説明

靴下及びその製造方法

【課題】 太い編み糸を用いて編成できるようにした厚手の靴下を提供する。
【解決手段】 本体部分と履口部とからなり、シリンダー径が5インチ以上のB式又はK式の靴下編み機によって編成された靴下であって、履口部は、1/16番手ないし1/36番手の毛アクリル混紡糸又は綿糸3本〜8本とゴム糸とがパイル編みの1目又は2目毎に2目〜4目のシンカー乗せ編みにて編成されるとともに、二重構造に構成されており、二重構造の外層はシンカー乗せ編みの部分がゴム糸によって引っ張られて外側に膨らむように湾曲され、二重構造の内層はシンカー乗せ編みの部分がゴム糸によって引っ張られて内側に膨らむように湾曲されることによって履口部が厚手に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は靴下及びその製造方法に関し、特に太い編み糸を用いて厚手に編成できるようにした靴下及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厳冬期には足もとが厳しく冷えることから、保温性に優れた靴下を着用することが多い。例えば、毛糸や毛アクリル混紡糸を用いてパイル編みによって編成し、パイルによって保温性を高めたニット靴下が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
また、靴下の本体部分を2本の編み糸と弾性糸を用いてパイル編みで編成し、履口部を5本の編み糸とゴム糸とを用いてパイルシンカー乗せ編みで編成し、全体として厚手に編成したニット靴下も提案されている(特許文献3)。
【0004】
特許文献3記載のニット靴下は他のニット靴下に比較し、履口部の伸びが大きく、適度な締付け力が得られるとともに、シンカー乗せ編みの特性に起因して保温性に優れ、厳冬期の靴下としては最適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第302008号公報
【特許文献2】特開平09−217205号公報
【特許文献3】意匠登録第1036073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3記載のニット靴下を製造する場合、編み糸の番手を大きくして厚手に製造しようとすると、編み糸の本数が制限されてしまい、厚手に製造することができないことがあった。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み、太い編み糸を用いて編成できるようにした厚手の靴下を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明に係る靴下は、本体部分と履口部とからなり、シリンダー径が5インチ以上のB式又はK式の靴下編み機によって編成された靴下であって、上記履口部は、1/16番手ないし1/36番手の毛アクリル混紡糸又は綿糸3本〜8本とゴム糸とがパイル編みの1目又は2目毎に2目〜4目のシンカー乗せ編みにて編成されるとともに、二重構造に構成されており、該二重構造の外層はシンカー乗せ編みの部分がゴム糸によって引っ張られて外側に膨らむように湾曲され、上記二重構造の内層はシンカー乗せ編みの部分がゴム糸によって引っ張られて内側に膨らむように湾曲されることによって上記履口部が厚手に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の特徴の1つはシリンダー径が5インチ以上(針数60本〜120本)のB式又はK式の靴下編み機を用いるようにした点にある。
【0010】
これにより、編み針(ニードル)のフックが5インチ未満のシリンダの場合に比較して大きく、大きな番手の編み糸を十分な本数だけ引っ掛けることができ、靴下の履口部を厚手に製造することができる。
【0011】
本発明の第2の特徴は履口部を二重構造に構成し、その編み組織を、パイル編みの1目又は2目毎に2目〜4目のシンカー乗せ編みとした点にある。
【0012】
これにより、履口部の二重構造の外層はシンカー乗せ編みの部分がゴム糸によって引っ張られて外側に湾曲し、二重構造の内層はシンカー乗せ編みの部分が内側に湾曲し、履口部内が十分な大きさの空間となって全体として厚手になり、保温性を大幅に向上することができる。
【0013】
靴下の本体部分は履口部と同様に、シリンダー径が5インチ以上のB式又はK式の靴下編み機によって1/16番手ないし1/36番手の毛アクリル混紡糸又は綿糸2本又は3本と弾性糸を用い、パイル編みにて裏パイルとなるように編成すると、本体部分も厚手となって保温性がよいが、他の編み組織とすることもできる。
【0014】
靴下の本体部分を厚手にすると、足首の部分が曲がりにくくなる。そこで、本体部分の足首前側部分の表糸を2〜3コース毎に抜くことによって屈曲補助部分を形成し、L字状に曲がりやすくするのがよい。
【0015】
また、本体部分及び履口部の内側を起毛するようにすると、靴下内部に熱がこもりやすくなり、厳冬期における保温性をより向上することができる。
【0016】
本発明では保温性の点から毛アクリル混紡糸を用いるが、保温性と吸湿性が要求される場合には綿糸を用いることもできる。また、綿アクリル混紡糸、毛糸、絹糸、絹アクリル混紡糸等を用いることもできるが、本発明では毛アクリル混紡糸又は綿糸を用いるのが好ましい。
【0017】
また、本発明によれば、本体部分と履口部とからなる厚手の靴下を製造するにあたり、上記履口部は、シリンダー径が5インチ以上のB式又はK式の靴下編み機によって、1/16番手ないし1/36番手の毛アクリル混紡糸又は綿糸3〜8本とゴム糸とを用いパイル編みの1目又は2目毎に2目〜4目のシンカー乗せ編みにて編成するとともに、二重構造に構成するようにしたことを特徴とする靴下の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る靴下の好ましい実施形態を示す斜視図である。
【図2】上記実施形態において使用するシリンダーを示す概略斜視図である。
【図3】上記実施形態におけるシンカー乗せ編みを説明するための図である。
【図4】上記実施形態におけるパイルシンカー乗せ編みの組織を示す図である。
【図5】上記実施形態における履口部の二重構造を示す図である。
【図6】第2の実施形態における履口部の二重構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図5は本発明に係る靴下の好ましい実施形態を示す。靴下は本体部分10と履口部11とから構成され、シリンダー20の径Lが5インチ以上、針数60本〜120本のK式(又はB式)の靴下編み機によって編成されている。
【0020】
履口部11は1/22番手の5本の毛アクリル混紡糸(以下、「毛混糸」という)30と、90番手の1本のゴム糸31を用い、パイル編みPを基本とし、パイル編みPの1目毎に3目のシンカー乗せ編みSにて編成されるとともに、二重構造に構成されている。
【0021】
他方,靴下の本体部分10は1/22番手の2本(又は3本)の毛混糸と40デニールのポリウレタンを芯として75デニールのポリエステルをカバーリングした2本のカバーリングヤーン(弾性糸)を用い、パイル編みにて裏パイル11Cとなるように編成されている。
【0022】
また、靴下の本体部分10の足首前側部分にはその表糸を2〜3コース毎に抜くことによって薄いライン状の屈曲補助部分10Bが形成され、又本体部分10及び履口部11の内側は起毛12が形成されている。
【0023】
なお、靴下編み機がK式であるので、履口部11の始端はリンキング11Aによって履口部11の外層に縫合されているが、B式の靴下編み機の場合には履口部11の始端の目を拾いながら本体部分10を編成することができる。
【0024】
ここで、シンカー乗せ編みを説明すると、図3の(a)に示されるように、5本の毛混糸30を表糸としてパイル編みにおけるシンカー22の頭22Aに乗せて編む方法である。他方、パイル編みは、毛混糸30を表糸としてシンカー22の頭22Aに乗せ、ゴム糸30Aを裏糸として図3の(b)に示されるように乗せずに編む方法である。
【0025】
なお、パイルの高さは図3の(a)における高さtによって決まる。従って、シンカー乗せ編みでは伸縮弾性が小さく、伸びがパイル編みに比して2倍ないし3倍と大きく、締付けが小さくなる。
【0026】
本例の靴下を製造する場合、K式の靴下編み機を用いて履口部11から編み始める。まず、履口部11は1/22番手の5本の毛混糸30と90番手の1本のゴム糸31を用い、パイル編みPを基本とし、パイル編みPの1目毎に3目のシンカー乗せ編みSにて編成する。
【0027】
履口部11が編み終わると、続いて靴下の本体部分10を履口部11の終端から爪先に向けて編む。本体部分11は1/22番手の2本(又は3本)の毛混糸と40デニールのポリウレタンを芯として75デニールのポリエステルをカバーリングした2本のカバーリングヤーンを用い、パイル編みにて裏パイル11Cとなるように編成する。
【0028】
本体部分10が爪先まで編み終わると、爪先の開口縁をリンキングするとともに、履口部11を二重に折り返して履口部11の終端と始端をリンキングすることによって二重構造とし、最後に公知の方法によって靴下の内側を起毛する。
【0029】
こうして製造された靴下はその履口部11が二重構造をなし、その外層はシンカー乗せ編みの部分Sがゴム糸31によって引っ張られて外側に大きく膨らむように湾曲し、二重構造の内層はシンカー乗せ編みの部分Sが内側に大きく膨らむように湾曲し、太い5本の毛混糸30によって編成されたことと相まって履口部11は十分な厚さとなっている。
【0030】
しかも、外層及び内層のパイル編みの部分Pが相互に当接すると、外層及び内層の湾曲部分が実質的に閉じた保温空間40を周方向に繰り返し構成するので、履口部11が厚手であることと相まって保温性を大幅に向上できる。
【0031】
なお、履口部の外層及び内層のパイル編みの部分Pは相互にずれた位置とし、当接させなくてもよいが、その場合にも履口部11の内部には実質的に閉じた大きな空間が形成され、優れた保温性が得られる。
【0032】
図6は第2の実施形態を示し、本例では履口部11をパイル編みPの2目ごとに3目のシンカー乗せ編みSとしている。
【0033】
なお、上記の例では履口部11を1/22番手の5本の毛混糸を用いるようにしたが、3本以上8本以下であればよく、又1/16番手ないし1/36番手のの太さであればよく、履口部の厚手を確保しつつ、編み針のフックに引っ掛けることができる条件を選択すればよい。
【0034】
また、上記では毛混糸を用いたが、1/16番手ないし1/36番手の綿糸を用いることもできる。
【符号の説明】
【0035】
10 本体部分
11 履口部 11 レッグ部
30 毛混糸
31 ゴム糸
40 保温空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部分と履口部とからなり、シリンダー径が5インチ以上のB式又はK式の靴下編み機によって編成された靴下であって、
上記履口部は、1/16番手ないし1/36番手の毛アクリル混紡糸又は綿糸3本〜8本とゴム糸とがパイル編みの1目又は2目毎に2目〜4目のシンカー乗せ編みにて編成されるとともに、二重構造に構成されており、
該二重構造の外層はシンカー乗せ編みの部分がゴム糸によって引っ張られて外側に膨らむように湾曲され、上記二重構造の内層はシンカー乗せゴム糸によって引っ張られて編みの部分が内側に膨らむように湾曲されることによって上記履口部が厚手に形成されていることを特徴とする靴下。
【請求項2】
上記本体部分は、1/16番手ないし1/36番手の毛アクリル混紡糸又は綿糸2本又は3本と弾性糸がパイル編みにて裏パイルとなるように編成され、上記本体部分の足首前側部分には2〜3コース毎に表糸が抜かれることによって屈曲補助部分が形成されている一方、上記本体部分及び履口部の内側が起毛されている請求項1記載の靴下。
【請求項3】
本体部分と履口部とからなる厚手の靴下を製造するにあたり、
上記履口部は、シリンダー径が5インチ以上のB式又はK式の靴下編み機によって1/16番手ないし1/36番手の毛アクリル混紡糸又は綿糸3本〜8本とゴム糸とを用いてパイル編みの1目又は2目毎に2目〜4目のシンカー乗せ編みにて編成するとともに、二重構造に構成するようにしたことを特徴とする靴下の製造方法。
【請求項4】
上記本体部分は、シリンダー径が5インチ以上のB式又はK式の靴下編み機によって1/16番手ないし1/36番手の毛アクリル混紡糸又は綿糸2本又は3本と弾性糸を用い、パイル編みにて裏パイルとなるように編成するようにした請求項3記載の靴下の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−122163(P2012−122163A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273460(P2010−273460)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(593106228)ナカイニット株式会社 (4)
【Fターム(参考)】