説明

靴の舌革及び開閉システム

【解決手段】足に対して外側に位置する上面、及び前記足に対向する底面を備える非弾性部材の基本構造体(2)と、前記基本構造体(2)の上面に設けられ、少なくとも1つの靴紐(13)を固定して収容することができる構造を備えた保持機構(3)と、前記基本構造体(2)の底面に設けられたパッド(4)と、複数の穿孔(9)と、を有し、
前記基本構造体(2)により、前記足への全接触面に亘って適合して位置することができ、且つ左右の両側部(左右の側方部分)が前記足の甲の骨格に対応して前もって形成されている舌革に関する。更に、上記構成を有する舌革を有する靴用の開閉システムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の新しい舌革、又は靴の新しい開閉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現状の靴の開閉システムのデメリットを以下に記載する。
【0003】
既存の舌革又は開閉システムのそれぞれは、連続的な形状適合性及び均一な圧力分布の観点から、足の甲又は足そのものの骨格を十分に考慮していない。
【0004】
更に、現在知られている靴の開閉システムは手間がかかる。そして、既存の開閉システムの構成部材は、通常、当該システムの不可欠な部材であり、当該構成部材の欠陥が存在する場合、靴の更なる使用は多くの場合に不可能であり、新たな靴の購入が必要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、上述した現状の技術のデメリットを克服することができる靴の開閉システムの提供、及び靴を完全に開くことができる使いやすい靴の開閉システムにある。
【0006】
本発明の別の目的は、靴の開閉システムの操作性を改善する靴の舌革を提供することにある。
【0007】
本発明の更なる目的は、優れた形状適合性、及び足の上面における均一な圧力分布を可能にする靴の舌革を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的、及び以下の明細書に記載されている他の目的は、請求項1に係る舌革、又は請求項1に係る舌革を備える請求項10に係る開閉システムのそれぞれによって達成される。
【0009】
本発明の更なる有用な展開は、各従属請求項に記載されている。
【0010】
第1の特徴として、本発明は、基本構造体、保持機構、及びパッドから構成される靴の舌革に関係する。当該基本構造体は、実質的な非弾性部材からなり、足に対して外側に位置する上面及び足に対向する底面を有している。当該保持機構は、当該基本構造体の上面側に位置し、少なくとも1本の靴紐を固定して収納できるように形成されている。当該パッドは、基本構造体の底面に設けられている。基本的に、このような方法により2層構造の舌革が形成されている。パッド又は他の機能を有する更なる構成部材を備える多層構造の舌革の形態も考えられる。
【0011】
一態様として、紐すなわち靴紐用の保持機構を、当該基本構造体の上面側の所定の位置に取付けてもよい。
【0012】
別の態様として、当該基本構造体の上面に通路を設けてもよい。この態様において、保持機構は、当該通路内に配置されることができる。当該通路は、保持機構の受容手段を更に有していてもよい。また、これに代えて、保持機構は、当該通路への収容手段を備えていてもよい。当該通路に設けられる受容手段と、当該保持機構に設けられる収容手段と、を組み合わせることも可能である。更に、当該収容手段は、当該通路において所定の間隔で保持機構の位置決めを許容する。また、これに代えて、当該通路における保持機構の連続的に調整可能な位置決めを行うようにしてもよい。
【0013】
別の態様として、保持機構の当該調整可能な位置決めは、適切な間隔で当該通路内の任意の位置で行ってもよく、当該間隔は、好ましくは2.5mmである。
【0014】
別の態様として、保持機構は、少なくとも1つのタンカを含む。本明細書中で使用されるタンカは、揺動レバーを備えた閉鎖型であり、当該揺動レバーを用いてバンド又は紐のような靴紐を締め付けることによって保持機構内に固定してもよい。タンカに代わるものとして、保持機構は、保持アーム用の少なくとも1つの座部を含んでいる。保持機構における所定の位置での靴紐の適切な固定及び開放に用いられることができる限り、締め付け蓋、トリプルグローサ又は同等の装置の使用も同様にあり得る。従来型のタンカの使用も同様にあり得る。従来型のタンカは、一般に縦長であって、靴紐が貫通する孔を備える長方形の部材である。従来型のタンカは、当該孔を横断してバネで付勢されたボルトを押すことにより、靴紐を所定の位置に固定し、又は開放する。円形の従来型のタンカの使用もあり得る。
【0015】
本発明によれば、当該パッドによって空洞を形成することができる。例えば、舌革のパッドは両側のみに存在し、これによって舌革の中央部に空洞が形成される。更には、空洞の広がりは、足の甲に沿って設けることができる。
【0016】
別の態様として、複数の穿孔を舌革に設けてもよい。複数の穿孔は、空洞の上方に特に設けてもよい。当該穿孔は、水蒸気の排出を大変容易にし、足のムレを有効に改善する。
【0017】
別の態様として、靴紐が通り抜けるための入口開口と出口開口が基本構造体内に設けられてもよく、当該靴紐は、基本構造体の底面及び空洞内において、当該入口開口と出口開口との間を通り抜ける。
【0018】
別の態様として、舌革は、足の甲の骨格に対応して、左右の部分を前もって形成してもよい。
【0019】
本発明の第1の特徴に係る上記態様として、舌革は、1部材構造又は複数部材構造としてもよい。
【0020】
本発明の第1の特徴に係る上記態様として、基本構造体の実質的な非弾性部材には、プラスチックを用いてもよい。当該プラスチックとしては、特に、押出成形ポリウレタンが好ましい。舌革の基本構造体用に実質的な非弾性部材を使用することにより、つま先側から足首側までの舌革の全体部分に沿った形状適合性は、開閉システムの一部として舌革を使用することによって確保することができる。従って、舌革又は舌革を含む開閉システムのそれぞれにおける適合性の大幅な改善が可能である。更に、このような構成により、圧力が舌革全体に均一分布する。前述したように、足の甲の骨格への適合により、舌革を足によって十分に支持することができる。舌革の上記態様を用いることにより、ずれを最小化、又は十分に防止することができ、更にはフィット感の改善を図ることができる。
【0021】
第2の特徴として、本発明は、舌革、少なくとも1つの靴紐、及びガイド部材を含む靴の開閉システムを対象にしている。舌革は、本発明の上述した第1の特徴に従って具体化されている。当該少なくとも1つの靴紐用のガイド部材は、靴の甲の少なくとも一側方側に設けられている。当該少なくとも1つの靴紐は、舌革の上方のガイド部材に係合する。更に、当該少なくとも1つの靴紐は、本発明の先の第1の特徴に係る保持機構内に固定して取付けられる。
【0022】
バンド、紐、及び保持アームから、当該少なくとも1つの靴紐を選択することができる。アイレット、留め金、及び棒から、当該ガイド部材を選択することができる。
【0023】
一態様として、舌革の足首側端の所定位置に、保持機構を設けてもよい。保持機構は、上述したようなタンカを2つ含むことができる。パッドは、空洞が形成されるように具体化することができる。基本構造体において、靴紐の通り抜け用の入口開口及び出口開口を、基本構造体の底面及び空洞内で、当該入口開口と当該出口開口との間を靴紐が通り抜けることができるように設けることができる。2部分又は2区域の結束が形成されるように、紐状の2本の靴紐を設けることができ、この場合、つま先側紐は実質的に舌革のつま先側部位の上方に延び、且つ足首側紐は実質的に舌革の足首側部位の上方に延びている。足首側紐が配置されている部分を跨ぐために、つま先側紐は、入口開口に導入され、舌革の底面で空洞を通り抜け、足首側紐が配置されている部分を跨いだ後に出口開口を通り抜ける。この2部分又は2区域の結束により、つま先側から足首側までの連続的な形状適合性を確保することができる。
【0024】
別の態様として、ガイド部材は、アイレット及び/又は留め金として形成されてもよい。更に、保持機構からつま先側に向かって約1.5cm離間して、足首側ガイド部材を設けることができる。当該足首側ガイド部材は、保持機構と同一の高さに、配置することができない。当該約1.5cmの距離により、均一に分布された張力を確保することができる。
【0025】
別の態様として、通路内に保持機構を配置してもよい。更に、棒状の2つのガイド部材を、靴の甲の左右上で、足首側からつま先側まで延設してもよく、足首側及びつま先側座部に配置してもよい。
【0026】
別の態様として、足首側座部及び/又はつま先側座部に、2つの棒の少なくとも一方の位置を調整する調整機構を設けてもよい。
【0027】
別の態様として、各カートリッジを、足首側座部の代わりとして用いてもよい。当該カートリッジは、棒を所定の位置に固定するための1つ又は複数の凹みを更に有していてもよい。当該凹みは、棒の直径で設けることができる。例えば、1つのカートリッジに、2〜3の凹みを設けることができる。従って、例えば、2〜3の位置に棒を位置決めして固定することができ、棒同士の間の角度を増加又は減少させることができる。この有利な態様より、足の骨格の相違を補償することができる。例えば、幅がとても広い足の場合、一般に、中央側にある棒の位置を外側にすることができる。
【0028】
別の態様として、つま先側座部として可撓性部材を使用することができ、当該可撓性部材は、必要に応じて全方向に変形することができる。当該可撓性部材は、調整ネジを有してもよく、任意的に2部材で設けてもよい。更に、可撓性部材は、例えば湾曲部を形成することにより、棒同士を相互に連結することができる。調整ネジにより、例えば、2つの棒の位置を調整することができる。例えば、調整ネジを用いることにより、棒を平行に配置したり、棒を足首側からつま先側に向かって鋭角に収束することができる。
【0029】
別の態様として、リボン状の2つの靴紐は折り返し状の結束を行うものであって、舌革上方における2つの紐の位置は、保持機構を移動することにより、2つの棒において、足首側方向及び/又はつま先側方向に調整してもよい。つま先側から足首側に当該保持機構を変位させるにつれ、開閉システム、すなわち靴を閉じることができる。要望通りの長さに紐そのものを調整できることが、更に好ましい。従って、この態様においても、つま先側から足首側にかけた連続的な形状適合性を確保することができる。
【0030】
別の態様として、保持アーム型の2つの靴紐を設けることにより、舌革上方の2つの保持アームの位置が、2つの棒において、足首側方向及び/又はつま先側方向への保持機構の移動によって調整可能となる機構が形成されもよい。つま先側から足首側に当該保持機構を変位させるにつれ、開閉システム、すなわち靴を閉じることができる。従って、この態様においても、つま先側から足首側にかけた連続的な形状適合性を確保することができる。
【0031】
本発明の第2の特徴に係る上述した態様として、靴紐をバンド及び/又は紐とした場合、靴の甲と靴紐との固定接続は、所定の位置に固定具によって行ってもよい。更に、当該固定具を、任意的に調整可能としてもよい。
【0032】
第3の特徴として、本発明は、第1の特徴に基づく靴の舌革、又は第2の特徴に基づく靴の開閉システムのそれぞれを対象としている。ここで、舌革又は開閉システムの全ての構成要素のそれぞれは、交換することができる。従って、もし、本発明に係る構成部材のいずれかに欠陥がある場合においても、靴の引き続いての使用を確保することができる。更に、いくつかの構成部材は、使用者自身により交換可能であることがわかる。
【発明の効果】
【0033】
以下のように、本発明によって達成される効果を要約することができる。
【0034】
本発明に係る舌革の形態により、開閉システムの操作性が向上する。
【0035】
本発明に係る、材料や形状の観点による舌革の態様、及び本発明に係る開閉システムの態様により、つま先側から足首側における舌革の全体に沿って連続的な形状適合性及び圧力の均一分布を確保することができる。
【0036】
空洞の上方に設けられることが好ましい、本発明に係る穿孔を備えることにより、水蒸気を極めて容易に排出することができ、足のムレを効果的に改善することができる。
【0037】
舌革又は開閉システムに交換可能な部材を備えることにより、本発明に係る部材に何らかの欠陥が生じた場合に、靴の引き続きの使用を確保することができる。
【0038】
従って、本発明により、優れて且つ連続的な形状適合性、及び圧力の均一分布を備え、容易に実施でき、安価且つ省資源である靴用の開閉システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る舌革の実施形態の概略図である。
【図2】本発明に係る開閉システムの実施形態の概略図である。
【図3】本発明に係る開閉システムの更なる実施形態の概略図である。
【図4】本発明に係る開閉システムの別の実施形態の概略図である。
【図5A】バンド又は紐などの靴紐を締め付けて保持機構内の所定の位置に固定するのに用いることができる揺動レバーが備わっているシングルタンカの概略図である。
【図5B】図5Aのタンカに類似するレバーの構造を備えるタブルタンカの概略図である。
【図6】2部材構造を備える舌革の概略図である。
【図7A】本発明に係る開閉システムの別の実施形態の概略図である。
【図7B】本発明に係る開閉システムの更なる別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下において、好ましい実施形態及び添付図面の記載を使用して、本発明の詳細な説明を行う。
【0041】
図1には、本発明に係る舌革1の実施形態の概略図が示され、舌革1は長手方向軸線に対して対称である。舌革1は、靴と同一の材料によって被覆されていることが好ましい。舌革1は、基本構造体2及びパッド4を有して示されている。基本構造体2を見易くするための、図1における保持機構は示されていない。基本構造体2は、押出成形ポリウレタン、及び実質的な非弾性部材(例えば、硬質プラスチック)から形成されている。この材料により、開閉システムが閉じた際に、当該舌革が接触面全体における形状適合性を有しながら、足の上に載った状態が確保される。更に、図1において、足に対して外側に位置する基本構造体2の上面を視認することができるが、足に対向する底面は示されていない。パッド4は、基本構造体2の底面側のわずかな部分で示されている。通路5が、基本構造体2の上面側に示されている。通路5内には、図1では示されていない保持機構3の受容手段が示されている。当該示された受容手段は、通路5における保持機構3の位置決めが可能であって、その位置は規定された間隔で調整可能となっている。ここでは、約2.5mmの間隔で当該位置を調整することができる。ここで、パッド4は、空洞8を形成している。ここで、舌革1のパッド4は左右両側のみに形成されているため、空洞8は舌革1の中央部分に形成されている。更に、図1には複数の穿孔9が示されている。ここで、複数の穿孔9は、空洞8の上方に形成されている。これらの穿孔9は、水蒸気の排出を大変容易にすることができ、足のムレを効果的に改善することができる。ここで、舌革1は、1部材構造として示されている。
【0042】
図6において、2部材構造を有する舌革が示され、当該2つの部材には、足の甲とすねとの間の境界部分にヒンジ状機構21が実装されている。図6に示された2部材構造の舌革は、以下において説明する2部分又は2区域の結束(図2参照)がなされた状態で示されている。但し、2部材構造の使用は、2区域の結束を有する実施形態に限定されることなく、その後に説明する他の実施形態で使用されることもできる。そのような2部材構造の舌革は、足首を覆う履き物に用いられることが好ましい。
【0043】
上述したように、舌革1の基本構造体2に押出成形ポリウレタンを使用することにより、つま先側から足首側までの舌革1の全体部分にわたって形状適合性を、開閉システムの一部として舌革1を使用する際に確保することができる。このようにして、舌革又は開閉システムの適合性を、それぞれ十分に改善することができる。更に、当該改善とともに、圧力を舌革全体に均一に分布されることができる。
【0044】
図2には、本発明に係る開閉システムの実施形態の概略図が示されている。図示した開閉システム12は、舌革1を有している。保持機構3(正方形の破線)は、舌革1の足首側端の中央部分に示されている。ここで、保持機構3は、ダブルタンカ6を有している。使用に好適な当該タンカは、図5A及び図5Bに示されている。図5Aは、バンド又は紐のような靴紐13を締め付けることによって保持機構3内の所定の位置に固定する際に使用する揺動レバー22が備わっているシングルタンカ6を示す。図5Bは、図5Aに示すものと類似するレバーの機構を備えるダブルタンカを示している。当該ダブルタンカは、お互いに独立して動作させることができる、隣接した2つの揺動レバー22を有している。当該ダブルタンカは、2区域の結束に使用されることが好ましい。
【0045】
基本構造体2は、つま先側紐13dが通り抜けるための入口開口10及び出口開口11を有しており、つま先側紐13dは、基本構造体2(破線)の底面側であって空洞8(図示せず)内において、入口開口10と出口開口11との間を通り抜ける。更に、足首側紐13pが示されており、つま先側紐13dが舌革1のつま先側部分の実質的に上方に延び、足首側紐13pが舌革1の足首側部分の実質的に上方に延びて、2部分又は2区域の結束が形成されている。従って、つま先側紐13dは、足首側紐13pの当該足首側部分を跨いでいる。つま先側紐13d及び足首側紐13pの一方は、タンカ6のうちの一方に挿入され、つま先側紐13d及び足首側紐13pの他方は、タンカ6のうちの他方に挿入されている。更に、靴の甲Sの左右に示されているアイレット14には、紐13が挿入されている。足首側アイレット14pは、均一な張力を発生させるために、保持機構3からつま先方向に約1.5cmの距離の位置に配置されている。更に、紐13は、個々の固定具20によって靴の甲Sに固定接続されて示されている。この2部分又は2区域の結束は、つま先側から足首側までの連続的な形状適合性を確保する。
【0046】
図3には、本発明に係る開閉システムの別な実施形態が示されている。図示した開閉システム12は、舌革1を有している。保持機構3(正方形の破線)は、通路5にあって舌革1の中央部分に示されている。ここで、保持機構3は、1つのシングルタンカ6を備えている。保持機構3の受容手段が通路5に示されている。当該示された受容手段は、通路5における保持機構3の位置決めを行うことが可能であり、その位置は規定された間隔で調整可能となっている。この場合にも、当該位置決めを約2.5mmずつで調整することができる。更に、靴の甲(図示せず)の左右に2本の棒14が、足首側からつま先側まで延び、足首側座部及びつま先側座部に配置されて存在している。
【0047】
ここで、左右のカートリッジ15が、足首側座部として示されている。カートリッジ15のそれぞれは、棒14を所定の位置に固定するための2つの凹み16を有している。ここで、凹み16は、実質的に棒14の直径に想到する大きさで示されている。従って、棒14のそれぞれを2箇所で固定されることができ、棒14同士の間の角度を増減することができる。
【0048】
既に上述したように、この有利な実施形態により、足の異なる骨格に対処することが可能になる。更に、つま先側座部として、全方向に変形可能な可撓性部材17が示されている。可撓性部材17は、歩行中の足のロール運動(横揺れ運動)に有利である。可撓性部材17は調整ネジ18を有し、調整ネジ18によって中央部分で半分に分割されている。ここで、可撓性部材17は、湾曲部を形成することにより、棒14を相互に連結する。調整ネジ18により、2つの棒14の互いの関係は、2つの棒14が足首側からつま先側に向けて鋭角で収束するように設定される。更に、2つの紐13が折り返し状の結束を形成するように配置されており、足首側方向及び/又はつま先側方向に保持機構3を移動することにより、舌革1の上方にある2つの紐13の位置が定まるようになっている。保持機構3をつま先側から足首側に偏移するにつれ、開閉システム12、すなわち、靴が閉じることになる。また、2つの紐13は、タンカ6に導入されている。更に、紐13自体の長さを調整することができるようになっている。紐13は、それぞれの固定具20によって靴の甲に固定接続されて示されている。従って、上述したようなつま先側から足首側までの連続的な形状適合性が、この実施形態においても同様に確保される。
【0049】
図4には、本発明に係る開閉システムの別な実施形態の概略図が示されている。舌革1を備えた開閉システム12が示されている。保持機構3(正方形の破線)は、通路5にあって舌革1の中央部分に示されている。ここで、保持機構3は、1つの保持アームごとに1つの座部7を備えている。保持機構3の受容手段が通路5内に示されている。当該示された受容手段は、通路5における保持機構3の位置決めを行うことが可能であり、その位置は規定された間隔で調整可能となっている。この場合にも、当該位置決めは、約2.5mmずつで調整される。更に、靴の甲(図示せず)の左右の2本の棒14が、足首側からつま先側まで延び、足首側座部及びつま先側座部に配置されて示されている。ここで、左右のカートリッジ15が、足首側座部として示されている。カートリッジ15のそれぞれは、棒14を所定の位置に固定するための2つの凹み16を有している。ここで、凹み16は、実質的に棒14の直径に相当する大きさで示されている。従って、棒14のそれぞれを2箇所で固定することができ、棒14同士の間の角度を増減することができる。上述したように、この有利な実施形態により、足の異なる骨格を補償することができる。更にここでは、全方向に変形することができるつま先側座部として、可撓性部材17が示されている。可撓性部材17は、調整ネジ18を有し、調整ネジ18によって中央部分で半分に分割されている。ここで、可撓性部材17は、湾曲部を形成することにより、棒14を相互に連結する。調整ネジ18により、2つの棒14の互いの位置関係は、2つの棒14が足首側からつま先側へ向かって鋭角で収束するように設定される。更に、保持アーム19の位置を調整する機構を形成するように保持アーム19が配置されており、保持機構3を動かすことによって足首側方向及び/又はつま先側方向に向け、2つの棒において舌革1上方の保持アーム19の位置が調整される。保持機構3をつま先側から足首側に偏移するにつれ、開閉システム12、すなわち、靴が閉じることになる。上述したようなつま先側から足首側までの連続的な形状適合性が、この実施形態においても同様に確保される。
【0050】
図7A及び図7Bには、本発明に係る開閉システムの更なる他の実施形態の概略図が示され、当該示された変形は1部材構成又は2部材構成の舌革に使用することができる。これらの変形は、取り扱いがより簡単であることから、子供用の靴に特に適している。図7Aにおいては、“ローカット靴”と呼ばれる靴に使用できる1部材構成の舌革が示されている。図7Bは、足首を覆う靴に有利な2部材構成の舌革が示され、このような変形例におけるタンカ6は、通路5において、上方又は下方に向かって少し偏移させることができる。図7A及び図7Bの両変形例のそれぞれでは、つま先側端又は靴の甲の裏面において、紐13が固定部材23によって相互に連結されている。更に、固定部材23自体を、靴の甲に恒久的に固定してもよい。固定部材23は、互いにネジ留めされ且つ紐が装着される、2つの金属又はプラスチック製小片を有するようにしてもよい。それに応じて形成されたタンカは、固定部材23としても機能することができる。図7A及び図7Bの両変形例では、足首側端において、紐13に保持補助部24を設けてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 舌革
2 基本構造体
3 保持機構
4 パッド
5 通路
6 タンカ
7 保持アーム用の座部
8 空洞
9 穿孔
10 入口開口
11 出口開口
12 開閉システム
13 靴紐,紐
13p 足首側紐
13d つま先側紐
14 ガイド部材,アイレット,棒
14p 足首側アイレット
15 足首側座部,カートリッジ
16 凹み
17 可撓性部材
18 調整ネジ
19 保持アーム
20 固定具
22 揺動レバー
23 固定部材
24 保持補助部
S 靴の甲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足に対して外側に位置する上面、及び前記足に対向する底面を備える非弾性部材の基本構造体(2)と、
前記基本構造体(2)の上面に設けられ、少なくとも1つの靴紐(13)を固定して収容することができる構造を備えた保持機構(3)と、
前記基本構造体(2)の底面に設けられたパッド(4)と、
複数の穿孔(9)と、を有し、
前記基本構造体(2)により、前記足への全接触面に亘って適合して位置することができ、且つ左右の両側部(左右の側方部分)が前記足の甲の骨格に対応して前もって形成されていることを特徴とする靴の舌革。
【請求項2】
前記パッド(4)は、前記足の甲に沿って延在する空洞(8)が形成されるように設けられることを特徴とする請求項1に記載の舌革。
【請求項3】
前記複数の穿孔(9)は、前記空洞(8)の上方に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の舌革。
【請求項4】
前記基本構造体(2)の前記上面に通路(5)を更に有し、
前記保持機構(3)は、前記通路(5)内に配置され、
前記通路(5)が前記保持機構(3)の受容手段を有し、及び/又は前記保持機構(3)が前記通路(5)に収容されるための収容手段を有し、
前記受容手段、及び前記収容手段の少なくとも一方は、前記通路(5)において、前記保持機構(3)の所定の間隔による調整可能な位置決め、又は連続的に調整可能な位置決めを許容することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の舌革。
【請求項5】
前記保持機構(3)の調整可能な位置決めは、2.5mm間隔で前記通路(5)における任意の位置において行われることを特徴とする請求項4に記載の舌革。
【請求項6】
前記保持機構(3)は、少なくとも1つのタンカ(6)、又は保持アーム用座部(7)を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の舌革。
【請求項7】
前記基本構造体(2)において、前記靴紐(13)を通り抜けさせるための入口開口(10)及び出口開口(11)が、前記基本構造体(2)の底面側で前記空洞(8)内において前記入口開口(10)と前記出口開口(11)との間を前記靴紐(13)が通過するように設けられていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1に記載の舌革。
【請求項8】
1部材構造又は複数部材構造を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の舌革。
【請求項9】
前記基本構造体(2)の非弾性部材はプラスチック、特に押出成形ポリウレタンであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載の舌革。
【請求項10】
請求項1乃至10に記載の舌革(1)と、
少なくとも1つの靴紐(13)と、
靴の甲(S)の少なくとも1側方部にある少なくとも1つの靴紐に対して用いられ、当該少なくとも1つの靴紐が前記舌革(1)の上方で係合するガイド部材(14)と、を備え、
前記少なくとも1つの靴紐(13)は、保持機構(3)内に固定的に受容されることを特徴とする靴の開閉システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの靴紐(13)は、バンド、紐、及び保持アームから選択されることを特徴とする請求項10に記載の開閉システム。
【請求項12】
前記ガイド部材(14)は、アイレット、留め金、及び棒から選択されることを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の開閉システム。
【請求項13】
前記保持機構(3)は、前記舌革(1)の足首側端部の所定位置に取付られ、且つ2つのタンカ(6)を備え、
前記パッド(4)は、空洞(8)が生じるように形成され、
前記基本構造体(2)において、前記靴紐(13)を通り抜けさせるための入口開口(10)及び出口開口(11)が、前記基本構造体(2)の底面側で前記空洞(8)内において前記入口開口(10)と前記出口開口(11)との間に前記靴紐(13)が案内されるように設けられ、
紐の形態をなす2つの靴紐(13)が、2部からなる結束を形成するように設けられ、
つま先側紐(13d)が前記舌革(1)のつま先側部分の上方に延設され、足首側紐(13p)が前記舌革(1)の足首側部分の上方に延設され、前記足首側紐(13p)の前記足首側部分を跨ぐために、前記つま先側紐(13d)が前記入口開口(10)に挿入され、前記舌革(1)の底面側で前記空洞(8)内を通過し、前記足首側紐(13p)の前記足首側部分を跨いだ後、前記出口開口(11)から抜け出すことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1に記載の開閉システム。
【請求項14】
前記ガイド部材(14)は、アイレット及び/又は留め金のように形成され、
前記足首側にある前記ガイド部材は、前記保持機構(3)から前記つま先側に向かって1.5cm離間して配置されていることを特徴とする請求項13に記載の開閉システム。
【請求項15】
前記保持機構(3)は前記通路(5)内に配置され、
棒(14)の形態の2つのガイド部材(14)は、靴の甲(S)の左右において足首側からつま先側まで延び、且つ足首側及びつま先側座部(15,16)に配置されていることを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1に記載の開閉システム。
【請求項16】
前記2つの棒(14)の少なくとも1つの位置を調整するための調整機構が、前記足首側座部及び/又はつま先側座部(15、17)に設けられていることを特徴とする請求項15に記載の開閉システム。
【請求項17】
所定位置で前記棒(14)を保持するための1又は2以上の凹み(16)を有するそれぞれ1つのカートリッジ(15)が、前記足首側座部(15)として使用されることを特徴とする請求項16に記載の開閉システム。
【請求項18】
調整ネジ(18)を有し、且つ前記棒(14)を相互に連結する可撓性部材(17)が、つま先側座部(17)として使用されることを特徴とする請求項15又は16に記載の開閉システム。
【請求項19】
前記紐(13)の形態の前記2つの靴紐(13)は折り返し状の結束を形成し、
前記舌革(1)上方における前記2つの紐(13)の位置は、前記足首側方向及び/又は前記つま先側方向への前記保持機構(3)の移動によって前記2つの棒(14)において調整され、
前記紐(13)は、それらの長さが前記保持機構(3)内で調整可能となるように設けられていることを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1に記載の開閉システム。
【請求項20】
保持アーム(19)型の前記2つの靴紐(13)を設けることにより、前記舌革(1)の上方の前記2つの保持アーム(19)の位置が、前記2つの棒(14)において、前記足首側方向及び/又は前記つま先側方向への前記保持機構(13)の移動によって調整可能となる機構が形成されていることを特徴とする請求項15乃至18のいずれか1に記載の開閉システム。
【請求項21】
前記靴紐(13)がベルト及び/又は紐の場合に、
前記靴紐(13)の前記靴の甲(S)との固定接続が、任意的に調整可能な固定具(20)によって所定の位置に行われることを特徴とする請求項10乃至19のいずれか1に記載の開閉システム。
【請求項22】
前記舌革(1)又は前記開閉システム(12)の全ての構成部材のそれぞれが、交換式であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに1に記載の舌革、又は請求項10乃至21のいずれか1に記載の開閉システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2012−525881(P2012−525881A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509010(P2012−509010)
【出願日】平成22年5月4日(2010.5.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/056022
【国際公開番号】WO2010/128037
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(511266645)
【氏名又は名称原語表記】LEDERER, Stefan
【住所又は居所原語表記】Soxhletstr.  6,  80805 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】