説明

靴下又は筒状の下肢用サポーター

【課題】装着時の快適性向上及び耐久性向上を図り、長時間装着しても所定部位に適切な圧迫圧を安定的に与えることで、疲労軽減、疾患の予防又は治療等が効果的に行える靴下又は筒状の下肢用サポーター(靴下等)を提供する。
【解決手段】
足部の一部又は全部、足首部、及びふくらはぎ部を覆う布からなり、装着時に、足首部4及び/又はふくらはぎ部5に、疲労軽減、疾患の予防又は治療のための所定圧迫圧分布が作用するようにした靴下1等において、前記足首部4及び/又はふくらはぎ部5を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸の太さは、212〜700μmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴下又は筒状の下肢用サポーターに関し、特に、スポーツ用、生活用として、スポーツ中の身体への負担軽減、下肢のむくみの予防や軽減等の疲労軽減のために使用する靴下又は筒状の下肢用サポーターに関する。また、本発明は、医療用として、下肢の静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防又は治療に使用することができる。
本発明の対象となる靴下又は筒状の下肢用サポーターの形態は、足部からふくらはぎまでを覆うもの(所謂ソックス)、足部から膝下までを覆うもの(所謂ハイソックス)、足部から大腿部までを覆うもの(所謂ストッキング)、足部から腰までを覆うもの(所謂パンティーストッキング)等がある。前記各種形態において、踵部、足先部、又は足部を部分的に覆わないものであっても良い。
なお、「靴下又は筒状の下肢用サポーター」のことを以下「靴下等」ということがある。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療分野において、下肢における静脈瘤、静脈血栓症といった静脈還流障害やリンパ浮腫等の疾患の予防や治療に、足首部から大腿部へと段階的に圧迫圧が弱くなるように設計されている弾力性の靴下が提案されており(例えば、特許文献1参照)、その効果は良く知られている。
また、スポーツ用、生活用としても、下肢の疲れ等を防止するため、又は傷害の予防や治療をするために、弾力性の靴下又は筒状の下肢用サポーターが使用されている。そして、その予防又は治療効果を高めるために、装着時に所定の部分に他の部分より高い着圧(締め付け力)がかかるように設計されたものが提案されている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0003】
ところで、靴下等を構成する布としては、従来、編物が一般的に使用されている。そして、この編物は、編目を構成するナイロン糸と、編目の横方向に挿入するナイロン糸でカバーされたポリウレタン弾性糸とからなっている。しかしながら、これらのナイロン糸は、美的印象を高めるために、比較的細い糸を使用する場合が多く、特にスポーツ用、生活用のように、外部と多くの接触を伴う状況で長時間使用したり、繰り返し洗濯をして使用したりする場合には、装着時の快適性、耐久性等の点で十分満足できるものではなかった。
【0004】
そして、上記のような糸が使用された靴下等の場合、摩擦等によりナイロン糸でカバーされたポリウレタン弾性糸が皮膚接触面に露出したり、切断されたナイロン糸により生地表面にピリング(毛玉)が発生したりして、編物としての十分な機能が発揮できなくなる。即ち、従来の靴下等は使用に伴い耐久性が低下する問題がある。靴下等を構成する布として織物、不織布を使用した場合においても同様である。
【0005】
さらに、上記のようなポリウレタン弾性糸の露出や毛玉の発生に伴い、装着時の肌触りが悪化する問題が派生する。また、このように、装着時に快適性の低下がある場合には、装着者は、無意識に靴下等をずらしたり、擦ったりして、靴下などによれや皺が発生したりすることがあった。そのため、これらの靴下等に設定した着圧が、所望の位置で発揮されず、予防や治療効果が有効に発揮されない問題があった。特に、強い圧迫圧が加わるように設定されている部位で、このようなよれや皺が発生すると、不快感や皮膚刺激が増大する。さらにまた、上記耐久性の低下は、布組織のバランスを崩し、適切な圧迫圧発揮を阻害する恐れがある。
【0006】
また、発汗による靴内での蒸れは、菌の増殖、悪臭発生の原因となり、装着時の快適性という点において影響が大きい。このような菌の増殖を抑えるものとして、ゼオライト系固体粒子をナイロン糸に添加混合し、このゼオライト系固体粒子に金属イオンを保持させたストッキングが知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、このような固体粒子の添加は、糸の肌触りを悪化させ、装着時の快適性を損なう恐れがあった。
【0007】
【特許文献1】実開平3−85025号公報
【特許文献2】特公平6−51921号公報
【特許文献3】特許第2914614号公報
【特許文献4】特開平4−126802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、装着時の快適性の向上および耐久性の向上を図り、長時間装着しても所定の部位に適切な圧迫圧を安定的に与えることで、疲労軽減、疾患の予防又は治療等が効果的に行える靴下又は筒状の下肢用サポーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、少なくとも、足部の一部又は全部、足首部、及びふくらはぎ部を覆う布からなり、装着時に、前記足首部及び/又はふくらはぎ部に、疲労軽減、疾患の予防又は治療のための所定の圧迫圧分布が作用するようにした靴下又は筒状の下肢用サポーターにおいて、前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸の太さは、212〜700μmとしたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸の太さが212μm未満であると、前述のように、摩擦等によりナイロン糸にカバーされているポリウレタン弾性糸が皮膚接触面に露出したり、生地表面にピリング(毛玉)が発生したりして、装着時の肌触りが悪化する可能性があるが、太さが212μm以上の場合には、耐久性が大きく、快適性が損なわれることがない。また、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸の太さが700μmを超える場合には、生地がごわごわし、布組織も安定化せず縮れや歪みを生じて、全体に硬い感じの風合いになり好ましくない。足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸は、50重量%以上の糸を太さ212〜700μmにする必要があり、好ましくは220〜400μmの範囲の太さの糸である。また、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸を、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上を太さ212〜700μmとする。100重量%でもよい。特に、足首部及びふくらはぎ部を覆う布の双方において、前記糸を使うことが好ましい。
【0011】
また、前記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし8の発明が好ましい。即ち、前記請求項1に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーターにおいて、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布の圧縮エネルギーは、0.35〜3.5gf・cm/cm2とする(請求項2)。圧縮エネルギーは、布のふんわり感や、緩衝作用に関係する。前記請求項2の発明によれば、柔らかな皮膚接触面を形成し、また、外部からの接触に対して好適な緩衝作用を奏し、装着時の快適性を向上することができる。圧縮エネルギーが0.35gf・cm/cm2未満の場合は、布の肌触りが悪く、3.5gf・cm/cm2を超える場合には、かさばった感じがして装着時に違和感を生じる場合がある。
【0012】
さらに、前記請求項1または2に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーターにおいて、前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布の表面粗さは、25.0以下とする(請求項3)。表面粗さが25.0を超える場合には、装着時に肌ざわりが悪化する場合がある。
【0013】
また、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を編物に特定した場合の実施態様としては、下記請求項4の発明が好ましい。即ち、前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーターにおいて、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を編物で構成し、その編物を構成する糸の50重量%以上の糸が、太さ212〜700μmの編目を構成する糸とする(請求項4)。靴下等を編物で構成する場合には、編目を構成する糸と、編目の横方向に挿入する弾性糸とから構成することが好ましい。この際、編目を構成する糸は、編物の表面に配置され、また、皮膚に直接接触するため、本発明においては、編目を構成する糸に太さ212〜700μmの糸を分布させることが、耐久性および快適性向上の観点から重要である。
【0014】
なお、前記請求項4の発明において、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布は、2.54cm当たり18〜60列のウェールと、18〜50列のコースからなる編物とすることが好ましい。この範囲は、所望の圧迫圧を安定させて発揮させるための好適な編み組織バランスである。
【0015】
また、本発明の靴下又は筒状の下肢用サポーターは、次の態様が好ましい。即ち、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸を、紡績糸とする(請求項5)。紡績糸を構成する短繊維により、糸に適度な柔らかさが付与され、また、糸の表面に微細な凹凸が形成されることで、皮膚との密着性が向上し、ずれが起り難くなる。
【0016】
さらに、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸を、セルロース繊維からなる糸とすることが好ましい(請求項6)。これにより、靴下又は筒状のサポーターが汗を良好に吸収するようになり、長時間使用しても蒸れ難く、また肌触りもよく、装着感が非常に良い。さらにまた、前記請求項6の態様においては、セルロース繊維が、カルボキシアルキル基の少なくとも一部が抗菌性金属カルボキシアルキル基で置換されているカルボキシアルキル化セルロース繊維を含んでなることが好ましい(請求項7)。
【0017】
また、本発明の靴下又は筒状の下肢用サポーターに設ける圧迫圧分布は、次の態様が好ましい。即ち、足首部からふくらはぎ部へと順次圧迫圧が小となる圧迫圧分布を備えるものとする(請求項8)。なお、前記請求項8の発明において、足首部の圧迫圧は、ふくらはぎ部の圧迫圧より高く、それぞれ、18〜67hPa、9〜54hPaの範囲とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、長時間装着しても装着時の使用感が良好であるため、装着者が靴下又は筒状のサポーターをずらしたり、擦ったりして、よれや皺を発生させることがない。その結果、靴下又は筒状の下肢用サポーターを長時間使用しても、下肢の所定の位置に適切な圧迫圧を安定的に与えることが可能になり、装着者の疲労軽減、又は下肢のむくみの予防や軽減等が効果的に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1および図2に基づき、本発明の実施形態について述べる。図1は、本発明の実施形態の一例に係るソックスタイプの靴下である。図1において、1はソックスタイプの靴下を示し、この実施形態は、足先部2から、踵部3、足首部4、ふくらはぎ部5を通り、膝部6のやや下の足口部7まで覆うタイプの靴下を示す。
【0020】
図1に示す靴下は前述のように、編物、織物、不織布等の布により形成される。太さ212〜700μmの範囲の糸が足首部4及び/又はふくらはぎ部5を覆う布全体に占める割合としては、少なくとも50重量%とし、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。100重量%でもよい。
足首部4及び/又はふくらはぎ部5を覆う布を編物で構成する場合には、編目を構成する糸と、編目の横方向に挿入する弾性糸とから編物を構成することが好ましく、両者合わせた糸の50重量%以上の糸を、太さ212〜700μmとする。特に、その編物を構成する糸の50重量%以上の糸が、太さ212〜700μmの編目を構成する糸とすることが好ましい。
また、足首部4及び/又はふくらはぎ部5を覆う布を織物で構成する場合には、その織物の経糸および緯糸の両者合わせた糸の50重量%以上の糸を、太さ212〜700μmとする。
さらに、足首部4及び/又はふくらはぎ部5を覆う布を不織布で構成する場合には、不織布を構成する50重量%以上の糸(繊維)を、太さ212〜700μmとする。
【0021】
本発明の靴下又は筒状の下肢用サポーターにおける布は、従来と同様の編構造を採用でき、例えば、平編み、ゴム編、パール編等で形成した編組織に、横方向から弾性糸等を挿入する態様が利用できる。
【0022】
特に、足首部及び/又はふくらはぎ部を、2.54cm当たり18〜60列のウェールと、18〜50列のコースからなる編構造で形成することが好ましく、この範囲であれば、所望の圧迫圧を安定させて発揮させることができる。さらに好ましくは、2.54cm当たり18〜45列のウェールと、18〜30列のコースからなる編構造で足首部及び/又はふくらはぎ部を形成する。
【0023】
また、足首部及び/又はふくらはぎ部を、弾性糸から構成する編目と、編目の横方向に挿入される弾性糸とからなる編構造で形成することが好ましい。こうすることで、靴下又は筒状の下肢用サポーターの縦方向及び横方向の伸びが良好となり、皮膚の伸展や体の動きにフィットし易くなり、ずれが抑制される。弾性糸としては、ポリウレタン又は天然ゴム弾性糸を芯糸としその周囲に他の糸をコイル状に巻きつけた弾性糸、所謂カバードヤーンが好ましい。
【0024】
なお、本発明でいう縦方向とは、編布の製造方向に平行な方向をいい、通常は、編布のウェール方向が該当する。一方、横方向とは、縦方向に直交する方向をいい、通常は、編布のコース方向が該当する。
【0025】
足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸としては、紡績糸を用いることが好ましい。好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上、足首部及び/又はふくらはぎ部の布を構成する糸に紡績糸を使用する。紡績糸を構成する短繊維により、糸に適度な柔らかさが付与され、また、糸の表面に微細な凹凸が形成されることで、皮膚との密着性が向上し、ずれが起り難くなる。
【0026】
また、足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸の材料としては、セルロース繊維からなる糸を用いることが好ましい。好ましくは55%重量以上、さらに好ましくは60重量%以上、足首部及び/又はふくらはぎ部の布構造を構成する糸にセルロース繊維からなる糸を使用する。これにより、靴下又は筒状の下肢用サポーターが汗を良好に吸収するようになり、長時間使用しても蒸れ難く、また肌触りもよく、装着感が非常に良い。
【0027】
さらに、上記セルロース繊維は、カルボキシアルキル基の少なくとも一部が抗菌性金属カルボキシアルキル基で置換されているカルボキシアルキル化セルロース繊維を含んでなることが好ましい。抗菌性金属としては、亜鉛、銀、銅が挙げられるが、長期間使用しても酸化などによる変色がない亜鉛が好ましい。また、カルボキシアルキル基の抗菌性金属カルボキシアルキル基による平均置換度(セルロース繊維を構成するセルロースの無水グルコース単位当たりのカルボキシアルキル基のモル数)は、0.01〜0.3であることが好ましい。このような処理をすることにより、肌触りの良い風合いを維持しつつ、持続的な抗菌性、消臭性を付与することが可能となる。セルロース繊維の抗菌性金属カルボキシアルキル化は、従来からの方法を利用でき、例えば、セルロース繊維をアルカリ金属カルボキシアルキル化した後、金属イオン交換反応によって、アルカリ金属を抗菌性金属に変換することによって得ることができる。
また、抗菌性、消臭性を付与する方法としては、靴下等の布の肌触り、設定した圧迫圧が損なわれないものであれば、上記のセルロース繊維を抗菌性金属カルボキシアルキル化する方法以外の方法として、その他の抗菌剤、消臭剤を靴下等の布や糸に塗布又は含浸する方法を使用しても良い。さらに、皮膚の保湿、老化防止、美白等の目的で皮膚の生理機能を調整する物質や、香料などの物質を、靴下等の布や糸に塗布又は含浸することもできる。
【0028】
上記のような方法によって得られる本発明の靴下又は筒状の下肢用サポーターは、その足首部及び/又はふくらはぎ部の布の圧縮エネルギーが0.35〜3.5gf・cm/cm2であることが好ましい。圧縮エネルギーをこのような範囲にすることで、柔らかな皮膚接触面を形成し、また、外部からの接触に対して好適な緩衝作用を奏し、装着時の快適性が向上する。また、前述のように、足首部及び/又はふくらはぎ部の布構造の表面粗さが25.0以下であることが好ましい。
【0029】
次に、本発明の好ましい編構造の態様を図2に示す。図2において、20、21は横方向に連続した編目を構成する糸で、22は横方向に挿入する弾性糸で、これらの糸が靴下等の足首部及びふくらはぎ部を覆う布を構成する糸である。図2の態様においては、編目を構成する糸20の糸に、太さ212〜700μmの範囲の糸を使用する。20は、例えば綿よりなる紡績糸、21は、例えばポリウレタン弾性糸をナイロン糸でシングルカバーした弾性糸、22は、例えばポリウレタン弾性糸をナイロン糸でダブルカバーした弾性糸である。ところで、図2のa)は、紡績糸20と弾性糸21を並列に走行させ、2つの糸で同一の編目を構成する編構造を示し、図2のb)は、紡績糸20と弾性糸21とで、別々の編目(コース)を交互に構成するようにした編構造を示す。
【0030】
本発明の靴下又は筒状の下肢用サポーターは、足首部及び/又はふくらはぎ部に、装着者の疲労軽減、疾患の予防又は治療のための所定の圧迫圧分布を設ける。圧迫圧は、糸の密度、編み目の大きさ、弾性糸の伸張度をコントロールすることで、所定の値を付与することができる。また、圧迫圧をかける位置に、弾力性の布帛を縫合したり、弾性のある樹脂を塗工又含浸させたりすることによっても、圧迫圧を付与することが可能である。
【0031】
圧迫圧分布としては、足首部からふくらはぎ部へと順次圧迫圧が小となる圧迫圧分布が好ましい。また、足首部の圧迫圧がふくらはぎ部の圧迫圧より高く、それぞれ、18〜67hPa、9〜54hPaであることが好ましい。なお、前記各部の圧迫圧は、以下のような測定部位と測定方法に基づく測定圧力として定義される。
【0032】
足首部は、下腿最小囲部分であり、ふくらはぎ部は、下腿最大囲部分である。圧力測定は、圧力測定器MST(Salzmann AG社製)を使用し、次の手順で測定する。先ず、硬質の木製又はプラスチック製の足型の前記部位に測定器のプローブを設置する。足型は、平均的な日本人体型と同等な周囲長の円筒断面を有しており、次に示す靴下サイズに応じて、そこで指定する足型を測定に用いる。なお、靴下の適用周囲長が、複数のサイズに跨る場合は、その靴下の足首適用周囲長範囲の中央値に最も近い足首部周囲長を有する足型を測定に用いる。
【0033】
サイズ1:足首部15〜19cm、ふくらはぎ部24〜30cmの範囲が適用周囲長である靴下。足首部17cm、ふくらはぎ部27cm、大腿中央部41.2cmの周囲長の足型を用いる。
サイズ2:足首部17〜21cm、ふくらはぎ部28〜34cmの範囲が適用周囲長である靴下。足首部19cm、ふくらはぎ部31cm、大腿中央部44.7cmの周囲長の足型を用いる。
サイズ3:足首部19〜23cm、ふくらはぎ部32〜38cmの範囲が適用周囲長である靴下。足首部21cm、ふくらはぎ部35cm、大腿中央部46.5cmの周囲長の足型を用いる。
サイズ4:足首部21〜25cm、ふくらはぎ部36〜42cmの範囲が適用周囲長である靴下。足首部23cm、ふくらはぎ部39cm、大腿中央部48.4cmの周囲長の足型を用いる。
サイズ5:足首部23〜27cm、ふくらはぎ部40〜46cmの範囲が適用周囲長である靴下。足首部25cm、ふくらはぎ部43cm、大腿中央部51.1cmの周囲長の足型を用いる。
次に、弾力性靴下をその足型に装着し、前記各部位の圧力を測定し、この値を圧迫圧と
する。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例について、比較例と共に評価した結果について、図3に基づいて
以下に述べる。
【0035】
(実施例1)
前述した図2のa)に示すような編組織により、ソックスタイプの靴下を編成した。
平編みの編目を構成する糸に、ポリウレタン弾性糸をウーリーナイロン糸でシングルカバーした弾性糸及び綿紡績糸を使用し、その編目に横方向から挿入する糸としてポリウレタン弾性糸をナイロン糸でダブルカバーした弾性糸を使用した。
この靴下を、モノクロロ酢酸ナトリウム及び水酸化ナトリウム両試薬を溶解させた水溶液に浸漬した後、適当な脱水率にて靴下を脱水し、その後絶乾状態になるまで乾燥させ、綿紡績糸中のセルロース繊維をナトリウムカルボキシメチル化した。その後、この靴下を、硫酸亜鉛七水和物、酢酸及び酢酸ナトリウムを溶解させた水溶液に浸漬し、中和すると同時に、ナトリウムカルボキシメチル化セルロース繊維を亜鉛カルボキシメチル化セルロース繊維へ変換させた。その後、水洗により残存する硫酸亜鉛、酢酸及び酢酸ナトリウムを除去した後、乾燥させ、綿紡績糸を亜鉛カルボキシメチル化した(平均置換度0.03)靴下を得た。
使用した糸の太さ、割合等は、図3に示す。このようにして得られた靴下は、前述のサイズ3に相当するものであり、この靴下の圧迫圧分布は、足首部で20.6hPa、ふくらはぎ部で17.0hPaであった。
【0036】
(実施例2)
使用する糸の種類及び割合を変える以外は、実施例1と同様の方法でソックスタイプの靴下を作製した。使用した糸の太さ、割合等は、図3に示す。このようにして得られた靴下は、前述のサイズ3に相当するものであり、この靴下の圧迫圧分布は、足首部で25.3hPa、ふくらはぎ部で20.9hPaであった。
【0037】
(実施例3)
ゴム編みの編目を構成する糸に、ゴム弾性糸をウーリーナイロン糸でシングルカバーした弾性糸及び綿紡績糸を使用しソックスタイプの靴下を編成した。使用した糸の太さ、割合等は、図3に示す。このようにして得られた靴下は、前述のサイズ3に相当するものであり、この靴下の圧迫圧分布は、足首部で20.0hPa、ふくらはぎ部で18.2hPaであった。
【0038】
本発明の実施例について、以下の評価を行った。なお、本発明の実施例の比較として、市販のソックスタイプの靴下を用いた。
(比較例1)
足首部からふくらはぎ部へと順次圧迫圧が小となる圧迫圧分布を備える医療用の靴下(商品名アンシルクII ハイソックス。Mサイズ。アルケア社製)。
(比較例2)
足首部からふくらはぎ部へと順次圧迫圧が小となる圧迫圧分布を備える生活用の靴下(商品名スリムウォークコットン、SMサイズ。ピップ東京社製)。
【0039】
(糸の太さ)
靴下の足首部及びふくらはぎ部を覆う布より糸をほぐし、無作為に5本を採取する。複数の種類の糸を使用している場合には、それぞれの種類の糸について5本採取する。その糸の一端を固定し、他端に50gの錘を吊るし、歪を解消させた状態で、50倍の電子顕微鏡(キーエンス社製 VH-8000)を使用して糸の太さを計測する。糸の太さは、糸の長手方向に対し直交する方向の糸の幅を糸の直径と仮定し、電子顕微鏡視野における2点間距離測定を用いて、5本の糸の平均値として表示する。
【0040】
(布の圧縮エネルギー)
自動化圧縮試験機(カトーテック社製、KESFB3−AUTO−A)を使用し、次の方法により圧縮エネルギーを測定する。靴下の足首部及びふくらはぎ部の生地から5×5cmのサイズの試験片を採取する。試験片を試験機の中央に設置し、2cm2の円形平面で布を0.2mm/秒の速度で圧縮力を加え、その荷重を測定する。圧縮エネルギー(gf・cm/cm2)は、2サンプルの測定結果の平均値として表示する。圧縮エネルギーは、値が大きいほど圧縮しやすいことを意味する。
【0041】
(布の表面粗さ)
自動化表面試験機(カトーテック社製、KESFB4−AUTO−A)を使用し、次の方法により表面粗さを測定する。靴下の足首部及びふくらはぎ部の生地から20×5cmのサイズの試験片を採取する。試験機に400gの張力をかけた試験片を設置し、試験片に50gの金属摩擦子を置き、試験片を前後に20mm移動し、試験片の摩擦力の変動を計測する。表面粗さは、摩擦力より算出する2サンプルの測定結果の平均値として表示する。表面粗さは、生地表面の凹凸の変動を示し、値が大きいほど凹凸が大きいことを意味する。
【0042】
(浮腫抑制効果)
被験者3名に実施例及び比較例に係る靴下を装着してもらい、その上から、ふくらはぎ部に容積変化を検査するための水銀を充填したシリコーンチューブのプローブ(D.E.Hokanson.Inc.社製、ストレンゲージプレスチモグラフEC-5R)を設置し、安静行臥位を取らせる。安静行臥位時に靴下を装着した脚は上半身より高い位置に上げ、静脈還流を促進させ、測定される静脈容量(ml/dl)が低下し一定になった時の値(最小静脈容量)を記録する。その後、膝関節が直角になるようにいすに座らせ、測定される静脈容量(ml/dl)が上昇し一定になった時の値(最大静脈容量)を記録する。この最大静脈容量(ml/dl)と最小静脈容量(ml/dl)との差を浮腫量(ml/dl)として記録する。浮腫量(ml/dl)の低いほうが、浮腫抑制効果が高いことを示す。結果は、3名の平均値として表記する。
【0043】
(装着時の快適性)
上記の「浮腫抑制効果」の評価の際に、被検者に20分間トレッドミル歩行を行なわせ、ソックスの装着後の快適性の度合いを、次の5段階で評価し、その合計点数を評点とする。評点の高いほうが、快適性が高いことを示す。
5段階評価:快適である5点、やや快適である4点、ふつう3点、やや不快である2点、不快である1点。
【0044】
これらの結果を図3に示す。実施例に係る靴下は、長時間装着しても快適性が高く、また、浮腫抑制効果も有効に発揮されていることが分かる。また、亜鉛カルボキシメチル化した綿紡績糸を使用した、実施例1及び実施例2の靴下は、他のものに比べ靴下の臭いが抑えられていた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態の一例に係る靴下の側面図。
【図2】本発明の実施形態の一例に係る編構造を示す図。
【図3】本発明の実施例及び比較例の評価結果を示す図。
【符号の説明】
【0046】
1 靴下
2 足先部
3 踵部
4 足首部
5 ふくらはぎ部
6 膝部
7 足口部
20 編目を構成する糸
21 編目を構成する糸
22 横方向に挿入する弾性糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、足部の一部又は全部、足首部、及びふくらはぎ部を覆う布からなり、装着時に、前記足首部及び/又はふくらはぎ部に、疲労軽減、疾患の予防又は治療のための所定の圧迫圧分布が作用するようにした靴下又は筒状の下肢用サポーターにおいて、前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸の太さは、212〜700μmとしたことを特徴とする靴下又は筒状の下肢用サポーター。
【請求項2】
前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布の圧縮エネルギーは、0.35〜3.5gf・cm/cm2としたことを特徴とする請求項1に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーター。
【請求項3】
前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布の表面粗さは、25.0以下としたことを特徴とする請求項1または2に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーター。
【請求項4】
前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を編物で構成し、その編物を構成する糸の50重量%以上の糸が、太さ212〜700μmの編目を構成する糸としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーター。
【請求項5】
前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸を、紡績糸としたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーター。
【請求項6】
前記足首部及び/又はふくらはぎ部を覆う布を構成する糸の50重量%以上の糸を、セルロース繊維からなる糸としたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーター。
【請求項7】
セルロース繊維は、カルボキシアルキル基の少なくとも一部が抗菌性金属カルボキシアルキル基で置換されているカルボキシアルキル化セルロース繊維を含んでなることを特徴とする請求項6に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーター。
【請求項8】
前記所定の圧迫圧分布は、足首部からふくらはぎ部へと順次圧迫圧が小となる分布としたことを特徴とする請求項1に記載の靴下又は筒状の下肢用サポーター。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−63723(P2007−63723A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253789(P2005−253789)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】