説明

靴底補修セット

【課題】 熱湯ないし温水により硬化する靴底補修剤を用いることで、靴底の補修時間を格段に短縮でき、しかも靴底補修剤等の靴底補修用用具を収容している包装容器の硬化槽兼用収容凹部を、熱湯ないし温水を入れる硬化槽として活用することで、補修作業の手間を簡素化し、作業性が向上し得る靴底補修セットを提供する。
【解決手段】 靴底補修剤を充填した靴底補修剤容器10、注型用型枠シート13、表面仕上げ用ヘラ14等の靴底補修用用具4と、靴底補修剤容器10等の前記靴底補修用用具4を収容するとともに、靴底の磨耗、損傷、欠損部分の補修時には、靴底補修剤を硬化させる熱湯ないし温水を貯留するための硬化槽として機能する硬化槽兼用収容凹部20を形成した容器本体21を有する包装容器5とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磨耗したり損傷、欠損した靴底を適正な形状に再生、補修するのに必要な靴底補修用用具を備え、かつ簡単短時間に靴底を再生、補修できる好適な靴底補修セットに関する。
【背景技術】
【0002】
靴底の補修方法として、外周側へ行くにしたがって厚肉に構成した三日月形や半円形のゴム板を、靴底の踵部分に接着剤で貼り付けて補修する方法が広く採用されている。しかし、踵部分の磨り減り方は、歩き方や靴の使用期間などによって異なるので、一様な形状の既製のゴム板では、最適な状態に靴底を補修できないという問題があった。
【0003】
そこで、最近では、常温にて数時間〜数日間放置することで硬化する靴底補修剤を用い、磨り減ったり損傷したりした靴底にこの靴底補修剤を直接塗付、注入、注型して、適正な靴底形状に肉盛りし、常温にて硬化させる補修方法も提案され、実用化されている(例えば、特許文献1参照。)。このような靴底補修剤を用いた靴底補修方法では、踵部分の減り方に応じて、注型する靴底補修剤の分量を調整することで、ほぼ完全に元の状態まで靴底を補修することができる。
【0004】
一方、物品を収容する包装容器として、物品を入れる収容部を有するケース本体と、ケース本体の両側部に折り目線を介して開閉自在に支持された蓋部材とを備えたプラスチックシートからなる包装容器が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−60552号公報
【特許文献2】特開平8−253226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1記載の靴底補修剤では、補修剤の塗付、注入、注型後、それが硬化するまでに数時間〜数日間の長時間を要するので、その間注型した補修剤に他の物が接触しないように、靴を保管する必要があるとともに、その間靴を使用できないので、代えの靴が必要となること、補修剤に含まれている溶剤が揮発することにより生活環境が悪化すること、火災の危険があること、溶剤の揮発により補修部分が収縮変形し、一度の補修作業では思い通りの形状に再生、補修できないこと、などの問題があった。
【0007】
本発明の目的は、熱湯ないし温水により硬化する靴底補修剤を用いることで、靴底の補修時間を格段に短縮でき、しかも靴底補修剤等の靴底補修用用具を収容している包装容器の硬化槽兼用収容凹部を、熱湯ないし温水を入れる硬化槽として活用することで、補修作業の手間を簡素化し、作業性が向上し得る靴底補修セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本出願人は、熱湯に浸漬することにより、数分で硬化する靴底補修剤を開発した。そして、このような靴底補修剤を販売するに当たり、靴底補修剤を収容する包装容器として、靴底の再生、補修に必要な靴底補修剤を充填した靴底補修剤容器や、注型用型枠シートや、表面仕上げ用ヘラ等の靴底補修用用具を収容する硬化槽兼用収容凹部を有する包装容器を用い、この包装容器の硬化槽兼用収容凹部を、熱湯ないし温水を入れる硬化槽として活用し、靴底補修剤を補修の必要な部分に塗付、注入、注型した後、靴底補修部分を硬化槽兼用収容凹部に貯留した熱湯ないし温水に浸漬して、靴底補修部分を硬化させることができるとの発想を得て本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る靴底補修セットは、靴底補修剤を充填した靴底補修剤容器、注型用型枠シート、表面仕上げ用ヘラ等の靴底補修用用具と、前記靴底補修剤容器等の前記靴底補修用用具を収容するとともに、靴底の磨耗、損傷、欠損部分の補修時には、前記靴底補修剤を硬化させる熱湯ないし温水を貯留するための硬化槽として機能する硬化槽兼用収容凹部を形成した容器本体を有する包装容器とを備えたもので、靴底の磨耗、損傷、欠損した部分を簡単に、短時間で再生、補修できる靴底補修セットを提供するものである。
【0010】
この靴底補修セットでは、靴底補修剤を熱湯ないし温水に浸漬することにより短時間で硬化する靴底補修剤を用いているので、靴底補修剤を必要箇所に必要量を塗付、注入、注型してから、熱湯ないし温水に靴底補修部分を浸漬することで、例えば数分程度の短時間で靴底補修剤を硬化させて、靴底の再生、補修をすることができる。このため、補修剤の塗付、注入、注型後、この靴底補修部分に他の物が接触しないように、長時間にわたって靴を保管する必要がなく、利用者の負担を軽減できるし、補修している間に使用する代えの靴を用意する必要もない。また、靴底補修剤を熱湯ないし温水により硬化させるときには、硬化槽兼用収容凹部に貯留させた熱湯ないし温水に靴底補修部分を浸漬させて行えるので、靴底補修セットの硬化槽兼用収容凹部に、靴底補修用用具を収容するための容器としての機能と、熱湯ないし温水を貯留する硬化槽としての機能の、2つの機能を付与できる。従っ容器本体として靴底補修に適合した形状のものを採用することができるので、一般家庭にある洗面器等を容器として用いる場合と比較して、安定性良く靴底補修部分を熱湯ないし温水内に浮かせた状態に中空支持することが可能となり、補修作業の作業性を向上できる。
【0011】
ここで、靴底補修セットに、前記硬化槽兼用収容凹部に貯留した熱湯ないし温水内に、修理する靴の靴底補修部分が浸漬するように、該靴を支持する支持手段を設けることができ、またこのような支持手段として、包装容器に蓋部材を設けることができる。靴底を靴底補修剤で再生、補修し、靴底補修剤を硬化させるために熱湯ないし温水中に浸漬するときに、靴を保持する支持手段は、包装容器とは別部材で構成することも可能であるが、請求項3記載のように、靴底補修剤セットの包装容器の蓋部材を用いると、別部材を用いることがなく、靴底の補修作業の手間が簡素化され、簡単に靴底の補修作業ができる。
【0012】
前記支持手段として、包装容器の少なくとも一側部に硬化槽兼用収容凹部を開閉する蓋部材を回動自在に設け、靴のカフス部の上端部を立起させた蓋部材にクリップで係止して、硬化槽兼用収容凹部に貯留した熱湯ないし温水内に靴底補修部分を浸漬するように構成したものを用いることもできる。
【0013】
前記蓋部材として、包装容器の両側部に硬化槽兼用収容凹部を開閉する1対の蓋部材を回動自在に設け、一方の蓋部材の長さを他方の蓋部材よりも長く設定し、長尺側の蓋部材にハイヒールのカフス部の上端部をクリップで係止可能となし、短尺側の蓋部材にローヒールのカフス部の上端部をクリップで係止可能とすると、ハイヒールの靴であったり、またローヒールの革靴やスニーカー等であっても靴底の補修と靴底補修部分の硬化作業が同じようにできる。
【0014】
前記蓋部材として、包装容器の長手方向に沿った一側部に硬化槽兼用収容凹部を開閉する蓋部材を回動自在に設け、立起させた蓋部材に左右の靴のカフス部の上端部をクリップで係止可能とすると、左右一足の靴を同時に硬化槽兼用収容凹部に浸漬できるので、靴底補修の作業を短時間で行うことができる。
【0015】
前記支持手段として、包装容器に靴の長さ方向の途中部を支持する支持壁を形成したので、靴底補修部分を安定な状態に保つことができる
【0016】
前記靴底補修剤容器を、その長手方向を上下方向とし且つキャップが下側に位置するように、硬化槽兼用収容凹部の幅方向の略中央部に配置したので、店頭での陳列が安定になる。
【0017】
前記包装容器の少なくとも一側部に硬化槽兼用収容凹部を開閉する蓋部材を回動自在に設け、蓋部材に硬化槽兼用収容凹部内に所定位置に靴底補修剤容器を固定保持するための突起を形成したので、陳列、運搬などにより変動せず、元の状態に保持することができ、見栄えにも良い。
【0018】
前記包装容器の少なくとも一側部に蓋部材を回動自在に設け、蓋部材に硬化槽兼用収容凹部に対して熱湯ないし温水を注ぎ込むための開口部を形成したので、一般家庭にあるヤカンやポットから容易に熱湯ないし温水を安全に硬化槽に注ぎ込むことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る靴底補修セットによれば、あまり手間をかけずに、簡単に、短時間で靴底を再生、補修ができる。靴底補修剤の塗付、注入、注型後、この補修部分に他の物が接触しないように、長時間にわたって靴を保管する必要がなく、利用者の負担を軽減できるし、代えの靴を用意する必要もないので、簡便に靴を補修することができる。また、靴底補修セットの靴底補修用用具を収容するための包装容器の硬化槽兼用収容凹部を、靴底補修時における熱湯ないし温水を貯留するための硬化槽として活用できるので、一般家庭に存在する洗面器等を容器として利用する場合と比較して、安定性良く靴底補修部分を硬化槽に中空支持することが可能となり、補修作業に手間がかからず、作業性が向上する。
【0020】
ここで、硬化槽兼用収容凹部に貯留した熱湯ないし温水内に、修理する靴の靴底補修部分が浸漬するように、該靴を中空支持する前記支持手段として、包装容器に設けた蓋部材を利用し、立起させた蓋部材の上端部を靴のカフス部の上端部とクリップで係止して、硬化槽に貯留した熱湯ないし温水内にて靴底補修剤を硬化させるので、靴底に塗付、注入、注型した踵部を中空支持するように構成することができる。このように本願発明は簡単な構成を採用しつつ、包装容器の硬化槽兼用収容凹部に、靴底補修用用具を収容する容器としての機能と、靴底補修剤を硬化させる硬化槽としての機能の、2つの機能を付与でき、しかも硬化槽として使用する際には、適正姿勢に安定的に靴を支持することができる。
【0021】
また、靴底補修セットの包装容器の蓋部材として、長さの異なる1対の蓋部材を設けると、長尺側の蓋部材によりハイヒールを支持でき、短尺側の蓋部材でローヒールを支持することができ、ハイヒールでもローヒールでも硬化槽兼用収容凹部に対して適性姿勢に安定的に支持することが可能となる。
【0022】
更に、前記蓋部材として、包装容器の長手方向に沿った一側部に蓋部材を設けると、左右の靴を並べて蓋部材に支持させ、両靴の補修部分を同時に熱湯ないし温水に浸漬することが可能となり、熱湯による靴底補修作業の処理時間を半減することができる。
【0023】
前記支持手段として、包装容器の長さ方向の途中部を支持する支持壁を形成し、支持壁上に靴をセットして、靴の踵部分を熱湯ないし温水に浸漬することも可能である。このような支持壁は、前記蓋部材と併用することで、一層安定的に靴を支持することができる。
【0024】
ここで、前記補修剤容器を、その長手方向を上下方向とし且つキャップが下側に位置するように、硬化槽兼用収容凹部の幅方向の略中央部に配置すると、靴底補修セットの包装容器を陳列保管する場合にバランスよく吊り下げて陳列することが可能となる。また、靴底補修剤容器を収容した硬化槽兼用収容凹部を熱湯ないし温水を貯留する硬化槽として活用したときにも、水平な場所に安定に戴置できるので、傾斜、転倒し、熱湯がこぼれる危険もなくなり、靴底補修部分を安定な状態に支持することができる。店頭の陳列棚等から靴底補修セットを床等に落とした場合でも、キャップを下側へ向けて配置させているので、靴底補修剤容器から靴底補修剤が漏れ出すことを効果的に防止できる。
【0025】
前記靴底補修セットの包装容器の少なくとも一側部に蓋部材を設け、靴底補修用用具を固定保持するための突起を蓋部材に形成すると、包装容器内の運搬、陳列作業において靴底補修剤容器の変動等が突起により拘束されるので、靴底補修剤容器など靴底補修用用具を包装容器に安定に見栄え良く収容できる。
【0026】
熱湯ないし温水は、その温度が低下しないように、本願発明の包装容器の硬化槽兼用収容凹部であり、かつ靴底補修剤を硬化させる硬化槽に対して靴をセットした状態で熱湯ないし温水を注ぎ込むことが好ましいが、硬化槽兼用収容凹部の上側に靴が配置されることから、熱湯を注ぐことが煩雑になる。そこで、前記包装容器の少なくとも一側部に蓋部材を設け、蓋部材に硬化槽兼用収容凹部内への熱湯ないし温水を注ぎ込む開口部を形成すると、靴に邪魔されることなく硬化槽兼用収容凹部内に熱湯ないし温水を注ぎ込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1に示すように、靴底補修セット1は、熱湯ないし温水2(図6、図7参照)に対して浸漬することにより硬化する靴底補修剤3(図8参照)を封入した靴底補修剤容器10を含む靴底補修用用具4と、靴底補修用用具10を収容する包装容器5とを備えている。また、包装容器5は、靴底補修剤容器10を含む靴底補修用用具4を収容するとともに、靴底の磨耗、損傷、欠損部分の補修時には、靴底補修用用具4を取り出して、靴底補修剤3を硬化させる熱湯ないし温水2を貯留可能な硬化槽として機能する硬化槽兼用収容凹部20を凹設した容器本体21と、靴底補修剤3を用いてローヒールやハイヒールなどの靴S(図6、図7参照)を補修するときに、靴底補修剤3を塗付、注入、注型した踵部Hの補修部分が、硬化槽兼用収容凹部20に注いだ熱湯ないし温水2内に中空支持されるように、該靴Sを容器本体21の硬化槽兼用収容凹部20に支持する支持手段6とを備えている。
【0029】
靴底補修用用具4としては、靴底補修剤容器10以外に、靴底補修剤3が手指に付着することを防止するための安全防具用の手袋11と、靴底SBの補修部分の表面を磨くための紙ヤスリ12と、補修部分の外縁に沿って貼り付け可能な合成樹脂製の細長い2枚の注型用型枠シート13と、靴Sの補修部分に靴底補修剤3を空洞のないように塗付、注入、注型し、表面を平坦にならすためのヘラ14と、靴Sを包装容器5の蓋部材22,23に固定するためのクリップ15などを備えている。但し、これ以外に、靴底補修剤3が手指に付着した場合の洗浄液やウエスなどを備えさせることもできる。
【0030】
靴底補修剤3は、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及び/又はポリイソシアネート化合物と潜在性硬化剤とを主成分とする高粘度の液状或いはペースト状の一液型熱硬化性組成物からなり、靴底補修剤容器10に気密に封入されている。この靴底補修剤3は、70℃以上、100℃以下の硬化槽兼用収容凹部20内の熱湯ないし温水2に約5分間浸漬して加熱することにより、潜在性硬化剤が活性化し、末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマー及び/又はポリイソシアネート化合物が付加重合して硬化するように構成されている。
【0031】
前記潜在性硬化剤としてはアミン化合物を不活化したものを用いることが好ましい。アミン化合物を不活化した潜在性硬化剤としては、固形アミンの表面に粉体を固着させて不活性化したもの、アミン化合物にハロゲン化硼素を付加した錯体、又はアミン化合物を重合性二重結合を有するフェノール類のホモポリマー若しくはコポリマーでブロックしたものを用いることができる。尚、靴底補修剤3としては、熱湯ないし温水中に浸漬することで硬化し、硬化後に靴底SBと同程度のゴム弾性が現れるものであれば、任意の素材からなるものを採用することができる。
【0032】
靴底補修セット1の包装容器5は、容器本体21に凹設した硬化槽兼用収容凹部20に、靴底補修剤容器10等を収容する容器としての機能と、熱湯ないし温水を満たす硬化槽20としての機能を付与している関係上、少なくとも100℃の熱湯に耐え得る耐熱性を有する樹脂シートで構成されている。この包装容器5は、図1〜図5に示すように、靴底補修用用具4を収容する容器でもあり、熱湯ないし温水を満たす硬化槽でもある硬化槽兼用収容凹部20を有する容器本体21と、容器本体21の両側に一体ヒンジ21aを介して回動自在に設けられた長さの異なる1対の蓋部材22、23とを備えている。硬化槽兼用収容凹部20の容量は、熱湯ないし温水を硬化槽兼用収容凹部20内に満たし、靴Sの補修部分を浸漬した状態で、少なくとも5分間、70℃以上を維持できるようにするため、500ml程度に設定されている。
【0033】
両蓋部材22、23の遊端部は一定幅重ね合わされて閉蓋され、長尺蓋部材22の遊端部と途中部とには1対の嵌合突部24がそれぞれ形成され、短尺蓋部材23の基部には1対の嵌合突部24が形成され、短尺蓋部材23の遊端部には挿通孔25が形成され、容器本体21の外周部にはフランジ部26が形成され、フランジ部26には嵌合突部24に凹凸嵌合して蓋部材22、23を閉塞位置に保持する嵌合凹部27が、6つの嵌合突部24に対応させて形成されている。
【0034】
長尺蓋部材22の遊端部における一方の嵌合突部24付近には外方へ突出する摘まみ部28が形成され、この摘まみ部28を摘まんで長尺蓋部材22を容易に開放できるように構成してもよい。長尺蓋部材22の遊端部の嵌合突部24は、短尺蓋部材23の挿通孔25を挿通して容器本体21の嵌合凹部27に凹凸嵌合することもできるし、別途嵌合突起と嵌合凹部を適宜適所に設けても良く、また、6つ以外の個数の嵌合突部24を蓋部材22、23に形成して、蓋部材22、23を容器本体21に閉蓋状態に保持することもできるし、嵌合突部24と嵌合凹部27との凹凸嵌合以外の構造により、蓋部材22、23を容器本体21に閉蓋状態に保持することも可能である。
【0035】
容器本体21及び長尺蓋部材22には陳列用の引っ掛け孔33が形成され、包装容器5は引っ掛け孔33側を上側にして立て向き姿勢で陳列されるように構成されている。容器本体21の幅方向の略中央部には上下1対の載置台29、30が収容部20の内部側へ突出形成され、載置台29、30には靴底補修剤容器10の両端部を抱持する抱持凹部29a、30aが形成され、靴底補修剤容器10はキャップ10aを下側にして載置台29、30に上下方向に向けてセットされている。長尺蓋部材22及び短尺蓋部材23には載置台29、30にセットした靴底補修剤容器10を保持するための保持突起22a、23aが形成され、靴底補修剤容器10は閉蓋状態において載置台29、30と保持突起22a、23aとにより移動しないように拘束され、安定に変動しないように収容されている。
【0036】
硬化槽兼用収容凹部20の開口縁部には段差部31が形成され、長尺蓋部材22及び短尺蓋部材23には段差部31に嵌合するに略コ字状の補強突起32が形成されている。段差部31により硬化槽兼用収容凹部20内への最適な注湯量が容易に把握できる目安にすることもできるし、補強突起32により蓋部材22、23の強度剛性が高められて、蓋部材22、23で靴Sの踵部Hを支持する支持手段6(図6)として活用できるように構成されている。
【0037】
支持手段6は、両蓋部材22、23とクリップ15とで構成され、図6に示すように、ローヒールの靴Sを補修する際には、靴Sのカフス部Kの上端部を短尺蓋部材23の上端部にクリップ15にて固定し、靴底補修剤3を塗付、注入、注型した靴底補修部分が硬化槽兼用収容凹部20内に貯留した熱湯ないし温水2に全体的に浸漬されるように、短尺蓋部材23の傾斜角度θ1を調整することになる。一方、図7に示すように、ハイヒールの靴Sを補修する際には、靴Sのカフス部Kの上端部を長尺蓋部材22の上端部にクリップ15にて固定し、靴底補修剤3で再生ないし補修した補修部分が硬化槽兼用収容凹部20内に注いだ熱湯ないし温水2に浸漬されるように、長尺蓋部材22の傾斜角度θ2を調整することになる。
【0038】
次に、この靴底補修セット1を用いた靴底SBの補修方法について説明する。
【0039】
先ず、図8(a)に示すように、靴底SBの汚れや水気を落とし、靴底の補修が必要な表面34を紙ヤスリ12で粗面にする。
【0040】
次に、図8(b)に示すように、靴底補修用用具4の一つである注型用型枠シート13を踵部Hの外周に沿って略隙間なく粘着テープ35で貼り付ける。このとき、型枠シート13の下端が踵部Hの底面と略同高になるように型枠シート13を貼り付けると、型枠シート13の下端を基準に靴底補修剤3を塗付、注入、注型して、購入時に近い形状に肉盛り仕上ることができる。
【0041】
次に、手袋11をはめた状態で、図8(c)に示すように、靴底補修剤容器10から靴底補修剤3を絞り出しながら、必要量の靴底補修剤3を踵部Hの補修表面34に対して塗付、注入、注型する。このとき、注型して肉盛りした靴底補修剤3に気泡が含まれないようにするとともに、型枠シート13と踵部Hとの隙間にも靴底補修剤3が十分に充填されるように、靴底補修剤3を塗付、注入する。
【0042】
次に、図8(d)に示すように、肉盛りした靴底補修剤3をヘラ14で伸ばして靴底SBが磨耗前の元の形状になるように、靴底補修剤3の形状、表面状態を整える。
【0043】
こうして、靴底SBに対して靴底補修剤3を塗付、注入、注型した後、図6のように、靴底補修剤3が他の物に接触しないようにしつつ、靴Sのカフス部Kの上端部を短尺蓋部材23の上端部にクリップ15で固定するとともに、補修補修部分が硬化槽兼用収容凹部20の熱湯ないし温水2に浸漬されるように中空支持した状態で、硬化槽兼用収容凹部20にヤカン等から熱湯ないし温水2を注ぎ込み、約5分間、靴底補修剤3を熱湯ないし温水2に浸漬させ、硬化させることになる。但し、硬化槽兼用収容凹部20に予め熱湯ないし温水2を入れてから、靴Sを支持手段である蓋部材22,23に対して固定することも可能である。
【0044】
こうして、靴底補修剤3が硬化した後、型枠シート13を剥がし、補修部分のバリ取り、形状を更にカッターナイフ等で調整するなどして片方の靴Sの補修を完了し、もう片方の靴Sに関しても、同様に補修作業を施して、左右の靴Sの補修を完了することになる。
【0045】
尚、本実施例では、片方ずつ靴Sを補修するように構成したが、図9に示す容器本体21Aのように、容器本体21Aの長さを左右の靴Sを並べてセット可能な長さに設定し、容器本体21Aの長手方向に沿った一側に蓋部材22Aを開閉自在に設け、靴Sのカフス部Kの上端部をクリップ15で蓋部材22Aに固定支持して、左右の靴Sの補修部分を硬化槽兼用収容凹部20A内に充填した熱湯ないし温水に同時に浸漬させて、左右の靴Sを同時に補修可能に構成することも可能である。
【0046】
また、蓋部材22、23を傾斜させて靴Sを支持するので、靴Sを支持させた状態で、硬化槽兼用収容凹部20内に熱湯ないし温水を注入するための開口部を蓋部材22、23の回動中心側の基部に形成してもよい。
【0047】
更に、本実施例では蓋部材22、23の靴Sを支持させたが包装容器5に靴Sの長さ方向の途中部を支持する1乃至複数の支持壁を形成し、この支持壁により踵部Hが熱湯ないし温水2に浸漬されるように靴Sを支持してもよい。
【0048】
尚、本実施例では、靴Sの踵部Hを補修する場合について説明したが、靴底SBの任意の位置の磨耗部分や破損部分に、前記と同様に靴底補修剤3を用いて簡単、容易に、安全短時間に手間をかけずに補修することもできる。
【0049】
本発明では靴底補修セットについて説明したが、本願発明の靴底補修剤と靴底補修用用具などを用いて、様々な成形体、ゴム製品などの磨耗、欠損、損傷部分の再生や補修に転用できることはいうまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】靴底補修セットの構成部材の説明図
【図2】閉蓋状態における包装容器の斜視図
【図3】閉蓋状態における包装容器の裏面側から見た斜視図
【図4】包装容器の開蓋状態におけるケース本体付近の斜視図
【図5】図1にV−V線断面図
【図6】ローヒールの靴を硬化槽の熱湯ないし温水に浸漬した状態で支持するときの説明図
【図7】ハイヒールの靴を硬化槽の熱湯ないし温水に浸漬した状態で支持するときの説明図
【図8】(a)〜(d)は靴底の補修方法の説明図
【図9】他の構成の包装容器を用いた靴の補修方法の説明図
【符号の説明】
【0051】
H 踵部 S 靴
SB 靴底 K カフス部
1 靴底補修セット 2 熱湯ないし温水
3 靴底補修剤 4 靴底補修用用具
5 包装容器 6 支持手段
10a キャップ 10 靴底補修剤容器
11 手袋 12 紙ヤスリ
13 注型用型枠シート 14 ヘラ
15 クリップ
20 硬化槽兼用収容凹部 21 容器本体
21a 一体ヒンジ 22a 保持突起
22 長尺蓋部材 23 短尺蓋部材
23a 保持突起 24 嵌合突部
25 挿通孔 26 フランジ部
27 嵌合凹部 28 摘まみ部
29 載置台 30 載置台
29a 凹部 30a 抱持凹部
31 段差部 32 補強突起
33 引っ掛け孔 34 補修面
35 粘着テープ
5A 包装容器 20A 硬化槽兼用収容凹部
21A 容器本体 22A 蓋部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底補修剤を充填した靴底補修剤容器、注型用型枠シート、表面仕上げ用ヘラ等の靴底補修用用具と、
前記靴底補修剤容器等の前記靴底補修用用具を収容するとともに、靴底の磨耗、損傷、欠損部分の補修時には、前記靴底補修剤を硬化させる熱湯ないし温水を貯留するための硬化槽として機能する硬化槽兼用収容凹部を形成した容器本体を有する包装容器と、
を備えたことを特徴とする靴底補修セット。
【請求項2】
前記硬化槽兼用収容凹部に貯留した熱湯ないし温水内に、修理する靴の靴底補修部分が浸漬するように、該靴を支持する支持手段を設けた請求項1記載の靴底補修セット。
【請求項3】
前記支持手段として、包装容器に蓋部材を設けた請求項2記載の靴底補修セット。
【請求項4】
前記支持手段として、包装容器の少なくとも一側部に硬化槽兼用収容凹部を開閉する蓋部材を回動自在に設け、靴のカフス部の上端部を立起させた蓋部材にクリップで係止して、硬化槽兼用収容凹部に貯留した熱湯ないし温水内に靴底補修部分を浸漬する請求項2または3記載の靴底補修セット。
【請求項5】
前記蓋部材として、包装容器の両側部に硬化槽兼用収容凹部を開閉する1対の蓋部材を回動自在に設け、一方の蓋部材の長さを他方の蓋部材よりも長く設定し、長尺側の蓋部材にハイヒールのカフス部の上端部をクリップで係止可能となし、短尺側の蓋部材にローヒールのカフス部の上端部をクリップで係止可能となした請求項2または3記載の靴底補修セット。
【請求項6】
前記蓋部材として、包装容器の長手方向に沿った一側部に硬化槽兼用収容凹部を開閉する蓋部材を回動自在に設け、立起させた蓋部材に左右の靴のカフス部の上端部を係止可能となした請求項3〜5のいずれかに1項記載の靴底補修セット。
【請求項7】
前記支持手段として、包装容器に靴の長さ方向の途中部を支持する支持壁を形成した請求項2〜5のいずれか1項記載の靴底補修セット。
【請求項8】
前記靴底補修剤容器を、その長手方向を上下方向とし且つキャップが下側に位置するように、硬化槽兼用収容凹部の幅方向の略中央部に配置した請求項1〜7のいずれか1項記載の靴底補修セット。
【請求項9】
前記包装容器の少なくとも一側部に硬化槽兼用収容凹部を開閉する蓋部材を回動自在に設け、蓋部材に硬化槽兼用収容凹部内の所定位置に靴底補修剤容器を固定保持するための突起を形成した請求項1〜8のいずれか1項記載の靴底補修セット。
【請求項10】
前記包装容器の少なくとも一側部に蓋部材を回動自在に設け、蓋部材に硬化槽兼用収容凹部に対して熱湯ないし温水を注ぎ込むための開口部を形成した請求項1〜9のいずれか1項記載の靴底補修セット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−42865(P2006−42865A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224104(P2004−224104)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(305032254)サンスター技研株式会社 (97)
【Fターム(参考)】