説明

靴底

【課題】 妊婦にとって歩きやすい靴の靴底を提供する。
【解決手段】 妊婦用靴の靴底10は、靴底10の中足骨アーチから足根部の横アーチに対応する部分に設けられ、踵側からつま先側へ延びる第1補強帯部17と、第1補強帯部17に対して間隔を開けて、中足骨アーチからつま先側に設けられた第2補強帯部18とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は靴底に関し、特に、妊婦にとって履きやすい靴の靴底に関する。
【背景技術】
【0002】
妊婦はホルモンのバランスが変化し、腹部が突出し、骨盤の支持靱帯や結合組織が弛緩し、体幹が後傾し、骨盤がゆがんでくる。妊婦は、このような体型になると、通常の靴では履きにくくなる。
【0003】
このような妊婦にとっても履きやすい靴が、たとえば特開平11−113609号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
特許文献1に開示された靴においては、靴のヒール部分に、外側後端部と、内側後端部によって覆われる踵覆い部を設け、外側後端部には留め具と、その留め具掛けを有したバンドを設け、これが内側後端部に設けたバンド通しを通って、折り返されることで、ちょうど留め具で固定できる位置に来るようになっている。
【特許文献1】特開平11−113609号公報(段落番号0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の、妊婦にとっても履きやすい靴は、上記のように構成されていた。靴の脱ぎ履きの際に、ベルトを緩めたり、締めたりすることで、靴の着脱を容易にしていた。しかしながら、その靴底については、特に考慮されていなかった。
【0006】
この発明は、上記のような課題に鑑みてなされたもので、妊婦にとって歩きやすい靴の靴底を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる靴底は、靴底の中足骨アーチから足根部の横アーチに対応する部分に設けられた第1補強帯部と、第1補強帯部に対して間隔を開けて、中足骨アーチからつま先側に設けられた第2補強帯部とを含み、第1および第2補強帯部は踵側からつま先側へ延びる。
【0008】
靴底には中足骨アーチを挟んで、踵側からつま先側へ延びる第1補強帯部と第2補強帯部とが設けられるため、靴底が横方向に捻れることなく、第1補強帯部から第2補強帯部に沿った重心移動が容易になる。
【0009】
その結果、妊婦にとって歩きやすい靴の靴底を提供できる。
【0010】
好ましくは、第1補強帯部は靴の内側面から外側面に向けて延在し、第2補強帯部は靴の外側面から内側面に向けて延在する。
【0011】
さらに好ましくは、第1補強帯部は第2補強帯部に対して、靴の外側に設けられる。
【0012】
この発明の一実施の形態によれば、靴底は第2補強帯部が設けられる先端部と、踵部と、先端部と踵との間に設けられた中央部とを含み、中央部の第1補強帯部の外側は、他の部分よりも滑りにくい材質で形成される。
【0013】
なお、靴底には、中足骨アーチに沿った溝が設けられていてもよいし、靴底の足の載置部には、中足骨アーチに沿った溝が設けられていてもよい。
【0014】
また、靴底の踵側の高さは、つま先側の高さより20mm高いのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、この発明の一実施形態にかかる靴底を妊婦用靴に適用した場合の靴50の全体構成を示す側面図である。図1を参照して、妊婦用の靴50は、靴底10と、靴底10の上に設けられたアッパー部51とを含む。靴底10は平坦ではなく、つま先は、平面(図中斜線で示す)より高い位置に存在する。つま先部の高さをaとし、踵部の高さをbとすると、妊婦用の靴底10は、a=約10mm、b=約30mmであり、その差は20mm程度あるのが好ましい。
【0016】
これは、一般に妊婦は、重心が後ろになるので、踵側に対して、20mm程度、前側が低くなるようにするのが、歩行上好ましいためである。
【0017】
次に、靴底10の詳細について説明する。図2(A)は妊婦用靴(左足用)の靴底10を示す平面図であり図2(B)、図2(C)はそれぞれ、図2(A)において、B-BおよびC-Cで示す矢視図である。
【0018】
図2を参照して、妊婦用靴の靴底10は、靴底部11と、靴底部11に連続して設けられた、内側、および外側の側壁部21a、21bと、靴底部11の反対側に設けられて、足を載置するための載置部22とを含む。ここで、内側とは、足の親指が存在する側をいい、外側とは、その反対側をいう。
【0019】
靴底部11は、先端部12と、先端部12から順に踵側に設けられた、足の中足骨アーチが位置する中足骨部13と、中央部14と、踵部15とが設けられている。中央部14と踵部15との間には、段差部16が設けられている。
【0020】
また、中足骨部13は、先端部12および中央部14よりも、約1〜2mm低くなっている(図2においてt=約1〜2mmである)。すなわち、靴底面は、基本的に中足骨部13が設けられている面であり、この上に、ゴムが先端部12、中央部14および踵部15に貼り付けられている。
【0021】
次に中足骨アーチについて説明する。図3は、足の骨解剖図である。足の骨は、大きく分けて3つの領域、すなわち指節骨(足趾骨)の領域Bと、中足骨の領域Cと、足根骨の領域Dとからなる。足前方の中足骨アーチ30は、いわゆる足の甲のアーチであり、真のアーチではなく、負荷をかけることにより変化する。妊婦の場合、歩行時に、自重により中足骨アーチ30はつぶれる。足根部の横アーチ31は、自重によるアーチの変化はない。
【0022】
中足骨部13は、中足骨アーチ30に沿った、靴底の外側の中央部から内側の親指の足の付け根に至る所定の幅を有する曲線状に形成されており、その中に2本の曲線状の溝13a、13bが設けられており、妊婦が歩行時に中足骨アーチ30で容易に足を折り曲げ可能に構成されている。
【0023】
靴底10の中足骨アーチ30から足根部の横アーチ31に対応する部分のほぼ中央部には、靴底10の踵側からつま先側に沿って、第1補強帯部17が設けられている。第1補強帯部17は、靴の内側面から外側面に向けて、すなわち、踵部15上部のほぼ中央から、やや外側にずれた直線状に形成されている。また、中足骨アーチ30から先端部12にも、第1補強帯部17に対して、靴底10の内側にずれた位置に、第1補強帯部17とほぼ同じ形状の第2補強帯部18が設けられている。第2補強帯部18の向きは第1補強帯部17とは逆方向に、すなわち、靴の外側面から内側面に延びている。
【0024】
これらの第1および第2補強帯部17,18は、少なくとも、周囲の、先端部12、中足骨部13、中央部14および踵部15と同等以上の硬さを有したゴムで形成されている。これらの補強帯部17,18は、まずこれらの帯部を収容可能な溝を形成し、その溝内に、周囲に溝部を残して帯部を貼り付けてもよい。この場合も、帯部の面は、周囲の先端部12や中央部14等と同じ高さである。
【0025】
この第1および第2補強帯部17,18は妊婦がこの線に沿って、重心の体重移動をし易いように設けられている。すなわち、妊婦は、この第1および第2補強帯部17,18を利用して、この線に沿って重心移動を行なうことができる。
【0026】
ここで、第1補強帯部17と第2補強帯部18とは相互に連続することなく、中足骨部13を挟んで設けられている。このような構成としたのは、もしこれらの第1および第2補強帯部17,18を連続して設けると、これらの帯部17,18に沿って、靴底10がこれらの帯部17,18を中心として横方向に捻れるためである。
【0027】
次に靴底11の構成の詳細について説明する。靴底11は、中足骨部13のつま先側で、第2補強帯部18が設けられる先端部12と、踵部15と、先端部と踵部との間に設けられた中央部14とを含む。先端部12は、第2補強帯部18によって、外側先端部12aと、内側先端部12bとに分かれている。外側先端部12aと、内側先端部12bとは同じ材質のゴムで形成されているが、図2に示すようにその模様は異なっており、外側先端部12aは波形であり、内側先端部12bは丸形突起状である。
【0028】
踵部15も先端部と同じ材質のゴムで構成されており、その模様は、内側先端部12bと同じである。また、中央部14の第1補強帯部17の内側も同じ材質のゴムで構成されている。なお、踵部15は、衝撃を吸収可能な材質で構成されている。
【0029】
中央部14の第1補強帯部17の外側14c,14eは、先端部12や踵部15等の他の部分より滑りにくい、滑り止めゴムで構成されているのが好ましい。このような材質であれば、比較的柔らかく、雨天や、水仕事中においても滑らない。
【0030】
このように、靴底の中央部14の第1補強帯部17の外側を先端部12や踵部15に比べて滑りにくいゴムで形成したため、妊婦の歩行時には、まず踵部15で着地するときには、滑るように滑らかに着地し、中央部14の外側でしっかり止まることができ、かつ、つま先から滑らかに次のステップを進めることができる。
【0031】
次に、中央部14について説明する。中央部14は、その内側に設けられた、円形状の土踏まず部14aと、土踏まず部14aと中足骨部13との間に設けられた内側第1中央部14bと、土踏まず部14aと踵部15との間に設けられた内側第2中央部14dと、内側第1中央部14bおよび内側第2中央部14dに対して、第1補強帯部17を挟んで外側に設けられた第1外側中央部14cおよび第2外側中央部14eとを含む。
【0032】
内側第1中央部14bおよび外側第1中央部14cとは、土踏まず部14aから足の小指方向、すなわち、図2において右上方向に延びる複数の斜めの直線状の模様を有し、内側第2中央部14dおよび外側第2中央部14eとは、内側第1中央部14bおよび外側第1中央部14cとは直交する方向に延びる複数の直線状の模様を有している。
【0033】
このように、靴底の中央部14において、土踏まず部14aのつま先側と踵側とで相互に直交するようなパターンとしたため、より歩行し易くなる。
【0034】
なお、ここでは、外側第1中央部14cと外側第2中央部14eとは、相互に直交するパターンとしたが、これに限らず、この部分をともに、山形(V字状)のパターンとしてもよい。この状態を図4に示す。このようにすれば、一つのパターンで上記した直交するパターンと同様のすべり止め効果が得られる。また、この山形パターンは、外側第1および第2中央部14c,14eの双方でなく、外側第2中央部14eのみをこのパターンとしてもよい。
【0035】
次に第1および第2補強帯部17,18と妊婦の歩行時の重心移動との関係について説明する。図5は、妊婦が載置部22に足を置いたときの、妊婦の足の裏を示している。図中矢印で示すのは、歩行時の体重移動の軌跡である。妊婦の歩行時の重心移動に注目すると、最初に踵で接地し、重心が足の外側に移動して、第5中足骨骨頭部より第1中足骨骨頭部に移行し、母趾(第1指)の先端より抜けていく。
【0036】
したがって、第1および第2補強帯部17,18の形状も、この重心移動が生じるように歩行時の体重移動に沿った形状が好ましい。そうすれば、足の幅方向へも重心移動が生じ、安定感が得られる。
【0037】
次に靴底10の足の載置部22について説明する。図6(A)は、靴底10の足の載置部22を示す平面図であり、図6(B)は、図2(A)において、VB-VBで示す部分の断面図であり、図6(C)は、図6(A)において、矢印C−Cで示す部分の断面図である。
【0038】
図6(A)を参照して、靴底10の足の載置部22には、図3に示した中足骨アーチ30に沿って設けられた、3本の平行な溝25a〜25cが設けられている。この3本の溝25a〜25cによって、妊婦の歩行時に中足骨アーチ30で妊婦は先端部12を容易に曲げることができ、容易に重心移動が可能になる。
【0039】
また、図6(C)に示すように、足の載置部22の周囲には、立上がり部24が設けられている。これによって、妊婦は足を載置部22の上で位置決めが容易になる。
【0040】
次に、靴底10の断面について説明する。図6(B)を参照して、靴底の底面の先端部12、中央部14および踵部15にはそれぞれ、上記したゴムが貼り付けられている。これによって、靴底10の底面は、滑ることなく、歩行し易いように構成されている。
【0041】
なお、上記実施の形態においては、図2に示すように、靴底の中央部14と踵部15との境界部に直線状の段差部16を設けた例について説明したが、これに限らず、中央部14と踵部15との境界部を円弧状としてもよい。そのような靴底の形状を図7に示す。なお、ここでは、中足骨部の下部のみを示している。
【0042】
図7に示すように、この実施の形態においては、内側第2中央部14fおよび外側第2中央部14gとは、踵部15との間に段差を有することなく、円弧状の境界線で区切られている。
【0043】
また、この境界部は、図7において点線で示すように、V字状としてもよい。
【0044】
なお、図4に示したように、外側第1および第2中央部14c,14gを同一の山形パターンとしてもよい。
【0045】
また、踵部15は、歩行時において最初に地面に当接する場所であるため、摩耗が早い。そこで、この部分のパターンが摩耗したときは、靴底を交換する時期である。したがって、踵部15は靴底の摩耗度を示す目安となる。
【0046】
上記実施の形態においては、この発明の一実施の形態に係る靴底を妊婦用の靴に適用した場合について説明したが、これに限らず、子供用の靴の靴底に適用してもよい。
【0047】
なお、上記実施の形態においては、左足用の妊婦用靴について説明したが、右足用も同様である。
【0048】
図面を参照してこの発明の一実施形態を説明したが、本発明は、図示した実施形態に限定されるものではない。本発明と同一の範囲内において、または均等の範囲内において、図示した実施形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明にかかる、靴底は、踵側からつま先側へ延びる補強帯部に沿った重心移動が容易に行えるため、重心移動の容易な靴底として有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明の一実施の形態にかかる靴底を妊婦用靴に適用した場合の靴の側面図である。
【図2】靴底の平面図および側面図である。
【図3】足の骨の解剖図である。
【図4】靴底の中央部の外側のパターンを示す図である。
【図5】妊婦の足の裏における、歩行時の体重移動の軌跡を示す図である。
【図6】靴底の足の載置部および断面図を示す図である。
【図7】靴底の他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 靴底、11 靴底部、12 先端部、13 中足骨部、14 中央部、15 踵部、16 段差部、17 第1補強帯部、18 第2補強帯部、21a、21b 側壁部、22 載置部、30 中足骨アーチ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底の中足骨アーチから足根部の横アーチに対応する部分に設けられた第1補強帯部と、
前記第1補強帯部に対して間隔を開けて、前記中足骨アーチからつま先側に設けられた第2補強帯部とを含み、
前記第1および第2補強帯部は踵側からつま先側へ延びる、靴底。
【請求項2】
前記第1補強帯部は靴の内側面から外側面に向けて延在し、
前記第2補強帯部は靴の外側面から内側面に向けて延在する、請求項1に記載の靴底。
【請求項3】
前記第1補強帯部は前記第2補強帯部に対して、靴の外側に設けられる、請求項1または2に記載の靴底。
【請求項4】
靴底は前記第2補強帯部が設けられる先端部と、踵部と、前記先端部と前記踵との間に設けられた中央部とを含み、
前記中央部の前記第1補強帯部の外側は、それ以外の部分よりも滑りにくい材質で形成される、請求項1から3のいずれかに記載の靴底。
【請求項5】
靴底には、中足骨アーチに沿った溝が設けられている、請求項1から4のいずれかに記載の靴底。
【請求項6】
靴底の足の載置部には、中足骨アーチに沿った溝が設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の靴底。
【請求項7】
靴底の踵側の高さは、つま先側の高さより20mm高い、請求項1から6のいずれかに記載の靴底。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−44427(P2007−44427A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−234681(P2005−234681)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(390006231)アップリカ育児研究会アップリカ▲葛▼西株式会社 (97)
【Fターム(参考)】