されていてもよい。当業者には分かるであろうが、さまざまな他の材料を使用して、クロスピンと接着剤の間の接着を防止することが可能である。オプションとして、スリーブ70もまた、接着剤への接着を防止する保護材料で形成するか、または被覆してもよい。
【0027】
接着剤を形成するのに用いる材料もまた変えることができ、当該技術で既知の、事実上全ての骨接着剤(bone glue)または骨セメントが使用されうる。接着剤が乾く間、靱帯グラフトを大腿骨孔内に保持するのにクロスピンが一時的に使用されるので、接着剤の乾燥時間が著しく異なってもよく、外科医は、もっと自由に所望の接着剤を選択することができる。接着剤はまた、生体吸収性であってもよいし、非吸収性であってもよい。いくつかの典型的な実施形態では、接着剤は、したたり落ちることなく大腿骨孔に注入できるが、靱帯グラフトが大腿骨孔に十分に引っ張り込まれたときに、靱帯グラフトの周囲に広がる粘性を有することが好ましい。非限定的な例であるが、典型的な接着剤としては、2−オクチルシアノアクリレート(2-octyl cyanoacrylate)等およびその等価物を含む生体適合性骨接着剤などの骨接着剤と、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)等を含む従来の生体適合性骨セメントなどの骨セメントとに加え、プレミア・デンタル・インプラント・セメント(Premiere Dental Implant Cement)(登録商標)のような歯科用インプラントセメントがある。
【0028】
前述したように、靱帯グラフトもまたさまざまな形態を有することができ、また、靱帯グラフトは骨孔内に直接張り付けてもよく、あるいは、固定要素を用いて骨孔内に靱帯グラフトを張り付けてもよい。図9Aから図13は、靱帯グラフトのさまざまな典型的実施形態を図示している。図9Aから図11Cに示されている実施形態では、各靱帯グラフトが骨間グラフト(bone-to-bone graft)という形状をしていて、骨孔内で固定要素の接着を促進する表面特徴部を有する固定要素に結合されている。図12Aから図12Dに示されている実施形態でも、各靱帯グラフトが骨間グラフトという形状をしているが、固定要素を用いる代わりに、骨孔内で骨グラフトの接着を促進するための表面特徴部を含むように骨グラフトが改変されている。図13は、靱帯グラフトのさらに別の実施形態を図示しており、この靱帯グラフトは、軟部組織グラフトという形状をしており、その軟部組織グラフトは、骨孔内で固定要素の接着を促進するように構成された表面特徴部を有する固定要素に取り付けられている。当業者には分かるであろうが、靱帯グラフトはさまざまな他の形態であってもよく、これらの特徴部および当該技術で既知の他の特徴部の任意の組み合わせを用いることができる。さらに、このいろいろな靱帯グラフトは、本明細書で前述した手法を用いて植え込まれてもよいし、当該技術で既知のさまざまな他の手法を用いて植え込まれてもよい。
【0029】
前述したように、図9Aから図9Cに示されている実施形態では、固定要素110を用いて骨間グラフト120を骨孔内に張り付けることができる。固定要素110はさまざまな形態を有しうるが、ある典型的な実施形態では、固定要素110が、骨孔に接着して結合されるように構成された第1部分112と、第1部分112から延びていて、骨間グラフト120の骨グラフト122に結合するように構成された第2部分114とを含むのが好ましい。
【0030】
第1部分112は、さまざまな形態を有することができ、さまざまな手法を用いて第1部分112と骨孔の間の接着を促進することができる。図示の実施形態では、第1部分112が柱部の形状をしていて、この柱部は、末端端部に形成された目穴を有する。この目穴は、縫合糸を入れるために目穴の中に形成された開口部113を含んでいる。縫合糸は、この縫合糸に取り付けられたアンカー110および靱帯グラフト120を骨孔に引っ張り込むのに使用することができる。目穴もまた、柱部と同様に、図9Cに示されているように、接着剤が柱部を囲み、目穴の中へと広がるので、第1部分112の骨孔への接着を促進することができる。当業者には分かるであろうが、第1部分はさまざまな他の形状をしていてもよく、また、第1部分は、溝部、ボア、突起部等のような、さまざまな他の特徴部が形成されていてもよい。
【0031】
アンカー110の第2部分114もまたさまざまな形態を有することができ、さまざまな手法を用いて、この第2部分114を骨グラフト122に結合させることができる。図9Aから図9Cに示されているように、第2部分114はねじ部114aを含む。このねじ部114aは、図9Bに示されているように、第2部分114を骨グラフト122にねじ込めるように、第2部分114に形成されている。接着剤を含む他の結合手法を用いて第2部分114を骨グラフト122に結合させることもできる。
【0032】
図10は、アンカー130の別の実施形態を図示しており、このアンカー130は、骨グラフトに結合するように構成されており、接着剤を用いて骨孔内に張り付けられるように構成されている。アンカー130は、柱部および目穴を有する第1部分132と、骨グラフトと結合するように構成された第2部分134とを含むので、図9Aに示されているアンカー110と同様である。しかし、この実施形態では、第2部分134が環状切除領域116を含み、この環状切除領域116は、接着剤を受けるために、第2部分134の全長に沿って形成されている。接着剤は、この切除領域116の中へ、そしてその切除領域の周りに注入することができ、そして、第2部分134は骨グラフトにあけたボアに挿入して、第2部分134を骨グラフトに接着させることができる。
【0033】
図11Aから図11Cは、アンカー140のさらに別の実施形態を図示しており、このアンカー140は、骨間靱帯グラフト50の骨グラフト152に結合し、かつ、骨孔内で接着されるように構成されている。図9Aから図10に示されている実施形態と同様に、アンカー140は、柱部および目穴が形成された第1部分142と、骨グラフトに結合するように構成された第2部分144とを含む。この実施形態では、第2部分144が対向する腕部145a、145bを含み、これらの腕部145a、145bは、その間に骨グラフト152が入るように構成されている。腕部145a、145bは、オプションとして、骨グラフト152に接着で結合することができるが、腕部145a、145bは、さらに、または代わりに、骨グラフト152に縫合することもできる。このため、対向する腕部145a、145bは、各々、1つ以上の貫通孔が中に形成されていてもよい。図11Aから図11Cは、各腕部145a、145bに形成された2つの貫通孔144a、144bを図示している。対応する2つの貫通孔152a、152bを骨グラフト152にも開けて、図11Cに示されているように、縫合糸146a、146bが骨グラフト152を通って、骨グラフト152を腕部145a、145bに取り付けられるようにすることもできる。当業者には分かるであろうが、さまざまな他の手法を用いて骨グラフト152を腕部145a、145bに結合させることができ、また、腕部145a、145bは、さまざまな他の形態を有しうる。たとえば、腕部145a、145bは、骨グラフト152とねじ係合をしてもよい。
【0034】
使用時には、図9Aから図11Cの固定要素110、130、140を当該技術で既知のさまざまな方法を用いて骨孔内に植え込むことができる。しかしながら、ある典型的な実施形態では、アンカー110、130、140が、本明細書で前述した典型的な方法を用いて骨孔内に張り付けられる。具体的には、固定要素110、130、140を骨グラフトに取り付けた後に、固定要素110、130、140を引っ張って脛骨孔に通し、そして、少なくとも一部を大腿骨孔に入れることができる。このことは、さまざまな手法を用いて行うことができ、例えば、アンカーの目穴に取り付けられている縫合糸に張力をかけることで行ってもよい。接着剤、例えば、図9Cに示されているような接着剤98を次に大腿骨孔内に、好ましくは横孔を通って導入して、大腿骨孔の末端端部を充填することができる。アンカー110、130、140を大腿骨孔にさらに引っ張り込むことより、接着剤をアンカー110、130、140の第1部分の周囲に広げることができる。あるいは、アンカー110、130、140は、接着剤を導入する前に大腿骨孔内に十分に引っ張り上げてもよい。必須ではないが、オプションとして、クロスピンを目穴の穴に通し、アンカー110、130、140を、そしてそれ故に靱帯グラフトを大腿骨孔内に、接着剤が固まるまで保持することもできる。クロスピンを使用しない場合には、速乾性接着剤を好ましくは用いて、接着剤が固まるまで長い時間を待つことなく、靱帯の他端を脛骨孔内で固定できるようにする。
【0035】
他の実施形態では、前述したように、骨孔内で接着により張り付くように、骨グラフト自体が改変されてもよい。図12Aから図12Dは、このような骨グラフトのさまざまな典型的な実施形態を図示している。一般に、各骨グラフトは、靱帯が取り付けられていて、接着剤が入るように形成された表面特徴部を含むように改変されている。このような形態により、接着剤が骨グラフトを完全に囲み、骨グラフトの中に広がることができ、これにより、骨グラフトと骨孔の間が確実に接続される。表面特徴部の形状、数量、大きさ、および外形はいろいろでありうる。図12Aは、骨グラフト160の一実施形態を示しており、この骨グラフト160は、末端端部に形成された十字形状溝部162を有する。溝部は、図示されているように、骨グラフト160の側壁の少なくとも一部に沿ってさらに延びていてもよい。図12Bに示されている実施形態では、骨グラフト170が環状切除部分172を含み、この環状切除部分172は、骨グラフト170の周囲に形成されていて、骨グラフト170の全長の少なくとも一部に沿って互いに間隔を開けて配置されている。図12Cは、骨グラフト180のさらに別の実施形態を図示しており、この骨グラフト180は、接着剤を中に入れるために、グラフト180を貫通する貫通孔182を有する。図12Dに示されているさらに別の実施形態では、骨グラフトがその上に形成された小さな柱部を含むように、骨グラフト190が直径縮小領域192を含むように改変されている。各実施形態において、切除部分は、当該技術で既知の器械および手法を用いて形成することができる。使用時には、切除部分があることで、接着剤が切除部分の中へと広がり、骨グラフトを囲むことができ、これにより、骨グラフトを骨孔に結合させることができる。骨グラフトは、前述した手法を用いて、または、当該技術で既知の他の手法を用いて植え込むことができる。
【0036】
図13は、靱帯グラフトの別の実施形態を図示している。この実施形態では、靱帯グラフトが骨グラフトを含まない軟部組織グラフト(soft tissue graft)210という形状をしている。軟部組織グラフトは、アンカー200に直接結合されている。アンカー200の形態はいろいろでありうるし、また、さまざまな手法を用いて、軟部組織グラフト210をアンカー200に結合させることができる。図示の実施形態では、アンカー200が、一般に、骨孔に接着により結合するように構成された第1部分202と、軟部組織グラフト210に結合するように構成された第2部分204とを含む。第1部分202の形態はいろいろでありうるが、好ましくは、第1部分202を骨孔に結合しやすくする特徴部を含む。前述した特徴部は、図示されているように環状切除部分も含み、いずれもここで使用可能である。この実施形態では、切除部分がフランジ206を画定しており、このフランジ206は、アンカー200を骨孔内で、少なくとも一時的に、接着剤がフランジ206の周囲に配置され、固まってアンカー200を適所に固定するまで保持するのに役立つことができる。アンカーの第2部分204もまたいろいろでありえて、軟部組織グラフト210をこの第2部分210に取り付けやすくする事実上全ての形状および大きさを有することができる。図13に示されているように、第2部分204は、軟部組織グラフト210を入れるために第2部分204に形成された目穴207を含む。第2部分204は、くさび形状体208をさらに含み、このくさび形状体208は第2部分204から遠位方向に延びている。くさび形状体208は、アンカー200が骨孔にいったん挿入された後に、このアンカーが戻って出てしまうことを防止するのに役立ちうる。具体的には、張力が軟部組織グラフト210にかけられると、この軟部組織グラフト210によりアンカー200が軸回転する。この結果、くさび形状体208が骨孔の壁部中へと延びて骨孔の壁部とかみ合い、これにより、骨孔内でアンカー200が動かないようにする。当業者には分かるであろうが、アンカー200はさまざまな他の形態を有してもよく、容易に戻って出るため、または、アンカー200を一定の位置に保持するための何らかの特徴部を含むことを必ずしも必要としない。これは、接着剤を用いてアンカー200を骨孔内に固定することができるからである。使用時には、前述した手法を用いて、または、当該技術で既知の他の手法を用いてアンカー200を植え込むことができる。
【0037】
当業者には、上述した実施形態に基づいて、本発明の他の特徴および利点が分かるであろう。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲で示す場合を除いて、具体的に示され、説明されたことに限定されない。本明細書で列挙した全ての刊行物および参照文献は、参照することによりその全部が本明細書に特に組み込まれる。
【0038】
〔実施の態様〕
(1)骨孔に靱帯グラフトを固定する方法において、
靱帯が取り付けられている骨グラフトにアンカーを連結する段階と、
前記アンカー、および前記骨グラフトを骨孔に導入する段階と、
接着剤を前記骨孔に注入し、前記接着剤が前記アンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、前記アンカーを前記骨孔内に張り付ける段階と、
を含む、方法。
(2)実施態様1記載の方法において、
前記アンカーは、
前記骨孔に接着された第1部分と、
前記骨グラフトと結合する第2部分と、
を含む、
方法。
(3)実施態様2記載の方法において、
前記第1部分は、
目穴付きの柱部であって、前記目穴が前記柱部の末端端部に形成されている、柱部、
を含み、
前記アンカー、および前記骨グラフトを前記骨孔に導入する前記段階は、
縫合糸を前記目穴に取り付ける段階、ならびに、
前記縫合糸に張力をかけて前記骨グラフトを前記骨孔に引っ張り込む段階、
を含む、
方法。
【0039】
(4)実施態様2記載の方法において、
前記第2部分が、前記骨グラフトにねじ込まれる、方法。
(5)実施態様2記載の方法において、
前記第2部分が、縫合糸を使って前記骨グラフトに結合される、方法。
(6)実施態様5記載の方法において、
前記第2部分が、対向する腕部を含み、
前記骨グラフトが、少なくとも1つの縫合糸を前記対向する腕部に通し、さらに前記骨グラフトに通すことにより、前記対向する腕部に結合されている、
方法。
(7)実施態様1記載の方法において、
前記骨孔は、大腿骨に形成された大腿骨孔を含み、
前記接着剤を前記骨孔に注入する前記段階は、前記大腿骨孔の中へと延びる横孔を通して前記接着剤を注入する段階を含む、
方法。
【0040】
(8)実施態様2記載の方法において、
前記第1部分が、
目穴付きの柱部であって、前記目穴が前記柱部の末端端部に形成されている、柱部、
を含み、
前記接着剤が、前記柱部の周囲、および、前記目穴の中へと広がって、前記アンカーを前記骨孔に固定する、
方法。
(9)靱帯グラフトにおいて、
骨グラフトであって、前記骨グラフトから延びる靱帯を有する、骨グラフトと、
アンカーであって、
前記骨グラフトに結合された第1部分、および、
少なくとも1つの表面特徴部を有する第2部分であって、前記少なくとも1つの表面特徴部が、前記第2部分を骨孔に接着により結合させるために、接着剤を受け入れるように構成されている、第2部分、
を有する、アンカーと、
を備える、靱帯グラフト。
(10)実施態様9記載の靱帯グラフトにおいて、
前記少なくとも1つの表面特徴部が、前記表面特徴部を貫通する開口部を有する目穴を備える、靱帯グラフト。
【0041】
(11)実施態様9記載の靱帯グラフトにおいて、
前記少なくとも1つの表面特徴部が、少なくとも1つの切除部分を備える、靱帯グラフト。
(12)実施態様9記載の靱帯グラフトにおいて、
前記第1部分が、前記骨グラフトと係合するために前記第1部分に形成されたねじ部を有する、細長い部材を備える、靱帯グラフト。
(13)実施態様9記載の靱帯グラフトにおいて、
前記第1部分が、間に前記骨グラフトを入れるための対向する腕部を含む、靱帯グラフト。
(14)実施態様13記載の靱帯グラフトにおいて、
前記対向する腕部、および前記骨グラフトが、前記骨グラフトを前記対向する腕部に結合させるように構成された縫合糸を入れるために、前記対向する腕部、および前記骨グラフトを貫通している少なくとも1つの縫合糸孔を含む、靱帯グラフト。
【0042】
(15)靱帯グラフトを骨孔の中に固定する方法において、
靱帯が取り付けられている骨グラフトを、少なくとも1つの切除部分を含むように改変する段階と、
前記骨グラフトを前記骨孔に導入する段階と、
接着剤を前記骨孔に注入し、前記接着剤が前記骨グラフトの少なくとも一部を囲み、前記少なくとも1つの切除部分内へと広がるようにし、これにより、前記骨グラフトを前記骨孔内部に張り付ける段階と、
を含む、方法。
(16)実施態様15記載の方法において、
少なくとも1つの切除部分を含むように前記骨グラフトを改変する前記段階が、複数の環状溝部を前記骨グラフトの周囲に形成する段階を含む、方法。
(17)実施態様15記載の方法において、
少なくとも1つの切除部分を含むように前記骨グラフトを改変する前記段階が、複数の溝部を前記骨グラフトに形成する段階を含む、方法。
【0043】
(18)実施態様15記載の方法において、
少なくとも1つの切除部分を含むように前記骨グラフトを改変する前記段階が、少なくとも1つの貫通孔を前記骨グラフトに形成する段階を含む、方法。
(19)靱帯グラフトを骨孔内に固定する方法において、
軟部組織靱帯をアンカーに連結する段階と、
前記アンカーを前記骨孔に導入する段階と、
接着剤を前記骨孔に注入し、前記接着剤が前記アンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、前記アンカーから前記軟部組織靱帯が延びている前記アンカーを前記骨孔内に張り付ける段階と、
を含む、方法。
(20)実施態様19記載の方法において、
前記アンカーが、
複数の表面特徴部が形成された第1部分であって、前記第1部分を前記骨孔内に結合させるために、前記接着剤をこれら表面特徴部の間に入れる、第1部分、および、
軟部組織グラフトに結合する結合要素を有する第2部分、
を含む、
方法。
(21)実施態様20記載の方法において、
前記結合要素が、目穴を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】人の膝と、ガイド装置を図示しており、ガイド装置がカニューレ状ガイドロッドを有し、このガイドロッドが脛骨および大腿骨に形成された骨孔を貫通している。
【図2】図1の人の膝およびガイド装置を図示しており、スリーブとトロカールの組立品が大腿骨に挿入されていて、大腿骨孔と交差する横孔を形成しているところを示している。
【図3】図2の人の膝を図示しており、ガイド装置およびトロカールが取り除かれ、スリーブが残されて横穴の中へ延びていて、靱帯グラフトが脛骨孔を通って延び、大腿骨孔に入っているところを示している。
【図4】図3の人の膝を図示しており、注射器がスリーブを通して横孔に挿入されていて、接着剤を大腿骨孔に注入しているところを示している。
【図5】図4の人の膝を図示しており、接着剤が靱帯グラフトの端部を囲むように、靱帯グラフトがさらに大腿骨に引っ張り込まれ、接着剤と接触させられるところを示している。
【図6】図5の人の膝を図示しており、クロスピンがスリーブを通して横孔に挿入され、靱帯グラフトを貫通して、その靱帯グラフトを大腿骨孔内の一定の位置に保持するところを示している。
【図7】図6の人の膝を図示しており、スリーブが、クロスピンを適所に残して取り去られているところを示している。
【図8】図7の人の膝を図示しており、クロスピンが、接着剤が硬化した後に取り去られているところを示している。
【図9A】骨グラフトに結合され、かつ、骨孔内に張り付けられるように構成されたアンカーの典型的な一実施形態の側面斜視図である。
【図9B】靱帯グラフトが骨グラフトから延びている骨グラフトに結合された、図9Aに示されているアンカーの側面透視図である。
【図9C】アンカー、骨グラフト、および、図9Bの骨グラフトが骨内の骨孔内部に植え込まれているところを示し、接着剤を入れるための、骨孔内の空間を示す説明図である。
【図10】アンカーの別の実施形態の側面斜視図であり、アンカーは、骨グラフトに結合され、かつ、骨孔内に張り付けられて、骨グラフトを骨孔内に固定するように構成されており、接着剤を入れるための環状溝部を有する。
【図11A】アンカーおよび骨グラフトの別の実施形態の側面図であり、アンカーと骨グラフトの各々は、骨グラフトをアンカーに結合させるために形成された縫合糸孔を有する。
【図11B】図11Aに示されているアンカーおよび骨グラフトの別の側面図である。
【図11C】図11Aおよび図11Bに示されているアンカーおよび骨グラフトであって、縫合糸を用いて互いに結合されているアンカーおよび骨グラフトの側面図である。
【図12A】接着剤を入れるための十字形状切除部を有するように改変された骨グラフトの典型的な一実施形態の斜視図である。
【図12B】接着剤を入れるための環状溝部を有するように改変された骨グラフトの別の典型的な実施形態の斜視図である。
【図12C】接着剤を入れるための貫通孔特徴部を有するように改変された骨グラフトのさらに別の典型的な実施形態の斜視図である。
【図12D】接着剤を周囲に受けるために形成された柱部を有するように改変された骨グラフトの別の典型的な実施形態の斜視図である。
【図13】周りに接着剤を受けるための表面特徴部を有し、かつ、靱帯グラフトと結合するための結合要素を有するアンカーのさらに別の実施形態の斜視図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨孔に靱帯グラフトを固定する方法において、
靱帯が取り付けられている骨グラフトにアンカーを連結する段階と、
前記アンカー、および前記骨グラフトを骨孔に導入する段階と、
接着剤を前記骨孔に注入し、前記接着剤が前記アンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、前記アンカーを前記骨孔内に張り付ける段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
靱帯グラフトにおいて、
骨グラフトであって、前記骨グラフトから延びる靱帯を有する、骨グラフトと、
アンカーであって、
前記骨グラフトに結合された第1部分、および、
少なくとも1つの表面特徴部を有する第2部分であって、前記少なくとも1つの表面特徴部が、前記第2部分を骨孔に接着により結合させるために、接着剤を受け入れるように構成されている、第2部分、
を有する、アンカーと、
を備える、靱帯グラフト。
【請求項3】
請求項2記載の靱帯グラフトにおいて、
前記少なくとも1つの表面特徴部が、前記表面特徴部を貫通する開口部を有する目穴を備える、靱帯グラフト。
【請求項4】
請求項2記載の靱帯グラフトにおいて、
前記少なくとも1つの表面特徴部が、少なくとも1つの切除部分を備える、靱帯グラフト。
【請求項5】
請求項2記載の靱帯グラフトにおいて、
前記第1部分が、前記骨グラフトと係合するために前記第1部分に形成されたねじ部を有する、細長い部材を備える、靱帯グラフト。
【請求項6】
請求項2記載の靱帯グラフトにおいて、
前記第1部分が、間に前記骨グラフトを入れるための対向する腕部を含む、靱帯グラフト。
【請求項7】
請求項6記載の靱帯グラフトにおいて、
前記対向する腕部、および前記骨グラフトが、前記骨グラフトを前記対向する腕部に結合させるように構成された縫合糸を入れるために、前記対向する腕部、および前記骨グラフトを貫通している少なくとも1つの縫合糸孔を含む、靱帯グラフト。
【請求項1】
骨孔に靱帯グラフトを固定する方法において、
靱帯が取り付けられている骨グラフトにアンカーを連結する段階と、
前記アンカー、および前記骨グラフトを骨孔に導入する段階と、
接着剤を前記骨孔に注入し、前記接着剤が前記アンカーの少なくとも一部を囲むようにし、これにより、前記アンカーを前記骨孔内に張り付ける段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
靱帯グラフトにおいて、
骨グラフトであって、前記骨グラフトから延びる靱帯を有する、骨グラフトと、
アンカーであって、
前記骨グラフトに結合された第1部分、および、
少なくとも1つの表面特徴部を有する第2部分であって、前記少なくとも1つの表面特徴部が、前記第2部分を骨孔に接着により結合させるために、接着剤を受け入れるように構成されている、第2部分、
を有する、アンカーと、
を備える、靱帯グラフト。
【請求項3】
請求項2記載の靱帯グラフトにおいて、
前記少なくとも1つの表面特徴部が、前記表面特徴部を貫通する開口部を有する目穴を備える、靱帯グラフト。
【請求項4】
請求項2記載の靱帯グラフトにおいて、
前記少なくとも1つの表面特徴部が、少なくとも1つの切除部分を備える、靱帯グラフト。
【請求項5】
請求項2記載の靱帯グラフトにおいて、
前記第1部分が、前記骨グラフトと係合するために前記第1部分に形成されたねじ部を有する、細長い部材を備える、靱帯グラフト。
【請求項6】
請求項2記載の靱帯グラフトにおいて、
前記第1部分が、間に前記骨グラフトを入れるための対向する腕部を含む、靱帯グラフト。
【請求項7】
請求項6記載の靱帯グラフトにおいて、
前記対向する腕部、および前記骨グラフトが、前記骨グラフトを前記対向する腕部に結合させるように構成された縫合糸を入れるために、前記対向する腕部、および前記骨グラフトを貫通している少なくとも1つの縫合糸孔を含む、靱帯グラフト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図12D】
【図13】
【公開番号】特開2007−175493(P2007−175493A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−341637(P2006−341637)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(504202690)デピュイ・ミテック・インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341637(P2006−341637)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(504202690)デピュイ・ミテック・インコーポレイテッド (12)
【Fターム(参考)】
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